資料2-3 第1次提言に向けたこれまでの主な意見の整理

1.はじめに
1.大学の持っている知的資産をどのようにもっと強化していくのか、しかも、それを大学はどのように使っていくのか、そのための仕組みはどうあるべきかを議論して、大学改革の中の一つの大きなツールとして提案したい。
2.知的資産マネジメントを今までもやってきているわけだが、更に視点をしっかりさせること、新たな視点も必要なのではないか。新たな産学連携というのをしっかり整理して提示することが重要。さらにそういうことをするために財源が必要で、国の財源が厳しい中でどのようにして財源の多様化を図っていくか。
3.国立大学法人の第3期中期目標期間の開始に向けて、「個々の大学の持つ知的資産ストック(研究経営資源)を活用して、どのように価値フローに転換し、価値の最大化を図っていくのか」を「研究経営システムの確立」と定義すると、本委員会においては、各大学の研究経営システムの確立に向けて解決すべきシステム改革等の総括的課題のみならず、知財マネジメントや産学連携の推進に向けた個別の解決すべき課題まで、それぞれの課題の構造と課題解決に向けたマネジメントの在り方等について検討していくべきではないか。
4.検討に向けては、「研究経営システムの確立」に向けて検討すべき対象が、広範囲なことから、その対象を俯瞰的に整理しつつ検討していくことが有効ではないか。
5.研究経営システムの検討対象としては、総論としての研究経営システム全体(ヒト・モノ・カネ等の各論も内包される)に関わる課題、さらにヒト、モノ、カネ等の中で個別に深掘りし議論すべき課題に整理できるのではないか。
6.また、あるべき研究経営システムの確立に向けては、諸外国の好事例についても情報収集を図り、本委員会での検討の参考に供し各大学における具体的な改革像を提示していくことも有効ではないか。


2.昨今の大学改革を巡る議論の状況と本検討会の位置づけ
1.現在の国立大学法人改革を巡る昨今の議論を前提に、各大学の研究経営システムの確立に向けて、個々の大学の取組の好事例も参考にしつつ、各大学の抱える課題の明確化、解決に向けた取組の方向性を示すべきではないか。
2.前提となる運営費交付金や競争的資金を巡る議論の中で、大学を改革するには、ある程度の枠組みを示すことが必要であることも確かだが、大学が自主的に変化しようとするダイナミズムを否定するようなものになってはいけないのではないか。また各大学の役割についても一つの型に固定化しないようなスキームにするべきではないか。

3.議論の前提としての留意点
1.イノベーションへの貢献は、大学にとって役割の一つでしかなく、学理の追究、原理の解明といったアカデミアにしかできないものを追究していくことが大学の真の役割。イノベーションのマインドセットが強くなりすぎないようにケアしなければならない。
2.日本の研究者はリスクのある研究を進める際に公的資金に依存しようとするが、本来はアカデミア自信が財務的なリスクもとって研究を進めていかなければならない。(→特に財務基盤が強い大学にはそれが求められる。)
3.大学によって財源も規模も大きく異なるのは明らかであり、全ての大学に対して本委員会で提示するモデルを追究させる必要はない点は明示すべき。しかしながら、研究大学という観点では日本の場合東大が圧倒的だが、少なくとも大規模な予算をマネジメントしている複数の大学には研究大学としての努力が必要。
4.米国型、独型を参考にしたとしても、日本型のオリジナルモデルの提示が必要。
5.報告書の書きぶりによっては、大学が短期的な成功に固執してしまうため、注意が必要。また、どうしたら長期的な成功ができるのかを考えるべき。
6.政府の政策提言は部分的なものになりがち。例えば大学が政策提言等を行うと非常に包括的な提言になることが多い。部分最適ではなく、全体最適(エコシステム全体)を狙う議論を。
7.研究開発成果の社会貢献度を測る指標があると良い。
8.研究経営の全体像を描くことが必要ではないか。その点について本委員会の中でコンセンサスがとれれば良いのではないか。
9.研究経営に関して成功モデルを提示することが重要ではないか。メリットを感じられる改革でなければ大学はついて行けない。皆がついていける道筋を示すことが重要ではないか。
10.委員会の議論と現状では、大きな乖離がある。このズレをどうするか。委員会の議論にコミットすればどんな良いことがあるか見せないと大学はついてこないのではないか。
11.大学の中に優れたポテンシャルがある隠れた知的資産が数多くある。どういった知的資産があるのかということについて明示化することも必要ではないか。
12.大学(アカデミア)への政策(高等教育政策、科学技術政策、産業政策)は、高度知識基盤社会における成長戦略であり、大学における研究マネジメントは、社会における極めて有効な投資ということを認識すべきではないか。
13.米国が、日本のような対抗軸を見据えて、新しい国家戦略としての大学戦略を意識したように、大学だけではなくアカデミア全体を国の戦略の中に位置づけることが必要ではないか。
14.米国(私立・州立中心)と日本では大学の構造が全く違う。米国をモデルとする場合、何を持ってこられて、何を持ってこられないかをよくよく考える必要があるのではないか。
15.大学の経営強化は大学執行部が自らやらないといけないこと。そのために、ガバナンス強化や間接経費の充実について提言がなされているのであり、経営強化に向けて大学を競わせていかなければならない。そのようなタイミングで、本委員会の議論を踏まえ、経営強化に向けた大学向け新規予算を要求するというのは、流れに逆行しているのではないか。むしろ本委員会では、報告書をきちんとまとめることにより、現在の大学の取組を支援するということが重要ではないか。


4.全学的な知的資産マネジメントの必要性
(1)全学的な知的資産マネジメントに対する意識変革
1.大学の知的資産マネジメントと言っておきながら、もうこれは明らかに大学のマネジメントの問題に広がっている。これはある意味狙っているところである。大学が社会に触れることによってマネジメントが変わっていくということからすれば、産学連携というのは全くの最前線にあるわけだから、いい題材として是非大学そのもののマネジメントの在り方に向けて議論を深めてほしい。
2.大学知的資産マネジメントは、大学のマネジメント全体をさしているのではなく、如何にイノベーションを創出し続けるための産学協働をする必要が企業と大学双方に有り(またその必要性を持った企業と大学があり)それらが本当に組むためには、どのように大学・企業はマネージメントを双方で理解し活用しあうのかを明らかにすることが重要ではないか。
3.大学の経営システムの確立に向けては、現場の状況を正しく認識・分析するシステムをもつことが重要ではないか。その上で、目標設定、目標達成のシナリオ、資源投入量の見積も等を行って意思決定をする仕組みを明確にすることが重要ではないか。
4.大学経営陣が、「知的資産(知的ストック)を価値フロー(キャッシュフロー)に転換すること」、「知的資産(知的ストック)を活用しつつ、大学内外の人的資産(研究人材を含む)の質的進化等を生み出すこと」を理解し、方針を明確にして、投下する資金や人的リソースを定め、モニタリングをしながら経営判断を適宜実施することを意識して、システムの改革・改善をすることが肝要ではないか。
5.経営は、目標、ヒト、カネの投下と結果なので、大学が不足するリソースを何らかの形で政府が補助することも重要ではないか。そのために政府が何をするかを本委員会の今後の議論で深められれば良いのではないか。
6.米国の研究大学において、公的な補助金が急速に減少し、大学間の競争が激化する中で、大学独自のビジョンと戦略が求められ、部局を超えた包括的な「知識のマネジメント」の必要性が生起し、そのマネジメントの実効化に向けて本部への予算の集中がなされたが、同様なことが法人化後の我が国の大学にも求められるのではないか。
7.大学本部が扱える資金を増加させるために資金源の多様化(学費、基金収益、間接費の取扱いに関する改革等)を図っていく必要があるのではないか。
8.科学技術予算、高等教育予算は今後確実に減る。今、何とか据え置いてもらっている内に、その間にもがき苦しみながらも、国ではないところから資金を獲得する術を確立しなければ日本の大学はそのうち死んでしまうのではないか。
9.国ではないところから資金を獲得する術として、企業の目を大学に向けさせ、民間からの共同研究費をもっと獲得できるようにする必要があるのではないか。企業側も大学側にリクエストを示しており、大学側が魅力ある投資先となるよう対応していかなければならないのではないか。
10.我が国大学においては、本部が裁量で使える経費は、運営費交付金の一部、間接経費等の一部、寄附金・基金等の一部と限定的で、欧米に比べれば非常に小規模であるのが現状。現在の規模では大学独自の戦略を打ち出し、実行していくのは困難ではないか。
11.大学が資産運用することで、大学の資金源が大きく伸びる可能性がある(例えば大学発ベンチャーで成功を収めている大学等)。そういった資産運用が可能な大学には国としても規制改革等を通じて選択肢を拡大していくべきではないか。
12.学術の発展に重要な、非研究開発分野への投資を活性化していくためには、designated fundのような戦略的に使途を指定したファンドが有効ではないか。
13.運営費交付金の総額が減少していることは、そのマーケットがシュリンクしているということ。普通の民間であれば、マーケットがシュリンクすれば撤退やニッチを狙う等の経営判断をする。さらには金融系の人材が入ってきて、不採算事業を切り離しもする。そういった経営判断が大学にはないのは問題ではないか。
14.(企業経営とのアナロジーから考えれば)資源を戦略的に配分するためには、ビジョンを明確にした上で、顧客(共同するパートナー)を探すこととなるが、資源が限られている状況であれば、さらに対象とする顧客をより限定させる等してコスト削減を図ることが重要ではないか。(=選択と集中)
15.少子化が進んでいるにも関わらず、大学の数が多すぎるのではないか。なぜこんなにお金をかける必要があるのかよくわからない。3類型の話があったが、皆がミニ東大を目指していて差別化ができていないのではないか。
16.大学を外から見ていると、カネのにおいが全然しないし、何をやっているのかわからない。例えばインパクト評価のようなもので社会に対してアピールすれば多少違ってくるのではないか。
17.大学の経営陣のみならず、それ以外の研究者の総力を紡ぎ上げていく、またマインドセットしていくマネジメントやガバナンスが重要ではないか。
18.産学連携等個別の局面でうまくいったことが、どのように大学経営に返ってくる仕組みとなっているのか、大学経営を潤すのかそのような点も明らかにすべきではないか。
19.特定の大学は強みを伸ばして、産業との連携を強化すべき。満遍なくではなくて、強みを伸ばすべき。そのために、学長・総長のリーダーシップを強化する必要があって、それには予算、人事権を強化することが必要なのではないか。
20.ほとんどの大学でマネジメントが上手くできていないのは、大学は企業と違って選択と集中ができないところに原因があるのではないか。(ある研究が先細りであっても教授に明日から研究をやめろは言えない。)
21.部局長の選考に当たっては、学長のビジョンや大学の経営方針を共有し、その職責を果たすにふさわしい人材を選考するために、当該部局からの十分な情報収集を前提として、学長が指名することも必要ではないか。
22.教育研究力の最大化を目指すためのガバナンス改革として、教員ポストは全学で管理・運用すべきものであり、部局の方針も参考にしつつ、経営陣が強化すべき教育研究分野等を判断し決定していくことが必要ではないか。
23.各部局に対して大学の全てのスペースは共有財産であり、部局はスペースを「専有」しているのではなく「運用」しているのだという考え方を浸透させていくべきではないか。
24.学外から資金を獲得してくる場合、大学のガバナンスとして責任ある機関ということを示すためにも、法務部というものを大学の中に自立させた組織として整備すべきではないか。
25. 「イノベーション増大に向けた知的資産マネジメント」の話と、「財源確保」あるいは「学内マネジメント全般」の議論を整理すべきではないか。

(2)知的資産マネジメントを担う経営人材の育成・登用システムの構築
1.理事会や経営陣は、大学の将来を長期的な視野で考えていく必要がある。そのためにも、経営陣の選び方が重要。経営陣の資質の問題というよりも、経営陣を選ぶシステムに問題があるのではないか。経営陣の選び方が変わらないと結局は、研究経営のマネジメントなんてできないのではないか。
2.我が国大学では、学長や経営陣を選考する際、大学内だけから選ぶことが一般的であるが、マネジメントに長けた人材を登用する観点では、学外からの人材登用の可能性についても検討されるべきではないか。
3.自分に能力や知識が不足していると認識せずにトップに立つ者が多いのではないか。経営者という観点で、部局長のときから評価していかないと変わらないのではないか。
4.様々な良い仕組みも、継続的に回っていくためには、教員、専門職員のみならず普通の事務職員も含めたマネジメント力の強化が求められる。
5.大学改革で重要なのは、重鎮のような人たちを動かすのではなく、若い学生や教員等の自由に動ける人たちを動かしていき、時間をかけて改革の雰囲気を皆で作り上げていくことが必要ではないか。
6.制度を変える、教員の首を切るというのは抵抗が大きい。そうではなく、徐々に5~10年かけて組織を変えていく必要がある。大学内で何か改革を進めるとき、ポジションを奪うとか組織の変革をするとかというと抵抗がある。邪魔しないし良いことだからやらせてくれというスタンスであれば、皆ノーとは言わない。そして成功実績があがってくると、皆がその重要性に気づく。大学では時間が問題を解決してくれるという側面もあるのではないか。
7.マネジメント改革を大学で進めようとするとき、現状では教員が取り組むしかない。しかし教員の評価は研究業績であり、マネジメント業績の明示的な評価はない。したがって変革を主導する教員のインセンティブも、変革に協力しようとする教員のインセンティブも維持が難しいのではないか。
8.例えばブランドマネージャーのような人材を置き大学もブランドデザインをしていくことが必要ではないか。大学の類型化は、まさにブランドデザインをしていくことではないか。
9.大学執行部をいかに作るかという点をもっと議論して欲しい。特に人材をどのように育てていくか。若手を経営層に入れて教育するような形で進められるようなガイドラインを文部科学省の主導で作ることができないか。
10.民間の企業経営をした人間として、今、大学の執行部の中で大学の経営というのに携わっているが、全く違う。内部から上がってきた人材だけで大学を経営するということをやっている限りは、私は限界があると思う。じゃあ外から誰か連れてきたらいいのかというと、これは企業のルールと大学のルールは長い歴史の中で大分違っている。突然入ってきた人が動ける組織になっていない。そのガバメントのグリップは絶対効かない。企業経営の考え方で事務局組織も教員も動かない。そこも含めて理解した上で、大学とはどう動かすかということをわかる人材をいかに創るかということはかなり重要。
11.経営ということで、資産マネジメントとそれから大学の経営的なことを強く訴えていくと、どうしても誰が経営するかという問題がかなり大きいと思う。現在の経営システムというのは全部下から大学の先生が選ばれて上に上がっていくシステムで、結局、大学の先生たちで経営する大学のそれまでの歴史を抱えてやらざるを得なくて、非常に大きな変革というのはなかなか起きにくいということで、かなり経営に長けた人を大学のシステムも理解してくれながら、外の空気もすっているような人というのはやはり経営の中に1人は入れないといけないような、経営を全員外部の人というのは無理でしょうけどそういうことが、重要。
12.プロボストは、もともと大学の先生だったにも関わらず、そういう職に就くとほとんど研究はやめて、その職を転々としながらいろんな大学を回って経営をしていくということはよくあるので、そういうキャリアパスとしての経営重視することが重要。
13.研究者も含めて大学人はアドミニストレーションというものの役割の重要さが本当に分かっていない。それをどういう形でやればいいのかというのは、いろいろスキームはあるでしょうけど、産業界もそこに関わってもらいながら、諸外国の例も意識しながら、あるいは中央で行われている審議会の議論にも参加してもらいながら意識改革が大学の中で行われないと、多分、トップ層はやる気があったとしても、必ず選挙でリプレースされてしまう。結局動かない。ということは、本来の作り込みのところまで足を踏み入れないとやっぱりこれは動かない。絶対動かない。
14.日本のアカデミアには、マネジメントに関わるエグゼクティブの育成が大きく欠けている。研究ができる人は、マネジメントもできるだけのポテンシャルがある。ただし日本では育成システムがない。企業と大学では経営の考え方が違うので企業の人が十分なマネジメントができるはずもなく、アカデミアの中でそういった人材を育てていかないといけないのではないか。
15.日本の現状では、結局、アカデミアで評価されるのは研究で成果を収めた人であり、経営だけやっていても評価されないのが現実である。その中では、ピュアサイエンスで成功を収めた人を育成システムの中で育てマネジメントに登用していかなければならない。
16.優れたProvostによる大学マネジメントが極めて有効で、企業の経営とは異質な多目的最適化のため、極めて高度な見識と能力を要すること、その導入が大学の将来のためにも、産業界のためにも極めて有益であること、その人材育成とキャリアパス確立が不可欠なことは、極めて重要な論点ではないか。
17.大学教員も、有能なマネジメント人材を活用して運営を改善することを喫緊の課題と認識すべきではないか。
18.従来、大学の自治のため、及び研究・教育の深い理解が必要との考えから運営も全て教員が行う体制だったが、米国の例をみればそれは正しくないので、役割分担をしっかり考えるべきではないか。
19.有能なマネジメント人材の育成が大学のミッションで、その後の人材活用は政府や産業界のミッションと考えるべきではないか。
20.マネジメント人材が流動化せず固定化すると問題が起こる可能性もあるのではないか。
21.文部科学省の責任として米国の大学におけるProvostに相当するような研究経営マネジメントのプロフェッショナルを育成するシステムが必要ではないか。
22.一方で、人材の育成には時間がかかることから、当初の段階においては、外部から研究経営・マネジメントを担うことができる人材をアドバイザー的な立場で登用することも必要ではないか。
23.これまで我が国大学では、アドミニストレーションの重要性が過小に評価されてきた。今後は、アドミニストレーションの重要性を高め、そこに力を入れる大学を評価することが必要ではないか。さらには、アドミニストレーションに関する教員の業績を評価するシステムが必要ではないか。
24.アドミニストレーションに従事する人材の地位向上が必要ではないか(例えば各大学に配置されたURAが大学経営全体に積極的にコミットしていくことが考えられるが、そのためには、法律・経営・研究に関する専門的知識等をもった人材となることが望まれる)。さらに地位向上を実現するためにどのような取組が必要か。
25.知財マネジメントやプロジェクトマネジメントを考えられるような専任職員がもっと必要ではないか。また研究戦略のポートフォリオを組むような人材も少ない。こういった人材を育成していくシステムも必要ではないか。
26.MITのマネジメント人材の中には、有名教授と同等のポジションの人間もいる。そのような者が、大学全体の知財戦略を考えたらもっと社会に貢献出来る事業が生まれてくるのではないか。
27.現状の大学運営体制では、日本語のできない教員を採用すれば、それ以外の教員に雑務のしわ寄せがいく。文科省から大学事務組織まで全て英語対応になればよいし、専攻レベルでも十分なマネジメント人材を確保・活用できるようにすることが必要ではないか。
28.マネジメントについて、人材育成・キャリアパスもさることながら、まず現状においてミドルレベル(研究科長や附置研究所所長、特定の横断的研究プログラム・プロジェクト長)にどういうやり方で(特定の縦割り分野を超えた)調整権限を設定するかのミドルレベル・マネジメント体制を構築することの重要性を明示的に盛り込むべき。
29.大学における「知的資産マネジメント」を実際に行うに当たり、どのようなスキル、知識、経験、権限を持つ者を配置すべきなのか、もっと具体的に記載するとより説得力のあるものになるのではないか。例えば、理事又は副学長クラスで、大学全体の研究人材、研究設備、知財の状況を把握し、研究者の人事権と予算配分権を有する者を配置しろということなのか、日本の大学で「知的資産マネジメント」をしっかり実施している成功事例(人、システム、外部からのリクルート例)があれば例示する等、少なくとも知的資産マネジメントをする者のロールモデルを示すとよいのではないか。

(3)その他の改革方策について
ア 人事給与改革や研究人材の育成力強化の必要性
1.TLOや知財本部という新しいシステムは10年ぐらい前に形から入ってきて、そこでの人材は産業界に協力を仰ぐ形でやり始めた。しかしアカデミアが関わる知財とかは本来やっぱり違うもの。そのやり方が定着しないので、今、苦しんでいる。その原因は、大学の側で作り出す人材の育成に大きな問題があったのではないか。
2.現状、理科系の博士課程の進学を見ると修士に大きく偏っている点は、米国と決定的に違う。米国では、博士課程人材というものは何も一流の、第一級の研究者を作るだけではなく、むしろ知財も含めた産業化も含めたところまで幅広いところに目利きが行くような人材をアカデミアは作ってきた。そこに依拠する形でTLO等が花開いた。
3.優秀なポスドクや若手研究者を確保するためには、研究費だけでなく、scholarshipやstipendの充実が重要ではないか。
4.我が国大学では、教員の研究面での評価基準は論文が中心だが、特許や外部資金獲得等の社会貢献(産学連携)に関する視点から教員の活動を評価する仕組みが必要ではないか。
5.日本の教員給与体系は給与が号俸(勤続年数や年齢)で決められて一律であり、研究費の獲得や特許収入等で大学に貢献しても全く関係がないのは、問題ではないか。
6.給与体系の改革として、テニュア教員の給与を1か月削減し、その代わりに競争的資金の直接経費から最大2ヶ月分の給与補填を認めることとし、削減した給与分で若手人材への補填給与にすることや、間接経費支出と併せて若手のスタートアップ資金とすることで、人材獲得の国際的競争力の強化と競争的資金獲得のインセンティブが同時に達成できるのではないか。
7.若手研究者が活躍するポストを拡大するためにも、産業界との共同を推進していく必要があるのではないか。
8.大学における優秀な研究者やマネジメント人材の確保は非常に重要だが、それに仕える予算がないし、処遇に全く競争力がないから人材獲得競争に勝てないのではないか。
9.欧米では、高給の提示に加え配偶者のポストの用意など普通だが、我が国では無理であり、そもそも現状の処遇では、国内でも若く優秀な人材は見向きもしないのではないか。
10.最近、給与の特別設定が可能な仕組みができたが、全学で1名といったレベルであり、これが実際に人事を検討する専攻レベルで運用・実現が予算的にもできなければ意味がない。
11.米国のアドミニストレーションのバジェットが増加している中には、スター研究者を獲得するための予算、サラリーとかスタートアップが含まれており、それが戦略的に使われている。そういった戦略が日本の大学には欠けているのではないか。
12.優秀な人材確保は重要な観点だが、そもそも教授になることが格好いいことなのだろうか。しんどい研究をして成果を出しても、もらえるサラリーは、大手民間・外資に行ったほうが上だし、安定している。
13.大学が変わるためには、人材流動性を高めることが重要であり、民間もアカデミックも両方わかる人が増えることが必要ではないか。
14.大学には教員と事務職員しかいない。だから専門職員のような目的で(例えばURAのような)人材を配置しても、特任教授のような肩書を与えると、いつの間にか「自分は教授だ」と思って、准教授や事務職員を下に見て、問題を複雑化させてしまうようなこともあるのではないか。

イ 知的財産や研究インフラ等のマネジメント改革の必要性
1.我が国大学の特許料収入は、1~2件の特許による収入が大半を占めるのが現状であり、大学の財源を増加させるためには、知財のライセンスよりも企業との大型共同研究契約を模索する方がより効果的ではないか。ただし、大型共同研究を実施する上では、知財や研究戦略をマネジメントできる体制を産学で構築することが重要ではないか。
2.大学が保有する先端設備の共用等を通じてマネジメントしているが、近年の、国から大学への予算措置では維持費が措置されないため、減価償却も含め維持費を大学の持ち出しで維持しているのが現状。大学における研究・教育活動の重要性を改めて企業にも理解してもらい、企業との協働やコスト分担を実現していくことが必要ではないか。
3.民間との共同研究による間接経費を増額確保することにより、その間接経費を財源に最先端研究設備を大学として戦略的に導入・管理・共有化を図り、当該設備をハブとしてオープンイノベーションを推進するプラットフォームとして活用していくことも考えられるのではないか。
4.研究者は知的ストックを生み出す人材だが、知的ストックを価値フローに転換する人材が研究者の傍らにそれほど多くない現状の課題に対しては、ビジネスプロデュース型(あるいはアントレプレナー型)の人材が大学研究者の傍らにいて価値フロー転換の観点で活動することが有効ではないか。
5.これまで外部TLOも内部TLOも、大学の知的資産を価値フローに転換するミッションであることが理解されていたはずだが、現状では一部のTLOをのぞきミッションが曖昧になっているケースもまま見られるのではないか、ミッションの再確認とともに、人的リソースの配置や活動方針などを再度、整理し直す必要があるTLOもあるのではないか
6.日本のTLOは独立採算を求められているために、短期的にカネに結びつくモノしか扱わないであるとか、企業と研究者の間に無理矢理入ろうとする等の問題を生起させているのではないか。(MITのTLOは飽くまで大学教員を補助する立場であり、独立採算を求められておらず、評価の基軸は、どれだけ研究成果を事業化に結びつけられたか等のインパクト評価である)
7.知財契約に関して、日本の場合、企業やベンチャーにライセンスアウトしても死蔵させてしまうパターンが多い。米国では、死蔵を防ぐために、使わないなら返すという条項が契約に含まれるのが一般であり、日本でもそのような契約にしていくべきではないか。
8.大学の中に知財マネジメントについて知見をもって担当できる人がいない。特許を出すにしても、マーケットニーズ調査やどのように特許群化するか等の分析を基に特許戦略を描くことが必要なのにもかかわらず、現在の大学では、まだ特許を出すことが目的化しているようなところもあるのではないか。

ウ その他の改革プラン
1.学部の枠を取り払うことができれば日本の大学は変わるのではないか。日本の大学では、工学、理学、薬学、医学・・と分かれているが、化学で言うと各学部で研究されている内容は非常に近く、研究者が見ても学部毎の違いがよくわからない。米国であれば、Department of Chemistryになるが、これほど学部が細分化されていない。それが無駄を生んでいるのではないか。学生にとっても、ある分野を研究したくても、様々な学部にまたがっているため、どこに行って良いかわからないということも生まれているのではないか。
2.人の雇用が不安定になるのが最大の問題であり、ファンディングの在り方として、現在、競争的資金の枠組みが急に出来上がり、短期間で終了してしまったり、ルールが変更になる等の傾向にあるので、ルールを明確にし、長期的に研究が続けられるような施策をとるべきではないか。
3.ファンディングのスケール感は、アメリカと比較し日本は一段階低い。人が育つためにも定常性・恒常性が決め手となる。最先端の研究とは別に、現在のニーズに合う研究ばかりにマンパワーが傾いてしまうのは問題ではないか。根本的なブレイクスルーを狙うような分野について企業が長期的に資金提供したいと思えるような仕組みがあると良いのではないか。
4.地方大学が東大と同じ戦略で勝てるはずがない。セグメンテーションが必要であり、地方大学は一部の分野に特化し、その分野でのグローバルトップを狙うような戦略が必要ではないか。
5.一番重要なのは、大学自身が地域でどのような立ち位置を求められているのかを的確に認識することではないか。多くの大学は地域とのつながりを受験で見るため、地域のエリートとして存在してあげているんだという意識が大きい。社会貢献・産学連携という切り口では、大学が地域のリクエストを聞いて答えるという図式にしなければいけないのではないか。
6.地方大学では、地域への貢献をビジョンとして、地域の企業を顧客の中心として位置づけて(=顧客の明確化を図って)戦略を構築している(さらには成功している)「三重大学の事例」は、まさにグッドプラクティスではないか。
7.三重大学では優秀なマネジメント人材の活躍によってボトムアップ式でも改革が起きている。この流れを組織の中で拡大していくには何が必要なのか。またこれを特別な事例としてではなくこのような流れを全国に普及させるには何が必要なのか検討していくべきではないか。


5.イノベーション実現に向けた効果的な産学官連携の在り方
(1)組織対組織による産学連携の深化の必要性
1.大学による次世代型産学協働システム改革は急速に進化しており、産業界と大学の組織経営判断メンバー間での協働についての議論が必須ではないか。
2.現在の産学連携は研究者主導の1:1の小規模な共同研究が主流。産業界が求めているのは、大学組織主導で大学マネジメント機能を発揮させる大規模共同研究や異分野融合の共同研究。ただし、その場合にも総花的なものではうまくいかないのではないか。
3.大学側は、企業や競争的資金向けの研究プロジェクトを部局や全学単位で企画しマネジメントし責任を持つことを一定割合で実施すべきではないか。また企業や行政は大学向け研究資金に米国並みの間接経費を手当てすることが、まともな成果を得るために不可欠なことを正しく認識すべきではないか。
4.オープンイノベーションが進む中で、産業界が今大学に求めているのは、10年先を見据えた長期的な視野でイノベーションを起こす研究開発。そして、研究開発の初期のステージから産業界も参加することでよりイノベーションが進むのではないか。
5.産業界からパートナーとして認知されるために大学側には何が必要か。
6.産業界も単に下請機関として大学をみるのではなく、大学を育成する視点を持つことが必要ではないか。
7.大学と企業の関係を一般論で語ることはできない。なぜなら産学連携活動において、大学は企業を選んで実施している。大学と企業の個別交渉であり、例えば間接経費を一律何%にしなければならないと国から言われても出来るものではない。大学と企業との連携を実質的なものにしていくには、現実的なデータで論じていかなければいけないのではないか。

(2)大学発ベンチャーを通じたイノベーションの実現
1.イノベーションを実現するために、大学から技術をスピンアウトさせて、大学発ベンチャーを設立することは有効な手段。日本では米国と比べて技術の導出先にベンチャーが選ばれている比率が少ないのではないか。
2.ベンチャー起業には、起業家自身がリスクを払って経営努力をしていくべきである。公的資金をもって支援すべきは、欧米と比べて手薄な「死の谷」を乗り越える部分。なお「ダーウィンの海」の支援は産産連携が必要ではないか。
3.日本では、いまだ大企業指向が強く、ベンチャーを起業することの社会的ハードルが高いのが実情。地方大学では、学生が直に大学発ベンチャーを設立するよりは、マーケットで戦っていけるようなコア技術を持つ中小企業等と連携し、ジョイントベンチャーのような形で起業リスクを下げることが有効ではないか。
4.大企業と大学発ベンチャーの連携を積極的に進める方策について検討をするべきではないか。
5.ベンチャーの可能性とそれを誘発、発展させる仕組みをどのように考えるべきか
6.大学発ベンチャーに対して大学の投資が必要ではないか。

(3)産学官連携活動に参加する学生への支援
1.共同研究を進めていく中で、博士課程・ポスドクの人材へ報酬を払うかどうかという論点がある。日本は基本タダだが欧米ではそういった人材に研究へのエフォートの対価として報酬を払うのが普通。その代わり大学側も非常に充実したサービスを提供してくれるので、企業としても対価が得られている。
2.大学の研究の中心は大学院生やポスドクであり、彼らも大学に残るのは一部であり、皆が長期間同じ研究をするわけではない。企業と体制や考え方が違うということの理解を求めていくことも必要ではないか。
3.大学の主は学生。それを捨象して、対企業との関係が主であると捉えられるような議論では問題ではないか。
4.これまで社会から離れたところに位置していた大学が社会システムの中に取り込まれ、企業と一緒に大学を含む社会システムのあり方を考えていくことは進めるべきたが、大学が社会に求められることを全てやれ(例えば、大学がイノベーションを起こせ)というのは無理があるのではないか。
5.日本の優秀な博士研究者の獲得と育成には、企業での活躍の場が必須であり、企業、大学・研究機関で、博士研究者が活躍する年間当たり1.5万人のポストを確保していくことが、必要ではないか。

(4)その他の改革方策等について
ア 産学連携の在り方
1.運営費交付金のお金が減っているから、財源の多様化をしなければならないから産業界研究資金を大学に呼び込むのではない。イノベーション型展開研究を産学共同で行うのであれば、大学活動が維持できるように産業界から資金導入を図る必要がある。100万円の共同研究を獲得するために、大学会計の見える化をするのはコストが合わない。共同研究の直接経費を積算しその上に間接経費をしっかり載せないと大学として共同研究ができないのが現状。
2.センター長や学長がトップダウンで意思決定できるような仕組みにして欲しい。
3.新技術の開発に取り組むためには、サイエンスにおけるブレイクスルーが必須であり、外部知識(研究シーズ)を取り込み、従来技術の壁を乗り越える目的指向の研究を推進することで、商品につなげることができる。
4.トヨタでは、M&Aや技術買いではなく、共同研究を通じ外部の知を取り込み、自らの技術とする形でオープンイノベーションを推進している。例えば2008年には、電池研究部を発足し、国内外の著名研究者とのネットワークを構築し、次世代電池の研究を加速している。
5.大学に期待するものは、ブレイクスルーのための基礎研究。特定の大学は強みを伸ばし、産業との連携を強化すべき。
6.imec等研究開発機関は、顧客第一主義であり、クライアントの要望に対しては絶対に応えようとする姿勢を持っている。また、意思決定がトップダウン式で早いことも魅力。企業との連携を進める上では、大学にもこうした姿勢が必要か。
7 オープンイノベーションを進めるためには、技術のオープン化(技術ニーズの公開、保有技術の公開)とともに、組織内部のイノベーション・エージェントと、アライアンス先のイノベーション・エージェントを通じた連携が極めて重要。
8.イノベーション実現の鍵はマーケティング。大学も競争戦略・ブランド戦略が必要ではないか。
9.イノベーションエコシステムの中で、大学の持っている知的資産の活用を促進することどういう施策で行うかという視点が重要。
10.イノベーションを大学の中でやろうとすると、ひずみがいろんなところで生まれるのは、もう今まで何度も見てきている。それを前提にすると、絶対うまくいかない。そこをきっちり外す前提で、例外もあるという方がわかりやすい。
11.日本においてよくみられることだが、研究大学が産学連携を進める場合、リスクフリーの公的な研究資金を注ぎ込むことは問題ではないか。本来リスクを取って進めるべき事柄にもかかわらず、リスクフリーの資金を供給することからいい成果が生まれないのではないか。
12.アカデミアはアカデミアのリスクを取る体質を維持すべきではないか。ビジネスのリスクをとるのはこれは別の形であるべきではないか。アカデミアのリスクとビジネスのリスクの2つを一緒くたにすることは、研究大学というものの体質に大きなそごを来す可能性があるのではないか。
13.アカデミアにいる人間が考えないといけないのは、アカデミアの中で行われている研究が果たしてどのような形で社会貢献していくかということの視点も重要だが、それが中心となってはいけないのではないか。
14.地域の大学では、ある程度確立された技術をどういう形で地域の中で使っていくかということを考えればよいが、大型の研究大学では、全く新しいところにチャレンジしていくようなアカデミアの精神がなければ、本当の意味でのメガヒットはなかなかでてこない。
15.研究大学で、研究者にイノベーションをやりなさいというようなマインドセットをひたすら植え付けるというのは間違っている。研究者というのは、全く新しい技術がどこで生まれていくかということをずっと考えていて、それが果たしてどういうふうにイノベーションにつながっていくかということはそもそも頭にない。
16.それをイノベーションをやりなさいよと言った瞬間に、社会実装のことだけがずっと頭の中に入ってきて、特定研究大学でやるような研究のパターンに大きな問題を起こしていく。そういう点に気をつけることが重要ではないか。
17.米国では、UCバークレーのTLOが、研究をひたすらイノベーションにつなげていくか、研究成果を技術としてベンチャーを創っていくかを指向しすぎることから、研究者がスタンフォードに移籍している。スタンフォードにはある種の研究の自由があり、それがどのような形でイノベーションにつながっていくかということをサポートしてくれるようなTLOがある。そのことが研究者にとっての豊かな研究資源になっているという意識がある。
18.産学連携では本当に価値のある成果が出た時、企業の事業化と研究者の論文発表という利益が対立するため、研究者は論文発表できない。特に学生やポスドクをそのような活動にコミットさせることは彼らの時間を無駄にすることになりかねない。
19.イノベーションを起こすような事業化を目指す場合には、産産連携の形態で、お互いの企業が本気で事業化に取り組める環境を作り上げていくことが重要。
20.研究科長や所長のような全体をオーガナイズできる者が長期的なビジョンを持って、企業と対峙していくことが必要。
21.Industry 4.0をはじめ、分野横断的で1研究室や1大学では収まらないような研究開発が進みつつある、そういった意味で産学連携も大型化しており、マネジメントの在り方も変わっている。
22.産学連携のシステム、TLO等のスキームも含めて日本の大学の中で東大が突出していることは、問題ではないか。研究大学が競い合う形をつくっていかないとこのようなスキームは伸びていかないのではないか。

イ 大学と産業界双方の意識改革の必要性
1.大学は本来、産業連関の一部門に位置づけられるような存在であり、我が国の産業競争力強化のためには、大学自身がどのような貢献を行ってくべきかについて主体的に考えていく必要があるのではないか。
2.大学がビジネスエコシステムにどのような影響が与えられるかを考えていかなければならない。
3.こと大学改革の議論では、大学だけに変革を求めるように聞こえるが、同様に産業界も変わらなければならない。双方の改革が必要であることを述べていくことが必要ではないか。
4.我が国産業界も自らが各分野で新規開拓を行い、グローバルトップを目指していくことが必要。そのために、企業研究者は最先端技術に関する研究を行う大学研究者との連携を積極的に行うべきであり、また、最先端技術に関する深い理解を身につけるべき。さらに、産業界としてどのようにイノベーションを起こそうとしているのかのメカニズムを大学に対しても提示していく必要性があるのではないか。
5.現在のような共同研究の在り方では、大学は企業の下請け機関になってしまうのではないかと危惧する。大学は長期的視点に立って、何を研究すれば社会貢献となるのか考えるべきではないか。企業の短期的視点に囚われすぎないことが重要ではないか。
6.産業界からは、大学が企業の要求に合わせるべきという意見があるかもしれないが、アカデミアはその分野のフロンティアであり、企業の側がむしろオールドファッションであると言わざるをえない。その分野の最先端のことを企業の人がわかるわけがない。だからこそ大学側が変わっていくべきであり、企業の「対等な」パートナーに変わっていくべきではないか。
7.産学連携に積極的に取り組んだ人材を評価する仕組みが必要ではないか。例えば産学連携を大学の評価指標に取り入れるとか、教員の給与に反映させるといった変化が必要ではないか。

ウ 知的資産経営としての産学連携施策
1.大学の産学連携施策は、概ね大学が自ら意思決定できる重要な戦略オプションであり、大学法人全体の戦略から見れば、大学にとって大きな環境要因である教育政策や科学技術イノベーション政策、地域政策へ、自ら意思決定できる産学連携施策の影響力を活かすことを考える必要があるのではないか。
2.大学法人全体の戦略の下位レイヤーに産学連携戦略(産学連携活動としての最適化)があり、さらに下位レイヤーに知財管理や契約管理などにおける機能戦略(それぞれの管理の最適化)があるのではないか。
3.産学連携の効果としてイノベーション創出と研究力向上の二つの効果があるが、技術を社会に受容させるイノベーションのプロセスは主に企業が担っている。企業にとっては、企業発技術も大学発技術も例外なく様々な企業内リソースを統合して初めて事業化することができる。しかし技術の乗り物としての企業の「組織」 が常に技術にマッチしているとは限らないことから、技術の埋没化という問題が生じる。
4.米国大学のほとんどの特許の行き先はベンチャー、日本の場合は半分以上が共同出願になり、単独出願もあわせて、ほとんどの特許の供給先は大企業となっている。一方、東京大学の例では、ベンチャーの時価総額で1兆円を超えるような価値を生み出している。このような点をみると効率は実はベンチャーの生産性が良いように見える。
5.大学の知識の活用は、企業発技術の埋没化と同様に、知識の統合やそのビジネスモデルが合わない技術の乗り物として適切でないということが生じやすく、むしろ実は大企業の方が難しいのではないか。
6.大学の知識を活かしていく戦略的な考え方は2つしかない。大企業との戦略的な共同プロジェクトをやるのであれば、全社リソースの統合と戦略構築を同時にやっていただく。これは大企業側のみならず、大学も実は制度をいっぱい持っていて全然統合できていない問題もあるので、その点も同時に解決していくことが必要ではないか。1つ1つの技術に関しては、イノベーションの生産性が良いと考えられるベンチャーとの連携というのを大企業、大学、それからベンチャーとの連携で新しい技術の導入を進めていくことの2つしかないのではないか。

エ イノベーションの支援者としてのTLO
1.日本のTLO(ケースによっては産学連携本部を含んだ意味でのTLO)は独立採算のプロフィットセンターとされていることで、評価基準が短期の収益中心となり、短期事業のみを優先する形となっている。本来TLOはコストセンターとして、インカムではなく、長期的な社会的インパクトを生み出すことに主眼を置いて、活動を行っていくべきではないか。
2.そのために、研究者のエージェントとして(大学のエージェントでは無い)、研究者の意図を最優先としてサポートする姿勢を持ち、商業化に必要なアドバイスを行っていくべきではないか。
3.米国のTLOでは企業に知財を導出した後も、事業の進捗をチェックし、報告を求めるとともに、知財が死蔵されている場合には契約によりライセンスを放棄させ、大学が回収し再付与に回すシステムが構築されている大学もある。
4.東京大学の場合は、東大TLOとUTECが連動してエコシステムを作っている。彼らは大学の中に入ってシーズの発掘、事業化への橋渡しを行おうとしており、研究者及び企業との距離が近い。
5.米国のTLOでも、スタンフォードとトップクラスの州立大学とは大分違う。特に州立大学は非常に財務状況が悪くなってきているので、お金もうけをする手段としてのTLOという感じが強くなってきている。


6.イノベーション実現のための財源の多様化
(1)民間企業との共同研究における間接経費の取扱いの方向性
1.企業から資金(受託研究、共同研究、寄附)を増やす努力として、企業が組織的連携を組みたくなる体制、仕組みが必要、間接経費の使途を明確にしていただければ企業側もちゃんと払う。さらに企業側が応援する、あるいは増強したいという研究領域を伸ばすように使っていただけると有り難い。特定の強みを伸ばすために寄附を行っていきたいので、税制改革を行っていただきたい。
2.間接経費というのは、民間の企業の方々から見ると、そのときに掛かった間接経費というようにも見えるわけだが、やはり組織を維持していく時間を越えたもろもろに必要なものということを是非、間接経費の中に概念として入れていただきたい。例えば、1年間の研究委託、これについて、その1年間に掛かる間接経費という概念だけではないと思う。大学がその研究を請け負うために必要となる事前・事後というものも色々と出てくるわけですので御理解をいただきたい。
3.間接経費に関しては、必要性さえ示されれば、同じ全体額の中で直間比率をどうするかは大学側の自由。
4.間接経費について意識改革が必要なのは大学の側なんじゃないのか。教員が間接経費というのがまず必要で、どの程度何に使う必要があるのかということを認識共有して、それに協力するということがむしろ必要なのではないか。
5.米国にいた経験から言うと、日本の大学は間接経費をいいかげんに考えていると感じている。米国ま場合、例えば機械を研究費で購入すると、それは大学の資産として考えられて、その資産を使うということは大学にどれくらいの経費が必要になります。その資産を維持するのにこれだけのお金がかかると、そういう非常にクリアな説明が米国の大学の場合はあって、共同研究するときにはこういう間接経費が要りますよと。もちろん共同研究するときには図書館も使うでしょう、だからその時の費用はこれだけ掛かりますと。だから非常にクリアな説明をすればいいんですけど、大学がまだそこまでできていないというのが一番大きな問題。だから間接経費の問題は、やっぱり大学側がかなりクリアに間接経費にはこういうものが含まれていますというのを出さないと、幾らたっても多分、企業からすると理解できないということになると思う。そこをどうするかが非常に重要なポイント。
6.これからどれくらい自分のところの研究マネジメントをやっていくかを量っていくためにも間接経費、あるいはヨーロッパではフルエコノミックコストを完全に全部のコストを把握できるかと。それが知的資産マネジメントの根幹。
7.間接経費をきちんとさせるということが実は大学のマネジメントに近づく本当にいい手段。間接経費を個々の大学がどれくらい必要かということを、内部のことがわからなければ積み上げられないですから、ということは、内部の全てのプロジェクトに関してきちっと把握できて初めてそれができる。したがって個々の大学の間接経費のパーセンテージが違うのは当然。間接経費というのはマネジメント改革の一里塚。かつ国立大学の財務諸表はひどい。あそこから経営戦略を立てろということがそもそも無理というかできないように作ってある。だから本当を言うとそこから変えないといけない。そういう意味でマネジメント改革というのは、全ての領域に関わってきて、研究不正も寄附金を受けるといろいろな問題が起こるのも、マネジメントで研究者を守っていかなければいけないのも、完全にそこは理解できなきゃできない。一つのきっかけは間接経費というものを個々の大学できちんと算定しろというところからはじまるのではないか。
8.企業側の意見を聞いていると、共同研究を行う研究者は「何を根拠に(直接経費を減らして)間接経費をとるのか」について関心が高いが、企業側は「トータルが一緒だったら直間比率の変更には柔軟に対応する」というふうにも聞こえる。→それでも、オーバーヘッドとして取るからには、上納金ではないという説明が必要ではないか。
9.間接経費の比率を積み上げて示せるということは、大学全体のことが分かっているのと同じ。やはりきちんと積み上げていくことが必要できはないか。
10.間接経費は「運営費交付金の減分を埋めるためのものではない」ということははっきり言わないと、産業界側に逃げられてしまうので気をつけるべきではないか。
11.ビジネス的な目線で言えば、何を価値として売るかによって、直間比率も変わってくるはず。必要経費について可視化することは重要。
12.国と大学との間(競争的経費における直間比率)は国が決めるということに異存ないが、民間との共同研究であまりにリジッドな比率を決めるべきではない。あくまで、ファクトを整理して、大学側にモデルケースを提示するという役割にとどめるべきではないか。
13.大学内部で間接経費がどのように使われているのか不明。情報が開示されていないのは問題ではないか。
14.間接経費の使途について透明化する必要があるのではないか。東大においても本部が15%、学部が15%ずつ取ることがルール化されていることがおかしいのではないか。本部が何にお金を使っているのか全く不明ある。本来、間接経費は直接経費で措置できないものを補填するための役割であるのに、今の大学経営では目減りする運営費交付金を賄うためのもので何にでも使ってよいと言い張る方がいたがそれであれば、間接経費ではなくオーバーヘッドと言うべきではないか。
15.間接経費は何に使うのか積み上げが必要ではないか。例えば米国では、NIHは各大学と間接経費の比率について、それぞれ個別に交渉を重ねる。教授が見る契約書には、間接経費が何をカバーするのかが全て書いてある。ハーバードでは、直接経費と間接経費は1対1だが、全て何に使うか明らかにされている。
16.企業側としても大学には間接経費を有効活用してほしいと思っている。ただしその場合には、使途・目的の明確化や数的根拠が必要。
17.間接経費に関しては、使途の制限がないわけではなく、年度内に決算させる必要がある等寄附金とはその性質が違う。また間接経費の定義には、事業推進のための間接経費とインフラ維持のための間接経費等まだまだ不透明なので今後検討すべきである。
18.間接経費について、必要な経費の積み上げによる比率算定は支持する。現状、各種の研究プロジェクトの遂行のためには、動物実験設備維持、ヒト倫理委員会審査、電気代、場所代等の見えない部分の使途のために間接経費が、一定割合必要。どの程度の比率が必要かについて、定期的に大学として見直せる体制を構築したい。なお、以下はむしろ学内で取り組むべき事項と思うが、「共同研究内容の具体的記述が、よりコミットメントのある連携に繋がる」という観点から、そもそも間接経費のみならず、共同研究の詳述内容や直接経費根拠などについてもきちんと契約上書き込むフォーマットとしていくことも必要ではないか。

(2)民間企業から大学への寄附の取扱いの方向性
1.寄附金や基金の規模を拡大するためには、税制改正や制度改正を含めた規制改革が必要ではないか。
2.巨大な基金を持つ海外大学と優秀な人材の獲得や教育をグローバルに競争する国内大学の活動の財源に関して、自ら、資源の再配置を行い、また学内活動の事業化を行って資金調達をいろんな形で進めるべき、その上で、基金という形で寄附金をしっかり取り込んで進める。
3.日本の大学への個人寄附を増やすために税制改革は必須。税額控除は給与の所得税にしか適用されないため、給与以外の収入の税金には適用されない。つまり、ほとんど控除にならないので、多額の寄附をする気には一般的にならないのではないか。
4.トヨタの実績では、寄附金は共同研究の約10分の1であり、特に研究支援目的の寄附は少数。この部分を戦略的に増やしていくことが重要。
5.研究のための研究棟を建てたりとか、産業界が、企業の目利きによって、連携をして更に強みを伸ばしたいという特定の研究領域を支援する寄附金を増やした方がよいのではないか。
6.寄附優遇税制として所得控除から税額控除への変更が実現されれば、寄附のインセンティブは高まる。寄附金を税金の前払と整理し、法人税から控除する形にして欲しい。
7.アメリカのアカデミアを変革させてきたのは寄附。アカデミアはとかく基礎研究に寄りがちであり、これを軌道修正するのが民間資金の役割。寄附はphilanthropy(慈善事業)ではなく、企業が戦略的に大学を動かすために使うべきもの。
8.社会の中である方向性を作り出していくために民間の企業なり、あるいは団体なりが関わってアカデミアにある程度の方向性を付与していくという、そういう役割を持っている。こういう寄附の形がなかなか日本の中では理解されていない。だから産業界が、アカデミアの問題点を寄附という形で変えていくべき。
9.「寄附」のニュアンスとして欧米では、民間の資金がある一定の目的をもって公的な方向性に、いわば民間のそれぞれの立場から公的な方向性にある程度の意志を持っていると。意志をもって関わっていくお金という感じ。お付き合いの寄附やphilanthropy(慈善事業)ではない寄附の形、この寄附の形が、非常に公的な 役割を持っているアカデミアにとっては、今後、非常に大きな意味を持ってくる。
10.次の新しいサイエンスを生み出すための、それが結局ぐるっと回って社会全体が裕福になって、産業界もそれに対して利益が得られるというか、そういう方向性を出すための寄附というものが重要だ。それは、アメリカでは上手くいっているが我が国ではうまくいっていない。そのためらにどうしたらいいか。
11.寄附というものに企業の戦略あるいは寄附する側の戦略がその中にきちんと入っていくこと、そういう姿勢を求めること、そういう文化を創ることが重要ではないか。日本における寄附が、何に使われるかわからない、何の意味も効果も見込めないものとのイメージがついている。philanthropy(慈善事業)だと自己満足ではあるかもしれないけど、アカデミアに何の効果もないのではないか。
12.アカデミアに効果があるのは、ある程度バルクのまとまったお金を戦略性を持ってアカデミアにつぎ込むこと。それが寄附行為であり、例えば寄附講座であったりとか、共同研究と関わるような寄附であったりとか、米国では例えば患者団体が多くのお金を集めてきて、特定の医学研究に関して我々の患者団体に利益があるような形でお金を出す例もある。これはもう典型的な目的を持った寄附行為。研究援助行為、それは産業界の中で、今後、経団連や経済同友会がお金を出し合いながら基金を創って、アカデミアの中にそういうくさびを打ち込むような戦略性を寄附の形でやりませんかというのが提案。
13.寄附にはっきりとそういう戦略性が見えてくれば、それは長期的に、あるいは中長期的に企業側にも大きなメリットがあり産学連携も進んでいくようなプロセスに関わってくるだろうなというのが、寄附の新しい考え方として何か定着させるべきではないか。
14.産業界から見たときの戦略的な寄附というものの有効性を事例を挙げながら整理すべきではないか。例えば、一つの企業あるいは団体として見たときでも、オープン戦略としての寄附行為みたいな位置づけをして、それの成功事例があって、また、それで大きな流れを作ったみたいなものとか、何かそういう風に産業界に入っていくには、結構大上段から行かないと理解されないのではないか。(橋本)
15.企業でも、寄附はあげるもの、頼まれたときにするものという考えが強く、戦略的にやる場合は共同研究でと考える経営陣がいまだに多い。
16.アメリカスタンフォード大学の人工知能研究所があるビルはビル・ゲイツビルディングって明確にうたっていて、そこはしっかりサポートしているし、そこのコンピュータ・サイエンスの分野を応援することで、ひいては、マイクロソフトの利益にきっとなっている。アメリカの強みを更に伸ばすことになっている。そういう寄附を日本の企業もやらないといけない。
17.韓国では、高麗大学や他の大学にも、研究棟としてサムソンビルを建てている。韓国では当たり前にやられているようだ。
18.経団連を通じて、税改正の要望として寄附税制改革として損金算入から税額控除に変更と出している。損金扱いということであれば、例えば100お金を出したら、そのうちの30数%の法人税分が浮くと言う話で、税控除100%もし認められれば、100寄附をすれば100だけ法人税の支払の額が減ると言う話になる。
19.寄附によって進められた研究は公共性が高いので、寄附を行った企業が専有することは困難だが、オープン戦略の中で寄附(及びそれを原資とした研究成果)をどのように位置づけるかは重要。
20.寄附は戦略的に進めたとしても、企業が直接的な対価を専有できるわけではないので、説明としてはいわば(ふるさと納税ならぬ)「アカデミア納税」な言い方が良いかもしれない。
21.大学の実務では、やっぱりある程度目的を示して寄附をされるということはたくさんあるわけなので、実例的にはこういう目的を決めた形での指定基金に向けたような寄附ということは説明がつく。提言としては企業の中の戦略、寄附という言葉によって、もう戦略性が失われるような二律的な発想ではなくて、ちゃんとそういうところに真ん中に、戦略的だけど、対価を具体的に求めるわけではないというようなものについてしっかり位置づけるということは大事。
22.世界の大学と戦うためには基金の運用が重要だが、その原資は寄附であり、大学経営にとって寄附は極めて重要なもの。
23.大学の財務問題解決の鍵になるのは寄附。米国だと例えば大学発ベンチャーを興すと、その株、建物、土地つまり評価性資産に関する寄附というものの税制の控除が非常に手厚い。株もそうだしそういうキャピタルゲインそのものが課税の対象にならないだけでなく、その株や建物なんかの市場価格の全体が所得から控除されるという二重で控除される。
24.米国では、特に大学や美術館のような非常に公的な需要の高い、しかも、公的資金だけでなかなか賄うことができないようなものに関して税的にサポートしている。
25.このような寄附税制が、日本の風土に合わないというのは疑問。システムとして優遇税制のシステムが出来れば、日本のお金持ちも相当寄附するはず。システムの問題である。
26.大学発ベンチャーのように非常に成長性が高く、資産価値が大きくなるものに関して言えば、そこから出てきたものの税額控除に関しては相当優遇するというような考え方もあっていいのではないか。そういうことを財務当局にお願いしていくべきではないか。
27.寄附金について、特定領域向けの寄附金の存在を明記し、税額控除化を是非提言すべき。


7.おわりに
1.次提言をとりまとめた後に何を検討していくのか課題を明記すべき。また、「はじめに」のところで、大学はステークホルダーとの関係がかつてないほど重要になってきている点をきちんと書き込むべき。さらに、「現行制度の中でできること」/「制度改正すればできること」を明らかにすべき。
2.諸外国の事例も踏まえつつ大学の研究経営改革をさらに進めるために何が必要か。
3.オープン&クローズ戦略を踏まえた大学の知財マネジメント改革に向けて何が必要か。
4.共同研究における間接経費の関するモデル事例の検討。
5.研究経営マネジメント人材育成の在り方。
6.寄附税制の在り方に関する詳細の検討。

お問合せ先

科学技術・学術政策局 業連携・地域支援課 大学技術移転推進室

(科学技術・学術政策局 業連携・地域支援課 大学技術移転推進室)

-- 登録:平成27年09月 --