産業連携・地域支援部会 競争力強化に向けた大学知的資産マネジメント検討委員会(第3回) 議事録

1.日時

平成27年6月8日(月曜日)9時30分~12時30分

2.場所

文部科学省 東館 15F特別会議室

3.議題

  1. 知的資産マネジメントと産学官連携の推進
  2. 第一次提言について
  3. その他

4.出席者

委員

橋本主査、青木委員、上野山委員、上山委員、小川委員、國井委員、國吉委員、進藤委員、高梨委員、永野委員、西村委員、松本委員、両角委員、渡部委員

文部科学省

川上科学技術・学術政策局長、奈良科学技術・学術政策研究所長、坂本産業連携・地域支援課長、山下大学技術移転推進室長、西島大学技術移転推進室長補佐、江間大学技術移転推進室企画調査係長

5.議事録

【橋本主査】    おはようございます。定刻になりましたので、ただいまから、大学知的資産マネジメント検討委員会の第3回を開催させていただきます。
  朝から、どうもありがとうございます。今回から本検討委員会を3時間にし、十分に皆さんに意見交換をしていただけるようにしましたので、どうぞよろしくお願いします。
それでは、まず、配付資料の確認をお願いします。

【西島室長補佐】    はい。配付資料の確認をさせていただきます。まず、本日の議事次第が1枚ございまして、資料1、渡部委員によります「企業と大学の戦略的知的資産マネジメント」、資料1-1、参考資料「企業と大学の戦略的知的資産マネジメント」、資料1-2、日本知財学会2015年度春季シンポジウム、資料2、永野委員によります「大学発の研究成果を社会への貢献につなげるためのマネジメント」、資料3、菅委員によります「ペプチドリーム流  知財戦略と経営戦略からみた日本型大学発ベンチャーの新しい姿」、資料4-1「本検討会における議論の対象」、資料4-2「第2回検討委員会で提起されたポイント」、資料5「第1次提言に向けて(これまでの意見の整理等)」、資料6「今後のスケジュールについて」と、机上資料としまして、こうした紙ファイル、ピンク若しくは青色の紙ファイルに第1回と第2回の委員会の資料をお付けしております。皆様、よろしいでしょうか。
  もし不備等ございましたら、会議の途中でも結構でございますので、事務局までお知らせいただければと思います。
  以上でございます。

【橋本主査】    ありがとうございます。
  では、早速移りますが、川上局長が来ていらっしゃっていますので、一言いただいてから。どうぞお願いします。

【川上局長】    1回目、2回目と、業務の都合上、出席できず申し訳ございませんでした。
  大学が持つ知的財産、所有からいかに使うかというフェーズに入っているというのはもうはるか前からの話でございまして、是非充実した議論をしていただいて、新しい時代の大学経営の方向へ付け加えていただければというふうに思います。よろしくお願いします。

【橋本主査】    ありがとうございます。
  では、進めさせていただきます。
  前回の検討委員会では、求められる大学経営改革について、有識者2名、委員1名、及び、私の方からプレゼンテーションをさせていただきましたけども、その後、議論いたしました。
  本日は更に議論を深めていくために、渡部委員、永野委員及び菅委員にプレゼンテーションをしていただいて、その後、80分ぐらい時間を取っておりますので、議論していただこうと思います。その後、第1次提言に向けて盛り込むべきポイントについて、更に1時間ぐらい時間を取っておりますので、十分ディスカッションしていただけるんじゃないかなと思います。
  本委員会について、私なりの理解をちょっと申し上げます。今、文科省を中心に大学改革は様々なところで動いています。大変委員会がたくさん連立した中で、大学改革が大きなものが動いております。文科省の外でも動いております。
  そういう中で、ポイントになっているのが、前回、私、ちょっとお話しさせていただきましたけども、やはり財務基盤の強化というのがどうしても今、非常に重要なものであって、いろんなことがあるわけですけど、その中でもやはり自分たちで稼ぐというか、自分たちの持っている資産を有効に使うというのがそのうちの一つの重要な視点であると。
  その自分たちの資産を有効に使うというその資産にはソフトとハードがあって、ハードは例えば土地があるわけで、その土地をどうしましょうかという話があるわけですが、もう一つはソフトの方で、これは知的、知的財産ですね。知的財産というのは特許になっている部分もあるし、そうじゃない部分もあるし、あるいは、企業との共同研究もあるでしょうし、このことで分かりますように、この委員会のポイントはそういう意味ではその大学の持っている資産をいかに有効に使うかといううちの、そのソフトなものについて主に議論していただくということになると思います。
  ソフトのものというのはまさに知財をどう使うのかという話と、もう一つは、産業界とのインタラクションの中でその知財、頭脳、我々が出せるのは、大学が出せるのは知識でしょうから、そういうものをいかに使って産業界とのウイン・ウインの関係を築いていくのか、このような視点、これが大きく分けた、大きく見た中のこのポイントじゃないかなというふうに思って、もちろん、それ以外のポイントでも結構なんですけども。
  今申し上げたようなことを意識しながら、そうすると、ここで出てくる報告書が国全体の、文科省全体の委員会、あるいは、国全体の委員会の中で非常によい位置付けを持ってくるのではというふうに思います。
  それで、特に産業界との関係においては文科省が直接産業界になかなかそういうことを言うというか、そういうルートが、もちろん文科省もあるでしょうけども、ここの議論を内閣府の方で受けて、実は内閣府が今、文科省以外、あるいは、産業界に対してどのように大学、アカデミアと関係を持ってもらうかということを議論をしているところでありまして、内閣府の方から産業界に対してしかるべくルートを使ってしっかり入れていくということになるんじゃないかなというふうに思います。
  ですから、そういう意味においても、ここでの議論がベースになってそういうところへ出ていくのかなと思いますので、というのが私の理解です。私の理解ですので、それに限ることなく議論していただきたいと思いますが、是非それを頭に入れていただけると有り難いというふうに思います。
  では、まずは、「企業と大学の戦略的知的資産マネジメント-不確実な技術の実用化と多様なイノベーション戦略の活用-」について、渡部委員にプレゼンテーションしていただきたいと思います。
  質疑応答は全てのプレゼンテーションが終わってから、まとめて取らせていただきたいと思います。渡部委員、お願いします。

【渡部委員】    ありがとうございます。
  今、本会議の目的が大学の知的資産をいかにして活用するのかということで、大学が主語になっているわけですけれども、少し違った観点で、企業が知的資産をどういうふうにイノベーションに結び付けるのかという話を前半にして、大学の話をしたいと思います。併せて10分で話をさせていただきます。
  お手元の資料の参考資料というパワーポイントの3ページですね。「企業Aの研究開発成果」というスライドを見ていただきたいんですけれども、これはちょっと逸話で、ある大きな会社で中央研究所がありまして、長年、一生懸命研究していた研究成果がありましたと。事業部に一生懸命売り込んだりとか、研究発表会を社内でやったりとかしても、全然関心を持ってくれないので、もうしようがないなというので、10年近くたったので、最後に学会発表を行って終わりにしようという話になったということです。
  一生懸命、それで最後だからと思って発表していましたところ、一番後ろに座っていた方が聴講者が非常に熱心に聞かれていて、発表が終わったら近づいてきて、今やっている開発でどうしてもうまくいかないことがあって、この技術さえあればうまくいきそうなんで、是非一緒にやってくれという話をされたと。その後、一緒にやったら、ほんとにうまくいきまして、事業化が実現したという話で、この話自身はそんなに変わった話じゃないかもしれませんが、落ちがありまして、一番後ろに座っていたこの一緒にやった方、質問した方は同じ企業Aの方だったという。絶対言わないでくれと言われているので。
  この話はどういう話かというと、すんでのところでつながったわけですけど、組織の中にいわゆるシーズと、それから、ニーズがあって、それが統合することがなかったという話です。このときはたまたま運よく統合というか、結び付きましたけれども、おおむね大体このまま埋没してしまうということになりますが、これの話を今まで企業の方にも、それこそ数百人、幹部の方にも聞いていただきましたけれども、きょうのように、皆さん、笑われます。ところで、こういうことは御社ではなかったですかと聞きますと、いやいや、うちでもというのがいっぱい出てくるわけですけれども。
  次のページに、4ページのところに、これ、ぜんそく治療薬の話です。これは特許で追えますので、実は分かっている話です。アメリカ、アメリカというか外資系の会社のぜんそく治療薬が実は日本の企業が研究していたものです。大ヒットしましたけれども、日本における販売権はお金を出して買ったという、そういう話ですとか、右下5ページのところ、これ、United States Patent、パテントが書いてあります。Inventorsのところを見ていただきますと、何て書いてありますかね。Sergey Brinと書いてあります。Sergey Brinは誰だったか、御存じでしょうかね。Googleの創業者はSergey Brinとラリー・ペイジの二人ですね。Sergey Brinの初めての発明ですけれども、Assigneeは誰かと。日立なんですね。日立が権利者です。
  Sergey Brinの本当の発明かと、これはうちの学生が見付けて、何か間違っているんじゃないかと思って、一生懸命調べました。日立の方に聞いても、よく分からないというんで、最終的に当時のアメリカの方に確認しまして、本物で本人であることが分かりました。当時、契約社員としてきていたんですね。
  検索の開発をやっていました。これは病院のカルテの検索の開発を、検索システムの開発を共同研究でやっていたんですね。うまくいったそうです。すごい優秀だったらしいですね。1年でもうほとんどできたというので、是非一緒にやりたいというので病院も喜んだ。ところが、日立本社から、これ、待ったがかかったんですね。うちのビジネスモデルと合わないと、アフターサービスがこれ、難しいのでということで、泣く泣く中止した。
  その1年後にGoogleが創業されています。同じ検索、ページランクという技術ですけれども、これ、特許の内容は違いますけれども、やはり検索ですから、同じ根っこがありますね。もしこのとき、日立がこのSergey Brinとその技術を、例えば別会社でやろうとしたらどうだったかというのが非常に興味深いところです。
  こういうように、日本の企業にはたくさんの技術が埋没していて、そして、そこに使われている知財というのがなかなかうまく使われていないというのは、これはたくさん観測されるし、実証分析的にもこういう現象が現れていることはほぼ間違いないです。
  これ、決して企業が悪いわけじゃなくて、例えば1万人の会社の知識を統合することは極めて難しい。それは人数が多くなればなるほど難しいですし、それから、企業は戦略的に自分のドメインビジネスではどういうやり方をするかというのは大体決めています。それがあるからその企業は競争力があるわけで、環境変化があったりする場合に、それを変えるという選択肢は普通はなかなか取りにくいということになります。
  同じような例として、3Dプリンターの発明も日本ですし、国プロの研究成果も、これ、分析しますと、国プロの研究成果がその会社の中で発展しているかどうかというのは特許で分析すると分かります。かなりなかなかそういうふうにはうまくいかないと、外国企業ばっかりが引用しているという特許もたくさんあるわけです。
  右下、9ページのところ、「技術の不確実性」という書いたところですね。これは知識が統合されて技術が完成したとしても、それが社会に受け入れられるかどうかというのはまた別問題です。この右に書いてある、これは電気自動車で「たま」という電気自動車なんですけれども、これ、実は戦後すぐ走っていました。1充電で200キロの走行が可能であったということです。鉛蓄電池なんですけど、今の電気自動車は何キロ走るんですかね。そんなに変わらないと思うんですね。
  これ、実は、戦後、立川飛行機という会社は戦中は飛行機を作っていまして、これ、軍需産業なので、しようがない、自動車を作ろうとしたときに、ガソリンがないんですね。ガソリンがないので、しようがない、電気自動車を作ったと。スピードは余り出なかったけど、200キロ走ったということであります。
  この会社は実はその後のプリンス自動車で、日産に買収されていまして、今、この車は、これ、私が写真を撮ったんですけど、日産のショールーム、横浜のショールームに飾ってあります。日産自動車は今、電気自動車で次世代自動車ということでやっていますけれども、これは結局、技術の進歩がイコール、社会に受け入れられて事業化するというわけでもないということを意味しています。環境変化とそれに合わせた戦略というものが大切だという話になります。こういうような話が、企業が実用化をしていくというプロセスの中には大きく関わってくるということになります。
  じゃあ、大学の知的資産をイノベーションに結び付けるということはどういうことなのかということです。ここから先、もう口頭でお話ししますけれども、大学にも経営戦略に相当するものがあるはずです。企業は経営戦略は大体全社戦略と、それから、事業戦略と機能戦略の3階層があって、全社戦略に基づく、あるいは、事業戦略に基づく機能戦略ということの中で、知財の問題とか、そういうものを処理をしているわけです。
  大学もそうです。大学はいろいろ規制がありますので、その周りの環境を良くするために、自分の持っているオプションを最大限活用することになりますが、大学の産学連携というのは実は自己決定権がある比較的少ないオプションです。ですから、それを最大限活用しようとすることになりますが、例えば、一時金としてお金をたくさんもうけたい大学があってもおかしくはないですね。それから、その知的資産を使ってイノベーションに結び付けたいという大学があってもおかしくない。それは事業戦略に相当するものです。
  国の立場としては、やはり、これは国税を投入している事業であれば、イノベーションに結び付けてもらいたいというふうに思うと思います。その立場で見たときに、おおむね今まで大学は自分の知的資産をどこに供給していたかというのが右下の、今度、13ページになるんですかね。「米国大学の特許の多くはベンチャー・中小に、日本の大学の知財はほとんどが大企業に供給される」と書いてあります。ほとんど、これ、右がアメリカで左が日本なんですけれども、大学の特許というのは、19ページのところですね。右がアメリカで左は日本ですけれども、アメリカはほとんど特許は行き先はベンチャーなんですよね。中小企業とベンチャーと書いてありますけど、ベンチャーです。日本の場合は半分以上は共同出願になりまして、それで、単独出願もあわせて、ほとんど大企業です。大企業に主に供給されてきたということになります。
  ベンチャーは実は今までのトレンドは非常にベンチャーには行かなくて、この僅かな、小さな丸ぐらいの比率しか行ってない。ただ、一方で、前回、橋本主査からも御紹介あったかもしれませんけれども、例えば東京大学で見ると、この比率はそんなに変わらないのですけれども、ベンチャーの方は時価総額で1兆円を超えるような価値を生み出しているということからすると、効率は実はベンチャーの方が生産性が良いように見えます。
  これも、ある意味、当たり前といえば当たり前で、大学の知識の活用というのは、さっきの大企業の様々な埋没理由は、大学だからといって別のメカニズムで行われるわけではなくて、同じです。同じだとすれば、知識の統合やそのビジネスモデルが合わないという、技術の乗り物として適切でないというようなことに関しては、実は大企業の方が難しい面があります。
  ということを考えれば、大学の知識を生かしていく戦略的な考え方というのは二つしかないだろうと思います。大企業との戦略的な共同プロジェクトをやるのであれば、全社リソースの統合と戦略構築を同時にやっていただく。これは実は大企業、企業側だけじゃなくて、大学も実は制度をいっぱい持っていて、全然統合できてないという問題がありますので、そういうことを一緒にやる、そういうようなやり方をするか、あるいは、一つ一つの技術に関してはイノベーションの生産性が良いと考えられるベンチャーとの連携というのを、大企業、大学、それから、ベンチャーとの連携で新しい技術の導入を進めていくと、この二つしかないだろうというふうに思います。
  「企業と連携したベンチャー事業の育成の試み」と書いてあるのはその絵でありまして、最後の「産学連携制度総動員」というのは、これは大学も制度がいろいろあって、ほとんど統合できてないという問題、こういうのを企業と一緒にやっていくということになるかと思います。
  以上なんですけれども、そういうことをやって、大胆にこういう制度を改革しようというときに、やはり重要なのは、大学Integrityを維持発展させるための施策というのを同時にやっていかないといけないということです。そうでないと、ぱっと派手にやってお金が入るけれども、長続きしないという形になります。もう一つの委員会の方は私が座長でやっていますので、そっちは大切ですよということで終わりたいと思います。
  ありがとうございました。

【橋本主査】    ありがとうございました。
  では、続きまして、「大学発の研究成果を社会への貢献につなげるためのマネジメント-テクノロジーライセンシング機能と産学連携-」ということで、永野委員にお願いしたいと思います。永野委員、お願いします。

【永野委員】    よろしくお願いします。ページをちょっと振ってないので、申し訳ないんですけれども、1ページ目から御説明させていただきたいと思います。
  私は企業でMITの技術を基にしてベンチャー企業を経営しているわけですけれども、米国と日本ではかなりいろんな面で違うなというのを実感しておりまして、それについてちょっと問題提起をさせていただきたいなというふうに思っております。
  一番初めの問題点は、やっぱり日本は今、TLOが介在しておりまして、TLOが介在することによってかえって産業界と大学との連携が悪くなっているというのを非常に実感しております。
  まず、企業と研究者と直接コンタクトが減少しているんじゃないかと。大学研究者の知財を守ると、それから、大学の権利を守るという名目でTLOが介在して、直接の交流が減少していると。以前は研究者と企業がもうちょっとなあなあというか、曖昧な付き合いの中でいろんな議論が行われて、それを基にして、共願だったり、あるいは、企業が独自の特許を出願するということで、結局は産業界に貢献していた。大学側は収益が上がらなかったわけですけれども、そういうことが起こって、最近は権利を守るということでなかなか企業と研究者が直接議論ができない環境になっているんじゃないかというふうに思っています。
  以前はやっぱり企業から大学の研究室への寄附とか研究資金とか、これもそこの直接大学に入るのではなくて、研究室単位でいろいろあったと思うんですけれども、それも減少していると。ただ、表向けの産学連携の共同研究室ということになると増えているんですけども、実際はどうなのかなというふうに実感しております。
  TLOが企業といろいろ研究、共同研究するということになって、特許の登録なんかで企業も重要な研究については余り大学と話さないと。大学と話すと大学の権利を主張されるということで、できたら重要なことは余り相談しないという環境になりつつあると。それから、企業が特許費用を支払うことを前提にしてTLOの資金が回っているということで、TLOの資金がなくなると、本当は重要な特許だけども、企業がすぐ買ってくれない特許に関しては出さないということで行われているんじゃないかと今思っております。
  次のページに行きます。次の問題点ですけども、企業にライセンスアウトされた技術が死蔵している技術が日本は非常に多いと思います。まず、ベンチャー企業がライセンスしますけれども、日米ともにベンチャー企業のライセンスというのは一つのルートなんですけれども、マネジメントの能力の不足だったり、あるいは、資金力不足、先生が創った会社が御友人の方と回したけれども、うまくいかないでペーパーカンパニーになっていると。技術はそのまま死んでると。それから、大企業のライセンスなんかも、大企業は一時的にライセンスを受けたんですけども、戦略変更等によって、渡部委員がおっしゃったドメインが違ってしまうと。そういうものによって大企業も使わないでいると。
  アメリカにおいてはほとんどのライセンスが契約によって開発が中断して中止したものについては大学が権利を戻すと、再ライセンスするということで技術が循環しているようなケースが多いというふうに思われます。
  次のページ、行かせてください。TLOがなぜまずいかということは、やっぱりTLOがプロフィットセンターになって、収益を上げないと生きていけないということで、短期的にどうしても収益を上げなきゃいけないということになると思うんです。そうすると、収益にすぐつながらない特許は出さない。それから、長期的な社会への貢献よりも、企業への売却収益が最初に、最初の契約金が欲しいわけですね、TLOがもうかるために。そういうことで、できれば大企業にまず売ってお金をもらいたいと。本当はベンチャーを育てて社会に貢献したいんだけど、そういうことはできない。
  それから、TLOはやっぱり大学側の権利の主張が非常に強くて、柔軟な形でライセンスできてないというのが今問題じゃないかなと思っています。
  TLOの人材が質量ともにやっぱり不足していると。収益が上がらないのでなかなかいい人も来ないし、人材がいないと。そういう中で、TLOによってはセミナーをやったり、ベンチャーのインキュベーション施設をやってもうけたりとか、何とか生き残らざるを得ないので、本来の目的じゃないことばっかりやっているというのが印象でございます。
  海外のTLOはどうかというと、うまくいっているところの例をちょっと、Max-PlanckとかMITの例をちょっと申し述べようと思うんですけども、まず、コストセンターです。収益は二次的で、要するに数十年スパンでもうからないと考えないと。
  結局、社会にどのぐらいインパクトを与えたかというよりも、プロフィットよりも重要だということに目標を置いております。ライセンシングを行ったとか、ベンチャー企業の設立とか、商業化に成功したというのが評価基準で、必ずしも収益だけが目的としていないと。それから、やはり研究者の意図を最優先としてサポートすると。TLOが独自に研究者の権利を、もうかるからといって、違う企業に売るなんていうことはしないですね。TLOは非常に法的なクリアランス機能と、それから、特許の戦略の立案に対しては非常にたけているというのが私の印象です。
  それから、企業とのネットワークが非常に深くて、企業を紹介するんですけれども、自ら売り込むことはしないというのがTLOの役割です。自分の技術がどの企業にフィットするかとか、どういうふうに産業化されるかというのは実は研究者が一番知っているんですね。この企業だったらやってくれるだろうとか、こういう企業だったらいけるんじゃないか。先生が熱い言葉で語ることが最もアピールポイントであって、TLOが売るのが仕事じゃないということですね。ネットワークを作って先生のサポートをするというのが仕事であると。
  それから、TLOのほかにOSPという組織があるんですけども、産業界のスポンサードリサーチをつかさどる部門なんですけども、非常に積極的に資金導入を進めて、TLOとは一部利害対立があるんですけども、別組織で企業との交流を深める組織があります。
  次のページに行きます。特許戦略に熟知しています。どういうことかというと、先生の研究、出てきたときに、これ、特許にしましょうというのではなくて、先生、この特許戦略上においてはこのデータ、ひとつ出してもらえませんかねと、逆に。論文には関係ないんですけど、ここを出しておくと特許、強いですからというような形で、特許戦略から見て研究者にアドバイスします。だから、TLOは特許戦略に非常に熟知している。あるいは、特許事務所との非常に強い交流を持っております。
  それから、間接費をたくさん持っているわけですね、アメリカの大学は。例えばMITの例ですと、NIHから研究者が1億円のグラント申請をすると。NIHは1億円の、先生に研究費を認めると、6,500万が間接費としてNIHはMITに払わなきゃいけないと。だから、およそ3割か4割の費用は間接費として確保すると。
  それに関しては研究者も間接費の価値を非常に認めていると。やっぱり役に立っているんだということで、自分たちの研究というのは研究してもやっぱり商業化されないとインパクトがないんで、これも研究者は納得の上でこれを、払っているわけじゃないんですけども、オーバーヘッドを取っているということですね。
  それから、TLO独自の判断にやっぱり特許出現、結局は特許がないと、いろんな将来的なスポンサーリサーチもできないんですね。だから、これは戦略的に重要だと思われるものは前もって取っておくと、企業のお金がつく前に、こことここは押さえておくというような判断をTLO独自がして、自分で特許を出しているという形です。
  次のページへ行きます。ちょっと簡単なこれはインタビューの言葉なんですけども、MITなどはTLOの目標はIncomeじゃないと、Impactであるとずっと言っているんですね。MITからいい企業が出ると、その企業のオーナーがものすごい寄附するわけですね。あるいは、社会で有名になれば、それだけドネーションが増えるということで十分ペイすると。Impactを一番重要視すると。いかにImpactを出せるかということです。Max-Planckなんかもやっぱり結局ブロックバスターが出ないともうからないビジネスなので、成果が出るまで10年ぐらい我慢して見るということです。
  次のページへ行きます。MITですと、やはり企業と研究者がもうちょっと密に自由に出入りしながら、いろんなことをやっています。研究室をちょっとでも使ったら、大学の権利だよと建前は言っているわけですけども、結局はやっぱりそういうような関係の中でいろんなものができているということで、いかに今、企業が研究者と自由に討論できるかというのが非常に重要視されています。
  それから、先ほど言いましたように、技術が死蔵しないで循環するシステムですね。
  それから、契約条件はやっぱりベンチャー企業と大企業で全然変えています。大企業はやはりコミットメントを求めるんで、最初の契約金、少し下さいよというのが通常ですけども、ベンチャー企業に関してはほとんどただです。全部成功報酬で取ります。
  それから、企業オーナーによる寄附とか、企業寄附は非常に増加しているということですね。
  次のページへ行きます。ただ、海外においてもそんな簡単じゃなくて、やはり政府が研究資金を絞っておりますので、NIHとか基礎研究に出てくるお金が非常に少なくなってきて、アメリカでも少なくなってきております。スポンサードリサーチが増えているんですね、単独の。例えばパナソニックとMITの研究者、研究。
  昔はオープンコンソーシアムなプロジェクトが多かったんですね。メディアラボというのは全てオープンコンソーシアムでやっていた。要するに、プラットフォームリサーチに対して複数の企業が参加すると、ファンディングするというのがなかなか難しくなってきた。これはやはり中長期的なテーマが少なくなってきたと。それから、近いものについてはやはり企業が全部独占したいんですね。独占しないともうからない。
  近い将来のプロジェクトに関してはやはりどうしてもスポンサードリサーチにならざるを得ないんですけども、例えばさっきの3Dプリンターに関してはもう既に遅いんですね、オープンコンソーシアム。もう単独のリサーチ、単独スポンサードリサーチ。ただ、例えば人工知能なんかはもう少し中期的なオープンコンソーシアムが可能ではないかというふうに思われています。ただ、いかにその中長期的なビジョンを大学は出して、企業が乗ってこさせるかというのが非常に重要だということです。
  それから、大学においてもやはり間接費65%は高いんじゃないかという、その分できれいなビルばっかり造って、しようがないんじゃないかという先生もやはりかなり増えてきているということです。
  次のページはちょっとサマリーなので飛ばせていただきます。
  最後にちょっと改革のための方向性ということで、試案ということでちょっと申し述べさせていただきたいと思うんですけど、TLOの目標評価基準をやはり見直すべきだというふうに思っています。短期収益でやっている限りはTLOは機能しないと。それから、TLOをコストセンターにすると。それから、TLOとかOSPの人材に優秀な人を集めてこないと、なかなか機能しないんじゃないかということですね。
  それから、TLOはやはり研究者を管理するんじゃなくてサポートするということに重点を置くべきだというふうに思っています。
  それから、企業に導出した事業の進捗を必ずチェックすると。日本の場合、一度ライセンスアウトしたらもう知らんぷりだと。必ずクオータリーごとに企業から報告させるというような仕組みがやはり必要じゃないかなと思っています。それから、プロジェクトが止まった場合には権利を取り返すと、法的に取り返すということが必要だと思います。
  それから、競争的研究費における間接経費の配分を増加しないと、TLOとか間接部門の強化はできないというふうに思っております。やはり我々の分野ですと、ノーベル賞を取られた先生、競争的資金はすごくあるんだけども、間接費に使えないんで、それで非常に困っているというのをよく聞きますので、そういうことを、やはり間接費は非常に重要だということはやはり理解するべきだというふうに思っています。
  最後に、資金なんですけども、結局、長期的に企業が資金提供できるような研究テーマとか、大学が主体としてやっぱりビジョンを策定して企業に訴える、これが必要じゃないかと思うんですね。企業がこれを欲しいと言ったのを、これ、研究しますというのなら、単なる下請になってしまうわけで、大学の方で10年後、15年後にこういうことを社会に役立つ研究をしたいんだということをやって、企業を集めるべきだと思うんですね。MITの場合だと、やはり最低5,000万、1億のお金がどんどん、どんどん入ってくるわけですね。日本の企業からも入ってきています、MITには。
  そういうものは、付き合いとかやはり寄附とかじゃなくて、リターンを求めているんですね。自分で研究費を持つと固定費が膨らんで、うまくいかないときにはシャットダウンは難しい。人がありますのでね。固定費を抱えたくない。リスクが高い。中長期的だ。こういうプロジェクトはやはり大学にどんどん出すということになっていかないと、やはり大学が生き残れないのではないかなと思いますね。だから、いいビジョンがあれば、企業は収益のために出すと。付き合いじゃなくて。1億、5,000万単位でどんどん出てくるようなことにならないと、なかなかファンディングは難しいと。
  長期的で多様化された資金を産業界からやはり取っていくべきだと。一つは中長期的なオープンプラットフォームリサーチ、これは絶対必要だと思います。MITのメディアラボがやっているようなものですね。それから、単独企業によるスポンサードリサーチ、もうちょっと短期的な目標におけるスポンサードリサーチ。それから、成功報酬で10年後にはベンチャー企業から成功報酬が膨大に入ると。例えばペプチドリーム、うまくいった場合には、後でその上場後にお金が入ってくると、大学に。そういうような成功報酬の体系が必要だと。それから、大学企業の契約料の収入、今これが中心ですが、これはワン・オブ・ゼムとして位置付けるということですね。
  以上ですので、よろしくお願いします。

【橋本主査】    どうもありがとうございました。
  では、続きまして、菅委員ですね。菅委員にお願いします。

【菅委員】    どうもありがとうございます。私の資料は資料3です。ペプチドリーム流のどうのこうのと書いてあるやつです。よろしくお願いします。
  まず、ちょっと簡単に、まず、アメリカのバイオベンチャーはどういうふうにやってきた、特に私が知っているのはバイオベンチャーなので、それを簡単に紹介します。何が言いたいかというと、成功するのは結構大変だということも言いたいし、それから、結構劇的に変わったということも言いたいんですけど。
  最初、1976年、Genentechという会社が、これはカリフォルニアのサンフランシスコのそばにありますけども、これ、どうやってスタートしたかというと、キャピタルのパートナーだったSwansonさんという、当時29歳で若いですね、その先生がBoyer教授に5,000ドル貸して、自分も5,000ドル出して、1万ドルで会社を創ったと。それで、その当時の遺伝子工学を駆使するという、出てきているばっかりの技術だったので、それを使ってたんぱく質製剤や抗体薬品というのを上市していって、今はRocheの傘下にいます。非常に独立性も高くて、アカデミックな雰囲気もいまだに持っている、私も2か月ぐらい前に行ってきましたけども、もう本当にすばらしい会社だなという感じがします。
  Amgenは、私もAmgenも行ったことありますけども、ここは少しGenentechとは変わっていまして、AbbottのVice PresidentだったRathmannという人が、やっぱり同じように遺伝子工学を勉強したいということでUCLAの先生のところに行きます。そのときに、本当はそこで研究させてもらおうと思ったら、会社設立しようよと言われまして、結局、会社を設立すると。それが1980年ですね。
  その後に、その間に社長だったRathmannさんがいろんなお金をVCから集めてきて、40億ドルぐらい集めるんですけども、それを使い切る寸前まで行って、もう潰れそうな寸前に、EPOという大きな売上げにつながる薬を上市できて、生き長らえたと。今は世界13位の製薬企業に成長しています。
  それから、ちょっと変わりまして、Biogenです。これは創業は早いのですけども、大分形が違います。創業は1978年なのですが、実はこれはノーベル賞を後に受賞する二人の生物学者を含む4人の大学教授が、ただ単に教授が集まって会社をスタートしたという非常にユニークな会社で、VCから投資や他企業からの買収等を繰り返しながら、だんだん企業として大きくなっていって、最終的には医薬品を上市していると。ちょっと雰囲気が違うのは、要は自分たちで開発する確固たるものはなかったんですけれども、結構それでうまく回しながら、薬を作り上げていったという会社ですね。
  Gilead Sciencesというのはこれも創業が1987年です。ちょうど私がアメリカに行くちょっと寸前なんですけども、これは29歳の臨床医の人がVCで働いた経験を持っていまして、そのそこに書いてあるRiordanさんですかね、この人が3人の大学教授のアドバイザーを迎えてベンチャーから要はVCからお金を借りて、2億ドルを融資されて創業すると。この会社も同様に、技術ライセンスをしながら、何とか会社をつなぎ、でも、またいいタイミングでまた企業を買収したりして成長していって、今はかなり売上げを上げています。特に感染症の医薬品に特化しているというところが非常に重要なところで、Gilead Sciencesは最近非常に伸びている会社の一つです。
  次のページ、はぐりますと、日本型バイオベンチャーという話をちょっとしたいと思います。これはもう私は創生期か、乱立期かとかと書いていますけれども、ちょっときつい話で申し訳ないんですが、これは1999年、アンジェスMGって、これは森下先生が創業されているんですけれども、1999年に創業して2003年に東証マザーズに上場しているんで、非常に短い期間で上場しています。
  開発は遺伝子治療薬の開発とデコイ核酸医薬品で、大体国内の企業の数社と連携しながらやっているんですが、そこに書いてあるとおり、2006年の一番売上げが高いときで29億円で赤字が19億円、2014年の一番近々では9億円の売上げで利益赤字が23億円ということで、実はこのアンジェスMGは上場して以来、一度も黒字になっていない会社です。どれだけ国のお金がここに注ぎ込まれたかはまた別にして、一度もないです。
  オンコセラピー・サイエンス、これは創業2001年ですね。それで、これは非常に有名な先生ですけど、中村祐輔先生、今、シカゴ大に移られましたけれども、これ、2001年に創業して2003年にマザーズ上場という、何とすごいスピードだということですけれども、ペプチドがんワクチン開発が中心で、国内製薬企業と連携を幾つかとしています。一番高い売上げだったのが2012年で、このときは62億円で利益が7.2億円上がっていますけれども、もう近々では売上げががくっと落ちて、利益が36億円の赤字と。この会社も黒字だった時期は2年ぐらいですかね。そんな感じです。
  ここで私の会社に移るんですけど、ペプチドリームというのを創業、何で創業したかということをちょっとお話ししたいと思います。
  私のこれはビジョンです。私側から見て、実際、どうやって起きたかというのを後でお示ししますが、赤い字で書いてあるところが大切です。技術を社会に還元するということはもちろん皆さん、アカデミックの人にかなり今要望されている部分だと思います。技術的なことが幾つか書いてありますけれども、私の中でほんとはアカデミックと自由研究、アカデミアの自由研究を守るためにビジネスを作りました。
  ということはどういうことかと、私は企業と一切共同研究しません。つまり、産学連携はしないと決めています。私がするのはペプチドリームとだけということなのですけれども、実際はそこも分かれていて、基本的に完全にビジネスと分離するということを実現したかったということです。そこに理由は書いてありますけれども、ちょっとそれは飛ばします。
  会社を創るに当たって、実は社長と約束したことがあります。まず、一つは、技術を社会に還元する夢を実行するという私が持っているビジョンはちゃんとやりましょうねという話です。それから、VCからの投資は最小限に抑えて、エンジェルによる資金で経営すると、これは社長の意向です。それから、国からの研究費はペプチドリーム社と菅では獲得しない、要は両方で何かお金を併せて国から取ってきましょうということは一切しないというのを決めています。要は自らの営業努力で資金を獲得するということになります。
  これは一体最終的にどういうことかというと、国から予算を入れない、つまりお金を取ってこないペプチドリーム社を創るということなので、大学発ベンチャーとしては日本にない例を創ると。今のベンチャー企業、非常に高い時価総額を持っているベンチャー企業でも国からのお金が相当入っていますね。だから、それをしない会社を創ろうというのが私の目標で、しかも、黒字にしようということが私と社長との最終目標でした。だから、そこに向かってとにかく営業努力するというのを心掛けています。
  ちょっと私がこれ、話をするときは大体アニメーションを使っているので順番に出てくるので、番号を付けなくてもいいんですけれども、ちょっと番号を簡単に付けさせていただきます。最初、0、会社ができるまでを0とすると、0という番号が付くのは私と東大TLOの間に実は0というのがあります。これはどういうことかというと、私が特許を出したときに、実は東大TLOの社長が、これ、菅先生、会社を創ったらどうですかと提案してきました。
  その後、私が言ったのは、私は社長にはならない、なれないし、そんなビジネスはできないので、社長を紹介してくださいと言いました。そのときにやったことは、東大TLOは、UTECという内部にあるベンチャーキャピタル的な組織に社長をちょっと紹介してあげると頼んで、結果的に紹介を5人ぐらいしていただいたうちの一人が最終的にCEOになります。つまり、ここはつながっていて、0の状態でUTECと東大TLOと私がつながっていて、そこで社長、CEOが入ってきて、もう一人の創業者が入ってきます。で、会社ができます。
  会社ができたときに何をしたかというと、東大から私の技術を全部ライセンシングする。それから、私はバッファローに大学にも特許を持っていたので、そっちからも特許をライライセンシングすると。
  そのときにやったことというのは、特許に掛かったそれまでの費用は全部払うと。それプラス、それだけでは東大TLOはもちろんもうからないので、そのときに新株予約権、つまりストック・オプションを東大TLOと交渉して渡すということをしました。東大TLOもそれでいいと。つまり、金のない会社から金を取ってもしようがないということで、非常にすばらしい対応をしていただきました。後でCTOが入ってきて、私はCSOから社外取締役に変わるわけですけれども、そういう状況になりました。
  それが会社がスタートして起きたことというのはこういうことです。たった、もう非常に少ない3人とかでスタートして、当時、先端研にあった廃材の机とか椅子とかを全部集めて会社を創ったんですね。もうほんとにお金をほとんど使わずに、会社を創りました。当時、500万円ずつ出して、その後、また500万円ずつ出すので、結局3人は最終的に1,000万出しています。
  その2007年ぐらいにリード博士、これは隣の研究室で特任准教授をしていた人を私が引き抜いたアメリカ人なんですけれども、彼が現在CSOをやっています。彼からも投資を受けて、その後、エンジェルと書いていますが、後でちょっと御説明しますが、これは私の友人とか社長の友人とか親族とか、そういう人たちにちょっとお金を少しずつ出してくれませんかと頼んで回って、どぶに捨ててもらって会社の糧にしたと。それから、2008年に今度は第2次融資が入りますけれども、そのときには、UTECを含め、ほかの機関からの投資を受けています。ただ、もう既に株価をちょっと上げた状態で入れましたので、払っている割にはあんまり株が行ってないというのが現状なんですけれども、それで会社が出来上がって。
  次、最後、もう一遍、大きな図のところに行きますが、そうしますと、今度は5番目の矢印としてはそのエンジェルの方からお金が入って、6番目からUTECと投資機関から入っていると。その頃にはだんだんと研究者が増えていって、研究者が多数増えて、結果、企業としてやっていけるようになった。
  最終的に上場するわけですけれども、上場はちょっと飛ばしまして、沿革のところを見ていただくと分かるのですが、2009年、2006年にスタートして2009年、3年後には実は最初の契約があって、ここからもう黒字に変わりつつあります。2010年はNovartisと契約して、ここで黒字に変わって、2011年から以降、ずっと黒字でほぼ会社を運営しています。2013年にマザーズ上場して、一発で時価総額が1,000億円ぐらいになったんですけれども、その後も特許を次々と海外の契約をしているところ。
  私が重要視しているのはもちろん日本の企業は実はあんまり契約してくれていないのは非常に残念なのですけど、2社あります。ほとんど海外です。つまり、海外と契約すると全部外貨ですから、もう結局ほかから、よそからお金が日本に入ってきているという状況を作れているというのは非常にいいことだなと思います。今年はNovartisと再契約してライセンス契約して、Merckとまた契約していたりしています。
  最終的に、ちょっとアントレプレナーと書きますが、これ、基礎研究をビジネスに結び付けることは悪いことではないと。別に結び付けたことでサイエンスの価値が下がるわけではないというのが私の考え方です。ただ、余りにもそこがアカデミックとビジネスがぐちゃぐちゃになってしまうと、もう何をやっているのか訳が分かんなくなるので、そこはしっかり分けるべきだというのが私が思っているコンセプトです。
  それから、成功すればみんなハッピーです。これはどういうことかというと、結局、東大も東大TLOとして非常に大きなお金が入っていますし、UTECも非常に大きなお金が最終的に株を売って入っています。それから、もちろん発明者、学生たち、私の助教を含め、そういう人たちにも随分と大きな恩恵が入っていますし、もちろん、一番初めのエンジェルの人たちですね、こういう人たちにも全員が潤っているということで、成功すればみんなハッピーと、失敗すれば、株、お金をどぶに捨てたということになるんですけれども。
  そこに書いていますけれども、アカデミアとしてビジネスを全面に出すような振る舞いは実は研究者はすべきでないと私は思っています。要は夢と野望をどう取り扱うか、バランスを取るかというのがアカデミア発のアントレプレナーとしては非常に大切であると。
  ちょっと産学連携のところを書いていますけど、これはちょっと飛ばして、これはもし質問があれば議論したいと思うんですが、一番重要なポイントは、例えば産は学をチープレーバーで見ているんじゃないかとか、そういう問題もあると思います。
  ただ、何ができるかというのは産学連携の(2)の方に書いてあるんですけれども、実は私が非常に不安、いつも疑問に思っていたのは、会社を創るときに国が支援して、支援するともうそのまま永遠に支援し続けるというパターンなんですね。これはもう良くないと。最初の立ち上げは実は企業側から自らリスクを払ってやるべきであり、それによって、お金が少ない状態からやることによって、徐々にその企業としての経営を学んでいくというか、価値を高めていくというのが僕は基本的なスタンスであるべきというふうに思っています。
  でも、重要なのは、「死の谷」というのは非常に大変なので、ここら辺に官が提供できるのが一番いいかなというふうに思います。つまり、事業が軌道に乗ったにもかかわらず、契約が取れずに苦しむ企業というのは非常に多いので、そういうところに何らかの非常に厳しい評価を与えながらやるというのはあり得るでしょう。
  それから、「ダーウィンの海」の支援というのは、これは産産です。つまり、日本の企業は実はペプチドリームとほとんど契約していないというのは、彼らには全然この日本のベンチャーを助けてやろうという意図が全然ないですね。ところが、アメリカとかヨーロッパの大手の製薬会社は結構ベンチャーを助けようとか、ベンチャーのこの技術、すごいから、この技術と契約して、この会社も成功させようというような意図があるのが日本の企業がほとんどないという、非常に残念な状況です。
  最後のページですが、これ、「日本型大学発ベンチャー活性化に向けた提案」と書いていますけれども、これは何をやろうとしているかというと、私がペプチドリームを創った経験からして、どういうふうなのが日本でできるかというのを考えたスキームです。
  例えば研究機関、これは大学は難しいかなといつも思っているんですけど、理研ではできるかなと思っていますが、何らかの研究機関から技術がTLOに出されます。発明者とTLOがつながって、TLOはそのコネクションで何とか人材をハンティングしてきます。そのときに重要なのは、大学が別の小さな会社を創って、創るのが私はいいと思うんですけれども、そこで産業界から早期退職して、もうそこのところに移ってくる人を要は倍の給料を払って1年間限定で雇用すると。
  年間3人とか4人程度というのが私は理想的かなと思うんですけども、その人たちはもう大学の東大TLOを通して知るその発明者全員と話をして、この技術だったら、薬、会社ができるとか、この技術とこの技術を併せたらいい会社ができるとかというのをとにかくサーチしてもらって、1年以内に自分でスピンアウトしてもらいたいと思っています。
  スピンアウトしたときに、更にそのコネクションで例えばCEOの人を連れてくるとかすることになると思うんですけども、その創業メンバーのところで一番初めに重要なのは、エンジェルがいて非常に少額でいいからお金を作って、会社を創って、その次に実は増資してほしいのは研究者です。大学の先生たち。その先生たちに説明するというシステムが今、日本の大学、ないですね。勝手にみんなやっているだけなので。
  そうではなくて、もっとシステムとして、この先生がこういう会社を創るというのを大学の中で募集をかけると。誰かが、研究者というのは結構シビアに見るので、そこで10万円から何百万円ぐらいまででいいので、そのぐらいの額を、賭けみたいな感じですけども、出す、投資すると。そうして企業の価値を上げて、それから次の投資機関にまた大きなお金を入れてもらうと。
  そういう形で会社を運営し、成功すれば、実はこれ、研究者に戻ります。すごいお金が戻るので、その研究者の人たちもまた新たに投資をしようと思うし、それから、自分の会社を創ろうと思うでしょうし、いろんな例につながっていって、その成功例を見ることによって、ほんとの意味での大学発ベンチャーがちゃんと活性化してくれたらなというふうに私は思っているので、こういう、何ですかね、システムを大学で作れるように、研究機関で作れるようになったらなというふうに私は考えている次第です。
  以上です。

【橋本主査】    どうもありがとうございました。
  きょう、これで3人の先生方にお話しいただきまして、これから1時間強、この内容についてと、それから、前回までも含めてなんですが、きょうのこれからの予定を申し上げますと、今までの議論を基に事務局の方でまとめてくれたペーパーがありますので、それを説明していただいて、その上で第1次提言についてということで議論をしたいと思います。
  ですので、ここから、今からの議論はきょうのお話を中心に、皆さん、違った立場でお話を頂いたので、方向性が見えていると思うんですけれども、それと、最初に私が申し上げたようなことを意識しながら、それから、資料がありますので、前回までの議論も中に入れていただいても結構ですけど、内、その辺はちょっと流れを見ながら、少し必要に応じて整理をさせていただきますが、まずは自由に御意見を頂ければなというふうに、1時間強、これについて御自由に意見を頂ければなというふうに思います。
  ポイントは、本委員会で提言を出していきますので、その提言が提言書にまとまるように持っていくのが目的なんですけれども、最初からそれを考えないでも結構で、御自由に御意見を頂ければというふうに思います。感想でも結構です。どうぞ、どなたからでも。

【両角委員】    いずれの発表も非常に面白かったのです。何点か質問させてください。
  まず、永野委員の御発表についてですが、「日本のTLOがうまくいってないな」という印象は何となく受けていたんですけれど、それが明確になっていて、とても面白く聞かせていただきました。
  アメリカの大学でうまくいっているといったときに、例えば1回開発中止になったものを大学側が取り戻すとか、あるいは、最後の方にも大学主導で中期的なビジョンを提示して企業を説得するというお話があったのですが、その場合の大学というのは具体的にどういう人たちなのでしょうか。副学長、研究担当の副学長みたいなところですごくやっているのか、あるいは、TLOがアメリカの場合はもうちょっと機能しているのか、あるいは、研究者のネットワーク化みたいなことが進んでいるのか、大学主導といったときのイメージをもう少し御説明をしていただけますでしょうか。
  もう一つ、この海外のTLOがうまく機能している理由として、例えば特許戦略に熟知していたり、仕組みがよいのか、あるいは、こういうものに関わる人材がそもそも全くバックグラウンドとか経験とかが違うのか、その辺りももう少し教えていただければというふうに思いました。
  もう一点は、菅委員の御発表に関してですが、ペプチドリームをなぜ創業したかという中に、学生やポスドクに産学連携研究をさせるのは無理というのが青字で書いてありました。ここを御説明されなかったんですけれど、一般的には、何というか、望ましくはないと思うのですが、チープレーバーとして使われるみたいな話がすごくあると思います。彼らの参加が無理だというのは余り聞いたことがないように思いましたので、どういった理由で無理なのかということをもう少し教えていただければと思います。
  以上です。

【橋本主査】    ありがとうございます。では、今、永野委員と菅委員にお話、伺いますが、永野委員、先ほどちょっと言われましたけど、永野委員は御自身でMITですかね、MITの教授と仕事で研究を見付け出して、それで、永野委員がその会社を創ってIPUして、今、ベンチャー企業として公開している、そういう方で、それで、世界中のそういうバイオ系のベンチャー、バイオ系のサイエンティストですけど、それ以外も含めて、いろんな大学の方の情報を集めて、会社を興そうというような活動をされておられるので、非常にきょうの御説明いただいたのは御自身の経験を基にお話を頂いていると思います。
  では、永野委員、お願いします。

【永野委員】    一番初めの質問なのですけれども、中長期なビジョンを示して産業界からお金を得るという主体は先生です。大きなプロジェクトだとやっぱり研究所長ですね。研究所長が、MITのメディアラボですと、今、伊藤穰一という日本人の方がやられているんですけれども、彼が産業界に対してこういうテーマでやろうと、15年の頃に。そういうことでお金を集めてくると。
  TLOとかOSPはやはり支援に回ると、先生の支援に回るということがはっきりしています。小さいプロジェクトでは研究室のトップの先生がビジョンを発表して、TLOとかOSPがつなげてあげるという役目ですので、やはり主体は研究者だよということがはっきりしています。
 
【永野委員】    人材については、結局、一つはやはり人材というよりも仕組みだと思いますね。やはり仕組みがはっきりしてないと人材がやはり来ないし、結局、技術を循環させたりというのはやはりその仕組みが必要だと。
  それから、人材に関してはお金とリンクしてしまうので、いかに間接経費というものが意味あるものだということを、研究者の方にも、あるいは、産業界の方にも、資金の出し手の方々にも分かってもらえるということが大事だというふうに思っています。お金があれば、いい人も採れるわけですから、それが重要じゃないかなと思っています。

【橋本主査】    菅委員。

【菅委員】    まず、その御質問の件ですけれども、学生とポスドクでやらせるのは無理というのは私の経験からも言えていることで、私、今、産学連携、全然やらないですけれども、どうしてもやらなくちゃいけない状況が起きて、とある先生が持ってきている日本企業を集めたコンソーシアムのお金で、その中の人が私と研究したいというので一応やったんですね。もう仕方ない。でも、やはり駄目なんですよ。
  もういいデータが出たら、もうこっちには来ないし、こっちが出して向こうに渡しても、向こうがちゃんとやってくれないですね。そうすると、何が起きるかというと、その学生なりポスドクたちのやった時間は無駄になっちゃうんです。論文も書けない、時間は無駄になり、もう何のいいこともないですね。そういう経験、結構僕は過去にあって、これは駄目だというふうに思いました。
  何でペプチドリームを創ったかと、ペプチドリームを創ってやったことというのは、そうすると、ビジネスでやるので、まず、向こうが出さなくちゃいけない値段が、値段というか予算が上がるんですね。100万、200万じゃ、やらないので。1億円ぐらい出さないと、やはり向こうの企業も本気にならないです。やはりそれだけのお金を出すということは、それだけ価値を見いだして、それに会社が決断してやると決めたということなので、やはり我々が産学連携すると、せいぜい出てきて100万、200万ですけども、そういう、私だったらそれぐらいになっちゃうんですね。だから、それはやはり意味がないということですね。
  TLOのことについて私からコメントさせていただきますと、私はアメリカの地方大になるニューヨーク州立大のバッファローにもいたんですけれども、そこのTLOが、じゃあ、いいかといったら、全然駄目です。だから、アメリカでいいTLOというのはスタンフォードとかMITとか、もうほんと、トップスクールで、実質的には地方大に行くと全く駄目です。唯一、私が助かったのは、TLOが持っていた特許事務所に、我々の大学を卒業して私の技術をよく理解している者が見習として特許事務所で働いていたんですね。彼が全部特許を書いてくれたので、最初の特許はよく書けているんです。
  そういう幸運なことがない限り、やはり地方大ではもう駄目ですね。TLOを全く、バッファローのTLOは全くプラスじゃないです。一番もうかったのがペプチドリームの株で売ったというのが一番もうかっているはずなので、もうほんとにそんな感じなので、必ずしも全部の、アメリカの大学全部のTLOがいいわけではなくて、ほんの限られた一握りのTLOがいいというのはよく理解しておいていただければと思います。
  それが日本の場合、東大だけとか、どこか少しとか、それでは困るんですね。もう少し増えた方がいいと思います。

【橋本主査】    ペプチドリームについて、ちょっと補足します。ペプチドリームの産学連携や研究を、学生とかポスドクがしないというのは何かというと、ペプチドリームがやるんですよね、産産連携を。だから、そういうビジネスモデルなんですよね。

【菅委員】    そうです。

【橋本主査】    だから、御自身の研究成果のそういう産業界で役立ちそうなというか可能性のあるものはペプチドリームに移しておいて、ペプチドリームが産産連携をやるという、こういうモデルでやっているということですね。

【菅委員】    そうです。あと、私は学生もペプチドリームに入れません。普通、大体自分の会社を創ると、学生に、ここ、行け、行けと言うのですけど、それは一切言わないということで、実際に私の学生だった人が直接会社に入った人が一人もいないです。それも私が持っているビジョンの一つで、やるのであれば徹底的に分離しようということですね。

【橋本主査】    ほかにいかがでしょうか。では、青木委員。

【青木委員】    ありがとうございます。非常に勉強になりました。どうもありがとうございました。
  ただ、MITとか東大とか、両国のトップの大学のことで菅先生がバッファローにいらっしゃったとおっしゃったので、そのことを伺おうとも思っていました。私も地域大学に今勤めています。それで、地域支援ということですので、アメリカでもそうですけど、トップの大学で博士を取って、卒業生が働いているのは多分MITでもなく、ほかの大学で働いている人の方が多いわけですよね、スタンフォードでもなくて。日本もそうだと思うんですね。
  アメリカの場合は、その地域の大学というものはどうなのでしょうか。人材が、TLOの人材も循環するようにしているのでしょうか。その辺を、御存じの範囲で伺いたいと思います。

【菅委員】    TLOの人材が循環しているかどうかは分からないですが、確かに大学の先生はそうで、私もMITでドクターを取っているんですね。それで、バッファローに行って、そこで、じゃあ、研究はちゃんとできる環境なので、研究はできます。じゃあ、それをビジネスにつなげるかというと、バッファローという地域だとそういうのは非常にレアなケースです。創薬とかそういう分野に関してはかなり厳しい環境ですね。今、もうボストンに集中しちゃっているので、ボストンとかサンフランシスコに集中してしまっているので、ビジネスはビジネスで別の場所でやればいいことかもしれないです。
  ただ、地域でもやっぱりそういうビジネスはある程度動いていて、バッファロー大から出てきた技術をライセンスして、地域で電池の会社があったりとか、そういうのはやっぱりそれぞれの地域であります。そういうところで大学の先生がある程度関与していたりとか、逆に、そういうところで非常に活躍した人を大学の先生として引き抜いたりもしていますね。

【橋本主査】    永野さんはどうですか。その辺、御存じないですか。特にTLO人材。

【永野委員】    そうですね、TLOは非常に産業界との人材、人事交流が多いですね。やはり産業界からTLOに来られる。それで、日本の場合はどちらかと、定年退職とか第二の人生の方が多いんですけれども、キャリアのステップアップとして、例えば東芝で10年働いてといって、MITのTLOをやって、それから、またベンチャーに出るとか、そういうような形で、アメリカ全体が人材の流動性が高いんですけども、非常に優秀な方がたくさん来られるということです。
  それから、ローカルかメーンの大学かという、確かにMITとか東大は別だと思うんですけれども、やっぱり九州大学とか北海道大学とか、そのぐらいはローカルではないのではという。それがローカルになってしまうと、日本で何もできなくなってしまうのではというふうに思っています。
  バッファローはちょっと微妙なところなんですけれども、アメリカでも20、30の大学はそういう優秀な研究成果を産業化できているというふうに思っていますし、アメリカの場合、大学数が非常に多いので、何百もありますので、日本もやはり10、20の大学が積極的に産業化に貢献されるような形になっていけばいいんじゃないかなと思っております。

【青木委員】    大きな、例えばビッグ10とか、ありますよね。ああいうところのTLOというのはMITと似たような体制でやっているのでしょうか。

【永野委員】    TLO自体がそんな歴史がアメリカでも長くないんですね。要するに20年ぐらいなんですね。だから、その前までは、もうちょっと昔の日本と一緒に曖昧な形でやっていたので、TLO自体がそんな歴史は長くないです。有名大学でも、ハーバードなんかは何でMITはうまく産業化できてという、ハーバードの研究成果がいいのに、うまくいってないんだというようなジェラシーの声もたくさんありますので、やっぱりうまくいっている大学とうまくいっていないのではもちろん対照はあります。

【橋本主査】    ちょっと待ってくださいね。渡部先生と上山先生、この辺、詳しいんじゃないですか。

【渡部委員】    上山先生。

【橋本主査】    上山先生ですか。

【上山委員】    TLOは一番初めは68年でスタンフォードですけど、やはり僕が見ている限り、トップクラスの州立大学と、それから、私立のスタンフォードなんかと大分違うなという。特に州立は非常に財務状況が悪くなってきていますから、それこそお金もうけをする一つの手段としてのTLOという感じが強くなってきている、年々強くなってきているような感じがします。
  もともとスタンフォードが一番初めに作ったときというのは、先生がおっしゃったみたいに、そもそも社会に対するある種の貢献、パブリックデューティーみたいな感じが非常に強かったと思いますね。研究、どうやって早くいい成果を社会に技術移転をしていくのかと。
  ですから、最初からお金もうけをするということを基本的に前提にしないということを最初にうたっていて、したがって、法律家は余り雇わないと、技術に非常にたけて、ビジネスが分かっているような、そして、大学の中に埋もれてしまうかもしれないような技術を発見していくということが一番の目的だということを最初にうたっているので、それがやがてニールス・ライマースというスタンフォードのTLOを作った人がバークレーに行ってTLOのやり方を教えますけれども、その過程の中で、やはりどうやってたくさん特許を取ってお金を得るかというところにだんだん変わってきたような感じがしますね。大きなインパクトのあるような技術の移転ということでいうと、やはりむしろ最初の考え方の方が正しいんだと思います。
  それでいうと、僕はちょっときょう、菅先生が来られているから、申し上げるいい機会だなと思ったんですけど、何年か前に一緒に仕事をさせていただいたときに、きょうの話とちょっと近いことをおっしゃっていて、つまり公的なお金で、つまり公的な非常にいい大学がやる産学連携のパターンというのは、そもそも科研費とか公的な研究資金をそこに入れるということをやってはいけないということを随分おっしゃっていて、僕は非常にいい話だなと思って実は聞いてきたんですよね。
  日本が割とやりがちなのは、リスクフリーのお金ですよね、公的なお金というのは。これを、これをこのようなところに注ぎ込むということが多くて、それは本来リスクを取らなければいけないところにやっているので、したがって、いい成果が生まれないんですよ。それは、しかも、また、アカデミアの体質を変質させてしまう可能性がある。
  やはり特定研究大学をこれから目指すんでしょうけど、そういうところというのはアカデミアはやはりアカデミアのリスクを取る体質を維持しなければいけないんですね。ビジネスのリスクを取るのはまたこれは別の形であるわけですね。
  この二つをごっちゃにしてしまうということは、実はその研究大学というものの体質に大きなそごを来す可能性があるということだと思いますね。
  ですから、僕は産学連携も大賛成ですし、このようなスキームも、知的資産のこと、大賛成ですけども、我々アカデミアにいる人間が考えないといけないというのは、ここで行われているものが果たしてどのような形で社会貢献していくかということの視点も重要だけど、そこに、それが中心になってはいけないということなんだと思うんですよね。
  しばしばここが混同されてしまうということをまず押さえておかないと、逆に言うと、ペプチドリームみたいなのは出てこないんですよ。それはスタンフォードでも同じだと思います。スタンフォードもやはり大きなメガヒットが出なければ、TLOって成立しないんですよね。

【橋本主査】    ちょっとそこでもう一回、分かりやすく説明してもらえますか。要するに、アカデミックリスクとビジネスリスクを分けて、それで、例えば特定研究大学のようなところがどういうふうにやるのかというのを少し説明していただいて。

【上山委員】    やはり地域の大学と例えば東京大学はやはり違うと思うんですよ。地域の大学というのはある程度成立された技術というのをどういう形で地域の中で使っていくかということを。だけど、特定研究大学のような大型の研究大学はやはり全く新しいところにチャレンジしていくようなアカデミアの精神がなければ、それは本当の意味でのメガヒットはなかなか出てこない。
  そのために、研究者にそういうイノベーションをやりなさいというようなマインドセットをひたすら植え付けるというのは間違っていると思うんですよ。つまり、研究者というのは全く新しいような技術がどこで生まれていくかということをずっと考えていて、それが果たしてどういうふうにイノベーションにつながっていくかということはそもそも頭にはないんですよ。
  それをイノベーションをやりなさいよと言った瞬間に、社会実装のことだけがずっと頭の中に入っていって、特定研究大学でやるような研究のパターンに大きな問題を起こしていく。そこは本当に気を付けなければいけないというのが重要だと思いますね。
  だから、僕もこのTLOが進んでくると、ひたすらそれをどうやってイノベーションにつなげていくかということにつながっていきますので、そうすると、研究者はそんなところにはいたくないんですよ。だから、優秀、バークレーから随分スタンフォードに移籍してきました。つまり、私たちがやっていることをどうやって、技術としてベンチャーを創っていくかということだけをひたすら言われて、そして、それが……。

【橋本主査】    バークレーが。

【上山委員】    バークレーのところから。僕、何人もそういう人にインタビューをしましたね。

【橋本主査】    バークレーからスタンフォードなんですね。逆なんですね。

【上山委員】    つまり、スタンフォードというのは小さな大学だけども、この中にある種の研究の自由があり、そして、それがどのような形でイノベーションにつながっていくかということをサポートしてくれるというようなTLOがある。そのことが自分にとっては非常に豊かな研究の資源になっているという意識ですよね。
  これはやはり研究大学ということが本来目指すべきで、また、それを、おっしゃったように、九州大学とか、幾つかの研究大学がそういうような体制を作っていくことがとても重要だとは思うんですね。
  説明になったでしょうか、先生。

【橋本主査】    はい。渡部先生、どうぞ。

【渡部委員】    同じようなことなんですけど、先ほどのアメリカのスタンフォードのやっているポリシーというのは、バイドールのときに聴講会があって、ライマースが証言していて、あれはお金もうけじゃないと、社会に大学の役割をいかに還元するかということが目的だということがあって、ただし、今おっしゃったように、UCはちょっと違うスタイルで行ったんですよね。ライセンスモデルと言われていますけども、そこには対立があったと思います。
  その話と多少関係して、日本のTLOの分析というのを、最近はやっていないんですけど、何年前かな、6、7年前にやったことがあって、パフォーマンスとの関係を見ましたところ、一番聞いたのは、TLOが誰のエージェントとして活動しているかというのが一番聞きました。これが研究者のエージェント、それから、大学法人のエージェント、それから、政府のエージェント、企業のエージェントとかって、そういうのを分類をしまして、どこが一番パフォーマンスが高かったというところなんですけど、明らかに研究者のエージェントですね。
  研究者の側に付いてないと、TLOって多分成り立たないんですよ。企業側に付こうとすると、結局、双方代理みたいになっちゃって、結局、大学の先生に信用されなくなるので、うまくいかないんですね。それは定量的にも明らかでしたね。
  以上です。

【橋本主査】    では、魚崎委員。

【魚崎委員】    関連してというか、TLOを今言われて、ちょっと違和感というか、実際に日本のTLOってほんとに存在感があるんでしょうかと思っているんですね。
  というのは、私、今、電池のプロジェクトで46機関が参画しているプロジェクトをやっていまして、薬と違って電池ですから、いろんなコンポーネントをライセンスしなきゃいけないというので、一応シングルライセンスポリシーというのを立てて、いろんな大学に交渉に行っているわけですけど、そのときに、出てくるのは知財部だけで、TLOをどうしましょうかという話が一切ないので、本当に今、日本の大学のところでTLOがほんとに動いているところってどれぐらいあるのかなというのが一つの疑問で。
  実際、私、北大にいたときに、株式会社北海道TLOの株主だったことがあったんですけど、解散するときに、ちょっと戻ってきましたけど、5万円投資して3万5,000円ぐらい戻ってきて、最初、ものすごく得するから買えとか言われて買ったんですけれども。そういうことを考えて、ですから、今も一応何か公益TLOって形はありますけど、存在感はほとんどない、機能してないと思うんですね。
  そういうことを考えると、ここに先ほど書かれたようなことをほんとにやっているのかなということがあってですね。

【橋本主査】    TLOの現状はどなたが詳しいですかね。渡部先生が、それとも、坂本、山下さん。渡部先生が多分一番詳しいですかね。

【渡部委員】    取りあえず、日本のTLOってアメリカのTLOとの関係で言うと、全然TLOじゃないのが含まれているんで、逆に言うと、公益TLOというのは私の分類だと地域の側のエージェントに立っちゃっているので、それ、ほんとはアメリカにはあんまりないんですよね。
  だから、ちょっとTLO、TLOという言い方自身が何か日本ではちょっと混乱をしてしまっているので、1回それは頭から消して、現実に誰のエージェントとして活動している機関がどういう機能を発揮しているのかという整理をし直さないといけないと思います。穏やかに言いました。

【國吉委員】    現場から。

【橋本主査】    どうぞ。國吉先生、どうぞ。

【國吉委員】    大学の現場でTLOがどういうふうに接しているかという意味では存在感はありまして、存在感というのはどういう意味かというと、さっき永野さんが指摘されていた問題ってかなり当たっているというか、現場感覚としてはあるなと。
  つまり、例えば特許を出願するときに、やはり実際に相談するのはやはりTLOの人ですね。今、さっき指摘されていた問題はほんとに実際にあって、今は予算が非常に逼迫しているので、短期的にリターンがあるような、非常に企業が買ってくれるようなものでないとやっぱり出願もさせてもらえないということは実際あるんですね。やはり同じ問題意識を持っていて、特許戦略的に見たとき、もうちょっと長期的な視野で戦略的に出していくべきじゃないのかということをいつも思ったりもしますと。
  そういうこととか、それから、知財部とやっぱり連携はかなりやっていて、表に出てくるのが知財部であっても、TLOはやっぱりそこでコンサルティングのようなことをやっているように見受けられます。

【魚崎委員】    やはり東大は存在感あると分かっていますけど、東大以外のところはほとんどない。東大はかなり例外的だと思いますけどね、TLO。

【橋本主査】    國吉先生は、御存じの方が多いと思いますけど、AIとか、それから、ロボットとか、その辺の融合分野の、私はもう日本で最も先端を走っている方だと思うんですね。それだけに、産学連携もいろいろ、産業界からも注目されているし、いろんなところから注目されているんで、ほんとに今ここで議論するような、次、融合分野の次の世代のところをどうするかというようなときに一番現場でというか、実際にそういう問題にぶつかっておられる先生だと思いますので、言っておられることは非常に現場感のあるというか、しかも、次世代のことについて現場感のある、そういうお話だと思います。
  どうぞ、松本委員。

【松本委員】    今、ちょっと東京大学さんのTLOの話が出たんで、ちょっとそれをきっかけに話しますけども、正直言いまして、我々民間企業サイドからすると、我々とコンサルトを取ってくれるのは残念ながら大学のTLOではなくて、東大ですと、実は東大キャピタルのUTECのほんとにスタッフの方々がかなり面白いベンチャーとか、大学発ベンチャーとか、大学の研究シーズも含めて、常にそういう情報を提供していただくんですね。そこからいろいろな位置関係でつながったケースも非常に多いんですね。
  先ほどのお話の中で、そういう何といいますかね、イノベーション、大学ベンチャーもそうですけど、イノベーションの支援者といいますかね、そういう支援役みたいな役割というのが非常に重要だと私は感じているんですけども、大学と産学連携についても、そういう役割の機能が、産学連携本部であるとか、そういうTLOに役割がちゃんとやっていればいいんですけれども、意外と違うところの方がそういう機能を持っているところが多い気がします。
  MITについても、ちょっと御発表のところの仕組みとちょっと違うかもしれないですけれども、我々、MITのそういうグローバルプログラムというのに幾らかお支払いしているんですけどね。常にそういうスタッフが、MITの面白い研究シーズとか、これはかなり中長期的な、かなり飛んだ研究も含めて、そういう、常に紹介していただきますし、面白ければ、アポまで取って、向こうの教授の方とディスカッションの場までセットしてくれると。
  これ、何でそういうことを知ったかというと、実は日本にそういう役割の、日本にそういう役割の方がおられるんですね。常にそういう、企業側にそういう大学のパフォーマンスなんかも紹介していただけるというような、そんな機能が意外とTLO以外のところにあるような、そういう感じがあるんですね。
  それで、産総研で、これ、経済産業省さんの国研なんですけども、昔、産総研さんが産総研の知的財産を民間に売るといいますか、紹介するのに、新しい組織を作られたんですけども、これ、産総研イノベーションズという。やっぱりスタッフ全員、民間からヘッドハンティングを実はされたんですね。たまたま、手前みそで、我々、KRIという基礎研究を受託しているビジネスをやっている会社を1987年に設立したんですけども、そこの社長がヘッドハンティングされて、産総研イノベーションズの代表で行ったんですけども。
  やっぱり民間と大学の研究シーズを橋渡しするところが、大学の中の組織よりもちょっと違った組織ですね。そういうところの方が何か我々サイドからすると、そういう方々の方が非常に顔が見えるしというケースも。全てが全て、そうではありません。大学の産連本部の方が直接非常にコンタクトを取っていただくところもあるんですけれども、意外とそういう役割機能というのがこれから日本の企業にも必要じゃないかという気はするんですけど、いかがですかね、これ。

【橋本主査】    ちょっといいですか。國吉先生は、先ほど申し上げたようなこともあるし、それから、理研に研究室を持っておられて、これは出ている会社がトヨタがスポンサーになった研究室を持っていて、そこの所長でもいらっしゃるし、それから、MITメディアラボなんかとも非常に関係があると思うんで、ちょっとその辺のことを御意見を頂ければと。

【國吉委員】    昔はMITに少しいたことあるんですけども、人工機能研究所、AIラボのところですね。今、松本さんがおっしゃったことを経験していまして、あれはTLOだったのか何なのか、よく分かんないですけども、いつもどなたかが回っているんですよね、ラボを。各研究者と雑談をして回るんですよ。
  何をしているのかと思うと、最新の今何をやっているのみたいなことを聞いて回って、いいネタがあると、例えば、じゃあ、特許しようよといってやってくれたり、あるいは、企業と紹介してくれて、ちょっとディスカッションしようよみたいな。非常に気楽な感じで、しかも、現場に入り込んだ形で、大学の先生じゃなくて、そういうスタッフの人がつなぐというのをやってくれていて、これは僕はいいことだなと思ったんですよね、すごく。そういうことで、産業界との非常に最先端でのつながりというのを常に開拓するというスタンスがあると。
  僕はやはり、今は特にそうだと思うんですけども、ほんとの最先端での研究と、それから、産業界での開発とか戦略というのがもっとダイレクトにつながっていかないといけないなと常々思っているんですけども、そのための仕組みというのは非常に大事で、作っていくべきだと思います。
  それから、産総研イノベーションズ、私、産総研というか、その前の電総研にもいたことあるんですけれども、産総研イノベーションズがいいモデルかどうかはよく分かりませんけれども、それはまた調べられたらいいと思うんですけども。

【松本委員】    いいとは思っておりません。ちょっとやり過ぎたという。

【國吉委員】    ちょっと現場の声もいろいろ聞いたりもしていますが。ただ、そういう試み自体は非常にいいと思うんですよ、ですから、おっしゃったように。ただ、かなり人材に依存するところがあって、本当の最先端の現場の研究者とちゃんと話が通じないといけない。そのマインドというのをくみ取りつつも、それから、産業界とも仲立ちができるという、そういう人材というのはそう簡単ではないと思うんですね。それをもちろん育成しなきゃいけないと思います。
  あと、理研での件ですが、理研で実は脳科学総合研究センターと、それから、トヨタ自動車とが合同で設置した研究センターというのをやっているんですが、ここはある意味、ユニークなモデルだと思っていまして、何がユニークかというと、通常、企業とそういうアカデミアとの共同研究というのは、普通、資金が入ってきて、アカデミアの中で研究をして成果を出しましょうというような、そういうモデルですが、これは、このBTCCというセンターは本当に両者が一緒に研究しているんです。
  つまり、企業からも研究者が常時入ってきていて、一緒に最初の研究のテーマ設定から、計画、それから、実際の現場の研究、それから、定例のミーティングみたいなのも、テレビ会議も使ってトヨタ自動車本社とつないでやっていたりするという。ですから、結構実はそういうパターンというのは珍しくて。
  僕はやはりこういうふうに本当に現場にお互い入り込んで一緒にやるという体制を作ることが産業界とアカデミアの連携の中ではやっぱり成功する一つのモデルケースかなというか、そういうやり方をほんとにしないと、イノベーティブな研究といいますか、ほんとに革新的な研究には発展しないんじゃないかなというふうに実感を持っています。

【橋本主査】    菅委員。

【菅委員】    MITにはOffice of Corporate Relationsというオフィスがあって、そこで何人かいて、その人たちが国内、国外含めて、全部のいろんな企業の人たちとコミュニケーションを取ることをやっています。
  その人からメールが来たんですけども、実はその人は私の先輩というか、同じMITでドクターを取っているんですけども、その人から突然メールが入って、あれ、おまえ、日本に帰っているんだという話になって、今何をやっているのといったら、彼はずっと製薬会社で仕事をしていたんですけれども、この2、3年で辞めて、今、MITのそういうCorporate Relationsというような感じのところにいるわけですね。
  だから、そういう人たちをやはりMITとかは抱えている。それを多分、東大のエッジキャピタルがやっているのかもしれないですけれども、本来はエッジキャピタルもそうじゃないはずなんですけれども、そういうチャンスがあるので、多分そういう宣伝をされているんだと思います。
  私、東大TLOとエッジキャピタルとがうまくいっているかなと思うのは、彼らは独立した会社なんですよね。東大の中にあるんですけれども、彼らは彼らで自分たちでマネージする社長がいて、それぞれがいると。それを作った、東大TLOの前身はCASTIで、東大の先端研の先生が作られているんですけれども、そういうシステムが独立した形で存在していて、彼らは独立ユニットでありながら、東大とアフィリエーションしながらやっていくという独特のスタイルを取っているのがうまくいっている理由かなというふうに私は個人的には思っています。
  そういうのが、今、ほかの大学でどれくらいあるのかというのが、私は情報がないので分からないんですけれども、そういうことがあれば、きっとうまくいっているケースもあるんじゃないかなというふうに思いますけれども。

【橋本主査】    どうぞ。

【永野委員】    先ほどのMITの組織なんですけれども、TLOとコーポレート・リレーションをやるのは別組織にして、レポーティング・ラインは全く別にしています。これはやっぱりコンフリクト・インタレストがあって、やっぱり両方とも産業界からお金を取る立場にあるので、グローバル・リレーションシップが日本にスタッフを置いていて、常にアップデートします。そういうのとTLOというのは別組織でして、それがうまくいっているんじゃないかというふうに言われています。
  両方ともやっぱりネットワークがあります、コーポレートに対してですね。一方はやっぱり自分の技術を産業化する。一方は、スポンサードリサーチで産業界からお金を呼び込むという役割になっているんです。

【橋本主査】    ありがとうございます。

【國井委員】    よろしいですか。

【橋本主査】    はい。國井委員。

【國井委員】    ありがとうございます。別な話になりますけれど、3人の委員の方がおっしゃっていた中で、非常に重要だと思うのが、やはりベンチャーの育成だと思います。技術を社会的価値にするに当たって、ベンチャーの方が、生産性が高いというお話もありましたけれど、しかし、ベンチャーが、なかなか日本の場合、育っていない。これは今回のテーマの話だけではないと思いますが、私が大学で社会人に教えている中、中小企業とかベンチャーからの学生さんもいらっしゃっていますが、そういう中で、やっぱりコンタクトをどうしたらいいかというのが問題になっています。身近なところでやはりコネクションがない。そのパイプがうまくできるということが重要かと考えます。
  それから、技術を持っていて、アントレプレナーシップがあって起業しても、日本の場合、なかなかそれをビジネスにするパートナーシップを組める人材が少なくて、うまくいかないという状況がありますが、それを、TLOのミッションじゃないのかもしれませんが、どこかが補完しないとうまくいかないかと思います。
  先ほどのお話で、大企業とは別に、ベンチャーに対しては成功報酬でというのは非常にいい考え方だと思いますが、そういうようなことも含め、ベンチャーに対してどう支援していくかという点が重要で、東京大学の場合はUTECがあって回っているかもしれませんが、他ではもうちょっとベンチャー育成をエコシステムとして総合的に作っていかないと、部分的にこの知財の話だけをしていても、うまく回っていかないかと思います。
  あと、もう一つは、もう使わなくなった特許を集めて、いかに戦略的に広げていくかというのを、大学とも連携してやっていく必要があるかと思います。例えば、産業革新機構がパナソニックさんなどの幾つかの大企業の特許を戦略的に集めてそういうのをやっていますけれど、そういう活動も重要じゃないかと感じておりますので、それについてコメントがあれば、お聞きしたいと思います。
  以上です。

【橋本主査】    上山先生、手が挙がった。いいです、今の件もそうですし、そうじゃなくても結構ですので。手が挙がっていますので、どうぞ。ちょっと中座させていただきます。

【菅委員】    司会、やります。

【上山委員】    やっぱりこのTLOとか知財本部とかのこういう新しいシステムは10年ぐらい、もうちょっと前に日本に入ってきた。入ってきたときに、やっぱり形が入ってきたということだとは思うんですよね。そして、アカデミアの方はそれをどういうふうに、対処することがなかなか分からなかった。エクセプト・フォー・東京大学なんですけれども。したがって、産業界の人たちに協力を仰ぐ形でやり始めたと。だけど、アカデミアが関わるこの知財とかでは本来やっぱり違うものなんですよね。そのやり方がうまく定着しなくて、今なかなか苦しんでいるということだと思います。
  なぜそれができなかったかというと、ちょっと上にはなるけど、やっぱりアカデミア、大学の側で作り出す人材の育成にやっぱり大きな問題があるんだと思うんですね。特に理科系の博士課程の進学を見ていても、実は修士に大きく偏っていて、それはもうアメリカと決定的に違う点ですよね。大学に行くということは基本的には博士号を取るという。修士なんて基本的には付いてくるもの、あるいは、それにフェールした人という感じのイメージすらあって、博士課程人材というのは何も一流の、第一級の研究者を作るだけではなくて、むしろこの知財も含めた産業化も含めたところまで幅広いところに目利きが行くような人材をアカデミアの側は作ってきたという。
  そこに依拠する形で、こういうものが花開いたということだと思いますが、日本はいまだに博士課程への進学というのは非常に低い、大学の役割が非常に限定されていると。ここを早く何とか変えていかないと、こういう形にはなかなかなっていかないだろうなということが一つですね。
  もう一つは、ちょっとかねてより懸念していることは、ずっと見ていると、やっぱり東大が突出しているんですよね、日本の大学の中では。このスキームも含めて、日本の研究大学の中でこれが本当にできるのは多分東大ぐらいだろうなというぐらいに突出している。それは果たしていいことなのかどうかということをちょっと大きく見て思います。
  幾つかの大学で、東大がもう既にやり始めているようなことを本格的に進行するようなこともやっぱりやっていかないと、それが東大モデルであるのか、東大とは違うモデルがあってもかまわないとは思いますけど、研究大学と言われているものの中にはやっぱり幾つかそういう拠点が走っている形をどこかで作っていかないといけないということだと思います。
  やっぱり競い合わなければ、このようなスキームって伸びていきませんから、それはやっぱりここの中でもどこかで提言を入れるべきじゃないかと思ったりしております。

【菅委員】    よろしいですか。ほんとにそのとおりだと思います。東大だけでは、多分日本の全体の産業は、ベンチャー的な上げはないと思うので、やっぱりそこはほかの大学にも是非やってほしいと思います。
  人材に関してですけど、私のMITの同級生はドクターを取った連中はすごくたくさんMBAを取っています。つまり、もうマインドがそういうふうにセットされているんですね。ドクター取って、企業に入ったら、その後、MBAを取って、自分はどこかの社長になりたいとかと、そういうふうなマインドが割とアメリカの、特にMITなんかにはセットされていて、ハーバードとは大分違うスタンスでやっているんですね。それはもうスタンフォードは多分それに若干あったりするんだと、近いところがあったりするんだと思うんですけれども、そういうふうなマインドセットがされていて、人材が回っている感じですので。
  今、日本でそういう人がいるかって、いないですね。でも、実は企業でPh.D.を持っていて、研究職から何か開発の方に回って、実際、その人たち、首を切られるかどうかおびえている人たちも結構な数、いるんですよ。
  私はもうそこから人材を発掘してきてベンチャー・スピンアウトしてもらうというその人の循環を作らないと、アメリカのようなシステムでMBAでなんていうのは循環できないので、そこをどうやって作っていくかというのはもうほんとに真剣に考える時期が来ていて、それが起きないと、多分、大学発ベンチャーというのはもう名前だけで、全然出てこないということになると思うんですね。
  だから、例えばペプチドリームの社長ですけれども、彼なんかは最初の1年は、俺、給料はいらない、もうただでやるから、ただで、お金をできるだけ節約して、ちゃんと企業の形にしましょうというぐらいの人がなかなか出てきてくれないと、いけないんだと思います。

【橋本主査】    上野山委員。上野山委員はパナソニックですけども、アメリカで学位を取っておられますので。

【上野山委員】    先ほどからお話を聞かせていただいて何点か気になることがあります。一つ目は、大学のIPについてです。東大以外の大学との産学連携の場合には、知財に関してはほとんど企業側に負担ということが多くなってきていると思います。行政法人になった当初は、自分らで知財を維持し、運用していこうとされていましたが、結局は維持費が高く企業からの応援が必要となる状態に変わってきていると思います。
  だから、本当に大学側がイニシアチブを取ろうとしますと、先ほど永野先生がおっしゃったように、大学側である程度研究テーマの出口のビジョンを持って提案するということが必要かと思います。それは大学で実現するには簡単でないかもしれません。しかし、企業から研究資金を集める上では、大学からの提案は必要になってくると思います。
  二つ目はベンチャーに関してです。日本ではアメリカのようにベンチャーが育たないと言われて久しいですよね。それは環境が変わらないからだと思います。もちろん様々な問題があるのですが、結局はアメリカの場合には失敗してもそんなに大きい負担がないのにもかかわらず、日本では借金が残る場合が多いと思います。だから、それをできる人は非常にまれだという感じがします。ですから、日本の場合、環境や風土のような根本的なところがやはり大きな課題かと、非常に感じます。
  三つ目は大学への寄附についてです。企業などの社団法人の場合はよく調べていないのですが、個人の場合にはアメリカではかなり税制にメリットがあると聞いています。また個人の所得税制そのものが異なるため、個人でも多額の寄附ができるようになっていると思います。日本の場合、個人が億を超えるような金額の寄附をなかなかできないですよね。ですから、大学が研究テーマの出口のビジョンなどを提案すると同時に、企業が寄附金や共同研究資金を出しやすくする環境の変化などペアで変えていかないと、なかなかひとつだけの改善では難しいのではと感じています。
  例えば、先ほど菅先生が、日本の企業が全くベンチャーを擁護しないとおっしゃいましたが、アメリカでは企業がベンチャーと共同研究や買収を興した場合に何か特典があるのではないでしょうか。日本の場合と同じ状況なのでしょうか。

【菅委員】    法人というのはその海外の。

【上野山委員】    大企業がベンチャー企業に。

【菅委員】    特にないと思います。もう普通に契約して、それは研究開発費みたいな感じで支払うという感じだと思いますね。

【上野山委員】    そうですか。

【菅委員】    ちょっと税制の話をすると、私も知らなかったんですけど、去年、分かったんですけれども、要は、我々が寄附したときの寄附の控除は、所得税全体ではなくて、給与所得税なんですよ。ということは、例えば私なんてせいぜい1,000万ぐらいしかもらってないわけでね、大学から。それで、そこの所得税なんてもう知れているわけですよ、数百万円ですね。だから、1,000万寄附したら、もうそれこそほとんど寄附なんです、控除にならないですね。それ以外で、例えば株とかでもうけたとしても、それは全く控除外になっているというのを税理士の人に聞かされて、そうなんだ、これじゃ、誰も寄附しないよなって思いました。
  だから、結局、企業からその大きな寄附があると、その企業の法人としては何か免除があるんでしょうけど、個人がほとんどできないですね。給与所得からしか控除されない。誰も給与を何億円ももらっている人なんてめったにいないと思うので、しないですね。

【橋本主査】    小川先生、是非、厳しいコメントを頂ければ。

【小川委員】    こういう分野、ちょっとなじみがなかったもんですから、ただ、自分が民間研究所で15年ぐらい、それから、事業部門で10年ぐらいでしょうかね。あと、大学に10年来て。そういう経験からちょっと申しますと、先ほど國吉先生がおっしゃった産総研、理研でしたかね、トヨタの方とか一体になってやっているとか、それから、國井先生がベンチャーの方が非常に効率的だとか、あるいは、渡部先生もたしか日本の中小企業の方とやった方が効率的だと。
  そういう話をちょっと共通したものを今探しますと、企業にいた経験から申しますと、やはり企業の研究所も事業部門と同じことが何度も何度も起きましてね。そして、成功しているところというのはやっぱり事業部門とロードマップを共有しているところなんですね。今言った一体化するとか、ベンチャー企業と中小企業というのはそれが全てですのでね。やっぱりやることと技術が一体化しているわけでして、共有といえば共有ですね。そういうようなことがやっぱり共通に現れるんだなと。
  大学から、日本は大企業がほとんどだとおっしゃっていましたので、そこを申しますと、私も民間にいたときはそれなりに大企業でしたけれども、やはり大企業の研究者を大学が相手にしている限りは同じことが何度も何度も繰り返しているでしょうと。大学のその相手にするチームがやっぱり事業部門とロードマップを共有しているところでしたら全然問題ないんですけれども、やっぱり、ですから、そこのメカニズムをどうやってやるかという話がちょっと今思い浮かばないもんですから、質問もできなかったんですが。
  参考までに、中国のファーウェイとか、日本の会社があんまり金を出さなくなったもんですから、通信とかネットワークにね。中国のファーウェイなんかは日本の有名な大学にどんどん金を出している。その実態を調べますと、やっぱり彼らが出すお金というのは日本企業が出すお金の数倍から、場合によっては10倍多いわけですね。しかしながら、やっぱりゴールを明快にすると、このテクノロジーのこういうのが欲しいんだとかゴールを明快にして必ずやるそうですね。それに対して評価をして継続するかどうかを決める。これも、要するに、何ていうんですかね、やっぱり方向性が共有されているということはやっぱり全てに共有しているんではないかなというふうに思いました。
  ちょっとコメントレベルですが、以上でございます。

【橋本主査】    ありがとうございます。
  高梨委員、西村委員。高梨委員、どうぞ。

【高梨委員】    永野委員の方から御説明がありましたところなんですけれども、その海外TLOの役割と、それから、自らを売り込む研究者ですね、その関係というのが非常にインパクトが強く、私自身、この自分の身の回りで起こっていることを少し考えながらいたんですけれども、研究所長クラスの人たちがいわゆるアカデミアとしてのリスクを取りつつ、ビジョンを示すということが、やはり残念ながらできないところが多いのではないかなということを感じています。
  確かに、時折ビジョンを示してくれるような研究センター長とか、そういう方々をお見受けするんですけれども、それは主に、例えば国の大型の資金を得るために描いたビジョンであったりして、なかなか民間の方々からの資金を集めるようなパターンではない、残念ながらですね。また、そのビジョンというのはこれから何をするか、どういうふうにやっていきたいかということを描くわけなんですけれども、一方で、やはりそれをサポートしてくれる、何を持っているかを整理してくれるような支援部隊がやはり少ないんではないかというふうに思います。
  支援部隊についても、ネットワークをつなげるネットワーキング機能に関しましては、そのTLOその他の機関で幾らでも見受けられるようになってきた。すごい喜ばしいことなんですけれども、御指摘にあったようないわゆる知財の戦略ですね。アドバイスをしてくれるような、こういう知財を今こういうふうに分布して持っているから、ポートフォリオを持っているから、この辺を固めて取ると更にいいんではないか的なアドバイスをしてくれるような機関、機能を持ったところというのははるかに少ないというふうに思えるんです。
  これ、こういった機能を持つ、二つの機能を持つ人材も十分に流通しているわけではないので、その辺がやはり間接費の絡みで不十分なんじゃないかなというふうに感じました。
  すみません、コメントですが、以上です。

【橋本主査】    ありがとうございます。
  西村委員、どうぞ。

【西村委員】    ずっと議論を聞かせていただいていて、私は多分、国立大学発ベンチャー第1号というのが北海道にジェネティックラボってあったんですけれども、私はそこを立ち上げるところからやっていて、いわばCEOになって、いろんなことを経験してきたんですけども、確かに大学の技術をベンチャー的に活用していくのはいいとは思うんですけども、なぜ成功しないかというところの一つは、人材というのは確かにおっしゃるとおりなんですけども、あの職業を今の日本の社会の中で誰がやるのかなということもやっぱり考えた方がいいと思います。
  大学の先生たちは技術を作った、だから、誰か起業家がやればいいじゃないかと言うかも分かんないですけども、日本の社会にその起業家として生きていくために社会的に恵まれているのかということを、大企業の経験者をスピンアウトしてやればいいじゃないかといっても、それはさすがに、私はもともと神戸製鋼という会社にいましたけども、神戸製鋼を辞めて、いきなりベンチャーの社長をやるかといったら、これはものすごくハードルが高いですね。親戚一同から多分反対を受けますからね。
  やっぱりこの社会的なバックグラウンドがアメリカと日本では違うんだということもどこかに意識しながら人作りをしていかないと、確かに私も、博士課程でMBAを一緒に取るような形のコースを作ってやったとしても、ほんとにそういうところに、それに賭けて、最初からパナソニックに行かないで、トヨタに行かないで、そっちを目指すという博士の人間を日本の今の環境で作れるのかというところから少し考えていかないといけないかなというのが一つです。
  ただ、そういう人材は絶対必要なのと、そういうアントレプレナーみたいな人材をいかに育てて蓄積して、その人たちに活躍の場を与えるのかというのはやはりどこかで考えなあかんですね。
  三重大学、私、入って、ベンチャー企業を創るというのはことごとく止めています。これをやっても、多分、資金力、日本で集まる量も少ないし、世界に勝てる技術の組み立て方ができないしということです。それを知財マネジメントできる人間もそんなに地方で集められないので、やめろと言っています。
  何をやらせるかというと、スピンアウトベンチャーのような形でジョイントベンチャーを中小企業で技術力のあるところと技術をいっぱい作って、そこの社長と話し合いながら、子会社を創ってもらって、そこで私たちの人材も入れながらやっていくというのは行っています。
  ですから、日本におけるベンチャー企業の創り方の一つに、日本型、そういう技術トランスファー型の、何ていうんでしょうね、ちょっと温かく見てあげるような、精神的に安定できるような、要はパナソニック子会社的なベンチャーだったら、やりたいんですよ。でも、いきなりゼロからのベンチャーというと、これは、東京だと人材、いるかも分からないですけども、地方でそれを探すのはさすがに難しいんで、やっぱり心を、ちょっとこれ、ほんとの現場の話をすると、精神面のケアをしたような形のそういった人材作りと仕組み作りというのは必要かなと思っています。
  地方大学でも、ちょっと違う話をしますと、ある先生のビジョンを書いて、さっきのように長期スパンで研究をしましょうというと、やっぱり億単位のお金は取れます。私はそれをやりました。三重大学に来て最初にやったのは、一つの医学的な領域ですけども、ある新たな技術を作ったときに、カメラの大きなC社とやったときに、パテントもアップも全部作りながら、海外への展開も含めて絵を描いてやったときに、やっぱり億単位のお金が入ってきます。5年ぐらいそれで研究をして、最終的にはその事業化はできなかったという事実はありますけれども、それはできます。
  だから、日本でも組めなくはないと思います。だから、日本の大学が駄目であったりとか、東大以外が駄目とか、そういうのじゃなくて、仕組みとしてそれをやるだけの……、ちょっと言い方が、人がいないということと、人を育てるためにも、やっぱりその文化的背景が余りにも今のまま理想論だけで追っていくと、個人に対してすごい負荷をかける状況の中で追い込んでいくという仕組みですね、環境ですね。これを変えながら、きちっとしたそういう次のことを全部しょっていけるよという、個人にかかる負担を少しでも社会的にフォローしてあげるような仕組みも僕は必要じゃないかなと思います。
  すみません、ちょっと抽象論で申し訳ないです。

【橋本主査】    ありがとうございました。
  ちょっと私なりに、今、議論が大きく分けて二つの論点かなというふうに思いました。
  一つは、今、西村委員が言われたように、日本でベンチャーを興すためにはどういうような仕組みが必要なのかと、どういう、制度も含めて、人材を含めて、そういうのが必要なのかと、こういう根源というか、ずっと言われてきている話ですけども、それを今になっていろんな事例も出てきたので、それを見た上でもう一回整理をして、日本型のものをどう作っていくかという論点と。
  もう一つは、最初、私、述べましたように、そういうことをやるにしても、財政的な基盤が必要なんですね。それを国が出してくれれば、それが一番いいんですけども、最初から白旗を揚げる必要はないですけども、しかし、大きな、ここから先、国が大きな形で今以上に財政を、今の国家財政において、大学に大きなお金が入ってくるということは極めて考えづらいと。
  そうすると、やはり今のこの仕組みの中で自分たちで稼ぐというか、その資金調達する必要があって、その資金調達を、先ほど永野委員が言われたように、TLOをプロフィットセンターと見るか、コストセンターと見るか、全然違うわけですよね。例えばそういうようなことも含めて、そういうふうに財政的基盤をしっかりと確保するということと、あわせて、ベンチャーの人材を含めた制度をどうしていくかと。大きく分けて、この二つのことが今議論されているかなというふうに整理しました。
  大体ここで前半の時間、予定どおり来ていますので、ここまででこの議論、一旦締めさせていただきまして、議題(2)の第1次提言について議論を進めるために、事務局が今までの議論をまとめてくださっていますので、事務局の方から、山下室長、お願いします。

【山下室長】    それに関連して、資料4-1、4-2、そして、資料5というところで御紹介させていただきます。
  まず、資料4-1というところが、最初に主査の方から御紹介いただいた我々の検討会のターゲットなり、何をやっているのかというところの御参考までに作ったポンチ絵でございます。現在、運営費交付金改革を、在り方の検討の会議や競争的研究費改革の検討というのが別のところで行われております。
  我々のところを、4-1のところ、一番右のところで、そういう中で、大学が持つ知的資産をどのようにマネジメントしていく必要があるのかというところを、我々はその次のフェーズのところに向けて議論をしていくというところが本検討会のフォーカスじゃないかと考えております。
  裏返して見ていただきますと、最初、主査の方から御発言がありましたけれども、議論の対象ということを簡単に整理してございます。大学の研究経営力強化というところで、公的資金による支援というのは我々のターゲットの議論ではなくて、むしろ、大学自身のソフトのところですね、知的資産のマネジメントというところを議論していきましょうねと。研究開発投資の財源の例えば投資の財源のところで、間接経費の取扱いであるとか、知財マネジメントの話であるとか、人材の話であるとか、そういうところをターゲティングしながら議論していきましょうという形でポンチ絵を作らせていただきました。
  資料4-2のところは第2回、資料5とほとんど重なる部分がございますので、御紹介は省略させていただきますけれども、第2回検討委員会で提起されたポイントと第1回検討委員会で提起されたポイントと、箇条書に整理したものでございます。
  資料5に入らせていただきます。
  第2回の最後に、主査の方から御指示いただきました。ここで何をするのかということを含めた論点整理をすべきということと、これまでのプレゼンのところのを受けまして、例えばプレゼンいただいたグッドプラクティス的な、なぜできているのかとか、全体に波及、普及させるに当たって何が課題となるのかを整理しろというような御指示がございましたので、今回は私の方で御説明させていただくのは、11ページまでのところのこの第1回、第2回での議論の内容を整理したものというところを御説明させていただきます。
  そして、12ページ以降のところは、きょう、そのファイルの中で資料を配らせていただいておりますけれども、事務的にそのプレゼンいただいた内容を簡単に簡潔に整理したり、成功のポイントとか課題みたいなものも併せて事務局的に整理させていただきましたというところを参考に付けさせていただいています。
  今回の資料で説明をさせていただきますと、資料5はこれまでの意見の整理等でございます。
  1.のところは「本委員会のミッション」ということで、これは事務局で本委員会の概要のポンチ絵とか、これまでの委員会の進め方を基に、簡単に整理させていただきました。
  2.で、「第1次提言に向けて」ということで意見の整理でございます。
  まず、「前提」として、例えば現在の国立大学法人改革をめぐり、昨今の議論を前提に、各大学の研究経営システムの確立に向けて、個々の大学の取組の好事例を参考にしながら、各大学の抱える課題の明確化、解決に向けた取組の方向を示すべきではないかであるとか、運営費交付金や競争的資金をめぐる議論の中で、大学を改革するには、ある程度の枠組みを示すことが必要であることも確かだけれども、大学が自主的に変化しようとするダイナミズムを否定するようなものになってはいけないのではないかとか、また、各大学の役割についても、一つの型に固定化しないようなスキームにするべきではないかというような御意見をこれまでの委員会の中で議論が出ているところでございます。
  (2)「研究経営システムの確立に向けて」というところで、便宜的にアからケという9項目に分けて、現在整理させていただいておりますけれども、これまで、委員会を進めていくに当たって、ポンチ絵のところであるとか、我々の先ほどの資料4-2のところもそうなんですけれども、夏までのところはシステムの議論をしましょうねと、夏以降にヒト、モノ、カネの課題を整理していきましょうという整理の仕方をしていたんですが、今回こういうのをまとめてみますと、なかなかそういう形で分離するというのが本当にいいことなのかなと。むしろ、システムの中に、ヒト、モノ、カネの課題も結構内包されていて、それを分けて考えるのではなくて、そういう中に入っているというところも全体像を示した上で、夏以降ということでいうと、ヒト、モノ、カネの課題の中で深掘りするトピックスというのを設定し、議論すべきではないかということで、今回整理させていただいています。
  これまでの意見の整理というところなんですが、この整理のまとめに当たっては、第1回、第2回でのプレゼンの資料、又は、意見交換の内容、追加で頂いた委員からの意見、また、更にというところなんですけれども、事務局の方でこの委員会を始めるまでの間に、各委員の皆さんに30分とか1時間とか、個別に時間を取っていただいて、御意見を伺ったところがございます。それについてもこれまでの意見の整理という中で入れ込ませていただいております。そういう部分も入ってございます。そういうものを簡単に整理したものでございます。
  (2)の「研究経営システムの確立に向けて」のアのところでございます。「大学本部のガバナンスとマネジメント力の重要性」というのがこの委員会でもいろいろと議論されてきております。例えば、一番上のところで、大学の経営システムの確立に向けては現場の状況を正しく認識、分析するシステムを持つことが重要ではないか。その上で、目標を設定、目標達成のシナリオ、資源投入量の見積り等を行って意思決定する仕組みというのを明確にすることが重要ではないかという御意見であるとか、下から2番目のポツになりますかね。米国の研究大学において公的な補助金が急速に減少し、大学間の競争が激化する中で、大学独自のビジョンと戦略が求められ、部局を超えた包括的な「知識のマネジメント」の必要性が生起し、そのマネジメントの実効化に向けて本部への予算の集中がなされたが、同様なことが法人化後の我が国の大学にも求められているんではないかというような議論が行われたところでございます。
  次のページのところでございます。3ページ、イのところです。便宜的にタイトル、「大学のガバナンス改革等を進めるための方策の必要性」というところでございます。一番上のポツのところ、例えば理事会や経営陣は、大学の将来を長期的な視野で考えていく必要があると。そのためにも、経営陣の選び方が重要ではないかと。経営陣の資質の問題というよりも、経営陣を選ぶシステムに問題があるのではないか。経営陣の選び方が変わらないと、結局は研究経営のマネジメントはできないのではないか。
  我が国大学では、学長や経営陣を選考する際、大学内だけから選ぶことが一般的だけれども、マネジメントにたけた人材を登用する観点では、学外からの人材登用の可能性についても検討されるべきではないか。
  下から2番目のポツになりますが、大学改革で重要なのは、重鎮のような人たちを動かすのではなくて、若い学生や教員等の自由に動ける人たちを動かしていき、時間をかけて改革の雰囲気をみんなで作り上げていくことが必要ではないかというような御意見も頂いたところでございます。
  また、次の4ページのところです。4行目になりますかね。マネジメント改革を大学で進めようとするときに、現状では教員が取り組むしかないと。しかし、教員の評価は研究業績であり、マネジメント業績の明示的な評価はないと。したがって、変革を主導する教員のインセンティブも、変革に協力しようとする教員のインセンティブも維持が難しいのではないかというような意見も頂いていたところです。
  次に、ウのところです。「財源の多様化と財務戦略の見通しの必要性」です。一番上のところ、大学本部が扱える資金を増加させるために、資金源の多様化を図っていく必要があるのではないかというような御意見を頂きました。
  また、それから三つ目ですかね。我が国大学においては、本部が裁量で使える経費は、運営費交付金の一部、間接経費の一部、寄附金・基金等の一部と限定的で、欧米に比べれば非常に小規模であるのが現状であると。現在の規模では、大学独自の戦略を打ち出して実行していくのは困難ではないかというような御意見も頂いているところです。
  また、下から三つ目のところでいうと、寄附金や基金の規模を拡大するためには、税制改正や制度改正を含めた規制改革も必要ではないかというような御意見を頂いたというところでございます。
  また、一番下のところで、学術の発展に重要な非研究開発分野への投資を活性化していくためには、designated fundのような戦略的に使途を指定したファンドというのが有効ではというような御意見も頂きました。
  次のページに移ります。エとして「人事給与改革や研究人材の育成力強化の必要性」というところで、優秀なポスドクや若手研究者を確保するためには、研究費だけではなくて、scholarshipやstipendの充実が重要ではないかというような御意見です。
  また、大学における優秀な研究者やマネジメント人材の確保は非常に重要だが、それに使える予算がないし、処遇に全く競争力がないから、人材獲得競争に勝てないのではないかと。
  また、下から四つ目のポツですが、米国のアドミニストレーションのバジェットが増加している中には、スター研究者を獲得するための予算、サラリーとかスタートアップが含まれており、それが戦略的に使われていると。そういった戦略が日本の大学には欠けているのではないかというような御意見もありました。
  次のページをめくっていただけますでしょうか。オの、「大学経営を推進する研究経営人材育成の必要性」というところで、第1回のところで非常にそういう議論があったところですけれども、日本のアカデミアには、マネジメントに関わるエグゼクティブの育成が大きく欠けている。研究ができる人はマネジメントもできるだけのポテンシャルがある。ただし、日本では育成システムがないと。企業と大学では経営の考え方が違うので、企業の人が十分なマネジメントをできるはずもなく、アカデミアの中でそういった人材を育てていかないといけないのではないか。
  すぐれたProvostによる大学マネジメントが極めて有効で、企業の経営とは異質な多目的最適化のため、極めて高度な見識と能力を要すること、その導入が大学の将来のためにも、産業界のためにも極めて有益であること、その人材育成とキャリアパス確立が不可欠なことは極めて重要な論点ではないか。
  また、大学教員も、有能なマネジメント人材を活用して運営を改善するということを喫緊の課題と認識すべきではないか。
  あと、真ん中ぐらいのところでしょうか。文科省の責任として、米国の大学におけるProvostに相当するような研究経営マネジメントのプロフェッショナルを育成するシステムが必要ではないか。
  下から3番目のところで、これまで我が国大学では、アドミニストレーションの重要性が過小に評価されてきたと。今後、アドミニストレーションの重要性を高め、そこに力を入れる大学を評価することが必要ではないか。また、アドミニストレーションに関する教員の業績を評価するシステムが必要ではないかというような御意見が出てきたところでございます。
  次のページ、「知的財産や研究インフラ等のマネジメント改革の必要性」というところでございます。例えば、我が国大学の特許料収入は1から2件の特許による収入が大半を占めるのが現状であり、大学の財源を増加させるためには、知財のライセンスよりも、企業との大型共同研究契約を模索する方がより効果的ではないか。ただし、大型共同研究を実施する上では、知財や研究戦略をマネジメントできる体制を産学で構築することが重要ではないか。
  次のポツになりますが、大学が保有する先端設備の共用等を通じてマネジメントしているが、近年の国から大学への予算措置では維持費が措置されていないため、減価償却を含め維持費を大学の持ち出しで維持しているのが現状であると。大学における研究・教育活動の重要性を改めて企業にも理解してもらい、企業との協働やコスト分担を実現していくことが必要ではないか。
  一番下のところのポツで、知財契約に関して、日本の場合、企業やベンチャーにライセンスアウトしても死蔵させてしまうパターンが多いと。米国では、死蔵を防ぐために、使わないなら返すという条項が契約に含まれているのが一般であり、日本でもそのような契約にしていくべきではないかというような御意見を頂いています。
  8ページのところのキ、「間接経費改革の必要性」というところでございます。例えば、大学内部で間接経費がどのように使われているのか不明であると。情報が開示されていないのは問題ではないか。
  三つ目のポツのところで、間接経費は何に使うのか、積み上げが必要ではないか。例えば米国では、NIHは各大学と間接経費の比率について、それぞれ個別に交渉を重ねる。教授が見る契約書には間接経費が何をカバーするのかが全て書いてある。ハーバードでは、直接経費と間接経費は1対1だが、全て何に使うか明らかにされているというようなところの御指摘があったところでございます。
  ク、「地域の大学の改革の方向性」というところで、二つ目のところ、一番重要なのは、大学自身が地域でどのような立ち位置を求められているのかを的確に認識することではないか。多くの大学は地域とのつながりを受験で見るため、地域のエリートとして存在してあげているんだという意識が大きい。社会貢献・産学連携という切り口では、大学が地域のリクエストを聞いて応えるという図式にしなければいけないのではないか。
  一番下のところ、三重大学では、西村先生のプレゼンを受けてですけれども、三重大学では優秀なマネジメントの人材の活躍によってボトムアップ式でも改革が起きていると。この流れを組織の中で拡大していくには何が必要なのか。また、これを特別な事例としてではなく、このような流れを全国に普及させるには何が必要なのかを検討していくべきではないかというような御意見。
  9ページで、そういうものに収まらない、「その他の改革プラン」というところで頂いた意見で、例えば、一番上のところ、学部の枠を取り払うことができれば、日本の大学は変わるのではないか。日本の大学では、工学、理学、薬学、医学等々と分かれているが、化学でいうと各学部で研究されている内容は非常に近く、研究者が見ても学部ごとの違いがよく分からない。米国であれば、Department of Chemistryにもなるが、これほど学部が細分化されていない。それが無駄を生んでいるのではないか。学生にとっても、ある分野を研究したくても、様々な学部にまたがっているため、どこに行ってよいか分からないというところも生まれているのではないかというような御指摘があったところです。
  次に、(3)として、「オープンイノベーションシステムとしての産官学連携の推進」というところで、きょうの議論はこういうところが大きいのかなと思うんですけれども、便宜的にアからウの3項目で整理させていただいています。
  アとして、「大学と産業界双方の意識改革の必要性」というところで、大学は本来、産業連関の一部門に位置付けられるような存在であり、我が国の産業競争力強化のためには、大学自身がどのような貢献を行っていくべきかについて主体的に考えていく必要があるのではないか。
  大学がビジネスエコシステムにどのような影響が与えられるのかを考えていかなければならない。
  下から2番目のところですが、現在のような共同研究の在り方では、大学は企業の下請機関になってしまうのではないのかと危惧すると。大学は長期的視点に立って、何を研究すれば社会貢献となるのか考えるべきではないのか。企業の短期的視点にとらわれ過ぎないことが重要ではないのかというような御指摘も頂いているところです。
  次のページをめくっていただけますでしょうか。このイのところの二つ上のところですね。産業界からは、大学が企業の要求に合わせるべきという意見があるかもしれないが、アカデミアはその分野のフロンティアであり、企業の側がむしろオールドファッションであると言わざるを得ない。その分野の最先端のことを企業の人が分かるわけがない。だからこそ大学が変わっていくべきであり、企業の対等なパートナーに変わっていくべきではないかというような御意見も頂いているところです。
  イとして、「組織対組織による産学連携の深化・進化の必要性」というところで、一番上のところで、大学による次世代型産学協働システム改革は急速に進化しており、産業界と大学の組織経営判断メンバー間での協働についての議論が必須ではないか。
  三つ目のところで、大学側は、企業や競争的資金向けの研究プロジェクトを部局や全学単位で企画し、マネジメントし、責任を持つことを一定割合で実施すべきではないか。また、企業や行政は大学向け研究資金に米国並みの間接経費を手当てすることが、まともな成果を得るために不可欠なことを正しく認識すべきではないか。
  一番下のところで、産業界も単に下請機関として大学を見るのではなく、大学を育成する視点を持つことが必要ではないかというような御意見を頂いているところです。
  ウとして、「大企業と大学発ベンチャーの連携推進の必要性」というところで、大企業と大学発ベンチャーの連携を積極的に進める方策について検討をするべきではないか。
  また、次のところで、ベンチャーの可能性とそれを誘発、発展させる仕組みをどのように考えるべきかというような御意見を頂いているところでございます。
  振り返りということで整理させていただきました。

【橋本主査】    ありがとうございました。
  ちょっと今、私、これ全体を見て、もちろん、最初、幅広めで始めたからあれなんですけども、やっぱり是非、私、主査を仰せつかって、その主査の期待と希望としては、とがったものにしたいんですよね。
  できるだけとがったものにするためには、具体的な提案を入れたいと、入れていただきたいなというふうに思いまして、今の全体、今、振り返ってみると、やはりあちこちで議論されて、過去もされたし、今もされたことが非常に多いですね。だけど、中で、ほかで議論されてなくて、ここでやっぱりしなければいけないなというのも明確に入っていますよね。だから、その辺をしっかりちょっと選び出して、今後やっていく必要があるかなと思って。
  もう一回、事務局の方で用意してくれた4-1を御覧いただけますか。4-1で、今、先ほど私、申し上げたことを、表の方ですけれども、今、15年度と書いてあるところに、来年度から始まる中期計画の運営費交付金の在り方に対する検討会というのが行われています。それと、もう一つは、競争的研究費に関する検討会というのを、これ、両方とも文科省で行われていて、これらを是非連携してやる、やってほしいということで、そういうタスクチームが、副大臣を筆頭としたタスクチームが文科省の中で動いていると。
  この枠の外に、先ほど申し上げましたように、内閣府とか産業競争力会議でもうちょっと全体、産業界も入れた形での全体どうあるべきかという議論をしなければいけないという、そういう提案というか、しているわけですね。そこで、今のこの会議があるわけですけれども。
  それで、裏を御覧いただいて、大学の研究経営力の強化ということで、これ、全体としてある中で、公的資金による支援は、先ほど述べたあの二つですね、二つの方でされているんですね。それで、ここに書いていただいたように、大学自身の知的資産のマネジメントということをここのものとして、ある意味では非常に難しいところなんですけども、ここのミッションなだけに、これはすごく重要で、余り一般論をやってもしようがないと思うんですよね。一般論はもう十分議論されてきていますので、過去。それよりは、こういうふうに明確に整理した中で、では、どうするのかと。自分たちで自分たちの知的資産をどのように有効に使えるのかというときに、一つはここに書いてある、三つあるうちの一つですね。
  自分たちの財源をどのように、この共同研究の中で、今回も出てきていますけれども、間接経費、重要だというのは随分出てきているわけですね。間接経費は、文科省予算については今、文科省が全体、付けるような方向で議論されているし、文科省以外の他省庁に向けてはまだ全然決着がついていないのですが、今度出る成長戦略とか、あるいは、科学技術・イノベーション総合戦略の中に是非ともそれをしっかりと書き込みたいというような議論がされていて、産業界からの共同研究についてもこの間接経費に似たようなものを是非とも入れていただきたいという議論がされているわけですが、その具体的な議論は全くされていません。中身についてはされていません。必要だということだけでは、産業界、うんと言ってくれないので、やっぱりその辺はしっかりと詰めるとしたら、ここの委員会なのかなという気がします。
  それから、知的財産、知的マネジメント、それから、人材、両方とも、海外事業で、このどういうシステムが重要かということで、きょうも議論もありましたね。この研究、知的財産やインフラの資産をどのようにマネジメントしていくのか、そのための人材はどうなのかというようなことを、これをしっかりとその制度論をここは詰めたいと。
  でも、この制度論をやるときには必ず経費があるので、必要なので、その経費の上のところをやはり議論しなければいけないというようなことになっていると思いますので、この裏のここの部分ですね。この三つの部分にかなりフォーカスした形で、しかも、具体的な提案がされるような。あるいは、ここで全部議論できなくても、こういう問題があるので、こういう問題についてもっとしっかり深掘りするべきだとか、そういうことでも当然いいんだと思うんですけれども、そういう形でまとめていくのがいいのかなというふうに今思いながら聞いておりました。
  ちょっとそういうような方向性も含めまして、あと時間、40分ぐらいありますので、このまとめ、どういう方向で今後議論していくのかという話と、今まで出てきたところをもう一回振り返りながら、深めていっていただければと思います。では、上山委員、どうぞ。次、菅委員。

【上山委員】    橋本先生が最初にこの大学の財務の問題が重要だということをおっしゃって、それはそうだと思っておりますけども、特許で収入を得るとか、共同研究というより、むしろ大きなものはやっぱり寄附なんですよね、どう見ても。
  それで、先ほど、菅先生が、日本で寄附をしてもあんまり意味がないということがありましたけど、アメリカの場合ですと、例えば大学発ベンチャーを興すと、その株とか、株、建物、土地ですよね。つまり、評価性資産に関する寄附という税制の控除が非常に手厚いと。株もそうですし、そういうものがキャピタルゲインそのものが課税の対象にならないだけじゃなくて、その株や建物なんかの市場価格の全体が所得から控除されると、二重で控除されるんですね。
  それは、つまり、特に大学とか、それから、美術館のような非常に公的な需要の高い、しかも、また、公的資金だけではなかなか賄うことができないようなものに関して、サポート、税的にサポートしていると。株で、自分のやったその株式をそのまま東京大学に寄附すると、大阪大学に寄附してもいいんですけれども、すると、東北大学に入れてもらうと、いいんですけども、入れると。そうすると、その中のキャピタルゲインも全部なくなり、かつ、それが様々な所得から全部控除されると。
  これは非常に大きなメリットで、アメリカの中でも実はこれは非常に厳しい批判があります。つまり、お金持ちの優遇じゃないかと。ただ、63年か70年ぐらいに一旦それは消されますけども、もう一度、クリントン政権下で戻ってくるんですね。それは社会の中で、大学のような公的な組織とか、特に美術館からも非常に大きなプレッシャーがかかるんですね。これを入れてほしいと。この寄附額がかなり大きいんですよ。だから、よくあるように、スタンフォードなんかでも200億円ぐらいのお金の株式をぼーんとその大学に寄附してしまうと。それで一つのセンターができる。
  これが日本の風土に合わないのかどうかというのは僕はちょっと疑問で、それはシステムとしてできてないからで、もし本当にあのような優遇税制が出れば、日本のお金持ちは相当寄附すると思いますよ。同じ人間ですから、アメリカ人も日本人も関係なくて、それはシステムの問題なんだと思います。
  逆に言うと、この大学発ベンチャーのような非常に成長性が高く、資産価値が大きくなるものに関して言えば、そこから出てきたものの税額控除に関しては相当優遇して、大学なんかに優遇するというような考え方もあってもいいと。そういうことを財務当局なんかにお願いするということが一つだろうと思うんですね。
  実際、これ、10年間ぐらいで、スタンフォードの年間の予算は倍ぐらい伸びているわけですから。それを見ると、この予算の成長率を考えると、日本の大学なんか考えられないような伸び。それはやっぱりこういうような公的資金以外の資金改革というのが大きく作用していると。それはどこかで入れられないのかなと。とがったものにするなら、それを入れろというようなことを入れてもらってもいいのかもしれないですね。

【橋本主査】    ありがとうございます。税金の話はもうおっしゃるとおりで、これはそんな簡単ではなくて、財務当局とのあれとして極めて大変なんですが、しかし、だからこそ、具体的に今のようなことをしっかりと書いて、あちこちからこのことを出す必要があると思うんですね。
  ですので、是非ここのペーパーもそこは、ただ寄附税制の優遇が重要だ、じゃなくて、ここで出すのは、今、上山先生が言われたように、非常に具体的なことを付けて出すと。それで、それで簡単に変わる、すぐ財務当局、うんとは言わないでしょうけども、しかし、いろんなところからそういうふうに出していくことが重要だと思いますので、そこは強い一つにして、できるといいなというふうに私も思います。
  菅委員、どうぞ。

【菅委員】    さっき、株を差し上げるというのがありましたけど、実は僕、バッファローでそれをやりました。何か大学を出ていくと、Provostにほとんど全部取られちゃうんですね。それで、Department of Chemistryにどれだけ行くのかって聞いたら、もうほんのちょっとした行かないので、じゃあ、僕のやつを半分上げますといって半分上げたんですね。だから、そういうことはできて、それは税金にかからないので、もうそのまま差し上げたという感じなんですけれども。
  それをするにしても、何かそういうイノベーションが起きないとなかなかできないので、このシステムを作らないといけないと思うんですね。
  私、すごく重要だと思っているのは、ここで最初に、どうしても各論になってしまうと薄まってしまう。だから、絶対的にこの大前提は崩さないというのを、橋本先生と事務局と上山先生ぐらいとかでも結構なんですけれども、もうほんと、かっちりしたものを作っていただきたい。
  例えば、大前提にするんだったら、特定研究大学とかそういう研究大学と地方大とは必ずしも同じじゃないので、そのスタンスはそれぞれ適したものを選ぶべきであるという最初からスタンスを置いておかないと、地方大が見て、これ、全部やるのかと言われたら、ノーと言うと思うので、そこをはっきりさせるとか、あとは、アカデミアでは、先ほど上山先生もおっしゃってましたけれども、要はイノベーション、イノベーションと言われると本来の本質を失ってしまうので、アカデミアでやるのは本当の意味でやらなくちゃいけないのはブレークスルーの技術なり革新的なアカデミックとしての価値のあるものをしっかりと。そうしないと、実際にそれ、知財につながっていかないですね。だから、その知財につながっていくときのマネジメントをしっかりするということですね。
  それから、あともう一つ、僕がぱぱっと考えた中では、例えばもうイノベーションというのは僕は必ず外で、大学外ですべきだと思っています。ペプチドリームでやったように、外に出てやる方がはるかに効率が良くて、それから、メリットも大きいし、最終的なアウトカムもはるかに大きいと。それが結果的に大学に戻ってくるという考え方にすると。
  先ほど、西村先生がおっしゃっていたように、地方大ではそんなことはベンチャーでできないといっても、先ほどおっしゃっていたことは違う形のベンチャーなんですね。要は大学の外でやると、その大学の外の中小企業の人たちと組んでやるんですけども、実際にやるべきなのは大学の外でやる方が私は効率がいいと思うんです。大学の先生が関与しながら、技術をトランスファーしてやるという形で。要は、そのやり方は違うけれども、基本的なスタンスとして大学の外でやると。そのために、どういうシステム、ファシリテートするシステムをどうするかというのが重要であるとか。
  そういうちょっと大前提で、細かいことが出てきたときに、この前提に合わないよねというのが排除できるように、ちょっと大前提をきっちり決めておいていただいた方が、多分意見、出しやすいですね。何か意見出したときに、全然違うところからぽんと来られると、何を話しているのか、よく訳が分からなくなるので、その大前提に照らし合わせて、我々の議論というのは常に大前提を基に議論するというようなことにしていただく方が、きっと最後、出てきたときに具体的になるんじゃないかと思います。

【橋本主査】    ありがとうございます。
  ほかにいかがでしょうか。魚崎先生。

【魚崎委員】    ちょっとまず一つ質問なんですけど、いいですか、簡単に。この本検討会の議論の対象の絵で、公的資金による支援がこの点々の外に出ているんですけども、公的資金による支援によって出てるこの知的財産とか運用とか、この辺はどういうことになるんでしょうかね。
  私、さっきのことと関係あって、これは今ずっと頭を痛めているところなんですけども、その大きなナショナルプロジェクトをやって、それが各大学に入って、それが大学の知的財産のマネジメント、ある面では利益相反的なところも出てくる可能性もあるんですけども、大学の運営方針とナショナルプロジェクトの運営方針のずれとかですね。
  その辺もあるので、これが完全に外に出ているというのがどうなのかなというのがちょっと質問というかコメント。

【山下室長】    ちょっとすみません、単純に書き過ぎているのかもしれません。一番初めの本委員会の検討委員会のところにおける検討事項というところで、例えば国の委託研究開発の知財マネジメントに対するファンディングエージェンシーとの積極的関与とか知財戦略みたいなものというのは議論の対象になっておりますので、それは今後、多分議論すべき対象かなと。今回その報告の中にそこは多分難しいかなと思いますけれども、夏以降の課題かなと思っております。

【橋本主査】    うっかりしていて、非常に詳しい進藤委員が、進藤委員、経産省で大学連携政策をやっていた方で、今、大学にいらっしゃいます。是非ちょっとコメントを。

【進藤委員】    すみません、前半の議論も本当はコメントしなきゃなと思っていたんですけど、飛ばしちゃって。

【橋本主査】    すみません、併せてやってください。10分、15分ぐらいかけていいです。

【進藤委員】    前段について少しだけ申し上げると、東北大学には、東北テクノアーチというTLOがあって、それなりにうまくやれているかなというふうに思っています。やっぱり別会社であることによって、人事のフレキシビリティと「頑張るぞ」という士気があるということが大きいかなと。
  ただ、東大さんとの違いでは、エッジキャピタルさんのようなベンチャー側を支援する部分を担う組織がなかったので、そこがやっぱり東北大全体として弱体だったなというふうに思っております。きょう、前半に、いろいろ議論が出ていた大型のプラットフォーム型の研究について、大学として提示して、それをサポートするような仕組みを構築しようということを考えたときに、TLOとベンチャー支援の両方を備えることが非常に大事な仕組みだと思っているので、これは全ての大学じゃなくて、さっきの特定研究大学限定かもしれませんけれども、そういう部分には関係あるコメントかなというふうに思っています。
  それから、後段の議論にもちょっと絡んでくる話だと思うのですけれども、さっきの上山先生の御指摘にありましたように「規模的に有効な対策はやっぱり寄附金だよな」って、私もほんとにそう思うのです。マクロバランスで考えたときに、共同研究を幾ら増やしても、ほんとの大学の財源にどこまでつながるのかなという部分は無視できないと思うのです。
  もう一つ気をつけなきゃいけない論点は、アカデミアとして例えば研究をしっかりやっていくということが大事だとか、あるいは、TLOはコストセンターでもいいのだと、つまり当面の収益よりも実際に長期にどう事業化させていくのかが大事だという議論がありますが、ほんとに私もそう思っているのですけど、過去の反省から。
  ところが今まで、この産学連携の議論をするときって、大学に産学連携関連の組織を外付けすると、そこがプロフィットセンターになってもうかるからいいじゃないかとかいって立ち上げて、しかし実際には全然そこに対する必要な資源が付いてなくて、うまくもいかなくて、どんどん撤退して、みたいな事例がやっぱりあるんですよ。
  今回のものも……。

【橋本主査】    かつて責任者だった。

【進藤委員】    ええ。私はどちらかというと後で始末に回る側だったのですけれども。
  そうやって考えると、今回の議論でも微妙に、「マクロバランス的に大学に入る公的資金が減るので、大学自身の知的資産のマネジメントで結構カバーしてもらおうか」みたいな、いわゆる「ここで結構金を稼ごうぜ」的な要素はあるんです。これ自体は、否定はしません。否定はしませんが、短絡的に「だからもうかる」という議論じゃない要素が、きょう、もういっぱい議論に出ているわけですよね。実際に「コストセンターでもいいんだ」、「事業化をしっかり進める体制を作ることが大事なのだ」というような論点はしっかり初めのところに書いてもらわないと、すぐまたみんな変な期待をして短期的な結果を求めることになってしまうのではないかというふうにすごく思いますので、是非お願いしたいと思います。
  あと、2点、私が申し上げたいのは、こういうふうにいろんな提言、項目を書き分けてほしいなと思うんですけれども、前、三木先生もおっしゃっていて、私も同感なのですけど、いろんなうまくいく仕組みは必ずしも残らない。「どうやったら持続できるのか」という観点のことをどこかに、多分マネジメントという部分に書くべき話だと思うんですけども、是非書いてほしいと思いますし、そのためには、教員の話と専門職の話は原案に記述があるけど、普通の職員も含めてどうだというような提言もやっぱり持続性という観点からは大事かなというふうに思っているというのが1点です。
  それから、2点目は、永野委員の御指摘についてで、米国ではむしろ研究者がいろいろ事業化を頑張るぞという意識を持っていて、それを学内みんなでサポートするというやり方がうまくいっているということなんですけれども、日本の場合はまだ研究者にそういうモラルが明確になっていないので、むしろ研究者が好きにやると、「自分の研究をしたいがためにちょっと小遣いを頂戴よ」型の行動になりがちだし、そして、企業側も、お付き合いのお金を与えながら、「チープレーバーでちょっと大学の知的成果をかすめられればいい」みたいな対応になって、ちょっと米国とは変わった形になってしまう傾向があるわけです。それは正直、日本の現状として無視できない部分があるので、そういう意味で、日本としてそこをどういうふうに直していくのかについての提言も必要だと私は思っているのです。
  また、さっき、いろいろ、じゃあ、大きなプラットフォームを誰が提言、提案役を担うのかといったときに、米国では研究所長が担うという話がありました。例えばうちの大学でいえば、それに対応するのは、大学院の研究科長とか、幾つかある附置研究所の所長ということになるのでしょうが、実際のところ学内にはそれ以外にもいっぱい研究者がいるわけですよね。どういうふうに皆の優れたアイデアをつむぎ上げていくのかという部分は大学にとって実は結構課題でもありますし、そこがマネジメントとかガバナンスの部分に一つ関係してくる提言になると思います。
  もう一つは、やっぱり、例えば学外活動も含める形でいろいろ産学連携を進めたり、あるいは、研究者を中心に産学連携を進めるという話については、最後、この話は大学経営を潤すというところに戻ってこなきゃいけないと思うので、個別の局面でうまくいく活動の収入が、どういうふうに大学経営にうまく返ってくる仕組みになってくるのかというようなことはちょっと私自身よく、伺っていて分からない部分もあったので、そこははっきり整理したらいいかなというふうに思っています。
  この点ぐらいですかね。以上でございます。

【橋本主査】    どうもありがとうございます。
  ほかに。是非、坂本課長とか川上局長とか、どうぞ、一緒に入って議論すればいいと思うので、どうぞ。坂本さん。

【坂本課長】    ありがとうございます。一言だけ。非常に重要な議論をしていただいて、橋本主査の方から、とんがったというか、具体論に踏み込んだ、まさに我々はそれを先生方の御指導を得ながらやっていきたいというふうに思っております。山下室長も同じ気持ちだと思います。
  まず、我々は何を目指しているかというと、今後の大学の成長、あるいは、生き残りのための経営モデルはどうなのかというのを、こうあるべきだじゃなくて、こういうシステムを、それは経営の組織かもしれない、組織である、あるいは、手法であるとか、あるいは、制度であるとか、そういったものをやっぱりもう明らかにしていく。
  先にあるのは、先ほど進藤理事からお話がありましたけれども、大学が成長、あるいは、生き残りのために、生き残るために必要であるというふうなことが分かる、具体的に言うと、これは橋本主査からお話がありましたけれども、財源の多様化がないと、もう大学は成長できないということですね。
  それと、もう一つは、やっぱりサイエンスの発展にとっても、この産業界との連携は極めて重要である。これは御存じかと思いますが、多様性、これは国際的なもの、ジェンダーもいろいろありますけれども、やっぱり産業界との連携というのは大学のサイエンスのパフォーマンスを上げるというのはこれ、統計でも出てきているわけです、はっきり言うと。よく言われるパスツールの象限ですけれども。
  そういったもので、大学の経営を変えていくということが大学の成長、生き残りにつながるということは、執行部の方と、それから、我々、私も、はっきり言うと、うちの課でも今、全国の各大学の執行部の方とずっと今議論をやっていますけど、そういったことの意識を共有する。具体的に目指す姿を、あるべきという考え方じゃなくて、具体的にある目指す姿というものを共有するというのを是非やらせていただきたいなと。その中身を作っていただくのはこの場だろうなと。
  ただ、各論に行くと非常にいろいろ出てくるわけですね。先ほど永野委員からお話があったオープンプラットフォームとか、スポンサードリサーチであるとか、これは学内でどうバランスをとるのかというのは、上山先生がおっしゃったイノベーションのマインド設定が強過ぎると、研究をゆがめる可能性があると。これもはっきり言うと大学にとって非常に重要な経営課題だと思います。
  我々は決して工学部は全部イノベーションでやってくださいと言うつもりはないです。工学部の中だって、現象解明、知識の体系化、それから、それの応用可能性を追求することは当然あるべきなんです。
  でも、それにプラス、やっぱりその成長する部分、民間さんからの資金、人材の導入によって成長するようなところは必要であると。これもアカデミアの中で相当認識が進んできている。東京大学さんはそのトップの例ですけれども、最近、大阪大学さんは、インダストリー・オン・キャンパスという概念で共同研究講座をもう50近くまで今設置されている。名古屋大学さんも今頑張っている。名古屋大学さんは、オープンプラットフォームのシステム作りも松尾総長が今進められているという話がありました。どんどん、どんどん、今、やっぱり各大学でモデルは作られてきているわけですね。東北大学さんもそういうモデルをお持ちです、両方とも。
  そういったモデルをもっと高度化する、高い次元に持っていくというためにどうすればいいのかということ、また、その中で人材を育てる、イノベーターをどうするか。これはベンチャー企業を育てるのもそうですし、あるいは、企業の、大企業の中に入ったとしても、常に新しい感覚で、新しい事業なりビジネスを生み出すというふうなこと、これもうちの課で事業をやっていますけれども、そういったものとその産学連携をどう結び付けるかということを、それはシステムとして存在しないと、なかなか広がっていきませんので、人材の数は増えませんので、是非そういったところを具体論に踏み込ませていただきたいというふうに思っています。
  よろしくお願いします。

【橋本主査】    どうぞ、國井委員。

【國井委員】    インダストリー4.0の話もちょっと出ましたけれど、私は今の大学と産業界、あるいは、公的研究機関のこの間の関係について、非常に危機感を持っています。今日いろいろなことが非常にグローバル化していて、大規模化しています。
  こういう中、プラットフォームの研究が重要ですが、実際この分野をやっていらっしゃる方にめったに会うことがありません。分野によってもこれはちょっと違うかと思いますが、創薬関係の分野と、IoT、インダストリー4.0が関わっている製造業、ICTと融合してサイバー・フィジカル・システムを作ろうという分野では大分違うかと思いますが、大学だけでできるような次元ではなくなっている研究というのはいっぱいあるわけです。
  要素技術に落とせれば、そこは大学でできるかと思いますが、インダストリー4.0のように、中小企業も巻き込んでグローバル化していくためには、国際的な標準化までにらんで仕組みを作っていかないといけない。結局個別、個別の課題に落とすところが非常に難しい。システムをやるとか、アーキテクチャーをやるとかという人材は日本の場合は極めて少ないわけです。そういう場がまたないわけです。実践をやらないと、そういう力は付かないのです。
  アメリカの場合は、大学の先生が夏の3か月はほかの所に行って、いろいろニーズを把握するような環境もありますが、日本の場合はよりドイツに近い環境だと思います。それでも、米国も、パルミサーノ・レポートで、いかにうまくイノベーションのエコシステムを作るかということを強調されたわけですけれど、それが今の日本で全然できていない。一部やりやすい分野が成功していらっしゃる事例はありますけれど、仕掛けとしてトータルには回っていないと思うので、ここのところがやっぱり今回どうしてもやっていかなければいけないところかと考えます。
  産総研さんがインダストリー4.0を見て、AIの研究所を作るとかという御提案があります。それはそれで結構ですけど、もっと欲しいのはプラットフォームや統合システムの研究なわけです。優先順位はそっちの方が私は高いのではないかと申し上げています。個別の技術ももちろん、研究者がいらっしゃれば、どんどん深めていただくというのはいいと思いますけれど、システムと仕掛けが重要で、グローバルなニーズをにらんで、エコシステムまでやっていかないと社会的価値を生むというところまでは行かない。
  もちろん特定のイノベーションをやろうというのでなくて、研究者が自立的に先を見通して、進める研究も必要です。運営費交付金や科研費というところでカバーする研究と、イノベーションを起こすための研究と、その比率をどうするかというのは極めて重要なことだと思いますが、今一番欠けているところが大掛かりな仕掛けが回っていないというところかと思います。
  以上です。

【橋本主査】    ありがとうございます。ほかに、國吉委員。

【國吉委員】    ちょっと関連することで、今、國井委員の御意見、かなり賛同するところなんですが、先ほどの菅先生の方で、イノベーションは大学から分離してやると、そこのマインドは非常によく理解できて、正しい御意見だと思うんですが、1点だけちょっと、実は情報分野ではそう言い切れないところが出てきているというところだと思うんですね。
  それは、つまり、例えばAIもビッグデータもそうですけれども、今やデータの規模が研究所でハンドリングできるようなレベルじゃないですね。全世界のデータセンターを集めて、そこでのデータ量はもうヘクサバイトのレベルで、そして、コンピューティングバワーもそういう1個のデータセンターじゃ足りないような、全世界のコンピュータを回すような、そういうレベルの勝負になってきていて、それだと大学において単独で回せる研究にはもう非常に限度があって、ここから先は、恐らく産業界も一緒になってやるといいますか、そのパワーも生かさないとできないというような、そういう類いの分野もあるということで、それは今、イノベーションを考えるときに非常にキーになっている分野であるというところもちょっと念頭には置いておく必要があるかなと思います。もう一つ、ちょっとそのことだけコメントしたかったのが一つです。
  もう一つだけちょっと意見、ちょっと違うんですけども、書き込む際に是非お願いしたいのは、大学の教員一人一人がやっぱり変わろうと思えるような、そういう提言になることも必要かなと思いまして、実際、現場が変わらないとやっぱり変わっていかないので、だとすると、やはり大学の現場がこんなふうに変わるんだということをある程度データで示せるというか、具体的にこれを、こういう方策をやっていくことによって、こういうふうに変えていけるんだぞと、それは現場のほんとにいい研究ができるように、更にこういうふうに変わるよということでもいいし、あるいは、学生たちのキャリアパスというのがこういうふうに変わるよということでもいいと思うんですが、是非そこもちょっと織り込みたいなというふうに思います。

【橋本主査】    國吉先生はほんとに今出てきている最先端のことを言っているので、その辺のモデル、今言われたような例えば学生の話とか、学生のキャリアパスの話とか、そういうようなものというのは、やっぱり國吉先生とかが考えてくれないと分からないですよ。新しい、もう余りにもやっぱり飛び過ぎちゃっていてね。分かんないところをやるわけだから。なので、是非ちょっと直接絡んでいただきたいなと思うんですけども。
  その辺に対するあるイメージというのはありますか。それで、それを施策に落とし込まないといけないんですよ、ここの話は。だから、そういうのに施策につながるような意味でのそういうあれというのは何か、もし今あれば、是非聞かせていただきたいなと思うんですけど。なければ、次回まで宿題にしますけど。

【國吉委員】    実は、國井委員がおっしゃったことに結構イメージが近くて、さっき申し上げたように、もう一部の最先端の研究については必ずしももう一研究所のスケールじゃないというのは確かで、もしかしたら、大学のセンターとかいうレベルでも厳しいかもしれないと。そういう、何が欲しいかといったら、膨大なデータと膨大なコンピューティングパワーが欲しい。そういうものを産業界も恐らく必要としているんじゃないだろうか。
  だから、もうそういう、例えばオールジャパンスケールで何かそういうものを、そういう場ができるのであれば、ほかでできない研究ができるわけだから、学生も多分そこで喜んでやってくるようになるというようなシナリオは一つは必要かもしれないと思います。
  ちょっと今、すぐ思い付いたのは。

【橋本主査】    そうですね。それは、だから、例えば私なんかが絡んでいると、内閣府でやっているSIPなんかは例えばそういうのなんだけど、でも、SIPは少し短期的なので、もっと長期的な意味ではそういうのが必要だと言っておられるわけですね。

【國吉委員】    本当の先端基礎研究の場として、それが。同時にイノベーションにも実はつながっていると。

【橋本主査】    それ、大変重要なんですけど、それ、どうやって選んでどうするのかという話は、また各論になると現実的には難しいんですけど、おっしゃる意味はよく分かります。
  菅委員、どうぞ。

【菅委員】    多分、イノベーションを外でするというのはエクセプションはあると思うんですね。だから、そういうのはエクセプションであるというのはちゃんと書いておいた方がいいとは思うんですけれども、僕はVCのITをやっている人たちと話したことがあるんですけど、ITの産業ってばーっと大容量になって、その後、技術が革新されてぴゅっと小さくなってと、それを繰り返すんだと。今、ピーク的には大容量にみんな向かっているけど、いずれこれはエコを考えると下がっていくに違いないと、今までの経験からいうとというふうにおっしゃっていましたけど、それが正しいかどうかは知りません。
  ただ、そういうところの技術革新が起きて、また下がっていくといったりするのがアカデミックで多分重要なコントリビューションがあるんだろうというふうに私は理解しています。その人もそういうようなことをおっしゃっていたので。
  だから、基本的にはイノベーションを大学の中でやろうとすると、とってもひずみがいろんなところで生まれるのは、もう今まで何度も見てきていると思うので、それを前提にされると、もう絶対にうまくいかないと思いますね。だから、そこはきっちり外すということを前提にして、エクセプションはあるという方が分かりやすいんじゃないかなと思います。

【橋本主査】    渡部委員。

【渡部委員】    多少ついでなんですが、IoTみたいな話というのは確かに今、産業界の方は、あれだけみんなつながっちゃうと、個々の企業戦略の中で収まらないので、ほぼ政策になってしまうと。政策を国がやると、やっぱり国も縦割りなので、それはむしろ大学と産業界で作れないかみたいな話はありますね。
  だから、それは海外では、例えば3Dプリンターの政策で日本の経産省がものづくりのところがやると、やっぱりものづくり支援の政策になっちゃうんですけど、ランカスター大学って、大分ちょっと前に3Dプリンターの政策提言というのをやった方がずっと包括的なんですよね。そういうのは実は大学の役割としては結構重要で、そういうところに産学連携の一つの機能を付与していくことが重要な分野はあると思いますというのが一つと。
  あと、もう一つ、これ、ちょっと元の話に戻って、知的資産の活用という概念で言ったときに、活用する観点は何かと。これは過去から産学連携政策というのは何か企業と大学が連携するのを促進するって1対1のところに施策が打たれていたんですけど、きょうの話も全体的に総合してそうなんですけど、國井委員が言われているエコシステムという言葉を少しきちっと使って、そこの整理をしていった方がいいんじゃないかと。
  エコシステムって実は三つ意味があって、生物学のエコシステムというのと、それから、あと、ビジネスエコシステムとイノベーションエコシステムと実は意味が当然違うわけですけど、今、多分話をしないといけないのはイノベーションエコシステムの話と。これはまさしく今の政策、政府、行政も含めて、イノベーションを起こすシステムをどのように作っていくかという中に、大学の持っている知的資産の活用を促進することをどういう施策で行うかという、そういう整理だと思うんですね。
  そのときに、やってはいけないこととやっていいことがあって、部分最適は絶対やっちゃいけないという。これは今まで、特に共同研究や何かもそうなんですけど、もともと寄附金がサイドレターの寄附金だったから、共同研究に対価関係に変えてきたんだけど、結局それが今、大学の財政をむしろ苦しめているような状態になっているんですね。
  全体として、例えばさっき寄附の話が出てくるのは、これは実はもともとの寄附金と意味が違うんですよ。全体のエコシステムの循環を良くするためのツールというか、道具なんですよね。そういうもので十分機能していないところは機能させるようにすると。それから、つながりが弱いところ、きょうの話の中では大企業とベンチャーの関係は弱いです、明らかに弱いですね。それは促進してもいいというように、全体のエコシステム、イノベーションエコシステムの中で、道具と、それから、関係性の強化というところで整理をするといいではないかというふうに思います。
  以上です。

【橋本主査】    松本委員、どうぞ。

【松本委員】    産学連携という意味で、なかなか、なぜこれ、なぜうまく大きなつながりができないかというと、やっぱり見えない、分からないというのが非常に多かったんですね。今、大手、日本の企業はオープンイノベーションの空前のブームで、オープンイノベーションの組織、専門組織を作るところがもう急激に急増しております。つまり、いわば各大手企業側のエージェント機能的な役割がどんどん増えてきているというのが一つと。
  それと、何も大学に対して、基礎のところだけ少し少額で委託したいと思っているわけではなくて、これから新しい事業を生み出すためには、ほんとにいい研究シーズがあれば、それこそ大きな額についても委託しようという動きが相当起こっているので、今度は大学側がどうすべきかというところなんですけれども。
  大学も危機意識があれば、恐らく産業界から大きな資金を獲得するという動きが当然起こってくるはずなんですね。我々は非常に分かりにくいのは、東京大学さんとか、そういった大きなところというのはそれなりのシステムで成功されているんですけれども、日本全体で見ると、いろんな大学がほんとに見えないんですね。どこにどんな研究シーズがあって、何が活用できるかというのはほんとに見えない。実はオープンイノベーションの専門組織ができている大手企業30社ぐらいが集まって、推進者交流会議というのをやっているんですけど、やっぱり産学連携をやりたいんだけれども、つながらない、見えない、どうすれば分かるのか、こういう声が非常に大きいんですね。
  私は、地域で何かまとまる。例えば、去年、私、産から学へのプレゼンテーション、過去に何回か呼ばれて行ったのですが、なかなかつながらないんですよ。ところが、昨年度、岡山大学さんが中国エリア全体の研究機関、大学も含めて、全部まとめ上げたんですね。全部のそういう、各研究機関のエージェント役を集めていただいて、大阪ガスグループの求めている研究シーズ、ニーズを紹介させていただいて、かなりつながっていっているということがあるので。
  地域でまとまってそこに、単にそういう仕組みでまとめるとかイベントでまとめるんではなくて、何かまとまったエージェント機能みたいなものを、これは株式会社なのか、どういうものなのか分からないんですけれども、地域ごとにまとまるとまとまりやすいですし、企業からすると非常に分かりやすいし、そこの地域にどんな研究シーズがあるのかというのが非常にうまくつながるケースがあるので。
  地域別に、それは大学だけじゃなくて、高専であったりとか、あるいは、公設試(公設試験研究機関)であったりとか、公的研究機関のサイトであったりとか、そういったものが、それぞれの地域によって強みが違うと思うんですね。例えば九州ですと半導体かもしれないし、水素、OLEかもしれないし、神戸ですと医療かもしれないし。
  だから、その強みをまとめ上げるみたいな機能で、単にプロジェクトではなくて、企業とつなぐエージェント機能みたいな、エージェント機関ですか。そういうものを創れば、非常に民間企業からすると極めて効率的に研究シーズを獲得できるといいますか、活用できる。多分、外でやるような仕組みもそこでできればいいなという気はしますけども。
  すみません、以上です。

【橋本主査】    ありがとうございます。小川委員、どうぞ。

【小川委員】    二つございまして、私、きょうここに参加させていただきまして、永野委員の御発表、あるいは、報告、非常にショックでございまして、そうなったというのを知らなかったもんですから。山下さんのあの御報告にも、それをそれなりにちりばめて書いてあると思うんですけれども、もう少しとんがった形で、橋本先生がとんがったと言いましたので、とんがった形でその方向性を出していいなと。これはこれで、みんな同じ意見だと思うんですが。
  これから申し上げるのは、ひょっとして、この委員会のテーマかどうか分からないもんですから、終わり際に駆け込みをするんですが、実は、橋本先生がさっきおっしゃったSIPとかImPACTですね。橋本先生のトリガーもあって、あの人たちと交流が少しずつ増えているんですけれども、最後に、あの中で技術を生み出すためのメカニズムをいろいろやっているわけですね。
  ただ、その技術、生まれた技術が社会貢献というんですか、もっと端的に言えば、企業付加価値とか企業収益とか、あるいは、雇用とか経済成長にどういうメカニズムでつながるか、皆さん、やって、共有しているんですかと、ほとんどない。これは私は非常にびっくりいたしましてね。
  確かに学問が、青木先生は随分御研究なさっているようですけれども、学問的にも今までの80年代、90年代の学問はほとんど機能しなくなっている。それは國井委員が先ほどおっしゃったように、完全に変わってきているんですよね、この20年ぐらいでやり方が。メカニズムが極めて変わってきている。
  したがって、やっぱり我々は技術がどのようなメカニズムで、付加価値、あるいは、社会的な貢献、あるいは、何ていうんですか、インパクトのある社会的な付加価値につながるかということをちゃんとやるようなチームを誰かやらないといけない。専門家を全部集めましてね。
  例えば、第1期科学技術基本政策から15年間ぐらい、日本は多分、国の国税として60兆円使ったと思うんですね。どこに使ったかはちょっと分かりませんが、国の税金、じゃない、民間企業の投資を含めますと、全部で200兆円使いました。これはよく知られていることですね。
  しかしながら、その同じ時期に、日本とアメリカ、ヨーロッパ、あるいは、アジアの……、この今言ったお金の85%はインダストリーなんですね、広い意味でのね。巨額の金を使ったわけですけれども、日本の企業が世界グローバル市場でインダストリーが生み出した付加価値、これは20年前に約18%ありました、世界で。今は11%以下です。アメリカは24が20に減っただけ。ヨーロッパは34が27、8まで減ったのかな。しかしながら、ドイツとかポーランドというのはものすごく増えているんですね。減ったところは金融経済が盛んな国が、あそこ、減っているんですけども。
  いずれにしろ、要するに、今まで我々が知っているように、お金をいっぱい使っていい技術を開発すれば、それが社会的貢献するんだというメカニズムは、間違いなく、この20年間、変わってきていると。それを皆さん、共有しなきゃいけないんだと思うんですね。
  菅委員のお話になったのは、ちょっと余り触れていないようですけど、あの分野というのは実は知的財産が守りやすいんですね。あるいは、守るような仕組みを菅委員はちゃんとやったということですね。守らなければ、幾ら生み出しても、やっぱり企業は誰も見向きもしない。見向きもしなければ、お金は還流してこない。
  したがって、例えばその逆の話として、エレクトロニクス産業、あるいは、今、國吉委員がおっしゃったエコシステム型になったものですね。これはまともにいい研究をしたって、そのまんまでは絶対にお金につながらない、あるいは、社会貢献につながらない。つまり、産業構造とか、それによって、このつながり方が全く違うんだということを、やっぱりこのImPACTやSIPか、あるいは、きょうの検討会のメンバーが理解した上で議論しないと、具体的な提案ができないんではないかと。
  以上でございます。

【橋本主査】    ありがとうございます。青木委員、お願いします。

【青木委員】    小川先生と比べると、非常に細かいことになるんですけど、一つは、松本先生のおっしゃった地域の技術をまとめてアピールするというのを、是非海外のベンチャー企業、ベンチャーの投資家にもアピールするようにしたらいいのではないかと思います。
  それから、学外から資金を持ってくる場合、やはり大学のガバナンスとしてもちゃんとした責任ある機関であるということを示すためにも、やはり法務部をもっと日本の国立大学も整備するべきだと思います。
  最後にもう一つ、スポンサードリサーチに是非、博士課程の学生の奨学金というのも含めていただく必要もあると思います。
  以上です。

【橋本主査】    ありがとうございます。
  ちょうど時間になりましたので、それで、大変良い議論ができているので、優秀な事務局、江間さんがいるので、しっかりとまとめてくれるんじゃないかなと思うんですが、是非、今後、やはりここしばらく政府の方に関わっていると、やっぱりお金のことが気になりましてね。何をやるにしてもお金が必要だけど、でも、お金は湧いてこないんですよね。だから、そのためには、やはり自分たちでこの知的資産を使ってやはり大学にお金が戻ってくるようなシステムが絶対必要で、もちろん寄附は是非、これ、大きな一つの柱ですけれども。
  もう一つはやはり、今の小川委員のお話もありましたけど、やっぱり日本の研究開発投資の80%は産業界が出していて、その産業界は80%使っているわけですから、その使っているのを、下請で大学が請けるのは決して良くないわけで、その長期的な政策の部分はだんだん企業ができなくなっている、それを大学が請けるというのが学問の発展と併せてやれる、そういうメカニズムがあるはずなので、その辺を、そういう中で、間接経費の話、これも是非もう一回、産業界の方と話していると、必要なものは出すのは当然なんだよというふうに言われているけど、現状はそんなに出てないんですよね。なぜなのかということも含めて、しっかりとそこは詰めていきたいなと思うので。
  ちょうどここの会の次長が産業界から来ておられて、その辺、大変詳しいというか、問題意識を持っておられると思うので、是非、次回、次長に産業界から見てどういうような大学がどういうふうになれば、大学とか国研の中では産業界は当然のごとく喜んでお金を出し、かつ、それが大学が下請にならずに、上山委員、強調されていますように、やっぱりサイエンスのフロンティアをやって初めて出てくるわけだから、サイエンスのフロンティアを引っ張るような形でのそういう連携ができるだろうかというようなことを、是非、次長にお願いしたいなと思いますので、よろしくお願いしてください。
  と同時に、是非、ここから先、産業界の上野山委員とか松本委員とか、いらっしゃいますので、あと、岡島委員もいらっしゃるので、そういう方から、そういう視点からいろいろと御意見を頂けると有り難いなというふうに思います。
  ちょうど時間ですので、最後に、川上局長、是非。

【川上局長】    意見を申し上げるわけではないんですが、かつてからアメリカモデルというのをずっと日本は取り上げて政策の議論をしてきて、最近はドイツがいいんだということになって、インダストリー4.0だとか、フラウンホーファーだとかいうような議論がさんざんされています。
  両方の国ともそれぞれの国の基盤の上にあって成功しているモデルであって、日本の状況というのは社会のシステムというのはアメリカとも違うし、ドイツとも違うわけですから、もうほんとに今回は、きょうの議論はアメリカを下敷きにしての議論が多いわけですけれども、日本の実情に合ったとがった政策、日本の実情をほんとに変えることのできる御提案を頂きたいなというふうに思います。
  それを日本モデルとして昇華した議論を引き続きお願いをしたいというふうに思いますので、よろしくお願いします。

【橋本主査】    はい。是非、川上局長も次回以降も、御意見を、どんどん意見を、そういう方向に、これからどんどん方向性を動かしながら議論を進めていきますので、今の局長のお話、大変重要ですので、次回もお願いしたいと思います。
  では、これで事務局の方にお渡ししますが。

【西島室長補佐】    今後の予定でございますが、資料6に第4回の日程を記載しておりますけれども、6月26日金曜日、13時半から16時半ということになっております。
  また、追加意見等ございましたら、またこの会議の場でなくとも、事務局までメールで御連絡いただければと思います。
  以上でございます。

【橋本主査】    ありがとうございました。次回も3時間取っていますので、どうぞよろしくお願いします。
  どうも本日はありがとうございました。

――  了  ――


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