参考資料3 先端融合領域イノベーション創出拠点形成プログラムに係る全体戦略について

先端融合領域イノベーション創出拠点形成プログラムに係る全体戦略について


平成27年2月6日
文部科学省
科学技術・学術政策局
産業連携・地域支援課

 

 先端融合領域イノベーション創出拠点形成プログラム(以下「本プログラム」という。)は、平成18年に開始され、今年で9年目を迎える。本プログラムは、イノベーションの創出のために特に重要と考えられる先端的な融合領域において、企業とのマッチングにより、新産業の創出等の大きな社会・経済的インパクトのある成果を連続的に創出する拠点の形成を目指して進められてきた(別紙参照)。10年間の各長期プロジェクトが出口を迎えつつある中で改めて本プログラムについて現時点において今後取るべきと考えられる方向性を確認する。
 これにより、本プログラムの成果を最大化し、今後に引き継ぐとともに、本プログラムにより得られた産学連携に関するノウハウを今後の他のプログラムの実施にも活用することを考慮する。

(1)事業化
 終了段階が迫っており、各領域において着実に成果が出てきている。例えば、ナノ量子情報エレクトロニクス連携研究拠点(東京大学)の成果である通信用量子ドットレーザは既に市場への出荷が開始されている。各拠点は、今後も引き続き拠点において研究成果を事業化へ結び付けることが期待される。
 文部科学省は、大学発新産業創出拠点プロジェクト(START)など事業化を支援する制度を関係者に周知するなど適宜助言を行う。

(2)教訓事例の共有
 本プログラムを実施している各拠点では様々な産学の協働に関するグッド・プラクティスが生まれている。例えば、京都大学AK拠点では、拠点内に情報知財管理オフィスが設置されており研究ノートの一元管理を通じた効率的かつ精密な研究成果の管理により、大学に求められる自発的な研究活動と、営利企業である協働機関に求められる厳密な知財管理の両立が行われている。
 こうした教訓事例は当該拠点にのみ留めることなく、各拠点における成果報告会等を通じて成功事例・失敗事例の共有を促す。また、各拠点における取組を互いに紹介するなどして、それぞれの取組をより良いものとすることを目的としたイベントを27年度中に開催する予定である。

(3)拠点形成
 本プログラムの進捗に従って、拠点形成に異なるパターンが見出されるに至っている。
 例えば、知財の獲得が直に製品・サービスに結び付くビジネスモデルが想定される研究分野については大学と企業が1対1で協働するタイプの拠点あるいは少数の企業と大学とが協働するタイプの拠点が形成されている(京都大学CK拠点、京都大学AK拠点など)。
 他方、機械系分野のように、様々な要素技術、知財を組み合わせることで製品・サービスに結び付くというビジネスモデルが想定される研究分野については、多数の企業が参画し、研究の進展に応じて柔軟に参入することができるタイプの拠点が形成されている(大阪大学拠点など)。
 こうした、ビジネスモデルに応じた最適な拠点の形成という観点から、拠点形成、協働機関(企業)の活動状況を注視していく。
 なお、再審査・中間評価においても、協働機関の構成を注視しており、特にシーズ面では著しい成果を上げながらもその製品化を担うべき企業やハードウェア開発段階後におけるアプリケーション開発を担う企業などが欠落しているなど、協働機関の構成について見直しが必要な場合は協働機関の追加を助言する等のコメントを出している。

(4)人材
 各拠点は、本プログラム支援拠点に参画してきた学生・研究者の本プログラム終了後のキャリア形成を支援するべきである。そのためにも、各拠点は、各種イベントの機会を利用して本プログラムについて広報活動を行っていくとともに、各拠点は、本プログラムに携わった学生・研究者が本プログラム終了後どのようなキャリアパスを歩むかについて、フォローするよう努めていくべきである。

(5)本プログラムの総括
 本プログラムは大学と企業の組織対組織の産学連携の先駆的事例である。3年目に絞込みを目的として、創出されるイノベーションのインパクトの大きさ、その実現可能性、協働機関のコミットメントの大きさという観点で再審査を行ったことは、拠点に緊張感、責任感をもたらし、企業と大学が真剣に向き合う機会になった。
 また、本プログラムは、学長が研究総括者となって行う産学連携を支援するものであるが、本プログラムの実施を通じて、従来難しかった学内部局間連携にもつながっている様子が見受けられる。例えば、北海道大学、京都大学、神戸大学等では、学長直轄の拠点運営により、大学院の共通コースの設置が実現している。研究成果のみならず、そのような大学のシステム改革につながる要素も本プログラムの成果として評価できる。
 本プログラムでは、諮問委員会の設置を各拠点に義務付けているが、諮問委員会を通じたPDCAサイクルは重要な役割を果たしている。例えば、北海道大学、九州大学、横浜市立大学等の拠点においては、諮問委員が拠点内個別テーマの評価を行い、その結果を拠点内の戦略的な資源配分に活用しており、有効に機能していると評価できる。本プログラムで得られた産学連携の教訓を特定し、今後の産学連携に生かしていくため、本プログラムによる支援があったからこそ実現することができた成果を事後評価においても確認する。

(別紙)

平成18年公募要領より抜粋

1 目的
 長期的な観点からイノベーションの創出のために特に重要と考えられる先端的な融合領域において、産学官の協働により、次世代を担う研究者・技術者の育成を図りつつ、将来的な実用化を見据えた基礎的段階からの研究開発を行う拠点を形成する。

2 対象とする先端融合領域
 本プログラムで対象とする先端融合領域とは、従来の既存の分野、例えば、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー、ITといった技術領域のみでは対応できない研究分野であって、社会的、技術的課題の解決に向けて複数分野の研究者・技術者が一体となって取り組むべき領域のうち、10年から15年程度先を見越した際に今後我が国が世界を先導できる可能性が見込まれるとともに、概ね5年後までに核となる技術シーズが確立され、10年から15年後までに産業化・実用化につながる成果となって、企業による市場創生のための取組が本格化することが見込める領域とする。

(先端融合領域例)
・人にやさしい統合的医療システムを実現するための工学、医学、薬学、理学などの融合領域
・次世代生物生産・利用を実現するための農学と工学の融合領域・ナノ-量子技術とIT技術の融合領域
・ナノ-環境-エネルギーの融合領域・ナノ-バイオ-IT-認知科学の融合領域
・ITとロボット技術の融合領域(IRT)
・低消費基盤技術を創生するための材料からシステム階層までの融合領域
・光化学と生命科学の融合領域
※上記のような異なった学問領域の融合のほか、イノベーション実現のための複数の技術要素の垂直的な融合も含む。なお、これらはあくまで例示であり、これらの領域に関する提案が優先的に採択されるわけではない。

3 対象とする拠点化構想
 対象とする拠点化構想は、計画当初から企業と対等な立場での協働体制を構築する構想であって、以下の3点の内容をいずれも含むものとする。
(1)5年程度の比較的短期的な実用化を目指すのではなく、概ね10年~15年先を見通し、革新的な技術の開発並びに新産業の創出などの大きな社会・経済的なインパクトをもたらす可能性がある先端融合領域において、世界的な研究拠点を形成する。
(2)大学等と企業が、計画段階から対等の立場で連携し、将来的に我が国の経済・産業の国際競争力の強化に寄与するような成果をもたらすことを明確に意識した研究開発を実施する。
(3)領域におけるイノベーションを担うために、大学等と企業の双方の現場において必要とされる次世代の研究者・技術者等の人材育成を行う。

4 拠点化構想の要件
 3で示した拠点化構想の実施に当たっては、以下の5点の要件をいずれも満たすこととする。
(1)提案する先端融合領域における研究開発が、どのようなイノベーションにつながるのか、応用可能性を目指したものであるかについて、明確なビジョンを有していること。
(2)初期段階から大学等と企業が対等に連携することを原則とし、企業からの研究資源の提供などの負担面について明確なコミットメントを得ているものであること。
(3)イノベーションを指向した目標達成型の研究開発システムを形成していくため、企業が研究資源を出しやすい特別の規則(知的財産の取扱い規則や機密保持規則等)を設けるなど、これまでの現状を打破するシステムの改革をあわせて行うこと。
(4)人材の流動化策(現給保障制度や能力給制度等)の導入や若手、女性、外国人等を積極的に登用するなど、機関や学問領域を越えて、先端融合領域を担う優秀な人材を育成するものであること。
(5)研究者は原則として国際公募するものとし、優れた外国人研究者の受入れを積極的に図るなど、当該領域における国際的に優れた研究開発拠点を形成するものであること。

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