研究開発プラットフォーム委員会(第6回) 議事録

1.日時

平成24年7月11日(水曜日)10時00分~12時30分

2.場所

文部科学省 17F 研究振興局会議室

3.議題

  1. 先端研究施設共用促進事業実施機関からのヒアリング
  2. 新しい先端研究施設共用促進事業の方向性について
  3. その他

4.出席者

委員

二瓶主査、伊丹委員、宇川委員、長野委員、西島委員、野田委員、福嶋委員、吉澤委員

文部科学省

吉田研究振興局長、柿田基盤研究課長、下間情報課長、林情報課計算科学技術推進室長、竹上基盤研究課課長補佐

オブザーバー

芳田経済産業省産業技術総合研究所室室長補佐、木村京都大学エネルギー理工学研究所教授、檜木京都大学エネルギー理工学研究所准教授、佐々木東京工業大学学術国際情報センター共同利用推進室副室長、渡邊東京工業大学学術国際情報センター共同利用推進室特任準教授、松尾慶応義塾大学医学部共同利用研究室教授、木川理化学研究所生命分子システム基盤研究領域副領域長

5.議事録

【二瓶主査】  おはようございます。定刻となりましたので、ただいまから第6回の研究開発プラットフォーム委員会を開かせていただきたいと思います。
 本日の議題は、お手元の議事次第にございますとおり、「先端研究施設共用促進事業実施機関からのヒアリング」と、「新しい先端研究施設共用促進事業の方向性について」の2件でございます。
 それでは、事務局から配付資料の御確認をお願いいたします。

○竹上基盤研究課課長補佐より、出席者の紹介及び配付資料の確認があった。

【二瓶主査】  よろしいでしょうか。
 それでは、早速でございますが、議題1に入らせていただきます。 これまで本委員会におきましては、研究開発プラットフォーム構築に向けた概念整理、あるいは必要となる取組について議論してまいりました。本委員会が「産学官に開かれた研究開発プラットフォーム」という構想を提案していくにあたり、実際に大学や独法において先端研究施設を共用するための取組を実施されている研究者の皆様方から取組状況をお聞きいたしまして、共用取組を実施する意義、問題点、あるいは今後の方向性といったことについて意見交換をしたいという趣旨で本委員会を開催し、かつ本委員会の提案の参考にさせていただきたいと考えております。
 それでは、各機関からのヒアリングに入る前に、事務局から、補足の説明をお願いいたします。

【竹上基盤研究課課長補佐】  平成19年度より「先端研究施設共用促進事業」という取組を文部科学省において実施しておりますが、本日は、この事業で実際に取組を実施されている機関の方々に集まっていただいております。今年度は28の大学、独法等の優れた施設を支援対象としておりますが、産学官、特に産業界に対して広く共用取組を行う、具体的には企業に対するトライアルユース、また有償利用、これは成果専有利用も含みますけれども、こういった利用フェーズの取組を行う機関に対して、文部科学省から施設の運転費、あるいは人件費、利用体制の構築費といったものを補助しております。
 対象施設としては、共用法対象の4施設に次ぐような大型あるいは中型の施設が主な対象となっておりますが、幾つかの機関においては、学内、あるいは研究科内の汎用機器を集約した施設群全体を支援対象としているようなケースもございます。
 本日、担当者の方々に来ていただいている4機関におかれては、研究開発プラットフォームの構築という方向性を見据えて、様々な取組を実施されている、また、次なる方向性について検討されておりますので、ぜひ本日、ヒアリングの場で御議論いただければと思います。
 事務局からの補足説明は、以上でございます。

【二瓶主査】  それでは、早速各機関からのヒアリングに入りたいと思います。本日は、先端研究施設共用促進事業採択機関の中から、京都大学、東京工業大学、慶應義塾大学、理化学研究所の4機関の皆様においでいただいております。
 進め方でございますが、まず各機関10分間御説明をいただきまして、その後20分間の質疑をさせていただきたい、そう考えております。
 それでは、まず京都大学から御説明をお願いいたします。

【木村教授】  京都大学の木村と申します。檜木准教授と二人で参りました。
 それでは、説明させていただきます。我々の事業の名称は、イオン加速器とマルチスケール材料評価装置群による産業支援であり、通称、ADMIREと呼んでいます。その取組につきまして御説明したいと思います。
 我々の施設は2つからなっています。一つはDuET、これはイオン加速器でございます。もう一つは、MUSTER施設、これは原子の直接観察から材料の強度試験に至るマルチスケールでの材料評価が可能な様々な装置を含んだものでございます。このDuET、MUSTER装置でこの事業を展開しております。
 事業の目的です。DuETとMUSTER、それと応用技術、ソフト技術、これを広く社会に提供するため、施設共用を促進して、エネルギー材料の新規開発と保全研究のための産業利用を支援することを目的としております。
 もう少し俯瞰的な目的としましては、先ず、学術の発展と社会貢献を行いたいということ、次に、これを通じて、人材育成をしていきたいということを念頭に置いて実施しております。
 事業の成果につきましては、この表に示したとおりでございます。
 今回は、我々がなぜこの事業を実施しているかについて述べたいと思います。この事業のメリットにつきましては、まず、先端研究施設を維持するということが非常に重要でございます。安定収入(事業費、有償利用)による施設の維持と、利用頻度の増大に伴い装置維持管理が徹底されてきたということはメリットでございます。また、社会的ニーズ、あるいはシーズ、その情報の取得ができるようになったことがあげられます。それと、この事業を通じまして、民間との共同研究の機会が増加した点、目標とするイノベーションをイメージする、つまり具体化するための機会が、特に、若い研究者に増えたということで、これも大きなメリットと思います。さらに、最近、大学の重要な役割の1つとされている社会貢献を具体的な形で見せることができるということです。以上は、事業を行う我々、事業者側から見たメリットということになります。
 この事業の実施にあたりまして、我々は様々な工夫をしてまいりました。ここに示したように、支援体制を充実させたり、課金システムを作ったり、あるいは、他機関との連携活動を行ったり、あるいは震災復興、広報活動などの様々な取り組みを行ってまいりました。
 しかし、やはり問題点がございます。今日はその問題点を中心に、お話しさせていただきます。
 まず、事業を実施するに当たり安定して継続することが、非常に重要になってまいります。先端研究施設の維持費の安定的な確保がやはり不可欠です。それと、人件費、これも同様でございます。
 また、そういった経費を除いた観点での人的資源、これは、先端研究施設の効果的な運用には、それに精通した特定教員、博士を持った人材が不可欠でございます。しかしながら、やはり若手研究者のキャリアアップを優先させなければいけないという問題があります。また、派遣研究者を我々は雇用しておりますけれども、技術力が低いために、我々がその技術教育を事前に行う必要があるということもございます。これは大きな目で見れば、国内技術力のボトムアップということで、非常に好ましい事と考えております。
 次に、先端研究施設の進化についてですが、我々は常に先端性を維持していかなくてはいけないということです。また、先端施設の運転制御系のソフトのバージョンアップなども並行して行っていかなくてはいけない。これも結構大変です。それと、先端施設の周りの周辺機器、これの拡充も必要になってくるということです。
 それと、最後に指摘しておきたいのは、本事業と自身の研究との両立です。多くの場合、我々研究者の研究内容と事業の研究との両立というのは、正直言いまして、困難な場合が多いです。ですから、若手研究者のキャリアアップに繋げることは簡単ではないということです。さらに、産学連携研究活動に対する評価が、我々から見ますと、それほど高くはないのではないかと危惧しております。
 そこのところをもう少し、この場を借りて示したいのが、大学の組織運営と産官学連携の在り方です。中長期的には、連携業務に特化した職種及び職位が必要であろうと思います。すなわち、大学組織の改編というものが必要になってくるのではないかと思います。例えば、連携業務の専門家による分野の新設であり、そのためにはその専門家を育成する必要が出てまいります。具体的にはカリキュラムとして、「知」・「価値」創造学といった、一種の学問分野というようなものを立ち上げる必要があるのではないかと思います。
 同じように、イノベーション「創出法」を創出を経験した研究者から学ぶということは、若手の教育には非常に効果的だと思います。例えば、そのきっかけとか、間接的な効果、測定機器、偶然、こういった因子を解析する「イノベーション創出学」、こういったカリキュラム、講義というものも出てくるでしょうし、大学や部局としての役割、教育と部局の組織、そういったものが変わっていくだろうと思います。
 一方、短期的に見ますと、産官学連携業務は現職の教員が実施することになりますので、各教員の活動方針でエフォートが決まってまいります。教員の活動方針を決定するのは、各自の現行の研究に対する意欲と連携研究に対する興味、そのバランスに依存するということと、やはり何と言いましても、各自のキャリアの将来構想ということが問題になってまいりますので、大学あるいは部局として、こういった仕事に携わっている若手をどう育てていくかということも、重要なことだろうと思っております。
 現状では、この事業では、単発的な課題の即時解決に向けて、評価や分析を進める場合が多いのが実情です。その単発的な問題解決がイノベーション創出に結びつくかどうかは、正直言って、確かではございません。しかし、そういった研究が実際に社会貢献になっているということは事実ですので、研究のレベルに応じた研究プラットフォームが望まれると考えています。
 研究開発プラットフォームの構築に向けて、産官学という観点から考えられるプラットフォームの特徴を挙げてみました。
 まず、課題達成型のプラットフォームという考え方がります。ここでは学術や研究基盤を社会貢献に活用するためのシステムや舞台といったものです。また、技術先導型プラットフォーム、これは世界一、あるいは世界唯一の科学技術を先導し続けるための学術研究基盤を発展させるためのシステムや舞台、こういったものも不可欠です。それぞれ、特色を持ったプラットフォームで、固定化しないことが必要であろうと思います。このプラットフォームの中での役割の中にネットワークの構築があげられます。そのネットワークの中核となる機関の最大のミッションは、効果的な方法論を生み出すための機能と考えております。また、この事業におきましては、地域の特殊性というものが非常に大きく出てまいります。そういった地域の特殊性をそれぞれの中で情報を管理するということも必要になってくると考えられます。
 もう少し、プラットフォームに関連して申し上げますと、企業人材の教育を行うためのプラットフォームも必要と思います。また、プラットフォームの形成によって、罹災地の普及・復興、特にネットワークを形成することによって、これが促進されると予測されます。ただし、これを実際に運営するにあたりましては、システム制度設計というものを全国共通のものにして、事業を円滑に運用することが望まれます。
 プラットフォームの形成にあたりましては、やはりネットワークというものが非常に大事になってくると思っておりまして、ネットワークの目的をここに掲げております。まず、利用者への共用情報伝達の促進、それと効率化、さらには、多角的な分野に応用するための「展開の場」の提供、先端技術イノベーション維持、領域の開拓、あるいは人材育成といったものになるかと思います。
 京都大学では、平成19年度には名古屋大学と連携関係をとりまして、平成20年度には課題採択ワンストップ方式を導入しています。昨年度は、連携を6大学にまで広げまして、今年度は、全国先端研究施設共用促進事業連携シンポジウムを7月末の二日間で開催するという運びになっています。
 課題達成型及び技術先導型のプラットフォームということで、今現在、情報、ナノテクといったプラットフォームがございますが、「知」から「価値」への転換というものを促進するイノベーションを加速するためのプラットフォームでなければなりません。大事なのは、やはりイノベーションというのは、ボトムアップから出てくる場合が多いということでございます。ですから、様々なプラットフォームの形態があるかと思いますが、機能と役割分担、特殊性・独自性の尊重などが重要と思います。要するに、柔軟なシステム作りが必要と思われます。
 例えば、共用プラットフォームという考え方がございます。これは先端施設及び学術・知識基盤を共用しまして、研究の効率化をするためのプラットフォームという考え方でございます。この中で連携事業やいろいろな柔軟なプラットフォームの形態が生まれてくると期待されます。
 最後にまとめてみますと、本事業におきましては、先端研究施設は学術や研究の基盤であります。と同時に、技術革新の基盤でもございます。科学技術の先端性を維持し続ける必要があります。
 民間との共用促進事業は「知」から「価値」への返還(イノベーション)を加速します。
 事業体のネットワークにより、震災復興・復旧を支援・加速する活動になると考えています。
 大学の社会貢献を直接的に示せるということもございます。
 また、若手研究者の研究領域の拡大や研究に対する意識の変革をもたらし得ると思います。
 以上です。

【二瓶主査】  ありがとうございました。
 ただいまの御説明に関して、質問、御意見、どうぞ御自由に御発言ください。

【西島委員】  有償利用が非常に増えているというのは、大変事業としてはうまくいっているのかなと思うのですが、計画に対して実績が増えてきているということが、4ページの数字で見ると、増えていますが、施設全体とすると、本来的な学術研究に対する負担になるのではないですか。

【檜木准教授】  件数がものすごく増えておりますが、もともと計画している時間に対しては、それほど増えてはいません。計画よりも増えてはいますが、件数に関しましては、細かい時間で個別に申請される方が昨年度は非常に多いため、件数だけは大幅に増加しました。利用時間は若干増えているのは増えていますが、トータルの時間としては、それほど変わりありません。
 ただ、御指摘のとおり、やはり企業の方の利用が増える部分もありますので、込み合っている装置に関しては、例えば、前の週の3日間だけ割り当てるだとかというような、そういった工夫はさせていただいております。

【木村教授】  また、派遣研究者を平成22年度に1名増やしてございます。

【西島委員】  わかりました。

【長野委員】  よろしいですか。

【二瓶主査】  どうぞ。

【長野委員】  資料2-1の9ページ目で、問題点をいろいろ御指摘いただいておりますけれども、いわゆる研究との両立というところで、常勤の職員の研究、それから、事業研究との両立は非常に困難。つまり、いわゆるキャリアアップに繋ぐというのが非常に難しいという御指摘をされまして、これはやはり実際行っていく上においては重要かなと思います。
 その解決策として提案されているのは、連携業務に特化した職種、職位が必要というのも、1つの考え方ではないかということなんでしょうか。

【木村教授】  はい。

【長野委員】  もう少し、この点について詳細なご説明をお願いいたします。

【木村教授】  ここで申し上げたいのは、大学の中で産学連携事業にかかわる研究をする者に対する評価を上げていただきたいことで、それを具体化するためには、やはり、大学あるいは部局として、その仕事を勤務として遂行する部署がないといけないと考えております。

【長野委員】  私も大学の教師ですが、そうすると、人事の問題になってきますか。

【木村教授】  そうですね。

【長野委員】  個々の大学における評価ということですか。

【木村教授】  はい。大学あるいは工学部などの部局のカリキュラムとして、例えば、ここにあるような講義が成り立ち得るのではないかと思います。いろいろ新しいことを発見するということと、やはり、言ってみれば、科学技術の歴史のようなものになってしまいますけれども、ただ、イノベーションがどんな形で生まれてきたのかということを若い人に教えるということは重要だと思います。そのためには、部局の組織、具体的には新しい分野を新設することが必要になろうかと思います。

【長野委員】  カリキュラムとしては、確かに成り立つと思います。おそらく指摘されているのは、こういった支援をやるのは、相当にそれなりの能力を持った方がなさる。一方においては、しかし、御自身の研究だけに時間を避けないので、連携に割く時間が非常に長いので、研究レベルとしては、ほかの人と比べた場合には、いわゆる正規の職を得るのにちょっと残念ながらということが、可能性としては非常に起こり得ると、その辺のところをどうするかという問題だろうと思います。カリキュラム云々は、多分、教える上においては何ら問題はないと思うのですが、そのような連携業務は重要である一方で、研究レベルと、それから、その連携での研究の評価といいますか、そこが非常に難しいかなと。まだ、これはすぐ回答が出るわけではないので、これはこれで結構です。

【福嶋委員】  同じようなことを質問したかったんですけれども。

【二瓶主査】  どうぞ。

【福嶋委員】  評価が低い傾向にあるという点ですが、その評価はだれがしているんですか。

【木村教授】  具体的に言いますと、例えば、我々のところですと、研究所長が2年に一度、個人評価を実施しております。

【福嶋委員】  そこを変えてほしいということなんですか。

【木村教授】  そういうことではありません。要するに、この事業を行うことで、将来専門職に就けるような仕組みがあれば、若い人たちのキャリアアップにつながることが必要です。
 この事業では、様々な研究テーマがあり、本人の研究に全く関係のないテーマに対しても時間を割かれるわけです。もちろん、自分の研究に直結しているような課題の場合には、そこに集中してやらせるようにしています。好ましい結果になった例がございまして、これまで博士研究員でいた女性が、この事業で興味を抱いた研究成果をある学会で発表した結果、北大の助手に採用されたという例もございます。そういったことがずっと多く続くということが好ましいのですが、なかなかそうもいかないということがございます。従いまして、例えば、イノベーション工学というような分野ができたとしますと、産官学連携に直接に係る学問分野ができ、新しいポストが増え、若手研究者のキャリアアップに直接貢献できると思います。そういったことでございます。

【檜木准教授】  現状では、どうしても特定教員というような形でしかとることができませんので、やはりこれは非常に価値があることなので、できれば「特定」のつかない教員という形でとりたいのですが、なかなか全体のコンセンサスとしては、そこまでするのは難しいというのが現状です。
 ただ、我々のところでは特定教員という形でとらせていただきまして、できれば来年度に特定准教授という形で採用することができれば、1つの分野という形に取りかえることができますので、研究所としては、ある程度そういった方向性で打ち出せるのかなというような気がします。ただ、全学的な正式なパーマネントな職種としてはなかなか難しいというのが現状であります。

【二瓶主査】  すみません、今おっしゃった特定准教授というのは職位なんですか。

【檜木准教授】  職位になります。一応大学として認められているものです。

【二瓶主査】  大学としてお決めになっていると。

【檜木准教授】  はい。

【西島委員】  任期があるのではないのですか。

【木村教授】  任期はございます。

【吉澤委員】  東大だと、特任教授、特任助教といっている、それに相当する職位ですよね。

【木村教授】  そうです。

【吉澤委員】  御発表を伺っていて、大きく2つに分けられて、この後、ほかの御発表もあるんですけど、この事業の制度やコンセプトや問題点について、随分力を入れて御発表されたと思うんですが、そこのところはこれから皆さん議論すると思うんですが、京都大学でされている、この事業自身の、資料2-1の21ページの表や課題数を拝見して、全体に占める比率や大きさなど、その辺がよくわからなかったんです。私は中性子の専門家で、日本原子力研究開発機構の原子炉を使って大学共同利用をやっていますが、それだと、1つの分光器で30件から50件の課題を毎年採択いたします。マシンタイムとしては、全国共同利用のスピリットですので、50%から80%は外部に出すというのがデフォルトになっています。その辺の比率に対するお考え、例えば、お持ちになっている装置をこの事業に対して5%を使っているのか、80%を使っているのかで、全然印象というか、位置付けが違ってくると思うんですね。

【木村教授】  装置によって違いますけれども、大体この事業に関しては、3割程度と思います。

【檜木准教授】  一番多い場合で50%を超えますが、平均して40%から50%程度です。

【吉澤委員】  そこまでいっていますか。それは多いですね。

【西島委員】  僕の最初の質問もそこなんですよ。4割であれば結構多いですよね。2割ぐらいだと思っていました。

【吉澤委員】  私も実は5%くらいかなと思って聞いていました。

【伊丹委員】  そのような全体の規模感に関するデータが示されないと、よくやっているのかやっていないのか、判断できません。例えば、インプットとして、国の予算はどれぐらいこの施設全体に投入され、人数はどれぐらいアサインされていて、その中で学生がどれぐらいいて、マシンタイムとして何%ぐらいこれに使っていて、そういうトータルの数字の中で初めて実態が浮き彫りになるのではないでしょうか。

【西島委員】  共用する事業の個々の評価の中で、この数字は絶対もう出ているんですよね。それで、それを踏まえた上での問題点に注目して、今日は御説明をされたということですよね。

【伊丹委員】  調べれば出ているのはわかるんですが、その資料が冒頭にないと、こういうものの有効性を、10分、20分の議論でわかってもらおうというのはなかなか難しいですよね。

【二瓶主査】  ほかにはいかがですか。どうぞ。

【野田委員】  資料2-1の21ページを見ているんですが、有償利用というのは、基本的には非公開事業というふうに考えてよろしいですか。

【檜木准教授】  非公開の割合のほうが多いのですが、公開のものもあります。料金が違いますので。

【野田委員】  料金が違うわけですね。そうすると、有償利用が増えているということは、非公開が増えているわけではないと。

【檜木准教授】  両方とも増えていますが、会社ごとに異なりまして、最初から出さないというところもあります。

【野田委員】  非常に難しいのは、企業によっては、名前すら出したがらないところもあるんじゃないかと思いますので、それに対して、どういうふうに成果を訴えていくかというのは、なかなか難しい問題があるのかなと思うのですが。

【木村教授】  そうですね。公開できないのは、ほんとうに大変ですね。

【伊丹委員】  しかし、公開できないのは企業名とか研究内容であるというのは非常によくわかるのですが、こういうデータの場合は、公開・非公開両方含めたものが出てこないと、どれぐらい使われているかわかりませんよね。公開可能なものに限定された理由は何かあるのですか。
 公開というのは、データとして集めて、アグリゲートの数字すら出してはいけないという取り決めなんですか。

【木村教授】  いえ、件数は特に問題はないです。

【竹上基盤研究課課長補佐】  平成24年度のこの事業全体の予算としては、28機関合計で約13億円となっています。今日ご発表していただく機関については、京都大学が約6,000万円、東京工業大学も同じく約6,000万円、慶應大学が約3,000万円、理化学研究所は施設の規模が大きいので約2億5,000万円となっています。各施設ではこのような予算支援を受けて産学官に対する共用取組を行い、共用率は施設によって異なりますが、どの施設も全稼働率のだいたい3割から5割ぐらいを外部共用に供しているという状況でございます。

【西島委員】  有償利用というのは、トライアルユースの次の段階としての位置づけなんですよね。

【木村教授】  はい。

【西島委員】  少なくともトライアルユースが終わって有償利用。その有償利用の中で、成果公開と非公開という区分があり、その区分に応じて値段が変わってくるということですか。

【木村教授】  施設使用料の値段が変わってまいります。

【伊丹委員】  どれぐらい利用料は違うんですか。

【檜木准教授】  実はそれほど変わりませんが、成果非公開に関しましては、人件費を余分に付けておりまして、その部分が、1割、2割ぐらい変わるだけでございます。

【吉澤委員】  すみません、よろしいですか。

【二瓶主査】  どうぞ。

【吉澤委員】  この21ページで、当初計画目標と実績を出されておられますが、これは事業の運営のやり方として、先端共用事業に採択されているので、毎年採択された結果に基づいて、これだけの規模を実施しますということを策定されて、それに対して実績を報告されているということですか。普通の利用だと、当初計画は特段必要ではなく、課題が全国からたくさん来れば来るだけ結構ということじゃないかと思うのですが。

【檜木准教授】  これは計画書の数字であります。

【吉澤委員】  それから、トライアルユースが21年から増えたのは、この事業に採択されて開始されたという理解でよろしいんでしょうか。

【檜木准教授】  トライアルユースの制度自身が、21年から始まりました。

【吉澤委員】  それは、この事業の一部の機能ですか。

【檜木准教授】  そうです。事業が先端研究施設共用促進事業に変わったときに、トライアルユースというのが始まりました。その前は、新規利用拡大と戦略という2分野だったのですが、21年に関しましては、前の課題の継続のものが入っているので、今回そういう形になっております。

【吉澤委員】  着実に3年間で件数が増えているというふうに、この表からは読み取れるのではないでしょうか。それから、突然、去年、今年と有償利用が増えているのには、何か理由はございますか。

【檜木准教授】  実は1つの会社で4件、別々の課題を出されたところなどがあり、実際の予定しているマシンタイムで申し上げますと、それほど極端に増えたわけではないんです。

【吉澤委員】  そうですか。

【檜木准教授】  ただ、企業によっては、そういうやり方や、あとは、同じ会社の中で、評判を聞いて、別の部署に回していただいたとか、そういうようなことがあるようです。

【吉澤委員】  先ほどもおっしゃっていましたが、件数ベースもいいですが、マシンタイムに対する総時間に対して何時間それぞれのフラクションがいっているかというのも、重要な分析項目ですね。

【檜木准教授】  ただ、有償利用の契約自身も着実に増えていますので、マシンタイム自身も増えております。

【宇川委員】  1つだけよろしいですか。

【二瓶主査】  どうぞ。

【宇川委員】  今後に関してどのような見通しを持っていらっしゃるのか、もし御質問させていただければ。
 トライアルユースと有償利用という枠組みで動いてきて、3年間順調に伸びてきているとのだと思うんですけれども、今後、ある種、考え方として、それなりの考え方と設備があって、それから、利用する側も、それを理解して、いわば、安定期という言い方はよくないと思いますけれども、こういう形で成果を上げられるような状況になってきたのかどうか、そこをちょっとお伺いしたい。

【木村教授】  ユーザーが定着しつつあるというのは、最近感じています。ただ、1つの課題が終わりますと、有償利用になっていきますので、それが年度ごとに発展するような形にしていきたいとは思っています。
 それと、新しいユーザーを開拓することも重要です。まだ、やはりこの事業を知らなかったという中小企業の皆さんもございますので、開拓も進むだろうと考えています。
 ですから、事業の規模としましては、これくらいの規模で何とかやっていけたらなというふうに考えています。

【二瓶主査】  どうぞ。

【野田委員】  資料2-1の9ページなんですが、要するに、事業の安定した継続性なんですけれども、こうした支援を受けて、それから、課金収入があると。その中で、人件費は別として、装置は結構お金がかかると思うんですよね。それだけで十分に維持費を確保できるかどうか。要するに、目標としてどういうふうに考えているのか。
 例えば、人件費は、国からの支援で何とかなると。ただ、装置のメンテナンス、それから、それにかかる消耗品、フィラメントの交換など、いろいろあると思うんです。そういったものにも結構お金がかかると思うんですが。

【木村教授】  これまでの実績から言いますと、やはり人件費をまず優先して、装置維持は後回しになってしまうという感じです。ただ、外部競争資金を流用するなど、そういったことで補っているというのが実態です。

【檜木准教授】  この事業だけだとやはり難しい部分もありますが、我々のところは全部施設利用料を設定しておりますので、他事業も含めて、ある程度何とか維持することは可能だと思います。ただ、それをさらに先進性を維持しようと思うと、やはり何らかのことを考えないといけない、その点が非常に難しいところであります。

【二瓶主査】  ありがとうございました。時間が来てしまいました。
 今回お招きいたしました施設は、分野ごとでそれぞれの特徴を考慮し、かつ、かなり優等生、トップランナーをお招きしておりますので、それと、特にお礼を申し上げたいのは、制度の仕組みに関して、大学におけるこういう施設、制度、運用に関する課題、非常に適切な、私どもにとって参考になる御指摘をたくさんいただきました。大変ありがとうございました。お礼申し上げます。
 それでは、次に進ませていただきます。次は、東京工業大学でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【佐々木副室長】  おはようございます。東京工業大学学術国際情報センター共同利用推進室の佐々木と申します。本日は、本学の共用促進事業を紹介させていただく機会をいただきましたこと、非常に感謝しております。よろしくお願いします。
 本日、私ども、10分の中で、私どもの共用促進事業につきまして前半お話しさせていただいた後に、スーパーコンピュータの産業利用と本学のTSUBAMEの役割といったところにつきましてお話しさせていただければと思っております。このアジェンダに基づきまして進めさせていただきます。
 TSUBAME2.0、東工大のスーパーコンピュータでございますけれども、2.0は、平成22年11月に稼働開始をいたしまして、理論性能として2.4ペタフロップスといったところで、現時点で大学が保有するスパコンでは国内最速となっております。ワールドランキングにおいても、リリース、稼働当初は世界4位、現状は、先月のランキングで14位といったところでございます。
 TSUBAMEの特徴といたしましては、民生品(コンシューマ製品)による構築といったところが挙げられまして、インテルCPUとNVIDIAのGPUの混合アーキテクチャによる構成でございます。
 先生方がいらっしゃる前で非常に僭越ではございますが、資料2-2の4ページ目、スーパーコンピュータの性能向上につきまして、分析させていただいた図でございます。ナンバーワンの世界一のラインがここでありまして、地球シミュレータが2002年、40テラフロップスで世界一を取りました。現状、2012年でございまして、先月のランキングが、BlueGene/Qで、16.3ペタという形でございます。東工大、理論性能2.4ペタ、Linpack性能で1.19ペタといったところは、ここら辺のラインに位置付けられまして、京の約5分の1程度になります。それと、将来的には、また世界一とか、ワールドランキングに輝くような3.0といったことをもくろんでおる次第でございます。
 先端研究施設共用促進事業におきまして、本学といたしましては、TSUBAMEの提供する計算資源全体の10%を共用促進のトライアルユースに供出しております。また、「みんなのスパコン」とうたっているスーパーコンピュータでございますので、学外に対して、共用促進も含めますけれども、全計算資源の30%を学外に提供して運営しております。
 私どもの事業の実績につきまして、7ページの表で述べさせていただきます。平成19年の事業参加、採択いただいた後に、順調に利用していただく課題数というものが伸びております。昨年末時点で、既に90の課題が採択されております。
 平成21年度より私どもも有償利用を開始いたしまして、有償利用の中では、成果を公開していただく課題と成果を開示しない課題といったものが存在しております。
 そのタリフでございますけれども、トライアルユース、無償利用といったところと、成果公開1口10万円、成果非公開1口40万円といったようなタリフをもって企業にご利用いただいております。成果非公開にあたりましては、企業名だけは開示させていただくという形で、納得していただいております。
 自主事業化の取組という形でお話をさせていただきます。本事業の最終的なゴールとして、今まで掲げられていたのは、自主事業化といったところでございまして、その事業化に向けて、先ほどのタリフのような形で有償利用といったところの仕組み作り、また、ここに掲げますような体制作りもしっかりと行ってきております。実際、本学の青木教授を室長にし、この共同利用を推進するような組織をつくっております。この中で、私ともう1名が補助金の雇用という形になっております。また、学内では、様々な契約行為並びに、そういった渉外行為に関しましては、研究推進部等の横連携も踏まえ、うまく機能しております。
 有償利用の推移でございますけれども、平成23年度におきましては、収入といたしまして、1,500万円を超えるような有償利用収入がございました。本年度におきましては、6月末、第1クォーターを終わった段階でございますけれども、既に昨年度の年間実績を超えるようなお申し込みをいただいております。
 本年度の施策とアクティビティにつきまして述べさせていただきます。従来、戦略分野利用推進といったところで、ここに掲げます5つの分野と新規利用拡大という2つの大きな柱の中で、トライアルユースというものを公募してまいりました。本年度より、商用アプリバンドル型トライアルユースというものを新設させていただきまして、新たな施策として動かしております。
 こちらは、次のスライドにございますけれども、一般にスーパーコンピュータを御利用いただく企業におきましては、従来であればイノベーターやアーリーアダプター、ちょっと言葉を持ってきましたけれども、実際、企業自身でソフトウェアをお持ちのお客様、また、既に企業でスーパーコンピュータをお使いになっているというようなお客様が、新たにチャレンジするというようなケースを、既存の施策のターゲット層として認知しておったんですけれども、この施策は、スーパーコンピュータで動作する商用のアプリケーション、幾らトライアルユースとして施設を無償で提供しても、その使うためのソフトウェアが非常に高価なものであるといったところで、使用を断念なさるお客様が多かったということを踏まえまして、そこの部分も支援しようということで、文科省の支援をいただき、この施策を始めたところでございます。
 現状、ソフトウェアの調達で、この後に、下期の定期公募といったものをかけている次第でございまして、この中に何件かが新たな施策を利用なさるユーザーがかかわっていらっしゃるという形になっております。
 また、私どもといたしましては、この事業全体を訴求する、また、私どもの取組を広く企業の皆様に訴求するために、プロモーションアクティビティを非常に活性化しております。既にこのような学会並びに設計・製造ソリューション展というような民間のコンベンション等に参加して、この事業並びに本学の取組といったことを紹介させていただいております。
 続きまして、スパコンの産業利用とTSUBAMEの役割と題しましてお話しさせていただきます。私ども、東工大といたしまして、スーパーコンピュータの産業利用を推進するといったところで、大きな責務を有していると思っております。まず第1に、高性能なスパコンを保有する機関として責務を持っています。それは、第4期の科学技術基本計画の中で、「知」の資産を創出し続け、科学技術を文化として育む国という理念をうたわれております。こういったことを形作る機関として協力しなければいけないということで、積極的にスーパーコンピュータを共有化するという責務を持っていると思っております。また、教育機関として、学内の人材育成はもとより、産業界の人材育成にも貢献しなければいけないといったところもございますし、何よりも、「みんなのスパコン」を標榜する機関といたしましては、スーパーコンピュータを問題解決の道具として活用していただく「場」の提供といったものが、私どもの一番の責務というふうに考えております。
 その中で、TSUBAMEの特徴といったものがございます。先ほど申しましたインテルCPUを使ったようなところがございますので、企業の既に持っている資産との親和性が高いといったところがございますし、そういったところで、利用可能なソフトウェアが豊富といったところがございます。
 また、京を代表とする我が国のナショナルフラグシップのスーパーコンピュータ、地球シミュレータもそうですが、そういったスーパーコンピュータとの多様性といったものも担保していかなければいけないと思っております。
 また、このTSUBAMEの特徴でありますGPUコンピューティングを牽引していく役割というのも担わなければいけないと思っております。
 この図は、京を中心とするHPCIと私どもの役割の違い、立ち位置の違いといったものを図示しようとしている図です。こちら、フロントランナー、先進的ユーザー、一般的ユーザー、この部分は、HPCIの中で用いられている言葉をお借りしてまいりました。フロントランナーの方々、国家的戦略課題遂行のためにシーズ先行型、技術先行型の研究開発サブプラットフォームとして、実際この役割を担うわけでございますけれども、そのほかにスーパーコンピュータを産業利用として利用するという目的の中におきましては、企業の先進的研究といったところ、並びに、実際、今までスーパーコンピュータを使ったことのない方々にスーパーコンピュータを使っていただく機会を提供するというような、広い分野の点にもあると思っております。そういった意味合いで、情報基盤分野におきましては、シーズ先行型研究開発サブプラットフォームにあたりますHPCIの領域と、ニーズ対応型の科学技術イノベーション推進、企業内においてのイノベーション推進を促進するための共用促進事業の領域というふうに分けられるものと思っております。
 これを言葉で参りますと、私ども、やはりHPCIのアクティビティと相互補完的に日本国全体の企業のスーパーコンピュータの利用に関するイノベーション創出に役立っていきたいというふうに考えておるところでございます。
 最後、まとめの資料でございます。本学の共用促進事業でございますけれども、ようやく事業名でありますペタスケールといったところが、2.0によって実現されました。ただ、企業の高度化する利用ニーズといったものは、まだまだ増加傾向にあります。その中でも、企業の利用というものが、私どもも含め、この事業全体の利用、または、これの活用といったものは根づきつつ、また浸透しつつあると考えております。
 私どもは、今後、これら企業の高度化するニーズに対応するために、計算資源の提供にとどまらず、まず教育の機会並びに環境を継続的に提供してまいります。また、新しいユーザーセグメントに対するこの事業全体の効用の訴求を含め、産業界の先進的なニーズに対応できる計算資源とサービス環境を拡充してまいる所存です。
 ご清聴ありがとうございます。以上です。

【二瓶主査】  ありがとうございました。
 それでは、ただいまのお話に関して、御質問、御意見、お願いいたします。

【西島委員】  大変よく産業利用のほうも進んでいって、いい成果が出ているのかなと思います。
 14ページの商用アプリバンドル型トライアルユース、これはトライアルユースの場合ということなんですか。

【佐々木副室長】  はい、そうです。

【西島委員】  トライアルユースから、成果専有というか、有償利用になったときは、また違うわけですね。

【佐々木副室長】  実際にそういう夢を持っていることは確かですけれども、現状はそのようにはいっておりません。

【西島委員】  使い始めているときは、それなりのお金はもちろん払っているわけで、そういう考え方でよろしいわけですね。

【佐々木副室長】  はい。それは、ベンダーのビジネスモデルを壊さないというようなことを前提にということです。

【西島委員】  トライアルユースとして、その先に産業利用するときに、例えば、スパコン京が動き始めたので、そこから先、スパコン京のほうに移っていったというような、ケースはあるのですか。

【佐々木副室長】  私どものスパコンを利用なさったお客様が、今、京のほうの課題をなさっているという話も聞きます。また、私どものトライアルユースを終わった後に、約6割のお客様が、継続して有償利用を御利用いただいているという実績もあります。

【西島委員】  わかりました。

【二瓶主査】  今のお話ですが、商用アプリの利用権を、この補助金の中で調達をして、それを開放しようと、そういうもくろみですね。

【佐々木副室長】  はい。

【二瓶主査】  大変興味あるというか、今後の方向づけとして重要だと思うんですが、従来は、大学の教員が開発したプログラム、それを民間にどう使っていただくかというのが主流だったように思うんですが、現在、そのバランスはどういう関係にありますか。

【佐々木副室長】  民間企業での利用におきまして、本学の大学の先生が開発したソフトを、この事業の中の補助金を使って使うということはございません。

【二瓶主査】  ああ、そうですか。

【佐々木副室長】  それで、逆に、東大先端研が開発したのを、あるベンダーが利用支援という形で担いでいるものを御利用なさるというようなケースは多々あります。

【二瓶主査】  なるほど。そうすると、むしろ産業利用の中心は、こういうやり方になりそうですか。

【佐々木副室長】  実際、企業が既にお持ちのソフトをお使いになるというのが、今までの主流でした。

【二瓶主査】  なるほど。

【佐々木副室長】  それは非常に先進的でユニークなものであったり、勉強になるケースが非常に多うございました。また、そこは、逆に、商用アプリケーションの領域ではない、要するに、企業独自の非常にニッチな領域であるというようなことから、企業自身が開発なさっているというケースが非常に多うございます。

【二瓶主査】  どうぞ。

【福嶋委員】  とってもうまくいっていて、問題点があるのかなという、最後はそれを聞きたいんですけれども。先生方の研究活動を圧迫するとか、そういう問題がこの場合はないのかという問題と、それから、逆に、それがもしあまりにもなさ過ぎると、こういうことをやることによって、今度はフィードバックとして、先生方がこういうことをやることによって、自分の研究に生かすというような、そういうやりとりがむしろなくなって、問題があるんじゃないかなという気もしたんですけれども。そういう意味で、問題点も含めて、まずは人材の問題で、こういう場合は、研究活動に対する問題はないわけですか。

【佐々木副室長】  先ほど体制のお話をさせていただいたかと思うんですけれども、共同利用推進室というところがこの事業の中心となっておりますけれども、この中で教員は、青木教授と渡邊准教授でございまして、私は職員での採用でございます。ですので、そういったことに関する問題はあまり生じておりません。
 ただ、持ち込まれる問題の種類の多様性といったところが、コンピュータ、実際使うソフト、適用分野といったところが非常に広うございまして、青木先生は流体系とか計算工学系で、渡邊先生は計算機化学、化学系でございます。私は構造系とか電磁界とかをやってきた人間ですので、押さえられるところはあるんですけれども、近ごろのナノの領域の工学系の問題であるとか、そういった問題に関しまして、ユーザー様から逆に教えていただくと言えるようなことが多うございます。

【宇川委員】  よろしいですか。

【二瓶主査】  どうぞ。

【宇川委員】  私もTSUBAMEの共用促進に関して、ここまで詳しい話を伺ったのは初めてで、随分よくやっていらっしゃるなと思って、まずは感心しました。
 それで、まず質問なんですけど、7ページの実績のところなんですけれども、今年度で既に94件応募があるというふうな数が出ているんですが、これはすべて産業利用と理解してよろしいんですか。

【佐々木副室長】  はい。学術は外しています。

【宇川委員】  そうすると、先ほどの質問にも絡むんですけれども、結構な数ですよね。それで、具体的にこれに対応するために、人数的にどのぐらいかけていらっしゃるんでしょうか。教員は2名程度ということだったと思いますが。ただ、今のお話からすると、研究開発的な面との接点はあまりなくて、ある種、計算サービスを徹底して提供しているというふうに理解しました。それにしても、90件、これからもっと増えていくだろうという予想なんだと思うんですが、そうすると、かなりのFTEをかけないと対応できないと思うんですが、実際どのぐらいかけていらっしゃいますか。

【佐々木副室長】  事務的な対応をする者が3名程度、技術サポートをする者が2名程度、合計5名程度で回しております。

【渡邊特任准教授】  その点について補足させていただきます。
 90件と申しましたけれども、一番手のかかるところが、使い始めのところですので、毎年毎年新規採択課題として入ってくるところでしっかりユーザー教育をしていくと、その翌年度は、たまにはサポートが必要ですけれども、あとは順調に使っていただけている状況です。そういう意味では、ユーザー教育の重要性が本事業では特に顕著になっております。

【宇川委員】  それは個別対応していらっしゃるんですか、それとも、チュートリアル的な、どこかに表がありましたけれども、それを随分やっていらっしゃるんですか。そこでまずは教育していらっしゃるということですか。

【渡邊特任准教授】  おっしゃるとおり、企業ユーザーに対しては、チュートリアル的な対応として利用講習会の受講を必須とさせていただいています。まずログインするところが一番つまずきやすいところですので、講習会にて丁寧に説明しております。

【佐々木副室長】  ほんとうにスーパーコンピュータを使うことが初めてという方々を相手にしておりますので、そこからのサポートと、あと、応募していただくとき、実際どういうことにお使いになりたいのかとか、そこのところのオリエンテーションみたいなところをしっかりやることによって、使い始めてからの誤解等といったことをなくすような努力はしております。

【宇川委員】  わかりました。

【渡邊特任准教授】  ユーザーサポートの件について1点だけ追加説明させてください。
 企業では、これまでは社外に計算機資源を求めるとしった需要はありませんでした。そのため、企業の方は社外に情報を出す際のデータセキュリティについて、非常に気を使いますので、そういうところをきっちり説明して、間違いのないように利用講習会を開催しております。一番可能性が高いのがデータ転送の際の間違いによるデータ漏えい等であり、そういう問題に対して企業は気を使いますので、そういうところのユーザー教育についてはきっちりやっております。

【宇川委員】  最後に1つだけ質問なんですが、21ページあたりで、HPCIとの関係のことを論じておられて、確かに京を見ると、シーズ先行型と言ってもいいのかなと思いますけれども、しかし、HPCIの中には、京だけではなくて、それこそTSUBAMEも資源提供をしていますし、情報基盤センターのところは資源提供をしていますね。現在のところは比較的研究開発面での全国的な共有的な利用が中心だと思いますけれども、でも、その中に産業応用も入っているわけですね。だから、今後の方向性として、このTSUBAMEでやっていらっしゃるようなことを、それぞれ大学独自でやったほうがいいとお考えなのか、それとも、もう少し分野横断的に日本全国共用的にやったほうがいいとお考えなのか、どちらなのか、お考えがあれば聞かせていただきたいんですが。

【佐々木副室長】  多分、運営側の問題と利用者側の問題という視点があるかと思います。私のお答えは、利用者側の視点から述べさせていただきますと、やはり手厚いサポートなり問題解決を企業様が持っている問題にいかに真剣に取り組む姿勢を示すかといったことが、企業のモチベーションに繋がると思っております。そういったところのアクティビティが全体横断的にできるのであれば、横断的であっても構わないと思いますし、それが単独大学の事業としてやるべきであれば、それはそちらのほうがよろしいかと思います。

【宇川委員】  ありがとうございました。

【二瓶主査】  ほかにはいかがでしょう。

【伊丹委員】  アーリーマジョリティまでターゲットを広げられた大学としての目的は何ですか。ユーザーにとっては、民間の高級コンピュータセンターが極めて低廉な価格で利用できるわけだからありがたいと思いますが。大学が何でそこまでやるのかという大きな問題があって。

【渡邊特任准教授】  もともと我々がTSUBAME1.0を――TSUBAMEは現在は2.0ですが――導入した際に、「みんなのスパコンTSUBAME」ということを標榜していました。当時のスパコンは、大学院生とか教員のみが使っているようなイメージだったんですが、大学1年生でも学生証をもらったらすぐにスパコンを使えることを表していました。現在でもそういうふうにどんどんスパコン利用のすそ野を広げようと頑張っております。また別な例を挙げますと、高校生に対するスーパーコンピュータコンテストというのももう20年近くやっております。これは阪大と一緒にやっています。
 スパコンには汎用性という特徴がありますから、使う人を広げることによって、どんどん価値が増えてまいります。そのため、特定の限られた分野のみではなく、広い分野のユーザーに使ってもらってこそ、たくさんの価値が創出されるという考えがあります。

【伊丹委員】  そこはコンピュータの産業の業者としてそれをやりたいのは、非常によくわかる。だけど、大学として、これをどうしてやるのかという不思議です。

【渡邊特任准教授】  うちのセンターとしては、スーパーコンピュータの利用のすそ野を広げることに価値があります。

【佐々木副室長】  あと、事業者のメリット、本事業におけるメリットといったところを集約させていただきますと、本学、またTSUBAME自体の全体のプレステージの向上といったことが本事業を支えているというふうに考えております。お答えになりますでしょうか。

【吉澤委員】  よろしいですか。

【二瓶主査】  どうぞ。

【吉澤委員】  私も話を聞いていて感服したんですけど、ペタコンの京との位置関係や役割分担は非常に明確にされているんだけど、この先端事業を見ただけでも、実はコンピュータ関係はたくさんあって、京に対する差別化、役割分担はできるんだけど、たくさん全国にある様々な情報基盤センターのスパコンの中での、東工大としての立ち位置とか、地域に特化するのか、ある特定の産業やなんかに特化するのか、どういう戦略をお持ちなのでしょうか。例えば、放射光施設などは、そこに行かなければ研究ができないんですよ。ですけど、コンピュータに関しては、アカウントをもらってログインすれば、地球の裏側からだって使えるんですね。そこへどんなお考えをお持ちですか。

【佐々木副室長】  やはり様々なケースがございまして、九州の小倉のお客様がお使いになっているケースもございます。地域性を超えたところで使えるといったところが、やはりコンピュータといったところの利点になると思います。その利点を生かして、他大学の基盤センターもどんどん拡充方向でございますけれども、その中で、それぞれの特色を生かしたサービス提供並びに、私どもはこうやって多様なユーザー拡大というようなことを念頭に置いておりますけれども、専門的な特定分野におけるスーパーコンピュータの利用といったところに特色を持つということも1つの解なのかなというふうに思っておりますし、そういうところになりますと、逆に、知の集約が図られて、また新しいイノベーション創出といったことが可能になるのかなと考えます。

【吉澤委員】  多分そうだろうなとは思ったんです。というのは、ペタコンなんかでも、私の所属する物性研もやっているんですけど、5つある分野の中の1つ、材料科学にしか、計算物質科学にしか関与していないんですね。あとの4つは、物性研にいて、私も見えないくらいに、ほんとうは計算機の利用というのは分野が広いんですよね。
 どうぞ。

【渡邊特任准教授】  他の大学のスパコンとのすみ分けというわけでもないのですが、東工大は工業大学であるため、産業界にOBのコネクションが強くて、本事業に関しましても、OBの方からの多くの支援をいただいているという特徴があります。
 あと、もう一つ、うちの大学が産業利用に非常に力を入れていくことが可能になった理由の1つとして、この共用促進事業の補助金により、共同利用推進室という体制や、有償利用制度、特に成果非公開制度などを作れたことが挙げられます。実は6年前まで学内利用施設だったため、そういう制度的なものが5年前までは全くありませんでした。この共用促進事業をやることによって、2年前からでしょうか、全国共同利用・共同研究拠点にもなり、そういった外部への計算機資源の貸し出しができるような体制が整ってきました。この体制を作るきっかけとしても、実際に産業利用ができている理由としても、共用促進事業の存在が非常に大きいと思います。
 体制がないところから新たに貸し出す場合は、やはり体制をつくるのに3~4年から5年ぐらいはかかりますので、現在の体制を今後も維持し続けていきたいと思っております。

【二瓶主査】  ありがとうございました。
 少し時間が詰まってまいりましたので、以上とさせていただきますが、スパコンに関する、スパコンの産業利用という分野で、まさにトップランナーでいらっしゃるお話を伺えて、大変勉強になりました。ありがとうございました。

【佐々木副室長】  ありがとうございました。

【二瓶主査】  それでは、次に、慶應義塾大学からプレゼンをお願いしたいと思います。よろしくお願い申し上げます。

【松尾センター長】  慶應義塾大学の松尾光一と申します。よろしくお願いいたします。
 私どもの共用促進事業は、Keio-med Open Access Facility(慶應医科学開放型研究所)というものを対象にしております。学内の、特に医学部ですけれども、共用施設全体を対象とするもので、具体的な現状をお話しします。平成22年10月から始めております。その三本柱は、形態解析・オミクス・疾患モデルです。
 それで、Keio-med Open Access Facility、次のページですけれども、これは平成20年度に共同利用・共同研究拠点という制度で立ち上げたものです。これにはお金は出ておりませんが、こういう体制を作ったということで、非常に意味があったと思います。どういうものかと言いますと、赤く示してある下のほうの共同利用研究室が医学部に昔からありました、10年以上、何十年か続いてきたものが基盤になっておりまして、教授2名を含む教員と職員も5名いるような、そういう組織でありまして、そのほかにグローバルCOEや21世紀COEなど、様々な今までの活動で、いわゆる共同利用の施設ができてきたわけですけれども、そういうのは時限的で放っておくと消えてしまうかもしれないというもので、電子顕微鏡研究室なども全然別の組織でしたが、そういうものをひっくるめて、(KOA-Facilityという)全体をまとめる概念ができたということです。
 これを今回、外にも広げようということで、次の2ページ目のところですけれども、実はそういう施設群ですから、1カ所ではないのです。小さなものがあちこちにあります。これは信濃町の慶應病院で、奥のほうに総合医科学研究棟という建物が立っており、9階建ての建物の9階にも(KOA-Facilityの)施設がありますし、途中の6階にも動物の施設を作りましたし、3階が昔からあった共同利用研究室ですが、そこにも機械がいろいろ並んでいます。今から連携を深めていきますが、動物センターなどもこの建物にある。こういうものをひっくるめて、それを外部、とくに産業界にも開こうではないかと、そういう取組です。
 3ページ目を見ていただきますと、本事業では、3つの柱を立てまして、1つ目が、形態解析です。分子生物学では、みんなすりつぶして、形のないようなところでの研究が非常に発展しましたけれども、生命を見るためには、形は大事です。形態に力を入れるということで、右の上の写真は、共焦点レーザー顕微鏡、ライカの例ですが、CTだとか、MRIとか、そういう形を見るような装置群を使っていただこうと思います。
 次の4ページ目が、オミクスと書いてあります。オミクスというのは、Genomics、Proteomics、Metabolomics、そういう単語に“omics”というのが後ろにつきますけれど、Genomicsはゲノム全体、DNA全体、RNA全体を見る。Proteomicsは、細胞の中のタンパク質全体を見る。Metabolomicsは、代謝産物全体を見る。そういうことが今のメディカルサイエンスで流行っております。次世代シーケンサーという、人間のゲノム全体を3日間ぐらいで読むぐらいの能力があるような機械が今出てきております。マイクロアレイは遺伝子の発現を、質量分析はタンパク質を網羅的に見ることもできます。質量顕微鏡というのは、これは脳のスライスですけれども、脳のスライスの中で物質がどこにあるか(が分かります)。ATPという物質が、脳をさっと凍らせると左のように分布が見える、しばらくしてから動物が死んでから脳を処理すると(右のように)見えなくなります。こういうようなオミクスの解析の装置群を共用します。
 3番目の柱が、5ページ目になりますけど、疾患モデル。今、医学生物学では、ノックアウトマウスという特定の遺伝子を壊したマウスとか、特定の遺伝子を働かせるトランスジェニックマウス、そういう実験動物が病気のモデルになっております。そういう疾患モデルを作ったり、繁殖させたり、受精卵を凍結しておいたり、クリーニングというのは、病原微生物を除去する作業ですけど、そういうことができる施設が、3番目の疾患モデルです。
 こういうものを対象として、次の6ページに一覧になっておりますけれども、動物用のCTとか、顕微鏡とか、様々な機器を、それから、オミクスのほうも、そこに書いてあるようなマイクロアレイのシステムですとか、疾患モデルとしては、マウスがほとんどですけれども、小型魚類、メダカとかゼブラフィッシュ、それから、実際の人間のCancer Cell Bank、手術で採った試料を凍らせてある施設が学内にありまして、それらをこのKOA Facility事業に組み込んで、1つの大きな枠組みにしているところです。
 それで、次の7ページです。本事業の特色。これは産業界とどうやってすり合わせをするかということで、受け入れ責任者というのを立てるということにしました。何か実験をやるときには、様々な手続きが必要です。例えば、臨床研究をやるときには、非常に高いハードルがあって、倫理委員会を通さなくてはなりません。遺伝子組み換え実験、動物実験しかりです。そのためには、産業界の方がぱっと来られても、どうぞご自由にお使いくださいというわけにはいきません。それで、学内の受け入れ責任者、主に教授になってもらっています、に(諸手続きを)やっていただくということを、1つの条件にしています。それから、共同利用研究室には課金制度がありますから、それは今まで学内向けばかりでしたけれども、それを産業界にも使ってもられるような体制にするということです。トライアルユースも含め、課題は随時募集ということで、ホームページを立ち上げてやっております。
 それで、次のページが、利用の状況の一覧表になります。既にトライアルユース、私たちは今1回6カ月ということにしておりまして、トライアルが2回終わると有償ということで、有償化が少しずつ始まっています。あるいは、最初から有償利用を希望しているところもあります。一番左が、申請企業、課題名があって、受け入れ責任者、どういう機械を使っているか、どういう期間でやっているか、こういう企業を一つ一つ発掘しながら、入り口を作っているという状況です。今まだ動いている途中のものもありまして、臨床系の受け入れ責任者が多いですけれども、共同利用研究室が窓口になっているものもあります。
 それで、10ページ目に(成果の一例があります)。成果というのはなかなか難しいもので、特に製薬企業の場合は、公開はしないでくださいということが多いです。ここに新聞記事がありますけれども、薬が効くか効かないかということを患者さんごとに調べるためのDNAチップのテストを共同利用研究室の装置を使ってやったというような例があります。こういうものが成果として徐々に見えてくるのではないかと思っております。
 次のページですが、施設全体(共同利用研究室)の規模ですけれども、(人件費や場所代を除き)全体で1億2,000万円程度の経費で動いていて、実際に受託費とか利用料とか、そういうものが、7,600万円と書いてありますが、半分以上を占めております。産業界の利用というのは、非常に大ざっぱに言って2割ぐらいだと考えられます。支出のほうは、ご覧のとおりです。共用促進事業では、3名の技術職員をエフォート50%で雇用しているというのが、現在の状況でございます。
 12ページが、取組を実施することのメリットです。これは産業界と大学のメリットというのは、やはり違う。大学のほうは研究者ですから、(産業界との連携によって)学問的な成果がやっぱり必要だと思います。それから、財源が確保できるということがあります。企業と一緒にやって、新たな産学連携を誘致する。一方、企業のほうは、例えば製品開発をする。顕微鏡の開発の企業が、生体材料が欲しい、どこまで(自分たちの開発した顕微鏡で)見えるか知りたいから生体材料を作ってくださいというようなこともあります。それは最先端の分解能を持っているようなX線顕微鏡だったりすると、大学側にもメリットがある、そういうものが多いです。生物材料がどうしても企業では手に入らない、そういうものを使って見たい。知財を獲得したい。それから、特にベンチャーの中には、大学と一緒に研究的なアクティビティをしたいというようなこともあります。それはもちろん究極的には製品化ということと繋がっているのでしょうけれども、そういうものを受け入れるということもあります。ですから、医学部の教員と産業界が出会って、それぞれのメリットを生かせる、そのちょうどいいところのすり合わせが、今やっている事業だと思います。医学部の教員のほうには、意識改革として、大学の機器施設は様々な人と共用する(のが原則である)という「共用文化」を導入したい。あなたの持っている機械は、たとえあなたの場所にあっても、みんなで使いましょうという、極端に言えば、そういうことだと思います。
 最後の13ページですけれども、今後プラットフォームの構築に向けて何を考えているかです。やはり(大学は)企業にないものを提供できる。特に医学・生物学的な、wetの材料やノウハウがない企業には、単に機械を貸し出すということだけではなくて、どうやってやればいいかというようなノウハウを含めて企業にない部分を提供できれば、そこがうまくいくだろうと思います。もちろん臨床研究は非常に特殊で、様々なハードルがありますし、そういう(企業の臨床研究を受けいれる)部署も別にありますが、(KOA Facilityも)入り口にはなるでしょう。
 また、人材交流がありまして、博士人材に企業のインターンシップに行ってもらって、産業界へ最終的には就職をするというような、そういうような人材交流、医学部でもMDばかりでなく、Ph.D人材もおりますので、そういうアクティビティにも役立つだろうと思います。
 そういう受託の料金が発生しますことを、現場の活力にも還元できればいいかなと。もちろん、ユーザーに還元することは当然ですけれど。
 それから、職員に関しては、今、職員がどんどん時限雇用になっておりますので、何とか専門人材を長く雇用できるように、今闘っております。それから、(企業のための)研究支援と(大学における)研究は乖離しないようにするということが一番大事なところではないかと思います。それがあまり離れてしまうと、何のためにやっているかがわからなくなると思います。今できていないことで、今後できればと話しているのが、他の施設と連携して、補完し合ったりすることです。特に海外の共同利用施設は、思いつかなかったようなノウハウを、バーコードで様々な試料を管理したりとか、非常に具体的な知恵がありますので、交流を深めて、ノウハウを交換できたらと思っております。
 以上です。

【二瓶主査】  ありがとうございました。
 それでは、御質問、御意見をお願いします。どうぞ。

【長野委員】  非常によくやっていらっしゃるというふうに感じました。
 資料2-3の6ページ、よろしいですか。主な共用対象装置ということで、大きく分けて3種類に分けていらっしゃいますけれども、一番最初、形態解析装置群というのは、これはどちらかというと、そばにあれば使わせていただくけれども、おそらくいろいろなところで実際持っているものが非常に多いのではないかなと思うので、それほど需要が多いことはないんじゃないかなという気がするんですが。むしろオミクス、あるいは疾患モデル、このwetの材料がよくわからなかった。例えば、先生のところで疾患モデル動物というのは、どれぐらい種類があって、それをどういう格好で、それは希望があると、それを無償で出されるわけですか。

【松尾センター長】  様々なケースがありますが、共同研究が多いです。

【長野委員】  多いでしょうね、共用という感じではないと思うんですよね。

【松尾センター長】  はい。しかし、企業のほうからも、ある製剤の候補を幾つも持っているようなところが、ある動物でそういうものを試してほしいというようなことがあります。具体的なことを。

【長野委員】  そうでしょうね。疾患モデル動物室と書いていますけど、そういった様々な疾患のモデル動物があるわけでしょうけれども、何種類ぐらい、どんなふうにあるんですか。

【松尾センター長】  それは常時そろえているというものではありません。

【長野委員】  そうなんですか。話が来たら、それに対応するということなんですか。

【松尾センター長】  そういうことです。

【長野委員】  それで対応できる場合もあるし、対応できない場合もあるんですよね。

【松尾センター長】  はい。

【長野委員】  ほとんどの場合、なかなかすぐは対応できないんじゃないかなと思いますけれども。

【松尾センター長】  ですから、どちらかというと、対応できる(大学側の)人がいるのを知っている企業が、申し込みをしてくるという感じです。

【長野委員】  例えば、これはイメージできないんですが、ホームページかなんかに、こういった疾患とか、具体的に書かれているのはあるんですか。単に疾患モデル動物に関して、御相談に応じますという格好になっているんですか。

【松尾センター長】  これは、今、そういう具体的なもののリストがホームページにあるわけではありません。

【長野委員】  そうですか。それでわりと多く来ますか。

【松尾センター長】  その組み合わせで、何件かあります。

【長野委員】  そうですか。

【松尾センター長】  それは、実際には、教員のほうが、もう様々な企業と動いていますから。

【長野委員】  全くないわけではないでしょうけれども、全く何も知らない人が、ぱっとドアを開いて来るということはなかなか難しいだろうなと思うんですけれども。

【松尾センター長】  そうですね。事前に(受け入れ責任者と)やりとりをしてもらって、ある程度具体化したものを持ってきていただくということが現状です。

【二瓶主査】  よろしいですか。どうぞ。

【西島委員】  僕も今、その辺をちょっと思って。多分、前の2つのところと、この後にご説明の理研NMRさんと違うのは、例えば、一番最初の京大もそうですし、それから、スパコンも、一企業ではなかなか持てない。つまり、官と学と組むことに対する装置的な魅力もあるし、そういう装置に対する共用促進というのもあると思うけど、この辺になってくると、共用促進というよりも、産業界へのイノベーションというので、形としてはこれでうまくいっていると思うんですが、この共用促進に採択するときのテーマのオリジナル性というのは、あくまでも企業のほうですね。

【松尾センター長】  そうですね。企業から持ち込みになるわけですので。

【西島委員】  これを通らないで共同研究をやられる先生もいますよね。

【松尾センター長】  そうです。普通の共同研究の場合ですね。

【西島委員】  ここでトライアルユースをやっていくのは、どういうメリットというか、どういう促進なんでしょうか。つまり、共同研究に入る前の、いきなり共同研究に入るというのではなくて、相手の力量を見定めるという形でのトライアルユースという形なんでしょうかね。企業のメリットがその装置そのものだったら、企業が、特に製薬会社で考えれば、多くの場合、買えない装置ではないですよね。場合によっては、製薬企業だったら、もっと高い装置を簡単に買えてしまう。むしろその先生の持っているオリジナルというか、ノウハウというか、そういう、そもそも共同研究をやるべきところを、ここで1つのたたき台にしていくという位置付けなんでしょうか。どういう位置付けなんでしょうか。いきなり共同研究に入らなくて、ここをクッションとして通るという場合について。

【松尾センター長】  私たちは、企業と共同研究するときは、ほんとうはこれをちゃんと通してくださいよという枠組みを作っていこうかなと思っているんです。それはもう今までは全部そういうものは見えないですから、各研究室とか教室が独自にやることですから、だから、できればしっかりこういうものを通していただきたい。

【西島委員】  慶應大学とすると、このようなトライアルユースで、慶應の持っている様々なノウハウや施設を有効活用した形で共同研究に持っていくという形を目指すための、その1つのトライであると、そういうふうにとらえていいですか。

【松尾センター長】  はい。かなりそれは的を得たところを言葉にしていただいたと思います。例えば、動物の施設、先ほど出てきたものも、本来ですと、リサーチパークというような形で、様々な目的のために使える部屋を、この事業をやりますから使わせてくださいと大学に頼んで、利用料なしで(疾患モデル動物室として)使わせてもらっていて、だから、産業界とか、そういうところに貢献しているということがみんなに見えるような形でこれを動かしたい、そういう施設を整備していきたい。そうでないと、そういう施設を存続させること自体が学内で難しい場合があります。

【福嶋委員】  似たような質問ですが。

【二瓶主査】  どうぞ。

【福嶋委員】  同じような印象を持って、こういうところでのトライアルユースを企業から見るとありがたいのは、やはり最初からお金を出して、こういうことを知らないからやってみようというわけではなくて、ここであることはわかっているけれども、最初から有償でやる価値があるかどうかをまずやってみたい、それができるということなので。そうすると、実は、8ページ目に、まだ始めたところで、成果のあれがないんですけれども、おそらく何となく有償化とあるようなやつは、これはトライアルユースはなくて、初めから有償化でやっていくような気がして、もしかしてトライアルユースをやった意味というのは、やったけれども有償化にいかなかったような仕事が幾つかあるというのは、企業から見たら、トライアルユース制度の存在意義があるというふうに思うんですけれども。

【野田委員】  ちょっと1つ。

【二瓶主査】  どうぞ。

【野田委員】  パンフレットのほうで、24時間利用可能と書いてあるんです。ということは、どういう管理の仕方というんですか。失礼ですけど、例えば人を、先ほどエフォート率50%雇用しているというと、夜とかはどうなるのでしょうか。

【松尾センター長】  24時間利用可能というのは、カードキーで立ち入りができるということです。トレーニングを受けた場合は、基本的にはユーザーの人が来て、簡単な機械については、ひとりで使ってくださいというのが基本的な方針です。外来者の場合は少し複雑ですけど、カードキーを手渡す場合があります。それはセキュリティに関係しますので、手続きが必要です。

【野田委員】  わかりました。

【伊丹委員】  このように、大学側が、大学の様々な設備がどういうふうに使われるかを、各先生が、各教室が勝手に産業界とやるのではなくて、全体として把握したいという気持ちはわからなくはないですが、先生たちからすると、手間がかかるのであまりこれを使いたがらないということはないですか。

【松尾センター長】  そういうことはあります。これは、ですから、負の面をなるたけ小さくして、プラスの面を大きくする微妙なところに成り立っているというものです。

【伊丹委員】  それは学内の反発のようなものが、私のような素人でも何となく想像できるのに、あえてこういうのを慶應大学として取り組みたいという大学側の意図は、どういうところにあるんですか。

【松尾センター長】  大学内では、共用性の高いものを持つことの重要性というのはかなり浸透していると思います。共用施設に専任の教員を置くなどの措置も、大学の意識のあらわれです。それから、ばらばらに申請していたものを、共同利用研究室で取りまとめてから、私学助成金などに申請しますけれど、そういうものも個別ではなくて、情報を持ち寄って申請するなど、資源の無駄が省ける分、ポジティブな部分があると思います。

【伊丹委員】  それは学内の共同ですよね。

【松尾センター長】  そうです。

【伊丹委員】  今言っているのは、外への共用の問題についてです。

【松尾センター長】  施設の整備ということに関しては、使いやすい、いい施設を作っておけば、学内だけではなくて、外からも使えますよという形で、価値を高めていけるだろうと考えています。

【伊丹委員】  だけど、ほとんどは、製薬会社であれば、これよりもいい装置・機器を自分のところで持っているかもしれないですよね。

【松尾センター長】  そうですね。

【二瓶主査】  いや、私はよくわかるんですけどね。要するに、私立大学という言い方をする必要はないんですが、多くの場合、先生おっしゃる、個々の先生方が導入した装置を、自分のものとして使って、学内ですらオープンにうまくできない、ましてや学外に対してオープンにする気持ちは全くない。そういうところからスタートして、学外共用というストーリーの下に、すべて、言うならば、お互いに支え合って高度化を図り、効率化を図り、学内の人間もメリットが大きいけれども、それをより社会的に貢献する形で、全体のシステムをより価値を高めていくと、そういうねらいですよね。

【松尾センター長】  はい。

【二瓶主査】  一般の大学、みんなそれをねらってやっているんですが、慶應義塾大学の場合は、やはりこの分野での先端性を個々の研究室はお持ちだから、こういう形でまとまるということで、価値がより高まるということだと思うんですが、そういう理解でよろしいですか。

【松尾センター長】  そう理解していただければと思います。

【二瓶主査】  共用文化という言葉を使われた大学はありますけど、それがもともと大学にはないんですよね。それを高めて、社会貢献に結びつけて、活性化も図り、社会的な価値を高める、それがねらいだということで。
 それから、分散型というのも、まさに分散型になってしまうんですね、こういう場合は。そういう意味で、全体のストーリーは大変よくわかるんですが、産業利用というところのこの分野の難しさというのがかなりあって、これからがいわばこの分野ではまさにトップランナーではないかと私は思うんですけれども、御苦労が多い部分があるのではないかという気がいたします。
 時間が参りまして、どうもありがとうございました。
 さて、次に、理化学研究所からお願いしたいと思います。

【木川副領域長】  理化学研究所の木川です。NMR施設のことについて御説明させていただきます。あと、事務的なことで、担当の手嶋も、事務方のほうから来ております。
 このNMRの施設、こちらにありますように、理研の横浜施設にあります、設立当初は40台のNMR装置、現在は24台を共用に供していますけれども、そのNMR施設であります。
 このNMR施設、共用を開始したのは、ちょうどこちらの、後で参考資料にも書いてありますけれども、19年度ということで。それで、本来は、もともと中の研究だけに使っていたものを共用にしていくということで、いろいろな共用にしやすい体制というのを一生懸命作って、現状では、かなりNMRを使った研究開発に詳しい専門家による支援体制を整えております。それは利用相談から始まって、実際に装置を使うときの技術の指導や支援、それから、あともう一つ、タンパク質の解析に関しては、我々、非常に特徴を持っていまして、試料を調整するところから構造解析、最後まで、結果を出すところまですべてを支援するパイプラインというものを持っております。
 あと、NMR装置といいますと、どうしても非常に不安定で、使いに来ても壊れているとかということが結構多いんですけど、それがないように、いかに良好に整備するかということも気をつけています。
 そしてまた、我々の施設の特徴としては、今、NMR装置というのは世界で3社が製造しておりますが、この3社の装置すべてがそろっているということ、それから、高感度、固体プローブやら、サンプルチェンジャーといった、そういう意味では、一研究室などというものではとても買えないような装置をそろえていて、利用者が使えるようにしている。
 また、この共用事業に関しては、「先端研究施設共用促進事業」の支援をいただいていますが、その中で、横浜市立大学と大阪大学蛋白質研究所との連携体制を持って臨んでいるということが特徴であります。
 その中で、我々の持っている装置の中で特色のあるものを幾つかここに挙げてありますが、このような、例えば、900メガヘルツでCryoProbe装置がついていまして、感度が9,000以上というのは、これは日本でも2~3台しかないものであります。そういったものとか、例えば、サンプルチェンジャーがついていて、どんどん測定が自動でできるというものも、あまり普通のアカデミアにはないところ、こういったものがそろえてあると。
 この研究基盤としての共用のための体制ということで、課金制度・利用形態の整備や、課題選定の仕組み、環境整備、それはWebサイトだったり、電子申請ができるようにしたりとかいうことから始めまして、いろいろと規程の整備も含めてやってきました。それから、NMR装置というのは、単に「どうぞ、お使いください」と言って使えるものではありませんので、やはり利用支援というのが非常に大事ですので、その部分の支援体制も作ります。広報活動もやって、また、横浜市大と阪大蛋白質研の研究との連携に関しては、いろいろな形でお互いに連携をしております。また、ユーザー会というものも作って、そこからのいろいろな今後の施設の方向性についての意見も伺っております。
 利用の実績ですけれども、表としてはありますが、無償利用と有償利用という区分がありまして、無償利用は、前の制度から移ってきて、23年度末までで67件、有償利用に関しては、成果占有という、主に企業が利用することを意識した制度、それから、成果非占有は、アカデミアが利用することを意識した制度で、このような利用件数になっておりまして、合計で270件を超える利用課題数が既に利用されております。
 それから、この無償利用に関しては、67件のうち49件が、もともと理研の施設とは関係なかった人たち等の利用でありまして、そういう意味では、この利用によって、少しずつ利用者の関係の幅が広がっている。また、分野としては、最初、この施設はライフサイエンスを主体に設立されましたが、現在では、食品や日用品、化学、材料といった非常に広い分野の利用が進んでおります。
 利用成果の事例で、これは特に企業のもので公開できるものをここに挙げておりますが、ブリヂストンの材料に関する利用研究、それから味の素のバイオテクノロジーに関する利用研究、さらにはサンスターの利用内容、それから日本ハムということで、そういう意味で、材料、バイオテクノロジー、そして日用品、食料、そういった非常に広い分野に実際利用が進んでいるという例であります。
 それで、このような共用事業を実施してきて、理研としてのメリット、いろいろありますけれども、特に実際運用している我々にとってみれば、ある意味で他流試合的なものをこなすということで、そういう意味での技術力や知識の向上というのが我々はできています。また、異分野の課題を解くということから得られる、自分たちの研究へのヒント、発想だったり、技術だったり、知見というのがフィードバックということで得られまして、特にそれが最近の研究には生かされております。
 それから、この事業を実施して、外部との交流、連携が非常に深まり、活性化したということがあります。特に、私のような人間は、もともと様々な学会にも行きますし、ですから、そういう意味での交流はもともとあるんですが、実際にもっと働く現場の研究者ないしは現場の技術者までが、そういった様々な外の人との交流をすることによる活性化というのは、効果として見逃せないと思います。
 それから、それをやってきて課題なんですけれども、これは既にもういろいろな方が指摘されていますが、やはり設備がだんだん古くなってきて、陳腐化していることによって、アップグレードをどうするかというのは、これは今我々の施設で非常に深刻な問題になってございます。
 それから、国でやっている共用事業というのは、様々な制度がありまして、そういう意味で、その間で必ずしもいろいろなものが統一されていないということで、例えば、利用料をどう取るか取らないのか、それから、利用に来たときの訪問・滞在費を出すのか出さないのかということで、これは制度によって違うことがあることから、我々は特にこの部分では、利用者から、こういうサポートがないのが使いにくいということで、かなり強く文句を言われているという状況であります。
 それから、広報・宣伝というのは、これは様々なチャンネルを通じて広報・宣伝をしていますが、未だに理研のNMRというのはこうやって使えるんだということをおっしゃる方が非常に多いということから、おそらく、例えば企業のトップの人に宣伝しても、現場の人には伝わらないというようなことがあって、なかなか実際に使いに来る人たちにとって、どうやってこういう活動をしているかということを浸透させるかというのは悩みです。
 それから、特に企業の利用に関して言いますと、企業が持っているスピード感とアカデミアのスピード感というのは全然違っていて、この部分、これはいい悪い、早い遅い、いろいろありますけれども、ここはなかなか難しいところです。例えば、深くこの実施にかかわったときのその成果が発表できることになるかというのは、例えば特許を取ってから2年後に発表しましょうということになると、研究としては旬を過ぎてしまうということで、そこら辺は非常に難しいと思っております。
 それから、理化学研究所は独立行政法人でありまして、営利企業ではありません。しかし、ある意味で共用事業というのはサービス事業的な側面もありますが、これはどこら辺まで追求すべきか。例えば、顧客満足度というのをどこまで高めるべきかは、これはアカデミアがどこまで追求すべきかというのは、正直、悩ましいです。
 それから、これも1つあります。キャリアパスやモチベーションの問題というのはやはりありまして、そこら辺をうまくやっていくことが、我々、事業を運営する人間にとって大事なことだと思って、ここら辺はこれからも意識していきたいと思っております。
 あと、もう一つ、我々、共用ナビの運営に関しても担当させていただいています。この共用ナビ、先端研究施設共用促進事業やイノベーション創出事業やナノテクノロジー・ネットワークへの移行に対して、そういう意味では、文科省がやっている共用に関する部分の情報掲載をしているサイトでありますが、実は、ほかにも共用に関する事業はいろいろありますが、これが全部一元化されているわけではないので、ここら辺をどうやって扱っていくかということが必要かなと思います。
 それから、窓口ですね。今のところ、この窓口を見ると、結局、これで使えそうなサイトを見て、どこかへ行って相談してくださいということで、そういう意味で、ユーザー目線に立って考えますと、使いにくいというか、わかりにくいというか、何がどこにあるかわかりにくいし、一体だれにどう相談したらいいのかわからないというようなことは、利用者から言われますので、ここら辺、もう少し一元窓口の創設なども考えたほうがいいのかなと思っています。
 それから、成果報告の報告書というのは載っていますけれども、実は書式が統一されていなくて、ある施設のものではこういうものが書いてあるけど、これは書いていないということで、ここら辺、これもユーザー目線から見ると、ある意味で統一した掲載、例えば、こういうことは必ず載せましょうということで、ユーザーが自分に合った利用事例を探しやすいような仕組みというのが、これからは大事かなと思います。
 あと、認知度がなかなか、この共用ナビを御存じですかと言っても、我々の施設に使いに来る人もなかなか知らないので、ここら辺、これも市民権をどうやって得るかという問題は、今、悩ましいところであります。
 それで、我々の、これから施設の方向性ということで、もうちょっとこれは、我々の施設というよりも、NMRの施設の全体の話にさせていただきたいと思います。研究基盤としてのNMR施設というのは、いろいろな化学、材料、生命科学など非常に広い分野で利用が可能なツールであります。
 しかし、実は装置、特に先ほど紹介した900メガヘルツ、こういった装置は非常に高額です。高額というのは、単に買うのが高額なだけではなくて、運営費、アップデートしていくのも高額という意味です。
 さらに、定常的に維持していかなければいけないので、単に買えばいいという話ではなくて、運営のノウハウ、そして人、いろいろなコストがかかります。具体的に最近どういうことになってきているかと言うと、アカデミアでは、とても学部や部局レベルでこういったものを維持することは不可能です。また、特に日本の企業では、こういった大型装置はほとんど持っていません。それは、こういうことにかけるコストがなくなってきているわけです。また、若手の研究者、若手の技術者がこういった装置を使う場合、やはり今のところ、どこか、これを持った組織に所属せざるを得ない状況で、そういう意味で、特に若手の研究者が深刻なんですが、流動性や自立の阻害というものも、これが要因になっているというのが見えてきています。そういう意味では、もっとより気軽にというか、どんな研究者でもその装置・技術に、ある程度、ここに行けば使えるよという場をきっちり整備していくことが大事かなと考えています。
 実は放射光や大型計算機というのは、これは既にそういうコンセプトの下で国レベルで整備されていると私は感じているんですが、そういう意味では、もう少し、あれほど大きくないけれども、やはり部局レベルでは購入することができないNMRや、私の分野から近いものでは、電子顕微鏡などもそうですが、こういったものはある程度戦略的な整備・配置が必要になってきているのではないかと思います。
 その中で、ではNMRとしてどういうことをやるべきかということですけど、これは日本には、NMRのそういう共用ができるような施設というのは幾つもあります。やはりこの施設の連携体制というのをきっちり構築していくことによって、ここに行けばどんな人でも、それは企業の人でも若手でも使える場をきっちり整備していくことが必要だと思います。
 ただ、もちろん、新規にこういうものを作るのではなくて、既にいろいろな施設に既存の設備がありますので、これを有効活用しながら、こういう体制を整えていくのがいいのではないかと思います。
 それからまた、最先端技術の開発も、やはりこういうところが先導してやることが大事。単に装置を置くだけでは、人は来ません。装置があって、その利用の仕方に関する最先端のものを持っている、ないしは開発モデル、データの扱い方も知っているという、そういうところ、エクスパティーズとヨーロッパの研究者なんかは言いますけれども、それがあるところをきっちり整備していく。そういうところには、若手や企業や、ないしは異分野、これはNMRを使っていないけれども、NMRを使った様々な解決がしたいというような異分野の研究者、技術者が来る、それが育成支援できるという体制をきっちり整える。もちろん、それには、分野を絞ったのではなくて、非常に広範囲な分野で利用促進、そして、そういう分野での研究開発の貢献というのが大事だと思います。
 それから、このNMRというのは、NMRの装置というのがありまして、これを開発する企業は日本にもありますが、日本電子ですね。こういった国内の関連産業、それから、マグネットですと神戸製鋼が作っていますけど、こういったところの技術の育成や発展へも、この施設ネットワークがきっちり貢献していくという形を作っていく必要がある。
 また、海外でこういった仕組みをとっているネットワーク、具体的には、これから話しますが、EUとのネットワークについては、きっちりと連携をしていく体制を整えていくべきだと思います。
 実はこういうことがありまして、先日、EUのほうに訪問しまして、EUで実際どういう取組をしているかというのを聞いてきました。そうすると、EUは、Framework Programというものでもって、Framework6の時代から、NMRの施設のネットワークについてのサポートを始めた。このときが12機関、そして、現在のFP7では、このような数の機関、構造生物学向けのBio-NMRや、東欧向けのEAST-NMRや、データやソフトウェアに特化したe-NMR、こういう形での支援をしていまして、彼らはこういった形で、NMRの施設の基盤というものをEU全体に広げて、そこにいろいろな研究者が使いに行くという形を徐々に徐々に組み上げてきています。
 そこでは何をしているかというと、一体化した基盤ということで、あくまで外のユーザーから見ると、1つの大きな施設に見える。実際には個々の施設に使いには行くんですが、まず1つの窓口に申し込みに行くと、いろいろな機関に実際利用に行けるというような形態があることによって、非常に使いやすいということと、あと、高い投資効果というものを評価されているということです。その中では、連携、これはネットワーキングというのは、様々な分野間の連携であったり、企業とアカデミアの連携であったり、それから、専門家と非専門家の連携であったり、そういうようなことが評価軸となって、こういうような施設を、これは決してNMRに限らず、電子顕微鏡でも放射光でもそうですけど、そういうような形のものをやっています。また、ここでは、先ほどの話で、装置の開発企業というのもきっちりと深く関与する仕組みを作っているということです。
 このようなコンセプトを最近考えておりまして、その中で、実際にこういうのを担えそうな機関について、いろいろな形で議論、協議をさせていただいて、今、大体ここに挙げたような幾つかの機関については、この基本コンセプトについては賛同いただいておりまして、これからこういう体制を形成していきたいと考えています。具体的には、横浜地区の理研と横浜市大、それから、阪大の蛋白研、物質材料機構、分子科学研究所、これはかなり大きな規模ですから、こういった基幹拠点を日本にこのように配置するとともに、地方にも地域拠点を配置する。北海道大学、東北大学、広島大学からは、このような議論に既に参加していただいている。九州地区については、まだいろいろと調整中ですけれども、こういった形で、国全体に施設をうまく広げておいて、利用者から見れば、ある程度自分の近く、ないしは、自分が問題を解決するのに適した施設について、使いに行く。ただし、それは1つの大きな施設として見るような形で運営というのを今考えております。
 以上です。

【二瓶主査】  ありがとうございました。
 それでは、御質問、御意見をお願いいたします。

【西島委員】  NMR関係では、阪大とか横浜市大とネットワークができて、これがもうNMR施設ネットワークという形で、非常によくできているなと思います。
 今、この委員会でやっている研究開発プラットフォームということを考えると、例えば理研は、放射光も、NMRも、イメージングも、リソースバンクも、計算機も持っているんです。例えばNMRを使いたい人は、NMR施設ネットワークを使うのはわかっているんですが、例えば放射光を使っていた研究者に、部分構造を見るのであればNMRを、タンパク量が足りなければパイプラインを、必要だったら、そのシミュレーションにスパコン利用ということをガイドする部署というのはそろっているんでしょうか。

【木川副領域長】  一応産学連携の部署が理研にはあります。

【西島委員】  それは放射光施設の窓口にそのような部署が存在するわけですか。

【木川副領域長】  確かに、御指摘のように、もしかしたらそこまで細かいケアは十分はできていないかもしれません。それは、1つ、理研としてはこれからやるべきことだと、個人的には思っています。

【西島委員】  そうですね。

【木川副領域長】  そういう意味では、同じ分野での横の広がりとともに、縦に繋がるという、様々な技術を使って、1つの問題を解決するというような点での窓口というか、そういうものの強化というのは、理研としては必要だと思います。

【西島委員】  そうですね。だから、研究開発プラットフォームを考えるときに、やっぱり理研の今の運用の中でのいい点と、悪い点、もしくは克服すべき点とか、そういうのが出てくると、わかりやすいのかなとちょっと思ったんで。
 中央本部機能で様々な契約をするとかいうのは、多分できていると思うんです。しかし、例えば、病気に絡むタンパク質の構造と機能を知りたいといったときに、放射光のほうからいっても、その人はNMRも、それからスパコンにも、イメージングにも、発現系にも、理研のソース全体にうまく絡めるようにして、そうするとワンセットでお幾らぐらいかかりますよという見積書も出てくるとか。
 慶應大学の話も、最初は1対1の共同研究だけれども、動物だけではなくて、動物に必要なイメージングとか、それから、対応するメカニズム研究を慶應大学の中に持っているというと、もっと大学として大きな契約、場合によっては包括協定まで結ぶし、場合によっては大学の中に寄附講座を作っちゃおうかという話も出てくるかもしれない。慶應大学のことではないけど、理研だったら、それができてもいいのかなと思って、どういうふうにこれまで目指してきたのでしょうか。

【木川副領域長】  そういう話は、どちらかと言えば、研究者個人のレベルで話が進んでいるというのが実態で、実は最近、京コンピュータを使ってある問題を解決したいという話を京のほうに持っていったんだけれども、そこにはやはり実験的なデータの裏打ちが必要だろうということで、その部分はNMRないしX線と相談してみたらどうかということで、実際、幾つかそういう話があります。

【二瓶主査】  ありがとうございました。
 ほかにはいかがですか。どうぞ。

【福嶋委員】  お聞きした中で、全体として我々も参考にすべきだと思うのは、5ページ目の活動の中の、ユーザー会というのがありますよね。ああいうものが実は一番重要な気がしまして、これは理研側にもメリットがあるし、入っている側にも、ほんとうの意味でミキサーができるという、これは、こういうNMRに限らず、すべてでこういうことができると一番いいと思うんですね。
 参考までに、この会というのは、どういう運営で、どんなような形でされているんですか。

【木川副領域長】  基本的には、ユーザーの代表ということで、何名かの賛同者、特にこの分野の有識者の先生にまず組織をしていただいて、そこが実際に利用された方や、ないしは潜在的な利用者を募って、ある程度、70~80名でしたか、そういうような会をやって、ある程度そこから意見を上げてもらって、施設のこういうところは改善してくれとか、こういう実験をできるようにしてくれとか、そういうようなことと、あともう一つは、ユーザー会ベースで、数回ですけれども、講習会をやったことがあります。

【福嶋委員】  そういう活動ですね。ありがとうございます。

【二瓶主査】  ありがとうございました。
 大変恐縮ですが、時間が押してしまいまして、やはりNMRの最大拠点としての特徴とメリット、それから課題、あるべき形態、ネットワークの形、大変貴重な御指摘をいろいろいただきました。大変ありがとうございます。
 それでは、以上4機関から現場の大変貴重な情報をたくさんいただいたことに、まとめて感謝申し上げます。
 本委員会としては、次の議題がございまして、そこに進みたいと思います。議題2でございますが、「新しい先端研究施設共用促進事業の方向性について」ということで、まずペーパーが準備されておりますので、その御説明をいただきたいと思いますが、この先端研究施設の共用促進事業、さっき共用ナビのお話が出ましたが、この仕組みは6年目でございますから、相当な知見の蓄積がございますけれども、そういう審議機関から御意見をたくさんいただいておりまして、研究開発プラットフォーム構築に向けた事業の改善方策等のまとめがございます。その資料について御説明をお願いします。

○竹上基盤研究課課長補佐より、資料3および参考資料3に基づき説明があった。

【二瓶主査】  実は、今日前半でお伺いしました先端研究施設共用促進事業、それの現場での現状を、研究開発プラットフォーム委員会の委員の先生方に聞いていただいたわけですが、その現場、今日たくさん貴重な御提言、御発言いただいたんですが、かなりの部分がこれに盛り込んでございます。これはおそらく今日御発言いただいた皆さん、再度ご覧いただければお気づきだと思いますが、そういう枠組みを詳細に検討した上で、研究開発プラットフォーム委員会が目指している研究開発プラットフォームの構築、その中に従来行ってきた事業を適切に位置付けて、全体のリンクを張るというか、プラットフォームですから、きちっとしたネットワークを張るというもくろみの下に検討したというわけです。
 したがいまして、今日、本委員会の委員の先生方、御意見、御質疑いただく時間がなくなってしまいましたが、ぜひこのペーパーをご覧いただきまして、御意見があればいただきたいのでございます。もう一回、この月内、7月中にプラットフォーム委員会がございますけれども、そのスケジュールとの兼ね合いで、事務局に少し工夫していただいて、意見聴取をお願いしてはどうかと思います。私からは、今日、時間切れということで、そういう形にさせていただきたいと思いますが、先生方、お願いできますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【二瓶主査】  大変申し訳ありません。よろしく御検討のほどお願い申し上げます。
 それでは、今日の議題は以上ということで、事務局から次回委員会に関する連絡事項をお願いいたします。。

○竹上基盤研究課課長補佐より、今後の予定について説明があった。

【二瓶主査】  ありがとうございました。
 それでは第6回の研究開発プラットフォーム委員会、これにて閉会とさせていただきたいと思います。大変ありがとうございました。

―― 了 ――

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研究振興局基盤研究課