【資料1-1】これまでの議論の概要(案)

大強度陽子加速器施設評価作業部会(第1回) 議論の概要(案)

J-PARC計画の概要及び現状等について

  • 震災からの復旧を計画通り短期間で成し遂げた点について、驚異的であり敬意を払いたい。
  • 震災前よりも積極的に中性子を利用したいという企業が増えている。リチウム電池を始めとした材料やデバイス開発の差別化要素として期待されている。
  • 製薬業界は、高価な試料が大量に必要となる中性子によるタンパク質の解析については、今のところ慎重。タンパク質の構造に水素が重要だという事例が学術分野から出ると良い。一方、製薬業界では、製品の品質保証等で使うことを検討してはどうか、という意見もある。
  • 従来から中性子を用いて、非破壊で溶接部の歪みを見るといった使われ方があり、定常的に需要があるが、競争が激しくなっている電池や磁石に関する分野に利用が集中している。
  • 国際センターとしてのJ-PARCという点について、国際的な位置づけを踏まえて、重点領域や今後5年間の計画などをどのように考えているか。
    (回答)
     ハドロン、ニュートリノについては、外国との競争を意識している。中性子は、欧・米に同様の施設があるので、アジアからの利用者が多い。このため、アジアにおける役割を果たすことを意識している。それぞれの利用者をバランス良く増やす必要があるが、世界的にリーダーシップを取れる部分を重点化することが重要と考えている。優先順位等については、個々の議題の際に、議論していただきたい。ADSについては、国際競争の側面もあるが、違った側面からも重要と考えている。
  •  平成23年6月にニュートリノが出した成果の兆候は、世界的に大きな注目を浴びており、成果を確定させることが、国際的に強く求められている。競争の激しい分野であり、今後、J-PARCを着実にアップグレードしていくことが重要である。
  • ハドロン施設に関しては、ビームの質に改善の余地があり、成果が次々に出る状況に至っていない。この点を改善して欲しい。実験提案が多く、認められている実験だけでも実施に5~6年かかる状況。多くのビームラインが欲しいという声が上がっており、成果をどんどん出すためには、実験施設の下流側の拡充や充実が望まれている。
  • ミュオンのビームラインも現在は1本しかなく、100人以上の日本の研究者が海外施設を利用している状況。第2ビームラインは建設中だが、第3、第4のビームライン建設についても強い要望がある。
  • 震災から復旧したものの、アライメント等、これから徐々に狂っていく部分もあると考えられる。そのような状況でビーム強度を上げるということなので、一層、J-PARCの若い人の体力と知力で頑張ってもらう必要がある。
  • すべての加速器、施設の充実は優先順位をつけて対処する必要がある。
  • 今は、タンパク質科学では、中性子利用はそれほど取り組まれていない。一方でX線での構造解析の精度が上がった結果、水素も観察しないと機能を本当に理解したことにならない、という議論が出ている。今後、本当にタンパク質の機能を理解するという需要が高まってくると考えている。現状、茨城県の装置が設置されているが、大学などで使える装置があると良い。
    (回答)
     最近、茨城県の装置で、タンパク質の1辺が86オングストロームの結晶構造解析に成功したという論文が、その分野の論文のトップ2%に選ばれたという成果が出ている。これは100kWで30日かけて測定したもの。1MWになれば、3日でデータが得られることから、将来は、大学の利用者にもっと使って貰えると考えている。また、さらに大きなタンパク質の構造解析ができる装置が提案されている。さらに、タンパク質のダイナミクスを見る装置が共用ビームラインとして稼働を開始しており、水素の動きを見るような研究が始まっている。
  • 未着手の研究棟は、物質科学分野の測定準備等で重要な役割を占める場合が多い。
  • J-PARCの国際諮問委員会では、レポート中で食事の問題が強調されていた。
  • 宿舎は国際化の観点やサイエンスを高めるために非常に重要。計画の100室が完成してもSPring-8の240室と比較して少ない。SPring-8はユーザー増により宿舎が足りなくなりつつある。SPring-8の現状が最低線だと考えるべき。

中間評価における指摘事項について

  • 明確な優先順位付けをするときには、研究者コミュニティの規模、活動状況、成果などの認識を統一しておく必要があるのではないか。
  • 利用者数という視点では、おおよそ、ニュートリノが600人(うち外国人500人)、ハドロンが400人(外国人100人)、中性子が700人。
  • 5年前からの推移により、5年後の推測ができるのではないか。
  • 何かまとめた表みたいなものがあると良い。
    (回答)
     次回までに用意する。
  • 中性子に関して、生物関係の利用者がどの程度参入するかで、今後の数が大きく変わる可能性がある。今後5年の計画では、重要なファクターとなる。
  • 中性子科学会の会員数は増えていないが、中性子産業利用推進協議会の会員は爆発的に増えている。その点についても示して欲しい。

評価作業部会の進め方及び検討事項等について

  • J-PARCの将来計画を考える上では、KEKとJAEAが非常に大きな役割を占めていると考えられる。
  • 今回の作業部会両機関の代表者に出席していただいて、話を伺うか、J-PARCの出した資料について意見を伺ってはどうか。
  • 組織論として、過去の経緯を踏まえた現状を理解し、問題点や伸ばすべき点を認定し、将来より良くするための提言を行うことが、本作業部会の役目の一つである。

大強度陽子加速器施設評価作業部会(第2回) 議論の概要(案)

運営体制について 

  • 契約や知的財産の取扱いなどについて、運営体制が迅速な対応を阻害しないように意識した方が良い。
  • KEKとJAEAの違いに立ち入った組織の議論は、この場では適切でないが、当事者で議論して、良い回答を提示して頂きたい。

国際研究拠点化について 

  • J-PARCを世界中から研究者が集まってくる魅力的な最先端施設とすることを第一として、優先順位付けを考えると良いのではないか。居住環境は一番重要だが、食事に問題があっても施設に魅力があれば研究者は集まる。
  • 外国人職員数が少ないのではないか。外国人スタッフがいることで、外国人ユーザーの実験がスムーズになり、雰囲気も国際化する。別枠でも外国人スタッフを増やす努力が必要ではないか。
  • 特に、駅からJ-PARCまでの交通機関が不便。国としても支援を検討して欲しい。

物質・生命科学実験、共用の推進等について

(生物分野での中性子利用)

  • 生物関係者が少ないのは、施設に魅力が無いのではなく、使いやすいビームラインやビームタイムが無いためではないか。
    (回答)
     現在はビーム強度が低いため、少ない課題に集中して成果の創出に努めている。将来的には増えていくと期待している。
  • 精密測定という観点で、ライフサイエンスではアカデミックな利用を先行させ、製薬業界がそれに追いつくような道筋を作っていくと良いのではないか。
  • 茨城県のタンパク質の解析装置(iBIX)を使える一般課題の割合が20%では、将来の生物系の課題を受け入れられないのではないか。
  • 複数のタンパク質が複合体を作って細胞中ではたらく現象が重要視されている。このような分子量が大きく、格子が長い結晶を解析するためには、茨城県のiBIXでは難しいのではないか。
  • ライフサイエンス関係は期間が長いため、早い段階から基礎実験を行わなければならない。MLFは物質の分野に偏り過ぎていて、国民が最先端の成果を望んでいる生命科学の部分が抜けているのではないか。
    (回答)
     iBIXでは検出器の改良・増強を計画しており、もっと大きな試料が測定可能になると考えている。20%という一般課題の割合は、絶対的な値ではないので、大きな結晶があれば測定に使ってもらいたい。
     新しいビームラインの議論の中で、構造生物のタンパク質のためのビームラインを用意したいという意見がある。現在審議中だが、次々回に紹介できると思う。 

(ミュオン)

  • 生命科学分野でのミュオンが利用可能であれば、紹介して欲しい。 

(戦略的な研究推進)

  • 課題公募はボトムアップなシステムであるが、トップダウン的に組織やコミュニティとして重点的に研究を進める仕組みが必要ではないか。
    (回答)
     直接的には当たらないかもしれないが、プロジェクト利用を議論する「JAEA研究課題諮問委員会」「CROSS開発課題審査委員会」がその役割を担っている。
    ← その部分は科学者のコミュニティに開かれている必要がある。 

(非公開利用による収入の取扱い)

  • 中性子の産業利用が多いのは、実験室にX線装置が有るのと違い、小型の中性子源が無いことが理由ではないか。産業利用で得られる利用料金を、産業利用で使われるビームラインの高度化に使用し、効率を上げて受け入れ課題を増やすような使い方があっても良いのではないか。
  • 非公開利用の利用料金が運営費にしか使えないのであれば、ビームライン関係者にとってメリットがない。利用料金をビームラインの高度化や周辺機器等に使えると、ビームライン関係者のメリットにもなり、利用者と施設者の両者にとって良い制度になるのではないか。 

(共用の促進)

  • 制度的に可能であれば、効率化のため、CROSSの選定委員会とMLFの施設利用委員会を合同委員会に出来ないか検討して欲しい。 

大強度陽子加速器施設評価作業部会(第3回) 議論の概要(案) 

国際公共財としてのJ-PARC

  • 国外企業による物質・生命科学実験施設の成果非公開利用について、「国内企業の国際競争力の向上という趣旨と矛盾するので、利用の増加とともに理念を確認する」というのは、少しのんびりし過ぎているのではないか。
  • 「国際公共財」という言葉は学術目的であって、この点では世界に開かれているべきである。産業利用は主たる目的ではないため、競争のために海外からの利用を閉じるということを強調するべきではないと考えている。
  • 現段階では、海外からの非公開利用が増えている状況にないが、取扱いについて、早めに検討する必要があるだろう。
  • SPring-8でも海外からの非公開利用が多くなれば問題になる可能性がある。将来的にはSPring-8とJ-PARCが連携して共通の基準を作るのが良い

平成19年の中間評価における指摘事項への対応状況

  • (指摘事項(11)に関連して)
    国際的な連携研究を推進するためにも、中性子コミュニティは海外ビームラインの導入を希望している。マッチングファンドの導入を検討しても良いのではないか
  • (指摘事項(14)に関連して補足)
    一貫した分析サービスの提供は、外部の分析機関に頼むのではなく、内部の職員による対応を考えている。大学と産業界という区別はしないが、無償とするか否かは検討事項である。 

核変換実験施設について

  • 加速器駆動炉(ADS)による核変換は、投資効果として魅力が有るのか
    (回答)
     数万年続くリスクをどのように考えるかによる。研究者の役割は、核変換による効果を示して、選択肢を提示することにあると考えている。実際の選択は別の議論と考えている。
  • 研究の進め方の方針はどのように決定されているのか。
    (回答)
     現在はプロジェクトを提案しようとしている段階で、実施の意志決定はこれから行う。コミュニティという観点では、原子核のコミュニティなどを含めた広い範囲に広げることを念頭に議論を進めている。 
  • 日本学術会議で議論が行われているか。
    (回答)
     プロジェクトとして提案されてはいるが、正式に取り上げられていない。TEF-T(ADSターゲット試験施設)を先行させるという判断は、コミュニティを意識した結果である。 
  • 技術開発だけでなく、サイエンスとして興味深いテーマにも利用されるという両面性が強調されるべきである。
  • 1基のADSで何基の軽水炉からのマイナーアクチノイドを処理できるのか。
    (回答)
     約10基。日本に50基の軽水炉があると考えると、国内に5基のADSが必要。 
  • ADSは加速器を止めれば止まるという説明だが、核分裂生成物の発熱で炉心溶融する可能性は無いのか。核分裂生成物の発熱量はどの程度か。
    (回答)
     核分裂生成物の発熱量は軽水炉よりも大きい。しかしながら、冷却材に鉛ビスマスを使っているため、沸点が約1,700度と高く、自然循環力が強いため、軽水炉よりも炉心溶融に対する余裕は大きい。さらに動力を必要としない冷却系を設けることで、炉心溶融の可能性はさらに低くなると考えている。 

加速器整備について

  • 加速器の大強度化では、ビームロスの低減が課題となるだろう。どのようなシナリオで進めるのか。
    (回答)
     シミュレーションで分かる範囲は当初から局所遮蔽やコリメータ等の対応をする。 
  • メインリング(MR)の繰り返しを上げて強度増強を図る場合、新規に製作する電源の性能確認はどのように行うのか。
    (回答)
     プロトタイプ試験を行い、その結果を踏まえた専門家によるレビューを受ける。レビューでの評価を再検討して量産可能かを判断する予定。 
  • 大強度の加速器は一つずつ問題を解決する必要がある。その手順としては、適切に対応していると思う。
  • フライホイールを導入してMRを大強度化するというシナリオは当面考えないのか
    (回答)
     利用実験で50GeVというエネルギーが必要というテーマが出てこなければ、繰り返しを上げる方法でメインリング(MR)の大強度化を考えている。 
  • メインリング(MR)の遅い取り出しの時間構造についても画期的に改善する必要がある。その見通しはどうか。
    (回答)
     「スピルフィードバックシステム」と「横方向の高周波システム」の導入で相応の効果があると見込んでいる。根本的な原因は主電磁石電源の電流リプルにあることから、MRの高繰り返し化で更新される電源システムに向けて、低リプル電源の開発を進めている。
  • ビームパワーが上がれば単純に成果が出るという話だけでなく、投入したビームパワーから、効率よく効果的な結果を出すために、どのような努力がなされているかを見えるようにプレゼンすることが、これからは重要になると思う。 

ニュートリノ実験について

  • 将来はさらなる加速器の大強度化が必要ということだが、具体的な検討状況は。
    (回答)
     設計強度に到達した後の更なるビーム強度の増強については、検討を始めたばかり。現存の加速器だけでなく、新たな加速器を追加する必要がある。 

ハドロン実験について

  • 遅い取り出しの100kWというのは成立しているのか。
    (回答)
     成立している。取り出し効率を向上させ、ビームロスによる放射化を抑えることが重要。現在達成している取り出し効率は99.5%で、高出力でもこの効率を維持できれば、100kW時にビームロスは500Wとなる。500Wであれば、コリメータや局所遮蔽等で対応可能。 
  • この分野での理論やシミュレーションは、スパコン「京」で戦略分野の一つとして推進されている。J-PARC等での実験と「京」等での計算が連携している。分野の中では常識であっても他のコミュニティではあまり知られていないことから、大きな共用施設を用いた研究成果が相互に関連していることを社会へアピールできるよう、例えば、合同で研究成果の紹介を行う場があっても良いのではないか。

以上

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研究振興局基盤研究課量子放射線研究推進室

(研究振興局基盤研究課量子放射線研究推進室)