量子科学技術委員会 量子ビーム利用推進小委員会(第5回) 議事録

1.日時

平成29年2月3日(金曜日)~平成29年2月7日(火曜日)

2.場所

開催方法:書面審議による

3.議題

  1. 高輝度放射光源とその利用に関する中間的整理(案)について

4.出席者

委員

雨宮主査、石坂委員、内海委員、尾嶋委員、金子委員、岸本委員、小杉委員、近藤委員、高橋委員、高原委員、田中委員、山田委員

文部科学省

上田研究開発基盤課量子研究推進室長、橋本研究開発基盤課量子研究推進室室長補佐

5.議事録

【橋本補佐】 第5回量子ビーム利用推進小委員会を書面審議にて開催させていただきます。前回から修正した中間的整理(案)を資料1として、パワーポイントの概要資料を資料2として添付しております。それではどうぞよろしくお願いいたします。
【近藤委員】 量子ビーム利用推進小委員会では、様々な角度から高輝度放射光源についてのお話を伺うことができ、大変多くのことを学ばせていただきました。誠にありがとうございました。皆様の御尽力でまとめられました「高輝度放射光源とその利用に関する中間的整理(案)」を拝読いたしました。今後、新しい光源の在り方を検討する上で、本中間的整理(案)が小委員会はもちろん多くの量子ビーム関係者の皆様のお役に立つものになりますことを小委員会の末席に連なる者として心から願う次第です。
 さて、本中間的整理(案)につきまして2点御提案がございまして、書面審議としてメールを差し上げます。
 一つ目は、将来展望に関する記載についてです。本中間的整理(案)で強く指摘されている我が国の高輝度軟X線利用環境の立ち遅れを一刻も早く解消し、先端光源で利用研究を展開できるようにすることが喫緊の課題であることは疑いの余地がありません。そのために、実現可能なものを迅速かつ確実に作ることは非常に重要です。現時点の技術で実現可能な仕様を注意深く選定するのは極めて大切なことだと思います。ただ、その結果選定された仕様を、将来は乗り越えてさらに先を目指す活動は続けていかなければ、当たり前のことですが、サイエンスや技術の発展は続いていかないと思います。第3回小委員会で質問させていただきましたが、リングのアップグレードでコヒーレンス比を上げることはできないとのことでした。光源の設計で決まる制約がいろいろなところにあると思います。そうであれば、直近で検討する光源の役割を明確にしながら、それに続く将来の日本の放射光源をどうしていくかを検討することはセットで行わなければいけないことだと思います。もちろん、それはこの小委員会だけで議論することはできないことで、オールジャパンで議論すべきことだと思います。「6.終わりに」の最後に、直近で検討する光源に関するヒアリングについて触れられていますが、その光源のミッションを明確にし、それに沿って最大限のパフォーマンスが出るようにするためにも、日本の放射光源の役割分担を含めた将来計画をオールジャパンで議論することが望まれることを最後に追記してはいかがでしょうか。
 二つ目といたしまして、中間的整理(案)における光源性能に関する技術的な検討について非専門家であるため理解できない点がありまして、説明のお願いと関連する御提案をさせていただきます。中間的整理(案)12ページ20~21行目に「目標とすべきエミッタンスについては、実用電流に基づく実効エミッタンスとゼロ電流エミッタンスの乖離(かいり)が小さい領域とすることが、効率的な設計範囲である。」とありますが、これが今回検討する光源のエミッタンスを決める前提条件になっていますので極めて重要です。しかしながら、多くの非専門家にとって、何を指標にして「効率的」なのか分からないと思いますので、説明の追記をお願いしたいと思います。小委員会の限られたメンバーで限られた時間での議論を基にまとめられた中間的整理(案)ですので、足らない点があるとしても致し方ないことだと思います。私からプレゼンさせていただきました触媒化学の話など、特に触媒分野の別の方から見れば足らない点が多々あると思います。そのような点を補い、小委員会での検討をブラッシュアップしてよりよいものにしていくために、本中間的整理の発表後にパブリックコメントを募集してはいかがでしょうか。以上の2点を御提案させていただきます。
【上田室長】 近藤先生ありがとうございます。一部事務局の上田よりお答えします。パブリックコメントですが、中間的整理を経て、最終的な報告書がとりまとまるような段階で、主査とも相談し、検討したいと考えておりましたところ、お伝えいたします。現時点では中間的整理ということで御理解いただければと存じます。
【内海委員】 中間的整理(案)、これまでの議論を反映した良くできたものになっていると思います。 小職の発言についても、意図するところをうまく書き込んでいただいており、感謝いたします。小職は加速器の専門家ではないので、田中委員や他の皆さまの御意見をお伺いしたいところですが、「4.求められる性能等の技術的事項」の章については、かなり踏み込んだ記載になっているような感想を持ちました。究極のエミッタンスを指向するのではなく、実現性や安定性など実効的なことを十分考慮すべし、ということに賛同いたしますし、委員会でもそのような合意形成がなされているものと理解しています。ただ、世の中には、別意見の方もあるはずで、この委員会としての報告書の記載については、あまりに鋭角的なギラツイたものにする必要もないような気もいたします。例えば、MAX-IVでうんぬんというような部分については、これをあえて書かなくても十分に意図は伝わるのではないでしょうか。あくまで、小職の感想ですので、変更を求めるというような強い意見ではありません。委員の皆さまの御意見をお伺いしたいと思うとともに、最終判断は雨宮主査の判断にお任せいたします。
【田中委員】 近藤委員の2つの提案に対しコメントいたします。
 1点目について、少し誤解があるようですので以下に説明いたします。「第3回小委員会で質問させていただきましたが、リングのアップグレードでコヒーレンス比を上げることはできないとのことでした。」とは科学的に正しくはありません。リングベースの光源において、エミッタンスを下げれば、コヒーレンス比を上げることができます。一方、第3回小委員会で私と分子研の小杉先生がコメントした内容は、「コヒーレンス比が高いことが実験的に決定的に重要なものは、今回検討しているリング型のカオス光源ではなく、自己増幅型自発放射(SASE)による自由電子レーザーを用いる方が良い」ということでした。イタリアのFERMIやSACLAでも波長により現状でもすぐに利用できる状況です。1つの光源に全ての要求を課していくと、光源設計が歪(いびつ)になり得策ではありません。現在のリング型カオス光源は、最終的にはContinuous-Wave(CW)のレーザーソースに進化していくと予想され、現在はその途上にあります。現時点で高いコヒーレンス比を利用する場合は、SASE型のSXFELを考えるべきだと提案しました。
 2点目に関しても、委員会でも申し上げておりましたが、再度コメントします。回折限界(この定義も極めていい加減)を与えるエミッタンスは主スペクトル領域に依存して決まります。軟X線を1keVで代表させ、そのエミッタンスを実現するリングの建設は不可能ではありません。そもそもエミッタンスを下げることは可能です。一方で、エミッタンスが下がっても実際の電流値が少なく、結局光子フラックスが満足できなくては本末転倒で、実験ユーザーは実際ハッピーではないと考えます。したがって、実用電流に基づく実効エミッタンスとして、光子フラックスを落とさずに目標エミッタンスを得られるか、という観点が重要です。非効率的とは、目標エミッタンスよりゼロ電流エミッタンスを大きく下げ(オーバースペック)ないと、実際に使用する際に「目標性能」が得られないことを指します。例えば、10mAだとエミッタンスが小さいが、それを500mAで使用するとエミッタンスがとっても大きくなってしまうということがあるわけです。効率的とは、実用電流において、実効エミッタンスが、ゼロ電流エミッタンスとほぼ一致している、すなわち、設計通りのエミッタンスが実際の使用時に、通常通りのリングを設計することで得られることを意味します。効率的と非効率的の違いは、同じ目標性能を得るために余分にコストが掛かるかどうかという違いを産みます。オーバースペックを追求していくと、コストが上がります。利用者にとって、ここは重要ではないかもしれませんが、加速器建設コスト、運転コストを抑えるという視点は加速器を建設する立場では、極めて重要なファクターです。以上、私からのコメントでございます。
【岸本委員】 産業利用からの視点も盛り込まれており、中間的整理として大きな意見はございません。本文、見落としているかもしれませんが、産業界の意見として言われていたように思いますが、産業界はこれまで軟X線を利用する機会が少なく経験も少ないことから勉強や経験を積む場が必要という話があったかと思います。産学連携・両輪を回すといった文言は入っていますので、特に明言は必要ないのかもしれませんが、御検討いただけましたらと思います。
【橋本補佐】 予定の時間になりましたので質問・意見の受付を終了とさせていただきます。なお、頂いた御意見について後ほど主査からコメントがあるかもしれないこと申し添えます。今後につきましては、雨宮主査と相談の上、御連絡させていただきます。
【雨宮主査】
近藤委員の御意見に対して:
>> 「6.終わりに」の最後に、直近で検討する光源に関するヒアリングについて触れられていますが、その光源のミッションを明確にし、それに沿って最大限のパフォーマンスが出るようにするためにも、日本の放射光源の役割分担を含めた将来計画をオールジャパンで議論することが望まれることを最後に追記してはいかがでしょうか。
→「5.考慮すべき事項」の最後に将来計画の観点を追記したいと思います。
>> しかしながら、多くの非専門家にとって、何を指標にして「効率的」なのか分からないと思いますので、説明の追記をお願いしたいと思います。
→「効率的な設計範囲」の箇所に説明を追記したいと思います。
内海委員の御意見に対して:
>>例えば、MAX-IVでうんぬんというような部分については、これをあえて書かなくても十分に意図は伝わるのではないでしょうか。
→evidence-based な記述であれば、海外施設の現状について具体的な記述をすることは、特に問題はないと思いますが、いかがでしょうか。
岸本委員の御意見に対して:
>> 本文、見落としているかもしれませんが、産業界の意見として言われていたように思いますが、産業界はこれまで軟X線を利用する機会が少なく経験も少ないことから勉強や経験を積む場が必要という話があったかと思います。産学連携・両輪を回すといった文言は入っていますので、特に明言は必要ないのかもしれませんが。
→5.考慮すべき事項の産業利用において、既に十分に趣旨を汲んだ記述になっているものと思いますので、再度御確認お願いします。
以上を踏まえて事務局と連絡を取り、改定したバージョンを送付します。よろしくお願いします。
(「異議なし」として了承)


―― 了 ――


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