研究開発プラットフォーム委員会 先端計測分析技術・システム開発小委員会(第1回) 議事録

1.日時

平成25年3月22日(金曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省 16F特別会議室

3.議題

  1. 運営規則等について(非公開)
  2. 小委員会における調査検討事項等について
  3. その他

4.出席者

委員

二瓶主査、佐藤主査代理、飯島委員、江原委員、大堀委員、小野委員、杉沢委員、杉山委員、瀬藤委員、中村委員、藤宮委員、森川委員、森口委員、柳沢委員、山科委員

文部科学省

吉田研究振興局長、柿田基盤研究課長、竹上基盤研究課長補佐、

オブザーバー

林JST開発主監、市川JST先端計測分析技術・機器開発推進委員会 総合評価分科会長

5.議事録


 今回の議事は、主査及び主査代理の指名等があったため、科学技術・学術審議会先端研究基盤部会研究開発プラットフォーム委員会先端計測分析技術・システム開発小委員会運営規則第4条の規定に基づき、開会から議題1までは非公開。

【議題1「運営規則等について」】
 科学技術・学術審議会先端研究基盤部会研究開発プラットフォーム委員会運営規則に基づき、二瓶委員が主査に指名され、佐藤委員が主査代理に指名された。
 また、本小委員会の運営規則(案)(資料2-1)、公開の手続き(案)(資料2-2)について事務局より説明があり、承認された。特段の意見等はなかった。

(傍聴者入場)

【二瓶主査】  それでは,議題2に入らせていただきます。議題の2は,「小委員会における調査検討事項等について」ということでございます。本小委員会は,平成16年度より計測分析技術・機器の開発に関する調査検討を進め,JSTの先端計測分析技術・機器開発プログラムの基本的戦略を立案してまいりました。また,本基本的戦略を踏まえ,JSTにおいてプログラムを効果的に推進していただいております。本日は,新しいメンバーでの第1回目の会議となりますので,まずは,事務局並びにJSTよりこれまでの調査検討状況,先端計測分析技術・機器開発プログラムの取組状況等について,御説明をお願いしたいと思います。まずは,事務局より資料3-1の御説明をお願いします。

○竹上基盤研究課長補佐より,資料3-1に基づいて説明があった。

【二瓶主査】  それでは,続いて,JST側から資料3-2,3-3の御説明をお願いします。

○JST先端計測室 児山副調査役より,資料3-2,3-3に基づいて説明があった。

【二瓶主査】  それでは,ただいま,御説明を頂きました資料について御質問あるいは,御意見を頂ければと思います。いかがでございましょう。どうぞ,御遠慮なくどんなことでも結構でございますので,御質問を頂いただければと思います。
【佐藤主査代理】  一つ。
【二瓶主査】  どうぞ。
【佐藤主査代理】  たくさんあって何から質問すればいいか分からないところもあるんですけれども,今度の方針のところで,気になった事項で,一般領域について企業の技術者の推薦を持つというのがありますよね。だとしたら,その企業が一緒になって大学とやるという選択肢というのは,本来あるべきじゃないですか。どういうときに,こういうケースが起こり得るのかというのが分からなかったんですけれども。
【JST先端計測室児山副調査役】  実際に,昨年度ありました事例についてお話いたしますと,企業としては,非常に飛び出た要素技術の課題について,共同研究にまで至らないけれども,もうちょっと,例えば育てて,その上で共同研究をしたいということがあると。それ自体は,企業の名前を出さないで密かに育てていきたいといったことがあるというふうに実は聞いておりまして,組むまでは至らないけれども,その前段階として,もうちょっと,一緒にやるんだったらここまで仕上げてくれれば後はやりますという条件があるということを聞いておりまして,そのためであれば,例えば,ここに企業開発者の推薦というのもございますけれども,科学技術コーディネーターというのが,実は各都道府県でございますとか,大学に張りついておりますので,そういった方々の仲立ち,推薦があれば,一応,将来性が見込める課題,実用化が見込める課題ということで,産学連携に代わるものと認めるという形で今回それを認めるという形にしたいと思っています。
 逆のケースも当然ございまして,企業が持っているもので,大学がついてないというのも当然あると思うんですけれども,この場合は,逆に大学の先生を探してくださいと,少し厳しめな条件で,産学連携を緩めるということではないということだと御理解を頂ければと思います。
【佐藤主査代理】  それは,今のケースだと,シーズを後で企業が引き取ったということは,実例としてあるんですか。
【JST先端計測室児山副調査役】  過去の事例で要素技術からスタートして,今,最後の実用化まできているもので,そういうのを最初,じっと見ていて,途中で引き取ったという事例がございます。それが先ほど,紹介した百生先生の事例でして,あれは,最初の事例では,単にX線の格子ということで何に使えるか分からなかったんですけれども,それが医療用に使えるということで,何社か来たうちから,コニカミノルタエムジーさんをつかまえて,それで,機器開発,実証・実用化にしているという事例があるということでございます。
【佐藤主査代理】  わかりました。
【二瓶主査】  どうぞ。
【藤宮委員】  開発成果の活用のプログラムですね,促進の方で。23年度からということですと,期間が終了して結果が出るというのはこれからだと思うんですが,次のステップにつなぐ上で,ユーザーさんの意見だとか,そういったものの情報というのは,このプログラムの中ではとても重要な感じがいたします。通常ですと,機器を作って開発された結果を委員の先生方が評価されるという形で終了するわけですけれども,是非,この場合には何らかのユーザーさんの意見のようなものを,そういったものがうまく記録に残って,それぞれの技術分野の先生方に何かフィードバックがかかったりだとか,次の申請につながるような,そういった仕組みがうまく活かせたらなという感じがいたしました。もう既にされているのかもしれませんが。
【JST先端計測室児山副調査役】  ありがとうございます。実際に,これを最後に事後評価するに当たって,今の御意見を参考にさせていただければと思います。実際は,幾つかユーザーとなる主に企業ですが,企業がいろいろな装置を使っているという事例はどうもあるようですが,一つ難しい点がございまして,使っているということ自体もちょっと話したくないと,名前は出してくれるなと,だから,論文に載せる際に,それも秘匿条件とすると,代わりにお金は出しますという条件で実は使っているという事例もあるんですが,こういった事例ではなく,なるべく名前を出してでも使っていただけるように誘導していきたいなとは思っておる次第でございます。幾つかのチームからそういう御意見を頂いております。
【藤宮委員】  ありがとうございます。
【二瓶主査】  どうぞ。
【杉山委員】  グリーンイノベーションのところに関しての質問ですが,以前の委員会で,太陽光発電と蓄電池と燃料電池,主に三つに絞ってきまして,それは今後も継続するということでよろしいですか。
【JST先端計測室児山副調査役】  はい,そのとおりです。
【杉山委員】  その上で,実は,応募者の方がグリーン領域の重点化についての理解が必ずしも深まっていないのではないかという反省が,過去にありました。平成23年度に「異相界面におけるパワーフロー現象解明」というキーワードを出したときに,非常に難しいキーワードでなかなか広まらなかったという印象を持っていましたが,これについて,その後いろいろ公開講座を開いたり,その他の方法で重点化への理解が広まったと考えてよろしいでしょうか。あるいは,すでに良い御提案が行われていると考えてよろしいでしょうか。
【JST先端計測室児山副調査役】  グリーンイノベーション領域については,特にワークショップを開いたり何かということはJSTでは行ってないのですけれども,24年度の実績につきましては,資料3-3の別添に記載があるように,さすがに異相界面というところを着目されたということもあって,なかなか応募件数が増えなかったという面はありますが,この中から,幾つか優れた課題を採択することはできました。参考資料の3-1という形で緑色のパンフレットを配らせていただいておりますが,この中でグリーンイノベーション領域の今年度の採択課題につきましては,51ページ及び52ページに記載をさせていただいておる次第でございます。要素技術は2課題,機器開発は3課題ほど,採択をさせていただいております。今,御指摘のあったように,なかなか理解が難しかったという面もございますし,そういった,燃料電池とか太陽電池といった業界への浸透を図るにどうしたらいいかというのは,実は,先般グリーンイノベーション領域の公募要領を決めるに当たりまして,私どもで,グリーンイノベーション領域の分科会を開催いたしまして,御意見を伺っている次第でございます。その場で,もうちょっと,知れ渡るようなそういった申請者が多く集まる学会にちゃんと分かるように告知をしてはどうかという意見があって,例えば,我々の方では,電気化学会誌『エレクトロケミストリー』という雑誌ございますけれども,その中に広告を打つでございますとか,例えば,ホームページがあるところであれば,そこに公募告知につながるURLのリンクを張るとか,そういった様々な手段を通じて,周知を図りたいと考えておる次第でございます。
【杉山委員】  ありがとうございます。
【二瓶主査】  どうもありがとうございました。それでは,次の議題に進ませていただきまして,もちろん,この3-1から3-3の資料に関する御質問,後ほどでも結構でございます。とりあえず,議題を進めさせていただきたいと思います。
 それでは,資料4につきまして,本委員会における今後2年間の調査検討事項(案)を事務局に用意していただいておりますので,御説明を頂きたいと思います。なお,残りの時間につきましては,資料4の内容を中心に皆様に御意見を頂きたい,特に,第1回でございますので,できれば全員の委員の皆様の御意見を承りたい,そう考えておりますので,よろしくお願いいたします。

○竹上基盤研究課長補佐より,資料4に基づいて説明があった。

【二瓶主査】  ただいま,資料4,本委員会の本年度の調査検討事項(案)ということでございます。先ほど冒頭でお話し申し上げました宿題が,新たに裏面に2項目に明記されておるということでございますが,先ほどお願い申し上げましたように,本日の主要な議題は,この調査検討事項(案)をお決めいただくわけですが,その決定に当たって,御意見等を十分に頂きたいと,そういうものでございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 どうぞ。
【森口委員】  私,計測分野は必ずしも専門ではございませんけれども,放射線計測のプログラムに関わったということで,二瓶先生から御指名を頂きました。それで,特に今の資料の中で,研究開発で,国産機器が積極的に利用されるためのシステム構築,あるいはこれらのプログラム自身で開発されてきた機器が,いかに普及していくかという,そういう観点からちょっと意見を申し上げたいと思います。
 放射線計測の場合には,非常に実用性の高いといいますか,現場のニーズがあるということで,ちょっと毛色が違うのかもしれませんが,その中でも,やはりどういう需要があるのかということに関することは,委員会で話題になったりしておりました。その観点から,先ほどの議題のところでお伺いしようか,ちょっと迷ったのですけれども,既に,かなり歴史のあるプログラムということなんですけれども,過去の資金,過去にこのプログラムの中で採択された中で,開発された機器に関する追跡調査のようなものがどのぐらいなされてきたのか。これは私自身もいろいろな競争的資金を受ける中で,最近は事前,中間,事後評価だけではなくて,追跡の評価,終わってしばらくしてから評価を受けるという機会がかなりございます。特にこういうものですと,開発期間が終わってから普及するまでに少しタイムラグがあるかもしれませんので,少し時間を置いた上で,過去の資金で開発されたものが,どの程度使われたのかというような,そういう評価をされたことがあったのかどうか。それは実は,そういうことをやる中で,いろいろな改善点が見えてくる可能性があるのではないかなということで,今申し上げております。
 特に,今の資料の2ページ目ですと,このプログラムで開発された機器の導入を促すための案内を掲載されている,当然,そういうことは必要というか,望ましいことかと思うんですけれども,競争力を持った機器が開発されていれば,必然的にそれは導入されるはずで,ちょっとここ,書きぶりに気を付けなければいけないのは,そういうことを無理に使っていただいているように受け取られてしまうと,これはまた,少し誤解を受ける可能性があるかと思いますので,いずれにしましても,過去のプログラムで開発されたものがどのように役立ってきたのか,もし,そこで何か障害があったとすれば,どういうところに課題があったのかということを見ていくということも,この,ここに書かれたことを進めていく上で,少し役立つのではないかなと思いました。
 特に今回,委員会の名前を「機器」から「システム」というふうに変えられたということで,個別の機器開発だけでは足りない,何かそのシステムということで,足りない部分が障害になっていたということが,もし過去のレビューの中から出てくれば,今回,この名前を改められたということとも少し関わってくるかなと思いましたので,非常に雑駁な意見でございますけれども,最初に口火を切らせていただきました。
【二瓶主査】  ありがとうございます。
 JSTの方から何か,今の御意見に,事例を御紹介いただけますか。
【JST先端計測室児山副調査役】  評価ではありませんが,追跡の調査というものは毎年行っておりまして,明らかにこのプログラムの中でステップアップしたというものは,その中でまだ続けていますので対象外でございますけれども,基本的に毎年度,終わって,このプログラムではなくやっているものについては,今はどうですかと,開発を続けていますかということは,毎年度聞いております。
 その中で製品化に至ったというものが,今御紹介しているとおり24あって,それの売上高が二百数十億円あるというような形になっておるという次第でございます。
 こういったものが売れていて,売れたということは買って使っているわけなので,一応いいわけですけれども,問題は,続けているんだけれども,なかなか次につながらないといった課題は当然出てくるわけでございまして,それは,一つは要素技術の場合ですと,次に行くためのパートナーが見つからないと。研究者としてはこういう技術が面白くて,それをずっと伸ばしていこうと思っているんですけれども,それを現場で使おうとなると,果たして,これだとまだ仕上げるには時間がかかりそうだねという話になって,なかなかまとまりがつかないと。
 こういったものへの対策として,JSTは何をやっているかというと,私どもの産学連携の取組の中で,基本特許があればそれを紹介するという取組があって,新技術説明会というのを設けております。これを過去,ここ2年間ですか,一応やらせていただいておりまして,パートナー探しをやっているというところがございます。
 あともう一つは,先ほど展示会の取組を御紹介申し上げましたけれども,こちら,非常に光る成果だけれども,次のステップに行くには,やはり企業もそうだし,ユーザーがなかなか開拓できていないというようなところがある場合には,そういった展示会に実機を出していただく。実機というのは一番説得力がございますので,そういったところで次のステップに進めるようにというような取組を進めておる次第でございます。
 一つ,取組として,次のステップと今申し上げましたけれども,必ずしも先端計測の中だけでなくても構わなくて,例えばうちから,もっと適切なところであればNEDOでも結構ですし,一番良いのは自社でやっていただけるというのが一番良い取組かもしれませんけれども,我々が後押しできるところは後押ししますし,我々より適切な機関があるのであれば,そちらの方に行っていただくということも後押ししているという次第でございます。
【二瓶主査】  ありがとうございました。よろしゅうございますか。
 どうぞ。
【山科委員】  今の議論で尽きているのですけれども,私も,森口委員のおっしゃったことは非常に重要なことだと思います。もう,既に何年もこの事業をやっているので,既にでき上がった製品,幾ら売れたという金額,そういうことも含めて,しっかりと評価をされたそのデータが,こちらにまたフィードバックされて,それをベースにして,この小委員会での議論を進めていく,その繰り返しがこの先大事になってくるのではないかと思いますので,もう既にJSTの方で始めておられるようですから,その結果を拝見させていただければ有り難いと,そう思っております。
【二瓶主査】  ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。
【佐藤主査代理】  今の点に関連して,前からちょっと言っているのですけれども,いわゆるマザー・オブ・サイエンスという考え方で分析機器を捉えるならば,波及効果というのをどう捉えるのか。要するに,新しいオンリーワン・ナンバーワンの技術を開発して,それを世の中に出して,それは販売台数からすれば大した額じゃないかもしれないと。ところがそれによって,グリーンなりライフなりで生み出された価値というのは当然大きいわけで,そのためにマザー・オブ・サイエンスと言っているんだと思うんです。この技術がものすごく重要な領域だという話になっていると思う。その辺はどうですか。今,何かコメントがありますか。難しいですか。
【JST先端計測室児山副調査役】  定量するとなると,ちょっと難しい面があるのは確かでございまして,例えば今御指摘のあったように,その製品は少額しか売れなかったけれども,思いもしなかったような使い方をされたというのは,なかなか聞いても出てこないという面がございまして,結局,製品を売るのは,最終的に製品化をした企業でございますけれども,細かいことを聞いても,大抵,売り上げたところがどこかというと,当たり前のところしか出てこないと。我々のところで一番売れているのは何かというと眼底検査装置なのでございますけれども,「どこに売れたんですか」というと,何も言わずに「眼科さんです」という話なので,これはもう,当たり前と言えば当たり前の話でして,波及効果も何もあったものではない。
 そうすると,今お答えできる範囲で言うと,何が,違った分野で使われたという例で言うと,先ほど紹介した百生先生の技術というのは二つ使い道があって,一つはさっき言ったように,見えない部分の軟部組織を見るといった展開と,もう一つは材料の方でもそれを使っていると。例えば高分子ブレンドのような,こういった繊維の破断箇所が見えるというようなことを,別の取組で先生がやられているというようなことがあるということ。
 あともう一つ,変わったところでは,軟部組織ではないですけれども,食肉の業界で使われているという話を,実は先生から聞いたことがあります。これはちょっと,売上げが幾らかとか,そういう問題ではないので,出したところで,意外なところで使われているという事例を幾つか挙げられるというのが現状です。
 もう一つ言うと,我々のところで要素技術で開発した成果で,現在,グリーンイノベーション領域につながっているものでメスバウア分光装置があるのでございますが,こちらが,実は太陽電池の評価に使えるということを太陽電池メーカーの方が見つけて,声をかけてきて,今やっと,グリーンイノベーション領域につながったというのは,ある意味では波及効果かと思いますけれども,今申し上げたように,定性的に幾つか事例を挙げることはできるのですけれども,これをどのように定量するかというところは非常に頭の痛いところでして,我々もちょっと,業者さんにいろいろ聞いているのですけれども,例えば定量化する数式ですとか何とかというものは,実はなかなか見つかっていないというのが実情というところでございます。
【佐藤主査代理】  ある意味では使うユーザー側の意見というか,コメントというか,そこをもう少し調べる必要があるのではないかなと。いわゆるこちらから,作って売る側ではなくて,要するに使う側で新しい発見をして,それが,新しいデバイスができたとか,そういうことにつながっていれば,すごく大きな波及効果ですよね,それは。だからユーザー側の意見を出してもらうようなことを,少し取り組んでみてはどうかなという気はするんですけれども,どうですか。誰がユーザーだというのをつかむのが大変なのでしょうか。
【JST先端計測室児山副調査役】  今,最後おっしゃったように,そこのユーザーをつかむというところで何らかの工夫をしなければいけないかなとは思いますが,ちょっと検討させていただければと思います。
【佐藤主査代理】  私は価値を高めたいという意味で,これをやっていることの価値を本当に高めるには,機器の値段では済まないということがあるので,その辺をもうちょっと,定量的とは言わなくても,半定量的でもいいから調査していく必要はあるなという気はするんですけれども。
【二瓶主査】  一つは,プラットフォームを作ろうとしておりますが,プラットフォーム機能の一つは,そういう情報のやり取りを,定量化とあえて言わなくとも,非常に,従来に比べると具体例をきちっと積み上げるような手段に使えないかということですね。恐らく,いわゆるツイッターでつながって,新しい情報が次々増殖していくっていう話はよくありますが,この分野で,まさに機器開発のプラットフォームというのはそういう性格を持ってほしいということは事実なんですね。先ほど来議論にありますように,マザー・オブ・サイエンスの場合の一番典型例は,その装置を使って,全然別の分野の論文が書かれているというようなことが的確に把握できれば,文字どおりマザー・オブ・サイエンスとしての位置付けが明確にできるということですけれども,これは簡単にいかないんですよね。
【佐藤主査代理】  そうですね。
【二瓶主査】  どうすればいいのかを少し教えていただきたいのですが,少し予算をかけても多数の文献を調査し、波及効果を追求することができないでしょうか。文献には必ず測定方法,測定装置を書きますね。ですから全文検索を,ある特定の分野の論文について一遍やってみて,特定の分野で、計測分野の手法がどのぐらい出てくるのかを,きちっとサーベイをするというようなことも,将来は考えてもいいのではないかと思います。
 どうぞ。
【杉山委員】  私もその点につきましては,以前も話したかもしれませんが,学会を使ったらどうかといつも思っています。今回も3番に関連学会というワードが出ておりますけれども,要するに先端計測機器開発予算で作った装置,これが学会で話題になれば,自然とマザー・オブ・サイエンスになっていくのではないかと思います。しかも,先ほどユーザーの声は聞きにくいというのがありました。確かに私もユーザー,企業人ですけれども,ニーズを問われると答えられないのですが,欲しい情報は学会に取りに行きますので,例えば金属学会とか顕微鏡学会とか,あるいは応用物理学会とか,様々なユーザーが集まる学会はたくさんあります。そういう学会で話題になっている,あるいは話題になるような装置であれば,自然と広まっていくのではないかと思いますが,いかがでしょうか。
【二瓶主査】  どうぞ。
【JST先端計測室児山副調査役】  我々の取組ではないんですけれども,ちょうど,先ほど御説明申し上げた開発成果の活用・普及促進をやっていらっしゃるチームの中で,標準化を目指しているチームがあって,ある学会で,自らかなり宣伝をしているところがあって,それは何が目的かというと,ユーザーを主に探していると。多くの方には使ってもらって,それを標準と認めてもらうという活動をしているという話はございます。
 果たして,我々事務局としてやるときに,どのような方法があるかというのはいろいろあるかと思います。JSTと学会との関係の構築の仕方とか,そういうことも含めてちょっと考える必要があるかなと思っております。
【二瓶主査】  どうぞ。
【杉山委員】  例えば,この先端計測機器開発を実施している研究者は積極的に学会発表していると思いますので,そういう事例をJSTの方で積極的にフォローしていく,あるいはさらに評価していくとすれば,自然に,プロジェクトに関わっている研究者もさらに学会発表していくと思います。非常に簡単な方法ではありますが,一案として出しました。
【二瓶主査】  ありがとうございます。
 いかがでしょうか。ほかの話題でももちろん結構でございます。
【森口委員】  すいません,二順目で恐縮です。先ほど,言おうと思ってメモしていて,忘れていたことがあったんです。今の議論に関連してなのですが,学会を通じてとかいうのは非常に重要かと思いますが,一方で学会にしろ,科学技術にしろ,細分化する中で,これだけインターネットが発達していて,当然共有しているであろうということが実は共有されていないということに気づいて愕然とするような場面もございます。ですからある程度,やはり積極的に共有するということを意識していないと,例えば,先ほども例に出しました放射線,事故後の放射線問題に対する対応でも,いろいろな学会でいろいろなことをやられているということの中で,出てきにくい。
 それから,学術論文の場合は,恐らくそういうものの中でお互い参照しあって,十分に,どこで何をやっているかということが共有されやすいかと思うんですけれども,技術開発の場合,必ずしも全部が表に出ない部分があって,そういったことの中で,積極的に何と何が波及し合っているかということを調べてみないと,出にくいというようなことがひょっとするとあるのではないかということがありまして,先ほど来の議論で尽きているのかと思いますけれども,一度,特にこういうプログラムの中でやられたことが,何にどう波及していったのかということを少し体系的に調べてみるということも重要かと思いますし,今後そういったことが,何か場を設けなくても,自然にそういうことがきちんと進んでいくための仕組みが十分であるかどうかというのを,この機会に点検しておくということも重要なのではないかなと思います。
【二瓶主査】  ありがとうございます。どうぞ。
【藤宮委員】  私,ソフトウエアを中心にして仕事をいろいろ進めている関係で,例えば今の測定装置が,複数の領域で使用していただくとなると,大概の場合にはアプリケーションソフトウエアがしっかりあるかどうかとか,そういうこともいろいろ重要になってくるかと思うんです。10年,20年前からずっと比較してみますと,二つぐらい,ちょっと大きめのギャップが広がっているなと感じる部分がございます。
 まず一つは,装置の中をコントロールするためのプログラムを作るということは,機器を開発している企業さんの方でそこを進めているわけですが,実際に要求されるソフトウエアアプリケーションというのはかなり高度になってきています。高度なソフトを作る企業は,実はC言語ですとか,わりと高級言語,それ以上のJavaですとか,最近ですとそういうアプリケーションソフトを使っていると。で,機器組み込みの場合には結果を液晶の表示に,数字でぽっと出すだけでいいんだからという理由で,外にデータを出す切り口がない装置が多いんですね。ファイルか何かに書き込まれたものを一般のパソコンにつないで,ようやく何かするのですが,その情報は開示されていないというケースが1つあります。そのものとソフトウエアの間ですね。
 それともう一つ。高度な解析をしようと,取れたデータをうまく利用しようとすると,どんどん高度な解析手法を取り入れないといけないわけですが,それがどうも,例えばRという統計処理言語がフリーで出ていたりします。圧倒的に日本では使われている数が少ないんです。世界中の人が,数学的にすぐれたアルゴリズムをどんどんサポートして,ライブラリの数というのが今3,000に近づくぐらい,勢いよく,最新のアルゴリズムが載っています。もちろん新しいのでちょっとリスクはあります。ただ,そういった新しいものを使おうとするときに,今度は機器ともつながっていないですし,ユーザーさんもそれを御存じでないことが多くて,うまく組み合わせるとうまくいけそうなのに,なかなか手が届かないという,ユーザーサイドと,機器とアプリケーションソフトの間の二つの溝がどんどん広がっている感じがします。
 例えば今日,スティックタイプのコンピューターなんていうのも持ってきておりますが,この程度で1.6ギガの,ノートPC並みの処理性能が出るんですね。これはデジタルテレビにつなぐタイプです。USBだとかWi-Fi,あと,Bluetoothがついていますから,線がなくても,電源だけはつなげないといけないですけれども,この程度のもので,機器からUSBというインターフェースでつなぐだけでデータが取り込めると。で,Javaという言語で作る会社は幾らでもあるわけです。今はスマホのアプリでも作りますので,そういう乖離をつなぐために,何かちょっとした,これは3,000円から 5,000円ぐらいです。ちょっと信じられないぐらい値段が下がってきています。そういうふうなインターフェースがあるぐらいでも,うまくつないで,高度なアプリケーションソフトを作る企業が,すぐに機器メーカーとタイアップするということがしやすくなるだろうと今は思っています。そういう意味では,これからすぐそうなるのかもしれないですけれども,ただ,機器メーカーさん側に,このプログラムの中では,できるだけそういった標準インターフェースで出る口だけを準備してもらって,ある程度の情報を開示していただくということが,そのアプリケーションを広げるきっかけになるだろうというのが一つございます。
 それからもう一つ。ユーザーさんが実際に現場で取れたデータを解析する上で,アプリケーションソフト,先ほどのRという言語を使えた方が,標準的に,海外でもよく使われているという意味で申し上げましたが,いろいろなところで,例えばプログラムを開発する人間であっても,余りにも最近のアプリケーションは高度になってきていますので,数式処理言語だとか,そういうソフトを使います。例えば,微積分だとかでできる部分というのは限られていたりするのですが,最近,例えば主成分分析をもっと高度化して,逆行列がとれないような演算とか何かみたいな,ランク落ちをするようなものを,いろいろな拘束条件をつけて,統計的な性質を使って推定してあげるという独立成分分析みたいなものを使うと,取れたシグナルの条件が非常に少ないのに,割ときちんと解が求まったりするのです。
 そういうところに,海外の人たちは,リデュースというフリーソフトで,微積分をするプログラムがあったりします。例えば学校で,微積分というのは手計算でできないといけないということで,4年生までがっちりやってしまうと,企業に入ってからそういう便利なツールで,確度を上げてしっかりした答えを出すというときに使えないんです。基本は基本で,確かに教養課程では微分も積分もできないといけないんですが,企業に来て,さて,高度な何かの,とても人間の手ではできないような数式処理をしなければいけないときがあるんですね。それを,リデュースというソフトを使うと,すぐ処理した後,FortranやCのソースコードとして出力もできてしまいます。海外の論文で,新しいアルゴリズムが出たときに,ソースコードとかも公開されて,ちょっと私がチェックしますと,そういった数式処理のもので作ったソフトを組み込んでまとめてあったりするんです。それぐらい,使えるものはばんばん何でもやれということで高度な成果を出しているところもあります。もちろん領域によって,それが使える場合,そうでない場合はあると思うのですが,そういう意味では,数式処理,プログラムやら何やら,統計処理やらというのは,何か本当は学部の3年,4年ぐらいでがんがん使い回して,使えるツールになっていてほしいような気がするのです。そうすると,装置ができてきたときに,先ほどの形で装置から出たデータがうまく取り込める。応用ソフトは更に自由に使えるというあたりがつながってくる。応用範囲ももっと広げられる方向に,そのデータを好きなように加工する人たちが出るという流れができるのではないかと。とりあえず,その二つのギャップを埋める方向というのを,何かうまく組み込んでいけたらいいのではないかと思っています。
 以上です。
【二瓶主査】  今のお話で,適切なデータ端末を持たない機器,そのデータを取り出すためにこういうものが有効である。そのとき,最低限こういう機能はもともと付けておいてほしいというような言い方をすると,何になるんですか。
【藤宮委員】  非常にシンプルな,普通,ボタンを押したり,何かで条件設定をするというのをUSBの中にテキスト列として,単にコマンドとして装置の中に送り込みます。そうすると,装置が勝手に動いた結果をどこかのメモリに保存したり表示するわけですが,それをこちらの方にレスポンスとして,テキスト列を返すという機能を盛り込む程度だけで済むんですね。その垣根はそれほど高くないんです。
 ただ,そういった情報を開示しろとかいう,ざっくりした要望が来ても,機器を開発している方は,多分,情報のどれをどういうふうに開示すればいいのかで止まってしまっているような気がします。
【二瓶主査】  なるほど。今のお話は大変大事なように思うのですが,杉沢さんか大堀さんか,コメントいただけませんか。
【杉沢委員】  機器メーカーとしての立場で申します。弊社には,様々な機器群がございますが,その機器群のそれぞれのインターフェース部分の設計は,その機器の開発者に委ねている部分が非常に強いです。分析機器は非常に有効なデータを出しますけれども,その付加価値をより高めるためには,我々の装置からのアウトプットデータをより多くの方にご利用していただくことが重要です。そのためには、今おっしゃったような,新しい,最新のアルゴリズムを即座に利用できたり,複数の機器から出てきたデータを自由に組み合わせて活用できることが必要となります。分析機器からの出力を機器に組み込まれている既存のソフトウエアで処理するだけでは見いだせない高い付加価値を見いだしていただくためのオープンな仕組みを私どもが開発しております分析機器に埋め込めないものかと,最近,我々も考えております。
 ただ,やはりオープンな出力フォームを定めることや,そのためのプログラムを組み込むということは,かなり負荷のかかる仕事です。特に,不特定多数の状況で使用される可能性のある出力フォームを持つプログラムの開発には,大きな開発リスクが存在しています。たとえば、膨大な投資を行って開発したインターフェースが、仕様の変更により、まったく利用価値のないものになるというようなことです。それを一つの事業部門で,開発するというのは非常にリスクが高いと考えており、まず,弊社内の中である程度規格化しようと検討しております。しかし、ソフトウエアなり通信機器のインターフェース仕様を厳密に決め、各事業部門でそれに合わせて開発するという方式は、開発効率が悪いことに加え、柔軟性に欠け、時代の流れに対応できないという課題をはらんでおります。そこで、インターフェース部分を部品化し、それを各機器に組み込むという開発思想で行けないかを検討しております。この思想で開発できれば、各事業部門は、インターフェース部分の開発から解放されることに加え、インターフェース部品を時代に合った最新のものに変えるだけで、その装置をすばやく時代の要請に答えられるようにできるのではと考えられるからです。この考え方は,特定の会社の装置だけではなく,もっといろいろな会社の装置群や、先端計測事業で開発するようなオンリーワン装置に対して適用してもよいのではと考えられます。例えば、共通的な部品を作り込んで,何か一つのチップにして,これを提供する。このチップを組み込むことで、自動的にインターフェース部分の共通化が達成される。そのような開発があっていいのかなとは思っております。各社の持つ様々な分析機器や大学等で開発されたオリジナルの分析器機器をつなぎ、各機器から出力される膨大なデータからより付加価値の高い結果を、より低いコストで生みだすようなプラットフォーム的なインターフェース開発というテーマを、本小委員会で検討してはどうかと,今のお話をお聞きして,考えさせられました。
【二瓶主査】  ありがとうございました。
【大堀委員】  よろしいですか。
【二瓶主査】  どうぞ。
【大堀委員】  一番シンプルなのはデータの標準フォーマットを作っていくということで,これは主にその分野の学会ですね。エクセルならエクセルのスペクトル部の標準フォーマットというのは,やはりアメリカを中心に,その辺が出てきているので,この標準化を進めていくというのがやはり重要だと思います。
 それから,今のはやりとしてはM2Mというんですか,機械同士がインターネットで勝手に通信するというのが,今,特にICT関係でかなり普及しているのですけれども,そういうところに分析の業界がどうキャッチアップしていくかというところは,やはり考えていかないといけないと。要するに,機械同士が勝手に通信するということが,そろそろ普及し始めている時代ですので,その辺を検討していくことが必要だと思います。
【二瓶主査】  今のお話ですけれども,M2Mで,例えばセンサーをスマート化して,そうすると,それだけで済むことですよね。
【大堀委員】  はい。
【二瓶主査】  それをつなげると新しいシステムが誰にでもどんどんアイデアがあれば現実に作れるという世の中になりますよね。
【大堀委員】  そうですね。
【二瓶主査】  そういうものを,例えば堀場さんのお立場でお作りになるという予定はありませんか。
【大堀委員】  堀場のレベルでできるような話ではなくて,やはりもうちょっと,いわゆる通信機器ですね,例えばNECさんであるとか,東芝さんもそうなのですけれども,やはりそういうメーカーの仕事もいろいろ研究していって,分析装置とどうつないでいくかという話だと思います。
【二瓶主査】  そうですね。
【大堀委員】  今から新しい,NMRにかわるような大きな分析機器を作るというよりは,むしろ単純なデータをどう組み合わせて使うかというところが結構重要になってくるんではないかなと思います。
【二瓶主査】  ありがとうございます。
 さて,ほかにいかがでしょうか。
【小野委員】  ちょっと質問も兼ねているのですけれども,私,非常に当たり前のことしか言わないのですが,国産の技術機器の普及をしなければいけないということなのですけれども,ユーザー側から考えれば,良いものであれば買うわけですよね,良いものだったら外国だろうが国内だろうが買って,でも,お金の限りがありますので,そのお金の範囲で買えるもので良いものを買うということですので,良いものを開発するようなものを我々は選定しなければいけないということだと思うのですけれども,そういう意味で,ここにちょっと,国産機器・技術の導入を図るための工夫を実施しているということが書いてあるんですけれども,公募,どんなことを実施していらっしゃるのか。すいません,ちょっと私,分からなかったものですから。ここの実施中の取組の中に,研究設備等の整備の際に,国産技術を導入するための工夫を実施しているということが書いてあって,どんなことを実施していらっしゃるのかなと思ったのですが。
【竹上基盤研究課長補佐】  今回,補正予算の関係で公募採択するときに,幾つかの公募要領にいろいろ文言を入れさせていただいています。具体的には参考資料の11-1というものになります。これは先端研究基盤共用・プラットフォーム形成事業というものでございますけれども,共用施設を高度化するというような趣旨の事業でございます。通常は各機関が共用施設を高度化したいとき、申請される方は,自分たちが買いたいものを提案するわけでございます。もちろん国内製品の購入を強いるようなことをやろうとは思っていません。各機関が最先端を目指すために購入していただければいいのですけれども,やはりこれは補正予算,言ってみれば日本の産業力の強化と成長ということを名目としてつけられた補正予算でございますので,これを採択するときの評価指標の一つ,具体的にはこのページで言いますと15ページのエ)のところです。例えば「共用拡大や成果創出の貢献が期待できる」。これは事業の趣旨に添うものですけれども,オ)のところですね,「我が国全体の研究基盤の強化に対する貢献が期待できる取組であること」ということで,例えば,関連する技術に関する国際競争力の獲得,あるいはここに国産技術・機器の積極的な活用と,このような感じで入れさせていただいているところです。
 皆さんどうしても,何も提示しないと,余り探したりされないのです。やはり今回,これが記載されたこともあって,国内外,本当に幾つか機器を比べた上で提案されたりしているケースが増えています。こういう工夫をしているのはこの事業だけではなくて,例えばナノテクのナノテクノロジープラットフォーム事業でございますとか,あと,JSTのALCAや,ライフ関係のiPSの関係の事業も同じような工夫を設けております。あと,更にここで宣伝ですが、このページの最後の方,20ページの(6)のその他ということで,JSTが実施する先端計測分析技術・機器開発プログラムでこれまでの多くの研究開発成果が実用化されておりますので,参考にしてくださいねというようなことを記載させていただいております。こういった宣伝をさせていただいているという状況です。
【小野委員】  分わかりました。ありがとうございました。
 先ほど追跡という話が出ていましたけれども,余りうまくいかなかった例というのもちゃんと見据えて,例示として出すというような,そういう努力も必要かなと思いました。
 以上です。
【二瓶主査】  ありがとうございます。どうぞ。
【飯島委員】  私,今回こちらに初めて参加させていただいて,私の専門は医薬とか診断の方面なのですけれども,今度,ライフイノベーションということで,医療機器の開発ということも入れていただけるということで,正直申し上げて随分遅かったなというか,この分野,日本はすごく遅れています。国産,なかなか海外に太刀打ちできない状況で,やはりこれからはライフサイエンスが大事だと言われながらも,なかなか進まないというところで,そこはやはり,結構日本の企業は皆小さくて,なかなかそういう,新しい先端のところはできないという部分もあって,そこは是非国の支援でやっていただきたいなと思うんですけれども,ただ,やはりほかの,物質を見るための,いわゆる先端技術とちょっと違った分野で,もちろんユニバーサルな技術も必要だと思うのですけれども,それ以外に,個々の疾患に対応して,決して新しい技術ではないけれども,新しい診断方法を開発するというような二つの側面があって,なかなか簡単にはいかない分野だと思うので,その辺は,ちょっとこの,マーケット的な視点というか,ニーズをかなり考えていただかないと,すごく努力したんだけれども,マーケットは意外に小さかったというようなこともあるのではないかなと思っています。ただ,ユニバーサルな技術はもちろん,例えばここで,今日はおいでになっていないようですけれども,質量分析装置は,この分野の基礎研究ではものすごく役に立っているので,そういった意味で,新しくユニバーサルに使える技術が出てくれば,それはものすごく歓迎なのですけれども,すぐに具体的な事業化を考えると,逆に今度は個々の診断みたいな形になるので,そこはちょっと,この辺,是非御理解いただいて,是非これは強く推し進めていただきたいと思っています。
【二瓶主査】  ありがとうございました。どうぞ。
【瀬藤委員】  このプログラムでいろいろお世話になりまして,島津さんと一緒に,IMスコープという,今度,3月に製品になった装置を出させていただいたわけなんですけれども,その経験から,いろいろ言いたいことはあるのですけれども,今回,この議論を今まで伺って,一番重要だと思う一つだけ申し上げますと,今,国内市場を守るという,守る話を一生懸命支援する話が出ているんですけれども,もう一つ重要な視点として,やはり国外市場に攻めるという視点が必要ではないかと。私,今回先端計測で作った装置が,今度韓国に入って,そこの客員教授を頼まれ,そしてシンガポールに今度入るので,そこの教授を頼まれ,香港に入るので,その香港大学の教授を頼まれと,そういう中で,では,ヨーロッパはどうしているのかというと,EU中心になって,やはりドイツがかなり戦略的に,ヨーロッパ全体でのプラットフォーム化というのを先導していて,いろいろな,ヨーロッパの中でも,先進的でないと言ったらおかしいですけれども,少し田舎の国があるわけです。そういったところから,中心的なイギリスだとかドイツとかのある研究室に人を集めて教育をし,ネットワークを作り,そこで人材を育成し,その人たちが自分の国に帰って,そこで使ってきた装置を使うと,で,また導入するというサイクルが動いているわけなのです。
 良い装置なら使うという話がありましたけれども,多くの場合,日本もやはりアメリカに留学して,アメリカで自分が使っていた装置を,日本に帰って,慣れているから使うということが,これまでかなりあったのではないかなと思いますし,それは非常に自然なことですので,そういうことを狙って,ドイツもそういうことをやっているんだろうと思うんです。私たちの研究室にも,アジアを中心に,中東も含めて,いろいろなところから留学生が来て,また帰っていきますけれども,そういったときに,慣れている装置を導入してもらえたら良いなと思うんですけれども,そういうグローバルな意味でのネットワークの構築を支援するという視点が少し弱いのかなと思いましたので,コメントさせていただきます。
【二瓶主査】  ありがとうございます。
 今,御専門の先生がおっしゃっていただいて,私ども,前からそういうことを感じていたんですけれども,今の瀬藤先生のお話のポイントの一つは,人を通じて普及させるわけですよね。ですからこれは人材育成でもあるし,それから,何でしょうか,もっと広い意味での,普及のドライブとしての人,それをもっと重視した仕組みを作ると,これはひょっとするとすぐにでも,この事業で,そういうファンド,そういう目的を持ったプログラムというのは作ろうと思えばすぐにでもできますよね,大変貴重な御意見だと思います。ありがとうございます。
 どうぞ。
【杉山委員】  関連して,日本の強みを考えたときに,人と同時に,人が出すデータだと思うのです。日本は、非常に実験データの精度が高いということを材料系ではよく言われています。今回,機器のデータベースをJSTの方で作成しているというお話がありましたので,是非その測定データのデータベース化まで考えて頂ければ、まだ間に合うのではないかと思います。
 例えば三次元データというのは,生物系では随分進んで,国内では整備が進められていると思いますが,材料系はこれからだと思うのです。平成21年から23年にかけての先端機器開発のプログラムで三次元の装置開発を随分やってきています。多分いろいろな成果が出ていると思いますが,この三次元データの取り扱いでは,欧米ではもうDream3Dというソフトが出て,デファクトスタンダード化を狙っていると思います。即ち、いろいろな研究者がDream3Dを使って,三次元のデータを処理しよう,それを更に改良しようとしています。我が国でも材料系の三次元データベースをどう作ろうかという話が始まっていますので,やはり先ほど,人と同じく人が出すデータ,これが日本の強みだと思いますので,計測データのデータベース化というのは,「計測機器の国産の強み」と併せて議論しても良いのではないかと思います。
【二瓶主査】  ありがとうございます。
【山科委員】  ちょっとよろしいですか。
【二瓶主査】  どうぞ。
【山科委員】  今日頂いた資料の4で,既にNMRと光ビーム技術のプラットフォームが認定されて,今後そういうものを拡充していかれるようですけれども,是非,先ほど二瓶先生もおっしゃったように,そのプラットフォームを構築するということに関しては,そんなにたくさんの費用が要るわけではないかと思います。そういうものを,二つだけではなくて,もっと,三つも四つも,日本が中心になるような技術,装置,たくさんあります。先ほどの瀬藤先生の装置なんかもそうですけれども,そういうものを少し広げたようなプラットフォームを,幾つか種をまいておけば,その中から,装置の開発,人材育成とか,それから国内外のユーザーの開拓とか,そういった課題が当然浮かび上がってくる。そうすると,ほかのプラットフォームでも同じ問題が出てくるのではないかと思うので,そろそろ,そういうことをどんどん先へ進めてくださってもよろしいときになっているのではないかなと,そう思います。よろしくお願いいたします。
【二瓶主査】  ありがとうございました。
 それでは,だんだん残り時間が気になり始めましたので,大変恐縮ですが,江原先生。
【江原委員】  江原です。今まで皆さんから,機器の普及とか促進,その他システム化という話が出たので,私はちょっと,この小委員会で話すべきことなのか,ちょっと視点がずれてしまうかもしれないんですけれども,たまたま今回の3番の項目に,「人材育成」という言葉が出てきまして,私,学生さん,インターンシップという制度が日本では非常に弱いのではないかということで,この,最新機器を扱っている,例えば島津さん,堀場さんだとか,そういうところがインターンシップ,いわゆる学生さんを受け入れやすい状況を何とか作れるように努力できないだろうかというふうに思っておりまして,それは,ここでは討議すべき問題ではないのでしょうか。すいません,ちょっと教えていただけますでしょうか。
【柿田基盤研究課長】  そうですね,産学連携教育ということでは,民間企業等におけるインターンシップを進めるための施策を主に高等教育局が実施しております。特にどこの分野に特化してということではないですが,基盤的な技術開発,装置開発というところに特化した,それに応じたふさわしいやり方,こういうことをやったらいいのではないかという御議論はぜひお願いできればと思います。
【江原委員】  ありがとうございます。
【二瓶主査】  インターンシップを促進するというような事柄は,先端計測,分析機器開発,システム開発のプラットフォームの機能の一つとして十分にできると思います。これはもちろん企業さんがなさる場合もあれば,いわゆるNMRプラットフォームの拠点が開催する場合もあれば,いろいろなケースがあって,それの,特に若い学生さんも含めて,若い人の交流を深める,あるいは研修の場を広げる。そういう機能は十分に期待できるのではないかという気がいたします。
【江原委員】  はい。
【二瓶主査】  それでは恐れ入ります,中村先生,お願いいたします。
【中村委員】  今回取り上げられている国産機器の普及に関してなんですけれども,やはり,これは非常に重要な課題であるということはよく分かります。ただ,思うに,背景はそれぞれ,分野によって少しずつ違ってくるのではないかなという気がいたします。それを全て網羅して,調査する必要があるということになるのかなといったところもあるのですけれども,ただ,JSTには非常に幸運なことに,一級の研究者の方々が,JSTの資金で研究をされていますので,そういう研究者の方々というのにお願いして,うまく調査することで,コスト削減といいますか,調査の大変さというのは少し軽減できるのではないかなというふうに,ちょっと,勝手ながら考えておりました。
 それからもう一つ,人材育成に関してなんですけれども,オンリーワン・ナンバーワンの装置に関しましては,やはり,装置を使いこなすこと自身が非常に大変で,それを使いこなせる人がそのまま残ってくれていない,残りにくい背景があるというのを,私,先日北大に行って,スピンSEMのケースですけれども,拝見してまいりました。せっかくJST,先端計測のお金を投入して,世界に誇る立派な機器を作ったにも関わらず,そこの後が,なかなかストーリーが立っていないというのは,やはり非常に由々しき問題でありまして,是非,そういう意味で,人材育成に関する取組ですね。それは広く,人材というだけでなくて,全体のプラットフォーム形成にかかわる話かと思うのですけれども,そこが重要だなというふうに感じております。
 以上です。
【二瓶主査】  ありがとうございます。
 それでは森川先生,お願いします。
【森川委員】  今回のテーマである国産機器の普及促進がうまくいかない理由は幾つかあると思うのですけれども,その中の一つとして,今日議論されていることは非常に重要だと思うのですけれども,せっかくオンリーワンのものを作っても,そこから得られたデータを,いろいろなデータベースと検証するための検索システムとのリンクが,外国の製品と国産の製品とで,やはりいろいろ違いがあって,そこが使いにくいという,そういうお声もいろいろ聞いておりまして,まさに今回のような,本当にシステムとして,機器からシステムにタイトルも改まりましたけれども,その分野の改善に,この委員会で率先して取り組むことは非常に重要だと認識しております。
 それから,普及促進のために展示会,私,JASISの運営委員の1人なのですけれども,それから学会という,機器ができてからの前に,新しい技術であればあるほど,できるだけ研究者の目に早く触れるということが私は大事だと思うのです。だから開発された後,データを作る前に,ある程度その前で,メソッドができた段階で研究者の方が広く知ると,自分たちがその検証に参画したいという,もう少しアーリーステージでの共有というものもあり得るのではないかなと思っておりまして,そういう仕組み一つ一つ,ちょっとした工夫が私は必要ではないかなと。
 直接の話ではありませんけれども,今回科研費が,共同購入が初めて認められて,例えば1,000万の機器を買うのに,5人の方が200万ずつ出しても買えると。これ,私が聞いている限りでは非常に驚きと喜びをもって,現場では受け入れられており,そういう仕組みをちょっと変えるということが,この普及促進策の改善につながるのではないかなと,そう思っております。
 以上でございます。
【二瓶主査】  ありがとうございました。
 それでは柳沢先生,お願いします。
【柳沢委員】  私がここに呼ばれた理由の一つは,しばらく前にNISTEPの方で,ライフ系の分析機器がほとんど,海外製品の比率が非常に高いと,それで問題だと。海外製品のシェアが高いだけではなくて,国内での値段が非常に高いんですね。これは本当に,同じ研究費の使い出が違って来るということ。私はアメリカで20年間ライフ系の研究をやってきたのですけれども,アメリカでの,同じ額の科研費の使い出が倍近く違うという実感が現実にあるわけです。これは機器から,1本数千円の抗体などの試薬までに渡る全てのことで,非常に輸入価格格差があると。これ,輸入品なんだから仕方がないじゃないかというと,そんなことはなくて,例えば日本の企業が競争力のある分野で,アメリカでも輸出されている機器がたくさんあります。例えば生物学用の顕微鏡がいい例ですけれども,ニコンさんとかオリンパスさんとかが強いですね。ニコンやオリンパスの顕微鏡のアメリカでの価格というのは,日本の価格とほとんど同じです。ところがアメリカ製の,例えばDNA次世代シーケンサーであるとか,質量分析計であるとか,そういう必須な機器が,下手するとアメリカで買う価格の2倍以上です。
 この会でこういうことを申し上げて意味があるのか,初めてなので,ちょっとまだつかみきれていないので,非常に空気読めていないかもしれないですけれども,危機感を持っていただきたいと思って発言しております。本当に,同じ研究費の使い出が全く違うということで,この価格差がある理由の一つは,単純なことなんですけれども,これはマーケットの原理ですので,高くても買ってしまうからいけないんですよね,足元を見られている。私,アメリカで同じ機器を安く買えることを知っているので,業者に「並行輸入するぞ」と言うと,途端に値段が半分ぐらいになります。本当にそういうことが起こるんですね。だから何が問題かというと,ここには企業の方もたくさんおられますけれども,大学・研究機関においては,同じものを一銭でも安く買うということに対するインセンティブがないんです。
 例えば補正予算がつきました,何億円の機器を買ってくださいというと,そこでリストしたものは,それ以上安く買っても僕らにとって何の得にもならない。そういうメカニズムがないわけですよ。だからアメリカの企業から,ものすごく足元を見られていて,やつらは高くても買うぞと。分野が飛んでしまいますが,全く同じことが輸入自動車の分野でも起こっているんです。日本人は高くても買うので,例えばメルセデスとかBMWを日本で買うと,アメリカで同じ車種を買う1.5倍とか倍ぐらいの値段で平気で売っているわけですね。非常に単純なマーケットの原理なんですよ。だからそれを,何とか1円でも安く買うことがインセンティブになるようなメカニズムを国が作っていただけると,がらっと変わると思うのです,そこをちょっと申し上げたかった。
 それから,それと関連するんですけれども,政府調達という制度がありますよね。あれがあるだけで,私たち,何か高額な機械を買いたくても半年待たなきゃいけないんです。何の意味もなく半年待たなきゃいけない。下手するとそれまでに次のバージョンが出てしまう。たとえば国産の機器を,どなたかが非常にすばらしいものを開発していただいたとしても,1,200万円以上だと,それを実際に注文するだけで半年かかってしまうわけですよ。しかもほとんどの場合シングルソースでもう決まっているわけですよね,本当の「入札」は研究者のレベルで終わっているわけですよ。現場の人間が,非常に綿密にいろいろなブランドのものを比べて,そのレベルで実は終わっている。そこから先の入札というのは本当にアリバイ作りでしかないわけで,その辺も,国が何か工夫して,弾力的に運営していただけるようにするだけでも全然違うのではないかと。
 すいません。機器の開発とは全然違う,非常に世知辛い,泥臭い話しかできないんですけれども,そういうことを申し上げたいと思いました。
【二瓶主査】  ありがとうございました。
 本日は第1回ということで,先生方全員に御発言をお願いしておりますけれども,大変貴重な御意見をたくさん頂きました。もちろん今回の議論は,今後の議論に,本格的な,きちんと整理した形で盛り込んでいくという努力をしたいと思います。
 一応これで議事は終わらせていただきまして,事務局から何か連絡事項はありますか。

〇竹上基盤研究課長補佐より,次回のスケジュールについて確認があった。

【二瓶主査】  ありがとうございました。
 実は,大変大事なことを一つ忘れておりました。先週一週間かけて,ヨーロッパで,先ほどちょっと話題が出ましたが,ECの本部等を尋ねて調査に行ってまいりました。概略を佐藤先生から御報告,御紹介をお願いいたします。
【佐藤主査代理】  ちょっと,準備したのはかなり膨大なので,5分くらい時間をください。
 先週,一週間かけて,二瓶主査を含めて調査を,ヨーロッパのプラットフォームの在り方みたいなものを調査してきました。今回,プラットフォームの重要性が議題の中にも,次の課題の中にも出ていて,これが非常に重要な,単一のものを開発するというのはもちろんやらなければいけないのですけれども,それらを集積して新しい価値を生み出すという意味でのプラットフォームの形成というのが非常に重要な役割をするなということで,調査に行ってきたわけですけれども,一言で言うと,やはりプラットフォームを制するものは世界を制すると。この言葉がずっと前から,いろいろな分野でこう言われてきていて,特に半導体だとか,それからソフトウエアの分野だとかいうことも大体言われてきているので,そういう印象なんですね,今回行ってきて。それで,行ってきた場所は5か所,日本電子のパリ事務所,これはNMR関係のことについて調べたくて行ったんですけれども,それからEUの研究・イノベーション総局,それからIMEC,ベルギーの,これは半導体の最先端をやっているIMECという研究機関ですね。それからJRCというのと,あと,イタリアのフローレンス大学の中のNMRセンターに行ってきました。ちょっと時間がないので,NMRと,それからIMECの関連だけ,少しお話をさせていただきます。
 先ほど来,瀬藤先生からもお話が出ていましたけれども,EUはNMRの拠点を11か所設けて,11か所だから11か国にわたってNMRの拠点を設けていると。実はほとんどがブルカーの製品でして,99%ぐらいですかね,あれは,もうほとんどやられていて,日本電子のものはほとんど入っていないという状況で,大変な状況だなというのが分かったのですけれども,彼らのやり方の非常に明快なのは,プラットフォームとして考えたときに,ファイナルターゲットが結構明快なんですね。例えばバイオNMRとか,バイオインフォマティクスという,そういうハードとソフトを組み合わせて,要するに,先ほど藤宮さんが言ったような,たんぱくの立体構造をマルチスケールで解析して,それをデータベース化して後で使えるようにするとか,そういう役割と,それから生体関係の予測みたいなものをやって,いわゆる創薬ですね,創薬に結びつくようなところまでターゲットを設けているとか,そういう大きな二つのターゲット,まさにライフイノベーションにつながるようなターゲットを明快にして,NMRで,それを実際に,ハード・ソフトを組み合わせて,解析して,そういうものを作っていく。しかもそれを欧州の11か所が協力してやる。ということは,フローレンス大学では実は11台のNMRが入っていて,400MHzの周波数から最先端の960MHzまでそろっているんですね。これまた壮観だったのですけれども,そういうのを使って,非常に詳細にいろいろ調べているものが11か所あるということは,ブルカーの製品が,ヨーロッパで今150台から200台ぐらいあるというふうに言われていますので,100台ぐらいはプラットフォームの拠点として使われていると。そうすると,それらが組み合わさって,単独の国ではなかなかできないんだけれども,新しいバイオ系のデータベース,あるいは創薬関係のものができて,早くイノベーションを起こしていける,そういう可能性を持っているなというのを痛感させられて,日本の場合,今,NMRの拠点を整備し始めたのですけれども,それが本当の意味でどのぐらい効果を発して,今後どういうふうにしていかなくちゃ駄目なのかというのは,これから多分,この委員会も含めて取り組まなくちゃいけない課題かなと感じました。それと,人材育成も結局その中でやれているんですね。
 それからあともう一つ。時間がないのでいきますけれども,IMECという,いわゆる半導体の最先端の研究機関を見に行ったんですけれども,ここはもともとルーベン大学というところで,一研究室か二研究室から,政府が金を出して育てた企業なんです。今はもう企業なんですね。それで,今2,000人の従業員がいて,1,600人がポスドクを含めた研究者なんですね。あと,客員研究員で,日本の企業の研究者も含めて,客員研究員が600名ぐらいいます。だからすごい組織になっていて,それで,年間の売上げが,日本円にして400億円ぐらいの売上げになっているんですけれども,それはほとんど,半分ぐらいがロイヤリティー収入なんです。あと,日本の半導体は厳しい状況になってきたんですけれども,IMECにはすごく投資をしているような感じで,そこで,彼らの戦略としてはデファクトスタンダードを作ろうとしているんです。結局,最先端の半導体の,いわゆる20ナノ委細の最先端の技術。先ほど藤宮さんが見せてくれたそういうコンピューターも,結局は半導体の技術があれだけ進歩しているからできるわけで,そこのところをどんどんやっている。それから,今は300ミリファイのウエハーで流しているものを450ミリファイにするという,これはものすごい金がかかるのですけれども,そこでパイロットラインを作ってしまうと。2015年までに作って,世界の最先端を走るよと,それによって世界のデファクトスタンダードを作りますよと,そうすると,そこに日本の企業とか材料メーカーとか装置メーカーが一緒に入ってやらないと,世界標準にならないものですから,売れないんですね。だからどんどん,日本の企業は盛んに参加している形になっている。そういう仕組みが,最先端の研究をやっていることもあって,世界のトップレベルの研究者が,募集をかけると応募してくるんですね。で,全部入ってきて,それで振り落とされて,また新しい研究者が入ってきてという,ものすごく良い循環で,すごく高度な研究機関になっている。
 それを日本の場合,では,日本はどうするのかという話になるんですけれども,筑波の産総研のティアという,いわゆるアリーナがあるのですが,実はあそこはIMECをモデルにして作ろうということでやってきているんです。ところが,例えばパイロットライン1つとっても45ナノなので,世界に通用することが難しいわけです。だからそういうものも含めて,何て言いますか,IMECモデルみたいなものを本当に乗り越えるにはどうするのかという,そういうことのためのプラットフォームをちょっと考えないといけない。
 今回,システムというところを二瓶先生がお入れになったのは,恐らくシステマティックにとらえて,単一製品を,オンリーワン・ナンバーワンで開発すると同時に,それらを組み合わせてどれだけ最大の効果を出せるかということまでシステム作りをしないといけないのではないかと。さすがにIMECも,システム最適解の,システムデザインというところまでなかなか踏み込めていないのですよ。現実に,私の見た感じでは。だから突破口としてあるとしたら,そういうところを,ちゃんと最適にデザインして,プラットフォームの中で新しい価値を生み出すということがもしできれば,かなりのところに行けるなと。
 NMRを本当にどうするのかというのは,これは国家戦略でもう1回考えないと,今のままでは非常に厳しいというのが,今の私の結論ですけれども,あと,詳細はまとめて皆さんに紹介して,また新しい政策立案のための参考として議論していただければと思いますので,大体,以上です。すいません,長くなりました。
【二瓶主査】  ありがとうございました。
 まさに一週間経つか,経たないかの話でございますので,ホットな話題をありがとうございます。
 それでは,本日は以上をもちまして,第1回の先端計測分析技術・システム開発小委員会,閉じさせていただきます。ありがとうございました。

―― 了 ――

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