平成24年7月27日(金曜日)10時00分~12時00分
文部科学省 17F 研究振興局会議室
二瓶主査、宇川委員、長野委員、野田委員、福嶋委員、緑川委員、吉澤委員、西島委員、瀧澤委員
吉田研究振興局長、森本官房審議官(研究振興局担当)、菱山振興企画課長、柿田基盤研究課長、安藤基礎研究振興課長、原基盤研究課量子放射線研究推進室長、竹上基盤研究課課長補佐
渡邉経済産業省産業技術環境局産業技術総合研究所室長
【二瓶主査】 それでは、時間になりましたので、第7回研究開発プラットフォーム委員会を始めたいと思います。
本日の議題は、「中間報告(案)について」を予定しております。
それでは、事務局から配付資料の説明をお願いします。
○竹上基盤研究課課長補佐より、出席者の紹介と配付資料の確認があった。
【二瓶主査】 それでは、議題1の中間報告(案)に関する審議に入りたいと思います。
本委員会では、産学官に開かれた研究開発プラットフォームの構築に向けた概念整理、また必要となる取り組みについて議論してまいりました。本日は、これまで1年以上にわたって御議論いただいた内容を、事務局にて中間報告(案)の形で整理していただいておりますので、これを元に御議論いただきたいと思っております。
なお、本報告書(案)については、本委員会で一たん取りまとめた後、8月に開催される先端研究基盤部会で審議を行っていただいた上で最終決定という流れを予定しております。
それでは、事務局から、御説明をお願いいたします。
○竹上基盤研究課課長補佐より、資料2に基づき説明があった。
【二瓶主査】 本日の議題は、資料2に書かれていることに関する内容の確認と、更に付け加えるべき内容があれば、御指摘いただきたいということ等でございまして、本委員会の1年強の時間をかけた審議の、いわばまとめでございます。
皆様から御意見をいただきたいと思いますが、全体を、ちょうど2ページからの「1.研究基盤を巡る現状と課題」の部分、7ページからの「2.必要となる取り組み」、最後の14ページの「3.研究開発プラットフォームの構築」、この3つに分けて、議論をしてはいかがかと存じます。
それでは、まず、「1.研究基盤を巡る現状と課題」に関しまして、御意見をいただけますでしょうか。
【西島委員】 いいでしょうか。
【二瓶主査】 どうぞ。
【西島委員】 非常に細かい点ですが、2ページの最後のところ、SPring-8、J-PARC、SACLAと書いたときに、J-PARC(中性子線施設)と書いていますよね。ここであえて(中性子線施設)と書いてあるのは、どういうことなんでしょうか。
【竹上基盤研究課課長補佐】 J-PARCの中で、中性子線施設のみが、共用法の対象になっているということです。
【西島委員】 わかりました。
それとは別の話ですが、4ページの国の制度への誤解に基づく共用取り組みの停滞は、大変重要な点だと認識しております。
私も過去に、あるプロジェクトで立ち上げられた施設をぜひ産業界でも少し使わせてもらえないかという相談をしたときに、施設のほうから、「国のミッションを背負っているものなので、5年間の目標が達成されるかどうかについては、ぎりぎりの線である。産業界に使ってもらうことが、逆に中間評価や自己評価においてマイナスと指摘されてしまう。」と言われたことがあります。つまり、初めから目標として掲げられていないことに使うことについては、確かに運用によっては使わせることはできないわけではないんだけれども、はっきり言って、使わせたくないという言い方なんです。
ところが、いざプロジェクトが終了近くになったときに、施設側から、「この施設を有効活用するために、何とか産業界にうまく使ってほしいので、その方策を練ってくれないか。」と言われた経験があります。
「終了後に向けた施設の有効利用に関する検討」がプロジェクトの所期の目的に入っていないと、先ほどの話で言えば、産業界にその施設を使わせることは評価の対象にならないわけだから、施設側からすれば、それは使わせないで、目標をクリアしたい。
ここで書いてあることは確かではあるけれども、誤解があるというのではなくて、プロジェクトにおいて、そういうシステムがほんとうに将来、産業に役立つかどうかを検証する必要があるとか、あるいは、5年が終わった後に、それを発展させるような方策のものを考えておく必要がある、という文言が必要だと思います。
これはプロジェクトのほうでも、言うはたやすいけれども、なかなか負担もあるだろうと思います。そのために、例えば、人材育成をするということがあれば、そういう人材の育成もしやすい。あるいは、ポスドクをそのまま持ち続けるようなことも、考えられると思うんです。
【二瓶主査】 よろしいですか。
【福嶋委員】 私もそこを言いたかったので、もう西島委員におっしゃっていただいたので、その件に関して特に言うことはありません。
別件ですが、プラットフォームがいわゆる国際競争力強化のために、最終的には国際的な拠点を作るために必要であるという結論になっていると思うんですけれども、個々で議論されている公共財産に対して、外国の企業ないし外国の人が使いたいと来たときには、これはウエルカムなんですか、それともお断りするんですか。
それは、最初の目的と結論のところで、何となく、実際、運用しようとすると、矛盾点があって、どういう考え方でやられるか、お聞きしたいと思います。
【柿田基盤研究課長】 現状では、内外に対してオープンにするということが基本的なスタイルとなっていると思います。例えば、大型放射光施設については、日米欧の3極で大型のものが運用されていますが、お互いにオープンな利用体制を整えているということが事実としてあります。これ以外の施設についても、同様の取り扱いがなされていると認識しています。
ただ、福嶋委員がおっしゃったことは、現在、また今後の科学技術政策においては大変重要なテーマであり、施設等に限らず様々な施策についても共通的な問題かと思います。各国とも競争力を如何に高めていくかしのぎを削っている状況の中で、施設の整備のみならず利用のあり方について、戦略的な検討をこれからしていかなければならないというのが正直な現状かと思います。ぜひここは、いろいろな御意見を頂戴できればと思います。
【福嶋委員】 今後の検討事項であるということで認識いたしました。
【二瓶主査】 今のお話ですが、学術利用に関しては、これは国際的共同利用を、むしろ促進するというスタンスですよね。その表れとして、使用料もお互いに無料にしましょうという考え方がある。それは、それで、でき上がった考え方だと思いますが、産業利用に関しては、どうなんでしょう。やはり、何らかの適切な表現のもとに、コントロールしていただくことがいいのではないかなという気がするんです。
例えば、特に優れたものに関しては採択するとか、そういう一種の歯どめなんですけど、この程度だったら、ほかでやってください。これは特段優れているから、ここで使わせましょう。その1項目があるだけで、随分セレクションができるような気がするんです。
これは一般的に国費を使って、例えば、先端計測分析技術・機器開発プログラムで装置・機器開発する場合などでもそういう問題があるんですが、外資系であっても、日本に法人がある、日本法人の方が加わることは差し支えないという原則でやっていますから、外資系の仕事も国費を使って、開発することができる、そういう建前になっております。
それを、オール・オア・ナッシングで認めると、全部認めろというスタンスは、必ずしも適切だと思わないんです。国の金を使って、外国を一生懸命育てる国なんか、どこの国にもありませんよという御指摘が、第4回先端研究基盤部会において吉澤委員からありました。
そうかといって、すごく優れたケースは、むしろ取り込んで、こちらの財産にするという観点もあるわけです。ですから、特に優れたケースは認めるという歯止めでもいいのではないかという印象を持ちますけど、そうすると、一応、整合性は取れるんです。
【福嶋委員】 まさに産業利用で悩むところなので、こちらの財産になるということは間違いなくありますので、それはやるべきだと思います。
ただし、非常に具体的な例でいきますと、成果占有でお金を払ってやりたいと、外国の方が来たときに、料金も含めて適切な料金なのか、それとも、お断りするべきなのかというのは決まってないです。
【竹上基盤研究課課長補佐】 いわゆるオープン・クローズドの戦略に対する議論、利用者による適正な負担のあり方の議論に関してはまだ十分実施できておらず、この報告書でも具体的提言を行うには至っておりませんので、今後、その辺りは議論していただく必要があると思っています。
オープン・クローズドをどう戦略的に扱うかという部分については、文科省だけではなく、我が国全体の国家戦略に関係する話だと思っていて、本日、経済産業省産業技術総合研究所室の渡邉室長にもご出席いただいておりますが、文科省のみならず経産省の中でも、そういった議論が出てきていると認識しております。
具体的には、特にナノテク分野のインフラやSPring-8などで、そういった状況が問題視されてきております。今までは原則オープンでやってきましたが、そこを、やはり国として、しっかりとした戦略を考えないといけないと考えています。
今は個々の施設で検討を進めていただいているような状況でありますが、文科省でも今後、少し海外事例なども研究しながら、全体的な方向性を出すことが必要になってくると思います。
【西島委員】 実は私はSPring-8の評価委員会でも、同様の指摘をしましてが、その際には応募があったら検討しようということになりました。そのとき、海外から応募があったのは数件だったと思います。
私としては、少なくともSPring-8とJ-PARC、SACLA、京に関しては、ばらばらではなくて、統一的な考え方を持っておいた方がいいと思います。この委員会でその考え方を作るにしても、可能な限り早く手を打ったほうがいいと思います。
もう1点は、日本に存在する施設・設備について、外国の利用者が使う場合と、日本の利用者が使う場合で、過度なアンバランスがあってはいけないと思うんです。いくら産業界がアカデミックと違うと言っても、企業でも、ある程度の常識の範囲はあって、日本だけが守っていくというのではなくて、特にグローバル展開であれば、その辺のところも踏まえてやっていく必要があるのではないかなと思うんです。
【若槻委員】 よろしいですか。
【二瓶主査】 どうぞ。
【若槻委員】 こういう議論、重要だと思うのですが、やはりパリティーというか、海外がどういう体制をとっているかということは、しっかり把握しておく必要があるのかなと思います。
そのときに、重要な考え方は、先ほど出ていましたけれども、学術研究なのか、産業利用なのかというので、昨今、私が経験しているアメリカとヨーロッパでは、かなりはっきり分かれていまして、アメリカの場合には、むしろサイエンスメリットで、どちらかというと、学術的なことに関してはオープンだと私は思っています。
ヨーロッパに関しては、お金の出方によっては、特にESRFの場合には、学術利用の場合、特に重要なものについては利用可能としています。ヨーロッパでは、施設利用の考え方が、その施設の設置形態によって違うということ、バリエーションがあるということは、まず抑える必要があると思います。
一方、産業利用に関して、費用を回収するものに関しては、逆に、ほとんど制限がないと私は思います。だから、国家戦略だからといって、例えば、ESRFを使わせないとか、私の知っている限り、アメリカのAPSにしてもスタンフォードにしてもないと思うんです。確認は必要なんですけれども、これはやっぱり費用を回収するということがあって、かつ、成果占有で非公開というものに関しては、別にどこの国の人が来ようが利用可能ということが、私の知っている限り、基本路線だと思います。
そういう状況がある中で、特にここの4つの共用促進法で、それを先端的なものに関して、産業利用だから、かつ、国家戦略だからといって、閉じる方向に行くのは、ひょっとすると、世界の動向に反するかもしれません。なので、ここはほんとうに気をつけて、調査だけではなくて、例えば、海外の会社に意見を聞くとか、何か、そういうことをした上で、決めたほうがいいかなという気がします。
【緑川委員】 私も意見を。
最初のところに、インフラは世界2位だけれども、総合ランキングで27位と。実は、総合ランキングは、そういう開かれているかとか、国際循環の中に入っているかとか、そういうところが、多分、非常に厳しく評価されていると思うんです。
最後のところで、国際頭脳循環の拠点として、これを使うということは確かに、今、やっぱり日本のインフラは、最高のものが幾つか揃ってきたので、これを国際頭脳循環に使っていくということは、非常にいい戦略だと思います。だからこそ、あまり変な規制をかけてほしくありません。
もちろん、産業界の場合は、いろいろ問題はあるかもしれませんが、科学技術といった場合には、これを積極的に作って、海外の特に若い人を滞在型で使ってもらって、国際循環の拠点として使うという点について、もう少し記述があってもいいのではないかという気がしました。
【宇川委員】 私も一般論としては、特に学術的な研究に関しては、オープンな方向がいいと思うんです。
ただ、多分、分野によって、世界的な状況も少しずつ違っていて、スパコンの分野では、まだ国の中に閉じているというほうが多いんです。ヨーロッパはEUになって、EU全体には広がりましたけれども、EUの中に限られています。
アメリカは、もともとはアメリカの中だったんですが、最近の方向としては、世界中に広げようとしていて、実際、ヨーロッパの研究者がアメリカのファシリティーを使うということも起こり始めています。
京に関しては、原則、アカデミックな場合には、たしか日本に連絡研究者がちゃんといることという条件はつけていると思いますけれども、アカデミックな研究に関しては、オープンになっていると思います。
ですから、そういう方向性はいいと思うんですが、やはりレシプロからでなければいけないと思うので、調べていただく必要はあるのではないかと。産業・医療に関しては、もっとそうだと思います。
【二瓶主査】 ありがとうございました。
ほかには何か。
【原量子放射線研究推進室長】 1点よろしいですか。
【二瓶主査】 どうぞ。
【原量子放射線研究推進室長】 量子ビーム施設を担当しております、原と申します。
今お話があった内外を無差別にするのか、ある程度の区分をつけるのかということは、特に量子ビーム施設については、これから海外の企業が成果を非公開で応募してくるということが、だんだん想定される状況になってきていますので、特に量子ビーム施設については、この委員会だけではなくて、いろいろなところで、その考え方を整理するようにということは指摘されています。
インフラ全体について、なかなか統一的な考え方を急に作ることは難しいかもしれませんけれども、少なくとも量子ビーム施設については、成果非公開で、特に海外の人が使う場合に、どういう考え方で取り扱うのかということについては、いろいろ御指摘ありましたけど、海外の施設とのレシプロについて、きちんと注意するということも踏まえて、検討していきたいと思います。
特に、学術利用か産業利用かということではなくて、日本の共用施設の場合には、成果を公開するか、非公開にするかということで、大きくお金を取るとか取らないかという分け方になっていますので、成果を公開するような、主に学術研究については、内外で差別を設けないでいくということは、おそらく方針としては、このままいくんだろうと思います。
成果を非公開の場合で使う、特に産業界が使うということは想定されていますけれども、その部分については、内外の扱いをどうするかということは、今後、検討していきたいとと思います。
【二瓶主査】 要するに、オープンの方向ということでしょうか。
【原量子放射線研究推進室長】 学術研究については、オープンの方向で、産業利用については、まだ具体的な方針の検討には至っていませんけれども、そういう応募が、今後、たくさん来ることが見込まれるので、これから検討してまいりたいと思います。
【福嶋委員】 非公開であっても、イエス・オア・ノーではない、何らかの仕組みが必要だと思います。
私もJ-PARCの利用料を簡単に計算しましたら、今の非公開の利用料金は、運営経費をビームタイムとマシンで割った金額。ですから、国内の企業がその分を払って、占有することは、ある程度リーズナブルかなと思います。
ただし、その中には、建設費の設備償却費が入っていない。そこは、海外の方には、もしかしたら払ってもらう必要があるのかもしれないなど、いろいろな検討が必要かなと思っています。
【二瓶主査】 なるほど。
【長野委員】 よろしいですか。
【二瓶主査】 どうぞ。
【長野委員】 私は創薬のほうの大規模の化合物ライブラリーを実際にやっていますけれども、初めは、アカデミアに対するものがほとんどだったのですが、最近では、企業からもかなり応募が来るようになってきました。
おそらく、この先、外国の、主にベンチャーだと思いますけれども、そういうところから応募が来ると思います。今のところは、一応、国内と限って話をしているわけですけれども、早急にこれはいろいろ方針を決めていただくと、ありがたいなという感じはいたします。やはり、薬は相当国家戦略として進めていくので、成果は、そのまま、すぐ知財となって、もうけとなってくるわけで、それをどう考えるのかという検討が必要になります。
言葉の使い方で、ほかの外国の方によく言われたのは、グローバルと言うときには、国境がなく、インターナショナルは、国境があるんです。だから、グローバル化ということは、地球1個と考えて、話をしている。国の国家戦略、国の利益はない。利益はないと言っているかどうかわかりませんが、国境はないという。インターナショナルは、国境はあるという意味での国際化。だから、国際化は、どういう英語に当たるのか、私にはわかりませんけれども、何かそのようなことが言われたことがあります。
【二瓶主査】 いずれにしても、この問題は重要事項であるから、しっかりと調査をして、結論を出すべしという御意見ですね。ありがとうございました。
ほかにはありますでしょうか。
【宇川委員】 すみません。
【二瓶主査】 どうぞ。
【宇川委員】 これで、私が気になっていることは、やはり共用という枠組みと、共同利用、共同研究という枠組みの関係で、例えば3ページに、ある程度明確に書かれていると思うんですけれども、共用が進まない理由として、大学共同利用の枠組みと共用の枠組みが別々に整備され、国が双方の枠組みの関係を整理し云々と指摘もあると。ここは、指摘があるんだと思うんです。
やはり大学も含めて、共用利用、共同研究という観点からは、学術研究、基礎研究という観点が強かったわけです。そうすると、かなり大規模な設備であっても、手づくりのものは結構あるわけで、そういうものを、産業界を含めて共用に供するということは、そもそも施設整備の段階から、考え方が違っていて、それを共用に供するためには、かなりの人的、あるいは、体制的なものをきちっと作らないと、非常に大変ではないかと思うんです。
一方で、独法のほうは、業務があって、この業務をするために、設備を整備しているわけで、そうではない目的のために、一般に供するということは、非常に抵抗が強いと思うんです。
だから、大学、共同利用機関のほうと、独法のほうと、共用というものに対する難度が、あるいは、その難度のありかが違っていると思うんです。そこのところをきちっと整理しないと、一般論としてプラットフォームを作って云々というのは、ビジョンはいいと思うんですけれども、そこのところをもう少し踏み込んだ検討をしていただかないと、大学側にとっても、共同利用機関側にとっても、共用を進めていくということは難しいのではないかという気がします。そのあたりの点については、どうお考えでしょうか。
【二瓶主査】 既に、大学が参画した共同利用はたくさんあり、先端研究施設共用事業は、大学が8割程度を占めています。
ただし、先生が御指摘の大学の共同利用・共同研究の仕組みは、そうではない。それは、今まで別の仕組みですから、そうなってないことは事実なんです。
しかし、一般論として、大学だから難しいということは、既にもうなくなっています。たくさん大学側が、参画していますので。
【宇川委員】 私は難しいと言っているつもりはなくて、そこのところの整理を、指摘もあるというだけで、この残りの中間報告で、ほとんど何も議論されていない。そこをどうなさるのかということを、お聞きしたのです。
そうすると、例えば、現場の研究機関、研究所にとっては、もちろん、共同利用・共同研究拠点が、共用をやっているものもある。それは、委員長がおっしゃっているとおりです。でも、それが、今後、共用というものを幅広く進めていく上で、バリアがゼロになっているのかという質問をされると、それは違うと私は思う。
【二瓶主査】 それは、もちろんそうなんです。
【宇川委員】 そこはやはり整理していただく必要があるのではないかと、私は思うんです。
【吉澤委員】 私も共同利用機関にいるので、次の論点のところで、一番気になっているところで、発言しようかなと思ったんですけど、ちょうど先生から話があったので、一言申し上げさせていただきます。
今回のこれは共用制度の議論で、特に明確に産業利用にウエートを置いていますよね。だから、共同利用をやっている研究所に所属する人間から言わせていただくと、非常に明確に制度が違っていて、我々は共同利用をやることによって存在している組織なので、使っていただいてということは、初めからもうDNAに入っているんです。だから、ほかの大学の共同利用研究拠点に、最近認定されて入ってきた組織とは、基本的に違っているところがあるので、まず、そこが1点です。
制度上の違いは、先ほどのアカデミックの問題や、パテントや外国人にどれだけ使わせるかということも、アカデミックな我々のような制度であれば、もう明確に世界中にオープンで、サイエンスメリットだけで、何の疑念もないんです。
でも、今のこの制度を、産業利用を明確に念頭に置いているからこそ、いろいろな先生方が言った観点からの議論とか、オープンならいいのか、それとも、オープンであっても、やっぱり国策ならば、ある程度のところは制限しなければいけないのか。
有償利用で、費用を回収できたにしても、それが国内の企業が8割使って、2割が外国ならいいけど、8割から9割を外国の企業が、どんどんお金を払って使って、成果非公開でやっているJ-PARCとかSPring-8は、いかがなものかということは、やっぱりあるので、そういう意味で、きちんと論点整理をしていただく必要がある。
その次の段階で、実際の施策を決めていくときに、共同利用、共同研究拠点のところに、共用施設、共用促進事業を入れるとすると、これは、コンセプチャルに違う制度を2つ合体させるので、ここは非常に慎重に議論して、どういうアイデアでやったらいいのか、あるいは、こういうケースはいけないのかということは、議論しておいていただきたいんです。
若槻先生のところは、もうPFで共用事業をされていますよね。
だから、大学共同利用機関の中に、既に実例があるのは、そのとおりなんですが、それはどういう理念でやっていて、それは文科省が進める事業として、ここまではいいのかとか、さらに広げるべきなのか。
だから、その次の2のところの議論で、さらに利用を促進するということが明確な目標で、それはとてもいいことだと思いますので、共用促進事業をどんどん展開していただきたいんですが、既にある大学の共同利用・共同研究拠点の理念と、どうすり合わせて、協調するのか、連携するのかということは、非常に重要なファクターなので、基盤研究課と学術機関課の所掌になると思うんですが、これはじっくり議論していただいて、実例もありますので、発展する方向で、理論が広がる方向で、ぜひとも仕掛けを議論していただきたいと思います。
【宇川委員】 私の言いたかったことを、もっと敷衍して、おっしゃっていただいたんだと私は思います。
例えば、HPCのスパコンの分野で見ますと、全国の9大学が共同利用、共同研究拠点なんですが、実はそこが共用促進事業もやっていて、HPCIという単語が何回か出てきましたけれども、そこで、ネットワークを組んで、やり始めているのは、実は共同利用、共同研究のほうなんです。ここの委員会でのヒアリングでは、東工大がこの前、来て、もちろん非常によくやってられましたけれども、あそこで紹介されたものは、共同利用、共同研究の枠組みではなくて、共用促進事業の取組です。
だから、ネットワーク化とか、京を中心とする全体のプラットフォームが進んでいるのは、実は共同利用、共同研究のほうであって、やはり、そこの整理は必要なのではないか。私はやるなと言っているつもりは全然なくて、そこの整理をしていかないと、現場も困るし、全体としても、広がっていかないだろう。そういう観点なんです。
【吉澤委員】 全くそのとおりだと思います。
【宇川委員】 多分、中間報告の段階で、そこまでまとめ切るのは、すごく難しいと思うんですが、でも、大きな論点として残るのではないかと私は思います。
【西島委員】 企業からすると、共用促進で使っていって、その先に共同研究に発展したという例はあると思うし、実際、私もそういうものの間に入ったことがあるので、そういう意味でも、トライアルコースなどがあると、意味があるのかなとは思うんです。
【若槻委員】 よろしいですか。
【二瓶主査】 どうぞ。
【若槻委員】 今の共同利用、共用促進との大きな違いは、やっぱり日本の科学技術全体を、文部科学省で考えたときの大きな課題だということは、皆さんがおっしゃられているとおりなんですけれども、それにしても、今回こういう形で、大学共同利用機関、共同研究拠点をどうするかという視点が入ってきていることは、とてもポジティブだと私は思うんです。
でも、それだけで終わってはいけないということが、多分、何人かの方がおっしゃられたことで、特に、この後、どういう国家戦略を立てていくか。この後、多分、学術会議の議論が出てくるんだと思うんですけれども、そういうところでされている議論が、そのまま国家戦略ではないと私は思うんです。
そこは、やっぱり今までの歴史的な経緯も含めて、日本で持っている資産全体をどうやって運用していくかという観点で、議論していく必要が、これはほんとうに大きな課題としてあって、ぜひ継続的な議論をしていただきたいと思います。
それと関連して、先端研究基盤部会で出た1つの大きな課題として、省庁間の話がありました。それが何回かは出てくるんですけれども、あまり明確に出ていないんですが、これは、国がという主語で書いてあるものは、やはり基本的には、各省と読みかえてみる。そういう意味ですか。
だけど、たしか川合先生が先端研究基盤部会で指摘されたと思いますが、ああいう意見に対してどう答えるかという点は、もう少し検討があってもいいかなと思います。
それは省庁だけではなくて、特に量子ビーム関係で言いますと、放射光は、地方自治体で作っているものがありまして、そういうものを含めない限り、量子ビームという観点での国家戦略を作ることは、とても難しいんだと思うんです。
そういうことが、今回のこの報告書の中で、どういうふうに扱うかということは、もうちょっと含めたほうがいいかなという気はします。特にこの後の議論のところで、もっと、もっと重要になるかなと思います。
【二瓶主査】 ありがとうございます。
【吉澤委員】 共同利用側としては、学術機関課なんですけど、私個人的には、共用促進事業をやりたいんです。そういうことなんです。そういう幅広い施策を研究所ができるようにする。
【野田委員】 そう。だから、実際にやろうとすると、だんだん難しくなる。そういうことです。
【二瓶主査】 せっかく局長がおいでですから、後ほどコメントをいただきたいと思いますけれども、これは、私は、ぜひ御認識、共通認識として持っていただきたいことは、今までにない政策なんです。新しい政策を打ち出そうとしているわけです。
それで、いろいろな観点から整理して、こういう要素がありますから、共通基盤としては、これだけの手持ちの材料がありますね。この材料をまとめて、本当の基盤を作るためには、何をどう考えればいいんですかという議論をまとめたものです。
ですから、おっしゃいますように、いざ、これ、実現しようというときに、いろいろなことが起こることは、百も承知です。そうでなければ、新しいことなんかできないわけですから。ですから、もちろん、局内で、こっちの課、こっちの課で、今までやってきましたねと、それは我々が心配することではありません。
【野田委員】 なかなか、実際にやろうとすると、いろいろな問題が起こってくるように思います。
【二瓶主査】 おっしゃることは、よくわかります。
ただ、宇川先生がおっしゃったときに、私もぱっと申し上げたことは、現に共同利用、共同研究の枠組みでも、これは私立大学の例ですけど、既に産業利用が始まっているんです。ですから、そういうバリアがありますねということは、それは、そういうところもあるでしょう。ですけれども、本質的ではないということを、私は言いたかったんです。
ただ、今までの体制が違う、あるいは、先生がおっしゃったように道具立てが違う。それはもちろんあります。しかし、それは今後の手入れの問題であって、頭の切りかえかもしれませんが、いずれにしても、それは必要としているプロセスなんだと思います。
こういうことがあるから難しいですねで、議論が終わってしまったら、何にも始まらない。この委員会は何をやっているんだろうということになるわけで、もちろん、それをクリアするためには、こういう課題がありますという御指摘はたくさんいただいておいて、成案を作るときに、全部入れ込んでおかないと、思わぬところで転覆するといけませんから、それは大事な議論なんです。
やはり、根幹は、共通項を取り出して、その要素を酌み上げて、新しい観点から、共通基盤を国として作るということは、まさに、今、世の中が望んでいるところですから、これはやらなければいけない方向ではありませんか。そのような観点で、これが書かれていると思います。
【宇川委員】 最後に申し上げますけれども、私は、難しいからやめろと言っているつもりは全然なくて、でも、共同利用、共同研究の枠組みは非常にがっちりしたもので、やっぱり、現場からすると、それぞれの機関にとっては、それなりの縛りなんですよね。
だから、ここまで共用が進んできたからには、今後発展させようと思ったら、やはり、そこは改めてこうしましょうというふうに、整理が必要なのではないか。
【二瓶主査】 なるほど。はい。
【宇川委員】 もう一つ申し上げると、例えばスパコンの側ですと、先ほどのHPCI、共同利用、共同研究のほうが、実はネットワーク的な使い方が始まっていると申し上げました。
では、独法のほうはどうかというと、実は、そちらのほうが、まだそれほど進んでないんです。
だから、この文章を見ていると、独法側でも、補助金の場合に、共用取り組みが可能ということが書いてありましたけれども、そうなんだとすると、むしろスパコンの世界では、独法にあるスパコンを、もっと共用的な使い方ができてもいいはずで、その観点からすると、実は、共同利用、共同研究の枠組みよりは、独法側のほうが、もっと踏み込んだ考え方をしていただかないと、スパコンの側では、全体的なネットワーク的な使い方に発展しないと。そういう観点からも、こういう方向で議論していただいていることは、すごくいいと私は思っています。
【二瓶主査】 なるほど。はい。わかりました。なるほど、分野によっては、逆転しているということですね。わかりました。ありがとうございます。
ほかに、何か。
【瀧澤委員】 すみません。1つだけよろしいですか。
【二瓶主査】 どうぞ。
【瀧澤委員】 2ページ目の下から3つ目のポツのところで、大学教員や若手研究者から見た場合、共用取り組みを実施することが、自らのインセンティブにならないという問題点が指摘されております。
私、現場にいないもので、その辺の状況がよくわからないんですが、先ほど二瓶先生がおっしゃったように、既に大学によっては、もうそういった取り組みが進められているということを考えると、こういう文章を残しておくこと自体が、どうなんでしょうかと、少し思ってしまったんです。こういう文章を残したほうが、やはり共用は促進されるものなんでしょうか。
【二瓶主査】 私の発想でお答えしますと、広い意味で、例えば、人材育成ですとか、キャリアパスですとか、そういうロングレンジ、あるいは、いろいろなケースを念頭に置きますと、まだ十分ではないと。
表現はもちろん注意深くしないといけませんが、もう少しこの方向を推し進めるためのインセンティブは、何かあるのではないかなという、それはもちろん、いい方向を考えているわけです。
共同利用機関で、共同利用業務についている研究者がいらっしゃいますが、その研究者にとって、キャリアパスが描けているかと言うと、必ずしも十分でないという御意見が、この中でもあります。
そういうことを、では、どうすればいいかという、そのどうすればいいかの部分が、なかなかいいアイデア、現実にありませんから、これから作るものですから、もう少し工夫が必要ですねという意味なんです。
【瀧澤委員】 後半の9ページのほうに、それを受けて、多分、解決策の1つとして、例えば、専門に担う組織の整備とか、論文に依存しない研究者の評価システムが書いてありますが、こういうことができてくると、問題が解決するということでしょうか。
【二瓶主査】 とても難しいことなんですが、現実に、例えば大学という場を考えますと、研究者の評価は、やはり論文ベースで行われているということは、今の一般的な情勢ですので、そうすると、それ以外のことに、キャリアの一定期間を投じている研究者にとって、ほかにどんなメリットがあるんだろうかという観点です。
ですから、少なくとも、その組織にいる限りは、そういう評価がしっかりされないと、組織は維持されない。しかしながら、キャリアパスという考え方をすると、それだけでも済まないんです。結構難しい話で、学術の世界だけでなくて、産業界も含めて、そういうキャリアを持った方を、どう処遇すればいいかということにつながってまいります。
何か御意見があればお願いします。
【吉澤委員】 二瓶先生のおっしゃったとおりなんですけど、例えば、この委員会で議論している共用促進事業みたいなところが、もっと予算が倍増して、各施設が共用をきちんとやったときに、支援員、コーディネーターとか、事務局をそれぞれがきちんと配置したとしますが、例えば、時限5年で動いていたら、5年後に職を失うわけです。
だから、そういう状況で、まだ、そういう施設も少ないので、そういう意味で、そういう人たちを養成しようにも、キャリアパスがないというのは、つまり、人生設計が描けないということです。
【瀧澤委員】 国として、そういう枠を一定程度設けてくださいとすれば、解決しそうなようにも思えますが。
【吉澤委員】 それは、研究独法や大学の中で、大型施設を維持管理して、共用にするということが、国の文化になれば、そういうところに、当然、人生のキャリアをかけられる研究者、技術者が育つんです。
【長野委員】 大学で行っている者としては、むしろ太字で書いてもらいたい。確かに、否定的な格好で書いてあるので、気にはなりますけれども、これはもう、実際にこれを動かす上においては、最も重要と言っていいと思います。
ここは、多分、言葉を変えたんです。サイエンス・テクニシャンと、昨日来たメールではありました。どうして変えたのか知りませんけれども、サイエンス・テクニシャンという言葉があるんだなと私は思ったんですが、実際に行う場合には、極めて重要です。これを担うということは、単にアルバイトの人を呼んできてできるわけではありませんから、かなり高度のサイエンスがわかっている人がなければいけない。
一方においては、自分の研究をかなり制限されますので、論文は出てこないというジレンマもあります。先生がおっしゃるように、5年後にプロジェクトが潰れたら、もう首になるわけですから、どうするのかということになると、当たり前ですけれども、相当いい人は、なかなか集まりません。
それを国の全体の共用として担って、基盤だといったときには、基盤が揺らいでいることになりますから、それは最も重要だと私は思うんです。
【西島委員】 大学人でなくても、これは太字にしたほうがいいのではないかと私も思います。長野先生とよくお話しするんですけれども、産業界が国の施設をなぜ使うかということは、一つは、その施設が高価で、企業が買えないもの。
もう一つは、先端性があって、企業が気軽に買って使えるものではなくて、そこからどういう成果が出てくるかというようなものは、そこに働いている人が一番よくわかっていて、企業側がその施設のメンテナンス費という名目で2割から3割を負担してもよいというケースです。
企業の場合には、総合職とか専門職がありますし、論文を書くのが大好きだという人ばかりではありません。だから、そういう職制を担っているんです。大学の場合には、はっきり言うと、やっぱり、今のままでは期限が切られていたり、論文の質と数とかというのは、どうしても恵まれないということがある。
やっぱり、一緒にその施設をと言ったときに、例えば、私はSPring-8にて、業界が10年間、専用ビームラインを持って、うまくいったなというのは、そこに働いていた施設側の人たちが、産業界で使ってもらって、成果を出すことが、自分たちの評価につながるということが見えてきているからだと思うんです。
でも、これがほかのところに行ったときに、同じような評価は得てないのではないかと思います。彼ら自身が、1年後、首を切られてしまって、産業界の課題を考えている場合じゃないよというのが、言わないかもしれないけど、わかってしまったのではいけないと思います。そこはもう大変重要であって、それが人材育成のピンポイントだと思うんです。
総論で、人材育成はよく言われているし、だれも否定しないんですけれども、具体的対応が乏しいので、機会ある時に方策を打って出るということは、やっぱり重要なことで、ぜひ産業界からも、太字とは言いませんが、大事な点だと思います。
福嶋先生、どうですか。
【福嶋委員】 まさにおっしゃるとおりで、いわゆる製造業もある産業界であると、今おっしゃったように、いろいろな行き先があるので、インセンティブは、ある程度あるんですが、サイエンティフック・テクニシャンですか。
【長野委員】 サイエンス・テクニシャン。
【福嶋委員】 いい名前なんですけれども、例えば、豊田中央研究所は大学に似ていまして、研究者ではない人とテクニシャンという。テクニシャンから現場に行くという道がない場合に、やはりインセンティブがなくて、人事管理が非常に難しいわけです。
ですから、テクニシャンも評価をきちんとしてあげて、評価をきちんとしてあげるということは、給料を上げてあげるだけの話だけなんですけれども、それができれば問題がないんですけれども、むしろサイエンスの人の評価もきちんとして、下げるべきものは下げて、トータルとしてやらなければいけないことはあるんですけれども、まさにテクニシャンの方も含めた評価、キャリアパスが見えてないと、みんな一生懸命働かないというのは、まさにそうで、ぜひ太字ではなくて、赤字もして、アンダーラインもしていただいて。ということは事実です。
【野田委員】 ちょっとよろしいですか。
【二瓶主査】 どうぞ。
【野田委員】 実は、先ほどから議論のサイエンス・テクニシャンというか、むしろ、エンジニアリング・リサーチャーというのですか。特にこういった施設の場合は、開発と技術的な支援とかが重なっているのです。
ですから、そこに携わっている人たちのキャリアパスを考えると、やはりそれを受け入れるところがないと、なかなか大変。うちの場合ですと、今まで過去に2人ほど採用して、うちの特にビームラインのほうを見ていただいておりますけれども、それでもやはりSPring-8側から見ると、もっと行き先を考えてほしいということは、よく相談されるのです。
うちもパーマネントのポジションは、非常に限られていますので。
どうぞ。
【緑川委員】 いいですか。
【二瓶主査】 はい。
【緑川委員】 理研のほうでは、むしろ、今、そういう基盤を担う方はパーマネントとしているんです。サイエンティストは、むしろ5年の契約で、ローリングワークとしています。
その場合に、それは、サイエンティストはいろいろな論文で評価されたり、あるいは、5年ごとに評価があったり、それは、それでいいんですが、やはり、今度はパーマネントになった場合の技術者のインセンティブです。
とにかく基盤は、長期にわたって整備していかなければいけないので、それで、パーマネントで採るという方針は貫いているんです。今度、パーマネントにずっとしていきますと、やっぱり技術開発がどんどん新しいものをやっていくとき、そのためのインセンティブと教育、その問題が一番大きいということです。
【二瓶主査】 なるほど。
【若槻委員】 いいですか。
【二瓶主査】 はい。
【若槻委員】 今、議論されているように、もちろん、それぞれの研究機関なりの問題を抱えているんですけど、量子ビームだけではなくて、こういう研究プラットフォーム全体を考えたときに、キャリアパスがそれぞれあったとしても、実は、全体の人事交流を考えると、なかなか横に動けないという問題がある。
端的に言いますと、JASRIもしくはCROSSみたいなところに、ずっといらっしゃった方が、仮に大学の共同利用機関にしても、大学共同研究拠点にしても、そこで行われる人事委員会は、どちらかというと、やっぱり大学に近い形で、論文ベースになっているということがあったりとか、その逆もしかりなんです。
そういうものは、やっぱり人の動き、もちろん、給与体系とか、いろいろなほかのこともあるんですけど、そういう評価の考え方が、共通でない部分が、結構問題だと思うので、たしか後ろに書かれたと思いますけど、やっぱり人材育成の中には、せっかくこういうプラットフォームを提案するのであれば、そこまで含めた、それぞれのサブシステムの中だけではなくて、横につながるようなものを作っていただく。そのぐらいの規模でないと、人が動けないということがあるのかなと思います。
【二瓶主査】 ありがとうございます。
確かにそうですね。小さく分けてしまうと、考え方が狭まってしまって、もっと広く交流ができれば、いろいろなパスができると。そういう意味ですね。
既に、もう1ポツだけではなくて、2ポツに議論が入っておりますけれども、どうぞ、御自由に。3ポツ、研究開発プラットフォームの構築も含めて、御意見があれば、いただきたいと思っております。
【緑川委員】 1つよろしいでしょうか。
【二瓶主査】 どうぞ。
【緑川委員】 7ページの一番上、必要な取り組みというところ、5項目、四角で囲んであるので、非常に重要な文章だと思うんですが、3番目のニーズに基づくという、そのニーズが、利用者のことを言っているのかとも思いますが、いろいろな取り方ができると思うんです。
【二瓶主査】 はい。
【緑川委員】 少し、重要課題に基づくとか、何か、むしろ定義しないで、広く取っておいたほうがいいのか、どういう意図で、このニーズというものを書かれているのか。取る方によって、例えば、装置を開発する人でも、発展させたりとか、やっぱりニーズはあるわけです。これは、むしろ利用者のということを言っておられるのか。それとも、わざとそういうものを曖昧にされているのかというところが、ちょっと気になったということなんです。
【若槻委員】 これは、私の理解では、完全に利用者のニーズだと思います。その観点でいくと、それの具体的な話が、(3)が12ページから始まるんだと思うんです。最初のところのユーザーとメーカーの連携というのは、全部を読まずに、拾い読みする方からすると、メーカーのところが、ちょっと違うふうに読むのかなと思うので、研究側(ユーザー)はいいとして、開発側(メーカー)というのは、どうなのでしょうか。
【二瓶主査】 なるほど、研究者もいらっしゃる。
【若槻委員】 はい。いるので、どちらかというと、例えば、プラットフォーム側とかにしていただいたほうが。普通にメーカーというと、機器を作って、売るほうのメーカーという意識を、私はちょっと持ってしまうんです。細かいことで申しわけないです。
でも、いずれにしても、ニーズというのは、やはり、ユーザーのニーズかなと私は思うんです。
【緑川委員】 それでしたら、むしろ、そういうふうに書いたほうがいいのかなと、ちょっと感じたので、意見を述べさせていただきました。
【二瓶主査】 ありがとうございます。
これはニーズという表現を幅広くとって、例えば、ほかのところにもあったかと思うんですが、研究開発プラットフォームという基盤からすれば、例えば、国家プロジェクトでいろいろなプロジェクトが立ちますけれども、そのプロジェクトごとに、例えば技術開発を、その中で始めるというケースが、今まで多々あったわけです。
そうすると、重複が起こり、開発したものが、プロジェクトが終わった後に、使われなくなってしまうという無駄が起こりますので、むしろ、基盤側が、プロジェクトに必要な道具があれば、開発ももちろんすることもありますし、既に整っているものを使ってほしい。プロジェクトが基盤に足をつけていただいて、きちっと連携すれば、ずっとスピードも上がるし、効率も上がるのではないですかということも言いたいわけです。
ここのニーズというのは、そのような意味合いを含めて使った言葉なものですから、御指摘で、また再考いたしますけれども、もう少し幅が広がるといいなと思います。ありがとうございます。
【瀧澤委員】 すみません。
【二瓶主査】 どうぞ。
【瀧澤委員】 今のことに関連してなんですけど、12ページのユーザーとメーカーの連携というところ、この7行は非常にざっくりとした話で、これだけを読むと、あれ、今までやってなかったのかなという素朴な疑問で、今までと何が違って、これから改善されていくのかということが、もう少し書き込めるものであれば、書き込まないと、え、こんなことも今までやってなかったのかと思われるおそれがあるのではないかなと、素朴に感じました。すみません。
【二瓶主査】 わかりました。では、もう少し。
【野田委員】 今の点なんですけど、先生が直接やっておられますけれども、先端計測分析技術・機器開発ですね。
12ページのユーザーとメーカーの連携の文章と、4ページ目の一番下に、研究者が研究機器を調達する際にという、これとがちょうど対になっている話かなと思ったんですけど、そうではないんですか。
【二瓶主査】 おっしゃいますように、関係は密ですね。御指摘の点は、ユーザーの要望にぴったり合っていれば、このような国内の研究者が、それを使わないなどという事態は招かないだろうという意味ですね。確かにそういうこともあります。
【吉澤委員】 よろしいですか。
【二瓶主査】 はい。
【吉澤委員】 今のところは、4ページのもう一つ上のパラグラフのところが、多分、一番適切な表現で、開発する人は夢いっぱいで、常に、開発していたいんです。だから、5年のプロジェクトを採択されて、何かやると、その次の5年はまた新しい開発に走ってしまって、せっかく開発したものを広く展開しなさいという視野が欠けているんです。
だから、一番冒頭で、西島さんがおっしゃったように、開発プログラムで採択するときに、その後の展開がきちんとファクターに入って、それも評価基準になっているよという施策にしないと、作りたい人は、次につくから、次から開発して、利用のことは、いつも言いっ放しなんです。だから、これは、国の政策として、そういうことをやめさせたいというふうに、僕は読んだんです。
【二瓶主査】 おっしゃるとおりです。今までほんとうにプロジェクトの中で、開発者思考というものは結構あって、出口は標榜するけど、作りっ放しということがあり得た。
そうではなくて、もっと出口と一体化して、それを先ほどのニーズという表現にしたんですけど、世の中で広く使われるという意味のニーズとマッチしていれば、そんな作りっ放しという事態は起こらないでしょう。そのような思いもございます。
【若槻委員】 需要は、やっぱり早々できるものであって、中性子なども、ほんとうに産業利用で使えるんだろうかと思ったんですけど、実際にトライアルユースをやってみると、いろいろなメーカーが来るんです。
そういう意味でも、需要を作るという頭が、初めからないと、だめだということです。
【二瓶主査】 なるほど。需要ですね。確かに。ありがとうございます。
【長野委員】 よろしいでしょうか。
【二瓶主査】 どうぞ。
【長野委員】 別件についてです。12ページなんですけれども、12ページの下のほうに(4)がありまして、大型研究施設の整備に関する云々という。これのもとは、おそらくは日本学術会議の例のマスタープランを意識しているんだと思いますが、マスタープランに関しては、5ページの上のほうに書いてありまして、これに関わった者として、このときの日本学術会議の議論では、いわゆる大型施設計画と大規模研究計画という2つが出てきて、大型施設計画はまさに1,000億円だったり、非常に高い、そういったもの。
もう一つの大規模研究計画のほうは、主にバイオとか、そういうところで、施設としては、運営費にかなりの費用がかかる。運営していく上においては、極めて大規模なものになるということです。
12ページのほうへ戻りまして、ここではあまり運営費云々という議論がないのが、何か加えていただけると、箱物を造ればいいだけの格好で書かれているような感じがいたしました。
【柿田基盤研究課長】 すみません。
【二瓶主査】 どうぞ。
【柿田基盤研究課長】 日本学術会議では、研究基盤としての大型施設の計画とともに、大規模研究についての計画を合わせてマスタープランとして作成したと理解しておりますが。
【長野委員】 日本学術会議での議論は、いわゆるものすごく大型の施設という格好で、建物自身から造り始めるものとはまた別に、それは天文だとか、そういうところになると思います。
私は生命科学をやっているわけですが、そういった生命科学においては、いわゆる大きな建物、すばるの望遠鏡だとか、そういうものではなくて、施設とは言わない、設備としては、1,000億円、2,000億円というお金ではないんですが、それをずっと運営していくためのお金としては、非常にかかるでしょうというものを大規模研究計画と呼んだんです。だから、そちらをBと言って、大型施設をAと言ったんです。AとBというふうに分けたんです。
そこでは主に強調されたことは、運営費が非常に重要だということが強調された議論になりました。もしそういうものが、反映されているといいかなと思いました。
【西島委員】 例えば、リソースバンクとか、バイオバンクとか何かというのは、最初の設立時にぼんとお金がつくんです。でも、それを継続していって、いざ汎用業界が使うときに、一定の基準のものが使える状況であることが重要です。たとえば、低温保存とか一定の基準下に管理しておくということは、すごい結構お金がかかるんです。
でも、そこは必ずしも潤沢につくわけではなくて、順調に動いていると、そろそろ削ってもいいかということが、国の考え方のようです。そうではなくて、例えば、常にリフレッシュして、時々、純度が落ちてないか検証して、人も教育しなければいけないということです。できた施設についての維持費を毎年取りに行くのではなくて、大きな施設を造ったときは、その何%かは基金として持っていて、維持費を取りに行くのではなくて、上手く運用するものだということを考えなければいけない。
例えば産業界の場合ですと、パテントをとった場合に、5年間、さらに10年間で、途中の紛争も含めて、1つのパテントでどのぐらい維持費がかかるかを見積もっておく必要があります。例えば、2,000万円ぐらいを用意すればいいのかなということは、ざっくりあるんですが、大学の先生は、海外に一つパテントを出したら、もう終わってしまった気分のような先生も多いんです。企業の場合は、特許に関しては、そこから戦略とか、定期的にメンテナンスがあるので、常にそういう維持費とか、そういった部分を常に計上しているんです。
多分、そういうことも考えておかなければいけないということです。
【長野委員】 今の話で、基金という言葉が出てきたんですけれども、基金はあり得る話なんです。先ほどの例えば人の雇用に関しても、5年後に雇用期間を終えてしまうのが、基金化することによって、ひょっとしたら、もう少し伸ばすことが出来て、例えば10年にすることができるかもしれません。
極端に言いますと、5年というのは、採用された途端に、もう次の職を考えているような感じになるんです。少なくとも3年後には考えています。そのような状況が、そのポジションへの応募を遠ざけている一因になっています。10年あれば、それなりに腰を落ちつけて仕事が出来ますので、それも1つの方向かなという感じがいたします。
【野田委員】 労基法上の制限があります。
【長野委員】 あ、そうですか。その辺、ちょっと私にはわからないもので。
【宇川委員】 今の点は、確かにおっしゃられたことを頭に入れて、7ページの5つの項目を見てみると、研究開発プラットフォーム自身を、ある種、拡大しようとか、そこに必要な大型設備を造ろうとか、そのための国家戦略とか、そういうことが書かれていますけど、研究開発プラットフォームそのものを、どう維持し、運用していくのかと、そのために何をするのかということは、確かに入っていません。
【長野委員】 実際やっていく上でも、非常に重要なんです。
【宇川委員】 大事なことです。
【若槻委員】 多分、共用促進法でやっている分に関しては、織り込み済みなのではないかと、私は思っているんですけれども、むしろ、それと並行して行う大学、共同拠点みたいなところに関して、先ほどの話で言えば、JASRIとかCROSSが5年契約だというところ。そういうものは、すべて長く所掌してしまうと、競争的な環境ではなくなるというところとのバランスがあるので、とても難しいんだと思うんです。
だからこそ、先ほど出ていました、全体としてのキャリアパスを作って、例えばJASRIでいい仕事をした人は、その後、それを持って、次の別なところで仕事ができるというつながりをちゃんと作るという。
ただ、施設とか、それこそ研究プロジェクトのほうは、20年保証してしまうということは、やっぱりそれなりの注意が必要かなとは思うんです。そこのバランスはとても重要なんですが、私自身はプロジェクトに入った人間からしますと、ずっと続いてほしいと思うわけですけれども、でも、実際には、そういうことはやっぱりできない。あくまでも、やっぱり、コンペティティブなリニューアルということだと思うので、このバランスはとても難しいかなと思うんです。
長野先生がおっしゃられていることは、とても重要なんですけれども、具体的にどういうふうに入れていくかということは、多分、個々のものだけではなくて、大きな枠の議論が必要だと思いますけど、違う観点から申し上げました。
【二瓶主査】 基盤を健全に維持するということのキーワードの1つが、これは大型箱物のイメージで確かに受け取れる、大型研究施設の整備と書いてありますから、次々に大きなものを造っていくというイメージなんです。
一方、できたものを陳腐化させないための努力、どこかに書いてあったと思うんですが、先端性を維持する。それはもう少し小振りな経費の蓄積なんですね。
【長野委員】 そうですね。
【二瓶主査】 これは人の面とお金の面と必ずありまして、先端性を維持するというところに、今のような御指摘をきちっと盛り込んではいかがでしょうか。
【長野委員】 そうですね。
【若槻委員】 確かにそこは重要だと思います。基盤を担当する人たちが、お世話だけするのでは、戦略がないということもあるんですけれども、いろいろなプロジェクトが走っているものを、もうちょっと詳しく見ると、プロジェクトによっては、ほんとうに支援だけ、高度化が入ってないというものが確かにあるのは、私もお聞きしています。そういうところは、いくら人気のあるプラットフォームでも疲弊して、第2期については、ちょっとためらってしまうという話もちらっと聞いたりもします。
一方、支援とは言いながら、実は高度化しかしていないというのでは……。
【二瓶主査】 作りっ放しの論理ですね。
【若槻委員】 無理なので、そこのバランスをどう取るかということは、例えば、創薬とプラットフォームに関しては、今ちょうど始まったばかりですけれども、そこの議論を随分して、今も長野先生と議論をさせていただいていますが、例えば、作り込みの仕組みとしては、少なくとも半分は支援という形で、申請資料を作るようになっていまして、そのように、皆さんが作っている。
そこは、やっぱり、半分がいいかどうかは別ですけれども、やっぱり、ある程度のバランスをシステムに作り込んでいく必要があるかなと思います。どちらかだけというのは、ほんとうにもたないと思います。
【野田委員】 すみません。
【二瓶主査】 どうぞ。
【野田委員】 評価の視点をきちんと書けばいいんですか。そういう意味ではないんですか。
先ほどのこともありましたけど、やはり、技術者だって、競争的な環境において、一たん就職したら、新しい技術を入れていくためには、競争的といいますか、勉強するとか、評価の視点で、きちんとしていけば、そんなに恐れることはないのかなと感じたんです。
【緑川委員】 やはり、それは流動性が重要なのではないかと思います。ですから、いろいろな、それこそ、今、ネットワークを作ろうというところなので、そのネットワークの中で、運営から経営に行ったり、経営からJ-PARCに行ったりとすることによって、もちろん、その技術者の幅も広がりますし、マンネリから脱却するようなこともできるのではないかと思います。
【瀧澤委員】 すみません。
【二瓶主査】 どうぞ。
【瀧澤委員】 1つだけ確認なんですが、この書いてあることの意味を教えていただきたいんですが、12ページの一番下のポツで、ロードマップを活用しながら、大型研究施設の検討に着手していくという意味合いなんですが、これは。ロードマップは学術会議から出てきているので、純粋に学術の視点が主にロードマップに挙げられていくと思うんですけど、そうやって挙がってきたものも、別の視点も、産学官の広範な研究者ですとか、戦略的な整備という視点も加えて、1粒で2度おいしいみたいな、そういう発想でやっていきましょうという理解でよろしいですか。
【柿田基盤研究課長】 ロードマップの中には、純粋な学術利用に限らず、産業界も含めた幅広い利用が見込まれる施設の候補もリストアップされています。したがいまして、12ページに述べる今後の検討にあたっては、ロードマップも見ていく必要があると考えている次第です。
【瀧澤委員】 ロードマップは学術会議かもしれないですけど、大型プロジェクトを決めるときに、こういう視点も重視していきましょうということでしょうか。
【柿田基盤研究課長】 はい。情報を共有し、互いに連携しながら最善の検討を進めていくことが重要と考えます。
【瀧澤委員】 わかりました。
【二瓶主査】 ありがとうございました。大体予定の時間が参りましたので、本日、冒頭にお願い申し上げましたように、本日いただきました御意見を踏まえた上で、報告書を更にリバイズして、完成をさせたいと思っております。そのあたりは、事務局にお願いをすることですけれども、まとめ方は、主査に御一任いただけますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【二瓶主査】 ありがとうございます。それでは、8月7日に先端研究基盤部会に審議をいただくための案を、更に今後作成したいと考えております。
本日の議題は以上でございますが、今日はいろいろ議論がございまして、せっかく局長がお見えでございますので、一言頂戴できればと思います。
【吉田研究振興局長】 研究開発プラットフォーム、とりわけ共用の促進ということについては、研究振興局における今後の重要な政策目標であると考えております。
そういう意味で、これまでどちらかといいますと、研究基盤については、個々のプロジェクト単位で語られることが多かったんですけれども、日本全国に存在するさまざまな分野のさまざまな優れた機器、それら全体を俯瞰して継続的に今後活用していくための仕組みとして何が必要なのかということを、今、私どもとしては、重点課題として検討を進めておりまして、今日、さまざまな観点から貴重な御意見をいただきました。
現在は中間報告を作っていくという段階でございますので、まだ必ずしも結論が出てないものについては、引き続き、ブラッシュアップなどをして、最終報告に結びつけていきたいと思いますし、来年度の概算要求の中でも、今の先端研究施設共用促進事業などの更なる拡充を行っていきたいと考えております。
本日は、本当に貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。
【二瓶主査】 ありがとうございました。
それでは、事務局から、今後の予定などについてお願いいたします。
○竹上基盤研究課課長補佐より、今後の予定について説明があった。
【二瓶主査】
本日は大変貴重な時間をいただきまして、御議論いただきました。これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。
―― 了 ――
研究振興局基盤研究課