大強度陽子加速器施設評価作業部会(第1回) 議事録

1.日時

平成24年3月7日(水曜日)16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省 16階 特別会議室

3.議題

  1. 部会の設置趣旨・運営等について
  2. J-PARC計画の概要及び現状等について
  3. 中間評価(平成19年6月)における指摘事項について
  4. 評価作業部会の進め方及び検討事項等について(案)
  5. その他

4.出席者

委員

福山主査、岡田委員、長我部委員、梶田委員、金谷委員、熊谷委員、小森委員、田村委員、鳥養委員、西島委員、山縣委員

文部科学省

柿田基盤研究課長、澤川学術機関課長、原量子放射線研究推進室長、藤澤加速器科学専門官、藤田学術機関課長補佐、阿部量子放射線研究推進室長補佐

オブザーバー

永宮J-PARCセンター長、池田J-PARC副センター長、西川J-PARC副センター長

5.議事録

 【阿部補佐】

 本日は、お忙しい中、ご出席いただきましてありがとうございます。まず、会議開催前に事務局からお知らせをいたします。まず、本作業部会の主査のご紹介をさせていただきます。本作業部会の主査につきましては、科学技術・学術審議会先端研究基盤部会及び研究計画・評価分科会原子力科学技術に関する委員会並びに学術分科会研究環境基盤部会のそれぞれの運営規則に基づきまして、各委員会の長の合意の下、福山委員が主査に指名されております。以降、本作業部会の議事は福山主査に進行いただきたいと思います。

 また、会議の公開につきましては、後ほど確認させていただくことになりますけれども、もしよろしければ、今もう既に着席いただいております傍聴席の方々がいらっしゃいますので、このまま進めさせていただきたいと考えておりますけれども、よろしいでしょうか。

 それでは、主査、よろしくお願いいたします。

【福山主査】

 ご紹介いただきました本作業部会の主査を務めさせていただきます東京理科大学の福山です。どうぞよろしくお願いいたします。

 本日は、大強度陽子加速器施設評価作業部会、その第1回として皆様にご参集いただきました。この作業部会では、ご存じ東海村にございます大強度陽子加速器施設、J-PARCについての評価・審議を行うものです。皆様、ご多用のところご参集いただきまして、まことにありがとうございます。活発な、率直な意見交換を賜れればと思います。そして、今後のJ-PARCのアクティビティ全般に対して役に立つ報告書をまとめていければと考えております。ご協力、どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、本作業部会の事務局を代表して柿田課長からどうぞよろしくお願いします。

【柿田課長】

 基盤研究課長の柿田でございます。本日はご多忙のところご出席賜りまして大変ありがとうございます。また、委員の皆様方におかれましては、本作業部会の委員をお引き受けいただきまして大変ありがとうございます。

 まず、本日のご評価をいただきますJ-PARCでございますけれども、昨年の大震災で大変大きな被害を受けました。10か月という、これは短期間と言っていいと思いますが、その期間の中で大変なご尽力、ご努力をいただきまして、永宮センター長のもとで復旧に向けた取り組みをしていただきまして、1月には利用がスタートしている、再開しているということで、この場をおかりしまして心より御礼を申し上げたいと思います。

 J-PARCは申すまでもございませんけれども、中性子だけではなくてミュオン、各種中間子、ニュートリノ等々、広い分野の研究を行うことのできる装置であり、またかつ多額の公費を投資してできたものでございます。そういったことで、これからいよいよ本格的な利用が進み、多くの成果が出ていくということが期待されているわけでございますけれども、そういった成果を確実に出していく、社会に貢献する、科学技術で社会の課題に対応していくということを担う非常に重要な基盤施設であります。そういったことで、これから成果をどんどん出していくということが私ども行政、また、施設の設置者の責務であると思いますし、また同時に、この国費を投じてつくられた施設を利用するユーザーにも一定の責任、責務というものも課されるのかなと思いますけれども、申すまでもなくやはり我々行政としての責務が一番大きいということは言うまでもないところでございます。

 本日、この部会でこれから評価をいただくわけですけれども、ぜひ今後の本格的な施設の利用の展開ということに向けまして、厳しくも温かくご評価をいただきまして、よりよい利用、より活発な施設の利用と成果の発現、創出に向けた利用しやすい体制、そういったものをどう構築していくかということにつきまして建設的なご意見をちょうだいできればと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【福山主査】

 課長、どうもありがとうございました。

 J-PARCに関して歴史的な位置づけ、サイエンス、科学研究の上ではまさにチャレンジングな時期になっている。同時に大変な国費を投じたということで、社会的責務があるということです。これからの本格的な利用を前にして、よりこの施設が有効に活用できるように、ここで意見交換ができればと思います。課長がおっしゃいました。厳しく、だけど、同時に温かくと。建設的なご意見を賜れればと思います。どうぞご協力、お願いいたします。

 次に事務局から配付資料の確認をお願いできますか。

【阿部補佐】

 お手元の資料をご確認ください。議事次第にありますように資料1-1から始まりまして資料4、それから、机上資料として参考1から6まであります。資料1-1が運営規則の抜粋、資料1-2が本計画の経緯、資料1-3が本作業部会の設置について、資料1-4が審議会の組織図、資料1-5が本作業部会の委員名簿。それから、資料2がJ-PARCの現状、資料3が前回の中間報告におけます指摘事項の概要、資料4が本作業部会の進め方(案)。

 それから、机上配付資料としましてパンフレットと事前評価報告書、平成15年、19年の中間報告書、平成20年の懇談会報告書、それからJ-PARCの予算推移といった資料がお手元にあるかと思いますけれども、欠落等ございませんでしょうか。

【福山主査】

 皆様、よろしいでしょうか。資料、いろいろございます。特に問題ないですね。公開に関してご議論、確認したいところなんですけれども、もう既にこの会議は基本的に公開で進めるということになっております。よろしいですね。

 ここから議事に入りたいと思います。まず、部会の設置の趣旨について、事務局からご説明をお願いいたします。

【阿部補佐】

 それでは、お手元の資料1-2をご覧ください。大強度陽子加速器計画の経緯ですけれども、まず、平成12年に事前評価が取りまとめられ、平成13年に建設が着手されております。平成15年及び平成19年にそれぞれ中間評価が実施されました。また、平成20年には中性子利用施設の本格的な運転に向け、多くの研究者等の方々に最大限利用されるための方策について検討が行われまして、平成21年には中性子線施設が共用促進法の対象施設になっております。

 また、順次各施設の利用が開始されまして、平成22年にはスーパーカミオカンデにてJ-PARCによるニュートリノの検出に成功するなどの成果が上がっていたところでございます。そうした中、1年前、3月11日の震災により被災しまして運転が停止しましたけれども、本年1月に運用を再開するとともに、中性子線施設につきましては共用促進法に基づきまして、広く研究者等の皆様にご利用いただく共用運転を開始したところでございます。

 それから、お手元の資料の参考6にございますけれども、J-PARC関連経費の全体について、参考まで配付させていただいております。本体建設費としましては1,524億円、平成24年度の予算案まで入れました総額としましては約2,600億円になっております。

 続きまして資料1-3をご覧ください。大強度陽子加速器施設作業部会の設置についてというものでございます。まず、設置の趣旨につきましては、前回の中間評価実施以降5年が経過しておりまして、大規模研究施設の評価は、おおむね5年を目安に評価することとなっております。共用施設としての役割や機能に関することを中心として中間評価を実施し、あわせて今後の方向性を示していく必要があるということになっております。

 2点目にありますとおり、主な検討事項としましては震災による影響と復旧状況について、前回の中間評価における指摘事項への対応状況について、各種実験施設における円滑な利用体制の構築について、国際研究拠点化について、物質・生命科学実験施設の共用の促進について、そして今後の課題について、といった項目が検討事項となっております。

 設置の形態につきましては、資料1-4にございますとおり、先端研究基盤部会、研究環境基盤部会、原子力科学技術委員会、この3つの会議体の下に共同設置という形で設けさせていただいております。

 最後に資料1-5をご覧ください。本作業部会の委員名簿となっております。

 以上でございます。

【福山主査】

 どうもありがとうございました。

 以上、1-2、これが平成12年からの経緯、真ん中辺に19年6月に中間評価の取りまとめがあった。1-3で19年のこの評価から5年経過していて、その続きの評価を今度するということ。そのパラグラフの3行目、共用施設としての役割や機能に関することを中心に中間評価を実施して、あわせて今後の方向性を示していくということ。そういう趣旨で、この作業部会の位置づけは資料1-4で3つのところに下にあるということが先ほどご説明がございました。まず、この作業部会のよって立つところ、ねらいが今ご紹介があったところです。

 今回、これが第1回の会合ですので、ここで各委員から自己紹介、ご自身のバックグラウンドを交えてお話をいただきたいと思います。まず岡田先生からよろしくお願いします。

【岡田委員】

 それでは、簡単に自己紹介いたします。私は現在、自然科学研究機構、これは大学共同利用機関でございますけれども、その自然科学研究機構の中の基礎生物学研究所という生物学の研究所がございまして、そちらの所長をしております。私のバックグラウンドは遺伝学、広く一般の遺伝学、分子遺伝学と言われるものから、特に最近は植物の分子遺伝学、分子生物学といったものを研究しております。ですから、このJ-PARCの活動そのものにはそれほど大きなかかわりというのはないと思っていたのですけれども、今回は特に研究環境基盤部会のメンバーとしてここ数年間やっているといったこともありまして、そういった面から、あるいは大学共同、共用といった面から幾つかのコメント、あるいは生物学に対する、もちろんJ-PARCでも応用されておりますし、いろいろ研究所も使っておられると思いますので、そちらの面からということでまた意見が出せればと思っておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。

【福山主査】

 どうもありがとうございました。

 続いて長我部さん、よろしく。

【長我部委員】

 日立製作所の中央研究所の長我部と申します。IT、エレクトロニクス、ヘルスケア、計測関係の研究をやっております。私自身のバックグラウンドといたしましては、主に電子ビームを使いました計測でありますとか、あるいは装置の開発、こういったところに携わってまいりました。よろしくお願いいたします。

【福山主査】

 どうもありがとうございました。

 続いて梶田さん。

【梶田委員】

 東京大学宇宙線研究所の梶田です。私のバックグラウンドとしましては、広い意味で宇宙線、特にニュートリノ、それから、近年では重力波等にかかわるような形で研究をさせていただいております。どうぞよろしくお願いします。

【福山主査】

 ありがとうございました。

 続いて、金谷先生。

【金谷委員】

 京都大学化学研究所の金谷でございます。現在、中性子科学会の会長を仰せつかっております。そういう立場もございます。バックグラウンド、特にサイエンティフィックなバックグラウンドとしては、ソフトマター、特に高分子というような、そういう分野の物理、それから、化学を専門とさせていただいております。それから、J-PARCに関しましては、特にMLF、中性子の一ユーザーとしての立場もあるかと思います。よろしくお願いいたします。

【福山主査】

 どうもありがとうございました。

 続いて、鳥養さん。

【鳥養委員】

 山梨大学の鳥養でございます。現在、日本中間子科学会の会長を仰せつかっております。ミュオンを使った物性、生命科学、表面・界面の研究をしております。現在、J-PARCで平成23年から5年計画で超低速ミュオン顕微鏡のプロジェクトを代表として実施させていただいております。よろしくお願いいたします。

【福山主査】

 ありがとうございました。

 続いて、熊谷さん。

【熊谷委員】

 高輝度光科学研究センターの熊谷です。私の専門というか、私はもともとSPring-8と自由電子レーザーのSACLAの建設に当初から関係してきまして、そういう意味で大型施設、特に加速器に関するいろいろな問題、課題等にそれなりのコメントができればいいかなと今考えております。よろしくお願いします。

【福山主査】

 ありがとうございました。

 続いて、小森さん。

【小森委員】

 自然科学研究機構の核融合科学研究所の所長の小森です。バックグラウンドとしましてはプラズマ物理学なのですけれども、核融合ということで真空、超伝導、それから、核融合反応による中性子発生などに携わっております。

 よろしくお願いします。

【福山主査】

 どうもありがとうございました。

 それでは、田村さん、お願いします。

【田村委員】

 東北大学理学研究科物理の田村です。よろしくお願いします。専門は原子核物理の実験でありまして、今、全国の原子核物理の研究者のコミュニティの代表、核物理委員長というんですけれども、それを仰せつかっております。私自身もJ-PARCのユーザーでありまして、ハドロン実験施設で原子核とかハドロンの研究をさせていただいております。よろしくお願いします。

【福山主査】

 どうもありがとうございました。

 続いて、西島さん。

【西島委員】

 持田製薬の西島です。専門としては創薬全般なんですけれども、業界の活動として先端大型施設、J-PARCとか、SPring-8とか、宇宙ステーションとか、X線自由電子、スパコンとか、そういったものを製薬産業を含めた産業利用を推進しております。

【福山主査】

 どうもありがとうございました。

 続いて、山縣さん。

【山縣委員】

 熊本大学の山縣と申します。私は生命科学研究部なのですけれども、薬学部に所属しておりまして、タンパク質科学をやっております。それで、今はSPring-8とかを使っておりますけれども、今後、J-PARCとかを使わせていただきたいなと強く思っております。

【福山主査】

 どうもありがとうございました。

 皆様のご説明、非常に明快でアピーリングで、しかも、時間が大変短い。ご協力、ありがとうございました。今日は、残念ながら何名かの方がご欠席ですので、ここでご紹介させていただきたいと思います。まず、相原さん、東京大学理学系研究科です。それから、金子さん、トヨタ自動車です。横山さん、東京大学の理学系研究科です。残念ながら、ご都合がつかないということでご欠席でございます。

 それでは、続いて先ほどの部会の設置のところに戻って何かご不明な点がございましたでしょうか。ともかくここの作業部会でこれから何回かで何をやるか。資料1-3の2のところに検討事項が書いてございます。これに関してこれから逐次ご意見を賜ることになると思います。

 それでは、次に進みましょう。J-PARC計画の概要及び現状について、まず永宮J-PARCセンター長からご説明をお願いいたします。よろしくお願いします。

【永宮センター長】

 それでは、J-PARCの現状ということでお話ししたいと思います。先ほどありましたように震災がありましたが、震災前の状況からお話ししたいと思います。

 まず、J-PARCというのはどういう加速器なのかをおさらいしておきたいと思います。この計画は陽子ビームを加速する計画でありまして、日本原子力研究開発機構と高エネルギー加速器研究機構が分担して建設を進めました。リニアックで高速の約60%まで陽子ビームを加速いたしまして、次に3GeVシンクロトロンで97%、そして50GeVシンクロトロンで99.98%まで加速するという日本では最大規模の陽子加速器であります。実験施設としては、物質・生命科学実験施設、ハドロン実験施設、ニュートリノ実験施設があります。すなわち、3つの加速器を用いて3つの実験施設で行うというのがこの計画であります。さらに将来の計画として核変換実験施設がございます。全体で1,500億円あまりの計画でありまして、東海村に建設されました。加速器はどういうものかといいますと、リニアック、3GeVシンクロトロン、50GeVシンクロトロン、左の下に見えますが、こういう格好をしております。

 J-PARCで目指す科学というのをまず1枚のスライドで説明したいと思います。陽子ビームを原子核と衝突させますと、2次粒子として多くの粒子が生成されます。そのうち、ミュオン、あるいは中性子を用いて物質科学や生命科学の新たな研究に使う。あるいはニュートリノやK中間子ビームを用いて原子核や素粒子の研究に使うというのが目的であります。そのためには、もともとの陽子ビームを世界最高強度に持っていかないといけないわけでありまして、すなわち、世界最大規模の陽子加速器が必要となるわけであります。そこで加速器の出力が重要なパラメータになりますが、私どもは1メガワットというのを目指しております。2009年、平成21年に稼働し始めたのですけれども、その後、3GeVシンクロトロンでは200キロワットまで加速が成功いたしました。50GeVでは145キロワットまで達しました。そのときに残念ながら震災に見舞われたということであります。

 それでは、物質や生命科学ではどういう実験がなされているかということをごく簡単にご紹介しておきたいと思います。これはどこで行われているかといいますと、ここの物質・生命科学実験施設、真ん中にあります建物ですけれども、そこで中性子ビームやミュオンビームを出して実験が行われています。

 実験施設にはここにありますように第1実験ホールと第2実験ホールがあります。このようになっておりますが、第2実験ホールの手前のほうには、ミュオンの施設も見えますが、ほとんどが中性子の実験施設であります。中性子は全体で23本のビームラインが存在いたしますが、現在、18本まで予算が課されておりまして、残りの5本をめぐって、あるいは数本とも言われているんですけれども、競争が激しくなっております。

 ここでX線と中性子の違いを述べておきます。X線と中性子はともに波であります。これは量子力学で粒子は波であり、波は粒子であるということに由来しております。しかし、X線は電子と衝突いたしますので、電子数の少ない水素などはなかなか見えにくい状況になっております。一方、中性子は原子核と衝突いたしますので、どんな原子でも同じように見える。比較的水素などがよく見事に見えるということになっています。また、中性子はミクロな磁石であるということで、物質の磁性の研究には非常に向いているプローブになっています。

 一方、ミュオンはどういうものかということですけれども、ミュオンはπ中間子の崩壊からつくられますが、π中間子がここにありますようにスピンがゼロでありまして、ニュートリノとミュオンはスピンが2分の1ですが、ニュートリノは左巻きしかありませんので、ミュオンは自然に100%偏極しております。そこで磁場をかけますとラーモア・プリセッション、ラーモア歳差運動が起こりますので、物質の磁性の研究が可能になってくるわけであります。

 研究の例を幾つか述べたいと思います。まず、中性子の例でありますが、1つの例は、中性子が波であるということを利用いたしますと、結晶の構造解析が可能になります。これは構造がこのように決まりますが、実はこれはセラミックの電池開発の研究でありまして、常温でこれまでの有機電解質と変わらないような性質が見られました。この結果は非常に大きな注目を浴びまして、日経新聞の朝刊の1面に掲載されております。

 第2の例は、マルチフェロイクスという物質の磁気的な性質と電気的な性質が相関を持っているんですけれども、その磁性の研究であります。これは専門的でありますが、エネルギーと運動量の相関をとりますと、これは構造が対称でないということに起因するいろいろなシグナルが見えます。これは実はここ、僕はよくわからないのですけれども、この分野の研究としては大きな注目を浴びております。ちなみに、この研究は韓国人と一緒になされました。

 第3番目の研究結果は、アミロイド疾患の原因物質であるタンパク質の研究でありまして、トランスサイレチレンという物質です。この物質が低いpHでなぜファイバー状になるのかというのを明らかにするのがこの実験の目的ではありますが、トランスサイレチレンの水素結合、ここに見えますが、水素結合ですね。pHによってどのように影響を受けるのかが調べられました。その結果、低いpHで水の分子のネットワークがどの部分が影響を受けて、タンパク質の集合構造が壊れるかということが、そういうことがわかってきました。中性子が水素を見ることを生かした非常に重要な研究結果であります。

 4つ目はミュオンの研究の例ですけれども、先ほど言いましたようにラーモア歳差運動を放出される電子の異方性から研究いたします。ここでは左の上のほうに見ていただきますと、高温では磁性が見えないためにフラットになっておりますが、温度を下げていきますと、例えば3つ目のグラフでは異方性が非常に顕著に見えます。このことから230とか240度付近で相転移が見られるわけです。これは、実は、この物質が結晶構造だけでなく、磁気的性質に至るまで銅酸化物超伝導体の性質がそのまま引き継がれているということを示しているということで注目を浴びてきた実験であります。これは米国の雑誌の注目論文として取り上げられました。

 利用の状況はどういうことかといいますと、産業界が約3分の1、大学が3分の1、それから、研究所群が3分の1となっております。これはMLF全体、物質・生命科学全体であります。

 次に、素粒子・原子核の科学について述べたいと思います。第1番目の実験施設はニュートリノであります。ここにあります戸塚先生の有名なお仕事は、地球上の大気でつくられたニュートリノの数に異常性があるということを見つけられました。それによって長年ゼロと信じられていたニュートリノの質量が有限であることが判明いたしました。これは梶田先生のお仕事でもあります。J-PARCは加速器を用いて人工的にμニュートリノのビームをつくり出します。これを300キロ先の岐阜県神岡町のニュートリノ検出器でとらえて、それが電子ニュートリノに変化しないかというのを調べます。このような実験は専門的な言葉で言うと、混合角を初めて測定するのですけれども、世界では日本がリードしておりますので、多くの外国人が参加しております。約500名の外国人が参加しているということであります。

 最近、昨年、グループが非常に注目される結果を出しました。μニュートリノが電子ニュートリノに変わる事象が6つ見つかったということであります。この6つというのは、実は2.5σという、まだまだこれから検証しなければいけない結果になっているのですけれども、世の中には非常に大きな注目を浴びまして、昨年の物理全体のTop10 Breakthroughsに選ばれました。このように大きなθ13が観測されましたが、これが予想された値よりも大きかったということが世の中をびっくりさせたわけであります。

 最後の実験施設はハドロン実験施設であります。ここではK中間子ビームというのを出します。このハドロン実験施設では実に多くの利用者がひしめき合っております。ここにありますように多くの実験がなされています。ハイパー核の実験、あるいはペンタクォークの実験、K中間子を埋め込む実験、K中間子の崩壊を見る実験、等々があります。残念ながら、ビームタイムは今のところは少ないために多くの結果は出ておりません。これは実験のデータの1つでありますが、SPring-8で見つかった5つのクォークの束縛状態、これはペンタクォークと言われるものなのですけれども、これをJ-PARCで探ろうというものでありまして、残念ながら現在のところ、J-PARCではそのピークは見えておりません。現在、さらにエネルギー等々を変えつつ、データ収集を行っているところであります。

 実は、ここでは各大学の実験チームがひしめき合っております。今後、さらなるビームラインの整備が必要とされるというところであります。私どものプロジェクトは、まさに国際的でもあります。中性子分野では米国のSNSとイギリスのISISと競っております。ニュートリノでは米国のフェルミ研究所とスイスのCERNとの競争関係にあります。ハドロンではドイツのGSIというところとよい競合関係があります。世界の3つの1つとして代表的な施設になっているということになります。それに伴ってたくさんの外国人もやってまいります。国際化は今後の私どもの大きな課題の1つだと思っております。

 これまで欧米諸国が非常に多かったのですけれども、最近は韓国から200名ほどの人がやってきました。これはそのための最初の会合でありまして、ここにおられるJe-Geun Parkというのがこの当時の代表者でありまして、この方は名前をよく見るとJ-PARCと読めるのでありますが。

 J-PARCの組織を1つだけ示します。現在、約500名近くが働いております。これが組織図ですけれども、そのうち約3分の1が業務委託であります。

 最近、共用促進法というものとともに中性子の一部分のビームラインを利用するために登録機関(CROSS)というのが組織に加わりました。J-PARCセンターとは連携協力会議というのを通じて密接な連絡をとっております。J-PARCは上にKEKとJAEAという頭があるわけですが、その右にある登録機関との密接な連携があるということであります。まとめますと、これは多目的な施設でありまして、ユニークな加速器のプロジェクトだと思っております。震災前の成果としては、ビーム出力が200キロまでいった。ニュートリノも6事象を検出した。ハドロンでもきれいな中間子ビームが得られている。それから、物質・生命からは中性子やミュオンを使った成果が論文発表されておりますし、JAEAから共用促進法の適用もスタートした。今後の課題として、国際社会や、あるいは産業界への積極的な開放が重要な課題だと思っています。

 3月11日に震災が起こりました。ごく簡単に述べておきます。この図の左下のほうにありますように、リニアック前が大きく道路が割れました。左の上のほうは、実はリニアックのトンネルの中に約10センチ、100トンの水が浸水いたしました。あるいは右のほうに行きますと、3GeVシンクロトロンの周辺で道路が飴のようにクネクネと曲がって、その右のほうに示したのが、これはコンデンサーバンクというんですけれども、大きく曲がっています。それを修復するのに、一番右の下のほうの図に示しましたが、コンクリートを大きくかさ上げしたわけです。このように、大きな被害を受けました。

 物質・生命科学実験施設の被害を見ますと、左の上のほうは約2,800トンの530個のシールドが、鉄のシールドですけれども、これがグラグラに揺れました。それを1つ1つ運び出して、積み直したわけであります。真ん中の左のほうには、物質・生命科学実験施設の図がありますが、左のほうには西側増築建屋というのがありまして、これが20センチほど沈みました。真ん中の実験施設は非常に頑丈につくってあるので、ほとんど変化はなかったのですけれども、20センチ曲げたので建物全体をジャッキアップするという非常に大がかりなことをやりました。右の下のほうに行きますと、配管がヘリウムとナイトロジェンのタンクで曲がっておりますが、それを取り外しまして、また元に戻したということであります。そういうことがあります。

 素粒子や原子核の実験施設で見ますと、左のほうはニュートリノです。ニュートリノを見ますと、あっちこっちで倒れたものがあります。あるいはハドロンの実験施設へ行きますと、右上の図ですけれども、建物の周囲が約数十センチ陥没いたしまして、人が出てくるとストンと落ちるというような状況が起こりました。

 ということで、全部修復しなければなりません。そのために復旧スケジュールというのを立てました。これは5月に立てたのですけれども、12月までにどうしても復旧したい。そういうことを言いましたら、内部ではみんなそれは無理であるという反対も多々ありました。しかし、J-PARCセンター員が一丸となって復旧作業を実施いたしまして、5月に決めた工程を遵守いたしました。

 12月12日にビームを出すということを目標に設定したのですけれども、実は12月9日、約3日前倒しでビームが出ました。これは午前9時半に、左の上の図は私がスイッチオンをしているところです。実は、5年前に同じところでスイッチオンをしたところがありまして、それと同じポーズでやってくれというので、こういう格好をしたんですけれども、左の下のほうには、ほとんどパネルに何もありませんが、上のほうは非常にパネルがたくさんあります。ちなみに、フェルミ研究所でこの写真が出たのですが、上でも下でも同じだというので下のほうが掲載されてしまいました。

 その次に、加速器はどういうことになっているかといいますと、これはリニアックでありますけれども、残念ながら真ん中あたりは2.5センチほど沈みました。そこに目掛けて、まずリニアックでビームを下げて、さらに上げる。こういったリニアックがリニアックでない運転を現在しております。その後、3GeVシンクロトロンにビームが来たのは12月18日です。21日には300キロというパワーにまでいきました。震災前は200キロでしたから、300キロというのは驚くべきことでありまして、1.5倍のパワーまでいったというわけであります。これは震災の間にいろいろやるべきこともやっていたということの結果であります。右のほうは50GeVのシンクロトロンですけれども、これは約400台の磁石が全部動きました。それを1つ1つ元へ戻しまして、約7ミリまでのずれがあったんですけれども、これで見ますと0.5ミリとか、0.6ミリの精度で合っております。

 中性子には、12月22日にビームがやってまいりました。左の上のほうは、これは中性子のターゲットですけれども、古いターゲットは残念ながらつぶされてしまったために、新しいターゲットに換えました。新しいターゲットでは、ピッティングというのを防ぐ工夫をしたのですけれども、それが間に合わなくて300キロのビームは受け入れられないということで、100キロで運転いたしました。中性子ビームとしては、震災前の状況に比べて、かえっていいぐらいの非常にいい精度のビームが出てきました。

 この同じ日に50GeVのシンクロトロンまでビームが入射され、12月24日、2日後のクリスマスの日ですけれども、最初のビームがニュートリノに出てまいりました。

 その後、これは1月になるんですけれども、ハドロンにも少し遅れてビームが出てまいりました。これはハドロンのあるビームラインで見たビームの図であります。

 というわけで、すべてがうまく動きましたので、平成23年度、今年度は1月24日にビームを利用者に開放するということをいたしました。それで、2月、3月、現在も行っておりますけれども、利用者に対して運転を行っております。

 今年度から来年度にかけての問題ですけれども、先ほど言いましたように大震災の後にビームが中断しておりました。今年は、実は400MeVリニアック、上に書いてありますが、400MeVリニアックの建設が終わります。ということで、今年の夏にそれを入れ込もうということを、もともとは計画しておりました。

 しかし、震災中断後またビームが長い間とまるのは嫌だというのが利用者の声がたくさんありましたので、24年度は通常の夏季停止のみにして、フルに運転する。そうしたのち、25年度に400MeVのリニアックを入れ込むという、新たな方針に転換いたしました。ということで、現在、24年度ははフルに運転するということになっております。

 ということで、ユーザーがどんどん戻ってきております。2011年11月から12年1月のあたりは、ユーザーがガクッと減っておりますが、これは震災のときになりますが、だんだん震災の後、またユーザーが戻ってきております。それからまた、我々の施設では、外国人がかなり多いですね。

 まとめますと、主たる建物はほとんど大丈夫でした。多くの杭打ちのおかげでした。しかし、ユーティリティの建屋、道路や増築建屋は大きな被害を受けました。重要な箇所は修理いたしましたが、これからのところも残っております。いつ回復するかというのは、今申し上げましたが、平成23年末までに運転再開、これは実施済みであります。今年度中には2サイクル、約2か月の運転、これは現在進行中であります。来年度以降の予定としては、与えられた予算内でできるだけ多くのビームタイムを持ちたい。平成25年度の夏に400MeV等々の大幅な搬入を行いたいと思っております。ユーザーも戻ってきましたので、これからは宿舎等々が大きな課題になっております。

 最後に1枚だけ、今後5年間の計画ということで、これが今後の評価部会の大きなテーマになると思います。これはまだ我々の間で確定したわけではありませんので、一種の私の個人的な考えも含めたレサピで、これから議論を重ねて皆さんの前で報告していきたいと思います。加速器ではRCSで1メガワットをするということ、赤で書いたのは原研分、青の部分はKEK分です。次に、メインリングの750キロワット化、これも既定路線でありまして、これのために電源の改良等も必要になってきます。それから、中性子は残りのビームラインで、JAEA3、KEK1と書いてあります。これはそうなるのか、JAEAが4になるのか、KEKが2になるのか、そこはまだいろいろ議論の途中でありますので、こういうのがテンタティブに提案されている。

 それから、ミュオンは第3のビームライン、第4のビームラインがまだ残っておりますので、これをどうするか。ハドロンは高運動量のビームラインというのが今懸案として残っておりますが、それにCometというμ-eコンバージョンの装置の最初をつくる。そういうものがあります。それから、ADS。ADSというのは先ほどの核変換ですね。これは原子力機構の次の計画として残っております。建屋関係で総合研究基盤棟、これはそちらに配布したものと少し違うので、直しておいてください。僕がミスしました。それから、放射化物使用棟、それから、宿舎です。こういうものがあります。

 こういうのをだらだらと書いたんですけれども、なぜこういうことを書いたかといいますと、これは全部お金を合わせますとかなりの額になります。したがって、明確な優先付けが必要になってきます。今後、次回以降の評価部会でまず物質・生命科学を初回にやって、その次に素粒子・原子核等々をやります。その後、5月になって総合的にみんな全部を見直すということがプロセスとしてはあるわけです。そういうところで評価部会の先生方にいろいろご意見を賜って、我々としても決めていきたいと思っております。我々内部でもまだ議論の途中でもあります。

 以上が今回の報告であります。

【福山主査】

 永宮センター長、ご説明ありがとうございました。

 J-PARCの現状について、そもそもどういうものであるかというお話で、後半で3.11の後のJ-PARCでのアクティビティのご紹介がありました。大変印象的なことで、先ほどのお話ですと、震災直後、5月に組織の中で、これは34ページでしたか、J-PARCの復旧スケジュールを5月20日に策定されたと。中でも無理だという声がいろいろあった。しかし、センター長のリーダーシップ及びJ-PARCセンターの研究者の方々の協力のもとに12月12日、ビーム、加速が目標だったのを3日前の12月9日に実現したと。これは驚異的な事実だと思います。コミュニティにかわってセンター長及びその同僚の方のご尽力に心から感謝と敬意をまず表したいと思います。

 それでは、センター長のご説明に関していろいろご質問おありかと思います。どうぞご自由に意見交換をお願いいたします。いかがでしょうか。

 金谷さん。

【金谷委員】

 驚異的な復旧をされたというのはほんとうにすばらしいことだと思って、まず最初に、今、福山先生がおっしゃったように、これに関して我々ユーザーは非常に大きな敬意を払いたいと思います。

 質問は、短い期間で復旧できたということで、特にMLFは産業利用の推進というのも1つの課題だということだったと思うのですが、そこの復旧が早かったということで、ユーザーがどのぐらい、特に産業界から戻られたかというのが少し気になったのですが。

【永宮センター長】

 専門の方に聞きます。どうですか。

【新井ディビジョン長】

 2012年A期、今募集をかけたんですけれども、一般課題が150件、これは震災前よりもかなり多いですね。そのうちやはり30%以上が産業利用から来ている。さらに、いわゆる成果非公開の課題が以前よりも非常に多くなっているというところが現状ですね。

【長我部委員】

 つけ加えさせていただきますと、私ども産業界で中性子産業利用推進協議会というのをつくっておりまして、そこで逐一、今、先生からお話があった復旧状況を見ていて、その後の使い方に関する議論をしておりますけれども、3.11の前と変わらず、むしろ積極的に使いたいという企業が増えていますし、それから、利用協議会に参加する会社、企業数も増えております。また茨城県がMLFにビームラインを2本持って、主に産業利用を中心に活用しておりますが、今度の復旧を待っていたかのようにいろいろな利用が増えております。むしろ、産業界としては3.11を経てもなおさらに意欲があるという状況だと思っております。

【福山主査】

 すばらしい状況に関してのお話でしたけれども、どうしてそこまでモチベーションというか、活動が活発なんですか。

【長我部委員】

 多分、これは生命科学とマテリアルサイエンスで若干温度差があると思ってはいるのですが、マテリアルサイエンスのほうは、やはり今のリチウムイオン電池とか、そういう物質の開発において国際的なコンペティションがかなり激しくなっていて、アジア諸国が相当力をつけてきて、その中で材料とかデバイスの開発で差別化要素は何かといったときにやはりこういう先端的な計測であるとか、あるいはシミュレーションであるとか、サイエンスとそういうエンジニアリングが融合したところに勝機を見いだそうという気持ちにかなり産業界がなってきているのかなと思います。そういう意味で、こういう象徴的な、先端的な計測施設の利用が増えているのではないかと私は思っています。

【福山主査】

 大変エンカレッジングなうれしいお話、要するに産業界でも差別化という観点でやはりレベルの高いサイエンスに裏付けられた材料化ということが強く意識されている。大変心強いコメントですね。これは確かにJ-PARC、それからSPring-8、スパコンK、そろっているわけですから、J-PARCがこれからますますそこに大きな寄与をするということになると、この3本柱の効き目がさらに期待されますね。いかがでしょうか。

【西島委員】

 それでは、温度差が違うライフサイエンスのほうから。

【福山主査】

 ライフは違うと。

【西島委員】

 期待は大変持っております。というのは、やはりこういう大型施設を使うというのは、特に創薬のように非常に高付加価値で、日本のある先端機器はあらゆるものを使っていくというのはコンセンサスではあります。ただし、タンパク質の結晶構造というか、隣に山縣先生がいらっしゃるので私のほうから言うのは僭越ですが、産業界が使っているタンパク質の結晶に関して言うならば、はっきり言いまして構造の決めやすいものは決めていって、これからはヒト由来の比較的貴重なサンプルです。そういった意味では比較的サンプル量を使うとするこの中性子で結晶化を行うということに対しては、製薬産業は正直言ってまだまだ使うことに関しては慎重です。量をためるのが大変で、数百万、数千万のオーダーがかかるということです。一方、SPring-8、放射光、PFも含めて非常に使いやすい状況が進んでいますので、そこで決めたものにさらに水素原子が加わったことがほんとうに重要なのだというような事例をぜひアカデミックレベルから出していただきたいというのが1点。

 もう1点は、先ほど材料関係、もちろん製薬関係でも剤型とか材料にかかわりますので、そういった材料関係の中性子でのいい点を待って、例えば製剤の安定性評価とか、あるいは非破壊評価試験とか、そういうことに積極的に使うようなことを検討してはどうかという助言を業界関係者から受けております。そういった意味ではタンパク質の結晶構造解析というのは象徴的ですけれども、材料という部分、ぜひ先へ進んでいますグリーンイノベーションというか、いわゆる純粋な材料に対して私たちの原料というような部分とか、あるいは最終製品の品質保証、こういったところでこれを使うと、いわゆるアジア、ほかの国がつくったようなものと品質の面で優位に展開できるのかなというふうに少し考えております。

【福山主査】

 現状で、まず確かに放射光に比べて中性子の場合は蛋白のサンプル量がより多く必要だと。しかも、対象がだんだん貴重なヒト由来のものになると大きな量を用意するのが大変だと。そういうことがあるから、今の段階では中性子、その時点で中性子を使おうというのは、まだそれほど高い意識はない。これからの問題だろうと。一方で、材料のほうの活躍に期待して、そこから出てくるアウトプットとしての品質保証という観点から期待するところが多いと。

 今の点、長我部さんのほうから材料のときに、さっきのように電池関係、非常にわかりやすい。そういうのに加えて西島さんが言われた非破壊、例えば鉄鋼材料等々、今日、金子さんがいればいいのかもしれませんけれども、そういう方向での利用の状況はどうなんでしょうか。中性子の産業利用協議会。

【長我部委員】

 従来から非破壊で大型の構造材の溶接部の歪みを見るといった使われ方があったのですが、それはコンスタントに需要があります。しかし、開発が世界的にコンペティティブになっている電池とか、あるいは磁石などもそうだと思うんですけれども、そういうところに利用は集中していています。そこはケミストリーかフィジックスかわかっていないことが余りに多いので、それを何とか解明しながら開発でいいものをつくる、あるいは信頼性を上げるという状況にあると思っています。加えて構造の歪みを見るという仕事はコンスタントにはあると思っています。

【福山主査】

 確かに非破壊での内部のドメインの分布等々、それはちょっと手間になる。磁石という観点だと、確かに磁石、ドメインがどうなっているか、そこでディスプロシウムがどういう役割を果たしているかというようなこと、これは中性子よりも今まず放射光が主なんでしょうかね。中性子よりもそれは大分始まっているんでしょうかね。

【長我部委員】

 もちろんSPring-8を使った計測もいろいろやられていますけれども、中性子小角散乱で見るとかいろいろな、やっぱり現象、フィジックスの解明のためにあらゆる手段を使って明らかにしていきたいということになっています。

【福山主査】

 いろいろご意見、ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

【西島委員】

 視点が違うんですけれども、私、途中退席して申しわけございません。聞いていなかったところがあるのですけれども、25ページの国際センターとしてのJ-PARCということなんですけれども、ご説明があったのかもしれませんけれども、この3極――3極という言い方がいいのかよくわかりませんけれども、この中でのJ-PARCの立ち位置ということを考えたときの、今後の5年間とか、先ほど言いましたお金がかかるときの優先順位というのを考えていく必要があるのか、その辺の力の入れぐあいとかは見えなかった。先ほど産業界というふうな、比較的わかりやすいんですけれども、国際的な位置づけ、特に外国人が増えていますから、その辺のところを加味して、日本がよその国を使うことを考えてみると、そういう期待も含めて重点領域なり、今後の5年間でどういうふうにお考えか。

【永宮センター長】

 今言いました3つの領域があるんですね。ハドロンとニュートリノと物質・生命科学という。ユーザーの大体は中性子ですがMLFが大体1,000人規模と僕は思っています。それで、もう一つのハドロン、ニュートリノでも1,000人規模だと思っているんですけれども、国際的な観点からしますと、ハドロンとニュートリノは半分以上というか、7割ぐらいが外国人なんですね。だから、かなり外国との競争というのは意識しています。一方、中性子は3極の1つで、アメリカとヨーロッパと、ここが、3極になっているんです。したがって、ユーザーが大体アジアに固まっているという傾向があるんですね。我々日本人が多いんですけれども、アジア人が多いということで、アジアにおけるどういう役割を果たすかというのが重要なことだと思っています。

 それで、今後の計画はその3つをうまくバランスよく増やしていかなければいけないので、それは今、苦慮しているところなんですけれども、その最後に書きました今後の評価では、3つのうちどれを重点的にするかというのはなかなか難しいところはあるんです。だから、それは何らかのことをガイドラインにしてやらなければいけないのですけれども、世界的にリーダーシップをとれるところをまず重点的にやるということが重要だろうと思います。ただ、どれがどれをというのはもう少し個々の議論になってから皆さんで議論していただきたい。

【西島委員】

 今、こう言うとユーザーからすぐ何か来てしまいますものね。

【永宮センター長】

 それからもう一つ、ADSですけれども、核変換、これは少し違うジャンルになるんですけれども、これも僕は今後必要なことだと思っていますが、ここでどれだけ議論できるかわかりませんけれども、今こそ原子力をきちっと見直すべきときなので、これは国際競争という側面もあるのですけれども、少し違った側面からこれは重要なのではないかと思っています。

【福山主査】

 よろしいでしょうか。今、西島さんのご質問は、まず45ページ、最後のところにいろいろなことが書いてあって、それの明確な優先づけ、そのプライオリティーをどうするかという、そういうことは一般的に記載されている。そのことを25ページの国際的なアクティビティの中で位置づけたらどうなのかというご質問で、今のセンター長のお答えでよろしいですか。

【西島委員】

 はい。

【福山主査】

 確かに強いところをまずより強くしていく。同時にほかのところも工夫するという、そういうスタンスだと。最後におっしゃったADS、これは何の略だったかな、Accelerator Driven何でしたっけ、最後は。

【永宮センター長】

 System。

【福山主査】

 システム。要するに核変換、これを3.11、日本はああいう残念な経験をして、原子核、原子エネルギー一般に関して、元来の放射性物質をどうするかというようなことにも目が当然これから行かなければいけないのだろうとは思うんですけれども、そういう意味で、今までのJ-PARCの中での位置づけに比べると少し様子が変わってくる要素はあるんでしょうかね。

【永宮センター長】

 それ、我々、主体的にはそう思っています。原子力委員会などでも、そういう話をしていますので、一度、次回か何かに発表の機会があるものと僕は期待しているのですが。

【福山主査】

 ああ、そういう状況ですか。はい。ほかにいかがでしょうか。ニュートリノに関して、梶田さん、何かありますか。

【梶田委員】

 まず、先ほど既にセンター長から報告があったとおりですけれども、昨年にニュートリノで出した研究成果というのは非常に世界的に注目を浴びているので、当然なのですけれども、今後、ますますインテンシティを上げて、さらにちゃんとした成果に持っていくというのは国際的に非常に強く求められているかと思っています。

【福山主査】

 そういう方向での見通しはいかがですか。そのコミュニティから見てJ-PARCの位置づけを見たときに。

【梶田委員】

 それは世界的な競争という意味ですね。

【福山主査】

 競争、それも視野に入れて。

【梶田委員】

 恐らく今後、多分、競争という意味では、今、原子炉を使った物理としては同じことをやろうという研究は世界で3つ走り始めておりますので、きちんとした最終的な結果を出すという意味で、ほんとうに予断の許さない状況になっているかと思うので、やはり今後、J-PARCを着実にアップグレードしていくということは大切かと思っています。

【福山主査】

 原子核のほう、どうでしょう、田村さん。

【田村委員】

 我々からも12月にきちんとビームを復活させていただいたということ、深く感謝申し上げたいと思います。

 それで、ハドロン施設ですけれども、おかげさまで実験はスタートしているのですけれども、これはニュートリノと違ってビームの取り出し方式が違う。遅い取り出しと言うんですけれども、ゆっくり、ゆっくり取り出さなければいけないわけですが、その取り出しに若干技術的な問題があって、ビームの質が悪い状態、まあ、少しずつ改善、皆さんの努力で改善していただいてはいるんですけれども、なかなか出だしがよくない。ビーム強度も上がらないし、ビームの質もまだよくなっていないので、成果が稼働後にどんどん出るという状況にまだなっていないのが残念なんですけれども、ぜひそこを一層改善をお願いしたいということ。

 あとこの最後のページに今後5年間ということで、高運動量ビームライン+Cometというのがありますけれども、これは我々の分野で非常に大切な大きな意義のある実験ができるラインなんですけれども、ほかにも実はたくさんビームラインが欲しいという声が上がっておりまして、それも含めてハドロンのところで多少議論させていただければなと思うんですけれども、やはり貴重な非常に電気代のかかる、メンテナンスにも非常にお金のかかる施設ですので、実際にユーザーがたくさん実験提案を持ってきて、認められている実験だけでも今非常にたくさんたまっていて、今のままだと全部消化するのに五、六年かかる。また次々実験提案も来ているのですけれども、そういう状況でもありますので、いろいろほかの部分との兼ね合いの議論が必要ですけれども、もっと有効に利用させていただいて、成果をどんどん出すというためにもその辺の実験施設の下流側の拡充というか、充実というのをお願いしたいとユーザーのほうでは言っておりますので、よろしくお願いします。

【福山主査】

 いろいろな観点からのニーズがある。一方で、クオリティーにまだ気になるところがある。

【田村委員】

 はい。最終的にはこの一番上に書いてあるMRの750kW化のところに電源改良というのがありますけれども、それに関連して改善されるというふうに聞いているんですけれども、ビームの質の問題で、まあ、ほかの分野と比べて若干成果の出が、スタートが遅いという状況になっておりまして、それがまた少しユーザーがたくさん待っているということにもつながっております。

【永宮センター長】

 少しつけ足しますと、ハドロンは非常にメジャーな大学、東北大学、東京大学、京都大学、大阪大学等々、すべてファカルティを持っているすごい巨大なグループなんですね。

【福山主査】

 理研もあるし。

【永宮センター長】

 理研もある。そうそう。そういうことで、皆さんを待たせているのは非常に申しわけないと思って、これを何とか改善しなければいけない。

【福山主査】

 コミュニティが広い。ミュオンのほうは、鳥養さんのほうの状況。

【鳥養委員】

 ミュオンは世界の加速器の状況のご紹介がございませんでしたけれども、J-PARCで代表されるようなパルスビームと、それから、スイスやバンクーバーで代表される直流ビーム、DCビームがございまして、世界最高強度のパルスビームでしか実現できない、ピークを出す研究という意味で超低速ミュオン顕微鏡と、それから、45ページにあります第4ビームラインで超低速ミュオンを応用したG-2の基礎研究、こういったものに世界から注目をいただいております。一方、日本のミュオンコミュニティのマジョリティは物性研究者でありまして、そういう意味では現在まだJ-PARCも1本しかビームラインがありませんので、諸外国に行って100人以上の研究者が旅費を使いながら、あるいは時間を使いながら苦労して研究している現状でございまして、そういう意味では第3ビームラインSの建設に対する国内の研究者の要望は非常に強いという状況でございます。

【福山主査】

 どうもありがとうございました。

 J-PARCが持つ重要なファシリティに関しての大体の状況を伺ったかと思います。ニュートリノ、中性子、ミュオン、ハドロン、サイエンスのほうを軸にして、そのもとは加速器という大きなファシリティがあるわけですが、そこに関して何か熊谷先生のほうからコメントございますか。

【熊谷委員】

 皆さんが先ほどから指摘されているんですけれども、復旧が非常に短期間でできたというのは、中できちっとスタッフを抱えているということは非常に重要な点だと思います。これから多分、永宮さんのお話を聞いて、復旧のいろいろな状況を考えると、この震災で起こったことが定常的にずっとこれから変化しないのかというと、多分、一過性のものなのでかなりまたそのアライメントとか、いろいろなものが狂ってくるんだと思うんですよね。それと同時にインテンシティを上げようということですので、そのロスをいかに下げるかという、そことの競争になるのだと思うんですが、なお一層、そこら辺を若い人の体力と知力で頑張っていただければと思います。

 それから、最後にいろいろな加速器、ニュートリノ、中性子という優先順位をきちっとつけて、すべてのことを同時にというのは多分、スタッフの数も質も足らない。それから、お金も足らないと思いますので、優先順位をきちっとつけた上で対処するということが必要かなと思います。

【福山主査】

 どうもありがとうございました。

 ほかにいかがでしょうか。どうぞ、山縣さん。

【山縣委員】

 タンパク質科学のほうで中性子はそれほど、今は取り組んでいないというのが現状だとは思うのですけれども、X線による構造解析の精度も非常に上がってきて、そうすると、やはり水素も見ないと機能をほんとうに理解したことにはならないということで、今までだと何か私たちはX線結晶構造解析で構造を解いて話をすればそれで終わったようなことで、たくさんの構造を解きたいということもあったわけですけれども、ほんとうに1つのタンパク質の機能をちゃんと理解しようということでは、ほんとうに水素を見ないと話ができない。

 特に去年のサイエンスが選んだ10大ブレークスルーの中に光化学系IIの構造解析が入っておりましたけれども、それも非常におもしろいマンガンクラスターで、一応、水だと思っているけれども、ほんとうにそこに水素があるのかとか、それがわかることによって、そういう人工の触媒などをデザインしようというときに最も大事なところが抜けているとことが分かる。

 そういうことをほんとうにやりたいという例として、今日朝、大阪大学の蛋白質研究所のセミナーで、実際にその解析をされてきた岡山大学の沈先生が強く、自分は280オングストロームの少し大きな格子を持ったタンパク質結晶なんだけれども、この中性子解析ができるんだったら、絶対結晶をつくるとおっしゃるわけですね。なので、今後、ほんとうにタンパク質の機能をちゃんと理解しようというところで、その需要が高まってくると私は思っております。

 そういう状況の中で、今はJ-PARCには茨城県の装置が入ってて、これは県の目的によってつくられているけれども、通常、私たちが使えるようなものができないものかということを少しお伺いしたいと思うんですけれども。

【福山主査】

 今の件、タンパク質の構造、大局的には放射光で、今までX線で決まっていた。だけど、だんだん水、基本的にプロトンが、水素がどこにあるかということが、機能を最終的に決めるときにはそこまで理解しないとだめだ。触媒作用等々、だんだん関心がそっちに行っている。確かにこれはサイエンスのトレンドだと思うんですけれども、そういうことに関してJ-PARCサイドで、新井さんのところのMLFのラインアップの中には、それは既にターゲットに入っている。これからそれが出つつある状況だと思っていいですか。

【永宮センター長】

 これは入っているんです。それで、実はJ-PARCはタンパク質の構造解析、もちろん放射光に比べたらまだビーム強度が弱いわけですが、1つのものを実は徹底的に解析して、最近、何の論文だったか覚えておりませんが、1つの論文をつくったんです。新村さんあたりがですね。これは3か月かけてやったんですね。これはなぜそんなことをやったかといったら、3か月かけてかなり成果のきちっとしたものになった。それで、それを強度を上げますと、10倍のインテンシティになれば3日でできるわけですから、ば非常に速く達成できます。そういうデモンストレーションに彼らは使っているんですね。それで、装置のほうもどんどん感度をよくして、今かなりレベルが上がってきていると聞いています。どなたか、もっと知っている人があったら、コメントしてください。

【福山主査】

 補足ありますか。後ろのほうから。新井さん。

【新井ディビジョン長】

 今、永宮センター長からもお話がありましたけれども、最近、茨城大学の新村先生を中心としてタンパク質の一辺が86オングストロームの結晶の構造解析に成功した。それで、詳しくは覚えていないんですけれども、その分野の論文誌としては世界のトップ2%として選ばれたというふうなことを2週間ほど前でしたか、お聞きしました。そういった話が1つ動いていて、西島先生が言われるとおり、まずアカデミアがそれを中心になってやってみようというふうなことでかなり時間を費やしてやっているというのが現状で、言われているように確か30日はかかったんだそうです。今の100kWの段階で。ですから、将来、3日ぐらいでそういった実験ができれば、相当いけるのではないかというのが1点ですね。

 あと2つ目がJAEAの黒木先生を中心に日本全体のタンパク質の構造解析グループの意見を取りまとめまして、さらに大きなタンパク質の構造解析ができるような装置を将来的には建設したいというふうな提案が今出されつつあるのが2点目ですね。3点目は、この3月に共用法の装置として動き出しますところの、これは構造解析ではなくてタンパク質のいわゆるダイナミクスを見る装置なんですけれども、そのダイナミクスが一体どれほど生命現象にかかわっているかという問題がまだ定かではありませんけれども、そういったことで構造のみならず、そういった水素の動きですとか、そういったものを見るという話も進んでいるというのが現状であります。

【福山主査】

 よろしいでしょうか。まだキラキラしたデータが出てくるというわけではないんですけれども、その準備が大分できてきている。新村さんの茨城のビームライン、それから、黒木さん、黒木さんは、これは全国的な観点から機能まで意識した構造。それから、ダイミクスのことまで目が行っている。まあ、これからですね。

 ほかにいかがでしょうか。いろいろなご意見――金谷さん、どうぞ。

【金谷委員】

 5年間の計画というのはやっぱり気にはなるんですが、各サイエンスはこれからいろいろ議論されていくのだと思うんですが、ここに出てきた最後の建屋関係というのがございまして、これは例えば特に物質科学では非常に重要な役割を占める場合が多くて、それから、サイエンスと関係ないかもしれないんですけれども、宿舎というのも実はこれは国際化の観点からすると非常に重要な意味を持っていると僕は思っていまして、特に東海村というのは非常にいいところなのですが、宿泊施設からするとあまり必ずしもいい環境にはない。その辺も忘れずにぜひサイエンスを高めていくためにも必要な懸案かなと思っていますのでよろしくお願いします。

【福山主査】

 確かに今の点、45ページの最後の建屋関係、基盤と放射物質の使用、最後、宿舎。実は1週間前の国際諮問委員会で外国からたくさん来られたときに、最後のレポート、我々のマテリアルサイエンスのほうから、MLFのほうからのレポートの中にfoodという言葉が大きな字で入れられました。それはどうしてかというと、宿舎、泊まるところはありましたけれども、食事がかなり大変でございました。

【西島委員】

 私もいつも金谷さんと話しているんですけれども、サイエンスではないので僕のほうから言うのもいかがなものかと思って、言ってもらって助かるんですけれども、今、産業界から見てもSPring-8のあれが最低限ぐらいのつもりなんですよね。今の若い方は、私たちと比べて恵まれた環境にもありまして、我が社などの例えば寮を考えても、私たちのときは2人で1部屋だったんですけれども、今は独身寮は会社の寮ではなくて借り上げマンションですよね。しかも、駅の近くで、昔は1時間超えたのに、今は1時間以内のところにそういう借り上げマンションを持たないと、当人もそうですけれども、ご両親が納得されないときもあるわけです。だから、私たちが思っている以上に、この宿舎の問題というのは大変重要な問題で、SPring-8にも慣れて、あそこが1つの最低線なんだというようなつもりで持っていかないといけないのではないかなと思っているので、そこはぜひお願いします。

【永宮センター長】

 評価部会でどんどん言っていただければ、それにこしたことはないんですけれども、少しだけ言っておきますと、僕もあの宿舎に泊まりましたが、そんなに悪くはないんです。ただ、数が足りないんです。

【西島委員】

 そうですね。

【永宮センター長】

 それで、KEKがあと50室ほど自前で出すということを最近決めましたから、それで多少は解消されるんですけれども、SPring-8は240ありますね。我々はまだそれを足したって100しかないんですね。だから、やっぱり100プラスを、ほかの古いところがありますから、そういうところで補っているんですけれども、ともかく、将来の懸案であります。

【熊谷委員】

 ちょっとコメント。

【福山主査】

 はい。

【熊谷委員】

 SPring-8の場合、今、240室あるんですけれども、ユーザーの方が増えてきまして、今まで個室だったものを、4分の1ぐらいをダブルにするとか、そういうことになりつつあるので、この宿舎の話は今後非常に重要な課題ではないかと思いますね。

【福山主査】

 文科省のほう、何かコメントございますか。

【原室長】

 ぜひ積極的にご議論いただいてと思いますけれども、一般論であれば、国の建てる宿舎については、今非常に厳しい状況でございますので、いただいた評価を踏まえていろいろ努力はしてまいりたいと思っております。

【福山主査】

 ありがとうございました。

 非常に多岐にわたるご意見を賜りました。どうもありがとうございました。これからさらにこの中身に関していろいろご説明を伺って、皆様のご意見を伺うと、そういう段取りになっているわけですが、今日はここまでにさせていただいて、次の中間評価における指摘事項に関して、ご説明を事務局からお願いいたします。

【阿部補佐】

 資料3、それから机上配付しております資料4をお手元にお願いいたします。資料3が前回、平成19年の中間評価報告書における指摘事項の概要になっております。それから、参考4がその本体になっております。参考4を1枚めくっていただきますと、「はじめに」というところにこの前回の中間評価の視点が書かれておりますけれども、真ん中あたりですが、前回の中間評価のときの視点としましては計画全体についての意義について改めて確認するとともに、平成15年の中間評価における指摘事項への対応、施設の運用体制や利用体制、運転経費の考え方、国際公共財としての取り組みについて妥当であるかどうかという観点から評価を行い、まとめたということになっております。

 資料3をご覧ください。主な指摘事項について抜粋したものでございます。大きな柱としましては全部で5つになっておりますが、まず1つ目としましては、先ほども少し議論がありましたけれども、第2期計画についてということで3点ございます。

 1つ目が物質・生命科学実験施設及び原子核・素粒子実験施設に関するものでございまして、ビームラインの高度化、実験施設の拡張などについては、関係する研究者コミュニティで当該分野における優先順位づけを行い、財政状況等を踏まえつつ判断していくことが必要である。それから、先ほどADSということでお話がありましたけれども、核変換実験施設、これについては重要な基盤技術として引き続き研究開発を進める必要がある。ただ、原子力政策全体の中で検討していく必要があり、今後、原子力委員会等の評価を踏まえて進めていくことが適当である。それから3点目としましては、フライホイールということで、50GeVシンクロトロンの運転状況を見ながら、適切な時期に再度レビューを行い、判断することが必要となっております。

 続きまして2つ目でございますが、多目的研究施設としての運用体制の構築についてということでございます。J-PARCの運営に当たっては、ユーザーの意見を汲み上げるような運営を目指すことが必要であること。センター長のリーダーシップはもとより、各副センター長の明確な役割分担やディビジョン長への必要な権限と責任の付与が必要であること。センター内各組織が緊密に連絡をとり、情報を共有できるような運営体制を構築していくことが必要であること。そして、本施設はJAEAとKEKの両機関が整備、運営しているわけですけれども、その両機関の協力の下、J-PARCセンターにおける明確な指揮命令系統の下で両機関の人員が融合し、一体となってセンターを運営していくことが必要という指摘がございました。

 それから、3点目でございますが、円滑な施設利用体制の構築についてということでございまして、専門部会の下に課題分野ごとの専門の分科会を設けることが適当であるといったこと、隣にあります研究用原子炉JRR-3との合同審査体制の構築など一律的な運営を目指した検討が必要であること。それから、両機関は課題について機関の評価に際しては異なった評価基準で評価を受けることに留意する必要がある。一方で、ユーザーからは利用体系を意識することなく利用できるような配慮が必要であること。それから、ビームラインの整備に当たっては、国際諮問委員会や利用者協議会などを通じて利用ニーズの把握に努めるとともに、ニーズを踏まえ研究分野のバランス、学術研究と産業利用のバランス、こういったものを考慮して適時に設置することが必要であること。J-PARCとJRR-3は相互補完の関係にあり、今後のニーズの広がりを見ながら両者の一体的な運営と同時に有効な使い分けの方策を検討すべきこと。産業界のニーズを掘り起こし、利用を促進していくにはトライアルユースが非常に有用であることから、J-PARCの中性子利用においてもこれを導入することが適切だということ。コーディネータや技術支援者を育成するためには適切な評価の仕組みやキャリアパスを検討する必要があること。試料の前処理からデータ取得・解析までの一貫した分析サービスを受けられるような制度も検討することが適当であること。知的財産権の保護、機密保持の徹底など産業界に使いやすい仕組みを早急に整備することが必要であること。J-PARCセンターは県との緊密な連携のもと、コーディネータの人材交流などを実施することが望ましいこと。そして、最後に光熱費や装置保守費など今後のビーム試験や運用の経験をもとに経費削減に向けて努力を行うことが必要といったことが指摘されておりました。

 次に4つ目ですけれども、国際公共財としての取り組みについてということで5点ございますが、研究環境及び生活環境の国際化が必要であること。外国人研究者のユーザーオフィスの整備や外国の研究環境やニーズを理解し、汲み取ることができる支援者の雇用などの環境整備が必要であること。利用者の居室や宿舎等の環境整備が喫緊の課題であり、地元自治体との連携・協力の下、速やかな対応が必要であること。居室における英語表記や多種民族に対応した食堂などの環境整備とともに、研究者の家族の教育、医療等の生活支援や家族の活動機会の充実など自治体・地域社会と協調した取り組みが望まれること。そして、広報担当を配置し、国際的な広報活動の強化を図っていくことが必要であることが指摘されておりました。

 そして最後に今後の課題等についてということでございますけれども、センターの位置づけを含め、J-PARCの運用・利用体制については、今後のJ-PARCを取り巻く情勢、研究や技術の進展、利用ニーズの動向、運用開始後における知見や経験等を踏まえ、適切な時期にレビューを行うことが必要であるということが指摘されておりました。

 それから、参考4の本体のほうですけれども、本文そのものにつきましては、全部で9ページの分量になっておりまして、その後ろに参考資料が幾つかついております。J-PARCの概要から、当時、計画に立てられていました今後の予定、当時のビームラインの状況、第2期計画の構想の概要、センターの組織体制、利用料金の算定の考え方、JRR-3における利用の状況、運転経費の内訳といった資料。それから、用語解説といったものが資料として含まれていた状況でございます。

 以上でございます。

【福山主査】

 どうもありがとうございました。

 資料3をもとに平成19年6月の中間評価の際に指摘されたことの概要のご説明がございました。このことに関しては、今日最初に、冒頭に資料1-3でこの作業部会の設置についてということに関してご説明がございまして、その中の2.主な検討事項の2番目に前回の中間評価における指摘事項への対応状況についてという、そういう項目が立てられておりますので、今日の段階ではこれをご覧いただいてご理解いただき、これからこの作業部会でこのテーマは逐次出てくると思ってよろしいですね。だから、今日はこうだったと、そういう理解でとどめたいと思いますけれども、とりわけ何かご質問があったらどうぞ。位置づけとしては、この資料、今ご説明があったことに関しては、これからのこの作業部会で具体的にそれぞれブレークダウンしたものに関しての意見交換ができる。

 西島さん、どうぞ。

【西島委員】

 直接ではないんですけれども、忘れないうちに少しご提案というか、この平成19年の時点と、それから、現在とこれから5年先の研究者コミュニティと言っている、そのくくっている研究者コミュニティの規模というか、活動状況というか、その成果というか、その辺のところを明確な優先順位づけをするときには多少必要です。例えばニュートリノ、中性子、ミュオン、ハドロンというその代表するような、先ほど学会長の方もいらっしゃると聞いていますので、その辺も含めてそういう、もちろん研究者の数が多ければいいというものではないと思うんですけれども、その辺のコミュニティというものについての認識を共有にしておく必要が私はあると思うんですね。つまり、チャンピオンデータみたいにたまたまポツンと光ったようなものについてドンとやると、一部の研究者がそれを使っているという、これが終わった後に不公平感があると思いますので、その辺の客観的なデータというものをどこかでご準備していただいて……。

【永宮センター長】

 客観的というか、簡単に言いますと、4つのコミュニティはニュートリノが大体600からぐらいです。

【西島委員】

 それは学会員ということですか。

【永宮センター長】

 いや、そうではなくて。

【西島委員】

 利用者?

【永宮センター長】

 利用者。ニュートリノは、外国人が500人ぐらい。それから、ハドロンは400人ぐらいで、そのうち外国人が100人ぐらい。そんな感じです。それから、中性子は、僕は700人だと思います。その全体としてね。

【西島委員】

 平成19年の5年前と現在と、そして5年後と見たときにその辺が大きく動く。

【永宮センター長】

 5年後か。

【西島委員】

 例えば推移して、結構あると思うんですよ。波というか、5年前と、それから今と。極端な話、たまたま、これは仮想ですよ。例えばノーベル賞をもらったことによって若い人がドーンと来て、その部分が増えているような状況があるとかいうのがもし、ないとは思うんですけれども、例えばそういうようなことが5年前の状況とコミュニティというのは。永宮先生、多分、頭の中に入っていると思うんですが、残念ながら、私、中性子のことは比較的聞く機会が多いんですが、そのほかについては聞く機会がないので、何かまとめた表みたいなものをご用意いただければと思います。

【永宮センター長】

 では、次回までに。

【福山主査】

 コミュニティという言葉、わかるようで、考え出すと、どこがどういうものかというのはわからないところが。それをより明確に理解したいと。ニュートリノ、ミュオン、ハドロン、そこら辺は大体あまり変化ないかもしれないけれども、事中性子になると生物関係の方がどのぐらい関与してくるかで随分数が変わる可能性がありますね。そこはこの前の5年、今、次の5年と考えたときに戦略策定という点で非常に重要なファクターになる可能性もある。

【金谷委員】

 それも加えた形で出していただければいいと思います。

【福山主査】

 そうですね。はい。

【金谷委員】

 ちょっとコメントよろしいですか。

【福山主査】

 どうぞ。

【金谷委員】

 中性子科学会というのは人数的には、ここそれほど増えていないのですが、例えば先ほど長我部さんが言われたように産業利用の推進協議会というのがございまして、そこは爆発的に今増えているわけですね。だから、そういうところもきちっと評価していただきたいという気はいたしますね。

【福山主査】

 そうですね。

【金谷委員】

 彼らは中性子科学会の学会員ではないので、ほとんどが。

【西島委員】

 当然、5年前と今と爆発的に増えているという、そういうのをぜひ数で示していただければなと思います。

【福山主査】

 確かに今整理するとかなり有効かもしれませんね。将来を考えるときの戦略策定の基軸になる可能性がある。そこら辺に関しては、これから具体的に議論させていただければと思います。

 続いて、先に進めさせていただきたいと思います。次は作業部会の進め方と検討事項等についてという項目になっていますね。事務局、よろしくお願いします。

【阿部補佐】

 お手元の資料4をご覧ください。作業部会の進め方(案)ということになっておりますけれども、第2回、3回、4回、5回まで仮のスケジュールということで入れさせていただいております。本日、第1回は会議の趣旨、概要、それから前回の中間評価の概要等々、議論させていただいているところですけれども、案としましては、第2回と第3回においては個別事項の現状、成果、今後の方向等について、それぞれご議論いただければと考えております。

 具体的内容には、ここに記載しておりますけれども、第2回では物質・生命科学実験について、共用の推進等について、それから二期計画に入っております核変換実験施設についてということを項目として挙げさせていただいております。第3回には加速器整備について、ニュートリノ実験について、ハドロン実験についてという項目を入れさせていただいております。そして第4回で、できましたら今後5年間のJ-PARCの展開についてということで、加速器整備について、物質・生命について、素粒子・原子核について、そして二期計画についてといったことについて、今後の展開をまとめるようなことができればと考えております。そして第5回、報告書(案)ということが進め方の案として入れさせていただいております。なお、第6回を一応予備として6月というものも記載させていただいております。

【福山主査】

 資料4で、これからこの作業部会のアクションプラン、ターゲットが列記されているわけですけれども、これとさっきの資料3での指摘事項の概要等々、これの対応ということを意識してこれからのことという、そういうことになるんでしょうかね。この資料4の議題の割り振りの仕方は。今の時点で、いかがでしょうか。

【岡田委員】

 1ついいですか。

【福山主査】

 はい。どうぞ、岡田さん。

【岡田委員】

 J-PARCの将来計画をお立てになるときに、予算の参考6などを見ると、あるいはこれまでの設置の経緯などを見ると、日本原子力研究開発機構と、高エネルギー加速器研究機構がやはり非常に大きな役割を占めているというか、この二つの機関との協力関係の上で永宮センター長もセンターの運営に関して決めていかれると思うんですけれども、今回の作業部会にJAEAやKEKからも来ていただいて、話を聞くなり、ご意見を伺うというふうなことは必要ないでしょうか。

【福山主査】

 いかがでしょうか。確かにそれはこれの話のときにどこかでそういうことが……。

【岡田委員】

 もちろん、毎回来ていただく必要はないと思いますけれども、例えば第4回の今後の展開といったところに関しては、こちらからの質問について意見を伺うなどそれぞれの代表者に来ていただくなどの対応があってもいいのではないかと思ったのですが。

【福山主査】

 確かにJ-PARCの計画、KEKとJAEAがずっと進めてきて、そういうこの施設を支える組織とこの施設の関係についてどうか。確かに今日の資料1-2を改めてそういう観点でご覧いただくと、過去、経緯、確かにその2つの組織がいろいろなリコメンデーションを経て、そこは担当してJ-PARCセンターが生まれて、今日ここにある。それは歴史的事実。その中での課題、課題があるとしたら、それを乗り越えるのにどうしたらいいか、これからどうあるべきかという、そういう組織論に関しての議論が確かにあるほうが適切ですね。大変的確なコメントをいただいたと思うのですが、それはどこかであるべきだと思うんですけれども、それはどういうふうになりますかね。これからの作業部会での議論の仕方に関して。

【原室長】

 具体的にいつの会に呼べるのかというのは先方の都合もありますので、事務的に調整させていただいて、できるだけ原子力機構とKEKのほうと話を伺うような機会をつくりたいと思います。

【福山主査】

 はい。そうですね。

【原室長】

 並びから言うと第2回がいいのかなと思いますが、時期が迫っておりますので。

【福山主査】

 できるだけ早いほうがいいですよね。

【原室長】

 あるいは第4回の今後のところでお話しいただくのがいいか。

【福山主査】

 確かにこのJ-PARCセンター、ここはJ-PARCと書いてありますけれども、具体的に永宮先生はJ-PARCセンター長、J-PARCセンター、それがこういう活動の中心なわけですが、それを支えている親が、両親みたいに2人いて、そのJAEAとKEKという、ある意味で違うカルチャーを持った、違うやり方を持った組織がそれを支えている。そういう意味で、そう簡単でない側面もある。トリッキーなところもある。確かに運営上やはり厄介なこと、難しいこともある。それはこの時点で課題は課題として認識して、これからどういう方向にあればいいのかとか、何かそういう議論がどこかであるのは適切ですね。いかがでしょうか。

【永宮センター長】

 量研室と打ち合わせしながら進めたいと思うんですけれども、先回の評価部会でそれをやったんですよね。だから、なかなか意見がうまくまとまらないというか。

【福山主査】

 十分想像できますけれども、5年間の経験があるわけだから。

【永宮センター長】

 こちらの評価部会で求める回答が得られればいいんですけれども、そうでないとちょっと発散してしまうので、その辺やっぱり。ただ、毎回、国際諮問委員会でも問題になっています。

【福山主査】

 絶えず問題になっています。

【永宮センター長】

 絶えず。だから、建設的にやりたいと思いますので。

【福山主査】

 確かにこれは評価部会としては、わきに置けない、やっぱりとらえなければいけない。だけど、とらえ方に関して工夫が要りますね。その基軸は将来にとって、もちろんプラスになるようにどうしたらいいか。

【西島委員】

 これは逆にその両親は、この中間評価の報告をいい形で出してくださいよということを望んでいるのではないですかね。そういうことではないんですか。冷静に判断材料として出してほしいよということで、そういう意味ではJ-PARCセンターはその責任を負っているし、ここでの中間評価で冷静にいろいろな意見を出してもらって、それを両親に見せるというので、両親からすれば出てきてどう答えるのかなというのもなかなか微妙かなと少し思ったんですが。

【福山主査】

 どうするのがいいか。ともかくきちっとこの作業部会としては、そういう組織論としての現状をきちっと、現状というか、過去の経緯を踏まえて現状を理解して、問題点は問題点、伸ばす点は伸ばす点、それはやっぱりきちっとアイデンティファイして、それを踏まえて将来より良くするためにはどうしたらいいかというようなコメントをするのが元来の評価委員会の役目の1つですね。サイエンティフィックな議論は、それはそれでまた別にやるとして、どうでしょう。文科省のほうから何か。

【原室長】

 いただいたご指摘、非常に重要な視点だと思いますので、具体的にどういうやり方でやるかとか、いつやるかということについては調整させていただいて、またご相談したいと思います。

【福山主査】

 確かに実りあるようなやり方をぜひ工夫したいですね。大変重要なご指摘、ありがとうございました。

 ほかにどうでしょう、全体的な観点から。資料4に関しては、それを反映していただくということ、それでよろしいでしょうか。そうしますと、あとは、これで終わりなんですね。これからの予定と連絡事項について、事務局からよろしくお願いします。

【阿部補佐】

 次回につきましては、既にご連絡させていただいておりますとおり、4月11日水曜日、午前10時から12時ということで、会場は本日と同じこちらを予定しておりますので、よろしくお願いいたします。

 それから、本日の資料ですけれども、非常に多いかと思いますので、お手元の封筒に資料を入れていただきまして、右肩にお名前を書いていただければ、後日、郵送させていただきますのでよろしくお願いいたします。

【福山主査】

 以上で、今日予定しておりましたテーマは全部ご意見を賜ることができました。大変喜ばしいことで、終了時刻は18時となっていますけれども、まだ10分残しております。意外なところでございます。その割にはいろいろ意見交換していただいたと思います。本日は、ご協力どうもありがとうございました。これからもよろしくお願いします。

 

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季武
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