【資料1-1】大型放射光施設評価作業部会(第4回)議事録(案)

平成25年6月12日

【福山主査】
 定刻よりまだ1、2分ございますけれども、皆様、おそろいですので始めさせていただきます。今日は梅雨の真っただ中、大変蒸し暑いところですけれども、最後までお元気で活発な議論を是非どうぞよろしくお願いいたします。
 このワーキンググループ、先月末に予定されておりましたが延期され、本日が4回目になります。本日、南波委員が御欠席ということ、御連絡いただいております。
 会議を始める前に、まず事務局から過日発生しましたJ-PARCでの事故に関連して御報告いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【原室長】
 量研室長の原でございます。5月23日に御存じのとおり、J-PARCで放射性物質の漏えいと、あと作業に当たられていた方の内部被ばくという事案が発生いたしました。その関係で前回予定されておりましたこの評価部会、急きょキャンセルとさせていただきました。量研室全体がその対応に当たらせていただいていた関係で、委員の皆様方には急な延期ということで大変な御迷惑をお掛けいたしましたことにまずおわび申し上げます。どうも申し訳ございませんでした。
 事故そのものは、今、原子力規制庁の方で事故原因の究明ということをやっているところではございます。ただ、そのJ-PARCを監督する文部科学省としては、放射性物質を外部に漏えいさせたということ、それから、関係機関に報告の遅れがあったという、この2点については、実際に研究なり現場の管理に当たられている方の原子力安全に対する意識の低さでございますとか、あとは安全管理体制の不備が招いたものではないかと考えているところでございます。今、事故そのものの技術的な原因の分析については原子力規制庁の方で検討の作業を進めているところでございますけれども、文部科学省としては先ほど申し上げたような観点から、同種の、特に金属ターゲットを使った実験を行う加速器施設を所有している文部科学省関係の機関、それから、外部の多数の利用者が見込まれる、今回、御評価の対象となっておりますSPring-8ですとか、あるいはSACLA、それから、分子研のUVSORという放射光施設につきまして改めて安全管理体制の徹底、それから、安全に対する意識を高めていただくというところをお願いしているところでございます。
 SPring-8につきましても、放射光施設ということでありますので、今回、J-PARC事故の直接の原因となったようなことが起きる可能性は低いかとは思いますけれども、いろいろな、今後事故が起きたときに、それに対する対応をきちんととっていただかないと社会に与える影響、ひいてはその社会に与える影響から研究自体がうまくいかなくなるということも考えられますので、このようなことについてはSPring-8側にも徹底していただくようにということを我々としてもお願いしたところでございます。このような対応をとっております。また、適当な段階でJ-PARCの事故そのものについては、この委員会の場でも適宜御報告させていただきたいと思っておりますけれども、このような次第で前回のこの作業部会、延期させていただき、急きょ延期することになったということにつきましては、大変申し訳ございませんでした。どうもありがとうございました。
【福山主査】
 どうもありがとうございました。御対応、大変だったと思います。
 山田さんいかがでしょう。
【山田委員】
 私、KEKの一員として今回のハドロンの事故に関して非常に責任を感じております。社会の信頼回復のために原因究明と今後の対策に対して、KEK、それから、JAEA、J-PARC、全員が一丸となって今取り組んでおりますので、どうか温かいあれで見守っていただければ幸いです。本当に今回は申し訳なかったと思っております。どうもすみませんでした。
【福山主査】
 ありがとうございました。大変だと思います。御対応、どうもありがとうございます。なお、安全管理体制について、これは言うまでもないことでございますけれども、大変重要な事故ですので、是非入念な再確認、よろしくお願いいたします。
 それでは、本日の審議に入らせていただきます。その前にまず事務局より配付資料の確認をお願いいたします。
【神部補佐】
 事務局より配付資料の確認をさせていただきます。議事次第にございますとおり、配付資料としましては資料1-1から資料1-5、また、資料2-1から資料2-4、また参考資料としまして前回にもお配りしているものと同じですが、参考1、2、3、4を資料として配付させていただいております。欠落等ございましたら、事務局までお声掛けください。
【福山主査】
 どうもありがとうございました。
 それでは、これから順次意見交換したいと思います。前回の議論概要及び今後の進め方について、事務局よりまず御説明をお願いします。
【神部補佐】
 それでは、まず、資料1-1をごらんください。こちらは既に御確認いただいているものですが、前回会議の議事録の全体版でございます。もし修正漏れ等ございましたら、会議終了後までに事務局まで教示ください。
 続きまして資料1-2でございます。こちらは前回にもお配りした形式でございますが、平成19年、前回のSPring-8評価で指摘された事項を左に、その対応状況を右の欄に記入しているものでございます。今回の中間評価の中で報告、説明があったものを随時この様式に更新していくといった資料でございます。前回、第3回のときに説明がありました内容につきましては、黄色塗りで塗りつぶしているセルのところに追記してございます。また、本日説明される事項につきましては、赤字で書かれているところでございます。こちらの方を本日の議論のときにも参考として使用していただければと思います。
 続きまして、資料1-3でございます。こちらは前回の議論の内容をトピックスとしてまとめたものでございます。簡単に内容を御説明させていただきますと、まず、2.のビームラインの整備・高度化につきましては、高度化についてSPRUCと一体的に議論を進めていく仕組みが必要であるといった御指摘を頂いてございます。また、3.利用者支援につきましては、キャリア形成の面からポスドクにユーザー支援を行わせるといったことはやはり余り良くないのではないかといったことで、この見直しを検討すべきであるといった御指摘。また、スタッフの不足への対応という意味では、パワーユーザーの拡大というのも有効であるということで検討すべきではないか。また、パワーユーザーにつきましては、その選考の透明化やパワーユーザーの評価制度を整理した上で、パワーユーザーが所有する装置、保守の高度化に関する予算を手厚くするなど、経費の面を含めて戦略的に行うべきではないかといった御指摘を頂いてございます。
 そのほか、5.で利用研究課題の選定につきまして、一つの課題に多くの実験が含まれるケースや、その施設やビームラインの高度化によって時間当たりに得られるデータ量が年々増しているといったことを考慮すると、その利用が停滞しているとは必ずしも言えないのではないかといった御指摘を頂いております。6.の施設運用・運転につきましては、SPring-8として設置者と登録機関が一体となった活動、パターンの仕組みが必要ではないのかといった御指摘を頂いてございます。また、2ページ目、裏面にございますか、SPring-8の国際評価などにつきましては、こちらの方も理研とJASRI、その設置者と登録機関が一体となって評価を行うことで、そのSPring-8全体としての研究のハイライトといったものを社会へ公表していく、評価を受けて公表していくといったことが必要ではないかといった指摘を頂いてございます。
 また、7.の先端研究拠点、人材育成の件ですが、若手又は大学院生を教育するに当たって、このSPring-8というのは非常に重要な有効的なものであるということで、今まで大学院単位で個別に行われてきたカリキュラムを連携させながら、実地研修を含めた教育活動ができる仕組みを作るべきではないかといったことを頂いております。その他でございますが、施設側からユーザーコミュニティへの情報開示、意見交換をより積極的に行っていくことが必要である。また、将来計画につきましては、理研、JASRIと利用者が定期的に協議を行う場や、12条課題で行われた研究内容を利用者にフィードバックすること、また、SPring-8の選定課題、課題選定委員会についてSPRUCと連携していくことといったことの重要性についての御指摘を頂いているところでございます。
 続きまして、資料1-4でございます。こちらが今後、本日を含めまして今後の作業部会の進め方のスケジュールでございます。本日が第4回ということで、25年6月15日の本日の議題となっております。また、後日でございますが、来週月曜、6月18日にここで報告書の案というものを提示させていただきたいと思っております。そこで御議論いただいたものを踏まえまして、最終的には6月25日の第6回の場でその報告書をまとめていきたいと考えてございます。
【水木委員】
 月曜日って言われたけれども、火曜日ですね。
【神部補佐】
 火曜日ですね。すみません、失礼しました。6月18日、そうですね、火曜日ですね。
 最後でございますが、資料1-5でございます。こちらにつきましては第3回と同様に評価の項目及び視点についてまとめたものでございます。本日の議題分の項目につきましては、その項目のところを黄色で塗らせていただいてございます。また、これまでの議論を踏まえまして、追加すべき項目及び視点について赤字で記載させていただいてございます。
 以上でございます。
【福山主査】
 どうもありがとうございました。
 いかがでしょうか、資料、御確認ください。資料1-3、改めて拝見していろいろコメント、御意見いただいております。それが資料1-2に、いろいろな部分に反映されている。1-4はスケジュール、これは日程確保、この際、改めてよろしくお願いいたします。1-5、2枚目、6、7、8が今日の意見交換のテーマだということです。よろしくお願いいたします。
 それでは、本日の議題、理研、JASRIからのプレゼンをお願いすることになります。まず、施設の運用・運転について、高田センター長の方からお願いいたします。
【高田副センター長】
 本日、センター長の石川が海外へ出張しておりますために、私、副センター長の高田が御説明申し上げます。
 まず、資料2-1の施設の運用・運転についてというものをごらんください。この施設の運用・運転につきましては、その1ページ目、特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律に基づいて行われております。これは先端大型研究施設を整備し、広く民間企業も含めて研究者等の利用に供するとともに充実した支援体制を構築するための法律であります。これは文科省の共用の促進に関する基本的な方針の策定の後、その実施計画の認可を理化学研究所に行います。理化学研究所はスパコン、SPring-8、SACLAの建設、維持管理、そういったものをやっておりますが、このSPring-8は理化学研究所がやっております。
 一方で、その実施計画の認可、業務規程の認可というものを登録機関、今はJASRIでございますけれども、そこに行うということで、登録機関はそこにあります利用者選定業務と利用者支援業務というものを行っております。それの諮問機関として選定委員会というものがありまして、この理化学研究所と登録機関が連携して、この施設の運用・運転を行っていくということになります。理化学研究所は利用者、民間、大学、独立行政法人、こういったものの基礎研究から産業利用まで、幅広い利用についてそのニーズを吸い上げ、登録機関の方は利用者の選定業務等を通して、その応募をしたものに対して公正な課題選定、情報提供、研究相談、技術指導というものを行って、その研究者が、SPring-8を広範な分野の研究者が活用できるようにしております。
 それでは、2ページ目をごらんいただきまして、共用促進法に基づくSPring-8の運用体制は具体的にどういうふうになっているかということでございます。この共用促進法の目的というものを達成するために、理化学研究所、これはSPring-8の設置者として、共用施設の建設をやっておりますけれども、この共用施設の維持管理、運転、専用施設への放射光を提供するということのこういった業務につきましては、JASRIの方へ委託をしております。JASRIの方は利用者促進業務を行っております。これは先ほど申しました選定業務、支援業務でございます。この運営体制をきちんとやっていくために、この理化学研究所とJASRIはSPring-8運営会議というものを毎月開催しております。これは共通の理念、経営理念の下に適切な連携協力を図るためでございまして、その運営に関わる諸事項を審議、報告することになっております。
 実際には、これを行うためにJASRIと理化学研究所の間で協力協定を締結し、一体的な組織運営を行っております。このSPring-8運営会議の下に高度化計画検討委員会というものがございます。これは主には利用収入などの使い道として、そういう高度化を行っているというようなことも含めてやっております。
 3ページ目でございます。今度は施設者と登録機関の連携の仕組みでありますけれども、高度化計画検討委員会というのを先ほど申し上げました。これをもう少し詳しく申し上げますと、これは両方JASRI、理研で構成する、委員を出して構成をしております。一体的な判断の下、海外動向を踏まえた高度化というものを推進しております。また、加速器系のビーム安定化、クライオアンジュレータの開発など、そういう利用者への安定かつ高品質な放射光の提供、時分割測定の実現やナノビーム化による利用手法・実験対象の拡大に関するR&Dを行って整備をしております。高度化の方向としては、今のところハイスループット化で、高分解能化、微弱信号への対応という三つの要素を中心に行ってきました。
 共催実績でございますけれども、ユーザー向けには、そこにありますようなSPring-8シンポジウム、高度化ワークショップ、SACLA利用ワークショップというようなものを開催しております。普及啓発活動につきましては、シンポジウム、市民公開講座というものを理研とJASRI一体となって開催しております。人材育成につきましても、SPring-8の夏の学校、AOFSRRのケイロンスクール等々のサマースクール的なものを開催しております。
 国際協力に関しましては、日英の放射光産業利用ワークショップ、これはダイヤモンドとSPring-8で共に産業利用ということを目指しておりまして、そういった関係者の間で意見交換を行ったり、情報交換を行ったりしております。これはSPring-8建設当初から行われているものでありますが、世界にあります3大放射光施設SPring-8、ESRF、APS、これで3極ワークショップを開催しておりますが、前回よりそのプラスワンとしてDESY、ここが放射光の利用を始めましたので、それを加えた3極プラス1ワークショップというものを開催して、お互いのその情報交換、協力についての議論というものを行っております。
 ちなみに、この8月にまたアメリカのシカゴ、APSで開催されることになっております。施設者と登録機関の連携につきましては、国際協力についても行われております。そこの地図に示されましたのは、理研、JASRIが共にMOUを共同で締結をしているものでございます。ごらんになって分かりますように、まだブラジルは行っておりませんが、ほとんどの大陸での締結を行っております。ここの※のところに新たにSOLEILとのMOUを締結予定となっておりますが、先日の日仏の会合がございまして、そこで既に締結を終了しております。こういうふうに海外機関との協力協定、これは理研、JASRI、一体的な運営の下、三者協定という形で締結をしています。
 続きまして、利用収入の活用でございます。この利用収入につきましては、理研、JASRIが構成しております高度化計画検討委員会において、高度化案件について検討を行いまして、高度化計画をその利用収入を基に進め、利用者にその成果を還元しております。そこのグラフに利用料収入の推移というものがございます。大体、多い年もございますが、3億円前後で推移をしております。具体的な例としましては、蓄積リングビームの性能改善、これはエミッタンスの改善というふうになっております。
 こういったもの、非常にお金の掛かる話ではございますけれども、これによりまして非常にビームの幅が狭くなって、精度の高い測定が可能になっております。特にこのナノアプリケーションということ、ナノビームを作り出す上でも非常に重要な性能となっておりまして、ユーザー全体にベネフィットを与えているという成果の一つでございます。分かりやすいところでは、トップアップ運転とか、そういったものもこういった利用収入を活用して実現されております。現行の料金体系では偏向電磁石とアンジュレータを一律に扱っておりまして、ビームラインごとの差異は設けておりませんが、この偏向電磁石とアンジュレータでは光の輝度が異なります。今後はそういうフォトン数の差、性能の差を考慮した料金設定を検討する必要があるのではないかというようなことも考えております。
 そして、施設運転委託の見直しという点も、ここ24年度から進めております。このSPring-8の運転委託につきましては、行政事業レビューでの指摘を受けまして公認会計士など外部有識者による検討委員会を設置しております。そして、総合的な評価を実施しました結果、業務を再編成し、23年度、24年度に一部内製化しつつ、契約を分割し、競争的環境の強化を図っております。平成22年度、59.3億円であったものを例えば施設の建屋・設備、これの日常点検業務を外に出して、更に放射線管理業務で関連施設の建屋・設備、運転等の保守、そういったものも外に出して、さらには広報の業務を24年度は外に出すことによりまして、22年度の59.3億円から24年度の50.2億円というふうに節約ということをやっております。競争的環境の強化を図って、その業務のスリム化ということをやっております。
 7ページ目、SPring-8の運転時間につきましてでございますが、これは実は年間の運転経費に当たる共用補助金が減少傾向にあります。年間運転時間の80%程度をユーザータイムとして安定的に供給をしてきております。前回の中間評価以降、4,000時間以上のユーザータイムは一応確保しております。そこのグラフにありますのは、共用補助金と運転時間の推移でございます。このようにいろいろと努力をして、この運転時間の確保には努めております。運転時間の延伸とビームライン整備に関する基本的な考えでございますけれども、運転時間を増やすこと、これは既存ユーザーへの利用機会を増やす。既存装置への新規利用者の参入を容易にするということ、そして新規ビームライン建設は既存装置ではカバーできない新興領域に拡張し、産官学の新規参入拡大に資するというふうな考え方があります。
 利用効率の下がっている古いビームラインのエンドステーションにおける機器の入替えにより新たなニーズに対応する、そういうビームラインの循環システム、こういったものを全て総合的に考えて、やはり運転時間の延伸とビームラインの整備とのバランスというものを考えていく必要があるのではないかと考えております。必要となる利用支援とその適切な支援体制を見直した上で、約5%、4.3億円の光熱水費、保守費等で約25%、1,000時間のユーザータイム増が可能であると考えております。こういったものが産官学問わず、利用者自ら進めるトライアルユースでありますとか、自ら考えて進めるユーザーの育成に貢献すると考えます。
 以上、ここまで高田の方での報告でございます。
【福山主査】
 熊谷さん、お願いします。
【熊谷理事】
 続けて8ページですが、専用ビームラインのリソースの供出についてということですが、これは前回の中間評価、平成19年だと思いますが、そのときにこの専用ビームラインについて20%程度を供出したらいかがですかという指摘がありました。そのことに関していろいろと検討した結果がここにまとめてあります。専用ビームラインについては、その設置者が独自に運営を行っているため、リソースの共用への供出を受けるに当たっては、利用状況に関わらず設置者の合意が必要であること。
 そのことに加えて次のようなことがあります。解決すべき課題としては四つほどあるということですが、まず、一つ目が設置者の情報漏えい防止、これはある意味では専用ビームラインで特殊な利用をしているようなところは、そこに特定多数といっても不特定多数といってもいろいろな人が入ってきて、何をやっているのかというような情報が漏れるのは非常に困るということです。それから、利用したときに万が一装置、機器等が破損した場合の責任問題はどうなんですかというのが専用ビームラインの設置者からの御意見です。
 2として、その同じ関連ですが、装置・備品に損害を与えた場合の補償問題はどうなんでしょうと。それから、3として利用支援体制の問題、専用ビームラインには共用の利用者を支援するという体制がありませんので、これを共用に一部使うとなると登録機関のスタッフがこの20%の利用に対して、それなりの支援を行う必要があるということで、人的な問題が出てまいります。それから、4としては設置者のリソースの問題ということで、専用ビームラインでは多数の企業が設置者となってリソースを分配しているが、そういうビームラインもあり、共用に供出する資源的な余裕というのがないのではないかというようなこと。
 それからもう一つ、ここに書いてありませんが、専用ビームラインの中には放射光の利用というよりは、高エネルギーの利用を行っているビームラインもなど、いろいろな種類のビームラインがあって、必ずしも放射光利用に供出できるようなことにはなっていないというようなことがあります。いずれにしても、共用ビームラインの利用時間がかなり不足気味になっているというような状況を考えたときには、やはり専用ビームラインのリソースを何らかの方法で使っていくということが必要になるのではないかと思います。
 以上です。
【福山主査】
 どうもありがとうございました。
 ここでこれに関しての議論、意見交換をした方がいいのかな、次までやった方がいいかな。
【神部補佐】
 はい。資料2-2まで。
【福山主査】
 はい。では、2-2の方、お願いします。
【神部補佐】
 続きまして、資料2-2でございます。こちらの方は第1回のときにSPring-8とフォトンファクトリーが例として挙げられましたが、SPring-8とフォトンファクトリーが同時に止まってしまう期間というのがどうしても存在してしまう。そういう視点から日本全体で見たときに放射光利用のパフォーマンスとしては問題ではないのかといった御指摘を頂きましたことを踏まえまして、あくまでもシミュレーションですが、こちらの方、事務局の方で作成しましたので説明させていただきたいと思います。
 まず、資料にあります一番上のグラフというか、表ですが、こちらが今のSPring-8の2013年度の運転スケジュールとなっております。こちらのスケジュールにつきまして、仮にでございますが、8月の時点に5月の運転時間を持っていく。また、11月、12月の運転時間の分を年度末、2月、3月に持っていくといったことをすることによって、フォトンファクトリー等の運転時間をお互いにカバーし合うといったスケジュールにした場合にどのようなことが生じるかといったことをまとめました。その結果につきましては、下に書いてございますが、まず、利用時間というのが夏の電力料金というのが上がりますので、7月、8月にSPring-8の運転を持ってきますと、全体的な利用時間というのを縮小せざるを得ないということです。
 まず、今の契約ベースでやりますと約60時間の減少ということになります。ただ、一方で更に顕在的な問題としまして、この電力料金の契約自体が、今、7月、8月を運転しないというベースで契約をしてございますので、仮に7月、8月、夏の運転をするということになれば、電力料金の契約自体が上がることになります。そうすると、この60時間を更に減少させることが必要になってくるということがございます。また、これは実務の面でございますが、実際にビームライン等の整備を行うに当たっては、なかなか備品等を作成するのに時間がかかってしまうため、年度当初に発注したとしても、年末に備品が到着するといったことが通例でございます。
 そうしますと、どうしても年度末に運転を停止させて、その備品等を持ち込んで整備をするといった整備のための期間が必要になってくるということでございます。仮に年度末に持ってきてしまうと、それがなかなか実現できないといった問題がございます。恐らくこの問題はSPring-8固有というわけではなくて、フォトンファクトリーやほかの施設につきましても同様の問題になってくると思いますので、この施設間の連携のみではなかなか解決できない問題もあるかということが当方のシミュレーションの結果として分かったことでございます。
 以上でございます。
【福山主査】
 どうもありがとうございました。
 それでは、御説明頂いた資料2-1、2-2に関連しての意見交換をここでしたいと思います。順番に資料2-1の御説明に関して御意見、コメントございましたらどうぞ。
【西島委員】
 5ページの利用料収入が、ざっとこれ、3億ということですよね。この3億を全て高度化に回せる状況なのかというか、そうなのか、つまり、国に幾らかの還元、戻すというようなことが必要なのかということと、この部分を高度化以外に例えばサービスという形で、より使ってもらえるように人件費というか、人を雇うとか、そっちの方に回せるフレキシブルがあるのかということ。
【高田副センター長】
 この形のお金というのは、一番有効に使えるのは、こういう機器の整備、高度化というものが一番有効であると考えております。これ、全て結果としてこういう低エミッタンスであるとか、こういったものはユーザータイムが実質的に増える方向に働きます。ここには書いてございませんけれども、ハイスループット化とか、そういったことも高度化の案件に入っておりますので、機器の面から、機器整備の面からのユーザーサービスに着実につながっております。そういう点では、今、これで結構いっぱい、いっぱいでやっております。
【西島委員】
 いわゆる全額それに回せることなんですか。
【高田副センター長】
 全額回しております。
【西島委員】
 回している。機械もそうですけれども、ほかのところでも出ますけれども、新しいユーザーとか増やすときに、スタッフが少ないというか、目いっぱい、目いっぱいということですと、機械だけ立派になっても新しい人が行ったときは、なかなかそれが使いこなせないというので、その辺の、使おうと思ったら人件費を回せるんですか、それとも回せない。
【高田副センター長】
 これは人件費には。
【西島委員】
 回せませんよね。
【高田副センター長】
 はい。
【西島委員】
 分かりました。それと、その次の見直しということで、総額、減っているということに対してはすごくいいのですが、パッと見ると、これはSPring-8サービスという会社が結果的には2億から8.8億に上がっているんですよね。競争相手もなく。癒着があるとは言いませんけれども、その辺はサービスも含まれていいのかもしれないんだけれども、何か無防備で大丈夫かと。何となく競争社会に身を置いている私としてはそう思うんだけれども。
【高田副センター長】
 そういうふうに見えるところはあるかもございませんが、一応、2者応札があるなど、そういったときもございます。1者応札の場合もございますけれども、大体、これよりも超えないというふうなことを考えながら設定をしておりますので、今のところ、御指摘の問題はあると思いますが、一応、ルールにのっとって、そこは今進めております。
【西島委員】
 基本的には2者といったって、ほとんど微々たるものだからSPring-8の独占状態ですよね。
【高田副センター長】
 なかなかこれ特殊な。
【西島委員】
 特殊なね。
【高田副センター長】
 ええ。特殊なものです。こういった特殊業務の需要がどんどん増えてきますと、必然的に対応できる業者が複数者現れて、そこの中での競争というのが更に活性化されればいいな、というふうには個人的には考えております。
【西島委員】
 私ももちろん個人的にはそう思うんですね。JASRIの代わりはないとしても、SPring-8サービスに匹敵するようなものは、これ全体で8億、場合によったらJASRIの40億の部分でももう少し違ってくれば、ここを例えば極端な話、JASRIの方がいるからこんなことは余り言えませんけれども、そこが例えば30億にすると20億ぐらいのところを複数の企業で争って活性化して競争原理を入れていくというのは、ある意味では望ましいかなと、個人的には思います。
【福山主査】
 ほかにいかがでしょうか。今のことに関連して興味と言えば興味なんですけれども、利用収入を考えるときに偏向電磁石とアンジュレータ、一律に扱っている。そうではなくて光の量が違うから差別化したらどうかということが書いてあるのだと思うんですけれども、これは確かに光1粒ずつの値段に直したらどうかという、そういう見方。ちなみに偏向磁石とアンジュレータ、そういう見方で料金を変えるとすると、どのくらい違うのが適切なものなんですか。マシンのアビリティの問題になる。
【高田副センター長】
 単純に光の量でやると大変なことになるのですが、その後ろで対応できる、そういう測定の効率とかいろいろなことを考えたときに、極端なことはできないとは思うんですけれども。
【福山主査】
 大体どのくらいが考えられるものなんですか。
【高田副センター長】
 2倍ぐらい?
【熊谷理事】
 いやいやいや、そんなことはないと思いますけれども。
【福山主査】
 外国でこういう、ほかのところでやってはいない。
【熊谷理事】
 単純に言いますと、偏向電磁石というのは数十ワットがパワーですので、挿入光源はキロワットですので、単純に言えばそういうことになります。ですが、これは元々料金設定のときは電子ビーム1個を加速するのに掛かる費用ということですので、前提を変えれば光を基準にするのか、電子を基準にするかということに。
【福山主査】
 そこで違ってくるんですね。
【西島委員】
 これ、料金設定を変える意味合いというのは、アンジュレータが混んでしまうからとか、そういうことなんですか。差別化というのは。
【高田副センター長】
 多分、使った方、エンドで利用者が感じた感覚ですよね。全然測定のスピードが違ってきますので、例えば1個の試料を同じ時間で10個測れるとか、1個測るところを10個測れるとか、そういうふうなことがありますので、そういう前提を一切考えないときに利用者にとってどういうふうにメリットを感じるか。ですから、どういう観点でそこを見るかというのはバランスが必要になると思います。
【西島委員】
 極端な話、今の平均よりもアンジュレータは高くして、偏向電磁石は低くして、そこで差別してより安く偏向磁石の方に、十分な人はそこで使ってもらうという考え方もあるということですね。
【高田副センター長】
 そういう逆の考え方もあるかもしれませんが、アンジュレータの方が時間単価は、コストは高くなりますけれども。
【西島委員】
 短いんでしょう。
【高田副センター長】
 短いんですね。そういう意味では、そこはうまくバランスをしていく必要があるのだと思っています。曖昧なお答えで申し訳ないんですけれども。
【福山主査】
 ほかにいかがでしょうか。
【雨宮委員】
 今のことに関して。
【福山主査】
 雨宮さん、どうぞ。
【雨宮委員】
 性能の差、フォトン数の差を考慮するって、一つの考え方だと思うんですけれども、これはやはり需要と供給の関係もあるので、どこが混んでいるか等のデータを含めて、トータルにいい意味でのマッチングが行われるかどうかで検討されるのがいいかと思います。料金設定、その性能の差で検討することを通して、逆に利用が減ってしまったりとか、トータルな収入も増えなかったりとか、そういうことだってあり得ると思いますので、そこは御検討頂ければと思います。
【山田委員】
 すみません、PFの場合には全然定量的に勉強できていないんですけれども、高性能ビームラインというのと普通のベンディングで値段が、雨宮先生、正確に御存じですか。
【雨宮委員】
 いや。
【山田委員】
 多分、2倍までは違っていなかったですが。
【福山主査】
 その程度ですか。
【山田委員】
 はい。それぐらい違ってやっています。正確な額をまだ勉強していないので、申し訳ないです。
【福山主査】
 議論になっているのは、2倍だとしたときに2倍の根拠は何かという、そういう種類の議論ですね。
【山田委員】
 その辺は私が行く前からもう決まっている。
【福山主査】
 7ページ目に非常に興味を引く注目すべきことが書いてある。アンダーライン付きで、下の方なんですけれども、必要となる利用支援と適切な支援体制を見直した上でうんぬんと。この背後、具体的に何を見直すと、どこが問題で、それをどう工夫するということがこの文言の背後にあるのでしょうか。
【高田副センター長】
 運転時間を増やしますと、それだけ支援時間が増えます。ですので、その支援体制を充実しないと、今でも支援要員が少ない、不足ということが言われています。ESRFは大体SPring-8の2倍います。そのときにどういう形で支援体制を整備するのかということも考えなければいけない。先ほど、前回の議論でありましたポスドクなどに支援をやらせていいのかというようなこともあります。そうすると、ESRFの場合はテクニカとか、そういったものをきちんと充実させている。そういうふうなことも含めてマシンタイム、時間を増やせば、それだけ人も必要になってくるということをそこに書いてございます。
【福山主査】
 これに関しては具体的に何かそういう方向で適切な体制構築を目指していろいろ準備が進んでいるんでしょうか。
【熊谷理事】
 この支援体制を見直すといったときの最低限の条件というのは労基法をきちっと守るということになるかとは思うのですが、例えば26本の共用ビームラインで支援体制をするとすれば、これは皆さん企業にいらっしゃる方は、多分、5班作って回さないときちんと回らないんですよね。ですので、そういうことをきちっと考えた上で、なおかつビームライン26本に5班も作ることはできませんので、利用促進、産業利用といった一定規模の組織でまとまって対応する。ですから、数本のビームラインを受け持つグループを作った上で、なおかつ1,000時間が1年間増やしても、さっきの労基法をきちっと守った環境の中でできるということを想定すると、今の80人を100人ぐらいまで増やさないと1,000時間の利用というのは対応できないだろうということです。
 もう一つ重要なのは、その1,000時間の対応のために人を増やしたからといって、すぐ対応できるわけではありませんので、今のうちからきちっとあるスケジュールの下で人を採用して育てていくというようなことをしないといけないということは今認識しているのですが、何分お金がないというのがあって、検討だけということになっています。
【福山主査】
 ここで書いてあることは、問題意識として明確に認識したけれども、その先、具体的なアクションまではまだいっていない。
【熊谷理事】
 ということです。
【福山主査】
 はい。このことに関して皆様、いかがでしょうか。この問題はいろいろな段階でいろいろな形で言及されたテーマでもあります。
 高尾さん。
【高尾委員】
 今、人件費のお話だったんですけれども、関西地区は電気代が一遍に10%上がりましたので、そこら辺も考えないと本当は駄目なんですよね。電気代が高いときは実験しないんだと、それほど影響ないのかもしれませんけれども、それでも1,000時間増やすとなったらかなり電気代が高いときも使わないと多分いけないですよね。東京よりも関西の方が厳しいので。
【福山主査】
 確かにこの問題も。
【森委員】
 一つよろしいですか。
【福山主査】
 どうぞ。
【森委員】
 こういう国の施設なので、どういうんでしょうか、収益を増やさないかんということでも多分ないんだろうとは思うんですけれども、先ほど雨宮先生がおっしゃったように市場原理で、需要と供給の関係で値段設定がされていくというような発想で、例えばこの間、実際には皆さん使われて、ビームタイム当たりの仕事の量は増えている。でも、そのときに時間で決められていたら、使っている、そのユーザーから支払う費用というのは変わらないのでしょうか。
【高田副センター長】
 このユーザータイムは8時間を単位としております。ですので、8時間で十分測定できるというユーザーは8時間の使用で済ませておられます。XAFSとかは、そういうふうにして、その8時間のお金で支払っておられます。単位が8時間になっておりますので。
【森委員】
 時間単位でできる限りのことをユーザーの方はさせていただくと。
【高田副センター長】
 はい。
【森委員】
 そうすると、そこで出てきた収益をどんどんまた高度化に使われている。そうすると、性能はよくなっていってパフォーマンスは上がるはずなんですけれども、費用としては割安になっていっているということですよね。
【高田副センター長】
 その高度化でハイスループットにしていくことで、そこの効率も上がることで利用者が掛けるお金、効率は上がっているはずです。
【森委員】
 そうですね。だから、ユーザーとしては非常に有り難いことなので、例えばそこで、さっき西島さんがおっしゃった人件費に使えないというところもあるのかもしれませんけれども、サービスも込みである程度全体を回していくような仕組みというのは存在しないものなんですか。例えば効率がよくなってきているのだったら、そのパフォーマンスに対して時間当たりは値上げさせてもらう。その中で収益が増えるので、先ほど言われた高度化ばっかりではなくて、より困っておられるサポートの方に費用を使っていただくという、そういうことというのは現実に何か障害があるわけでしょうか。
【高田副センター長】
 いや、特に今即答はできませんが、そういう考え方も、もしもあるなら検討していきたいと思っていますけれども。
【熊谷理事】
 いいですか。今、使い方として測定代行だとか、リモートアクセルだとか、そういう成果専有みたいなものが増えてきているので、その場合には1シフト8時間は要らないよ、2時間ぐらいでも十分な結果が出ますよというようなことがだんだん増えてきていますので、最低限としては今2時間単位で測定代行とかなんかは対応しています。今までこの数年間ですが、徐々に測定代行で成果専有というのが増えてきていますので、多分、産業界ではそういう利用の仕方が多くなるのだと思います。
 APSはこの数年間で、その利用が30%ぐらい、全体の課題数の30%ぐらいを占めるまで増えていますので、恐らくこれが潮流になってくると、その費用の問題というのはどう設定していいかというのは少し考えたらいいかなとは思います。特に現在、57本ビームラインがあって、26本が共用ビームラインとしてはフルにありますので、そういうことも含めて料金体系をどうしたらいいのか。これは料金を下げてユーザーを増やした方がいいのか、料金を上げて多少ユーザーが、頭打ちがいいのか、それは全体でどう考えるかはこれからだと思います。
【高田副センター長】  補足しますけれども、実は成果占有、こういう使用料を払って利用するという時間は、グラフにもありますように増えております。これは24年度もこれ、ちょっと減っているようには見えますけれども、これは増える傾向にあります。一方で、それが共用のマシンタイムを圧迫するという状況も生まれる可能性があります。特に最近多い傾向は、審査を受けずにマシンタイムを確保したい。研究資金を持っておられる先生が、もう成果専有でマシンタイムを買い取るという傾向が最近出てきております。
 その辺、どういうふうに考えるかということも、それは収入が上がるのでいいことではあるんですけれども、共用という考え方から見たときにそれがどうなのかということは、やはりそこのバランスは今後よく考えておかないと、そういうものが殺到し始めると新しい分野を開拓する際に多少障害ということになる可能性もあります。
【福山主査】
 料金収入、増えるかもしれないけれども、費用は増えるかもしれないけれども、共用という観点からは問題がある。そういう観点で最後に説明があった専用ビームラインのリソース供出に関して、これは前の評価委員会からのコメントを受けて、20%と受けて、それに関してのコメントと理解するんですけれども、これ、読んでいると結局、1、2、3、4あるんだけれども、それでどうなんだという。
【西島委員】
 そうだよね。これ。
【福山主査】
 これはどう読んだらいいんですか。
【西島委員】
 これは結論から言うと無意味なんじゃない、これ、正直言って。だって、設置者の合意で最後に協力を要請するので、せっかく作ったラインが積極的にリスクを負って20%出したなんて、そんなお人よしのグループが設置者になっている場合はないんだから、はっきり言うと。だから、作るときに20%必ず出すというのは契約段階で、専用ビームラインをこれから仕切るみたいなのが、契約を改定するとか強引にやらないと、こういうやんわりとした表現では問題ばっかりで先送りですよ、これ。自分のところでビームラインを持っていないから強く言うというわけではないけどさ。
【福山主査】
 という今の理解でよろしいでしょうか。
【高尾委員】
 これは民間が作っているビームラインのことですよね。国立大学、独法が持っているやつはそうではなくて、理研は別として原子力機構と、それから、NIMSが持っているビームラインはナノテクプラットフォームから共用に関する部分の支援が実は出ているはずなんですよね。それでメンテナンスの費用だとか、お客さんが使う分のメンテナンス費用とか、それから、支援要員の費用なんかも出ているはずなので、独法のやつと民間のやつとは切り分けて考えないと駄目だという、そこがちょっと抜けたようなんですね。
【熊谷理事】
 すみません、おっしゃるとおりです。ですので、専用ビームラインの中には、共用に供するか、又はそれに類する使い方ができるビームラインと全く企業の建設の目的からして合わないという、相入れないというものがあるビームラインと二つありますので、どちらかというと共用に供することが可能なビームラインに関しては、多少、こういう供出をしてもいいかなと。
【福山主査】
 杉原さん。
【杉原委員】
 すみません、2年ほど前まで専用ビームラインの中にいました。代表でしたので、要は専用ビームライン側の立場から少しお話しさせていただきますと、専用ビームラインも今、高尾さんもおっしゃったとおりで、いろいろな性格のビームラインがあって、当然、生まれた文化も違いますし、背景も全然違うんですね。やはり今おっしゃったとおり、こういうリソースの供出に関しては、それが可能なところと不可能なところ、二つの大別だけでできるわけではなくて、恐らく今、例えばFSBLのような、19社が一括で持っているようなビームラインですね。そうなりますと、例えば1社が年間に使える日数というのは7.5日しかないんです。これが現実なんですね。もちろん、供出はさせていただいているんですけれども、これは例えば4,000時間が、1,000時間に利用時間が増えるとなると、ここはもう少し勘案されて、今、各社が実験をやっているところが当然あふれてくるものですから、それがほかの共用ビームラインのところの利用に回っていっている。
 例えばそういう実態があると、共用ビームラインのところが、結局は専用ビームラインを持っている会社さんも共用の方に行ってしまうということで、いろいろなそこの不具合が出てくるんですね。ですから、この運転時間の、先ほどの1,000時間増という話は非常に有り難い話ではあるのですけれども、いかにこれを実現していただけるかというのは、専用ビームラインの利用者側から言いますと、それは非常に有り難い話なんです。ところが、これの施策がなかなかうまくいかないという話も以前からお聞きしておりますし、また、そのリソースの供出に関しても、例えば19社が共用で買わせていただいた設備がどう壊れるか、あるいはどう安全性を確保するのかみたいなところというのは、いろいろ各社さん温度差がありまして、1本の、一つの考え方にまとまらないんですね。ですから、そういう足並みのそろわないところの中での専用ビームラインを運営しているという、そういう状況のビームライン、このリソース供出というのはなかなか難しいと御理解いただければ結構かと思います。
【水木委員】
 国立大学や独法の場合で、供出するのにうまくいく方法としては、高尾さんが言われたものの前のナノネットワークがそうだったんですけれども、JASRIが一括して課題審査を受け付けて、そして振り分けるようになっていると、それが結構、申請者はSPring-8に申請しているという意識で、窓口一つでできるのですが、今のナノネットワークは原子力機構とかNIMSが独自でその部分をやらにゃいかん。やっているので、それを知っている人はやるけれども、申請するけれども、知らない人は何だ、JASRIでは受け付けないんだとなってしまうので、これはJASRIが何とか独自で一緒にやりましょうとか言いにくいところがあると思いますので、その辺は文科省あたりの指導があって、ナノネットワークが元々国全体でやろうとしているわけですから、国全体でSPring-8を有効利用しようとするときには、そういうシステムを前のように作っていただけると、ユーザーとしては一括していろいろな専用ビームラインもJASRIからマシンタイム振り分けという意識が出てくると思いますけれども、それをお願いしたいなと思います。
【福山主査】
 そうか。今はそうなっていないと。
【高田副センター長】
 もう1点、考えておくべきことがありまして、国立大学や独法の場合はいいかもしれないのですが、会社などが作っている専用ビームラインというのは、資産ということになっています。そうすると、それが壊れたときにどこが補償するのか。20%供出したときに、壊れたときにどこが補償するのかということと、事故とか起こって負傷が出た場合の保険はどうなるのか。実は専用ビームラインを建設するときにそこがものすごい議論が、例えばFSBLのときも19社で、そこの合意形成というのはものすごくいろいろ練った経緯があります。ですから、そこをちゃんと考えていかないといけない。これは単にJASRI単独ではなくて、先ほどから一体という話がありますけれども、設置者である理研にも責任は出てきますので、そこら辺、役所とともにきちんと検討していく必要があるのではないかと思います。
【福山主査】
 重要なコメント、レスポンスだと思います。この件に関しては、確かに個々のケースを見ていくと非常にややこしいファクターで解決が難しいですけれども、全体を統一的に取り扱う。ですから、JASRI、理研、文科省で、そこら辺はより有効に使えるような仕組みを検討していただくということで方向性としてはよろしいですかね。
【西島委員】
 専用ビームラインを設置するときに国と契約しますよね。国というか、そのときの一文として20%供出することが前提であるという部分が書いてあるんじゃないですか。
【熊谷理事】
 20%とは書いていなくて、ある程度のビームタイムを供出するという曖昧な言葉になっていたとは思います。20%。
【福山主査】
 あった。
【熊谷理事】
 いや、なかった。ある一定の割合かな。
【水木委員】
 20%はあったと思います。
【西島委員】
 僕もあったと思いますよ。
【熊谷理事】
 いや、最近読んだのですが、そうすると、ある一定の枠を供出する。いや、その20%という記載は、最初は20%だったと思うのですが。
【福山主査】
 どこかで変わっちゃったんですか。
【熊谷理事】
 最近のいろいろな文献を読むと、ある一定の枠となっているので、だんだんトーンが下がってきているのかな。
【西島委員】
 いや、僕は20%、作ったときは20%。
【熊谷理事】
 最初はそうだった。
【西島委員】
 出すというので、出すのは構わないけれども、事故が起こったりしたときはどうするんだということで、きっとそんなこと要求されないよと僕は思っていましたけれども、はっきり言って。補償の体制が整っていない段階で、20%希望だと言われればその時間は作るんだけれども、共用した20%の時間で事故が起きたときにどうするかという解は用意できていないから、そういうことが要求されることは、時期尚早ではないと思ったんだけれども、そろそろ真剣に考えた方がいいかもしれませんね。
【熊谷理事】
 確かにおっしゃるとおり前回の中間評価では、きちっと20%という数字が出ていたとは思いますが、その後だんだんトーンが下がっていって。
【西島委員】
 作ったときに覚悟はしたんですよ、正直言って。出せと言えば出せる。ただし、事故があったりしたときは、それなりの補償を国がしてくれるんだろうなと思っていました。
【福山主査】
 ここはこの際きちっと対応していただくということで、この議論、この辺で終えたいんですけれども、さっきの資料2-2のこのシミュレーションの結果に関しては、特段御意見ございませんか。なければ次の議題、先端研究拠点の形成・人材育成について御説明をお願いします。これは高田さんですかね。
【高田副センター長】
 まずは前半の方、私の方でさせていただきます。後半は熊谷理事にお願いすることになっております。
 まず、資料の1枚目でございますが、1ページ目でございます。先端研究拠点の形成ということで、広がる連携と課題ということで理化学研究所、これがSPring-8、SACLA、京コンピュータとなっておりますけれども、SPring-8とSACLAに関しまして、このリーディング大学院、これは今、兵庫県立大と大阪大学がこのSPring-8をベースに設置しております。あと、アジア・オセアニア放射光科学フォーラム、ケイロンスクールというもの、これはアジア・オセアニア地区の施設を持つ国で、施設を利用したい国、こういったものが9か国でこういうものを形成してスクールをSPring-8で毎年行っております。また、量子ビームプラットフォームというものにも参画しております。
 あと、SPRUCの方で連合大学院というものを、現在検討を始めていただいております。4サイトコラボレーションというようなもの、そして、XFELの5サイトのコラボレーション、アジアのSRのコラボレーション、それぞれUSRのコラボレーションというようなものも、これはアルティメット・ストレージリングということでありますけれども、次をどうするか。回折限界の放射光、ストレージリングというものの検討をここに書いてある施設で、中心に国際ワークショップを開いて、これは実際に昨年の12月に第2回のワークショップがSPring-8で開催されまして、それぞれの所長クラスの方、そしてそれに携わっている研究者の間で意見交換等を行いました。
 一方、産業界との連携ということについても新しい産業利用形態の開拓であるとか、その分析ツールから経営戦略ツールへ、これは、SPring-8はまず産業利用というものをちゃんと進めるのだということでスタートして、トライアルユース等ですそ野の方から広がってきましたけれども、産学連合体とか、そういったもので産学連携によって、もっと高度な活用というものが今ナノアプリケーション等の発達もありまして、経営陣も含めた、そういう経営戦略に深く関わるようなSPring-8をツールとして利用するということが今進められております。これは、プレコンペティションを業界全体で推進する仕組みの構築というものにもつながっていると思います。これが先端研究拠点としての形成、すなわち、本当に光の先端性というものをちゃんと先端研究に資する形をどう作っていくかということで、こういった連携を戦略的に進めております。
 2ページ目の国際協力・人材育成への貢献でございますけれども、理研が持っております国際プログラムアソシエイト制度というものを活用しておりまして、7名の学生を海外から受け入れております。そこに示しておりますものであります。あと、先ほど言いました博士課程教育のリーディングプログラム、これは、兵庫県立大学はセンターをRSC兵庫県立大学リーディングプログラムセンターというものを設置して既に活動が始まっております。大阪大学もオフィスを設置する方向で今進めております。
 人材の循環でありますけれども、大学研究機関、民間企業等へ人材を送り出して、光科学をけん引する人材として活躍していただいております。そういう転出をSPring-8のサイトから幾つかさせております。施設者、理研としての人材育成としましては、若手研究者をPIとして登用しまして、その人材を育成しております。積極的に今若手を、SACLAの建設フェーズということもありまして、そういったところで多くの若手研究者が集まるようなことになっております。
 3ページ目でございますけれども、国際研究拠点としての取組としましては、先ほどありましたMOUの締結、それぞれの施設間でのMOU締結、3極ワークショップ、日英放射光産業利用ワークショップ、AOFSRRでの教育、そういったものも通じまして研究者を23名、世界14か国から受け入れているという実績を積んでおります。
 続きまして、熊谷理事から説明を続けさせていただきます。
【熊谷理事】
 4ページですが、そういう国際研究拠点としての取組の事例として、まずアジア・オセアニアフォーラム、ケイロンスクールですが、こういうものを開催している。これはアジア・オセアニア地区における科学技術の発展に資するような若い研究者、科学者を育てる。それぞれの国で、今後の科学技術の発展に貢献するような人材、と同時に我が国の若い研究者とそのアジア・オセアニア地域の研究者の交流、そういうことをもって将来、2国間又は多国間の協調を図るというようなことが趣旨です。
 今まで7回ほど開かれていまして、そこにありますが、3か国としては、例えば7回ですとオーストラリア、中国、インド、韓国、マレーシア、ニュージーランド、シンガポール、台湾、タイ、ベトナム、日本ということになっております。参加人数が70名ぐらいで、それぞれの右に書いてある国から、それぞれある枠があって参加ができるということになっております。ただ、最近の問題としては、日本の枠は結構大きいのですが、その中で日本人の参加というのが非常に少なくなっているということが多少危機感を持っております。
 次のページですが、5ページ目になりますが、これは日本の中の光に関する施設との連携協力ということで、北の方からPF、東京理科大のFEL、それから、あいちSR、阪大レーザー、SPring-8とニュースバル、SAGA-LS、そういう光科学に関する施設との間で連携をして利用の仕方とか、どういう分野にどういうふうに利用していって、それを相乗的にプラスの方向に持っていくか。それぞれエネルギーが違ったり、利用の仕方が違ったりするのをうまく整理していくというようなことだと思います。そのほかに他の連携というのは、物質科学というキーワードでまとめると、光科学も中性子も同じ物質の中の構造なり機能をきちっと見るという意味では、同じようなものになりますので、ただ、見る角度、方向が違っていて、見えるものも違っている。
 しかし、光と中性子を両方ともきちっと見ることで物質を正確に理解できる。相補的・協奏的な利用というのが今後可能だろうと。なおかつ、そういう実験的な結果を計算機シミュレーション、計算科学の中に取り込んで、それをシミュレーションし、その結果を予測して物を作って、その物質的な機能、構造が再現しているかどうか、そういう三つの持っている性能、資源、それを有効に活用することによって更に物質科学の理解が深まるだろうということで、この三つ、光、SPring-8、SACLAという光のもの、それから、中性子、スパコンの京というものの間で強いタッグを組んで科学技術の発展に供しようということです。
 7番目が、そのほかに今は光と中性子と京ということをお話ししましたけれども、そのほかに今後、連携が可能と考えられるものに、例えばNMRの施設だとか、ミュオンの実験施設だとか、電子顕微鏡による施設、そういう物質というものをいろいろな角度から見ている装置、施設を、全部をリンクして物質科学の解明を図ろうというような取組も今後あるかとは思います。
 それから、8ページ目ですが、ユーザーと施設をつなぐ場の提供、これは特に学術と産業界との間の橋渡し、これはこの真ん中で手を結んでいますが、良くこの手が離れて、なかなか産業利用にはつながらないとかいうようなことが起こりますが、学術と産業がきちっと手を結ぶことで、その谷間を埋めていこうということが必要かと思います。特に産業界での課題の中には、実は学術関係の非常に基本的な問題というか、サイエンスの部分が必ずあるわけで、言ってみれば産業界と手を結ぶことで宝の山が手に入る、そういうことも含めて強力なタッグを組もう。これがフロンティアソフトマターというのが今一番いい例として順調に動き始めている。これはここにいらっしゃる雨宮さんとか、そういう方が非常に努力されて、今うまく前に進み始めております。
 それから、9ページになりますが、人材育成の貢献ということで、SPring-8を利用した人材育成。これは1から3までありますが、一つは内部スタッフに対する育成、これはSPring-8のような非常に最先端の施設というのは、そこで支援する人が最先端のサイエンスの環境に身を自分できちっと置いた上で対応できるような、そういうスキルというか、能力が必要になってきます。その人たちをどうやって育成するかというような、これに関しては12条利用とか、GIGNOとか、競争的資金を活用して今養成しております。
 それから、外部研究者に対する育成として、若手研究者の育成。これは大学院の学生を対象とした萌芽的研究支援を行っております。現状はマスターコースまで拡大して萌芽的研究支援というものを行っております。これはこれからを担う、我が国の科学技術を担う若手の研究者を育成するということが基本ですので、あわよくばこの萌芽的研究支援を行って研究者、一人前になって放射光科学のところに戻ってくるというような研究者がいればいいかとは思いますが、日本の科学技術のベースを支える研究者の育成ということです。
 3番目が外部研究者に対する育成で、これは第1回のときにも指摘されましたが、産業界の放射光利用技術の習得支援ということで、今まで多少手薄だったのかなという反省はあります。産業界の若手の育成というのも非常に重要なテーマかと思います。これは今後検討していきたいとは思っております。
 10ページが人材育成への貢献ということで、これは内部向けに関する多少詳しく書いたものです。共用促進法12条課題での取組で内部スタッフがそこにあります調査研究を実施することで最先端の放射光利用の支援ができるように、そういう能力を獲得する。それから、GIGNOのプロジェクトで、これは若手の職員を今後リーダーになるような、そういう素養を持った人に育てようということ。それから、外部的競争資金の獲得というもの、これもこういうSPring-8のような共用施設にずっと身を置くと、なかなか外部的競争資金というものを獲得するという意思がだんだん薄れてきますので、そういうことがないようにというので、積極的にこういう外部的競争資金を獲得する環境に身を置かせて研さんしているということです。
 11ページですが、人材育成の貢献として、これは外部の萌芽的研究支援がどのように行われているか。これは前々回にもお話ししましたけれども、そこの左側にありますが、研究計画、申請をして実験して報告・論文として発表する。ただ単にそれだけでは若い人は育たないので、下にありますが、コンサルタント、アドバイザー等々、きちっと整備した上で、そういう若手を養成していくということです。現在までの累計で05B、これは2005年B期から2012B期までの利用課題数ですが、そこに挙げてありますように非常に多くの大学の学生さんがこれを利用しているということです。
 12ページが人材育成への貢献で外部ということですが、産業界向けで実際に行ったような実地研修とか、講習会とか、ワークショップというのが、これは当初から行ってきておりますが、それに加えて先ほどの学術関係の萌芽的研究支援のような枠組みというのを企業の若手研究者、技術者を育成するためにも利用して今後検討していく必要があるかと思っております。
 以上です。
【福山主査】
 どうもありがとうございました。
 いかがでしょうか、御質疑、御討論、コメント。
【唯委員】
 若手の定年制職員の中で、ある程度の経験を積んでから大学に戻られているパーセンテージというのはどれぐらいあるんですか。
【熊谷理事】
 どれぐらいあったんでしたっけね。すみません、パーセンテージは記憶にないのですが、どうですかね、十数人ぐらいは大学に戻っていると思うのですが、全体の利用系職員数が、スタッフが大体60から70ぐらいだと思いますので、ただ、余り多いとはまだ言えないのかなと。私自身が思うにはです。
【唯委員】
 それは大学に出られる方は、大体何年のスパンでSPring-8を拠点に研究をされて、大学に戻っていかれるような。
【熊谷理事】
 戻っていくというか、SPring-8にいらっしゃって大体7、8年とか、そういうたぐいだと私自身は思いますが、高田さん、何か補足。
【高田副センター長】
 それはある意味、出られる人は早く出ます。長くいる方はもう出ることができないのですが、といいますのは支援と、やはり大学に出るとなりますと研究成果、論文数、こういうものを問われます。なかなかその支援と、先ほど言いましたスタッフの数が少ないということ、それは結局、支援の負荷というものと論文成果を出すということ、そこのバランスが難しくなります。
 私がJASRIに入ったときに一番にやったことは、そこをうまく外部のユーザーとの共同研究という形で成果を伸ばしていくということでありますけれども、なかなかそこのバランスは難しい。出た方は東大の教授になられた方もおられますし、その一方で専用施設とか、そういったことで大学との連携が強くなったときに、そちらの兼任をするという形でいろいろな協力関係を強めていくという形で進めているというのが現状です。
【福山主査】
 山田さん。
【山田委員】
 今のポイントはすごく重要で、大型施設、SPring-8、PF、J-PARC、全ての施設がスタートしたときには30代、あるいは40代ぐらいの人を大量に採用してスタートするのですが、なかなかそこから先、外に職を見付けられないという現状がどこのファシリティにも共通の問題としてあります。それは先ほど高田さんがおっしゃったように、やはり最近の施設は自分の研究だけやっていては済まない。
 ユーザーの方々の支援をやっていくというところで、大学に例えば職を見付けるときに競争相手の方々と業績の点においてかなり厳しい面があるとか、いろいろなところがあって、なかなか現状はそう簡単には外に出ていけない現状があるということで、ファシリティの例えば研究者の平均年齢の年間推移などを見ていくと、多分、じわじわ、じわじわ上がっていっているのが現状だと思います。SPring-8の場合には、SACLAなどで若い人を最近採っておられるので、SACLAなども含めると、その辺はある一定に落ち着いているか、若干若くなっているかもしれませんが、PFとか、それから、これから心配されるのがJ-PARCですね。J-PARCの方々が本当に外に出ていけるか、CROSSの方々が外部に出ていけるかという問題が非常に大きな問題としてあります。
 それからもう1点は、やはりキャリアパスを大学、研究所だけでなくて、この前、西島さんとも少し議論したのですが、産業界に出て行けないんだろうかということもやはりこれから先、考えていかないといけないのですが、実は共用法でああいうビームを使っていくと、産業界にとってはむしろ、サンプルだけ多くてメーリングサービスみたいなので送って、そういう人を別に会社で雇わなくてもいいんだよというようなことを以前おっしゃっていたので、これはなかなかやっぱりキャリアパスを産業界に求めるのも難しいなということで、一体この問題をどう解決していくかというのは非常に大きな問題だと思っております。
【福山主査】
 雨宮さん。
【雨宮委員】
 施設と大学の人材交流、それはもちろん必要なんですけれども、ある意味で相補的な研究を進めるという姿勢もあるので、私は大学と施設はある程度違いがあってもやむを得ないというか、違いがあるからこそうまくワークできるという面もあるのだと思います。私はやはり施設間の人材交流がもっとできればいいかなと。例えばSPring-8とPFのスタッフをトレードするとか、要するに大学でも、どこの職場でも同じですけれども、7、8年か10年ぐらいで職場や研究スタイルが変わることによって活性化するということもあって、マンネリ化しなくなるし、新しいことが見えてくるということもあるので。
 いや、もちろん大学と施設の人事交流は大切ですけれども、施設間の人事交流も、私はもっとあってもいいのかなと思っています。あまり施設にぴったり張りついて、これは自分の装置だという意識が強くなり過ぎると、それがネガティブに働くこともあるんです。ある程度までは自分が作ったものだからという誇りを持っていることが重要ですが、それがある時間を超えると度が過ぎて、ネガティブな側面が表れることもあります。いい意味で帰属意識を持つことは必要ですが、帰属意識を持ち過ぎないというカルチャーも重要だと思っています。
【福山主査】
 それは大変大事だと思うんですけれども、いいのですけれども、どうやって作るか、それをどうやって実現するかという、そういう議論になるといいんですけれども。
【雨宮委員】
 ええ。
【福山主査】
 それでは、高田さん。
【高田副センター長】
 実はそれは単に施設間の問題ではなくて、そこにそのコミュニティ、サイエンスコミュニティの協力が必須です。先日、CROSSとの間でJASRIの研究員をマネージャー的なポジションに移しましたけれども、それは完全にそこのコミュニティがきちんと協力をしてくださって、トータルの将来的なもの、SPring-8、JASRIの中でのポジションでこのまま行くのではなくて、それをCROSSとして受け入れて、きちんとそういう育てて、逆に若い人を送り込むというようなことを背景で考えています。
 ですから、これは単に施設だけのあれではなくて、そのコミュニティ、産業界も含めてという話になると思いますけれども、そこは一体的に考えていく必要がある。そういう意味ではSPRUCができて、そういうふうなこともいろいろ一緒に検討できるのではないかと考えています。
【福山主査】
 確かに大変大きな広い問題で、具体的に6ページ目にこの大きな施設の間の機関、協力協定書が締結された。これは具体的にどういうことを実現したいための協定書なんですか。今のこととまさに関連しているんですか。
【高田副センター長】
 相補的な利用といいますのは、一番象徴的な例として出されているのはタイヤの例でございますけれども。
【福山主査】
 それは研究、私が聞いたのは人的交流等々まで。
【高田副センター長】
 人的交流も含めてでございます。
【福山主査】
 そこがこの協定書の中にうたわれている。
【高田副センター長】
 これ、記憶が定かではありませんけれども、そういうことも全部含めての話です。
【福山主査】
 はい。分かりました。
 水木さん。
【水木委員】
 ちょうど今のところで、相補的・協奏的な利用って美しいんですけれども、実際に例えばJASRI、やられているのかどうか、やっているようでやっていないと思っているのは、この課題は中性子も使うのなら使いますと表現してください。表現というか、どこか書いてください。でも、書いてどうなることでも今ないんですよね。
【高田副センター長】
 そうではなくて書くことによって、そういういろいろと連絡をして指導、こういうふうにしたらどうですかというような相談の窓口にもなると思います。
【水木委員】
 相談というか、例えばJASRIにSPring-8で今こういう課題を出した。実はこれは中性子でもこういうことをやりたいので、中性子も出しますよというふうには、今、宣言できるように。
【熊谷理事】
 できるようになっているんですけれども、それぞれの選定委員会が情報というのかな。
【高田副センター長】
 情報を共有する。
【熊谷理事】
 共有はするんですけれども。
【水木委員】
 その後、それをどう使おうとされているのかがよく見えなくて。
【熊谷理事】
 一応、例えば同じ中性子、J-PARCを使う場合と、それから、SPring-8を使う場合に関しては、同じ、二つ使うのだったら使うと書いてくださいと。本当はどこか1か所に出したら全て両方とも行くとか、そういうシステムになっていればいいんですけれども、選定委員会に出してくる申請書というのは守秘義務があるので、それぞれの選定委員会は関知できないんですね、お互いに。なのですが、そこをうまく情報を共有化して、課題の選定に当たってはそれを考慮するということになっているんです。今回、たしか2件か数件、何かそれに対応するものがあったと聞いているのですが。
【山田委員】
 考慮はしている。
【熊谷理事】
 まあまあ、言葉が悪いですが、一応。
【山田委員】
 将来的にはその方向に行くという。
【熊谷理事】
 一応、そういう方向に行こうかということは内々で一つの方向性として検討はしていますが。
【水木委員】
 分かりました。
【熊谷理事】
 今の言葉は修正しておいていいですか。現時点で選定に当たってインセンティブを与えているわけではないので。
【水木委員】
 私自身、ある意味質問したかった、今はまだやろうとするときだということであってもいいんですけれども、最後、どういう形にしたいのかというのを知りたかったんです。今ちょっと言われましたけれども。
【高田副センター長】
 まず、そもそもこの話の始まりは、震災対策です。震災のときにJ-PARC、PFがシャットダウンした。それを受けるときにSPring-8の方でカバーをする。そのときにJ-PARCでやるべき仕事もSPring-8を使うことで、ある程度できるだろうということで、やろうと思えばできるねというところからスタートしています。そうすると、お互いの課題選定のシステムを尊重しつつ、なおかつ両方の相補的な利用が可能なケース、サイエンティフィックに、それをちゃんと見せていく必要がある。それを有効に、この共用法で運営している施設をいかに有効に活用していくかということを施設側としても協力して促進していく必要がある。そのためにいろいろな情報共有をしていくということが大事なのだと思っています。
 一番の眼目はそこで、それに対してどれだけ技術的な指導をお互いに役割分担しながらやっていくかというところが一番大事なことだと思います。ただ、先ほど熊谷理事が少し踏み込んだ発言をされましたけれども、考慮するということに関しては、かなり慎重にやる必要があって、先日の課題審査委員会でも考慮したときに片方で落ちてしまったらどうするとか、そういうふうな話も出ましたので、やはりそこは慎重にやらないといけないと思っています。ただ、お互いがちゃんとそのユーザーを認識して、サイエンティフィックにきちんと有効にこの施設、国の資源を、大型研究施設を有効にしていただくための協力をしていかなければいけない。ここが一番大事だと思います。
【水木委員】
 その精神は分かるんですけれども、その形としてどういうところに向かっていこうとしている。
【熊谷理事】
 7ページを見ていただくと、ここにタイヤの例とSPring-8と中性子の相補的利用で新しい水素化物の結晶構造を初めて、これ、一つはこの水素化物に関しては、この物性をきちんと知ることが重要なわけで、ただ、放射光で見た場合と中性子で見た場合でそれぞれ違っている。だけど、その二つを合わせることで水素化物をきちっと理解できるといったときの課題が、両方とも出ていくわけですよね、これ。両方ともちゃんと通ってくれないと水素化物がきちっと理解できない。ですから、そういう意味で課題がどういうところにどういうものが出ていっているのかというのは、ある程度両者の間では知っておかないと、こういうのは課題が選定できないというか。
【水木委員】
 よく分かりますが、ただ、いや、こっちはいいと思うので。
【熊谷理事】
 いや、最終的にはそういうことだと思います。今は過渡状態ですので。
【水木委員】
 ええ、そうそう。
【熊谷理事】
 いろいろな枠組みの中でどういうことができるかというのを暗中模索という感じだとは思いますが、将来的にはそこのところは一本化するということが重要だとは思いますけれども。
【原室長】
 将来的には、文科省の考えですけれども、ワンストップサービスといいますか、複数の施設を使いたいときにどこか1か所に申請を出せば両方使えるようにということが究極的な目標だと思います。ただ、それぞれの施設に今使える共用のビームラインの数が違うとか、あるいは法律上の要件として登録機関が今それぞれ別個に置かれているということがありますので、今できる範囲でやれることをやっていただいている。その結果を見ながら必要な改正点があれば改正するし、必要なければやらないということになろうとは思います。
【福山主査】
 それに関しては文科省の方でかなり具体的に検討は進んでいる。
【原室長】
 まだ具体的な検討という面ではなかなか進んでいませんけれども、JASRIとか、あるいはCROSSとは相談しながら、今、例えば両方の申請書にもう片側の施設を使いますよということは記述してもらって、審査の際には気に留めてもらうというようなことは今の段階ではやっているということでございます。
【高田副センター長】
 実は先々週、ESRFの国際評価に行って、実はあそこはグルノーブル、ESRFとIRRはすぐ隣同士で存在しているんですけれども、実はそういう議論が出ました。しかし、ESRF側は既に別に個々でやっている。だから、そこの統一の必要はないというような見解を出しました。それはそれがいいかどうかはまた別の話です。ただ、情報としてはそういう情報。
【福山主査】
 今の場合、J-PARC、SPring-8両方やっぱり世界で断トツの施設なので、その二つを同時に並行して使うという、これはやはりその仕組み、エフェクティブな仕組みはやはり日本にあるべきではないか、あった方がいいのではないか。フランスとはそこの事情、グルノーブルとは違うかもしれませんね。
【高田副センター長】
 大事なことは、そこをきちんとサイエンスコミュニティ若しくは産業界にその有効性とローシェアリングのところをきちんと分かっていただくための努力を一番するべきであろうと思います。
【福山主査】
 そうですね。これに関しては、ここはSPring-8ですけれども、J-PARCの関係者とやはり両方で知恵を出して努力していただく必要があるのではないかと思います。
【山田委員】
 ちょっとだけいいですか。
【福山主査】
 はい。一言。
【山田委員】
 物構研は、実はこれが一番得意な研究所で、PFがあって、J-PARCの中性子があって、ミュオンがある。最近は陽電子も使っているというので、これを競争的に使って何か新しい研究をやるというので、物構研で科研費を出すといってやり始めて、若い人に意見を聞いたんです。そうすると、何が一番必要かというとやっぱり現場での裁量ができるようなシステムをできるだけ作っていただきたい。
 例えばJ-PARCで測っていたときにこれは面白そうだと現場の装置担当者が判断したときには、即PFに持っていける、あるいはミュオンでも測れるというようなことを是非やっていただきたいというような現場の要望が出てきまして、それをベースにして今度、元素戦略の細野先生のサンプルを測ったら非常に面白いことが出てきまして現場がものすごく盛り上がっているという、こういう競争的利用法というのは、ある階層構造があって、やっぱり現場ベースでやるところと、こういう大型ファシリティを連携して使うというのといろいろなレベルがあると思うのですが、その辺がうまく有機的につながっていくと非常に面白い研究がこれから盛んにできるのではないかと思っています。
【福山主査】
 そうですね。そのとおりですね。そのためにもやはりコミュニティの中でいろいろ情報の流れがスムーズになっていることが大事かと思います。一言、この課題、議題が先端研究拠点の形成ということになっているんですけれども、2ページ目、この世界のSR4、4 サイトコラボレーションというのがあるんですけれども、ここの会合、知らないんですけれども、ここの会合に出ると、この四つのサイト、各ある機関の研究のハイライトが、それぞれの施設、自慢のものがパッと出てきて全体が見えるような状況に年1回か2回なっているという、そういう場があるのでしょうか。
【高田副センター長】
 はい。一応、そういうふうな構成で、持ち回りでやっております。
【福山主査】
 はい。だから、そこでは例えばSPring-8からの世界に誇る成果が国際的に紹介されると、そういう仕組みになっている。
 それと、今日は時間がないので余り深入りしたくないんですけれども、8番目のこの雨宮先生のことに関連して、産業界と学会の、真ん中のところに手をつなぐという図が書いてあるんですけれども、この中身が実際どういうものであるか、ここは双方向性が大事なので、その仕組みがどうなっているかというのは、これ、極めて重要になって、絵を描くのは簡単なのですけれども、雨宮さんのときには非常にケースとしてはうまくいったけれども。
【雨宮委員】
 杉原さんが代表されていたので、産業界の立場と学術の立場と。
【福山主査】
 そういう意見交換の場があって、それがお互いにニーズ、シーズが見えるようになって、それはもう既にこの分野ではある程度できてきていると思っていいですか。一言。
【杉原委員】
 一言なんですけれども、もちろんFSBLの中というのは学術の先生も、かなり著名な先生がいらっしゃって、それで19社の若手の技術者も含めてワークショップ等が行われてということで、その中ではある程度の我々の狙いみたいなところというのは徐々に形成されつつある。ただ、大きく産業界という形で見たときに、今、こんな会社がこんなことを考えているんだと、いっぱいあるんですね。一応、産業利用と一言で言われるんですけれども、今、SPring-8を利用されている産業界の方々というのは、例えば科学系だから科学のことを考えて、それで利用しているんだではなくて、いろいろなことを考えられています。
 ですから、その方々がいろいろな情報を欲しがっているんですけれども、そういったときに自分たちが抱えている問題を今解決型と書かれているのですが、ソリューションは得られるとか、あるヒントを得られるとかといった、そういう場を具体的にどう持っていかれるのか。ここが非常に大事なことで、一つはSPring-8で書かれていますけれども、議論的には例えばJ-PARCであったりとか、PFだったり、例えば放射光の施設、あるいは京も含めてですけれども、それを使ったら産業界にこんないいことができるんだみたいな、そういう発信をしていただける場、これが例えば学術の先生方も含め、施設の先生方も含めですけれども、そういった具体的に主導していただいて、何か場を設定していただく。そんなことが必要になってくるのではないかなと思うんです。
【福山主査】
 技術説明会のようなものかもしれません。だけど、アカデミアから見ると、同時に逆方向が非常に重要で、現場で何が必要とされているかというようなことをアカデミアの方が聞くとびっくり仰天して、そんなことだったらどうかとか、何かそういうアクションをとられますよね。
【杉原委員】
 そうですね。
【福山主査】
 それは非常に双方向が大事だということで、その場をどうやって作るか。
【杉原委員】
 それで、最近、産業界からそういう場を作ろうという動きが非常に活発になってきています。ですから、いろいろな地方のところでも、そういう場を作ろうということで、産業界の方々がコーディネーターを作られて、そのコーディネーターさんをうまく利用して産業界の方は学術の先生方を引っ張り出そうという、そういう動きが今出てきているんですね。ですが、産業界の方からのアプローチはうまくアクセスすれば出てくると思いますので、そういった環境をいかに両方から作り上げていくかというところが非常に重要。
【福山主査】
 せっかくですから、この際、このワーキンググループの結果の一つとして、そういう場ができていけば非常に意味がありますので。
【杉原委員】
 非常に有り難いです。私もそこら辺のところは努力したいなとは思います。
【福山主査】
 こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。この点は。
【雨宮委員】
 では、今のに関係して。
【福山主査】
 どうぞ、短く。
【雨宮委員】
 杉原さんは産業の方ですけれども、学術側から一言付け加えます。このFSBLは産業と学術がペアを組んで、それが19社、19チームでやっている。この仕掛けというのは非常に意味があると思っています。これから超えなければならない課題もあると思うのですが、産業界と学術とそれぞれが志向している共通部分もありますけれども、異なっている部分もあって、その違いをお互い認識した上で自己主張していくという、当たり前のことなのですけれども、そういうことがうまくできるカルチャーが作られるというのがすごく重要です。そういう積み重ねの上に、19社のうちのある割合で非常にうまくいく例が増えてくるのだろうと思います。この仕掛けを作ったということの意義は非常に大きいと思っています。
【福山主査】
 そうですね。いい例があるので、それを更にエンカレッジする、プロモートするような仕組み。どうもありがとうございました。
【小松委員】
 確かにそれがないと、恐らく最初、高田先生が言われた分析ツールから経営戦略ツールというところには脱皮ができないんだと思うんですね。
【福山主査】
 そうなんですね。それはやっぱり双方向のコミュニケーション。是非SPring-8ステージにそういうモデルケースをいろいろ作っていただければと思います。少し長くなりました。すみません。
 次、研究成果の公表・社会の還元について、移りたいと思います。よろしく。
【熊谷理事】
 資料の2-4です。まず、1ページ目ですが、利用成果の創出ということで、これは今までの統計的なデータです。SPring-8における論文数の累計ですが、2012年で約9,000ということ。それから、その右側にBL、ビームラインごとにおける論文数で、これに関しては左から1番、2番、3番となって、右端が45ですか、全部の共用と専用と、これは理研の施設側のビームライン、全部入ったものです。見ていただくと、非常に突出した論文数を出しているビームラインと、そうでもないビームラインというものがあります。
 それから、色分けは1999年以前ですが、2000年から2003年、4年から7年、8年から11年、2012年以降という色分けで示してあります。これについて、また後で出します。それから、SPring-8における特許出願数ですが、現状の累計で87件。これは我々が把握している件数でして、実際の値は幾つなのかというのはよく分かりませんが、現状、オープンになっているのが87点ということで、その割合ですが、国、独法が40%、民間企業が約22%、民間企業のみというのが38%ということでございます。
 それから、2ページ目は利用研究成果の公表についてということですが、成果の公開方法の改正というのを23年度に行いました。これはレフリー付きのペーパーに出したものだけとか、今まで2013年以前に成果として提起されていたもののほかに、実は下の方の二つありますが、SPring-8の利用研究成果集と企業の査読付き公開技術報告書というものを利用成果の中に加えたということです。最初の利用研究成果集というのは、これは論文にならなかったんだけれども、その実験の経過、そういうものをきちっとまとめることで次に実験をする人の役に立てるということで、そういうカテゴリーのもの。それから、企業の査読付きの公開技術報告書、これは産業界の方にはなかなか通常の論文に投稿してというようなものが出しにくいということもあって、企業の中できちっと査読付きの公開技術報告書を出しているのはそれに代えましょう。そういうものを追加したということです。
 それから、この成果の公表についてですが、もし成果は公表しないとか、いろいろなことがありますので、きちっと共用、専用ともに成果の公表を促すということで、実験責任者の方に1年及び2年経過した時点で成果を公開してくださいよということを促す。現状、おおよそ9割ぐらいの方が2012年の登録された論文を統計処理すると、おおよそ4年ぐらいで90%程度、八十数%が論文を出版しているという結果になっております。更に3年以内に成果が公開されない場合には、次の課題を受け付けないというようなペナルティーを実施しております。
 利用成果の公表についてですが、3ページ目になりますが、成果の公開、これはSPring-8のWebサイトの中に研究成果の検索システム、それから、利用成果集等々が今あります。それから、その左下にタイムリーな成果の発信ということで、SPring-8 NEWSで非常にタイムリーな成果については、こういうニュースで分かりやすく報告している。それから、右の上ですが、なかなかこういうSPring-8の成果というのがどんなものかというのは余り分かりやすく説明がされていないということがありましたので、できる限り分かりやすい成果の発信をということでSPring-8の学術成果集、SPring-8の産業利用成果集、どちらかというと、ある専門家を対象にした、そういう成果集を出版しております。そのほかに利用者に向けた発信、国際的な成果の発信ということで、SPring-8利用者情報とか、SPring-8 Research Frontiersという、そういうものを、右側のResearch Frontiersは、どちらかというと外国向け、SPring-8利用者は国内向けの利用者に対するものというようなことを今しております。
 それから、4ページ目の普及啓発活動の状況ということで、これは潜在的な利用者を含めた研究者・技術者に研究成果や利用事例を発信するとともに利用者との意見交換や利用者相互の交流を通じて放射光利用研究への理解を深め、利用の促進に努めているということで、いろいろな実習だとか、夏の学校、産業利用報告会、講習会、SPring-8シンポジウム、どちらかというと施設者というか、SPring-8側から利用者に投げ掛ける方が多いわけですけれども、そういう活動をしている。今後、恐らくもう少し利用者に近いところで普及啓発というのをする必要があるのかもしれないというのは最近思っています。
 社会の還元についてですが、次のページですが、SPring-8を使っていろいろなところで分析が行われて、その結果として製品につながっている。それをもって社会にその成果が還元されているということで、エレクトロニクス、環境、エネルギー、素材、創薬、生活用品というようなところに今このSPring-8の成果が利用されております。ここに一つだけない分野としては、第1次産業である農業とか林業とか水産とか、そういうところの利用というのが、社会還元というのがどうもなさそうだなという感じがしておりまして、今後、そういう分野を開拓する必要があるのかなと。
 6番目が社会還元についての製品化例の事例ですが、ここにありますように炭素、カーボンファイバーだとか、電池関係、パネル関係、それから、軽量コンクリート、橋のさびとか、人工関節とか、Pos-Caという虫歯になりにくいとか、それから、シャンプーその他もろもろというところで、結構、SPring-8の成果がこういうところに使われてきております。
 以下、7ページは、これは前々回だったと思いますが、福山委員長からいろいろな論文に関する調査をしていただきたいということがありましたので、この8ページから26ページまでにいろいろな資料がまとめてあります。8ページがSPring-8における論文調査の概要ということで、Scopusを使って引用回数を調査するなど、いろいろなことをしております。SPring-8全体についての引用件数が11万9,000件、論文1本当たり平均で16回というようなこと。
 それから、最大引用数で最も大きいのがBL45XUという、これはロドプシンのタンパク構造解析の結果ですが、3,559。共用ビームラインについての論文数が5,800で、その他、そこに書いてありますが、そういう共用、専用、理研ビームラインについての引用回数の多いのがそこに写してあります。これはいずれも引用回数の多いものというのが、2000年の非常に早い時期、SPring-8が完成して動き始めたばかりのときにタンパクに関するものが結構多く引用回数の上位に来ております。一つだけ専用ビームラインとLEPSというクォーク核物理の話がありますが、これが一つだけ異質ですが、引用回数としては750。
 その次のページがBLごとの累計を年度、これはビームラインごとに書いてありますが、下に共用開始年月日という年次でずっと右に従って新しくなっているというふうにまとめてあります。引用回数で見ると古いものほど多いということもありますが、特徴的なのは構造生物学とか高圧に関するものが分数としては比較的大きい。そして、10ページになりますが、出版年度ごとに分類したBLごとの累計で、これは年次ごと、1999年、ある区間を分けて現在までに発表されている論文の割合、全数を1として分配したものです。ですので、上に行ってほとんど色が変わらない。例えば2008年から2011年の色で100%のところは、それ以降のペーパーがないということで、上に行くほど幅が広いのは発展しているというか、ビームラインの利用が拡大しているということを意味しています。
 それから、引用回数に関するものが11ページ、12ページにまとめてあります。引用回数の多いものに関しては、それぞれどういう分野であるかというのがそこに、図中に書いてありますが、これもどちらかというと構造生物学というものの割合が非常に多いということが分かります。それから、13ページ、14ページに供用月当たりの平均論文数、どれだけ供用してきたかという時間で割ったもの、それから、縦軸が供用月当たりの引用数をプロットしたもので、何やらある直線に乗っているように見えるということです。14ページは、それを一部、下の方の引用回数、登録数の少ないところを拡大したもので、これもどちらかというと専用ビームラインに関しては引用回数が割合に少ないのかなという、これは統計的な形の中でどう分析するかというのは今後だと思います。
 それから、全体の傾向のまとめが15ページにあります。それから、16ページがSPring-8の論文引用回数のトップ5ということで、先ほど話したロドプシンの話が3,559でBL45。2番目もBL41XUで、これも生物関係。3番目がLEでクォーク核物理。それから、4番目も41 XU。それから、5番目が、これはどこだ。レセプターだから、これも同じですね。というようにまとめてあります。その次のページが、それぞれトップ5の研究の中身がまとめてありますが、見てお分かりのとおり、真ん中のクォーク核物理を除いて、何やら同じような模様が並んでいまして、ほとんど全てが生物関係ということです。
 その後は、それぞれのトップ5に関してサイテーションが年次ごとにどういうふうに変わってきているかということを見たもので、特徴的なのはトップ、一番サイテーションの多いBL45 XUに関しては、発表から現在まで、ある平均的にサイテーションが行われている。その次の2番目の論文ですが、これは最初、割とサイテーションが多かったのですが、最近はサイテーションが少なくなっている。3番目のクォーク核物理は最初非常にサイテーションが多かったのですが、最近は非常に少なくなってきてしまっているということが分かります。4番目、5番目もどちらかというとだんだん落ちてきているというのが4番目、5番目はまだそれなりの数になっているということです。
 以上が論文に関するまとめたものですが、最後にビームラインのリストというものがあって、それぞれのビームラインがどういう分野で、どういうことがおおよそ利用されているかというものが分かるようなリストが付けてあります。
 以上です。
【福山主査】
 大変ありがとうございました。
 いかがでしょうか。研究成果の状況、発表、公表の形態、社会還元の在り方等々についての御紹介でした。どういう数字が出てくるか非常に興味津々だったことの一つは、SPring-8全体がサイエンティフィックコミュニティにどれぐらいインパクトを与えているか。施設全体、要するに一つの目安は15ページにある論文、SPring-8から出ている論文全てに対して平均1報当たりどれぐらいサイテーションがあるか。15.86、これは東大から出てくる論文よりもサイテーションが多い。理研にはちょっと負けている。この理研の次のNINS、これはNIMSですね。
【熊谷理事】
 ごめんなさい。間違っているか。
【福山主査】
 きっとNIMSですね。
【熊谷理事】
 と思いますが。
【熊谷理事】
 自然科学研究機構だそうです。
【福山主査】
 ああ、自然科学。Nでいいんですね。
【熊谷理事】
 ええ、いいんだそうです。
【福山主査】
 はい。岡崎ですね。結果的にSPring-8からの研究成果は非常に業界にインパクトを与えている。その中でやはり研究のテーマによって極めて引用回数が多い論文も当然ある。同時にビームラインごとにどうかということもはっきり見えてしまいますね。これはこれからいろいろSPring-8全体のビームラインの改善するときの一つの資料になるかもしれません。皆さんがこれからどうお使いになるか、これはともかく純粋なデータ、事実の紹介だということで、それをどう受けとめて、どう料理するかはケース・バイ・ケースかと思います。全体を通していかがでしょうか、この点は。随分頑張っておられますね。改めて明らかになりますね。いかがでしょうか。このデータ整理、大変だったんじゃないかと思うんですが。
【熊谷理事】
 ええ。まだ途中段階でして、これからもう少しきちっと分析する必要があるかと思っているのは、このビームラインごとの成果と同時に選定の課題の年間で何課題ということ、その成果がどういうふうにリンクしているのかとか、それから、1論文、これは今ざっと計算したところでは、1論文当たりで大体2.1課題ぐらいで1報という感じになっているんです。それがどういうことでそうなっているのかとか、そこら辺の分析もきちっとしたい。ですので、今、日本ですとSPring-8しかありませんので、利用者にある程度たくさん使っていただきたいということもあるでしょうし、それから、そうは言ってもきちっと成果を早いところ出してほしいという要望もあって、その辺のバランスをどうやってとるかということですね。
 それから、実施した課題に関してはできるだけ早く結果を出すことが重要なわけですが、1論文で2.1課題ということは、ちょっと1年ぐらい遅れてしまうわけです。実際の最初にやった課題から実際に論文を出すまでに。世の中、大体同じ分野では同じ研究者だったら、大体同じようなことを考えるわけで、その1年というのは今後それでいいのかどうかというのは考えるべきだというようなこともあって、もう少しきちっと分析はする必要はあるかなとは思っています。
【福山主査】
 データをここまでとると、そういうことを具体的に考える。
【熊谷理事】
 具体的に考えて具体的にこういうふうにしたら、恐らくいいんじゃないのかな、という戦略を練ることができる。いわゆる研究課題の成果を最大にするということ。それも、利用者の要望をきちっと満足させた上で、成果を最大していくということも、きちっとできるようになるのではないかなと思います。
【福山主査】
 きっとできるようになりますね。大変御苦労いただきました。ありがとうございます。このことに関していかがでしょうか。さっき少しお話があった5番目、社会還元で少しおっしゃった農業、水産業、これから日本にとって非常に重要なテーマ、それに関して、確かに今までSPring-8からそういう方向での目覚ましい成果はあんまり見えないけれども、これからやっぱりそういう方向が。
【熊谷理事】
 重要になるかとは思います。
【福山主査】
 重要になりますよね。そういう切り口がどういうところに、どういうテーマがあるか。
【高田副センター長】
 まだ事例は少ないんですけれども、例えば米の飼料としての、家畜の飼料としての米についていかにしてリンを少なくしていくかと。
【福山主査】
 リン。
【高田副センター長】
 そういう研究が実際に報告もされています。そうすることで、要するにバイオマスといいますか、リンの土壌汚染、そういうものに貢献する研究として、そういうものが実際に報告されたりしています。
【福山主査】
 きっと重要なテーマがこれからいろいろ出てくるんでしょうね。それを期待します。
 いかがでしょうか。なければ以上で今日の意見交換のテーマは全部終わりました。次回の予定と連絡事項について、これは事務局の方から御紹介ください。
【神部補佐】
 次回につきましては、最初に説明しました資料1-4のとおり、来週の火曜日、6月18日に15時から予定をしております。場所は文部科学省の研究振興局の会議室となります。本日と同じく17階のフロアになりますが、第1回の作業部会を開催しました部屋となりまして、今日とは別の部屋となります。
 また、本日の会議の議事録につきましては、作成次第また皆様に御確認を頂き、その後、ホームページに掲載したいと思いますが、その作業部会の日程の都合上、次回、6月18日のときには間に合わないという状況でございますので、また後日御確認を頂きたいと考えてございます。また、本日の資料につきましても、お手元の封筒にお名前を御記入頂いて机上に残していただければ、事務局より郵送させていただきたいと思います。また、旅費の手続が済んでいらっしゃらない方がいましたら、事務局までお申し出ていただければと思います。
 以上でございます。
【福山主査】
 どうもありがとうございました。
 それでは、次回、来週でございます。またお目に掛かります。今日は、御協力どうもありがとうございました。

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科学技術・学術政策局研究開発基盤課量子放射線研究推進室

(科学技術・学術政策局研究開発基盤課量子放射線研究推進室)