産業連携・地域支援部会 大学等における産学官連携リスクマネジメント検討委員会(第2回) 議事録

1.日時

平成27年5月20日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 東館 3F1特別会議室

3.議題

  1. 大学等における産学官連携リスクマネジメントに関する検討の方向性について
  2. その他

4.出席者

委員

渡部主査、足立委員、飯田委員、伊藤伸委員、伊藤正実委員、苛原委員、江戸川委員、新谷委員、田仲委員、西尾委員、野口委員、林委員、平井委員、三尾委員、峯木委員

文部科学省

村田科学技術・学術総括官、山下大学技術移転推進室長、西島大学技術移転推進室長補佐、小河大学技術移転推進室専門官

オブザーバー

上山政策研究大学院大学副学長

5.議事録

【渡部主査】    それでは、定刻になりましたので、ただいまから大学等における産学官連携リスクマネジメント検討委員会の第2回を開催させていただきます。
初めに、事務局から配付資料の確認をお願いします。

【小河専門官】    それでは、配付資料の確認をさせていただきます。一番初めに座席表がございまして、その次に、机上配付資料として第1回の議事録を付けさせていただいております。その次に、クリップ留めをさせていただいております議事次第がございます。
  その次に、資料1-1として、上山委員からプレゼンいただく資料をお付けしております。資料1-2として西尾委員からのプレゼン資料、資料1-3として平井委員からのプレゼン資料。資料2として、「大学等における産学官連携リスクマネジメントに関する検討の方向性について(素案)」という資料を付けております。その次に、資料3として今後のスケジュールについて、参考資料1として各委員からの意見整理、参考資料2として第1回以降の追加意見、参考資料3として新谷委員からの御提供のまとめに関する意見についての資料を付けさせていただいております。
  もし不備がございましたら、後ほどでも構いませんので、お伝えいただければと思います。以上です。

【渡部主査】    ありがとうございます。よろしいでしょうか。
  それでは、議論に入る前に、前回御欠席でした峯木委員と、それから、本日プレゼンをしていただきます産業連携・地域支援部会の臨時委員の上山委員を御紹介させていただきます。
  ブリヂストン知的財産本部長の峯木様です。

【峯木委員】    峯木でございます。よろしくお願いします。

【渡部主査】    よろしくお願いします。
  それから、政策研究大学院大学副学長の上山先生。

【上山臨時委員】    上山でございます。よろしくお願いします。

【渡部主査】    よろしくお願いします。
  それでは早速、議題である、大学等における産学官連携リスクマネジメントに関する検討の方向性について進めてまいりたいと思います。先日は、委員の皆様に現状の課題に関する御意見を多々頂きました。ありがとうございました。本日は、前半で利益相反マネジメントについて、上山委員、西尾委員、平井委員からそれぞれプレゼンを頂きまして、事務局からの説明を挟んで、その後に議論をお願いしたいと存じます。後半では、検討の方向性の取りまとめ(素案)について御意見を伺うことにしております。
  それでは早速でございますけれども、上山委員から御発表をお願いします。

【上山臨時委員】    おはようございます。お招きを頂きまして、ありがとうございます。政策研の上山と申します。私はこの親部会の委員か何かになっているものですから呼ばれたということと、あとは、以前に渡部先生のところでしゃべらされたことがあって、それの影響だと思いますけれども、きょうは利益相反について、その中でも組織的利益相反ということと関わるという話を少しします。
  この利益相反というのは非常に興味深い現象で、私は知財の専門家でもございませんし、その分野を研究しているわけではなくて、むしろアメリカの大学そのものについてずっと研究しているわけですが、そこで出会った、とても興味深いというより我々がちょっと注意しなければいけない現象だと思っております。利益相反というのは、もちろん皆さんも御存じのように、1980年代以降にアメリカのアカデミアが産業界との関係を深めるにつれて、その間のガイドラインをどのように設定するかということで出てきた問題です。
  私、ここにソフト・ローと書いていますが、すなわち、法的にきちんと処罰があるような形でそれを取り締まるというより、むしろソフト・ロー、すなわち、個々のケース、個々の大学の中でのガイドラインでこれをきれいに収めていくという方向がはっきりと見えてきているということです。始まったのは1980年代ぐらいから。私自身はずっとアメリカのアカデミアを研究していて、アメリカだけではないのですが、1980年というのが非常に大きなターニングポイントだったと思っております。その辺りからアカデミア全体の性質が相当変わってきて、その中の一つとして民間の私的なお金との関係が出てきたということだと思っております。
  同時に興味深いのは、1980年代にこの問題が出てきたこととほぼ同時期に科学的不正の問題が出てきているということです。つまり、僕の言い方をすると、アカデミアという非常に公的な領域に極めて私的な利益がはっきりと介在するようになって、それをどのようにレギュレートするのかということと、そのことはそのまま科学者の私的な利益の追求を刺激して科学的不正という問題が出てきているということだと思います。
  このことをお話しするとともに、実はこのConflict of Interestという問題は、いわゆる大学の研究者を規制するという問題ではありますけれども、この規制は実は両義性があるということです。すなわち、これこれをしてはいけないという、そういう規定であると同時に、これこれ決められていることの内部であれば何をしてもいいということを意味しているということでもあるということです。研究不正もそうなのですが、こういうことをやってはいけない、こういう不正をした、こういうことをした人は処罰しなければいけないというような論調がしばしばあるのですが、それはかなり古い話で、確かに1980年代はそういうことがあったかもしれませんが、今、多くのアカデミアでは、このConflict of Interestをはじめとしたガイドラインによって、どのように研究の環境を良くしていくのかという方向に話は進んでいるという気がします。
  その意味でこの利益相反の問題をもう一度考えてみましょうということが一つと、それからもう一つは、この問題が起こってくるのは、個々の研究者だけではなくて、大学の組織としての利益相反の問題が起こってきているというお話をします。とりわけ1980年代、90年代になってきますと、アメリカの大学は非常に大きな基金を持ってグローバル投資を始めて、そして、そこからの利益を大学の中に還元していくという動きが生まれてきます。そうすると、それは明らかに大学が組織として私的なマネーと関わっていくということであり、それによって組織としてのConflict of Interestを考えないといけないというふうになってきたんだということをお話ししようと思います。
  この問題が起こってきたのは、やはり1980年代と先ほど言いましたけれども、アメリカの大学への公的な資金が大きく減少していくという、その事態が起こってきたことを受けての現象だと思っております。それはとりわけ物理工学は典型的なのですが、1950年代、60年代に非常に大きな予算が連邦政府から各研究大学に下りてきましたけれども、それが急速に削減をされていく。その中で、民間との私的なマネーを探り始めるわけです。
  同時にこの時期は、物理工学よりむしろライフサイエンス系の大きなブレークスルーがここで起こってくるということです。ですから、生命科学の領域において、とりわけこの問題が顕著になっているということであります。ここにありますけれども、1980年代、81年、88年とアメリカの議会の中で、各研究者の研究不正の問題、それから、各大学における利益相反の問題が大きく議論されていくことになってまいります。
  これがちょうどこの頃だというふうに考えていただくと、1980年代頃からアメリカのこういった変化があり、連邦政府の資金が下落し、そして、独占禁止法が緩やかになって特許が非常に取りやすくなっていくということ、ライフサイエンスの分野で大きなブレークスルーがあるということ、こういったことがありまして伝統的なアカデミアの体質が大きくこの頃から変わっていく、それがこの利益相反の問題に関わっているということであります。
  実はそれは、私は思うのは、研究者というものがある種の独立のプロフェッションになったというふうに考えております。つまり、研究者というのは、公的なお金をもって公のために研究をやっていくという人から、その研究がどのような社会的な意味を持ち、どのような経済的利益を生むのかという、ある種の研究に対するクライアントの考え方がこの頃から生まれてきたということであります。
  それは、かつてでいえば、法律家とか医者と同じように、知識をお金に換えているようなそういうプロフェッションの在り方、これが大学の研究者の中にも入ってきた。したがって、そのような新しいタイプのプロフェッションの在り方にどこかでガイドラインや規制を掛けていかなければいけないということの中で、利益相反という考え方が出てきたのだというふうに考えていただければいいと思っております。
  とりわけ象徴的なのは、もちろん1980年のバイ・ドール法ですが、バイ・ドール法と関わって、大学の研究者の個人的な利益と大学の職業上の責務が競合して、研究者が個人的な利益を優先させた場合に発生するものが利益相反だという、これが大体一般的な利益相反の考え方でしょうけれども、もちろん中には幾つもの考え方があります。
  一つは、産学連携に付随して金銭的な利益がその研究者の私的なものとどれぐらい関わっているのか。あるいは、しばしばよくあるのが、最近はさすがになくなってきましたけれども、研究をやっていくときに、公的なお金ではなくて、私的なお金を企業から得る。共同研究のような形でやると。そうすると、企業の私的な利益が優先されてしまって、研究の情報を秘匿するとか、あるいは研究上のデータを捏造していくということが起こっていく。これをどのような形でガイドラインにより取り締まっていくのかという問題です。
  もう一つは、実はしばしば忘れられて、特に日本では忘れられているのですが、組織的な利益相反の問題です。先ほど言いましたように、アメリカの大学というのは組織として非常にアントレプレナーになっていますから、起業家的な大学の姿が現れているわけです。そうすると、その大学がどのような形で私的な利益と交わっていくのかということのガイドラインが非常に精密に出てくるようになりました。
  日本は2004年に国立大学の法人化をやりましたけれども、そのときの議論の中でこの組織的な利益相反というのはぽこっと抜けているのです。すなわち、日本の大学は組織として利益に関わるということは恐らく想定していなかったということだと思います。しかし、この間における大学の出資法の改正もあって、大きなお金が組織として今後大学の中に入ってくる。それをどのような形で組織としてレギュレートしていくのかということは今後大きくクローズアップされていく問題だろうと思っております。
  様々な利益相反の問題ですけれども、John Moore、これは、個人的なこの人の組織を使って、そして、研究したものを特許の対象にしていくという、そういう話とか、あるいはずっと下がりまして、Betty Dongというのは、Bootsからお金をもらって、このBootsが彼女のやった研究に対して研究上のプレッシャーを掛けていくという、こういう問題が随分出てきました。あえて全部は申し上げませんけれども、1984年から2001年ぐらいまで、大きな、新聞紙上をにぎわすような利益相反の問題があって、この中から、大学としてソフト・ローでこのようなことが起こらないような、あるいは大学だけではなくて学会として起こらないような、そういうガイドラインをきちんと作っていかなければいけないという動きが出てきたんだというふうにお考えになっていただければいいと思います。
  これは少し作ってみたものなのですが、1960年代から2014年までのConflict of Interestという概念と、それから、Scientific Fraud、すなわち、科学的不正というものが、重立った欧米の研究所から発行されているジャーナルの中でそれが取り上げられている回数を示しているものです。興味深いことに、Conflict of Interestと科学的不正はほとんどタイアップする形で伸びてきているということであります。
  つまり、原則的には、Conflict of Interestという問題と科学的不正というのは、非常に公的なものであったものに私的な資金が入り、私的な利益が入ることによって発生する現象という意味では、根っこは同じだというふうにお考えになればいいと思います。というのは、ちょうど1980年代にほぼ同時にアメリカの議会でもConflict of Interestの問題と科学的不正の問題を学者の世界はどのようにそれを規制して、自制していくことができるのですかという問い掛けの公聴会が随分開かれることになるということから見てもそのことがお分かりになると思います。
  したがって、この当時からずっと出てくるのですが、我々が見ている研究上のデータというのは、私的なプレッシャーによって改ざんされたり、どこかで変更されたりしている可能性があるのではないかという、こういうような声が高まってくるわけです。いわばこの辺りから、我々の見ているアカデミアの世界が大きく変わったのだと思っております。
  先ほどもちょっと言いましたけれども、この問題をしばしば、例えば科学的不正もそうなのですが、イレギュラーなことが起こる現象を捉えて、そして、その責任者を追及して処罰していくのか、そのための法的な根拠を作っていくのかということにとどまっていると、この利益相反という問題の本当の意味はなかなか理解できないと僕はずっと思っております。
  すなわち、これはこういったガイドラインの持っている両義性というものです。我々研究者は基本的には何でもやりたいわけです。何でもやって、とにかくいい成果を作っていきたい。しかし、その人がどこかで道を踏み外す可能性がある。それをガイドラインできちっと決めておく。このガイドラインを決めておくということは、そのガイドラインをきちんと、非常に細かくきれいに整理していくということは、この範囲であれば、これを満たしていれば、あなたは全く自由ですよということを言っているにほぼ等しいわけです。
  研究不正の問題もそうですが、あなたは何か非常におかしいことをやっていると、それを告発して処罰していくというのは、これは研究者の行動をある意味では規制していくということですから、研究者の立場からすると非常にモチベーションが下がるわけです。なぜアメリカの大学がこれほど厳密に細かくガイドラインを作ってきたかというと、これは一方で研究者の行動を守っていくという側面もあるのだということであります。研究者の側からすると、このガイドラインに沿って研究をしている限り、誰も何も言う必要はない、何も恐れることはないということを決めているものだというふうに考えていただければいいと私は思っております。
  したがって、利益相反も研究不正もそうですが、それと全く連動していることが、個々の大学あるいは研究機関のマネジメント力の問題です。つまり、利益相反のガイドラインを決めるということは、このガイドラインに沿って研究者が自由に行動し、かつ道を踏み外さないようにするためのマネジメント体制をきちっと作っていますよということにほかならないのです。したがって、これを作っていくということは、一方で大学あるいは研究組織に対して非常に力強いマネジメントの能力を問われていくということだと思っております。
  もう一つの組織としての利益相反ですが、1980年にハーバードが同じように大きな問題を引き起こしたことがございました。ドイツの多国籍企業のヘキスト社から非常に大きな7,000万ドルぐらいのお金をもらって共同研究をやり、その問題がまず一つあって、それから、ハーバードが未公開の株式であるベンチャー企業の株に多額の大学の基金を投資するということをやったことがございます。
  そのときに、ここに書いてあるのはタイムズの言葉ですが、ハーバードは株式会社なのか、テストチューブの中にある、ある種の金の卵を探している、そういう金銭的な利益を求めている株式会社になってしまったのかという、そういう批判の記事が出たことがございました。この当時、アメリカの公的な大学といえども、実はこういうベンチャー企業の株式を株式として受け取るということは認められていなかったわけですが、それはやはりハーバードならハーバードの公的な役割を侵害しているという、そういうクレームです。これは大きな問題になりました。今ではそういうことは言われなくなりましたけれども、いわば大学というものは、1980年代、だんだん大学の財務が衰えてきますから、組織として基金を運用し、それによって高い収益を得るという行為は、大学が単なる株式会社になったのではないかという批判が高まってくるわけです。
  これに対してどのようなことが起こってきたのかということを少しお話ししようと思います。今は大体、ハーバードで大学の基金は3兆数千億円を超えていて、各大学で研究大学も多いところだと2兆円近くになっているのですが、1980年代から大学は非常に積極的に、例えばこういう未公開株も含めてですが、様々なチャンスを捉えて基金の運用に精を出すことになっていきます。今ではハーバードもスタンフォードも、毎年の収入の大体20%はエンダウメントから稼いだお金で賄っているという現状になっているでしょうか。
  しかしながら、ちょっと時間がないですから詳しくお話はできませんけれども、そのような活動がだんだん認められていくようになり、今ではエクイティ、株式を保有するということはごく当たり前になってきていますけれども、しかし、それは果たして公的な大学としての役割をどこか逸脱する可能性もあるのじゃないかという議論がやはり出てくるのです。それがAcademic Social Responsibility of Investmentという考え方です。大学がもし組織としてその資金をいろいろなところに投資するとすれば、それはアカデミアの公的な役割を超えない範囲でやるべきだという議論であります。
  とりわけ出てきたのは、後に出てくると思いますが、当時1980年代ぐらいに大きな問題になりましたのは、アメリカの多国籍企業が南アフリカの当時アパルトヘイトをやっていた、その企業の株式を持つということが果たして許されるのかどうかという、こういう議論が出てまいりました。それに伴って、今では例えばアルコールやたばこやギャンブル企業、こういったところの株式は持ってはいけないという、そういうルールも非常に厳密に出てくるようになりました。
  そして、1980年代から、このような社会的に見て許されないような企業の株式、あるいはそれに関わるような経済活動に大学が組織として関わることはあってはいけないと。とりわけ州立大学などは、大学の基金をそういうところに投資しているのを全部引き揚げるという事態が起こっていきました。それとともに、Academic Social Responsibilityとは一体何なのか、そのガイドラインは何なのかについて、各大学が非常に厳密にそのルールを決めていくということが生まれてまいります。
  Bの方に書いていますのは、ハーバード大学の株式の投資とか、それから、イェール大学もスタンフォードもハーバードも、マネジメントカンパニーを外部に作って、そこから大きな運用をしております。あるいは、ハーバードやスタンフォードというような大きな大学ではなくても、小さなところは、お互いに出資金を寄せ集めてCommon Fundを作って、そして、それをやはりグローバル投資でお金を稼いでいるということが起こっていますから、そういう事態が起これば起こるほど、大学の投資の在り方はどうかという、そういうガイドラインに非常に厳密に出てくるということであります。
  これは1970年代から、Leon Sullivanという議員の人のアイデアによって、先ほど言いましたように、反アパルトヘイトの企業などには決してお金を出すべきではない、あるいは、もう時間がないですから詳しくお話はしませんけれども、それ以外の人権を侵しているところ、社会的に悪だと思われているようなところに公的な機関が資金を出すべきではないという、こういう議論が出てきたわけです。
  そして、Divestment Actionと書いていますが、つまり、投資の引揚げです。これも時間がないですから全部お話しすることができませんが、この時代から多くの研究大学がガイドラインを作って、社会的に問題がある企業に投資しているものを全部引き揚げるという動きが出てきます。とりわけこの動きが大きかったのは州立大学です。やはり私立大学よりも州立大学の方が公的な役割についての意識が非常に鮮明ですから、そういうところは非常に多くの企業から資金を引き揚げるという現象が起こってまいります。
  ここはちょっと一覧表を挙げておきましたけれども、サウスアフリカで1986年以降どのような形でお金が引き揚げられてきた、何校ぐらいの大学がお金の引揚げに関わってきたのかという、これ、もし必要でしたら、一覧表もありますからお見せすることができます。この中に組織としてのConflict of Interestといいますか、社会的責務と関わるようなレギュレーションの在り方という態度決定があるということでございます。
  恐らく日本の大学も、今後、今のように運営費交付金が下がっていき、競争的資金で賄わなければいけなくなっていて、そして、民間の企業との共同研究が増えていき、あるいは特許の問題もより鮮明になってくるでしょうから、そうなってくると、大学の組織として、社会と関わり、私的な利益と関わることによるガイドラインをもっと精密に作っていかなければいけない。
  もう一つ言わなければいけないのは、実はこのガイドラインは大学によって相当違うということです。つまり、大学ごとに考え方が違う。行け行けどんどんの研究大学もありますし、駄目だというところもあります。ですから、その程度は実は様々です。様々だということは、それぞれの研究大学がこの問題に対しての自分のポリシーを持っているということです。そのポリシーに従って、この研究大学に自分がいればどれぐらい研究できるかということを判断でき、研究者はそれを求めて例えばしばしば異動していくということも起こっていくわけです。私が知っているケースでいうと、UCからスタンフォードに優秀な研究者が随分流れました。UCというのはカリフォルニア大学ですが、非常に厳しいですけれども、スタンフォードはその点非常に緩やかだと。
  こういうことを見ても、日本の大学は今後、個々の大学ごとにこのガイドラインを非常に厳密に、どのようなビジョンとどのような意思でそれを作っていくかということが求められていき、かつそれを作る大学のマネジメントサイドの経営力が非常に求められるということになってくると思います。ましてや、組織として投資活動の中に日本の研究大学も今後何かの形で関わっていかざるを得ないでしょうから、そうなってくると、組織として自分たちは利益の問題にどのような態度を持っていくかということが問われていくということだと思います。ですから、こういうところでまず議論を始められて、各研究大学にその覚悟を求めていくということは非常に重要なことになるだろうと考えております。以上で終わります。

【渡部主査】    ありがとうございました。
  引き続き、西尾委員の方にお願いしたいと思います。

【西尾委員】    西尾でございます。私は、組織的な利益相反のマネジメント、アメリカの状況について簡単に御紹介します。
  最初に、利益相反の対象となるInterestというのは何かということですが、一般的には専門的としての判断力を通常よりも低下させるおそれのあるものと考えられています。その中でも金銭的なもの、あるいは家族というものが一般的には強い要因だと考えられているわけですけれども、それ以外にもいろいろと、ここに書いてあるように、愛情、前言、謝意あるいは名声というものも主観的にバイアスを与えるものだと考えられています。
  ただ、日本ではもう利益相反というと金銭的なということになっておりますが、それは何で金銭的な利益を対象にするかというと、マネジメントのしやすさというところと、あと、一般に社会から見られた場合に金銭というのはいろいろとインパクトがあるということがあってマネージをされているのであって、必ずしも金銭的な利益だけではない。ある面、実際にマネジメントするときにいろいろ総合的に勘案しなければいけないと思っております。
  アメリカで組織レベルの利益相反というのは昔から言われていますし、必ずしもインスティテューショナルなという言葉は使われていなくても、先ほど上山先生からお話がありましたように、ハーバードのケース、あるいはMGHもハーバードの関連病院なので、ヘキストのような外国企業との共同研究というのは、組織的な利益相反の観点から議論ができる事例ではないかなと思っております。ただ、個人レベルの利益相反とは違って、国レベルでどうするという規定があるわけではありません。なので、アメリカの大学関係の団体、あるいはガイドラインといいますか、モデルを参考にしつつ、各大学で対応しているという状況にあります。
  きょうは、最初に、アメリカでも実は個人レベルの利益相反のマネジメントでも結構難しいということをお話しした後に、組織レベルの利益相反の状況についてその概要を御報告したいと思います。きょうのお話というかプレゼンの資料をもう少し詳しくしたものが東大の政策ビジョン研究センターのサイトにありますので、併せて御参考いただければと思っております。
  まず、アメリカの利益相反のマネジメントの状況ですが、実はやはり結構難しいということがあります。最初の方に書いてある、NIHが2006年にグラントを獲得した機関をサイトレビューしたのですが、それはジョンズ・ホプキンスとかいわゆる有力な大学を訪問したわけですけれども、そこでやはり幾つか課題があって、対象となる職員といいますか、研究者はInvestigatorと言われているわけですけれども、その定義がしゃくし定規に考えられていたり、あるいは研究プロジェクトに途中から参加する人をどうマネージするか、幾つか課題が明らかになっています。
  また、グラントを出す側がどうマネージしているのかということを、NIHの上部機関であるDHHSの監査機関が実際にNIH傘下のグラントを提供する機関を訪問したところ、そもそもその機関に提出された報告書の件数を把握していないとか、どういった金銭的な利益相反があったかということが認識されていないということがありました。そういう意味でいえば、実際の大学という現場、あるいはグラントを出す側でもなかなか十分にマネジメントがしにくい、あるいはやっていないという状況が明らかになっています。
  あともう一つ、2009年に『Science』が、個人レベルですが、金銭的な状況の開示が不十分なケースを挙げております。この中で実は色を塗ってある部分があります。これは後で御紹介しますが、これは大学の医学系のある学部の学部長が規定に違反して、報告をきちんと開示していなかったという案件になります。組織レベルの利益相反というのは、組織としてお金を幾らもらうとか、そういう問題もあるわけですが、一方で、組織をマネージする幹部の開示が不十分という場合も組織レベルの利益相反に絡んでくるということがあります。
  組織レベルの利益相反とはどういうものか、一般にアメリカでどういうものが規定されているのかということです。組織レベルの決定を下すときにその決定に関連するFinancial Interestであって、それは組織レベルで受け入れるものだけではなくて、その決定に関与する幹部の個人的なものも対象になります。アメリカでは、医学系の学部の学部長が個人的なレベルで金銭的な利益を有する場合が結構多い。3割から4割ぐらいと言われています。この場合、組織というのは、必ずしも大学本部だけではなくて、部局も該当します。
  この場合、Financial Interestというのは、研究費、寄附、エクイティ等が対象になっています。
  組織レベルの利益相反をマネージしないということは、当然その組織の活動あるいは評判を下げるということはありますが、それ以外にも、その組織を構成している人にも影響している。要するに、まじめにやっている人にも影響しているという意味で非常に影響が大きく、マネジメントは重要だと考えられております。
  上山先生のところにも少し出ていますが、ただ、連邦政府レベルでは規定がないものですから、大学の関係団体とかでモデルあるいは提言が出されています。一つの例として、2002年、今から10年以上前ですが、AAUが出したレポートの中に組織レベルの利益相反の話が出ております。その対象となるものというのはここに書いてあるようなものでありまして、実際にマネジメントをするときには、そもそもポリシーを明確に出すということと、マネジメントのプロセスあるいはそれを審査というか評価をする場を作ろうということです。更にいえば、ヒューマンサブジェクトリサーチ(Human Subject Research)についてはより厳格な審査が必要になるということが提言されています。
  あるいは、その後、2008年ですけれども、AAMCとAAUがこのようなタイトルでレポートを出しております。その中で幾つか特徴的なものがあって、一つは、研究と金銭的な取扱いをするときの意思決定のプロセスあるいは組織は分離すべきではないかということが提案されています。ここのレポートでは、最後にモデルポリシーが出されております。これはここのホームページにこのタイトルで検索していただければ、最後の方にモデルが出てきております。
  今のレポートは2008年のわけですが、先ほど上山先生の御報告では大体2002、3年までのものがありました。幾つかI-COIに関連する事例をベースにした議論がなされております。幾つか御紹介をしたいと思います。
  上のEmory大学のものというのは、最初に『Science』の表をお示ししたところで紹介したものです。精神医学部というふうに言っていいのか分からないのですけれども、その学部長が医薬系の企業から莫大な収入を受け取っていたということを報告していなかったということです。また、上限に関する大学の取決めにも従っていなかったということです。これは議会の調査が入りまして、最終的には、まずEmory大学にたしか研究費を出すのが一時期ストップされたと思うのですけれども、そういうこともあって学部長を辞職したというケースがあります。これ、2008年です。
  あるいは、大学ではないですが、Educational Hospitalと位置付けられるCleveland ClinicのCEOが医療機器の企業から金銭的な利益を受けていたことを報告していなかったということです。また、患者にはインフォームドコンセントの中でCOIを報告していなかったということです。当時このCleveland ClinicはI-COIのポリシーを策定していなかったので、一応策定するということになりました。
  この二つはいずれも大学あるいは研究機関の幹部が報告をしていなかった。これは個人レベルなのかというと、必ずしも個人レベルとは言えないわけです。なぜかというと、組織の意思決定に関わってくる立場にあるわけです。日本とは大学のガバナンスの仕組みが当然違うので、日本の大学における学部長の権限とアメリカの大学における学部長の権限は違うというのもあるのかもしれません。ただ、そういう身分、そういう権限を有する立場の人の個人的なものであっても、組織レベルの利益相反に関わってくるということは認識しておく必要があるかと思います。
  3番目がトロント大学のケースです。これはアメリカではないですけれども、あるセンターの臨床試験部門のトップとして招聘する予定の研究者がトロント大学で精神医薬と自殺行動の関連を発表した後に、招聘を取りやめるという通知が来ました。そのセンターを運営する上での研究費というのは企業から半分来ているわけですが、その精神医薬を作っている企業から1.5ミリオンの寄付を受けていたということがあり、研究者自身が、大学は研究の自由を阻害しているのではないかという裁判がありました。最終的には大学でのポストを獲得しています。これは2000年です。
  あとは、上山先生のところでBootsのケースがありました。これもトロント大学です。
  それ以外に、例えばカリフォルニア大学のバークレー校は、ノバルティスの関係会社と1998年に5年間の共同研究契約を交わしています。これはUCBのある特定の学部における研究費の半分以上を占めるぐらいの額をもらってやっていたということがありまして、一つはそれで影響を受けるということがあるのですが、もう一つは、対象とするのが遺伝子組み換え作物であったということ、あるいはその研究に反対する人がテニュアをとれなかったとかいろいろな問題が重なってくるわけです。そうして、いろいろと批判を浴び、この共同研究につきましては、インターナルなレビューとエクスターナルなレビューを共同研究が終わった後にやって報告が出ております。そういう形でいろいろ複合的に絡んでくるということがあります。
  あとは、ゲルシンガー事件も、大学の幹部が絡むということも含めて組織レベルの利益相反に該当すると思っています。
  利益相反のポリシーの中にどういうものがあるかということで、これ、数字は余り気にしないでください。説明は下に書いてありますが、どういうものが対象になるかということでいえば、上は幹部の個人レベルの利益の状況もありますし、公開企業あるいは非公開企業の株式の保有、あるいはロイヤルティー、ライセンスの対価、あるいはギフト、そういうものがいろいろと入っている。
  きょうは数字をいろいろとお示ししませんでした。なぜかというと、大学により違う、要するに、どのぐらいの額以上かということが違います。あるいは、ある大学には金額が書いてあるけれども、ある大学には書いていないなどいろいろあります。アメリカでもまだやはり非常に悩んでいるところかなと思いますので、項目だけ挙げておきます。当然アメリカと日本の状況は違いますので、アメリカの金額をそのまま使うということはなかなか難しいかと思います。一応この項目ということだけお示しします。
  実際にその後の対処はどういうふうにしているのかということをDHHSのサーベイからですけれども、研究成果の公表をきちんと保障するとか、あるいは被験者に状況を開示するとか、あるいはIRBに報告するとか、こういうようなもの。あるいは、Interestがない幹部に決定権限を移行させるとか、実際にこういう対処をされているというものが調査から分かっています。
  以上、アメリカの状況を簡単にまとめますと、アメリカは、連邦規則がない中で大学あるいは団体が独自にいろいろ考えて作ってきたという状況があります。これは当然大学のポリシーというか、大学全体としてのポリシーの問題があります。なので、一概にこれを規定しろとか、これをマネージしろということはなかなか国からは言いにくいという状況があります。アメリカの状況は、やはり連邦規則を作るように提言をされています。いずれにしましても、大学としての活動、その在り方を決めた上でこのポリシーを考えていかなければいけないのかなと思っております。以上です。

【渡部主査】    どうもありがとうございました。
  それでは続いて、最後は平井委員にお願いしたいと思います。

【平井委員】    平井でございます。私は利益相反、COIとは大体1996、7年からずっと携わっておりまして、長らく制度の構築とか、あるいはマネジメント、あるいはヒアリングの場に立ち会ってきました。本日は、そういう経験を踏まえて、COIの現場と今後というところで少しお話をさせていただきたいと思います。
  その前に、最初にちょっとコメントしたいことがあります。やはり私が携わってきた中でのお話ですけれども、これまでちょっとお話があった組織としての利益相反、COIですけれども、実は文科省で開かれました過去の利益相反に関する委員会でも議論はされておりました。これは報告書ないしは議事録等を見ていただければ分かると思うのですが、議論はされております。
  ただ、過去においては、まだ個人におけるCOIマネジメントが確立されていないと。まず各大学、各研究機関において個人的なFIに関するマネジメントを確立するのが急務であるということで、組織としての利益相反についてはこれを先送りにしました。つまり、問題の認識はしていたのですけれども、これはもう少し後でやりましょうという議論だったのです。ですから、今回のこの委員会でこういう議論がまた出ておりまして、これはある意味非常に望ましいことである。つまり、これまでの日本における個人的なFIにおけるCOIが大分確立されてきて、いよいよ組織におけるCOIの時代になったということかなと思います。
  それからもう一つ、非常に難しいことなのですが、COIとミスコンダクトの問題というのは確かにある時期から始まってはいるんです。これはアカデミアとプライベートカンパニーの密接なつながりという意味で、サイエンティフィックな歴史でもありますし、あるいはエコノミックな歴史でもありますし、非常に重要なターニングポイントから始まっているものかと思います。
  ここで一つの例を挙げたいと思います。極めて抽象的な例です。とある政府が、その国にある国立研究機関に数億円規模のグラントを出した。その研究所が、その研究所に所属する研究者が設立したベンチャーカンパニーにサブコントラクトを出した。それは理由があって、その会社が特許を持っているからです。ここに出さざる得ない理由があるから、そこに出しましたと。たまたまそのベンチャー企業の株式の大半を研究者が保有しておりましたというケースがあった場合に、これは我々COIのマネジメントをする立場の者にとっては非常に重要なケースです。必ずヒアリングをして、マネジメントをして、適切な対策を施します。なぜならば、こういうケースというのはタックスペイヤーあるいは国民目線からいって、税金の使い方として重要だからです。
  しかし、このケースではミスコンダクトが起きる可能性はかなり低いです。ほとんどありません。そのお金の大半は試薬代です。ですから、きちんと組織的にレビューをされていて、かつそのベンチャー企業がきちんと運営されている限りまず研究不正は起きないのです。だから、COIで重要なケース、すなわち、ミスコンダクトが起きる可能性が高いということは、これは特に因果関係はないのです。もちろんあるケースもあります。COIが高いときにミスコンダクトが起きる可能性もあるのですが、それは必然ではないのです。現場ではそういうことを常に日々やっております。ということで、この話をすると長くなってしまうので。
  もう1点だけいいですか。済みません。不正行為の問題なのですけれども、私、いろいろ調べたり、研究したりしていろいろな人の話を聞いたのですが、研究不正行為の原因というのは、例えば過度の競争とか、ストレスとか、研究環境とか、いろいろなことがあります。七つ八つあるのですけれども、いろいろな原因があります。でも、COIだけじゃないのです。対策は何かというと、私が一番大事に思ったのは、研究者間のコミュニケーションです。コミュニケーションが不足すると非常にミスコンダクトが起きやすい。だから、研究所内のコミュニケーションをよくすること、あるいはピアレビューをよくすること、あるいはラボノートをちゃんと作ること、いろいろな対策があるのです。そういう対策によってミスコンダクトは防げるというふうに考えております。
  それで、COIです。まず現場の状況ですが、先ほどお話ししたように、1997年頃からCOIの導入が進んで、全国的にはその必要性が知られるに至りました。最初の頃は、利益相反ということをお話しすると、「そんなことはもうやめてくれ。うちはそんなことはしない」と。今でも覚えていますけれども、私はある大学のあるセンター長にはっきり言われました。「うちは利益相反、やりません」。そういう時代もあったんです。
  それがだんだんCOIポリシーの制定がなされ、COI委員会の設置がされ、委員会での議論が進み、この20年ぐらいでどんどん良くなってきております。しかし、ある大学の調査によれば、COI委員会の委員あるいはアドバイザーを活用してのヒアリング、あるいはそのヒアリングをベースにした産学官連携活動の修正のアドバイス、いわゆる実行(enforcement)、これについてはいまだ不十分であるという、そういう報告がなされております。
  私はここでヒアリングの重要性について言いたいと思います。ヒアリングというのは非常に大事です。委員会の議論だけが大事なわけではないと思います。なぜならば、まずヒアリング対象者のCOIについての理解が深まる。やはりマンツーマンで話をして、いろいろなことを議論して、質問に答えたり、悩んだり、考えたりしていると理解が深まる。それはこちらもそうなのです。こちらも勉強する。対象者も理解が深まる。
  同時に大事なことは、組織側の問題点、例えばある規定がないとかですね。つい先日ありました。ある組織の規程では、物品購入に関する規則が抜けていました。あるいは、ある組織ではそこが非常に厳し過ぎるとか、いろいろな不備が明らかになる。そして、ヒアリングを毎年続けることによって、例えば毎年5人、10人という方をヒアリングしていけば、5年、10年たてば、非常にたくさんの、しかもキープレーヤーである方々とお話ができるわけです。これによってCOIについての組織内の啓発活動がなされます。それで、修正の必要な産学官連携活動を事前に見いだして、それを事前に修正ができる。これによって、組織としてはある意味リスクマネジメント、問題が起きることを事前に防止できる。COIのヒアリングというのは非常に効能があると思います。
  では、そういうヒアリングって実際どういうものなのかと。皆さん大げさに考えるかもしれませんけれども、実はそんなに大変なことではないのです。国立大学法人の場合であっても、非常に産学官連携活動を活発にやっている方を年間5人程度、あるいは2,000人、3,000人という研究者を抱える独立行政法人でも年間10人程度、こういう非常に産学官連携活動を活発にやっている方を対象にしてヒアリングすればよいだけです。この程度のことはやろうと思えばどこでもできます。そんなに大変ではないのです。
  ただ問題は、どうやってこの5人ないし10人を選ぶか、これがなかなか大変なのです。だって、2,000人、3,000人の人がいて、自己申告を毎年バーッと出してきて、中にはたくさん書いてあるわけです。これを全部読んで分析して、5人を選ぶ、10人を選ぶ、これ、なかなか大変なのです。
  どうやったらいいかというと、一番シンプルというか簡単なのは、Interestのマトリクス表を作るということです。つまり、その組織が重要視しているエクイティ、共同研究、兼業、物品購入、奨学寄附金等の寄附金、ライセンスとか、そういったInterestをまず抽出する。そして、重み付けをする。そのInterestに応じてそれぞれの対象者の自己申告をザーッとソーティングしていくわけです。そうすれば、こういった5人、10人といった人が抽出できるということかと思います。
  ただ、これ、紙の自己申告書で手作業したらやっぱり大変です。ですから、自己申告をウエブサイト、電子ベースでできれば、電子データをダーッとソーティングすればいいので、これ、非常に楽ですよね。結局こういったヒアリングの前処理がとても大事で、できればこういうウエブサイトあるいは電子入力のシステム、そして、それを処理するノウハウがある人が各組織に是非欲しいところです。いわゆる事務方です。COI委員会の事務組織、そういう方が欲しい。もしこういう方が養成できれば、そして、各大学あるいは各研究機関で共通のそういうプロセスが確立できれば、これをみんなでスムーズに共通に定型化して使うことができるのではないでしょうか。
  私が提案したいのは、今後ヒアリングをより活性化してCOIマネジメントを更に日本で定着するために、こういった前処理ができるシステムあるいは人材をみんなで作って、これをみんなで広めて、みんなでどんどん使っていこうということが大事ではないかなと思います。
  このCOIというのは、なかなかどこにあるのかというのが難しい概念です。ポジショニングです。いわゆるコンプライアンスという言葉があります。あるいは、リスクマネジメントという言葉があります。こういう中でCOIというのはどこにあるのだろうかと。これ、実は私も答えを持っていないのですが、ある組織の組織作りをしたときに、私はこれ、コンプライアンスの中に入れて考えました。これも一つの解だと思うのです。コンプライアンスというのは、狭義、広義あります。狭い意味では遵法、ルールを守り、法律を守ればいい。ただ、広い意味では、そういうコンプライアンスに対するアプローチ、考え方、組織の理念、こういったものもコンプライアンスに入ってくるわけです。非常に広いです。COIというのもある意味、コンプライアンスの一環として捉えることもできる。
  他方、リスクマネジメントという言葉もあります。ある意味、COIをきちんとやっていれば、リスクではないのですが、マスコミからのいわれなき誤解に基づくいわゆる炎上、問題になったりしてしまうということが事前に抑制できる可能性があります。真実に基づく炎上は構わないというか、しょうがないのです。ところが、実際多いのは、いわれなき誤解に基づく炎上が多いというのが実際です。ですから、これを最小限にとどめることが、組織あるいは研究者のダメージを減少できるのです。ですから、考え方によってはリスクマネジメントの中にCOIを分類することももちろん可能かと思います。
  大事なことは、不正防止ではない。誤解に基づく社会からの追及に対して速やかに適切にお答えして、不必要な問題を発生させないというマネジメント、それがCOIである。それはコンプライアンスの面から見ても大事だし、リスクマネジメントの面から見ても大事だし、これを是非確立していきたいなと思います。そういう意味で、先ほど申し上げたような前処理の確立あるいはヒアリングの充実、これは文科省を始め、我々こういう問題に携わる人間が努力すれば必ずできることだと思います。それを是非遂行して、より更に先のCOIのマネジメントの世界に日本が行けたらいいなと思います。ありがとうございました。

【渡部主査】    どうもありがとうございました。
  それでは引き続いて、事務局から資料2についての御説明をお願いします。

【小河専門官】    それでは、事務局から、資料2に基づいて利益相反マネジメントについて少し補足的に説明をさせていただきます。
  一番初めに「検討方向性について(素案)」と書かせていただいておりますが、中間的にまとめる1次まとめとしての報告書のイメージで1から4と書かせていただいております。こちらでリスクマネジメントの今後検討していくべき方向性、また各個別の利益相反マネジメント、技術流出防止マネジメントについて検討課題を少し抽出していきたいと思っておりますが、こちら全体については後半のところで議論させていただければと思っておりまして、まず一番下に書いてある、参考と書かせていただいております利益相反に関する概念整理、組織としての利益相反に関する情報整理、こちらについて簡単に説明させていただきます。
  めくっていただいて、ページ番号でいいますと13ページ目をごらんください。まず利益相反に関する概念整理について記載しております。特に先日の第1回でもコメントを頂きましたように、大学の経営層や研究者、こういった方々が利益相反に取り組む意義を理解することが重要ではないかということで、短期的な1次まとめにおいてもこの辺の概念を少し整理したいと思っておりまして記載しております。
  最初のポツに書いてありますように、産学官連携における利益相反状態は、直ちに望ましくないことではない。むしろ、産学官連携活動を進めるときにはその状態になることが不可避のものであるということをまず理解することが重要ではないかということで記載しております。
  2ポツ目の最後に書いてあるように、特に今、平成14年の取りまとめの概念と変更されることではありませんが、補足的に理解を整理していきましょうということで記載しております。
  3ポツ目に書いておりますように、会社法などで規定されている利益相反、双方代理などあると思いますが、こういったアプローチは比較的禁止によるところが多いかとは思うのですけれども、そういったものと違って、産学官連携においては禁止を一律に求める、そういったマネジメントではなくて、適切に対処していくということがマネジメントになるかと思います。
  めくっていただいて、14ページ目で、少し概念的なところを整理したいと思っておりまして、このような絵を描いております。こちら、てんびんの左側の部分、特に産学官連携を進める中で生じる個人の私的な利益、また大学組織が受ける利益、また企業側から見た私的な利益、こういったものが産学官連携を進めていく上で生じてくる。それに対して、右側に書いてあるように、大学に求められる使命、教育、研究、こういった使命を適切に実現する、また大学の客観性・公平性・信頼性、こういった求められる役割を維持する、また臨床や治験においては患者・被験者の利益を守る、このバランスを適切にとって産学官連携を進めていくということが重要ではないかと考えておりまして、このような図を描いております。
  次の15ページ目のところで、こちらの真ん中の図に書かせていただいておりますが、こちらもまだ十分に整理できているものではなくて、議論の余地はあると思いますが、利害対立がないような状態から利益相反状態になると、弊害が疑われる状態になる。こういったものに対して弊害の発生を回避するために、あらかじめアプローチをする、また、疑われないように社会へ説明責任を尽くす、こういったことが利益相反マネジメントの対象かと思っております。実際に研究不正などが発生した状態においては、利益相反マネジメントの対象ではなくて、また別のフェーズにあるのかなと理解しております。
  下のポツに書いてあるように、利益相反状態に対してのその中の幾つかフェーズがあるかと思っておりまして、実際に弊害が生じているような顕在的利益相反の状態、外見的利益相反と書かせていただいているように、弊害が生じているか否かにかかわらず、それを疑われるような状態、また潜在的利益相反は、産学官連携を実施すると必ず生じる利益相反状態、こういった概念の分け方が一般的にあるかと理解しております。
  めくっていただいて16ページ目、先ほど西尾委員からもプレゼンいただいたように、一番上のポツに書かせていただいておりますが、経済的報酬を受ける機会、それ自体は本質的に容認できないものではないと、そういった前提ではあるのですが、そういった状態にあるとどうしても外部から信頼が疑われるような状況にあるというような趣旨のことがAAMCの方でまとめられている、コメントされているというところがあります。
  こういったものに対して適切にマネジメントしていくということが利益相反マネジメントではないかと思っておりまして、真ん中の「利益相反マネジメントの意義」というところで大きく三つ書かせていただいております。大学自身のインテグリティを維持・確立するということ、また加えて、研究者自身を守るという意味でそういったインテグリティの維持・確立、また三つ目のポツにあるように、産学官連携を進めて社会に価値を提供する、そういったことを実現する、そういったことを適切に行っていくために利益相反マネジメントの意味があるかと思っております。
  マネジメントの手法・対応方法については、公開、管理、忌避、大きくこういったようなアプローチがあるかと思っております。それぞれ個別の状況に合わせて、また各大学のポリシーに合わせて、こういったものを適切に行っていくことが重要ではないかというようなことを少し整理しています。
  続いて17ページに、組織としての利益相反マネジメントに関する情報整理ということで、中間的な1次まとめにおいても、組織としての利益相反マネジメントについて情報を整理していきたいと思っておりまして、現状の情報を少し整理しております。
  組織としての利益相反の定義は、先ほどプレゼンにもありましたように、大学自身が利益を保有している場合、また大学幹部が外部との間で利益を保有している場合、こういった大きな二つがあるかと思っております。次の三つ目のポツにあるように、具体的なケースとしては、大学自身としては、エクイティを保有する場合、特許のライセンスをする場合、また大型の寄附・寄附講座を受け入れる場合や、大学幹部が収入を得ている場合、こういったものがあるかと思います。
  組織としての利益相反マネジメントの特性としては、一番上のポツの最後に書かせていただいておりますが、基本的には個人としての利益相反と共通している。大きく異なるものではないと。ただ、三つ目のポツに書かせていただいておりますが、ただ個人に比して組織としての利益相反は影響度が大きいので、その点は考慮してマネジメントをしていく必要があるのではないかというところです。また、そのマネジメントの性質上、大学幹部の理解、また協力が必要不可欠であるような特性のものです。
  めくっていただいて、今後取り組む上でまずポリシーを策定していくことが重要ではないかということで、こういった観点に沿って今後大学の中で検討を進めていく必要があるんじゃないかということで簡単に整理させていただいております。
  まずはマネジメントの目的、基本方針の検討、マネジメントの体制の検討、マネジメントの手法・対応方法の検討、こういったものについて検討する必要があるのではないかということです。マネジメント体制の検討のところについていいますと、特に組織としての利益相反について判断する上では、外部委員をどのように位置付けるか、外部の有識者をどういうふうに入れるかといったことが議論のところがあるかと思います。また、具体的にどういうふうに業務フローに落とし込むかといった具体的なプロセスについても検討が必要なところかとは思っております。
  また、19ページの一番下にグレーがかったところで留意事項として書かせていただいておりますが、幾つか今後検討の課題もあるかと思っておりまして、今後の検討課題として、まだ十分に整理できてはおりませんが、記載しております。例えばマネジメントの対象金額や意思決定の分離について、また、各出資活動における利益相反の概念とどう異なるかという、組織としての利益相反マネジメントをどう位置付けるかということ、また、インサイダー取引等は法令遵守事項でありますが、利益相反マネジメントの対象とは少し異なるのではないかということは整理しないといけないんではないかということで言及しております。
  駆け足で恐縮ですが、以上です。

【渡部主査】    ありがとうございました。
  今、3人の委員の方からお話を伺って、事務局の方から資料2の利益相反のところについて御説明いただきました。今から30分程度、利益相反の部分について御質問、御意見を頂ければと思います。後ほど資料2のほかの部分についてはまた後半で議論させていただくということで、利益相反について御質問、御意見を頂ければと思います。どなたからでも結構でございます。いかがでしょうか。

【伊藤(正)委員】    質問、よろしいでしょうか。きょうプレゼンテーションされた最初のお二人の方に御質問なのですが、米国では国は直接的に関与せずに、各大学等の組織として利益相反マネジメントに対してガイドライン等を定めたというお話でございました。これについて、直接国が関与することなく、自主的にそういったことがなされたのか、ある程度国との関与の中で大学が組織として定めたのか、その辺りの経緯等についてもし御存じであれば教えていただけたら有り難いと思って御質問いたしました。以上です。

【渡部主査】    いかがでしょう。上山委員か、西尾委員ですかね。

【上山臨時委員】    その質問に答える前に、私のプレゼンがちょっと誤解を生んだかもしれないのですけれども、私はConflict of Interestが研究不正を生んでいるということは言っていないのです。この問題は根っこが同じだということ。つまり、金銭的な利益を求めて研究不正なんてやるようなのは、これは不正というよりは詐欺なのです。ですから、これはそういうことが起こっているということではないということをまず申し上げておきます。
  というのは、今の御質問とちょっと関係しますが、利益相反のガイドラインを定めていくプロセスも、研究不正のガイドラインを定めていくプロセスも、同じように、国が直接的には明確な形で関与しようとしたけれどもできていないということです。つまり、同じようなことが1980年代には起こるわけですけれども、それは実際に起こっている現象に対して、マスコミも含めて国の議会なんかも非常に大きな声を上げていくというプロセスはあるのです。
  あるのですが、そのときに当然ながら各大学あるいは研究機関に対して、もっとこれ、きちんとやるべきでないかということを査問したり召喚したりとかして、学部長とか学長とかが随分呼び出されるわけです。それはアカデミアにとってとても大きなプレッシャーになって、したがって、例えば不正研究とはどういうものかという定義も考えなければいけないし、ガイドラインの内容もどうあるべきかということは当然考えないといけないわけです。
  そうすると、国側も、特に、国というよりも、ファンディングエージェンシー、お金を出している側、研究費を出している側は、研究のConflict of Interestが起こったら困るし、研究不正も起こったら困るから、そういうことをやるところは処罰をしようという態度は当然ながら明確にしていくわけです。そうすると、NIHとかNSFの中でも、ガイドラインの内容もこうあるべきだというような提言もだんだん出てくるわけです。
  しかし、最終的に起こったことは、この問題をコアとして、例えば利益相反とはどういうものかということを捉えましょう、あるいは研究不正はどういうものをカバーしているかということは捉えます、しかし、個別のガイドラインにおける個々のケースに関しては各大学に任せましょうという形に落ち着いていくわけです。
  したがって、研究不正でも、データの盗用、捏造、それから、改ざん、これは研究不正の大きな三つの柱であるということまでは連邦政府の中でははっきり意識は出てきますけれども、それ以外にも実はブラフなケースはいっぱいあるわけです。それぞれのガイドラインは各大学が非常に細かく決めていくというプロセスが起こってくるわけです。
  実はこれ、とても重要なのは、つまり、国とかファンディングエージェンシーがこれはこうあるべきだと決めた瞬間に、個々の組織あるいは研究者のモチベーションは相当下がる。インボルブメントは相当下がっていく。したがって、個々の機関がそれにきっちりと対応していくということがこの問題をよりうまく対応できていくプロセスになっていくということがはっきりしていくということが一つです。
  もう一つは、先ほどもちょっと人材の話も出ましたけれども、これは例えばコンプライアンスもそうですけれども、実はたくさんの専門知識を持つような人間が必要なわけです。この人間はどこで作っていくかというと、個々の大学の中で作っていかなければいけないのです。例えば利益相反もそうですけれども、法的な知識が当然要るわけです。法的な知識は要るけれども、アカデミアの知識も同時に必要なのです。したがって、この問題を弁護士さんも含めたところと連動していくような、アカデミアの側の人材が非常に求められるのです。だから、例えばアメリカのコンプライアンスオフィスではよくあるのは、実際に研究者であったPh.Dを持っているような人がヘッドになるわけです。そこの中にJDのような資格を持っている人がチームを組んでこの問題に対応していくということです。
  そうすると、つまり、研究者側の人材育成の問題とも実は関わっているのです。というのは、理科系の中で恐らく、例えば研究を実際にやっていくけれども、全くの論文を書くだけの研究者じゃない、この問題に関わっていくような科学者の人材も実は育てないといけないのです。そのことがアカデミアを研究に関するリスクマネジメントの中に真剣に関わらせていくプロセスになっていく。恐らくそれはそういうことが起こったのだと思います。
  だから、要約して言いますと、この問題を政府とかファンディングエージェンシーの側の上からの規程によって決めた途端に、このリスクマネジメントに魂が抜けていくわけです。ここはアカデミアの方がどう関わっていくかというプロセスを非常に大切にしていかなければいけない。そのときには、個々の大学のガイドラインを決めていくプロセスの中に、アカデミアの研究者も外部の弁護士さんなんか含めてそのまま入っていくというプロセスを作っていかないといけないのだと思っています。そういうことがアメリカの中でプロセスとして起こってきたのだと思います。

【伊藤(正)委員】    ありがとうございます。一番お伺いしたかったのは、大体理解できまして、直接的な指導みたいなものはなかったと。ただ、間接的な関与の中で、適切な表現ではないかもしれませんが、ある種の国あるいはファンディングエージェンシーからの圧力のようなものの中で大学が自主的にこれを定めてきたという、そういうプロセスという理解でよろしいわけですね。

【上山臨時委員】    そうですね。

【伊藤(正)委員】    はい。

【渡部主査】    ありがとうございます。では、野口委員。

【野口委員】    13ページにあります利益相反に関する概念整理のところはとても重要だと思っています。5ページのところで利益相反マネジメントに関する現状把握というところにも少し整理して書いてあるのですけれども、やはりこれまでの取組の歴史的、また時系列的な背景をきちっと押さえ、そして、現状取り巻く環境、どのような変化が現れて、そして、○○な課題が浮き彫りになったというストーリー性を持たせて記述することが必要だと思います。
  だから、ここで言う、13ページの真ん中のところの、補足的に説明を加えていくという表現は少し弱く、やはり概念の整理には見直し、改廃、新基軸を設けるということもその含意にあると思いますので、ここは、決意表明的な文章ではいけないと思います。もう少し突っ込んで、これまでの背景、変化、課題からこういうことが浮き彫りになって、それについて見直し、改廃、新基軸も踏まえた概念整理の方向性も見いだしていくような加筆が必要ではないのかと思います。
  2点目ですけれども、先生方のきょうの御説明もお聞きしまして、やはり私は、先般私学の現状の話も出ましたけれども、先日経済産業省が大学発ベンチャーの調査結果を出されました。平成20年に調査を出されて6年ぶりということで、その経過も私、見ていたのですが、平成20年のときの大学発ベンチャー数は大体1,800社でした。26年度の調査結果では、1,763社ということで、6年たってもほぼ変わらない結果となっています。
  ただ、かなり変わったのが、例えば慶應義塾大学や早稲田大学や私ども立命館大学もベンチャー支援活動を活発にしていますが、その三者の足した合計が、平成20年のときが162社で、26年度が137社ということで、三者の合計は減っています。私学は相対的に減る傾向にあります。逆に渡部委員長の東京大学は、平成20年調査の125社から、今回は196社という結果となり、かなり増えています。
  このことは、やはりいろいろな背景の変遷の経過もあり、顕著な例として官民イノベーションプログラムで学内にベンチャーファンドを国立は作っていきましょうという政府主導の取り組みも出てきています。そういった意味では、個人はもとより、組織としての利益相反というのはやはり国立大学を主体としてウオッチしていく必要性があると思います。もちろん私学も同様にウオッチが必要ですが、私学の多くは、出資できる、しやすい体制はあるものの、どちらかというと、アウトソーシング的なハウスカンパニー会社に出資をする、利益が上がるとそちらの方から逆に寄附をもらうというような、こういった利益相反マネジメントが一方で、私学には必要になってくると思います。
  また、国立、私立、医学部の有無もあると思いますけれども、設置形態で各大学における利益相反マネジメントの力点の置き方もやや違ってくると思います。そのような環境も考慮に入れ、一定の方向性を示しながら、それぞれの大学の考え方に基づいてマネジメントのガイドラインや規程等を学内で整備していきなさいというナビゲートも必要と思います。よって、繰り返しますが、こういう設置形態も踏まえた分け方も少し検討の必要性があるという感じがしました。以上です。

【渡部主査】    ありがとうございました。

【足立委員】    よろしいでしょうか。

【渡部主査】    どうぞ。

【足立委員】    先ほど組織的なCOIについてのいろいろなお話があり、専らFinancial Interestのところだけが出ているのですが、現実にはもっと大きな組織的な利益相反の問題があるような気がしております。それは例えば同業他社とのほぼ同様なテーマに基づいた複数の共同研究が同時に行われているとか、あるいは片方は奨学寄附金による特定のつながりを持った先生との自主的な研究というものと、それから、また別個、共同研究契約か受託研究に基づいた研究が同時進行して、それを大学が全く把握していないという状況が多分非常に広く見られると思うのですが、この問題を脇に置いておいて、Financial Interestの問題だけを組織的COIの問題として取り上げていいのかという気がちょっとしております。実際の大学の現場ではその問題の方がよほど大きな問題になるのではないかなという気がしています。
  特に職務発明として認められている範囲を大きく拡大して捉えてしまいますと、奨学寄附金か何かを使って自主的に行われた研究のものも職務発明として認めてしまい、ほぼ同じ内容で同時に進行している別の共同研究が他社との間にあると。こんな問題が起きると、もちろんCOIの問題でもあるのですが、同時に法令上の問題にもなってくるのだろうという気がします。多分こちらの方がエクイティの取得どうのこうのという問題よりもよほど深刻だと思うのですが、その辺りもし御意見のある方がおられれば教えていただければと思います。

【渡部主査】    何かございますか。では、林委員。

【林委員】    今おっしゃった点、非常に重要なところだと思います。産学連携の様々な企業との研究が進んでいる状況を大学の本部としてトータルに情報を把握していないと、実際今おっしゃったような問題が起こってくると思います。いろいろな切り口でその問題を扱う場面があると思うんですが、利益相反の対象としても、今おっしゃった点をどこかで大学本部がトータルで情報を管理して、そして、利益相反のチェックをしていくということの必要性としては入るのではないかと思います。
  今のとの関連でよろしいでしょうか。きょう頂いた資料2で、目次があって、参考1、2というのが付いていて、参考の方で頂いた中にきょうのプレゼンにもあったところの実務的なマネジメント手法とか対応方法についての記載がありまして、今までのものを更にバージョンアップを今回するとなると、実行のマネジメント手法とか対応方法についての部分をどれだけ本文の方に盛り込んでいくかというところが今回のメリットかなと思っています。そういった意味で、平井先生からもお話あったような、実践的なヒアリングだとかアドバイスだとか、そういった仕組みを今回の中で御提案していくというのは意義があるのではないかと思います。
  あとは、表現的なところでは、ちょっと違うのかなと思ったのが2か所あります。13ページのポツ3のところで、会社法等で規定されている利益相反について、「すなわち」以下のところで「禁止という対処が中心的であるが」と書かれています。この引用された条文におきましても、禁止というよりは、こういう場面においては株主総会における承認が必要だというチェックの在り方をしていますので、同じ利益相反でも、利益相反のおそれがある場合に当該当事者を例えば議決の会議の場から退出していただくとかそういった在り方もありまして、必ずしも禁止というだけではないと思います。これはほかのところで、対処の仕方は様々であるというようなことが書かれていますので、そういったところと整合性がつくようになればと思います。
  あとは、6ページ目ですが、三つ目の黒丸の実効的・合理的なマネジメント体制・システムの構築の必要性の1行目に、「利益相反マネジメントに対する否定的イメージが広がっているところ」ということが書かれているのですが、否定的イメージが広がっているところもあるかもしれませんけれども、ここまで言うとちょっと言い過ぎかなと思いまして、誤解があるところとか。要は、より適切な理解を促すべきであるというところは全く異論ございませんので、この辺の表現は少し、いろいろな場面があるという形にしていただいてもいいのではないかなと思いました。以上です。

【渡部主査】    ありがとうございます。いかがでしょう。

【苛原委員】    よろしいですか。

【渡部主査】    どうぞ。

【苛原委員】    先ほど野口先生でしょうか、医学部を持っているところとほかのところというのもあるのですけれども、きょう御発表になった先生でもよろしいのですが、ちょっとお聞きしたいのです。利益相反を考える場合に、もちろん大学全体、利益相反というのは基本的なところは一緒でこれは問題がないと思うのですが、医療系が非常に話題が豊富なんですけれども、そういう医療系、工学系様々な中で、やっぱり利益相反を大学全体としてはこうだけれども、各領域によって少しずつ変わってくるものなのか、それとも、同じようにもうこれで行きなさいというふうにすべきなのか、その辺りはどのように考えたらよろしいのでしょうか。

【渡部主査】    いかがですか、平井先生はそういう実務。

【平井委員】    COI、利益相反というのはいろいろな学部でなされていまして、例えば私が遭遇した例でいうと、割と文科系というかな、例えば人間工学的な感じですかね、音の研究をされている、あるいは光の研究をされている方とか、もちろん医学部、理工学部以外の外部でもいろいろな利益相反があるのです。それぞれやはり特徴はございます。医学系の利益相反が最も重要なのは、患者さんという被験者がおられて、その方の生命・身体の問題が出てきますので、やはり医学部系はとても大事だと思います。ただ、だからといって、他の工学部あるいは理学部あるいは文科系の学部においても同様に大事だとは私は思っています。

【渡部主査】    よろしいですか。

【苛原委員】    はい。同じようにやはり進めていくべきだという、そういう理解でよろしいですね。でも、内容はそれぞれ違う。

【平井委員】    でも、やっている作業はほとんど同じですけどもね。やはりお会いしてお話を聞く中で、そういうところでもやはりいろいろな企業さんとのお付き合いってあるのですね。そういうところのお話を聞くと、基本的には同じかなという気はします。

【西尾委員】    先生、いいですか。

【渡部主査】    どうぞ。

【西尾委員】    恐らく医学系の方がやはりいろいろと事象が非常にバラエティーに富んでいて、やはり同業の方というか、研究者というか、そういう方と一緒にマネジメントをしていくということが非常に重要ではないかなと。先生方同士で事情が結構分かっていたりとかということがありますので。
  あと、医学系がすごく重要だなというのは、それが一つの事例として、実際にほかのエンジニアリングでもマネージをする視点として幾つか勉強になる点があるかなと思いますので、やっぱり医学系だけで固まってしまうというよりは、医学系でどういうふうなことを見ているかということをシェアしていくということも必要かなと思っています。

【渡部主査】    ありがとうございます。ほかありますでしょうか。では、新谷委員、お願いします。

【新谷委員】    新谷です。資料2について、これが中間取りまとめの素案になるということですので、強調していただきたい点が2点あります。
  1点目は、利益相反マネジメントの有効性を確保する上で効果的な方策の一つとして、利益相反アドバイザーを学内に常勤的に置くということです。これは先ほど上山先生なども御指摘いただいていましたけれども、教員、若しくはURAを育ててもいいと思いますが、利益相反アドバイザーを常勤的に設置するということです。
  私自身も大学で利益相反アドバイザーに就任していて、日常的にあらゆる相談が持ち込まれますが、例えば最近非常に多いのが、産学連携の成果を商品として販売するに当たって、企業側が販促のために筑波大学の名称使用とか、担当教員のコメントを希望している、それを認めてよいかどうかというものです。筑波大学では、産学連携に関わる成果を商品化するに当たって、筑波大学の名称を使用して販促を行う場合の名称使用等については、産学官連携活動が大学の信用に関わる場合であるので、その条件を利益相反委員会で決めています。それが利益相反アドバイザーに持ち込まれて、相談に応じているということです。
  また最近では、外国の学術誌に投稿したところ、利益相反について開示するように求められており、大学に譲渡した自分の特許等については記載すべきかどうか、記載するとしたらどのようにしたらいいかといったような相談なども来ます。
  前者の大学の名称使用の問題ですと、大学自身の判断の問題です。後者については最終的には学術誌の発行者側に決定権限がありますが、それぞれの学術雑誌での投稿規定が非常に曖昧なので、やはり学内のアドバイザーが相談者に、利益相反マネジメントの原則という観点から必要なアドバイスを行っていくというような対応をとっています。いざというときに相談相手として外部の専門家を確保しておくということは重要ですが、大学における日常的な利益相反問題に関する相談というのは、学内の事情や学内規則などに非常に制約される場合が多い。こういう問題に答えるためには、やはり学内の常勤の教員などを利益相反アドバイザーとして任命することが最もふさわしいと考えられます。
  実際のところ、大学でも産学連携に伴う定期的な個人的利益の自己申告によるマネジメントは行っていますが、利益相反アドバイザーが学内からの多種多様な相談に日常的にきめ細かく対応して、現実の問題に発展する前に解決していくという活動が、定期的な申告よりも有効に働いているということが言えると思います。
  2点目としては、資料2の19ページの三つ目のポツに情報公開ということが出ていますが、特に組織としての利益相反に関する情報公開を促進するということは非常に重要なことだと思います。利益相反に関しては、基本的には大学においてできる限り情報公開に努めなければならないと考えます。もともと公開というのは学術の世界の基本的原則だと思いますが、特に組織としての利益相反問題を考えるときは、公的機関として利害関係に関する説明責任があるということは当然であると思います。利益相反委員会や利益相反アドバイザリーボードにおける審議結果などについても、個人のプライバシーとして尊重しなければならない事項を除いて公開するといったことを特に書き込むべきではないかと考えています。
  厚労省も、平成24年3月から倫理審査委員会のメンバー、会議の議事概要を含めていろいろな情報をホームページに公開するということを始めております。特に昨年12月の厚労省の臨床研究に係る制度の在り方に関する報告書においても、製薬企業からの資金提供などの開示については法的規制も視野に入れて対応を検討するべきであるといったことも盛り込まれていますので、利益相反マネジメントに関する開示という概念は非常に重要であるということを強調した方がよろしいかと思います。
  更に付け加えますと、細かいことですが、こちらの資料2の5ページの脚注に、科学技術イノベーション政策推進専門調査会の資料の引用として、下から3行目に、「我が国の利益相反マネジメントは、不祥事対応として法令遵守を徹底させる意味が強く、「管理取締り」的な傾向が強いマネジメントが実施されている状況」とあります。確かにこの資料を見ると、アメリカとの対比において日本が管理取締り的な傾向にあると書かれてはいるのですが、アメリカの方が、PHSやNSFなどにおいて連邦規則によって助成金に関する利益相反マネジメントを取り締まっていますし、サンシャイン法なども成立していますので、むしろ日本の方が大学にお任せといった状態で今まで来たと思うので、ここの引用は少し違和感を覚えました。以上です。

【渡部主査】    ありがとうございます。どうぞ、江戸川委員。

【江戸川委員】    江戸川です。2点コメントさせていただきたいと思います。
  一つが、説明責任の観点で、先ほど新谷委員からもありましたけれども、最近の傾向としては、情報を公開するということを求められる局面が、論文発表とか、インフォームドコンセントにおいても増えてきていると思います。この辺り、具体的にどの範囲までどのような形で記述すればいいかということは、私も相談を受けることが増えてきているのですけれども、大学ごとや、個々の利益相反委員会での判断でかなり食い違いというか差が出ているのではないかというふうに思っておりまして、事例の紹介も含めて、情報の公開の在り方について何かお示しができると非常に有用なんじゃないかなと思っております。
  次に、説明責任という意味では同じような話ではございますが、対外的にアピアランスの状態にあるときに大学として説明をしていかなければいけない局面、これは広報とか、あとはトップマネジメントの方々が対外的に説明をしていくということになるのだと思いますが、利益相反のマネジメントに関しては、ほとんど研究協力関連の部署とか人事関連の部署が主導で学内の体制を作っていることもあり、最後重要な局面で広報関係の方が関わってくるのですが、なかなかその周知がされていないというか、うまく連携がとれていないというようなケースがあるように思います。社会から何らかの疑義が掛けられたときには、マスコミの方はトップマネジメントに直接取材に行ったりしますので、こういったときにきちんと利益相反マネジメントの結果を受けて説明ができるように、学内体制を整備することというのも加えて追記をしていただければいいかなと思います。以上です。

【渡部主査】    ありがとうございました。では、平井委員。

【平井委員】    済みません。公開という点で私も一言申し上げたいのですけれども、いわゆる透明性、transparencyという概念がございますけれども、いわゆるサンシャイン法とか製薬企業の行っている情報公開ガイドライン、ああいう公開の仕組みと、利益相反マネジメントが大事にしている透明性の概念というのは全然違うのです。同じ透明性ですけれども、サンシャインみたいなやり方というのは、透明性によって現れた情報の宛名が、受け手である国民に行くのです。それで、国民によってそれがハンドリングされて、判断されて、アクションが起こされるというのが、サンシャイン法みたいな透明性の考え方です。
  同じように透明性という言葉は使うのですが、COIの場合にはちょっとこれ違っていて、受け手が組織のCOI委員会なのです。そこに対して研究者が自らの情報を開示して、そこがハンドリングをする。そこを経由して社会に対して説明責任が発せられるという意味で、この二つ、いわゆる公開の仕組みとCOIというのは、同じtransparencyという言葉を使うのですけれども、大分違うのです。片方はレトリックがちょっと入っているのです。
  COIで大事なのは信頼関係です。研究者の方がどういう情報を委員会に話すのか、アドバイザーに話すのかは信頼関係です。信頼関係のベースにあるのは秘密保持です。ですから、そこにはやっぱり非常に機微な取扱いが大事なのです。例えばCOI委員会の中で、ある組織では全ての名前を匿名でやっているところがあります。あるいは、実名でやっているところもあります。これはケース・バイ・ケースですけどね。その審議内容というのは原則として非公開です。ただし、どういうマネジメントをしましたかとか、何件扱いましたかと、必要なことはもちろん外部に対して発表はしますし、問題が起きれば当然その内容について踏み込んで発表すると思うのですが、基本的には非公開です。
  ですから、公開という概念は非常に難しくて、とても大事ですが、これをケース・バイ・ケース、どういうフェーズの場合にどういうふうに使っていくのか、社会に対してどういうアカウンタビリティーをとっていくのかというのは一個一個慎重に考えないといけないと思います。それを大きい概念で、透明性大事だね、公開大事だねということで全部くくると、大事な信頼関係というシステムとか、エンフォースメントという仕組みが損なわれる可能性があるということをちょっとお伝えしたいと思います。

【渡部主査】    ちょっと短くお願いします。

【新谷委員】    公開についてですが、私が先ほど発言したのは、特に組織としての利益相反についてのことです。組織として大学が奨学寄附金を多額にもらったとか、多額の実施料をもらっているなどの関係がある場合は、やはり大学は公的機関として開示するという必要がある。ただ、それだけで開示するというのではなくて、例えば奨学寄附金を多額にもらっていて、更にそこと共同研究をやろうとする場合、それを審査した結果、それは必要だから認めて、やりましょうといったときに、こういった利害関係がありますよということを対外的に示す。隠すのではなくて示す。そういったことが大変重要なのではないかということを強調したかったので、申し上げておきます。

【渡部主査】    済みません、まだあるかもしれませんけれども、少し時間が超過してまいりましたので、次の、先ほど申しました検討方向性について、資料2の取りまとめについて、今、利益相反の議論を先に進めましたけれども、こちらの方に進ませていただきたいと思います。事務局から資料の説明をお願いします。

【小河専門官】    それでは、事務局から、資料2を簡単に説明させていただきます。資料2の目次の1から4のところを簡単に説明させていただきます。
  まず2ページ目のところですが、先日の御意見も頂いたように、産学官連携リスクマネジメントに取り組む意義として、まず社会とのつながりを大学が求めていく、そういった環境の中で適切に取り組むことの意義を明確に示すべきではないかというところを1ポツで説明しています。また、多様なリスクマネジメントの対象、コンプライアンスの対象などあると思いますので、そういったものを全体として捉えられるようにまず示した上で、個別の要素について検討していくのがいいのではないかというところを少し書き込めればと思っています。グレーがかっているところはまだ十分に整理できていないところですが、こういったところを整理した上で個別の論点につなげていくようなまとまりに最終的にしていければなというところを記載しております。
  四角囲いの下のポツとして書いているところは、まず大学のインテグリティを適切に維持することの重要性、そのためのマネジメントが必要ですよというところ。その下のポツとして、また研究者を守る、そういった意味合いもあるので、リスクマネジメントに取り組む必要があるのではないかというところを書いています。その上で、その下のポツですが、大学経営上の重要な要素として位置付けて取り組むことが重要であるというところのメッセージを少し書き込めればなと思っております。
  めくっていただいて、3ページ目のところに、先日頂いた議論を少し整理させていただきました。検討の全体の方向性として大きく幾つか分けて、それぞれの各リスク要素について検討するのがいいのではないかということで少し整理しています。
  丸1として、実効的・合理的なマネジメント体制、またシステム、こういったことを構築すること。
  また、学長、役員レベル、大学経営層に対して、トップマネジメントがやはり必要ではないかということで、そのためのマネジメントの必要性、こういったことの理解を促進することが必要ではないかという点。
  また、研究者に対して、やはりリスクマネジメントに取り組むことの意義などを普及啓発していく、また取り組み方を教えていく、そういったことを理解しやすいように、それぞれ個別の要素としてばらばらにお伝えするんではなくて、分かりやすく伝えていく必要があるんではないかという点。
  また、リスクマネジメント人材と書かせていただきましたが、専門的な担当者など、そういった人材の育成や確保、そういったことをしていくこと。また、そういった者が適切に取り組めるように、事例を把握し、また情報を共有していく、こういったことについてそれぞれの要素について検討していくのがいいのではないかと整理をしています。
  めくっていただいて、4ページの留意事項に書かせていただきましたが、その上で留意しないといけない点として、1ポツ目に書かせていただいておりますが、優先的に取り組む事項を各大学の事情に合わせてそれぞれ検討していくのがいいのではないかという点、画一的な取組は余りいい結果を生まないのではないかということを書いています。2ポツ目として、いろいろな委員の方から御意見いただきましたが、教育・研究の自由、また学生の教育、こういったことを十分に配慮した上でどういった在り方があるかということを適切に検討していくのがいいのではないかという点を書かせていただいております。
  めくっていただいて、5ページ目のところに利益相反マネジメントについて現状把握というところを書いています。こちらはまだ十分に整理できていないところであるので、今後もう少し整理して記載できればと思っておりますが、行政を取り巻くガイドラインや報告書などを整理した上で、平成14年時点からの環境変化について真ん中のところで書いております。また、下のところで、その上で課題が幾つかあるのではないかというところを整理していきたいと思っております。
  めくっていただいて、6ページ目のところですが、そういったことを踏まえて、こちらの部分も今後もう少し詰めて検討していければというところであります。まず個人としての利益相反マネジメントについて既に取り組まれている大学が多いとは思いますが、こういった中で特有の課題として、一つ目のポツですが、そういった取り組んでいる大学においても形式的マネジメントに陥っている、形骸化している、そういったケースもあるのでないかという点、それを踏まえて実効的なマネジメントを行う仕組みを今後検討すべきではないかということを記載しております。
  組織としての利益相反マネジメント特有の課題についてですが、こちらについては取組を行っている大学がまだ多くないと認識しておりますので、どういうふうに適切に取り組むべきかというところはその在り方を検討していく必要があるんじゃないかという点を記載しております。
  下のグレーがかっているところはまだ表現も含めて十分に整理できていないところですが、先ほどの全体の方向性に記載したように大きく五つの観点に分けて、マネジメント体制・システムの構築や、トップマネジメントの必要性、研究者への普及啓発、また人材の育成・確保、事例の共有の在り方、こういった観点から利益相反マネジメント特有の在り方を少し整理していきたいと思っております。
  めくっていただいて、技術流出防止マネジメントについてですが、大きく、営業秘密的な情報管理と安全保障貿易管理、こういった要素に分けて、現状把握を今後少し整理していきたいと思っております。こちらも、ガイドラインや法令関係、こういったことについて整理した上で、現状の課題をもう少し整理していきたいと思っております。
  そちらを整理させていただいた上で、9ページ目の検討すべき課題、こういったところを整理していきたいと思っております。まだ現状把握を十分できていない中で恐縮ではありますが、委員の皆様からの意見を踏まえて、こういう方向性があるのではないかということで書かせていただいております。
  基本的な方向性として、営業秘密管理については、技術情報管理それ自体はまず教員自身、研究者自身が主体的に取り組むということが重要ではないかという点です。そのためには、どういった管理の在り方があるかというノウハウを共有するとか、管理をするための環境のどういうふうなサポートがあるか、そういったことを検討し、実現していくことが必要である。また、秘密情報は幾つかの種類があると思いますが、自身の生み出した発明についてなどの情報、また企業側から取得した情報、こういったそれぞれがあることについてまず認識した上で、秘密保持契約などは契約事項ですので、そういったことは十分に理解した上で管理をする必要があるんじゃないかという点。
  また二つ目のポツですが、秘密管理する対象を明確化することが必要じゃないかという点。一律に全てを秘密にするというところは現実的ではないので、その範囲を明確にする必要があるのではないかということを記載しています。3ポツ目としては、大学特有の事情を十分に考慮した上で、どういったやり方があるかということを検討することが重要ではないかという点を書いています。
  続いて、安全保障貿易管理について、10ページ目に書かせていただいております。基本的な方向性としては、(2)と書いてある中ほどですが、法令遵守事項であるということを大学経営層、また研究者自身が認識し、取り組むことの意義、その必要性を十分に理解することが必要じゃないかというところです。また、特に技術範囲が広いなど特有の事情もありますので、研究者自身が取り組むということが重要ではないかという点を書いています。
  また、二つ目のポツにありますが、大学の経営資源が限られておりますので、そういった中でどう実効的なマネジメントができるのかということは十分に検討する必要があるのではないかという、そういった基本的な方向性の下で、各論点でブレークダウンして記載していければというところを考えております。
  12ページ目のところは、まとめて少し書いておりますが、今言った利益相反や技術流出防止、こういったところを優先的に取組の検討を進めていくという方向の中で、また更にそのほかのリスク要因について、特に国際産学官連携や発明報奨の在り方、こういったところも今後検討を進めていくべきではないかというところを少し書いています。
  簡単ですが、以上です。

【渡部主査】    ありがとうございます。
  これについて御意見があれば頂きたいと思います。

【伊藤(正)委員】    よろしいでしょうか。

【渡部主査】    では、伊藤先生。

【伊藤(正)委員】    二つ申し上げたいと思います。
  1点目でありますけれども、研究者の啓発というのは、こういったコンプライアンスの問題は継続的に粘り強くやっていく必要はもちろんございます。その一方で、いわゆる理工系の研究者というのはこういったコンプライアンスの問題に対して極めて関心が低いというのも事実です。まず一つ思いますのは、その一方で広義の意味で、大学で研究支援に関わるような人たちがいて、例えばURAであるとか、あるいは産学連携コーディネーター、あるいはいわゆる知財の管理をする人たち、そういった人たちは日常的に研究者に対して接触する機会も多いわけでありますし、また、彼らは一般的な研究者と比べると、こういったコンプライアンスに対する意識が高いことが一般的でありまして、そこに対する普及啓発。知財をやるにしても、産学連携コーディネーターをやるにしても、URAにしても、こういったコンプライアンスについてはワンセット、一通りのリテラシーを持つ人を育てるというような観点も重要ではないかなと思う次第であります。
  二つ目でありますが、安全保障貿易管理の話でございます。大規模のリサーチユニバーシティであれば、既に輸出管理体制は構築されて思います。今、焦点として考えるべきところは、中小規模の国立大学あるいは私立大学。もちろん私立でも一部先行しているようなところもございますけれども、中小規模の国立大学ですと、輸出管理のために専任の専門家を置くことは極めて困難であります。その一方で、輸出管理専従の人を一人置くだけの仕事量があるかというと、必ずしもそうでもない状況が見られるわけです。
  となると、複数の大学を束ねて一人の専門家が見る、そういったような仕組みを構築するということも一つの考え方。もちろん中小規模の大学だからといって、その大学に所属する人たちが輸出管理に関するリテラシーが全く必要ないということはないわけでありまして、ある一定レベルのリテラシーの人はいるけれども、何か専門的な問題で安全保障貿易管理に関して対応が迫られたときに、それに対して対応できるような仕組みを構築する。それで、複数の大学を束ねて一人の専門家を雇えるようなそんな仕組みがあったら、それはそれで結構有効に機能する可能性があるんじゃないかと思う次第です。以上でございます。

【渡部主査】    ありがとうございました。ほか、いかがでしょうか。では、野口委員。

【野口委員】    全体のまとめの枠組みですけれども、利益相反マネジメントと技術流出防止マネジメント、この二つを2軸にしたのは、意見も拡散しませんし、絞ったのは適切であるという感じがします。一方でこのまとめでは様々な問題提起や方向性まで示していますので、やはり各大学において適切なリスクマネジメントを推進するためにも、各大学での定着についてという項を一つ入れる必要があるのかなと思います。このまとめを是非各大学の理事会等で議論していただき、既存のマネジメント体制への反映や見直しに役立て、また研究者の理解増進に活用するなど、そういう定着に繋がる要請も含めることが重要ではないかと思いました。
  それから最後の、残された課題も12ページのところにありますけれども、まとめではなくて、残された課題は具体的に何なのかということをもう少し書き込んだ方が良いと思います。国際産学連携、発明報奨、もちろん守秘義務等の課題もありますけれども、やはり課題は課題として明記し、今後継続して議論する重要事案であると少しめり張り付けて表現した方が良いのではないかと思いました。以上です。

【渡部主査】    ありがとうございます。三尾委員、お願いします。

【三尾委員】    感想というか質問ですけれども、この目次を拝見すると、利益相反マネジメントと技術流出防止マネジメントと大きく二本立てで全体のリスクマネジメントの検討ということでまとめられていると思うのですが、個別に拝見すると、技術流出防止マネジメントの方は、ガイドラインと現行法令の現状把握ということで、一つの規則といいますか、ガイドラインを前提にそこから更に検討していこうという姿勢が示されていると思うんです。利益相反マネジメントの方は、平成14年度の報告書の位置付けがちょっとよく分からなくて、この報告書の上に更にそこから検討した形での検討なのか、その構成がちょっと不明確ではないかなと思いました。平成14年の報告書はガイドラインと違って位置付けが低いんですけれども、その辺りどういうふうに整理されるのかを明確にした方が、今まで報告書を基に利益相反の仕組みを作られていた大学もあると思いますので、その辺りを明確にした方がいいかなと思います。
  それを踏まえてですが、今までの取組から何が問題で、今現状こういう問題があるから、この報告書の取りまとめが必要だということがもうひとつよく分からない。現状把握でここが問題なので、こういう形で解決していきましょうという解決の方向性も含めて示された方がこの取りまとめの重要性が高まるのではないかなと思いました。以上です。

【渡部主査】    ありがとうございます。御意見ということで承ったと思いますが、いいですよね。
  何かコメントありますか?

【小河専門官】    利益相反について報告書ということで、各大学の取組を促すというのが平成14年の時点の取りまとめと認識しております。それを受けて、例えば今回ガイドラインを作るのかどうするのかというところは今後の検討の余地かとは思うのですが、それを踏まえてどうしていくのかというところは今後の検討かとは思っております。

【渡部主査】    西尾委員。

【西尾委員】    12ページのまとめのところに書かれてあることなのですが、それをこの委員会で考えていくということなのでしょうか。例えば発明報奨の在り方とか外国企業との連携活動というところも含めるということでよろしいのでしょうか。特に発明報奨みたいなところは別なところでやった方がいいのかなという感じもします。

【小河専門官】    回答としては、これも含めて検討していくことを想定しています。特に職務発明制度の改正などもありますので、そういった中で、大学の報奨の定め方というか、決めるための手続、そういったことの在り方を少し議論する必要があるのではないかということで検討課題として書かせていただいております。

【渡部主査】    では、最後で。

【伊藤(伸)委員】    済みません、短めに。お願いというか、意見ですけれども、先ほど三尾先生からこれまでの議論との比較というところがありました。私は、前半の野口委員の発言にもあるように、設置主体のことも含めて、大学全体のガバナンスを踏まえた上での検討を進めていただきたいと思うのです。国内の大学におけるガバナンスの形が恐らくこれの随分前の委員会で始めたときと相当大きく変わっていると思うのです。それを踏まえた上で、しかもこの利益相反の部分も組織的な部分がクローズアップされてきたように、対象も変わっているし、その根本となるような大学全体のガバナンスも変わっているのだと。それも野口委員の言うように、設置主体によってそれぞれ立場がすごく違うのだという点を押さえた上で検討していただくと、深みが出ていくし、違いが鮮明になるのかなと思いますので、意見として、希望として申し添えさせていただきます。

【渡部主査】    ありがとうございました。多分まだ御意見があると思いますし、事務局としてももっと御意見を頂きたいと思っていらっしゃると思いますので、この後の進め方の中で、そこの辺どういうふうにされるか、事務局から御説明いただければと思います。

【小河専門官】    それでは、資料3を御覧いただければと思います。「今後のスケジュールについて」と書かせていただいております。まず会議自体、第3回として6月19日、1か月後にもう1回開かせていただいて、その中で第1次取りまとめ、こちらのまとめについていま一度議論させていただければと思っております。その議論を踏まえて、6月中を目途として、検討の方向性についてまとめをしていきたいと思っております。
  その前段階として、第3回の会議までに、一番上に書かせていただいておりますが、以前御意見をいろいろ頂きましたし、今、三尾委員からも御意見を頂きましたように、実態把握が必要ではないかというところは認識しておりまして、数大学に対して少し実態把握調査をした上で、検討課題を少し抽出したいと思っております。各リスク要因、特に利益相反、技術流出防止について、各大学の取組状況、特にガイドラインに沿った運用など、どういった実態があるかというところを把握したいと思っております。そういった実態や各委員からの意見を踏まえて、今記載しているものを少し修正、そういった意見を反映した上で、第3回のまとめ案とさせていただきたいと思っております。
  また、今回委員の皆様からいろいろ御意見いただきましたが、追加的に現状案について御意見あると思いますので、メール等で頂ければと思っております。ひとまずの締切りのめどとして、5月27日水曜日、来週をめどにまず御意見を頂ければと思っております。また、頂いた意見は一通り整理させていただいて皆様に共有させていただいた上で、報告書に反映させていただければと思っております。また別途御案内させていただきますが、そういったスケジュールで予定しております。事務局からは以上です。

【渡部主査】    ありがとうございました。そういうようなことでございますので、テーマが結構多いので、いろいろ追加の御意見は是非頂ければと思います。
  それでは、これで大学等における産学官連携リスクマネジメント検討委員会を終わらせていただきます。本日は御多忙中のところを御丁寧に貴重な御意見を頂きまして、誠にありがとうございました。閉会いたします。

――  了  ――


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