産業連携・地域支援部会(第9期)地域科学技術イノベーション推進委員会(第1回) 議事録

1.日時

平成30年4月20日(金曜日)15時00分から17時00分

2.場所

文部科学省 15階 特別会議室

3.議題

  1. 議事運営等について(非公開)
  2. 「地域イノベーション戦略支援プログラム」及び「先端融合領域イノベーション創出拠点形成プログラム」に関する評価について(非公開)
  3. 今後の地域科学技術イノベーションの在り方について
  4. その他

4.議事録

○議事1、議事2については非公開


【須藤主査】  それでは、ここから議題3に移ります。原則として、本委員会の議事は、委員会運営規則第5条に基づきまして、公開となっておりますので、ただいまより公開とさせていただきたいと思います。報道関係者及び一般傍聴者の入場を許可したいと思います。お願いします。
(報道関係者及び一般傍聴者入場)
【須藤主査】  よろしいですか。それでは、これより公開で地域科学技術イノベーション推進委員会を進めさせていただきます。
 本委員会では「地域の科学技術を地域活性化につなげていくに当たり、地域の科学技術に係る現状と課題の把握とともに、取り組むべき方向性・戦略・解決策につきまして検討を行う。」と上位の産業連携・地域支援部会により決定された設置紙において規定されております。
 これから2年間にわたりまして、今後の地域科学技術イノベーションの在り方、あるいは、その振興施策等につきまして、各委員の知見をお聞きしながら、議論を進めていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 まず、審議を進めるに当たりまして、本委員会に関係する文部科学省のこれまでの地域科学技術イノベーション支援施策の変遷、さらに、今後の委員会で審議を進めていくに当たってのポイント及び審議スケジュールにつきまして、事務局から説明をお願いいたします。
【生田室長】  それでは、失礼します。資料は、3-1、3-2、3-3を通して説明させていただく予定でございます。
 まず、3-1の横のポンチ絵でございます。
 なお、傍聴者の方に御連絡なのですけれども、ホームページに掲載していた段階の資料で、一部画像が見えにくい部分等がございました。そちらにつきましては、今日、プロジェクター投影の方は直しておりますので、もし見えにくい等ございましたら、ホームページの掲載分を後で差し替えさせていただきますので、もし必要あれば、後ほどダウンロードいただければと思います。
 それでは、早速3-1を説明させていただきます。こちら、文部科学省における関係施策の変遷と現状でございます。簡単に、ざっと行かせていただきます。
 まず、地域ということにとらわれずに、産学官連携施策の全体の歴史でございます。委員の方々におかれましては、今更という話かもしれませんが、一応過去を振り返るという観点で、そもそも論のところから少し説明させていただければと思います。
 まず、科学技術基本法、一番左のところでございますけれども、これが1つ大きな起点になっていると思います。こちらにおきまして、科学技術振興に対して、国だけではなくて、地方自治体の義務というものも、こちらで初めて制定されたというのが1つ大きな起点になったのではないかと考えてございます。
 そして、科学技術基本計画というものができまして、一番上の帯のところ、第1期、第2期、第3期、第4期と、そして、現在第5期となってございますが、まず第1期の期間、こちらは平成8年から始まってございますけれども、このタイミングでは、やはり最初は、産学官の人的交流、人の交流がまず重要だということがかなりうたわれた時代でございました。これによりまして、例えば、JSTさんの方のコーディネーターというものが配置され、RSP事業という形でそちらの方は支援されておりましたけれども、そのような事業が始まってきていたという状況でございます。それと、イベントとしましては、途中、大学等技術移転促進法によりまして、承認TLO制度が認められ、さらに、翌年、いわゆる日本版“バイドール”の条項が認められました。
 さらに、途中、2004年、国立大学法人化によりまして、大学が法人格を持ったことで、承認TLOへ出資できるとか、特許が大学という機関に帰属するという考えがここでもたらされたという内容でございます。この辺の第2期科学技術基本計画の期間につきまして、特徴とすれば、技術移転のための仕組みづくり、そういったことが大きくうたわれた時代だったと考えてございます。1期、2期を通じて、科学技術をとにかく促進するのだというような流れが出てきたのではないかと考えてございます。
 そして、2006年、教育基本法の改正によりまして、教育の方がなぜ産学官なのかというのはあるのですが、その中で、大学の使命として、③のところの教育・研究成果の提供による社会貢献、こういった形で基本法の中でも明文化されたというのは、産学官連携政策にとっても大きな影響を与えたのではないかと思っております。
 そして、また途中、研究開発力強化法を踏まえ、翌年、予算という意味ではかなり打撃を受けた行政刷新会議の事業仕分けというものがありまして、吹き出しにも書いてございますように、このときには、地域科学技術産学官連携戦略展開事業というのが走っていたのですが、それ関連が全て廃止という判定をされてしまった次第でございます。
 なお、この廃止のときに、目的が、地域の科学技術、産学官連携、そういったものを推進すること自体には必要性は認める、けれども、それを国としてやる必要はないのではないか、そういった観点から廃止がなされたというものでございます。
 この辺の第3期の科学技術基本計画の期間でございますけれども、ここはやはり産学官連携というフレーズ自体もかなり広まってきておりまして、イノベーション創出をするために、ある意味重要なツールというような形で位置付けられてきたのではないかと思ってございます。
 また、この第3期、第4期に向けてだと思いますけれども、1期、2期がどちらかというと研究開発の振興、促進、そういった流れだったのに対して、研究開発成果をいかに世の中に生かしていくか、いかにイノベーションにつなげていくか、そういったことが問われるような科学技術基本計画の流れになってきたのではないかと考えてございます。
 そして、2013年、研究開発力強化法が改正され、大学発ベンチャー等支援会社等への出資も可能となり、そして、日本再興戦略2016では、「大学や国立研究開発法人等への民間投資3倍増」、こういったものが規定されてまいりました。最近では、オープンイノベーション共創会議というものがかなり省内としても大きく取り上げられて、OI機構の支援というものが今年度から始まっているというような流れでございます。
 これがいわゆる産学官連携全体の政策・施策の流れでございまして、この中で、特に地域についてはどうなのかというのが、次の2ページを見ていただければと思います。2ページ目のところには、第2期から書かせていただいておりますけれども、基本計画等に基づきまして、地域科学技術イノベーション支援施策がどのように展開してきたかということを、簡単な模式図で書かせていただいている内容でございます。
 なお、ここには第1期が書かれていないのですけれども、第1期は、先ほど申し上げましたように、コーディネーターというものの概念の始まりで、例えば、JSTさんの方では、プラザ・サテライト、そういったものが作られるといったことが、第1期で行われていたと認識しております。
 なお、第2期になりまして、先ほど局長の挨拶の中でも出てまいりましたけれども、知的クラスター、こういったものが形成されて、大型の拠点というものを国として作っていったというのが、第2期の基本計画の時代でございます。
 ここでは、知的クラスター創成事業、そして、少し小粒ですけれども、地域ごとの特徴・特色を捉まえた拠点を支援する都市エリア産学官連携促進事業というもの、こちらは1億円の規模でございましたけれども、89地域、3~5年掛けて支援をするというものが、第2期の基本計画期間中でなされてきたものでございます。
 なお、この時代には、経産省さんの方では、産業クラスターというものが支援されてまいりまして、文部科学省のこの知的クラスターと合わせる形で、いわゆる地域のクラスターづくりなどによって、イノベーションのプラットフォームづくりというのがなされてきた時代ではないかというように考えてございます。
 そして、第3期に移りますが、第3期は結構暗黒時代というか、地域イノベーションクラスタープログラム自体が、実は、先ほど少し申し上げました事業仕分けによりまして、1年間のみ、平成22年度のみで終了という形になってございます。なお、18、19、20、21は、この知的クラスターですとか都市エリア、この延長がなされてきた時代でございました。
 そして、続く第4期でございますけれども、4期の基本計画中におきましては、事業仕分けの影響というものはございますが、文部科学省としては、だからといって、地域施策をなくすのではなくて、ソフト・ヒューマン、そういったものを特に重点的に支援してまいりました。ソフト・ヒューマンというのは何かというと、例えば、ネットワークづくりですとか人材育成、そういったものに特化する形で、規模としては知的クラスター時代の5億ほどではないんですけれども、細々と地域の支援というものを続けてまいった次第でございます。これは地域における総合調整機関、そういったものを中核とするイノベーション・エコシステムを作りたいという思いで実施してきたもので、この地域イノベーション戦略支援プログラムというものは、先ほど評価の議題のところでも少し触れさせていただきましたが、33地域を文部科学省としては支援してまいった次第でございます。
 なお、その下に緑で書いてございます復興促進プログラム、これは皆様もう御承知のように、2011年3月の東日本大震災を踏まえまして、被災地の企業のニーズと大学の技術シーズ、これをマッチングすることで、地域の活性化につなげたい、被災地の活性化につなげようということで始めた事業でございました。
 この事業が、地方の中小企業さんも含めまして、企業のニーズ、それと、地方の大学のシーズの結び付き、これをいわゆるコーディネーターに近い存在であるマッチングプランナーがつなげるという施策だったのですけれども、これを全国展開ということで、第5期は大きく羽ばたかせていただいている次第でございます。
 なお、第5期に向けて、第4期では、先ほど申し上げましたように、事業仕分けを受けて、少し規模感としては縮小したものの、地域にイノベーションを頑張ろうというきっかけ、仕組みづくり、そういったものができた時代ではなかったかと思っております。
 そして、平成28年度からの第5期の基本計画は、新たなプログラムといたしまして、現在もこちらの方は新規公募をやっておりますが、地域イノベーション・エコシステム形成プログラムというプログラムを開始している次第でございます。
 なお、第5期の基本計画というのは、第4期でそのきっかけを作る量的拡大をしていた、それに比べまして、実際に地域を支援した結果、地方創生の成功モデルをいかに作り出すかという点に主眼をおいています。お金を出しても、それが最終的に事業化に結び付かなければ意味がないということで、1つでも多くの成功体験、成功モデルを作り出したい。そういった思いで、地域イノベーション・エコシステム形成プログラムというものは作ってきた次第でございます。
 このイノベーション・エコシステム形成プログラムにつきましては、1地域当たり、初年度が1.4億、2年度目以降が1.7億程度なのですけれども、5年間の支援ということで、現在大体31億円の予算が付いているところでございます。
 また、緑のところは、先ほど申し上げました、復興のときに立ち上げた施策を全国展開するということで、どちらかというと小粒のものを、300万もしくは1,000万、こういったものを細かくマッチングプランナーが結び付けることで、産学連携をしていくということを支援する、いわゆる研究を支援するもののプログラムとして、現在もこれは走らせているところでございます。
 最後の一番下のところ、世界に誇るリサーチコンプレックスの成長と書いてございますけれども、これはもう少し大型の自治体・地域のまちづくりと合わせ技で、世界的に優れた研究施設ですとか研究機関、もしくは、大学、企業、そういったものを集積していきたい、一つの大きなまちを作っていこうと、そういう発想で始めたプログラムでございまして、既に新規の公募というのはやっておりませんが、3地域を5~7億円程度で5年間の支援ということで、現在14億円の予算を付けさせていただいているところでございます。
 次のページに進んでいただきますと、こちらが今ざっと申し上げました文科省における地域の関係の予算の推移でございます。ピーク時は140億円、2006年度には140億円ございましたが、やはり2009年、事業仕分けがございまして、そこら辺をきっかけとして、毎年少しずつ減ってきてしまっていると。これは全体として、先ほど少し申し上げましたが、量的拡大から、質というか、最終ゴールに本当に行かせるためにはどうするかというところを狙ってきているというのにも多少寄与しているのかなという気はしますし、また、後ほど少し触れさせていただきますが、内閣府の方でも、大きな地方創生予算というものが出てきている影響もあるのかなと、我々としては認識をしているところでございます。
 そして、次のページへ行っていただきますと、この資料、実は26ページもございまして、このペースで行くととても説明は間に合いませんので、個別の事業の詳細の振り返りというのは、実は今後、第2回目以降、後ほどスケジュールを申し上げますが、様々なこういった事業を活用していただいた自治体さんですとか、地方の大学さん、そういった方々からのヒアリングもさせていただければと思っております。そういったところと合わせ技で、場合によっては、詳細な説明をさせていただければと思っておりますので、本日の説明はざっと行かせていただきます。
 まず、知的クラスターは、平成14年~24年度やっていた事業でございまして、第1期、第2期と分かれておりますけれども、第1期では18地域、第2期では9地域を支援して、いわゆるクラスターを作るということで進めてきた事業でございます。
 次のページに、地図で支援の地域を書かせていただいております。5ページ目、6ページ目がそれでございます。
 7ページ目が、知的クラスター創生事業を踏まえて出てきた成果というものをここに書かせていただいている次第でございます。よろしいでしょうか。ここら辺は少し飛ばさせていただきます。
 次が、都市エリア産学官連携促進事業でございまして、こちらも先ほどの知的クラスターと同時期、まさに平成14年~平成22年度、22年度がまさに事業仕分けの年だったのですけれども、そちらで終わったという意味で、支援をしてきたものでございます。
 少し申し上げましたが、知的クラスターに比べまして、こちらは小粒でございます。ただし、より個性、地域の特徴・特色を踏まえた、分野に特化したもの、そういった研究開発活動を、産学官の連携活動を支援するというものでやってまいりました。
 次のページに、日本地図で、これはなかなか見えにくいのですけれども、この全体の指されている89地域を文部科学省としては支援をしてきた次第でございます。
 次の10ページに、都市エリアによって得られた成果を幾つかピックアップさせていただきました。
 続けさせていただきます。次の11ページ、こちらが地域イノベーションクラスタープログラムでございまして、これは、先ほども何度も申し上げておりますように、事業仕分けの影響で、1年度でプログラムとしては終了してしまったものでございます。内容は、基本的に知的クラスター、それから、都市エリアの発展版と考えていただければと思います。
 続きまして、12ページでございます。こちらは地域イノベーション戦略支援プログラム、これは現在、最終年度で走っている拠点が少し残っているものでございます。先ほど評価の議題のときに少し言及させていただいた事業といたしまして、年間1億円の5年間の支援ということで続けているものでございます。
 次のページに、その支援採択地域、33地域を示させていただいております。
 14ページには、成果の例という意味で、徳島県、まだ今年度、最終年度で走っておりますが、こちらでは、糖尿病の関係の研究を、自治体、地銀、そういったところも含めて、産学官連携でかなり良い成果を出していると伺っている内容でございます。
 続きまして、15ページ、こちらが地域イノベーション・エコシステム形成プログラムでございまして、これが現在、第5期の基本計画に即する形で、我々として強力に進めている内容でございます。この特徴といたしましては、赤で幾つかポンチ絵のところに引っ張っておりますけれども、地域の大学等の研究機関が持つコア技術、こういったものを引っ張り上げて事業化に持っていきたい。そのために、事業プロデュースチームというモノを作ってもらうというような座組を考えているものでございまして、特にハンズオン支援、これは文部科学省と専門的な知見をお持ちのアドバイザー、そのチームにおきまして、ハンズオン支援というのをしっかりとやっているというのが特徴になってございます。
 なお、このプログラムによる採択の地域というのは、次のページ、16ページに書かせていただいておりまして、現在14地域が走っております。なお、これは、今年度の公募が終わりまして、現在、審査の過程に入っているものでございます。
 次に、今、このプログラムでやっている1つの地域、浜松地域を例として書かせていただいておりますが、こちらの地域は、立体内視鏡、いわゆる手術用の顕微鏡の感覚で使えるような立体内視鏡システム、これを作ろうという画期的なプログラムで、現在、文部科学省としても支援をして、ハンズオン支援もしているところでございます。
 続きまして、先端融合領域イノベーション創出拠点形成プログラム、こちらも平成18年度から、ラスト1つの拠点だけ今年度残っているものでございます。こちらも、先ほど評価の議題の中で少し触れさせていただきましたが、10年間という、文部科学省にしてはかなり長い期間の支援を、基礎から最終的な事業化段階まで支援するという内容で、合計12拠点を支援させていただいておりました。
 次のページには、日本地図で、支援をさせていただいている課題一覧を載せさせていただいておりますし、さらに、その次には、取組の事例として、神戸大の例を取り上げさせていただいております。なお、この切らないゲノム編集というのは、かなり大きな成果として取り上げられておりまして、現在、先ほど1つ前に紹介させていただいたエコシステム形成プログラムでこの成果は引き継がれて、現在、我々としては、まだ支援をしているという内容でございます。
 続きまして、21ページ、こちらがJSTの事業でございますけれども、いわゆるリサーチコンプレックス推進プログラムです。こちらは、先ほど少し申し上げましたけれども、まちづくりという意味で、優れた研究機関とか、大学とか、企業、そういったものを集積する。もともと考えとしてあったのは、フランスのグルノーブルのGIANTというようなものを想定して、日本にもそういったものが幾つかできないだろうかということで、神戸市、川崎市の殿町、けいはんな、この3か所を文部科学省として現在支援をしているところでございます。
 次のページには、その具体的な取組の事例をそれぞれの地域で書かせていただいておりますが、御参考になればと思います。
 そして、23ページ、これが最後の施策でございます。研究成果最適展開支援プログラム、A-STEPと通称言っておりますが、こちらの中で、特に「地域産学バリュープログラム」を統合と書いておりますが、機能検証のフェーズ、こちらが地域の施策としては、我々が強力に支援をさせていただいているところでございまして、なお、このA-STEPの事業というのは、全国の大学が持っている技術シーズをベースといたしまして、その実用化を目指すというのをフェーズごとにプログラムとして支援をさせていただいているものでございます。特にアーリーな段階、試験研究ですとか実証研究、こういったところにつきましては、小粒ですけれども、数多くを支援するというような内容になっておりまして、最後のページまで行っていただければと思います。
 最後のページに、機能検証事業と書かせていただいておりますけれども、この日本地図にMPオフィスと書いているのですが、これはマッチングプランナーでございます。マッチングプランナーという、いわゆるコーディネーター的な方を22名全国に配置しておりまして、こういった方々が、地域の大学の持っているシーズ、それから、地方の中小企業さんとかの企業をつなぐ役割を担っていただいて、具体的に実際産学連携の研究開発を進めているというような内容でございます。
 以上が、こんな短時間でこれだけ説明をして分かるかと多分言われそうなのですけれども、文部科学省だけの施策でございまして、本来であれば、こちらの委員会では、多分、他省庁さんの地域の関連の事業も説明させていただくべきかなと思っております。そちらについては、時間の関係もありますので、次回改めて、特に経産省さんとかも他に事業をやっておりますので、そこら辺は少し触れさせていただきたいと思ってございます。
 なお、1点だけ本日触れさせていただきたいのは、内閣府でございまして、こちら、参考資料の方へ行っていただけますでしょうか。参考資料5になります。5の16ページです。16ページから、内閣官房、それから、内閣府と書かせていただいております。皆様御案内のように、まち・ひと・しごとと言われておりますけれども、まち・ひと・しごと創生本部事務局、それから、地方創生推進事務局というものが設置されておりまして、そちらの方が強力に、地方創生という意味で、地方に様々な交付金を配るということが昨今行われております。
 その主なものを、こちら、ピックアップさせていただいておりますが、最初のは、いわゆる一般的な交付金でございます。地方創生推進交付金ということで、1,000億円の予算が30年度ついているところでございまして、1枚次に行っていただきますと、地方大学・地域産業創生事業ということで、100億円付いているものがございます。こちらが、どちらかというと、文部科学省的には関連するという意味で、少しここで御紹介させていただければと思います。言ってみれば、文部科学省の地域施策というのは、どちらかというと、科学技術をどうやって地域に活かすかという観点なのですけれども、当然ながら、この内閣官房さんがやっている事業につきましては、目的は地方の大学というものが主目的になってきていると思います。これの、もともとの経緯は、地方創生に資する大学改革というものがいろいろ議論されている中で、地方の特色ある創生のための地方大学振興を進める施策として、こちらの事業が、今年度初めてなのですけれども、新規で100億円計上されたという内容でございます。
 中身は、地方公共団体ですとか地方大学の事業、そういったものに5年間交付金を交付するというものなので、見た目は、文部科学省がこれまで支援してきている内容と結構似てはいるのですけれども、大きな目的というものが、少し我々の方が尖った目的になっているかなとは考えてございます。
 以上が、施策の歴史、それから、現状の予算として、どういうものが動いているかの御紹介をさせていただきました。
 続いて、恐縮なのですけれども、資料3-2を御覧いただけますでしょうか。こちらの方に、第9期本委員会における審議ポイントの案を掲載させていただいております。ただいま、短時間でございましたけれども、述べさせていただきました歴史ですとかこれまでの施策、こういったものもある程度頭の中に置きつつ、当委員会では、冒頭から申し上げておりますように、次の第6期の基本計画に向けて、新たな地域の科学技術振興施策とはどういうものか、そういったものを御議論いただきたいと思っております。それの、ある意味たたき台というか、骨組として、とりあえず事務局から提案させていただく内容として、今回掲載させていただいております。
 まず1のところでございますけれども、地域における科学技術イノベーションの取組の基本的方向性でございます。これはある意味そもそも論でございまして、何を今更と言われるかもしれないのですけれども、やはり一度整理をしておきたいとは考えてございます。「地域」の定義でございますが、これも多分取り方によっては、自治体レベルですとか、もしくは、もうちょっと広域なレベル、ブロック単位ですとか、もしくは、日本全体が一地域だという考え方もありますでしょうし、いろんな考えがあるかと思います。一度その範囲や、定義付けを我々として整理したいなと考えてございます。さらに、同じような意味合いなのですが、主要プレーヤーというものも、その範囲を決めた上で、プレーヤーは一体誰なのかというところも、新たなプレーヤーも含めて、御議論いただければと考えてございます。
 続きまして、「地域」が取り組むべき定義や意義、これもある意味今更論ではございますけれども、やはりここをきちっと定めた上で、具体的に、我々として何をしていくべきか、国として何が期待されているのか、そういった議論につなげていきたいなと思ってございますので、ここでは意義や定義、さらには、目的、そして、先ほど申し上げました内閣府、内閣官房の方で、今、地方創生の大きな動きがございますので、そちらの動きと、我々、科学技術行政として、科学技術イノベーション、地域をどういうふうに活性化していくか、そういった在り方みたいなものも御議論いただければと考えてございます。
 こういった大所高所というか、そもそも論の上で、2ポツでございますけれども、地方創生に資する科学技術イノベーションを地域主体で持続的に創出するための具体的方策という形で、一旦整理をさせていただきました。ここで言わんとすることの背景といたしましては、自治体さんを比べるというのは変なのですけど、見渡すと、結構科学技術イノベーションというものを地域の活性化に取り入れている地域もあれば、一方で、ほとんど見向きもしないというか、そんなことよりも、もっと目の前の課題がたくさんあるんだというような形の地域もあるのではないかと思っております。先ほど少し議論あったと思うんですけれども、補助金行政ではないんですが、お金があるときはいいんだけれども、終わった後どうなっちゃうのというのもあったりして、やはり地域自らが、科学技術イノベーションというものに取り組む意義とか、そういったものを分かった上でやっていくことが必要なのではないかなと。そういう意味で、裾野をどんどん広げていきたいと、我々としては考えているところでございます。
 次に、「地域科学技術イノベーション」を推進するためのプレーヤー。1の方で、プレーヤーは一体誰なのだという規定をした上で、そのプレーヤーの役割とか、連携の在り方、これは地域内もありますでしょうし、地域外の広域連携というのもあると思います。または、新たなプレーヤーの巻き込みというのもあると思います。さらに、プレーヤーと言ったときに、人材をどうやって確保していくか、人材をどうやって育成していくか。特に若手ですとか現役のコーディネーターというものが地方・地域では不足しているとよく言われておりますが、そういったところのキープレーヤーはどういうふうに確保するべきなのか。その辺も御議論いただければと思ってございます。
 少し飛ばさせていただいて、(2)のところでございます。その上で、国が「地域」における「科学技術イノベーション」を推進/支援する意義、そして、それを具体的にどういうことを我々としてやっていったらいいのかということを、ここら辺では整理をしたいなと思ってございます。
 そして、続いて、2ページ目のところでございますけれども、グローバル展開を見据えたイノベーションを地域主体で創出するための具体的方策。ここは、もしかしたらグローバルとドメスティックを分ける必要はないのかもしれませんが、グローバル展開というものを我々としてはやはり最終目標として進めていきたいと思ってございます関係で、あえて分けてここは書かせていただいた次第でございます。
 これは、あくまでもラフな、このような観点で御議論いただいて、進めていければと思っているものでございますが、最終的には、本日委員の皆様方からいろいろなインプットを頂く予定でございますので、それも踏まえて、論点整理というのは今後していきたいなと思っているところでございます。
 続いて、資料3-3だけ説明させてください。こちらも簡単に行きます。審議スケジュールでございます。本日、4月20日、第1回目を開催させていただいておりまして、イメージとしては、回ごとに、委員の方、もしくは関係機関、先ほど申し上げましたが、具体的に文科省の事業を使っていた地方大学さんとか自治体さん、そういった所からのヒアリング、もしくは、専門機関からの調査の結果のヒアリング、そういったことも各回取り入れていきたいなと思ってございます。
 その上で、先ほど少し御紹介した審議のポイント、あれの項目ごとに議論を深めさせていただきたいなと思ってございます。例えばですけれども、第2回目では、そもそも論というか、大所高所の定義のところ、そこに絞り込んだ形で御議論いただく。そして、第3回目は、地域が主体的にイノベーションに取り組むためにはどうしていったらいいのかという観点に御議論いただく等々、論点というのは今後変わってくる可能性はございますが、そのような形で議論を進めさせていただいて、約1年間お付き合いいただきまして、2月頃に最終報告書を取りまとめて、最後は、上位の産地部会の方に上程していくということを考えてございます。
 すみません、長くなりましたが、説明は以上でございます。
【須藤主査】  ありがとうございました。
 今、3-1から3-3まで説明していただきましたけれども、ここからは自由な討議に移りたいと思います。なかなか時間が残り少なくなっていますので、お一人、多分5分もないような気がします。3分程度で、今までの御経験を踏まえて、今説明あった中の現状とか課題、あるいは、今後あるべき姿はどうあるべきか、それから、具体的な推進方策、そういったところにつきまして、少し御発言をお願いしたいと思います。
 御発言いただいた内容を事務局で取りまとめまして、次回以降の論点にしていきたいと思いますので、その辺を少し念頭に置いて発言していただければと思います。
 では、内島先生からお願いいたします。
【内島委員】  ありがとうございます。改めまして、北見工業大学の内島でございます。
 事前にいただいている2つの視点についてですが、まずは、地域の定義をどうしていくかというのは、非常に重要な観点かなと思っております。私の活動拠点は北海道北東部にある北見市というところですけれども、こちらは、面積で言いますと、大阪府ですとか、香川県ですとか、そのぐらいの規模の一市でございます。私自身活動していてもそうですけれども、北見という地域が特異的な地域なのではなく、日本における大都市圏から見た地方と言われるところの地域のその一つであるという認識でおります。
 そういった面で見ますと、科学技術によるイノベーション創出ということは非常に難しいなと感じております。なぜかと言いますと、私どもの地域で企業と言うと中小零細企業が主であり、20人の従業員で、私たちの地域においては大きな企業という位置付けでございます。そういう地域におきまして、研究開発における「研究」は皆無ですね。無いに近い状況です。
 そういう中で、私たちが地域振興に向けて何をやっているかというと、やはりそこの地域に定着する人を育てていくことと、地域が持つ課題を、大学が代わって開発に関することも含めて進めていきながら、地域振興を図るというような現状でございます。
 一自治体という視点でも、県庁に相当するのは北海道庁ですけれども、北見市からは特急で片道5時間弱ぐらい掛かるところにございまして、やはり私たちが身近に感じている自治体は市ですね。隣の町におきましても、役場、そういうところが私たちにとっての自治体という位置付けです。
 その広さという面では、隣町へ行くのに50キロ、60キロあるような、そんな規模の中で、先ほど申し上げたような、企業の規模という面でも見ると、科学技術による地域振興というのはとても考えにくいなというのが現状だと思います。あと、科学技術の構成要素として、ベンチャーキャピタルですとか、そういうものも挙がっておりますけれども、自治体と大学以外で挙げられている要素は、これは本当に極端に機能としては小さいものであるかなと思っております。
 なかなかそういう面では、自発的に我々が地域においての科学技術によるイノベーションの創出に向けた「環境」や「体制」を構築するのにはハードルが極めて高いと思いますので、まずは、先ほど冒頭に申し上げた、地域という定義をどう取るのか。というところへの検討が必要かと思います。北海道という面で見ますと、今までの施策でいろんな事業を展開しているのは、やはり道央圏、いわゆる札幌市中心になっている事業を進めているところが多いと。そういうところだけでいいのかというところは、まず視点として持たなければいけないかなと思います。自発的には科学技術によるイノべーション創出をなかなか進められないところ、でも、その一方で、その地域だからこそ、特異的な、希少価値の高い特徴、気候でしたり、そこに存在する産業でしたり、そこにおける人材でしたり、そこの地域の特徴を活かすことで、何か、仕掛けづくりができれば、科学技術による地域イノベーションというのが生まれていくことができるのではないかなとは思っております。科学技術による地域振興に道はあると考えていますが、その難しさを真に認識した上でそれらを克服する事が必須だと思います。
 具体的にどのような仕組みが必要かと言う点についてはまだまだこの委員会の中で検討していきたいと思っておりますけれども、まずは、地域の定義というものと、どこを見るのかというところ、あと、科学技術による地域振興の難しさということは申し上げたいなと思っております。
 以上でございます。
【須藤主査】  ありがとうございました。
 それでは、加藤委員、お願いします。
【加藤委員】  静岡県でエムスクエア・ラボという、農業を軸とした事業をしています。ここに呼ばれたのは、我々の事業はどうもイノベーションだと言われてしまうので、多分いるのではないかなと思うのですけれども。事業を進めていく上で、我々は今、農業ロボットの開発とかというのを「アグリテック」と称して、地域に落としていこうと思って、活動しています。
 そのときに、我々の事業が何でうまく社会実装できたのか、アイデア、仮説から実証して、何で社会実装がそんなに早くできたのかということと、大学発の農業ロボットが一台たりとも社会実装されていない現状を、イノベーションのプロセスというのがあって、はめてみると、すごく如実に、どこがその要因、分かれ道なのかというのが分かります。要因、分かれ道は、チームなのです。研究開発が始まった時点で、社会実装するメンバーまでが初期的に集まっていないとうまくいかないというのが分かってきています。
 科学技術はとても大事で、研究開発をやめたら、10年後、ボディブローのように、その事業体に、次のビジネスモデルというか、進化が起きないものですから、とても大事で、それを止めちゃうから中小企業は止まっているという状況だと思うので、そこの意識改革も含めてなんですけど、チームを初っ端から、もう思い付いたところから、しっかり社会実装するチームになっているかということと、そのときに参画する人たちの、多少無理矢理参画させたとしても、そこに科学技術がやっぱり10年後、20年後に響いてくるんだという、その価値というか、それをきちっと中小企業さんに意識付けできる土台づくりもしないとよろしくないなというのを、地域で中小企業さんと取り組んでいて思います。
 もう一つだけ申し上げると、やっぱりイノベーションって変化なのですね。これ、多分行政さんと一番相性が悪いタイプの事業で、変わっていくことを許さないとイノベーションは起こらないので、どうやってそこの管理、もちろん、悪いことを起こしたくないのは皆さん共通していると思うのですけど、現状のルールを壊していかないといけない部分もあるものですから、そこのサポートを、法的なサポートも含めて、セットでやるからこそ、文科省が出てきてイノベーションを起こすサポートをするというところなのではないかなと思っています。
 以上です。
【須藤主査】  ありがとうございました。
 それでは、串岡委員、お願いします。
【串岡委員】  私は、実は、この3月までは広島県の職員ということで、比較的長く科学技術政策だとかイノベーション政策というのを担当してまいりました。この4月からは、広島大学で産学連携のお手伝いをするということで代わったわけですけれども、私が何をやってきたかというのを、御紹介も含めて、参考というのを2枚目に書いたのですけれども。
 私は、平成元年から科学技術、あるいは、イノベーションということをずっとやってまいりました。そういう職員は多分珍しいと思うのですけれども、平成元年に頭脳立地という計画を作って、今ある広島中央サイエンスパークの計画だとか、その中にある施設の計画を当時作ったものであります。当時は、まだ科学技術という言葉が地域の中ではほとんど浸透していなくて、その後、地域における科学技術活動の活性化というふうな答申も出て、いろんなお話を聞く中で、当時、権田先生という方がいらっしゃって、地域科学技術振興ということをずっとおっしゃっていたので、広島県でも当時、広島県科学技術振興会議というのを作って、科学技術の振興等を進める基盤づくりを当時ずっとやりました。ちょうど平成元年から8年ぐらいまでは、こういった科学技術振興とか、あるいは、それを支えるベンチャーキャピタル、当時はまだベンチャーキャピタルの法律、投資事業有限責任組合に係る法律はなかったのですけれども、民法組合でファンドを作ってというようなことも、平成8年ぐらいまでにやりました。産科研までできたのですけれども、余り長いのはどうだということで異動になって、一旦別の部門に回ったのですけれども、帰してくれというので、12年ぐらい前に帰りまして、ここ10年ぐらいは、科学技術・IT・イノベーション等の担当課長ということをずっとやってまいりました。
 追々またお話をしていきたいと思うのですが、1つの事例として、1枚めくっていただくと、私どもが支援をしてきたという1つの大学発ベンチャーの事例ですけれども、これは広島大学で初めてERATOに採択された吉里先生という方がいらっしゃって、是非これを支援したいと。実は、テクノプラザという施設を作るときに、他の地域ではERATO誘致というのがあって、なかなか地方ではなかったのですけれども、是非誘致をしたいと。そのERATOをめぐって、その後、今、生田室長から御紹介のあった地域結集とか知的クラスターというふうな事業を展開して、つなげていったわけですけれども、研究開発、もともと吉里先生、シーズはもっと前からあったのでしょうけれども、プロジェクトを平成4年から始めて、実際に会社ができたのが平成14年ですから、その懐妊期間で結構10年ぐらいあると。さらに、会社を作って、我々のファンドも投資しましたけれども、IPOをしたというのが28年ですから、14年ぐらい掛かっていると。非常に長い期間を要するような仕組みということで、これ、実は前後、私は関わっていたものですから、普通のファンドだと、もう回収しなければいけないという話もありましたけれども、財政当局に説明して、とにかく延ばしてもらって、やっと、私が退職する前なので、一応資金も回収したということが1つございます。こんなふうに、地域で取り組む場合に、どうしても懐妊期間の長い、息の長い取組というのが要るのかなというのを1つ思っています。
 次の絵もそうなのですけれども、実は、この広島中央サイエンスパークというのは、今こういうサイエンスパークができていますけれども、これはもともと県立農業短期大学の跡地ということだったですけれども、これを是非サイエンスパークにしたいということで、いろんな施設を誘致したり、新しい建物を作っていったわけですけれども、先ほどのフェニックスバイオという会社で言えば、このパーク内のテクノプラザという施設の中で始めて、産科研に移り、それから、いろいろこの中で懐妊期間を過ごして、右の上にある会社の建物、これも前、フォードの関連会社が撤退した後に、それを購入していただいたのですけれども、今は、この建物で、売上が10億を上回り、あるいは、従業員が50人を超えるような規模に育ったということで、非常に長い期間を要するということであります。
 なおかつ、1つ言っておくと、ここに広島大学イノベーションプラザというのがありますけれども、これは実は、もともとJSTのイノベーションプラザ、研究成果展開プラザということで出発しました。一旦廃止になったのですが、是非、この底地は県有地なので、広島大学に受け入れていただいて、そこでは、今、1階でOPERAというゲノム編集のプロジェクトが出ていますし、それに、今回、理研の施設も誘致できたということもありますので、とにかく息の長い取組が必要だなと思ってございます。それに基づく資金とか人材とか設備の話は、また今後していきたいと思います。
 以上でございます。
【須藤主査】  ありがとうございました。
 それでは、続きまして、德増先生、お願いします。
【德増委員】  德増でございます。私は資料はありませんので、お話だけです。
 私は地域イノベーションの方を5年間、いろんな形で関わらせていただきました。5年間で何かできたのかというと、非常に難しいなと思っておりまして、技術というのが地域にどう根付くんだろうというところから、5年前、いろんな形で考えたのですけれども。そんなことで、中で少し結果として厳しいなというのがありました。
 私が感じているところは2点ほどありまして、1つは、大学、この地域イノベーションの補助金の課題といいましょうか、これだけの話ではないのですけれども、全体的な課題として、やはり先ほど局長が言っていたように、金の切れ目が縁の切れ目というところが、結構このイノベーションの中でも感じておりました。やはり金がなくなると、どうしてももう次のステップに進んでいかない。終われば、もうそれで終わり。最終評価が終われば終わりというところで、次の歯車が動いていかなくなってしまう、そこでブレーキが掛かって止まってしまうという印象が非常に私どもはありました。
 特に、見ていると、これは余りどこと言わないのですけれども、研究者の研究費として、いい研究費を頂いたなんていう感じでやられている、そういう先生も結構いて、地域も結構あって、出口がなかなか見えなかったというところ、これが社会に出て、地域の産業として生きていけるかという、そういうものがなかなか見えてこなかったなというのが実はあります。これはあんまり言うと文科省に申し訳ないのですけれども、そんな印象を私は持っておりました。
 もう1つ大きいのは、やはりコーディネーターの問題が非常に大きいのかなという印象が結構ありました。今回の議論の中でも、コーディネーターというのはどういうふうにしたらいいのかという、そういう議論になるということでありますけれども、コーディネーターの存在というのは、どうも地域を引っ張っている存在というのが余り見られていない。どうも少し便利屋的な、資金の使い方をうまく回していく程度の話で、地域の技術を、地域の企業を掘り出して、先生なり大学との連携をきちっとやってくるという、そういう地域というのは割と少ないなというところが、何となく自分なりに思っておりました。今回、こういう新しい評価等の関係がありますので、それを私としては、踏まえて、ある程度やっていかなければいけないのではないかなという感じがしております。
 それと、いろいろやっていますけど、1つ大きく、先ほどの広域的なイノベーションといいましょうか、先ほどグルノーブルの話、地域というイメージを言っておられましたが、そういうイメージのところというのは日本に意外と少なくて、「グレーターどこどこイニシアティブ」というと、どうしても東京が中心になっていってしまう。地域でそういうところがなかなかできてこないというのが、どうも日本の何となく弱さが出ているのかなというのがありまして、地方で、これと言えばここだという、これは経済産業省のクラスターの最初の頃、それを狙ったのですけど、やはり地域の強さをどこで生かすか、どういう地域を生かして、地域を創り上げるかという、これについて、このクラスター、地域イノベーションを使っていくということは非常に大きいのかなという、そんな印象が残っておりまして、今回、いろいろ議論の中で、またその経験を少し生かさせてもらって、議論していきたいと思っています。
 以上です。
【須藤主査】  では、続いて、斉藤委員、お願いします。
【斉藤委員】  斉藤と申します。よろしくお願いいたします。
 簡単に自己紹介します。産業再生機構という官立民営組織に所属しており、その組織の解散後に、経営共創基盤という会社を産業再生機構COO等と共同で設立し12年経っています。会社設立後の私自身の取り組みとしては、企業再生からイノベーションへと大きくシフトさせています。現在は、大企業のオープンイノベーションのサポート、ベンチャー設立や支援、幾つかの助成金の委員などもさせていただいています。例えば、STARTの代表プロモーターもしています。
 また、弊社は傘下に東北のバス会社を8社保有しており、地方経済についても一定の関心を持っています。 
今回の審議のポイントとして、3点お話ししたいと思います。ひとつ目は、地域科学技術イノベーション政策の目的には、地域「発」と地域「着」という視点があるという点です。地域には地域固有の課題があります。それをイノベーションで解決しようとするのが地方「着」のイノベーション。地域にある大学などでの科学技術シーズからのイノベーションが地方「発」のイノベーション。この両方を明確に区別すること含めて、イノベーション政策の目的や達成目標、効果測定をクリアに設定することが重要なのではないかと考えています。
 イノベーションの定義は複数あるとしても、社会課題を解決し、産業的価値を生み、経済価値を残していくのが優れた科学技術イノベーションだと私は考えています。社会問題テーマは地域にかなりある。課題先進国である日本の地域から考える視点は、しっかり入れるべきだと思います。
 2つ目ですが、今まさに経済価値と申し上げましたが、長期的な目線で構わないので、経済性が見合うか否かが重要だと考えています。他の委員から「金の切れ目が、、、」との発言がありましたが、イノベーション施策を打ったときに、最終的に誰かが経済価値を作り、富の循環が起こる仕組みになっていく施策が重要であるとの考えです。そういう意味では、産学官連携に「金」の視点を入れる。金融機関が入っているか否かではなくて、経済性が成り立つ・経済価値の創出の循環がなされているか、という観点からの産学官「金」連携が大切だと感じています。全般的に科学技術政策はお金の匂いから遠い。「これをすると持続的にコトが起こり続ける。結果としてお金が廻る。」というシナリオが大切。「長期持続的に、経済価値(おカネ)を産み出していこう」というとのリアルな視点が抜けていることが多い。様々な地域クラスターがありますが、「金の匂いがしないです」とよく言ってくるのですが、最終的に経済的な活動に結び付かない活動は、まず持続的にはなりえないと私は考えていますので、2点目の視点として、「経済性」は重要であると感じています。
 3点目は国の役割。限られた資源を使う国の施策ですので、なるべく、これまでのやり方が通用していない、資本市場の原理ではうまくいってない、国際競争で国の介入がないと負けてしまうなど、「広義」の市場の失敗が起きているところにピンポイントで入っていくべきだと考えています。そのときに、できれば、他のプレーヤーではなく、国こそが梃子になるべきなのはどこなのだろうかを見極めたうえで集中的に支援すべきです。私が産業再生機構に所属していた時に感じていたことですが、あんまり長く国が介入し続けると、結局、自立しなくなり、持続性が担保されなくなる。ベースとして経済性が確保されるからこそ自立できるわけですが、そのゴールを見据えて、どこまで本当に国がてこを入れるべきなのかという視点が重要なのではないかと考えています。
私からの審議のポイントについて強調すべきと考えている視点はこの3点、すなわち、政策目標の視点、経済性の視点、国家介入の必要性の視点です。
【須藤主査】  ありがとうございました。
 続きまして、西村委員、お願いします。
【西村委員】  三重大学の西村と申します。
 資料3-4ということで、タイトルはこういう形なのですけれども、1枚めくっていただきますと、若干自己紹介と思いまして。さっき生田さんの方から、文部科学省の歴史のこととかあったのですけれども、私もその歴史と共に結構いろんなことをやってきたなと思って。すみません、小さくで申し訳ないんですけれども、私、もともと三重県出身で、三重県を出ていった人間です。こんな田舎だめだと思ってですね。今話題の神戸製鋼からいろんなところへ行って、最後は北海道でバイオベンチャーの社長をやってから、三重大学にたまたま縁があって入って、社会連携をずっと担当しています。もう12年、社会連携の責任者として動いています。
 北海道でも、実はクラスターマネージャーのようなこともやって、ベンチャー企業も北海道でやっていたので、北海道でやる産学官連携というものと、あと三重県というところでやる産学官連携、これも2つやったのだなと、ちょっと感慨深く見ていました。
 三重県、右下の方にすごくきれいな風景がありますけど、私の生まれた地域はここです。ここは、私が生まれたのは1965年なのですけれども、もうその頃から一気に人口が減って、今、高齢化率が全国自治体の17番目です。トップ17に入ったとか言って、町長は喜んでいるわけではないのですけれども。とにかく末端の、先ほど内島先生もおっしゃっていましたけれども、本当に端っこの方は悲惨な状況になっているよねというのはまず言いたかった。
 ただし、これ、逆にチャンスだなというのが、今、私たちが思っているところで、北海道でやっていたときは金がじゃぶじゃぶあったんですけれども、三重大学に来ると、金が全くないという状況で、1枚めくっていただいて、三重大学でやってきた中で、まずイノベーションという言葉があるんですけれども、私、これ、いまだに分からないです。いろんな方、使い方によって違うので、私見として書かせていただきましたけれども、今の日本の社会、背景に照らし合わせた再認識は必要ではないのかな。それで、先ほどの問題提起の中で、文部科学省さんの考えというのは、私は賛同するところです。
 あと、三重県で行っていると、さっき金の匂いがしないというお話もあったのですけれども、金の匂いがしなかったら企業は寄ってこないので、私たちのやっている産学官連携は、かなりリアルなお話、小さいことから大きなことまで、リアルな話が進んでいます。
 そうすると、科学技術といっても、革新的なものは余り三重大は作れないんですけれども、ただ、そういうものから誘発されてくる事例もあります。それ以外には、地域内で新しい結合、つまり、あんな田舎の方の疲弊したところでも、周りはがらっと変わっているんですね。でも、変わったというところに結合が生まれていないので、疲弊していると。でも、新しい結合をすると、ぽこんと跳ねるように出てくる、そんな事例があります。
 この後でもお話ししますけれども、そんなことをやろうということで、私が三重大に来て最初にやった仕事が、大学院を作ると。地域イノベーション学研究科というベタな大学院なのですが、左の方に、いろんな会社、いろんな地域がポテンシャルを持っている。ただ、そこに人が足りない、戦略が足りない、技術が足りない、これを特化して作る場所を作ろうということで、地域イノベーション学研究科を作ったというのが左下の図になります。
 私、3人の学長に仕えたのですけれども、その都度同じ職を拝命して、とにかく産学官連携、社会連携に関わる仕組みを作ってきて、今は大学全体を活用しながら、地域と連携するような仕組みを作りましたということです。また機会があれば、詳しくお話しします。
 また1枚めくっていただくと、私が一体何をやっているかということで、三重県というのは、北部と南部でものすごく状況が違います。南は、さっき見せたような写真で、何もないのですね。非常に自然が豊かな農林水産業地域です。北は、デンソーさんだとか、ホンダさんとか、三菱化学さん、いろんな大企業の主力工場があります。北部は、最近中小企業と話をすると、絶好調といつも言います。それぐらい、今、ものづくり系は、サポーティングインダストリーが結構いいです。ただし、南部はもう全くだめで、どんどん人が減っていっているという状況です。
 右の方に、今行っている2つのちょっとしたプロジェクトを書かせていただきました。実は、先週も生田さんとテレビ会議をしていたのですけど、私、エコシステムを昨年度採択していただいて、一応ここのプロデューサーを担当して、いろんな顔を持っているのですけれども。ここは三宅先生という三重大の工学部の先生で、深紫外LEDで結構画期的な技術を作ったので、そこを土台として、今、Lab Bというので開発を進めながら、Lab Cというのが、地域の産業界と一緒になって作ると。基礎、応用、事業展開、これを同時立ち上げして、一気に進めようということを今やっています。こういうふうに地域全体を巻き込むというのは、実は北海道でもやっていたのですけれども、登場人物が余りにも多いので、三重県でやると、これが非常に絞れるので、これでも動くなということです。
 時間が長くなって申し訳ないですけれど、下の方、これは地域をくっつけたというだけです。エネルギーをたくさん使っていて、熱が余っている辻製油という油の会社と、エネルギーが欲しい、つまり、熱が高くてどうしようもないというトマト農家をくっつけて、バイオマスでボイラーをたいていた辻製油という会社の横に、2ヘクタールの新しいトマト工場を作ったということです。右下のやつは、海外から入れてきた新しい品種で、全て外部導入です。全て外部導入だけれども、これを最適組合せして、この地域で一番いいものを作ろうといったときに、この周りはずっと田んぼだったんですけれども、田んぼのときに比べて、これは収益というんですか、反収が大体100倍になりました。3年前にオープンしたのですけれども、構想は2年です。ですから、まだ5年で、昨年度の売上からの利益率というのは、多分、1億円ぐらいの利益が出るぐらいの、日本で最ももうかる農業になると。だから、どんな田舎でも、組合せを変えて、知恵と工夫で結構いくのだなというのは、このとき思ったということです。
 最後に、最後のスライドで、Leapfroggingというのが、私、経済用語で最近ずっと気になっているんですけれども、何か飛び跳ねていくという感覚ですね。今までの延長上で物事を考えて何かをするのではなくて、イノベーションというのであれば、新たな新結合での富の創造をかなり革新的にいくというのであれば、地方ほど、もう一回今の時代を見直して、何が地域にあって、何が組み合わせていないかということを見ていくだけでも、私はいろんなことができるのかなと思っています。
 ですから、私見として書かせていただいた、地域における科学技術イノベーションというのは、「地域の強みから生み出される革新的技術が地域内で新たな融合を誘発することで生まれるような典型的な技術開発型のイノベーション」というのと、「地域内で革新的な組合せを新たに作ることでイノベーションをする、新結合による富の創造」というの、こういう形もあるのではないかと。こういった2つぐらいの性質を、その地域に合わせて考えていくという丁寧さが必要なのかなと思います。
 ですから、審議を進めるに当たっての視点と調べるべきことについてというのは、こんな事例を国内外しっかり調べませんかということと、それはなぜそうなったのかという鍵を見つけるということ、最終的には、各地域に一番何が合っているのだというのを一つ一つ丁寧に作っていくという作業。全国一律に効く政策は、もうあんまりないと思うのですよ。地域に任せながら、共通項は共通項、ただ、任せるところは任せる。そのときにどう見るかという丁寧さというのを考えていくといいのかなと思っています。
 すみません、長くなりました。私からは、以上になります。
【須藤主査】  ありがとうございました。
 続きまして、林委員です。
【林委員】   表紙の次のページの世界のイノベーションホットスポットという、この議論は、皆さんもよく御存じのとおり、イノベーションのグローバルインデックスを見ると、順番が出てきますけれども、日本は、残念ながら、かなり低い16位ぐらい。ここにあるイスラエル、スウェーデン、スイス、ドイツ、シンガポール、みんな日本よりも上位にいるわけですね。何でこういう地域にホットスポットができているかということで、話題提供で、幾つか例を持ってきました。
 北欧という国々、余り皆さん御存じないかもしれませんが、次のページに、デンマークとスウェーデンを例に出すと、デンマークで500~600万人、スウェーデンで1,000万人ですから、日本で言うと、地方の県の大きさに近いです。デンマークだと兵庫県ぐらいだって、デンマーク大使館の人が言っていましたから、そう考えると、地方自治体がリードする形でイノベーションが起こせないはずはないという、少なくともクリティカルマスは各地方にあるのだろうなということ。それを見ると、少し自信がつくというか、日本にいると、どうしても地方だけでできるのかとか、そんな小さな市場でできるのかなんて考えちゃいますけれども、意外とそうやってやっている人たちが日本よりもイノベーティブだよと言われていますよという現実を見た方がいいかなと思います。
 次のページ、これはストックホルムの北にある、ちょうど空港との間にあるKista Science City、これは1つのホットスポットの例ですけれども。ここは幾つか視察へ行った中の例を持ってきたのですけれども、やっぱりエリクソンという大企業の周りの、それをサポートするいろんな中小の企業が同じ地域にあって、大学がここにあってという、エコシステムを作り出しています。
 ただ、おもしろいのは、その次ですね。次のページに、ファウンデーションがあって、資金繰りどうするの、それから、イノベーションのやり方はどうやってコンサルしてあげようかというふうなサポートファンクション、これは自治体がやっていますし、銀行が入っていますし、それから、働く人はここで住んでいるので、でかいショッピングセンターがあったり、住む場所が結構近くで自転車で行けるなんていう、こういう環境がやっぱり必要なのかなという1つの例ですね。
 次の例、スイス連邦工科大学、これはチューリッヒの地方で、チューリッヒとローザンヌとまた全然雰囲気が違うのですけど、チューリッヒの例を持ってきました。このスイスの連邦工科大学って、予算が2,000億もあるといって仰天したのですけれども、何でというと、やはりスイスの企業さんからの寄附が非常に大きい。
 何でそんなに寄附をしてくれるのだろうかというと、次のページ、巨大な体育館くらいのサイズの研究施設の中で、3次元で実際の建築をロボットが作れるようにしようというのを1分の1のスケールでやっている。例えばクレーンとかロボットなど、こういった設備は、ABBなどの企業が全面的に協力している。こういう形で、実際新しいイノベーションをやっているのですが、こういうものすごく現実的な技術開発を大学が入り込んでやる。大学というと、日本だと何となく基礎的なサイエンスに近いことをやらなければ認められない、という一般的な認識がありますが、スイスなど今日ご紹介した各国の一流大学では産業が必要としている技術の基礎的な分野を協力しながら研究しているというのを実感しました。
 この大学はスタートアップ支援もかなり積極的で、次の例。企業と同じような、スタートアップを巻き込むような活動を学生相手にやっています。審査が通れば、1,500万円ぐらいの検討資金を提供して起業へチャンレンジするサポートをしています。
 その次のページ、これは1つのスタートアップの例で、CEOと話ができたのですけれども、大学で専門分野を卒業した後、GPSと光学認識技術の組み合わせで精密位置決めシステムの実用化についてこのプログラムの資金を獲得しました。実際、これはドローンの制御技術などに応用可能です。大学が企画するインダストリーイベントなどで航空会社とか、幾つかの調査会社がファンドを出そうかという話までいって、6か月で企業化したと言っていました。
 例を示しましたけれども、次のページがまとめですが、イノベーションのホットスポットは何かなというと、やっぱり人が集まりやすい、集まりたいなと思わせる雰囲気がある。有能な人材があって、資金がある。あるいは、裕福な市場が近くにある。それから、アントレプレナーシップがあって、それを支える環境がある、このようなイメージだと思うのですね。
 何か所か国外のイノベーションの現場を視察してきて重要だなと思うのは、やはり大学が産業に近い。基礎研究をやらなければいけないなんていうことよりも、この国、この地方自治体だったら、この産業に関しては絶対私たちができるという、フォーカスしてやっているのと、そういう産業用の技術をやっている大学をみんながリスペクトしている。これは日本で、何となく基礎研究をやっているのがトップで、応用をやっていると、できない人がやっているのではというふうなイメージ、これは全然ないという感覚ですね。
 あと、地方政府がとても影響力と実行能力を持っていて、産業に近い活動をリードしているということ。それから、学生をうまく使っている。大学と産業の間に、うまく学生、大学院生を使って、労働力として使うし、学生から見ても、その先の就職先を探すということでうまく回っています。
 広報活動が積極的で、ネットワークを作る、人を集めるのだという活動に重点を置いている、資金のサポートもその仕組みを作っている、というのも重要だと思います。先ほどのご意見のように、“金の匂いがする”というのはとっても大事だと思うので、そのメカニズムをどのように日本の地方でも作っていけるのを検討するのも大切だと思います。
 ただ、これは世界の例なので、日本にそのまま持ってきて使えるわけではない。この委員会で突っ込まなければいけないのは、片方でこういう例があるが、では日本の地方を考えたら、どこが取り柄で、どこは自分たちで作るのか、ここの議論かなと思います。
 ということで、よろしくお願いします。
【須藤主査】  では、松原委員、お願いします。
【松原委員】  タイトルは「科学技術イノベーションと地域との関係について」ということなのですけれども、私の専門分野は、経済地理学といいまして、産業の立地や地域経済の理論・実態・政策に関わってまいりました。地域イノベーション政策との関わりでは、2006年、先ほど紹介の中では、140億円、ピークの頃に関わらせていただいて、下り坂のところで、2013年のところで、東大出版会から、『日本のクラスター政策と地域イノベーション』という本を出させていただきました。欧米の研究などを見ていますと、非常に地域イノベーションというのは熱心に、政策的にも、あるいは、学術的にもいろいろ議論されているのですけれども、日本は予算も削減されてきて、これでいいのかなというような問題意識から、本にまとめさせていただいたりしております。
 時間も来ておりますので、今日は3つほど話をさせていただきます。
 図1は、これも説明すると時間が掛かるのですけれども、一番言いたい点というのは、地域の定義に関わって、私の専門的な見地からすると、一義的に地域は決まらないというか、地域は重層性で捉えていくべきだというふうなことを、この図では示しております。階層性と重層性と書かせていただきましたが、若干この2つの意味は違うのですけれども、その説明は時間がありませんけれども、L1とか書いてあるのは、日常生活圏的なもので、R1というのが地方ブロック、広域経済圏のようなところで、Nは国民経済で、今、国民経済を超えたような形で、ブロック化のような空間も出てきているかなと思います。
 それを作り出す力については、上の方に書いてあるのですけれども、特に地域イノベーションに関しては、知識とか技術、こういったようなもののフロー、地理的な流動というのがどういうような地域を創り出しているかというところに関心を持っております。
 次のところが、その地域イノベーションの地域の空間的なスケールと絡めて、少し模式的なものを示しています。地域の空間的なスケールが重層的であると言いながらも、ではどうやって決まってくるのかというのは、その知識の内容によって違うと考えています。サイエンス系というのは、大学が生み出すようなアカデミックなものというのは、もうインターネットを通じて、いろんな形でグローバルに知識が流れている。そういったようなものを相手にしているのは、旧七帝大を中心としたような、広域経済圏をベースにしたような、そんなようなサイエンス系のイノベーションかなと思っています。
 もう一方で、技術の話も少し先ほどしましたけれども、ものづくり系の産と学がかなり相互に暗黙知的なものを介していろいろやりとりするものについては、狭い地域でイノベーションが起きているということで、産業集積地域に、割合狭い地域の捉え方がここでは必要かと思っています。
 最近、もう一つ注目しているのは、都市集積地域ということで、街中、中心市街地の活性化も含めて、あるいは、東京ですと、東京駅前のあたりに、またベンチャー企業などの新しいイノベーションの動きがあって、そういう面では、都市の集積地域には、むしろ空間的な広がりというよりは、非常に狭い場所といったようなものが重要な、そのときその場所での感性、あるいは、ひらめき、こういったようなことから生まれてくるような世界もあるのかなと思っています。
 上の方は、政策的な課題を挙げているのですけど、時間がないので、また別の機会にさせていただければと思います。
 最後のスライドですけれども、科学技術イノベーションをどういうふうに進めていくかということで、事例研究からの示唆もいろいろ書いていますが、時間がないので、ここでは省略させていただきます。この図3の中で一番言いたい点というのは、産学官の三角形の真ん中に書かせていただいています。システムとして地域イノベーションを捉える必要が、あるいは、重要性があるのではないかと考えています。成功事例とか、あるいは、コーディネーター、人が大事であるとかというのは、それも重要だとは思っていますけれども、もう一つ、私の考え方としては、どこでも通用するような、そういったようなシステムとして、地域イノベーションを捉えていくこと、これが重要なのではないかと思っています。
 以上です。
【須藤主査】  それでは、続いて、三木委員、お願いします。
【三木主査代理】  今、松原委員の方からシステムの重要性のこと、お話ありましたけれども、根本的には、予算の切れ目がという話がその前にも何度もありましたが、システムが残らないという問題なのですね。システムが残らないのはなぜかということです。それは、お金が回る仕組みがないということ。ビジネスモデルが考えられていないということではないでしょうか。
 そもそも、科学技術イノベーションとは言いますけれども、先ほど西村委員が言われたように、地域発にも二通りあるという。1つは、科学技術発というのが当然あるわけですけれども、もう一つは、やはり地域にはいろんな課題があるのですね。課題発で、課題は不満、不便、不安とか、いろんなものから生まれます。いずれにしろ、「不」が付くのですよね。そういったものが「求められること」になります。科学技術側は、「やりたいこと」と「できること」を担うことになる。結局、「やりたいこと」「できること」「求められること」の3つがきちっと組み合わさらないと、ビジネスとしてキャッシュが回ることにはならないというふうに考えています。
 科学技術の、特にアーリーの段階のものからビジネスまでには時間が掛かる。先ほど広島大学の吉里先生のスタートアップのご紹介もありましたが、スタートアップでも、大学のサイエンスからのビジネス化には非常に時間が掛かります。片や、IT分野は非常に早く進みやすい。分野によっていろいろ特徴があります。
 一方、地域イノベーションを主体的にやるシステムをどういうふうに残すかということに特化して考えると、例えば、先ほどスイス連邦工科大の話とか、いろいろございましたが、諸外国では、“スタートアップスタジオ”っていうのもある。そこには起業家が参加し、シーズとニーズに基づいてビジネスモデルの検討をし、有望なものは育成する。“スタートアップスタジオ”は、アーリーステージの段階での投資もします。VCが投資するのは、もう少し後のVCラウンドのステージになってからです。アーリーステージで投資する“スタートアップスタジオ”は、株の時価総額が低いときに投資するので、成功時のリターンも大きくなる。そうしたビジネスモデルと機能をもっているから“スタートアップスタジオ”は継続的な活動ができる。
 多分、地域イノベーションをやっていく何らかの組織体、例えば、地域イノベーションセンターとか、地域イノベーションコンプレックスのような組織は、“スタートアップスタジオ”のようなビジネスモデルとファンクションを持たないといけないのではないでしょうか。アウトカムとして生まれる事業は、地域の不便、不満、不安を解消するものでもあるかもしれませんし、グローバルに展開するものかもしれません。どちらであれ、科学技術的な強み、知的財産も非常にしっかりしたものを持っているものがこの委員会の議論の対象でしょう。地域イノベーションに関する継続的な活動を担う組織は、“スタートアップスタジオ”とは少し違うビジネスモデルをもつものとなるでしょうが、何らかのビジネスモデルをもった絵を描く必要があるだろうと思います。
 地域イノベーションを起こす拠点になる法人組織を、自治体は民間と協力してでも作る気があるかということが問題となります。今はあまり多くはないだろうが、国が最初の段階でどの程度支援を出せるか、それによって地域を後押しできるかを考える必要があるかもしれません。国もある面で言うと投資をするということですよね。投資して、その投資がいずれ地域の方で回収できるようになるかどうか、システムとして残れるかどうか。そういうことを海外の事例とか、日本のいろんな事例を見ていると、強く感じています。
 従来の科学技術イノベーション施策は、ある面で言うと、いいシーズがあったからこれを育てれば新たな事業が生まれるといった、リニアモデル的なものだったと思います。実際のビジネスは、リーンスタートアップの考え方を取り入れることがポイントになるかもしれません。リニアモデルだけでうまくいく確率は非常に低いと考えています。
 そういうことも考えると、地域の過去の経験も踏まえて、地域が何をやりたいのかを知らないといけない。結局のところ、「やりたいこと」「できること」「求められること」の3つをどう調和しようとするのか、そしてそれを踏まえたうえで、国がどのような施策を打てるか、そういうことを検討していくことがいまの時点では大きな課題の1つではないか、と私は思っています。
【須藤主査】  ありがとうございました。
 1つだけちょっと気になったのは、先ほど生田さんが説明してくれたもので、地域科学イノベーション関係の予算ががーっと落ちていますよね。あれ、でも、もしかしたら間違っているかなという気がしたのですけど。あの地域科学イノベーション関係という括りが、文科省の括りかもしれないのですけど、でも、産地課でやっている、もっといろんなテーマも、今も皆さんの話を聞いていると、地域のイノベーションなのですよね。先ほど出た広島大でやっているOPERAも、あれは広島を中心として、周りの企業を巻き込んで社会変革を起こそうという、あれも立派な地域ですし、オープンイノベーション機構、これからやるやつも、もうまさにやり方によっては、地域のイノベーションのためにやるようなものですので、ちょっと発想を変えて、文科省のやっている施策、それから、内閣官房とか、経産省も入れると、それを全部地域という目で見てみると、予算って逆に増えていません? こんなのではないような気がしたので、実は、もっと右肩上がりに付いているのではないかなという気がしたので、もう少し整理をした方がいいかなと。
 最初の資料2-1でしたっけ、文科省の全体像をちょっと出してもらったのですけど、あれも全体でなくて、まだ抜けているのがいっぱいあるのですね。私が絡んでいるのも、入っていないのはいっぱいあるので、あれを全部足して、それをもう一回、ここの委員会用に、地域という目であれを見ると、とにかくお金はいっぱいあるのだ、あとはやり方次第なのだろうというふうに発想がいくような気がするので、まだ自分で計算していないので分からないのですけど、そんなことも少し期待があるので、余り悲観しないで、そういう方向に持っていった方がいいのではないかなという気がしました。
【生田室長】  分かりました。
【須藤主査】  ほかに何かありますか。あとお一人ぐらい、言い足りなかった分がある方は、是非。林さん、何かありそうな気がする。まだ言い足りなかったような。
【林委員】  私、芝浦工大にいますけれども、大学に来たのは2年も前ではないので、根っからの企業人で、デュポンというグローバルな材料会社におりました。ですから、そういう意味で、私の発言は、かなり日本のセンターとずれていることが多いかと思いますけど。だから、できるだけ私の役割として、外からの視点をお伝えしたいなと思っています。よろしくお願いします。
【須藤主査】  ありがとうございました。
 それでは、時間が来てしまいましたので、この辺で議論を終わりたいと思います。貴重な御意見、本当にありがとうございました。
 次回以降に、論点ごとに議論を少しまとめていただけると思いますので、また次回、この議論を参考に進めていきたいと思います。
 それでは、最後に、事務局から、今後の予定等についてお願いします。
【植原専門職】  資料3-3を御覧ください。
 次回の委員会の日程ですけれども、5月15日火曜日13時~15時を予定しております。場所は、本日と同じく、文部科学省15階特別会議室です。内容は、地域における科学技術イノベーションの取組の基本的方向性に関する審議を予定しております。その中で、科学技術・学術政策研究所や公益財団法人全日本地域研究交流協会などの関係機関からのヒアリングも予定しております。
 なお、第3回目、第4回目の日程は、資料3-3に書いてあるとおりです。第5回目以降の具体の日程につきましては、追って事務局から委員の皆様に御相談させていただいて、日程調整をさせていただきます。
 また、本日、串岡委員、林委員、松原委員の提出資料につきましては、後日、ホームページに掲載させていただきますので、一般傍聴の方は、またホームページを見ていただければと思います。
 以上です。
【須藤主査】  ありがとうございました。
 何かございますか。よろしいでしょうか。
 特にないようでしたら、第1回の委員会、これで終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。

― 了 ―

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