産業連携・地域支援部会 競争力強化に向けた大学知的資産マネジメント検討委員会(第4回) 議事録

1.日時

平成27年6月26日(金曜日)13時30分~16時30分

2.場所

文部科学省 東館 15F特別会議室

3.議題

  1. 知的資産マネジメントと産学官連携の推進
  2. 第1次提言(案)について
  3. その他

4.出席者

委員

橋本主査、三木主査代理、青木委員、上野山委員、上山委員、魚崎委員、岡島委員、川端委員、國井委員、國吉委員、島崎委員、進藤委員、菅委員、永野委員、西村委員、松本委員、渡部委員

文部科学省

川上科学技術・学術政策局長、岸本科学技術・学術政策局次長、伊藤政策評価審議官、浅田総務課長、村田科学技術・学術総括官、松尾振興企画課長、山下大学技術移転推進室長、神田地域支援企画官、吉田国立大学法人支援課企画官、西島大学技術移転推進室長補佐、小河大学技術移転推進室専門官、江間大学技術移転推進室企画調査係長

5.議事録

【橋本主査】    では、ただいまから科学技術・学術審議会、競争力強化に向けた大学知的資産マネジメント検討委員会の4回目を開催します。お忙しい中お集まりいただきまして、どうもありがとうございます。
では、最初に、配付資料の確認を事務局からお願いします。

【西島室長補佐】    はい。配付資料の確認をさせていただきます。まず、本日の議事次第が1枚ございます。それから、資料番号1、岡島委員によります「産学連携の取組と今後の在り方について」。続きまして、資料2、上野山委員によります「パナソニックにおける産学連携について」。資料3、松本委員によります「価値創造型産学連携オープン・イノベーションで切り拓く新事業創造」。それから、資料4、岸本次長によります「本格的産学連携の推進に向けて」。資料5、「第3回検討委員会で提起されたポイント」。資料6、「未来志向の大学知的資産マネジメントの実現に向けて第1次提言(案)」。それから、机上資料としまして、前回と同じように紙ファイルにとじられました3回までの資料が机上に置いてあります。また、回収資料という資料も付けております。
  皆様、資料ございますでしょうか。もしなければ、委員会の途中でも結構でございますので、事務局までお申し付けください。
  以上でございます。

【橋本主査】    はい、よろしいでしょうか。
  では、早速、審議を進めていきたいと思います。
  前回の検討委員会では、知的資産マネジメントと産学官連携の推進について3名の委員からプレゼンテーションをしていただき、第1次提言に向けて議論をしました。本日は、岡島委員、上野山委員、松本委員、3名の産業界からの委員と、岸本次長にプレゼンテーションをしていただいて、その上で御議論いただきたいと思います。そこで60分時間をとっております。その後、第1次提言(案)がきょう出ておりますので、それについて更に60分御議論いただくというスケジュールになっています。
  今、政府、特に文科省から大学改革に絡んだことの提言書が出ておりまして、一昨日も振興企画課から競争的資金改革に関する案が出ました。その前の週には高等局の方から運営費交付金に関することが出ました。いずれも研究費とか運営費とかそういうことに絡んだことでありまして、私の頭の中では、今回の本委員会で予定している提言(案)もその三部作のひとつと思っていまして、できるだけ早くこれを世の中に出して、それで文科省以外の他省庁と産業界とも議論したいと思っています。実はこの午前中に、経団連に行って、経団連の副会長3名の方とそういうようなことで少し意見交換をしてきたのですが、産業界の方も大変注目をしてくれているときなので、こういうタイミングに向けて出していくことが大変重要だと思います。是非きょうも、詰めた議論をしていただければと思っております。
  では、議題1の知的資産マネジメントと産学官連携の推進についての審議を進めていきたいと思います。
  まず、岡島委員にプレゼンを頂きます。

【橋本主査】    それでは、岡島委員、よろしくお願いします。

【岡島委員】    トヨタ自動車、岡島です。時間が限られているので、かいつまんで説明したいと思います。
  弊社は、21世紀の社会ビジョンということで大きくビジョンを掲げて、具体的に商品に結び付けるべく先端研究もそれぞれ取り組んでおります。
  3ページを見ていただくと、トヨタ自動車における新製品開発の流れというのがあります。皆さん、トヨタ自動車、研究開発費幾ら使っているって、1億円弱使っているんですけど、大部分は新製品開発、次のモデルの開発というのが大部分であります。もっともっと上流のところで部品モジュールの開発というのを先行的に行っているのもあって、そこに新たなものを打ち込んでいくというのが先端研究、赤丸で囲んであるところ。ここは基本・基礎研究であり、産学連携をベースとして行っているものであります。
  4ページを開いていただくと、先ほど口頭で予算幾らぐらいですかというのを公表ベースで示してあります。先端研究は、全体研究開発費の大体100分の1、2ですね。
  5ページ目、先端研究の狙い・位置付けなんですけれども、従来の例えばエンジンの効率をどんどん上げていきましょうとか、フリクション下げていきましょう、空力を向上していきましょうというのは、従来技術を研ぎ澄ましていくんですが、従来技術には必ず壁があります。原理的な壁があります。もっといいものを創ろうと思うと、新しいアプローチをしないといけないと。全く新しいアプローチをとるためには原理とか物質とかというところから取り組む必要があって、ここにサイエンスによるブレークスルーというのを期待しております。ここのオレンジの部分というのが産学連携で取り組むべき対象というふうに考えております。
  もう一つ、6ページ目、「出口を見据えた」というのを最近よく言われるんですが、弊社は企業でありますので、当然、製品に向けて研究開発を行います。基礎研究においても、何のために使うかというのを必ず置いて探索研究・基盤研究というのを行っております。細かい話はあんまりしてもしようがないんですけれども、先端研究といっても、必ずマイルストーン、目標値を設定しまして、ステージゲート、フェーズアップというのをしっかり見ております。一方で、探索・基盤研究というのは、新しい種をまいて芽を育てるというか、いいものを見つけるということなので、ここについてはもうどんなことでも好きなことをやっていいと。ただし、最長3年ということで区切っております。
  7ページ目、企業のやるべきこと、産学連携によって一番重要なことというのは、研究課題を発信することが重要であると考えております。弊社は、共同研究公募というのを弊社のホームページを通じて、あるいは各大学・研究機関に、こういう公募をやりますよというような案内を送らせていただいております。これによって産学連携、細かいテーマになりますけれども、募集をして共同研究の入り口をするということなんですけれども、実はここで重要なのは、丸投げをするのではないということです。前ページのロードマップを見ていただくと、ある目的を達成するために幾つも課題がありまして、この課題をばらしていって、できるだけ学術領域に近いところまで因数分解をして、そこの部分で募集をすると。もう一つの狙いは、例えば電池の研究をやっている人たちというのは、電池の学会に行けば分かる。我々が欲しているのはそれ以外の近接する分野とか近いところをやっている人たち、あるいは全然違うところの知見でもいいんですけれども、役に立てることが重要なので、先ほど申し上げましたが、できるだけサイエンスの人たちに分かる言葉に分解をして出すということをやっております。
  8ページ目、せんだって、個々の研究、先生と先生の研究から組織的研究というお話を申し上げました。2008年に弊社は電池の研究部というのを新たに立ち上げました。それまでは製品のところで、例えばパナソニックさんとどういうふうに電池を使いこなしていくかという開発はやっていたんですけれども、新しい電池の研究というのはほとんどやっていませんでした。ここで立ち上げをしまして、その要素を分解した個別の研究をいろんな大学とやるとともに、組織的な連携として物質・材料研究機構さんと組織的な連携、NIMS-トヨタ材料センターというものを創ったりとか、電池でしたので京都大学に寄附講座を創ったりというようなことをやって、網羅的に世の中の知恵・技術を取り込んでいきたいというふうに積極的に行っております。一番上に書いてありますけれども、共同研究を通じて外部の知を取り込んで、自らの技術とするというのが基本理念であります。M&Aや技術買いではありませんということですね。
  9ページ目、グローバルどうですかということで、ここで言いたいのは、各地域、各研究機関の強いところを生かして、その分野で研究を連携して行うということを申し上げたいと思っております。
  10ページ目、細かく幾つか組織的な連携を行っております。右下に冒頭出しました研究領域マップ、弊社では曼陀羅って言っていますけど、その中でできるだけ満遍なくいろんなところと組織的な連携とか、あるいは国等というところで網羅的に産学連携を行っていると。これに対しても、やっぱり各研究機関の強いところを生かして連携を行っているということであります。
  11ページ目、ちょっとお金の話をしたいと思います。共同研究費と寄附金の比較をしております。過去4年間の大学・研究機関との共同研究の費用と件数、費用はちょっと軸の数字を抜いてあります。大体、共同研究費で言うと平均が1,000万弱ぐらいですかね。寄附が実はそれの10分の1ぐらいの件数、平均、ならすとこんな件数となっております。基本的に寄附というのは、弊社で言うと社会貢献部の管轄になりまして、見返りを求めないというものになっております。
  寄附金の内訳というのが、研究と直接関係ない使われ方というか、お願いというのがされています。弊社でも、今現時点で二つ寄附講座、残念ながらたった二つしかございません。研究目的の研究支援の寄附金というのは大変少数であります。
  企業の目利きによって、連携をして更に強みを伸ばしたいという特定の研究領域を支援する寄附金を増やした方がいいのではないかということを提言したいと思います。また、これをやるに当たっては、寄附税制の改革というものが我々にとってそれの後押しになってくれるのではないかと考えています。現時点、寄附というのは、特定団体の寄附、国公立大学とか、あるいは私立の大学でも提示すればそうなんですけれども、100%損金算入できるということなんですが、残念ながらこれだけではやっぱり見返りが得られないというものである。あるいは、大学へ寄附するということは、最後のディスカッション・トピックスにも書きましたけれども、実質税金の支出と同じ、寄附金は税金の前払と同じようにみなしていただけるということであれば、法人税の税額控除に変更していただけるのが有り難いと考えております。
  最後に、ディスカッション・トピックス、まとめなんですけれども、大学への期待というのはブレークスルーのための基礎研究ですと。2番目、特定の大学は強みを伸ばして、産業との連携を強化すべきですと。満遍なくではなくて、強みを伸ばすべきだと。そのためにはやっぱり学長・総長のリーダーシップを強化する必要があって、それには予算、人事権を強化することが必要なのではないか。これ、参考までに、13年の経団連のところでもそういうお話をしております。それから3番目、企業から資金を増やす努力をすると。受託研究、共同研究、寄附なんですけれども、1番目、企業が組織的連携を組みたくなる体制、仕組みというのが必要なのではないかと。2番目、間接経費なんですけれども、使途を明確にしていただければちゃんとお支払いすると。我々が応援する、あるいは増強したいという研究領域を伸ばすように使っていただけると有り難いなと。3番目、これから、弊社は寄附というのは余り積極的に行っておりませんでしたが、やはり特定の強みを伸ばすために寄附というのは行っていきたいというふうに、最近、社会貢献部とも議論しております。是非税制の改革を併せてお願いしたいと思います。
  以上です。

【橋本主査】    はい、ありがとうございます。御質問もあるかと思いますが、後からまとめてお願いしたいと思います。
  では、続きまして、上野山委員お願いします。

【上野山委員】    それでは、パナソニックの産学連携についてお話ししたいと思います。
  1ページをお願いします。この図は約15年間の産学連携の費用の増減を表したものです。2003年以前、その緑の部分ですが、1990年代もほぼ同様の傾向で個別研究プラス寄附というのがメインの活動でした。企業としては、200万とか100万/件で、寄附はたった20万とか、よくても50万ぐらいのお付き合いの対応でした。
  2003年以降のフェーズ2では、これでは駄目だということで、組織連携でやっていこうと、社内にも産学連携センターという部門を創り、また大学の中にもそういう部門がありましたので、その部門同士で包括的に契約することにしました。例えば東京大、京都大、大阪大、東京工業大と包括提携しました。当時は社内の研究部門の課題がメインでしたが、事業部門の課題も含めて大学側に持ちこみ、大学の中でこの指とまれ方式で進めていただき、どのように解決できるか話し合いながらお互いに高い目標を掲げ進めました。その場合には大学側からポスドクが必要であればその経費を加えていただきました。そのための費用が1,000万円を超えるものでも始めました。結構これはうまくいったと思います。事業になったものもありますし、事業にならなかったものもありますが、それはそれで派生効果が得られました。
  6年ぐらい続けますと2010年ぐらいですかね、大学にお願いできる企業側の課題も枯渇し、お互いに今後のテーマを討議し始めました。例えば大学の先生と弊社の研究者が合宿して、2日間かけて議論したこともあります。ただ、なかなか難しかったようです。ちょうどHowからWhatが要求される時代でしたので。ですから、見掛け上は一定のように見えますが実質は大学関係だけ見ますと少しダウンしているというのが実態です。ちょうどその頃ですかね、R&D会社とか、大学でも例えばスタンフォード大学とかの企業を何件か巻き込んでコンソーシアムの提案が結構ありまして、そちらに参画するようになりました。そこにありますimecはR&D会社で半導体の研究に使いました。
  次のページに、その組織連携の進め方を簡単にまとめています。まず上層部で方向性を決め、パナソニックですとCTO、大学は学長か副学長が大枠の内容を決めて、次にお互いの産学連携担当部門が話し合って、どういう形で進めていくかを決めます。あとは現場同士で具体的な内容を決めて進めてまいりました。繰り返しですが、大学と共通の高い目標を掲げたのですが、これが思った以上にうまくいきました。これは大学の先生は保守的ではなく、挑戦的で無理難題な課題にも果敢に挑戦していただいたからだと思います。一つ例を挙げますと、東京工業大の先生とはADコンバータの設計の共同研究を行い、本当に商品にまでつながりました。費用もそれなりにお支払いしたと思います。
  次のページにこれまでのことをまとめました。フェーズ1は、繰り返しですが、残念ながらお付き合いの時代でした。フェーズ2では寄附金を抑えて、大学と企業が真剣勝負で高い目標を共有化して進め、それなりの成果は出るということが分かりました。ですから、大学には十分ポテンシャルがあるということです。ただ、フェーズ3では、弊社の場合は分野がとても広いせいか、次の研究テーマの創出に時間がかかり、大学側からのコンソーシアムなどの提案に参画する方向に移っていきました。基礎研究でも企業では出口に結び付ける必要があります。ですから大学でも基礎研究と出口をつなげられるような、例えばDARPAのPMのような人が大学側にいれば、うまく運営できるのではと感じました。
  次の4ページに大学発のコンソーシアムの例を示します。この6月の初めに私も見学したのですが、スタンフォードのCARSという車の自動運転がメインテーマのコンソーシアムです。三つの部分、「車両制御」、「インターフェース」、「環境認識」のサブテーマを掲げ募集しました。現在、30社ぐらいのメーカーさんが参画して活動しています。運営費としては、入会費と共同研究費からなっています。入会費は3.2万ドル程度で、それは研究開発に使われるものではなく単なる参加費用です。それから更に研究する場合には共同研究の費用をお支払いするというような形式です。またスタンフォード大では学内の様々な建物が寄附でされています。こちらのCARSの開発現場の建物も、フォルクスワーゲンやアウディが寄附されたものです。しかし、どの会社も使わせていただける状況です。確かに自動運転がテーマですと、例えば事故の際のレギュレーションとか法律など1社ではなかなか対応できない部分があり、競業他社との共同でもそう問題にならないということです。逆に一緒に行った方が得するという面もあると感じました。ただ、ここでの共同研究の成果はオープンです。オープンですが、各メーカーさんはその技術を持ち帰り、自社の技術やIPを付加して製品化するようになっています。ですから、こういう基礎研究でもなかなか1社では難しいような内容の提案があれば、それなりの数の会社が参画でき、それなりの金額は集められるかと思います。
  最後に、R&Dの会社の説明をします。弊社では10年以上お付き合いしている半導体のコンソーシアムのR&D会社imecや、最近ではフランスのLETIという研究機関があります。imecとは自社で半導体の研究部門をやめてから共同研究を始め、そこでできた技術の事業化は自社で行うという形をとってまいりました。imecは元はルーベン大学の先生がファウンダーで始められ、現状は1,600名ぐらいから2,000名ぐらいの従業員数です。国からは40%程度の補助で、あとは自前で自活されているということです。ここの特徴は、材料メーカー、装置メーカー、もちろん我々のようなデバイスとかシステムを創るメーカーを全部巻き込んだエコシステムを構築していることです。CMOSの微細加工と無線技術をコアにして実現しています。ただ、ここでも、自分たちのオリジナルの路線の技術開発は持っていまして、常にクライアントに提案していくということをされています。それを我々は聞きながら、その提案に対してここを変えてほしいとか要望を出しながら進めていくという内容で行っています。ですから、やはりテーマ提案されてくるというところに、企業としては、参画しやすいところが十分にあるかなと思います。それと同時に、我々クライアントの要望に対しては絶対にこたえようという姿勢が表れています。もし大学が大部分の費用を企業から賄おうとすれば、これぐらいの姿勢が必要になるかもしれません。以上で終わります。

【橋本主査】    はい、どうもありがとうございました。
  では、続きまして、松本委員からお願いします。

【松本委員】    はい。先ほどのグローバルな2社と違いまして、我々はローカルな地方のガス会社ですけれど、どういうことをやっているか。資料が多いため、少しはしょりながら進めたいと思います。
  1ページ目はもうめくっていただいて、2枚目の3ページ目ですね。3ページ目ですけれども、ちょっと自己紹介です。私、若い頃、凍結粉砕の開発をしまして、それを使った受託粉砕ビジネスを立ち上げて、今も続いておりまして、このときに大変お世話になった大阪の大学の粉砕関係の研究室、もう30年、我々、関係が続いておりまして、今も研究指導をしています。定期的にプロジェクトが発進するという、昨年度はサブミクロンの粉砕機の開発のプロジェクトが発進しました。30年、同じ研究室。先生、代が替わっております。我々も担当者が替わっています。でも、続いているというのが左側です。右側は、その後、ガス漏れ警報機の誤報対策のプロジェクトに入りまして、私、実は化学は専門ではないので、外部の先生に来ていただいて、5年間、川合真紀先生に来ていただいて御指導いただきました。川合先生のおかげで表面サイエンスというのが我々の研究所に根付きまして、そういう川合先生の御指導の下に触媒の研究者、これは燃料電池の触媒を作ったり、センサー、機能性材料、研究者が先生のおかげで育ったということです。私自身は、ケミカルセンサーの薄膜化に成功しまして、ロシアの科学アカデミーにも採用されたと。私はこの事業化、在任の間は成功しなかったんですが、後輩が大変優秀でして、ようやく昨年、世界初のコードレス警報機の、やっぱり薄膜化することで省電力になったんですね。大学の先生に企業に来ていただくということは大変刺激になります。
  次のページですけれども、裏、4ページですけれども、その後、私どものCTOから「大阪ガスの研究者は自慢ばっかりして、それがイノベーションにつながっていない。イノベーションの成功確率は低い。教育が大事だ。おまえ、教育を何か考えろ」ということで、当時、2002年、海外で進んでMOT教育が大事だということで、企業内大学を創る予定だったんですけれども、いろんなマネジメント系の先生方から、多様なパートナー、多様な異分野の方が集まって議論するような場を創りなさいということで、一気にこれをビジネスにしました。MOTの教育ビジネス、スクール、研修ですね。本当に全国10校創る予定で伸びていたんですけれども、2008年8月末にいきなり本社に呼び戻されて、「他社のイノベーターを育成している場合じゃない」ということですね。「ガス業界イノベーション起こらへんのに、おまえ、何やっとるんや」ってえらい怒られてですね。もっと事業を拡大していたんです。利益率が20%と非常に高かったんですけど、戻されて、無念の思いで今の技術戦略部に戻って、次のページ、5ページ、であれば、オープンイノベーションだということで、オープンイノベーションを2008年9月から仕組みづくりを創って、2009年4月から具体的なニーズの公開に踏み切りました。成果が出たのでオープン・イノベーション室ができていろいろやっております。
  次のページ、6ページで、裏ですけれども、実は私のオープンイノベーションのバイブルはチェスブロウではなくて、クスマノという方、これは我々のMOTスクールのバイブルにしていた先生なんですけれども、彼は2002年、「日本こそオープンイノベーションをやるべきだ。内製ではスピードが遅過ぎる、投資リスクが高い。M&A、事業買収はスピードは大半速いんだけれども、やはりリスクが高いし、日本の企業は下手くそだ。両方に対応できる戦略的提携こそ日本の企業はやるべきだ」と。ただ、丸ごと内製とか丸ごと買ってくるってそんな生易しいものではなくて、例えば燃料電池なんかでしたら1万点、10万点のモジュールがあるわけですね。それを1個1個、何を内部でやるのか、何を外に出すかと、これを決めないとできた製品の競争力は失ってしまうということで、右側ですね。オープン・イノベーション室に各部門から探索依頼があります。探索依頼があったら飛んでいって、研究者、技術者と議論をして、本当にそれを外に求めるべきなのか、自分たちでやりたいものこそ外に求めるべきじゃないか、外に求めるというものこそ大阪ガスのコア技術が活用できるんじゃないか、それと従来のパートナーとの共同開発を進める、この三つの複雑なすみ分けをやります。これをやって成功したのが燃料電池でございまして、最初の燃料電池はコア技術、触媒、天然ガスから水素を作る、改質器は大阪ガスのコア技術をしっかり使うと。それ以外は、1万点、10万点、外部に仕様まで公開して、いろんな多様な技術をかき集めて、PFCタイプは成功したと。ただ、PFCタイプでは発電効率が上がらないので、その後、京セラさんとの共同開発、SOFCの開発をやっていました。ただ、京セラさんと大阪ガスではないものが多いんですね。オープンイノベーション型に変えようということで、2年前にトヨタアイシンさん、入っていただいて、4社体制を組んで、世界最高効率46.5、今も最高効率ですけれども、これを1年半後には50%以上の発電効率を目指すということで、まだないものが多いので、緊急対策を燃料電池の部隊から、私、依頼を受けて、もう日本中、世界中回って、本当に1年半後に商品化が間に合うのかとせっぱ詰まった状況であります。
  次のページの7ページが我々の推進方法です。簡単な図です。とにかく徹底した技術のオープン化。技術ニーズの公開。昨年から保有する技術の公開にも踏み切ってですね。実は、我々、直接研究者を見て回るというのはなかなか難しいので、間に入るイノベーション・エージェント、こういった方々との連携でもって我々のコア技術と融合させて研究開発を加速するというやり方をやっています。
  次の裏、8ページ目、したがいまして、大学も、直接大学の先生方を回るというのは難しいので、オープン・イノベーション室は、エージェント役、産学連携のコーディネーター。ベンチャーも、ベンチャーキャピタル、ファンド会社。中小企業も、支援機関、コーディネーター。大手だけは個別の連携ですけれども、最近、大手企業、オープンイノベーションの専門部隊を創るところが大変増えております。恐らくこの1年で100社超えていると思います。それができればそういったところとの連携ができると。海外も、仲介会社、エージェント役ですね。
  次のページ、9ページ目が我々の内部の仕組みでございますけれども、各部門から探索依頼をもらって、プレ調査します。プレ調査の目的は大体シーズの魚群を探すと。魚群さえ見つかれば、魚群に強いエージェント役に探索をお願いする。我々が探しているセンサーをどうもイスラエルのベンチャーが持っていそうであれば、イスラエルのベンチャーの技術移転会社何社か存じ上げていますし、在日のイスラエルの大使館の方もよく来られます。大阪ガスのニーズを教えてほしいと。そういった方々に探索をお願いする。つまり、内部のエージェントと外部のエージェントの人的ネットワークでもって交渉するというやり方です。
  次の裏面、10ページですけれども、6年間やりまして、成果としてはこういうのが出ております。350億円をオープン・イノベーション室を通じて外部にニーズを公開して、3,500件の提案を見て、活用が157件。活用157件のうち17件が大学との新しい共同研究・共同開発でございます。
  次のページが11ページ、これは京都大学さんとだけはちょっと特殊なやり方です。包括的連携協定書。これは何かというと、テーマは決まっていません。一緒に努力して新しいテーマを発掘しましょうというような協定書なんですね。第1号が宇治のエコキャンパスということで実証が始まっております。我々、興味のある領域を提示して、それに関係ある京都大学さんの研究者に何人か来ていただいて、我々のスペシャリストと徹底的に議論をしながらテーマ発掘をやるというようなやり方でもってテーマ創出をやっているということで、これをできればいろいろ展開したいと。
  裏面が、12ページ目が、我々オープン・イノベーション室は徹底した調査をやります。特許分析から技術調査。魚群が分からないものはグローバルな網の目をかける。国内日本網の目をかけるということをやっているのが右側でございます。実は昨年度は、低温排熱利用とか画期的な蓄熱材とか革新的なエネルギー変換技術、かなり永遠の課題をグローバルに探索したんですけれども、32件、20件、20件と提案があって、国内の大学からはゼロでございます、残念ながら。過去の成果としては、オランダの熱エレメントを使って3分の1のコンパクト化に成功したという例もございます。
  次のページが昨年度でございますけど、昨年度は特徴的には大学からの提案が非常に増えました。ベンチャーからの提案も非常に増えました。これは、ニーズの中に新しいテーマを創るというニーズが非常に増えていたというものです。それと、大学から増えたのは、実は前回の審議会でも言いましたけれども、岡山大学さんが中国エリアをまとめ切ったんですね。中国エリアの全部の大学のコーディネーター、産学連携の方を集めていただいたので、そこでニーズ説明会をやったおかげで実はかなりの提案があったと。岡山大学さんとも新しい共同研究ができましたし、広島大学さんは7件ぐらいの御提案を頂いて、1日かけて七つの研究室をざっと回らせていただきました。それで増えたというところが昨年度の特徴でございます。
  裏面、今年は、真ん中の既にスタートしているテーマの加速だけではなくて、左側の新しいテーマを創るということでもオープンイノベーションを活用しようと。右側の新しい事業を創る、事業アライアンス先を開拓するだけではなくて、我々の保有する技術を外に出して新しい用途を見つけるということをやりたいと。アンゾフのマトリックスでいうと、今までは左下中心だったんですけれども、今年から左上、新しいテーマを創る、右下、保有する技術のビジネス化、ラディカルイノベーション、破壊的イノベーションをやっていきたいということです。
  ちょっと面白いイベントをやりまして、次のページの15ページ目です。これは、我々が興味のある新規テーマに資するようなお題を、銀行さんを通じて銀行が支援している200社のベンチャーに募集していただいて、提案を受け付けて、15社を選んでベンチャーピッチをやりました。そこに、我々は毎年、新規テーマワーキングというのをやっているんですね。新しいテーマをする横断的なワーキングのメンバーに聞いていただいて、ベンチャーの社長と議論していただく。15社から5社が実はつながっているんです。これを大学でもできればやりたいと思っております。
  次のページが16ページ目、これは大阪ガスの技術を外に出す。技術をそのまま売るというのはもうほとんど不可能です。特許を売るというのもなかなか難しいです。つまり、新しい用途を見つける。エコミセルは、空調ではかなり導入されていますけれども、こういう添加剤を創生するノウハウって大阪ガスにはあるんですね。この研究を自動車用、いろんなところに展開することによって、こんな添加剤ができたらきっとこんなニーズに対応できるんじゃないかという異分野と議論しながらニーズの発見をして、R&Dをやって市場に持っていくというようなやり方をオープン・イノベーション室が仲介としてやっております。
  次のページ17ページ目が、価値創造型のオープンイノベーション。活性炭は、今大阪ガスグループは世界第3位ですけれども、もとをただせば吸着剤は東京のある講師クラスの先生方と大昔に共同研究でもって吸着剤・活性炭というコアコンピタンスが創生できました。この先生が最近、ノーベル賞候補に挙がりまして、「大阪ガスの若い頃の共同研究が今の自分を作っている」みたいなことをコメントに出していただいて、大変我々は喜んでいるんですけれども、この活性炭をもっと吸着性能を上げたい、ハニカム化構造、小さいこういうペレット状にしたい。これは、大学、中小企業さんとの連携で達成しました。ところが、このコンセプトは、これとマイクロカプセル型の蓄熱材を混ぜることによって、実は自動車用のあるところに使えるんですね。これ、ちょっと言えませんけれども、ある材料をすって出して、すったときに発熱反応ですから、温度が上がって活性炭が壊れるのを蓄熱材で防ぐというコンセプトです。ベンチャーがこのマイクロカプセル化の強度向上に大学との共同研究で成功されて、これを融合して、最初は混ぜたら壊れたんですけれども、混ぜても壊れなくなって、アメリカの自動車会社に導入が進んでおります。
  次のページ、材料ビジネスは、私のMOTスクールを修了したメンバーが非常に活躍して、浄水器、カートリッジ、新幹線のぞみは100%我々のフェルト材です。活性炭世界第3位、木材保護材。それと面白いのが、このデジタルカメラのレンズ材料は世界トップでございます。レンズ材料の素材は60%以上のシェアをとっております。
  これをもっと進化させるためにはグローバルな提携が必要だろうということで、19ページ目、今年からオープン・イノベーション室は、グローバル・オープンイノベーションのネットワークづくりを今構築しております。
  更に次のページ、20ページ目、これは行政さんの資料なんですけれども、欧米はオープンイノベーションが大変進んでいる。特に基礎研究まで外部にアウトソーシングする。欧米には大学以外に基礎研究を受託する事業会社も多いんですね。国内には少ない。探したらありました。KRI。よく調べたら、大阪ガスの子会社でした。これは1987年に大阪ガスが創った、基礎研究を受託するのをビジネスにしているところであります。
  次のページの21ページ目は、KRIの受託プロジェクトの進め方です。余り参考になりませんけど。当たり前のやり方です。ただ、特徴的には、KRIの受託研究の成果は、特許も含めて原則クライアントのものです。これがちょっと特徴的ですね。
  次のページ、22ページ目、KRIは、大学との共同研究でもって萌芽研究をやって、それをちょっと育てて、温めて、磨きを掛けて企業に提案して受託につなげるというやり方でございます。
  23ページ目は、最近、オープンイノベーションが非常にブームになっておりまして、東京でオープンイノベーション推進者交流をやっていまして、今年は30社集まって、もう最近、「我が社もオープンイノベーションをやらなきゃいけない」と社長が言い出して、専門部隊ができているところが、ここにお金を払ってきているところが30社です。毎週のように話を聞きたいというところが来られます。恐らくこの1年で100社を超えていると思います。オープンイノベーションの専門部隊を創る、大手企業が。「オープン・イノベーション推進者交流会議」は、皆さん困ってきているんですね。社長に言われたけれども、どうやっていいか分からない。正直言いまして、TLOとか産学連携本部が大学にあるということすら知らない方が多いです。それをこの交流会でいろいろレクチャーしながら、経済産業省さんの坂本課長にも来ていただいて、知っていただいて、やり方を議論するやり方であります。本もいろいろ出ているということです。
  25ページ目、次のページですけれども、民間企業の立場からいえば、アンゾフのマトリックスでいうと、これからやらなきゃいけないのはラディカルイノベーションだろうと。つまり、やっぱりサイエンスの知識を使いながら、新しいビジネスモデルをどう構築するかという局面を迎えていると。従来のテクノロジープッシュ型でことごとく大阪ガスは失敗してきました。リニアモデルからユーザー起点のイノベーション創発を起こす連鎖モデルに変えたいということで、ただ、イノベーターをどう育成するのか。科学技術を事業に生かすような、新たな事業を創造するような人材をどう教育するのか。科学技術と事業をつなぐ、プロモートするような、そんな機関があればいいなということでございまして、26ページ目は提案ですけれども、産学連携本部が本当に企業の研究開発のプロセスを分析して、知って、どういうところにどういう提案をするかということをやるというのは、ここにおられる大学の方は先進的にやられているので成功されているでしょうけれども、ほとんどの大学はそれは無理じゃないかと思うんですね。しかも、大学のシーズを分析しながら、企業のニーズをそこにうまく提案しないとつながらないんですね。御提案ですけれども、やっぱりこの間にイノベーション・エージェントみたいな機能を、これは私は民間でないとなかなか難しいんじゃないかと思うんですけれども、このエージェントには分析力よりも提案力ですね、専門性よりもヒューマンネットワーク、応用力、展開力、それと両方に教育を施す。大学と企業が集まって一緒に教育をするとか、議論をやるとか、そんな場を創るようなエージェント。
  27ページ目はもう飛ばします。総合プログラム案です。  次のページがユーザー起点のイノベーションということで、企業は今、テクノロジープッシュ型でことごとく失敗しているので、顧客ニーズとか消費者の観察からアイデアを生み出して、事業のコンセプトをまず創って、ビジネスモデルをまず議論しながら、じゃあ何をやるのか、技術の洗い出しをやって、自社にあるもの、ないもののすみ分けをやって、ないものは大学に求めるということをやり出している企業が多いんですけれども、こういう場を創るとか教育の場を創るとか、そういったところが非常に大事で、産連本部とこういった企業のR&D、事業化のプロセスをつなぐイノベーション・エージェント役は、各企業のイノベーションの支援もやりながら、各大学の産連本部とかそういったところをサポートもできるようなエージェント役があればいいなという話でございます。
  最後ですけれども、これはピーター・ドラッカーの言葉でして、私、大学で院生相手に講義をやっているので、学生にいつも「自分は」に置き換えて最後に言うんですけれども、「我が大学が強みとするものは何か、うまくやれるものは何か、いかなる強みが競争力になっているのか、何にそれを使うかを問わなければいけない」。マーケティングができなければ企業とはつながりません。ピーター・ドラッカーは、イノベーション以外にやるべきことはマーケティングだと言っていますけれども、マーケティングができるかどうかに産学連携はかかっているということで終わりとします。

【橋本主査】    はい、ありがとうございました。
  では、岸本次長にお願いします。

【岸本次長】    今、御紹介いただきました文科省の科学技術・学術政策局の岸本でございます。御承知の方も多いと思うんですけど、私は昨年7月に民間から登用されまして、民間時代は鉄鋼会社の研究所でございまして、長年、研究をやっていたんですが、研究といいましても試験管をいじるような研究ではございませんでして、どちらかというと、きょうお見えの自動車会社さんの表面処理鋼板を紙一筋の欠陥を許されないところの凝固をどうやってやるかとか、そういう研究をやっておりました。ただ、そういう研究でも、それこそ基礎研究というのは非常に重要だということでして、それこそ凝固するときの濃度境界層とそこの境界層がどうなるかとか、そういうことまで調べないとなかなか進歩はしないということで、これも30年近く大学の基礎研究、共同研究をいろんな立場で関わってまいりました。現状、産学連携にはまだ改善する点が非常に多いと思いますので、是非今後ともよろしくお願いします。
  今回は、民間との共同研究における間接経費の取扱いに関する提案ということでございます。
  1枚めくっていただきまして2枚目でございますが、これも皆様御承知のとおりだと思いますが、民間企業との大学の共同研究実施件数、研究費受入額の推移でございます。御承知のとおり、過去最高ということで順調に伸びてきておりますが、右側にその内訳を解析しておりまして、円グラフが幾らぐらい使っているかということですが、300万以下が大半であるということで、右下のグラフで見ますと、平均で1件当たり200万ぐらいでございます。これは、企業の研究者だったら分かるんですけど、100万、200万というのは研究リーダークラスが割合自分の判断で出せるという金額でございまして、かなりの分は大学の先生とのお付き合いとかリクルートも含めて出しているというのが多いのではないかと思います。一方で、企業は決してこれを満足しているわけではございませんでして、むしろ増額したいと考えているところが多いのではないかと思います。なぜならば、民間でも基礎研究をかなりやっておりまして、企業は研究者の人件費もカウントして研究費をカウントしていますので、そうしますと、基礎研究といっても簡単に1,000万を超える金額の研究をやってございますので、大学を利用してこういう基礎レベルの意外とプリコンペティティブな分野での研究をもっと促進できれば大変有り難いのではないかと考えていると思います。ただ、そのためには、企業のペースで大学側がもっと研究してもらわないかんという問題もあると思いますが、そういうところは一つ課題かと思います。
  次のページでございますが、3ページでございますが、これは文科省で分かる範囲で、全体の民間企業との共同研究の中での直間比率を計算してみましたところ、全体で見ると大体10%ということになっております。ただ、RU11クラスで、かつ大企業でやっている場合は、先ほど岡島さんからの紹介にもありましたように、2割ぐらいはいっているのではないかと思いますが、いずれにせよ、こういう規模でございます。また、自分の経験でいいますと、大学と十分企業は議論できてはいないのではないかと思います。というのは、企業は今、相談する相手は大学の先生でございまして、先生に間接経費の話をすると大体理解も興味もないということで、「大学の事務局がこれだけ召し上げるんだ」とか「大学の本部の上納金だ」とか、そういうような発言が多くて、一番ひどい例は、「間接費ってどういうふうに使うんですか」と聞いたら、「机とか備品を買うんです」という説明をされた方も実際おりまして、全然議論できてないということで、ここは問題ではないかと考えます。
  次のページは、当産地課の坂本課長が作っておる資料でございまして、非常に難しい概念が入っているんですが、要は、一番右上の投資に見合うビジネスにつなげる前に、まず大学でその元にあります知の源泉を創らなきゃいかんということで、そのためには、先ほども出ましたけど、基礎現象とか科学知識のいろんな追究をしながら、みんなで産学連携によって知の源泉を創っていくような土俵を創るべきだろうということを書いていると思います。私も、他国、ドイツの例がよく出ますが、日本の場合はやはり大学が大半の知の源泉を持っていると思いますので、そこが産学連携の中心であるべきだということで、大学は是非関わってきていただきたいと思っております。
  次のページでございます。これは、もう既にいろいろなところで議論されていますように、特定大学等を中心に大学での財源の多様化という議論がされていまして、寄附金もそうですが、一つの視点としては産学連携の拡大による研究費受入れの拡大というのも重要だろうというふうに議論されております。
  6ページ目でございます。ここからが議論の中心でございますが、競争的資金の改革の議論で既に御承知のとおり間接経費が議論されていまして、先ほど橋本先生からも御案内ありましたように、24日にその中間取りまとめが発表されております。その中で、文科省における全ての競争的研究費について、30%の間接経費を措置するというのが原則ということとともに、他府省庁や民間での全ての研究費に関しても同様の措置がとられるように働きかけられるということはあるんですが、当然、民間企業との話にもそうなるんですが、これがそのまま文科省がこう言っているから3割と、こう言われても、企業側としてはなかなか納得できませんし、先日のCOCNとの議論でもやはりどういうものに間接費が使われるかということと、なぜ間接経費を増やせば産学連携がもっとうまくいくかというところの理屈付けを是非やってほしいということを言われております。
  次のページでございますが、結論的に言いますと、民間企業としても、恐らく更に大型の産学連携を進める上で間接経費を積極的に受け入れる姿勢が必要だということは理解しておりますが、そのためにも、間接経費が一体どういう必要な経費であるかということを民間企業が理解できることは重要だと考えています。個人的にもその辺の理解は企業側にいるとなかなか分かりにくいということでございまして、私も文科省に来まして大学改革の議論の中で上山先生のお話等も含めてだんだん理解してきたということでございまして、この辺についてよく議論する必要があると考えています。大学側も恐らく企業との共同研究費に対して間接経費をカウントすると従来よりも手間がかかりますが、それに関して是非一緒に議論していただけないかと考えています。したがって、今回の提案でございますが、民間企業との共同研究に関する間接経費の必要性に関して何らかの根拠が出せるような算定モデルを皆様と一緒に検討できないかと考えてございます。
  最後のページでございます。そういうことで、算定モデルを算出する検討チームを立ち上げたいと考えてございます。これは大学側と民間企業の両方の方の協力が必要でございまして、そういう方に入っていただきまして、秋ぐらいまでにそこら辺の議論をしながら何らかのモデルを出せればと思っています。私見でございますが、共同研究の性格、やり方によって間接経費の比率が変わるケースもあり得ると考えていまして、例えば共同設備をどのぐらい大型のものを使うかとか、金額が大きくていろんなステークホルダーが入るときに、その共同研究をどうやってマネジメントするかといったところの費用とか、その辺によって例えば2、3種類のケースがあってもいいのではないかと考えてございます。
  以上でございます。

【橋本主査】    ありがとうございました。岸本次長にもいろいろ御発表いただきまして、様々な論点が多岐にわたっているような印象を受けました。今、岸本次長がうまくまとめてくださったこの他にも、幾つかの視点があるので、これはここで1回整理した上でこの先の質問に入った方がいいと思います。それで、取りまとめ(案)の目次をまず紹介していただけませんでしょうか。もちろん、これにこだわることはないのですが、一応、この委員会で出していきたいと考えている案が分かった上で議論した方がいいのではないかと思います。もちろん、違う観点からこういうのも重要だという御意見を頂いても結構です。ということで、ちょっと議事の順番が違いますけれども、資料6の目次について、中身の説明はまた後からしていただくとして、目次プラスアルファぐらいで簡単に御説明いただけないでしょうか。その上で皆さんの御質問を頂こうと思います。

【山下室長】    はい。目次の方を見ていただけますでしょうか。この目次のところ、「1.はじめに」ということで、前提でどういうことが動いているかというところを1と2のところで整理しているところでございます。そして、前回でもそういうお話が出たんですけれども、この会議というのはどういう前提なのかということをまず明確に示した上で、要は議論があっちに行ったりこっちに行ったりかなりターゲットが広いので、そこをまず明確にした上で、今回、三つのポイントを中心にまとめればいいんじゃないかという形で、4として「全学的な知的資産マネジメントの必要性」というところで、知的資産マネジメントの重要性というのをもっとみんな意識する必要があるんじゃないかとか、そういうマネジメントを担う人材というものの育成というものがまず必要なんじゃないんでしょうか。このマネジメントを担う人というのを、どちらかというと従来のURAとかそういうイノベーション推進人材、促進人材と言われる人よりも、経営層というのをもう少しターゲットにした形できちんと位置付けて育成みたいなものをするべきじゃないかというのが4というところです。
  5として「新たな産学官連携の在り方」ということで、先ほどもお話が出ております組織対組織の産学連携の進化というものをきちんと考えていくべきではないか。また、産学連携を進めるためのベンチャーを通じたイノベーションの実現というのが非常に方法論としても重要なんじゃないか。また、その産学連携活動に携わる学生というものに対しても何らかきちんと支援というものを、リスクマネジメントを含めた形で、更にそれを前提にしての支援というのが必要じゃないか。
  そして、イノベーション実現に向けた形で財源の多様化というところを大きく二つ捉えて、今、次長の方から紹介があった民間企業との共同研究における間接経費というのを重要なものだということで考えていくべきではないかというところと、寄附ということついても、個人の寄附というのは多分、ボランティアに何にでも使っていいですよ、そういうところの寄附というところもあるんでしょうけれども、企業からの寄附ということも非常に重要で、企業からの寄附というのはそれとはまた違って、企業の戦略等々を踏まえた形で大学を動かしてというような観点での寄附という取扱いというところの考え方が重要なんじゃないかという形で簡単に整理させていただいているところでございます。

【橋本主査】    はい、ありがとうございました。
  これで、きょうのプレゼンがこの中に埋め込まれているのが御理解いただけたのではないかなと思います。最初に申し上げましたけど、今、大学改革が、政府全体の重要なターゲットとして挙がっていて、幾つかの議論が進んでいます。その中においてここの会議では、大学の持っている知的資産をどのようにより強化していくのか、そして、それを大学はどのように使っていくのか、そのための仕組みはどうあるべきなのかというようなことを議論して、大学改革の中の一つの大きなツールとして提案したいというのが事務局側の狙いであります。ですので、今のこの4番目以降になるわけですけれども、知的資産マネジメントというのを今までもやってきていますが、更に視点をしっかりさせることと、新たな視点も必要ではないかということと、5番目の産学連携も、きょうのプレゼンで随分御意見を頂きましたけれども、新たな産学連携というのをしっかり整理して提示することが重要かなと思います。それから、そういうことをやるためには何といっても財源が必要ですが、国の財源が厳しい中で、どのようにしてこの財源の多様化を図っていくかということであります。
  それから、議論の前提としての留意点ですが、これがないとまた拡散してしまうので、ちょっとここだけは説明してください。

【山下室長】    ページで言うと5ページ目ですね。「議論の前提としての留意点」というところ、整理してございます。
  例えば一つ目の丸のところで、科学技術をめぐる環境というのは近年大きく変化していて、大学や民間企業はこうした変化を踏まえた形の研究開発を進めることが必要になっています。
  三つ目の丸のところで、今後、公的資金のみならず、財源の多様化によって獲得される自己収入や民間資金を投入することで戦略的に研究を進めていくことがより一層求められます。
  その次のポツのところは、現在の研究開発費の7割を占める企業の研究開発費というのがほとんど企業に流れていますと。大学に流れていない状況にありますねと。今後は産学官連携の拡大等を通じて民間の研究開発費を大学に導入していくことも重要になります。
  「その一方で」というところで、大学の主な役割というのは、学理の追究や原理の解明を通じて学術的な価値を追究していくことである一方、ベンチャーを含む民間企業が担う役割というのは、大学発の研究成果を原動力として、実用的・経済的な価値を創造していくことであり、この両者の差異というのを十分に理解した上で議論する必要があります。また、基礎研究の重要性というのが軽んじられることがないように配慮すべきです。
  更に言うと、競争的研究費や共同研究費の外部資金を獲得する段階に至っていない萌芽的な研究というものも、将来の原理の解明や学理の追究、イノベーションの種、要は、競争的研究費をとるまでのところの研究をきちんと育ててないといけないし、産学連携の共同研究に至るまでのそういうものをちゃんと創っていくような研究というのはちゃんとしておかないと、いい共同研究につながりませんよねと。要は、大学を育てることというのが、共同研究という意味でいうと産業界の大きな役割なんじゃないんですかねという趣旨とか、次のページで言いますと、そういう共同研究とか大学が企業と関わっていく上においてはなおさらのこと、大学のインテグリティというのが毀損されることのないようにしないといけないですねと。この関係について言うと、渡部先生が主査をされている委員会の方で議論がされていると。利益相反の在り方等については同時に議論がなされて、取りまとめがなされているところだというところでございまして、それで最後に、本提言の内容については、全ての大学がこれを全部やれというわけではなくて、それぞれの大学において執行部が必要性について経営判断をした上で、具体の方策についてそれぞれ大学がこの報告書も参考にしながら取り組んでいくべきというようなところが議論の前提というところでございます。

【橋本主査】    はい、ありがとうございました。
  ということで整理ができたかと思います。ここから先2時間近くあるので、十分な議論ができると思います。御質問であっても、御意見であっても、どれからでも結構です。どうぞ御自由に。では、上山先生からどうぞ。

【上山委員】    きょう、産業界の本当に細かな産学連携のスキームについても、あるいは現状についても教えていただいて、大変勉強になりました。前から間接経費のことも随分ここで、あるいはその他のところで議論させていただいていますので、改めて触れることはないんですけど、1点、僕がきょう申し上げようと思ったのは、大学改革に関わって新しいポイントとすると寄附のことだとちょっと思っているんです。
  これはきょうの御発表の中では力点がそれほど大きくはなかったと思いますけれども、間接経費によって外部資金を大学本部にどういう形で取り入れる、これ、とても重要だと思いますけれども、一方で、今後、もう一つのポイントというのは、どういう形でアカデミアに民間からの寄附金を導入するかというスキームだと思っております。というのは、アカデミアというところは基本的に公的な意識が非常に強いので、ともすると、どうしても基礎研究に偏りがちだし、大学からの知識によって社会にインパクトを作り出すことについての意識はどうしても弱くなっていく傾向があるんですけれども、それをある程度修正していくというか、そこに力を加えていくというのはやっぱり民間の資金だろうなと常に思っています。文科省に関わってやっぱり思うのは、公的資金というのは全てのステークホルダーとかアクターについてのことを考えて予算配分をしなければいけないという、そういう傾向がありますから、エッジの効いたところってなかなか難しい、そこをやるのがやっぱり民間資金だと思っています。
  そういう意味で、寄附金というのは、実はアメリカのアカデミアを根本的に変えてきたものだと思っています。例えば、アメリカでもハーバードみたいなところはすごく伝統的でありますけれども、それに対抗するようなスタンフォードとかMITとか、MITってもともと州立大学ですから、あれが私立大学になっていく過程の中で民間のお金というのは非常に大きな役割を果たしていたし、それから、シカゴ大学やコーネル大学もそうです。20世紀初め頃から大きくアメリカのアカデミアを変えてきたのは実は民間の寄附金なんですよね。
  この寄附の考え方を変えていく必要がある。日本の産業界も含めた民間のところで、この寄附って一体どういうことなんだということをどこかで橋本先生なんかが声を上げてもらって喚起してもらったらいいなと思うんですけれども、寄附というのはフィランソロピーじゃないんですよね。社会貢献として、お金を稼いでいるところが公的なところにお金を寄附しましょうと、そういうものではなくて、むしろ、社会の中である方向性を作り出すために重要なスキームです。民間の企業なり、あるいは団体なりが関わってアカデミアにある程度の方向性を付与していくという、そういう役割を持っていると思います。こういう寄附の形がなかなか日本の中では理解されていないと思うんですね。だから、産業界が、アカデミアは反応が非常に遅いとか問題があると思うのであれば、それを寄附という形でやっぱり変えていくべきだと思う。
  この寄附という言葉が、これ、寄附の「附」がこざとへんが付いていますよね。これ、「付」と、普通のこざとへんが付いていない、付いているとでは随分違うんですね。例えば民間の財団とか私立大学のところには必ず寄附行為があるのです。寄附行為というのは、大型のお金を寄附し、それに基づいてある方向の理念に基づいた公的活動をやっていくもの、その最初の活動が寄附行為であり、これは寄附というよりはある種のそういう目的を持った団体の設立に関して使われる言葉がこのこざとへんが付いている「寄附」なんですが、実はこれの中に寄付も本来の考え方がある。アメリカなんかに、あるいはヨーロッパでもそうなんですけれども、民間の資金がある一定の目的を持って公的な方向性に、いわば民間のそれぞれの立場から公的な方向性にある程度の意志を持っていると。意志を持って関わっていくお金というような感じなんでしょうか。だから、お付き合いのための寄附とか、もうお金随分稼いでしまったからちょっと貢献しましょうとか、フィランソロピーではない寄附の形、この寄附の形が、非常に公的な役割を持っているアカデミアとか、あるいは美術館とか、そういうところにとっては恐らく今後非常に大きな意味を持ってくるだろうなと。
  そういう意味で、もう一つの力点としてこの寄附の話をちょっと入れてほしいなと思って、ヒアリングに来られたときにそういうお話をさせていただきました。

【橋本主査】    ちょうどいいので、一つ、これは明確な視点なので、少しここについてお話ししたいと思います。今、上山先生が言われたのは全くそのとおりで、そこは分かるのですが、ただ、やはりそういう視点が世の中に位置付いてないために、寄附のことを言っても、確実にはなかなか理解してもらえない。私も、産業界とも結構意見交換する機会を持ちながらそういうことも出しているんですが、やはりそうやって甘いことを大学は言っているというふうにしかとられないのです。
  きょう、岡島さんの発表でも、今後、トヨタさんの寄附の仕方について、上山先生が言われたような、方向付けのために寄附を使うということもあってよいのではないかという話が出ました。今、上山先生が言われたことも全く正論で、そうだと思うのですが、何かその辺りのことを少しどうすればよいのかなと考えていまして、こういう報告書にしっかり書くというのはもちろん一つの方法なのですが、岡島さん、今のことについてどうですか。

【岡島委員】    会社の中全体の寄附行為というのはやっぱり見返りを求めないものという意識が強くて、経理の人たちは「寄附するなら共同研究で出しなさい」って、すぐそう言うんですね。一方で、社会貢献推進部というところは寄附をやっているんですけど、基本的には頼まれたときにするというもので、決してこれが世の中のためになっているかどうかというのは、残念ながら不明であると。で、あるときに、私がどうしても電池の寄附講座を創りたいという話を持っていったところ、当時、副社長も、社長も、是非こういう寄附の在り方というのは、要は世の中のためというのもあるけれども、戦略的に日本を強くするため、企業の役に立つためのところに投入すべきだというのは、当時も言われましたし、せんだって、このプレゼンをする前にちゃんと関連部署と調整をしておかないといけないなということで議論はしてきまして、方向性としては間違いないと。こうすべきだということで、認識、担当部署では一致しております。

【橋本主査】    上野山さん、いかがですか。パナソニックさんでするとしたらどんな感じですかね。

【上野山委員】    我々も、寄附に関しましては頼まれるということがほとんどですよね。それがどのように使われるか、そのときに我々として意志を出して良いかさえ分からないのです。余り細かい要望を出すと、それはもう共同研究に限りなく近づいていくような気がします。ですから、その辺の定義すら余りよく分かってないというのが現状です。

【橋本主査】    そうであれば、今の議論は大変重要で、こういうところで、しっかりと報告書に位置付けるというのはありますよね。
  松本委員、いかがですか。

【松本委員】    弊社だけの話で、寄附といいますと、結局、決裁権が総務部になってしまうんですね、うちの場合は。総務部になるんです、寄附は。寄附という言葉を換えればいいのかもしれないですけど、寄附金は総務部マターになっちゃうんですよ。だから、総務部は経費削減の方向ですから、「削れ、削れ」言うわけですよね、中身がどうあれ。中身がどうあれ。だから、我々の技術開発本部としては、寄附じゃなくて実質的な、どうせ大学と連携するのであれば、そんな寄附なんかやめて実質的な委託研究・共同研究という方向ですね。
  出資も実は総務部マターでして、産業革新機構へ、うち、5億出資するときも、私が担当なんです。技術戦略部起案なんですけど、結局、総務部マターになってしまうというところであります。大阪大学の共同研究講座は我々一応やっているんですけど、あれは寄附じゃないですね。あれは寄附ではなくて、技術戦略部予算で研究所が担務しているということです。ああいう形はやっぱり成果を求めると。寄附は成果を求めるなという、何かそんなね、いいのかどうか分からないですけど、日本ではそういうのがあるんですよね。うちだけかもしれないですけど。

【橋本主査】    渡部委員がその辺り詳しいので、どうぞ。

【渡部委員】    振り返ってみると、寄附金というのは国立大学時代にサイドレターと一緒に運用されていたことがあったわけですよね。だから、実際はそれは寄附じゃないだろうということで、少なくとも対価関係のある取引が並行して行われるのであれば、それは共同研究としてやるべきだと。これは今でもそうです。
  一方で、サイドレターとかじゃなくて、寄附金がやはり大きな意味での方向付けをするという、そういう効果というのは、特に外国企業はかなり積極的に使って――先ほど上山先生はそういうふうに言われたんだと思うんだけれども、使っているんだと思います。というのは、私の経験でも、日本企業と海外の極めて大きな企業で、この会社は共同研究契約はなかなか難しい会社ですけれども、寄附をそんなに大きな金額ではないけれども、頂いたことが実はあって、それは実は向こうから来るんですね。しかも、相当な重役が私のところに直接来て、これをやりたいと。支援するというふうに言われるわけですよね。そういうのはやっぱりインパクトがあるので、方向付け、これはサイドレターありませんよ、その研究成果を公益にしか使わないという約束で全部やったわけですね。だけど、それは影響力はあるわけです。そこに対して寄附を行うことに、会社もかなりやっぱりいろんな働きかけをしているわけですね。こういう在り方は、日本企業では今までは恐らくないですね。先ほど上野山さんが大学が頼みに行くわけで、そちらから来られるという格好では恐らくなかったと思うんですね。そういうのが多分大きな違いではないかなという気がいたします。
  寄附金についてはあとちょっとほかにもいろいろあるんですけど、とりあえず寄附金でよろしいですかね。

【橋本主査】    寄附講座の概念はそれに近いのではないでしょうか。

【上山委員】    まあ、そうですね。

【橋本主査】    國吉先生は寄附講座のセンター長をされていますよね。大学ではなく、理研にあるものですけれど。

【國吉委員】    大学でも寄附講座は関わったことあるんですけれども、まず、寄附の目的を指定できるかどうかは、まずベースラインに税法上の扱いがあるので、そこは押さえておかないといけないと思います。だから、企業の利潤追求の事業のために寄附というのはそこに抵触するので、結果が公益性のためであれば恐らく大丈夫なんだと思いますけれども、大学の寄附講座は飽くまで寄附という枠の扱いの中なので、最終的なアウトカムというのは、その寄附元の企業のためではなくて、広く社会のためという公共的な成果を出すということが条件になっていると。だけど、その寄附講座が何をする、どういう研究・教育をする場所なのかというのは、当然、その寄附を受ける段階で議論を深くやって、そして恐らく寄附元の意向といいますか、それは、これ、どういう表現をしたらいいか分からないけれども、寄附の趣旨というのは何でもいいということには普通ならなくて、ある分野を強くしたいと。日本の将来のためにこういう分野は伸ばさなきゃいけないというような議論で、それは大学の側もそうだねということで、その共通の理想に向かってプランニングをしてやるというのが普通ですね。

【橋本主査】    寄附する側……。

【渡部委員】    ちょっと補足していいですか、先生。

【橋本主査】    はい、どうぞ。

【渡部委員】    結局、この話も企業側から見ればオープン戦略の中に寄附というのをどういうふうに位置付けるかという話なんですよね。寄附である限り占有できないので、占有できないんだけど、同じ幾つかの研究分野があったり、同じ幾つかの技術があったら、ここが伸びると自分の会社にとって都合がいい仕組みになるという、もうそういうことを狙って寄附というのをやってくるという、そういう構造になっているんです。だから、会社側に、最近、オープン・アンド・クローズ戦略ってよく言いますけど、その戦略性があって初めてそこは決意できて、積極的な働きかけができると、そういう構造になっていると思います。小さな意味の対価関係では全くないです、そういう意味では。

【橋本主査】    菅委員と永野委員、意見がありましたらどうぞ。

【永野委員】    税制は重要だと思うんですけれども、寄附するか、あるいは共同研究するというのは、実質的に企業にとっては同じ場合もあるんですね。だから、非常にインフォーマルな対価をやっぱり期待している部分もあるわけです。先生との関係が強まっていろんなアドバイスを頂けるとか、実際に寄附だけれども、いろんなメリットがあるから人間関係を含めてやるので、だから、純粋に寄附というだけじゃないかなと思います。それから、企業の方はやりやすさがあるわけですね。少額寄附だといろんなところにオープンにしなくてもいいとか、大学のいろいろな契約から逃れられるとか、いろんな部分があるので、実際にはやりやすくて寄附をやっているというのも十分あるかなと思っています。

【橋本主査】    菅委員、どうぞ。

【菅委員】    そうですね、寄附、すごい難しいですけれども、する側からすると、私もそんなたくさんしたことがあるわけじゃないんですが、やっぱりある程度目的は持っていても問題ないと思うんですね。例えば教育に使ってくださいとか、そういうふうなことは大学から「どういう目的に使ってほしいですか」ということを尋ねてくるので、そこはやっぱり「こういう目的に寄附を活用してください」と言うことはできるはずですよね。だから、寄附だから見返りは、もちろん我々に直接見返りをしてくださいというわけではないですけれども、こういう目的で寄附をしますから、こういう方向に使ってくださいというのは決して間違った方向ではないですから、それをしっかりと明文化するというのは重要なことなんじゃないですかね。

【永野委員】    あと一ついいですか。医薬関係だと、実は製薬企業がお医者さんに対していろんな資金を提供できないんですね。いろんな影響を及ぼすということで、特に臨床医に関しては。今回、外国の製薬企業で高血圧の薬が問題になったのは、そういうんじゃできないので、でも、何とかして先生に味方になってほしいからって、結局、寄附という名目でたくさん出したわけですね、東大とか京大とかに。やっぱりそういうものもあるので、そういうことはやっぱり気を付けなくちゃいけないんじゃないかなと思いますね。

【橋本主査】    今、いろんな視点が大体出たと思います。上山先生が言われたのはもう少し大上段の部分があって、やはり次の新しいサイエンスを生み出すための、それが結局ぐるっと回って社会全体が裕福になって、産業界もそれに対して利益が得られるというか、そういう方向性を出すための寄附というものが重要だと。それはアメリカではあるが、我が国にはうまくいっていないと。どうしたらいいですか。

【上山委員】    まず、僕はずっと産学連携のことは今まで言っていたんですよ。例えばオープンイノベーションもそうだし、共同研究もそうなんですけど、それはほぼ一段落、大体議論はできているなというので、欠けているところはこれだと思うんですけれども、今も出てきたみたいに、寄附というものに企業側の戦略がもっと入るべきだという……。

【橋本主査】    そういうことなのですね。

【上山委員】    企業側の戦略あるいは寄附する側の戦略がその中にきちんと入っていくこと、そういう姿勢を求めること、そういう文化を創ること。アメリカは寄附するけど、日本は寄附しないって、そんな、僕、アメリカ人も日本人も同じだと思うんですよ。そんな、何の意味もないのに寄附なんか誰だってしたくないですよ、アメリカ人であろうとも。これが何に使われるか分からないときにお金なんか出したくはないんですよ。それは。日本における寄附がそういうイメージが付いてしまっているために、企業側だってそこに戦略を乗っけることができないんですよ。例えばトヨタさんだってトヨタ財団を創っていますし、松下さんだって松下財団を創っているわけですよね。それは社会的なフィランソロピー行為としてやっているわけですよ。何の見返りも求めないで、お金を結構出して、そして少額のお金を研究者にばらまいているんですけど、何の効果もないです、そんなことやったところで。フィランソロピーだと、自己満足ではあるかもしれないけど、アカデミアの全体の文化に影響を与えるかといえば、何の効果もないです、それは。つまり、アカデミアに効果があるというのは、ある程度バルクのまとまったお金を、戦略性を持ってアカデミアにつぎ込むということ。それが寄附行為であり、その一つは例えば寄附講座であったりとか、あるいは共同研究と関わるような寄附であったりとか、あるいは、よくアメリカなんか、例えば患者団体なんかが多くのお金を集めてきて、特定の医学研究に関して我々の患者団体の人たちに利益があるような形でお金を出しますみたいな、これはもう典型的な目的を持った寄附行為、研究援助行為ですよね。それは産業界の中で恐らく、今後、例えば経団連か経済同友会か分からないですけど、お金を出し合いながら基金を創って、アカデミアの中にそういうくさびを打ち込むような戦略性を寄附の形でやりませんかというのが私の提案で、そこにはっきりとそういうような戦略性が見えてくれば、それは長期的に、あるいは中期的に企業側にも大きなメリットがあり、産学連携も進んでいくようなプロセスに関わってくるだろうなというのが、寄附の新しい考え方として何か定着させるべきじゃないかなと思っているという。

【橋本主査】    その今の考え、整理は重要ですよね。だから、寄附というものに対する位置付けの転換ですね。産業界から見たときの戦略的な寄附というものの有効性について事例を挙げながら――実際に事例があるわけだから、そういう事例をあげながら、こういうふうに創っていけるというのを出していく。それは渡部先生が言った形で、それが例えば一つの企業あるいは団体として見たときでも、オープン戦略としての寄附行為みたいな位置付けをして、その成功事例というか、それで大きな流れを作ったような事例を示すとか、何かそういうふうに結構大上段から行かないと、産業界にこの話は入っていかないと思います。

【松本委員】    業界の話なんですけど、寄附という形、実質的に寄附かもしれないですけど、ガス業界には、日本ガス協会というのがございまして、やっぱりガスの燃焼であったりとかガス固有の研究をやる大学の先生が非常に少なくなってくるという危機感がありましてね、ガス協会が、これは公募みたいな形なんですけれども、そういう若手の研究者にガス協会としてお金を授けようと。これは例えば一企業にとってみたら、それは別に対価が得られるわけでもないんですよね。業界に関係するような研究を途絶えさせないとか、もっとガス業界に関する研究をやってくれる若手の研究者をふやしていきたいという、そういうやり方はありますけどね。

【橋本主査】    それは今もあって、例えば電力業界にあるんですけど、上山先生が言うように機能的に実は余り効果を出せないのです。50万、100万の寄附は、もらってよかったみたいな感じでそこで終わってしまうので、それをもっとまとまった形で戦略的にやるべきだという話ですね。
  岡島さん、どうぞ。

【岡島委員】    我々、広報下手だなというのは、昨年、トヨタ・モビリティファンドというものを創りまして、用途としては、例えば途上国の車がまだ使われてない地域でいかにそこを活用すべきかとか、あるいは持続的社会のためのエネルギーを効率的に自動車で利用するための研究は何かとか、幾つかのテーマを絞ってかなり大きなお金の研究助成をしようと。1件当たり5億でも10億でも出しますよというのを実はやっておりまして、残念ながら広報下手くそで皆さん御存じない。でも、それはある意味、戦略的に手を打っていこうということでもありますし、あと、せんだって、アメリカスタンフォード大学の学内をぐるぐるっと回ったりとか、あるいは特定の研究領域を見てきたんですけれども、人工知能研究所があるビルはビル・ゲイツビルディングって、もう明確にそれはうたっていて、そこはしっかりサポートしてあるし、そこのコンピュータ・サイエンスの分野を応援することで、ひいてはマイクロソフトの利益にきっとなっているわけで、アメリカの強みを更に伸ばすことにもなっているわけであって、そういうような寄附というのはやっぱり日本の企業もやらないといけないなと感じて帰ってきたところであります。

【橋本主査】    トヨタさんもそういうふうにかじは切れますか?

【岡島委員】    個人的にはやりたいと。

【橋本主査】    渡部委員、どうぞ。

【渡部委員】    前回、私が配った資料のパワーポイントの12ページのところの上にオープンイノベーションの類型というのがあって、これはアウトバウンド・インバウンドと金銭的・非金銭的、要は対価関係有り・無しで4象限で区切っているもので、これはチェスブロウ――大阪ガスさんはチェスブロウじゃないってさっき言っていたから、お師匠さんが違うのかもしれないんだけど、チェスブロウの分類です。この中に寄附は入っていますね。だから、オープンイノベーションのストラテジックなオプションとして寄附は当然入っている。今、日本企業で最も注目されているアウトバウンドのオープンイノベーションの寄附に相当するものは、トヨタさんのつい最近やられた特許無償開放ですよ。4,000件の水素燃料自動車の特許を無償開放されたというのは極めてインパクトがありまして、これは従来の業界も含めて非常にやっぱり効果あるんじゃないかと思います。これを決意、これ、4,000件の特許ってすごい維持費が掛かりますので、これ、開放するってすごいことなんですよね。多分、意思決定は大変だったと思うんですけれども、それをやられたということは、同じような戦略的な目的として本当にそこのスキームが意味があると思えば多分できるんだというふうに期待しています。

【橋本主査】    魚崎委員、どうぞ。

【魚崎委員】    アメリカの話はよくされていますが、企業からの大きな寄附はアメリカに限らないのではないでしょうか。韓国へ行くと、いろいろな大学でいわゆる財閥からの寄付による名前入りの建物などが見られます。日本だと講堂は多いんですけれども、研究棟や情報センターなど数十億円単位の寄付を行っているようです。
  あともう一つ、寄附という意味では、アメリカだとendowed chairというのはかなりレベルが高く受け止められるんですけど、日本は寄附講座の教授は偉いかというと、そんな感じはあんまり――ここにいたら失礼なんですけど、そこら辺が受け止め方というか、ブランド化が日本の場合はまだそういう意味では進んでないという感じがします。

【橋本主査】    はい。寄附以外のこともあるから広げていきますが、寄附のことでもしまだ言い残したことがありましたら。今、大分いろんな視点が出ましたが。はい、どうぞ、西村委員。

【西村委員】    トヨタさんがおっしゃったときの税の話で、税控除にしてほしいという意見がありましたよね。あれを少し企業側からの考えとして、今の税制法で寄附を出したときに普通に損金で落とされてしまうと。それが税控除として持ったら企業側にとってどれぐらいのメリットがあるかというのを、ちょっとこの角度から教えていただけるとですね。私たちもいろんな企業、私は地方大学の立場なので中央とは全然違うんですけれども、税控除によって出したいという企業も結構いるんですよね。そうすると、私たちは資金がそんなたくさんないです。ないけれども、ちょっと批判的です。税金を払うのであれば大学へ預けさせてくれないかと、そういうような中小企業、実は地方にあって、それがもしかしたら地方大学の――さっき、若手の研究者に100万配るのは大したことないと言ったんですけれども、私たちは100万の金で困っている研究者がいます。こういう人たちに薄くまいておくことが、結果的に地方にいるたくさんのこれから伸びようとする若手の研究者にとっては非常に価値がある。その企業から見たときの税控除というのがどれぐらい企業から寄附を出すことに対してのモチベーションを与えるのかという、ちょっとこれ気になったので、教えていただければと思います。

【岡島委員】    実は経団連を通じてその税改正の要望というのは正にこの文言で出しております。損金扱いということであれば、例えば100お金を出したら、そのうちの約30%の法人税分が浮くという話であります。で、税控除100%もし認められるのであれば、100寄附をすれば100だけ法人税の支払の額が減ると、そういう話になります。

【三木委員】    いいですか。

【橋本主査】    はい、どうぞ、三木委員。

【三木委員】    今の件と関わってなんですけれども、やはり納税する側というのは、政府が最終的な意思決定をするわけですよね。それに対して寄附というのは、政府の代わりに自らの意志で使わせるという、ここが根本的な違いだと思うんですね。そういう意味で、税控除という言い方よりも、最近で言えばふるさと納税、あるわけですよ。むしろこれはアカデミア納税みたいな形のもっとポジティブな言い方というのはできないのかなと、僕は以前から思っているんですけど、いかがですか。

【橋本主査】    國井委員、どうぞ。

【國井委員】    大手企業ですと税控除というのはメリットがあると思いますが、立ち上がりつつあるベンチャーだと、税金をまだ払うところまで至っていないと思うので、そういうところに対して公平なのかどうかと思います。

【橋本主査】    進藤委員、どうぞ。

【進藤委員】    私は、損金と税額控除の選択制にすればそこは何とかいけるかなと思います。また、私も三木先生と同じように、どっちかというとこれはふるさと納税的な説明の仕方の方がいいかなと感じます。特にこれから戦略的に寄附ということを言っていく場合は、直接的に対価を求めないにしても、説明ぶりとしてはそういう方が自然かなと思いました。
  私ども大学の実務では、やっぱりある程度目的を示して寄附をされるということはたくさんあるわけなので、実例的にはこういう目的を決めた形での指定基金に向けたような寄附ということは説明がつくと思います。提言としては、先ほど正に触れられた企業の中での戦略を踏まえた寄附、すなわち単に「寄附」という言葉によってもう戦略性が失われるような二律的な発想ではなくて、ちゃんとそういうところの真ん中に、「戦略的だけど、対価を具体的には求めるわけではないというような寄附」についてしっかり位置付けるということは大事だと思います。

【橋本主査】    菅さん、いいですか、その辺。

【菅委員】    さっきのアカデミア納税っていい案だと思いますね。そういうふうな方向で、これは飽くまで寄附じゃなくて税金を納めているという考え方にみんながなれば、政府も納得せざるを得ないかなという気はします。

【橋本主査】    実際にこの税金のことについては、そんな簡単ではないですよね。ここで議論しているほど簡単な話ではなくて、我々はみんな、それはいいって言うに決まっているわけですけれども、そうではない人たちもたくさんいる中でやっていかないといけないので、しっかりとした理論武装が重要かなと思います。
  川端委員、どうぞ。

【川端委員】    今の寄附の話も含めて全部関係するんですけど、きょうの話のど真ん中にやっぱりマネジメントという話があって、きょうのお話をお聞きしていて、これ、産学連携のマネジメントをどうやったら結局前に進むかという話をしていて、共同研究というレベルと、それから今の寄附という話、その寄附の中にも、先ほどから出ていますけど、やっぱり創薬の部分でかなり寄附講座は痛い目に遭ったゾーンがあって、いや、寄附という単語はもう使っちゃ駄目で、これは飽くまで共同研究にしましょうとやって振り分けていった。だから何が言いたいかというと、共同研究と、それから寄附という単語でないけど、基礎的な、もうちょっと概念の違うものまで含めて、全体で産学連携のマネジメントはどうあるべきという考え方というのを是非何か発信できたらなという気がします。
  それからもう1点ですね。寄附は寄附でどうしても必要なものなんですよ、大学にとって。それは何かというと、これ、上山先生がよく言われる、アメリカの大学は何兆円という基金を持っている、そこと日本の大学は戦っているわけで、戦う中身は何かというと学生の取り合いっこしていたり、優秀な研究者の取り合いっこをこの基金でやっているわけです。我々、竹やりであれと戦えと言われている。その基金を、ではどのようにして私たちは創ることができるかというと、バランスシート上、どこにも何もないんですよ。土地を売るわけにいかないし、かといって例の未公開株みたいな話って、そんなこともできないしというので、ここに持ってくるのはひたすら御寄附をお願いするしかないという。しかも、無指定の御寄附をお願いするしかない。そのお金で結局そういう留学生の獲得合戦であったり優秀な研究者の獲得合戦をやって、それがインフラとしてあるから初めてすごいシーズが現れたり、いろんなものが出てくるという。だから、その大きいスキームの、社会的なスキームまで含めたスキームと、それから産学連携のスキームと、極めて目の前の製品開発という共同研究というスキーム、この三つ全部を回さないと日本全体が強くなっていかないという、そんなような観点からこのマネジメントというのを……。で、大学側もうまくいっている話が大体ここに出てきて、大半はうまくいってないんでしょうね、きっと。まだそこまでスタートしていないという。同じように、企業さんの方もうまくいっている企業さんはここに出てきている。大半、「産連本部ってあるんですか」ってさっき言われたみたいに、そういう企業さんが多分非常にたくさんあるのかもしれなくて、「15年前の産連本部でしょう、それ」という。でも、今、世の中は変わっている。変わっているということをお互いがどう認識し合うかというのもマネジメントとして次のステージにあるのかなというので、済みません、寄附からもうちょっと上のレベルの話をちょっとしました。

【橋本主査】    マネジメントはもちろん重要なので、ここはしっかりやっていくんですが、今、これまで寄附についての議論がなかったことと、それから、今後やはりどう位置付けるのかも重要で、この辺りを少し議論したかったというのがあります。

【青木委員】    済みません、一言だけいいですか。

【橋本主査】    はい、どうぞ。

【青木委員】    今、大学側の話もちょっと出てきたので。日本の企業の方、例えば日産はオックスフォード大学にジャパニーズ・スタディーズのセンターを寄附したりして、結構海外とは経験がおありになると思います。そこで、日本の大学でどういうふうに寄附を活用したらいいかというのを是非企業の方に、お金を出すだけではなくて、使い方も教えていただけたらと思います。よろしくお願いします。

【橋本主査】    ありがとうございます。もう1点、ちょっとテクニカルな話で、間接経費の話はどうしてもやはりここでしっかりやっておきたいので、最後に時間をとってそれ以外のところ、それ以外のところは結局マネジメントの話ですので、それをやりたいと思います。ですので、ちょっとこの寄附の話を一段おいて、間接経費の議論に移りたいと思います。間接経費に関しては岸本次長から御提案がありました。要するに、産業界の研究資金の中に、今でもある意味で間接経費的なものは入れているのだけれども、先ほど分かりやすいたとえが出ていましたが、現場の先生に相談すると、「間接経費を出すぐらいだったら、直接経費に回してほしい」という話になってしまうわけです。それを今、この間接経費の重要性について松尾課長のところの委員会でしっかり位置付けてきたわけでして、これは大変いい機会なので、現場の先生がそういうことを言わないようにちゃんと仕組みを作らないといけないと思うのです。それを前提に、このことについて先ほど岸本次長からの御提案も含めまして、間接経費の考え方等々に対して是非御意見をいただければと思います。上山先生は前から、間接経費をしっかりと積み上げていかないといけないという話をされています。アメリカではもう全部しているし、しっかりとした積み上げがあればきちんと出すということを産業界もみんな言っておられるので、それが最終的なすばらしい姿だと思うのですが、現実には、では次からそうしなさいといきなり言ったとしても、我が国においてはすぐには対応することができない。対応できないので、最終的な姿はそうであるにしても、まずは、何かきちっとした仕組みを作る必要があるのではないだろうかというのが私の印象でして、それを岸本次長はああいう形で議論したらどうかというふうに御提案いただいたように受け取っております。間接経費は、大変重要な問題ですので、これについて少し時間をとって御意見を頂きたいと思うのですが、いかがでしょうか。どなたか。はい、どうぞ、岡島さん。

【岡島委員】    先ほど弊社のある組織的連携の間接経費のお話をしましたけど、一律、例えば30%にして、それを支払いなさいとか、あるいはそこの中身を明確にするからというよりも、「ここの研究、この先生の研究環境を整えるために、これだけ追加で直接経費以外のお金が要るんです」とおっしゃっていただければ、「それは必要ですね」ということで支払いやすいかなとも思います。
  大学の先生からすると上納金は少ない方がいいのでという話、直接経費が増えますので、企業からこの研究に対しては例えば100って出したら、結局目減りしてしまうんですよね。でも、先生の研究環境なり研究を進めるために、あるいは横との連携をより密にするためにというふうに使途を明確に個別に言っていただけるのは本当は有り難いかなと思います。

【橋本主査】    松尾課長、いかがでしょうか。今の議論でそういうようなところまで持っていけますかね。

【松尾課長】    産学連携のところの間接経費の位置付けのところに、私どもがやったのは飽くまで公的な競争的研究費における間接経費30%の位置付け、措置というもののロジックをまず積み上げて、そこから先の産業界との間の間接経費というのは、これも参考に次、正にこの場だと思うんですけど、どう積み上げていくかという議論が次にあると思っていますので、根本的な考え、ここに出てきている、今や外部研究費で成果をしっかり大学等に出していただくためには組織的な取組との協働、共に働くということがすごく大事になっていますよねと。そこにはやっぱり間接経費という手段が極めていいですよねと。いろんな周りのことも考えますというところまでは多分一緒だったんですけど、そこの後、積み上げ方ですよね、そこはここの場の議論とはちょっと違うところはあるかもしれないなと。

【橋本主査】    そうですね、おっしゃるとおりです。経団連の幹部と話したとき、最初に言われるのは、自分たちにとって不満なのは、大学にお金を出しても、結局それは個人にばらまかれてしまって個人の研究にしかならないことで、でもやはり組織でやっておかないと物事はうまくいかないので、だからガバナンスを強化する必要がある、と、皆さんこういうことを言われます。でも、そのガバナンスを強化するためには、今言っているようなガバナンスできるようなお金を、そういう個々に配っている研究費の中から集めないといけない。産業界同士だったら個人には配らず、ちゃんとその会社に配るから、そこのヘッドがグリップしたお金で動くわけですけど、大学はそういう仕組みになってない。これを変えろと言われると、またこれは学問の自由の問題があって、実はそんな簡単な話ではないのですね。そういう中でどうやって折り合いをつけるのかというのが、この間接経費の一つの大きな手段であるというのが議論の一つの視点ではあります。これは一応解説ですけれども。
  上野山さん、いかがですか、この辺のことについて。これから大きな間接経費を出していただかないといけない世界ですから。

【上野山委員】    正直言いまして、これまで何度も産学連携を行いましたが、関心事の9割方はトータル費用です。だから先生とお話をする際には、この研究はこれぐらいでお願いできますねと、目標を決めて始め、全費用で価値を判断します。最後になってもちろん決算しますので、間接経費の使途については書類で頂いています。最初から間接経費どうのこうのという議論はほとんどありませんが、「この仕事をするのにポスドクは雇わなければいけません」という話があれば、それは必要ですのでお支払いします。だから、余り間接費のことを考えたことがなかったというのが正直なところですね。

【橋本主査】    そうですね。全くそれと同じことを経団連のある幹部から言われました。「研究費のトータルが決まっているのだから、それを渡して、それをどういうふうに配っていただこうと大学の勝手なので、そんなことはどうでもいい。研究をちゃんとやってくれればそれでいい」と。島崎さん、いかがですか。

【島崎委員】    いや、私も同じ意見です。

【橋本主査】    それに関して、國吉さん。

【國吉委員】    いや、そうなんじゃないかなと。つまり、対企業において外注で研究を発注するんだったらトータルコストで出すだけで、その中には当然マネジメントコストも全部入っているわけですよね。そういうので、実は意識改革が必要なのは大学の側なんじゃないのかなということと、教員が間接経費というのはまず必要で、どの程度何に使う必要があるのかということを認識し共有して、そしてそれに協力するということがむしろ必要なんじゃないかと思いますけど。

【橋本主査】    上山先生、どうですか。こういうのが今の日本の主流で、私もそう思うのです。どうですか。

【上山委員】    だから前から申し上げているみたいに、研究をやるためのコストがきちんとコスト計算できてないんですよ。ポスドクを雇わないといけない、フェローシップを出さないといけない、Stipend(生活支援金)出さないといけない、この部屋を使うのに部屋代を大学に払わないといけない、電気代だって払わないといけないって、そのコストがきちんと把握されていないために企業側だって納得できないわけで、だから、そういう意味で……。

【橋本主査】    教員の方も納得できない。両方ですね。

【上山委員】    うん、だから、30%って言われると、「じゃあもうそっちで30%勝手にやってください」って言われるんだけど、「これ、43%でしたよ」って言われたら、「何でですか」って言うと、きちんと計算していて、それは、43%間接に掛かるんだなということが分かりますけれども。

【橋本主査】    でも、産業界はだから、「いやいや、40%、50%でもとってください」って言って……。

【上山委員】    うん、まあまあそう。だけど、その内訳が分からないことに非常にいら立つわけですよね。だから、きちんとどこかで研究マネジメントのところでバジェットをきちっと押さえるべきだと。

【橋本主査】    そうですか。研究者はそうだと思うのです。研究者は、何で間接経費をとっていくのかというときに、「いやいや、こういう積み上げがあったでしょう」って言えば、これはしようがないなと思うわけです。でも、企業の方は、國吉先生も言われたように、どうやってくれてもかまわなくて、成果だけ欲しいということではないのでしょうか。上野山さん、違いますか?

【上野山委員】    説明不足ですみません。トータルの費用は当然ながらとても気にしています。その中で、例えば間接費も共同研究の中で使う費用だったら全く問題ありません。ただ、その中で上納金みたいなものがあれば、それは当然共同研究する側にとってみれば、「なぜそれが要るの?」とか「そこはもっと抑えられない?」という話になります。

【橋本主査】    そのトータルの中での上納金でもやっぱり気になりますか?

【上野山委員】    大変気になりますね。そういうのは、どのような形で使われるかが明確ではありませんので。

【橋本主査】    せっかくたくさん手が挙がっているので、順番に、では、岡島さん。

【岡島委員】    幾つかお話があって、トータル、大学全体の間接経費をどういうふうに使って、どのように学内の環境を改善していったか、あるいは強みを伸ばしていったかというのを是非説明していただきたいなと思います。
  あと、実際にお金を使う企業側の開発者、彼らは予算が決まっているので、大学との共同研究で、例えば今年500万の予算しか持っていませんといったら、もう500万円しか出せないので、それは枠ありきというのは間違いなくて、そうすると直接経費というのは減ってしまうということにもなりかねないとは思います。
  一方で、例えば、私、80%というのも見せましたけど、同じような研究をやっている先生なんだけれども、イギリスのこの先生が断トツにすごいと。直接経費はほかの先生、日本のこの先生だと同じぐらいなんだけど、8割上積みしても、なおかつこの先生の方が成果が期待できるので、こっちの先生とやりますというのはもちろんあります。ですから、研究そのものの強さ、価値というのも当然あると思います。

【橋本主査】    もちろん、それはそうですね。菅さん、どうぞ。

【菅委員】    アメリカにいた経験からいうと、すごく日本の大学が間接経費をいいかげんに考えているというのはいつも感じているんですけれども、アメリカの場合、例えば機械を研究費で購入します。そうすると、それは大学の資産として考えられていて、その資産を使うということは大学にどれくらいの間接経費が必要になります、その資産を維持するのにこれだけのお金が掛かるという、そういう非常にクリアな説明がアメリカの大学の場合はあって、で、共同研究するときにはこういうふうな間接経費が要りますよと。もちろん、共同研究するときには図書館も使うでしょうと。だから、そのときの費用はこれだけ掛かりますと。だから、非常にクリアな説明をすればいいんですけど、大学がまだそこまでできていないというのが一番大きな問題ですね。だから、間接経費の問題は、やっぱり大学側がかなりクリアに間接経費にはこういうものが含まれていますというのを出さないと、幾らたっても多分、企業側からすると理解できないということになると思うんですね。そこをどうするかということは非常に重要なポイントじゃないかなと思いますね。

【橋本主査】    松本さん、どうぞ。

【松本委員】    KRIのケースでいきますと、やっぱり見積りをしっかり出さざるを得ないわけですね。KRIなんかは、正直言いまして、大学に比べてオーバーヘッドはものすごく高いんですよね。もうびっくりするぐらい。でも、要は、支払意思額をいかに上げるかという努力をするわけですね。つまり、2,000万頂いたら、その2,000万に対する結果を出すという。成果報酬、成果のギャランティーはKRIの場合はなかなかできないんですけれども、頼まれたことをきっちりやりますと。その代わりこれだけの費用です、その内訳はこれだけですと、これはもう明確に出さざるを得ない。オーバーヘッド費は比率は相当高いと思うんですけど、大学に比べて。これ、10%ですか、本当に、大学。これ、えらい低いなという。ただ、大阪ガスが大学に期待する場合は、幾ら2,000万であっても、3,000万であっても、この先生でこういう研究成果が出るのであれば、その中の間接費が10%であろうが、20%であろうが、それはやっぱり期待しますよね、研究成果として。ただ、うちみたいに子会社、グループ会社、大阪ガスケミカルみたいな子会社は非常に厳しいので、例えば1,000万円、ある高専の先生に出そうとしているときに、半分以上はTLOが持っていくとか、そんな話を研究者から聞いてしまったりしたときに……。

【橋本主査】    だから、問題はそれなのですね。

【松本委員】    直接聞いたわけではなくて、実際、研究をやる研究者が「いや、うちにはこれだけしか入りません」みたいなことがですね。ただ、それは、形態としては余り言わない方がいいんじゃないかなと。大学経営として考えれば、そこのクレームはクライアントに言うべきではないという気はしますけれども。
  済みません。

【橋本主査】    渡部委員、どうぞ。

【渡部委員】    整理すると、やっぱり大学の問題というのはあって、私、前、計算したら、100万円ぐらいで共同研究を受けて、10%とかで間接経費とすると、それを受ければ受けるほどアドミニストレーションは苦しくなりますね。主たる研究者のエフォート比率の一部しか多分払われてないような状態になるから、それはもうどんどん苦しくなるわけですよ。逆に言うと、それで今までやってきてしまったのですよね。これがやっぱり最大の問題で、それを本当にちゃんと計算するとやっていけないはずなので、それがちゃんと計算できて、それが示せるということがまず大前提だなということがあります。
  それから、実は企業側も、私が例えばどこかの企業側にいたときに、この話ってやっぱり面倒くさい話ですよね。予算がどこにどういう形であるかで、企業の研究所が予算を持っていて、その中で何かこれをやろうとしたときに、いや、間接経費が50%になったから半分だというような話になっちゃうと、そこは本当に抜ける手段があるのかとか、その予算はもっと大きなところから出されていて、大きなプロジェクトの組成のときに説明がされればいいようなケースだとか、あるいは事業部が持っている費用で使っているケースだの、これ、多分いろいろあるんじゃないかと思うんですよね。説明ができればいいやつと、あと経理が関係してくる話だと、これは結構大変なんだと思うんですけど、多分もうちょっと細かくそういうケースは検討していただく必要があるんじゃないかなと思うのですけれども、いかがでしょう。そんなことなくて、何でも大丈夫ということであればいいんですけど。

【橋本主査】    魚崎委員、どうぞ。

【魚崎委員】    アメリカの話が多いんですけど、私、オーストラリアの大学で学位を取った関係で現在でもオーストラリアの大学と関わりを持っており、オーストラリアの大学の状況について述べたいと思います。各大学のホームページには明確に間接経費が必要であると記載されています。研究を実施する上では当然、インフラも利用します、コンピューティングシステムも利用します、ライブラリーも利用するでしょう、間接経費はそういったものの維持に使われていますといったことが書かれています。大学ごとに具体的にポリシーが明示されています。しかも、人件費としてクレームしたものに対してはオーバーヘッドは何十%、他のものについては何十%というふうにより細かく書いているところもあります。逆に、研究者としての立場として感じるのは、獲得した研究費に付随する間接経費を本当にどう使ってくれているのかということがはっきりしていないということです。研究費を確保した研究者の研究環境をよくしてくれているのかなとか思ってみたり、不満が何となくぶすぶすしています。そういった意味からも、研究機関は明確に研究あるいはインフラストラクチャーをサポートしています、それがとってきた人にとってもプラスになって研究がスムーズに進みます、といったことを明示する必要があります。そういうことが明確になれば、間接であろうと直接であろうと研究を進めるために使われているんだということは納得できるんじゃないかと思います。

【橋本主査】    三木委員、どうぞ。

【三木委員】    この共同研究に関わる間接経費というのは、私自身の経験で――大学にいたときですね。きちっと全ての経費を見積もったことがあるんですね。で、企業に出したらちゃんと決裁が出るんですね。後で間接経費分もそこにいっぱい入っていたんですけれども、大学の方が10%しか要らないから、あとの分は何とかしろと、こういうふうなことが起こっているわけです。だから、こういうのは契約問題なので、何%がいいとかいうのはそれぞれの大学の力量に任せるべきで、そうしない限り、逆に妙な、国が基準なんぞを作るというのは、民と民、国立大学法人は一応公的機関ではあるけど、そこには余り干渉する必要はないと思うんですね。だから、この問題について国と国立大学法人との間というのはちゃんとしておいていいと思うけれども、民との間については、逆にこれを決めると、知的資産マネジメントをやらせようとしているこれと相反するんじゃないですか。だから、ここはもう任す方が僕はいいと思うんですけど。

【橋本主査】    おっしゃることはそうなんですが、今ここの委員会で、民とやるときにはこうしなければいけないなんていうことは出せないです。だって、お金を出すのは民だから、「それだったらやめます」と言って終わってしまいますのでね。だから、今、何をやるかというと、しっかりと整理して示すことだと思います。今ここで議論されてきたようなことが実はもわもわっとした状態にしかなくて、これは大学の研究者もそうだし、それから企業の方もそうなのです。それをしっかりと、こういうものだったと整理して、それであと任せてしまうのも一つの手だと思うのですね。でも、それではやはり何も変わらないということもあるので、幾つかの代表的なパターンを示して、あとは当事者同士の話で決めてもらうとか、そのようなイメージです。

【三木委員】    私もファクトは示した方がいいと思うんです。こういうファクトがあると。そして当事者同士で決める問題だと。議論をやめろと言っているわけじゃなくて、国として最後までガイドラインみたいなのはきちっと出すとかそういうことじゃなくて、ファクトを整理して、大学、産業界に提示することが一番大事なんだという意見です。

【橋本主査】    それはもう全く同じ意見です。もちろん結論が出ているわけではないですけれども、ただ、確実に言えるのは、こうしなければいけないと国が決めたら民間がみんなやめてしまったということになると、これは本末転倒です。なので、そういうことには多分ならなくて、どういうような形でこれを出していくかということにしても、今おっしゃったような形が私は一番いいのではないかなと思います。
  西村委員、どうぞ。

【西村委員】    おっしゃるとおりで、私は、民間から大学に入ってはっきり思ったのは、さっきおっしゃったように計算する力ないですよ。間接経費を積み上げていって、その感覚もないところに計算の仕方もないということなので、ここはやっぱり、もし間接経費を上げるにしろ、制度にするにしても、大学の在り方みたいなものは、この後議論されると思うマネジメントの方で、これは大学としても真摯に反省しなあかんと思いますよ。それができるような体制を創ってきてない。独法化後、本当はそれをしっかりやるべきだったんですけど、まだそこはできてないですよ。やっぱりそうやって企業からお金を入れてきて、30%もらうというのなら、それをしっかりと内訳出せるような体制にしないと。少なくとも地方大学は、残念ながら今のところその力はできてないです。できてないけれども、できるためにちょっと逆のことを言うと、人員はどんどん減ってきていて、その余裕もないのも確かです。でも、それをきちんとやっていくようなマネジメントをやっぱりちょっと立てないと、多分この議論はいつまでたっても動かんですよ。と僕は思います。

【橋本主査】    はい。それでは、時間もちょうどいいので、マネジメントも含めて拡大しますが、今、この間接経費の議論がこうやって高まっているので極めて重要な段階にあると思っています。この出し方を一歩間違うと、「大学はとにかく運営費交付金が減っている分を間接経費で埋め合わせようと思って、金、金、金、金、金、金と言う」と、産業界もほかの省庁も言いかねません。実際、そういう雰囲気があります。ですので、これの打ち出し方は極めて重要です。本当に一歩間違ってしまうとせっかくやってきたことが逆に振れる可能性もあるし、一方で、これだけのことがそ上に上がって議論されているので、しっかりとした位置付けとうまい打ち出し方をすれば、過去なかったような形でこの問題が取り上げられると思います。結局、マネジメントがどれだけグリップが利いているかとかそういうところにつながっていくので、そこに話をいかにつなげていくかということに拡張して、この後、残りの時間を議論しましょう。では、上山委員、どうぞ。

【上山委員】    これ、ほかのところでも橋本先生に申し上げたと思うんですけれども、間接経費をきちんとさせるということが実は大学のマネジメントに近づく本当にいい手段なんですよ。間接経費を個々の大学がどれぐらい必要かということを、内部のことが分からなければ積み上げられないですから、ということは、内部の全てのプロジェクトに関してきちっと把握できて初めてそれができるんですよね。したがって、個々の大学の間接経費のパーセンテージが違うのは当然なんですよ。ということは、これは理想論だって必ず橋本先生にまた怒られるんですけれども、今できないって言われるんですけど、実はこの間接経費というのは本当にそういう意味での一里塚なんですよ。マネジメント改革の一里塚。かつ、国立大学の財務諸表はひどいですよ。あそこからそんな経営戦略を立てろということがそもそも無理というか、できないように作ってあるんですね。手足を縛ってあるんですね。だから本当のことを言うとそこから変えないといけないんですよ、それはもう。そういう意味で、マネジメント改革というのは全ての領域に関わってきて、結局、研究不正もそうだし、例えば寄附金を受けるといろんな問題が起こるのも、マネジメントできちんと研究者を守っていかなければいけないのも、完全にそこは理解できなきゃできないわけですから。一つのきっかけは、この間接経費というものを個々の大学できちんと算定しろというところからあるんじゃないかなと思って、結構いろいろしゃべっていたんですけど、どうしても30%というのがもう決まっているんですね、これは。これはもう戦略的に決まっているのか、何かよく分からない。どうやらここから行こうということになっていることは分かるんです。

【橋本主査】    いやいや、決まってないです。産業界との間接経費については、これは決まっていません。

【上山委員】    でも、原則的にいうと、原則の話はやっぱりそこだと思うんですよ。これからどれぐらい自分のところの研究マネジメントをやっていくかを量っていくためにも間接経費、あるいはヨーロッパではフルエコノミックコストというんですけれども、完全に全部のコストを把握できるかどうかと。それが知的資産マネジメントの根幹だという気がしますね。

【橋本主査】    大変賛成するんですけどね。

【上山委員】    戦略的には分からないです。

【橋本主査】    現実論ですね。だから、来年の4月からやってもらわないといけないようなことを今議論しているというか、来年の4月からやってもらうべきことの提言を是非したいと思っています。絵姿は上山先生の言っているとおりで、それがきれいですよね。でも、かといって中途半端なことでは……。

【上山委員】    きれいだけど、実現できないということかしら。

【橋本主査】    どうぞ、進藤さん、いかがですか。

【進藤委員】    いや、私は上山先生がもともとおっしゃっているのと同じように「間接経費はきちんと積算すべき」という問題意識でいて、大学に来てなかなか実務的には難しいなというのをむしろ実感している方なのですけれども、留意すべき点として二つあって、一つ目は解釈の問題で、運営費交付金が減る分をできるだけ競争的資金とか民間等のお金で得るということになると、本当に大学全体の全てのコストのうち直接経費で要求できない分を間接経費の適用範囲として考える必要があるという考え方。他方で、今、企業の方々がおっしゃっているのは、このプロジェクトに本当に必要な分とかアドミニストレーションを強化する分ということで説明がつく範囲に限定する考え方があるわけです。

【橋本主査】    進藤さん、ちょっとこれは、言い方を間違えないように気を付ける必要があります。運営費交付金が減った部分を間接経費で埋め合わせするという概念ではないですよね。

【進藤委員】    いや、考え方としてはありうるんですよ。

【橋本主査】    それを前提にして……。

【進藤委員】    前者はさっきの金、金、金と言いかねないというのと同じ発想。

【橋本主査】    そうではないということを前提にしないと、ここでの議論が全て崩れますので。

【進藤委員】    ええ。でも、今の議論ははっきりとちゃんと両者の解釈を認識した上で、前者ではないということをここで言うにしても、その区別をきちんとやらないと、そういうところでももう解釈の混乱があると思うのです。それと、二つ目の問題として、実際にでは積算しましょうということとして費用を見ていくときに、実際のプロジェクトをやるときには、いろんな本部も含めて関係者が実際に手間暇かけている時間コストを算出するという話もあるでしょうし、さっき指摘があった例えば設備を使うその費用を積算しようといった場合に、お国の予算で施設を造らせていただいたときには、減価償却を考えない実態があるので、家賃・利用料をどう設定するかといったところだって実際には問題があるわけです。そういったようなところは多分幾つか検討すべき論点として考えておく必要があると思うので、そういう論点を洗い出した上で、そこについてそれぞれの大学としてどう考えるというふうに包括的に検討して、毎回そのプロジェクトごとに積算をしていたら死んでしまいますから、年に一遍とか5年に一遍ぐらい計算した結果、間接経費率については大体このパーセンテージでうちの大学は設定しますというような、ある程度そういう簡素なやり方で計算していく方式も大学によっては当然認められるべきでしょうし、そういったことについてある程度の合意が得られるような場を設けて議論をテクニカルにしていくということは、僕は大事じゃないかと思っています。

【橋本主査】    ありがとうございます。松尾課長、ここは重要なところなので、しっかり整理してください。運営費交付金が減ったところを競争的資金の間接経費で埋め合わせするという概念ではないということです。それで、どういう視点で間接経費のことを議論しているかということを1回整理してください。これは大変重要なので。

【松尾課長】    さっきも申し上げたんですけど、具体的には正にきょうの資料6の4ページ目の(3)のところに書いてあるんですけれども。

【橋本主査】    説明するのを忘れてましたね。

【松尾課長】    ええ、これをちょっと一言で申し上げますと、4ページの(3)に競争的研究費改革というのがあって、この前提のところに運営費交付金がどうのこうのなんていうことは一切認識をしていません。ここでは、パラグラフの二つ目ですね、「同まとめでは、」とありますけど、私どもの検討の中では、その方向性として、科学技術・イノベーションをめぐる状況変化からちゃんと外部資金で成果を出さなければならない、いい成果を出していこうという観点、ある意味のみから考えて、産学連携を含めた分野・組織を超えた総合力を発揮していかなければ、もう時代に太刀打ちできる成果が出てこないと。それからもう一つが、若手研究者支援とか設備・機器の共用を含めて基盤をちゃんと持続的に確保していかなければ、1個1個ぶつ切りであっては駄目だよね、全体的に死んでしまうよねという、そういう方向性のためにそのツールとして、ほかのこともいろいろ考えると間接経費というのは一番良いやり方であって、段階論かもしれませんけど、少なくとも国から見たときには30%の措置をちゃんとして、一番下に出てくるんですけど、多分、30%の措置を全部するだけではなくて、もう御議論が出ていましたけれども、大学がその30%の、少なくとも国からの競争的研究費からの30%の間接経費で何をしたのか、するのか、何をしたのかということは公表する仕組みは併せて導入しましょうねと、ここまでが私どもの議論です。

【橋本主査】    ちょっとうっかりしていて、これを説明していただくのを忘れていました。そうしましたら、ここで第1次提言の(案)を10分ぐらいで説明してください。

【山下室長】    では、既に説明しているところははしょりながらやります。
  目次の次、ページをめくっていただいて、「はじめに」のところでございます。本検討会では、各大学の知的資産マネジメントの在り方、各大学が持つヒト・モノ・カネの研究経営資源をどのようにマネジメントしていくべきかについて、又は理想的なマネジメントを実現するためには、どのようなシステム改革が必要となるかについて検討を進めてきましたと。第1次提言では、全学的な知的資産マネジメントの必要性、新たな産学官連携の在り方、イノベーション実現に向けた財源の多様化に向けた改革の3点に焦点を当てて議論の結果をまとめましたと。なお、今後は、オープン・クローズ時代における知財マネジメントの在り方、民間との共同研究における間接経費の取扱いに関するモデルの検討について検討を行っていく予定でございます。
  次、2として、「昨今の大学改革を巡る議論の状況と本検討会の位置付け」というところで、今、既にこの委員会の前提というところでしょうか、ガバナンス改革であるとか、国立大学法人運営費交付金の在り方についてであるとか、先ほど松尾課長の方から御説明ございました競争的研究費改革についての議論が動いていますと。本検討会の位置付けは、そういうものも踏まえて、大学を取り巻く環境や大学が社会の中で求められる役割が大きく変化する中の学内の知的マネジメントの在り方等について検討することを目的にしましたよというところでございます。
  3に入ります。「議論の前提としての留意点」、これは先ほど説明をさせていただきました。
  6ページの4、「全学的な知的資産マネジメントの必要性」というところでございます。4の(1)全学的な知的資産マネジメントの重要性の認識拡大というところで、大学全体として知的資産の最適配分を実現するためには、部局単位ではなくて全学的な知的資産マネジメントが必要不可欠ですよねと。各大学の執行部、各研究者及び関係者がその重要性を再認識する必要性がありますというところをうたっております。
  (2)として、知的資産マネジメントを担う人材の育成というところで、二つ目の丸でございますけれども、学長を支え、経営の一翼を担う人材として、教育や学術研究に深い理解を持つとともに、知的資産マネジメントの能力及び経験を兼ね備えた専門人材が必要不可欠ですねというようなことをうたっておりまして、次のページをめくっていただけると、三つ目の丸になりますかね。将来大学の知的資産マネジメントに携わるような各大学の優秀な教職員に対して、大学という巨大かつ特殊な組織をマネジメントするためのスキルや知識等を教育する機会やシステムを積極的に設けていく必要があるのではないかといったところを書いてございます。また、下の丸のところで、マネジメントする分野の専門性等によっては、外部からの人材登用が効果的なケースが存在するところと。学内の人材にこだわることなく、各大学の状況に応じて柔軟な人材登用が求められますねというところをうたってございます。
  次に、5として「新たな産学官連携の在り方」というところでございます。オープンイノベーションを重視するというような傾向が生まれていて、新たなイノベーションシステムの構築が求められていますと。それを支えるために、イノベーションシステムを支える多様な人材の重要性というのはますます高まっていると。
  (1)として、組織と組織による産学官連携の深化・進化の必要性というところでございまして、2個目の丸でしょうか、産学官連携を通じて社会にイノベーションを起こしていくためには、研究者個人にとどまらず、大学組織も一体となって取り組む、大規模共同研究や異分野融合の共同研究が今後ますます重要となってきますねと。「個と個」の重要性を認識しつつも、大学組織と民間企業という「組織と組織」による共同研究についても活性化を図っていくことが重要ですと。次の丸のところでいうと、その後半部分のところで、きょうも紹介がありましたけど、スタンフォードのCARSという例でしたでしょうか、研究開発の初期段階から同業種を含めて多数の民間企業が参加し、学内に協働の場を設置して、世界レベルの教育、研究、事業化に向けた取組を一体的に行えるような産学官連携システムの構築とそれを大学組織としてマネジメントするための体制整備が必要ですねと。上野山先生のプレゼンでも出てきたと思いますけれども、そういうお話があると。また、産学協働の場の構築に向けては、民間企業から資金や人材を積極的に投入することが必要であると。特に研究全体をマネジメントするためには、共同研究における間接経費が重要な資金になると考えられるというところでございます。これについては、きょうの岡島委員のプレゼンのところで組織的連携においては連携センター長裁量経費等々の御説明もあったと思いますけれども、そういう要素もここに入ってくるのかなと思います。
  次のページのところに行きます。(2)で大学発ベンチャーを通じたイノベーションの実現というところで、一番上の丸のところで、ベンチャーのところで、大学の研究によって生み出された革新的な技術を基にビジネスを展開する研究開発型の大学ベンチャーというものは、高い競争力を持って、グローバル・ベンチャーへ成長する可能性を持つというところで、これまで主流であった大企業・中小企業に加えて、社会実装に向けての大企業・中小企業を加えて、今後は大学発ベンチャーというものがますます重要になっていきますねというところを書いてございます。
  で、(3)で、産学官連携活動に参加する学生への支援というところで、技術情報流出リスクのようなことのリスクマネジメントというのを大前提にして、エフォートに見合うだけの経済的報酬が得られるような形で共同研究が結ばれるように、大学と民間企業は対話を進めていくことも重要ですねというところを書いてございます。
  6として「イノベーション実現のための財源の多様化」というところで、民間企業と共同研究における間接経費の取扱いのところと、それから次のページをめくっていただけると、民間企業から大学への寄附の取扱いというところを書いているところでございます。
  簡単ですが、以上です。

【橋本主査】    はい、ありがとうございました。
  ということで、これが今、骨子となっているわけです。あと40分ぐらいありますので、全体に拡張して議論したいと思います。
  上野山委員、途中で退席だと思います。もし何かありましたらここで。
  よろしいですか。

【上野山委員】    はい。

【橋本主査】    是非少し広げて御意見いただければと思います。今、お金の話から入ってきましたけど、結局、全て、マネジメントをどういうふうにしていくかということにつながっていく話でして、どうぞ、どの視点からでも結構です。

【永野委員】    いいですか。

【橋本主査】    はい、では永野先生。

【永野委員】    間接費を増やすというのは非常に重要だと思います。日本の大学の機能ですね、産学連携とかTLOの組織とかやっぱり非常に弱いので、ある程度ガイドラインを示してでも間接費を多くした方がいいかなと思うんですけれども、一方で、幾ら産学連携本部の機能を強くしても、TLOを強くしても、やはり最終的に財源をとってくるのは研究所長だったり先生だったりするわけですね。そういう先生はきちんとしたビジョンを示して民間に対して訴えない限りは、なかなか連携本部とかTLOじゃ無理だと。そこに期待するのはちょっと無理じゃないかなと思うんですね。
  一番違うかなと思うのは、アメリカの先生の場合はハングリーなんですよね、これに関して。もちろん、競争的資金書くためのプロポーザルにしたって、いろんなことに訴えるためのプレゼンテーションにしたって、向こうがハングリーで、日本はハングリーではない。ハングリーでないのは、要するに、お金をもらえなくてもずっといられるわけですね、最終的に教授になってしまえば。そういう中で、大学の組織の学長とか上の人が組織でというんじゃなくて、もうちょっと下のレベル、少なくとも学科長とかグループのリーダーとかがもう少しハングリーで、そうしていかないとなかなか……。この提言に入れられるのは非常に難しいと思うんです。人事に関係するのですが、それがないと、結局、いいプロポーザルが来ないんだよというふうになってしまう。だから、アメリカの大学には1,000万出すけど、日本は100万だというデータをトヨタの方とか皆さん示してもらえるわけですね。そうすると、何だ、やっぱり日本がもう少し先生がハングリーでビジョンが示せるような施策があればいいかなとちょっと思います。ただ、今回のこれに入れられるかどうかというのは非常に微妙な問題だと思うんですけれども。

【橋本主査】    はい、岡島さん。

【岡島委員】    済みません、最初に訂正させてください。海外の先生が1,000万で国内が100万というわけではなくて、大体同じ額になりますが、分布としてはやや海外の方が高いかもしれません。
  私が申し上げたいのは、組織的連携を強化するためにセンター長裁量予算を別枠で付与しています。これ、なぜかというと、やっぱり研究者、先生方は横の連携を全くしようとしないので、あるいは、ある組織のポテンシャルを更に引き出すためには、新たなシーズ探しとか横連携のためのお金が必要。あるいは、権限がやっぱりないんですね。この先生にもっとこういうことをやってくださいというのをセンター長の権限でやってほしい。そのためにはやっぱりお金を持ってないとできないでしょうということで、お金を渡そうということを考えております。というか、実際にやっているところもあります。
  あともう一つは、権限の面でいうと、大学の経営層とか、あるいは学長・総長に絶対的な権限を持っていただきたいと思っております。かつて、ある大学から「文科省の大きなプロジェクトをとるのに是非協力をしてください。是非トヨタさんとがっつり組んでやりたいので」ということで話を始めました。で、大きな構想を描いていきましたら、その間に何か細かい話、細かい先生方が何かたくさんついてきて、あるいはそのほかの企業さんもばーっと寄ってきて、いや、これってどういう成果になるのとか、どういうビジョンにまとめていくのとかいう話になっていって、改めてそのときは総長あるいは工学研究科長、直談判をしましたが、やっぱり力がないんですね。結局、プロジェクト的に、残念ながら思ったような提案にはならなかったというのは非常に残念で、そういう面でやっぱりトップ、企業では当然トップダウンで意思決定を必ずするわけなので、何らかの権限を強化すべき手段を渡すというか、上げるべきです。それがまずはお金だということであれば、お金を持たすべきかなというふうに考えます。

【橋本主査】    岸本次長、どうぞ。

【岸本次長】    先ほど私、間接経費の検討モデルチームをやりたいと言ったんですけど、それは現状のアリバイを作って、それこそ200万だったのが実は260万だったというようなことをやるんじゃなくて、先ほど岡島さんもおっしゃったように、もう少しマネジメントを利かせて、大型連携、産学連携を進めていく上で、そういう前提であれば、設備のそれこそ共有化も含めてこういう間接経費であるべきというような議論をするチームを作りたいと思っておりますので、そこだけよろしくお願いします。

【橋本主査】    ほかに。上野山委員、どうぞ。

【上野山委員】    この会議が始まってからずっと気になっていたのが、企業から純粋にお金を大学に持ってこようと思いますと、Whatの部分を大学側から提案する以外に私はないと思っているんです。今日もずっとそれを言っていたつもりなのです。ただ、そういうことをやろうと思うと、経営が分かっていて、研究の内容も分かっている人がどうしても要ると思うのです。それを大学の先生にやっていただくというのは時間的にも非常に難しいと思いますし、やはりそういう別組織を設ける以外にないのではと思います。ただ、いろいろ調べてみますと、実はURAというのはそれに近いものだったのではないでしょうか。ですから、URAでもし不十分であるのなら1度レビューされてみて、それに足らない部分を何かうまく提案に入れていくべきではないかと思いました。

【橋本主査】    URA施策は山下室長のところでやっている事業です。
  島崎さん、何かコメントありませんか。どうぞ。

【島崎委員】    企業の理屈で話すと、確かにマーケティングというのはすごい大事だなと。要するに、誰かからお金をとろうと思うとやっぱりマーケティングってすごい大事で、1回目のときも言っていましたが、お客さんは誰なのか、そのお客さんが知るべきで知らないことは何なのかということを考えないと、多分、提案というか、研究に結び付かないということと、あとは、間接経費の話も、作業を売っているのか、価値を売っているのかという話で、僕は研究なんてコモディティーを売っているわけじゃないと思うので、別にそんな明細を出して「いかがでしょうか」みたいなことをやってとるような仕事じゃないんじゃないかなと。僕が企業として買う側だったら、数字を見ると「何でこんな金がかかった」なんて多分突っ込みたくなると思うんですけれども、基本的には価値に対して対価を払っているし、しかも、成果が出るか分からないものに対して払っているわけですね。で、間接経費率が幾らというのは正にビジネスモデルそのもので、例えばトヨタ自動車とBMWだって間接経費率は全然違うと思いますし、何に金使ってどういう価値を提案しているのかというのは本当にビジネスモデルそのものなので、そこが多分大学ごとの戦略的変数になっていくのかなと。要するに、中身で勝負する大学は多分経費率が低いのでしょうし、ブランドだとか横連携でいろんな知識と結び付けられますと、そういうサービスを提供できるんだったら間接経費は高いと思いますし、それが多分差別化になっていくのかなということで、岡島さんとかの感覚はちょっと分からないんですけれども、企業側の理屈だと、多分、価値に対して適正な対価だったらお支払いするし、成果が出ればもう一回払うでしょうしということ以外はないのかなということと、あと、先ほど財務諸表がひどいみたいな話があって、私は知らなかったんですけれども、結構マネジメントする上で外部の人とかを連れてくるにしても、多分、ヒト・モノ・カネが、公開するかどうかはちょっとおいておいて、可視化されてないと誰もマネジメントできないと思いますので、そこは多分整備しないと話は進まないのかなという気がします。それを公開するとまたあれだと思うので、別に公開しなくてもいいと思うんですけれども、ヒト・モノ・カネの可視化ができないと多分マネジメントもできないのかなということを、済みません、ちょっと一般論的ですけれども、思いました。

【橋本主査】    はい、どうもありがとうございます。
  ほかにいかがでしょうか。はい、川端委員、どうぞ。

【川端委員】    お金の話もあれですけど、さっきからの話で、産学連携の次のステージという意味では、組織型であるという。確かに悪い例っていろいろ出てくるのは分かるのですけれども、今、大学自体が大きくかじを切っていまして、大きい大学が中心かもしれませんけど、泳がないと溺れるぞという状態で、みんな暴れまくって、一生懸命泳いでいる。で、今の大学を見ていただきたいというのが1点。
  その中にはかなり組織型で動こうというところがあって、その段階ではやっぱり研究者同士での話合いはもうやめてほしいというのが私たちの考え方で、あるレベルはやっぱり決裁権ある者同士で話しましょうというのが、私たちの今の大学が企業の方々とやろうとしている。ただ、100万円の話、こんなものやったって仕方がないので、やっぱり1,000万以上の話、大きくステージアップさせるのであれば、うちの大学の場合だったら、ともかく決裁権のある者同士で話しましょうと。その決裁権といった場合に、研究所の所長レベルでは駄目で、もう一段上のレベルが出てくる必要はあるというのを是非認識していただけると。
  そうすると、間接経費の考え方について、1点、うちが出した間接経費はどこに使ったのかをはっきりさせてくれという場合に、1件1件の間接経費がどこに使われたという勘定の仕方と、間接経費を全部集めて丼にしたら、大体うちで20億とか30億になった場合、それをどこに使ったかって、それは幾らでも話すことができるという。だから、そういう表現になるだろうなって、さっきからずっとお聞きしていて、要するに、上の決裁権の高いところで話せば話すほどそういう話になっていく。低い研究者同士でやればやるほど、この机に使ったみたいな話になっていくという。というので、上の話になっていった上で、じゃあ、お金は一体間接経費としてどの辺にあるべきかという話になって。私自体、大学の経営側をやっている者なので、財務諸表とかあれをひっくり返して、1回、ダイレクトコスト、インダイレクトコストを出してみようって、諸表はほったらかして実際に数を数えてやってみた数字があるんですよ。あるんですけれども、いざ、じゃあこれを公開しますかって言われると、本来は財務諸表から出てくる数字で作るべきものなのが間接経費の比率であったりそういうものなんだけど、その財務諸表自体がバルクにいろんなものが全部足されてしまっていて、分解できない状態になっているというのが今の状態なので、多分、大きい大学は裏でいろんなデータを持っています。それから勘定しようと思えば勘定はできる状態にあるというのが今の状態というふうに御理解いただける。ただ、それを公開しろと言われると、事務を通すと絶対出てこないですね。「出せません」とかいう話に……。はい、という話でした。

【橋本主査】    三木委員、どうぞ。

【三木委員】    今、この第1次提言をずっと斜め読みしていたんですけれども、一つは、これが第1次提言だとして、第2次提言を次、何らかの形で出すとして、そうだとすると、今ここで提起している問題、いろんな必要性の提起はかなりされていると思うんですね。それに伴って、制度上、国も含めて国立大学法人の制度上、変えないといけない。ひょっとしたらすぐではないでしょうけれども、先ほどの国立大学会計基準の、何も読めない問題であったり、それから、人の問題にしても、ヘッドクオーターのところだけではなくて、部局のところであったり、いろんなセグメントでの人の問題、こういった人事の問題、いろんなところで、ひょっとしたら今後、構造改革が必要な問題があるのか、ないのか。そういったことは、最後に今後の方向みたいなことで少し検討課題を書いておくことは大事なことだなと思います。
  それから、最初の議論のスタートポイントとして、やはり大学が旧来の大学とは異なって、社会との非常に密接な関係のある大学という存在になって、その時点でステークホルダーとの関係をやはり「はじめに」のところとかそういったところでしっかり書くことが必要だと思うんですね。間接経費であれ、寄附金であれ、いろんなことは、ステークホルダーに対する説明責任の話でもあるし、それが自らの価値を高めることにもつながるわけですよね。そういったステークホルダーとの関係というのがかつてないほど高まっているということは、しっかり時代認識として書いておく必要があると。
  その上で、ステークホルダーの利益の最大化ということも非常に大きな観点だと思うんですね。そういったところが、非常に大きな位置付けをしっかりとした上で、現状、そして必要性、ここまではきていると思うんですね。
  その次、それが制度上、本当に隘路に入ってしまっている問題なのか、それとも幾つかの手を打って、例えば具体的に知的資産経営に関して言うならば、いろんな指針なり、それから指標、成果指標とか活動指標とか、こういったものの案をいろいろ示して、大学の側にこれを活用してもらうことが大事だとか、そういうことも多分具体論としてはあるんだと思うんですけれども、そういった今のこの制度の中でやれることと、制度の中でできないことは、どこかで事務局の方では整理していただくといいのかなと思っています。

【橋本主査】    はい、ありがとうございました。
  ほかにいかがですか。國吉委員、どうぞ。

【國吉委員】    ちょっと話が一段、細かいところに戻っちゃいますけれども、間接経費に関しては財務諸表の問題が指摘されていましたが、私も大学で、面積配分問題とか予算の精査とか幾つかちょっと見たことがあるんですが、例えばこのお金はなぜこの計算法でやることになっているのとか、そういうことについては出てこないとおっしゃいましたが、正にそのとおりで、それはなぜかというと、過去の非常に長い歴史の中で、ある時点でどこの先生とどこの先生が話し合ってこういう覚書で決めたという個別のルールが、ミクロ、何百という別々のルールがあるんですね。しかも、それを例えば公開すると、結構利益が対立する人がいたりして、かなり混乱が起こる場合があり得ると。ここがある意味、大学がこれまで長い歴史の中で引っ張ってきた非常に多くの矛盾が実は隠れているところではあるんですね。だから大変だというのと、一方で、そこをクリアにするという話は大学の知的資産にとどまらない、全ての資産というか、全ての組織、システムの再整理という話につながる可能性があるんですね。でも、これはやるべきかなという気はします。一方で、ものすごい大変なことで、非常に長い時間と労力は掛かるだろうと。それは一つ認識しておいた方がいいかなと思います。
  あと、間接経費については、基本的な意見で、これは多分既に共有されていることだと思うんですけれども、なぜそれが必要だということについて分かりやすく言っておく必要があると思うんですけれども、大学側からいうと、例えば大きな外からの予算をとったときに、間接経費がなかったら、本来それは今までの研究活動のために維持されているインフラとかマンパワーとかそういうものをそれに投入することになるので、もし間接経費ゼロの予算をとると、大学のほかの要素というのは完全に圧迫されるわけですね。だから、それ、とればとるほど大学は疲弊するという構図になって、本来、マネジメントを考えるならとっちゃいけないということになるはずなんですね。だから、正当なコストを、ちゃんと応分のコストを負担してないものというのは、大学として受け入れるのは自殺行為になるということ。逆に言うと、そこをきちっとはじいて出さなければ産学連携を進めるという効果は持たないということが、そこはもう共有しておくことだと思います。
  その上でもう一つ、間接経費の中身というのは例えばどんなものということは、今回この議論の中でも多分いろいろ認識が違っているような気がしまして、例えばポスドクの雇用費とかおっしゃっていた例がありました。それから、面積については微妙ですけれども、例えば研究に直接関わる人の雇用費というのは、我々の感覚では直接経費です。間接経費ではあんまり考えないですね。間接経費というのは、もっと基盤的なところで、その研究をするために当然建物も電気代も図書館もなければいけないんだけど、それはその研究のためだけに新たに設置するものじゃないというものは、当然、応分のコストを負担しないと駄目という、そっちの方と思う。例えば、こんなもんなんだというような間接経費についての認識も共有しておかないと、具体論になったときにすごく矛盾が生じてくると思いました。

【橋本主査】    はい。松尾課長、これは、少なくとも公的資金のところについての間接経費の位置付けに関してはかなり議論して、それでレポートが出ていますよね。

【松尾課長】    はい。

【橋本主査】    それを参考にして、産業界との共同研究の方に広げていくときに、これはどういう感じで使えるようになっていたのでしょうか。一応それを参考にしながらも、こちらはこちらで議論しないといけない構造でしょうか。

【松尾課長】    そうだと思います。先ほど申し上げた国の競争的研究費の間接経費の措置について考えた場合には、例えば知財管理とか、税管理とか、コンプライアンス問題とか、人事管理の問題とか、あと大きいのは、さっき施設の共用の話をしましたけれども、設備・機器の研究インフラですよね、あと研究の情報の扱いのところとか、そのインフラ面のところがやはり共通的にかかるところであって、今はそれが公的基金であっても間接経費を措置していないと、それが結果的に運営費交付金のところでめり込んでやられているところで全体的に研究環境の悪化を招いているということから、出すべきものはちゃんと出して、今は追加的にやらなきゃいけないことがどんどん増えて、そうしないといい成果が出ないからということで、間接経費は元に戻ってちゃんと措置しましょうというのが公的なところの整理であって、基本的には同じ考え方だと思っているんですけれども、産業界との関係においても。ただ、先ほど申し上げたように、そこのパーセンテージについては多分いろんな実態を踏まえていろんな議論があるので、正にここから次長が御提案されたように積み上げていって、あるモデルか何かをやりながら一番いいのをそれぞれ決めていくということではないかなと思います。

【岡島委員】    よろしいですか。

【橋本主査】    はい、どうぞ。

【岡島委員】    先ほど上野山さんもおっしゃったんですけど、先生と議論して費用を積み上げて決めますというときに、「間接経費30%って決まっていますから」というふうに先生から言われるので、多分納得できないんですね。各先生方がちゃんとその内訳、昨年の大学ではこういうふうに使いました、だからこういうふうなんですという紙を持っていて、それをもって企業に説明をされれば「あ、そうですよね」というのは多分すんなり落ちると思いますので、それは多分、大学の学内の中の問題というか、そこをちゃんと説明できるようにしていただければ、そのまま同じように展開できると思います。

【松尾課長】    よろしいですか。

【橋本主査】    はい、どうぞ。

【松尾課長】    済みません。先ほど資料にも書いてあって申し上げたところなんですけど、正にそのために大学として全体として間接経費の使用の戦略をどう考えて、実際どう使ったかということを全体として明らかにしていくシステムをこの機会に導入しようというのは、正にその趣旨であって、それだけで産業界の同意が全て得られるとはあんまり思ってないですけれども、それが多分御理解いただくための重要なツールになるだろうなとは思っています。

【橋本主査】    はい。ほかにいかがですか。

【魚崎委員】    今の話ですが、もう何回も指摘されていますが、研究者の間接経費に対する理解は非常に低いですね。さっき言われたように、間接経費はとられている、上納させられているというふうに受け止められています。ですから、大学側がきちっと研究者が納得するように説明しておく。それは、そのパーセントはともかくとして明確なポリシーがあって、その研究を行うためには絶対要るんですと。光熱水料、インターネットなどのインフラ、電子ジャーナルなど研究遂行に必要なものを用意するために必要ですと、研究者が納得するようにしなければならないので、それは正に大学のマネジメントの問題だと思います。ですから、今言われたようなことは理想ですけど、しかし実際には研究者がそこのレベルに行くのは、周りを見ているとなかなか難しいような気がします。

【橋本主査】    西村委員、どうぞ。

【西村委員】    例えば、こうやって議論されているこの場のことを理解できる研究者とか大学の執行部がどこまでいるかということを逆に考えた方が。恐らくですけれども、もう少し根底にある議論は人材ですよね、本当にこのマネジメントを。例えば、おっしゃることは分かるわけですよ。企業の方々、いきなり30%と言われて内訳が出てこなかったら嫌だと思うでしょうけれども、そんなの出せないですよ、今。出しているような人たちも計算もしてないですし、出そうかといったときにそれを分かる人たちもいませんしね。ちょっと極端なことを言いました。ただ、いずれにせよ、いかに大学経営をするかという、執行部を作るかということに対して、僕はもっと議論した方がいいと思います。
  ここにそういう論点が書かれているので、そこも少し、きょう間に合うのかどうか分からないですけれども、もっと議論を深めていただきたいと思うのは、私自身ももともと民間にいて、民間の企業経営をした人間として、今、大学の執行部の中でも大学の経営というのにちょっと携わっていますけれども、全く違いますね。先ほどおっしゃっていたように、数字も出てこないし、人事的なことも出てこないし、各研究科の中にはものすごく細かい話のルールが決まっていて、そのことはもう執行部が決めようが、そこが優先されるような仕組みになっています。確かに学長のガバナンスとしたときにも、これはやっぱり動かんところは動かんですよ。それを内部から上がってきた人材だけで大学を経営するということをやっている限りは、私はどこかに限界があると思います。じゃあ外から誰か連れてきたらいいのかというと、これは企業のルールと大学のルールはもう長い歴史の中で大分違っています。ちょっと言い方が悪いですけれども、突然入ってきた人が突然動けるというふうな組織になっていないです。そのガバメントのグリップなんか絶対利かんですよ。企業経営の考え方でいったときには必ず事務局組織は動かないです。それに教員は動かないです。でも、そこも含めて理解した上で、大学とはどう動かすかということを分かる人材をいかに創るかということはかなり重要だと思います。私は7年、8年かかってやっと大学のこと分かりました。今だったら多少動かす自信はあります。ただし、こういう人材をどうやって創るかということは、少なくとも例えば教授陣の中で若手はある段階からすぐに執行部に入れて、2年は執行部を経験させてからまた学部に戻して、学科長を経験して何かをするとか、10年ぐらいのスパンで教授をある程度経営層に対して育てるんだというぐらいのことを……。今の状況は、何だかんだ言って文科省からかなり縛られています。申し訳ない、きついこと言いますけれども。その中である面、自由にできるような環境になっているんですよ。各教授陣がかなり自由に動けるようになっています。そこも含めてもし今やるんだったら、文科省からそういうガイドラインを作るぐらいのことを逆にやってもいいぐらい。で、1回ちょっと、5年から10年かけて大学の人づくり、特に経営層づくりということを考えないと、幾らこの議論をやっていても、私は最後の最後に絶対詰まるような気がします。
 
【橋本主査】    菅委員、どうぞ。

【菅委員】    先ほどの議論、全く私も同意しているんですけれども、その人材ですね。経営ということで、資産マネジメントと、それから大学の経営的なことをかなり強く訴えていくということになると、どうしても誰が経営するかという問題がかなり大きいと思うんですね。先ほど話も出ましたけれども、現在の経営システムというのは全部下から大学の先生が選ばれて上に上がっていくというシステムで、結局、大学の先生たちで経営すると大学のそれまでの歴史を抱えてやらざるを得なくて、非常に大きな変革というのはなかなか起きにくいということで、かなりその経営にたけた人を、大学のシステムも理解してくれながら外の空気も吸っているような人というのをやはり経営の中に1人は入れないといけないというような。経営を全員外部の人というのは無理でしょうけれども、そういうことがすごい重要だと思います。だから、プロボストの話が何度か過去に出ましたけれども、プロボストはもともと才学の先生だったにも関わらず、そういう職に就くともうほとんど研究はやめて、その職を転々としながらいろんな大学を回って経営をしていくということはよくあるので、そういうふうなキャリアパスとしての経営を重視することが重要だと思います。例えばURAって先ほど話が出ましたけれども、結局、URAは大学の先生よりも下というような位置付けで、もう全然機能できていないというのが現状なんですね。それをどうやってあげるかというのはすごい重要なことだと思うんですけれども。
  以上です。

【橋本主査】    上山委員、どうぞ。

【上山委員】    僕はここのところずっと大学の経営人材の育成を文科省はやるべきだということは言っててそれはもう明らかに大学のマネジメントは普通のマネジメントじゃないんですよね。非常に難しい、こんな難しい組織はないんですよ。だから、ここに何人か大学のマネジメントをされている方がおられますが、もう頭が下がりますよね、そういうことをやられる。本当に難しい仕事で。
  ところが、関西のある有力大学に関わっていて思うのは、本当に内部の普通の教員は分からないんですよ。大学人は、このアドミニストレーションというものの役割の重要さが本当に分かってないんですよ。それをどういう形でやればいいのかというのは、いろいろスキームはあるんでしょうけど、産業界もそこに関わってもらいながら、諸外国の例も意識しながら、あるいは中央で行われている審議会なんかの議論にも参加してもらいながら意識改革が大学の中で行われないと、多分、上の方のトップ層はやる気があったとしても必ず選挙でリプレースされちゃいますから、結局、動かないんですよね。ということは、本来の作り込みのところまで足を踏み入れないとやっぱりこれは動かない。絶対動かないと思いますね。

【橋本主査】    青木委員、いいですか。

【青木委員】    一言言おうかなとちょうど思っていたので、ありがとうございます。ガイドラインを文科省が作るというお話がありましたが、それも結構ですけど、リーダーシップを発揮した人に御褒美と言ったらおかしいですけど、インセンティブをやはり与えるというのも一つの方法だと思います。ガイドラインに頼ってしまうとまたガチガチになる恐れもありますので、御褒美を、ちゃんとリーダーシップを発揮したリーダーに配るという、インセンティブを与えることは非常に重要なことだと思います。よろしくお願いします。

【橋本主査】    はい。ほかに。

【西村委員】    そのときも、補助金で出してもらったりとか、いろんな競争的資金のような形で出していると、とりに行くだけで実は疲弊するんですよ、人員の少ないところは。ですから、ある面、結果に対しての何か評価をしていただくのはいいと思うんですけれども。済みません、ガイドラインと言ったのは、そういう方向で指導してくれと、誘導してくれと。ちょっと言い方が悪いですけれども。でないと私も含めて教授陣というのは、内部圧力には、内部の話にはあんまり乗らないときがあるので、ちょっと誘導をかけてもらうにはそういうやり方も有りかなと思ったんです。あとは、引っ張ってもらうときに、ニンジンぶら下げられて走るというのは、ニンジンとりに行くだけでものすごく大変なんですよ、地方大学は。そこでもうほとんどの人間が疲弊して、次の力が出ない。だったら、逆に、しっかりとやったことに対して評価をしていただいて、じゃあ次やれという方がまだ助かるので、そんなに最初はお金なんて要らないんですよ。ですから、そこは多分、運営費交付金できちっと手当てしていただければ結果に出しに行きますと。出した結果に対して評価してくれて、次を考えさせてくれるような余力を実は地方大学としては求めたいとは思います。

【橋本主査】    吉田さん、今度、そういう方向で運営費交付金の議論をしていきますよね。是非ちょっと一言お願いします。

【吉田企画官】    はい。この間の運営費交付金の検討会の審議会まとめでも、今まで運営費交付金の方は評価というのは明示的にはっきりやっていたわけではございませんけれども、国立大学法人評価はともかくとしてですね。今回の運営費交付金の中では重点支援も含めて評価をしっかりやりましょうという方向性を出していただいています。また、学長裁量経費をまた別途新しく立てることにしておりますが、そこはどちらかというと実績を評価しましょうというような形の評価システムを取り入れた方がいいというような御提案を頂いておりますので、そこは正に学長のマネジメントの成果というものをしっかり評価した上で、運営費交付金にもそれを最終的には反映できるような形をこれから具体的には考えていきたいと、今、そういう方向性で考えております。

【橋本主査】    最後の一言が、極めて重要で、評価して交付金に反映させるという、そこまで今度踏み込んでやっています。
  実は、できたらきょうこの提言書を私に一任いただこうかなと思っていたのですが、今日も大分議論があって、とても無理だと分かりました。きょうの議論をもう一度整理していただいて、それで更に提言をごらんいただいて、是非ここはこうあるべきだとか、御意見をどんどん事務局の方にメールで送ってください。その上で、きょうの議論を入れた形でもう一回、この後に出していただいた意見なども入れて、次回、もう一度ここで議論して、意見が集約できそうであればそこで終えるということにしたいと思います。大変本質的な議論で、財源論からマネジメント論、そしてそもそも論にまでなって、これは非常に大きな議論になっていると思います。しかも、何度も言っていますけど、今、文科省周りで様々な議論がされて、提言書も出ていて、そこでかなり考え方が出ています。そういうものが全体に入ってくるお話になっていますので、どこまでできるかというのは、これは川上局長のお力だと思います。川上局長に最後、その辺の決意といろいろ感想を含めてお話しいただきたいと思います。どうぞ。

【川上局長】    そもそも大学の知的資産マネジメントと言っておきながら、もうこれは明らかに大学のマネジメントの問題に広がっているわけです。これはある意味狙っているところでもあります。大学が社会に触れることによってマネジメントが変わっていくということからすれば、産学連携というのはその全くの最前線にあるわけですから、いい題材として是非、大学そのもののマネジメントの在り方に向けて、引き続き、この1次提言をまとめるまでの間につきましても更に御意見を頂いて深めていくということをしたいと思います。
  と同時に、今、第5期の科学技術基本計画が作られている最中であるわけです。橋本先生にも御努力を頂いている大学改革の内容も第5期の基本計画に取り入れられるとともに、是非ここで頂いた提言についても何らかの形で第5期に入って、それによってこの5年間の方向付けがより高いレベルでコンプリートになるように努力をするという、こういうこともやっていくべきことであると思っているところでございます。
  いずれにしましてもお願いはしたいわけでございますが、実は間接経費の問題というのがもう一つこの中にあるわけですけれども、15年前に間接経費を入れたときに、その使い方についていろいろやりました。そのときに思ったこと、そして今思っていることというのは、間接経費というのは、民間の企業の方々から見ると、そのときに掛かった間接経費というようにも見えるわけですが、やはり組織を維持していく時間を超えたもろもろに必要なものということを是非間接経費の中に概念として入れていただきたい。例えば1年間の研究委託、これについて、その1年間に掛かる間接経費という概念だけではないと思います。大学がその研究を請け負うために必要となる事前・事後というものもいろいろ出てくるわけですので、御理解を頂きたいなというふうに思ったところでございます。
  いずれにしましても、引き続き熱心な御議論を頂きたいと。きょうも3時間やりました。引き続きよろしくお願いしたいと思います。

【橋本主査】    はい、ありがとうございます。今、川上局長からお話があったように、第5期の科学技術基本計画の策定が今進んでいて、中間取りまとめというか、提言の中間のところまでは出ています。ここからがかなり本番で、年末に向かって策定が進んでいきますので、是非そこにはこれが入るようにしたいと思っています。そういう意味でもこの提言はある程度早く出していただかないといけないということがあります。
  もう一つは、来週の火曜日に政府の方で成長戦略が閣議決定される予定です。それの案文というのはもう公表されているのではないかと思いますが……。

【川上局長】    素案が出ています。

【橋本主査】    素案が出ています。その中の大学改革のところに、特定研究大学と卓越大学院と卓越研究者という言葉が出てきます。これは次期通常国会、すなわち来年1月から始まる通常国会でしっかりと議論して、来年4月から始まる第3期にはそこの部分を入れることを考えるという文章が入っています。

【川上局長】    特定研究大学については、次期通常国会において法改正をするということです。

【橋本主査】    そうです。正確に言うと、特定研究大学は法改正が必要なので、それを来年の1月からの通常国会でしっかり出すということになるはずです。あわせて、卓越研究員と卓越大学院、これは法改正の必要はないのですが、でも、それらを併せて来年度の施策にしっかり入れていくようにということが入れ込まれる予定であると聞いています。これらはきょうの議論と関係するのではないでしょうか。特に特定研究大学の制度設計の中には、きょうの議論というのはかなり関係するように思います。そういうところにもここでの議論を提供できるようなペースで進めないと、せっかく提言を作っても入れ込まれないことになりますので、できるだけ早い時期にこの第1次提言書(案)をまとめて、是非とも次のステップに行きたいと考えています。あわせて、第2次提言、第3次提言があるのかどうか分かりませんけれども、更に深化したものをやるとしても、まず第1次提言をまとめるということが重要だと思いますので、きょうの議論を受けて、先ほどのように次回また検討させていただきたいと思います。
  では、最後に、事務局から今後の予定をお願いします。

【山下室長】    はい。先日、日程確保のお願いをしておりました7月22日(水曜日)の16時から18時に次回の検討委員会を開催します。お時間の方を是非確保方よろしくお願いします。  そして、本日頂いた意見も反映させようと思っておりますが是非、追加で御提案や、1次提言後にこういうことをやった方がよいのでは、こういう点が我々の課題ではないかというようなところも含めて御意見を頂けますと有り難く思っております。
  なお、きょうは回収資料がございます。是非よろしくお願いします。
  以上です。

【橋本主査】    はい。それでは、以上で終わります。どうもありがとうございました。

――  了  ――


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