防災分野の研究開発に関する委員会(第6回) 議事要旨

1.日時

平成14年2月20日(水曜日) 13時~15時

2.場所

文部科学省 別館 大会議室

3.議題

  1. 防災分野の研究開発状況調査について
  2. 地方公共団体の防災対策の現状と研究開発への期待について
  3. 大都市大震災軽減化特別プロジェクトについて
  4. その他

4.出席者

委員

 岡田主査、石山委員、井田委員、片山委員、河田委員、島崎委員、大門委員、田所委員、田村委員、土岐委員、林委員、廣井委員、渡辺委員

文部科学省

 研究開発局開発企画課防災科学技術推進室

5.議事要旨

(1)防災分野の研究開発状況調査について

 事務局より参考資料6‐1に基づき説明した後、質疑応答が行われた。
 主な質疑応答は以下のとおり。

【委員】
 国費を使った研究は私立大学も入っており、できる限り調査対象とすべき。

【事務局】
 基本的には科研費、国や自治体から研究委託など研究費を出す側で把握できると考えている。

【委員】
 今回の調査で不十分であれば、第2段の調査で対象にする。

(2)地方公共団体の防災対策の現状と研究開発への期待について

1.青森県

 青森県より資料6‐1に基づき説明した後、質疑応答が行われた。
 主な質疑応答は以下のとおり。

【委員】
 豪雪時には道路と鉄道のどちらが先に止まるのか。

【青森県】
 鉄道は1カ所で交通がストップすれば全て止まるため、鉄道が先。

【委員】
 地元で研究している機関はあるのか。

【青森県】
 弘前大学には工学部がなかったが、近年理工学部ができた。これにより組織的な研究を行っていこうという構想はある。

【委員】
 防災科学技術研究所の支所が新庄と長岡にあり、雪害の研究を行っている。これらと連携すると良い。

【青森県】
 山形や北海道と青森では雪の質が異なるため、研究成果そのままは使えない。雪には3種類ある。北陸に代表される湿雪、北海道に代表される軽い粉雪、青森の雪は降った後で昼間いったん融けて、夜に再凍結する氷混じりの重くて固い雪である。

【委員】
 雪による損失利益はどれほどと考えているのか。統計的に計算しているのか。

【青森県】
 統計的な計算は行っていない。ただ、除雪も需要が発生していることから全てマイナスではない。

【委員】
 雪による損害としては何が一番大きいのか。

【青森県】
 道路被害が一番大きい。

【委員】
 資料によれば農林関係の被害額が土木被害に比べて少ないのではないか。

【青森県】
 冬は農閑期であり、農林業への被害は少ない。

【委員】
 歩道の除雪は誰が行うのか。

【青森県】
 幹線は歩道まで行政が行うが、大型の重機が使えず作業効率が悪いなどの技術的問題や費用が嵩むなどの予算面の問題もあり、完全には手が回らないのが現状。幹線以外の歩道は人力か小型機械等によって住民が行っている。近年は行政による歩道除雪を望む声が年々高まっており、熱融雪が効果的だが、費用がかかるため全部実施するのは不可能。

【委員】
 海外でも同じような状況のところはあるのか。

【青森県】
 ストックホルムや米メーン州等に行った経験があるが、堆積スペースが広いため、除雪だけで排雪の必要がない。排雪には莫大な経費がかかるため、青森県では排雪が年2回位しかできないことから、普段は除雪であり、除雪するたびに路肩や人家の出入口付近に道路から除けられた非常に重い氷の塊が堆積されてしまう問題がある。

【委員】
 自主防雪組織はないのか。

【青森県】
 自分の家のことで精一杯であり、自主的に組織化して対応する余裕がないのが実状。

【委員】
 屋根付歩道を設けるとかの対応はないのか。

【青森県】
 通りすべてが通れるようにしないと実効性がない。

【委員】
 海外に青森のような豪雪地帯で30万人も生活している地域は見受けられず、世界的には不自然な都市である。このような地域で太平洋側と同じライフスタイルは成り立たない。除雪対策によって雇用が生じ出稼ぎがなくなることで地域経済は成り立っているとも考えられ、雪の問題は理工学的理論のみで片付けられる問題ではない。他地域と比較するより、豪雪地域としてのメリットとデメリットを検討して地域計画を考える必要がある。

【委員】
 ハードだけでなく、都市計画などソフトの研究が必要。

2.兵庫県

 兵庫県より資料6‐2に基づき説明した後、質疑応答が行われた。
 主な質疑応答は以下のとおり。

【委員】
 要望については重要なことであり、今後の議論の対象になる。研究情報の一元的提供については、防災分野の研究開発状況調査を実施する考えと同様であると思う。

【委員】
 各省庁間の連携強化については、もっと具体的に言う必要がある。

【兵庫県】
 震度計の問題など、行政の論理は理解できるが、一般住民には納得しにくいようなことがある。

【委員】
 建物の応急危険度判定や罹災証明についても技術的な問題と行政的問題が衝突した事例がある。省庁間の問題を解決するテーマは研究テーマになり得るのか。

【委員】
 行政の問題との意見もあるが、研究テーマにはなり得ると考えている。ある程度の縦割りは必要だろうが、グランドデザインは共通的であるべき。

【委員】
 防災分野では行政サイドに政策科学が必要。

【委員】
 青森県の行政にも当てはまることである。本委員会ではそういう芽が出るような提言をしていく必要がある。

【委員】
 防災に関する情報は、県が一元的に受け止めて住民に説明するべきではないのか。

【兵庫県】
 県が得た情報は住民には咀嚼して説明するようにしているが、専門的な内容であり充分に伝えられないジレンマがある。県でできるだけのことは実施するが、元となる国からの情報の出し方をもっと考えていただけるとありがたい。

【委員】
 ホームページでハザードマップ等情報を知ることはできるのか。

【兵庫県】
 ホームページ上での公開には力を入れているが、利益衡量により全ての情報を出しているわけではない。

【委員】
 危機管理としては内閣危機管理室が、防災は内閣府に防災担当が設置され、以前に比べると省庁連携がうまくいくようになったと思う。広域災害が心配される現在では、むしろ都道府県が連携することが重要であり、兵庫県からリーダーシップを発揮していただけるとありがたい。

【兵庫県】
 広域連携のための法整備はされているが、防災対策の標準化がなされていない。各自治体で防災対策が異なる現状ではうまく連携が図れず、防災対策の標準化が図られれば、非常にありがたい。

【委員】
 防災対策の標準化は「あれば」ではなく、「皆が寄ってつくる」もの。

【委員】
 国が標準をつくることも大切だが、都道府県の方が広域的に取り組んで行くべきである。

【委員】
 今の議論はどちらも現実的でない。防災を実務的に推進するのが都道府県とすれば、都道府県が実施したことを記録・検証する実証的な研究を行い、社会現象としての災害への取り組みを積み上げた上で、各都道府県の共通事項があれば協力することにし、国も補完していくべき。そのような取り組みなしに防災対策の標準化を求めるのは、現状と理想に乖離がある。

【委員】
 都道府県のエンドユーザーが住民になっていないことが乖離の原因。国の行政のエンドユーザーが国民になっていないのと同じ。

【委員】
 省庁は機能によって設置されているが、都道府県は空間の上に機能が併存している。災害はさまざまな分野で空間的に展開することから、都道府県がこのような総合的な取り組みについてのbreak throughとなり得る。

【委員】
 人と未来防災センターに入居する各機関が定期的に集まって協力関係を構築すると非常に良い取り組みになる。

【委員】
 投資効果については旧建設省の関係団体で簡単なものを実施したことがあるが、できないことではない。

【委員】
 本日の議論を研究開発基本計画にどう盛り込んでいくか議論していきたい。

(3)大都市大震災軽減化特別プロジェクトについて

 事務局より資料6‐3に基づき説明した後、質疑応答が行われた。
 主な質疑応答は以下のとおり。

【委員】
 公募内容に記述されていないものは対象外なのか。

【事務局】
 そうである。プロジェクトとしてある程度方向性を持たせたものとする必要がある。

【委員】
 RR2002のどこまでがオープンになっているのかが分からない。

【事務局】
 参加研究者はオープンだが、研究内容は絞り込んでいく。また、コア部分は焦点を絞った研究を実施し、コア部分以外は自己の研究と関係性があれば公募してもらい、その成果をコアにインプットしていく形に持っていきたい。

【委員】
 「被災者救助等の災害対応戦略の最適化」と「地震防災対策への反映」を当面一体的に実施することの説明が不足。

【事務局】
 「地震防災対策への反映」は他の研究成果がある程度出てこないと実施できない。また、「被災者救助等の災害対応戦略の最適化」の内容と重複する部分があり、当面は「被災者救助等の災害対応戦略の最適化」と一体的に実施する。

【委員】
 外力が分からなければ被害が分からない式の研究だけでなく、被害シナリオから入る研究も考えるべき。

【事務局】
 研究アプローチとしては、「被災者救助等の災害対応戦略の最適化」と「地震防災対策への反映」は密接につながっている。また、「地震防災対策への反映」は他のテーマの成果を踏まえて実施することとなる。

【委員】
 例えばE‐ディフェンスができたらこのような実験をして欲しいというのは被害サイドから言っていく必要がある。

【事務局】
 そのようなことも視野に入れている。

【委員】
 1年目からはそのような議論を行うことになると思う。ただし、統合化の議論はある程度成果がでないとできない。

【委員】
 「被災者救助等の災害対応戦略の最適化」と「地震防災対策への反映」を一体的に実施する場合、研究体制を組む際に不自由さはないか。

【事務局】
 「被災者救助等の災害対応戦略の最適化」はシーズ側のロボット研究者とニーズ側の社会科学分野のマッチングが必要となるが、同様のことが「地震防災対策への反映」にも言えるため、一体的に実施することとしたい。

【委員】
 「被災者救助等の災害対応戦略の最適化」は異なる分野の研究者が一体的に実施するのは有意義。

【委員】
 各テーマは理学、工学、今後の成長分野の仕分けがあると考えている。各テーマの必要性を明確に記述しないと、手続き的な資料だけでは議論しずらい。

【事務局】
 次回の委員会で具体的な話を出しながら議論させていただきたい。

【委員】
 議論できる形で出していただきたい。決まっているとして諮られたら、委員会はいらないことになる。

【委員】
 「地震防災対策への反映」にある防災対策の統合化研究は、今後の一大テーマになるものと考える。その基礎は他のテーマの研究成果が出てから実施するのではなく、当初から研究者を公募するように上手く記述する必要がある。

【委員】
 シミュレーションをどう捉えるかによるが、「被災者救助等の災害対応戦略の最適化」の最適化研究と「地震防災対策への反映」の統合化研究はかなりリンクする。

【委員】
 他分野ではRR2002を分野の命運をかけたプロジェクトと考えているとこともある。防災分野においても予定調和とすべきではなく、できるだけオープンに実施すべき。

【委員】
 RR2002はトップ30より予算規模が大きく、大学に与えるインパクトは強力なものがある。その認識は持っておく必要がある。

【委員】
 資料にある関連した国際協力とは何か。

【事務局】
 このプロジェクトの中ではEE‐Net以外直接国際協力を実施するものではないが、防災対策の反映などについて途上国支援等も含めた国際協力への発展性があると考えている。

【委員】
 「地震防災対策への反映」を軽視するようにも受け止められる表現は修正すること。標準ガイドラインは良いことだが、海外への適用まで考えているのか。

【事務局】
 国際的な適用の議論が出るかも知れないが、まずは国内での適用の議論になると考えている。

【委員】
 標準ガイドラインを作成することにより、自治体の防災対策に活用してもらえれば良いと考えている。

(4)その他

 次回は3月20日に開催することとなった。

以上

お問合せ先

研究開発局開発企画課防災科学技術推進室

(研究開発局開発企画課防災科学技術推進室)