産業連携・地域支援部会(第10期)地域科学技術イノベーション推進委員会(第2回) 議事録

1.日時

令和2年3月16日(月) 15時00分から17時00分

2.場所

 中央合同庁舎第7号館東館16階 科学技術・学術政策研究所 大会議室

3.議題

   (1) 関係機関からのヒアリング
   (2) 自由討議
        (3) その他


4.議事録

【林主査】 それでは、定刻となりましたので、ただいまから、科学技術・学術審議会産業連携・地域支援部会第10期地域科学技術イノベーション推進委員会を開催いたします。
本日は、新型コロナウイルス感染症対策のため、本委員会運営規則第5条3号に基づき、傍聴者の入室を制限させていただきます。ただし、本委員会の議事録及び資料につきましては、通常どおり公開とさせていただきますので、あらかじめ御承知おき願います。
次に、配付資料の確認を事務局よりお願いいたします。
【岸良係長】 それでは、本日の資料を確認させていただきます。欠落等の不備がございましたら、事務局等までお知らせください。
資料が資料1から資料5までがございまして、その後、参考資料1、2、3-1と3-2がございます。3-1と3-2の間に、机上配付資料として1つ資料を入れてございますので、御参照ください。
資料の過不足等ございますでしょうか。
【林主査】 よろしいですか。
議題1は、関係機関からのヒアリングです。本委員会運営規則第3条第2項に基づき、本日は、国立大学法人高知大学より理事・副学長の受田様、浜松市より産業部次長・産業振興課長の村上様に御出席いただいております。よろしくお願いいたします。
それでは最初に、議題1の進め方について、事務局より説明をお願いいたします。
【岸良係長】 最初に高知大学、受田理事から、次に浜松市の村上次長から、それぞれ20分程度で御発表いただきます。それぞれの御発表の後、20分程度質疑応答の時間を設けます。委員の皆様からの御質問、御意見を頂戴したいと考えてございます。
【林主査】 それでは、高知大学の受田様から20分程度で御発表をお願いいたします。
【受田理事】 御紹介いただきました、高知大学の受田でございます。今日は、こういった貴重な発表の機会を頂きましたことを、文部科学省の皆さん、また、この委員会の委員の皆様に心より御礼を申し上げます。ここからは座って説明をさせていただきます。
このタイトルですけれども、地域を維持する、地域の持続可能性を維持するために、高知県・高知大学、我々が取り組んでいる科学技術振興の現状に関してお話を申し上げたいと思います。
私は高知大学におりまして、この15年間地域の現場の責任者としてこういった分野の推進役の立場で取り組んでいるということ、また、高知県の政策において一丁目一番地と位置付けております高知県産業振興計画の策定から推進、またフォローアップに至る12年間、前知事、そして、現在の知事と共にその中心的役割を担っているということで、県と大学が連携をしていくマネジメントをある意味中心で推進をしているということでお話をさせていただきたいと思います。
また、文部科学省様においては、これまで振興調整費や都市エリア、さらには、スーパークラスターやリサーチコンプレックスの評価委員、それから、アドバイザリーボード等を務めておりますので、文部科学省の政策、施策に関する連関についてもお話を申し上げたいと思います。
次お願いします。まず、高知、それから、高知大学の概要です。下の方をごらんいただくと、高知県は今、12月7日から濵田省司知事に代わりました。それまでは12年間、尾﨑正直知事の下で一緒に取り組んでおりました。
ここで御注目いただきたいのは、高知県の人口でございます。昨年の6月に70万人をいよいよ切りました。そして、高齢化あるいはまた人口の減少ということで、全国に10年先行している課題先進県でございます。これに対して高知大学は、地域における唯一の国立の総合大学として、上に書いてありますように、平成27年度に立ち上げた地域協働学部を含めて6学部構成でございます。学生、教職員合わせて7,000名を超えていますので、ご覧いただいて、県民の1%に相当する大学の規模であるということになります。
次お願いして、アウトラインです。地域の目指す未来、これは持続可能性ということ、また、地域の定義としては今回は高知県というふうに御認識をいただいて、それをどういうふうに振興していくか。内発的進化、エコノミックガーデニングに基づいて、地域の基幹産業とその振興に向けた戦略を、下にあるように文科省の施策、ここを活用しつつ、また、まち・ひと・しごと創生推進本部が所掌しておられる地方大学・地域産業創生交付金の事業と絡めてお話をし、最後に全体を俯瞰したいと思います。
次お願いします。御承知のとおり、今、1,718市町村あるわけですけれども、各自治体で第2期のまち・ひと・しごと創生総合戦略の策定が進められています。率直に言いまして、これまでの人口の増減だけを地方創生という文脈で語っていくことに関しては、かなり地方は徒労感を覚えているという状況でございます。第2期に関して目玉になるところは、なかなか難しいというのが現状ではないかと思います。これまでの経済指標、GDP等のフローで評価する指標が万能であるのか。フロー以外、すなわち、ストックに相当しますけれども、未来への資産として考えられるものはないのか。地域が生き残るために考えなければいけない本質を今、我々は議論しているところでございます。
次お願いします。今日のこの地域科学技術イノベーションの推進において、我々はまず地域を主役に見ていこうと考えます。そうなりますと、地域の目指す未来、これが明確になっておく必要があります。
次お願いします。我々は人口が右肩上がりで増えていくという時代、これはもう明らかに幻であろうと思っておりまして、いかに地域が持続可能な姿を描いていけるか、ここにフォーカスを当てていく必要があると思っています。そのベンチマークとして、皆様御存じのとおり、2030年に向けて国連が設定しているSDGs、これは非常に我々に大いなる示唆を与えてくれるわけですけれども、持続可能な開発目標といったdevelopmentという、この開発の部分にある意味に注意をしなければならないと思っています。
次お願いします。このdevelopという言葉は、名詞でいきますと、生物学においては発生とかという訳を当てるんですけれども、もともと内側から進化・成長し殻を破る、それが接頭語のdeで、その反対語は、それを含む、内包するということでenvelop。ですから、内なるものが進化をして成長していくことをdevelopというんだということを我々はまず肝に銘じておかなければいけないと思っています。
次お願いします。そう考えていきますと、地域産業の振興もやはり内発的進化に基づくべきではないかと考える次第です。実際にここに地域産業の振興に関して幾つか選択肢があるんですけれども、旧来型は大企業を短期間の視点で誘致し局所的に推進することが行われていたわけですけれども、そうではなく内発的に見ていくのであれば、エコノミックガーデニングの手法、すなわち、足元にある中小企業を大切に育て、それを人材育成と一体化し、やる気のあるところへ支援をしていくと、こういう形が求められると思います。
次お願いします。そうなっていきますと、地域における基幹産業、これを内発的に進化させていくことが1つの振興における基本になってまいります。すなわち、強みを認識し、それを進化させていくということになります。
次お願いします。そういうことの観点から、例えば産業連関表に着目し、特化係数を見ていくと、それぞれの地域の強み、あるいは何を伸ばしていかなければいけないかがよく分かります。
次お願いします。ここから高知なんですけれども、高知に関して、平成19年、我々がまず高知県で産業振興計画を作り、戦略を立案しようと考えたその時点での数字を挙げております。農業が特化係数的には3を超えており、全国に比べて明らかに強みのある産業、地域の基幹産業であることが分かります。実際にその時点で農業振興も進めているんですけれども、我々は例えば高等教育機関としてこの付加価値を上げていく人材育成が十分でないということを認識し、そこに力点を置いていこうということを考えてまいりました。
次お願いします。そのために、当時科学技術振興調整費において、地域の中核人材の育成という、ここにフォーカスが当たっていたこともありまして、高知の食品産業の中核人材の育成を土佐FBC人材創出事業ということで展開をしてまいりました。これが平成20年度からでございます。一方で、右側にありますように、ちょうど前知事が就任し、一丁目一番地の高知県産業振興計画を策定し、その委員長を私が務め、左側の土佐FBCの事業責任者ということでこの両輪を回し始めたということになります。
次お願いします。土佐FBC自体は、ここにありますように、食品産業の中核を担い、一次産業で得られた生産物の付加価値を高めていこうという考え方でございます。プログラム的に言いますと、1年若しくは2年コースで履修証明プログラム、当時の120時間の基準に則って、これをクリアし、サーティフィケートが出せる、そういうプログラムを作り、そして、職業実践力育成プログラム(BP)等にも採用して頂きました。5年間振興調整費を補助金として頂き、その後5年間で自立をし、今、3期目、12年目が終わろうとしております。
次お願いします。これらを推進し、ちょっと小さくて恐縮なんですけれども、真ん中に得らえたFBCの成果を挙げております。12年間にわたり500名を超える修了生を養成しました。そして、受講生にはほとんどの方に満足を感じていただいて、これは数字が29年度のデータを直近としておりますけれども、そこに書いてある6億円の開発商品の売り上げや、経済波及効果ももう10億円を超えているということになっております。
こういう活動を通じて、左側にございますように、文部科学省の例えばCOC、知の拠点整備事業に我々はチャレンジをし、地域にUBCという教員4名を各エリアに常駐をさせ、更に地域の課題を掘り起こし、そして、その課題解決に当たっていくということをセットで展開しております。したがって、FBCも学外教室等をこのUBCが配置されたエリアを中心に展開をしていくということをやったわけでございます。
また、真ん中下にございますように、COC+の事業、また、右側にある平成27年度からの地域協働学部の立ち上げを通じて、我々大学が地域にどっぷりつかる、そして、入り込んで、徹底して地域課題の解決を担うという、こういう全面的な体制の構築が出来上がったわけでございます。
次お願いします。こういうふうにやっていきますと、徐々に地方でありながら中央でも注目していただけるようになり、平成29年は当時の梶山弘志地方創生担当大臣が高知にお越しになられました。知事と私も一緒に丸一日アテンドをし、そして、これからお話しする強みを持った農業振興の、さらに我々の誇りであります施設園芸農業の推進に関して是非御支援を頂きたいというお話を申し上げました。
当時の梶山大臣からは、地方大学をいかに活用するかが地方創生の鍵であるというコメントを頂き、その次の年、平成30年1月の施政方針演説で総理からこの取組を御紹介いただきました。私ども高知大学が取り組んだ農業振興、特に施設園芸に関する取組を御評価いただくとともに、真ん中、3段落目になりますけれども、地方への若者の流れを生み出す、新たな交付金により応援しますというふうに、我々にとっては大変エンカレッジしていただける施政方針演説のコメントを頂き、また、FBC、食品ビジネスを学んだと書いてありますけれども、FBCのことも御評価いただきました。
それを受けて、次のページでございますが、平成30年から令和4年度までの計画ではございますけれども、Internet of Plants、IoPが導くNext次世代型施設園芸農業への進化ということで、地方大学・地域産業創生交付金の御支援を今頂いているところでございます。施設園芸というのは、ハウスの農業を意味しておりますけれども、高知県の施設園芸農業の産出額というのは全国でもぶっちぎりのトップでございまして、平均からいうと3倍、4倍近くの実績を持っております。したがって、この強みを徹底的に磨いていきたいということです。
次のページをお願いします。概略をここに御紹介しておりますけれども、上の四角にありますように、多様な園芸作物の生理・生育情報、これをAIによる可視化と利活用を実現するIoPによって推進をしていこうというものでございます。右側にハウスの絵がありますけれども、この中で起こっている、例えば環境、農作業、市場情報や作物の成長や収量・収穫時期、これに加えて、植物体内で起こっている生物現象を、例えば光合成や蒸散や転流、これらを非破壊で分析をし、IoPクラウド上にそのデータを全て集積していき、AIで学ばせ、とにかく生産者の所得が最大化していくためのありとあらゆる営農指導までやっていこうというものでございます。
これに大学が、研究と、さらには左側にあります専門人材の育成を担いつつ組織運営をしているということで、知事をトップとし、それから、私が事業責任者を仰せつかってやっているというものでございます。
右下にKPIがありますけれども、県の政策を実現するために数値目標を立て、例えば野菜の産出額をこの10年の間に130億円増加させたり、ここには書いておりませんけれども、農家の生産額、これを3,000万円以上を産出する農家さんを2倍にしていこうというようなことを計画で上げました。
次のページお願いします。細かくて恐縮ですけれども、こういう全体の親委員会の下に3つの部会を設け、左下に研究推進部会を設置しているというものでございます。ここにおいては、110名を超える研究者が県及び県外、また国際的にも参画をいただいておりまして、重点6品目、ナス、ピーマン、キュウリ、ミョウガ、ニラ、シシトウの6点に関して130億円のどこにコミットしていくかということを、定量的なロードマップを作りまして、各研究者全員に認識していただき、これを基にPDCAを回していこうというものでございます。
次のページお願いします。一部成果をお示ししております。まずIoPのクラウドの設計が終わり、来年度から実際にこれを動かしていくことになります。また、予測システムというか出荷予測システムを開発いたしまして、828戸の農家さんにお使いいただき、そして、これまでは見える化ができていなかった生産の現状をしっかりと相対的に御認識いただけるようなものを構築いたしました。右側に、植物体内における様々な代謝を見える化していき、さらに、生育診断のAIを作るというところまで行っているものでございます。
次お願いします。実際に農家さんの導入、これらを具体的に技術応用するときのメリットは、ありますように、装備1から装備5を通じて所得が向上していくこと、そして、楽に農業生産を営めるという点がポイントでございます。下にありますように、IoPクラウドを構築し、現在、2番目の2020年度のIoPクラウドのプロトタイプの構築が今進められておりまして、今後研究で得られた見える化の技術を徹底的にこのクラウドの中に実装していき、農家の皆様に即活用していただける、そんな形へと展開していく予定でございます。
今ここにいらっしゃる松原先生もそうなんですけれども、この交付金事業の評価委員会の先生方に御指導いただいておりまして、座長であります元コマツ会長の坂根正弘様からも大変いろいろな示唆に富むアドバイスを頂いております。このプロジェクトは、農業のデータプラットフォーマーの構築を目指している事業ではないかと、坂根さんからはコメントを頂いています。我々は今、地域の農業生産の最適化をやり、そして、所得の向上を目指しておりますけれども、農業の新たなデータプラットフォーマーとしてイノベーションを創出していかなければいけないということで、ボトムアップでやっていったものがやがてイノベーティブな活動へと進化していくことを目指す目標を掲げています。
最後でございます。これまでの我々の取組は、結局、地域の未来を描きながら、自治体と大学が実質的な協働体制を構築して、未来へ向けての具体的な戦略を策定するところから進めていきました。そして、内発的な進化をガーデニング的手法で実現するために、要は、ワンチームでやっていく。そして、不足する人材、技術等は積極的に誘致していこうという考え方でございます。
財源は地域負担。今も交付金事業は県の予算が多額に入っておりますけれども、国の事業費を更に呼び水として効果的に補給していただき、全体をストーリー化してくことがここに至る鍵になっているかと思います。したがって、こういったパッケージを長期的に政策誘導することが地域科学技術イノベーションの推進につながるのではないか。そのための財政的支援等を、要は、長期的にお願いしたいと思っているところでございます。
特化係数的にいうと、農業が3ではございますけれども、林業は6、水産業は9でございます。それらの事業を更にこういったスキームで推進をしていくことを今後考えていきたいと思っているところでございます。
以上でございます。どうもありがとうございました。
【林主査】 受田様、面白い話ありがとうございました。
それでは、委員の皆様から質問等をお願いいたします。
そうしましたら、栗原さん。
【栗原委員】 ありがとうございます。栗原と申します。お聞きしていて、着眼点として、地域にある資源を内発的なところから進化させていこうということですが、とはいえ、高知県以外の外との連携も、この事業をサスティナブルにやっていくためには大変重要ではないかと思うのです。人材は地域の中にもいらっしゃいますが、外のアイデア等も含めて必要じゃないかなと思うのですが、その辺について教えていただけたらというのが1点目です。
それから、2点目に、今の仕組みは、大学の中での事業の発展であり、それが地元の農家さんというところまでは分かるのですが、もう一段、継続的な事業になっていくために、先ほどの販路の拡大だとか商品化だとか、あるいは地元の企業だとかというところを進めることをどのように描いていらっしゃるかという点を教えていただければと思います。
【受田理事】 御質問ありがとうございます。まず1点目ですけれども、我々は全てフルセットでこういったプロジェクトを推進するための人材を持っているとは毛頭思っていません。したがって、必要な人材に関しては人材誘致をしていく、つまり、外から我々に御支援を頂く必要が絶対あると思っています。
最後に御紹介した地方大学・地域産業創生交付金事業は、キラリと光る地方大学のために、この豊富な財源を利用して世界トップの方を誘致するというところが1つ形でお示しされていて、我々も九大の北野雅治先生をクロスアポイントメントで雇用し、そして、来年度から本学に100%のエフォートで着任していただくということも考えております。
我々にとって必要な人材は相当多くこの事業や、それ以外でも土佐FBCのカリキュラムにおける講師陣としては、比率はちょっと定かではないんですけれども、数十%ぐらいの比率で外から講師陣を要請をし、お越しいただく。研究に関しても同様であるということでございます。
2点目に関しては、さらに継続・発展の部分で広がりをどういうふうに考えているかという御質問かと思うんですけれども、例えば農家さん以外においても、付加価値を上げていく食品メーカーにおいては、この事業にもう相当関心を持っていただいています。例えば地元企業の中で流通大手の企業様が私どもの中に連携講座を作り、そこに社員を派遣して、そして、一緒に研究開発に取り組んでいくというようなそういう形も具体的に実現をいたしました。
さらに、農業に関するのみならず、こういった見える化をやっていくということになりますと、結局、例えばIT系であったり、センサー系を含む機器類、また、AIやこういったクラウドの構築ということで情報系も含めて相当面的な広がりがあると思っています。我々、今、オープンイノベーションのプラットフォームを県で主催をして作っておりまして、こういう課題を解決していただくためにオールジャパンでいろいろな企業からそこにメンバーになっていただいて、我々が持っている課題をニーズオリエンテッドで実現、解決をしていただく、そういう技術的な提案と研究会を既に主催をして、四十数社の国内企業や県内企業が参画をされています。
10年後はここの農業以外の分野の産出額を100億というKPIを設けておりまして、農業のみならず、関連産業への波及、さらには、農業生産を県内で閉じることなく、さらには海外への展開とか、先ほど少し申し上げた農業のプラットフォーマーとして、農業以外の波及という部分もこれから考えていくという段階には来ております。
【栗原委員】 ありがとうございます。
【林主査】 ありがとうございました。西村さん、どうぞ。
【西村委員】 この受田先生のをずっとウオッチさせていただいて、大変すごい取組なので。県を巻き込んで、多分高知県、空から降りると、真っ白なぐらいハウスだらけですよね。ということは、高知を一まとめにして1つの一体化した農業をプラットフォーム化してデータを管理していくってすごくいいと思うんです。これぐらいのマスで動けるような県はなかなかないので。
だからこそ、先ほどの御質問にちょっと関連してくるんですけれども、マーケティング戦略かなと思っています。そうすると、これだけのまとまったところで品質管理と、あるいは出荷管理と、そういったことが一体としてできる地域は余りないと思うので、それがマスでどこかの大きな、イメージ的に言うとあれですけれども、ニュージーランドのゼスプリがぐっと上がっていったような形に、高知県産の野菜はこのクオリティーでこの管理で品質保証していますよ、だから、まとまったマスで、ナスだったら必ず高知のを取ったらいいよというのを、ちょっと違うブランディングを掛けるというのが地域でできるかなと思って、このプラットフォームは僕はすごく有利に動くような気がしたんです。
そうすると、そのマーケティング戦略のところにもう一段何か戦略的なというか圧倒的なものを作っていただくと、高知モデルというのは、僕は、例えば三重大学、三重県なんかもやっていても、僕らができることはここまでできない。でも、高知県がそうやって示したものに各地域が同じような形で乗っかっていけば、今度は国全体として例えばシンガポールを攻めようやとかできるような気もしたので、そういう将来展望についてのマーケティング戦略的なことを少し教えていただくと参考になるかなと思ったので、お願いします。
【受田理事】 御質問ありがとうございます。まさに今御指摘を頂いたマーケティング戦略、これが肝だと思っています。実際に今回このプロジェクトにおいて具体的に重点品目として挙げている農産物というのは、基本的に国内におけるシェアが日本トップのもの、これが中心です。ですから、今、西村先生からあったように、ナスというのは日本における国内シェア1位ですので、我々が持っているノウハウを市場に対してかなり訴求できると考えています。
この6品目を中心に推進をしていき、更にもう一段高い付加価値の向上、例えば高付加価値の部分においては、ナスの中に含まれているコリンエステルという成分が血圧の上昇の抑制等に非常に効果的であるというようなヒト試験の結果も出ていて、一定そういった健康増進の効果がうたえるような成分に着目し、願わくば例えば機能性表示食品というような保健機能食品制度への展開も考えています。
一方で、我々はやはり国内競争力のある農産物を、ある意味、品質を高位平準化して、そして、市場へ打っていくことによって利益を上げていくという、これまでのビジネスモデル、この域を出ていないので、我々としては更にもう一段上の展開というところでマーケティング戦略を考えるプロジェクトをこの中で動かしています。
そして、国内市場に対する、シェアは日本一といっても、まだ訴求をしていく必要があるということと、例えば海外において、我々と同じように条件不利地において高品質の農産物をいかに生産していくかというこのノウハウ、これを移転できないか。あるいはそこで得られた農産物そのものを高知ブランドとして海外において販売できないか、こういうようなところも考えつつ、今、マーケティング戦略に基づいたビジネスプランをもう一つ発展させていくべく議論を進め、その議論を進めるための組織を来週、まだ最初は法人格は持たせないんですけれども、IoP推進機構という、やがて法人にする組織を立ち上げます。ここが全面的に今の御質問、御指摘にありましたように、戦略の企画立案と推進を担うということで考えているところでございます。
【林主査】 ありがとうございます。お聞きしていますと、内発的だというふうに最初はおっしゃっていたけれども、必要なものはどんどん外からもコラボをしてやっていらっしゃる。それがうまく回っているのは、やはり軸足がぶれないというか、最初にビジョン設定をされた、目指すところは何かというのを随分考えられたんじゃないかなと思うんですけれども、最初スタートさせるときはどのようにされましたか。
【受田理事】 私個人がもともと食品サイエンスの関係の研究者です。高知に来て早くももう二十六、七年たつんですけれども、高知に来てまず思ったことは、これだけの高品質の農業生産を営んでいるのになぜ経済活動が活発でないのか。これをいろいろな人たちと議論をしていくプロセスが最初の頃にございました。
そんな中でよく見てみると、農産物を生鮮で出荷することだけに力を入れてやっていて、結果的に付加価値を生み出す食品産業が全く振興していない。その理由を見てみると、やはり企業経営者の側にそういう視点がないということと、大学もそういう中核の人材を育成する仕組みを強化していなかったというところが少しずつ見えてまいりました。
ですから、我々としては、付加価値を生み出す推進役を、社会人の育成から担っていくということを通じて、食品で全体をドライブしていきながら、強みのある一次産業の力を高めていくという考え方で進めていくことはどうだろうかと。前知事とそういうようなお話をし、それを中心に据えた高知県産業振興計画を策定し始めたというのが1つのきっかけかと思っております。
【林主査】 ありがとうございました。
田中委員。
【田中委員】 前回欠席した田中です。よろしくお願いします。
私は今、島根、鳥取で産学連携ファンドを運営しており、投資先の1つにトマトの植物工場があります。なかなか儲からず苦労していますが、ブランディングはとてもうまくいっております。
トマトの栽培を手掛ける大手企業の幹部の方と話す機会がありトマト栽培はどうすれば儲かるかストレートにお聞きしたことがあります。曰く、まず市場と付き合っている限りは、必ず一定の水準で市場価格が決まるので、そこで儲ける余地は限界があるが、いかに生産性を上げるかという所に工夫の余地があり、機械化の徹底やAI・IoTの活用をトライしている。更に、植物そのもののネイチャーを研究して、どうすればより早くコスト効率よく生育しおいしくなるかを追求し、そこでイノベーションを起こすことで収益性を高める事をトライしている、という話を聞きました。
地方の農業において、大手企業と組んで資本投下できれば、圧倒的に強くなれると理解しました。高知の場合は、大手企業等とタイアップされたのでしょうか。
【受田理事】 ありがとうございます。まず高知県がここまで施設園芸で日本においてトップのポジションを得ることができるようになったというのは、やはり規模を大きくしていったことと、もう一つは、生産物自体の値崩れを防ぐという、ここに尽きます。そのためにはどうしたらいいかというと、シェアができるだけ確保でき、かつ系統を一本化し、最も高値が付く市場に一本の系統で勝負していく、これを徹底してきたというのが1つでございます。
したがって、ここに至るまでは、流通と市場情報を、要は、収穫の集出荷場の情報と一体化をさせていくという、これを丸高方式という、高知県の方式、昔から言われているんですけれども、それを徹底してきたことが1つこのポジションを得るための背景にあったのではないかと思います。
先ほどトマトのお話がありました。高知県も実はトマトの生産量が多いんです。ただ、熊本が日本一で、多分シェアとしては今も12位なんです。12位なので、重点6品目の中に入れていません。市場コントロールができるというところは、やはり市場におけるシェア1位とか、そういうところでなければいけないという思いが1つあります。
もう一つ、トマトも含めてなんですけれども、農業生産というのはどうしてもお米のイメージがあって年に1回しか収穫できないというふうに思いがちなんですけれども、例えば高知でやっているナスとかピーマンとかキュウリとかミョウガとかニラとか、こういったものは周年栽培で周年収穫できるんです。ですから、仮に営農指導である、先ほどCO2の制御とかというお話がありましたけれども、ある特定の工夫をやると、ナスにおいては反収が今20トンの農家さんが30トンになったり、60トンぐらいまで行くんじゃないかという話があります。
そういう意味で、これ、技術の応用が相当大きなアウトプットへの効果をもたらすということがありまして、篤農家さんと言われる、まだ全然技術が見える化していないんだけども、相当ノウハウを集積・蓄積をしておられて、通常の一般の方々に比べて相当収穫量をお持ちの方々、この方々の技術を今見える化して、このクラウドの中に搭載しようとしています。それによって収穫量や付加価値を上げていき、農家所得を上げていくということを考えていこうとしています。
それで、最後、大手企業と、多分ここは加工をし付加価値を上げていき、市場において最終製品を製造していくようなところという意味かと理解しましたけれども、我々としても、トマトに関してはもう既に大手企業とのお付き合いが地元ではあるんですけれども、ほかの農産物に関しても例えばそういう形もあり得るかなと思っています。
ただ、やはりポートフォリオ的にいうと、ある特定の企業、ある特定のエリアに限定をしていきますと、リスクヘッジできなかったり、新たな市場開拓とかというところに一定バリアが生じることもないとは言えない。ですから、我々としては今まだ素材提供をし、生鮮の持っている価値で勝負をしていくわけですけれども、先ほど申し上げたように、成分的な機能性で差別化をし、さらには一次加工でというようなところまで視野に入れることができれば、先ほど西村先生の話にあったマーケティングも含めて十分にまた売り上げを伸ばしていくこともできるのではないかと思っています。
【林主査】 受田様、ありがとうございました。まだまだ聞きたいこともありますが、時間もちょっと押してしまいまして、続いて、浜松市の村上様からお話を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。
【村上産業部次長】 改めまして、浜松市から参りました村上でございます。きょうはこのような場を作っていただきまして、ありがとうございます。それでは、着座にて説明をさせていただきます。
きょうは、浜松市の産学官の連携の取組について御紹介をいたしたいと思います。現在取り組んでいます地域イノベーション・エコシステムのプログラムをはじめとする取組と、その中で特に特徴的な2つの事業について御紹介を申し上げたいと思います。
まず最初に、浜松市の概要でございます。人口80万の政令都市でございまして、総面積は全国2位のとても広い市域を持っております。そして、東京と大阪のちょうど中間点に当たりまして、新幹線でも1時間半で行き来ができる立地でございます。歴史的には、輸送用機器・楽器・繊維を基幹産業として発展してきたものづくりのまちでございます。
浜松市は、その周辺の地域でヤマハ、カワイ、トヨタ、スズキ、ホンダ、ヤマハ発動機、浜松ホトニクスなどグローバル企業の創業の地でありまして、まさに本市はベンチャーのまちでございます。そして、この先人たちが何ごとにもチャレンジする進取の気性を「やらまいか精神」と呼びまして、地域の誇りとしております。この浜松の礎を築いてきたものづくりの力は、特に大変特筆すべきものでございまして、全国に20ある政令指定都市の中でも、県庁所在地や三大都市圏近郊ではなく、また、国策による特別な支援もなく独力で政令市になるまでに発展した都市というのは浜松だけでございます。
こちらは最近の浜松市の製造品出荷額の推移でございます。リーマンショック前に3兆円を超えていた製造品出荷額は、大手企業の海外生産シフトなどもありまして、現在では2兆を切る状態になってございます。このままでは地域経済を支える雇用が減り、持続的発展への懸念材料となっております。
そして、こちら、製造品出荷額の内訳の表でございます。輸送用機械器具製造業、これは自動車やオートバイですけれども、こちらが占める割合が4割を超えておりまして、EVシフトなど技術革新の影響により自動車産業に大きなダメージが及んだ場合、本市経済に与える影響は大きなものが予想され、重大な課題意識を持っているところでございます。こうしたことから、地域を支える産業の育成が急務でございまして、こうした芽を生み、育てる大学を核とした産業振興は特に重要であると認識しているところでございます。
こちらがこれまで浜松地域におきまして取り組んできた国の関係の科学技術・産業振興プロジェクトの経緯でございます。テクノポリスの構想から始まった国のプロジェクトの取組は、産学連携によりまして三遠南信の広域産業クラスターの計画や産学官連携による知的クラスター創成事業、イノベーション戦略支援プログラム、こちら、浜松・東三河ライフフォトニクスイノベーションなど、そして、現在御支援を頂いている地域イノベーション・エコシステム形成プログラムまで本地域のイノベーションを強化・促進するコアプログラムを担い、ここから多くの技術や製品、企業が誕生してまいりました。
こちらは、今現在取り組んでいる光電子技術をキーテクノロジーにした地域イノベーション・エコシステム形成プログラム、光の先端都市「浜松」が創成するメディカルフォトニクスプロジェクトでございます。PJ1からPJ3では、企業との共同研究が進み、製品化・事業化に向けた支援が行われているところでございます。また、CJ4からCJ9では、次世代コア技術を確立するため、企業とのマッチングに向けて、大学の研究室レベルでの研究開発が行われているところでございます。浜松地域の特徴としては、製品化・事業化のもととなる技術シーズが複数ございまして、プロジェクトが同時進行している点が挙げられるかと思います。これは前に触れました国のプロジェクトの積み重ねによる知見や人材の蓄積があるからこそと感じているところでございます。
次に、浜松地域の地域イノベーション・エコシステムの事業実施体制でございます。大きく、事業化プロジェクトと基盤構築プロジェクトの2つの体制でエコシステムを回しているところでございます。
もう少し詳しい事業体制でございます。事業本体を動かしているのは研究開発分科会と基盤構築分科会ですが、その上部組織として経営会議が全体を総括し、知財やマーケティングで出口戦略を支援するマーケティング部会となっております。エコシステムでは、事業プロデューサーやプロジェクトの事業性並びにグローバル展開の視点から専門的な助言を頂くアドバイザー、マーケティングの専門家など、自前では確保が困難な人材につきまして体制作りに御支援を頂いているところでございます。
次に、事業化プロジェクトでは、静大の光創起拠点や浜松医大の光・健康医療産業創出拠点が中心となりまして、グローバル展開を望める成功モデルの創出と、知見・ノウハウの蓄積がなされております。
基盤構築プロジェクトでは、金融機関や行政、地域大学、企業が一体となりまして研究開発体制を構築しています。この中で特にこの地域に非常に特色ある取組として、地域産業のエコシステムの確立を図るA-SAPがございます。
A-SAP、浜松版ACTPHASTは、ベルギー自由大学のThienpont教授を中心としてヨーロッパ連合で実績を上げているACTPHASTを参考に浜松版にアレンジした取組でございます。光電子技術をキーテクノロジーに大学の持つ革新的技術を活用しまして、地域産業に横展開を図ることで、今まで頓挫していたプロジェクトを再起動させ、新製品の開発や生産性の向上を図っております。
A-SAPというのは、最速で望む未来へ到達するための新たな仕組みというようなことらしいですけれども、2017年度から静岡県及び浜松市の地域資金によりましてトライアル事業として始まりまして、現在、第4期プロジェクトの実施に向けて事業計画のブラッシュアップをしているところでございます。
こちらは、我々浜松市が進めるベンチャー支援の指針でございます。浜松バレー構想の中でもA-SAPは、この後説明するファンドサポート事業とともに主要事業の1つとなっております。
A-SAP、浜松版ACTPHASTは、産学官連携による課題解決プロジェクト支援システムでございます。
事業の流れは、図にするとこのような形になっております。地域中小企業の事業化に向けて課題事業を公募しまして、課題解決から一次試作までを大学が委託で請け負う仕組みとなっております。
少し細かくなりますけれども、事業の流れはこのようなフローになっております。浜松地域の中核的支援機関である浜松地域イノベーション推進機構のフォトンバレーセンターがこの事務局を担っております。A-SAPにおいても実施体制の整備が重要でありまして、地域企業に詳しい金融機関やどの大学の誰の知見を活用すれば問題の解決ができるかを的確に判断できる産学連携コーディネーターの確保が欠かせません。また、実際、プロジェクトの実施に当たっては、大学教授や准教授の参画も必須でございます。幸いこの地域には、産学官金の連携に積極的な金融機関も多く、技術面では大学の産学連携コーディネーターの担い手として大企業のOBの活用なども可能なことから、浜松だからこそできる仕組みかと思っております。
最後に、地域イノベーション・エコシステムの出口戦略への支援として浜松市が用意しているベンチャー支援事業のうち、ほかにない特色ある事業としてファンドサポート事業を紹介させていただきます。文科省さんがお示しのとおり、エコシステムの出口目標は、戦略パートナーへの技術移転若しくは中小・ベンチャー企業の商品化・事業化、ベンチャー企業創出と成長でございまして、この事業はベンチャー企業のリスクマネーを支援するものとなっております。
NEDOのSTSを模しておりますけれども、首都圏から手が届きにくい市内ベンチャー企業へのアクセス可能な資金調達手段を増やすため、ベンチャーキャピタル等が市内のベンチャー企業に投資しやすい環境整備を行うものでございます。具体的には、市が認定した優れた目利き能力を有するベンチャーキャピタルが市内企業に投資を行う場合、投資額と同額を交付金として交付する内容となっております。交付金額の上限は、健康・医療の関係が7,000万円、それ以外が5,000万円で、事業の期間は最長2年としております。今年度はこの事業を立ち上げたところでして、3社について事業採択を行い、今後、交付金の交付及びハンズオン支援を行ってまいります。
最後に、我々が期待する国の役割とかサポートについて申し上げたいと思います。
まずエコシステム構築のための体制整備に対する支援ということです。エコシステムの確立には、中核的な人材でありますコーディネーターの確保がやはり重要でございまして、体制強化のための支援を引き続きお願いしたいと思っております。
2点目として、大学研究テーマの産業化への支援というところです。大学研究のテーマの産業化には、やはり多くの時間とブラッシュアップが必要でございます。大学への研究開発資金やアドバイス等の支援を引き続き強化していただきたいとお願いします。
3点目として、マッチングファンド型の支援の継続ということです。これは浜松市の産業政策の基本として中小企業支援が肝でございまして、大学の研究への支援とともに、役割分担の中でマッチングファンド形式の支援方式を今後も継続していただけたらと思っております。
以上でございます。ありがとうございました。
【林主査】 村上様、ありがとうございました。
それでは、皆様の方から御質問、御意見等ありましたらお願いいたします。松原さん、どうぞ。
【松原委員】 東京大学の松原と申します。前回欠席いたしまして失礼いたしました。私はこの地域科学技術イノベーションの推進委員会に大分前から参加させていただいております。浜松の話は前にも聞いたことがあるかもしれません。
質問させていただきたいのは、ちょっと乱暴な意見なんですけれども、4ページのところに出荷額の推移があって、地域経済は結局リーマンショック以降V字回復できていないわけですね。同じ時期に、2002年から文科省知的クラスターを走らせてきていて、それから、リーマンショック後も、それから、震災以降もずっと科学技術イノベーション政策を打ってきてはいるんですけれども、結局、地域経済のいわゆるパフォーマンスという観点でいくと、これを見る限りは効果が出てきていないですよね。
だけど、そんな簡単な評価ではないとは思うので、例えば、これ、全体を足し合わせているからこうなっているんですけれども、主たるプレーヤーである浜ホトとかがこういうものとは違う形での動きを作っているとか、少しこういう施策の効果みたいなものがこれとはまた別な形で出ているのかどうか、その辺あたりのお考えをお聞かせいただければと思います。
ここはいろいろな議論の中で、結局こういう成果が見えないとか、大学の研究と科学技術イノベーション、特に大企業が立地しているような地域の変化とどう関係付けるかというのは長年議論してきた点でありますので、お聞きできればと思います。
【村上産業部次長】 ありがとうございます。製造品出荷額につきましてはいろいろ我々も分析をしておりまして、この数字というのは、やはり大企業さんの製造拠点といいますかね、その動きに大きく左右されるというようなところは見て取れております。それで、リーマンショックから落ち込んでいるわけですけれども、これはやはり大企業さんが生産の拠点を適正配置の中で海外に移されたというところで、それは今現在もバランスといいますかね、多少は動いているかもしれないんですけれども、大きくは変わっていないというところがこのグラフに表れているのかなと思っております。例えば企業誘致で大きな企業をどんと引っ張ってくれば数字は少し上がるのかなとも思っておりますけれども、それはそれとして別の施策展開の中で続けております。
そういった中、例えば浜ホトさんにつきましては、やはり業績は右肩上がりで、拠点等もいろいろ増やしているところですので、海外への展開も含めまして業績を上げられているということは確かでございます。それがこのデータに表れてくるかというと、別の資料でありましたけれども、輸送用機器関連の産業が4割以上を占めるというような産業構造の中では、浜ホトさんの売り上げというのは少し桁が違うような規模になっておりますので、単体で捉えれば伸びているということは言えるかと思いますけれども、それが直ちにこのグラフに反映するかというと、そういうことではないというふうに思っております。
【林主査】 ほかにありますか。西村さん、どうぞ。
【西村委員】 何回も済みません。松原先生のところにちょっと関わるかも分からないんですけれども、確かに政策を打ってきた中で何かが響いて結果につながっていないと言ってしまえばそうなんですけれども、ただ、何か見えてきているものはないかなという中に、プレーヤーの顔みたいなものが見えなかったんです。これ、ずっといろいろ打っていって、当然ベンチャーとかいろいろ出てきた技術とか、それを引っ張り上げる、やらまいかと最初に言われたので、やらまいか精神を持っているこういう人たちが今こうやって活躍し始めたよねとかいうのが、今はまだ小さいけれども可能性のこれからの連鎖が起こるような雰囲気が出てくると、例えばこの写真の今の若手がわっと8人ぐらい出てくるとか、どうなんでしょう。そういう雰囲気っていかがなものかなと。
【村上産業部次長】 まさに、先ほど少し触れましたけれども、浜松バレー構想ということでベンチャー支援を市長をトップに重点的に進めております。そういった中、大学発ベンチャー、これは静岡大学とか浜松医大とか、あと、ホトニクスさんが作られた光産業創成大学院大学、こういったところから続々とベンチャーが立ち上がってきております。
そうした中、ファンドサポート事業等を通じて市が政策を打ち出したりということもあって、地域にファンドをどれだけ持ってこられたかということも少し調べております。ここ一、二年で10億単位で資金が入っているというようなところも見て取れておりますので、今後、ファンドの資金が入ってくるということは、少しJカーブで行く、よく上がってくる企業さんがいるんじゃないかなと期待をしているところ出ございます。
そういった中、特に期待をしているのは、4K・8Kのイメージングのセンサーをやっているブルックマンテクノロジさんとか、あとは、静大発ベンチャーでM&AをしてAI等をやっているエクサウィザーズさんとか、そういった企業さんが浜松にもおりますので、そういったところに期待をしているところでございます。
【林主査】 ほかに。どうぞ。
【串岡委員】 18ページを開いていただいて、ファンドサポート事業ということで御説明をいただいたんですけれども、実は浜松市がファンドを作るということで、私は以前広島県でファンドを作ったことがあって、前任の瀧下次長にも何度かおいでいただいたり、お話をしたりしていたんですが、今こういう形でまとまったということで拝見をしています。
結局このファンドサポートというのは、投資は民間の認定VCがやると。それに対して行政、浜松市としては交付金・助成金として2分の1を追加するというふうなNEDOのSTSバージョンのものだということですけれども、結局このスキームだと、浜松市は特段リスクを取るわけではなくて、認定VCがいわゆる目利きをする。その認定VCとは別のまたアドバイザーがいて、ハンズオンする。それぞれ3者の役割が、それぞれの役割で応援をするというふうなニュアンスに取れるんですね。
私ども広島県で議論したときは、やはり県がそこまで責任を持ってやるんだったら、県が40億円出資をする。民間のお金を65億円まとめて100億円のファンドを作って、そこに専門家をまとめて投資をする判断をする。当然リターンも権利も返ってくるというふうなリスクリターンの設計を考えたわけですけれども、この仕組みは基本的にはあくまで交付金という助成金であって、特段企業が成長しても、当該市には間接的にいろいろな税金だとか雇用を含めてリターンはあるけれども、そういう面で直接なリターンは求めない、穏やかな支援策だと思うんですが、結果的にこういうスキームを取られた経緯なり御説明をいただければ、REVICの専門家の方もいらっしゃるので、お教えいただければと思います。
【村上産業部次長】 こういったフレームに至った経緯でございますけれども、まずもって、このファンドの運営をするファンドマネジャー、そういったスキルを持った人間を確保するというのはとても難しいというようなところがありました。
そして、あと、やはり投資をしてから結果が出るまで、ファンドの組成期間は大体10年ぐらいと聞いておりますけれども、投資の成否の結果が出るのに長期間掛かるというところで、成功・失敗、こうしたものの説明責任がどこまで取れるのかというところも議論となりました。そういった中、こうしたSTSのモデルを御紹介いただきまして検討する中で、先ほど穏やかなというようなこともありましたけれども、行政の関わり方としてはこの辺りがよろしいのではないだろうかなという判断をしたところでございます。
ただ、この交付金でございますけれども、10年事業をしていただいて収益が上がった場合は、交付金の範囲内で寄附なり、地元へのエンジェル投資をしていただけるような努力義務というかそういったものも課して、エコシステムとして回っていけるようなシステムも考えているところでございます。
【林主査】 どうぞ。
【清水委員】 15ページのA-SAPについてお尋ねします。年間の事業費は幾らぐらいなんでしょうか。
【村上産業部次長】 1プロジェクト500万円が上限でございまして、来年度はそれを12本やっていこうというふうに思っています。
【清水委員】 なるほど。じゃ、大体6,000万ですね。
【村上産業部次長】 それぐらいですね。それを我々浜松市と静岡県さんの方で折半という形で負担をしていくというふうに考えております。
【清水委員】 分かりました。
【村上産業部次長】 それから、この事業についてはやはり企業さんにとって補助金制度で縛られるというところがありまして、申請の時期、なるべく年間を通して申請をしていただきたいということがあって、事業費については年度の枠を外して3年間ぐらいでフレキシブルに使えるような仕組みを来年度から導入するというように考えております。
【清水委員】 これは当然、大学も一緒に共同提案するものもよいのですね。それとも企業支援だけですか。
【村上産業部次長】 フレームとして、企業さんのお困り事を大学が請け負って解決をしていくというフレームですので、基本そうなんですけれども、トリガーがどっちにあるかというのは問わない形かと思います。
【清水委員】 分かりました。ありがとうございました。
【栗原委員】 すみません、今の質問に関係するのですが、このA-SAPというプラットフォームと企業との関係性について、ある意味で中小企業さんがぽんと課題を投げると、プラットフォームの方が考えてアウトプットのフィードバックがあるみたいに、ちょっと分断されている感じがするのです。場合によっては中小企業の人が一緒に入ってソリューションを考えるとか、あるいは解決の過程で中小企業の現場で試作をするとか、そういったもっと一体化するようなこともあるのではないかと思うのですが。投げました、戻ってきましたみたいに映るのですが、そういった課題はないのでしょうか。
あと、ファンドの方でもう一つ質問させてください。
【村上産業部次長】 いいですか。済みません。ちょっと説明が悪かったかと思うんですけれども、課題解決ということもあるんですけれども、企業側のニーズとして、こんな開発をしたい、こんなことを考えているんだけど形にならないかというようなこともこのフレームで前へ進めていくというようなことももう一つあります。そういった中では、やっぱりやりとりをする中で一緒に考えていく、一緒に進めていくということは実際にあります。
【栗原委員】 そのプロジェクトチームとかに中小企業の方が入ってやっているわけでは必ずしもないんですか。
【村上産業部次長】 基本、開発自体は大学の研究室の中で行いますので、その部分はやっぱり大学の中になるんですけれども、進めていく過程では企業さんが入ってやっていっております。
【栗原委員】 大学の研究室の中に企業の側から人材交流みたいな形で入ることもあるんですか。それとも、情報のやりとりだけですか?
【村上産業部次長】 共同研究的なところも、一緒にやるというケースもあると聞いています。
【栗原委員】 ありがとうございます。それから、もう一点、ファンドの方なんですけれども、こういう仕組みを地元の方で考えられたのはすばらしいと思うのですが、実際、認定VC、今年度から3社ということですけれども、この認定VCに立つ方というのはどういう方なのでしょうか。多分開示はされていらっしゃらないと思うので、ご無理のない範囲でと思いますが、例えば地元系のVC、例えば金融機関系VCなのか、それとも事業ごとにもっと広く投資をしているような方が入ってくるのか、どういうVCの方が入ってくるのかというところを教えていただければと思います。
【村上産業部次長】 ベンチャーキャピタルの認定につきましては、これは全国公募いたしました。その中で東京なんかで説明会なんかもやりながら事業者を募ったんですけれども、ここはやっぱり議論がありまして、ベンチャーキャピタルさんはやはりIPOとかM&Aで利益を確定するということが目的ですので、我々としてはなるべく長く浜松の地で活動してもらいたい、企業活動をしてもらいたいというところがあって、そこが少し相反するのではないかというような議論もありました。
そういった中、1つにはやっぱりベンチャー企業さんの成長の度合い、スピードを速めるというようなところ、それが首都圏の方の一般的なベンチャーキャピタルさんの役割かと思っております。片や、地域ファンド、地域に密着したファンドも認定していくということで、そちらは地域で持続的に活動してくださる企業さんに対して出資をしていただく。2つの側面、2種類のベンチャーキャピタルを認定していくというような考え方で指定の方を行っております。
【林主査】 どうぞ。
【金子委員】 金子と申します。私も前回出席できず、失礼いたしました。
11ページに関連して質問させていただきたいのですが、今A-SAPなどのお話を伺っていますと、上の丸が3つある地域・医療ニーズからニーズが出てきたものを大学と結び付けるというようなお話が多かったような気がしております。これは、浜松市の産業、中小企業の課題を解決することにつながっていると思いますけれども、一方で、海外市場ニーズや将来ニーズなどを大学の技術と結び付けて事業化する点についてはどうなのかということと、そうした場合に、事業化していく企業側の対応はどう進められているかを教えていただければと思っております。
【村上産業部次長】 これはまさにこのエコシステムの経営会議等で総括的な部分で議論をされる部分になるんですけれども、プロデューサーの池野さんとか、文科省さんの方から御支援を頂いている地域アドバイザーの加藤義信さんとか、若しくは海外マーケットの専門家であるビジネスプロデューサーの春山さんとか、そういった方々に入っていただきながら、このプロジェクト、個々のプロジェクトについて、当然グローバルな市場を見据えて将来性がどれぐらいあるのか、市場規模はどれぐらいあるのか、そういった中でどれぐらいの市場をつかめる可能性がある製品になり得るか、そういったところを見ながら、なるだけ多くの市場をつかめるような製品になるようなブラッシュアップを経営会議の中でしているというようなところです。
【金子委員】 すみません、そうしますと、今現在、4期目のスタートを5月から進めていくというこの事業だと思いますけれども、現段階で資金が出ているようなものはあるんでしょうか。
【村上産業部次長】 A-SAPの話ですかね。
【金子委員】 そうすると、それはA-SAPとは違うプロジェクトとして進んでいるという感じなんですかね。
【村上産業部次長】 A-SAPはまた違うテーマでやっておりまして、エコシステムの方は、PJ1からPJ7と、CJ4からCJ9までのプロジェクトの方で進めております。
【林主査】 村上さん、ありがとうございました。それでは、この後の自由討議の時間を確保したいので、先に進めさせていただきます。
続いて、議題2に入ります。本日の関係機関からのヒアリングと、資料3の「第10期地域科学技術イノベーション推進委員会における論点整理」を踏まえつつ、地域科学技術イノベーションやエコシステムの形成のために何をすべきかを中心に御議論いただきたいと思います。
それでは、事務局より資料3について説明をお願いいたします。
【山之内室長】 資料3でございます。これは前回頂いた御意見を論点ごとに整理したものになります。
まず1ページ目のところ、これ、論点でございますが、(2)マル1、「プレーヤーが果たすべき役割」と赤字で書いておりますけれども、ここのところについては、大学、企業、自治体に分けて皆様の意見を整理させていただいております。マル2も同様に、科学技術イノベーションのために何が必要かでは、ヒト・モノ・カネで整理させていただいているところでございます。
次のページでございますが、ここから意見を整理させていただいているんですけれども、前回欠席された委員もいらっしゃるので、簡単に説明させていただきます。
2ページの(2)イノベーションを起こすための具体策は? というところでございますが、マル1、プレーヤーが果たすべき役割では、大学については、プラットフォーム形成において地方大学は核になるとか、あとは、次のページには、いろいろ書いてございますが、大学による人材育成の重要性についての御意見があったところでございます。
下の方を見ますと、地方自治体というところがございますが、ここでは、地方自治体が明確なビジョンを持つ必要があるとか、次の4ページでございますが、真ん中からちょっと下のところには、自治体は科学技術振興の指針・計画の策定、こういったことの必要性について御意見があったところでございます。
次の5ページ目でございますが、マル2、科学技術イノベーションのために何が必要か? では、ヒト・モノ・カネで分けてございますが、ヒトのところでは、大学と自治体の人事交流、再掲という形になると思うんですが、大学での人材の育成についての御意見だとか、モノについては意見はなかったので、ブランクにさせていただいております。カネのところでは、一番下にあるように、地銀などと連携してソーシャルインパクトボンドという形で資金の循環を狙うとか、こういったことが重要ではないかといった御意見もありました。
ちょっと雑駁ですが、以上でございます。
続けて、参考3-1を見ていただければと思います。これは当室、地域支援室の事業に産学官金の連携の研究拠点作りみたいなことをやっているリサーチコンプレックス事業というものがあるのでございますが、この事業で支援していた神奈川地域で生まれた成果の紹介になります。この資料3-1は神奈川県の記者発表資料でございますが、ここの一番の段落、10行ぐらいのところ、ここにうまくまとまっているので、紹介させていただきます。
神奈川県は、もともと大きな港などもあることから外来感染症の防疫に力を入れていたところなんですが、新型コロナウイルスの関係で衛生研究所と理化学研究所が新型コロナウイルスの迅速検出法を開発したと。研究を加速してもらうために文科省とJSTから更なる追加支援も行っているところでございます。
これ自体は、やっぱり地域のニーズから自治体主導で社会実装につながる成果が生まれたということで簡単に紹介させていただきました。以上でございます。
【林主査】 ありがとうございました。そうしましたら、自由討議に入る前に、前回欠席された金子委員、田中委員及び松原委員から5分程度ぐらいで御発言いただいて、その後、皆さんからの自由な討議とさせていただきたいんですが、よろしいでしょうか。それでは、金子委員からお願いできますか。
【金子委員】 金子と申します。今回初めてお目に掛かる方もいらっしゃいますので、簡単に自己紹介等述べさせていただきたいと思います。
現在は、大学院で監査と会計を教えておりますが、もともと公認会計士で、30年近く会計監査をやってまいりました。ほとんどは上場企業等の監査でした。それ以外に、これは日本だけではないのですが、特に女性の起業家が少ないということで、女性起業家を応援する組織を立ち上げまして、5年ほどそこのリーダーをやっておりました。起業家といっても、一人起業家のような方から、100人を超える従業員を雇っていらっしゃる方まで様々なんですけれども、女性起業家1,300人のネットワークを作り活動をしておりました。私は監査法人を退職しましたので、後輩が引き継いでくれて、今、会員が1,700人になったと聞いております。
最近のイノベーションを見ていて感じることなんですが、私が会計士になったのは30年ぐらい前なんですけれども、その当時はベンチャーのCFOになりたいという会計士はいなかったんですけれども、今は若い優秀な会計士、それから、会計士を目指す学生が、ベンチャーのサポートをしたい、ベンチャーのCFOに実際優秀な若手がなっているというところでは非常に意識が変わっていると思います。また、金融機関の社外監査役もやらせていただいていますが、そちらでもやはり地方のベンチャーや中小企業をサポートしようという動きも非常に強まっていると思いますし、大学でもイノベーションやアントレプレナーという授業は非常に人気のある科目になっております。
そうはいいながらもいろいろな課題があると思います。前回の調査資料を拝見していまして、どういう組織が連携の牽引役になっていくのかというアンケートに対して、やはり自治体と大学だろうという答えが多く出ておりました。本日のゲストも自治体の方と高知大学の方ですけれども、大学と自治体との連携が取れているということが、やはり進めていく非常に重要な点だろうなと思いました。どんな人材が不足していると考えますかという問いに対しては、地域産業のビジョンを語って巻き込んでいくことのできる人材ですから、まさにお二人のような方が重要だろうと思います。
一方で、更に連携を、参画することが重要になってくると考える人材としては、地域の中堅中小企業ということを求めていらっしゃるようです。リーダーシップは自治体とか大学であったとしても、やはり中堅中小企業をどのように巻き込んでいくのかが非常に重要です。高知大学ではKPIを設けて、そこを達成していこうとされているようですが、そういう成果が見える、成果を見せることや、少なくとも将来の成果が期待できる、できそうということを見せていくということは非常に大事なことだろうと思いました。
それから、きょうのお話もそうなんですけれども、地域といっても相当に幅があると思います。浜松と高知は全く違うし、そのほかの地域も相当に違う。そういう意味では、最先端技術を使うイノベーションを進める地域と、それから、技術はそれほど最先端でなくても、それをうまく横展開したり、地域の課題解決につなげていくようなタイプのイノベーションといろいろなタイプがあり得るので、色々な形の成果・成功モデルを知る・知っていただく、あるいはいろいろなヒントを得る・与えるという観点で、この委員会を含め大きな意義があるのかなとも思います。さらに、大学もそういうところを評価するような、やはり大学の教授というのは海外論文を何本書くのかみたいなところも非常に多いので、違う形の評価システムも大事になってくるのかなと思っております。
どうぞよろしくお願いいたします。
【林主査】 ありがとうございました。それでは、田中委員、お願いいたします。
【田中委員】 地域経済活性化支援機構、田中です。私も、前回欠席しました。
用意した資料を説明させて頂きます。私は修士課程で超伝導を修士で研究していましたが、世界的な超電導体開発競争の真っただ中におり、自分の力不足を感じ戦略コンサルタントになりました。
その後、医薬品開発ベンチャーの社長や台湾の医療機器ベンチャーの経営に携わりました後、産業再生機構で2件の事業再生に取り組み、その後、仲間と一緒に経営共創基盤を設立しました。その後に現在の地域経済活性化支援機構(REVIC)に転職し、ファンド事業の立ち上げから始め、今は産学連携ファンドの運営に専念しております。
産学連携ファンドについて少しお話ししますと、2015年に、REVICは山陰合同銀行とともに、鳥取大学と島根大学それぞれに、産学連携ファンドを立上げ、2022年6月に終了する予定です。
既存の大学発ベンチャーは少なかったので、先生方それぞれ100人ずつぐらい話を聞いて、5社ずつ計10社に投資をし、1社を除き先生や地元の方とゼロから会社を立上げました。
投資先の中に、Gap投資会社というものがあります。ベンチャーを起業するステージよりも、もっと早い段階で、先生方の研究に対し研究投資をする会社です。あらためて両大学の先生方の研究テーマをみてみると、数十万円~数百万円程度のお金さえがあればPOCが取れて企業にライセンスアウトできるのに、そのお金が無いから放置されている研究テーマが沢山ありました。Gap投資対象の中には、過去に国等から多額の研究費が投入され研究を進めてきたものの、ある日をもって研究費が途絶え、その後放置されたままになっているような、研究テーマが数多くあります。
REVICは、観光等いろいろなファンドを全国に広く展開して参りましたが、産学連携ファンドは島根大学と鳥取大学の2つのファンドしかありませんでした。REVICは法律上の存続期限があるため、これから10年を超える産学連携ファンドを作るにも、ファンド期限前にREVIC自体がなくなってしまうため、GPやLPとして関わる事ができません。新たな方法として、GP/LPによる資金的支援ではなく、特定専門家派遣という人的支援により、産学連携ファンドを新たに組成・運営支援する事になりました。その1件目が、4月1日にある大学で立ち上がる予定で、その後他大学でも展開する予定です。
産学連携ファンドの一番の課題は人材の確保です。(資料14p)①フロント人材は、目利きができて、投資ができて、経営が分かる人になりますが、3つの条件を兼ね備えた人材はまず採用できず、素養のある人材を採用し、社内で育成しています。
②バックオフィス人材は、弊社の場合は、共同でファンド運営する地域金融機関の方に担当してもらっています。
③ベンチャー経営者は、REVICの担当者が大学の先生方とゼロから起業するケースが大半だったので、立上当初は私達も共同経営者になっています。途中で誰かにバトンタッチしたかったのですが、簡単には人材がみつからず、弊社の担当者は③の業務で忙しくしております。新しく4月1日から立ち上げるファンドにおいては、③の人材は外から採用しようと考えています。
更に、ファンドを立上・運営する社長となる経験者は一層みあたらず、4月1日の新ファンドは、一旦私自身が社長となる事にしました。結局のところ、産学連携ファンドのような、リスクマネーを日本中に供給するためには、適材を輩出ができるかどうか次第と考えています。
以上です。
【林主査】 ありがとうございました。それでは、松原委員、お願いします。
【松原委員】 私が心配することではないんですけれども、4月にいきなり中間まとめが案として出てくるって本当に出てくるのかなというのが非常に懸念するところがあるんですけれども、力技でやるのかなと思いますが。
ちょっと歴史を振り返ってみますと、2000年代辺りからですかね、地域イノベーションシステム論、1990年代から出てきていたんですけれども、それを文科省が丸の内にあったようなところで話をさせていただいた覚えがあるんですけれども、そのときには、地域イノベーションシステムをかなり強調しておりました。
システムの中でどういった成果を出していくかというところで、地域イノベーション戦略支援プログラム、その前の知的クラスターもそうなんですけれども、がんがん言っていたのは、地域密着型も大事だけれども、もっとグローバルな競争力を発揮するような、そんなような迫力のある地域イノベーションのプロジェクトが出てこないんでしょうかというようなことです。これは、経産省の産業クラスターについても言っていたんですけれども、文科省は、地域イノベーション戦略支援プログラムの中で、私が言っていたような形でグローバル型と、それから、地域密着型を分けた形で選んでいました。ただ、選んだ数が多過ぎて、特にグローバル型が全然グローバルじゃなかったり、そう言うと語弊があるんですけれども、ともかく地域イノベーションシステムの政策についてどういうふうに向かうかというような議論を大分した覚えがあります。
その後方向が変わってきて、イノベーション・エコシステムという言葉が出てきて、システムという大きな箱をどう考えるかというようなことではなくて、その箱の中をどういうふうにマネジメントするかなんていうようなところに話が集中していて、はっきり言うと、余り面白くなかった。それで、中間まとめのところでまだイノベーション・エコシステムのようなことを言っているのがいいのかどうか、検討が必要ではないかと思っています。
といいますのは、欧米のイノベーションシステムの議論を見ていく中でいうと、ちょっと前までは、やっぱり知識のフローみたいなものを可視化して、どうやって産学官の連携をマネジメントしていくかという議論があったんですけれども、最近私が注目しているのはむしろ別なもので、知識よりも技術、技術の軌道みたいなものが転換するような局面を捉えていって、その転換する局面に政策がどう関わってきたかというのを今ずっと追い掛けております。
NISTEPの報告書の中で、北陸の企業のヒアリングの結果として挙げているんですけれども、全く政策が効いていない部分も結構あるんですけれども、そうでないものもあって、やっぱり公設試と大学と、それから、その地域の企業とが一緒になって切磋琢磨しながら生み出したものが結構非常にジャンプするような技術を生み出していって、それが地域に影響をもたらしていくといったような事例を今拾い上げてきているんです。
現在、東北に関わっていますが、東北のクラスターについてはかつて、原山先生がまとめられた文書が非常に興味深く、ただ、震災後の方針が出てきていないので、今そこをどういうふうに再構築するかを考えています。
先ほど浜松の方に質問するだけで、私自身、答えていませんでしたけれども、地域経済を大雑把に捉えるとああなってしまうんですけれども、今私が分析しているのは、個々の企業の売り上げデータを経年的に見ていって、V字回復している企業を摘出して、そのV字回復が何によるのかというのを調べております。その中で、技術が関わっているものがどれぐらいあるのかというのをヒアリングし、そこからどういうふうなことが導き出せるのかというのを今研究しているところです。
そういう面では、欧米の研究成果などもウオッチしながら、第6期につながるような新たなものを、出していただければと思っております。以上です。
【林主査】 ありがとうございました。残り10分の自由討議なんですけれども、きょうは最初からヒアリングで2つの地域を頂きましたし、委員の皆様から、3名方からいろいろなコメントを頂きました。ここ全体を踏まえて、あと、論点整理のこの書類もありますが、この論点整理のところも踏まえた上で、皆様の方から自由討議として時間を使いたいと思います。まずどなたか、最初に私がと。どうぞ、清水委員。
【清水委員】 きょう論点整理をざっと眺めていて、ちょっと追加した方がいいかなと思うのは、自治体のリーダーシップです。いろいろな調整だとか橋渡しという言葉があるんですけれども、地域イノベーションということを進めるには、自治体の協力やリーダーシップが不可欠です。もう一つは、その方々が、地元の中小企業支援ではなくて、今、松原先生がおっしゃったようなグローバルな視点も含めて見据えた上で中堅中小を支援するのかという視点が更に重要だと思います。そういったニュアンスをもう少し強く出されたらいいかなと思います。
一方、地域の本当の稼ぎ頭は、グローバルで戦っている企業なわけで、現実は中小企業や中堅企業だけを支援しても全然だめです。そういう意味でいうと、どちらかというと、従来の県の補助金による中小企業支援みたいな形とは全く違う視点が必要です。大企業を支援するということを自治体は嫌う場合もありますが、それを突破するには、国の事業が1つバックになって、それを精神的に資金的に支えるということも必要なのではないかと思います。
【林主査】 清水委員、ありがとうございました。確かにきょうのヒアリングをさせていただいた高知にしても浜松にしても、明確な地域のリーダーシップがありますね。それがほかの地域にどういうふうに広げられるのかなという視点は大事かなと私も思いました。
ほかに御意見ある方。西村さん、まず。
【西村委員】 手短になんですけれども、さっき松原先生のおっしゃったことに僕もかなり共鳴していて。私もかなり長くここに参加させていただいていて、政策としてかむかどうかというのを確かに振り返ると、余りかんでいないところもあるんですけれども、最近、私は二面性を持って実はここに来ていてですね。受田先生の話も聞きながら思ったんですけれども、大学が本来やるべきこととか、何か地域のプレーヤーの中で文部科学省が関わることというのはもうちょっと整理して、全部やらなくていいんじゃないのかなと思っていてですね。
松原先生おっしゃったように、僕も地域の中を歩き回っていると、文科省の政策と全く関係なしに、大学全然関わりなく、でも、すごく伸びていく企業って今たくさんいるんですね。中堅どころでも、世界トップレベルの、この技術しか持っていないというところが圧倒的な強さで更に磨いているんですね。県の補助金の審査をしていると、何だこれというのが一杯出てきます。それが見えているかどうかという話で、そこに対して、じゃ、こういう政策打って響くかというと、ほとんど関係ないと思うんです。ベンチャーキャピタルも含めて。
じゃ、私どもがやっている、新しい、中堅企業のもうちょっと次の世代も結構伸びているんです。トマトをやっている浅井君とか、ゑびやの小田島とか、ここではなかなか説明していないですけれども、一杯ぽこぽこ出てきているんです。これはもう本当に5倍10倍ぐらいこの5年ぐらいで成長していくやつがいるんです。ということは、時代背景を見ていってやれば伸びるのいるなというのが分かってきたんです。
とすると、この地域イノベーションというところの中に文部科学省がやる施策として本当にやらなければいけないことというのは、もしかしたら人作りと、もう一回基礎研究のようなところ、基盤になるようなところに特化させるようなことを、このプレーヤーたち、例えば大学なら大学のプレーヤーたちとか自治体には支援していくべきじゃないのかなと。
それがマーケティングが絡んでないとできないよねと思うんだったら、本当は、省庁間の連携じゃないんだけども、何かそういうところは違うところに任せて組み合わせる中で、とにかく肝になるところで、地方の中でもやっぱり科学技術は重要です。これを掛け合わせないと中小企業は伸びないです。でも、ここのところをやっぱり支えているのは、受田先生のような、高知大学があるからあれができるのであって、この大学のきちんとした基礎研究力をその地域に特化したような形で絞り込んででもやらせるべきだと思うんです。
というようなことが、僕、何かこの次に考えていく地域イノベーション・エコシステムを考える中の、どこを重点的に取捨選択して絞るか、やるかというのをやってもらってもいいのかなというのは感想として思いました。
【林主査】 ありがとうございました。確かにこの活動で全てのイノベーションに全部ファンドすることはできないわけであって、どこに文科省らしいスイッチを付けるかという、ここだと思うんですね。人材とか基礎的なところとかおっしゃっていただきましたけれども、論点整理の資料を見てみますと、私も人材に関する御意見が非常に多いなと感じましたので、やはり皆さんの問題意識はそこにかなりあるのかなと感じています。
栗原委員。
【栗原委員】 この論点整理のところで、各プレーヤーが果たす役割は? というのがあるんですけれども、それぞれのプレーヤーがどうというよりも、どうコラボレーションするのか、どう繋がるのかということがとても大事ではないかと思います。今回いろいろな事例も教えていただき、この推進委員会でそういったことをお聞きする中で、解は1つではなくて、このケースではここが繋ぎ役だったとか、ここがリーダーシップを発揮した、ここが主体になった、こういう繋ぎ方がなされて地域に落とし込まれたというような実例がきっと幾つかあるんだと思うので、そういった事例等も学ばせていただきながら、連携の仕方を委員会で提案していけたらいいんじゃないか、発信していけたらいいんじゃないかと思います。
それに関して、事務局の方にお聞きしたいのですが、この推進委員会は、産業連携・地域支援部会の下の委員会で、部会の方で地域イノベーションに関して全体的にやるのではないかと思うんです。その部会にこの推進委員会から打っていくものが何なのか、特性を出していった方がいいんじゃないかと思います。あまり課題を全般的に議論するというより、もっと成功事例あるいは失敗事例から学び、どう地域で事例が展開されているかというような実例を出していけたらいいのではないかと思いました。
【林主査】 ありがとうございました。余り時間がもうそろそろないんですけれども、最後にどなたか、やはりこのメッセージを言いたいという方はいらっしゃいますか。
松原委員、目線が合いましたので。
【松原委員】 すみません、人材が大事だというふうに言われたんですけれども、私、余りそれが好きでなくて、人も大事なんですけれども、人が代わっても成り立つ、あるいは持続可能性のあるようなやっぱりシステムみたいなものをしっかりとどう構想するかを、私自身は望んでおります。強要するつもりはありませんけれども、これは西村委員と対立するかもしれません。
【西村委員】 対立は全然していなくて、属人的になってはだめだと思います。だから、私たちは教育は結構やっていて人作りをしているけれども、どちらかというと雰囲気作りをしているような感覚です。昔でいうと、こんなことやったら恥ずかしいよなというふうな感じの、昔の日本人のいい、磨き合うような社会ってあったと思うんです。それがいつの間にかなくなってきているけれども、地域というのはもう一回それができる環境でもあるんですね。
だから、それぞれ立ち位置のある人たちがそれぞれ事業をやっている。でも、今の時代を見ていったら、もっとやろうと思えばできると。こいつらここまでやっているんだから、俺も恥ずかしいからこれぐらいやらなきゃいけないなという雰囲気を、実は経営者の次に伸びるやつが束ねてきて、それを大学が何となく品質管理のような感じで、このレベル感でやらなきゃだめだというのを言いながら切磋琢磨していく場を私は提供していると思うので、特定の人を何か作るというんじゃなくて、地域の中にそういう質感を作るというのかな、これが場合によっては大学のある立ち位置、世界レベルで通じるような質感を作るというのが、もしかしたら大学のいる地方大学の役割かもしれないなと思います。そういう意味では松原先生と全然対立しませんので。
【林主査】 今のはとても大事なポイントだったと思うんです。というのは、私も別に属人的な、何かすごいリーダーを作ればいいという意味ではなくて、ひょっとしたら文化みたいなものですかね、これを言うとまたかなり曖昧な言い方になってしまって面白くないんですけれども、そういったことを目指すような、文科省らしいものにまとまっていくというのを期待したいと思います。
時間が数分オーバーいたしましたので、ここで打ち切りとさせていただきます。委員の皆さん、貴重な御意見、御議論ありがとうございました。
最後に、今後の予定について、事務局よりお願いしたいと思います。
【岸良係長】 次回4月の開催を予定させていただいておりまして、既に日程調整の方も御連絡等させていただいておりますが、具体的な日時及び場所につきましては、近日中に御連絡させていただきますので、御承知おきいただければと思います。
次回の委員会も引き続き、関係機関に対するヒアリングを実施する予定としてございます。
以上です。
【林主査】 ありがとうございました。
そうしましたら、特に御意見なければ、これで第2回目の第10期地域科学技術イノベーション推進委員会を閉会いたします。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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