資料3 今後のプラットフォーム戦略の検討方針(案)

平成26年7月7日
科学技術・学術審議会
先端研究基盤部会
研究開発プラットフォーム委員会

(1)現状
文部科学省においては、「科学技術イノベーションを牽引する研究基盤戦略について~研究開発プラットフォームによる研究開発力強化策~」(平成24年8月7日科学技術・学術審議会先端研究基盤部会)(以下単に「報告書」という。)をとりまとめ、我が国全体の研究基盤の強化に向けて、共用取組を実施する研究施設・設備は、積極的に他の施設・設備とのネットワーク構築を行い、適切な形態の共用プラットフォームを形成するとともに、我が国の研究施設・設備全体を俯瞰したネットワーク構築が重要であるとされたところである。
現在、共用プラットフォームの取組としては、ナノテクノロジー分野において「ナノテクノロジープラットフォーム」、情報分野において「革新的ハイパフォーマンスコンピューティングインフラ(HPCI)」を推進するとともに、平成25年度からは報告書において提案されているプラットフォームの役割に応じて分類した「技術先導型」「課題達成型」「地域連携型」の3つのカテゴリーのうち、技術先導型のプラットフォームとして「NMR共用プラットフォーム」及び「光ビームプラットフォーム」を開始している。
こうした中で、文部科学省においては、我が国の科学技術イノベーションを支えるプラットフォーム構築に向け、引き続き先端的な研究基盤の整備や運用等の方策について検討しているところであり、各プラットフォームの取組状況についてヒアリングを行い、今後のプラットフォーム戦略に係る検討方針を作成することとしたものである。

(2)ヒアリングの実施及びその概要
研究開発プラットフォーム委員会において、現在、文部科学省が推進している「ナノテクノロジープラットフォーム」、「革新的ハイパフォーマンスコンピューティングインフラ(HPCI)」、「NMR共用プラットフォーム」及び「光ビームプラットフォーム」の各プラットフォームの取組状況について、2回にわたってヒアリングを行った。
各プラットフォームにおいては、ポータルサイト等を活用した利用申請受付・情報発信やプラットフォーム内での人材育成・交流、代表機関の設置、企業ニーズの把握、コーディネーターの配置、外部機関との連携等が進められている。また、各プラットフォームにおいてそれぞれ特色のある取組も進められている。「ナノテクノロジープラットフォーム」においては、研究設備の試行的利用として企業利用者や若手研究者の利用の拡大を図っている。「革新的ハイパフォーマンスコンピューティングインフラ(HPCI)」においては、企業利用者や若手研究者に機会を確保するために若手人材育成枠や産業利用枠を設けるとともに、利用者のプログラムを計算機に合わせて性能改善する高度化支援の取組を行っている。「NMR共用プラットフォーム」においては、参画機関で個別の共用取組の公募時期を同期するとともに、課題選定委員を共通化し、各機関の共用取組状況を共有する委員が入ることによって、それぞれの取組を効率的に行っている。また、NMRの技術領域の拡大発展に資する研究課題を採択する特定課題利用枠を設けてプラットフォームとして公募・採択を実施している。「光ビームプラットフォーム」においては、各機関の地域性や研究分野などの特徴を尊重して連携を高度化しており、実験環境の互換化やレーザー技術と放射光施設の双方を利用した研究が進められている。
さらに、各プラットフォームにおける現在の課題・問題点としては、「ナノテクノロジープラットフォーム」においては、技術支援者のキャリアパスの形成や企業との人材交流、潜在ユーザーの掘り起こし等、「革新的ハイパフォーマンスコンピューティングインフラ(HPCI)」においては、計算資源の先端性の確保や研究成果データベースを用いたわかりやすい成果発信、産業界に対する広報活動、高度化支援の充実、産業界の若手利用枠の確保等、「NMR共用プラットフォーム」においては、技術支援人材の安定確保や装置開発企業との連携のあり方(プラットフォームとしてどこまで支援すべきか)と人材育成・交流、安定的な予算措置、料金の統一化、ユーザーニーズに合わせた特殊な附属設備や試薬・試料の費用の負担等、「光ビームプラットフォーム」においては、高度研究支援人材のキャリアパスや機器の高度化、運転時間の確保、産業界の秘密保持の取扱い等について問題提起されている。

(3)今後の検討方針
報告書においては、共用プラットフォームの要件として、「利用システムの標準化、プラットフォーム内での人材流動等を積極的に行っていくことが求められる。加えて、プラットフォームの取りまとめ機関を設ける等の工夫により、企業ニーズの把握やコーディネーターの配置、外部機関や社会との連携等の取組を効果的に進めていくことが望ましい」と示されており、これらの取組については適切に進捗していると認められるため、引き続き各プラットフォームにおいて取組を充実させていくことが期待される。また、各プラットフォームにおいてそのプラットフォームに応じた特色のある取組が進められており、引き続き各プラットフォームやその参画機関の特徴に応じて取組を進めていくことが重要である。
プラットフォームの課題としては、特に技術支援者の確保と専門性の向上、そのためのキャリアパスの形成が多くのプラットフォームにおいて問題となっている。「科学技術イノベーション総合戦略2014」(平成26年6月24日閣議決定)においても、「科学技術の進展とともに、研究体制の複雑化、研究インフラの高度化、複数機関の連携が進展している。このような状況の中でイノベーションの可能性を高めていくには、技術支援者などの研究者の活動を支える人材(中略)など、社会と科学技術イノベーションとの橋渡しを担う人材の層を厚くすることが不可欠となっている」また「研究設備利用に係る技術補助に留まらず、最先端設備の機能と研究課題の双方に精通し、研究課題の対応策の提案が可能な優れた技術支援者等の育成・確保と、流動化やキャリアパスの構築に向けたネットワーク化・プラットフォーム化の推進」とされており、これらを踏まえた国の関連施策を注視しながら対策を検討していく必要がある。
また、共用施設の先端性の維持や十分な運転時間の確保、支援体制の充実は共用プラットフォームを推進していく上で不可欠であり、国はこれまでの取組状況を踏まえプラットフォームの参画機関と連携して適切な予算措置を検討していく必要がある。
なお、共用プラットフォームの充実・強化にあたっては、「科学技術イノベーション総合戦略2014」等の政府方針を踏まえ、科学技術イノベーションに適した環境創出のための関連施策と連携を図っていくことが効果的であることから、その動向を注視しながら取組を進めていく必要がある。

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