産業連携・地域支援部会(第24回) 議事録

1.日時

令和2年8月28日(金曜日)15時~17時

2.場所

オンライン(Webex)

3.議題

  1. COVID 19 の影響を踏まえた今後の産学官連携の推進
  2. 今後の地域科学技術振興
  3. 今後のスタートアップ創出・アントレ教育の推進

4.議事録

【須藤部会長】 それでは、定刻をちょっと過ぎていますけれども、科学技術・学術審議会産業連携・地域支援部会を開催いたします。お忙しい中、御出席いただきまして、ありがとうございます。
部会長の須藤でございます。
本日は、定数16名のうち15名出席と書いてありますけれども、よろしいんですか、これ。大丈夫ですか、15名は。
【神部課長補佐】 はい。今、15名、大丈夫です。
【須藤部会長】 そうすると、8名以上の定足数ということで満たしておりますので、成立しております。
それから、三島委員におかれましては、御承知の方多いと思いますけれども、AMEDの理事長に御就任いただいておりまして、それに伴いまして、この科学技術・学術審議会及び分科会等の委員を令和2年6月10日付で辞職されております。
それでは最初に、事務局の方からお願いいたします。
【神部課長補佐】 部会長、ありがとうございました。会議に先立ちまして、まずウェブ会議を円滑に行う観点から、今から申し上げます事項について御配慮いただきますよう、よろしくお願いいたします。
まずマイクでございますが、ハウリングを防止する観点から、発言時以外はミュートにしていただきますようお願いいたします。また、御発言時におきましては、あらかじめお名前をおっしゃっていただくようお願いいたします。あと、大変僭越(せんえつ)でございますが、各参加者の皆様のお名前の表示やミュートの設定等について、事務局より設定を切り替えさせていただく場合もございますので、あらかじめ御了承ください。御意見、御質問等を頂く場面がございますが、御意見等ございましたら、Webexの挙手ボタンがございますので、挙手ボタンを押していただきますようお願いいたします。
続きまして、事務局側の人事異動がございましたので、新しく着任しました事務局の御紹介を申し上げさせていただきます。
科学技術・学術政策局の局長の板倉康洋でございます。どうぞよろしくお願いします。
【板倉局長】 板倉でございます。菱山局長の後任として科学技術・学術政策局長に就任いたしました。よろしくお願いいたします。
本日の議題にもなっておりますが、このコロナの影響でなかなか企業の皆様、売上げ減とかお困りの状況もあるようでありまして、この影響は多分大学の産学連携にも及ぶのではないかということが危惧されているところでございます。もう御承知のように、産学連携は徐々に軌道に乗り、ペースを上げてきたところでありますので、この勢いをなくさないように文科省としても何とか取り組んでいきたいと思っておりますので、先生方の様々なお知恵も本日いただければと思います。よろしくお願いいたします。
【神部課長補佐】 事務局からはまずは以上でございます。
【須藤部会長】 それでは、本日の議事についてでございますけれども、まず最初、議題1としまして、COVID-19の影響を踏まえた今後の産学官連携の推進について、それから、議題2としまして、今後の地域科学技術進行につきまして、それから、議題3としまして、今後のスタートアップ創出・アントレプレナー教育の推進について、この三つについてやっていきたいと思います。
それではまず最初の議題ですけれども、COVID-19の影響を踏まえた今後の産学官連携の推進について、最初に事務局の方から報告をお願いします。
【神部課長補佐】 説明をさせていただきます。資料1「COVID-19による影響を踏まえた今後の方向性について」という資料を御覧いただければと思います。画面のほうでも共有させていただいております。
まず1ページを御覧いただければと思います。1ページでございますが、これまでにも皆様、部会で議論いただきまして、ただいまこの三つの柱を産学連携・地域政策の方向性として掲げて今進めているところでございます。
2ページ目を御覧いただければと思います。2ページ目は、この方針に基づきまして、社会的課題や企業のニーズを踏まえた共同研究、技術移転であったり、さらには、大学から大学発ベンチャーを創出し、その結果、研究成果の社会還元などを進め、資金がまた大学に戻ってくる、こういった人材・知・資金の好循環を目指して今、施策を進めているところでございます。
3ページ目でございます。一方で今、こういった施策を進めてきたところでございますが、このCOVID-19、コロナの影響が様々な面で出てきていると考えております。我々、今、大きく五つのポイントがあると思っております。これらについて今どういった影響が出ているのかというところをもう少し具体的に説明をさせていただければと思っております。
資料、まず次のページでございますが、まず社会像、価値観への影響というところについて御説明させていただければと思っております。
5ページ目を御覧いただければと思います。今回コロナの影響を踏まえて、やっぱり社会が変わっていくということが言われておりますが、この5ページに示しております世界の著名な方々もその件に対して言及されております。経済が全く新しい方向に進んでいくだろう。また、経済システム、雇用システムがより良いものに変えていく良いチャンスになるだろう。社会の仕組みが変わるいいチャンスになるのではないかといった御発言が出ているところでございます。
6ページ目でございます。こういった著名な方々の発言もそうでございますが、こちらはNEDOの資料を引用させていただいております。NEDOさんの方では、コロナ後の社会の変化として六つのポイント――デジタルシフトとか、国際情勢、産業構造、分散型への変化など六つの変化をポイントとして挙げております。この六つの変化が具体的には、下に書いてあります五つの領域で具体的な事例として起こっていくであろうと、こういった図も今示しているところでございます。
続きまして、7ページでございます。こちら、JSTさんの資料を引用しております。こういった動きの中で、ポストコロナ若しは感染症関連の研究が様々進んでいくであろうといったことでこの俯瞰(ふかん)図を示しております。感染症関係として、ワクチンの開発とか検査技術、そういったところもございますが、基盤的なところとして、ポスト5G、ICT、ロボット、そういったところを踏まえまして、また、ポストコロナの社会づくり、そういったところにもこういった研究の成果が波及していくと考えられているところでございます。
続きまして、8ページでございます。こちら、コロナとは直接関係ないのですが、AI時代、ロボットなどが進んでいく中で、人々がどういうふうな能力が必要であるだろうといったことをまとめた書籍がございまして、そちらから引用してございます。今後必要となる能力、認知能力として、アントレプレナーシップの重要性が掲げられています。このアントレプレナーシップというのは、二つ目のポツにございますが、デジタル化した職場で自らを差別化する手段として高い価値を持つだろうと言われています。さらに、四つ目のポツのところでは、このアントレプレナーシップというのは、もちろん伝統的な起業というものもありますが、既存の機関・企業の内側から改革していく、そういったところにも非常に重要だというふうに言及されています。
次のページ、9ページでございます。このような社会変革が進もうとしている中かつテクノロジーが更に進もうとしている中で、これまでアントレプレナーシップというのはやはり重要だと言われていましたが、これまで日本の歴史上を見ても、やはり今の日本をつくり上げてきたというのはアントレプレナーシップを持った人材たちであるということが言えると思います。そういった意味では、このタイミングではやはりアントレプレナーシップというのが重要ではないかといったことが掲げられます。
さらに、10ページでございます。こちらの方、日本に限らず、世界の歴史を見ても、やはり革新的なことというのは若者が牽引(けんいん)してきたといったことをまとめさせていただいているものでございます。
続きまして、民間の研究開発投資への影響というところを説明させていただきます。12ページでございますが、こちら、世界銀行がGDPの予測をしたものでございます。日本のGDPが、2020年にはマイナス6.1%低下するといった予測が上げられています。リーマンショック時はマイナス5.4%だったので、それを超える水準の経済的な影響があるだろうと言われております。
続きまして、13ページでございます。こちらは試算の数字でございますが、大学と民間の共同研究の投資としまして、下のグラフが、グレーのところが実績値で、R1以降は推計値になっております。リーマンショックのときにやはり共同研究費が下がっております。こちらが我々の試算としては、順調にいった場合と比較しまして、大体10年間で1,000億円程度の共同研究の減があったのではないかと考えております。これが仮に今回も同じように共同研究の減少が起こった場合、10年間で2,000億ぐらいの減少があるのではないかというふうな試算をしている数字でございます。
続きまして、14ページでございます。こちらは日刊工業新聞社がアンケートを毎年行っておりますが、民間に対して、今後研究開発をどういうふうにしていくのかという計画をアンケートしているところでございます。こちら、2020年度の研究開発額は102社の合計では19年度に比べて1.9%増になるという微増の結果となっております。一方で、6割の企業が研究開発計画は未定、非公表としておりまして、回答があったところは微増としているんですが、やはり今後どうなっていくのかというのはまだ不透明な状況であると言えると思います。
一方、研究開発人材の雇用につきましては、今後の見通しで増やすと回答した企業が、19年度に比べて低くなっている、13.9ポイント減になっているといったところで、人材の採用というところでは企業がなかなか難しい状況になってきているといったことが言えるかと思われます。
15ページでございます。手元にお配りしているもので、「机上配布のみ」というふうなものがあるんですが、こちらの方は、我々が民間企業の方々にアンケートをした結果のものをまとめております。これからウィズ/ポストコロナ時代において、リアルやバーチャルの研究開発が重要であるとか、あとは、レジリエンス、さらには環境、そういった分野が重要であるといった声も聞かれているところでございます。
こちらのスライドの15ページ、皆様のお手元の16ページでございます。こちら、経産省さんの資料でございますが、企業の売上げと研究開発費の関係を示しているものでございます。売上げと研究開発費には一定の相関が見られると言われておりまして、今回売上げの予測から、コロナの危機においても、企業の売上げの減少に伴いまして研究開発費が約1兆円減少するのではないかといったことも言われております。
次のページでございます。こういった状況を踏まえまして、これは経済財政諮問会議の資料ですが、リーマンショックのときには、やはり日本の企業は研究開発投資の回復に時間がかかってイノベーションが低下してしまったというふうなことが言われております。今回、先ほども申しましたような状況の中で、同じ轍(てつ)を決して踏んではならないといったところであるのかなと我々も思っているところでございます。
続きまして、ベンチャー投資への影響のところでございます。次のスライドをお願いします。コロナのショックで、先ほど民間投資の影響を見ましたが、ベンチャー投資にもやはり影響があると考えております。リーマンショック時にも大学発ベンチャーの設立やファンドの総額が大幅に減少したということがございます。日経新聞社さんの調査によりますと、2020年1月~6月の国内のスタートアップの資金調達が前年度に比べて約5割減額したといった数字が出ております。一方で1社当たりの調達額は19%増となっております。こういう状況の中ですが、やはり成長を続けようとするところにはしっかりと資金が集まっているといった状況もうかがえるところでございます。
続きまして、次のページでございます。こちら、すみません、事前にお渡ししているものに入っていなかったのですが、本日追加で入れたものでございます。こちらは一般社団法人ベンチャーエンタープライズセンターが調べたデータですが、本年1月~3月のベンチャー投資が前年同時期と比べまして約20%下がっているといった数字がございます。この分野につきましては、バイオや製薬関係については実は比率としては伸びているといった状況になっております。やはりこういった特定の分野に資金が集まってくるといったことが今後の傾向としてはあるのではないかとうかがえるところです。
次のページでございます。次のページは、5月にトーマツベンチャーサポートさんがスタートアップ、ベンチャー企業にアンケートを行った結果でございますが、約7割の企業が売上げ低下、資金確保の懸念を抱いている、さらには約4割のスタートアップ企業が、6か月以内、半年以内に資金の枯渇を懸念していると、そういった状況がございます。
続きまして、研究現場への影響というところでございますが、次のページをお願いいたします。こちらはNISTEPが研究現場にアンケートを行った結果を抜粋しているものでございます。今回のコロナの影響が日本の科学技術にどういう影響を及ぼすのかというところをアンケートしたところでございます。大きかったところとしまして、研究開発活動の在り方がそもそも変化してくるであろうといったことや、やっぱり新しい科学の発見、イノベーションが起こるきっかけになるだろうと、そういったところが回答としては多くなっているところでございます。
次のページお願いします。一方で、今後どういうふうなところを重視していくべきなのかといったところのアンケート結果では、もちろんこの国難を克服していくこと、経済危機を克服していくこと、こういうこともございますが、中長期的な観点で着実に基礎科学を推進していくこと、さらには共通基盤の充実、産学官等の連携を推進する、こういったところも高い回答として出ているところでございます。
次のページお願いします。更に具体的に、じゃ、国にどういうふうなことを要望するのかといったところをまとめているものでございます。研究開発現場の環境整備といったところで、オンライン化に対応する環境の整備だったり、あとは、遠隔操作が可能なロボットの導入とかリモート化、そういったところのニーズが現場からも出てきているところでございます。
続きまして、マル5は地域への影響です。地域への影響としまして、我々のイノベーション・エコシステムプログラムという内局の事業がございますが、この支援先にヒアリングをした結果をまとめております。まず一つ大きな意見としてあったのが、やはりコロナの影響で新規の案件の開拓が進まなくなるといったことが言われております。さらには、物流などの観点もありまして、やっぱり研究に必要なモノやヒトの確保が困難になっているといったことも意見として挙げられています。さらに、こういった中で、新規に提携できる企業を一から開拓するノウハウ・体制がそもそもなくて、やはり今後、地域の科学技術が停滞していくおそれがあるといった声が上がっております。こちらを踏まえまして、議題2になりますが、今後、我々としても地域イノベーションの対策を考えていかなければいけないというふうなことを考えております。
以上、ちょっとざっとでございますが、影響を説明させていただきましたが、これらを踏まえまして、今後こういった方針で進めていくべきかといったことを簡単にまとめております。
次のページお願いします。まず経済社会への対応としまして、研究開発投資がなかなか制約される中でしっかりとイノベーションを創出していくためには、産学官がしっかりと連携していくことが必要だと考えております。その中で特に、新しい未来・社会を創り上げていく、その人々の行動変容や問題意識・価値観の変化、そういったところを起こしていくような研究開発、さらには研究的なシーズの育成、こういったところはやはりしっかり大学や国が主導で進めていくべきだと考えております。更にこういう変革を牽引していくためには、大学のベンチャーやアントレプレナーシップ、そういったところが更に重要になってくると考えています。一方、日本の社会の在り方としまして、一極集中型の日本の構造から自律分散型、そういったところに進めていくためには、地域イノベーションのエコシステムの形成がより重要になってくると考えております。
次のページでございます。民間投資の促進という観点からしますと、レジリエンスや感染症対策、環境とかもそうですし、DXなど、そういった特定の分野の研究開発がやはり重要になってくると思われます。ただ一方で、これらの研究開発を民間企業さんが投資をするときに、海外へ流れていってしまうといったことも懸念されると思います。
そういった中で、民間がリスクを取って研究開発を行うものを国として更に国内の大学や企業へ投資されるために、しっかりと国としてサポートしていく。そのためには、大学のオープンイノベーションの体制だったり、大学の優れた研究シーズをしっかりマッチングしていくこと、また、ポテンシャルの高いベンチャーを創出していくこと、そういったことが必要だと考えております。
また、こういった社会の変革期に、全世界共通の課題を抱えている中で、日本が先行して成功事例を発信していくといったことを世界に示すことも重要であると考えられ、こういった研究開発をしっかり大量に、量的にもしっかり確保し、短期集中的に支援していく、そういったことが重要でないかと考えております。
次のページでございます。最後、オープンイノベーションの発展ということで、社会の変革が進んでいく。リモート化なども進んでいきますし、あと、民間企業さんも研究開発人材の確保というのがなかなか難しくなっている。そういった中でやはりオープンイノベーションの重要性はますます高まっていくだろうと考えております。そういった中で、本格的な組織対組織の連携を着実に進めていくこともそうですが、やはりスマート化・リモート化、そういったものに、新しい形のオープンイノベーションにしっかり対応していくための体制や環境整備を進めていくことが必要と考えております。また、スタートアップ企業の巻き込み、スタートアップの位置づけも重要になってくると考えております。
それらを踏まえまして、最後、32ページにまとめておりますが、新たな経済社会づくりを推進していくためにも、やはり大学発ベンチャー、アントレプレナーシップをしっかりやっていくこと。あとは、産学官民による共創や地域イノベーションをしっかりやっていくこと。さらには、産学の共同研究を進めていくためにも、マッチングファンドやシーズの育成・マッチング、そういったことを推進していく。また、最後でございますが、オープンイノベーションの体制と環境の整備、そういったことも進めていく。大きく分けまして三つの柱を進めていくことが重要ではないかと考えております。
長くなりましたが、こちらからの説明は以上となります。
【須藤部会長】 どうもありがとうございました。それでは、ただいまの説明の後ですけれども、各委員からの御意見を頂きたいと思います。COVID-19の影響についていろいろな角度から御意見伺いたいのですけれども、主に産学官連携あるいは地域というキーワードを少し頭に置いていただいて、このCOVID-19の影響をどう考えるか、どうしたらいいかというようなことをお話ししていただければと思います。申し訳ないんですけれども、全員の方に順番に御意見伺いたいので、お一人3分程度でまとめていただければと思います。
それでは、順番に全員の方にお願いするのですけれども、私が持っている出席者の名簿がありますので、これ、順番に行きたいと思います。最初に、梶原委員、お願いします。
【梶原委員】 梶原でございます。先ほど御説明がありましたように、コロナの影響に改造手よって社会像や価値観が大きく変わった、またはゆらいでいるということは非常に重要な要素だと考えております。安心安全が重要ということが大きくクローズアップされており、その中で、企業における働き方も大きく変わってきています。
そういった中で、企業のビジネスそのものも今までと同じやり方をしていけばいいのかというと必ずしもそうではなく、ビジネスプロセスを見直し、サプライチェーンの在り方や、ビジネスモデルそのものを再構築するというイノベーションを必要とする状況です。このことは、先ほどの御説明のとおり、ある意味ではチャンスということになるかもしれません。
また、デジタル化が進む一方で、リアルでないとできないこともやはり残ります。人と実際に会うといったことも重要であり、その辺のバランスも今後必要になってくる要素だと思います。
レジリエントでサステイナブルな社会を目指すという中で、富士通におきましても、オフィスの在り方そのものを見直すといったことも行っています。今までと同じように一つの場所にみんなが集まってということではなく、先ほどの分散型の話も出てまいりましたが、コロナの影響によって地方への分散、一極集中ではなく、離れたところでも安心して仕事ができるといった考え方が進んでいくのではないかと思います。
民間からの投資の話がありましたが、やはり全体で見れば、業績が厳しい中で大きく縮小せざるを得ない業種もあり、投資を絞るといったところも出てくると思います。先ほど御説明の15ページにありましたように、分野によって濃淡があるので、どの分野で投資が減少しているのか、分野ごとにフォローすることが必要になってくると思います。
ベンチャーやスタートアップについても、民間からの投資がコロナ前に比べて減る可能性があり、政府による下支えが非常に重要になってくると思います。海外では経済をリカバーするのに当たり、グリーンリカバリーとか、ブリングバッグベターと言っています。単に元に戻るのではなく、どうやってコロナ禍(か)を過ごすか、コロナ禍の世界、コロナ後の世界は、従来よりも更により良い社会を目指すべきだということも見据えて、今までできていなかったことを変えていくことが重要と思います。
社会全体でイノベーションが必要になる中で、若手や女性を育成する、あるいは一緒に巻き込むということも非常に重要です。そのための投資や、そういう人たちと共創する場をどのようにつくっていくのか、それをどうやって仕組みとして、あるいは仕掛けをつくって自律的に回していくというかということが必要となります。また、御説明にあったようにスタートアップを巻き込んでということも重要だと思います。
最後に申し上げたいことは、研究開発現場のDX化そのものについてです。コロナによって、リモートで様々なことができるようにしなければならないわけですが、DX化を進める上で、研究開発がリモートでできる環境を整えることは、今までも着手されているかもしれませんが、もっとやっていかなければならないと思います。共用設備もリモートでうまく回すことが必要であり、そこは国がリードしていく必要があると思います。そこは企業として、産学連携、地域連携を進めていく上で重要になると思うところです。
【須藤部会長】 どうもありがとうございました。それでは続きまして、栗原部会長代理、お願いいたします。
【栗原部会長代理】 栗原です。映像が途切れる事があれば、御容赦ください。
地域のイノベーションについて、コロナ後の展望といいますか、期待を申し上げたいと思います。先ほどの御説明にもありましたが、コロナ禍で新規投資への影響や地方財政への影響が懸念されるところではありますが、他方で新しい産業ニーズとか生活ニーズが多々出てきているという点が1点目です。
それから、2点目に、東京の一極集中のリスクを皆さんが感じ、地域分散が必要である事、かつリモート等で地域が就業の場となり地域でできることがたくさんある事が分かり、かつそれを加速しなければいけないと認識した点が2点目です。
それから、3点目に、リーマンショックと違って、金融が収縮していないんです。今、何が起こっているかというと、企業の業績等については不透明ですし、まだ悪化する可能性はありますけれども、だからといってリーマンショックのように資金が足りないというわけではなくて、むしろ経済が動かず資金循環が停滞しているために、手元の預金が国債の購入に回っているというのがマクロでみた金融の実情なんです。
そうしますと、新しいニーズが出てきていること、地域分散が必要でかつリモートでそれができるようになっていること、3点目に何よりも資金が停滞していること、これをもって地域のイノベーションを今こそ進めるべきではないかと思います。
その際、ファンドレイズと地域イノベーションをどう進めるかという観点からすると二つあります。一つは、先ほどの御説明にもありましたが、地域連携プラットフォームという名前になるのかどうか分かりませんが、それぞれの地域で方向性とか産学官民連携での取組を共有する場、戦略を皆さんで共有しそれぞれ役割分担しましょうということを共有する場をつくることが改めて必要だと思います。
それから、具体的なニーズとシーズをマッチングするためのこの分野のマッチングビジネスがいま一度できないのだろうかというのが2点目。
3点目は地域ファンド。地域に滞留している資金や人材を利用して、地域ファンドのような形でイノベーションを応援できるチャンスなのではないか、そういう仕組みがいま一度必要なのではないかなと思います。
以上です。
【須藤部会長】 どうもありがとうございました。それでは続きまして、江戸川委員、お願いします。
【江戸川委員】 江戸川です。私の方からは、先ほど梶原委員からお話があったことと一部かぶりますが、研究費の観点とスタートアップへのリスクマネー供給の観点辺りをお話ししたいと思います。
まず研究費の関係ですけれども、御説明いただきました資料1の16ページにありますように、企業の研究費と売上げの関係というのは高い相関関係があると思いますので、今回のこのコロナの影響で売上げが落ち込めば、当然に研究費は落ち込んでいくだろうと思っています。仮に1割下がれば1兆円ぐらい下がるという試算だと思うんですけれども、この辺りの影響は避けられないというふうに前提として考えるべきだろうと思っております。
一方で、やっぱりリーマンショックのときと比べると企業活動としてオープンイノベーションが活発になっておりまして、多少の業績への影響はあったとしても、将来のコア事業をつくるようなオープンイノベーションはやめられない状況にあると思っております。なので、落ち込みの程度は、数字面でどうなるか分かりませんが、そんなに劇的にリーマンショック時と同じように下がるかどうかというと、むしろ全体的に選別が進んでいくというふうに考えた方がいいのではないかと思っております。
産学連携の分野でいうと、お付き合い型のような共同研究というのはやっぱり見直しが入ってくる。一方で、本気で取り組んで、事業化に向けて取り組んでいるような案件については、これをやめるという判断にはなってこないんじゃないかと思いますので、しっかり事業化に向けて進めている案件にどう大学側が対応していくのかということが問われるような局面になってくるのではないかと思っております。
また、新規のプロジェクトに関しては、企業間の交渉もそうなんですけれども、コロナの影響で交渉が遅れているということがありますので、特に今年度については、新規のプロジェクトというのは厳しい状況にあります。産学連携の収入サイドを見ると今期、来期辺りは金額的には影響が出てきそうなんですが、しっかり事業化を進めているようなオープンイノベーション案件については、むしろ従来のような補助金的な料金の取り方ではなくて、しっかりと適正な対価を取っていくというような対応を大学が行うことによって、収入減というところもかなりの部分削減できるんじゃないかということで、この辺りの改革を進めていくいい機会なのではないかと思っております。
また、少し違う観点ですけれども、トータルコストを減らすというか、効率化するという観点でいうと、やはり従来から話としてあった施設とか設備の共同利用について、これを機に、コストは下げざるを得なくても、実質的に研究に影響が出ないようなコスト削減策の一つとして進めていくいい機会になっているんじゃないかと思っております。
また、スタートアップへのリスクマネー供給の観点ですけれども、やはり私がスタートアップ支援に関わっている立場で見ていますと、一部の業種に関しては、事業会社若しくはCVCからの投資がストップし、事業計画そのものも見直しをかけざるを得ないというような状況が生まれております。産学連携に関しては、この10年でスタートアップを活用した大学の技術の社会還元というところがだんだんストラクチャーとしても定着したところではあったんですけれども、こういう状況下で、特にうまくいきそうになっているミドル、レイターステージの投資が思うように集まらないというような会社さんが出てきているので、この緊急時の対応として何らかこのステージのディープテック系のスタートアップをしっかり支えていくという施策を打っていく必要があるのではないかということも感じております。
以上でございます。
【須藤部会長】 ありがとうございました。それでは、木村委員、お願いします。
【佐々木委員】 1,000キロぐらい離れた福岡から参加しております、九大の佐々木です。私の方からは、このCOVID-19については、個人的には特に地方にいる人間としては、大チャンスじゃないかなと思っております。というのは、リーマンのときは、資金が蒸発したということで、お金を入れれば戻ったわけなんですけれども、このコロナの課題というのは、要は、社会の在り方そのものを変える必要があるというのがこの課題の本質ではないかなと思います。
なので、進まなかった弊害が一挙に進みますし、地方という観点ですと、東京一極集中に対しまして、地方でも東京と同じように仕事ができるということが皆さんよく分かったということ、さらには、社会変革が求められておりますので、むしろニューノーマルに向けた研究開発に対するニーズは高まっているのかなと思っております。
なので、民間からの共同研究を私の周辺でも15件ぐらいやっているんですけれども、確かに何社かからはちょっと絞ってくださいという話はあります。ただし、やはりコアの事業については継続という雰囲気でございます。他方、やはり少し民間資金が今年度、そして、来年度に向けてタイトになるのは分かっておりますので、国プロ等も確実に取るようにと周りの先生方にもお伝えしておりまして、研究開発、研究については継続できるのかなと思っております。
今後ですけれども、四つ手短に意見を申し上げたいと思います。一つは、資料の最後のページに書いていたんですけれども、やはり民間もここ数年は厳しい状態が続きます。なので、時限で結構ですので、民間が共同研究をするときには、少しそれにプラスアルファのインセンティブになるような交付金的なお金若しくはマッチングファンド的な制度をつくっていただければ、民間さんも特にこれから新しいことを始めたいときの大いなるインセンティブになると思っております。経産省さんは研究開発税制ということでやられておりますし、それは基本的に企業さんにお金が行きますけれども、是非アカデミアの方のインセンティブになるような制度を、時限で結構ですのでつくっていただけると効果的だと思います。
二つ目は、どこの大学でもいろいろ考えられていると思いますけれども、結構、今年度、来年度、やはり研究費を繰り越さないと駄目だというケースが出てくるんじゃないかなと思っております。なので、今でも間接経費等を基金化したり、繰越しというのはできないことはないんですけれども、やっぱりこのコロナの時期は、時限でも結構ですし、これを機会に是非、特に間接経費の収入はもう基金化して大学できっちり繰越でき、そして、積立てられるというような形にしていただければ、特に新たな予算が要らずに、産学連携等がやりやすくなると思います。
3点目は、やはり、研究支援者の雇用を確保するというのが大事だと思います。例えば研究支援者の任期が3年とか5年で切れたときに、今は非常に職探しが難しい状況だと思います。面接すらなかなかやりにくい状況ですので、せめて3年とか5年とか、あと、そのうちに10年という期限が来ると思いますけれども、そういうところを少しフレキシブルにできるような形にしていただければと思います。これは法律を変えるのは大変ですけれども、例えばJSTの事業でしたらJSTの雇用にして、それで大学に出向していただくとか、やり方はいろいろあると思いますので、是非、研究者、研究支援者の雇用の安定化に対してできることをしていただければと思います。
それから、最後ですけれども、先ほどもありましたように、やはり、リカバリーをどうするかというところが大事でございます。欧州ではグリーンリカバリーということで、我々も逆に戦々恐々としているところがございますけれども、日本もアカデミア主導でのリカバリーというところを是非前面に出して、大学がこのコロナの復興に貢献するということを前面に出すということが、我々大学人にとっての責務だと思いますし、政府としても大事なのかなと思っております。
一応、私からは以上です。
【須藤部会長】 どうもありがとうございました。それでは続きまして、佐藤委員、お願いします。
【佐藤委員】 佐藤です。よろしくお願いいたします。私の方で参りますと、産学連携というところで、あと、大学にそもそも学生とかがオンライン授業とかになって行けていないというのがここ半年ぐらいあったと思うんですけれども、今後、大学での研究とか仲間づくりとかそういったところというのが、そもそも大学の価値自体がちょっと見直していかないといけないというところでいくと、大学の研究主体になったベンチャー企業の創出というところが、今はいいのかもしれないんですけれども、今後結構影響が出てくるのではないかなと懸念しているところでございます。
ベンチャーキャピタルというところでの投資への意欲という観点でいきますと、変化は特にありません。一部、昨年末ぐらいまでは、COVIDになる前は、どちらかというと起業家優位というような市場で、お金もベンチャーキャピタルがかなり資金調達してたくさん持っていたということもあって、全体的に起業家に対しての評価が高いようなところから、やっぱりこのCOVIDの影響もあって若干市場も落ち着いたこともあって、我々VCからすると、仕込みどきという、比較的企業評価も安く投資ができるというふうなことを言うような人もおりますけれども、私の感覚でいくと、そこの部分は変化はさほどないのかなと思っています。
ただ一方で、昨年度末ぐらいにベンチャーキャピタルのファンドレイズがうまくいっているところに関しては、引き続き全然問題はなくあれなんですけれども、1年後とか2年後ぐらいにまた新たなファンドを設立するというようなところになりますと、やっぱり企業のファンドへの出資の意欲が結構低下している可能性もありますので、その辺に関してはまだ不透明なところは大きいかなとは思っています。
我々ベンチャーキャピタルなんですけれども、大学発ベンチャーへの接点という意味でいくと、なかなかピッチイベントとかを大学の方で実施する機会というのが過去はなかったかなと思うんですけれども、今回、地方の大学の、私、審査員等もやらせていただく機会があるんですけれども、オンラインになったことによって、いろいろな投資家がエリアを関係なく参加することができるようになるといった意味では、このCOVIDのポジティブな側面としては、今まで参加できなかったような投資家に広く知っていただいたり、企業連携のチャンスが生まれるというのは、非常にオンラインでやることの意義かなと思っています。
私のところでいくと、もう既にいろいろな先生方にお話しいただいているところでありますので、この程度かなという感じで、以上にさせていただきます。ありがとうございました。
【須藤部会長】 高木委員、お願いします。
【高木委員】 高木です。産学官連携の観点で、コロナ禍の影響に関して意見を述べさせていただきます。
まずは、DX、デジタルトランスフォーメーション、がさらに加速されていくと思います。産学官連携においてもインフラとしてのDXを積極的に活用すべきです。マイクロソフトのサティア・ナデラ社長によりますと、このコロナ禍の影響で2年分のDXが2か月で起きたそうです。DXが産学官連携に与える影響を中心に、3点ほど述べさせていただきます。
まず1点目は、物理的な距離がハンディキャップでなくなるということです。都市部の大学と地方の大学の差が縮まる傾向が強まると思います。さらに、地方大学を中心とした地域の活性化、この在り方も、従来進めておられる取組に加えて新しい取組も出てくるのではないかと思います。
この地の定義ですが、地理的な、あるいは物理的なある範囲でのコミュニティ、エコシステムであったわけですが、少なくともコミュニケーションあるいはデータ流通という意味では、距離のハードル、ハンディキャップが低くなったと言えます。地域という概念も変わるのではないかと思います。サイバーフィジカルシステム、CPSと言われますが、従来フィジカルが中心であった地域の活性化が、サイバーの領域でのコミュニケーションのウエートがますます大きくなっていくと思います。
それから、2点目は、先ほど2ページ、3ページで御説明をいただきました、人材、知、資金の好循環のシステムについてです。コロナ禍でいろいろな影響が出てくるという御説明がございました。そのとおりだと思いますが、ポジティブに考えますと、例えばこの上のところにあります社会的要請の中には社会課題解決があります。産学官連携でこの社会課題を解決していくという必要がありますが、コロナ禍のような大きな社会課題は一つの学問分野、学問規範では解決できません。対象とするシステムが大きくなり、複雑になり、かつこの課題が重要であればあるほど細分化した学問分野を横につなぐ必要があります。文理融合、文理横断という言葉は少し使い古されていますが、コロナ禍のような大きな社会課題の解決は、この文理融合を加速する契機になるのではないかと思います。
例えば感染防止と、経済活動あるいは個人の自由とのコンフリクトなど、いろいろな社会的課題が表面化しました。文科省あるいはJSTでもこのような課題の解決のための取組を始められていますが、実は私も関係しております学会でもこのような課題を文理融合で解決していこうというプロジェクトが始まったところです。
先ほど23ページで御紹介のありましたNISTEPのアンケートの中で、今後の科学技術誠s区の方向性として重視すべき点として、人文学、・社会科学の領域にもまたがる学際研究や分野間連携を進めるべきである、が23%であり、決して低い数字ではありません。これらの活動は、まずは主にアカデミアの中での活動になると思いますがこれが更に進みますと、そこから新たな知見あるいはイノベーションの種が期待できると思います。そうしますと、産業界にとりましても魅力的な内容になりますし、新たな産学官連携につながるのではないかと思います。
3点目はアントレプレナーシップ教育についてです。9ページになりますが、このアントレプレナーシップ教育あるいは育成の重要性は従来から言われています。重要なのは、教育の内容とともに、環境、だと思います。例えば疑似体験、あるいはインターンシップとある種のテレワークを組み合わせたようなリアルな体験ということも、今後DXで可能になるのではないかと思います。もちろん一部の恵まれた環境の大学生は、現在でも実体験が可能かもしれませんが、アントレプレナーシップ教育を広げるためには、DXを大きな駆動力にする必要があると思います。
以上でございます。
【須藤部会長】 ありがとうございました。それでは続きまして、長谷山委員、お願いします。
【長谷山委員】 長谷山です。地域の大学の視点から、現状とその分析、今後に向けた意見について述べさせていただきます。
私ですが、今年度より情報科学研究院長を務めております。自身の部局の共同・受託研究等の契約金額を前年度の同時期と比較しますと、企業からの申出に遅れが出ている状態です。契約の内容の変更や更新が行われないなど、懸念される事項も出ています。
一方で、3密回避など感染拡大防止対策を講じた上で、業務の効率を高めるための職場環境整備の検討が企業で進められていることを実感しています。単なる現状のコロナ対策にとどまらず、ウィズコロナ、アフターコロナ時代の新しい事業を検討するもので、地域の企業と大学との新しい連携の形が生まれようとしていると感じています。
例えば、企業が地域の大学と連携し、新規事業検討のためのサテライトオフィスを学内に実現したいという動きが出ています。これは従来の寄附講座や連携講座の仕組みでも実現され得るものですが、その実施内容は、より企業で行う事業に踏み込んだものになっています。小規模ですが、リサーチパーク構想に近い発想であり、複数企業が参加することが想定されています。
このような新しい動きは、この時期だからこそ、今まで先端研究の導入を考えていなかった事業へも、注目して導入することが可能となり、長期にわたる在宅勤務で困難となったモチベーションの維持と、専門性を生かした労働力の強化ができたことにより生まれたものと捉えてます。
先に述べた共同研究契約の申出に遅れが見られることは、マイナスではありますが悲観的な予測とは逆に、契約件数に含まれる地域企業の数に増加が見られることも確認されています。中小規模の地域企業の体力を考えて、この増加傾向が一過性のものにならずに、新しい産学連携の体制を生み出し、地域固有のイノベーション創出に繋がるよう、新しい視点の支援をお願いしたいと思います。
以上です。

【須藤部会長】 どうもありがとうございました。続きまして、林いづみ委員、お願いします。
【林(い)委員】 よろしくお願いします。今回コロナで、私も三十数年の仕事の中で初めて3月下旬からずっと在宅勤務というような状況で、ある意味、気づきの時間でもあったなと思っております。
本日先生方から御意見いろいろ伺って非常に勉強になりました。例えば知財戦略本部などでは、今年の知財の推進計画2020では、これまでのSociety5.0と実態とのギャップはこれまでも認識はされていましたが、今回の新型コロナで我が国のデジタル化の遅れが非常に顕著になった、はっきりし、今年はDX促進の重大局面であるというまとめをしています。
この産学連携におきましても、何人かの先生からも話がありましたけれども、DXの促進をどういうふうにやっていくかが重要と思います。例えば産学連携の担い手となる関係者の皆様の在宅勤務環境が果たしてできているのか。例えば組織内の情報管理の高度化ができているのか、ペーパーレス化ができているか、デジタル化ができているか、また脱判子ができているか。授業はZoomでやっているんだけれども、判子を押すために、やはり大学職員の方が、大学に来なきゃいけないというようなことも聞いております。特にそういったところを進める必要があると思います。文科省や経産省が産学連携関係で行政から大学に対していろいろ要求される手続については、「隗(かい)より始めよ」ということで、全てペーパーレス、全て判子なし、ワンス・オンリー、何度も出させないということを徹底すべきではないかと思います。
本日の資料1のスライド24のアンケートの中でもそれに関連するようなニーズが挙がっていたと思うんですが、こうしてDXを進める中で、情報管理、セキュリティも重要になってまいります。それは組織の中でつくっていかなければいけませんが、個別の大学では財政的にもマンパワー的にも難しい。というのであれば、コア部分を統一するものを文科省の方で提供していくというのも一つの方法ではないかと思います。
一つの例なんですけれども、アメリカで保健省がヘルスケアデータのデータポータビリティのためのブルーボタンシステムを普及させるに当たって、「アメとムチ」の形で、保健省が作ったコア部分の仕様を取り入れたアプリケーションを何年以内に採用することなどをインセンティブプログラムの受給条件として、ステージごとに、必須のmeaningful useメニューを設けて、5年以内に導入しなかったら、6年目からだんだんにペナルティとして、だんだんに受給パーセンテージを下げていくということで導入を図っています。日本でもまずは国がDXを導入するためのインフラを提供し、導入に当たっては「アメとムチ」での政策実現のツールを考えるのが有効ではないかと思います。
それから、2点目なんですが、私が日弁連などから聞いておりますのは、3月から4月にかけて無料の法律相談をすると、解雇の問題と倒産の相談、これが本当に山のように来るという状況だそうです。大企業は内部留保が結構あるかもしれませんが、例えばこの先の取引はもう決まっているんだけど、コロナでイベントとか取引の時期が延期されるということでキャッシュフローが止まってしまうと。そうすると、内部留保が小さいベンチャーや中小企業は、3月ぐらいの相談の時点では、半年、9月ぐらいになると本当に危ないという御相談がたくさんあったと聞いています。
ということで、そろそろもう皆さんのぎりぎりの時期が来るので、この秋を迎えて非常に苦しくなるベンチャー企業も出てくるのではないかと思います。特に大学発ベンチャーの方は、今まで泥臭い資金繰り、中小企業であれば、泥臭い資金繰りのノウハウというのもあるんですけれども、そういうことに余り経験のない学生や先生の方々がベンチャーを始めた場合には、そういうショックに耐え切れないという部分もあって、非常にもったいない形でそのベンチャー企業が海外に売られてしまったりとか、知財も切り売りしてしまうというようなこともあり得ます。
そういったことによって機微技術や人材が海外に流出してしまわないようにするためには、栗原委員がおっしゃったような地域ファンドの仕組みや、佐々木委員がおっしゃった雇用確保の緊急措置が重要と思います。今期、重たい法律でなく「緊急措置」ということでやっていったり、コロナ関連の補正予算で取る。今年はまずは目下のところではそれをやるべきではないかと思います。
以上です。
【須藤部会長】 ありがとうございました。予定の時間をもう既に超過してしまっているので、お一人二、三分厳守でお願いいたします。次は、もう一人の林先生、お願いします。
【林(隆)委員】 林でございます。ちょっと巻きを入れて説明します。
私の仕事は会社経営が主体で、ベンチャーキャピタルのお手伝いと、それから、地域エコシステム4か所ぐらいのお手伝いをしています。その観点からCOVID-19の影響をざっと見ますと、まず人や会社のコミュニケーションと合意形成のプロセスのこの価値観が変わったなと。つまり、対面式でやっていた前提が、もうバーチャルで構わないというふうに明確にシフトしました。取締役会も経営会議も全てバーチャルのウェブ会議でやっていますので、逆にこういったやり方が市民権を得るということは、分散型でいろいろな活動をすることに非常に有益になります。生産性もかなりアップする。これは実感として感じているなということと同時に、このデジタルツールをうまく使いこなせるかどうかが実は差別化にもなってきますので、格差が増えるかなと。これに乗れるところは多分普通に、元に戻っていくと思うんですが、乗れないところは置いてきぼりになり、こんな感じがいたします。
労働の評価についても、恐らく結果重視でいく形にシフトすると思いますので、そういった点では、ホワイトカラーの生産性を上げるというポジティブな効果があるかなと思います。
研究開発投資に関しては、一部遅れが出ているのは明らかですが、実は基本的に重要な分野、もう事業化するぞというふうにコミットした部分は投資は減っていないです。ベンチャーキャピタルについても恐らくそういう傾向は、何人かの委員の方がおっしゃっているとおりだと思います。むしろ競争に勝つために、相手が少しスローダウンしているうちに、今のうちにとにかく追いつく、追い越す、こういった形の研究開発は積極的ですね。
一方で、産官学連携の中でいうと、大学の研究室が今回も何か月かシャットダウンになったということが、地域イノベーション・エコシステムの中の重要な活動がある程度遅れをするとか、企業さんにとっては、大学の研究室が動かないために共同研究が遅れているということに関しては結構ネガティブなインパクトがあったかなと感じております。ここら辺、今回の危機はもうほぼ、そうはいっても脱しつつあるかなというふうに感じておりますけれども、今後の脆弱(ぜいじゃく)性をどうするのかなというのは課題が残ったのかなと感じております。
以上でございます。
【須藤部会長】 ありがとうございました。それでは、宝野さん、お願いします。
【宝野委員】 それでは、COVID-19が国立研究開発法人の一つ、NIMSの企業連携にどういう影響を与えたかを具体例を挙げながら報告させていただきます。
昨年NIMSでは11の企業と組織対組織の連携で共同研究を進めていたんですが、このうち2社との連携がCOVID-19の影響を受けて一時的に休止しています。また、本年度から連携センターの発足の話を進めていた1件も、次年度以降の検討に先送りとなっています。ただし、個別の共同研究は進めております。このような状況の中でも、マテリアルズインフォマティクスを中心とする将来志向の課題においては、新たな企業連携センターが発足したことから、COVID後の社会においてより必要とされる研究課題については、こういった困難な時期でも遅滞なく進めるという企業の意欲を感じました。
航空産業が大きな影響を受けたために、航空機材料に関する大型の企業連携も一時的に停止になっていますが、我々、長期的に取り組まなければならない材料の基盤研究は、運営費交付金や競争的資金を有効に使いながら粛々と進めているところです。
また、先ほどの御報告にあったように、コロナ後に大きな産業構造の変化が残ると予想されていますので、それらの分野でこれまで蓄積してきた材料に関する基盤研究を生かせる機会があれば、積極的に取り入れたいと思っているところです。
現在企業連携活動で最も困難を感じるのは、フェース・ツー・フェースでの交流が困難なことです。ほぼ全ての会議はウェブ会議で行っていまして、パワポによる研究報告を聞く範囲内では、リアル会議と全く差はないどころか、これまで何人かの委員がおっしゃったように、むしろふだん参加できない人も参加できるというメリットもありますが、その後の直接会話による人間関係の構築の機会が奪われたのは、新規連携課題の開拓には非常に打撃が大きいと感じています。
また、実験のための相互訪問も困難になったため、研究費から業務員等を雇用して、先方の研究者が訪問しなくても実験がローカルに進むような工夫も行っています。先ほどあった自律分散型というもののミニチュア版と考えています。
最も影響を受けているのは国際交流事業でございます。NIMSは国際的に優秀な人材を集めて研究に従事させているんですが、外国人ポスドク・大学院生が着任できないことは研究全体にとって非常に大きな打撃になっていますが、これについてはもうコロナが収まるのを待つしかないと、諦め気分です。ただし、この状況をネガティブに捉えるだけでなく、これまで忙し過ぎた研究者が比較的研究に時間を取れるようになってきたので、これを機会に、これまでなおざりになっていた研究成果を論文としてまとめて、成果を社会に発信するように各研究者に声がけをしているところです。
以上です。
【須藤部会長】 ありがとうございました。それでは続きまして、松尾先生、お願いします。
【松尾委員】 ほとんど皆さんが重要なポイントは御指摘されたので、短く行きたいと思います。2点です。
1点目は、今回のコロナ禍で様々なことがあったんですが、私は一番やっぱりポジティブに捉えていいなと思うのは、やっぱり人々のマインドセットの変化があったことではないかなと思います。要するに、デジタル化が遅れているということに気がついたことも非常に大きなことですし、先ほど資料の6ページにありました、NEDOから出ている今後の課題というのがあったんですが、あれ、実はコロナの前から言われていたんですが、誰も本気でやろうというふうにしていなかったのが、いよいよやらないといけないぞと。そして、そのときにどんな問題があるのかというのは、メディア等を通じて一般国民にも相当流布されているので、私はそういう意味では、改革をするハードルは下がったんじゃないかと。いろいろお金の問題とか雇用の問題はあるんですけれども、それが一番大きいのかなと思います。
その上で、私ども、今、岐阜大学と国立大学法人の統合をやっているんですが、最も困っているのは、やっぱり地方行政の縦割りなんですね。もう県境を越えると、昔の江戸時代の幕藩体制とほぼ同じような状況になっていますから、これ、地域創生、地域分散型社会をつくっていくときには、トータルにやっぱり変えなきゃいけない。今、トランスフォーマティブイノベーション、要するに、社会全体をシステムごと変えていくというような言葉があって、先ほどの偉人賢人の人たちの言葉の中にもありましたけれども、ああいうスタンスで変えていくことが是非必要だなというふうに思います。ですから、ピンチをどうやってチャンスに変えるかというのが一つ。
それから、二つ目に、具体的に、じゃあ、どうするのかということで、例えばこういうオンラインとリアルを組み合わせてやるということで、教育の質ですね。これ、九州大学の佐々木先生とか辺りも随分やられているんですが、こういったものをもっと推し進める。それから、さっきのスタートアップの話なんですが、これも裾野を非常に広めようと思ったら、プラットフォームをつくって、相当幅広く底辺、例えば名古屋で今いろいろイベントやっても200人、300人なんですが、これを10倍の2,000人、3,000人ぐらいにしないと、なかなかスタートアップも育ってこないということで。だけど、今そういうのをやれるいいチャンスであるかなというふうに思っています。
ですから、様々御指摘をされて、私も一々うなずくばかりなんですが、同じことを考えているんですけれども、今やっぱり大事なことは、今のアドバンテージになっている部分を生かして、どうやって具体的に世の中を変えていくのかという発想でやっていく必要があるんじゃないかなと思います。
以上です。
【須藤部会長】 どうもありがとうございました。それでは、渡部先生、お願いします。
【渡部委員】 渡部でございます。今、この4月から直近、短期的な対応を大学としてはやってまいりまして、大体それが終わって、ニューノーマルに向けての施策をまとめているところです。これ、全部お話しすると時間がかかりますので、今日は短期的に何が起きたかというエビデンスだけお話をしたいと思います。
まず一つ、共同研究に関してですけれども、当然実験ができませんので、その部分遅れます。恐らくこの影響は最後まで残ると思いますので、小規模な共同研究の件数は恐らく今年は減る可能性はあると思っています。一方、大規模な組織間連携に関しては、もともと予定されていたことがなくなるとかいうことはほぼありませんでした。契約が3月末でできなくなったというのはありましたけれども、それ以外のところには影響は出ていないし、それから、新しい契約で、この間ソフトバンクさんとの間では10年200億の契約、これ、締結できました。それから、海外でTSMC、IBM、そういうところとの契約も進んでいますので、そういう意味では、オンラインでかなりできるということです。
これ、実はハーバードとか、今いろいろな交流をやっていますと、向こうもロックダウンしていますので、私たちとオンラインでやり取りするのと、ハーバードの同僚とやり取りするの、同じなんですね。だから、そういう意味では、地域と、ハーバードと、どこでも同じという環境が今あるということは、これは逆にすごいオポチュニティになっていると思います。
ただし、この先、これ、トップ同士のいろいろなことで成り立っているものですから、リアルでやっぱり会ってない、そこがディクラインすると、これは全体が崩れてしまいますので、やっぱりそこのリアルの、どうしても貴重な、価値の高いリアルをどうやって維持するかというところはやはり課題だと思います。
次、ベンチャーでありますけれども、今お話が随分ありました。営業できない、それから、特に病院なんかをお客さんにしているベンチャーなんかはもう仕事になりません。インキュベーション施設もロックダウンしましたので、仕事もそこではできないような中で、ただ、全体としてスタートアップは皆さん、資金、出資金でやっていますので、当面そんなに大きな影響は出ないですが、秋口にかけてやはり資金調達をしないといけないところが結構あります。
そこを乗り越えられるかというところで、今のところ、金融が何とかなっているのと、それから、4月の初めの段階で緊急にベンチャーに対してアンケート調査をやりましたが、公的資金が非常に大事なので、そういうことを政府にも要望いたしました。そういう中で、公的支援を我々も預かっていますので、子会社のIPCにも指示をして、ペイシェントキャピタルの役割はしっかり果たすというような方針でやっています。
その中で、直近も上場した会社も、エグジットした会社もありまして、1社は、どちらかというと、コロナテック的なものでしたので、そういう意味では質のいい、ベンチャーに対する影響は極めて限定的です。
それと、今IPC、子会社の投資事業会社は、カーブアウトを始めています。カーブアウトというのは、企業の経営資源を切り出していただいて、大学と一緒にベンチャーをつくるという、そういうファンド。これは昔こういうのをやって、ほとんど案件がなかったということで、出資事業の委員会では大分反対されたんですけれども、試しにやってみて、実績が出たら続けていいみたいな話で、27億、民間資金も導入ました。試しにやってみたということで、1月からやりましたが、これがもう既に投資実行2件発表していまして、プラス3件は投資実行が決まりました。これはカーブアウトというのは、昔は確かに案件はなかったかもしれないんですが、このコロナで多分そうした案件が出てくると思います。こういうところに産学連携の役割というのがかなり大きく出てくるんだろうということで、こちら、実は増資をして本格的にやりたいというふうに思っています。
それからもう一つ、非常に大事な話で、データです。今回、このコロナになって、一つは感染症の予防薬だとか治療薬とかそういうのを開発するため、もう一つはシミュレーションです。経済とどうやって両立させるかというシミュレーションの研究というのが非常に重要だし、これは内閣官房からも要望がありました。東大としては、何十人のチームをつくって、それに対応するということを連休中に用意をしまして、準備をしてきたわけですけれども、実はそれをやろうとすると、クラスターの実際のデータが必要です。ダイヤモンド・プリンセスとか、いろいろなデータが必要です。そこのデータにアクセスができないという問題が非常に問題でした。
連休中からずっと内閣官房、内閣府、厚労省といろいろお話をして、ようやっと1件についてはそこのアクセスができるようになりました。これ、本当は第2波に間に合わせるためにやろうとしたんですが、間に合いませんでした。第3波に間に合うように、あるいは、それから、来年のオリパラ、これ、どうやってもやっぱりオリパラのシミュレーションはしないといけないだろうということで。
産学連携では今までデータということの重要性あるいはそれの制度をどういうふうに考えるかは余りやってきていないんですけれども、この機会にしっかりした形で、これは大学も政府も企業も、データガバナンスとデータの利活用の体制をつくっていかないといけないということを非常に強く感じたわけです。
ということで、直近はそういうところでございます。また、ニューノーマルの話については、機会があればしたいと思います。
【須藤部会長】 どうもありがとうございました。木村先生、入っていますか、今。木村先生、入られていますか。
【木村委員】 はい、入っています。
【須藤部会長】 じゃ、お願いします。
【木村委員】 すみません、前半、音声の不具合で全く聞こえなくて、ちょっとずれたコメントになったら申し訳ありませんが、私の方からも2点ほど申し上げます。
京都大学のデザインスクールのコンソーシアムの活動について少し御紹介しますと、コロナ架で企業の業績等が悪化しておりますので、会員の退会が多いのではないかと危惧しておりましたけれども、現在のところ、さほど大きな影響は出ておりません。逆に、ポストコロナの社会への影響について、積極的にディスカッションに参加したいという声が大きいように感じています。
デザインスクールは、もともとは東日本大震災、3.11をきっかけとしています。その当時、中心者の先生が、このように複雑な社会の問題が発生したときに、一つの学問領域でこれを解くことはできない。残念ながら、我々専門家は、他領域と共通言語で協働できる教育を受けてこなかった。そのことを大きな反省点とし、深い専門領域を持ちながら、他の領域の専門家とコラボレーションができる博士人材を育てるという決意の下、デザインスクールが構想されました。
今回のコロナ禍の社会問題についても同様の状況にあるのかなと思っています。企業の方々は、ウィズコロナ、アフターコロナで、社会の在り方について自社だけで解決できるとは考えておられず、京大のデザインスクールのコンソーシアム活動に大きな期待を持っていただいているように感じています。
また、実際リアルなイベントはほとんどできなくなりまして、オンラインでの開催に切り替える、あるいはハイブリッド型と言われる開催のやり方の中で、時間と距離の関係から今まで活動に参加できなかった層が新たに加わるようになり、これまでとは異なったコミュニティが形成されつつあるというのはいいことだと思っています。既に御指摘があったかと思いますが、環境の変化を変革のチャンスと捉えるという視点で見直すと、新しい産学連携のモデルの在り方なども模索できるのではないかなと感じています。
二つ目、私、奈良県立医科大学の職にもありますが、こちらは医学の視点からイノベーションを起こすという、Medicine-based Town(医学を基礎とするまちづくり)という取組をしておられます。現在100社近い企業が、大変積極的に参加されていまして、こちらもコロナ禍で必要とされる新たな商品やサービスの開発に取り組まれています。もちろんこれはコロナ禍だけではなく、アフターコロナの社会の在り方にもつながるものではないかと思います。
企業は現在、守る姿勢だけではなく、積極的にチャンスと捉えて、医学の正しい知見を取り込んだビジネスに挑戦しておられる姿が見受けられます。企業サイドの積極的な参加もあり、既に商品化されたものとか、幾つか成功事例が生み出されております。
以上、簡単ですが、私の周辺で起きていることを御報告させていただきました。
【須藤部会長】 どうもありがとうございました。これで一応、今日御参加の先生方の御意見を全部お聞きしたわけですけれども、ちょっと時間がオーバーしていますので、この議論、この辺で終わりにしたいと思うんですけれども、せっかく頂いた貴重な御意見ですので、言いっ放しで終わってしまうと何のためにやったか分かりませんので、本件は録画、録音も取っていると思いますし、議事録も出ると思います。その辺を参考にしながら、来年度予算の要求、それから、今後の文科省での施策の検討、その二つに生かしていきたいと思っております。何かの機会に、恐らく議事録等で見る機会があると思います。もう一度確認していただいて、何か是非文科省に言いたいということがありましたら、是非再度直接文科省の方に言っていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
それでは、次の話題に行きたいと思います。議題2、今後の地域科学技術振興についての報告でございます。すみません、ちょっと時間が押していますので、説明の方をなるべく短めにお願いいたします。文科省の事務局と、それから、まとめていただいた林先生の方からお願いします。
【山之内室長】 地域支援室の山之内でございます。資料2-1、今、共有されているものを見ていただければと思います。第10期地域科学技術イノベーション推進委員会中間まとめ概要ということで、これを説明させていただきます。この委員会では、今後の地域社会課題の解決だとか、地域産業の発展を念頭に、地域科学技術イノベーション・エコシステムの構築について2月から議論してまいりました。報告書自体は資料2-2で現時点の成果として中間的に取りまとめたものがあるんですが、大部なので、この資料2-1の概要で説明させていただきます。
この報告書は、全部で4章で構成されておりまして、まず第1章、これまでの地域科学技術・産学官連携拠点形成の変遷ということで、クラスター形成から始まり、最近ではイノベーション・エコシステム形成へとチェンジしているということが書いてございます。
次の第2章、最近の情勢でございます。ここでは三つ書いておりまして、2-1、政府方針による地方創生だとか、2-2、文部科学省の科学技術行政及び大学行政における「地方創生」ということで、うちの室で行っている事業だとか、大学行政としてはCOC+事業、あるいは栗原先生にも少し触れていただきましたが、高等局で産学官の議論の場となる地域連携プラットフォームの構築を検討しているんですが、そういったことを記述しております。2-3、新型コロナウイルス感染症の流行による影響ということで、先ほど事務局の方からも説明をしていただきましたけれども、うちの課で行ったアンケート調査の結果などを記述しているところでございます。これによると、コロナウイルスの拡大による企業の産学官連携に対する投資の大きな落ち込みが懸念されているというところでございます。
第3章では、これまでの科学技術イノベーション事例からの教訓ということで、自治体と大学からヒアリングした結果を載せてございます。特徴とか、学ぶべきことについて記述されております。
次のページ、2ページ目でございます。第4章のところでは、地域イノベーション・エコシステムの形成に向けての提言になります。4-1では、イノベーション創出そもそもの意義、4-2のところでは、イノベーションを創出するための具体策を記述しております。
まず4-1でございます。背景としては、新型コロナウイルス感染症の拡大は、一極集中型の日本社会構造の脆弱性を浮き彫りにしたと。そのため、地域課題を自律的に解決し、発展し続ける仕組み、イノベーション・エコシステムを形成することが必要ということを書いております。矢印の下は、地域において科学技術イノベーションが果たすべき役割として二つあると考えておりまして、一つは社会的課題の解決、もう一つは産業発展ということを書いてございます。
4-2が、こういったイノベーションを創出してエコシステムを形成するための具体策が書いてあるんですが、ここでは、自治体だとか大学、企業などの役割を記述しております。字だけと分かりづらいので、参考資料1-1を見ていただけますでしょうか。まず自治体の役割でございますが、課題として、青枠で書いてございますが、地域の課題は絶えず変化・複雑化しておりと、そういったことが大学、自治体、企業のそれぞれの立場からのみで地域課題の解決やイノベーションを創出することは限界にきていると。
その対応として、矢印に下に書いてあるんですが、対応マル1としては、地域創生や地域住民に最終的な責任を有し、地域ニーズを把握する地方自治体が地域共創の場を構築する必要がある。対応マル2としては、この地域共創の場において、産学官で共有できる地域ビジョンを策定。また、対応マル3、マル4とあるんですが、ここでは、地域共創の場において、地域ビジョンの実現に向けた産学共同研究が行われているかの確認だとか、地方自治体はこの研究に対して実証フィールドを提供していく必要があるのではないかと考えております。
次に、次のページでございますが、これは地方大学の役割について、そちらをちょっと見ていただければと思います。地方大学の役割について書いてございます。まず大学の課題のイメージでございますが、左から企業、大学、自治体となっております。下の薄い青色のところが、今の産学官連携の現状を表しております。課題は大きく三つあるのかなと思っております。まず課題のマル1、これは企業と大学の関係の課題でございます。特定の教員と個別企業の関係に閉じた、お付き合いの小規模共同研究が多くて、異分野融合や新事業創出につながらないのではないかと。真ん中の一番下に研究チームというところがあるんですが、やはりシーズを持っている研究室のチームを組んでいて、企業とも基盤的研究をやるところのみの共同研究。限定的で異分野との融合など研究の広がりにかなり課題があるのではないかと考えております。
課題のマル2でございますが、大学と自治体の課題でございます。自治体からの参画が担当者レベルにとどまることが多くて、自治体の政策立案に影響しないなどの課題があると。真ん中の課題マル3でございますが、大学と企業、大学と自治体の連携で得られる産学官連携のノウハウとかネットワーク、こういったものは研究チーム内に閉じており、他部局と共有されない。また、国の支援が終わった後に研究チームが解散するなどが結構多いんですが、そういった場合、大学に蓄積されず新たなイノベーション創出だとかエコシステム形成につながらないのではないかというふうに考えております。
次の机上配布の3ページ目でございます。これは地方大学等の役割、対応策のイメージ、今言った課題に対する対応を書いてございます。対応のマル1でございますが、他分野・シーズへ広がるように、部局横断的で、かつ企業の事業戦略にも対応した産学連携マネジメント体制を構築する必要があると。左側に企業の図がありますけれども、企業は基盤的研究開発から社会実装に向けて、試作品だとかプロトタイプなどステップアップしていくと思います。それぞれに対応するマネジメント体制を大学内につくる。そうすることによって、企業から共同研究資金を多く出してもらうということが必要だと考えております。
対応のマル2でございます。ここは大学と自治体の関係についてでございますが、地域共創の場を通じた地方自治体の組織的協力(ハイレベル職員の参画)。そうすることで、予算措置、県費だとか、実証フィールドの提供などが行われるようになると。
対応のマル3、真ん中のところでございますが、ノウハウとネットワークについては、大学の知として蓄積されるよう、学長直轄の全学組織を構築する必要があるのではないかと。
対応のマル4、課題のマル4というのはなかったんですが、やはり地方大学は大きな大学と違って何でもそろっているわけではないと思います。そのため、他大学から研究シーズだけじゃなくて、人材などのリソースを融通してもらうなどということも考えられるのではないかと考えております。
すみません、資料2-1の概要に戻っていただければと思います。概要の方、資料2-1です。すみません。その2ページ目の、今、4-2-2の地方大学の役割まで説明させていただきました。4-2-3でございますが、ここは産業界等の役割ということで、地域作業の中核を担う中堅企業だとか、域内に工場や研究所を持つ大企業とか、そういったところ、あるいは栗原先生もちょっとおっしゃっていましたが、地域の実情に通じた地元金融機関だとかベンチャーキャピタル、こういったところの参画が重要ということを記述しております。
4-2-4、人材の育成・確保についてでございますが、研究者のみならず、マネジメントだとか、URA、こういった育成・確保が重要であると。それと、学生や社会人を社会イノベーターとして輩出するための教学面の改革も必要だということを記述しております。
最後、4-2-5、エコシステムの形成でございます。国の支援終了後も自立的にイノベーションを創出できるエコシステムの形成について書いてございます。マル1といたしましては、地方大学における産学官連携体制維持のための民間資金獲得の戦略だとか、あるいは地方自治体の政策実現ツールと大学を位置づけられることによる自治体からのリソースの提供、県費だとか実証フィールドの提供とか、そういった戦略が必要であるということを書いてございます。
こういった産学官の具体策などの関係を図にまとめたものが、先ほど参考資料を見ていただきましたけれども、参考資料の最後のページに書いてございます。後で参照していただければと思います。
説明は以上でございます。
【須藤部会長】 主査を務めた林先生、何かありますか。
【林(隆)委員】 山之内室長からかなり包括的にきれいにまとめていただいておりますので、内容についての補足というよりは、中間まとめに至るまでちょっと雰囲気等を説明いたします。
御存じのとおり、地域イノベーション推進委員会の委員の皆様は、各地域で実際にイノベーションをリードされている、そういった委員の方が大変多うございます。ですから、議論もかなり熱いものが実はこの文書の背景にはございました。やはり地域でどうやってイノベーションを起こすかということに対しても、地域課題を解決するというふうに言うと少し小さめに聞こえてしまいますが、やはり地域の強みを生かして、地域の課題意識から始まるけれども世界の課題を解決するぞというぐらい、そのぐらいの意識を持ってやはり地域のビジョンができていなければいけないんじゃないだろうかというようなこと。ですから、そういった視点から地域自治体の役割としてビジョンの明確化をしていただきたいという意図がそこに入っております。
それと、今まで、今現在進行形の地域イノベーション・エコシステム形成プログラム、この推進とともに、学びがやはりかなりあります。それの一部は、やはりこの活動は全体の中の当然一部であって、ほかのいろいろな支援プログラム、こういったことの連携が非常に重要だなという視点。地域連携プラットフォームの考え方をベースにしながら、どういうふうにほかの活動と連携するかという視点が重要だろうなということを議論されました。
また、リーダーシップの考え方が非常に大事だねということもありまして、産官学連携コーディネーターと言ってしまうと、コーディネーションだけやっているんじゃないだろうかと。そうじゃなくて、私たちが必要としているのは恐らく、ちょうどエコシステム形成プログラムで重要視している事業プロデューサーのような方々。この方々はビジネス感覚を持ちながら、先ほどの連携という、あるコミュニケーションをしてコーディネーションすることもしつつ、イノベーションをリードするというところ、これをこのエコシステム形成という活動を通じて育成していくと。言わばリカレント教育とか大学内でのアントレプレナーシップ教育とか、これは当然のことながら重要ですが、これはこれでやっていただくと同時に、こういった活動でオンザジョブ的にリーダーシップを育成するんだという視点、こういったところも大変重要ではないかなという意見が複数出ておりました。
室長の包括的な説明の背景にあるいろいろな議論を不十分ではございますが、多少説明させていただきました。ありがとうございます。
【須藤部会長】 ありがとうございました。ここで、今の御発表に対して何か少し意見交換したいんですけれども、何かございますか。一応中間取りまとめの段階ですので、今日いろいろ御意見を伺って、また委員会の方に持っていってもらって、最終的な取りまとめをしてもらおうと思っていますけれども、最終取りまとめに向けてこういうところをやってほしいというのがあったら、お願いします。御発言、声を出していただきたいんですが。
松尾先生、お願いします。
【松尾委員】 林先生、どうも大変難しい話を、しっかりと熱い議論をまとめていただきまして、ありがとうございます。それで、我々の状況を少し御説明したいと思うんですが、御存じのように、我々は第3類型で、岐阜大学は第1類型と。要するに、地域創生に貢献する大学で、我々は国際競争力を持つ大学みたいな、類型の違う2大学が一緒になってやっているんですが、そこの基本的なコンセプトというのは、3類型の大学も、割合としては結構地域創生には貢献しているし、それから、1類型の大学であっても、強い部分があって、それは世界に向かっている。
それから、これから地域創生やろうと思うと、一部でオンラインのデジタル化の話もありましたけれども、世界は地域に通じているし、地域は世界に通じていると。ですから、地域貢献しようと思ったら、レベルとしてはやっぱり世界と戦えるようなレベルで地域貢献していかないと地域の発展はないんだという、そういう観点からやるんですが、ただ、地域創生と国際競争力強化というのを同時に成し遂げるのは、恐らく東京大学とか京都大学とか一部の巨大な大学しかなかなか難しいだろうと思うんですね。
今日これ、地方大学の話が出ているんですが、非常にやっぱり体力が弱っていて、地域とバイで組んでやるというのは、私は今の状況は非常に難しいと。だから、やっぱり大学間連携だったり、地域連携プラットフォームだったり、こういった組織的なネットワークで、それでトータルとして機能を強化していくという、こういう方針を早く取ってやらないと、やっぱり地方創生ってどうしてもサイロ型になるんです、私もさっきもちょっと言いましたけれども、知事は自分の県のことしか考えていませんし、市長は自分の市のことしか考えていないわけですね。だから、そういうところで将来といっても全体的に沈んでしまうので、私は是非ちょっと広い視野から見た、そういう連携システムをつくらないと、やっぱりみんなで沈んじゃうと。ごく一部の大学だけ残るというふうになりますから、是非その辺りの視点を入れていただければと。入っていると思いますが。
【林(隆)委員】 ありがとうございます。そのような意見も委員の方々から出ておりまして、やはりこの時代に遠隔地同士の連携は絶対ありだよねということとか、今回のコロナの問題は逆にそういったことをやりやすくしているんじゃないかとか、そういった意識は十分出ております。地域の強い企業を巻き込もうというところもやはり強力に出ておりますので、松尾先生のおっしゃった視点を十分取り入れながら、やはり世界と戦って勝てるぐらいの意識を持っていないとどうしてもじり貧になってしまうと思うんですね。ですから、その視点を大事にしつつやらせていただきたいと思います。
【松尾委員】 ありがとうございます。
【須藤部会長】 そのほかございますか。いかがでしょうか。
【江戸川委員】 江戸川ですけれども、よろしいでしょうか。この構想、非常に大変すばらしいと思うんですけれども、1点だけコメントさせていただきたいのが、支援人材のところでございます。今映っているページでいうと、例えば4-2-3のところに、支援者として典型的なVCが書いてあるわけなんですけれども、こういう議論をすると、割とそれほど投資ニーズがない中でそれぞれの地域にベンチャーファンドを組成するというような動きが出てきがちなんですけれども、やっぱりベンチャーキャピタルのような世界ですと、余り経験のない方がファンド組成をして投資を進めていってもうまくいかないという点もあって、
やっぱりコロナ禍で割とリモートで遠隔でのやり取りがしやすくなっていることもありますので、VCは代表的な例なんですけれども、支援人材については地域に余りこだわらずに、全国区で活躍しているような専門家をきちんと活用するということをしていただきたいと思います。その他の専門家も同じことだと思いますので、この土地に根差して活動しなきゃいけない方と、プロフェッショナルとしてリモートも含めていろいろな形でサポートしていただく方というのを切り分けて、きちんといいチームをつくっていただくというところに重点を置いて進めていただければと思います。
以上です。
【林(隆)委員】 ありがとうございます。お金の話はまずいろいろ出ておりましたし、先生おっしゃるとおりの視点で、やはり地域のためにほかから助けをお願いするのは、全くこれはもうありですよね。実際今、エコシステムでも成功している地域の皆さん、みんなその意識でやっていらっしゃいますので、ここのノウハウをうまく生かした形でこの次の活動にはつなげていきたいなと思います。よろしくお願いします。
【須藤部会長】 ほかにございますか。よろしいでしょうか。
林先生、このレポート、最終報告を出した段階で、何か次のいろいろな施策に展開するわけですよね。
【林(隆)委員】 そうですね。
【須藤部会長】 そのとき、先ほどから出ている地域イノベーションのプログラムとか、それから、DESIGN-iのプログラムとか、産地課が中心になっていろいろな施策が今現在も動いているのがあるんですけれども、それを次の施策の中にどの部分を反省して、どの部分が新しくなったのかというのは、その辺をもう少し分かりやすく書いていただくと、次の施策もより有意義になるんじゃないかなと思うんですけれども。
【林(隆)委員】 恐らくこの作業はこの中間まとめのこの後だと思います。実はその課題意識は私も非常に持っています。今のエコシステム形成プログラムがそれなりにうまく回っているところもありますので、そういう部分はキープコンセプトでいきたいなと。同時に、その後やはりやるとともに課題意識もかなりたまってきていますので、ここは改善型、改良型のコンセプトを入れてやるのと、本日も話題になっていますが、地域連携プラットフォームの考え方を強力に入れるとか、地域の巻き込みをもっと強力にするとか、こういった施策になってくるのではないかなと思います。
【須藤部会長】 どうもありがとうございました。それでは、今日の意見を参考にしていただいて、最終報告を取りまとめていただきたいと思います。よろしくお願いします。
【林(隆)委員】 ありがとうございます。御支援よろしくお願いいたします。
【須藤部会長】 それでは、最後のテーマ、議題3です。スタートアップ創出・アントレ教育の推進について、文科省の方から説明を短めにお願いします。
【神部課長補佐】 資料3を御覧いただければと思います。最近、政府としてちょっと動きがありましたので、その点をまず御説明させていただきたいと思います。
飛びまして、4ページを御覧いただければと思います。こちら、先月7月16日に総合科学技術・イノベーション会議がありまして、そこでこのスタートアップ・エコシステム形成に向けた基本方針が議論されました。これまでの議論ありましたとおり、コロナの影響というのもありまして、やはりこれから社会変革の中でスタートアップは重要であろうといったこともありまして、今般政府としても各省庁連携してこの支援を行っていこうという方針でございます。
その中で、三つ目の四角にありますが、スタートアップ・エコシステム拠点形成戦略というものの中に、エコシステムの中核となる拠点都市を選定するということがあります。ページちょっと飛びますが、5ページになりまして、先般この拠点都市が選ばれております。グループ拠点都市としまして、東京、愛知、関西、あと、福岡、この四つの都市が選ばれております。あと、推進拠点都市としまして、北海道、仙台、広島、北九州、この四つで、計8つの拠点都市が選ばれているところでございまして、今後、この拠点都市の取組と政府の支援、これをいかに連動させていくのかというところがポイントになります。
4ページに戻ります。この連動させていくというときに、スタートアップ・エコシステム支援パッケージというものをつくっております。それがこの資料の下の方でございます。構成としまして四つありまして、一つが、上の四角でございますが、政府系スタートアップ支援機関――JSTやNEDOなどでございますが、これがしっかりと連携して、拠点都市を支援していくというものでございます。下のあと三つがございますが、スタートアップの「創出」、「育成」、あと、世界との「繋ぎ」、この段階に応じた支援をしっかりやっていくといったところで、このスタートアップの「創出」のところが主に文科省のメインのミッションとなってきます。
6ページでございます。6ページは、総合科学技術会議の場で総理から発言がありまして、その抜粋でございます。ポイントとしまして、真ん中にある赤いところで、起業家精神あふれる人材を次々と生み出していくこと、さらにはそのために、下の赤でございますが、実践的な起業家教育を希望する学生全てが受けられるような環境整備をしていくこと、こういったことが総理から発言されておりまして、これに向かった施策を打っていく必要が今あるところでございます。
次のページが7ページでございます。今回文科省としてそのために力を入れていく施策をまとめております。従来の施策になりますが、文科省はこれまでアントレプレナー教育として、EDGE‐NEXT、あと、ベンチャー創出のためにSTART、SCOREなどを進めてきましたが、これらを引き続き拠点都市の活動と連動させていくといったところが主なポイントとなっております。
この点をもう少し詳しく説明させていただきます。まず資料としまして、まずアントレプレナーシップ教育のところから説明させていただきますと、9ページでございます。これまでも数々やってきましたが、まだ例えば日米比較でいいますと、アメリカ360大学に対して日本は60大学しかやっていない状況であったりとか、あと、EDGE-NEXTで支援できているのが、全国の300万人中1万人しか支援できていないというところで、まだまだ規模的に不十分であると考えております。
10ページでございますが、更らにそのほかアントレプレナーシップの問題点としましては、そもそも教えられる、支援する人材が不足していること、あと、さらには、教育プログラムとしてもまだまだ開発していく必要があるだろうと思っております。さらに、リモート化という中で、デジタルコンテンツも非常に重要になってくると考えております。3つ目としまして、そもそもアントレプレナーシップ教育の重要性の理解が不十分であるといったところを挙げております。
これらを踏まえまして、12ページでございます。今後我々として方策として考えているところとしまして、これまでのEDGE-NEXTの取組を活用しつつ、拠点都市ごとにアントレプレナーシップ教育のプラットフォームをつくっていきたいと思っております。このプラットフォームというのは、大学を中心としながら、大学間の連携を進めつつ、産学官のリソースをしっかり統合していくことによって、幅広くアントレプレナーシップ教育ができる環境をつくっていくといったことを目指すものでございます。
一方で、拠点都市の取組を全国に展開していくために、拠点都市同士のつながりを、ネットワークを形成するような全国ネットワークの取組も行いつつ、全国的に成果を普及させていく、そういった流れをつくっていきたいと考えております。
続きまして、スタートアップの創出についてでございますが、14ページでございます。我々、スタートアップ、大学発ベンチャーにアンケートをしました。その結果がこの図になっております。起業前、起業時にどういう課題があったのかというところなんですが、大きく三つあります。一つは、資金調達をするときのノウハウや知見がないというところ、あとは、事業化計画を立てるときに、やはりビジネスモデルづくりや計画の策定・検証の支援が不十分であるということ、あと、やはり人材の確保が課題としてありまして、経営人材や技術系の人材、そういうものを確保していく。そういった、大きく分けまして三つの点でやっぱり苦労したといった声が上がっております。
続きまして、15ページでございます。こちらの方は、大学が持っている単願特許とベンチャー創出数の関係を整理したものでございます。ベンチャー創出をしっかりとやっている大学と、余りなかなかできていない大学、こちらを比較しますと、特許に対するベンチャー創出の割合というのが約3倍の差が出ているといったデータがあります。この差は何に基づくものなのかと今分析しているところではございますが、やはりGAPファンドの有無とか、人材を紹介するためのネットワークがあるか、ないか、そういったやはりベンチャーをつくるときの支援体制、そういったものの差が如実に表れているのではないかと考えているところでございます。
続きまして、16ページでございます。4大学、こちらの方は政府の出資を受けて今進めていますが、こういった大学では、やはり今後の継続的な資金の確保であったりとか、やはり人材の獲得、そういったものに課題を感じているところでございます。その他の大学でも、やはりそもそも支援などは行っていても、規模を上げることが、規模を大きくすることがなかなか難しいといったところの問題を挙げているところです。こういった問題の中で、やはり持続的な資金の確保のためには、やっぱり産とのネットワークが必要である。さらには、やっぱり個々の大学で取り組むところにも限界があるのではないかと考えているところでございます。
最後、17ページでございます。以上のことを踏まえまして、今後強化するところとしまして、既に進めているSCOREの大学推進型、こちら、大学のベンチャー創出の支援体制整備などを支援するものでございますが、こちらの方を強化することで、大学の支援体制・環境を整え、さらに、拠点都市の取組の中で産学との連携を進めていく、そういったことが必要だと考えております。
さらに、STARTのプロジェクト支援型、こちらの方は、やはり成長性の高いベンチャーを創出するのに非常に有効であるので、社会変革を目指す成長性の高いベンチャーを、このタイミングだからこそより伸ばしていく、そういったことを今後強化していく必要があると考えているところでございます。
以上でございます。
【須藤部会長】 どうもありがとうございました。今の発表につきまして、何か御意見、御質問等ございますか。
【林(隆)委員】 すみません、林です。よろしいですか。私、まだ芝浦工業大学で多少アントレプレナーシップとか教えているので、ちょっと近いところの問題だなと思いましたので、質問させていただきます。これ、大学でそういった教育を推進したいということに対して、文科省から何らかの支援を提供できるという、そういう仕組みが今後出てくるということなんでしょうか。
【神部課長補佐】 御質問ありがとうございます。今、EDGE-NEXTの取組で、大学のプログラム開発若しくは開発したプログラムの運用などを支援させていただいておりますが、その成果を生かして、今度は地域で更にそのプログラム開発や大学間の連携を進めていく、そのための支援を文科省としてできないかといったことを考えております。その中では、開発もそうですし、実際プログラムを回していく、そういったことも含めたいと考えております。
【林(隆)委員】 分かりました。ありがとうございます。
【須藤部会長】 ありがとうございました。
【渡部委員】 渡部です。よろしいですか。起業家教育についてなんですけれども、東大は2000年ぐらいから起業家教育をやってきて、現在400社とか、今の実績にはやっぱりこの文化が非常に効いていると実感しています。
ただ、これは起業するための教育ではないというのが我々の考え方です。ずっと課題でやりたかったことなんですけれども、今まで本部でやっていたわけですが、今回この2020年度から実施主体を工学系研究科に移しました。これは本当にファカルティがやるべき教育なんです。そういう意味では学部からもやりますし、起業家教育は起業のための教育ではなくて、人生のための教育だと。そういった意味で、今これの捉え方を、本当にファカルティでやるようなものにするかどうかというのは極めて大きなところだと思います。
というような意味でこの起業家教育を正しく捉えていただくということ。では、アメリカの起業家教育どうなっているのかというと、バブソンカレッジでは、実際本当に学生さんに起業させるんですね。今の話と矛盾しているように見えるんだけど、それは矛盾していない。それは教育としてやらせる。そこの会社の収益は全部寄附させて、それは全くプログラムとしてやっていると。その両面をよく見て、日本の起業家教育をこの先発展させるというのが重要だと思います。
以上です。すみません。
【須藤部会長】 ありがとうございました。今の、文科省は何かありますか。
【斉藤課長】 課長の斉藤でございます。御指摘いただきまして、ありがとうございました。7ページのところにも書いてあったんですけれども、御指摘のとおり、アントレプレナーシップ教育というのが従来の起業だけではなくて、新しい事業を創出したり、社会課題を解決していくための価値創造に取り組む思想、発想とか能力のことだということで改めて定義しまして、そこを重視してやっていこうということで考えております。
今までやってきましたEDGE-NEXTなりが、日本に導入される黎明(れいめい)期ということもあって、様々な大学で様々なレベルのお取組をされているかと思うんですけれども、そういうものを集約して、全体としては広い意味の、起業だけではない、広い意味のアントレプレナーシップを広げていくためにどうしたらいいかということで、今後も進めていきたいと考えております。
以上でございます。
【須藤部会長】 ありがとうございました。ほかよろしいでしょうか。
それでは、時間を過ぎておりますので、この辺で議論を終わりにしたいと思います。
【松尾委員】 すみません、ちょっと短く、じゃあ。
【須藤部会長】 はいはい。
【松尾委員】 今、我々の大学でちょっと問題になっているのは、例えば大学院で起業すると、要するに、スタートアップを一生懸命やると、なかなか学位が取れなくて、この辺りはシンガポールナショナルだと、学位を与える条件として、スタートアップを立てるということ自体がゴールになっていたりするんですね。だから、それぐらい思い切ってやらないといけないのかなと思っています。この辺りのことを是非考えていただければと思います。
それから、先ほどの資料の12ページですけれども、教えるリソースが少なくてということで、愛知県でも、国立大学は5つの大学が一緒になってベンチャーキャピタルを立てたりして非常にやっているんですが、どちらかというと私立大学の方のスタートアップ、アントレプレナーシップが一緒に弱いということで、私は一生懸命やっている中核大学を中心にして周辺の大学が一緒にやっていくと。これはリソースの共有という意味でも非常にいいので、これは是非進めていただきたいと思います。
ありがとうございました。以上です。
【須藤部会長】 どうもありがとうございました。それでは、この結果につきましては、来年度の予算要求、それから、今後の文科省での施策の方に反映してもらいたいと思います。どうもありがとうございました。
時間をちょっと過ぎていますので、最後に、今後の予定について、事務局からお願いします。
【神部課長補佐】 本日は御議論ありがとうございました。御議論の結果を踏まえまして、今後我々としてもしっかりと政策立案等に生かしていきたいと思います。
次回の開催でございますが、今のところまだ未定となっておりますので、また決まり次第、調整、御連絡をさせていただければと思います。
また、本日の議事録につきましては、事務局からメールで御確認をさせていただきたいと思っておりますので、御確認いただいた後にホームページに掲載をさせていただきたいと思っております。
以上でございます。
【須藤部会長】 ありがとうございました。議事録、非常に今後の施策に重要ですので、是非一度目を通していただきたいと思います。
それでは、これにて産業連携・地域支援部会を閉会したいと思います。どうもありがとうございました。

―― 了 ――
 

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