研究開発プラットフォーム委員会(第8回) 議事録

1.日時

平成24年12月7日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 16F特別会議室

3.議題

  1. 「科学技術イノベーションを牽引する研究基盤戦略について」の推進方策について
  2. その他

4.出席者

委員

瀧澤委員、西島委員、二瓶主査、吉澤委員、伊丹委員、長野委員、野田委員、

文部科学省

磯谷科学技術・学術総括官、柿田基盤研究課長、竹上基盤研究課課長補佐、永井ナノテクノロジー・材料開発推進室長、神部量子放射線研究推進室室長補佐、安藤基礎研究振興課長、下間情報課長、成田ライフサイエンス課生命科学専門官、高見沢学術企画室長補佐、

オブザーバー

芳田経済産業省産業技術環境局産業技術総合研究所室室長補佐

5.議事録

第6期科学技術・学術審議会 先端研究基盤部会
研究開発プラットフォーム委員会(第8回) 議事録(案)
平成24年12月7日


【二瓶主査】  それでは時間になりましたので,第8回研究開発プラットフォーム委員会を開催させていただきたいと思います。
 本日は,「科学技術イノベーションを牽引する研究基盤戦略について」の推進方策についての議論を予定しております。
 それでは,配付資料等の御確認をお願いいたします。

○竹上基盤研究課課長補佐より,出席者の紹介と配付資料の確認があった。

【二瓶主査】  それでは,議題1に関する議論に入らせていただきます。
 本委員会では,これまで1年半にわたり,産学官に開かれた研究開発プラットフォームの構築に向けた検討を進めていただき,ここでの検討をもとに,8月7日の先端研究基盤部会において,報告書「科学技術イノベーションを牽引する研究基盤戦略について」が決定されております。
 本日は,この報告書に掲げられた取組を実効性のあるものとして進めていくために,事務局において具体的な工程表をお作りいただき,また,取組状況を把握するための検証指標案を準備いただいております。委員の皆様方から御意見等を頂ければと存じております。
 それでは,まず,議論に入る前に,事務局より,報告書の概要と研究開発プラットフォームに関連する平成25年度概算要求の状況について,説明をお願いいたします。

○竹上基盤研究課課長補佐より,資料2-1~2-4に基づき説明があった。

【二瓶主査】  それでは,ただいま説明のあった内容につきまして,本日は各施策の担当者にも御出席いただいております。どうぞ御質問がございましたら,御自由に御発言いただければと思います。
 どうぞ。
【野田委員】  資料2-3にある,「京」を中心としたコンピューターのネットワークというのは非常に大事だと思います。そのネットワークの整備はどのような状況でしょうか。それというのも,昔,総務省でもやっていましたし,文科省でもやっておられて,筑波はつくばWANというのですが,最近,量的に少し細くなってきたかなというのがあって,こういうのをしっかりやるためには,ネットワークを使って利用するのか,特に基幹のところのお考えはいかがでしょうか。
【下間情報課長】  情報課長でございます。HPCI(ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ)のネットワークの環境でございますけれども,国立情報学研究所,昔の学術情報センターが整備を進めておりますSINET,学術情報ネットワークを基幹的なネットワーク環境として利用しておりますので,新たに今,SINET4が既に構築をされておりまして,それについて整備を進めるということで,今,運用経費として年間60億程度の予算を確保しながら運用しております。また,これが2年程度後には更に回線を太くして,SINETの次の段階を構想していかなければいけないというタイミングはございますけれども,そうした既存のネットワークを利用しながら,「京」と9大学の情報基盤センターが保有するスーパーコンピューターとをネットワークでつないで,ユーザーサイドで必要な環境を選択できるようなハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラを構築しているということでございます。
【野田委員】  わかりました。どうもありがとうございました。
【二瓶主査】  どうぞ。
【西島委員】  放射光関係では,大型放射光としてSPring-8があるわけですけれども,産業界は御存じのようにSPring-8と筑波のPhoton Factoryを使っており,放射光といったときのSPring-8と筑波のうち,筑波の方は資料2-3の11ページにある「光・量子科学技術研究拠点形成に向けた基盤技術開発」の中に含まれているということでしょうか。
【神部量子放射線研究推進室専門職】  量子放射線研究推進室の神部と申します。
 筑波のPhoton Factory,PFにつきましては,学術機関課の大学共同利用機関の機関になりますので,Photon Factoryの整備という意味では,そこの交付金の中で予算を措置しております。それは定常的に運転をするため,安定的に運転するための基盤的経費という意味でそのように取り扱っています。
 一方,11ページの光・量子のプログラムに関しましては,特に筑波のPhoton Factoryに限らず,全国のあらゆる光・量子の施設が対象となりますので,もちろんこの予算を使いまして,Photon Factoryの放射光と,例えばJ-PARCの中性子のビーム,その二つのビームを利用した研究をやろうという意味でこの予算を活用することはあり得ると考えております。
【竹上基盤研究課課長補佐】  一点補足させていただきますと,放射光施設に関しては,理研のSPring-8,その他にも,大学や大学共同利用機関等に大小様々な施設があります。これらの施設については,利用者側の視点に立って,技術領域ごとのプラットフォームを構築することが重要であると考えております。資料2-3の6ページに記載している「先端研究基盤共用・プラットフォーム形成事業」においては,今後の放射光施設全体としての在り方を議論することもできるような,技術領域別のプラットフォーム構築支援を進めていきたいと考えております。プラットフォーム構築を通じて,放射光施設の共通的な利用ルールなどの議論を各機関に進めていただきたいと考えています。
【西島委員】  是非そういう方向で進めていってください。産業界からすると,SPring-8の最高レベルを使ってサイエンスやネイチャーの表紙を飾ることを目標にしているわけではございませんので,SPring-8と筑波で,片方に行ったら敷居が高いんだけれども,片方に行ったら書類が大変だとか,そういうことがないようにお願いします。
【竹上基盤研究課課長補佐】  そういった要請は多方面から頂いておりますので,仕組み作りを進めていきたいと思います。
【二瓶主査】  ほかにいかがでございましょうか。
【西島委員】  もう一点,この間たまたまバイオリソースの関係で筑波の理研のセンターを見に行き,立派に進んでいるなと思ったのですが,施設管理に関する維持費や,そこに働いている人たちの研究能力の活かし方,またその施設レベルの維持がちょっとなおざりになっているのではないかと感じました。このような部分について,プロジェクトとして立ち上がったら大変よいのではないかと思います。この辺は是非継続して力を入れてほしいなと感じました。
【二瓶主査】  ありがとうございました。
 それでは,また何かございましたら,後ほどの時間帯に御指摘,御質問いただければと存じます。
 それでは,次の議論でございますが,事務局より資料3-1について御説明をお願いしたいと思います。

○竹上基盤研究課課長補佐より,資料3-1について説明があった。

【二瓶主査】  ただいま御説明いただきました工程表でございますが,本工程表につきましては,文部科学省において検討し策定されるものでございます。ただ,ただいまの説明に対して,既にここに記載されている内容,あるいは追加で盛り込むべき内容,いずれでも構いませんので,委員の先生方から御意見を頂き,今後,文部科学省での検討の参考にしていただきたい,そういうように考えております。
 資料3-1に関しまして,御発言いただければと思います。
 どうぞ。
【長野委員】  大変すばらしい工程表だと思います。
 一点,質問させていただきたいのですが,1ページ目のところの共用の研究施設・設備というのは,毎年更新といいますか,より良くしていかなければいけないというのは当然かなと思いますが,1ページ目の一番上の右側の具体的なアクション,丸が三つありますけれども,二つ目の丸のところに共用関連施策について記載がありまして,設備の拡大と適切な入替えを実施,共用法対象施設は除くと。対象施設は四つのところだろうと思いますけれども,それと関連しているのが,3ページ目の一番下に右側の丸が二つありまして,共用法対象四施設について,毎年度,計画的な高度化を進めると書かれています。ここでは高度化と書かれていまして,1ページ目の方は拡大と適切な入替えという表現があるのですが,後者については高度化を行わないということなのでしょうか。
【竹上基盤研究課課長補佐】  共用法対象4施設と他の施設では,予算の仕組みが違うので書き分けていますが,「拡大」というのは,共用する施設・設備数を量的に増やしていくという意味です。高度化ももちろん重要と思っております。共用法対象施設は現時点では四つが指定されており,ここは予算事業だけでは拡大ができないので、高度化という記載のみになっています。
【長野委員】  共用施設というのは,何年かすれば,拡大もあるかもしれませんが,よりいいものにしていくというのは当然だろうと思うのですけれども。
【竹上基盤研究課課長補佐】  はい。先端性を維持し続けていくことの重要性は,報告書にも記載いただいておりますので,共用法の対象施設かどうかに関わらず,「高度化は重要」という記載をしております。
【長野委員】  ありがとうございます。
【二瓶主査】  どうぞ。
【伊丹委員】  今,長野委員は大変すばらしい工程表とおっしゃったのですが,私は大変御苦労なさった工程表という感じがして,こういうのは作らなきゃいけませんので作るのですが,この中の濃淡をどうするかというところが一番重要なポイントかなと思いました。例えば先端計測分析技術・機器の開発というのはものすごく大切で,私は今日聞いた話の中でこれが一番重点になるべきもののような気がいたしました。
 あともう一つは,俯瞰的にどのような新しい大型の研究基盤が要るかということを調べることもものすごく大切で,できれば大学の人間と各省庁の人間が入らない産業界だけで,国に本当に何をやってほしいか,一度議論をしていただいたらいいのではないでしょうか。企業で既にやっていそうなことを国が追加的にやるのは,国全体としては無駄な資源投入になりますので,そういうことを是非やっていただければと思います。
 工程表を余り熱心にやっていただきたくない部分は主に2か所ありまして,一つは,取組の成果を懸命に測ったり,報告を求めたりするというところで,もちろんそういうことというのはPDCAサイクルの話で言えばやらなきゃいけないから,何らかの形でやることに私は反対しているわけではありませんが,この種のことをこの10年か15年,日本の政府も企業も結構熱心にやり始めてから日本はおかしくなっているように感じます。つまり,現場の闊達さが失われる方向にやっているわけじゃないのはよくわかっているのだけれども,結果として,どうもこういうことが隠れたマイナスの効果を持っているということを認識していただいて,この種の話には取り組んでいただくことが重要ではないかという気がいたします。
 もう一つは,先ほどの国産計測機器等の利用促進について,調達のルールを考えようという点です。日本の研究開発の現場で使われている先端機器のほとんどが外国製で,日本には技術があるはずだから,もっと使ってほしいという点は全く大賛成ですが,本当にいいものが国産でできていれば,産業の現場は使うはずです。それを無理に国内調達させるために何か強制をすると,かえってゆがみが生じます。開発する人たちにとっても,そこにある程度のマーケットがあるからという緩みが出るかもしれません。したがって,調達のルールに関して取り組むのであれば,むしろ国が一括してこういうものを買い上げるなどの取組をやるべきであって,各大学や各産業や各研究機関が購入するときの調達のルールにまで立ち入るというのは,恐らくよほどうまいルールを考案しないことには,結果的にマイナスの効果になるのではないかと思いました。
 もう一つ,余り熱心にやらない方がいいのではないかと思うのはネットワークです。私,ナノテクノロジー委員会も委員をやっており,そこでもネットワーク構築を一生懸命やっているのですが,一旦作り始めると,一旦作ったものの有効利用という方向にどうしても意識が行ってしまって,どうも利用状態がはかばかしくないから,ネットワーク化したらもっとみんな使いやすくなるのではないか,そういうことはたしかにあると思います。しかし,ひょっとしたら根源的な理由は,中途半端なものをあちこちに作りたいということが,ネットワーク化をしなきゃいけないという声が現場から出てきた最初の理由かもしれません。そうすると,ネットワークが一番機能する最大のポイントは,それぞれの点が強いことにあるのです。恐らく,間を結ぶ線が濃いことではありません。だから,点を強くする方策は大賛成ですが,中途半端な点をつなぐ線を一生懸命濃くする方策というのは,結果として妙な延命措置になってしまう危険もあるし,状況次第で本当にそれが必要な分野というのがあるかと思いますので,全面的に否定するわけではないのですが,そういった点も考慮していただければと思います。
【二瓶主査】  どうぞ。
【吉澤委員】  プラットフォーム委員会で議論してきて,一つの重要な視点で浮かび上がってきたのはサブプラットフォームの形成というので,4施設の連携というのは初めから誰でもすぐ思いつくことなので,それを改めて議論するよりは,ほかのところで具体的に施策を設定するので何をしたらいいかというのを議論してきた上で,こういう新しいプラットフォーム形成事業の施策に踏み込んでいただいたんだと思います。そのときに,今,長野委員や伊丹委員が御発言になったように,適切な入替えというか,その辺をどういうふうに政策で考えておられるのでしょうか。例えばほかの事業を見ていると,5年とか10年,最近割と長期に時間を提供して,その中で結果を出させる施策を意図的に打っておられるような気がするのですが,例えば1ページ目に対象施設・設備の拡大と適切な入替えを実施するというような文言が書いてありますが,具体的な施策として,例えば5年間プラットフォーム形成事業をやるとして,最初の年度に選定された拠点が5年間は少なくとも猶予を与えて成果創出を見守るのか,あるいは2年くらいごとに適切な入替えをするのか,その辺,具体的に踏み込んで検討されているのでしょうか,というのが一点。
 それからもう一つは,二つ目の枠で,大学共同利用機関及び共同利用・共同研究拠点施設についても受け付けていただけるというふうに書いてありますが,これを公募型でやろうとすると,必ずしも文科省の方で想定されている機関が応募してくるかどうかわからないという,公募型であるが故の問題点というのはあると思います。その辺,どう具体的に進めていくか。例えば私みたいな大学共同利用機関に身を置いている者は,たまたまこういう委員会に出席させていただいているので,非常に興味を持って,こういう施設やこういう施設は応募した方が我が国のためにいいだろうと思いますけれども,そういう方々がそう思うか,そういう情報をお持ちかというのはなかなか微妙なところで,その辺も一つ仕掛けが必要じゃないかと感じました。
【二瓶主査】  どうぞ。
【西島委員】  先ほど濃淡という話があったのですが,一つの考え方として,各コミュニティーと各施設によってロードマップの書き方が非常にアバウトであったり,精密過ぎたりするので,その辺は少し足並みをそろえて10年後を見据えて,5年間をどうするかということを並べて一覧にする必要があると思います。というのは,基本計画では5年間で25兆円ですし,第4期に限るならば,震災が起こって随分見直しがあって,それでも総額が年間5兆円ということは,要するに,純粋なサイエンスの方は当然ですけれども,どこか削らなければならない。そのときに,各施設は自分のところの重要性を主張するので,そこだけを読むだけで疲れるような緻密なロードマップを見せられるのと,非常にアバウトなロードマップというのがあるので,この辺は10年先をどういうふうに捉えているか,わかりやすく示したロードマップが必要かなと思います。
 それから,1ページの最後に,海外施設の成果専有ということで,例えば放射光では,筑波とSPring-8が夏の電力量の関係で同じ時期に休みをとるということで,その間は海外の施設を使わせてもらう。そのときに,先ほど出ましたサブプラットフォームを形成するというサブプラットフォームの分野に関しても,例えば放射光やレーザーというのは,比較的,世界の最先端に対して日本の立ち位置が見えるんですが,この形成しようとしているサブプラットフォームの分野における世界の中の日本の立ち位置というのを見極めて,そこに注力するのが本当に我が国として妥当なのかということも冷静に考えるべきと思います。例えば,サブプラットフォームに魅力があれば放っておいても海外から何とか使いたいと日本に求めてくるであろうし,何も申出がないということは,その分野における我が国のサブプラットフォームに相当魅力がないのかなと思うし,そういうところに国がお金を投資すべきかという問題もあるし,その辺は冷静に考えていく必要があるのではないかなというふうに思います。
【二瓶主査】  どうぞ。
【野田委員】  私も実はネットワークに関係して仕事をしているのですが,例えば拠点といいますか,どういった特色のある装置が必要かという調査で,ナノテクノロジープラットフォーム関係で全機関を回りまして,日本人だけではなく研究者の方向なのかもしれませんけれども,非常に細かいところまで見たいと。そうすると,どうしても海外の例えばエネルギーが低くて分解能が高い装置,収差補正の方に向かってしまうという方向もあります。ただ,一つ光が見えたなと思ったのは,電子顕微鏡ですけれども,今まで日本は超高圧電子顕微鏡の方向にどんどん行ったのですが,分解能だけを追求するのであれば,そういう収差補正の方に向かうというのはありますけれども,実は超高圧の特色というのは非常に厚い試料ができて,試料を回転すると三次元の構造が見える。その画像を見せていただきまして,これは一つの方向だなと感じました。
 ですから,そういう意味では,日本の企業に,特に装置メーカーには頑張ってもらいたいなということと,もう一つは,例えばこういった4大施設,非常にすばらしい施設があるわけですけれども,それの周辺機器というのが非常に大事だなと。また電子顕微鏡の話をして申し訳ないのですが,いかに試料を作るかというところ,FIBというのがありますけれども,技術メーカーの方と話して,技術はまだ海外の方が強いと。日本の企業としては,周辺機器のところをおろそかにしていたかなという反省の話をちらっと聞いたことがあります。いかに見えるような試料を作るかというところがあって,周辺技術も同時に上げていかないといけないなというのは,ここにどう書いたらいいのかよくわからないですけれども,そういう意味では,私は日本の企業はそれほど悲観的ではなくて,結構頑張っているなという感じもしています。コメントです。
【二瓶主査】  ありがとうございます。
 何か。
【竹上基盤研究課課長補佐】  先ほど吉澤委員から質問を頂いておりまして,「先端研究基盤共用・プラットフォーム形成事業」の対象施設の入替えの話ですけれども,この事業は発足から6年経過しており,産業利用を可能とする体制はある程度構築されております。このため,新たな事業においては,対象施設・設備を3年単位でしっかりと見極めて入れ替えるということを今のところ考えています。
【柿田基盤研究課長】  大変貴重なコメントをありがとうございます。まず,伊丹先生の濃淡をつけるべしという御意見についてですが,そこは,おのずと緊急度や重要性の高いもの,それからその次に来るものというようになるわけですので,そこのところはきちんと整理をしながら,工程表の中に濃淡を示していきたいと思います。
 また,ネットワークについてもコメントを頂戴しました。共用プラットフォームにおいてネットワーク化を進めるための予算を概算要求しておりますが,そこは単にグルーピングを進めましょうというものではなくて,ネットワーク化を通じて,点の強みを線,あるいは面として高め,併せてそのネットワークにおいて最も強みを持つ装置を更に先端性の高いものにしていこうという内容です。そういったハードウエアの整備を予算面できちんと支援し,点を強くしながら,緩やかなネットワークを組んで基盤としての効果をさらに高めていけるような方向で,施策を実行していきたいと思います。
 それから,先端設備の調達の問題と海外利用の問題はなかなか難しいテーマだと思っています。これは今始まった問題ではありません。特に機器の調達の問題については,先端計測分析技術・機器開発プログラムが発足から約10年経過しましたが,発足当初からの懸案です。国が一括して機器を購入する方法は一見シンプルですが,果たしてそれが実行できるのかというと,予算面の問題もさることながらWTOの問題など,いろいろな問題が絡んできます。これらの問題についてはこの工程表の中でも検討事項として明確化しておりますので,これからの委員会における審議の中で取り上げていきたいと思いますし,産業界の方々にも検討していただく必要のあるテーマかと思います。我々から経済団体にも投げかけるなりして検討をお願いし、今後の国の政策にも反映させていければと思います。
【二瓶主査】  ありがとうございました。
 一点だけですが,伊丹先生がおっしゃったネットワークの効果についてですが,おっしゃいますとおりで,私どもが考えておりますネットワーク,あるいはプラットフォーム,これは,ネットワークとプラットフォームと微妙にニュアンスが違うのではないかと私は思っているのですが,ネットワークは点を強くするために是非必要だという感覚を持っております。その理由は,企業の皆様はよく世界情勢を把握されておりますが,残念ながら,大学の研究者はそういうレベルには達しておりません。大学の研究者ももちろんいろいろな方がいらっしゃいますけれども,私はもっとそれぞれの点を強くするためにネットワークを活用してほしいし,それをもう少し概念的に広げるためには,プラットフォームの存在感を強めるべきだと思っております。要するに,発信と受信の両方の機能がございますけれども,特に受信の便益を向上させるためのプラットフォーム機能というのがまずは必要で,それが強い点の形成を支援することになるだろうというような考え方を持っておるのですが,もう少し詰めて本委員会のプラットフォーム構築という概念を高度化しないといけないし,実際に世の中の役に立つものに仕上げていかなければならないと,そういう気持ちでおります。
 私の意見はそのくらいにさせていただきまして,ただいま頂いた大変貴重な御意見もたくさんございます。それをロードマップ作り,あるいはその表現に際して,文科省サイドの御参考にしていただければと考えております。
 それでは,時間の関係がございますので,もちろんこの議論は更に続けていただきたいんですが,資料の3-2の御説明を頂いた上で,再度,御議論を頂ければと思います。

○竹上基盤研究課課長補佐より,資料3-2に基づいて説明があった。

【二瓶主査】  資料3-2に関する御質問,御意見を承りまして,その後に3-1,3-2を通して全体の御議論,御意見を頂ければと思います。いかがでございましょう。
 どうぞ。
【吉澤委員】  定量的指標と定性的指標で,定量的指標の方はごもっともですけれども,この委員会に出ていたときに幾つかの御報告やプレゼンが施設からありました。そのときにも感じたのですが,マイクロマネジメントにならないというのは大事なのですが,それぞれのところが事務局を持っていれば,当然把握できる数字というのはあるわけで,それは客観的にそこの施設の設備,あるいはそこの組織が役に立っているかということを把握できるので,トップから掲げていただいている施設稼働率とか外部利用,産業利用時間,こういうものというのは,各施設がいかに自分のところの施設は重要で機能を果たしているかというのを主張するためにも当然用意するべきであるし,それぞれの施策で採択している施設がきちんとやっているかというのを見るのは国の委員会の重要な役目でありますし,客観的に評価できるいい基準になると思いますので,いろいろなところがあると思いますが,その辺は大事にしていただきたいと思います。
【二瓶主査】  ほかにいかがでしょうか。
 どうぞ。
【野田委員】  前回の委員会で人材の議論があったと思いますが,こういった施設を使ってどれだけドクターとか大学院生が出たかとか,キャリアパスにつながったかと,いいポジションを得たかどうかとか,そういったアウトカム的なデータがあった方がいいかなと思います。
 それから,こういった施設を使って,日本ではどれだけ外部資金をとれたかとか,そういうのはわからないかもしれませんけれども,こういった施設を使ってこういった外部資金を取りましたよと。あるいは企業との共同研究ができましたよとか,何かそういうものがあると,この施設は非常に有効に活用しているなというのが見えるかなと思います。
 以上です。
【二瓶主査】  どうぞ。
【瀧澤委員】  ありがとうございます。先ほどから先生方のお話を伺っていまして,工程表なんかを見ながら,この科学技術イノベーションを牽引するという大きな目的があってこのようなことをしているのですが,そうしたときに,どのように評価するかというのを,私も何を一番のポイントにするべきかなというのを考えていたのですが,吉澤先生がおっしゃっていたように,基本的にわかる数値というのは把握するべきだとは思うのですが,最終的には商業的なインパクトがいかに創出できたかというところに注力していただくことを目標と掲げつつ,両輪としていろいろな指標を加えていく。一番重要な指標が何なのかというのをメッセージとして明確に出していくべきではないかなと感じます。
【二瓶主査】  どうぞ。
【長野委員】  いろいろな委員によって一番重点と考えられるのは違うかなと思いますが,私はどちらかというと研究者の利用満足度が重要だと思います。もちろん利用件数が非常に重要であるのは間違いないのですが,多い方が上なのかと言われると,それは施設によって違うだろうし,装置によって随分件数というのは違う。同じような種類であれば件数が多い方がいいでしょうけれども,全然違うものを件数だけで比較するのは問題かなと。指標の一つとしては間違いなくいいとは思いますが,結果的には満足度かなと。
 それから,これが実際にもうけにつながるかとか,それもまた非常に微妙なところがあるのではないかなと私は感じます。満足度というのがいかに数値化といいますか,きちっとできるかが私は重要かなという感じがいたします。
【伊丹委員】  最終的には今の商業的インパクトの話,イノベーションの創出ということが目的であるというのは私も全く賛成ですが,それを測り始めた途端におかしくなるのがこの世の中で,目標を定性的にみんなが共有し合うというのは,特に使う研究者が自分の知的満足のために自分の論文がネイチャーに載るのが最終目標であるということでは困るので,それは大切なことだと思いますが,余り詳細に測らない方がいいように思います。
 小柴先生がノーベル物理学賞をおとりになったときの記者会見が,私,大変印象的で,どこかの記者が,「先生の研究はどのように人間の役に立つんですか」と言ったら,即座に「何の役にも立ちません」とおっしゃって,「でも,宇宙の夢が広がっていいでしょう」と。あれ,いい答えだなと思ったんですよね。ああいうものから何かが出てくる可能性が十分あるから,大体,イノベーションであるとか研究開発というのは何が出てくるかわからないからやるわけで,わかっていれば,それは単純に製品開発になっちゃうんで,国が支援すべき大型の研究基盤プラットフォームということを考えると,商業的インパクトまで余り踏み込まずに,しかし,そういうデータは社会がアカウンタビリティーで要求してくるに決まっているわけです。それは皆さんがどうやって工夫するかと,そういうことになるのではないでしょうか。
【二瓶主査】  どうぞ。
【吉澤委員】  こういうことが頭にあって先ほども発言していたのですが,学術機関課に関係しているのと,こちらの課,室で担っている施策が違うので,一般論でいえば,大学にいる者であったら,出口のことは考えずに研究することが楽しい,機器を開発することが楽しいわけで,それで良いわけです。だけれども,その大学における研究と,このプラットフォーム委員会で議論しているところというのは若干違って,ただし,経産省の施策とも切り分けて考えなければいけないので,経産省と同じことを文科省が打ち出すのはまたいささか問題なわけです。ですから,先ほどの新しい先端計測事業でも,募集するときに必ず開発する企業とタイアップしてチームで応募しないと受け付けませんよというやり方もできるわけですが,もうなっているのかもしれませんけれども,そうすると,それは経産省の施策とどこが違うのということを文科省の立場ではお考えいただく必要があるということで,私が発言しているのは,ここの委員会の所掌している施策というのは多分,共用法の適用されている4施設,これはもう明確ですよね。それと,それに近いような階層構造を将来構築して,国を担っていくであろうサブプラットフォームに選定されてくるべき研究手段や測定手段というのがターゲットになっているので,そこのところはおのずと,一般論や理念ももちろん大事ですけれども,切り分けてシャープな指標を立てられるはずだと私は思います。
【二瓶主査】  どうぞ。
【西島委員】  私も長野先生と同じで,利用満足度というのは重要であると思っていて,最後の利用者の利用満足度というのは,極端な話,産業界の利用満足度というのがあると思うのです。ただ,産業界の利用満足度というのは,誤解されてはいけないのですが,常に産業界がすぐ役立つものをやってほしいとか,そういう小規模なものではなくて,すぐに役立つものは黙っていても産業界がお金を投入しますし,むしろ産業界からすると,そこの部分をやるにはちょっとまだリスクが高いとか,1社では持てないとか,たとえ先端機器を持ったとしてもノウハウが難しい。例えば極端な話,1社が放射光を持つなんてことは,将来はあるかもしれませんけれども,今は考えにくいことです。ただ,NMRであれば実は買えるものです。問題は,買って使いこなしてノウハウやソフトを持ってくるのは大変だというので,製薬企業の大手がいまだにNMRを理研や大学のものを使っているのはそういう理由からで,あの機器そのものの値段からすれば,決して一社で持てないようなものではありません。ただ,いろいろなことを管理しないといけませんし,NMRによっても機種や液体や固体によってケース・バイ・ケース,その辺のノウハウというのが全て産業界が持つことができないので,それを見ると,ネットワークという言葉がいいかどうかわかりませんけれども,ある程度そういうものを持った方がいいということなのです。ですから,産業界の利用満足度ということを考えれば,大学の研究者が十分満足して使っている領域というのは,産業界からも魅力があるだろうし,そういう部分は当然,国際的優位性も高いに違いないだろうということで,この最後の三つの部分は重要だと。
 社会的認知度ですが,余りこれを気にすると,ときどき一般公開であるのですけれども,最先端のサイエンスのことを一般の方にわかりやすく伝えるというよりも,何だか難しいことをやっているなという印象を与えるぐらいの方がいいように思います。簡単に新薬が開発できるような漫画があちこちに躍っているというのはいかがなものかなと,あえて申し上げておきます。
【長野委員】  一点お聞きしたいのですが,共用施設・設備というのは,研究テーマによっては利用することができないことはあるのでしょうか。つまり,テーマの妥当性というものを評価軸として持ち出してくると,つまり商業的に役立つ,そういうことだけを宣伝するのであれば,共用施設・設備の方のテーマを当然やる方が絞りますよね。そういうことはなくて,どんなテーマでも受け入れているのですよね。
【柿田基盤研究課長】  はい。それぞれの共用施設で公募を行い,応募されたテーマの中から適切なものを選抜するというプロセスとなっております。テーマとして適不適があらかじめ決まっているというわけではありません。
【長野委員】  ですから,評価軸によって,これを評価するということであれば,それに対応してテーマを当然選びますよね。そういうことまで影響してくるように思います。
【竹上基盤研究課課長補佐】  資料2-1の32ページにデータがありますように,共用に供されている施設・設備がどの研究フェーズで使われているかということを調べたところ,基礎研究のフェーズにある研究課題に用いられているケースが多くなっております。この結果は企業の場合であっても同じです。
【長野委員】  私が申し上げたいことは,何をもって評価するかということになれば,それに対応して,公募を使わせるテーマ自身も当然セレクションが変わってくるでしょうねということです。
【竹上基盤研究課課長補佐】  基礎研究の段階で使われている以上,評価の観点として例えば「商業的インパクト」というものを設定したとしても,その観点が弱いからといって直ちに不採択にするということはなかなか難しいのではないかと思います。
【長野委員】  そうですよね。
【二瓶主査】  長野先生の御懸念はわからないでもないのですが,もう少し一般的に考えれば,もちろん特定のプロジェクトのために役に立つ利用方法,そういうものはもちろん,そういうミッションを持った研究費や機関の場合はおっしゃるような御指摘があると思います。しかし,ここで考えている研究開発プラットフォーム,あるいは研究基盤という概念は大変広くて,ごく一般的な研究者が当たり前に使いたい,特に若手研究者の育成ということを考えると,むしろ何のために使うかなどという制約はもともと設けてはならないことです。そうでないと,個人レベルの人材育成に貢献しない部分がありますよね。
【長野委員】  ええ,私はその基本的な制限が重要だと理解しているわけです。ですから,最終的な評価は満足度なのではないかなという気がしております。それ以外は何で評価するのかということになりますから,使っている本人がこれは非常に使い勝手がいいと,極めていいデータも出るし,満足しているということであれば,その共用施設というのは成功ではないかと私は思いますけれどもね。
【二瓶主査】  全く御指摘のとおりでして,何のために使うかで評価するわけではなくて,広く使われる,要するに,研究のために役に立つすべが非常にシステマチックに準備されていて広く使われる,それが研究基盤だという概念で物事を考えていくのだと思っております。
【長野委員】  そうですね。ですから,山中先生じゃないですけれども,予想外のデータを出してもらいたいですね。
【二瓶主査】  そうです。
【長野委員】  そのためには,何かそういう具体的なデータが出なきゃいけないということになると,非常につらいことになりますよね。あらゆるものに門戸を開いているのが共用施設じゃないかと私は理解しますけどね。
【二瓶主査】  そうですね。
【伊丹委員】  そういう意味でいうと,定性的な指標のところに書いてある優れた研究成果,あるいは新たな研究領域の開拓というものをどういう形で聞くかは工夫が要るかもしれませんが,何年に一度,しっかりと確認のために,その機関がフォローアップにアンテナを張っているかと,自分たちのところで行われた研究をもとにどんなことが起きたのかという,そういうためにも,これはやはり入れておいた方がよいのではないでしょうか。
【西島委員】  10年以上前,SPring-8は純粋に世界一だということだけ主張しておりましたけれども,最近は詳細にいろいろなものが出ていますし,広報用の動画も作られていて,この10年間で随分変わったなという印象を持っています。
【吉澤委員】  随分と変わりましたね。
【伊丹委員】  そうすると,例えば,五つだけ書くとすればよいのではないでしょうか。たくさん書けばいいというものではないですから。
【柿田基盤研究課長】  ありがとうございます。このような評価指標の設定は非常に重要であると同時に難しい問題でもあります。利用者の満足度を計ることも大変有益ですし,満足度が高いというだけではなく,肝心の成果がきちんと出ているのかということの把握も非常に重要です。それからもう一つは,特に2ページの「把握すべき指標例」にございますが,これらについても細かい項目ではありますが,毎年適切な予算額を措置していくためにはしっかり押さえていかなければいけないと考えております。今日の御意見を踏まえて適切な指標を整理していきたいと思います。
【二瓶主査】  ありがとうございました。
 それでは,ただいまの議論はこの程度とさせていただきまして,先ほども申しましたが,本日頂きました御意見を踏まえた上で,更なる検討を進めていただきたいと考えております。
 それでは,本日掲げた主な議題は以上ですが,今回は今期科学技術・学術審議会における最後の委員会,要するにプラットフォーム委員会の1期2年における最後の委員会でございますので,平成25年2月から始まります次期の研究開発プラットフォーム委員会における調査検討事項等について,今期の議論を踏まえてこの場で整理しておきたいというように考えております。
 それでは,机上資料1の御説明をお願いいたします。

○竹上基盤研究課課長補佐より,机上資料1に基づいて説明があった。

【二瓶主査】  それでは,この机上資料に関連をいたしまして,委員の先生方から御意見を頂戴したいと思います。いかがでございましょう。どなたからでも結構です。
【伊丹委員】  一番下に書いてある戦略的に整備すべき大型研究基盤は非常に大切なテーマだと思いますが,先ほど申し上げたように,産業界の方だけで一回議論していただいた上で,国が整備すべきものを検討した方がいいのではないかと思います。この委員会では,共用法対象の4施設に議論の枠を限ってしまっていたような気がしていましたので,もう少し広く,日本全体に大型の研究基盤となり得るような施設がどれぐらいあるのかということの全体把握をやるべきではないでしょうか。もう既にやっておられるかもしれませんので,やっておられたら大変失礼な発言になりました。
【西島委員】  それは共用促進法にとらわれないということですね。
【伊丹委員】  そういうことです。
【柿田基盤研究課長】  共用に関わる研究基盤施設は,レベル的には非常に大きなものから小さなものまで,あるいは高度なものからそうでないものまでたくさんあるわけですけれども,国の施策として重点的な取組を行う対象としては,技術的レベルも高くてイノベーションに向けた利用価値も高いものということだと思います。そういった範疇においては,例えば共用促進に関わる各種事業の実施を通じて,国内にあるおおよその施設についての現状は把握できておりますので,そのような基礎データに加え,基盤施設に関する世界の最新情報を随時入手しながら今後の議論に備えてまいりたいと考えております。
【二瓶主査】  今,柿田課長からお答えがありましたけれども,確かにこの委員会の議論すべき範囲というのはかなり多岐にわたっております。一つの明確なよりどころは,共用促進法でカバーしている大型研究施設があります。現存するものとしてはそういうことになっておりますが,その範囲を更に拡張する可能性というものを考えているということが一点ですね。その場合には,学術会議等の議論もありますが,各分野の研究者コミュニティーにおいて議論がされておりますので,そういうものの掌握が必要ですし,更に戦略的な発想に基づく将来計画が必要だと思います。このような議論に御関係の先生方もこの委員会には入っていらっしゃいますから,そういう先生方の御意見を承りながら,今後の検討をきちんと進めよう,そんな発想が基本になっているかと思います。
 一方,以上の議論は大型研究施設と断っておりますが,そうではなくて,中型,小型の研究施設も研究基盤,いわゆるプラットフォームの構築構想の中には含まれております。その辺りに関連する部分も先ほど,概算要求の施策群が紹介されましたが,その中でも扱っておりますし,現に進めております先端研究施設共用促進事業というのも,かなり小ぶりなものも含まれております。これはあくまでも研究者ニーズにどう応えるか,あるいは我が国における研究基盤というものがどういう機能を果たすべきかという検討を常に進めながら,さらに進化させるべきものだというように思われます。
 つまり、星の明るさでいうと,1等星,2等星,3等星等がありますけれども,共用法対象4施設というのはスーパー1等星ですから,マイナス1等星ですとか,マイナス2等星ですとか,そういうレベルのものです。しかし,2等星から3等星ぐらいのものでも研究開発に役に立っている装置群,施設群というのは現にございますし,それでは,5等星は輝きが足りないから見捨てるのかというと,先ほど議論がございました個々の一人一人の研究者から見れば,その装置を使いたいという研究者が別のところにいて,それをどうリンクを張って手助けするのかというような施策も,これは文部科学省の研究の施策としては含まれるべきものであろうと思います。例えば科研費において進められているような研究ですね。そういう研究者にとって,3等星だとか言うと語弊があるかもしれませんが,そういう施設を是非とも使いたい,でも,旅費が足りないとか,人脈がないとか,そういうようないろいろな障害がある。研究費が足りないとか,そういう障害を乗り越えて研究者育成もしなければいけないし,逆にそういう人たちをサポートする人材育成もしなければいけないという幅広い施策が研究開発プラットフォームには関連して必要ではないかというような感想を持っております。伊丹先生がおっしゃりたいことはよくわかります。国の政策としてはある土俵を決めて,役割を果たすべくしっかりとやるべしという御主張がまず第一におありかと思います。そのような考え方を基礎にしつつ,実際の研究者ニーズ,利用者満足度,そういうことを配慮した全体像を構築していく必要があり,これが研究基盤,いわゆるプラットフォームの構築というテーマではないかと考えております。
 そういう意味で,ここにいろいろな次期の課題に関して書いてございますが,是非一言ずつおっしゃっていただけますでしょうか。
 西島先生,どうぞ。
【西島委員】  研究基盤を支える人材と書いてあります。昔,海外の放射光施設を見学したときに,一番大きく感じたのは,このような研究基盤を支える人たちに結構余裕があるということです。例えば,SPring-8の場合,1ビームライン当たりのスタッフの数が海外に比べると少ないんですね。余裕がないということで,新しい人たちが来たときに,敷居が高いというか,使いづらいということで,私たちがSPring-8を使うときには,半年程度いろいろな調査をしないと難しかったんですが,スイスのライトソースでは,3泊4日ぐらいで使えるようにマニュアルがものすごくよくできている。これは当たり前のことで,ヨーロッパ15か国が使えるようなマニュアルというのは,しっかりしていなければならない。ところが,筑波とSPring-8のマニュアルは結構違ったりするわけです。この辺のところも含めて,その辺は基盤を支える人材の人たちに要求されるスキルの明確化とかありますけれども,支える人たちが余裕を持って産業界や研究者を支える点で自分たちが役立っているのだと,自分たちの施設がうまく使われているという,そういう意味での満足感を持てることが必要かなと。書くのは簡単ですけれども,毎回毎回人材育成を書くと,誰も反対しませんけれども,より具体的なところをやっていきたいなと思っています。
 それからもう一点,産学連携が必ず出てきて,産学連携を見据えた研究プラットフォームというのも出てくると思うのですが,産学連携という言葉もすごく響きはいいんですけれども,本当に実りある,意義ある産学連携は何かということをもう一度考えて,先ほど言いましたように,余り産業受けするような部分だけやるのはいかがなものかと。本当に学から見て産,産から見ても魅力ある学と,こういうものを忘れてはいけないのではないかなということを常々思っています。そういうプラットフォームというものを実現させるために,次期,進んでいければ幸いと思っています。
【二瓶主査】  ありがとうございました。
 吉澤先生お願いします。
【吉澤委員】  私,中性子の現場で,大学の人間として,トライアルユースなどに何年か関わっていて,先ほどの満足度のところで発言しなかったんですけれども,企業の方は正直で,満足していればリピーターになるわけです。ですから,現場で4,5年やってみると,本当に満足していただけたかどうかという指標は難しいですが,リピーターになって実際使ってくださるので,結果として施設側の人間としてはわかってしまうわけです。ですから,こういう施策を考えるときに,そういうふうに使ってもらって満足していただけているという事実が浮かび上がってくるような指標を考えて,分析して,打っていくのがいいんだと思います。
 それから,大学の人間としては,次の委員会で議論されるときに,学術会議では純粋なアカデミックの観点から大型研究をリストアップしておりますので,それとどういうふうに整合性を持つかということと,それに補完的な視野が必要なのかということは,是非重点項目として検討していただきたいと思います。
【二瓶主査】  ありがとうございました。
 それでは,野田先生。
【野田委員】  今,いろいろお話があったんですけれども,どうも私の感じでは,大学,企業とか,別々の世界じゃなくて,大型施設で働いている人,そこで育っていく研究者が,流れといいますか,大学から企業にも行けるし,企業から大学にも行けるし,官から産業界というのがありますけれども,そういった受皿がないと,こういうところで先端的な技術を持って研究されている人たちとか,将来の夢を与えるようなところになってほしいなと思います。
 以上です。
【二瓶主査】  ありがとうございます。
 長野先生。
【長野委員】  基本的にはこれをしっかり検討していくことが非常に重要かと思います。
 一点だけ,野田先生の御意見とちょっと関係しているんですが,(2)の4番目の丸のところで,キャリアパスの検討と書いてあるのは,これは要求されるキャリアパスの検討ということですか,研究基盤を支える人材に要求されるスキル,スキルと同格でキャリアパスですか。
【柿田基盤研究課長】  そういった方々のキャリアパスが十分確立できていないという認識のもと,このような記載をいたしました。
【長野委員】  キャリアパスということは,もちろんスキルを明確にすることも重要ですし,どういうキャリアパスを持ってきたかということも重要ですが,実際にこれを支える人材,研究者とオペレーターを兼任しているような,微妙な立場の人が非常に多いと思います。論文も余り出てこない可能性もあります。そういった人のキャリアパスが何かうまくできれば,そういった人材,非常にいい人が集まるだろうなと思います。
【柿田基盤研究課長】  そこはしっかりと記載するようにいたします。
【二瓶主査】  それでは,伊丹先生。
【伊丹委員】  それでは,一つだけ,ここに書いてありますイノベーション創出の具体策という,ここまでプラットフォーム委員会が踏み込めるかということは,イノベーション研究科という研究科を作ってしまって,そこの研究科長をやっておりますと,これはちょっとこのプラットフォーム委員会の仕事ではないのではないかという気がいたします。ただ,こういうことを書かないと収まりがつかないというのも理解ができますので,反対はいたしませんが。
【二瓶主査】  ありがとうございます。
 では,瀧澤先生。
【瀧澤委員】  私も同感なんですけれども,一つだけ気になりますのは,こういう委員会でいろいろ決めたことが上から下に伝わっていって,受ける方々がそれぞれの工夫や現場の指揮にうまく生かして,自立的に工夫をしていってどんどん良くなっていくという気持ちを引き出すような仕組みを是非作っていただいて,やっていただけるといいのかなと思います。といいますのは,このプラットフォームの件ではなくて,大学改革の議論を聞いていますと,現場の先生方の思いと文科省の思いがかなり食い違っているようなところを感じておりまして,実際にこのプラットフォームの現場の方々がどうかということは今申してはおりませんけれども,実際にサービスを提供する人たちの人材力というか,そういうところにかかってくるところが相当大きいんだと思いますので,その人たちの人的つながりというか,そういうところからも盛り上げていくような,そういう仕組みがあってもいいのかなと思います。
【二瓶主査】  ありがとうございました。
 大変貴重な御意見をたくさん頂きまして,本日,本委員会の開催の趣旨は十分に達成できたと私は考えております。
 最後に,どうぞ。
【磯谷科学技術・学術総括官】  科学技術・学術政策局の総括官の磯谷と申します。よろしくお願いします。
 本日は,今期最後の研究開発プラットフォーム委員会ということでございまして,この8月には研究基盤戦略ということで立派な報告書をまとめていただきありがとうございました。来期は,二瓶座長からも御発言がありましたように,引き続き,イノベーション創出に向けた研究基盤やプラットフォーム形成の効果的な展開に関する議論を行っていただければと思っております。とにかくこの2年間,様々な御議論,御支援を頂きましたことに心から御礼申し上げますとともに,また引き続き様々な場面で御指導を頂きたいと考えております。
 どうもありがとうございました。
【二瓶主査】  ありがとうございました。
 それでは,本日の委員会はこれで閉会とさせていただきたいと思います。
 先生方並びに皆様方の御協力,心から感謝申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

お問合せ先

文部科学省 研究振興局基盤研究課 

立元、大野
電話番号:03-6734-4098
ファクシミリ番号:03-6734-4121
メールアドレス:kibanken@mext.go.jp

(文部科学省 研究振興局基盤研究課)