産業連携・地域支援部会(第9期)地域科学技術イノベーション推進委員会(第10回) 議事録

1.日時

平成31年1月18日(金曜日)15時00分から17時00分

2.場所

文部科学省 15階 1会議室

3.議題

  1. 最終報告書(案)について
  2. 平成31年度予算案の概要(地域科学技術イノベーション関連施策)
  3. その他

4.議事録

【須藤主査】  それでは、定刻となりましたので、ただいまから科学技術・学術審議会産業連携・地域支援部会第9期地域科学技術イノベーション推進委員会を開催いたします。
 本日は議題1としまして、事務局の方で取りまとめました最終報告書(案)につきまして、委員の皆様の御意見を頂戴すること、そして議論したいと思います。その後、議題2としまして、地域科学技術イノベーション関連施策、平成31年度の予算案の概要につきまして、事務局より説明いただきます。
 それでは、まず配付資料の確認を事務局からお願いします。
【植原専門官】  本委員会はペーパーレス会議となっておりますけれども、本日資料1-1、最終報告書(案)の概要及び資料1-2、最終報告書(案)本体につきましては紙で皆様にお配りしております。それ以外の資料につきましては、お手元のタブレットのデスクトップに全てダウンロードされております。
 議事次第に記載のとおり、資料1-1から資料3が本日の資料となっております。
 なお、資料1-2の最終報告書(案)本体につきましては、時間の関係で事前にホームページに掲載ができませんでした。本日、一般傍聴の方におかれましては、スクリーンに掲示させていただきますので、そちらで御確認いただければと思います。委員会終了後、ホームページに掲載させていただきますので、そちらで御確認のほどお願いいたします。
 御不明な点等ございましたら、事務局までお知らせください。
 以上です。
【須藤主査】  ありがとうございました。
 それでは、最初の議題1、最終報告書(案)についてでございます。昨年4月から本格的に始動しました第9期科学技術イノベーション推進委員会ですけれども、御承知のように月1回というすごくハードなスケジュールでやって参りまして、これも次回で最終回を迎えます。
 これまでの委員会での議論、あるいはヒアリングの内容を踏まえまして、先ほどちょっと説明がありましたけれども、事務局にて、資料1-1、1-2で最終報告書(案)の概要と報告書(案)を作成してあります。まず、その辺を事務局の方から説明していただいて、その後、議論したいと思います。
 よろしくお願いします。
【生田室長】  最初説明が長くなりますが、御容赦いただければと思います。資料1-1が概要、1-2が本体でございますので、この2つを同時に使いながら説明をさせていただきたいと思います。
 まず、資料1-1で全体の報告書の構造を見ていただければと思います。今回、タイトルは中間報告の段階から特段変えておりません。構成といたしまして、第1章では、地域の科学技術イノベーション活動の基本的方向性ということで、定義とか地域の捉え方、地域自身がSTI活動、科学技術イノベーション活動を行う目的、そして地方創生という流れの中におけるイノベーションの位置付けというものをそのまま第1章として、中間報告の段階から少しブラッシュアップをして書いている内容でございます。
 そして第2章、第3章が中間報告から大分大きく変わった部分でございます。第2章では、これまで第4回から第7回でヒアリング、そして第8回では調査機関からの報告をしていただきましたけれども、そこから得られた事例からの教訓ということで、モノ、カネ、ヒト、地域資源、資金、人材、そしてエコシステムの形成、この4つの観点から教訓を整理させていただいております。
 そして右半分の第3章では、第2章で得られた教訓を踏まえて、具体的にどのようなことを今後やっていくべきかということを、先ほどと同様の地域資源、資金、人材、エコシステム、それぞれ色分けを同じ形にさせていただいておりますけれども、それぞれに対応する形で、そして国とか地方公共団体のように主体ごとにどういうことをやっていくべきかという形で取りまとめをさせていただいております。
 それでは、本体の中身に入らせていただければと思います。
 第1章のところにつきましては、まずポンチ絵の方でとりあえず簡単に説明させていただきます。振興政策における地域の捉え方(定義・範囲)とございます。
 1つ目、「ABC」というのを書かせていただいております。これは科学技術イノベーション政策の定義というところで、最初の地域の多様性、地域はいろんな多様性を持っている。なので、なかなか定義付けるのは難しい。だけれども、汎用性のあるシステムとして、何とかその地域、科学技術イノベーションを捉えることができないかと。そういった観点で考えたときに、地域の科学技術イノベーションというのは、どちらかというと今までのようなエリアですとか、組織ですとか、そういったものである意味完結するというよりは、境界を越えた形でプレーヤー個人、一人ひとりに着目をした方がいいのではないかと。そういった意味で、2つ目のところでございますけれども、様々な主体の構成員が、自身が所属する主体の壁を越えて相互に連携し合いながら、実際の科学技術イノベーション活動を動かしていくコミュニティーとしてActors-Based-Community、「ABC」と捉えてはどうかという形で書かせていただいております。
 ここでABCのイメージとしては、先ほども申し上げましたように、ある意味、実際のプレーヤー、いわゆる首長ですとか、学長とか、そういう上の人というよりは、本当に実働的に動く人のネットワークといったような意味合いで、Actorというものをここでは書かせていただいている内容でございます。
 そして2つ目のところ、3つの価値を生み出す潜在力のある地域科学技術イノベーションでございますけれども、これも中間報告の段階で少しさらっと書かせていただいておりましたが、3つの価値というものを科学技術イノベーション活動によって生み出す可能性があるんじゃないかと。それの関係性を少し図で書かせていただいておりますが、科学技術イノベーション活動を通じて、まずは経済的価値というのが生まれるであろうと。そこがベースとなって、そこから様々循環する中で、最初に資本主義活動を経た形で産業的価値というものが生まれてくる。そして、今までなかなかされていなかったかもしれないですけれども、これからはやはりその先を目指して、ある意味、Society5.0、ヒト中心社会と言われている中で多様なニーズに対応するような社会的価値、こういったものを目指していく必要があると。だからこそ、地域科学技術イノベーション活動というのは、この3つを生み出す力を持っているという意味で重要ではないかという形でここは記載をさせていただいているところでございます。
 なお、この部分に関する本体は、本文の2ページ目から3ページ目の冒頭のところに記載をさせていただいております。
 そして、ポンチ絵の右半分のところが、地域が科学技術イノベーション活動を行う意義・目的のところでございます。ここは正直言うと、中間報告のときから大きく変わっているものではございません。地域の科学技術イノベーション活動は、地域経済の発展ですとか、誰一人取り残さない地域社会の実現に不可欠なツールとして多様な政策課題解決に寄与するであろうと。そして、科学技術イノベーション活動を通じて、地域の主体となる一人ひとりの全ての人が「豊かさ」と「幸せ」を感じながら共存していく、そして地域がそれぞれ多様性を持っている、特徴を持っていると。ですので、その中で破壊的イノベーションですとか、ある意味、地に根を張ったイノベーションという言い方があったかと思うんですが、持続的イノベーション、多様な科学技術イノベーション活動というのが地域ならではで出てくるだろうと。それが国家として見てみると、レジリエンスを高めるというところにもつながってくるのではないかといった形で本文では書かせていただいております。
 そして、地方創生の流れにおけるSTIの位置付けでございますけれども、この絵も少し懐かしいと思われる委員もいらっしゃるかもしれないですが、第3回で出させていただいた絵でございます。科学技術イノベーションというもの、当然ながら、今までも重要でした。ただし、地方創生というものを目指す中で、科学技術イノベーションを必要不可欠な起爆剤として捉えて、イノベーションの連鎖を通じて、ある意味、地域が抱えている課題を解決できる、そういった意味で地方創生が実現し得るのではないかと。
 なお、ここの部分について、4ページ、5ページで書いてございますけれども、地方創生といった中においては、当然ながら、文科省の科学技術行政だけではないという部分が大きいと思いますので、関係府省が効果的な連携の下でやっていくことが必要であるといった形で本文の中では記載しているところでございます。
 ここまでが第1章の内容でございます。
 続いて、第2章に行かせていただきます。第2章は、まずポンチ絵の方で見ていただければと思いますが、先ほども申し上げましたように、ここでは地域科学技術イノベーションを生み出す、エンジン、源泉となるようなものを3つに分解して取りまとめをしております。1点目が「地域資源」、2点目が「資金」、3点目が「人材」。そして、当たり前かもしれないんですけれども、これらがうまく回っていくシステムということで、「エコシステムの形成」ということで4つ、この4項目に分けて教訓というものを書いてございます。
 本体の方に1回行っていただけますでしょうか。6ページ目でございます。こちらは、実は事例からの教訓の大前提として、ある意味、我々文部科学省を中心としたところがどのような地域の科学技術イノベーション政策をやってきたかという歴史を少し振り返った部分でございます。
 最初のところは、平成7年の科学技術基本法から始まって、第1期科学技術基本計画、そして7ページに行って、第2期、第3期、第4期と来て、ある意味、科学技術基本計画の変遷に伴う形で地域の科学技術イノベーション活動、様々な施策を打ってきたという歴史の振り返りをここでさせていただいているパートでございます。
 そして9ページ目からが、先ほど申し上げました具体的なヒアリングや調査の結果を受けた教訓の内容でございまして、まず第1点目のモノのところでございます。こちらは地域資源というところでございます。最初の9ページ目の1点目のところでは、戦略策定の重要性といったような教訓を書かせていただいております。これについて、例えばでございますけれども、一番下のところ、長野県の事例、そして1枚めくっていただいて10ページ目に行きますが、中段当たりで神戸市の事例、こういったところの事例を踏まえて、地公体の中長期戦略に基づいて主体の連携によるSTI活動を通じて資源を磨いていく、こういったことが重要ではないかということを最初のパートでは書いてございます。
 そして本体の11ページ目のところからが2つ目、コア技術の活用でございます。実は地域資源といったときに、これも委員会の中で御議論があったかと思うんですけれども、例えばコア技術、それからハードものの施設・設備、あと本文の中で書かせていただいているのは地域固有の課題、これもある意味、地域資源と言えるのではないかと。ですので、それごとに本文の中では書かせていただいておりまして、コア技術というのが、その最初の部分でございます。
 当然ではございますけれども、コア技術と言えば、いろんな種類が出てくるということで、この本文の中で、例えば長野の事例、大学の事例、それからセーレン株式会社の事例、これもヒアリングをさせていただいた福井のアンカー企業だと思います。それから3点目として、株式会社ブルックマンテクノロジの事例、大学発ベンチャーとしての事例でございます。
 1枚めくっていただいて12ページ、こちらでは第二創業型の典型ということで、実際、現地に行かせていただいた株式会社浅井農園の事例をここには記載しているところでございます。
 2つ目の設備、これも地域資源のパート2でございますけれども、設備について、ここは事例として金沢工大の事例を挙げながら、施設・設備をうまく活用していくことが当然ながら必要だという本文を書いております。
 そして3つ目が地域固有の課題。これもともすると、課題というのはネガティブに捉えられがちではございますけれども、それをうまく解決することで、新しいイノベーションを生み出すという逆転の発想ということもあるのではないかという意味合いで、あえて地域資源の中に入れております。ここでの事例は、徳島大学と阿波銀行の事例、それから13ページに行っていただいて、金沢工大の事例、こういったものをここでは記載しているところでございます。
 ここまでが地域資源のパートでございまして、ポンチ絵の中では、今、申し上げたようなことをかなり圧縮した形ですけれども、競争力の源泉である地域資源はコア技術、施設・設備、地域固有の課題など多様であり、これらを戦略的に最大限活用することが必要といった形でまとめさせていただいております。
 続いて、2点目の資金、カネのところでございます。これが13ページから書いてございますが、ここは大きく分けて、そもそも金の切れ目が縁の切れ目といったように、補助金がなくなるとイノベーション活動が止まってしまうという問題。これは地域に限らない話だと思うんですけれども、持続性のある活動のための資金確保、その課題について最初のパートでは書いております。長野県からのヒアリングの結果ですとか、神戸市さんからの御発言の内容、こういったものをここでは記載しております。
 そして14ページ目では、地域特有の課題。これもヒアリングから当然いろいろな御意見が出ておりましたけれども、やはり都心に比べると地域というのはリスクマネーの供給という意味でかなり少ないのではないか、そのような御議論がございました。ブルックマンテクノロジからの御意見ですとか、NISTEPの調査の結果、そういったものを踏まえながら、ここでは記載をさせていただいております。
 最後、お金のところについて、海外事例もいくつかここでは述べさせていただきました。15ページ目のアメリカの民間からの寄附が盛んであるとか、ドイツのフラウンホーファーでは、そもそも国からお金を出すときには民間資金が多いほど、それは増額されるというインセンティブ的なものになっているとか、アメリカにおけるベンチャー投資を一定額税制控除するような制度、こういったものを海外の事例としてここでは記載させていただいております。
 以上が資金の部分でございまして、こちらはポンチ絵の中では圧縮した形で、いわゆる資金というのは公的資金に頼るだけではなくて、資本制の資金導入ですとかリスクマネーの供給、さらにはそういうお金をうまく回していく仕組みが必要ではないか、そのような形で教訓をまとめております。
 次、第3パートの人材のところでございます。ここについては16ページ目から始まっておりますけれども、まず1点目は、そもそもイノベーション活動を行う人材の話でございます。ここもこの委員会でたくさん御議論をしていただいております。多くはコーディネーターの話だったかと思うんですけれども、事例としても、長野県、金沢工大、それから株式会社NTTデータ経営研究所の調査、こういったものを踏まえながら、コーディネーター不足、それから、単なるコーディネーター不足というだけではなくて、やはりプロデュースができる、イノベーション全体を俯瞰できる人材といったものが必要ではないかという形で本文でまとめさせていただいております。
 そして2点目の論点としては、人口減。やはり地方ですので、人口減が一番問題であろうと。そういった中で技術系人材をどう確保していくかというのが2つ目の論点として挙げているところでございます。ここもブルックマンテクノロジさんの事例、それからNISTEPの調査、具体的な事例を様々書かせていただいておりますが、そもそも地域に定着ということに加えて、ある意味、地域の外から若手の人材が入ってくるような仕組み、こういったものが重要ではないかということをここでは書かせていただいております。海外の事例ということで、スイスのETHZの話を入れたりもしているところでございます。
 以上が3点目の人材のところでございまして、これもポンチ絵の中では、ニーズ起点の発想でリーダーシップを持って事業全体をプロデュースする人材や人口減に伴う技術系人材の確保が重要、こういった形で記載をさせていただいているところでございます。
 以上、3点のある意味エンジンをうまく回していく仕組みとして、その場として、エコシステムというものを捉えておりまして、その内容が18ページの下段のところから始まっております。
 ここでは、イノベーションのエコシステムの形成といった言葉が、ここで初めて登場しますので、少しその言葉の整理をさせていただいているところでございます。下の方にございますように、多種多様な主体が各々の特徴を生かして活動を進め、生態系システムのように時代や外部環境に合わせてその役割等を変化させつつ、それぞれのプレーヤーが相互に関与しながら、この3つの要素を有機的に結び付けていくことでイノベーションが次から次へと創出されていくイノベーション・エコシステムが構築されるといった形で、まずエコシステムの形成の考え方を少し整理させていただいている内容でございます。
 そして、これについては、創成期、発展期という形で分けて書かせていただいておりますが、要は、エコシステムの形成に当たっては、まずはその主体が主導的に動くことが必要ということで、事例として長野や神戸、そして徳島大学、金沢工大といった事例をここでは書いております。
 そして発展期としては、主導的な主体を中心としながら、ほかの主体と有機的に連携していく、そういった過程ではないかという形で書かせていただいておりまして、ここも徳島大学さんの事例ですとか、長野県の事例、それからセーレンの事例、様々な事例を書かせていただきながら、内容を記載しているところでございます。
 そして、エコシステムの形成という意味においては、先程から主体、主体と申し上げておりますが、いわゆる産業界ですとか行政、大学、金融機関、いくつかございますけれども、ある意味、1つの主体に全ての役割を担ってもらうことを期待するのではなくて、やはりそれぞれが分業していくことが必要じゃないか。そして、その上で相互補完の関係性を築いていくことが重要である。そのような形で、各主体の役割というパートを書かせていただいております。
 そして、さらなるエコシステムの発展、展望といった形で広域連携というものの事例も最後の20ページの下から21ページ目にかけて記載させていただいている内容でございます。
 ここで一度ポンチ絵に戻っていただけますでしょうか。左下のところでございますけれども、先程来申し上げておりますエコシステムの形成の部分を少し図示化したものが、一番下の丸が3つでくるくる回っているような部分でございます。ここで申し上げたかったのは、この左側が現状でございまして、いわゆる地域資源、資金、人材、これらの3つのエンジンがあるんですけれども、その間に例えば民間企業、ここでは当然、大企業に限らず、中小、ベンチャーも含めてを我々は想定しておりますが、民間企業、金融機関、大学の各主体が何となくつながっているようでつながっていない点線で書いております。それをエコシステム形成というのはどういうことかというと、右側ではないかと。その中にいる産学官金、ちょっと小さくて恐縮ですけれども、それぞれの主体がある意味、本当に有機的に根を張りながら相互連携して、その連携が生まれることで、地域資源、人材資金、この3つがくるくると回り出す。この赤い円は回っている雰囲気を出したかったんですが、回っている状態のことをエコシステムの形成と言うのではないかという形で我々としては書かせていただいている内容でございます。
 そして、ここまでが第2章でございまして、最後第3章は右側の半分でございます。
 ポンチ絵の中では、まず直面する社会の変化の方向性に少し触れさせていただいております。やはり第3章というのは、今までの教訓を受けて、具体的に我々として何をしていくべきか、ある意味、国や自治体、大学が今後どういうことをしていかなきゃいけないかという政策定言的なことを書かせていただこうと思っているパートでございまして、それに際して、大前提となる直面している社会の方向性みたいなのを少しだけおさらいさせていただいております。
 1つはSociety5.0が目指す社会、そしもう一つは地方創生が目指す社会でございます。Society5.0が目指す社会として、知識を共有、集約して、創造的に社会課題を解決することで新しい価値を生み出す、いわゆる地域集約型社会と言えるのではないかと。そこから地方創生が目指す社会のところに、Society5.0が目指す社会が知識集約型社会であるということを踏まえると、従来は例えば人口の規模ですとか、金融資本の蓄積量に依存した経済力というのが起因してきたと思うんですけれども、そうじゃない形で、知識の融合によりゲームチェンジができる時代、そういった時代なんじゃないかと。そう考えると、下の地方創生が目指す社会のところにございますように、多様な課題を抱えている地域が課題解決に必要な起爆剤としてSTIを活用することで新しい価値創造をもたらすことになり、それで地方創生が実現される社会ではないかということで、一応この2つの社会の関係性みたいなものを頭に入れながら本文では記載させていただいているところでございます。
 ここで、また本文に戻っていただきたいんですけれども、23ページ目のところでございます。こららは、今、申し上げたところ、2つの社会のことを書かせていただいておりまして、その次にイノベーション・エコシステムの構成要素を再度ここで振り返っております。ここでは、イノベーション・エコシステムができるためには、多くの人がそこに集まりたいという動機をいかに与えることができるかが鍵ではないかと。そこで言う動機というのは何かというふうに考えると、ある意味、その主体が持つ本来の力を極め切ったものであると。その要素というのは、ある意味複数あって、それが組み合わさったマグネット機能がないとなかなかエコシステムってできないよねという形で、当然、ここで動機の要素はたくさんあるんですけれども、我々としては、主なるエンジンとして、先程来申し上げているように、地域資源を筆頭にしながら、資金と人材、この3つではないかということで、この3つごとにそれぞれの主体が何をやっていくべきかということをこの下で書かせていただいている部分でございます。
 続いて、このまま本文の24ページ目に行っていただければと思います。24ページ目からは、まず第1点目の地域資源について記載をしております。ここではいくつかパートに分けて書いているんですけれども、まず1点目は地域資源、いろんなものがあるよね、多様性があるよねということを一応振り返っております。当然、有形、無形、インフラもあれば、そうではない知識だったり、目に見えない情報、技術といったものが蓄積されたもの、こういう無形インフラもあるであろうと。当然、ある意味、大学が持つ有形インフラというのも含まれてくる。そういった中で、そういった資源を地域の中のみにあえて限定することなく、国内外から引き寄せて、中の強みと組み合わせて蓄積させる、そういったことも必要なんじゃないかという形で少し書かせていただいているところでございます。
 あと、具体的に何をやるかというところについては、少し下に行っていただいて、「また」のところでございますけれども、国及び地方公共団体は、持っている研究設備や機器といった有形インフラとしての地域資源を広く開放するだとか、例えば中小のベンチャーがある意味中に入ってきやすいような環境の醸成、例えば生まれてきた新技術を官公需として活用するなど、そういったいろんなやり方があるのではないかということで、最初の有形、無形の観点からの地域資源の活用ということを書かせていただいております。
 2つ目はシーズプッシュとニーズプルのところでございまして、ここは言ってみれば、どちらかというと地方では、ある意味、シーズ発というものが中心になりがちだと。そうなってくると、地域住民にとっては、STI活動というのはちょっと遠い存在になるという意味で、25ページ目のところでございますけれども、そういう状況を踏まえると、国としては、これまでのシーズプッシュ型に加える形で、マルチセクターで構成されるABC、先程来申し上げておりますコミュニティーでございますが、そういったところで解決型ではない、その先の創造を目指すようなプラットフォームとなって、目指すべき地域社会像をつくり、それを実現するためのニーズプル型の研究開発なりをやっていく、そういったことを政策誘導していくことが求められるのではないかと。
 ただし、ここで、座組とかコミュニティーづくりというのは、科学技術以外の側面でも様々な動きがございますので、政府全体として、その地方創生の実現というのを目指すことが必要ではないかということを書いてございます。
 2点目のイノベーション創造プロセスの類型のところでございます。ここは0→1とか、1→100といった議論がございましたけれども、例えば大学発ベンチャー型においては、大学は何をすべきかと考えますと、Think global,Do localの精神、そういったものを持って、ある意味、地域にたくさん隠れているであろう地域資源をイノベーションに化けさせる。一方、第二創業型では、どちらかというと大学が地域理解力を高めた上で、大学が持つネットワークを生かしながら、地域資源をイノベーションによみがえらせるといった役割が求められているのではないかというふうに記載をしております。
 そして、そういった活用をするに当たっては、やはり分業やメリハリが必要ではないかということで、国はコア技術が強いところに集中投資するなどメリハリを付けるということですとか、あと大学自身もやはり自分の強みというものをしっかり理解した上で機能分化を図る。それから、大学の中においても、教育、研究、社会貢献、事務、経営、これを一人の人が全てやるというよりは、分業して、うまく連動しながらやっていく。それが地域資源の最大活用につながるのではないか、こういった形で記載をしております。
 次に資金のカネの部分でございます。カネの部分は、先ほど教訓のところにもございましたように、まずそもそも資金自体が少ないよねということで、多様な資金の供給源を求めていかなきゃいけない。それに当たって何をすべきかというところは、3パラ目の「したがって」のところでございますけれども、公的主体、公的の政策としては、資金循環に向けた環境整備を行う。ある意味、国自身がリスクマネーを出し続けるというよりは、どちらかというと、それがうまく回るような環境整備を行うことが必要ではないかと。一方で、地域の企業ですとか金融機関側に対しては、やはりリスクマネーの資金供給を行うということを求めていきたい、そういったことをここでは書いてございます。
 さらに国は資本集約型、資本の投入がかなり成功、不成功の起因になってくるような分野につきましては集中的にてこ入れすることが必要ではないかと。そして、さらに地方公共団体や大学に求めることとしては、ファンドを創成するですとか、資産の活用をするですとか、多様な資金源の確保に向けて様々な努力をしていく。あと、国については寄附文化というものをもう少し醸成しながら、大学自身もそういったものをうまく受けとめられるような形で財源の多様化を今後もやっていくことが必要であろうということで、27ページ目に入っておりますけれども、そのような形で記載をさせていただいております。
 大学の話が続いておりまして、大学改革ということで、2つ目のパートで書いてございますが、知識基盤社会であるからこそ、大学に求められている期待というのは大きいんじゃないかということで、そういう外からの多くの投資を呼び込む可能性を生かしていくべく、やはり資産マネジメントの機能というものを強化していくことが必要じゃないかと。
 一方で、国は大学自身がコストの可視化ですとか、資源の活用といったことをしていくことに対して、引き続き大学改革というものを支援していく、そういったことが必要じゃないかということで、本文の中で記載しているところでございます。
 最後の人材のパートでございます。人材のパートのところは3つに分けておりまして、1つ目はプロデューサー人材でございます。これについては、28ページ目のところでございますが、たしか一度委員会でもプロデューサー人材をどこに置くべきかという御議論があったかと思います。一応、この本文の中では、プロデューサー人材がパーマネント職としてしっかり根付いて活動できることを求めるという意味において、学内、大学でそういった人を雇用していくことはどうだろうかという形で記載しているところでございます。
 2つ目のパートのリカレント教育などというところでございますけれども、これは言わずもがな、やはり地方では大学の教育機能、人材育成機能というのはすごく高いと思います。ただ、ここで言うリカレント教育というのは、本当に老若男女に関係なく、誰でも、いつでも受けられるような教育として大学が提供していくことが必要ではないか。そして、起業家マインドの育成という意味においては、国は地域の高校生世代も巻き込んだ形で地域の社会変革を目指していくような施策の展開が求められるといった形で記載をしているところでございます。
 人材の最後のパートのところは、ある意味、人口減にどう対応していくかの部分でございまして、地域人材を流動させるためにはどうしていったらいいかということを記載しております。そもそも出て行ってしまう人を止める、地元定着という意味においては、例えば大学が説明会などを行うというのは当然あるんですけれども、それだけではなくて、外から呼び込む、地元への還流を喚起する。そのために地方公共団体や大学というのは、自分が持っている地域資源の見える化ですとか、入ってくることによるインセンティブ付与、さらには魅力ある労働市場の創造といったことが求められるのではないかと。国は学生を巻き込んだ形でABCをベースとした地域社会の変革に向けて、イノベーションを通じた課題解決を行うような施策を行うのが期待される、こういった形で人材のところはまとめさせていただいております。
 29ページ目の最後のところ、イノベーション・エコシステムのところでございます。これは今までの3つの要素をどうやって循環させて回していくか。まさに一番最後の肝になる部分でございまして、まず形成の鍵になることということで記載をしております。
 まず、イノベーション・エコシステムというのは、そもそも区域に、中に限られてつくられるというよりは、地域の内外に流出入される、ある意味エンジンです。地域資源、資金、人材が双方向で流れる中で、大学ですとか、地方公共団体等の主体がどう関わっていくか。それによって形成されてくる。域内に形成されるというよりは、動いている。だからこそ生態系だと思うんですけれども、そのようなものではないかと。その形成に当たって、まず大前提となるのは、先ほどの教訓にもございましたように、それぞれの主体の主体性が不可欠であるのではないかということで書かせていただいておりまして、その中でも、1点ここは書かせていただいたのは、やはり組織としての地方公共団体の関与がイノベーション活動という観点においては弱いのではないかと。いかに地方公共団体を巻き込むかということも重要なのではないでしょうかということで、そのために国はできるだけ、地域がやりたいこと、地域ができること、若しくは地域が持っている強みを生かすこと、さらにその地域に求められていること、これをうまく調和させた施策というのをやっていくことが必要ではないかと書かせていただいておりまして、次の30ページ目に行きますけれども、イノベーション活動を行う際には、ある意味、様々な主体が当然、有機的に連携するのが必要なんですけれども、分業しながら全体として連動する。まさにこれが重要なのではないかということをここでは書いてございます。
 ただ、ここで一言で分業しながら連携ってなかなか難しいと思っておりまして、相互に連携するためにはどうしたらいいかという意味で、エコシステム形成に向けたABCは、多様性を持ち、かつ、機動性の高いコミュニティーであり、これをうまく作り込んで、地域全体としてどういう社会を目指すのか、方向性を定めて、イノベーション活動を行っていくというのが求められると。
 ただ、先程来申し上げておりますように、内閣官房、内閣府の方で行われている施策に基づいて、地域で推進会議が設定されていたりですとか、若しくは文科省の中教審の答申にございましたように、大学を中心とした地域連携プラットフォーム、これは前回の委員会でのヒアリングにございましたが、座組、コミュニティーとして、こういったものが既にあるかと思います。こういったところとうまく連動しながら、ABCというものも活動していくことが必要ではないか、そのような形でここは記載をさせていただいているところでございます。
 31ページ目に行っていただきます。最後の方に近づきましたが、広域連携の模索でございます。先ほども出ておりましたように、エコシステムをさらに展開していくためには、やはり広域連携というのは不可欠であろうと。ただ、やはり自治体単独では、行政単位というものに縛られてしまうことがあることから、国がABCの概念に基づきながら、ヒト中心でうまく域を超えていく、そういったものを先導していくことが求められるのではないかという形で記載をしております。
 なお、大学の連携という意味においては、先般のヒアリングにもございました大学等連携推進法人が出ておりましたけれども、科学技術イノベーションという観点においても、大学自身がお互いの機能を補完し合って相乗効果を出していくことが期待されるという形でここでは記載しております。
 最後の部分でございます。持続性を担保するPDCA。ここではイノベーションをやはりずっと続けていくためには、そもそも変わっていくことへの受容性ですとか、失敗を許容する、若しくはそういった挑戦することを社会がリスペクトするような仕組み、これが不可欠ではないかということをここで書いてございます。ですので、国とか地方公共団体は、自身が行う政策のPDCA、当たり前ではあるんですけれども、PDCAを回すときにも柔軟性を持って既存ルールを変えていけるような仕組み、こういったものも重要ではないかと。
 さらに、評価という意味においては、やはり今までどちらかというと、やはり経済的価値、産業的価値といったものが重視されがちではございましたけれども、Society5.0が目指す人間中心社会というものを考えますと、やはりニーズを起点とするという意味合いにおいて、例えば人材育成確保ですとか、地域住民の利便性向上や安心・安全の確保、多様なニーズへの対応を通じて出てくる社会的価値といったものも含めて、総合的にフォローしていくことが重要ではないかという形で本文をまとめさせていただいております。
 なお、今、申し上げましたような内容をポンチ絵の右半分の下のところでは、それぞれの主体ごとにピックアップしてまとめさせていただいております。内容は重複してしまいますので、説明は割愛させていただきますが、かなり抜粋した内容とお考えいただければ幸いです。
 説明が長くなりましたが、以上でございます。
【須藤主査】  ありがとうございました。そこにせっかく出ているので、それを説明してください。
【生田室長】  そうですね。今こちらに記載しておりますように、あまりにも大部な文章になっております。我々として最低限と言ったらおかしいんですけれども、特に御議論いただきたいという意味合いにおいて、3つ提示させていただいております。
 1つ目は、冒頭から出ておりました「ABC」でございます。Actors-Based-Community、我々としては、組織とかエリアとかに縛られない、個人に着目をしてという形で考えておりますが、この考え方について少し御議論いただければと思います。
 2つ目は、3つの価値の関係性です。これは3つの価値自体にそんな大きな議論があるというよりは、3つの価値の関係性、この絵の中では、経済的価値を一番ベースとしながら、産業的価値、さらにその上に社会的価値と書かせていただいておりますが、これがこういった概念で皆様方の共通理解かどうかというのはここを確認したいなという意味合いもあって出させていただいております。
 3つ目は、イノベーション・エコシステムが形成されるプロセスでございます。ここは先ほど下の方の、まさにこのグルグル回っている絵でございます。すみません、ここは絵にするとなかなか分かりにくい部分もあるんですけれども、皆様方の御理解とうまくマッチができているかどうか、そういった意味合いで少し御議論いただければと思います。以上でございます。
【須藤主査】  それでは、議論に入りたいと思います。
 一応、事務局の方は、今日は3つについては意見を是非聞きたいということですけれども、あまりそれに捕らわれなくても結構ですので、順番に御意見をお願いします。
 それから、全体に対してはいいけれども、少し細かい部分で、最終報告のこの辺がおかしいという場合には、その場所を是非指摘していただければと思います。1時間ちょっと時間を取ってじっくりと議論をしたいと思いますので、よろしくお願いします。いかがでしょうか。お願いします。
【松原委員】  この段階でいろいろなことは言いづらいんですけれども。3つの価値の関係性について、やっぱり経済的な価値と社会的価値というのは分かるんですけど、産業的価値というのと経済的価値というのがどういう形で区別されるのかというのはよく分からないというか、そこはちょっと、何ていうんですかね。やっぱり前から違和感があるという感想なんですけれども、あまりしっくり来ないなというのが正直なところです。
 そして、経済的価値と社会的価値といったようなものというのが、こういう形でつながっていくと見る見方もあるでしょうし、どちらかというと、経済的価値と社会的価値というのは、場合によっては対立する。そういうことをはっきりさせた方が施策としては明確というふうにも言えないだろうかと。文科省の地域科学技術イノベーションというのが経済的価値を中心にしていたイノベーションの議論から、社会的価値といったようなもの、特に地域の社会的価値といったようなものに軸足を動かしていくんだという方がメッセージとしては明確かなと思うんですが、今の図の、これがつながっていくというのは、つながらないわけはないと思うけれど、やっぱり対立をしてきた歴史というのが、地域の実態を見るとやっぱりあるのではないかと思うんですけど、そこは非常に違和感がある。
 それから、2番目はイノベーション・エコシステムが形成されるプロセスのところの矢印です。これは色は変えているんだけど、それが何を意味するのかの説明がなくて、論文指導ではあり得ない話であって、図表を出したときに、この矢印は何を示すのかというのはちゃんと判例を出さないと論文としては通らないです。ちょっと言い過ぎですけれど、何なのかというところはやっぱり明確にしないと、エコシステムというものの議論が深まらないのではないかと。
 私は前回も言っていたと思うんですけれども、知識とかそういうものが流動している、この矢印は何を意味するのかということで言うと、地域イノベーションの議論などで言えば、やはりここは知識とか技術とかがヒトとモノとカネも流れているので、ちょっとこの図はやりにくいんですけれども、いずれにしても、地域イノベーションなんかでいろいろ議論するときには、技術や知識がどういうふうに流れていっているのかというので、矢印はそういうものなのかなと。その知識とか技術というものは、地理的に固着性があるのかないのかとか、ローカルなのか、グローバルなのか、ナショナルなのか、そういったようなフロー、矢印の空間的な広がりといったものが産業や地域によっても違ったりする、あるいは社会的価値といった場合には、そのフローがどうなのかという議論がされていかないと、やっぱりこのエコシステムの図自体は深まらないかなと思っているので、ここはもう少し深められるのではないかなとは思います。
 最後、3番目ですけれども、これも論文指導の構成みたいなものですが、2のところで、地域資源と資金と人材の3つに分けた形で書かれている。3番目のところは、また同じことが繰り返されているようにも見える。具体的になっているので、2のところは過去のものを踏まえた形での話で、3はこれからだという形で整理はあるのかもしれないけれども、望ましいのは、3のところは、もうそういう要素に分けた形ではなくて、トータルとして、このエコシステムの図に絡めた形での方向性、こういったような全体像を書いていただきたいなと。個別にまた要素で切り分けてしまうというのは、論文としては、やっぱりここは、また繰り返し感がないような形での書きぶりというのがあり得ないかなということを、これは期待ですけど、一番右下のエコシステムの形成に向けた鍵というところをもっと全面展開するような書きぶりというのもあるのかなと思った。以上です。
【須藤主査】  ありがとうございました。
 非常に的確な御意見で、このまま次の話題って行くのもちょっともったいないなという気もするので、少し順番に行きたいんですけど、最初に言われたのは、3つの価値の在り方ですね。産業的価値がここに入るのかとか、そもそもこの絵の矢印がどう向いているのかというのは、いろんな解釈ができてしまいますので、ちょっとだけ時間を取って、これについては何か御意見ありませんか。どうぞ。
【斉藤委員】  このテーマは比較的私が発言していたと思いますのでコメントさせていただきます。まず、科学技術の成果自体が純粋なアカデミックな価値だけではなく、何らか世の中に役立つということ自体を社会的価値という表現をつかっています。その社会的な価値の実現に結び付く科学技術のブレークスルーか否かが、純粋なアカデミックの価値とは違うという意味で、すごく重要な要素だと思っています。
 そのブレークスルーが結果として、社会的な価値を生み出す、あるいは社会的なニーズを何か充足するときに、多くの場合は資本市場のメカニズムを使っています。資本市場のメカニズムを使って何かをするケースで、その主たるプレーヤーは産業的価値を生み出しているという解釈をしています。ベンチャーが立ち上がるというのも、既存の大企業が科学技術の成果を応用してビジネスをしていくのも産業界としての活動で、その産業界としての活動に結び付くこと自体を、産業的価値との表現を使って整理しています。
 最後に、経済的価値という項目を、どういう位置付けとして整理するべきか?科学技術イノベーション・エコシステムが持続的発展をするための重要な要素は、富が循環することであって、循環する富が存在するためには、産業的活動を通じて経済的価値が生まれているはず、それが将来の投資や助成金などの新しい科学技術ブレークスルーの資金になっていく。経済的価値は、個々の社会的価値、産業的価値とは別に、大きく長期的な大きな循環が起きていると整理していました。
 そういう観点では、イノベーションで経済的価値が生まれるという矢印は間違ってはいないのですが、科学技術自体が社会的なニーズを捉えるという話でもあるし、富の循環みたいなものというのは必要だと思いますし、それがやっぱり日本の資本市場のメカニズムをうまく使って、産業的に何かをするということ自体は重要だという関係性が伝わる方がよいと個人的には感じます。
【斉藤委員】  富の循環について言及するのであれば、その経済価値の流れは必ずしも産業界でのお金の循環とは限らない。たとえば、税金を通じて国庫に戻り、それが原資になって助成金として科学技術イノベーションにつぎ込まれるという富の循環がある、なので、産業的価値と経済的価値は別な価値として整理をしていました。
【須藤主査】  多分いろいろ御専門の先生が多いですよね。
【斉藤委員】  そうですよね。私は経済学者ではありませんし、いろいろな整理の仕方はあると思います。
【須藤主査】  主義主張が違うかもしれませんけど。林先生、何か。
【林委員】  持続可能にするためにはお金が回らなきゃいけないというのは確かだと思いますね。ですから、そこは強調された方がいいと思います。だから、経済的な価値を全面に出すことが悪いことではなくて、これは持続可能性にするためには必須だろうなと。
 議論が集まる産業的価値なんですけれども、これが今までのモデルは、それは産業界を取り込んだ方が回りやすいということではないかなと思うんですね。
 一方で、例えばクラウドファンディングみたいな新しいことが始まっちゃって、それでも動くよねというようになってくると、意外と産業自体を大きく持っておかないと、例えば工場誘致しないとだめというわけでもないのではないかなというふうにちょっと感じるので、ここのところがちょっと私もまだ落ちていないなと思います。
 おっしゃるように、社会的価値を全面に出されるということは、この時代に即した考え方かなと思いますね。まだ何かすとんと落ちていないんですよ。
【須藤主査】  福嶋先生、いかがですか。
【福嶋委員】  私も3層に並んでいて、経済的価値が産業的価値のベースにあって、その上に社会的な価値という、何でこう縦に並んでいて、矢印がこっちに向かっているのかというのはちょっと気になって、先ほど松原先生から御指摘があったように、やっぱり経済的価値を満たすことと、社会的な価値って今までの議論の中でも結構微妙で、社会的価値は生み出すけど、経済的価値は生み出さないケースも当然あるとして、そういうものは入れないのかとかというふうに考えると、何かこの3つを縦に並べるというのは、やっぱりちょっと違うんじゃないかな。重なる部分はあるけれども、並列で並べるというのはありなんじゃないかなとは思いますけれども、そのぐらいです。
【須藤主査】  ありがとうございます。西村先生、いかがですか。
【西村委員】  非常に難しいですね。その地域がどこかということで大分違ってくるような気がしていて、僕は末端の人間なので、経済的価値が上がってくると、逆に社会が崩壊するというのが起こってきた地域にずっといたので、ただ、それが並列しないとだめだなというので成り立つバランスが今取れてきているのは確かなんです。
 ですから、経済的価値を生み出して、社会的価値とちゃんとバランスの取れた、何となくステイブルな感じで次のステージに行くというか、発展が来るのかなというのが、今、私は三重県の南の方でやっていて感じるので、地域ごとに違うし、このエコシステムがどういうところを目指すかというカテゴライズによっても、ちょっとこの解釈は違うのかなと思いました。産業的価値というのは、ちょっとこれ微妙で分からないですね。これがもしかしたら、昔の広域のところで新しい大きな国を支えるような産業を作るというのであれば、そういうことも多分土台としては、経済的価値と社会的価値がバランスの取れた基盤の上に新たな産業的価値を生み出すというのであれば、大きなところに行くのかなと思うんですけど、多分時代背景によってというか、これからの時代を考えたときには、バランスというのは結構重要なのかなという気もしました。
【林委員】  何か20世紀的な感じがするんです。産業を興すとなんかみんなが良くなるみたいな。
【須藤主査】  あまり議論になっていないですけど、横の矢印はちゃんと意味があるんですよね。
【生田室長】  一応意味はあって、この絵の意図としては、まず科学技術イノベーション活動をすると、何かしらマネタイズというか、やっぱり先ほど林委員がおっしゃったように、お金がないと回らないので、最低限回るよねと。それでまず経済的価値がないと、そもそもエコシステムできないんじゃないのというところから発想が始まっていて、今まではどちらかというと、やっぱり産業的価値を目指してきていた。ある意味、新しい産業を作ろうとか、地域に1つの一大産業を打ち立てるんだみたいなことで、まず上向きの矢印があって、今後はそこにとどまらないで、上の社会的価値を目指そうよと。まず順番はそれで上っていって、これがどんどん円が縦が長くなっていく、円柱になっていくイメージなんです。回りながら、大きな円柱に成長していく、そういうニュアンスをここでは出したかったんですけれども、すみません。絵が上手くなくて失礼しました。
【須藤主査】  ただ言いたいのは、経済的価値を作りながら、社会的価値が大事だということが言いたかったわけなんですね。
【生田室長】  はい。
【須藤主査】  ここにちゃんとフォーカスしないとだめだよということですね。
【生田室長】  そうです。
【西村委員】  何か歯車にしちゃだめですか。経済価値が回ってきたときにかみ合いながら社会的価値が生まれ出して、上に大きく大きく産業的価値が生まれてくるような絵とかですね。
【生田室長】  確かに。その場合、Y軸というか、縦軸は別に一緒で、歯車が3つ並んでいるイメージですか。
【西村委員】  というか、私は地方にいると、例えば経済的価値が動いてきたら、その上で歯車が回って、そういう歯車が回ったら上の方に線が出てきて、産業的価値のものが回り始めるような感じ。すみません、これは勝手なイメージです。違っていたら変えてください。
【須藤主査】  何かございますか。どうぞ。
【加藤委員】  私もこの図は全然よく分からなくて、今、皆さんの議論を聞きながら、なるほどなるほどと思っていたんですけど、本当に価値ってお金だけですかというところもあるんじゃないかなと。社会的価値というのは何で測るものなんですか。経済的価値はきっとお金ですよね、今の説明だと。産業的価値がそういう規模感というか、社会的価値ってQOLとかそういうものなのか、よく分からないんですけど。もう何か資本主義も違うし、民主主義も何か違うしみたいな時代の中で、どうこの価値って定義付け、どういう意味で言っているのかというのも何かどんどん変わって、それこそ解釈がみんな違うという中で、どうするんだろうというのは思います。そもそもこの3つの価値を生み出すことは、地域STIの目標なのかってそもそものところに行っちゃいますけど。
【須藤主査】  基本計画で出ているSociety5.0って社会的価値が重要だと言っているんですね。多分その流れで来ていると思うんですけど。
【生田室長】  まさに今、主査がおっしゃったように、さっきSociety5.0の社会の方向性を書いたように、ヒト中心と言ったときに、ヒトによって多様な求めるものも違うし、ニーズも違うしみたいな、そういったものをどうやって充足させていくかみたいなところに、今まで科学技術、サイエンスというのは効いていたかもしれないけど、多分それを目的として何かをやっていたというよりは、やっぱりまず金儲けだとか、新しい産業を作ろうよみたいな。そうすると、やっぱり重厚長大な社会を目指してきていたところから、やっぱりその先を目指さないと、もう今の成熟社会では難しいよねというようなメッセージを出せたらなという意味合いでございます。
【須藤主査】  ちょっと一旦話題を変えてみて、この話、結論はなかなか出ないので、頭に是非置いといていただきたいと思うんですけれども、2番目のエコシステムの矢印は、確かに何だろうってなるんですけど。言いたいことが分かるような、分からないような。
【西村委員】  確かに学生を指導すると、資金から人材が生まれて、人材から地域資源が生まれて、だから地域資源がまた資金を生むんだと読めちゃうんですけれども、本当にそうですかというのが。私は松原先生ほど優秀な教授じゃないんですが、多分そういう指摘はしちゃいますね。
 資金が人を生むように見えちゃうんですよね。この絵は、多分全体はグルグル関わりながら回っていくということを言いたいと思うんですけど、捉え方によっては、これは一般的には資金が人材を生んで、人材が生まれるから今度は地域資源が生まれてと読めてしまうかもしれないので、書き方だけ気を付けた方がいいかなと思っただけです。
【須藤主査】  どうぞ。
【加藤委員】  多分、図の書き方だけで、もっと何か3次元的に書けば済むのかなと思うんです。創成期があって、発展期があって、立体的に輪が大きくなりながら、スパイラルで上がっていけば、何となく。これだと閉じられた形なので、そんな感じかなと。
【須藤主査】  どうぞ。
【金子委員】  ちょっと細かいところですけれども、真ん中の矢印は一方方向になっていますが、こちら向きの一方方向だけなのか、逆方向への影響もあるのではないかなど、少し気になるところもあります。
【加藤委員】  こういうのは、多分海外はデザイナーさんに頼みますよね。頼んだ方がいいと思います。うまく言葉を形にしてくださると思います。せっかく重要な図なので。
【西村委員】  そもそも色を分ける必要あるんですかね。「学」と、いろんなところから出ているから色がそうなっているんですけれども、そうなると、色が一方向にも見えるんですよね。どうなんだろう。難しいですよね、すいません。デザイナーさんを使うというのは確かに考えた方が。
【加藤委員】  こういうのは、多分海外はデザイナーさんに頼みますよね。頼んだ方がいいと思います。うまく言葉を形にしてくださると思います。せっかく重要な図なので。
【西村委員】  そもそも色を分ける必要あるんですかね。「学」と、いろんなところから出ているから色がそうなっているんですけれども、そうなると、色が一方向にも見えるんですよね。どうなんだろう。難しいですよね、すいません。デザイナーさんを使うというのは確かに考えた方が。
【須藤主査】  どうぞ。
【林委員】  私はあまり絵がどうのこうのよりも、文章のところをちゃんと書くべきだと思うんです。というのは、意外とグルグル回る絵ってイノベーションの人は好きなんですけれども、はっきり言ってあまり意味がないような気がするんですよ。だから文章をちゃんと読めば分かるように書いていく、かつ、一方方向じゃないし、双方向だし、関連性も一通りじゃないしということを絵に描こうと思うと結構ぐちゃぐちゃしますから、どうですかね。そう思うんですけれども。
【須藤主査】  文章で言うと、何ページでしょうか。
【生田室長】  18ページになります。
【須藤主査】  まず、ちょっと整理したいのは、こういったことを考えるときに大事なことは、モノとカネとヒトにフォーカスしてエコシステムという言い方をしているんですけれども、もう一つは、間に入ってしまった大学、企業、自治体、国とか、そっち側の流れもあると思うんですけれども、こういったエコシステムを作るといったときは、どっちにフォーカスした方が分かりやすいんですかね。どっちというのはないと思うんですけれども。両方がかみ合って動くんだと思うんですけれども。どうぞ。
【福嶋委員】  これは多分円の中の矢印というのが、インタラクションが何か主体の間でありますという話で、それがヒトだったり、カネだったりですよね。
【須藤主査】  ごちゃごちゃと描いてありますよね。
【福嶋委員】  だから多分黄色い矢印の中に、ヒトであり、地域資源であり、資金でありということなんですよね。だから、それぞれぐちゃぐちゃやっていると、外側の地域資源、人材、資金というのはアウトプットのことを指しているんですかね。ぐちゃぐちゃやっていると、結果として地域資源、人材、資金がアップグレードされていくみたいなイメージなのかなと思ったんですけれども。やっぱり主体間のインタラクションみたいなのが増えるということが、多分イノベーション・エコシステムの鍵なんですよね。
【須藤主査】  どうぞ。
【松原委員】  関連するんですけれども、普通イノベーション・システムの図は産学官の連携という形で、産と学と官、ABCとも絡んでくるんですけれども、そういったものの三角形を描いて、そこをヒトとかカネとか知識とかが回っていくといった図が一般的だとは思うんです。ちょっと真ん中に、先ほど福嶋先生も言われたように、その位置付けをちゃんとした方がいいのかもしれないですね。
【西村委員】  ちょっと違う視点で、文章と言ったときに、僕は創成期から発展期は単なるインタラクションが増えるだけではないと思っていて、私たちは実際にやっていると、それぞれの各パーツじゃないけれども、構成員たちの成長があるんですよね。これは地域資源も同じように見えていても、地域資源の質の向上というのも当然起こってくるし、お金が突然増えてきたときの規模感も違ってくる。人も経験を積めば上がってくる。つまり、私は途中で「品質」と言ったかもしれないですけれども、エコシステムの関係性から生み出せる社会自体の質の向上みたいなのもあるんですよ。グレードアップみたいな形の。そういうのが伴って初めてインタラクションの有益性が、また変わってくると思うんですね。
 ですから、そういう意味で言うと立体的なんですよ。何かそういう言葉でもいいと思うんですよ。創成期から本格的な発展期になるときのステージが変わるときに何が鍵なのかということが、明確にキーになるようなことをきちんと落とし込んでおけば、本当にすばらしいデザイナーがいたらそれを描いてくれるでしょうし、なくても伝わればいいんじゃないでしょうかね。
【須藤主査】  どうぞ。
【斉藤委員】  さきほどのグルグルの絵や、創成期、発展期の議論についてですが、「ABC」に関連付けてコメントするとすれば、Actorが存在し、その活動によって地域も定義される。そこにおけるABCの活動が大きくなると、イノベーションは起こりやすい必要条件は揃うと整理しています。また、Actorを分類すると、産業界と、金融界と、官と、大学ということなのだろうと。
 少なくとも主要なActorがかけていると何は起きにくい。揃った主たるアクターがインタラクションをしながら、必要な資源も投下される方がイノベーションは起きやすい。創成期は主要人物はいるのだが、活動が小さいか、各人が十分に戦力化されていない状態。戦力と活動量が高まっていくのが発展期なのではないかと読み取っていました。
【須藤主査】  どうぞ。
【串岡委員】  私も今、話を聞いていて、今までの産学官と何が違うかというと、今回打ち出した「ABC」の「Actors」というものが、多分今までと違うんだと思うんです。つまり、30ページにも書いてあるけれども、ちょっと分かりにくいんですけれども、ABCというのは従来のいろんな団体、プラットフォームとは違うと。
 従来のプラットフォームが、内閣府の事業なんかでも我々も作っていますけれども、基本的には、例えば商工会議所の会頭だとか、大学の学長だとか、知事とか、リーダーシップのそういった人がお歴々を集めるのが、ある種の最高意思決定というよりは、権威付けをする機関が地域の産学官と言われているものに対して、今回言おうとしているActorsというのは主体中心というか、プレーヤーの層ということを考えておられて、ABCというものが、従来とは違う産学官のプレーヤーだということと、それがさっき言ったようなダイナミズムというか、インタラクションを従来とは違う形で起こしていくのをもう少し明示的に描かないと、結局中に産学官が描いてあって、周りにいろいろグルグル回りますというのは、今まで見た既視感があるものにしか見えないので、せっかく「ABC」というのを打ち出されたのであれば、それをもう少し明示的に出されて、今までとはちょっと違うイノベーションを駆使して、こういうのに注目して新しい概念を出しているというのを整理された方が、何となく今までの議論とは違うというのが出せるのかなと。
 もう一つ言えば、社会的価値というところのつながりの3層構造のところは、経済、産業、社会というと、何となく三題話みたいで、普通に考えると産業が集まって経済になるというよりは、ここで言う経済は、どちらかというと商品だとか、サービスの付加価値が増えるということを産業レベルに高めて、それが社会を変えていくというよりは、むしろこういう社会になるためにこんな付加価値を作っていくという、ベクトルがどっちに向かっているのかが分かりにくいのかなと。スパイラルに上がっていくのか、スパイラルに戦略を求めていくのか、何となく下から上に上がっていく漏斗みたいなイメージのものがどちらからどっちに行くのかなというのがもう少しあると、円筒だと、おだんごが3つ並んでいるような感じにしかとれないので、そこはどうかなという気がいたしました。
【須藤主査】  確かに「Actor」をきちんと説明した方がいいと思うんですよね。
【西村委員】  たしか最初の方には書いてはあるんですけれども、例えばさっきの絵の中で、何で建物なんでしょうね。建物の前にActorが立っていれば、その人たちが成長していくように人物がでかくなるか、人数を増やしていけば、イメージとしてはActors-Based-Communityというのがベースなんだという、これが建物ではなかったらいいのかもしれないですよね。
【林委員】  そうね。その方がいい。
【西村委員】  今、そういうお話だったと思ったので。
【須藤主査】  ほかにありますか。多分これと関連してくる最後の松原先生の3つ目の話は、結局このダイダイ色のところですよね。ここが重要だと言いたい。だから、多分あの絵がちゃんとしていないと、あそこの理解が難しい。
【松原委員】  そうですね。だから今、ずっと議論の中で「Actor」の相互関係というか、活動が活発化してきて、エコシステムの進化が図られてくるという話の中でいうと、その相対としてのエコシステムがどういう形で進化するのかという、形成から発展に向かっていくときに何がきっかけになるのかとか、いろんな切り口は、分解するというよりは、もうちょっと違う切り口で挙げられた方がストレートになるのかなと思うんですが、その辺の議論は、まだ十分にされていないかなとは思うんですけれども。
 私が挙げたのは、やっぱり知識とか技術といったものをどうやってそれぞれの主体が共有したり、あるいはいろんな形で意見の対立があったりした中でも乗り越えていくとか、いろいろなやり方はあると思うので、その辺のActor間の関係性みたいなものをどう活発にしていくのかという、一番右側にある地方創生という爆弾がはじけたりしているものとも絡めさせて議論を膨らませていくのがいいかなと、私は思います。
【須藤主査】  どうぞ。
【林委員】  これはそれぞれ国とか地方の役割も分けて書かれていて、最終的に鍵という形になっていると思うんですが、ちょっと私はこの報告書というか、最終(案)のところを読んでいて、国とか地方自治体の役割の1つは、やはり規制緩和とか、新しいアイデアとか新しいことをやろうとしたときに、それができない1つの理由はお金もありますが、実は規制があるとか、ルールがこうなっているとか、もう少し広く言うと、既存の業界、あるいは抵抗勢力という形で出てきますよね。これがとてもできない理由になると思うんですよ。この点に関して、あまり議論されていなかったんじゃないかなと思うんです。この報告書の中にも、規制緩和とかいったことは言葉がないですから、これは、今さらという感じはしますけれども、どう扱っていけばいいんですかね。
 多分大学ができないこと、それから、要するに産業界というか、資金を持っている人もできないことで、かつ、国とか自治体がある程度影響力を出せるようなところって、そういうところかなと思うんですけれども。
【須藤主査】  具体的にこういう規制があるからとかいう議論を全然していないので、書きづらいと思うんですけれどもね。
【林委員】  そうですよね。議論にならなかったのはなぜかなと思うんですけれども、例えば自動運転の話とか、よくあるじゃないですか。ああいうイノベーションを実際に試してみよう、社会実装する前に試さなきゃいけないといったときに非常に難しいよねというのが、日本ではよくある話。アメリカだと、それをとにかくやってしまおうとなる。中国も、社会実装に関して敷居が低い深圳地区というのは、やっぱりイノベーティブになりますよね。ですから、そういうところを私たちはどう考えていったらいいんだろうなと。自動運転は1つの例だと思いますよ。
 それから、例えば医薬品とかああいう関係だと、治験はとにかくやりやすく、ここはやりましょうと、この特例は持ちましょうとかやりますよね。ですから、地域イノベのこういう地域でといったときにどうなのかな。例えば、漁業関係でイノベーションを起こそうなんて言うと、途端に漁業権を持っていらっしゃる方とのややこしい話にぶち当たると思うんです。農業でもそうだと思うんですけれども。
【須藤主査】  新聞に載っていましたけれども、国でスーパーシティーという話が出ていますよね。あれはいろいろ自動運転とか、BEMSとか、農業とか全部まとめて特区にしちゃおうと。そこで、ちょっと聞いたんですけれども、車は全部自動運転にするとか、あと、現金を使わないとか、そういうせめて5つぐらいは全部まとめてその地域でやらせちゃうということを理想的には考えているみたいなんですよね。だから、要は全部取っ払っちゃおうということですかね。そういう発想も必要なんですかね。極端ですかね。
【林委員】  ちょっとその議論が落ちていたような気がするんですけれども、当たり前のような気がするんですが、今さらですけれども、何か書き込む必要があるのか、あえて議論していないので、そういったところは観点が今回のスコープとは違うということにするのか。ここの最後の鍵というところあたりを見ると、大体そのポイントはどこでも書いてあるなと思ったんです。
【須藤主査】  確かに重要な点ですので。
【西村委員】  ちょっとだけ、これはどこまでを書いたらいいのかというのは言い方が悪いんですけれども、エコシステムを、常にこんな感じだったら形成できます、形成できますといっぱい書いてあるんですけれども、形成されたエコシステムの理想型みたいなものはどこかに書いてあるんでしたっけ。
 何が言いたいかというと、さっきの松原先生のように、私ももし論文指導をするとしたら、結論として、完成されるエコシステムというのはこういうものである、だからこそ、それに対して最終的に必要な、そのときにあるべき姿の各構成要素はこれであるという書き方をしていけば、この3つの国、人材とか、これがどういうカテゴライズなのかは別にしても、地域資源の中の、例えばダイアログがどういうものになっていなきゃいけないとかいうのが出てくるのかなと思ったんですよ。
 でも、これは各論を全部積み重ねていってみんなで頑張っていったら、何か理想のものに近づきますよという書き方にも見えるんですよ。ではなくて、もう大上段に構えて、ここに行くんだ、だからこそ、この要素はこうなりましょうという書き方を、順番を逆にするだけの話なんですけれども、そのときに、エコシステム形成に向けた鍵と書いてあるので、向けたということをずっとやっていけると、エコシステムができたときの姿とかになったら、こういうのが分かりやすいかなと思った。ちょっとそこが私には読み切れなかったので、これが最終的な到達目標点、書いていいのかどうかから始めて、書いていいんだったら、ここにそれが書いてあると分かりやすいかなと思ったということです。
【須藤主査】  いかがでしょう、今の御意見は。誰が書くんでしょうというのもあるけれども。要はダイダイ色のところをちゃんと最初に作って、その後ほかのものが付いてくるということですよね。
【西村委員】  その方が読みやすいかも分かりません。
【林委員】  ビジョンみたいなものですか。
【西村委員】  ここを書いていいんじゃないかということですね。
【須藤主査】  今までの議論の中で、何か書けますか。もう一回、あと三、四回集まらないとできないとか。
【西村委員】  生田さんの頭の中にあるんじゃないかと。
【林委員】  さっき3つの価値の議論をしましたよね。3つの価値の中で、イノベーションをなぜやるかって、それはやっぱり社会的な価値、特に地方における社会的な価値を当然維持し、かつ、将来にわたって持続可能的に向上していけるような形にしたいんだと、それをイノベーションの力でやりたいんだというのが理念のようなものですよね。それにはイノベーションのエコシステムを地域に根付かせる必要があって、そのためにやっているんだというのは、その左上の部分だと思うんですよね。
 それをやるHowの1つが、やっぱりABCというのはすごく大事ですよとなってきて、ABCが先に行っているので、何かHowが先に行っちゃっているような気がするんですけれども。
【生田室長】  おっしゃるとおり、多分これは最終的に、我々は政策として受けとめて、何をやっていくかというものにしていかなきゃいけないということを考えると、確かに、じゃあ、どういうエコシステムを作るべきなのかというのが必要なのかなと。そのときの「ABC」というのは、一番キーワードのはずなんです。だから、おっしゃるとおり唐突感があるという。
 何で冒頭に出てくるのかというのは、もともとこの「ABC」は地域の捉え方から出てきたものだったんですけれども、全体を書いて、書き終えてみると、そうじゃなくて、エコシステムを作っていくために必要なツールというか、考え方みたいなものに生まれ変わってきちゃったというのがあるので、場合によっては、多分「ABC」というのは第3章に移して、それをベースとしてエコシステムを作っていくことが必要で、そのために国は何をすべきとかいう感じのブレークダウンをしないと分かりにくいというのは御指摘のとおりかなと思います。
【西村委員】  ものすごく正しくて、私たちが今感じ取っている地域の動きは、まさしくこの「ABC」なんですよ。その熟度が上がっていく感じなんですよ。ある熟度が到達したところになると、自動運動に入って次々と生まれる。このファーストステージが、多分浅井農園がやったことだとかなんですけれども、その後に、それを見ていたエリアがポーンと出てくるのは、そういう熟度が出てきて勝手にABCが動き始めたんですよ。
 だから、例えばこういう成熟したABCが形成されるエコシステムを地域に作っていくのが、この地域科学技術イノベーションの目指すところであるとなれば、確かにこれは、言葉として「ABC」は最後の方がいいかも分からないけれども、語彙の説明としてはどこかに書いておいてもいいかも分からないですけれども、そうしていただくと、さっきの林委員がおっしゃっていたような、社会的価値をしっかり生み出しながら経済的価値と絡めて、起点は多分経済的価値だと思うんですけれども、絡めて、社会的価値を生み出しながら持続可能的な社会を作っていく。そのときに、やっぱり科学技術というものはしっかりとした誘導を掛けなきゃいけないので、絶対要るんですよねと。それが最終的には、資本主義なので、産業的価値を生み出しながら、本当の意味で次々と生まれ変わりながらでも継続していくまち、地域になっていけばいいというならば、大分生田さんのこの文章とかいろんな端々から理想像が全部漏れ出ているんですよ。これをきちんときれいに、多分第3章のところでも絵を描いちゃうと、それに向かっての整理が描かれると、恐らく松原先生からきちんと論文に丸を付けていただけるんじゃないかと思いますけれども。
【松原委員】  いやいや、恐れ多い。
【加藤委員】  すいません。ちょっと皆さんの議論と全く逆になっちゃうかもしれないんですけれども、理想像を決めちゃうというのは、今の世の中、先が読めないじゃないですか。理想型みたいな形で具体的にすればするほど、施策に当てはまらないということが現場で出てきそうな気がして、ある程度自由度というか、事例としてはこういう事例があって、Society5.0を目指す社会というのが一番上にあって、多様なABCがいて、その人たちが、エコシステムと呼ばれるものに勝手に、例えば太陽系ができてきたみたいな感じで活発な、原子がグルグル周りながらみんなを巻き込んで、ごみも巻き込みながら大きくなっていくようなイメージで、あちこちに地球やら木星やら火星やら出てきたみたいな。その結果、Society5.0というか、すごくハッピーな地域社会を目指している。結果的にそこに行けばよくて、そこのプロセスをあまり規定して政策に落とし込むと、メンバーに絶対大学がいなきゃいけないんだとか、行政を入れなきゃいけないんだとか、そういう政策になっちゃうと残念だなというのは、1つ懸念点としてあるかなと思います。
【須藤主査】  ありがとうございます。じゃあ、松原先生。
【松原委員】  先ほどのABCの位置付けですけれども、私は最初の方で、まず原初的にというか、地域の捉え方を従来とは違って、やっぱり主体を中心に、で、主体も首長とかではないという形での書き起こしは、私は違和感はないんですけれども。むしろ最後のところでさらにそれを発展させた形で、ABCのあるべき姿みたいなことを描いていただく。
 解は1つではないという形の方がいいとはもちろん思うんですけれども、ただ、やはりABCの在り方みたいなところで気になっていたのは、役割分担・分業をしつつ連携をするといった形で書かれているんだけれども、そこをもう少しどういうものが望ましいというか、どういう形での、これが相対になってくるんですけれども、分業と連携というか、それがどうなのかなというところは、やはり気になるところで、結構細かく書いてあるんですけれども、例えば地方公共団体がもっとコミットする、しかも地方創生とも絡んでくると、やっぱりここは重要な役割を果たしていくことになってくる。社会的な価値といったことにも関わってくるとすると、その地方公共団体の地域科学イノベーションにどう向かうべきなのかというところは、何か中途半端な書き方っぽくなっていて、これは串岡委員に聞いた方がいいのかもしれないんですけれども、やっぱりここを変えていくというのが、結構私もこの間地方創生絡みの話で見ていると、そこがイノベーションにどう関わるかというのは結構重要かと思うので、その辺のABCの在り方の中でも、大学の在り方も大事だし、国の在り方も大事だと思うんですけれども、特に私が気になるのは、この地方公共団体の在り方というところを、首長ではない形で組織として、しかも持続可能性のある形で地域科学技術イノベーションにどう関わっていくのかというのは結構大事な話かなと思います。以上です。
【須藤主査】  ちょっと記述が少ないんですよね、確かに。国がこんなに頑張らなくてもいいんじゃないかなと。
【串岡委員】  いいですか。
【須藤主査】  どうぞ。
【串岡委員】  多分これを例えば地方自治体の方が読むと、ABCという言葉の前で戸惑うと思うんです。恐らく従来の首長ではなくて、実際に主体ベースで物を考えなきゃいけないという理念は確かによく分かって、そうしなきゃいけないと皆さん思うと思うんですけれども、じゃ、その具体的なモデルだとか、いろんな理念型はこうだと、もちろんいろんなパターンがあるということなので、定型的なこれでなきゃいけないということはないんだけれども、どういういろんな事例、ここのヒアリングでしたようなものの中にはそういった1つの典型例もあるとは思うんですけれども、それをいくつか分かりやすく示さないと、あまりにも理念型だと、ああ、確かにそうだねといって、じゃ、何を目標に目指したらいいのかというのはなかなか分かりづらいし、1つの、別にこうしなきゃいけないというわけじゃないけれども、考えるアイデアの原型的なものは示した方がいいんじゃないかなと思いました。
【西村委員】  ちょっと文言的な話になるんですけれども、エコシステム形成に向けた鍵のところで、それぞれの主体が役割分担・分業しつつというのは確かにそうなんですけれども、この主体は、個で考えたときには自立していなきゃいけないんだと思うんですよね。きちんと自立した主体が、エコシステムという中では役割分担という層分けみたいなことは多分しっかりしておいた方が、私たちもここで自立しているということをきちんと書いておかないと、行政が頼りに来ることもあるんです。本当は行政がやってほしいんだけれども、もう大学の方で予算を上げたので、全部やってくださいということがあったりもする。そうすると、結果的には、さっき松原先生がおっしゃったように、地方公共団体自身の立ち位置が非常に後ろ向きなときも出てくるときがあるんです。
 だから、そういう意味で、ここに参加するエコシステムの構成員はどういう意識でいなきゃいけないかということも含めて、熟度が上がったときにはどうするのかということを各論の中の各構成員の定義付けみたいなところに落とし込んでいくと、先ほどおっしゃったような、多分自治体の職員がこれを読んだときに、自分たちの立ち位置がよく分からないというのはよく分かるんです。そこをケアして書いてあげると、自分たちもしっかり政策も立てて自立するんだと、それを生かしていくときに、きちんとした地域内での関係者との連動性を持っていくんだと、横で動くときは役割を分担していくんだということが意識できると、私も完全な理想像を書けとは言ったんですけれども、こうやりなさいという形ではないんです。理念を書くときに、多分そういう構成要素の役割というのかな、要は、逆に言うと覚悟みたいなのを書いておくのもありかもと思ったということです。
【林委員】  今の、補足します。
【須藤主査】  どうぞ。
【林委員】  私もそこに下線を引いていたんですけれども、分業制にするのは大事。これはそれぞれのプロフェッショナルになるべきである。プロフェッショナルというのは自立しているということですよね。ところが、もう一つ大事なのは、そのプロフェッショナルな人たちが、非常に高度にチームワークをすることができる。分業してばらばらじゃ意味がないんであって、分業しつつ、チームワークはとれる。つまりサッカーのゲームであれば、攻める人、守る人、ゴールキーパーと明確に役割がされているけれども、チームワークができるからゲームになりますよね。チームワークというと、何となく日本語だと仲よしクラブになっちゃうような感じがあるので、そうじゃなくて、役割は明確に、ここは絶対自分がやる、だから後ろ側はあなたがやってください、こうやってうまく回したらいくはずですという、この連携ですよね。ここが付いてきて初めてエコシステム的になってくるような気がします。
【須藤主査】  まだ少し時間がありますけれども。どうぞ。
【斉藤委員】  ABCを考えるとき、エコシステム、すなわち、生態系としてどれだけそこから何を生み出しているかが重要。おっしゃるとおり熟度という概念は大切で、熟度が高い生態系こそが、目指す姿の1つだと感じる。熟度という視点では、生態系の構成員であるActorたちが、それなりの高い能力をもち、コミットメントと活動量があり、自らを律しているという意味での自律性があることが、要件論として求められるだろうと思います。地方創生に不可欠な起爆剤に科学技術イノベーションがなる、その要件として色々書かれていますが、結局第一歩として、歯車を回す、まさに弾み車みたいなものは、いったい何なのか? 歯車を回すための初めの第一歩について言及しているとさらに良いと感じています。
 また、優先度の観点については、砂漠のようにActorがいないところにやること自体は、政策的にはすごく無駄になるわけで、一定程度の熟度要件があることは重要ではないかと思います。当然、熟度の定義付けは必要ですが、一定以上の熟度がある生態系を優先して施策を打つ方が、限られた資源の再配分の観点からは望ましい、と思いました。
【須藤主査】  ありがとうございました。
【西村委員】  そうすると、そもそも論に行ってしまうといけないんですけれども、じゃ、科学技術イノベーションとは何だということの、定義はどこかにあると思うんですけれども、それがさっきのエコシステムの中で何か登場していないのは確かなんです。そこに、これは媒介なのか、起爆剤なのか、呼称みたいなものなのかが、最初の経済的価値を生み出していくような、確かに歯車の起点みたいな感じのものなのか、多分いろんな要素があるような気がするんです。そうなってくると、自分で言っていて思ったんですけれども、場合によっては、もしかしたら科学技術イノベーションというのは、単なる新しい技術みたいにも聞こえちゃうんですよね。僕たちがイノベーションと言っているときには、新結合で富を生むということをかなり意識しているので、起点があって、そこから起こってくるいろんな行動みたいなことも含めてイノベーションという形のことを言っているときに、このときの地域科学イノベーションというのが、そうなってくるとエコシステムとどう違うのかということも含めて考えていかなきゃいけないかなという気にもなるので、ちょっとこの科学技術イノベーションの立ち位置をはっきりさせるということはないけれども、何か落とし込んでおいた方が分かりやすいのかなと思いました。
【須藤主査】  単なる技術開発じゃないんですよね。
【西村委員】  ないんですよね。
【林委員】  24ページの下の方に、シーズプッシュ型とニーズプル型と書いてあるでしょう。ここのところじゃないかなと思うんですよ。単なる技術だけでプッシュするんじゃなくて、ニーズプル型。これがまさに社会的価値に結び付けていくんだということに関係しているんですよね。だからここのうまい書き方じゃないかなと。
【西村委員】  そうすると、僕、よく絵を描くときに、人間に歯車を引っ張らせるプルと、歯車が押していくプッシュみたいなものと2つの要素で歯車を動かして描くと、最初の歯車を何にするかによるんですけれども、経済的価値にしていいのかどうか分からないんですけれども、今、林委員のおっしゃったことが非常に腹に落ちるような気もしたので。それ以上に、多分地域科学イノベーションというのに皆さんの考えが本当に統一感を持てるかというのは、ちょっと分からないところがありますけれども。
【生田室長】  もともと先ほどの円柱の図、下から上にあったところですけれども、あれを描いていたときのイメージとしては、科学技術イノベーションによって、まず経済的価値が生まれてくるのではないかと。要するに、何か結合が起きれば、少なくとも循環はするのではないかと。循環しているだけだったら終わっちゃうというか、熟度を増さないという意味で、それで終わってしまう。なんだけれども、それがエコシステムとなり、成長していく過程において産業的価値を生み、社会的価値、そこまで行く過程でエコシステムになっていくんじゃないかというイメージを持っていたんです。
 だからベースは単なる科学技術活動にすぎないんですけれども、それがクルクル回るうちに、1回転だと終わっちゃうんですけれども、生態系ということで何度も何度も回ることによって、この価値がどんどんスパイラルして上に行くというイメージを描いておりました。最初描いたときはそう思っておりました。
【林委員】  でも、今は違うんですよね。というのは、ニーズプル型とかおっしゃっているときって、やっぱり社会、特に地域社会のこういう問題点があるよねと。でも、これを解決するために、大学は何かできるかもしれないという考えがある、じゃあ、やってみようというふうに環境整備し、規制をある程度下げて、社会でテストできるような環境を作っちゃいましょうというあたりからイノベーションになっていくと思うので、だから今、生田さんがおっしゃったのは、プッシュ型はそうかもしれない。でも、プル型ってそうじゃない可能性がありますよね。いずれにしても科学技術が、やっぱり地方大学のこの技術があったらこの課題はいけるかもという、ここら辺の結び付きから発してくるんじゃないかなと思うので、ちょっと一元的ではなくて、プル型のところも考えるといいと思うんですけれども。
【須藤主査】  どうぞ。
【斉藤委員】  科学技術の何かブレークスルーがあったとき、産業的観点から言えば、競争領域のところは金儲けすなわち経済価値にすぐつながりますが、非競争領域は、必ずしもそうではない。イノベーションの定義は色々ありますが、社会的な価値を生み出した方が世の中から求められるイノベーションであろうということぐらいは言えるので、何かしらこの3つの関係性はあってもいいと思っています。そういう観点からも、イノベーションは必ず経済的価値につながるという図式ではない方がいいような気が、私はしています。
【須藤主査】  ほかにございますか。
【加藤委員】  1つだけ。何となくこんなイメージがいいんじゃないかなというのが、石ころでも細胞でも何でもいいんですけれども、丸がと二、三粒あって、ここは文科省なので、科学技術に関するABCの人たちがいて、それがだんだん増殖して大きくなっていったりするんですけれども、その軸で、最終的な価値というのは、多分社会的価値とか経済的価値とかじゃなくて、雑駁に「価値」なんだと。人間にとっての価値が増大できればよくて、それが社会的価値と表現されたり、産業的価値と表現されたり、それも時代によってまた違うし、今後どうなっていくか、グローバリゼーションがまた戻って小さくなっちゃうかもしれないし、それはちょっと分からないので、やっぱりそこに関わっている人たちがいいねと思えることが価値だと思うので、そういう意味で価値を大きくすることに向かって、皆さんがおっしゃっていた、軸としては熟度とか、広がりとか、それが最終的なxy軸があって、zが生活している人間の生きていくときの価値みたいなものが増えていくというのが、その最初の二、三粒のところからみんなが合わさって、それこそ本当にエコシステムだと思うんですけれども、生態系が広がって豊かになっていくイメージで価値が増大していくというのが、目指すエコシステムなんじゃないかなと。
 一方的に矢印が立つ、回転方向が一方的ですというのは全然時代に合っていなくて、多様だと言っている時点で、多分ベクトルは立たない。どっちかというと量子力学的な社会というのを表現しないと、ABCとしっくりこないんじゃないかなと思います。
【須藤主査】  ちょっと気になるのは、企業がActorsに入っていないんですね。文科省だからだと思うんですけど。
【加藤委員】  入っています。入っていないんですか。
【須藤主査】  特に右下の方には、入っていないような気がするんですけれども。
【加藤委員】  確かにないですね。
【須藤主査】  これはどうなるんでしょう。
【加藤委員】  当然入っていると思っていました。
【須藤主査】  あそこにはあるので、あの工場の前に人が立つはず。
【加藤委員】  「民」と書いてある。
【須藤主査】  その辺も忘れないようにしていただきたいと思います。ほかにありますか。これぐらいの議論でうまくまとまりますか。
【生田室長】  たくさんいろんなアイデアを頂きましたので、ちょっと時間を頂戴して。
【須藤主査】  次は上の部会があるのか。
【生田室長】  ええ。まず、今日で言い足りない部分とかがもしあったら1週間以内に受け付けをさせていただいて、それを受けて、どちらにしても来月は2月13日に開催ですので、それまでに今日のコメントと、あと、来月初旬ぐらいに上位の部会もございますので、そこでも現状版ということで御報告したいと思います。
【須藤主査】  そこはこれを出すんですか。
【生田室長】  はい。中途半端に変えるよりは、現時点で地域委員会で御報告したバージョンですということで報告させていただいて、そこでも当然コメントが出てくると思いますので、それを合わせて、あと、うちの省内ですとか関係府省からの御意見も踏まえながら反映していきたいなとは思っております。
【須藤主査】  そうか。関係府省の意見とか、文科省の中でもこれから随分出てくるんですね。
【生田室長】  はい。そうでございます。
【須藤主査】  という状況ですので、言い足りないことというか、何を言っていいか難しいと思うんですけれども。
【西村委員】  ということは、吐き出せばいいですよね、私たちは。
【生田室長】  はい。
【西村委員】  受け取っていただいて、お任せしたら、あとはきれいなものが最後にはできあがってくると。分かりました。
【須藤主査】  できれば文章にしていただいたら、絵まで描いてもらえると。
 いろんなところから意見が出ますので、最後は事務局の方で整理することになりますので、これだけは是非入れておくべきだとかいうこと、この1年間の議論をやった中で、報告書の中に入れなければいけないということを、また意見として出していただきたいと思います。
【林委員】  メールか何かの文書でよろしいですか。
【植原専門官】  会議の最後にやり方等々御案内させていただきますので、またそのときに。
【須藤主査】  じゃあ、よろしくお願いします。
 ちょうど予定の時間ですので、あともう1件、報告があるんですよね。お願いします。
【生田室長】  はい。タブレットの方に資料を掲載しております。資料2になります。夏の概算要求のときにも少し御紹介をさせていただきましたけれども、文部科学省の地域科学技術イノベーション関連施策の予算(案)の状況を少しだけ御報告させていただければと思います。資料2、こちらでございます。
 まず1ページ目にございます、これも夏の概算のときと類似というか、同じような形で、ちょっと目次代わりで使わせていただいておりますが、今現在、第5期でございますので、この赤囲みをしてある部分の施策が、このたびの政府予算(案)として計上されている部分でございます。
 そして、右のところにプラスという形で、INSPIRE、STIによる地域社会課題解決と書いてございますが、これは第6期に向けた芽出しの施策として、今年度、フィジビリティーという形でしたけれども、新規で計上させていただいた内容でございます。一応一つ一つ後ろにポンチ絵を付けておりますので、簡単に御紹介させていただければと思います。
 次のページ、2ページ目でございますが、こちらは地域イノベーション・エコシステム形成プログラムでございます。いわゆる拠点系のプログラムでございまして、地域の自治体さんと大学さんが共同で申請をしていただいて、大学等が保持しております、本当に先ほどの議論にありましたけれども、地域資源のコア技術を磨き上げて、そして、地方創生ですとか、あと、その結果をグローバルな市場へ出していくといったものを目指しているプログラムでございます。予算(案)としては、右上にございますように36.3億円の計上がなされておりまして、中としては、事業スキームのところ、少し小さいですけれども、新規で2機関程度、来年度の予算(案)としては計上している部分でございます。
 ちなみに、こちらについては、現在継続として19地域採択されておりまして、日本地図のところにございますように、北から南まで全国に、我々としては支援をさせていただいている内容でございます。
 続いてA-STEP、研究成果最適展開支援プログラムでございます。こちらについては、地域に特別に配分しているものではございませんが、特に右側、小さくて申し訳ないんですけれども、フェーズごとに機能検証、産学共同、企業主導と書いてございまして、このうちの機能検証の部分が、一言で言ってしまいますと、地方の大学の研究者にとって産学連携活動を行う、資金源として活用していただいているものでございます。科研費が全国に配られていると思うんですけれども、あの産学連携の目的で、本当に額としては1件当たり300万、若しくは実証研究、PoCをとるフェーズで1,000万、単年度のグラントでございますので、大きなものではございませんが、結構こちらについては件数も多く配分しておりまして、地方の大学の研究者にとっての資金源となっているものでございます。こちらについても、予算の詳細はこの中には書いてございませんが、今年度よりも少し増やした形で予算(案)としては計上されているものでございます。
 続きまして、4ページ目でございますが、リサーチコンプレックス推進プログラムでございます。こちらについて、予算額は、右肩にございますように約14億円ということで、今年度の予算額とほぼ同等のものでございます。と申しますのは、こちらについては来年度をもって終了予定のプログラムでございまして、現時点でこの3地域、日本地図のところにございますように、神戸と川崎・殿町、けいはんなの3か所に対して、こちらのまちづくりにイノベーションを活用していこうという拠点のプログラムでございます。
 最後でございます。次のページ、科学技術イノベーションによる地域社会課題解決、INSPIREでございます。こちらについては、御記憶にある方もいらっしゃると思うんですけれども、概算要求の段階は3.1億円で要求しておりました。結論としまして、予算(案)としては4,500万ということで、かなり圧縮というか、縮減されております。ただ、先ほど申し上げましたように、こちらは現第5期というよりは、その次の第6期を目指した芽出しのプログラムとして、来年度予算(案)ではフィジビリティー、試行的実施ということで財政当局から認められたものでございます。ですので、事業スキームのところにございますように、あくまでも事業期間は1年ということで、対象機関は大学等と自治体さんということで、冒頭にございましたエコシステムプログラムと同様でございますけれども、ここでは、実はこちらの地域委員会で先ほど来御議論いただいております社会的価値を目指す、そういったプログラム、つまり地域、そして自治体さんが今困っていることを何とか科学技術イノベーションを活用しながら解決できないか、その結果として地域の社会ビジョンを実現することができないかということを主眼としておりますので、自治体さんに本気になってもらいたいという思いで立ち上げているものでございます。
 これについては、今後、詳細な制度設計をしていく予定でございますが、取り急ぎこのような形で、新規ということで、来年度進めていきたいと思っている内容でございますので、まさに本日御議論いただいたような内容とかもうまく盛り込みながら、より精緻な制度設計をしていきたいと考えてございます。
 説明は簡単でございますが、以上でございます。
【須藤主査】  何かありますか。それでは、今後の予定について、お願いします。
【植原専門官】  資料3をご覧ください。次回の日程につきましては、2月13日水曜日、15時半から17時半を予定しております。場所は文部科学省3階1特別会議室です。
 先に次回の委員会のアジェンダを説明させていただきますと、まず次回は第9期最後の委員会となっております。このため、委員の皆様から第9期の委員会の振り返りとともに、次期委員会で議論すべきことなど総括コメントを頂戴したいと考えております。また、引き続きこちらの最終報告書(案)について御議論、御審議いただく予定でもあります。
 最後に、地域イノベーション戦略支援プログラムというプログラムがあるんですけれども、こちらの評価結果について、次の地域委員会で御報告させていただきます。こちらの評価結果につきましては、個別利害に直結する事項に関する案件が議事に含まれていると認められることから、委員会運営規則第5条第3項の規定に基づき、その評価の部分だけは議事を非公開とさせていただく予定です。
 最後に、先ほど主査より御案内がありました最終報告書(案)につきまして、こちらは事務局より、本日メールにて委員の皆様に共有させていただきます。なので、追加のコメントや御意見等ございましたら、添付させていただく最終報告書(案)の方にコメントを頂ければと思います。こちらは25日までで締め切らせていただきますので、今日から1週間ほど、何か御意見等ございましたらコメントを付けていただいた上で、事務局までメールで返していただければと思います。
 その後、省内調整や他府省との調整を経まして、2月上旬に開催を予定しております、本委員会の上位部会に当たる産業連携・地域支援部会でも報告させていただきまして、そちらの部会の委員の皆様からの御意見も踏まえた上で最終的に事務局で取りまとめて、次回の委員会で再度御提示させていただきます。以上です。
【須藤主査】  コメントは、今日発言した内容は大丈夫ですね。
【植原専門官】  はい。それ以外で、追加で何か言い足りないことであるとか、再度読み直していただいておかしな点等ございましたら、そちらを記載いただければと思います。
【須藤主査】  よろしいでしょうか。何かありますか。
 それでは、これで第10回目の推進委員会を閉会としたいと思います。どうもありがとうございました。

― 了 ―

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