資料52-5 委員会におけるこれまでの議論の概要

1.理念及び方向性

 

○ 我が国の経済・社会の継続を可能とする国づくり

  • 大規模自然災害(地震・水害・火山噴火)を克服して、社会の継続性が保たれる災害対策を行う。
  • 巨大地震や気候変動にともなう巨大自然災害の予測・対策など、国力を維持発展させるための基礎情報構築と対策が急務である。
  • 超巨大災害による国家の破綻を回避するために、先端研究のみ進めるのではなく、国を挙げて抜本的な災害軽減の努力が必要である。
  • 破局的大災害の災害像を同定し、明快な達成目標を掲げ科学技術の推進に取り組む。
  • 国全体の状況を考慮した持続可能な社会システム創成に寄与する科学技術の発展を促す。
  • 都市が壊滅するような状況に対応できるように新たなフレームワークで検討する。
  • 災害予知のみでなく、国家存亡の危機につながるような大規模災害への対応力を確実に強化する。

○ 安全・安心な社会の構築

  • 短期的な経済効率重視の視点から、安全・安心な社会の構築を最重要視したパラダイムの変換を図る。
  • 安全・安心が実感できる社会を実現する。全ての地域・国民が活用できる防災科学技術を推進する。
  • 具体的な数値目標を示し、国民に理解できるように成果を示して安全安心サービスを提供する。
  • 各人の自助努力で実行可能な自律分散型の対策も立案する。

○ 国際社会への貢献

  • 国際防災ネットワークのリーダーを目指す。
  • 防災科学技術の発展や技術協力を通じて国際社会への貢献を行う。
  • 防災技術の国際協力で貧困と災害に対する脆弱性のスパイラル的な進行を阻止する。
  • 関係諸国の事情に応じた支援を行うべきである。
  • 監視・予測・情報伝達システムの開発においては、アジア地域での展開を考慮したものとする。

○ 防災科学技術研究のあり方

  • 災害時に外部の協力を得なくても致命的な状態にならず、また適切に防災システムが作動するように冗長性を持たせ、信頼性を向上させる。
  • 災害危険要因と災害抑止要因に対する個々の研究と関連研究の視点が必要である。
  • 地震・大雨の被害状況を把握する技術は進展しているので、それに迅速性・正確性・頑健性を持たせる研究が必要である。
  • 策定した対策をもとに、災害発生時にも、早期に事業再開を行えるように、共有する情報の迅速性・正確性・頑強性を向上させる。
  • 予測技術の高度化と効果的・効率的な災害軽減技術の開発が必要であり、2つのものを融合させながら、継続的に発展させる。
  • 被害抑止力の向上と復旧時間の早期化による総合的な防災能力の向上を図る。
  • 災害時の資源投資、危機管理体制、復旧・復興の技術的方法を一連の科学技術として捉えて、総合的にバランスよく研究を進める。
  • 局地的・地域・地球規模ごとの天災や人災の発生メカニズムについての体系的な知を確立する。
  • 自然現象の現在の状態を静的に知るのではなく、動的な変化をとらえ、自然現象の変化を詳しく観測するだけでなく、素早く入手する。

○ 出口を見据えた研究の実施(成果の社会還元)

  • 災害に強い社会を実現する具体的なアウトプットを提供する。
  • 研究成果の社会還元や企業の商品・サービスを普及させるための支援体制を構築する。
  • 防災科学技術を国民生活や社会システムへ導入するプロセス研究を行う。
  • 基礎研究から実用化に至るイノベーション・プロセスの各段階における資源配分について、研究開発の成果を享受する側の視点から目的に応じてバランスのとれた資源配分を行う。
  • 成果の社会還元やイノベーションの視点を重視し、ユーザー側の視点を取り入れつつ展開する。
  • 防災科学技術研究の体系化と実用化に向けた研究を行う。
  • 今後10年を見据えて、中長期的な観点からロードマップを作成し、全体的な位置づけや数値目標を明確にする。
  • 国民生活に密着した防災科学技術の振興を行う。
  • 社会状況の変化や個人・地域特性・社会活動を考慮し、災害弱者や現場重視のユーザー視点で、具体的イメージを提供するなど活用しやすい形の国民生活に立脚した対策技術の実用化を進める
  • 地域特性や災害史を踏まえた地域の防災対策に資する研究を進める。
  • 実践者を明確にし、国民一人ひとりが日常行動から非常時にスムーズに移行し、身近な道具として研究成果を活かし、戦略性・計画性・継続性をもって総合的防災能力を向上できるような環境を整備し、国として総合的に推進する。
  • 科学技術に基づく政策提言や政策実現への貢献を念頭に研究開発を行う。
  • 技術開発(ハード)と仕組み(ソフト)を結びつける実用化研究の場を創設する。
  • 先端知識・技術を活用した技術・イノベーションの成果を活用した対策とする。
  • 期限を切って新鮮な対策を打ち出す等、費用対効果を勘案して、効果的・効率的に進める。
  • PDCAサイクルの中で課題を徹底的に洗い出し、一層の工夫を施し対策へ反映する。

○ 国民への情報提供

  • 人が正しく災害を理解し、必要に応じて正しく判断・行動するための取り組みの推進が必要である。
  • 人々が災害を適度に恐れ、災害への備えの必要性を認識し、行動に移すことができるようにする。
  • 自然災害を正しく認識し、防災情報を誰もが共有しうる社会を目指し、災害弱者のいない社会、高い防災意識をもつ社会を構築する。
  • 地理空間情報技術を取り入れた防災技術の研究開発を進め、災害認知型社会の構築と国民への認知を進める。
  • 住民のさらなる情報共有を目指し、ニーズを踏まえたシステム開発を推進する。
  • いつでもどこでも、わかりやすく、具体的・実用的なアウトプット常時情報配信し、研究成果を可能な限り社会還元する。

○ 異分野との連携・防災科学技術の総合化

  • 理学・工学・社会科学連携による研究開発の推進とブレークスルーを導出する基礎的萌芽研究の支援を行う。
  • 理学・工学・社会科学の連携が期待される研究連携マップを作成し、具体的研究課題を設定する。
  • 医療福祉や環境など幅広い分野の連携による防災科学技術の実用化を推進する。
  • 自然科学的観点からだけでなく、工学的、社会科学的観点から、地球環境変化を含めた地球規模的な視野から局所的特性まで多面的に評価して分析する。
  • 専門化・深化から複合性・多面性を有する科学技術を推進させる。
  • 防災に関する基礎科学の深化と総合化による実証を推進する。
  • 防ぎきれない自然ハザードを回避し、被害を軽減する知恵を総合化する。
  • 先端的な知識や新技術を活用した防災と伝統的な知識や旧技術による防災をミックスしたものを先進的な防災科学技術として位置づける。
  • 防災分野の研究は総合学問として位置づけ、国の責任においてその実現・確保のために総力を挙げて取り組む。
  • 地域コミュニティの促進と災害対応業務の効率化を進めるために、行政や企業と研究者は共同で研究を進める体制を作る必要がある。
  • 民間と連携し、その権利を確保しつつ、行政や個人の合意形成を経て、役割分担を明確化し、政策として進められる対策とする。
  • 防災科学技術研究の成果を社会に還元するための研究分野を融合させた体制作りを行う。
  • 基礎研究から実用化までのイノベーション・プロセスの推進と成果の社会還元を産学官連携で進める。
  • 防災分野の研究開発は、科学技術施策や経済財政施策、防災施策と一体化することが必要である。
  • 自然災害のみならず2次発生する人災の影響や、環境へも配慮するなど、学際的、総合的観点からの対策とする。
  • 事前予見される危険情報をもとに、被害抑止、脆弱性の低減、防災行動誘発、復旧・復興にいたる直後から復興までの総合的防災対策とする。
  • ピラミッド型でない、官庁間連携、分野を超えての連携、各種学会との連携、民間開発支援、大学連合等を行いやすい環境を整備する。

○ 防災分野と環境分野の連携

  • 社会構造や自然現象の変化に呼応した防災科学技術を推進する。
  • 地球環境・生態系の保護の観点からの防災を考える。
  • 気候変動にともなう災害環境変化に関して先導的かつ客観的な観測を進める。
  • 気候変動がもたらす災害の究明を行う。
  • 自然環境の保全と災害抑制の関係性についての研究を行う。
  • 自然災害発生後の自然環境回復のための取り組みを行う。
  • 防災対策の推進と地球環境保護を融合した防災科学技術の推進を行う。
  • 地球気候変動による災害の変容に対する防災・減災のための対策研究を推進する。
  • 気候変動による災害の変容により地域が築いてきた防災力を超えた災害への対応に資する研究を行う。

○ 人材・教育・研究体制

  • 現場感覚を有し他領域にについて深い理解力をもった複眼的な視点を持った研究者を養成する必要がある。
  • 防災研究を総合的に推進する中核的な機関が必要である。
  • 防災に関する行政や研究支援、開発支援のために省庁の連携を強化する。
  • 国家存亡の危機にながる大規模地震に対して、国が一体となって研究成果が生かせる研究体制を構築する。
  • 社会構造の変化や危機回避能力低下など時代の趨勢を勘案して柔軟な姿勢で研究を推進する。

2.今後の防災科学技術の重要課題

 

○ 自然災害全般に関する課題

  • 種々の災害発生に関する短期、中長期予測を行い、ハザード情報としてまとめる。
  • 点としてではなく、面的・空間的に、また動的に分析し、災害発生予知や高精度な定量的予測に結びつけるように進める。
  • 出来る限り現実に近い状況で実験を実施し、正確な現象把握に努める。そのために、高精度な情報を得る実験施設の整備を進める。
  • 災害が発生する地域や構造物の被害、人間の対応行動を推定し、リスク情報としてまとめる。
  • リスク評価関連の実用化研究を行う。
  • 災害過程全般に関わる一連のモデルの構築を行う。
  • 事業継続能力向上のための新しいリスク評価方法を開発する。
  • 国土構造と社会構造の災害脆弱性の再度の徹底的な洗い出しと対策を行う。
  • 地理空間情報技術を活用した防災科学技術研究を推進する。
  • あらゆる自然災害に対して建造物の脆弱性を改善する研究開発を進める。
  • 災害予測研究等の基礎的な研究を推進する。
  • 激甚災害を引き起こす地震・火山の周期性、気象災害・水災害の頻発化、気候変化による災害の慢性化に対する予見的・予防的な防災科学技術の研究開発を推進する。
  • 共通基盤的な観測・実験施設の長期にわたる安定的運用を実現する。
  • 現象把握にあたっては、空白点を生じないと同時に、局所的現象を調査するための稠密な観測を行い、客観的にかつ持続的に観測を進める。そのために信頼性のある最先端技術を用いた観測網の整備を実施する。

○ 地震・津波災害に関する課題

  • 巨大地震を発生させるアスペリティのモニタリングを行う。
  • 緊急地震速報を高度化させる。
  • 地球の中を覗くための技術(地震波トモグラフィー、人工震源開発等)を進める。
  • 地震が発生している中で、人はどのような行動が可能で、どのような行動が最適なのか研究を進める必要がある。
  • 地下構造の状態や変化を監視するシステムとそれらのデータによる定量的予測技術の開発を行う。
  • 海底地殻変動観測網の構築によりプレート境界型地震の発生ポテンシャル評価の高度化を図る。
  • 切迫している巨大地震に対して、中期予知や地震発生の早期検知技術の向上と発生メカニズムの解明を推進する。
  • 巨大地震に対する研究のための地震観測網を構築する。
  • 海底津波観測網の構築により津波の予想精度を高める。
  • 危険地域を対象とした地震・津波の監視・予測システムの開発を行う。
  • 地殻変動モニタリング等を進め、災害発生の前兆現象を把握する。
  • 地殻構造モデル、地下構造モデルを構築し、国土情報データとしてとりまとめ、災害発生の仕組みの解明に役立て、さらに災害発生時の被災状況を把握するようにする。

○ 地震・津波災害以外の災害に関する課題

  • 全国の活動的な火山における噴火シナリオとハザードマップを作成する。
  • 大規模カルデラ形成噴火(破局噴火)の研究を行う。
  • 局地的な大雨や竜巻、マイクロバースト等の突風、雷を観測・監視するシステムを開発する。

○ 情報システム等に関する課題

  • 国民がいつでもどこでも受信できる災害情報伝達システムを整備する。
  • 国民が各自の判断で防災に必要な行動がとることができるよう、防災・減災に必要な情報を全国民に瞬時に伝達するシステムを構築する。
  • 災害弱者が利用可能かつ地域・住民特性に即した情報形式と伝達方法の研究を行う。
  • 最新の情報処理・情報伝達技術に基づき、災害を引き起こす可能性のある自然現象の観測・監視・予測情報を全国民に配信するシステムを開発する。
  • 地震・火山噴火・洪水・地滑り等のハザードマップの精度を向上させると同時に、それらを重ね合わせて住民にリスクを正しく理解できるように可視化を図る。
  • 国民への研究成果の還元が実感できるように平時に利用している携帯端末を利用したユビキタス型災害後対応システムを構築する。
  • 自己責任や自助努力に根ざした防災力向上に結び付き、住民が我が事に結びつけて安全・安心を考えることを可能とする情報提供システムを開発する。
  • 防災科学技術の推進と環境問題解決を融合・支援するためのデジタル情報基盤を構築する。
  • スーパーコンピューターによる巨大災害の統合シミュレーションシステムの構築により、巨大災害の実態の見える化を図る。
  • 散在する災害データベースの見直しを行い、統合化手法につい検討する。
  • 先端の情報伝達技術を用い様々な即時情報共有出来るような研究を進める。
  • 重要な災害情報の開示とデータの共有化を可能とする災害情報データベースの統合化手法の提案を行う。
  • 観測された情報は、迅速に伝達し、一元的に集めて管理し、様々な情報を種々の分野で有効活用できるよう積極的に情報共有する。そのために、冗長性・信頼性のある伝達技術を用いた情報伝達網、また集められた情報を体系的に整理する最新情報処理施設の整備を進める。
  • 被災直後の状況把握・情報提供を確実なものとするために衛星等による自然災害観測・監視技術の開発を進める
  • 地図情報システムや衛星技術を災害現場や防災訓練等に積極的に投入する。
  • 準天頂衛星システム等の整備により国産衛星により測位システムを構築する。

○ 事前対策に関する課題

  • 防災研究の成果を社会システムに導入するための手法の検討を行う。
  • 防災技術が社会においてコンセンサスが得られる仕組みの検討を行う。
  • 火災旋風を出さない設備の整備と消防機能強化のための研究を進める。
  • 災害時における生命維持のための防災用品の高度化と普及を図る。
  • 建築物・土木構造物の安全性を確保するための基礎・地盤評価、安価・簡易は耐震補強技術を開発する。
  • 屋外で通行人を脅かさない建築部材の開発を図る。
  • 国民一人一人を防災行動に誘導する方法に関する研究を進める。
  • 地震や津波が発生した際の行動指針の検討と普及を図る。
  • ソフト面の防災対策については、課題や既往研究による知見が体系的に整理されていないので、全体整理を通じて方向性の確認を行うべきである。
  • 効果的な事前対策、応急対策、防災まちづくりに関わる研究を進める。
  • 耐震設計・補強、インフラの防災性といった事前対策を策定する。 

○ 災害後の復旧・復興に関する社会科学的な課題

  • 復旧・復興対応における避難生活支援モデルや経済被害波及モデル、状況判断時に意志決定システムの構築を行う。
  • 効果的な応急対策やできるだけはやい事業再開をどのように可能にするのか研究を進める。
  • 防災投資経済学や防災経済学を促進する。
  • 巨大災害時の高機能高密度相互依存社会における災害連鎖のシミュレーション技術を確立する。
  • 災害対応力評価と災害時の優先順位付け(トリアージ)に関する研究を進める。
  • 少子高齢化社会における世代間、地域間の災害対応共存社会に関する研究を進める。
  • 様々なレベルでの復興計画、事業継続計画等を策定するための技術支援を行う。 

○ 研究体制や人材に関する課題

  • 高い事業継続能力を有する人材を養成する。
  • 地域防災を考えるリーダーを養成する。
  • 専門分野以外の知識を身につけるような学際的教育等にて、中長期的視野、国際視野をもったコーディネート力のある人材を育てる。
  • 環境・防災分野で科学技術外交をリードする国際エリートを養成する。
  • 研究者の基礎学力を向上するとともに、キャリアパスを明確にし、研究者の受け皿を広げる。
  • 人材活用や育成に関しては、シルバー世代の研究者・技術者の活用、民間の技術者を研究者に戻すようなキャリアパスを作る。
  • シルバー世代や民間技術者、留学生が、積極的に、実践、研究開発に担えるような環境作りを進める。
  • 民間研究者を有効活用する。
  • 初等教育と連携し、防災教育を様々な過程に組み入れる。
  • 地球が好きになる科学教育の一環として、ハザードマップ等を用いた防災教育を展開する。
  • 生活に密着した防災意識を持つことができるように国民性を育成していく防災教育ソフトを開発し、普及させる。
  • 夢のある学問として、アウトリーチ活動を行う。

○ 国際貢献

  • アジア域圏内の大学や各都市の防災研究機関の連合組織やマネージメント組織を構築する。
  • 巨大地震に対する研究のための国際的な地震観測網を構築する。
  • 地域特性に応じて検討すべき点と他地域・他国でも共有できる点を類別し、国際的に通用する地域減災モデル作りを推進する。
  • 国際的視野をもった防災分野の国際的なエリートを養成する。
  • 防災科学技術に関わる各種枠組みを推進するためのワークショップ等を開催することや、国際枠組みと連携で国際交流を強化する。

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課防災科学技術推進室

(研究開発局地震・防災研究課)