産業連携・地域支援部会 大学等における産学官連携リスクマネジメント検討委員会(第3回) 議事録

1.日時

平成27年6月19日(金曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省 東館 15F特別会議室

3.議題

  1. 大学等における産学官連携リスクマネジメントに関する検討の方向性について
  2. その他

4.出席者

委員

渡部主査、馬場主査代理、足立委員、飯田委員、伊藤伸委員、伊藤正実委員、江戸川委員、新谷委員、田仲委員、西尾委員、野口委員、林委員、三尾委員、峯木委員

文部科学省

岸本科学技術・学術政策局次長、伊藤政策評価審議官、浅田総務課長、村田科学技術・学術総括官、坂本産業連携・地域支援課長、山下大学技術移転推進室長、松本国際企画室長、小河大学技術移転推進室専門官

オブザーバー

米山産業技術総合研究所総務本部法務室長

5.議事録

【渡部主査】    それでは、定刻でございますので、ただいまから大学等における産学官連携リスクマネジメント検討委員会の第3回を開催させていただきます。
初めに、事務局から配付資料の確認をさせていただきたいと存じます。

【小河専門官】    それでは事務局から、配付資料の確認をさせていただきます。クリップ留めの資料の方ですが、まず資料1として、産総研様からのプレゼン資料、産総研における利益相反マネジメントについての資料です。資料2-1として、報告書の案、資料2-2として、1枚紙の概要の案、資料3として、今後のスケジュールについて。参考資料として幾つか付けておりまして、参考資料1として、リスクマネジメントに関する各委員の皆様からの意見整理、参考資料2として、大学における取組の実情の調査結果について、参考資料3として、峯木委員御提供の資料、参考資料4として、飯田委員御提供の資料、参考資料5として、伊藤正実委員よりの御提供資料、また参考資料6も、同様に伊藤正実委員からの御提供資料、参考資料7として、田仲委員からの御提供資料。以上、もし不備がございましたら、事務局の方に御連絡いただければと思います。
  以上です。

【渡部主査】    よろしいでしょうか。
  それでは、議題に入らせていただきます。大学等における産学官連携マネジメントに関する検討の方向性についてということで、先日の第2回委員会では、利益相反マネジメントを中心に、いろいろ御意見を頂いたかと存じます。本日は、最初に産総研の総務部の業務推進支援部法務室の米山室長から利益相反マネジメントに関する話題提供を頂いて、前回、平井委員からのプレゼンの中でも御紹介ございました、その取組事例について御説明を頂きたいと存じます。その後、事務局からの説明を挟んで、第1次取りまとめ(案)についての御議論を頂きたいと存じます。
  それでは、産総研、産業技術総合研究所の米山室長から御発表をお願いします。

【米山室長】    失礼します。産業技術総合研究所総務本部法務室の米山でございます。本日はこのような私どものシステムを紹介させていただく機会を得まして、大変有り難く思っております。よろしくお願いします。では、失礼して着席させていただきます。
  委員会の第2回の議事録を拝見させていただきましたが、前回の委員会では、2,000人又は3,000人という規模の研究者を抱える独法が、産学官連携活動を活発に行っている者をヒアリングするに当たって、どのように活発に行っている者を選ぶのかが議題であるというふうにされていました。私ども産総研では、約3,000人の役職員に対して定期的にマネジメントを行っておりまして、年間約8名前後に対して詳細なヒアリングを行うというマネジメントを、この10年ほど継続しております。この定期的なマネジメントについては、全役職員に申告を課しておりまして、その申告率は100%を続けております。本日は、具体的にこれをどのように実現をしているか、御紹介させていただきたいと思います。
  1ページ目を御覧ください。ここには、これまで産総研の利益相反マネジメントをどのように取り組んできたかを書いております。産総研は平成13年の4月に発足をいたしまして、研究を実施するだけでなく、研究と開発等の成果を技術移転することをミッションとして、産学官連携活動等を推進してまいりました。これを行うに当たりまして、私どもの産総研では、発足後、比較的早い段階から利益相反の問題があることを認識しまして、平成14年には利益相反マネジメントポリシーを、平成17年には実施規程を制定しております。
  次のページを御覧ください。この2ページ目の図は、現在の産総研における利益相反マネジメントの体制を示しております。まず平成14年に制定いたしましたポリシー、幾度か改正を致しましたが、この下に実施規程を定め、その実施規程の中で、マネジメントを行う組織として利益相反マネジメント委員会を置いております。この利益相反マネジメント委員会の委員長は、私どもの利益相反を担当する担当理事になっております。この委員会には、外部有識者の方々から成るアドバイザリーボードが専門的見地から助言を行うほか、カウンセラーを置いておりまして、カウンセラーは役職員からの利益相反に関する問題に対してアドバイスを行う構成となっております。
  3ページ目を御覧ください。それでは産総研のマネジメントの手法について、具体的に御説明したいと思います。産総研では産学官連携活動の進展に伴いまして、三つのフェーズに分けてマネジメントを行っております。事前相談、事前申告、定期自己申告の三つのフェーズです。
  事前相談につきましては、産学官連携活動等、これは物買い、調達も含んでいるんですが、産学官連携活動等を行おうとする場合に、役職員が利益相反になるのではないかと懸念をしたときに相談ができる制度です。ここで利益相反があるのではないかと申し上げておりますのは、産学官連携活動については、それをすること自体で既にもう利益相反の状態が生じると御報告のまとめの中にも書いてあるようですが、私どもが今回このプレゼンで使わせていただく場合には、利益相反の行き過ぎの可能性というふうに、読み替えて解釈していただければと思います。
  また、この事前相談ではなく、実際に産学官連携活動を行う際には、その開始に当たって、いろいろな手続、申請をするわけですが、その際には、産学官連携活動等先に個人的利益があるかないかの申告も行わせるようにしています。これを事前申告と申しております。そのほかに、これから詳しく御説明したいと思っております、年に2回の定期自己申告がございます。
  次のページに進んでいただけますでしょうか。私どもの定期自己申告マネジメントは、年に2回、全職員に対して行っております。全職員と申しますのは、役員、常勤の職員、任期付きの職員、そして契約職員の一部、これは国の用語で申しますと非常勤職員ということになるのかと思いますが、この契約職員の中にも、研究部門の責任者、長になるような者がおりまして、決裁権限を有しておりますので、それらの者まで含めまして、定期自己申告の対象者としております。
  定期自己申告は、ここに図に描いておりますような過程で進んでいきまして、まず職員一人一人から、システムを通じて自らの利益相反状態について申告を受けます。その状態のスクリーニングをしまして、利益相反の疑いがある場合、可能性がある場合について、その者のヒアリングを実施いたします。そのヒアリングの結果については、審査・判定の段階で利益相反マネジメント委員会に報告され、利益相反の状態の是正の必要があるかないかを決定いたします。私どもの定期自己申告の基本的なルールにつきましては、この黄色の囲みの中に書いてございますので、御興味がおありでしたらお読みになってください。
  次のページに参ります。こちらには、私どもが使っております定期自己申告システムの画面そのものの写しを載せております。このシステムは、私どもや先ほど申し上げました外部の有識者の方々、アドバイザリーボードの御助言と御指導に基づき、それまで紙媒体で行っていた申告を、システムに乗せるように開発をしたものです。共同開発になっておりまして、初期の開発費用は約300万円でした。開発するに当たって心掛けたものは、シンプルさです。負担感が大きければ申告制度は浸透しないだろうというふうに考えておりまして、産学官連携活動等を実際に行っていない者も多いこともありますので、簡単なクリックだけで申告を行えるようにしようというふうな考えの下に開発をしております。
  このページにありますQ1からQ4までの画面、ここは、今、実際にこのQ1の画面を出してもらっていますが、このようなものになっておりまして、いわゆるスクリーニングの設問を書いております。ここでイエス、ノーを簡単にクリックするだけで、この申告を終えられるようになっております。実際に産学官連携活動等を行っていない者につきましては、最低6回のクリックで全ての申告を終えることができます。一方、このQ1からQ4までのスクリーニング部分で条件として拾い上げたものについては、Q5の画面、この詳細情報画面を表示して、自らの個人的利益の相手先、あるいは個人的利益の内容を入力してもらいます。入力の負担軽減、シンプルさと先ほど申し上げましたが、その観点では、ここにはちょっと今、デモ画面ですので載せていませんが、前回申告してもらった内容をあらかじめセットしておきまして、修正だけ、変わった部分だけ、変更した部分だけを上書き修正してもらえればよいというようなシステムにしております。
  次のページを御覧ください。こちらのページには、スクリーニングをどのように選定しているかという条件を載せております。産総研では、産学官連携活動等の相手先と役職員の兼業、個人が保有しているロイヤルティーから来る収入、株式の保有等、その重なりに注目をしております。この楕円の図で示しておりますマル1からマル7のいずれかの類型に該当する者が、このスクリーニングによって絞り込まれるように、Q1からQ4の設問については工夫をしております。逆に申し上げれば、先ほど直前に見ていただきましたQ5の詳細画面、入力画面を表示される者は、このマル1からマル7の類型のいずれかのパターンで個人的利益を有している者というふうになります。
  次のページを御覧ください。7ページ目になります。私どものシステム化以前とシステム化後の変化を整理しております。システム化以前は、役職員全員を対象者として利益相反マネジメントを行っていたのですが、任意の形でした。また、用紙をイントラのシステムからダウンロードしてもらうという仕組みでしたので、全員の者が漏れなく申告に参加したかどうかということを把握することができませんでした。しかし、システム化によって申告の有無を簡易に確認することができるようになりましたので、漏れなく全員を把握するということが可能になりました。またシステムですので、先ほど見ていただきました画面の中で、回答の整合性チェックをしております。そうした意味の中では、出てきます回答については、全て整合性のある内容で申告をされるというものになってまいりました。
  次のページを御覧ください。私どものシステム化によるメリットをまとめさせていただきました。システム化につきましては、対象者、いわゆる申告者ですが、負担が軽減をされました。容易に、かつ短時間に申告ができ、また、マネジメントに必要な情報を確実に提供してくれるようになりました。また、先ほども申し上げましたように、システムですので回答間のエラーチェックをしております。そこで整合性のある回答を導出し、また、システムですのでデータは電子化されますので、集計の効率化にもつながりました。結果として私ども事務局の方では、年間で約1名分の業務量の軽減につながったほか、システム化以前に行っていた申告用紙の郵送費用、あるいは申告用紙の保管といった雑費を抑制することができました。
  本日は簡単に御説明させていただきましたが、もしこのシステムに御興味がおありでしたら、できる限りの対応をさせていただきたいと思っております。本日はつたない説明でしたが、お聞きいただきましてありがとうございました。

【渡部主査】    ありがとうございました。後ほどの議論の参考にしていただければと思います。もしこの場で何か御質問等がございましたら、お願いしますが。
  関心がある場合、御連絡すると、このシステムはただで使えるのですか。

【米山室長】    その辺りは検討課題というふうに考えております。

【渡部主査】    ありがとうございます。
  続きまして、第1次取りまとめ(案)について、資料2の大学等における産学官連携活動の推進に伴うリスクマネジメントの在り方、検討の方向性を基に、議論を進めてまいりたいと存じます。
  最初に、事務局から資料の説明をお願いいたします。

【小河専門官】    それでは資料2-1を御覧いただければと思います。一応30分ほど頂きまして、こちらの内容のポイントを中心に確認させていただければと思います。
  まずタイトルですが、「大学等における産学官連携活動の推進に伴うリスクマネジメントの在り方に関する検討の方向性について」と現時点ではさせていただいております。めくっていただいて目次ですが、前回の構成から大きく変わっているところとしては、まず「はじめに」というところで1ポツのところの記載を充実させていただきました。また4ポツのところで、定着に向けてというところで記載を足しているというところが大きいところです。こちらについて、順次説明させていただければと思います。
  まず「はじめに」の3ページ目のところでございますが、こちらで報告書の位置付けなどをまとめさせていただいております。まず1段落目のところで、リスクマネジメントの取組の必要性という意味で、大学等が対処すべき多様なリスクが生じつつあるというところ。大学が社会とのつながりを求めていく中で、大学等のインテグリティを維持・確立し、研究者の名誉・信頼を組織的に守ることは、産学官連携活動を加速するために必要不可欠なことであるということを確認しております。
  その上で現在の課題も幾つかあるというところで、大学の産学官連携本部、知的財産本部の整備の進展とともに、ある程度の整備は進んできているものの、課題も多く存在していきているという状況です。
  3段落目で本報告書の目的を書かせていただいておりますが、産学官連携リスクマネジメントの取組に関して、大学が目指すべき方向性や解決すべき課題を整理することで、各大学が産学官連携リスクマネジメントの具体的な対応方策を検討すること、こういったことを加速するということを目的としているという位置付けにさせていただいています。
  その上で、4段落目で大学への期待として、大学の規模にかかわらず、社会との連携を求めるいずれの大学も取組が必要となるということです。今後、産学官連携活動を推進していく各大学が、リスクマネジメントを大学経営上の重要な要素と位置付けて積極的に取り組み、各大学の特徴に沿った多様なマネジメント体制・システムが構築されることを通じて、産学官連携活動が活性化していくことが期待されるといったことを初めに書かせていただいております。
  続きまして1ポツの1-1のところです。こちらでは、これまでの取組、またその背景について確認させていただいております。一つ目のマルですが、我が国においては、1990年代、大学が組織として本格的に社会との関係性構築を試みるようになり、また、それが進展して、組織として研究成果の技術移転を進めるなど、教育研究成果を社会へ提供するような動きがより一層加速してきているというところです。その一方で、利益相反に関する事象や、それを背景とした研究不正の懸念なども生じるようになってきております。この動きは米国においても同様の事情が発生してきており、このことについては、前回の上山委員からのプレゼンで確認しているところです。
  めくっていただいて4ページ目の一番上のマルのところですが、そういった中で利益を追求する企業との連携というのは、客観的で公平・公正な教育研究活動を担う大学にとって多面的な意味を包含するものです。イノベーション創出など、そういった効果がある側面がある一方で、リスク要素への対応という側面も無視することができないところです。産学官連携に伴い生じるリスク対応を誤ると、その組織だけではなくて、研究者にとっても社会からの信頼性を喪失するというような大きな損失があり、更に社会全体が、研究活動、産学官連携活動の減退につながる可能性もあるというところです。
  次のマルのところですが、そういった中で、体制面の整備、各種ポリシーの策定、そういったところは進めてきたところではありますが、大学において更に産学官連携活動が多様な側面を持つ中で、かつてない多様なリスクが生じつつあり、適切なマネジメントの必要性も高まっているところです。環境変化に伴って生じる多様なリスクへの対応の在り方は更に検討の余地があるところで、リスクマネジメントをより一層高度化していくことが課題となっていると言える状況です。
  次のマルの真ん中辺りからですが、企業との連携自体が大学のインテグリティを発展させるための社会全体との関わりの一要素として捉え、社会が大学に期待するイノベーションの創出や経済の再生、地域再生・活性化への貢献の実現に向けて、大学の産学官連携活動の取組を加速化していくことが重要であるというところを確認させていただいております。
  めくっていただいて5ページ目のところですが、1-2として、リスクマネジメントに取り組む必要性を確認させていただいております。
  一つ目のマルで、大学において多様なリスクが生じつつあることから、適切なマネジメントの必要性も高まっているところです。その下の図ですが、こちらはリスクマネジメントに関する全体像を捉えるイメージ図として、大学が取り組むべきリスク課題を少し見える化したというところです。こういったところについて総合的な要素を捉えて、大学組織として適切に取り組んでいくことが重要ではないかというところです。こちら、全てを網羅的に体系的に整理したものではないということは留意させていただいた上で整理しています。
  まず真ん中に、社会的な信頼性に係る責任として、利益相反など重要な項目があるかと思っています。また、ほかのリスクマネジメント要素についても、社会的な信頼というところは大きく関わってくるところではございますが、例えば一番上に、財産権保護・尊重の責任として、流出に関して、また一番下のところに書かせていただいている、国際社会安全性への責任として安全保障貿易管理、こういった多様な観点がある中で、最重要課題について優先的に取り組んでいくことが重要ではないかというふうに考えています。
  めくっていただいて6ページ目の一つ目のマルのところで各個別のマネジメント要素ではなく、インテグリティを維持・確立し、産学官連携を推進していくための総合的な要素と捉えて、大学組織全体として適切に取り組んでいくことが重要であると確認させていただいております。
  次のマルですが、産学官連携リスクマネジメントを適切に行うことは、これらのリスクが現実の損害に結び付くことを最小化するとともに、大学組織、また研究者が産学官連携活動を加速しやすい環境を醸成することにつながるという意義を持つことであるというところを確認させていただいております。
  次のマルでは、リスク要素に適切に対応しなかった場合について、まず一つ目として、大学のインテグリティの喪失があるというところ、また、研究者のインテグリティへの弊害があるというところ、また、それによって産学官連携の促進という観点に影響が出るというところを確認しております。
  そういった意味で、次のマルで、適切に取り組むことが必要不可欠というところを確認しております。
  最後のマルのところで、また予期せぬ多様な事象が生じてくる新たな要因、様々な環境が生じる中で適切に体制を構築しておくことで、種々のリスクに対して対応できるような環境を整えていくことは、産学官連携活動を更に進めていく上で重要ではないかというところを確認しております。
  次に7ページ目のところ、検討全体の方向性ということで、大学等における取組の方向性を整理させていただいております。
  まず一つ目のマルですが、実効的かつ効率的なマネジメントシステムを構築することが重要であると確認しております。
  次のマルで、その上で、大学の特性上考慮すべき事項、特に教育研究の自由や学生の教育に配慮するとともに、取り巻く環境や状況を考慮して、産学官連携リスクマネジメントの在り方を検討することが重要であるというところです。
  三つ目のマルでは、その下の図とも関係しますが、優先的に様々なリスクマネジメント要素を十分に検討していくということを大学で順次進めるべきであるというところを確認しております。
  下の図では、マル1からマル5の要素として、マネジメントシステム、また学長のリーダーシップの下でのマネジメント強化、研究者への普及啓発、リスクマネジメント人材の確保・育成、事例把握、情報共有、こういった観点から環境を構築していくことが重要ではないかというところは、以前からの整理、2回目の整理と同様のところです。また、その上で大学のビジョンというところを明確に持って、そういったマネジメントシステムを構築し、取り組んでいくことが重要ではないかというところに整理しております。
  具体的なところは、8ページ目以降に記載させていただいております。
  2回目と少し変えさせていただいて、コメントを追記しているところを中心に説明させていただきますが、まずマル1の一番後の注釈のところ、一番下のところを確認させていただきますが、まず日常のリスクマネジメント活動で生じた事案の事例を収集し、それを検証して研修や学内ポリシーの規程の改訂などに反映するなど、リスクマネジメント活動、学内でのPDCAサイクル、そういったところの仕組みを確立することによってマネジメントを定着していくことが重要ではないかという点を確認しています。
  またマル2の一つ目のポツの最後のところですが、リスクマネジメントに対する学内資源配分、人材や予算配分、そういったところが大学経営上のリスクマネジメント要素であるということは、大学経営層が十分理解する必要があるというところを確認させていただいております。
  そういった、マル1からマル5の要素を、大学で取り組むところの全体の方向性として確認しております。
  9ページ目の本委員会での検討というところで、本委員会においての位置付けを整理しています。本委員会においては、特に喫緊の課題として検討が望まれる利益相反マネジメント、技術流出防止マネジメントについて、まず今後の検討課題を整理するというところです。これを踏まえて、産学官連携リスクマネジメントモデル事業、こういったものを通じて、他の機関にとってモデルとなるような取組体制のシステムを構築するとともに、そのような模範となるような取組を全国に波及させることを目指すということも、一つの大きな目的としてあるところを確認しています。
  続きまして、めくっていただいて10ページ目のところに、利益相反マネジメントについて整理しております。
  2-1のところですが、全体の流れは2回目の委員会のところと大きく変わっておりません。まず各種取組というところで、種々の報告書、ガイドライン、各医学学会や学術会議、また病院長会議などの取組を整理させていただいております。
  11ページ目のところで環境変化を整理しております。大きな点として、国立大学が法人化して、産学官連携活動も活発化・多様化しているという状況。また2ポツ目で、クロスアポイントメント制度が導入されるなど、就業形態の多様化も進んでいるところです。また三つ目のポツで、エクイティーを保有するケースの増加というところもあろうかと思います。
  その上で、大学等における取組実態というところですが、幾つかの大学の方にヒアリング調査をさせていただいて、このような現状を把握しているというところです。
  まず、体制は一定程度整備と書いておりますが、中堅規模以上の大学は、ある程度何かしらの体制を持っているようなところが確認されたというところです。
  次のポツでは、その利益相反状態を把握する仕組みを大規模の大学では整備できているところもありますが、最後のところの文章ですが、利益相反状態が発生するたびに把握する仕組みができていないケースも挙げられたというところです。
  また、マネジメントの負担として、そういったものが大きくなっているという課題も挙げられています。
  四つ目のポツでは、硬直的な運用によって、事務側で産学官連携活動を過剰に抑制している可能性もあるとのコメントとしてありました。そういったところにも対処の必要があるのではないかというところです。
  組織としての利益相反については、まだ十分に行われていないところがあるというところです。
  11ページ目の下のマルからですが、我が国の利益相反マネジメントにおいては、大学ごとの運営基本方針や重点研究分野への取組姿勢に応じ、目的に相違がある形でのルールが整備進展していない状況ではないかという指摘がなされているところです。
  そういった現状を踏まえて、大学の取組における現状の課題として、一つ目のマルですが、マネジメントが形骸化している可能性があるのではないか、また次のところで、効率的なマネジメントを実行することに課題があるのではないかということ、また、組織としての利益相反については、取組の進展に課題があるのではないかというところを確認しております。
  その上で、2-2というところで、利益相反マネジメントに関する検討の方向性を整理しています。
  (1)では、各大学における取組の課題を整理しております。全体の基本的な方向性としては、一つ目の個人としての利益相反マネジメントについては、実効的かつ効率的なマネジメントを行うための仕組みを検討すべきである。特に情報共有を行うなど、マネジメントノウハウの共有の在り方を検討することが重要ではないかというところです。
  二つ目の、組織としての利益相反マネジメントについては、学内での取組方針を定めることが重要ではないかというところです。特に大学経営層の理解が必要不可欠ですので、そのような方々が適切に理解するような方策などを検討することが必要ではないかというところを、全体の基本方向性としてさせていただいております。
  それ以降は具体的なところを整理していますが、簡単に確認させていただくと、12ページ目の1個目のマルで、利益相反マネジメントの必要性に関する適切な理解がないところもございますので、利益相反に関する適切な理解を促すということが重要ではないかというところを確認しています。
  二つ目のマルで、大学の明確なビジョンに沿って、それを実現するための利益相反ポリシーを作成すべきであるというところを確認しています。
  次のマルのところでは、各大学の体制や状況に合わせた実効的なリスクマネジメントのモデル、それを検討することが重要ですというところを確認しています。真ん中辺りの括弧書きのところで、事案が発生してから事後的に対応を行うよりも、可能な限り弊害発生の疑義に事前に対応措置をとることが有効ですので、そういった体制を構築することが重要ではないかというところを書かせていただいております。
  次のマルのところで、利益相反マネジメント状況に関する社会への説明責任を果たすための方策を検討すべきではないかというところを整理しています。具体的には、種々の情報を対外的に公表するなどの取組があろうかというところです。「また、」という最後の文章ですが、利益相反に起因した弊害の発生の疑いがあった場合に、大学が組織的に適切な対応を行って、説明責任を果たせるような体制をあらかじめ構築していくことも重要ではないかというところです。
  次のマルですが、そういったマネジメントを行う上で、負担を増大することなく効率的に行うためのスキームを検討する必要があるというところです。
  また、組織としての利益相反については、実効的に運用するためのモデルを十分に検討すべきであるというところを確認しています。
  次の項目の、学長のリーダーシップでのマネジメント強化の必要性というところですが、まず学長等がリーダーシップを発揮してマネジメントを主導する必要があるというところです。具体的なアクションとして考えられるところとして、括弧書きで、例えば産学官連携活動に関する大学のビジョンを学内に発信するなど、産学官連携活動の位置付けを明確化するとともに、利益相反マネジメントの重要性を学内に周知していくといった行動が考えられるというところです。
  めくっていただいて14ページ目のところですが、研究者への普及啓発の必要性。研究者自身が、そのマネジメントの意義というところを適切に理解し、積極的・協調的な取組を促進することも非常に重要であるというところを確認しております。
  次に、リスクマネジメント人材の確保・育成の必要性というところです。大きく二つのリスクマネジメント人材を分類させていただいております。
  一つ目が、弁護士等の学外の有識者が社会常識を持って利益相反に取り組める者である必要があるというところや、学内の日常的な相談などに対応するような、利益相反アドバイザーと言われる者などそういった大きな2種類の人材があろうかというところを確認しています。そういった方々が適切に取り組めるように、まず求められるスキルを明確にし、人材育成を進める必要があろうかというところです。
  注釈の8というところで下に書きましたが、利益相反マネジメントを行う者が産学官連携活動などに精通していないと、利益相反状態を維持した状態で産学官連携活動を推進することの必要性を十分に理解できないというところもございますので、そういった理解をする者がマネジメントを行うことの必要性もあるのではないかというところを言及しております。
  次に事例把握、情報共有の必要性というところですが、想定される多様な事例を収集し、ケーススタディーなどを行うことによって検討を進めるということが重要ではないかというところを確認しております。
  15ページ目の方に移りまして、最初のマルですが、事例・ケーススタディーを各機関で共有することが重要ではないかというところを確認しております。その際に多様なアプローチを検討することで、各大学のビジョンに沿ったアプローチを選択し得るよう、情報整理しておくことが重要ではないかというところをコメントしております。
  また次のところでは、いろいろな環境変化の中で、クロスアポイントメント制度というところは重要な位置付けになってきますので、そういった新たな取組に対してどう取り組んでいくかというところは、十分整理する必要があるのではないかというところです。
  また、組織としての利益相反についても、適切に取り組む必要な情報を検討すべきであるというところを確認しております。
  そういった大学の取組課題を整理させていただきまして、(2)では、本委員会における更なる検討事項を確認しています。
  一つ目では、マネジメントの在り方について更に検討を行う必要があるというところです。必要に応じてガイドライン策定、事例集の作成を行うなどがあるかというところを確認しています。二つ目では、機微な情報については情報の取扱いに十分配慮することが必要というところを確認しています。三つ目では、社会に対して十分な理解を促すというところの重要性、また情報共有の場を作ることの重要性、こういったことも鑑みて検討を進めていくということが重要ではないかというところを確認しています。
  めくっていただいて16ページ目では、技術流出防止マネジメントについて整理しています。
  最初に種々の情報があるというところを確認していますが、マル1からマル3というところで、秘密管理をする必要があるかないか、また営業秘密として管理する必要があるかといった観点から、その秘密管理性のレベルということ、種々のものがあるというところを確認しています。
  その上で適切に管理するというところが重要ですというところを書いていますが、16ページ目の真ん中辺りの四角囲いの下のところで、情報管理の観点では様々な側面があります。個人情報保護の観点、営業秘密管理の観点、秘密保持契約を守るという観点、また安全保障貿易の観点、こういった多様な観点が求められているというところやインサイダー取引の観点からも、情報管理のマネジメントというところに求められるところもあるというところをコメントしています。
  そういった中で、3-1、3-2では、具体的な技術流出防止マネジメントの在り方について、検討を進めていければというところです。
  めくっていただいて17ページの(1)ですが、まず営業秘密に関する経緯と課題を整理しています。各種ガイドライン、報告書などがまとめられている中で、その次の環境変化として、オープン・アンド・クローズ戦略の進展、またノウハウ管理の重要性が増してきている状況、その中で営業秘密管理ということの重要性を確認しております。
  めくっていただいて18ページ目のところですが、大学における取組実態というところを四角囲いで書いています。
  個人管理が中心と書かせていただいておりますが、組織的な管理は困難性を伴い、教員との間での秘密保持契約を結ぶなどを行った上で、研究者レベルで管理をしているという大学が多いという実態です。
  また3ポツ目ですが、体制面での困難性というところで、マネジメント負担もあることから、なかなか相談窓口を設けるなどは難しいというところの声も多くありました。
  また普及啓発等というところで、研究者の理解促進に問題を抱えているというような大学も確認されました。
  また学生の位置付けをどうするかというところは、試行錯誤しながら対策をしているケースが確認されましたというところです。
  安全保障貿易管理に関してですが、同様な流れで整理させていただいております。
  めくっていただいて19ページ目のところに大学の取組実態を整理しております。まず学内の理解というところで、研究者の適切な理解に課題があるというような声も聞かれております。
  一番下の体制面ですが、中小規模の大学においては、試行錯誤しながら体制を構築しているといったような状況があるというところです。
  そういった実情を踏まえて、20ページ目以降で基本的な方向性などを確認しております。
  営業秘密管理に関する各大学における取組課題、基本的な方向性として、一つ目のマルですが、技術情報管理は、大学が組織として技術情報管理の方針を示した上で、各研究者自身が主体的に取り組むことが重要ではないかというところです。また、各研究者が管理を実践できるといった環境を整備していくことが必要ですというところを確認しています。
  二つ目のマルでは、秘密管理をすべき対象の明確化が必要ではないかというところを確認しています。
  三つ目のところでは、大学特有の事情については十分配慮した上で取組方針を検討することが重要ですというところを確認しています。
  それ以降では具体的なところをコメントしておりますが、一つ目として、基本的な方向性の一つ目と同様ではございますが、具体的な管理手法について、今後十分に検討していく必要があるというところです。その一つ目のマルの一番後に書きましたが、企業側での管理手法について、大学で導入を可能な部分、また難しい部分ということは十分に検討することが重要ではないかというところをコメントしております。
  二つ目のマルでは、秘密保持契約の在り方など、秘密管理の範囲を明確化するというところを言及しております。
  三つ目のマルでは、管理コスト、管理負担などを考慮した上で、状況に合わせて管理を適切に行えるようにしておくことの重要性を確認しております。
  めくっていただいて21ページ目、一つ目のマルは、学生に教育を受ける権利を有していることを前提として、秘密管理を行うための管理体制・システムの在り方、ベストな手法を検討すべきであるというところを言及しております。
  学長のリーダーシップの下でのマネジメント強化の必要性のところでは、最後に書きましたが、必要に応じてコストや予算措置を講ずるなど、適切な環境整備を行うことの必要性を確認しております。
  研究者への普及啓発の必要性というところでは、秘密管理が求められる状況で適切に取り組む必要があるということの理解促進というところの重要性を言及しております。
  また、リスクマネジメント人材の確保・育成の必要性というところでは、その体制についてどのような在り方があるかを検討し、その必要性も含めて検討することが重要であるというところを書いております。
  事例把握、情報共有の必要性のところでは、具体的な管理手法について事例を蓄積し、情報の共有を図ることの必要性を言及しております。
  めくっていただいて22ページ目のところでは、例えば複数企業と共同研究を行うなど、情報のコンタミネーションの排除や、各企業との信頼確保、その在り方なども含めて、マネジメントの在り方を検討することの必要性を言及させていただいております。
  (2)以降では、安全保障貿易管理の観点について、大学の取組課題を整理しております。
  基本的な方向性として、大学経営層、研究者が法律事項であるということを適切に認識し、取り組むことの意義と必要性を十分認識することが重要であるということを確認しております。
  次のマルでは、リスクマネジメント人材の配置や全学的なマネジメント体制について、各大学の規模・特性に合った在り方を検討することの必要性を言及しております。
  その具体的なところですが、簡単に確認させていただくと、一つ目のマルのところでは、安全保障貿易管理を専門的に行う者、また研究マネジメントを行う一環でそういったところに取り組む者、そういった2段階のレベルがあろうかというところを確認させていただいております。
  研究マネジメントや産学官連携の担当部署などのほか、学内部局に安全保障貿易管理の担当教員を配置することやそういった必要性も含めて、学内での体制の在り方ということを検討すべきであるというようなところです。
  最後のところですが、特に中小規模の大学が取り組む体制・システムの在り方については、十分検討すべきであるというところです。
  めくっていただいて、研究者への普及啓発の必要性というところで、真ん中辺りの文章ですが、研究者の理解促進に向けた普及啓発を行う必要があるというところです。特に安全保障貿易管理のマネジメントは、一律に中止・禁止するというような性質ではないということは十分理解を促した上で、適切な理解をしてもらうことが重要ではないかというところを確認しております。
  また、それを踏まえて(3)のところでは、本委員会における更なる検討事項を確認しております。
  こういった取組課題に対して大学で取り組んでいただいた上で、どういったモデルがあり得るかといったところを更に検討を進めていくことが必要ではないかというところです。そういった検討を行っていくことで、マネジメントの取組を行いやすい環境整備の構築について検討していければというところを確認しております。
  次に4ポツのところ、24ページ目ですが、大学における取組の加速という意味で、一つ目のマル、学長のリーダーシップを発揮し取り組むことが重要であるというところです。そのために、各大学の理事会などの場で議論をしていただいて、産学官連携リスクマネジメントの在り方などを検討していただくことが望まれるというところです。本報告書で示した取組課題を参考にしながら、大学のビジョンや特性に即した具体的な取組方策を検討することが望まれるというところです。
  二つ目のマルでは、リスクマネジメントを管理取締り的な画一的なマネジメントではなくて、適切な理解をして、自主的な取組が加速されるというところが期待されるというところを確認しております。
  4-2の(1)では、先ほど言及したようなところを、今後検討していくということを確認しております。
  (2)のところでは、その他のリスク要因についても、今後検討課題があるというところです。マル1として国際産学官連携を促進する上でのリスクマネジメント、マル2として発明報奨に潜むリスクマネジメント、こういったところについて、今後検討課題があるというところです。
  全体の検討の方向性というところは以上ですが、参考1から以降は、参考資料として幾つか整理をしているところです。こちらは以前、委員会でも御議論いただいた内容ですが、少し修正をした部分を中心に、簡単にですが確認させていただくと、まず利益相反の概念について27ページで言及しています。ここでの趣旨としては、利益相反に対するネガティブなイメージを少し変えるという意味合いもあり、言及できればというところです。
  一つ目のマルですが、利益相反状態となっていること自体、それは必ずしもそれ自体が望ましくないことではなく、産学官連携活動を進めていく中で日常的に生じることであるというところです。また、その上で、適正に管理し得ることでもあるので、そうした方が大学の本来の使命をよりよく達成できる場合も多くあるというところを確認しております。
  また、28ページ目以降のところで少し概念図を出しておりますが、利害の衝突として、連携先から得る利害、また右側では、社会が大学に対して求めるようなそういった利害、そういったところの対立があるというところを整理しています。また、臨床研究などにおいては、一番下にあるような患者・被験者の利害、そういったところも影響してくるというような概念整理をしております。
  めくっていただいて30ページ目のところで、以前、研究不正と利益相反、そういった関係を余り混同しないように整理するといいのではないかというような言及の下で、少し整理しています。
  30ページ目の下のマルですが、利益相反状態は研究不正を引き起こす要因の一つであると考えられているが、研究不正は利益相反状態から発生する可能性がある弊害の一つにすぎないというところや、利益相反状態であっても直ちに不正につながるわけではなく、仮に不正が生じたとしても、必ずしも利益相反が関係するとは限らず、種々の要因が複合的に関係するものであるというところを確認しております。
  30ページ目の脚注14のところで、不正に関して、動機、機会、正当化といった三つの要素が全てそろったときに生じるということが理論としてあるというところを言及しております。
  31ページ目のところで、利益相反状態から発生し得る弊害を幾つか例示させていただきましたが、今コメントしましたように、利益相反から発生するものは不正だけではないというところを確認するために、ここを少し整理しております。
  また、32ページ目のところに、利益相反への対応方法について整理しております。以前の2回目の委員会で、公開について少し御議論があったと思いますが、そこを少し整理する意味でも、こう言及をしております。
  (4)、32ページ目の公開、管理、忌避と書いた幾つかのポツですが、まず公開の意味合いとしては、広く社会一般に対して利益相反状態の情報を公開する方法であると。透明性を確保するとともに、社会からの監視によって弊害発生への抑止力とするような、そういった意味合いがあろうかというところです。
  また管理については、一般的な利益相反マネジメントと呼ばれるところかと思いますが、判断主体に対して利益相反状態の情報を開示し、所定の判断を通じて、弊害発生等のリスクに対して必要な措置を講じる方法です。例えばヒアリング、アドバイスを行うなどの対応があろうかというところです。
  また、忌避といったところは、利益相反状態を解消する方法ですというところです。
  なお書き以降のところですが、管理等のマネジメント結果を公表するといったことは少し上記公開とは意義が異なるというところがあろうかというところをコメントしております。
  参考2の組織としての利益相反マネジメントについての情報整理については、2回目の委員会と大きく異なっているところはございませんが、34ページ目の一番下の脚注17というところに、学会における利益相反マネジメントについても、組織としての部分はまだ十分に検討が進んでいないというところもあるというところを確認的に書いております。
  また、資料2-2のところで、今まとめた報告書の概要を1枚でまとめております。こちらの説明は省略させていただきますが、本報告書に合わせて修正していければと思っております。
  駆け足で恐縮ですが、以上です。

【渡部主査】    ありがとうございました。これを基にして、これについて御意見を頂きますが、峯木委員、飯田委員、伊藤正実委員、田仲委員から資料、情報提供を頂いております。
  では、簡単に御紹介を頂きたいと存じます。まず、峯木委員からお願いします。

【峯木委員】    それでは、座ったままで失礼します。ブリジストンの峯木でございます。
  企業における営業秘密管理の実情と題して、簡単な資料を作ってまいりました。私どもブリジストンでは、2012年6月、ちょうど3年前から営業秘密管理に対する強化活動を始めておりまして、そのきっかけを話すと長くなるので省略しますが、その中で、いろいろな企業に、営業秘密管理に対して先進的な企業ということで、幾つもの企業に訪問させていただきました。あるいは、いろんな先生にお話を聞かせていただきました。
  そのような幾つもの企業の実例をここでまとめて、少しオブラートに包んで。実は私の中では、頭の中にA社、B社、C社でマトリックスを作って御提示することもできますが、さすがにそれをすると営業秘密でまずいのではないのかということで、非常にある意味では散文的な資料になって申し訳ございませんが、そういう形で御提供させていただきます。
  それと先ほど申し上げたように、1ページ目の二つ目のところですが、私どもも3年前からということであれしているんですけれども、他社さんも行ってみると長いところでもせいぜい5年ぐらいでございまして、10年前から営業秘密をきちっとやっていますという会社はほとんどございません。やはりこの2、3年が、非常に皆さん、意識の高まりとかもあって、各社も力を入れているというのが実情かと思います。
  それと、管理していくわけですから、業務の効率化という意味では全く効率化と正反対の方向でございまして、それと、やはり情報を管理するということで、例えば隣の部署でやっていることの情報を聞いて、それによって触発されて何かイノベーションが起こってくるとか、そういうことに関しても、正直言うとマイナス方向です。
  ということで、あと労経費もかかるということで、結構反対意見もすごく多いのですが、やはり企業の場合には最終的には収益ですので、それが収益を害するということで、最終的には皆さん納得いただけるというのが多いかなと。各社とも同じような事情だというふうに理解しております。
  3ページ目に行きまして、強化策、どういうことを各社がやっているかということですが、視点1として基本ルールの設定ということで、これは何が営業秘密かを明確にして、それぞれの営業秘密に対して機密ランクを設定するということです。これは当たり前ではないかと言われるかもしれないですが、実は私どももそうだったのですが、過去は部署ごとに機密ランクの設定の程度がばらばらでございまして、そういったものを全社統一でやっていくということです。各社のいろいろな話を聞いていると、機密ランク、白か黒か、機密かそうではないかということだけではなく、機密の中に3ランクから4ランクぐらいを設けているのが一番多いかなと感じています。
  それと2ポツですが、営業秘密管理に対する社内組織としては、トップダウンで組織を作っているところと、あるいは知財の部署でやれとか、そういう形で既存の部署で担当しているところと、大きく二通りあるかと思います。トップダウンで組織を作っているところは、トップ直属のCSOを置いていたり、RO、リスクマネジメントオフィサーだったり、いろいろそういった形の方を置いているというところが多いかなと。それと、よく見られるのが、社内の組織横断的な何か委員会みたいなものを作っているというのは、これはもうごく普通の形かなと思います。
  それと、ポツ1で申し上げた機密ランクですが、これはランクによって当然、秘密管理の基準をいろいろ変えて、だんだん厳しくしていくということです。会社ですから職位に応じて、それが厳しいほど上の者が許可しないと外に出せない、開示基準を満たさないとか、そういった形になっているということです。
  それと視点2として人事面の対応を挙げていますが、競業避止が、これは各社とも大体ございます。競業避止期間として、これは職位によって違う会社もありまして、いろいろなのですが、1年から3年ぐらい。3年というのはかなり長い会社かと思いますが、これは釈迦に説法ですが、職業選択の自由との関係があるので難しいところはあるのですが、それとたまたま日本の産業が、今、恵まれた立場にある産業界というのがあって、そういうところの方がこれを言われて、ではどこへ行くんだというのはありますが、いろいろお聞きすると、どこの会社もこういった規程をそれなりに持っているかなと思っています。
  それと有能人材の処遇ということですが、これは退職した社員からの漏えいというのが情報漏えいルートとしてはすごく多いわけで、それを引き止める策をどこの会社もやっていると。処遇面を上げていくということです。
  それと退職時の面談の充実、それから誓約書ですね。これは退職者が退職後に営業秘密を漏らさないということですが、それ以上に重要なのは、自分のところが雇い入れた人が前職の営業秘密を使って仕事をしないという、むしろ本当はそちらの方が重要なのかなと思っています。誓約書は、普通は競業避止と機密保持義務、この大きな2本柱で大体できているわけですが、これを自分のところが管理体制を強化するということで全社員から改めて取り直すとか、トップも含めて、その会社の社長も含めて会社に対して出すとか、いろいろな仕組みを作っている会社があると思います。
  次のページめくっていただいて、3番目が啓発という視点ですが、これは仕事で得られた営業秘密は基本的に会社に帰属するという企業風土を醸成するということだと思いますが、そこに挙げているいろいろな手段を使ってやっているのかなと考えています。これは厳しい会社では、それを違反した場合にどのような処分をしているのかということを全社に周知徹底するとか、結構これ、言い方はあれですが、厳しいと思いますが、そういった措置をとっている会社もございます。
  それから視点4として、IT面ですけれども、今はITがないと全部立ち行かないわけですが、大体これはどこの会社も、サーバーへのアクセスログとか使用ログとか、あるいは印刷ログまで取っている会社もあるかと思います。ただ、取っていても、それをどうやってチェックしていくのか、これは各社まちまちで、全部チェックはできないので、そこは何か怪しそうなものをチェックするとか、そこがまたすごくいい加減なのですが、そのような体制をとるなど、そこのチェックのところは、いろいろ各社あると思います。
  それから統一仕様のPCの導入ということで、BYODというのはブリング・ユア・オウン・デバイス、飲食店でブリング・ユア・オウン・ボトルのあれで、ブリング・ユア・オウン・デバイスというのはIT業界では普通の言葉らしいのですが、そういうのはやはり基本的には、そういうのをやらせてコストダウンを図るということは、例えばセキュリティーとか、それからファイアーウォールとか、そういうのがいろんなコンピューターが入ってくるわけで、それは基本的にやらせないとかですね。厳しい会社では機密情報を社外に持ち出さない。これは文書を紙でも電子媒体でも持ち出さないということをやっている会社もございます。
  それに関連しますが、USBも電子的に埋めてしまって、USBが刺さらないようにしてしまうとか、あとeメールに関しては、よく皆さんも経験されているかと思いますが、上司に必ず写しを入れないといけないとか、キーワードチェック、各社にとって何がキーワードかというのは結構あれですが、キーワードチェックが自動的にかかって、情報発信を自動的に跳ね付けられてしまうと。Eメールを送れないということもあります。
  それから最後のページですが、その他の論点として、特許出願をしない秘匿発明のルール化というのは、最近、これも各社で、この数年、ルール化しているところがすごく多いと思いますが、特許出願をしない秘匿発明というのは、これは営業秘密の単なる1類型だと思いますが、いろいろな類型あると思いますが、それをきちっとルール化している会社も結構最近は多いのかなと。
  それと結構悩ましい問題が、子会社、関連会社、これをどうやって扱っていくのかということで、子会社、関連会社が100社、200社ありますというのは結構ありますが、それが国境を越えたりすると、その子会社、関連会社には、出す時点で、もう営業秘密をきちっと営業秘密として意識して開示するのだよという形をとっている会社が、私は多いのではないかなというふうに思っています。
  それと3ポツ目ですが、監査体制。それと最後の点ですけれども、途上国というのは、これは途上国という書き方をしましたが、実はお隣の中国でございまして、私どものところもそうなのですが、各社の話を聞いていても、そこの国に絡む機密情報漏えいのケースが非常に多いです。日本の本社以上に厳しいルールを導入している中国の子会社においてです。そういう会社も結構ありまして、やはりそこの扱いというのが結構これからもキーになってくるのかなと。大学や、お付き合いしているところでも、そこの国から留学生とか結構最近増えていると思いますが、そういう方たち、人種差別はいけないとは思いますが、事実として、中国に絡む情報漏えいが多いというのは事実なので、そこを意識した体制というのは今後きちっとしていく必要があるのかと考えています。
  短いですが、以上です。

【渡部主査】    ありがとうございました。飯田委員、お願いします。

【飯田委員】    東京医科歯科大学の飯田でございます。私の方からは、米国大学における技術流出防止マネジメントについて御紹介します。
  この取りまとめは、平成23年度科研費挑戦的萌芽研究「大学における秘密情報の保護政策に関する研究」の一環で、情報管理について日本の大学に比べて先進的であるアメリカの大学について調査した報告になります。
  2枚目を御覧ください。アメリカでは、既に大学が営業秘密をめぐって係争に発展した事案もございます。そのような事例を踏まえ管理体制がどのように構築されているかを調査しています。
  最初に、二つ事例を御紹介します。
  一つ目は、ハーバード大学の事例です。こちらは遺伝子研究に取り組む研究者2名、このうちの一人は日本人ですが、医薬品の開発に有用な二つの遺伝子を発見し、大学から特許出願を行った。しかしながら、実際にその研究者らは、二つの遺伝子と同等の価値を有する七つの遺伝子を発見していたにもかかわらず、大学には秘匿していた。当該研究者は、テキサス大学への転職が決まっており、無断で遺伝子をテキサス大学へ送付するとともに、日本の企業へも送付していたことが明らかになったFBIは、遺伝子を営業秘密と捉え、研究者らを経済スパイ容疑で逮捕した。最終的には司法取引で解決はしている。
  二つ目は、大学が原告となり研究者を訴えた事例です。ピッツバーグ大学の研究者二人が、大学における研究成果は大学に帰属するという契約に違反して、個人として特許出願を行ったことが、不法行為法の横領行為に当たるとして起訴された事例です。同大学は、当事者間の契約に基づき、特許出願に関わる技術・ノウハウ等の営業秘密含む知的財産は、大学に帰属すると主張した。しかしながら、この研究者は同大学に所属する前に、民間企業と雇用関係にあった。また、本研究者は同企業との間で、コンサルタント業務に関する契約を締結し、当該業務に関する発明等は全て同企業に帰属する旨約束していた。この点について、同大学は、企業との雇用関係の事実については認識しつつも、研究者へ契約書の写しの提出を求めることなく、また内容の確認等も行わずにいた。最終的に裁判所は、同研究者を巡る契約関係は、企業との関係が先にあることを理由に、大学の訴えを退けている。このように、幾つかアメリカでは、大学が営業秘密をめぐって係争に発展した事案があるということが分かっています。
  3枚目を御覧ください。実際アメリカの大学での管理体制を把握するために、二つの方法で調査をしています。
  一つが、アメリカの大学で営業秘密の管理を含め顧問をしている弁護士にインタビュー調査した結果です。もう一つは、アメリカの21の大学が電子データとして公開している、秘密保持契約書をレビューした結果です。
  もう1枚めくっていただいて、弁護士への調査結果から紹介していきます。  アメリカの大学では、人的管理と物的管理の二つの方法で管理をしており、人的管理については、営業秘密に関するポリシーを整備し、加えて契約による管理を行っているところです。契約については、契約当事者としては大学対研究者、職員、学生、あるいはボランティアという形で、大学が主体となって契約を締結しています。契約の時期、いつ締結をするのかというと、一般的には、その研究者及び職員などを雇用するときに署名を求めていることが多くて、契約締結を雇用の条件とするような機関もあるそうです。  契約による管理以外に、雇用時、あるいは辞めるときに、知財担当者等が、持ち込む情報、あるいは持ち出す情報を確認するためのインタビューをする他、教育活動、啓発活動の一環で、ハンドブックなども作成する等、定期的な研修を行っている機関もあるそうです。また、電子デバイスに関する規制ということで、重要なプロジェクトについては、PC及びeメールなどの履歴を確認する体制を取っている機関もあることがわかっています。  物的管理については、研究室、あるいはオフィスへのセキュリティーシステムの導入であるとか、パソコンとかファイルなどへのパスワードの設定を義務化するであるとか、研究成果公表に関する審査委員会システムを構築しているような機関があるということが分かっています。
  続いて、人的管理として行っている契約書の内容について、21の大学の資料を分析した結果も御紹介します。
  これは雇用時に締結する機関が多いのですが、第一に営業秘密の定義について定めています。内容は大学において創出された非公知の情報、データ、知見、外部機関との連携から生じる情報、産学連携から生じる情報、財務情報・人事情報、個人情報に関わるような情報、医学系機関においては、患者情報に関しても、含めて考えられているそうです。
  次に営業秘密については、守秘義務を負わせるということと他の職員が例えば秘密保持を違反しているのではないのかということを目撃した場合には、大学に通報するような義務を課しているとのことです。
  更に異動に関する通知義務というものも負わせていているとのことで、これは異動を制限するわけではなくて、これは通知義務を課すことで、秘密保持義務を再確認させるための教育的な意味もあるとのことです。
  更にアクセス制限ということで、これは業務上必要最低限の範囲でのみしか秘密情報にアクセスしないということもうたっているようなひな形もございました。
  以上です。

【渡部主査】    ありがとうございました。伊藤委員、続けてお願いします。

【伊藤(正)委員】    群馬大学の伊藤でございます。
  皆様のお手元に、参考資料5、6、「安全保障貿易に係る自主管理体制構築・運用ガイドライン(要約版)」、及び「研究者のための安全保障貿易管理ガイドライン(要約版)」という二つの資料があるかと思います。これは私が今、会長を務めさせていただいております産学連携学会という組織が策定したものでございますが、実際にはこの学会が自発的に作ったものではなく、経済産業省安全保障貿易管理検査官室から、こういったような大学向けのガイドラインを作ってほしいというような依頼を頂いて、それでこれを、まず産学連携学会の方で草案を作り、また別途、経済産業省の方で、この内容について確認、あるいは修正するような委員会を設けて、二人三脚で作ったものでございます。最終的には産学連携学会の名称で出させていただいておりますが、経緯としてはそのとおりであります。また、この委員会のメンバーの中では、私以外に足立委員もこのガイドラインの策定に深く関与したことを申し伝えたいというふうに思います。
  要約版という形で資料が提出されておりますが、実際には、双方ともに100ページぐらいのボリュームのガイドラインであります。もしこの内容について詳しく知りたいという方がおられましたら、産学連携学会のホームページにこれを張ってございますので、そちらの方を御覧ください。
  このガイドラインの策定において、幾つか問題意識を持って作成したわけでございますが、少なくとも大学人から見て、外為法というのは産業技術や工業製品を対象とした法規制のように感じられるわけですが、それが大学の組織文化や研究活動に対してどう融合できるのか、そういう観点で、これを作ったわけでございます。
  また大学の場合、研究者が届けを出さないと、こういったようなコンプライアンスの体制、手続のようなことは始まりませんので、研究者に対する意識啓発が極めて重要だろうということで、体制構築とはまた別途、研究者のための輸出管理のガイドラインというものを作ったわけでございます。
  この研究者向けのガイドラインについては、これは日本語のものでございますが、沖縄科学技術大学院大学の御厚意で、英訳版も作られております。というのも、先方の大学では、海外からの研究者や留学生が非常に多く、日本語が余り上手ではないが、日本の外為法についてよく知っていただきたいような人たちがたくさんおられるということで、それで英訳版を作っていただいたわけですが、これについても産学連携学会のホームページに、沖縄科学技術大学院大学の御厚意で、その英訳版も貼ってございます。
  また、この委員会においても、海外から来られた方に対して、この法規制をどう理解してもらうのかということも、一つ問題提起としてお示しさせていただきたいというふうに思います。
  それと、企業での輸出管理と比べて大学の場合、まずマネジメントすべき対象というのが非常に多岐にわたっている。専門分野も非常に広いですし、また、対象となる事象も、留学生、産学連携、研究交流等、たくさんあるわけでございます。となると、単純に企業での輸出管理体制の構築の考え方をそのまま大学に移行させて、大学の方で血の通ったような形で輸出管理の体制ができるかというと、そこはなかなか難しいわけであります。
  ということから、お手元の資料の5番目の2ページ目以降を見ていただけたらと思いますが、ここで管理体制構築の手順というような形で、幾つか大学における輸出体制の構築に関して、段階的にこうやるのだというような形で手順を書かせていただいております。一夜にして大学の中で完璧な輸出管理体制ができるわけでもなく、また、そこは段階的に、それは研究者の啓発活動も兼ねてやっていかないといけないという問題意識でありまして、この辺り、経済産業省ではなく、産学連携学会でこのようなものをやらせていただいたからこそ、このような形でガイドラインができたのだろうと思う次第であります。

【渡部主査】    ありがとうございました。最後に田仲委員、お願いします。

【田仲委員】    安全保障貿易情報センターの田仲と申します。きょうは大学等における安全保障貿易管理の課題と、安全保障貿易情報センター(CISTEC)が提供しているサービスの(輸出管理に取り組もうとしている)大学等における利用可能性について御説明をしたいと思います。
  まず前提として、安全保障貿易管理とは何かということですが、法令遵守の一環で、実施を怠ると罰則の対象になるということです。また、大学の規模に関係なく求められ、リスト規制、キャッチオール規制ともに、必要な場合には許可申請を行う必要があります。また、それを実施するための体制整備が求められます。
  大学等において実施することですが、まず1番目として、管理対象の把握ということがあります。管理対象というのは、貨物、つまり資機材の輸出、それから共同研究、あるいは留学生等の受入れを通した技術提供というのが対象になります。次に、具体的に把握したものを、許可申請が必要かどうか判断する必要があるわけですが、貨物の場合、リスト規制は輸出貿易管理令で、技術の場合には外為令で確認し、キャッチオール規制(リスト規制に該当しない場合)の場合には用途・需要者を確認して、必要な場合には許可を取るということになります。それから最後に体制整備ということで、輸出管理規程の整備や管理責任者を選任して管理を実施しなければいけないということになっています。
  次のページに行きまして、大学等が安全保障貿易管理を行う上での課題ということですが、まず、外為法において、責任者を選任して管理するということが義務付けされていて、規模の大きな大学、小さな大学、関係なく実施しなければいけないということから、管理体制の構築で、予算的、あるいは人的制約があるということかと思います。
  2番目として、制度を理解している人材の不足ですが、産業界では1987年に大きな外為法の違反事例がございまして、それを契機に管理強化を行ってきましたが、大学の場合は、平成18年の文部科学省の事務次官通達をきっかけに、輸出管理がスタートしていると思いますので、まだ10年そこそこですから、制度に精通している人材が不足しているということかと思います。
  3番目として、安全保障貿易管理の対象の把握が結構大変ということが挙げられます。大学の場合、先生なり研究室の自主性が重んじられる傾向にありますので、こういった情報を把握するのが結構大変かと思います。
  4番目として、該非判定の難しさということですが、該非判定は貨物とか技術の内容を理解して、規制の対象に該当するかどうかを判断するわけですが、通常、貨物の場合は、その製造メーカーが該非判定を受けてくれますが、共同研究とか留学生の受入れに伴う技術提供については、技術の内容そのものは恐らく担当される先生方がよく理解をされていると思いますが、その技術が規制の対象になるかどうか判断できる人材が不足しているのではないかと考えます。
  次のページに行っていただきまして、CISTECが提供している情報サービスの概要ですが、CISTECでは、輸出管理基本情報、これは無料で提供しておりますが、あるいは電子書籍を含んだ書籍、各種セミナー、eラーニング、講師派遣などのサービスを提供しております。これ以外にも、実務能力認定試験、あるいは輸出管理相談、該非判定支援サービス、それから機関誌としての「CISTECジャーナル」を発行させていただいております。
  次のページに行きまして、参考ですけれども、これはeラーニング教材の一部ですが、実務能力認定試験対策コースというeラーニングが設定されていて、これはどなたでも無料で利用できます。具体的には、各項目20問ぐらいの問題が設問されていて、勉強ができるようになっております。
  次のページは、Webセミナーですけれども、Webセミナーは有料、無料がございまして、基本的なセミナーは全て無料になっており、皆さん誰でも利用できるようになっています。
  次のページですが、3の大学等が安保管理を行う上で抱えている課題にどう取り組んでいくかということですが、1番目の管理体制の構築ということですが、CISTECでは企業用にモデルCPガイダンスを出していますが、管理体制構築に当たっては、大学、研究機関では企業と異なる特殊な事情がございますので、先ほど伊藤先生から御紹介いただいた産学連携学会が作成した「安全保障貿易管理に関する自主管理体制構築・運用ガイドライン」、あるいは経済産業省がホームページで公開している「安全保障貿易に係る機微技術管理ガイダンス」が参考になるかと思います。
  また、安全保障貿易管理は法令遵守ということですので、経営層の強いリーダーシップが不可欠と考えております。それに加えまして、文部科学省のサポートが重要ではないかと考えます。
  安全保障輸出管理については、本検討会で取り上げているように、リスクマネジメントの一環として実施するのが理解も得られやすく、効率的ではないかと考えます。
  それから、前回の会議で伊藤先生から、小規模な大学が独自で対応するのは大変という御指摘があったと思いますが、これについては、輸出管理がある程度できている大学がネットワークの中心になって地域ネットワークを構築して、小規模な大学の輸出管理をサポートするという体制を構築していくのが現実的ではないかと考えます。
  2番目として、制度・手続を理解している人材の確保、これは外部人材の登用と、内部人材の育成と、二つあるわけですが、外部人材の登用ということであれば、現在、CISTECに輸出管理経験した人を登録しておりまして、そういった方に、輸出管理人材の募集があれば、メールでその情報を紹介するというサービスを行っております。現在、約220人、人材が登録されています。
  それから次のページに行きまして、内部人材の育成ということですが、先ほど御紹介したCISTECが提供している情報の活用が考えられると思います。無料で提供している、輸出管理基本情報、あるいはeラーニングの教材、こういったものが有効ではないかと思います。また、知識レベルの指標として、安全保障輸出管理実務能力認定制度というものを使うのも有効ではないかと考えています。基礎的な知識を対象にしたSTCアソシエートは、今、2万2,000人の資格保有者がいます。
  また、これ以外に、まだ27年度のスケジュールは公表されていないのですが、経済産業省・文部科学省が連携して実施する大学研究機関向けの説明会も活用していただければいいと思います。説明会の資料については経済産業省のホームページに公開されていますので、人材育成に利用できるのではないでしょうか。
  次に、輸出管理の対象の把握ですけれども、先ほど申し上げたように、大学では、研究者、あるいは研究室の自主性を重んじるという傾向がありますので、経営層が強いリーダーシップをとって、対象の把握に努めるということが必要かと思います。
  次に、貨物・技術の該非判定のできる人材の確保ということですが、これも先ほどと同じように、外部から人材を登用するケースと内部の人材を育成するということが考えられると思いますが、該非判定の対象分野が非常に広いので、人材の確保というのは結構大変だろうと思います。したがって、外部人材を登用する場合は、実際に提供する技術の内容を十分に把握されている先生方と円滑なコミュニケーションをとれるような運用上の工夫が必要だと思います。
  それから内部人材の育成ということですが、実際に該非判定の中心になるのは技術の判定になるかと思います。広い分野の該非判定は大変ですので、研究者と協力をして、規制の対象になっているかどうかというのを判断できる人材の育成が重要だろうと思います。具体的にはURAの活用なども、有効ではないかと思います。
  また、該非判定を実施していく上での支援ツールとして、CISTECでは項目別対比表の販売や該非判定支援サービスを行っていますが、経済産業省がホームページ上で公表している、貨物・技術の合体マトリックス表を活用していただくのがいいかと思います。
  最後になりますが、CISTECは大学向けサービスの提供ということで、CISTECのホームページのトップページの下に「大学における輸出管理」というものがありますが、これが大学における輸出管理のポータルサイトになっております。ここをクリックすると各種情報が入手できますので、是非御利用いただければと思います。
  また、昨年6月にCISTECを始め関係団体が共同で関係省庁に要請書を提出し、当局によって一定の対応を頂いたわけですが、そういったこれまでの動きをまとめた安全保障輸出管理関係資料集を発行することになっております。
  なお、CISTECでは大学会員制度というのがございまして、基礎的な書籍とか、それから輸出管理相談、あるいは講師派遣、こういったものが無料になるような制度もございますので、是非御活用いただければと思います。
  以上でございます。

【渡部主査】    ありがとうございました。
  それではちょっと元に戻りまして、資料2-1でございますけれども、取りまとめ(案)ですね。取りまとめ(案)について御意見を頂いてまいりたいと存じます。どなたからでも結構でございますが、いかがでしょうか。
  野口委員、お願いします。

【野口委員】    この報告書の25ページまでが本文だと思いますが、ざっと読ませていただいて、かつ報告もお聞きし、ストーリー性と理解増進を図るための読みやすさが必要かと思いますが、全体の感想も含め、もう少しこういうところを入れた方がいいなという点でお話をさせていただきます。
  全体について、最初の「はじめに」のところで少し気になっていましたのが、「大学等」というのは“どこまで含めるのか”と思っていたのですが、ページ欄外箇所でその定義付けをされており、国公私立、共同機関を含め、研究機関全てを網羅して発信していきたいということが理解できました。あと大学の規模や設置形態の指摘箇所も各研究機関が、特徴に沿ったマネジメント体制を構築していくことが望ましいと触れており、この点も、「はじめに」のところで担保はできていると思いました。
  それから、利益相反マネジメントと技術流出マネジメントのメイン2課題に絞り、技術流出マネジメント課題においては、営業秘密と安全保障貿易管理の大きく二つに焦点を絞ったことも適切であると思いました。  最後に、“マネジメントの定着に向けて”という項ですが、ここでは残された課題として、国際産学官連携と発明報奨について、今後引き続き検討していく課題であるということと、各研究機関の議論の進め方において、経営層を巻き込んで議論をしてほしいということ、この報告書内容と各大学の特性を合わせ、ベストミックスをしながら方策を検討していきなさいという示唆は、非常に理解できました。読みやすさの視点からも文中の項の多くが、箇条書されていますし、また当たり前のことも書いていますけれども、理解増進と重複表現の箇所は更に徹底させていくというメッセージが伝わり、理解促進しました。
  別の視点からですが、なぜこの利益相反マネジメントと技術流出マネジメントの2課題に絞り込んでいったということの解説について、少し大学等における多様なリスクマネジメントの中から産学官連携活動を今後積極的に展開する上で、避けては通ることができない最重要課題がこの二つであるということを、もう少し詳しく加筆等々が必要ではないかと思います。それから、文章の丁寧な説明が必要と思われる説明分量も、大学の緊急性と関わり方を考慮に入れ考えると、利益相反マネジメントのところで6割、技術流出マネジメントのところで4割程度であり、適切な割合であると思いました。
  それと、あと資料2-2のところですけれども、右端の方に大学のビジョンの絵がありますが、これは学長等だけだと分かりづらいので、リーダーシップや普及啓発を入れていただく。最後に、この図においても“定着化”が非常に重要だと思います。提案後の“定着化”が極めて重要ですので、矢印で定着化の推進とし、かつシステムですので、そのような形で回るような図示を少し工夫されたらいかがかなと思いました。
  結論として、総じて分かりやすくまとめられたのではないのかという感想です。以上です。

【渡部主査】    ありがとうございました。ほか、いかがでしょうか。足立委員、お願いします。

【足立委員】    足立でございます。
  一番重要なところとして、技術情報の管理の範囲というのをあらかじめはっきりさせておくということが一番重要かなと思います。特にブリジストンの方からのお話の中で一番印象深いのが、営業秘密が何かということを明らかにするということが第一だと書かれておりましたので、私もそのとおりだと思いますし、それから、特許出願しない秘匿発明というようなものを大学が無秩序に全部職務発明として抱え込むと、何が起きてしまうのかというと、多分、情報管理を全くできない状況に陥るのは火を見るより明らかだと思われます。
  なぜかというと、大学の先生方のやっている研究内容の一つ一つの中にある秘匿すべき技術情報がどこにあるのかということをつかんでいる人間は、恐らく大学の中に一人もいない。個々の先生方だけが自分の持っている情報をつかむことができるという状況がある以上、大学が組織として責任を持って技術情報を管理しなければならない範囲というものをきっちり事前に特定し、それが外から分かるようにしておくということが、産学連携をやりやすくする一番大きな一歩であると思います。
  そうでないと、企業側も特定の期待感を持って大学にきちんと情報管理してもらえるのかなと思って共同研究を結んでしまった挙げ句、もし万が一漏えいというようなことが起きた場合には、両方に大きなダメージがあると。だから大学はこの範囲のことはきちんとやりますが、この範囲のことは大学の特性からいって無理ですということを前面に出して、きちんと管理すべき情報はきちんと管理し、知的財産等についてもしっかりと機関帰属をし、どういう内容かを把握しておくということができないと、多分、利益相反マネジメントだけではなくて、技術情報管理全般、それから安全保障貿易管理もうまくいかなくなるだろうと思います。
  あともう一つは、クロスアポイントメント制度については、これと利益相反マネジメントの関係というのは極めて難しいというように私は思います。二人の雇用者に同時に雇用されている人間が、それぞれの組織に同時にいる、あるいは日によっていたりいなかったりする状況で利益相反マネジメントをするというのは、これはまともな考え方からすると、非常に至難のわざであろうと思われます。特に労務管理上も極めて難しい。ここはそういうことを話す委員会ではございませんので、あえて触れませんが、労働法上もかなりいろいろな問題が出てくる可能性があると思われますので、この点については、今後重点を置いて議論をしていくべきではないかなと、こう思った次第です。
  以上です。

【渡部主査】    ありがとうございました。飯田委員、お願いします。

【飯田委員】    本文に関しましては、事務局の御努力で非常によくまとめられていて、異存はございません。参考のところで2点ほどあるのですが、32ページ目のところで、利益相反への対応方法について、公開、管理、忌避と記載されているところです。1点は、公開について、利益相反状態の情報を公開するということが書かれていますが、公開する内容を、利益相反状態だという事実を公開するのか、若しくは製薬協の透明性ガイドラインのように、産学連携活動全般を公開していくのかということを整理した上で、メッセージとして発信する必要があるかと思います。
  もう1点は、忌避について、利益相反状態を解消する方法という記載がありますが、利益相反状態というのは決して悪いことではない、という記載と少々矛盾が生じるように考えます。例えば極端な利益相反状態を解消する等、抑揚を付けた方がいいのではないかと考えます。
  以上です。

【渡部主査】    ありがとうございます。ほか、いかがでしょうか。新谷委員、お願いします。

【新谷委員】    主な点だけ申し上げたいと思います。
  一つは5ページ目の図ですが、ここでは大学全体のリスクマネジメントとなっており、教育もまた大学における重要な活動であるため、追加した方がよいのではないか。
  それから11ページの囲みの一つ目で、「体制は一定程度整備」の最後の括弧に、「外部人材の活用も含め、利益相反アドバイザー等を設けている機関が多数」とありますが、2012年に私どもが実施した調査によると、産学連携を実施している大学において利益相反委員会が設置されている大学は98%である一方、利益相反アドバイザーの設置は57%にとどまっていました。したがって、ここは「利益相反委員会を設置している機関が多数」という記載をした方がいいと思います。そうでないと、14ページの「リスクマネジメント人材の確保・育成の必要性」という課題につながらない。ここは体制として利益相反委員会を挙げた方がよいと思います。
  それから13ページの三つ目のマルに、情報公開に関することを入れていただいたのですが、利益相反マネジメントについては透明性の確保ということが重要なので、できれば一つの項目として立てて、14ページの「利益相反マネジメント人材の確保・育成の必要性」の項目の次に、「利益相反に関する透明性の確保の必要性」というような項目を入れて、四つほどポイントを挙げるとよいのではないかと思います。
  第一は、前回の会議で、開示と公開が混同されるという御意見が出ていましたが、利益相反マネジメントの第一歩として、学内における利益相反状況の開示は重要であるということです。学内においては、研究者に対して一定の基準に該当する場合には、学長への報告や臨床研究等における倫理審査委員会への申告及び患者への説明などを義務付ける必要があるということを挙げる。
  第二に、利益相反状況に関しては、透明性の確保の観点から、大学の株式等の保有状況や企業等からの一定額以上の寄付金の受入れ状況等についても、学外に対して公開することを検討することが望ましい。第三に、利益相反委員会等における審議結果についても、個人のプライバシーとして尊重しなければならない事項を除いて、公開に努める必要がある。最後に、大学は学内の利益相反マネジメントのポリシーや体制について、学外からの信頼を確保する意味からも、できる限り公開に努める必要がある。
  もともと2002年の「利益相反ワーキング・グループ報告書」でも透明性の確保ということは書かれていましたが、こういったポイントについてもう少し具体的に挙げてもよろしいのではないかと考えました。
  それから27ページの最初のマルで、言い回しの問題なのですが、「産学官連携活動において利益相反状態となっていること自体は、必ずしもそれ自体が望ましくないことではなく」という表現が、二重否定となっていて、望ましいことというふうに解釈されてしまうので、ここは、例えば、「利益相反の状況はそれ自体によって直ちに法令等の違反や不正行為になるわけではない」というようにする。利益相反が望ましいことだという意見はあるのかもしれませんが、少数意見だと思いますし、望ましい状態なのであればマネジメントは不要で放っておけばよいということになるので、もう少し言い方を変えた方がよいかと思います。
  それから27ページの一番下の行ですね。「一般的に、社会(国民等)に対して許諾を得ることは非常に難しいことからも、マネジメント上の困難性がある。また、産学官連携における利益相反は、必ずしも互いの利害が反対(相反)となるような性質のものではない」の部分は意味が通じにくいので、もう少し言い回しを変えた方がよいと思います。利益相反マネジメントの困難性ということを指摘するのであれば、むしろ金銭的な利害関係と、その結果としてのバイアスがかかった行動との間の因果関係を証明することが非常に難しいということの方が重要なのではないかと考えます。
  それから最後に、32ページから33ページにかけて、「利益相反の対応方法等について」で、公開、管理、忌避が挙げられていますが、これらのいずれかをとらなければならないということではなくて、やむを得ない状況を考慮することは重要であるということを追加しておいた方がいいと思います。
  すなわち、利益相反状況について、マネジメントにより何らかの規制や条件を課すことよりも、そうすることをせずに研究活動等に取り組むことが、より一層公共の福祉に資すると判断されるような場合には、そのような規制を課さずに研究活動等を実施することはあり得るということです。利益相反状況であっても、非常にリスクが低くて、必ずしも公開・管理・忌避といった対応をとらなくてもよいと判断する場合がありますし、場合によってはやむを得ない状況が生じるということもありますので、そういう場合には、そのような対応をとらずに研究等を進める場合もあり得るということを記載しておくとよいのではないかと思います。
  以上です。

【渡部主査】    ありがとうございます。林委員、お願いします。

【林委員】    ありがとうございます。営業秘密の関係について、1点申し上げたいと思います。
  冒頭で参考資料4と5、日本の企業内と、米国大学における営業秘密管理について、大変貴重な御報告を頂きましたが、いずれも、営業秘密、トレードシークレットという用語は、秘密として管理すべき情報には、「技術」も当然、含まれているという前提で、御報告いただいたと思います。
  それと比べますと、資料の16ページの冒頭では、「情報管理」という言葉と、「営業秘密として管理するか」という言葉が混在しているということと、それから20ページでは、「技術情報管理は」という言い方でも書かれております。多分、現場の方のフィーリング的なものもいろいろ入って、こういう形になっているのかもしれないのですが、むしろここでは、「営業秘密」という中には技術情報に関する秘密も入るということを最初にうたった上で、「営業秘密管理」ということで、秘密管理をする必要のある情報と必要のない情報という区別をし、秘密管理の機密性のレベルは各機関で定める、という整理の方が分かりやすいのではないかと思いました。
  以上です。

【渡部主査】    ありがとうございます。ほか、いかがでしょう。西尾委員、お願いします。

【西尾委員】    西尾です。私も今、林先生がおっしゃった、3のところで技術と営業秘密について、その体系がちょっとはっきりしていなかったので、そこはもう少し林先生のおっしゃったような形でまとめられた方が分かりやすいかなと。多分、営業秘密といった場合に、必ずしもこれは、工学部とか理学部などに限ったことではなくて、例えば経営学部であっても、それは対象になって含めて考えているということになり、技術ということだけではないと思いますので。
  営業秘密も利益相反も、ある意味、境界がはっきりしない非常に難しいところがあり、よいか悪いかという、要するに極端主義には必ずしも判断できないというところがマネジメント上非常に難しい面がある。実際に取り組む場合の意識改革みたいなものをうまく訴えられればなと思いました。
  32ページ、利益相反への対処方法のところで、公開、管理、忌避といった分け方をされているが、マネジメントと管理というのがちょっと合わなくて、多分、モニタリングという言葉になると思う。ここで書かれている管理とは、要するに管理者側の方で見ている中で、アドバイスをしたりとか、あるいはアドバイスを求められたりというような取組が必要となる。どうも管理というのは、例えば開示されたときに管理するような断片的な感じがするが、継続的に見ていくことを強調しておいてよいと思う。
  以上です。

【渡部主査】    ありがとうございます。ほか、いかがでしょうか。江戸川委員、お願いします。

【江戸川委員】    江戸川でございます。全体的には、非常にこの短時間でここまでうまくまとめてくださったと思います。ありがとうございました。
  細かい点、確認も含めて2点コメントさせていただきます。まず1点目が、1枚のポンチ絵の利益相反マネジメントについてという括弧書きの下の二つ目のマルのところで、組織としての利益相反に関して触れていらっしゃいますが、最後のところを、「大学経営層の理解が不可欠であるので、そのための方策を検討する必要」というふうに締めくくっているので、若干トーンが弱くなっているような印象を受けます。ここで今回訴えるべきは、組織としての利益相反マネジメントの取組について、各大学等の実情に合わせて学内での取組方針をしっかり定めていただくということにあると思いますので、経営層の理解というのは、ほかのことも含めて全般的に言える話でして、そこが強調されるくだりにはしない方がよいのではないかと思います。
  あともう1点は、資料2-1の方で、10ページ目の利益相反マネジメントに関する各種取組等の中に、平成20年に出てきた厚生労働科研における利益相反の管理に関する指針が触れられていないようですが、こちらについては、各大学、かなり影響を受けているマネジメントの要請になっていると思いますので、是非追加していただければと思います。
  以上です。

【渡部主査】    ありがとうございます。伊藤委員、お願いします。

【伊藤(正)委員】    今回のこの資料が、大学の幹部等が見て、そういうリスクマネジメントの体制を構築したいというふうに思ってもらうことが目的の一つであるとするならば、輸出管理について一言申し上げたいと思いますが、この文章中では輸出者等遵守基準について触れていないようでして、実際にこの遵守基準が出てから、かなりの割合の大学が輸出管理体制を敷いており、その存在をこの中で、注釈でよろしいかと思いますが、そのような省令上での要請もあってこういうことをしないといけないということが明確化されることは必要なのかなと感じました。
  以上でございます。

【渡部主査】    ありがとうございます。いかがでしょうか。三尾委員、お願いします。

【三尾委員】    この1枚物の資料の2-2のポンチ絵について、これももちろんこちらの本文も反映されている内容になっておりますが、この中の大学等における取組の方向性のところで、1から5という形で並列的に書かれていると思いますが、例えばマル3の研究者等への普及啓発とか、マル5の事例把握、情報共有というものは、全体的なリスクマネジメント体制、システムの中に取り込んで考えていくべきではないのかというふうに考えます。そうすることによって、全体としてフィードバックしていって機能が循環していくということになると思いますので、その辺り、少し書き方を検討していただければと思います。
  以上です。

【渡部主査】    ありがとうございます。ほかはいかがでしょうか。馬場委員、お願いします。

【馬場委員】    先ほどの大学の管理する方の立場に立ってという発言がありましたので、少し。
  全体を見させていただいて、これからどういうマネジメントをしていったらよいのかという立場から見るときに、追加資料の32ページの公開というところ、今まで余り利益相反状態を公開するという立場に立ってマネジメントを実はしてきておりません。産学連携、いわゆる共同研究についても、個々の企業の情報というのはなかなか出しにくいのが、現状になっております。個人情報もありますし、企業の許可を取らないと公開できないというものも多々あって、いつも苦労しているところです。
  公開をすべきであるとか、ここまでは公開するべきであるとかいうのが、ちょっとまだマネジメント側からは少し不安に思いました。この辺はきっちりとすべき話のように思います。
  以上です。

【渡部主査】    ありがとうございます。大体よろしいでしょうかね。
  大体御意見を頂いたかと思いますが、27ページの最初の表現について、利益相反状態が必ずしも望ましくないことではないと、確かに二重否定になっておりますが、この表現は、かなり微妙に皆さんの御意見がばらついているところなので、二重否定のところは直すとして、その辺、平均値ぐらいに入れさせていただくような形で修正をさせていただきたいと思います。この箇所については、皆さん少しずつ違っている感じがしますので、そこのところはお任せいただければと思います。
  それと、公開と管理について。公開は公開できないものを公開しろと言っているわけではなく、公開をすべきだという文章ではないが、その辺、少し補足をした方がよろしいのかなと思いますので、そういうふうにさせていただくのと、管理が、確かに管理というとちょっと広過ぎるのかもしれないので、モニタリングみたいなことなのではないかと思いますので、そこも検討をさせていただくことになるかと思います。
  あと営業秘密や技術情報、その辺の言葉の整理ですね。これはきちっとさせていただくということが必要かと思います。
  それと、あと幾つか、言及していない利益相反の厚労科研の話や、輸出者遵守基準の話ですが、遵守基準に従わないといけないというのが、少し啓発的な書き方をした部分もあったかと思いますので、その辺は遵守基準との兼ね合いで、少し表現を整理した方がよろしいかなと思いました。
  あと資料2-2で、大学の学長、あるいは経営者に対しては、この報告書を全部読んでくださいというのはなかなか難しくて、恐らくこの資料の2-2で相当説明せざるを得ないわけですよね。個別に御指摘いただいたところは、取組の方向性のところで、マネジメント強化の中に入れるのか入れないのかとか、そういうのもありますし、それから組織の利益相反のところのトーンが少し弱いというようなところもございましたが、全体として、できるだけ今回の報告書の要は取組の重要性と、それからどうしていけばよいのかというようなところを、しっかり伝わるように工夫をする必要があるかなという感じがしました。
  あと営業秘密の話に関しては、これは峯木委員に御説明を頂いたわけですが、たまたま今、経済産業研究所の方で私はファカリティーフェローで、営業秘密のかなり大規模な質問票調査をやっておりまして、大体回収ができてきたところですが、そうではないのかなとは思っていましたが、検知を一生懸命やっているのかどうかということが重要です。
  要は本当に盗まれていないのかということを感度良くやっているのかどうかというのを変数にしまして、流出があったかどうかとの関係を見ますと、やっていればやっているほど流出があったというのが多いのですね。これの意味は明らかで、みんな気が付いていないだけという状態で、企業でもそうだなと。詳細までまだ検討していませんが、企業でもそうだということは、これで結構大学ってどう考えたらよいのかなというので、研究室単位でやらないといけないことは確かにそのとおりですが、モニタリングというのか、流出が起きていないのかどうかのモニタリングというのは、やはり法人としてある程度やっていないと、第一歩が分からない状態かもしれないという気がちょっとしました。
  その辺はまだ確定したデータでもないのですが、出てきてそういうことが報告できるのが夏ぐらいになるので、その時点でそういうのを見ると、ちょっと中身が違っているなと思わないような表現ぶりにしていきたいと思いました。
  以上でございますが、そういうようなことで、今回、一応取りまとめについては、これでまとめをさせていただきたいと思いますので、事務局の方と今頂戴した御意見を参考にさせていただいて、主査の方で事務局と相談させていただくということでお願いしたいと存じますけれども、よろしいでしょうか。

(「はい」の声あり)

【渡部主査】    ありがとうございます。報告書については、今月末をめどに取りまとめて公表するということになるかと思います。
  それでは最後に、事務局から一言御挨拶いただければと思います。

【岸本次長】    科学技術・学術政策局の岸本でございます。これまで3回にわたり本検討委員会で熱心な御議論を頂き、誠にありがとうございます。今回の議論を踏まえて報告書が取りまとめられる方向となり、心から感謝申し上げます。
  最近、社会が大学をイノベーション創出の源として非常に期待しており、その結果として、産業界からも大学の経営の革新というのを求められているという状況でございます。その中で、特に産学連携を本格化させていくために、今回のリスクマネジメント体制の構築というのは非常に重要でございまして、これに向けて委員の皆様から大変貴重な意見を頂きました。ありがとうございました。
  文部科学省としては、今回取りまとめた報告書を基に、7月以降に産学官連携リスクマネジメントモデル事業を開始して、各大学等におけるリスクマネジメントの取組強化を目指していきたいと考えております。また本委員会、次回は本年9月以降の開催を予定しておりますが、その際には先生方にまた御助言を頂きたいと考えておりますので、引き続き御支援よろしくお願いします。
  以上でございます。

【渡部主査】    ありがとうございました。
  事務局から今後の予定について御紹介いただければと思います。

【小河専門官】    それでは資料3を御覧いただければと思います。今後のスケジュールについてですが、先ほど渡部主査からもコメントを頂いたように、まず今回の取りまとめを6月中目途に進めさせていただければと思っています。それを踏まえて、7月以降にモデル事業、こちらの公募を開始させていただいて、予定としては9月から10月辺りをめどに事業開始をして、幾つかの大学に対してモデル校となっていただいて、良いモデルを確立していくということを目指したいと思っております。その際に、今回まとめた報告書の取組課題というところを中心に、いろいろ検討していただくということを考えております。
  この事業で、報告書でも記載したように、学長のリーダーシップとか、そういうコミットメントを求めながら、本当によいモデルを作っていければと思っております。また、そういったことを受けて、9月以降に本委員会でも、そういった取組についていろいろ情報共有をしながら、また議論を進めさせていただければと思っております。また、必要に応じて多様なトピックを検討しておりますので、必要に応じて小委員会などの形も考えながら、実効的に検討を進めていければと思っております。
  簡単ですが、以上です。

【渡部主査】    ありがとうございました。
  これで大学等における産学官連携リスクマネジメント検討委員会を閉会させていただきます。本日は御多忙中のところを大変ありがとうございました。

――  了  ――


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科学技術・学術政策局 産業連携・地域支援課 大学技術移転推進室

(科学技術・学術政策局 産業連携・地域支援課 大学技術移転推進室)