【資料1-1】光・量子ビーム研究開発作業部会(第1回)の主なご意見
議論のポイント
人材育成について
- 装置が大型化と集中化が進み、学部等で加速器を持たなくなってきた。結果として教育マシンが減り、学部等で(装置を作れる)人材を育成する場がなくなっている。加速器分野だけでなく広い分野でこういう現象が見られていて、大型施設側と大学の連携が必要。(井上委員、家主査)
- 加速器人材の育成については現在日本の大学は細っており、加速器の輸出を日本が狙っていくのであれば、戦略的に育てるべき。(五神委員)
- 光拠点で行っている人材育成は、真に新しいものを生み出すという研究活動をしつつ、それができる人材を行うのに適している分野であることから「光科学」というものを題材にして、広く産業界や基礎科学の世界で活躍できる研究者を育てるために行っている。光科学を支えるだけが目的ではないし、光・量子ビーム分野に閉じこもるべきではない。(五神委員)
- 産業界とも連携しながら量子ビームの人材を育てることが国全体の課題解決や日本の成長につながり、そのポテンシャルを光科学が持っているのであれば、素直に人材育成のいまの施策を伸ばすという観点もあるのでは。(五神委員)
- 先生が目を輝かせておもしろい研究を行っているところで優秀な人材は育つし、人も集まる。(井上委員)
- 非常に魅力的なテーマで研究をやっていて、優秀な学生が集まるという状況を作るだけでは半分で、その後でどういうキャリアでどう展開していくかという視野を同時に植えつけさせることが重要。(五神委員)
- 大学院生をどう育てるかだけでなく、サイエンスの中の人がトライアルユースなどで新規利用者の啓蒙を行う中で人を育てていくような施策も必要。(吉澤委員)
- 研究プログラムの中で基礎科学的な測定原理みたいなところまで踏み込んで要素技術を発展させられるようなことができる人材を育てていくべき。(村上委員)
研究開発の方向性について
- 要素技術をきちんと開発するための支援をしてないと、我が国の科学技術力を担保することはできない。またその要素技術の有効利活用という観点も非常に大事。今回量子ビームプログラムが終わるわけなので、次はそれがどういうふうに基礎科学に展開されて、産業界に展開されたというのが見えるような施策を打つことで、政策が国民社会に還元されているということを示すのが重要(吉澤委員)
- レーザーをベースとする光科学技術と量子ビームの技術は、歴史的な融合点に来ており、活用の道はあるが、緊急性の高い施設開発と同じ土俵で考えられないのではないか(五神委員)
- 量子ビームとか光を総合的に使ったような技術開発、基盤開発を行うことで、広く量子ビームを使えるような人材を育成すべきで、かつ学際的に応用可能性を重視して行うべき。(村上委員)
- 量子ビームと計算科学(シミュレーション)の連携が非常に重要。ビームタイムの効率性(スループット)向上にもつながる。(南波委員)
- ファンダメンタルな部分からインダストリーに行く間をつなぐベーシックリサーチが重要。かつ、その研究開発の中で1つか2つはきちんと出口まで成果を見せていくことが重要。(井上委員)
- ハードだけでなく、コアコンピタンスたりうる「技術」も多く生まれている。そういったものの融合も重要な観点であり、極めて経済的・効率的に世界に対峙できるものを創り出せる。(兒玉委員)
- 要素技術開発とサイエンスの目的のバランスが重要。(三木委員)
産業界による光・量子ビーム施設の利用について
- トライアルユースの経験では、間口を広げると業種に関わらずたくさんの人がめざましい成果を出す。これまで敷居が高かったのは施設側の努力が足りなかったと自覚して、さらに使ってもらう施策を打つべき。(吉澤委員)
- 基礎研究の段階から製品開発まで放射光の利用というのは非常に有効と理解しているが、基礎研究とか先行開発の段階までは使えるのだが、(公募スパンやセキュリティなどの関係で)製品開発に近づけば近づくほど使えなくなってくる。シミュレーション技術や簡易的な実験設備での代用が進めば、企業の中でも利用がもっと進んでいく。(三和田委員)
- 量子ビームの場合は利用機会が少な過ぎて製品開発や品質保証に使えない。そのため、X線も中性子も小型線源にというのが一つのトレンドになっており、これが実現すると競争力が格段に上がる。(吉澤委員)
- R&Dだけがターゲットの大型装置利用というモデルはもう成り立たない。(五神委員)
- (製造業にとっての)市場が日本にないので、R&Dを日本にとどめるには相当の努力が必要で、直近の経済に影響するところの利用率をどう上げるか、情報セキュリティなども含めて仕組み作りが極めて重要。(五神委員)
- マシンタイムが自由に使える、すぐ使えるなど産業利用までつながるシステムを考えるべき。(村上委員)
- 最近は施設側も産業界の声に耳を傾けてくれるようになってきたという印象。(吉澤・三和田委員)
- 企業側の人間も基礎研究・要素技術開発をウォッチするとともに研究に参画してネタ探しをするべき。これまでは、アカデミアからできてきたものだけを見て、これは使えると飛びついていただけ。開発段階から企業の人間を巻き込んだ活動をしていくのが重要。研究者側も、企業とのコミュニケーションの場を多く設けてもらいたい。(三和田委員)