防災分野の研究開発に関する委員会(第12回) 議事要旨

1.日時

平成14年8月21日(水曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省 別館 第6会議室

3.出席者

委員

 岡田主査、井田委員、石山委員、片山委員、河田委員、小林委員、島崎委員、大門委員、田所委員、田村委員、土岐委員、林委員、村上委員、渡辺委員

4.議事要旨

(1)防災分野における経済活性化のための研究開発プロジェクトの事前評価について

 事務局より資料12‐1‐1~12‐1‐6に基づき説明した後、質疑応答が行われた。主な質疑応答は以下のとおり。(発言者敬称略、以下同じ)

【委員】
 予算要求を行う前に、この委員会で意見を聴取することが適当であったのではないか。

【事務局】
 本来であれば、時間をかけてご意見をお聞きすべきであったと思われるが、時間的な制約等があったためできなかった。

【委員】
 今年度だけの単発の話なのか。来年度以降も続いていく話なのか。

【事務局】
 本プロジェクトが16年度の概算要求に盛り込まれるかどうかについては、現時点では未定である。

【委員】
 去年から今年にかけて大都市大震災軽減化プロジェクトの話しがあり、今年度は、リーディング・プロジェクトなど、名前こそ違うが同じような大きな予算のプロジェクトが出てきて、それを何とか形にするため、手短なところから事業実施をする傾向にある。大きな計画といくつかのプロジェクト候補を作るなり、この委員会として長期ビジョンをどのように具現化するのかなど、もう少し踏み込んだプロクラムづくりがあってもいいのでは。

【委員】
 防災分野で産業化できているものは殆どなく、産業界からヒアリングしてもいい知恵は出てこないため、むしろ国が先導的に防災分野の産業を育てなくてはいけない。このため、国の審議会や委員会の先導的な役割は大きいと考えられる。

【委員】
 事務局からポンと予算を出してきてこれでいいですかと言われても、本委員会はお墨付きを与える委員会ではないので、本来の任務と異なるのではないか。

【委員】
 文部科学省で20いくつのプロジェクトがあるそうだが、基本的には採択することになるのか。

【事務局】
 基本的に文部科学省から概算要求としては出ていくことになる。概算要求に出したうえで、各分野別の委員会において評価を受けることになる。

【計画官付】
 各委員から課題についてお墨つきを与えるだけのものだという指摘があったが、今年6月下旬にこの話があり時間等の制約があったため、このようなタイトなスケジュールで評価をお願いする形となった。各分野の委員会でご議論いただいている趣旨は、これらの課題をより良いものにしていくこと、また産業的及び科学的な観点からお知恵をいただくという趣旨でお諮りさせていただいている。

【委員】
 資料の1‐2について、実用化ということについて、できたらビジネスモデルといったことが入らないのか。80年代の日本が欧米に対して優位に立てたのは、ある種のビジネスモデルを持っていたためである。次に求められるのは重点4分野+社会基盤といった特化の中での個別技術の優位ではなく、次のビジネスモデルの開発、その社会のあり方の開発が求められるのではないか。

【委員】
 こういうプロジェクトが出てくるためには、毎日これを考えている人間がいなければいけない。委員会に議題として出てきたときだけに検討する人がいるだけでなく、リーディング・プロジェクトを本気で考える人がいないといけない。先生方が不満に思われる気持ちは分かるが、防災科研としては、今回はこれをやりたい人間がいるということで頑張っているところである。

【委員】
 今年度の振興調整費における防災分野の新規課題応募は、50課題ぐらい出てきている。振興調整費にプロジェクトとして出してくるのはやはりポテンシャルがあるから出して来るのであって、かなり事前から準備してないと出せない。プロジェクトが出てこないというのは、情報が行き渡っていないから出てこないのではないか。

【委員】
 人も代わるし時間がないというのが本当のところだろう。そういう中から、こうした委員会が研究開発に関して責任をとっていくのであれば、何人かのスタンディング・コミッティがあって、いつも研究をきちんと拾っておくということをしないといけない。

【委員】
 例えば、防災のロボティックスというのはここで話題になっていない。こういうのはまさしく産業化につながっていくので、委員会でも話題になってもいいのに、そういう議論は何もなく、この事業だけ出てくることが問題である。

【事務局】
 根本は、防災分野だけが、推進方策が出ていないというところがあり、その辺りは、事務局としても責任を認識している。まずは全体を見渡して、こういうものが必要であると、その中に振興調整費の提案をうまく拾いあげることも一つの反省点としてある。

【委員】
 この委員会としてポテンシャルあるようなプロジェクトを集めてもっていたらどうか。

【委員】
 この研究に津波も加えていただきたい。津波というのは伝播するまでにかなりの時間がかかるので、地震情報だけでなく津波も入れていただくと、東海・東南海地震に役立つのではないか。

【事務局】
 地震観測網自体は、陸域においては全国をカバーしているわけで、津波については、現在の海底の地震観測網では非常に貧弱であり、短期間に津波の警報システムを作るのは難しいので、とりあえず陸でやろうということにしている。

【委員】
 焼津や清水では5分以内に大津波が来るので、津波警報は間に合わない。また警報システムはあるが、現在の気象庁のシステムでは、避難することには使えない。地震と津波でペアにやる形であれば津波の方がはるかに生きてくるといえる。気象庁も研究に入れたらいいと思う。

【委員】
 そのあたりは気象業務法の関係もあり、なかなか難しい問題がある。ただし、研究を気象庁といっしょにやるのは全く問題ないと思っている。

【委員】
 海底に地震計は置かないのか、陸地に全部置くのか。

【事務局】
 陸上には、20キロごとに地震計が置いてあるのでそのまま使えるが、海底については、少し地震計が伸びているだけで、広範囲をカバーすることに至っていない。

【委員】
 研究として何をしようとしているのかポイントを教えて欲しい。予算を何に使おうとしているのか。

【事務局】
 P波を最低2点で関知した時点から、2点の情報と地震を感知していない地点の情報を全部入れて、それによって震源をいちはやく決定する。P波をとらえてから5秒ないし7秒程度で震源を決定できるシステムを決定する。震源を決定した後、受け手側に送るが、受けて側で何秒後にどれだけの地震がおこるのか、震源やマグニチュードを決定しただけでは分からないため、これを瞬時に作るシステムを作らなければいけない。そのためには途中で地盤の情報をかなり入力しておかなければいけない。つまり震源を決めて出す方と受ける側のシステムを開発することである。

【委員】
 そんなにお金がいるものではないのでは。

【事務局】
 開発をしてそれきりではなく、そのモノを実際に自治体なり、企業なりおいて、試験的において動かしてみるということも入っている。

【委員】
 そうなると、これは重要施設のシャットダウンシステムであると考えられる。そうすればシャットダウンシステム自体の研究はやらないのか。

【事務局】
 システム自体を研究することについて議論があるかも知れないが、それは各々のユーザーサイドでそれぞれの事情に応じて作られればいいかと考えている。

【委員】
 産業という観点から言えば、一番マーケットが大きいのはそのシステムの部分なのではないか。各企業が何時来るのか分からない地震のために投資し、開発することはできないので、それは結局どこもやらないということになるのではないか。

【委員】
 やはり、太平洋ベルトが日本の資産の7割を集積しているので、その中でシャットダウンシステムのニーズは確かにあると思う。それをあなたたち自分でやりなさいといったらかわいそうな感じがする。

【委員】
 巨大企業において東海・東南海地震が起きた場合、シャットダウンがうまくできた場合とできない場合、どのくらい経済波及効果やダメージが違うかと試算すると相当大きな額になると思う。

【事務局】
 各施設に固有のシステムまで国がお金を出して開発することは言いにくい。

【委員】 実際地震が来て避難する市民の立場はどこにあるのかという気がする。早く地震の警報を出しても、突然電力やガスだけ止めるわけにはいかないという問題があり、空襲警報みたいな警報システムがなければ何も役に立たないのではないかと思われる。また、実用化するためには、マグニチュードどれくらいで警報を出すのかといった課題や地震情報が誤ったりしたときはどう対応するかといった問題もある。

(2)防災分野の研究開発状況調査のとりまとめについて

 事務局より資料12‐2‐1~12‐2‐2に基づき説明した後、質疑応答が行われた。主な質疑応答は以下のとおり。

【委員】
 本資料が、外部に公表される場合、いくつか都合が悪い点がある。「6.成果の活用状況」、「7.成果の防災分野への活用状況」の論文発表の数が実状とは異なるのではないか。また「8.研究評価状況」を見ても論文発表と意味が違うかも知れないが、論文発表と書いた限りおいては、少なくとも私の知る限りでは、研究の成果として論文発表した数だと考えている。数値等も実状とかけ離れており、注釈をつけるなり、なんらかの処理をしないといけない。また、2章についても、「総合防災に関する科学技術」だけしかないのはいかがなものか。
 私の提案としては、これは大学関係の研究分野がたくさん入っていることもあるため、役所の目ではなく、研究者の目で見直して再整理していただきたい。

【事務局】
 分類自体は、よほどおかしいものは別として、回答していただいたものを基本としているため、それを変更するのであれば、それなりの体制をとる必要があるが、時間の制約等があるため、避けたいと考えている。

【委員】
 分類については、事務局で変更したものはないか。

【事務局】
 明らかにおかしいものは分類変更を行っているが、それ以外は変更していない。

【委員】
 アンケートに答える研究者は、自分のところだけしか考えていないため、もっと全体からみて変更を加えていくべきではないか。

【事務局】
 アンケートは、項目を示して、それを選択して回答をいただいているわけであり、それが客観的に妥当かどうか判断が分かれるが、それに変更を加えていくことは難しい。

【委員】
 1章の中での分類については、大きな問題ではないが、第2章をこのまま独立した章とするのは問題である。むしろ第2章を削除して第1章に含めるほうが妥当だと思っている。また、統計資料が、このまま外部に出た場合、数値等が一人歩きし、大学等の評価に影響するとも考えられるため、外部に出されると非常に困る。

【委員】
 本調査が単なる委員会資料で終わせないようにしていただくとともに、本調査を広く社会に公表して欲しい。

【委員】
 例えば、表の8は、意味からいうと論文発表、口頭発表で十分という人は少なくて、事前・事後評価を受けた人と、評価を受ける予定だという人が多いということを示しているので、そのあたりを誤解がないように読めるようにしていただきたい。

【委員】
 第1章で記載してある研究の概要については、大変勉強になるほか、貴重な資料であるため、本報告を委員会の中で埋没させないで、多くの人に公表できる形にすべきだと思う。

【委員】
 元来このアンケートを実施する前に、評価をすることが目的でないということを唱っていたこと、またレビュー実施の目的に沿うならば、本調査は公開すべきであるが、公開すべき範囲は、課題ごとの票までだと思われる。

【委員】
 読んでいくと書き振りが、「実用化されている」、「実用化された」、「利用されている」、「解明した」などいろいろな書き振りがあるが、この書き振りについては、特に意味合いはあるのか。

【事務局】
 もともと平成5年度計画の書き振りが「高度化する」などの書き振りになっていることから、それに沿った表現になっている。

【委員】
 あくまで、「本人の申請に基づいて、最小限の字句修正にとどめた」などの記述があればいいと思う。

【委員】
 「した」などの研究が終わったものは、過去形の表現でいいが、現在研究中のものの表現はどうなるのか。

【事務局】
 平成5年度以降研究を開始して、現在進捗中の研究は、「している」、「する」などの表現になっている。

【委員】
 「する」などの表現は、これから実施するといった誤解をうける可能性があるので、表現を考えたほうがいい。

【事務局】
 意見を踏まえて修正を検討したい。

【委員】
 今の指摘の中と関連するが、これより小さいレベルのグルーピングがあれば読みやすいのだが。語尾については本人の責任だから、これについてはあまり言ってはいけないと思う。

【委員】
 キーワード的にまとめていただく方法もある。

【事務局】
 例えば、地盤のデータを集めたとの記述がある場合は地域別にまとめるなどの工夫はさせていただきたい。

【委員】
 CDRを作っていただいて分かり易くできているが、分野毎に検索することはできないのか。

【事務局】
 CDRに入れたものは、元の表を画像としておさめているため、それ自体はキーワードを付けない限り検索はできない。

【委員】
 厚い本については、本日の意見を踏まえて、事務局において編集方法について検討をしていただくほか、巻頭に「アンケート回答に基づき記載した」などの記述が必要である。

【委員】
 概要版は分かり易いが、例えば結論の記述については、厚い報告書についても記載したほうがいいのでは。

【委員】
 むしろ、概要版は解釈として、厚い本は、生データとして区分しておいたほうがいいのでは。だから概要版は、委員会の責任となるので委員の先生方にしっかり見ておいていただきたい。

【委員】
 概要版の記述に「今回の調査では判断できない」などがたくさんあるが、これは研究目的の方向に向いていないということなのか。

【事務局】
 本記述は、回答が極めて少なかったためこのような記述となっている。

【委員】
 そのような場合、研究の到達度が低いと受け止められかねないので、そのあたり表現を工夫していただきたい。

【委員】
 専門の先生方がそういったところを追加していただければありがたいが。

【委員】
 概要版について1.(3)から始まっているのはどうしてか。

【事務局】
 (1)、(2)については、地震の予知や火山噴火予知となっており、別途レビューが行われていることから、今回の調査から除いている。

【委員】
 (1)、(2)は、タイトルだけ入れて、今回の調査の対象外と書いておけば。

【委員】
 (1)、(2)は他でレビューしているので今回は調査に含めないということであるが、地震・火山予知のレビューの結果もこのような形で表されているのか。

【事務局】
 別途、測地学分科会においてレビューされているが、必ずしも防災分野と同じ形はとっていない。

【委員】
 推進方策としては、(1)、(2)を含めた形で策定するのか。

【事務局】
 それを外すか、引用する形で使うのか、井田先生をはじめ別途ご相談させていただきたいと考えている。

(3)防災分野に関する研究開発の推進方策の策定スケジュールについて

 事務局より資料12‐3に基づき説明した後、質疑応答が行われた。主な質疑応答は以下のとおり。

【委員】
 推進方策の成案をまとめていただくにあたって、必要ならこの中から数人でワーキンググループを作っていただいて、事務局と一緒になって策定してはどうか。

【事務局】
 事務局において検討していきたい。

(4)その他

 次回は9月24日(火曜日)に開催することとなった。

以上

お問合せ先

研究開発局開発企画課防災科学技術推進室

(研究開発局開発企画課防災科学技術推進室)