防災分野の研究開発に関する委員会(第19回) 議事要旨

1.日時

平成15年5月26日(月曜日) 14時~16時

2.場所

経済産業省 別館 1111号会議室

3.出席者

委員

 岡田主査、片山委員、壁谷澤委員、鎌田委員、亀田委員、佐藤委員、田所委員、永島委員、林委員、廣井委員、村上委員、渡邊(興)委員、渡辺(正)委員

4.議事要旨

(1)リーディング・プロジェクトの実施状況について

 事務局及び防災科学技術研究所より資料19‐1‐1~2に基づいて説明を行った。

【委員】
 このプロジェクトは、科学技術の観点からいえば大切だが、地震予知という問題に貢献するのかしないのか、すると言えばどのような点で貢献できるのか。

【防災科研】
 地震調査研究は、文部科学省でやっているが、このプロジェクトは、それをどう活用するかという視点に立っている。つまり地震予知と組み合わせることで防災に貢献できると我々は考えている。

【事務局】
 地震予知そのものに貢献すると言うより、地震を出来るだけ早く捉え、大きな震動が来る前に何か出来ることはないかという観点でプロジェクトを実施している。

【委員】
 わが国は地震予知に大きな投資をした。それとどう関係するのか。また、国土交通省との関係についてはどうか。

【事務局】
 これまで地震予知に繋がるように観測網に膨大な投資をしてきた。それでデータを集め、将来地震予知に役立てることはあると思うが、それはすぐにはできない。他方、文部科学省、気象庁、大学などの観測網を全てあわせて、実際の大きな地震の波が来る前に何らかの情報とって防災に役立てることが現実的に見えてきた。

【委員】
 このプロジェクトを進めるには、被害を推定してシステムを組むための被害観測がいると思うが、それは既存の研究や、大大特の研究の成果を活用するのか。また、リアルタイム協議会等で討議されるのか

【防災科研】
 こういう情報は、実際に経験しないとそれを実際に使うかどうか、またそれをどのように使うかどうかは、なかなか共通の理解が得られにくい。さらにリアルタイム情報をどうやって流していくかは大きな課題である。ユーザーとして、どういうことをやっていけば役に立つかを研究している。

【委員】
 NPOのリアルタイム地震情報利用協議会は出来ているのか。

【事務局】
 NPOは3月に立ち上がっている。

【委員】
 5年経ったらNPO法人は、どうするのか。その辺は考えているのか。

【委員】
 基本的にはそれは法人が考えることだと思う。5年後に独立できる研究をするか、研究をさらに継続出来るようにするかは、法人の責任だと思う。

【委員】
 この研究は、大大特などと関係が深いと思うが、それを上手く繋げることなどは考えているのか。

【防災科研】
 その点については、研究運営委員会等で検討したいと思う。

(2)平成16年度文部科学省の防災分野における重点事項について

 事務局より資料19‐2‐1~2に基づき説明を行った。

【委員】
 防災に関する研究開発の推進方策における重要研究開発課題が地震だということはよく分かるが、気象災害、その他の海の災害等は総合科学技術会議の重点項目に入りにくいとは思う。こうした防災研究は、文部科学省ではどう進めていくと考えられているのか。

【事務局】
 災害自体は、わが国において無くなったわけではなく、地震以外の災害においても研究開発は必要である。そういう前提で推進方策は出来ている。今ある地震災害研究以外のものすべて止めて、重点化したものだけにしようというつもりではないが、このような重点事項というのは、来年度の新規の目玉みたいなものであり、そういうものとしては、推進方策の中にあるような、総合科学技術会議の資源配分の方針で大きく取り上げられている物を重点的に押していくことになると思う。

【委員】
 地震に関する研究も重要だとは思うが、その周辺の研究に対する目配りも忘れることのないようにお願いしたい。

【事務局】
 防災対策の戦略の構築やハザードマップの高度化については、かなりの部分が地震を念頭に置いていることは間違いないと思うが、地震に限ってという訳ではない。そこは、我々としても、地震以外の災害を除外しているわけではない。

【委員】
 参考資料は、どこが出したものなのか。

【事務局】
 これは、総合科学技術会議の中の重点分野推進戦略専門調査会において、5月20日に出された資料である。従来の流れで言えば、これがベースとなり総合科学技術会議に出す資源配分の方針になっていくものである。

【委員】
 これについて、何かものは言えるのか。

【事務局】
 多少言ってはいるが、そう簡単には通らないのが現状である。

【委員】
 社会基盤のところの(1)に犯罪、テロ等への対策となっているが、国民保護法制がここ一年ぐらいで国会を通る状況も踏まえると、テロ時の市民への情報伝達など避難誘導については大事と思われるが、ここにはテクノロジカルな部分が入っていない。そういう研究も大事だと思う。情報伝達など大量の人間がどう有効に避難するかなどは大きな問題なので、入れるチャンスがあればいれて欲しい。

【委員】
 資料19‐2‐2には、社会の防災力の向上、防災対策の戦略の構築、既存構造物の耐震性の評価及び補強とあるが、社会の防災力の向上という観点からすると学校を突然評価するのではなく、住まいを個別にもしくは、地域を集合的に扱い耐震性を評価することが重要ではないかと思う。

【事務局】
 元々、推進方策の中では既存構造物の耐震診断や、補強技術の開発を言っていると思うが、学校などに限らず、一般の木造住宅が排除されているわけではない。他方、一般の木造住宅は個人の所有物なのでそれを真っ先に改修ないし耐震診断をするというのは上手くいかないのが現実である。他方、仮に、個々の住宅の具合が悪くなった時、現実に逃げ場所になるのは学校等になり、そういうところが真っ先に潰れては困るということになるので、それらについて補強する必要はあるのではないかと思っている。

【委員】
 推進方策では、国際協力の推進がかなり強調されていたが、資料19‐2‐2の重点化方針の中には、国際的な課題も含まれているのか。

【事務局】
 本当は推進方策に書いてあることも並べてもいいくらいだが、そうするとメリハリがつかないところがあるので、16年度はどうするかという時に、特に緊急性を要すると思われるもの、あまり着手されていないものを少し取り上げた。

【委員】
 専門調査会の論調はどのような空気なのか。やはり国内中心か。

【事務局】
 専門調査会は社会基盤だけではなく、全分野、全体を議論しているので、社会基盤分野固有の議論はほとんど無い。

【委員】
 大きな字で書いてある物と、小さい字で書いてある物は大きな文字が書いてある方が重要ということになるのか。下の黄色い枠に書かれているのは、例示に過ぎないのか。

【事務局】
 防災対策の戦略の構築とハザードマップは推進方策にも書かれていることだが、中央防災会議等の動きも踏まえバックアップしてある。黄色の枠の中に書いてあることも当然重要だが、これだけに限る必要性もないし、何か落ちていることがあれば、ご指摘していただき、追加・修正はしていきたい。

【委員】
 資料19‐2‐2については、推進方策の7本柱をある程度考えて作成してくれるのではないか。しかし、復旧・復興については、総合科学技術会議の報告書の中には文言が入っているが、この資料の中には復旧・復興が入っていない。こちらの資料で復旧・復興を外したら審議した先生方は困らないだろうか。

【事務局】
 復旧・復興については、今の研究が十分かどうかということもあるが、大大特の中に入っている。また、超高度防災支援システムについても大大特なり、高度即時的地震情報伝達網実用化プロジェクトの中に入っている。

【委員】
 大大特といわれても、何をやっているか知っている人はほとんどいないのだから、やっている内容も記載して欲しい。総合科学技術会議の報告書には、出ているのに、こちらでは抜けていると思うのではないか。

【委員】
 防災対策の戦略の構築というと、ものすごく範囲が広い。範囲が広いと読めばいいが、さきほど委員がおっしゃったように、大きい字の説明を小さい字でしてあるように見える。例などを入れておいたほうがいい。

【委員】
 大規模災害に対応した地域防災計画の策定だが、当然自治体は作るに決まっているので、実践的な地域防災計画、つまり、我々の知見を活用してくれれば役に立つというニュアンスと、策定だけでなく活用が大事であるので策定・活用という文言にして欲しい。

【委員】
 仮に予算が獲得できたら、どんな形で研究をしていくのか。まだ考えていないのか。

【事務局】
 防災対策の戦略の構築という研究自体それほど多くは無いが、ある程度の資金はとっておき研究していただける方にお願いするという形を考えている。

【委員】
 東海、東南海、南海というのは、同時発生も含めて考えているのか。

【事務局】
 恐らく、地域の防災計画を策定するに当たって、個別、同時両方を考えるはずである。

【委員】
 思考実験としては、東海、東南海、南海は一緒になったらということも、考えなくてはいけない。

【委員】
 一緒に起きた時とそれぞれで起きた時ではだいぶ違い、国としての対応も大分違ってくる。むしろ、そういう面も含んで全体を見回して研究をしている人はあまりいない。

【委員】
 これは研究開発の提案であり、実際に施策をやろうということではないので、当然そうしたことも研究開発としてやっていただきたい。
 内閣府では、3つやらなければいけないと言ったならば、すぐにしなくてはいけないが、文部科学省では自由度をもってやっていただく心づもりということでお願いしたい。

【事務局】
 研究成果でいい物が出れば内閣府、国土交通省などに使っていただくことも当然でありうる。

【委員】
 色々議論をしているが、3つ一緒に起こることも考えてもらわなくては困るということで論理的に攻めていけば、内閣府もやる気になるのではないか。では、資料については事務局にまかせるので修正していただき、明後日、分科会に事務局に報告をお願いします。

(3)防災の研究開発の人材確保・育成について

 事務局より資料19‐3‐1~2に基づき説明を行った。

【委員】
 資料19‐3‐1の赤枠で囲ってあるのは重要度が高いものか。

【事務局】
 これは、分野別毎に緑が分布している所を囲った物であり、表からは重要と思われる所である。

【委員】
 人によっては違う所に赤枠をつけるかもしれないが。

【事務局】
 また、火山災害については、かなりの部分を測地学分科会の建議の方に委ねているため、この中にはあまり入っていない。

【委員】
 備考の欄には、防災分野の研究開発状況の中の実証データを収集することによって、防災力を向上させることについて、特に必要な物を備考の欄に少し書き加えるということでいいのか。

【事務局】
 備考の欄は、基本的には記述式で自由に記入して頂くことになる。

【委員】
 この色分けは、今までの研究領域を眺められていいと思うが、人材の需要の調査については、縦割りになっているのでは。そうすると、災害全般の横断的なもの、災害情報や防災教育などそれぞれにとって係ってくるが、こういう分類だと出てこない。推進方策では、人材の育成のところで、特に人文社会系の人材が不足しているという記述があるが、リスクマネジメント、ロボティクスだけでなく、災害情報と防災教育なども是非入れておいて欲しい。

【委員】
 それ以外に、3枚目に追加して頂いて結構である。整理の仕方では“都市災害の内のこれ“と書いてもらったほうが分かりやすい。

【委員】
 洪水の研究をしている人と、水の研究をしている人と分けていただいても結構だが、その辺りはどちらかというと本籍であって、現在、従事しているテーマとは必ずしも1対1で対応しないというのは委員の指摘になると思う。その2つの違いは上手く反映する仕組みをどこかに持てないかと思う。
 データベースの研究は、決して必要ではないというわけではないというのは前回議論したと思うが、これは国や、防災科学技術研究所が主体的にやらなければならないと考えると、重要性は非常に高い。しかし、現状としては一人の研究者として考えると、この研究では業績は上がらないので、当然その辺は避ける。どの辺りがおいしいだろうかと考えると、緑で表示されている所だと私には見える。本質的に、推進方策の中で足りないというのは、応用物理学としてしか災害を見ない人たちだけで防災をやっていていいのかという問題が問われる。それに対しては、本質的な答えを探さないといけないし、社会科学、人文科学の側にも当然問題はあるわけで、そこも出来ればオープンにしなければならない。

【委員】
 分類を決めてABCと分けるだけでは本質は余り出てこないのではないか。どれぐらい急ぐかにもよるが、一段階、自由な記述ができるようなチャンスを作ったらどうか。自由記述の中に出てくるメインのキーワードはたくさんあると思う。それを一度整理し直すことが必要である。

【委員】
 大学院、修士課程修了の新卒とポストドクター新卒はどのように考えるのか。この場合、ポストドクターをどのように考えていいか分からないし、横で、ABCDを一つ付けるのか、全部付けていいのか分からない。例えば、3×5の枠の中で、Aを一つ付けるのか、ABCDを一つずつ付けるならば、それなりに考えるが、何も無いと分かりにくい。これだと迷ってしまう。

【委員】
 このイメージは、機関が欲しいのか、研究者の卵が欲しいのか、一人前の研究者が欲しいのか、そのイメージだと思うが、もう少し露骨に書いてもいいのではないか。

【事務局】
 アンケートの記入要領については、今回お配りしなかったが、ABCDというのは人数のオーダーであってAが数十人、Bが数百人、Cが数千人、Dが数万人、Eがその他というオーダーである。絶対量として考えて欲しい。

【委員】
 現場の人は入らないのか。例えば防災分野の科学技術系の人材など。今、中央防災会議で防災の現場の人材育成を考えているが、そういうときは基本的には大卒レベルを中心に考えているが、そういうのも含めて考えているのか。

【事務局】
 一応、科学技術系の人材となっているので、研究者か技術者ではないだろうか。

【委員】
 記入の仕方を例で入れてみたらどうか。

【委員】
 防災分野の科学技術人材は全部でどの位いるのか。

【事務局】
 少なくとも、相対的でどの位の数になるかを書いて欲しい。人数は直接的には把握しにくいと思う。

【委員】
 ABCDEと書くが、3つ程度選択したら、大切な所だけ選ぶと思う。いいかどうかは分からないが、Aを選ぶ必要があるのか。

【事務局】
 需要量なので、放っておいたら足りないだろうという場所を入れていただきたい。新卒で入れ替わる人材で十分という事であれば、恐らく問題は無いので、そういう分野はあえて選ぶ必要は無い。

【委員】
 あくまで、需要であり供給ではないのか。

【事務局】
 需要がどれだけあるかを考えて、供給を考えることにしたい。また、特に足りないと思われる場所が合ったら特だしをして備考の欄に書いていただきたい。

【委員】
 例えば、地震災害の専門性が多いとすると、地震災害の専門家を採りたいと考えてしまうが、その辺は広く考える必要があると思うが。

【委員】
 自分の専門性のある場所は付けやすいが、無い所は無責任になるのではないか。

【事務局】
 一応アンケートだが、単純に足してすぐに何かをするという訳ではない。

【委員】
 アンケートの使い方のスケジュールについて教えて欲しい。

【事務局】
 正確な話ではないが、人材のあり方を文部科学省として、分野別というよりは総合的に出し、その中でどの分野が足りないかという施策を出していくことになると思う。6月には、細かいところはともかく、どこが足りないかが多少出てくるようにはしておいたほうがいい。

【委員】
 誰も答えなかったら、この防災の分野は損をしてしまう。

【事務局】
 他の分野でやっているのに、防災分野でやらなかったら損であるので。

【委員】
 資料19‐2‐2で、地震に関連して文部科学省の研究は国際的に影響力が大きいイニシアチブをとられているし、例えばEqTAP(アジア・太平洋地域に適した地震・津波災害軽減技術の開発とその体系化に関する研究)を成果の一つとして、人材の育成やフィジカルな成果の蓄積がなされつつあるが、これは普通に考えると宝の持ち腐れになる可能性が非常に大きい。そういった点から、この表の重点研究開発推進のところに現在進行中のEqTAPでフィジカルな成果や、人材やネットワークなど活かして、EqTAPの成果を今後も活用し、主としてアジアに利用できるように考えるようにフォローアップをしなければならないというニュアンスを組み込むような事があってもいいのではないか。

【委員】
 EqTAPは、今年度で終了するため、来年度に繋げようとすると、今年度の資料に何か記述しておく必要がある。

【委員】
 東海、東南海、南海を中心にするだけでなく、そこにアジアを加えるといった書き方もある。

(4)その他

 次回は、概算要求の前に開催する予定。

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研究開発局地震・防災研究課防災科学技術推進室

(研究開発局地震・防災研究課防災科学技術推進室)