今後の光・量子ビーム研究開発の推進方策について

平成25年1月31日
科学技術・学術審議会 先端研究基盤部会

1.検討の背景と目的

  • 「光科学技術」や「量子ビーム技術」は、これまでそれぞれが別々の観点から研究開発の推進方策が検討されてきたが、最近は技術や理論の進展により一体的に検討すべき段階に。
  • 第4期科学技術基本計画においては、光・量子科学技術について、「領域横断的な科学技術の強化」として、「複数領域に横断的に活用することが可能な科学技術や融合領域の科学技術に関する研究開発を推進する」と明記。
  • 我が国のこの分野における世界トップレベルの研究開発力に基づく、高い製造技術力の活用により、今後の日本の成長を支える大きな柱となることが強く期待され、特に来年度以降早急に取り組むべきことを中心に取りまとめ。

2.施設・装置・技術等の開発・高度化とその有効利活用について

  • 施設の連携利用による新たな研究開発を提案するなど相乗効果による今まで以上の成果の創出を促進するコーディネーターやアドバイザー等の配置による利用者への支援等の強化が必要。
  • 新たな研究分野の開拓や利用研究の発展と、施設等の開発・高度化を同時に推進するため、施設設置者と利用者が明確な目標を共有した上で連携・協力して課題に取り組むとともに、利用研究を開拓していくパワーユーザーが必要。
  • 施設間の垣根を越えた取組による光・量子ビーム技術におけるプラットフォーム化を更に推進していくことが重要。

3.課題解決型の研究開発・利用研究の推進について

  • 産業界を含め、課題を抱える利用者のニーズに即した装置開発や技術開発の推進が必要。また、利用者がそれを使いこなせるよう、施設側のコーディネート機能の強化、利用支援の更なる強化が必要。
  • 新たな課題への対応や潜在的利用者の掘り起こしを進めるために、分野融合の促進、境界領域や中間領域の開拓、複数施設の相補的・統合的利用の促進、今後応用利用と利用者拡大が期待される分野の開拓などの先導的事例研究の推進が必要。

4.開発成果の利用促進・社会への還元等について

  • 出口を見据えた研究開発の推進には、大学や研究機関がコーディネーターとなり、大学教育や研究開発の段階から企業が参画し共同で実施するプロジェクト等の推進が必要。
  • 新たな加速器技術や小型中性子源の研究開発を進めるとともに、その成果を産業界へ移転し、我が国の産業競争力の強化につなげる取組が重要。

5.人材育成について

  • 我が国の最先端施設・装置等を持続的に維持・発展させ、利用研究を拡充していくため、専門の技術者の育成とキャリアパスを確保するシステムの構築が必要。  
  • 光や量子ビームを総合的に使った技術開発や基盤技術開発により、広く光や量子ビームを活用できる人材を育成すべき。

6.国際的な取組について

  • 国際協力を戦略的に進めていくためには、国内関係機関をネットワーク化し、国際協力の進め方や各機関の役割について、検討し調整できる体制の構築が必要。
  • 知的財産権の扱いや他国の情勢などを考慮しつつ、常に国際協力を維持向上していけるよう、先端施設の戦略的な活用が必要。

7.今後5年程度に集中して取り組むべき課題等について

産業競争力の強化を実現する先導的研究開発によるイノベーションの促進

従来の経験則や網羅的解析によるものづくりから、我が国の強みである先端装置・技術等を活かした原理の解明に基づくものづくりへ「ものづくり力」を革新し、それを支える技術開発・研究開発を推進。 

横断的利用の成功事例となる利用研究とその実現に向けた技術開発の推進

特に先導的な研究開発・利用研究が期待される、光科学技術と量子ビーム技術の連携を促進し、分野融合や境界領域の開拓の推進、横断的利用を行う研究者数の増加、コーディネーターの資質を有した研究者等の育成を図る。  

産業界を含めた利用者の裾野を大きく広げる研究開発等の推進

産業界との連携促進、光・量子ビーム技術を支える革新的な加速器技術等の開発、施設の利便性の向上や利用機会の提供等により、潜在的利用者の掘り起こしや利用分野の開拓等を推進。 

研究開発と一体的な若手研究者等の育成の推進

要素技術開発を発展させられる人材や、幅広い分野で活躍できる人材育成のため、研究開発等の取組と一体的に若手研究者等が先端施設・設備・技術等に触れる機会を設ける取組や産学が連携・協力した取組等により、人材育成を推進。 

 

以上を踏まえ、「光・量子ビーム技術の融合により基礎研究から産業応用・基礎技術開発にいたる幅広い新たなアプローチによる、グリーン・ライフイノベーションへの貢献」を今後5年程度に集中して取り組むべき課題解決型の研究テーマとする。

 

○取り組むべき課題解決型研究開発のテーマの例

<グリーンイノベーション>

  • 新エネルギー変換等を目指した光反応ダイナミクスの解明
  • 分散エネルギーシステムの実現を目指した電池用電解質膜の高性能化
  • 新物質材料の創出を目指した高エネルギー密度現象の解明と制御

<ライフイノベーション>

  • 光触媒反応等の応用を目指した生命の電子構造ダイナミクスの解明
  • 創薬や機能性材料開発への貢献を目指したタンパク質の化学反応プロセスの解明

<基盤技術開発>

  • 光・量子ビーム科学を支える加速器等の高度化・小型化を目指した研究開発の推進

お問合せ先

研究振興局基盤研究課量子放射線研究推進室

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(研究振興局基盤研究課量子放射線研究推進室)