産業連携・地域支援部会(第10期)地域科学技術イノベーション推進委員会(第1回) 議事録

1.日時

令和2年2月20日(木) 15時00分から17時00分

2.場所

 中央合同庁舎第7号館東館16階 科学技術・学術政策研究所 大会議室

3.議題

   (1) 議事運営等について(非公開)
   (2) 今後の地域科学技術イノベーションの在り方について
    ・地域科学技術イノベーション支援施策の変遷及び現状について 
    ・地域における科学技術イノベーションについて
    ・今後の審議ポイント及び審議スケジュールについて
    ・自由討議
        (3) その他


4.議事録

○議題1については、非公開

【林主査】 それでは、これより公開で地域科学技術イノベーション推進委員会を進めさせていただきます。本委員会では、資料1-1のとおり、「地域の科学技術を地域活性化につなげていくに当たり、地域の科学技術に係る現状と課題の把握とともに、取り組むべき方向性・戦略・解決策について検討を行う。」と、上位の産業連携・地域支援部会により決定された設置紙において規定されています。
これから約半年にわたって、今後の地域科学技術イノベーションの在り方やその振興施策等について、各委員の御知見をお聞きしながら議論を深めてまいりますので、よろしくお願いいたします。
これより議題2に入りますが、本委員会運営規則第3条第2項に基づき、本日は科学技術・学術政策研究所(NISTEP)より、上席研究官の荒木様に御出席いただいております。
審議を進めるに当たり、本委員会に関係する文部科学省のこれまでの地域科学技術イノベーション支援施策の変遷と現状について、事務局より説明をお願いいたします。
【山之内室長】 私の方からは、今、主査が言ったとおり、地域科学イノベーション関係施策の変遷と現状について説明させていただければと思います。
まず、2ページでございます。このスライドは、科学技術基本計画と今までの科学技術政策を一覧にまとめたものとなってございます。2001年に第2期科学技術基本計画が策定されたわけですが、その中で知的クラスターの形成ということが明記されました。そこから地域科学技術振興施策を本格的に開始したという状況になってございます。
右から行くと、まず、2002年に知的クラスター創成事業が始まりまして、同時に、都市エリア産学官連携促進事業というのが始まりました。
しかし2009年、吹き出しで書いてありますが、事業仕分けというのがございまして、地域科学技術、産学官連携戦略展開事業は廃止という判定を受けました。採択したものは続けていくということもあって、1年間だけ地域イノベーションクラスタープログラムを行っております。
第4期になりまして、ここからクラスターというよりは、イノベーションのシステム作り、そっちの方にシフトしていったということで、地域イノベーション戦略支援プログラム、規模も知的クラスター事業が5億円というのに対して、1、2億と若干小規模になっているという状況でございます。
第5期からは、地域が自立的・持続的にイノベーションを起こしていくということがうたわれていまして、地域イノベーション・エコシステム形成プログラム、これは現在やっているものですが、これは2016年から開始しております。
今年度からは今までシーズプッシュ型の施策が多かったということもあり、地域の様々な社会課題を科学技術イノベーションを活用して解決するということで、ニーズプル型のDESIGN-iというのも始まってございます。
次のページでございますが、これは先ほどの取組の施策の予算の推移になります。2009年に、先ほど説明申し上げましたが、事業仕分けというのがございまして、ここでクラスター事業が廃止ということで、ここからかなり減ったという状況になってございます。
次に始めた地域イノベーション戦略支援プログラムや、地域イノベーション・エコシステム形成プログラムは、クラスター形成よりはかなり額も小さくなって、全体的な額としては今のような状況に至っているという状況でございます。
次の3ページ目でございます。ここから各施策を簡単に説明させていただければと思います。
まず、赤で囲っている知的クラスター創成事業でございますが、次の4ページになりますが、まず目的・趣旨でございますが、上の真ん中に書いてあるんですが、第2期基本計画、地域のイニシアチブの下での知的クラスター形成だとか、第3期では、世界レベルのクラスターとして発展可能な地域に重点的な支援を行うということが書かれまして、そういったことを受けて、世界中のヒト・モノ・カネを引き付ける世界レベルのクラスター形成を目指すということで始めたものでございます。
事業の概要でございますが、予算的には1地域当たり、かなり大きめの約5億円という形で始めまして、特徴としては、地方公共団体が将来ビジョンにおける知的クラスター構想を策定、それを地方公共団体が指定する中核機関がマネジメントするというようなやり方で行っておりました。全体で31地域を採択しております。
次のページは、どういった成果が生まれたかということなんですが、特許出願件数だとか、事業化件数、論文数とか、いずれも1,000、2,000、3,000とかなり多くの成果が得られたと。主な成果事例としましても、福岡、北九州では、先端システムLSIの開発拠点でのクラスターの形成ということで、関連企業の集積もかなり大きくなったという結果が得られたところでございます。
次のページでございますが、知的クラスターと同時期に始めました都市エリア産学官連携促進事業でございます。
次のページですが、これの目的・趣旨でございますが、一番上の左側に第3期科学技術基本計画を抜粋しております。小規模でも地域の特色を生かした強みを持つクラスターを各地に育成するということで、知的クラスターの少し小さい版というような感じで始めております。
事業概要でございますが、特定領域への分野特化という形で、予算的にも1から2億円、特徴は知的クラスターと同じやり方でして、地方公共団体が地域クラスター構想を策定、それを公共団体が指定する中核機関がマネジメントを実施ということで、計89地域を採択したところでございます。
その成果でございますが、特許出願件数、事業化件数など、ともに1,000件以上ということで、主な成果事例としましては、函館エリアで海洋・水産関連のクラスター形成を目指すということで、従来は商品価値がほとんどなかったガゴメ昆布からフコイダンなどの機能性成分を抽出したと。そういったことで商品化を展開できて、40億を超える売り上げを実現したというようなのが代表的な例かと思います。
次のページでございますが、地域イノベーションクラスタープログラムでございます。この事業は、最初に申したとおり、知的クラスター、都市エリアが事業仕分けで廃止という判定になりましたということもあり、既に採択していた地域を継続支援するために行ったというところもございます。
ちなみに、事業仕分けの廃止になった理由というのは、ちょっと小さい字になるんですが、上の箱の中に書いてあるんですが、1つ言うと、文部科学省が地域活性化策をする必要はないだとか、地域の自発的な取組が必要、使いやすい財源にすべきではないかとか、あと全体的整理をすべきということで、これは経産省等も産業クラスター政策をやっていたということもあって、同じようなものが乱立しているんじゃないか、整理・統合して予算を考えるべきだと、こういった意見を頂いていたところでございます。
その次のページでございますが、地域イノベーション戦略支援プログラム、これは第4期が始まった2011年に始まったものでございます。
目的・趣旨でございますが、第4期では、地域がその強みや特性を生かして、自立的に科学技術イノベーション活動を展開できる仕組みと書かれているように、クラスターの形成でいろんなことをやるというよりは仕組み作りが重要ということで、シフトをチェンジして始めた事業になります。
また、事業仕分けで、先ほども申しましたが、文科省がそもそも地域活性化をやる必要がないだとか、他省庁施策との整理などの指摘もあって、上のところで、2番目に赤く書いてあるところなんですが、関係府省の施策を総動員するシステム、他省庁ともよく連携すべきではないかという考えで始めた施策になります。
事業規模でございますが、規模は年1億円程度で、特徴といたしましては、産学官金で構成するイノベーション推進協議会、こういったものを設置して、地域が地域イノベーション戦略の策定・提案を行うと。ここが連携の話なんですが、関係府省共同で地域イノベーション戦略推進地域というのを選定して、選定された地域における取組を関係府省が支援するということで、自分の省庁の所掌部分をそれぞれ支援していくという形になっておりまして、文部科学省は大学の知のネットワークの構築だとか、地域の戦略実現のための人材育成プログラムの開発など、こういったものを支援するという形になってございました。最終的には、計37地域を採択して支援したというところでございます。
次のページは成果でございますが、ここにも特許出願件数だとか、事業化件数、論文数というのもあって、それぞれ数的には多いんですが、ただ、一番下に書いてある行政改革推進会議の秋のレビューというところなんですが、成果として確かにいろいろな数字などは出ているけど、この会議では研究成果、つまり論文を作ることが目標なのか、あるいはイノベーション創出が目標なのか、イノベーション創出であるならば、事業の効果、定量的な効果検証、こういったものを行うべきで、出口戦略の明確化などを行うべきではないかと厳しい指摘を頂いたところでございます。
その次のページが、現在もやっています地域イノベーション・エコシステム形成プログラムでございます。
次のページですが、まず、背景・課題でございますけど、一番上に書いてあるところですが、地方大学や研究資源があっても、事業化経験・ノウハウ及び資金などが不足しているだとか、あと、先ほども指摘がありましたとおり、出口戦略が描けていないといったために、事業化へのつなぎが進まず、成功事例も少ないのではないかですとか、あと、一番右に書いてある第5期でございますが、そこでは、地域に自律的・持続的なイノベーションシステムが構築、つまりエコシステムが重要といったことも受けて、この地域イノベ・エコプログラムでは、出口目標を事業化というものにいたしまして、事業化ができれば資金などが入りまして、持続的にイノベーションを続けるエコシステムの形成につながると、そういった考えで始めた事業になります。
事業の概要でございますが、一言で言えば、大学のコア技術を事業化するというものでございまして、特徴としてはシーズ、コア技術を持っている大学の研究者に全てを任せるのではなくて、民間経験者などを事業プロデューサーに据えて、事業プロデュースチームというのを作っていただいて、事業化までマネジメントするというものになってございます。この事業は、来年度から新規採択はしないということが決まっておりますので、2023年度には終了する予定になってございます。
次のページが採択地域の一覧でございますが、北は北海道から南は熊本まで、計21地域が採択されているという状況でございます。
次のページが成果ということでございますが、まだ走っているものなので、成果というのはちょっと早いのかなというところもありますが、出てきているところもございます。その中でも主なものを紹介いたしますと、香川地域とかでは希少糖の研究というのをやっているんですが、この研究開発を通じて、希少糖、アルロースをメキシコに新設する世界初の専用工場で2019年秋頃から製造開始して、今年度から世界の食品メーカーに販売を開始する予定だということでございます。
次に、今後の課題と書いてありますが、これもまだ終了していないので、今後考慮していくべき点を幾つか書いてございます。
まず1つ目が、確かに成果、事業化というのが出つつあるんですが、今後は、こういった成果が一過性のものにならないで、地域におけるイノベーション・エコシステム、こういったものの形成につなげていくことが必要ではないかというのが1点。
もう一つは、地域でのエコシステムを構築するためには、大学だけでなく、自治体や地元企業など、地域を構成する様々なアクターが主体性を持って取り組むことが必要ではないかと。当たり前のような話なんですが、これ、実は今、中間評価などをやっておりますが、地域によっては、このエコ事業プログラムでは、大学のみが頑張ってしまって、事業化という観点が薄れてしまっているとかいったものが出つつあるので、こういったことを書かせていただいた次第でございます。
次のページに、今年度から始めたDESIGN-iというものがございます。
その次のページなんですが、このDESIGN-iの概要でございますが、地域の目指すべき将来像を描いた未来ビジョンを地域の市民とか、大学、地元の企業などで提案すると。この未来ビジョンを実現するために、その障壁となっている様々な社会課題を科学技術イノベーションを活用することで解決するというものでございまして、スキームといたしましては、支援対象としては、地方自治体と大学のセットであるということで、事業期間も1年、規模はフィージビリティースタディーという形でやらせていただいておりますので、1,000万程度です。採択地域は今年度4つ、ここに書いてあるところを採らせていただいたところでございます。
採択地域の概要が次のページでございますが、1つ紹介いたしますと、例えば佐渡市、新潟大学では、棚田は大型機器が入らなくてかなり生産性が悪いと。そこで、トキも来ますので、トキとも共生しつつ、生産効率性を上げるスマート農業、こういったものを研究しているというものでございます。
次のページ、ここは内閣府の事業でございますが、地方創生を目指した産学官連携施策ということで、今後の議論の参考になると思いまして、入れさせていただいております。地方大学・地域産業創生交付金事業、来年度ですと97.5億円ということで、中身的には、御存じの方も多いと思いますが、地方大学・産業創生法に基づいて、知事のリーダーシップの下、産学官連携により、地域の中核的産業の振興だとか、専門人材の育成を行うということを支援するというものでございまして、30年度に開始したものございます。ですから2年間ということで、9件を採択していると。それぞれ県がここに書いてありますが、こちらの方に、参考までに採択した9地域の概要を載せてありますので、時間があるときに見ていただければと思います。
次のページ、これも参考でございますが、来年度から始まります共創の場の形成支援ということで、今までJSTで様々な事業をやってきましたが、そういったものを一体的に集めて、共創の場ということで、一体的に支援していくと、そういった思いで作ったということでございます。詳細については、説明は割愛させていただければと思います。
最後でございますが、まとめでございますが、先ほど申したとおり、事業の変遷につきましては、地域における科学技術振興施策は、クラスター形成から始まりました。ただし、事業仕分けなどがあって、イノベーション創出の仕組み作り、そういったものにシフトチェンジしていったと。そして、最終的には、今の段階では、自律かつ持続的な地域イノベーション・エコシステムの形成へと変遷しているという状況です。
今後の課題として、ちょっと挙げさせていただいているのは、先ほども申したとおり、やっぱり1つは、今まで事業をやっていろんな成果を出してきていますが、一過性のものとならず、地域おけるイノベーション・エコシステムの形成につなげていくことが重要であるということと、それと大学、自治体など、地域を構成する様々なアクターが本気で地域を変えようとする熱意と主体性を持って取り組むこと、それと最後は、先ほど内閣府の事業も説明しましたし、最初の局長の挨拶でも申し上げましたが、やはり地方創生を目指す内閣府、経済産業省など、他省庁の施策と連携していくことが重要であると。
というのも、これも局長がお話しされていましたけど、地域の活性化というのは、当然、文科省だけでできるものではないので、どういうふうに連携していくか、そういったことも今後考えていく必要があるということで書かせていただいております。
説明は以上でございます。
【林主査】 ありがとうございました。続きまして、科学技術・学術政策研究所(NISTEP)の荒木様より、地域イノベーションシステムに関する調査について発表を行っていただきます。
【荒木上席研究官】 御紹介いただきありがとうございます。文部科学省科学技術・学術政策研究所の荒木と申します。今日はこのような機会を頂いてありがとうございます。私はNISTEPで、地域のイノベーションや産学連携についての調査研究を行っております。現在、調査は何をやっているかなども含めて、本日、お話しさせていただければと思います。
まず、地域イノベーションシステムに関する意識調査を2016年に行っており、その後に要因の分析というのを行っています。
地域イノベーションシステムに関する意識調査については2016年に調査を開始、2017年に報告を行っています。調査対象は、大学のステークホルダーである、都道府県庁、政令指定都市などの地方自治体、地方銀行、公設試験研究機関の計490機関を対象に調査を行いました。回答率は74%で、自治体からの回答率は100%という内容になっております。
本来は全部御紹介したいのですが、時間がありませんので、重要な点をお話しさせていただきます。まず、地域における連携の牽引役はどのような組織がやってくれればいいかという質問に対する回答は、都道府県との回答が一番多く、2番目に大学、高専、3番目に公設試験研究機関との結果になっています。
次に、連携にもっと参画してほしい組織について、地域のリーダー格の中堅・中小企業の参画が必要との回答が一番多く、2番目に大学や高等専門学校、地域金融機関との回答でした。
次に、最も不足していると考える人材についてですが、この設問の回答は、地域未来、将来の地域産業のビジョンを語り、関係者を巻き込んでいくことのできる人材、など地域では人材が足りないという回答が多くありました。
この調査に関しましては、第5期の科学技術基本計画の地方創生に関する内容についておこなっております。地域イノベーションの状況について、地域企業の活性化について、地域の特性を生かしたイノベーションシステムの駆動について、地域が主体となる施策の推進について、記載されており、それについての意識調査の結果と思っていただければと思います。
そうすると、地域イノベーションの認識に関しましては、地域イノベーションに対する取組の成果の認識において、成果が出ていると認識している機関が5割を超えた回答がありました。
地域企業の活性化については、地域におけるグローバルニッチトップと呼ばれる企業の存在について認識している機関が3割。
地域の特性を生かしたイノベーションシステムの駆動の状況については、地域内の関係者との連携状況については、6割を超える機関が、自分たちは連携できているという回答がありました。 コーディネーションを担う人材については、6割超の機関で人材が不足しているという認識があり、先ほどお話ししたように、将来の地域産業のビジョンを語り、関係者を巻き込んでいくことのできる人材が不足しているという認識がありました。
地域が主体となる施策の推進については、各自治体、戦略について4割弱の機関で策定されており、各自治体の戦略においては定量的目標が挙げられているとの回答でした。
意識調査の結果を用いて、決定木分析という方法を用いて要因分析した結果がこちらになります。
詳しい内容については、NISTEPのディスカッションペーパー165を見ていただければと思いますが、成果認識が高い回答群は、地域イノベーションに対する取組の状況として、実施している、予定があるという回答機関が成果の認識が高かったという分析結果になっています。
そうすると、地域イノベーションに対する取組の状況というのは何だろうという疑問が湧いてきます。この取組を実施していると回答した機関には自由記述で取り組みを回答いただいており、その自由記述の内容を見ると、科学技術等の指針が挙げられています。
次に、連携の認識に関しては、成果の認識があると回答した機関に関しては、地域の中でも連携ができているという認識がありましたので、成果の認識があれば、連携の認識も高くなることがわかりました。
これまで意識調査やその分析結果について御説明しました。NISTEPでは地域に関する各種調査を行っております。その調査について御紹介したいと思います。
知的クラスター、都市エリア等から、今の地域イノベーション・エコシステムまで約165課題が採択されております。中間評価や終了評価も全てまとめて収集しており、それがどのように関係しているかというのを研究しております。
今回は各都道府県でどの程度の採択があるか集計してきました。この集計の内容に関しては、5件以上採択されている地域をリストにしております。10プログラム以上の採択があるのは静岡県と福岡県でした。
NISTEPの過去の調査に関しましては、その当時に評価の高かった地域などを調査しております。今回、先ほど採択の多い都道府県であった福岡県や静岡県を対象として調査を行っているところです。中でも福岡市と浜松市を調査しています。
さて、先ほどお話しした成果の認識を上げるためには、科学技術振興施策等がある方がよいのではないかとの仮説を検証するため、現在、科学技術振興指針等、地方行政の施策の状況について調査しています。
平成20年版の科学技術白書の中で、地方公共団体における科学技術振興指針等の政策の状況について記載がありました。この平成20年版の科学技術白書によると、当時は全都道府県で科学技術振興指針等の策定が行われていたようです。
その指針等についての現状を調査した結果がこちらになります。調査に当たっては、先ほどの意識調査で回答された自由記述に記載されている施策等と、JARECの地域における科学技術振興施策と調査報告書に記述のある政策等から抽出しました。さらに、WEB調査を行い補完しています。具体的には、科学技術というタイトルが付いた指針等があるか、計画の変遷が分かるような指針等があるか、アンケート調査に回答されている取組があるか、計画の期間が終了しても、なお利用されているかどうかというのを判断基準にして、指針等の状況を調べてみたところ、科学技術に関する指針等がある地域、総合計画等に集約された地域、これには科学技術に関する記述が一文でもあれば採用しています。3番目に、産業施策等に移行したもの、これも科学技術の文言があれば取ってきました。科学技術に関する記述が含まれない、変遷が分からない、放置されていてどうなっているか状況が分からないというものは不明というような、この4つのパターンに分けて地域を見てみると、このような状況です。
各都道府県でどうなったかというのを分かりやすくするため色分けをしてみました。2008年の段階は、緑色が科学技術に関する指針等がある地域になります。こちらの地域が産業施策や総合計画の方に集約しました、不明という地域に分かれているという状況になっています。
あくまでもご注意いただきたいのですが、個人の見解を含んでおります。今回、不明というのは、私がどんなに探しても分からなかったというものが不明という扱いで、黄色としております。
次に、地域プログラムとの関係性があるかということで、統計的な分析、簡単に相関を調べてみました。科学技術指針等があるという緑の地域については3点、産業施策に移行したという地域は2点、総合計画に含まれる地域は1点、不明は0点として、地域プログラム等の採択件数との相関を分析したところ、優位水準1%で優位であることがわかりました。つまり、地域プログラムの採択件数と施策については関係性があるだろうということが分かりました。それは当たり前だろうと思われるかもしれませんが、肌感的に認識しているということではなく、数値的に相関が出ているというところにご注目頂きたいと思います。
知的クラスターの1期、2期では、主体的な計画を有する自治体の支援事業と書いてあります。地域イノベーションクラスタープログラムから地域イノベーション戦略支援プログラムにおいては、これは都道府県又は政令市が中心になって申請。現在のイノベーション・エコシステムに関しては、自治体と大学の連名での申請となっているので、自治体の関与性というのは非常に強いものになっております。
また、先ほどもお話がありましたけれども、関係省庁との連携が開始されたのは、第3期から開始されている資料がありました。地域イノベーションクラスタープログラムの採択に関しては、都市エリアの終了年度が20年終了と21年終了のものからの採択と資料に記述がありました。
さて、先ほどお話しした10課題の採択のあった静岡県の中でも浜松地域に関して、調査している内容を少しお話しさせていただきます。浜松地域はこれまで終了評価がSやAなど高い評価の地域であり、採択されたプログラムがうまくつながっている地域だと思って注目しています。浜松市が政令市になったのは、平成19年、それ以前は政令市ではなかったので、静岡県と申請されています。知的クラスターの第1期のときは静岡県と浜松市の連名で申請、第2期のときも静岡県と浜松市で申請、3番目の地域イノベーション戦略支援プログラムのときには、これは調整機関を間に立てていますが、地方自治体としては静岡県と浜松市となっています。進行中のイノベーション・エコシステムに関しては、浜松市が申請しているという状況になっています。
次に、科学技術に関する施策はどうなっているかというと、静岡県は静岡県科学技術振興ビジョン、これが平成21年まで。それからは総合計画の方に移っています。しかし、静岡県はクラスターに関するビジョンなども出しているので、自治体としていろいろクラスターに関するビジョンなどの計画が確認できました。
次に、浜松市ですが政令指定都市に変わって、2011年ぐらいに、はままつ産業イノベーション構想というものが出されまた。この中で、科学技術であったり産学連携を推進するという文言が含まれています。あと、まち・ひと・しごと創生法ができた後に、浜松市では総合戦略が出されていますので、その、時期時期に合わせてクラスターに関する科学技術の振興等の内容を含んだ計画等が各自治体できちんと計画されているというのが分かりました。
最後に、地域科学技術指標2018から地域の状況を皆さんにご紹介して終わりたいと思います。
こちらは総務省が出している科学技術研究調査から都道府県ごとにデータを集計したものになります。企業の研究開発費と大学の研究開発費を集計しました。大学に関しては、ライフサイエンスが非常に割合が高くなっています。
大学はライフサイエンスの割合が高く出るので、2番目に研究分野割合が高いものを表示しました。大学の2番目に研究開発割合が高い分野、企業の1番目と比較すると、にている地域もあるようです。地域の連携を進めようと思うと、このようなデータも参考になるのではないかと思っております。
以上が今現在、地域について調べている内容になります。皆様、ありがとうございました。
【林主査】 ありがとうございました。それでは、これまでの事務局及びNISTEPからの発表を踏まえて、御質問、御意見等ございましたらお願いいたします。各委員の方からお願いします。いかがでしょうか。あれば挙手していただいて。最初は少しあれですかね。
じゃあ、私の方からよろしいですか。企業の人間なので、お金のことにはとても気になるんですけれども、地域のこの予算は一時期かなり減らされて、約37億円でステイしていますよね。これ、今後どうなんでしょう。やはりうまく増やしていく必要性に関してどういうふうにお考えかなと。
【山之内室長】 もちろん増やしたいと思っていて、特に今回、1ページ目を見るとあれなんですけど、今回、ここで議論していただいた施策を令和3年度に向けて要求していって、できればもっと地域のお金は増やしていきたいと考えております。
【林主査】 御説明いただいたように、各省庁間の連携を深めつつ、かつ影響力のある形で活動費を増やしていきたいということでよろしいですね。
ほかに。加藤委員。
【加藤(百)委員】 御説明ありがとうございます。浜松頑張っているということで、地元でうれしいなと思ってお聞かせいただきましたけど、現場で、それこそ大学の先生方と一緒に活動したりしますけれども、先ほど課題で、事務局からの説明で出ていた、つなぎ役がいないという問題ですね。恐らく浜松市は市の職員が相当つなぎ役で動いてくれます。
例えば、私がやっている事業に関しても、ちょっと誰か何かできないのかなというと、市の職員がわーっと走り回ってくださって、全部アポを取って、面談まで一緒に来てくれるみたいな、結構土日関係なく、わーっとみんな動いてくれるような方が何人かいらっしゃるんですね。やっぱりそういう機動力のある人材がいると、一気に地方は、いろんなお宝があるものですから、大学に限らず。そういうのがつながってくるのかなと思うので、事業そのものに出すというのはもちろんあるんでしょうけど、それは経産省とか、いろんなほかの省庁、事業そのものに出す政策があって、人材育成のところはなかなか誰も出さないんですね。
例えば、私も教育事業をやっているんですけど、ここは本当にお金が出てこないというか、分野で、効果が見えないというのはあるんでしょうけれども、そのつなぎ役、よくデザイナーと我々現場で、サービスデザイナーと言うんですけど、何かいろんなものを、すばらしいものを日本は部品としてはいっぱい持っているんですけど、それをつないで、世界にサービスとしてとか、何か今までの物としての表現というよりは、全体の仕組みとしての表現をビジネスでするとか、芸術ですると。そこの人材育成をしないと、なかなかアウトプットが出てこないなというのは現場で感じます。せっかく文科省さんなので、人材育成にお金をつぎ込んでいただけると、大変地方にいる身としてありがたいなと思います。
【林主査】 ありがとうございます。私も浜松市の例はとても興味深いなと思いました。私、福岡の方のイノベーション・エコシステムをいろいろお手伝いしているんですけれども、やはり福岡も結構盛んではありますけれども、今、加藤委員がおっしゃったような機動力という点では、なかなかすばらしいなと思いました。
じゃあ、西村委員。
【西村委員】 ちょっと外した発言をするかもしれませんけれども、先ほどの調査はすごくよくて、お金もがんがん投下していって、いろんなものが動き始めたなというのは見えたんですけれども、問題はここからアウトプットだと思うんですけれども、それがどういうふうに蓄積されてきて発展しているのかなというのは、ちょっと最後の資料で分かりにくかったなというのが1つです。
ただ、これ、どこも苦労していて、それを多分引き出してくるのは人だと思うんですけれども、そろそろ順番が逆になってくるような気がしていて、金を投下して物事を動かしていくというのは絶対最初は重要なんですけれども、いつまでもそのやり方ではなくて、動いているところに後追いでがっと意味のある金を付けて、自由にわっと伸ばせるという方が実はよくて、そういうステージに変わってくるという視点で、クラスターの変化というか、こういったものをどこかで追っていってほしいなと思うときに、先ほどの静岡のケースなんかは、かなりもう時間を追って見えると思うし、あと九州のケースも追えると思うんですよね。
私は北海道にかなり関わっていて、最初の立ち上げをばーっと見ていたんですけど、それを見ていくと、やっぱりクラスター、最初に金を入れて、追加して、どんどんやっていく中の変遷で、どういうスタイルに変わっていったかという分析があると非常にいいのかなと思ったんですが、いかがでしょう。そういうのを地域的に見て、何か特徴があるのか説明いただけるとありがたいなと思ったんですけど。
【荒木上席研究官】 地域の調査については、まだ現在、調査中で、浜松市と福岡市に関して調べた報告書を出したいと思っておりますので、少しお待ちいただければと思います。
今回は浜松市について簡単にご紹介させていただきましたが、先ほどご意見いただいたように、福岡地域も変遷が結構見えるので、福岡地域も同じような形で出せるのではないかなと思っております。
NISTEPから弘前と香川県についての報告書がございます。また機会がありましたら、御紹介させていただきたいと思います。
【西村委員】 是非期待していますし、あと、イノベーションの中で、すいません、長くて申し訳ないんですけど、定義も結構重要なのと、最初に社会が変化していくところも含めて言うと、大きいイノベーションと小さいイノベーションとかもあると思うんですよね。それが社会にどう絡んでいったかというところもどこかにあると、希少糖で1個、がーっと行ったときに、地域社会がどうがらっと変わったとか、若しくは、ちっちゃいんだけれども、足し算していったり掛け算していくと変わっていったとか、何かそういう事例をリアルに示していただくと、この会議なんかで非常に参考になるのかなと思いました。よろしくお願いします。
【林主査】 ありがとうございました。
じゃあ、串岡委員、お願いいたします。
【串岡委員】 実は、私も浜松には結構注目していて、浜松の産学連携の勉強会に私が浜松に行ってお話をしたり、あるいは浜松の方に来ていただいてお話をしたりとか、相互に学ぶというのは非常にあると思っていて、もちろん浜松市役所の方もいらっしゃいますけれども、浜松だと、通常、金融機関というのは大体地銀がメーンですけれども、浜松には地銀はないんですが、浜松いわた信用金庫さんという非常に熱心な金融機関があって、例えばコワーキング施設をみずから作ると。広島で我々が作ったものを参考に見に来られるとか、あるいは浜松いわた信用金庫は、シリコンバレーのスタンフォード大学アジア太平洋研究所、ダッシャー先生のところに人を毎年派遣しているんです。それは私もこの間一緒に行って、そこでお話を聞きましたけれども、多分、市役所とか金融機関だとか、大学とかも、もちろん今のイノベーション・エコシステム、池野先生というバイオデザインをシリコンバレー、スタンフォードでやっている方が関わったりとか、結構重層的なもの、もちろんヤマハだとか、いろんな既存産業のものもありますけれども、いろんなものが重層的になっているなという話があって、恐らく自治体のトップレベルの話もあるでしょうけれども、それは首長の話もあったり、いろんな要素が絡んでいるので、もう少し、せっかくいい分析をされるのであれば、そういった観点も加味していただけばありがたいなと思いました。
【林主査】 ありがとうございました。
それでは、NISTEPの荒木様、ありがとうございました。
続きまして、今後、委員会で審議を進めていくに当たってのポイント及び審議スケジュールに関して、事務局より説明をお願いします。
【山之内室長】 資料4-1で審議会ポイントについて説明させていただきます。
資料4-1でございますが、この審議ポイントは、今後、この委員会での議論を参考にしていただければと思って用意したものになります。委員の皆さんからの意見を頂いて、これを厚くしていって、最終的には報告書の案とか、そういったものになればいいなと考えて作っております。
ポイントは大きく分けて2つあります。1つは(1)というところなんですが、地域において科学技術イノベーションをやるそもそもの意義は何であるかということ、(2)については、その科学技術イノベーションを起こすには、具体的に何をやればいいのかということが論点として挙げさせていただいています。
(1)でございますが、そもそもの意義でございますが、例として幾つか、例えば地域の経済発展だとか、社会課題の解決、あるいは地方大学の魅力の向上だとか、そういったものを例として挙げさせていただいております。
(2)のイノベーションを起こすための具体策ですが、これは幾つか論点分けさせていただいておりまして、丸1は主要なプレーヤーが果たすべき役割は何か。次のページになりますけど、丸2、イノベーションをためには何が必要か、課題は何か。例えば、先ほど荒木さんからの発表にもありましたけど、地域の産業ビジョンといったリーダーが必要ではないかとか、そういったことが考えられるのかなと。最後の丸3でございますが、これはイノベーション創出のさらに先にある、イノベーションを続けてもらうエコシステムの構築のためには何が必要かということを挙げさせていただいています。参考になればと思い用意させていただきました。
続けて、資料の4-2でございますが、今後のスケジュールになります。第2回は3月16日を予定しておりますが、ヒアリングを2件していただこうと思っていまして、一つは高知大学です。先ほど私から紹介させていただいた内閣府さんの「キラリと光る地方大学」を受けていらっしゃるということで、参考になるかと思います。もう一つは先ほどからずっと話題になっていた浜松市です。市役所の方に来ていただいて、お話しいただこうかと思っております。
第3回は4月。ここもヒアリングを予定しておりまして、神奈川県は殿町など拠点作りをかなり前からやっていますので、参考になろうかと思ってお願いしているところです。第4回は5月。ここら辺で一度中間まとめ案というのを出させていただいて、議論していただければなと。6、7月には最終まとめに係る討議などをやっていただいて、ちょっと駆け足になるんですが、8月に報告書を公表といったスケジュールを考えております。
以上でございます。
【林主査】 ありがとうございました。
それでは、NISTEPの説明や審議ポイントも踏まえつつ、これからの時間は、今後の地域科学技術イノベーションの振興に関し、委員の皆様の御意見を頂戴し、自由討議を行いたいと考えております。
まず、委員の皆様におかれましてはお一人5分程度、地域科学技術イノベーションに関して、御自身のこれまでの御経験も含め、現状や課題、今後のあるべき姿、推進方策と本委員会での今後の検討に当たって、論点とすべき観点などを御発言いただきますようお願いいたします。
それでは、順番なんですが、まず、栗原先生から順に御発言いただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
【栗原主査代理】 ありがとうございます。ペーパーはございませんけれども、問題意識と、あと、先ほど資料2のところで、これまでの変遷をお話しいただきましたけれども、まさに地域とイノベーションというのは古くて新しい課題だと思っていて、これから何が求められるのかなというところを少し新しい切り口でやってみるのもいいのではないかなと思いました。
いろいろ採択された案件を見ると、ものすごく目的も違うし、規模も違うし、組み方も違うし、それはそれでいいんですけれども、その中で今後、科学技術というものと、それから、それが地域に導入されることによってこんなふうに変わるということを見せるベストプラクティスみたいなものを幾つかやっていくのもいいのではないかなと思いました。
そのときの切り口として、例えば、今後産業界とかでもどういう分野をやっていきたいか、それが地域との関わりでどう光っていくかということで、例えばスマートシティみたいなものに地域と科学技術がどういうふうに落とし込めるのか、あるいは農業、自動運転、ポスト5Gみたいな先端的な、産業界も5年、10年後ぐらいを考えた開発において、それが地域でどう落とし込まれていくのかというところを何かモデルケースみたいなものがあるといいかなと一つ思いました。
それから、2つ目に、既に予算もついていますけれども、地方大学、ここは一つの地域のプラットフォームになると思います。地方大学じゃないですが、シリコンバレーにある大学がメッカになっていてということで、地域での核というのは、一つは地方大学ではないかなというところにもう一段焦点を当てて、地方大学と企業がどう連携するかということのシーズの部分とニーズの部分と、それから、大学と企業との間の人材の双方向のやりとりというところについてを切り口に、これもいろいろな好事例があるといいなと思います。
それから、もう一つは、回るときに重要なのは資金で、これは先ほどの人材ということで言うと、一つは地銀さん等が役割を担っている地域もありますけれども、そういったものと、それから、最近はソーシャルインパクトボンドという、英国のような形ではなくて、日本版なんですけれども、そういう形で資金が循環していくのが現に出始めているので、そういったものの活用事例というところも見せていけるといいのではないかなと思いました。
それから、ばらばらなんですが、先ほど、今後、5年後、10年後といったときのちょっとエッジの効いた分野という中に入るかもしれませんが、宇宙とかデータと自治体と、それから、今話題になっている災害といったところが、まさに地域課題の解決だと思うんですが、それが技術と結び付くことで、どう地域に落とし込まれていくのか、その中には必ず自治体が入ってくるんですけれども、そういうところについての今後の在り方というか、何か具体的に取り組んでいるところがあれば、そんなところも見せていけるといいのではないかなと思いますので、結論としては、何か網羅的に課題を挙げるというよりは、そこで実際にプラクティスとしてやっている事例を共有していけたらいいのではないかなと思います。
【林主査】 ありがとうございました。非常に重要な論点を幾つか言っていただいたと思います。市の方の人材育成って大事なんですけど、大学の方も大事で、実は両方大事なので、ここら辺をどう議論していくかということになるのではないかなと思います。
それでは、加藤由紀子委員、いかがでしょうか。
【加藤(由)委員】 ありがとうございます。私はベンチャーキャピタルで働いておりまして、ベンチャーキャピタリストとして、例えば地方の大学のシーズへの資金ですとか、あと、事業化といったことも日々やっているところで、実際に感じているところは、課題はやはり2つ大きくあるかと思うんですが、1つは、実際に地方の大学でも研究開発ですとかシーズというのは非常にすばらしいものがあると、また技術ですとか知財ですとか、すばらしいものがあるところなんですが、ただ、そこを社会実装する、事業化するといったところに、やはり大きな谷があるところで、なかなかそこが事業化、産業化までまだ行くところが少ない現状がある。そこの谷を埋めるのはどうしたらいいとかという、ヒト、モノ、カネというところがあるかと思いますが、そこが一つです。
あと2点目は、今実際にデジタル化が進む中で、感覚としては東京と地方の格差がむしろ広がっているんじゃないかなというのが、民間の仕事をしていると思うところが結構あります。今、全体的な地方の経済がシュリンクしていく中で、外とつながってくるような首都圏とかいったところの事業ですとか、シーズというのは非常に伸びるけれども、他方、そうじゃないところはやはり埋没してしまっているといった状況があるところです。ですので、そこのギャップをどういうふうに解消していくのかというところが、やはり大きな課題かなということ、この2つは日々感じているところです。
それを受けて、地方の地域科学技術イノベーションをどう推進していくかというところで言いますと、例えば浜松の例ですとか九州の例でお話いただいた好例というところで言いますと、やはり強い地域のリーダーとなるような企業さんですとか、中小企業、若しくは大企業かもしれませんけれども、そこ企業があって、産業があって、そこに付随する人がいて、行政があって、そこに大学でリサーチがあるといった、いいエコシステムの循環がうまくできているんじゃないかなと思うんです。ですので、そこをほかのところでは、うまく本当の産学官の連携をどういうふうに仕組みとしてやったらいいのかというところを、施策としてどういうことができるんだといったところを非常に、今、私としては関心を持っているところでございます。以上です。
【林主査】 ありがとうございました。確かに都市と地方の格差というのは、毎年こういう委員会活動で話題にはなりますので、今回の半年ぐらいの間にも触れていきたいところです。ありがとうございました。
では、加藤百合子委員。
【加藤(百)委員】 私の大学との関わりのところからちょっと御紹介しつつ、こんなことができたらいいなというのを2つ最後に述べたいと思います。
まず、私はエンジニアから農業へ転身したんですけど、そのきっかけは静岡大学の社会人講座です。なので、地元でもないところで180度と言っていいのか分かんないですけど、工業から農業へ転身するというのは、本当に大学の役割が大きかったですし、地元でもないので、地域とのつながりを作っていただいたのも大学がきっかけなので、やはりそういう社会人講座みたいなものは非常に大きな役割を果たしているのではないかなと思っています。
今現在、農協ロボットとか農業ICTの分野、あと、流通、市場法がちょうど改正されるに当たって、市場の在り方みたいのを改革して、3つぐらいのプロジェクトを産学官金で連携しながら動かそうとしています。その中で、やっぱり農業ロボットですとスズキとか、浜松地域はものづくり系の大企業がありますので、そのピラミットと一緒に、大学にちょこっと最先端の部分をやってもらったりとか、結構、新しいことするのに役割分担がスタート時点でかなりしっかりしやすいです。迷わず、メーキングはメーカーさん、ちょっと難しいところは大学、ベンチャーは実験のところを現場の農家さんとやるとか、役割分担が明確で、すごく進めやすいなと感じています。
一方で、ロボットとかICTとは別に、市場改革というサービス系の課題になりますと、なかなか地元の大学とはいかず、ここは東大の先生方とやるんですけど、そこも結構明確に役割ができていて、大学は現場を持ってないので我々が現場をやりますと、大学はその現場の情報をうまく使いながら、今、価格形成とかそういうところをやるんですけど、本当にバリューチェーンじゃなくバリューサイクルはどうなんだみたいな、価値の循環というところを先生方がやってくださることになっています。
そんな事例を踏まえて、何で大学の先生と出会えたかとか、うまく組めたかというところで言うと、課題への関心を共通に持っていたところが大きいかなと。東大の先生方も市場の野菜の価格がどうやって決まっているのかというのは関心を寄せていたので、ちょうどよかったんです。そういう意味では課題の仕立てがとても大事で、その仕立てが、ものづくり系、農業ロボットとかICTだとちょっと分かりやすい、ものづくり系は分かりやすいんですけど、社会課題になると課題の仕立てがとても大事で、先ほど申し上げたように、そこがなかなか、サービスデザイン的な思考を持った人材育成というのが、一つとても大事じゃないかなと思っていますので、そこは是非、今、デザイン思考とか出てきているんですけど、そこに限らず、どうやって社会を俯瞰してみて、50年後、100年後の人類を考えながら、今まさにスクラッチベースからデザインし直すことができる人材を地域、地域に輩出していくのは結構幼い頃から教育しないと無理なんじゃないかなと思っているので、長期的な人材育成を検討いただけたらと思います。
要望として2つあると言ったんですけど、もう一つは全体的に萎縮しているなというのが、研究者の方たちと対峙していて思うところです。最初からこれはできないとか、これは難しいなとか、予算を取ってくるのは疲れるしなとか、1円単位で管理されちゃうのはもう嫌だとか、だったら企業の中にいようかななんてこともあったりするので、もう少し自由に使えるというか、もうちょっと研究者の方を信じていただいて、ブラックな人もいるかもしれないですけど、それはそれで必要悪で、もっと自由にきちっと成果出そうとしている人たちが思い切りお金を使って、思い切りやるべきことをやるという雰囲気を官僚が作らないと、緊縛社会と言われちゃっていますけど、縛り付けられる社会を今作っちゃっているので、動きづらいなというところを感じます。何かいろんな施策をするときに、余り縛り付けない方法はどうやって工夫したらできるのかと、是非考えていただきたいなと思います。
以上です。長くなりました。
【林主査】 ありがとうございました。先ほどの浜松の件からしても、それから、栗原委員も実際の例の共有とか、今おっしゃったコメントも結構生々しい話がありますよね。こういう現場感というのは地域イノベーションですごく大事だと私も思いますので、是非そういう点でも議論していきたいと思います。
そうしましたら、串岡委員からお願いいたします。
【串岡委員】 一応、資料を用意してまいりましたけれども、なぜ私がここに座っているかというところから紹介した方がいいと思いまして、私は今、広島大学にいますけれども、もともとそこの下に書いてあるように、広島県でイノベーション関係の担当課長というのを都合10年ぐらいやっていました。普通、自治体でこういう仕事を10年もやる人はいないと思うんですが、ほかに人手がなかったというか、これが天職だと思って10年ぐらいやってまいりましたけれども、実はその前にも、先ほど科学振興の大綱のお話があったんですが、私は平成4、5年にも広島県における科学振興の基本方向を私が担当して、まとめた経緯がありまして、平成の初め頃で言うと、科学技術政策研究所に権田先生がいらっしゃって、地方の科学振興ということを旗を振っていらっしゃって、当時は多分神奈川県が最初に科技庁の方も御出向されていて、科学技術大綱というのを取りまとめると。つまり、そういうある種の総合調整みたいなものが必要なんだということがあったと思います。
私はその時、総合調整より何をやるかというのが大事だから、基本方向ということを打ち出して、拠点と人とお金を作る必要があると思って、当時は今まで公設試の施設でないような、例えば広島県産業科学研究所という産学研究の拠点を県が作ろうとか、あるいは公設試の研究者をどうやって広島大に派遣するとか、あるいは当時、科学振興基金を100億作ろうとかいうのを作ったんですけれども、実はその施設とお金は今に生きていまして、私はちょうど今、内閣府の地方大学・地域産業創生事業を担当していますけれども、その施設とそのお金を使って、今その拠点施設を整備してやっているということがあります。
それは私の紹介なんですけれども、最近思っていることで幾つかの話をしたいんですが、いろいろ予算措置があったり、いろんな取組があって御紹介をされて、成果事例集も出ているんですけれども、もっとベースの制度だとか運用というところのお話もできないかなというのを1点思っています。めくっていただくと、一つこれも最近なかなか自治体レベルでお話をしても解決できなかったことを、特区という枠組みを使って改善した経緯だと私は理解していますけれども、必ずいろんな法令には国、地方公共団体、大学の相互の連携ということが書いてあって、地方だと、地域の地方国立大学と地方自治体は連携すべきだというのはお題目としては当然あるわけです。
ただ、もともとは地方財政特例法という法律があって、地方自治体が国立大学に支援をするというのはまかりならんという時代が長くあった経緯もありまして、なかなか本質的なつながりがなかった中で、地方自治体が大学に行く場合は派遣研修、能力開発で学ぶということしかなかったんですけれども、本格的な交流ができていないというのは実は法令の未整備というか、政令に国立大学法人が入っていないというのが派遣法上の問題としてあって、これはそもそも国立大学法人ができたタイミングと派遣法の整備の経緯にそごがあったことが実態に近いかも分かりませんが、なかなかそれを問題視されないということがあって、私ども広島県としては、これは是非改善してほしいということで特区に提案をし、実は政令が近いうちに改正をされる動きになっていると聞いております。何かまだまだ制度面で、地域の中で解決しなきゃいけない課題があるんじゃないかと、そういうところは是非省庁の方々にも御検討いただきたいのが1点です。
もう1点は、いろんな事例がたくさん出ていて、成功事例もたくさん見させていただいたり、いろんなところでお話を聞くんですけれども、最近の例で言うと文科省と経産省が一緒に作られた、「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン」は非常によくできたコンパクトなものだと思っていますけれども、基本的にここにあるのは、産業界から見て大学の連携をどう引き出すかということで、産学官と書いてあるけど、例えば地方だったら地方自治体の役割はこの中にほとんど書いてないということがあります。今ちょうどこのガイドラインの見直しをされていて、もっと原則的なものからいろんなプラクティスを入れていくというお話も聞いていますけれども、先ほどからの事例の話もありますけど、地域性もある事例は確かに分かるんですが、もう少し深掘りして、多くの自治体にとっても学びやすいガイドラインを中央省庁の方々が作るのは非常に意味のある作業じゃないかと思っておりまして、この2点を提案したいと思います。
最後は、日本とドイツは全く違うので、何々ではと言ってもしようがないんですが、やっぱりもう少し、産業、科学技術だけじゃなくて、自治体全体のビジョンがあって、その中にものを位置付けていく必要があるなということで、昨年、ドイツに伺ったときに参考になるなと思ったものを紹介しております。 以上です。
【林主査】 ありがとうございました。おっしゃった各地方の政令とか制度面の壁というのが意外とあるなと、私も福岡でお手伝いしたいときにちょっと感じたことがありますので、非常に明確な御指摘であったと思います。ありがとうございます。
それでは、佐宗委員、お願いいたします。
【佐宗委員】 ポイントは2点なんですけれども、まず、日本が関東というか東京に一極集中していて、やはり地域を強くしないと国土が狭いのにもったいないなというのが、東京以外のところに住んでいる人間の一つの考えなんですけれども、それで、今日の調査も県、あるいは、元気な都市、浜松、それから福岡というくくりだったと思うんですが、例えば私、経済産業省関係の委員会にいろいろ出させていただいているんですけど、そうすると局なんです。我々でいうと中部経済産業局、ほかのところもあると思いますけど、そうすると、もう少し県を超えた地域というところで、産業のクラスターがあったりということがありますので、そうすると、例えば、今年走っている委員会ですと、IT人材を育てるのが足らないと、どうしましょうというところをもう少し広域で考えるわけです。そうするとマスが増えますので、非常に効果が上がるというところも見ておりますので、やはり文科省だと、県とかそういうことに、あるいは大学のあるところということになってしまうかもしれませんけれども、もう少し広域という視点を入れるといいかなというのが一つです。
もう一つは、ほかのところでも1度話をしたんですけど、年末から1月に掛けていろいろ北米を回って、先ほど串岡先生の方からヨーロッパのドイツのお話もありましたし、栗原先生の方からも新しい視点ということもあったんですけれども、やはり日本とは違うけれども、日本が学ぶべきところはたくさんあると思いまして、例えば北米で私が行ったところは全部、ある意味で優等生なんですが、まずノースカロライナのリサーチ・トライアングル・パークというところは自治体が重工業じゃなくてあえてバイオアグリ系を集めて、地方の人に言うとホワイトカラーの産業ということで、かなり州というか地域が一生懸命やっていると。大学としてはノースカロライナ・ステートと、それからチャペルヒルと、デューク大学という3つの強い大学があって、そこが連携してやっているということです。
それから、モントリオールはAIの強い先生がいらっしゃって、そこでIVADOという大学連合を組んで、地方自治体の方はやはり税制優遇とかいうところで支援をしていると。ノースカロライナもそうなんですが、支援が10年単位でやっぱり長いんです。定着するというのはそれだけ掛かりますので、文科省だけではということがありますけれども、自治体とやっていくには長くやらないとなかなかできないかなと思いました。
それから、あとはシアトルです。御存じだとは思うんですが、シアトルはアマゾンが引っ越してきて、ゴーストタウンのようなダウンタウンが、私も1年間住んでいたんですけど、そのときはゴーストタウンだったんですが、見違えるように変わって、アマゾンが来て、丸いビルの周りにまた住居地を造って、その周りにまたそれを取り巻く企業が来てと。労働者の年齢も平均で30歳ちょっとぐらいで、年収も2,000万、3,000万というところで非常に活気ができて、これはもう自治体というよりもアマゾン一社の求心力かもしれませんけれども、そういうところでいろいろと見てきたところで、やはりダイバーシティというかいろんな形態があって、一つ言えることは、どこかに特化して力を本気で入れて長い間やっているなと感じました。日本もそういう施策の進め方というのは参考になるのではないかと思いまして、海外の事例というのもよく見た方がいいかなと感じました。
以上です。
【林主査】 ありがとうございます。地域の定義というのは何回か議論されていますが、もう少し広域で考えることの重要性、それと世界の事例は私も同じように感じます。日本から離れてドイツに行っても、北欧に行っても、あるいは中国に行っても地域が結構元気ですよね。ですから、参考にするということも御指摘のとおりかと思います。ありがとうございました。
それでは清水委員、お願いいたします。
【清水委員】 熊本大学の清水です。お手元の資料6を基に御説明したいと思います。私は今、熊本大学におりますけれども、もとは産総研におりまして、岐阜県庁に出向した経験がございます。その時には研究開発の統括責任者をしたんですが、まさに先ほど山之内室長がお話しされた140億円、120億円の絶頂期におりました。その時のことから考えてお話をしたいと思います。
熊本大学はエコシステム事業をさせていただいております。わずか約30人の薬学部の研究者が、もともとは8,000万円ぐらいの民間資金獲得だったのが、文科省のエコシステム事業によって1億6,000万と倍の予算を獲得するに至りました。1人当たり500万から600万です。これは東大でもできてないことでございますので、非常に大きなインパクトがあったと思っております。イノベーション・エコシステム事業から離れ、地域の科学技術振興に必要と考えていることを1番からお話をしたいと思います。
何かと言いますと、やはり今までの地域イノベーション、文科省の地域政策は1つの領域に特化してプロジェクトを立てていったという経緯がございます。ただ、県にいたとき、あと産総研で地域を担当したときのサイズ感で言いますと、2億や3億とかそういうレベルのものを一つの都道府県のサイズで特定の領域を集中的にプロジェクトをするのは少し無駄もあると感じました。
2つ目の黒丸に当時の大きなお金があったからこそできたものもあるんですけども、大学、特に岐阜大学、名大、名工大の先生方とおつき合いする中で、どうしても無理をしたテーマ構成になっていたとことも否めないと考えております。
地域科学技術イノベーションの事業の予算は基本的には大学を中心に支出されております。その中においては、たとえ事業化フェーズのものになったとしても大学を中心とした支出となるため大学の都合が優先されるということがあったと考えております。
ここから重要なことをお話ししたいんですが、自治体のことでございます。今日、山之内室長から、審議のポイントの中で触れていらっしゃいましたが、県の科学技術政策の体制を構築の誘導策、必要ではないかと思いますし、先ほど荒木様からお話がありましたように、かつてほとんどの県が指針を作り、体制を作っていたのが、どんどんなくなって地域での科学技術振興の力は弱体化しました。したがいまして、地域に資金を投入するに当たっては、そういった自治体の科学技術の指針を作り、体制と予算など踏まえて決定することが重要ではないかと思います。
私が岐阜県に所属したのは2006年からでございますが、2000年から2005年にはもう既に先輩方が指針を作り、研究開発を統括する部門があり、そこには技術屋もいて、企業のことも分かり、技術のことも分かる、そういった人材が立案に関わってきました。当然ですけれども、国の事業だけではなくて自前の予算を用意し、他部署とかなり議論をしながら作っていった。今は、ほとんどの県ではこのような体制、予算がなくなり個人的な努力になっている。
当時はこちらにいらっしゃる真先戦略官、私が文科省にたびたび真先さんのところに伺って、知事や岐阜大学の学長当時川崎重工のバイスプレジデントだった現在の村山会長のところに、真先課長がこんなこと言っていますと、どうしましょうかというのを議論して、プロジェクトを立てていた。今そういうことは知的クラスター、都市エリアがなくなった時点ではなかなかないのかなと思っております。当時こういった体制を作っていたのは、北から言いますと北海道、青森、広島、高知、沖縄、長崎、等でした。
2ページ目ですが、当時からやや疑問があったのは企業の立場です。文科省の予算ですので仕方ない点はあると思いまずが、やはり出口は、地域にとっては企業です。科学技術の振興に興味があるわけではなく、地域の産業の活性化と地域の課題の解決が目的です。企業がどういうふうに発展していくのか、雇用と売り上げがよくなることが重要です。しかし、企業には直接資金が提供できず、企業は自分たちが中心であるという意識を持てなかったということがございます。今後の検討課題としましては、企業にも資金を出すことも検討したらどうかと考えている次第です。
政策については、これは文科省様についてでございますけれども、サイズも重要でございますけれども、やはり一件一件の貢献度の高い技術シーズというのは、本当は何千万もお金は要らないんです。500万、1,000万でも研究者は十分頑張るし、その効果は企業との関係で言うと発展はします。したがいまして、例えばここにありますような技術シーズを発掘して育成するということと、企業が中心になって、それを実際に事業化していくといったフェーズを作って推進するというのも重要であろうと思います。先ほど他省庁との連携という話もありましたけれども、やはり文科省でやったものは文科省で出口までやっていくというのが理想だと思いますし、省庁間でのそこまでのつながりは難しいだろうと思います。
2番ですが、大学はやはり、従来と同じでございますけれども、シーズをきちんと根拠を基にして、いかに地域に貢献するのかということを基にして、情報提供していくことが重要で、提案者のうちの一人としての責任を負うことを認識することが大事だろうと思います。これが、やはり研究者ごとの思いによってテーマが出てきたというところがあったかと思います。
もう一つは、当時と違うのは、今のコーディネーター、URAは昔のURAよりも、より地域に貢献する、事業化に向けて動くという思いは強くなっています。いわゆる研究支援で科研費を採択されればいいということではなくて、いかに出口企業の資金を頂いて、企業にきちっとサービスができるかということについて、非常に動いておりますので、こういったところについては、県だけではなくて、大学のURA、コーディネーターにも期待していいのではないかと思います。
自治体ですが、先ほどお話ししましたが、やはり指針を作る、本庁に取りまとめ課を作る、次長や部長級などの責任者を配置して、人事と予算、そして、学長や知事と頻繁に議論ができる、そういった立場の人間を置くことが非常に重要だろうと思います。
もう一つは、長期的にそこにいる人間も必要で、先ほど、広島の方がおっしゃったように、技術と政策と企業をバランスよくしている人間が長くいないと、企業の人はやる気を失いますし、大学の先生は何だというふうに思うんです。自治体は、技術、企業、精査記を熟知した職員を育成・配置していくことが必要だろうと思います。
そして、コーディネーターもとても重要だと思います。ただ、そこについてお金を出すべきかどうかというのは、そもそも人も予算も地域で用意すべきで大むしろ国は地域に対して事業費を支出し、物事(プロジェクト)が動くようにした方がよいと思います。つまり、ビルや道路と違って、メンテナンスすればいいというレベルではなくて、地域振興はやはり資金投入をどれだけ継続していけるかという考え方が重要だと思います。
【林主査】 ありがとうございました。いろんなことを網羅的に指摘していただいて、大変よかったと思います。幾つかほかの委員のおっしゃったコメントとも相互に関係があるように感じております。今後、少しずつ深めていきたいと思います。
では、西村委員、お願いいたします。
【西村委員】 どうもありがとうございました。前回に引き続き参加しているので、ちょっと流れもあるんですけれども、私たち、三重県とか三重大学、別に三重大学全体ではなくてですけれども、いろんな成果が出てきているので、余り最近悩んでいなくて、大体やることはやっちゃったかなと思って、ほとんど自動運転に入ってきているので、結構安心して地域を見えている状況になっています。
もしかしたらその空気感がこの議論の皆さんに合うかどうかというのを心配しながらお話をしたいと思うんですけれども、まず(1)で、地域における科学技術イノベーション創出の意義はということが多分、審議のポイントになっているんですけど、これは結構重要で、イノベーションという言葉で何となくここを言葉合わせしておかないと、イノベーションは目的ではなくて、イノベーションは何かの変化が起こる現象のことを言うんだと思うとしたら、自発的な人、組織、社会の幅広い変革というのは多分最後にいつもついてくると思うんですよ。社会を変えなきゃいけないとなると、そこにやっぱ論点を置いて、何が起こったのかと見ていかなきゃいけないので、確かに予算投下をして10年ぐらいいろいろやってきて、いっぱい技術が出てきて、特許も出てきたけど、それを1回、一体どう社会を変化させたのかということは、かなり明確に見ていかなきゃいけないのかなと思うんです。
社会の変化と言ったときに、さっきもちょっと議論があったんですけど、東京と地方という比較をよくやるんですけど、これは余り意味がなくて、物事は一律にはもう動かない時代なので、東京でもだめなところはあるだろうし、地方でもいいところはあるんです。地方でも、例えば三重県というところとほかの地域を比べたら多分違うと思うんです。じゃあ、三重県は全部いいのかというと、三重県の中でも多分いいところと悪いところがあって、例えば大学を通してやっても、大学の中でもいいところと悪いところがあって、多分起こっている現象の中で、今これから社会が変革していくところの流れをつかんでいるものは何かということをしっかりと認識する方が僕はいいような気がしていて、そうすると私たちは、ちょっと偉そうに言うと、限られた地域の限られた集団かも分からないけれども、確実にエコシステムは出来上がっているし、社会は変わってきています。そういう感覚を持っているので、それでちょっとした安心感を持っているということです。
何が一番重要かなと共通項を見ると、時代の流れを読むことだと思うんです。社会変革が起こるというのは、何で変革を起こさなきゃいけないかというと、社会の根底の背景が変わったからなんです。背景に対する適用っていうことを、その地域なら地域で合わしていくところが多分地域イノベーションということにつながると思うし、そこに必要な科学技術が必要だったら変わっていけばいいんです。何かできたから何かが変わる、新しい最先端の技術、特許を取ったから、それで社会が変わるというものじゃなくて、それが社会背景とかむことによって初めて変革が起こるんだと僕は思っていて、それは新結合という融合なんでしょう。
というふうに考えていくと、私たちの中では結構起こしてきた気があって、ただ、先ほどの質問の中でも言わせていただいたんですけど、イノベーションには多分大きなイノベーションと小さなイノベーションとあって、社会というか見方が小さい社会だとすると、それで社会が変わっていったら、小さい社会変化だと小さいイノベーションかも分からないです。私たちが起こしたのは多分小さいイノベーションです。去年とかおととしに御紹介させていただいた、例えばうれし野アグリは、浅井雄一郎という若いやつがトマトを始めて、辻製油とかと組んで、熱とクラスター形成しながらがあっと新しい農業をやっていったら、私のところに来たときは7年前で、1人で始めたんですけど、今はパートさん入れて500人の雇用になって、デンソーと新しい自動ロボットを作って、がんがん世界を攻めるぞと。ゼスプリから認められて、世界で有数の農業者に7年ぐらいでなっちゃったんです。そういうことでも売り上げはまだ20億円ぐらいですと。
ゑびやの小田島というのは確かにAIと食堂をくっ付けて、顧客予測して、マイクロソフトから2年連続でナンバーワンとか、一番使った人と認められたんですけれども、これも確かに5倍の成長したんですけれども、今でも売り上げは5億ですと。新しい事業を作っても年間1億ずつ増えていく。ただし、そこに関わる人たちの雇用は増えたし、なおかつ、収入がかなり増えたんです。そうすると、小さいイノベーションということで確実に地域の暮らし方は変わってきています。子育てをしているお母さんたちのいい職場ができました。それは、うれし野アグリで勤められるからとか、今までホールで働いていた女の子がデータサイエンティストになって収入が倍になりましたとか、これが起こっている。これは完全に社会の変革だと思うんです。それは小さいイノベーションですと、小さいイノベーションだけれども、僕は小文字のイノベーションと言っているんですけれども、小文字のイノベーションも10個集まったりとか、50個集まったり。100個集まると、5億掛ける100といったら500億ぐらいなんで、三重県の南部ぐらい、伊勢とか津とかあの辺の一体で考えるとかなり大きな変化になる産業構成なんです。
というふうに考えると、私たちはどういうイノベーションを目指すべきかということをきちんと自発的に考えてやっていくのは重要で、そのときにプレーヤーは誰かということになれば、大学じゃないですよ。やっぱり産業人だって社会にべったり歩いている人たちです。この人たちをどう科学技術を持っている大学が支援するかとか、コラボするかとか、そっちが重要だと思うんです。私たちはそういう動きです。
もう1点は地方から、地域から大きなイノベーションは出ないのかということで、私も今回のパンフレット、エコシステムの中で実はそれも挑戦しようとしていて、これはエコシステムの中で、新紫外LEDを使った三重大から出てきたぶっ飛んでいる技術を土台にして、日本を支えるような新しい産業になるかなというものを何か作ろうと思っているんです。そうやって考えていくと、私も経営者として企業をやったことがあって、いろいろ考えると、とてもじゃないけどこれはお金が少ないです。だから、日本を変えるぐらいのイノベーションを、例えば地方から出していくといったときに、何も基盤のないところから、すごい技術があるから育てようとしたときに、この予算規模だと多分難しいです。だから、何が言いたいかという、この施策の打ち方の中に一律に効くものがなくなってきていて、中途半端にやっても結構効かない時代が来ているんだったら、適材適所というよりも、的確なサイズ感で適切な施策をきめ細やかに打っていくのが結構重要なのかなと思うときに、これを上から指導できるのか、ちょっと変な言い方しますけれども、むしろ自発的に出てくる人たちに考えさせたものを彼らのアレンジで責任を持たせるという押し方も、立ち始めたやつを押し上げる、それは、あなたたちが責任持った額をちゃんと使いなさいということで、結果を評価するような主義で、起こってきたものを支えるような感じのものをきめ細かにやっていく施策の方がこれから当たるのかなという気がします。
そんな感じでちょっと思っていて、いい紹介になったかどうか分からないんですけれども、私としてはある程度、小文字のイノベーションを、集合体を作って自発的に動くというのはできてきたので、1点だけ言います。これは何でできたかと言うと、手前みそで言うと私のゼミです。私が地域の経営者を集めて、毎週末、徹底的に時代の読み方を議論するんです。それぞれが気付いたことを自分の事業の中で落とし込む、すると、それが何らかの芽が出る、それをまた語り合う、これの連鎖を起こしていったら、一つ一つ新しい事業が、うれし野アグリになってきたり、ゑびやになってきたり、新しい事業が幾つも生まれてきたんです。そんな感じの、私は一応、三重県なので、本居宣長がやっていた鈴屋みたいなものをやっていたということなんですけれども、何かこういうものも、もしかしたら今後、特に地方ということを見てやっていただくんだったら、そういうふうな場を作ってくようなことも、もしかしたら施策の中に落としていってもいいのかもしれません。
すいません、ちょっと長くなりました。私は以上のように思います。
【林主査】 ありがとうございました。西村委員には昨年もたしか、うれし野アグリを見せていただきましたし、もう一つの生々しい実例を御紹介いただいたと思います。
私の方の意見というのは特に用意してきたものはありませんけれども、エコシステム形成プログラムで4年ほど私もお手伝いさせていただいていまして、現実的にエグゼクティブ事業プロデューサーで福岡、そのほか、アドバイザーとして3か所やらせていただいています。経験からやはり、その延長線上で何かあるのかなと考えることがよくありまして、この予算サイズから見ても、この予算を取ったら全部イノベーションができるのかというと、そんなサイズではございませんので、各省庁が出している中で、文科省の地域エコの次のプロジェクトは何をやろうかというところはきちんと考えて施策に結び付けた方がいいかなと思います。
その中で、やはり4年間やってきて、とてもおもしろいなと思うのは、そうは言っても年間1から2億ぐらいの金で、地域の中にプロデューサーの組織が育っていくというか、自立していくのが見えるかなと実感しますので、やはり先ほど何人かの委員から教育の話とか、そういう社会人に対してとか、企業に対しての育成というのは重要だよね、ここの見方は大事だと思うんです。単に技術に投資するとかいうことだけではなくて。
ただ、今度じゃあ育成のために何か育成プログラムを作ればいいかというと全然そうじゃなくて、実際にはこの生々しい現実の中でプロジェクトを動かしてくださいと言ったことによって、初めてエコシステムをリードする人が育っていくということもあると思うので、こういったことを皆様と議論して、文科省様と進めていきたいと思います。
時間も結構押してまいりましたが、最後に5分程度、皆様の意見とそれから先ほどのNISTEPの御発表を含めて、何か総括的にコメント等ありましたら挙手いただいて、言っていただきたいのですが、いかがでしょうか。よろしいですか。
大体、皆さんかなりきちんとまとめておっしゃっていただいたので、多分、論点としては先ほど室長がおっしゃった幾つかの論点に対して、かなりカバーできる形で頭出しができているのではないかなと感じていたのですけれども。よろしいですか、最後に。じゃあ、清水委員、お願いします。
【清水委員】 重なるかもしれませんけど、やはり自治体の方をしっかり体制構築が必要だろうと思います。何かと言いますと、皆さん一生懸命なんです。私、42歳のときにたまたま自分の地元に出向になったんです。同級生ももちろんいますし、親も近くにいるわけですけれども、でも、自分は出ていった人間なので、やっぱりよそ者の感覚はあり、地元にいる人間は自分とは違う思いと、自分と違うネットワークを持っていました。ですから、自治体側がしっかりとした考えと体制と運用を持たないとなかなか進まないということもよく理解しましたので、そのあたりをしっかり誘導することをお考えいただければなと思います。
すいません。重ねて申しわけありません。
【林主査】 ありがとうございました。
そうしましたら、大体最後の最後で帳尻が合ってまいりましたが、委員の皆様、貴重な御意見、御議論等ありがとうございました。今までの御意見と、それから自由議論を踏まえて、事務局にて論点を整理し、次回以降、論点ごとに議論を深めていきたいと思いますので、これから半年間ですが、皆様よろしくお願いいたします。
そうしましたら、今後の予定について、事務局より最後の部分をお願いします。
【岸良係長】 申し上げます。先ほど山之内の説明の中にもございましたが、まず資料4-2をご覧いただきますと、次回の日程についてはアナウンスしておりますとおり、3月16日の月曜日、15時から17時で予定してございます。場所は本日と同じく、こちらの科学技術・学術政策研究所の会議室でございます。
内容は地域における科学技術イノベーションの取組事例のヒアリング及びそれを踏まえた討議ということでして、高知大学と浜松市からのヒアリングを予定してございます。
3回目以降の具体の日程につきましては、追って事務局から委員各位に御相談させていただいた上で日程調整をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
事務局からは以上です。
【林主査】 ありがとうございました。
最後に委員の皆様方から、特に御意見なければ。よろしいですか。
それでは、これで第1回目の第10期地域科学技術イノベーション推進委員会を閉会といたします。どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――
 
 

 

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