産業連携・地域支援部会 大学等における産学官連携リスクマネジメント検討委員会(第1回) 議事録

1.日時

平成27年4月23日(木曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省 東館 15F特別会議室

3.議題

  1. 運営規則について(非公開)
  2. 大学等における産学官連携リスクマネジメントの現状と課題について
  3. その他

4.出席者

委員

渡部主査、馬場主査代理、足立委員、飯田委員、伊藤伸委員、伊藤正実委員、苛原委員、植木委員、江戸川委員、新谷委員、田仲委員、西尾委員、野口委員、芳賀委員、林委員、平井委員、三尾委員

文部科学省

川上科学技術・学術政策局長、村田科学技術・学術総括官、山下大学技術移転推進室長、松本国際企画室長、西島大学技術移転推進室長補佐、小河大学技術移転推進室専門官

5.議事録

【山下室長】    それでは、定刻となりましたので、ただいまから科学技術・学術審議会  産業連携・地域支援部会大学等における産学官連携リスクマネジメント検討委員会の第1回を開催します。
  科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課大学技術移転推進室長の山下と申します。本日は、お忙しい中御出席いただきましてありがとうございます。本日は最初の会合でございますので、冒頭、私が進行を務めさせていただきます。
  また、主査代理の指名等、人事案件等に関する議題が終了するまでの間は、非公開で進めさせていただきます。
それでは、まず配付資料の確認をさせていただきます。

【小河専門官】    (配付資料の確認を行った。)

○主査代理は、科学技術・学術審議会産業連携・地域支援部会運営規則第2条第7項の規定に基づき、渡部主査が馬場委員を指名した。

【山下室長】    (資料2に基づき、委員の御紹介を行った。)

○科学技術・学術審議会産業連携・地域支援部会大学等における産学官連携リスクマネジメント検討委員会運営規則について、資料3に基づき事務局より説明後、原案のとおり了承、決定された。

【渡部主査】    それでは、本検討委員会の議事の公開については、運営規則第4条に基づき、議事は原則公開というふうになっております。したがいまして、ただいまから公開とさせていただきたいと存じますので、報道関係者及び一般聴講者の入場を許可したいと思います。

(報道関係者及び一般傍聴者入室)

【渡部主査】    よろしいですか。それでは、ただいまから公開で、大学等における産学官連携リスクマネジメント検討委員会を進めさせていただきたいと存じます。
  本検討委員会の主査を務めさせていただきます渡部でございます。また、馬場委員が主査代理に就任しておりますので、私どもの方から御挨拶を申し上げたいと存じます。
  まず、渡部でございます。今回主査を引き受けさせていただきます。よろしくお願いします。この作業部会、検討委員会ですが、リスクマネジメントという名称になっておりますが、利益相反、あるいは安全保障技術管理、それから後半では職務発明等かなりいろいろな課題を議論するということになっているかと存じます。
  この上部の委員会の下にもう一つ、例えば競争力強化に向けた大学知的資産マネジメント検討委員会というのがございまして、大学の研究経営資源を効果的に活用していくための戦略という委員会がございますが、言ってみればこちらの委員会も、リスクマネジメントとは言いますが、大学の経営資源のある意味戦略的な活用ということでもあると思われます。それから、更に言いますと、大学がイノベーション活動を行っていくに当たって、そこには様々な、利益相反の問題ですとかいろいろなことがあります。
  そういうものを別々に、こちらはこちらで規制をすると。向こうは向こうで進めるということではなくて、それは実は、例えば大学が社会的な責任において研究成果を出していくために、その研究成果のプロセスの一部としてもともと社会に期待されていることが、例えば利益相反のマネジメントであり、コンプライアンスであり、ガバナンスであるという考え方からすれば、実はこれは本当は一つの話、大学の経営戦略の話のどちらから見るのかというようなことではないかと思います。決してこちらは何か規制をするというような話ではなくて、イノベーション促進のために行うべきマネジメントを、こちらで検討していこうということではないかと理解をしております。
  とはいえ、いろいろ専門性が非常に必要な項目がございますので、委員の皆様の御知見によるところが非常に大きいと思います。実りのある議論ができるように、是非御協力をいただければと思います。簡単ではございますが、私の方の御挨拶とさせていただきます。
  それでは、馬場委員、お願いします。

【馬場委員】    大阪大学で産学連携を担当しております、馬場と申します。よろしくお願いします。
  私もこのリスクマネジメントが、大学等の産学連携を前向きに進めるときに、それのサポートをするためのものであるということを、発信していただくことを是非お願いをしたいと思います。ともすれば、マネジメント、リスクという言葉は後ろ向きのブレーキというふうに、とらえる人が大学には多いように思います。そこが誤解であって、大学の職員のそういう活動をする者をサポートする仕組みであるということを是非御議論いただいて、私たちに元気付けていただくような提言をまとめさせていただければと思っておりますので、よろしくお願いします。

【渡部主査】    ありがとうございます。
  それでは、早速でございます。議題2の、大学等における産学官連携リスクマネジメントの現状と課題について議論を進めさせていただきたいと思います。まずは本検討委員会の目的の確認と、大学等における産学官連携リスクマネジメントの現状と検討の方向性、これについて事務局から御説明をいただければと存じます。

【小河専門官】    それでは、資料4-1、4-2を使いまして、事務局の方から簡単に説明させていただきます。
  最初に、資料4-1を御覧いただければと思います。こちらでは本検討委員会の検討の方向性(案)ということで、こういう方向で検討してはどうかという案を作成しております。
  まずその前提として、産学官連携を推進する上で、大学と社会との接点が更に増していく中で、併せて大学に求められる信頼、こういったことを維持していくことが重要ではないかということです。本検討委員会で議論する内容として、一番上の概略に書かせていただいておりますが、産学官連携を推進する上で生じ得るリスク要因といったもののマネジメントを、大学自身が研究経営上の重要な課題として捉えて適切に対応する、こういった方策を検討する必要があるのではないかということがあります。それによって、大学等のインテグリティ、ここでは社会的な信頼といった意味合いになると思いますが、そういったものを確立するとともに、産学官連携活動をより活性化する、こういったことを目的として本検討を進めていきたいと思っております。
  現状・課題についてですが、各論に分けて、三つの項目に分けて記載しております。まず一つ目として、利益相反マネジメントについてですが、平成14年に文部科学省で報告書が取りまとめられておりますが、それ以降、産学官連携を取り巻く環境は大きく変化しているのではないかという現状です。また、利益相反に対する理解が不十分なケースも存在するのではないかという問題意識があります。例えば、利益相反状態が直ちに弊害を及ぼすという印象をいまだに持たれるというような状況があります。また、組織的な産学官連携を推進する上で、大学組織としての利益相反といったものについても、検討、整理をしていく必要があるという現状認識です。
  また、(2)で書いてある技術流出防止マネジメントの観点がございます。こちらはコンプライアンス的な視点で、まず一つ目のポツとして、秘密管理についてですが、この点について産業界側からの声としても、大学側の管理が遅れているのではないかという懸念が示されています。また2ポツ目として、学生が産学官連携活動に携わることは非常に重要なことである一方で、学生から技術流出が生じてしまうという懸念が示されている点です。また三つ目として、安全保障貿易管理上からの観点からも、機微技術の流出防止といったものについて、大学側の取り組みにまだ課題があるのではないかという点です。こういった現状課題があると指摘されています。
  三つ目、その他とくくっておりますが、一つ目のポツが、国際産学官連携。こちらはコンプライアンス的な観点からは問題ないケースであっても、一部批判の声にさらされるというような現状があります。例えば、我が国からの研究成果の流出として見られる場合があります。こういったものに対して、マネジメント上どうあるべきか、ということです。また、二つ目のポツとして、職務発明に関して報奨を適切に決定する運用を検討する必要があるということです。それらについて、現状の課題を認識しております。
  それに対して検討の全体の方向性(案)ということで示していますが、一つ目のポツとして、最初に申したように、インテグリティを確立するといったことを目指して、大学自身がそういったことを研究経営上の重要な要素として位置付けて積極的に取り組む方策、こういったことを検討することが重要ではないかという点。
  二つ目のポツですが、人員や予算が限られているといった環境の中で、各大学の体制や状況に併せて実効的なリスクのマネジメントの在り方、モデルを検討することが重要ではないかという点。
  また三つ目のポツとして、教員・職員それぞれが、まずリスクマネジメントに関する理解を深めていくこと、そういったことが重要ではないかという点。
  四つ目として、リスクマネジメントに関する個別事例といったことを、自分の大学だけではなくて、組織を超えて情報を共有していくことが重要ではないかという点。こういったことを検討の方向性(案)と、書かせていただいております。
  めくっていただいて2ページ目のところには、各個別の論点について、それぞれ先ほどの全体の方向性と現状の課題、それに即して書かせていただいております。先ほど記載した現状・課題の裏返しの部分もありますが、確認させていただきますと、利益相反マネジメントについて、一つ目のポツとしては、まず利益相反に関する適切な理解をどう促していくべきかを検討すべきではないかという点。二つ目のポツとして、組織としての利益相反マネジメントについて適切に整理、検討していくべきではないかという点。三つ目として、利益相反状態を大学組織が適切に把握して、マネジメントを行えるシステムを構築することが重要ではないかという点。四つ目として、事例やケーススタディといった情報を共有していくことが重要ではないのかという点を記載しております。
  (2)として、技術流出防止マネジメントについてですが、大きく二つの観点に分けられると思っておりまして、営業秘密管理関係の観点でいいますと、産学官連携を進めていく際に秘密保持契約の在り方を検討すべきではないかという点。二つ目のポツとして、教職員や学生等それぞれ立場が違う者がいる中で、どういった秘密管理を行っていくのか。そういった実効的な管理体制・システムの在り方をいま一度検討すべきではないかという点。次に安全保障貿易管理の観点から、各大学の経営資源が限られていますが、そういった中で効果を最大化するようなマネジメントの在り方といったことを検討すべきではないかという点。
  その他として、国際産学官連携を進めるに際して、どういったことを配慮すべきなのかということを、いま一度整理すべきではないかという点。二つ目のポツで、職務発明について、発明報奨等の評価といった在り方を検討すべきではないかという点。こういった検討の方向性(案)として書かせていただいております。
  本日の議論で、これに加えてこういったことを検討すべきではないかという点や、更にここに書かせていただいている点を深堀して、こういうことを検討すべきではないかという点を議論していただければと思っております。そういった検討の方向性、ここで抽出された検討課題を、私どもで今後行う予定の産学官連携リスクマネジメントモデル事業に反映して、検討を進めていきたいと思っております。
  こちらのモデル事業について、めくっていただいた次のページに概略を書かせていただいておりますが、幾つかの大学にモデル校となっていただいて、他のモデルとなるような取組を行っていただいて、そのモデルを他の各大学に展開していく、こういった事業を行うことを平成27年度から開始する予定です。この事業でどういったことを検討していくべきかを、まず短期的に検討課題を本検討委員会で抽出したいと思っております。
  引き続きまして、資料4-2の方を使って、現状の産学官連携リスクマネジメントを取り巻く状況について確認させていただければと思います。全体を説明すると少し時間がかかってしまいますので、概略だけ、説明させていただきます。
  1枚めくっていただいて2ページ目ですが、こちらは共同研究、また特許のライセンスなど、こういったものは進展してきて、件数や規模としては増えてきている状況を示しています。その中で、次の3ページ、各種ポリシー・規程についての整備状況ですが、下のグラフを見ていただくと、職務発明規程、又は利益相反ポリシーについては比較的各大学で定められている傾向にありますが、ほかの規程で定められていない大学が多いという規程やポリシーもあるというような状況です。
  めくっていただいて4ページ目では、リスクマネジメントの一事例として、利益相反の事例であるゲルシンガー事件を示しています。利益相反状態から、最終的には法令違反に至ってしまったような事例ですが、こういった事例についても利益相反マネジメントによって、法令違反に至ることを事前に防止することができたのではないかという点から、下に書いてあるように、大学が社会からの期待・信頼を損なうリスクを適切にマネジメントし、社会の説明責任等を十分に果たすことで自らのインテグリティを確立することが重要なのではないかということが言えると思います。
  次に、利益相反マネジメントについて、各種行政の中で取りまとめた報告書、ガイドラインを中心に記載させていただいております。また企業側である、日本製薬工業協会の方で行っている透明性ガイドラインについても簡単にまとめておりますが、ここでは平成14年の利益相反ワーキング・グループの報告書のみ簡単に紹介させていただきます。
  6ページ目ですが、一番上の青囲いのところで、この報告書の位置付けを簡単に書かせていただいております。一番上のポツですが、この報告書の位置付けとして、自らのインテグリティを確保し、社会への説明責任を十分に果たすことにより、産学官連携の推進に伴う疑念を払拭していくことが求められる。そういった状況を確認した上で、本報告書では、利益相反について基本的な考え方を整理し、各大学が検討する際の参考となる資料を提出するという趣旨で取りまとめられております。
  三つ目のポツで書いてあるように、利益相反の事例に対する個別のルール化といったものではなくて、大学内でマネジメントシステムがどうあるべきか、といったことに焦点を絞って、マネジメントシステムの在り方を提案しています。具体的な内容については、説明をここでは割愛させていただきますが、そういったマネジメントシステムの例示や考え方について、平成14年時点では取りまとめられているという状況です。ただその一方で、個人としての利益相反を中心に取りまとめられている状況でして、組織としての利益相反については、ほとんど触れられていないという状況です。
  めくっていただいて、飛びますが、16ページに利益相反マネジメントの現状の状況について、私どもの調査で行っている現状把握として、少し定量的な部分を示しております。利益相反ポリシーを定めている大学ですが、全1,000校ぐらいの大学のうち310校程度。特に文系大学、単科大学なども含んでいるので、その中で310校程度が利益相反ポリシーを定めているという状況です。利益相反マネジメントの体制についてですが、審議する委員会を定めているのが、そのうち280校程度。また外部の有識者などを交えて意見を聴取する仕組みを設けているところが、そのうちの160校程度。このような体制が利益相反マネジメントの現状です。
  続いて、めくっていただいて18ページ目、技術流出防止マネジメントについてですが、営業秘密管理関係の観点で、経済産業省で作られている、大学における営業秘密管理指針作成のためのガイドラインがあります。こちらは平成23年に改訂されたものです。また、現在、不正競争防止法の改正などを取り巻くこういった議論を簡単にまとめております。詳しい説明は省略させていただきますが、19ページのところでガイドラインについて書かせていただいております。こちらのガイドラインでは、管理の考え方について、最初の枠囲いの中で二つ区別して検討すべきとしておりまして、1として、大学独自で創出した発明等に係る営業秘密の管理。2として、産学連携等を通じて大学又は教職員が入手した企業等の営業秘密の管理、これを区別して検討すべきではないかというふうに整理されているという状況です。
  具体的な管理方法について、また右下に書いてあるように、望ましい組織的管理の在り方、こういった点について具体的にまとめられているという状況です。こちらの冊子は、参考資料としてファイルにとじてある資料で配付させていただいております。
  めくっていただいて、昨今取り巻く営業秘密の検討について、経済産業省で検討されている内容について記載しております。法改正については、現在国会審議中と聞いておりますが、罰則強化について、また指針、マニュアルの整備といったものも併せて検討を行っているというところです。
  めくっていただいて、次に25ページ、安全保障貿易管理の観点について。こちらは経済産業省で取りまとめられている、大学に関するガイダンスを記載させていただいております。26ページですが、基本的な考え方として、一番上のところに書いてあるように、研究者一人一人の外為法規制の理解と遵守活動の実践が必要不可欠である。また、必ず外為法に基づく許可が必要か否かを確認しなければならないという基本的な考え方のもとで、各種事項が記載されている。大学における管理の在り方が記載されているというようなものが、平成22年の時点で取りまとめられているという状況です。こちらについても、参考資料として配付させていただいております。
  次に29ページのところで、国際産学官連携、職務発明について簡単にまとめさせていただいております。30ページのところで、国際産学官連携において想定されるリスク要因について、国際産学官連携のプラスの側面、マイナスの側面について、過去の報告書で取りまとめられているというところを確認させていただいております。職務発明については最後のページに書いてあるように、昨今の法改正の状況があります。大学において、企業と異なる状況もあると思いますので、適切な報酬の在り方などは法改正に限らず検討が必要ではないのかという点で、議題として挙げさせていただいております。
  駆け足で恐縮ですが、事務局からは以上です。

【渡部主査】    ありがとうございました。多岐にわたる内容で、質問等もあると思いますが、この後3人の委員の方からプレゼンをしていただきますので、その後でこの資料についても質疑等を受けたいと思います。
  それから、プレゼンの前に、林委員が御都合によりもうすぐ御退席ということでございますので、コメント等を先にいただければと存じます。

【林委員】    申し訳ございません。公用のため、中座させていただきます。
  今回の我々の職務は非常に短い期間でイノベーション促進のために必要なマネジメントについて、利益相反の点と技術流出防止その他について検討するということで、非常に忙しい会議だと思っております。
  ここで私が思いますのは、今日の資料の御紹介の中にもありましたように、既に利益相反についてもガイドライン、平成14年以降何度か改訂されたものもございますし、また営業秘密の関係では、何度も見直ししたもので、直近では平成23年の、参考資料の4と思いますが、100ページ近いガイドラインがございます。この100ページ近いものは、かなり具体的な場面も設定して作られたものですが、これから委員の先生方からも御紹介があったり、事務局からも先ほど簡単に御紹介があったりしたように、なかなかそれが実現できていないというところが問題なのだと思います。
  そうしますと、やはりこういったガイドラインを作った後のPDCAが何よりも求められており、現在の遵守状況とか、遵守に当たっての阻害要因が何なのか、改善点は何なのかということを、やはり委員の皆様、また委員の皆様が関係しておられる現場の、レベルの違う方々から数か所御意見を頂いて、それで書いたものだけでは実務が回っていかないところを、どう直していくのかということを見ていくのがよろしいのではないかと思っております。
  また、今回3月13日に閣議決定のありました、特許法の職務発明、35条の規定の改正及び不正競争防止法上の営業秘密についての民事・刑事にわたる広範な法改正の点も見込んで、それをいかに現場が理解して取り組んでいけるようにするのかという対応も、大学等研究機関で求められているところだと思います。これは、一般論でセミナーとか講演とかをしてもなかなか普及しないものであり、実際には個別の各組織において具体的な取り組みをするサポートをどうやっていくのかということが実務的な課題だろうと思っております。
  その意味では、先ほどの資料4-2ですか、事務局からの御説明の20ページの右下のところに、知財総合支援窓口というものが全都道府県に設けられておりますが、そこに今、月1ないし2回ですが、弁護士知財ネットが派遣した、弁護士が常駐するようになっております。そういった各都道府県における窓口の弁護士を、営業秘密や職務発明、利益相反に関してのサポートでお使いいただくということも、税金で手当されておりますので、一つ手法として使えるのではないかと思っております。
  お時間頂きましてありがとうございました。

【渡部主査】    ありがとうございました。
  それでは、ここからこれまでの産学官連携リスクマネジメントの意義について整理をしつつ、今後、この課題に関して議論を深めていくために、飯田委員、伊藤委員、足立委員に今からプレゼンをしていただきたいと存じます。
  それでは、大学等における利益相反マネジメントの現状と課題について、まず飯田委員にプレゼンいただきます。飯田委員、よろしくお願いします。

【飯田委員】    東京医科歯科大学の飯田でございます。大学等における利益相反マネジメントに関する現状と課題について、御紹介をさせていただきたいと思います。タイトルに記載をさせていただいておりますが、医学研究利益相反マネジメントに関する調査が行われた結果がございますので、そちらに基づいて本日は御紹介をさせていただきたいと思います。
  この利益相反マネジメントですが、医学研究に基づく産学連携に関わる利益相反ということで整備が整ってきた部分がございます。その理由としましては、やはり利益相反というのは、研究の安全性ということを考えなければいけないのですが、やはり医学研究は患者さんであるとか被験者、あるいは国民の利益に直結する研究分野でございますので、より慎重なマネジメントが必要だと言われている分野です。
  2枚目を御覧いただきたいのですが、こちらは医学研究の研究費の内訳を示している絵です。こちらを御覧いただくと分かるとおり、医学研究の全体の中で、内部資金で使われているのが18%で、残りの82%が外部資金に基づいて行われているということか分かっています。その内訳を見ますと、40%が産学連携のお金、すなわち民間からの資金が使われているということで、非常に産学連携の活発な分野であり、医学領域はもはや産学連携なしには立ち行かない状況にあるということもお分かりになるかと思います。そういった観点から、やはり健全な産学連携を進める上で、医学研究はより一層利益相反マネジメントが必要だと言われる分野であります。
  3枚目を御覧ください。利益相反マネジメントの今の動向ですが、大きく分けて三つのステージに分けられると思います。すなわち第1ステージとしましては、先行しているアメリカにならって、ゲルシンガー事件の発生以降、ヘルシンキ宣言にCOIに条項が盛り込まれたことで、日本の臨床研究の倫理指針にも盛り込まれました。その上で、徳島大学が中心になって臨床研究COIポリシー策定のガイドラインが作られ、更に厚生労働省でも指針が作られて、これについては厚生労働科学研究費補助金を獲得する研究者においては、利益相反マネジメントを受けていなければ資金が獲得できないという形で義務化されたことで、かなり利益相反マネジメント体制が進んだと言われています。そういったことで、ステージ1としましては、利益相反のインフラ整備が進んだステージです。
  二つ目のステージとしましては、先ほど事務局から御紹介がありましたが、日本製薬工業協会から、透明性ガイドラインというものが発表されました。第1ステージでは研究者が自分の経済的な関係の自己申告をし、マネジメントを受けるということにとどまっていたものを、より一層社会に対する透明性を高めるために利益状態を公開していくというような新たなステージに入りました。
  ステージ3、現在はこのステージに入っていると考えるのですが、ここに至ったきっかけとなりますのは、2013年に発覚しましたディオバンの事例です。高血圧治療薬に関する臨床研究のデータ不正問題において、利益相反状態というものが指摘されたことで、この事例をきっかけに幾つもの指針が整備されています。この事例を受けて、マネジメントをより一層強化するという動きが、第3のステージと理解しています。
  この中で、最近に定められた指針としましては、4ページ目に示しておりますが、人を対象とする医学系研究に関する倫理指針ということで、この統合指針は文部科学省、厚生労働省から発表されました。この中に利益相反の管理という項目が新たに明記されたということはもちろんですが、一番大きく変わったところは、倫理審査において利益相反に関する情報を斟酌した上で審査を行うことが定まった指針でございます。
  続いて、5ページ目を御覧ください。この利益相反と不正ということは混同されてしまうのですが、決して一致するものではありません。ただ実際、利益相反が問題になるのは、単独で問題になるというよりも、法令違反、あるいは研究不正と重なり合ったときに利益相反問題が顕在化するということが、今までの事例から多く見受けられます。したがって、利益相反マネジメントをきちんと行えば、不正行為の事前防止、あるいは抑止力にもなるのではないかということが言われているところがあります。
  そこで、6ページ目を御覧いただきたいのですが、利益相反の概念を改めて整理します。利益相反は御承知のとおり、狭義の利益相反と責務相反から成り立っており、狭義の利益相反については、個人としての利益相反と、組織としての利益相反から構成されているというふうに定義がされていますが、これまでは特に個人としての利益相反マネジメントについての体制整備が進められてきたと思います。
  この下の図を御覧いただきたいのですが、様々な産学連携は研究者単位で実施されるものもあれば、大学、あるいは病院単位で実施されるものもあります。そういったところから、個人も組織もマネジメントを実施することが必要ですので、ここからは個人、組織に分けて、現在どのようなマネジメントがされているのかを御紹介していきたいと思います。
  7ページ目を御覧ください。まず個人としての利益相反マネジメントに関する実施状況についてですが、左側がマネジメントに関するフローとして、多くの機関が採用している流れを示しています。機関は、指針、規則、あるいはポリシーを定めてマネジメントの体制や方法や委員会などを規定しているわけですが、具体的には研究者、あるいは職員は、自己申告書というものを提出することが求められます。自己申告書に基づいて書類審査が行われるわけですが、内容により、利益相反の事務局、若しくはアドバイザリーボード・委員会が研究者に個別に利益相反状態があるのかどうかということをヒアリングする、若しくはアドバイスを行うことがマネジメントの一般的な流れになっています。
  ここで医学研究とそうでない産学連携に分けてマネジメントされている機関が多いのでお示ししますが、緑のラインが一般的に行われている利益相反の流れです。一般的には定期的に、年に一度4月から5月に自己申告をしてもらう。あるいは、何か変更が生じたとき、又は厚生労働科学研究費補助金採択時に申告をするというような体制をとっている機関が多いです。臨床研究に関しては、臨床研究を開始する時点で申告をしてもらうことを定めている機関が多くございます。
  申告内容としましては、徳島大学が作られたポリシー等の条件に従って、この右側にある項目を定めている機関が多く、こちらの申告内容についてはほとんどの機関が統一されているということが、分かっております。
  続いて、8ページ目を御覧ください。実際、利益相反の指針の策定状況です。医学部を有している88機関に調査をした結果なのですが、最初のところで御紹介しますと、利益相反の指針、あるいはポリシー策定状況につきましては、2011年度において90%以上が策定していると回答しています。自己申告状況に関しましても、2011年度時点で90%以上の自己申告がされているという結果がでており、形式的なマネジメントは整備されていることがお分かりになるかと思います。ただ実際、下のところに自己申告の時期であるとか、自己申告をする対象がどうなっているのかという部分に関しては、かなり機関によってまちまちであり、標準化が図れていないということが分かっています。
  続いて、9ページ目を御覧ください。実際に自己申告をされた内容において、各機関で実質的なマネジメント体制をはかるために、ヒアリングとアドバイス件数も調べています。その結果、ヒアリングに関しては、1回もヒアリングを行ったことがないと答えている機関がやはり80%以上、2011年度に関しても、アドバイスに関しても行っていないという機関が非常に多いことから、実質的なマネジメントができていないのではないかという分析に至っています。
  ここで、マネジメントを巡る課題について出された意見を御紹介したいと思います。一つ目としては、利益相反アドバイザリーボード、あるいはマネジメント委員などの審査能力に課題があるということです。これは内部の研究者、あるいは医師が委員を担っているということが指摘されています。そして二つ目、研究者・職員の利益相反に関する認識がまだまだ不足している。これは利益相反を教育できる人材が不足しているということとも大きく関係があるかと思います。三つ目、研究者に負担の多い自己申告体制となっていて、例えば学会や大学や論文投稿などの自己申告の基準等に整合性がとれていないので、研究者に負担が大きく組織的な管理ができていないということもあります。最後は、組織ごとに審査基準が統一されていないので、非常に厳しい機関もあれば、そうでない機関もあるということで、事例の共有化などで解消していく必要があると言われています。
  10ページ目を御覧ください。日米比較というものをしております。アメリカでは、やはり非常にこの分野に関して進んでいるので、比較をしてみたのですが、利益相反は企業からの経済的利益、すなわち研究者個人の利益が存在することによって、ゆがんだ結果が生じるという恐れをマネジメントで回避しようというものでありますが、アメリカはそういった理由から、研究者個人の利益の存在と科学的利益の逸失がないのかという両面で審査をしていると捉えています。一方日本では、研究者個人の利益に関しては、自己申告によって把握できるようなことになっていますが、科学的な利益の遺失に関しては、例えばこの右下にありますが、企業による研究デザインの調整であるとか、企業とのデータのやりとりまではチェックが及んでいないということが分かりました。この部分は今後強化していく必要性があるといえそうです。
  最後に11ページ目から、組織としての利益相反マネジメントについて御紹介します。時間の関係で、構造についての御紹介はしませんが、組織としてのマネジメントの視点としては、大きく分けて二つあろうかと思います。一つ目が、大学自体の利益相反マネジメント。大学、企業との間の経済的な関係の存在と、研究結果への影響の視点です。二つ目が、大学の活動について意思決定を行う執行部などの利益相反マネジメントについての視点です。
  少規模の調査結果ではありますが、最後のページに、組織としての利益相反マネジメントの実施状況結果を御紹介しています。既に利益相反マネジメントを実施していると回答した機関は、全体の36%。実施していないと答えたのが46%で、今後実施予定というのが9%という形になっていて、まだまだ整備されていないということがお分かりになると思います。実施していると答えた機関においても、体制としてできているというよりも、例えば組織間連携の大型プロジェクトについては注意が必要だから、個人の利益相反を応用して審査しているとか、大学執行部のマネジメントを一般職員より頻度を変えて実施しているという程度です。
  組織としてのマネジメントに関してまとめますと、国内では、組織の利益相反に関して、ポリシーなどの策定状況は発展途上であり、更に組織としてなお利益相反を取り扱う部門、委員会なども設けられている機関は非常に少ないのが現状で、アメリカと比べますと、遅れている部分だと言えます。更に組織としての意思決定に関する利益相反マネジメントの実施状況としても、できているところは非常に少ないことが分かっています。
  組織に関しては、通常の個人としての活動と同様に、医学系とそうでないところで分けるのかどうかというところも論点になると思いますが、アメリカでは、デューク大学を始め医療系の取扱いに関しては、分別して取り扱っているようです。この点についても今後慎重に議論していく必要があると考えます。以上です。

【渡部主査】    飯田委員、どうもありがとうございました。
  続けて、大学等における営業秘密管理マネジメントの現状と課題について、伊藤委員にプレゼンを頂きたいと存じます。お願いします。

【伊藤(伸)委員】    伊藤でございます。私からは、大学等における営業秘密管理に関する現状と課題という、表紙を入れて6枚の短いプレゼンテーション資料でございます。先ほど林委員から、ガイドラインの説明を取り上げていただきましたが、私はそのとき(平成23年のガイドラインの改正)の委員になっております。ということで、今日プレゼンをさせていただけるのかなとも思っております。
  不正競争防止法の制度的なところを御説明しても、釈迦に説法になってしまいます。ここの委員会の目的としては、私のプレゼンの目的としてはグッドプラクティス、ベストプラクティスを検討する際に、大学の現場感というもののイメージを持っていただく。あるいは、議論のきっかけになるものを御提供するというのが目的ではないのかと考えております。
  思い起こすともう4年前ですが、先ほどのガイドラインができまして、非常に力作です。100ページにわたる力作です。私も余りに力作過ぎて、自分が委員でなかったら100ページ全部読むかなと考えたこともあります。終わったときに、一部は冊子で、あるいはPDFで公開されていますので、アドレスを学内にいろいろ周知をしました。関心を持ってもらおうと思って、金銭目的だけではなくて、嫌がらせをしても刑事罰の対象になることがあるのですよなんていう話をしながら、極力関心を持っていただこうというような活動をしました。ただ、そのときにちょっと反応がきたぐらいで、その後余りこれについて私に問合せみたいなことはなかったということなんです。ただ、問合せがなかったからこれが無意味だったのかということでもないということも、また事実なのでございます。
  このプレゼン資料の2ページ目のところを見ていただきたいと思います。大学で、いわゆる不正競争防止法上の秘密情報となり得るものですが、これはお分かりだと思うのですが、幾つかあるわけで、代表的なものは、中でできた研究成果である発明・考案です。ただ、これも中でできたものだけではなくて、ここに共同発明というふうに書いてありますので、大学の中の教員と、それから共同研究先の企業と一緒に発明をしたもの。ですから、一緒の所有であるというものも含まれるということになります。
  それから、先ほども御説明がありましたが、共同研究、あるいは受託研究等で連携している企業から大学の研究者が得た情報、これには当然自然科学に関する技術的な情報ばかりではなく、経営的な情報も含まれるということになります。また、情報が含まれる、情報が化体したというふうに申し上げた方がよろしいのかもしれませんが、そうした試料(マテリアル)もあるということでございます。
  それから、実際に企業と締結した契約の内容自体ということもあるわけです。場合によっては契約の内容で、この契約を結んでいる存在自体も秘密ですというふうに契約の中にうたわれることもあると思います。ですから、これは契約の存在自体が今、秘密だということでございます。具体的には相手先の企業であるとかテーマ、期間、金額ということでございます。それ以外にも、教職員や学生の個人情報があります。
  先ほど、100ページの力作を余り意識しないで大学はマネジメントしているというふうに申し上げましたが、だからといって秘密情報に対する意識が弱いというわけではないのです。ここに丸で囲っておりますが、いわゆる不正競争防止法上の保護対象となるのかどうかということの意識は、必ずしもそれだけを抜き出して意識はしていなくても、社会的な信頼関係を保つために、様々な契約に盛り込まれた秘密保持の条項に基づいて、秘密になるものは厳正に管理をしなければいけないと、そういう意識は大学の中で非常に醸成されてきているというのが実態でございまして、ただそのマネジメントの中で、特段不正競争防止法の条項を意識しながらやっているわけではないということでございます。本質はそこでございまして、対外的な信頼関係を保つためにも、不正競争防止法上の保護対象である営業秘密だけを管理するだけではなくて、秘密とすべきもの、大学にとって秘密とすべきものを、社会的な信頼を保つために適切にマネジメントする、これが根本ではないのかというように考えます。
  一方で、イメージを持っていただくために、大学でありふれた光景というものを申し上げたいと思います。大学では、自由でございます。企業と異なります。研究室に他の研究室の学生が自由に出入りする。これはよくある話でございます。特に同じ学年、サークルが一緒、部活が一緒の学生。こんにちは、こんばんは、よくやっているね、よくある話でございます。あるいは、私の大学も産学連携に非常に熱心です。うちの先生、すごいんだよと。こんな企業とこんな大きな研究を、こんな先端なことをやっているのですよと自慢げにお話をする。学食で話をしている。ありそうですね。これが全て公知であれば、幸いだなと思うところでございます。
  あるいは、共同研究のマッチングをすることがあります。リサーチ・アドミニストレーターとか、あるいは産学連携コーディネーターが共同研究のマッチングを先生と企業の方とすることがあります。そうすると企業の方からは、しばしばこういうことを言われます。「先生、学生をつけてくださいよ」、共同研究にということなんです。ただしよく見てみると、考えている共同研究の研究費の中に、学生の人件費は入っていないのです。ということは、学生とは必ずしも雇用契約をしなくて入ってくれと言っているのかな。曖昧ですね、しばしば。ところが先生も、よく言えば教育的見地から、「やはり学生さんがいないと困りますよね、手足がないと困りますね」と言いながら、たやすく賛同してしまったりしているわけで、学生の立場、これはどうなるのかなということが時折不安になるということでございます。
  それから、秘密保持の約束は守ってくださいということはしばしば言っているわけなので、学生にも先生にも、実は意識は近年非常に強まっているというのは実態なんですね。学生に例えば産学連携の研究に参加していただく際には、秘密保持の誓約書を署名捺印の上、自署名ですね、自らペンで書いていただいて捺印をしていただいて、提出をしてもらっているときがあります。そのときは当然窓口というか、その指導教員が担当するわけですが、教員はひやひやしながらこれをやっています。余り強く言うとアカハラになってしまうのではないのかとか、ドキドキなんですね。どこまで強く言ったらよいのだろうかという、こういうドキドキなんですね。
  それから、後で出てくると思いますが、手間がかかります。やはり説明をしないと、学生さんとか先生の方が強いですから、十分な説明をした上で、こういった誓約書を出していただかないといけないということが分かっています。これは時間がかかるわけなんです。時間がかかりますし、急にこれをやるかと言われて、出して判を押して、十分に理解していただいているのかなと。「理解したね、理解したね」と確認はするのですが、不安な点は残るということでございます。
  次です。これもしばしば見られる風景です。共同実験室というのがあります。一人で確保するのは難しいですし、大学には非常に有用な機器、実験用の設備があって、それを共同で利用する。時にその中に企業の方も入ってくるということがしばしば見られるわけでございます。そこに企業から提供したと見られる試料、例えば新素材とか、新しい化合物みたいなものが放置されていることがあります。これが全く経済的価値がないものであるということを私は信じていますが、もしそうであれば、少し心配だなということがあります。そうなっていると、企業の方もより心配で、そんなところと共同研究できるのかしらと思うわけです。少なくとも単に放置されているわけではなくて、これは安全なもので放置しているのだ。安全でもなくて重要なものは、別途管理をしているのだということが分かれば、実はよいのかなと思います。
  それから、先ほどから出ている利益相反とも絡んできますが、熱心な先生は複数の企業、複数のプロジェクトで産学連携、あるいは公的な資金をもらいながら研究プロジェクトを進めるということもしばしばあります。一方で、大学の中で物理的なスペースには制約がありますので、しばしばあるのは、一部屋の中をパーティションで区切って、ここは何とかプロジェクトですよということで、声が聞こえてしまったりします。パーティションですから、出入りもあります。どこで分けているのでしょうということです。これもまた、よくよく考えると心配になってしまいます。
  あるいは、先生ですが、これは日常の習慣ですが、机の引き出しや書架に鍵をかけない。かける習慣がないと言った方がよいのかもしれません。そういった方も多くございます。それから、鍵をかけよう、特に研究室は自分の城だからかけたいなということも、先生方は多いんですね。研究室、実験室にICカードと暗証番号によって厳重な管理をしようということで、お金もあるしということでやろうとしたら、事務方が、先生、それをした場合に災害時に中に入ることができない。学生の安否確認ができないからやめてくれと言われて、うーん、管理しようと思ったんだけど、二律背反なのか、どうしようかということがありました。
  場合によっては、分かりました、ではその安否確認ができるように、安否確認をする事務方にICカードと暗証番号をお教えしますよと、一式お渡ししますからということで設定したところ、そのICカードと暗証番号がマスターキーの棚の隣に無造作につるされていたということです。そこには事務補佐員の方、あるいは共同研究員の方もよく見られてしまうということがあります。
  今、日常をお話ししたわけです。いやいや、うちの大学はそんなことではないよというふうに反論していただければすごくいいと思いますし、いやいや、それは管理していない部分であって、管理している部分はそうではないというふうに分かれていれば、これまた安心だということでございますが、現実はいかがかということです。現実に管理をするには、実は負荷が大変にかかってきてしまう。それが課題です。
  先ほどの秘密保持の話であったように、実際にはそこで研究をする、そこで研究の中心となっている教員自身がこの秘密管理の中心にならざるを得ません。ただでさえ忙しいところに、こういったことをやらなければいけない。情報は区分しなければいけない。物理的に施錠しなければいけない。あるいは、情報に接する人間は制限をしなければいけない。これは不正競争防止法上権利として守られるためには、こういった条件があるということは分かってはいるのですが、徹底はできなかったり、あるいはそれを学生に任せきりにしたりしてしまうということが多いのではないかと考えます。
  それから、これも4年前のガイドラインのときと随分変わったなというような状況がございます。自宅にノートPCを持ち帰るのはさすがに心配だということでやめているという方もいらっしゃいますが、クラウド化が急速に、この4年間進展をいたしました。どこでも情報に接することができます。これをどう管理するのか。あるいは、学生さんもスマホでいろいろなものに接するようになりました。私の大学でも、ムードルという名前ですが、授業の教材をウェブ上で管理をして、それを各自がダウンロードして授業に臨むというような授業の仕方をしております。スマホを持ってきます。そのスマホの中にもいろいろな情報が入っていて、添付ファイルの中に秘密情報が入っている。しかしそのスマホは、学生さんにとっても、あるいは教員にとっても肌身離さず持っているものです。これをどうするのでしょう。先ほどの区分、施錠、人間の制限というところをどうやっていくのかなというところがございます。私が考えるに、不正競争防止法の営業秘密を満たす3条件では、やはり秘密管理性を満たすことが、大学にとっては一番大変なことではないのかなと考えております。
  それから、仮に不正使用が分かったときでも、どう対処すればよいのかということは、ここは分かっていないというか、実際に難しいところだと思っています。仮に分かったときでも、強く出られないというのが実態ではないのかと考えます。例えば、任期付きの研究員であったら、こういったことが分かった場合に、余り表沙汰にしないで、ここに正直に書きましたが、大学として裁判になりたくないというので、任期が切れたら、「はい、お疲れさまでした」といって延長しない。学生には怒るだけであると。正直に言えば、不正競争防止法上、抜けない刀みたいなところがありまして、実際に刑事摘発される例というのは極めて限定をされていて、よく分かっている方は、そうは言ってもなめられているというところが多少なりともあるのかなと思います。もちろんそれは改正によって、程度は軽減されるというような見方もあるとは思います。
  最後に、見方でございます。現場では、不正競争防止法といった観点、あるいは秘密を守るのだといった観点からのマネジメントはもちろん重要ですが、それと現場では、先ほど飯田先生がお話になった利益相反の話、それからこれから足立先生がお話しされるような安全保障の話、あるいは知的財産権の話、個人情報の保護の話、生物多様性といった、他の法律や制度への配慮が、特に産学官連携のマネジメントでは同時に配慮することが求められる場合が多いというのが現場の感覚でございます。これを一つ一つ別の制度、別の法律で一つ一つ別途に深堀していって、100ページのものを150ページのマニュアルにしても、これは現実的ではないということでございまして、ばらばらに進めずに、全体として適切にマネジメントする発想、これがベストプラクティスの中で必要なのではないかと考えています。
  では、具体的にどうするのかというと、実際には、実は飯田先生、それから足立先生には、本学では御講演をしてもらったことがございます。100ページを読めと言われてもこれは難しくて、やはりよく分かっている先生方に定期的に、さほど長くなくてよいから、こういったプレゼンをしていただいて、広く知っていただくというのが一番現実的なところで、繰り返しますが、それを全体としてマネジメントする発想が大切ですということが思うところでございます。以上でございます。

【渡部主査】    伊藤委員、どうもありがとうございました。
  最後に、大学等における安全保障貿易管理のマネジメントの現状と課題について、足立委員にお願いします。

【足立委員】    足立でございます。一番遅れているというように、先ほども数字上出ていました安全保障貿易管理ですが、東京農工大のような意識の高いところでの秘密管理についての状況が、大変伊藤先生から控えめな言葉で語られましたが、東京農工大のような意識の高い大学はどちらかというと少数派でして、実態としてはもっとひどい。この程度で済んでいれば、私はまだましなのではないのかというのが、伊藤先生のお話を聞いていて思いました。ツーツーです。壁なんか全くございません。ですので、大学に出したら秘密は漏れると思っていただきたいと、企業の方にははっきり言って、共同研究をしているというのが私の実態でございます。
  そういうことを含んでいますので、安全保障貿易管理も相当に困難なところがあります。今までのことを全部包含してしまったような問題に、安全保障貿易管理はなっているということを、まず頭に置いていただければと思います。
  1ページめくっていただきまして、現在の問題の概観ですが、専ら大学の安全保障貿易管理というのは、留学生や訪問外国人研究者への技術提供が主な対象になっているということです。三々五々、全く計画を立てずに、それぞれの教員の人間関係によっていろいろな研究者が大学にやってまいります。全部を知っている人間は、大学の中に一人もいません。ふらっと寄ってくるということもよくあります。ですので、企業でよく人間を招聘するというような場合と同等の感覚で輸出管理を考えていますと、全くうまくいかないということになります。
  それから、技術分野が余りにも広範です。企業が扱うのは、自分のところで作っている製品、それから実際に技術提供をしている内容に限られておりますが、大学の先生方は何を考えているのかというと、次から次へと新しいことを興味本位にどんどんほじくっていきます。それが学問の発展にもつながっておりますが、リアルタイムでその状況を把握することは極めて難しい。というか、ほとんど不可能だと言った方がよいと思います。
  それから3番目に、外国人在留管理制度は、入管難民法が改正になりまして、大分以前と変わってまいりました。輸出管理をする際に、相手先の居住性が問題になることがありますが、実際留学生が日本居住者であるのか、日本居住者ではないのかという区別が非常に判別がつきにくい状況が出てくる可能性が出てきました。後で申し上げますが、旧来の、前の入管難民法ですと、2年3か月が最大の留学生の在留期間でしたが、今は4年3か月になっております。したがって、留年さえしなければ、1回も在留期間の更新をしないで日本にいられるという状況になっているわけです。その途中で、もし休学をするというような事態が生じた場合に一体どうなるのか。この人間を日本居住者と考えるべきかどうかというのは、極めて微妙な問題となります。
  それから、知的財産管理との整合性の問題というのが4番目です。公知の概念が、特許法やその他の知的財産関係の法律と違っています。合法的に知り得る人がいれば、知的財産関連法令ではこれは公知なのですが、外為法の枠外で言いますと、本当に不特定多数の人間がいつでも知られる状況を作っておかないと、公知と言うことはできません。こういう問題が底流にあります。
  そして最後に、次のページですが、理解されません。実際、幾つかのトラブルを経験しましたが、先生方は一体何でこのようなものが輸出管理の体制になるのですかというようにおっしゃいまして、ましてや安全保障貿易管理は私の仕事には関係がございませんというように何度も言われました。外国にカーボンファイバーの強化プラスチックスを出すとか、それから、外国からの見学ですね。留学生などが研究室をのぞきに来るのですが、その大学がちょうどミサイル懸念先の外国ユーザーリストに載っているような大学だったというときに、うちはミサイルはやっていないから大丈夫だと、そういうように考える先生方が非常に多い、というか大多数がそうだと思います。そして、ロボットの研究室を見せてしまったりします。当然圧電ジャイロがそこにございます。M(ミサイル)懸念先の技術にほかならないわけでして、そこのところがなかなか理解していただけない。うちはロボットをやっているのであって、ミサイルはやっていないのですよとよくおっしゃるのですが、そうではないのだということが分かっていただけないところが難しい。
  まして平成15年度まで、国立大学は国の機関の一部でしたので、輸出は政府機関の行為だったものですから、直接的な規制対象として、主務官庁による規制を受けるという形にはなっていませんでした。本当はこれは別に規制がなかったわけではなくて、きちんと規制はそのときから守らなければならなかったのですが、事実上野放しという状況になっていたことは、皆さんよく御存じのとおりです。全くそういうことが行われていなかったというように言い切ってもよいかもしれません。
  最初の広範な分野における技術情報管理というところですが、5ページの方を御覧ください。ともかく分野が広い。しかも特定できないというところが最大の問題です。しかも学際化はどんどん進んでいまして、例えば一番とんでもない話は、よく濃淡管理をすればよいのではないのかという話はあるのですが、例えば、文学部考古学科で使っている地中探査レーダーは一体どうなってしまうのか。文学部で安全保障貿易管理というと、大概の方が首をかしげますが、実際には地中探査レーダー、フラックスゲート磁力計、それから地中音響探査用の超磁歪素子と、もう目白押しで(リスト規制)技術が並んでいます。つまり、先生方が興味に応じてどんどん新しいことをやってくれます。ですから、何学部だから関係ないというようなことは、輸出管理においては成り立たないということを考えていただかなければなりません。
  企業での輸出管理とは根本的に異なっていて、担当人材を外部に頼るということはまずできないと言ってよいでしょう。研究室の細かい現状についてよく分かっている内部の人間が必要です。実際どこの研究室にどのような装置が置いてあるのかというのは、何となく自分の耳に入ってくるような立場の人間を作っておかないと、なかなかうまくいきません。
  それから、めくっていただきまして、在留管理制度の問題ですが、ここが一番頭の痛いところです。外国人登録証明書というものが廃止されました。在留カードというものを入管でいきなり交付することになっております。地方自治体は、今までは外国人登録証というものを作っていたのですが、今は住民基本台帳表に基づいて、外国人も住民として把握するという形になっています。先ほど申し上げましたように、留学生の最長在留期間は2年3か月から4年3か月に延長されています。それから、再入国許可の条件が大幅に緩和されていまして、その在留期間内なら1年以内の出入国は自由自在にできるようになりました。以前は再入国許可をそのたびに取る必要があったのですが、今はそれは必要ございません。
  したがって、休学届を出して半年近い期間、自分の国に帰っているなどということもよくある話でして、その期間はアパートを引き払っていたりしますと、この人は一体日本居住者なのだろうかというのは相当に難しい問題になりますが、何といっても在留期間が延びてしまっているので、途中で大学の在学証明書の発行手続は一切入りません。以前は必ず1回は延長しなければなりませんので、大学の在学証明書を取って在留許可の延長をやっていたのですが、今はそれはないので、大学の学生担当の窓口も、今、この留学生が一体どうなっているのかという実態を本当に把握できない立場にあります。
  それから、次の7ページ目ですが、特別永住者の処遇の改善ですが、今は特別永住者の方は、外国人登録証というものも在留カードというものも必要でなくなってしまいました。専ら在日韓国・朝鮮人及び中国人の方がほとんどですが、この方たちの特別永住者証明証という、やはり在留カードそっくりのカードがあるのですが、これについては携帯義務がなくなってしまいました。以前は外国人登録証を常に持ち歩かないと、風呂場でたまたま裸になったときに警官から呼びとめられて持っていなかったなんて、当たり前で持っているわけないのですが、そういう笑い話のような話も昔は起こったぐらい携帯義務が課されていたのですが、今は特別永住者の方には一切こういうものはありません。
  これは日本の国際化という観点からは、非常に望ましい改正であって、そうあるべきであったのですが、ただ出入国が非常に容易になったことによって、やはり居住性判断が少し難しい側面が出てきました。私も実際、留学生をもっていたことがありますが、突然休学届を出されて、半年間居所不明だったことは実際あります。そういう思いをした教員は結構おられまして、これはなかなか難しい問題であると思っております。
  それから、その次のページですが、留学生や外国人研究者の居住性の判断はどうしたらよいのかというのは、ちょっと悩ましいところです。原則として、一旦日本に入国してから半年間日本に居所を定めて、つまり住民登録等をしている学生さん、あるいは研究者の方は日本居住者ですし、あるいは日本国内にある事務所に勤めておられるという方、日本企業に就職されているという方も居住者になるのですが、先ほどのように留学生の動きは、全部が全部、誰もが休学届を出さず、勝手に居所を動かしたりせずという形になっているかというと、確信が持てる大学の学生課の職員は、多分いないのではないかと私は思います。
  日本に入国後半年が経過して、そういう状況ですから、居住者かどうかということの判断が一概にはできないというところがあります。今まで以上に留学生と密な個人的なコンタクトを学生の窓口が常に持っている必要がありますし、それから、研究者の場合でいうならば、先生方が招聘されるときに、あるいはふらっと寄ってしまわれた外国人研究者の場合、やはり行動に気をつけるということが必要なのですが、そのたびごとに行動に気をつけるということを、どの程度先生方に守っていただけるのかというのは、私は非常に不安なところであります。
  というわけで、懸念されるのは9ページ目の国籍による差別です。誰が非居住者か分からないという可能性が出てくるということから、特定国の、特に特別永住者の方たちに対する差別のようなものが懸念されます。外国人ユーザーリスト掲載機関が多数存在する非ホワイト国の国籍を持つ留学生に対して、一方的に入学を許可しないという例がありました。国立大学です。どこかということは、御存じの方が多いと思いますのでここでは繰り返しませんが、結局裁判で負けまして、その学生を受け入れなければならないという事態になってしまった。最終的に和解になったのですが、そういうことも出てきてしまっています。
  そのときに、大学の関係者に私、ちょっとヒアリングしたことがあるのですが、いや、これは国からこうしろと言われたのだというふうに明らかな誤解をしておりました。ちょっと背景はいろいろあるのですが、危険だから、ともかく危なそうな国から学生を受け入れないというような態度をとってしまった大学も、実際にあったということを頭に置いていただければと思います。
  それから10ページ目ですが、先ほど触れましたように、知的財産管理との整合性の問題があります。先ほど申し上げたように、知り得るものならば、特許法29条における新規制の解釈上は公知のものになっているわけなのですが、不正競争防止法における営業秘密でもないために、知的財産管理上、特に留意すべきではないというふうに、こういうものについては思われているのですが、外為法上は、実際に不特定多数の者に公開されているのか、入手可能な情報でないと、公知のものとは見なされませんので、知的財産本部の方としては、別にこんなもの管理する情報ではないと思いつつ、一方、輸出管理の部門としてはこれを管理しなければならないということになって、先生方に相当の混乱を来している側面があることは否めません。
  11ページですが、したがって、輸出管理の全体、一元的に行おうとしますと、公知概念が異なっているために、知的財産本部と輸出管理部門との間で対立が生じやすいと。特に職務発明の範囲を大幅に広げてしまって、やたら職務発明という形で大学が抱え込んでおりますと、技術の管理は大変難しいものになってきます。特許を取ってしまっているのであればよいのですが、職務発明と認めた上で権利を承継しないというような判断を大学がしますと、いわゆる外為法上公知なものにならない技術情報がたくさん職務発明として大学に蓄えられるという形になってしまうので、大変なことになる可能性があります。
  それから、大学の輸出管理を知的財産本部に負わせようとしているところがありましたが、ところが知的財産本部は留学生の取扱いということについては全く分かっていないところがありまして、それをまた一緒にしてしまってから、後から教務と知的財産本部に分けるというような混乱もあちこちに見られます。
  というわけでまとめですが、高等教育機関や学術研究組織という大学の社会的機能と、密接に結び付いた組織特性を無視した安全保障輸出管理体制の構築は、非常に難しいと思われます。私はできないのではないかと思っています。ですから、その実態を踏まえた実効性のある管理体制をどう構成したらよいのかということを実現するためにも、地道な啓蒙活動を継続的に行っていかなければいけない。大学の理事の方ですら、そのようなものはやらなくても大丈夫だよと平然と私に向かって言った方が何人もおられます。やる必要はないとまで言った方が、現実の場でおられました。もちろん非公式の場ではありますが。大変驚いたというのが、正直なところです。
  特に前の伊藤委員や飯田委員がおっしゃったような、ああした実態の上にこうした安全保障貿易管理の話が重なっておりますので、やはり安全保障貿易管理だけを単独に扱うということは難しいのではないのかというのが、私の私見でございます。以上です。

【渡部主査】    足立委員、どうもありがとうございました。
  残った時間で議論を進めるわけですが、少し効率的な議論を進めさせていただくために、議論のポイントを整理して進めたいと思います。事務局から、議論のポイントについて御説明いただければと思います。

【小河専門官】    資料6を御覧いただければと思います。議論のポイントとして大きく二つ書いておりますが、先ほど申したようにモデル事業に結び付けるための検討課題を抽出したいということで、一つ目として、マネジメント上、現在大学がどういうことを問題として抱えているのかという点。また、今後検討していく上での課題は何か。本検討委員会、又はモデル事業でどのようなことを検討すべきか、といった点に絞って御議論いただければと思っております。
  今後の予定については、短期間になりますが、3回で中間取りまとめをしていきたいと思っております。以上です。

【渡部主査】    どうもありがとうございます。論点として利益相反と技術流出防止と、それから今の安全保障輸出管理があります。それぞれについて御意見を伺っていくわけですが、その前に全体について何か横串で御意見があれば今伺って、それから個別の意見を伺っていきたいと思いますが、いかがでしょうか。
野口委員、お願いします。

【野口委員】    立命館大学の野口です。私は資料4-1の委員会の方向性で最も大事と思うのが、検討の方向性の三つ目です。最後に足立先生からも御紹介がありましたが、やはり教職員等自身がリスクマネジメントに関する理解を深めることが重要ということです。現場の教職員と大学トップを含めた合意形成が図られないことには、政策としても定着していかないと思います。ですので、この委員会のアウトプットですが、やはりまとめや報告書という形式よりも、私の希望としては、一定の義務化等も含んだ、仕組みを定着させるためのガイドラインのような形式に持っていった方が、個人的にはよいのではないのかと思います。
  また、今、非常に時期的にもチャンスかなと思っていますのが、先ほど飯田委員のデータのところでもありましたように、利益相反の規定が整っている大学は300大学強となっています。一方、利益相反にかかる委員会に外部委員を入れているのがその半分ぐらいの大学数だということです。このことは、委員会の透明性の担保だけではなく、大学内だけに任せないチェック機能を導入する意味でも外部委員を入れる重要性は十分にありますので、例えばそれを義務化させるような提言を盛り込む。つまり、利益相反のマネジメントも13年前に報告書ができたものの、やはりこの時期に入念に見直すところはあると思います。技術流出につきましても、安全保障貿易管理の重要性はもちろん重要です。けれども、昨今、その重要性が富に言われてきたのがこの2、3年です。ですから、新しいものを初期に定着させるような提言も必要と思います。そして、国際産学連携については、多くの有力大学がスーパーグローバル大学創成支援事業に2014年度に採択されました。この事業は、10年という長期にわたり、政府が重点を置いている政策ですので、その実効性も横睨みしながら、提言も進めていく必要性があるように思います。繰り返しますが、本委員会の成果の在り方や公表については、時期的にもよいチャンスだと思いますので、そのような意識を持ちながら、ガイドラインのような各大学に対して実効性をもたせるような内容にしていくことも一つの考え方という感じがしました。以上です。

【渡部主査】    ありがとうございます。三尾委員、お願いします。

【三尾委員】    三尾でございます。ガイドラインにつきましては、利益相反についても技術流出についても、既に検討されたものが存在するということなのですが、大学の実態を伺いますと、やはり大きなガイドラインに沿った形の現状はないということが事実かなというふうに思うと、かなりの齟齬があるということだと思うのですが、これをどちらに問題があるのかということを、まず確定したいというか、確認をしたいというふうに思っておりまして、そもそも大学側としては、いろいろな大学特有の事情があると思いますが、大学側で特有の事情を踏まえてでも、改善することはそもそも可能なのかと。
  改善が可能であるとすれば、どこまでができるのかという、ちょっと現実的なところをまず確認して、その上でガイドライン自体ももう少し現状に合わせた使いやすいものにする必要があるのではないのかという、双方でどこまで歩み寄ることが可能なのかということを見た方がよいのではないのかなと。ちょっと余りにも現状とガイドラインの立派さがずれているというような印象だったので申し上げました。以上です。

【渡部主査】    ありがとうございます。苛原委員、お願いします。

【苛原委員】    徳島大学の苛原です。先ほど野口先生が言われたことにちょっと関係があるのかも分かりませんが、やはり教員になってからいろいろなこういうものをやるだけではなくて、やはり学部教育、あるいは大学院の教育において、きちんとした利益相反、あるいはいろいろなものについて教育をするという観点がどうしても必要でして、もう既に教職員になって時間がたつと、なかなかそれを勉強する機会がないのですが、やはり学生の時代から、これを是非教育に取り入れてほしいということを、ちょっと付け加えていただくことも重要ではないのかなと思っております。以上です。

【渡部主査】    ありがとうございます。新谷委員、お願いします。

【新谷委員】    新谷です。中間取りまとめは6月中が目途ということで、非常に差し迫っているので、中間取りまとめに一体何を盛り込むのかというのが問題になると思います。利益相反マネジメントと技術流出防止マネジメントのみ扱って、その他については課題を提示する程度にして最終取りまとめの際に補足するようにすればどうかという意見です。
  その場合に留意してもらいたいことが4点ほどあります。1点目は、産学連携に伴うリスクマネジメントについては、足立委員から御指摘がありましたように、大学の学長をはじめとして、執行部の理解が乏しいという実感があります。以前利益相反マネジメントの調査を実施したときも、なかなか執行部の理解が得られないという意見が多くありました。現場の体制整備がなかなか進まない主な原因にそれがあると思います。このため、利益相反マネジメントにしても技術流出防止マネジメントにしても、適切な管理が求められる背景と必要性及び緊急性を、十分に中間報告で説明する必要があります。
  先ほど伊藤委員からも御指摘がありましたとおり、大学は営業秘密の対象となるかどうかを意識しながら管理しているわけではなくて漠然とマネジメントしているという面もあります。だから、その背景、必要性、緊急性というのは十分に説明するということが1点です。それから2点目に、やはり全学的な取組体制を構築していくにはどうすればよいのかということを明らかにしていきたい。これは重要だと思います。
  それから3点目として、大学としての特性というのを考慮した場合に、研究の自由に対する配慮や、学生に対する教育上の配慮というのが非常に重要なことになりますので、特に大学として注意しなければならない事項は、中間取りまとめでも記述する必要があると考えています。
  4点目として、大学としてトラブルが実際に発生するのを防止するために、事前の予防措置についても重点的に記述する必要があると思います。
  先ほど林委員や伊藤委員もいわれたとおり、安全保障と営業秘密については詳細なガイドラインが経済産業省や産学連携学会からも出ており、今回それらを繰り返すのでは意味がないので、今申し上げたような4点に絞った記述とするというのを一案として出させていただきたいと思います。

【渡部主査】    ありがとうございます。中間取りまとめの範囲については、事務局、何かございますか。全部まとめるということではないということと理解してよいですか。

【小河専門官】    そうですね、検討課題をある程度整理するという意味で、全部まとめるということではございません。ただ国際産学官連携についても今後検討が必要という辺りとか、その辺については触れさせていただくということで、ちょっと優先順位はつけさせていただく形になろうかと、今考えております。

【渡部主査】    伊藤委員、お願いします。

【伊藤(正)委員】    群馬大学の伊藤でございます。利益相反にしても安全保障貿易管理にしても不正競争防止法にしても、それぞれのテーマを深く掘り下げることは重要ではありますが、その一方で、やはり同じ大学におけるコンプライアンスの問題であります。かつ大学の組織文化や大学の教職員に対して、それをどう浸透させていくのかというところでは、かなり共通項があると思います。その辺を意識した形で取りまとめをしないと、やはり現場の人たちも全く異なったものが独立した形で、あれをやれ、これをやれというのはなかなか大変でもありますし、共通項の部分をどう意識してこれをやるのかということは、極めて重要ではないのかというふうに思う次第であります。以上です。

【渡部主査】    ありがとうございます。平井委員、お願いします。

【平井委員】    平井です。全体に共通するところで私が感じたのは、不正競争防止法はちょっと違うのかもしれませんが、特に利益相反、安全保障、非常に強く感じるのは、各大学でそういうことの中心になる方がいて、ある時期とてもよく勉強されて、ある程度のエキスパートになります。私はこの利益相反とかの普及が始まる、本当に1997年頃からずっとやっていますが、外部の委員としてそういう方とお話をしたりして、いろいろノウハウを構築したりしてコミュニケーションして、よい関係ができていくと。利益相反委員会の場合もそうですし、あるいは安全保障もそうですし、場合によっては不正競争もそうですが、そういう方は、ある頃にまた異動でいなくなってしまいます。ノウハウの継承がないのです、比較的。それで、また一から始まるのです。
  そのうちだんだん大学の熱意がちょっと下がっていったりすると、熱意が継続されていればよいのですが。そうすると割と形骸化していったり、委員会活動が低下したりとか、そういうことが起きやすいということはあると思います。だから、私はこれまでお付き合いした中にも、本当に優れた大学の方はたくさんおられました。よく本当に勉強されていたり、研究されたりして。ただ、なかなかそれが大学の中に根付いていかないというのは一つあります。
  翻って考えると、企業の場合は、意外にそれをうまくやります。もちろん企業の中にも異動はありますが、ある程度この人材はこの分野、なかなか育てられるなと思うと、比較的時間をかけて育てる。仮に異動する場合にも、必ず次を育ててから異動するとか、そういうのをうまくやります。だから、もちろんこれは人事制度に関わってくるので難しいとは思いますが、この三つのことに共通して、そういう専門人材をある程度育成していくという姿勢を持たないと、多分一時的に啓蒙活動をしたり、一時的に大事ですよという花火を打ち上げたりしても、一過的に終わるという気がします。以上です。

【渡部主査】    植木委員、お願いします。

【植木委員】    植木と申します。2点ほどでございます。1点目は、今日、飯田委員、伊藤委員、足立委員に御報告いただいたのですが、私個人の印象では、特に利益相反マネジメントについては、かなり各大学で努力をされて、例えば外部委員を委員会等に入れておられる大学がほとんどだと思いますし、それからアドバイザリーボードを作りまして、専門家の弁護士の先生に個別のケースについて専門的なアドバイスを頂いているような大学も非常に増えてきていると思います。そういう意味では、今日の冒頭の3人の先生方の御報告は、もちろん国立大学、私立大学等を通じて大学の問題状況の御指摘だったと思います。十分に真実の部分はあると思いますが、かなり大学で工夫をされている部分もあるというのが個人的な印象であります。
  それから2点目は、文部科学省全体として、やはり今、日本の大学の国際化、グローバル化というのは非常に強力に進めているところかと思います。松本室長も御出席ですが、スーパーグローバル大学創成支援事業等が行われておりまして、今後10年で、例えば海外との、留学生を増やすのみではなく、研究や教育も国際化を更に進めようという外部状況がございます。
  それで資料の4-1を御覧いただきますと、4-1の例えば2ページ目の下に、(3)のその他のところで、外国企業等との産学連携活動を行うことは、我が国研究成果が外国企業に利することになるという意見もあるというような御指摘はあるのですが、例えばここで問題とされている、我が国研究成果といっても、これがその定義として、海外との共同研究が当たり前になって、今後10年で様々な外国人の先生が日本の大学の中でラボを持つ。あるいは、日本人の先生が外国に行って共同の研究室を持つ。あるいは、その中に当然ほとんどが留学生というようなラボもある。そういう研究成果というのは、ここでいう我が国研究成果の定義に入るのか、入らないのかといった問題ですとか、そういう意味では日本の大学における今後の全体状況を踏まえながら、個別の論点を、日本の大学がグローバルスタンダードなルールを作るための会合ということで積み上げていく必要があるかと思います。そういう意味では、個別の論点を積み上げてルールを作る作業とともに、全体状況を踏まえた落とし込みといいますか、その相互作用の中でこの会議の中で有意義なルール化、あるいはガイドラインの作成という視点が必要なのかなというふうに個人的に思い、発言させていただきました。以上でございます。

【渡部主査】    ありがとうございます。足立委員、お願いします。

【足立委員】    先ほど平井委員のおっしゃった事柄を受けるのですが、人材の育成が大事だという前に、そういう担当部署に配置される方は、外部からその専門家という形で呼ばれる方が非常に多くて、そうなってしまいますと、大学の情勢が変わりますと、異動されてほかの大学に行ってしまわれるということが非常によくあります。そうすると、せっかくそこで培われた人間関係やノウハウが、その人ごと、どこかにいってしまうということがある。ですから、人材の育成ということを考えるならば、産学連携学会の安全保障貿易管理のガイドラインにも書かせていただいたのですが、自分たちの職場の仲間が、その能力のゆえに重責を担っていると皆から思われるような人間でそのところを構成しないと、まず間違いなくうまくいかないのです。
  つまり、恐らく今日の委員の中で、実際に大学の学部で研究室を持って、卒業研究の学生を今現在指導しているというのは多分私だけだろうと思うのですが、その人間として言わせていただきますと、ほかの大学でもいろいろ担当の専門家の方が非常に頑張っておられるのはよく分かるのですが、やはり学部の教員から見た場合、自分たちの仲間ではないのです。管理側に立っている人間と見られてしまうので、飽くまでそういう方たちとして接せられていると。どこにどういう機器があるのかというぶちまけた話のようなものというのが、耳にちょこちょこ入ってくるというのは、やはり相互の人間関係が密にできているからです。そこが、一番抜け落ちている観点で、どんなシステムを作っても、そういう人間を作らない限りにおいては、結局は管理される側とする側という二項対立が大学の中にでき上がってしまっていて、よい結果が少しも出てこない。仮に一時期よくなったとしても、何年かたつと元の木阿弥になるという形が実態なのではないかなという気が、ちょっと平井委員の話を聞いて考えました。

【渡部主査】    ありがとうございます。利益相反に関して、個別利益相反の論点に関して御意見のある方、お願いしたいと思いますが、江戸川委員、お願いします。

【江戸川委員】    江戸川でございます。利益相反についてですが、まず皆さん、釈迦に説法になってしまうかもしれません。利益相反マネジメントの目的が何なのかというところを改めて確認させていただきたいのですが、やはり個人としての利益相反にフォーカスすると、大学としてのインテグリティの確保、もう一つが産学連携活動に取り組む先生方、教員の方々が、安心して産学連携活動を行えるようにすることということで、個人としての利益相反や責務相反のマネジメントを行う際には、やはり大学として、産学連携活動に対する取組方、考え方というものがベースになってくるのだろうと思います。
  そういった中で、各大学に産学連携活動を行うのかどうかも含めて判断をゆだねるというのが一つの考え方なのですが、そう考えたときに、例えばこういう産学連携活動をやっている状態なのに利益相反マネジメントがちゃんと行われていないのはまずいのではないのかというお話は、必ず具体的に検討すると出てくると思います。
例えば、私が思うところとしては、先生が大学発ベンチャーを創業して株を持ち、役員も兼業しているというような状況にあって、個人としての利益相反マネジメントとして例えば自己申告も行われていないであるとか、利益相反委員会が開催されていないということであるとか、これは問題であろうと。別の事例ですと、大学がベンチャー企業の株を持つ、私立大学では出資しているケースもありますし、これから国立大学も間接的にではありますが、株を持つことになると思います。そういう状況になっても、組織としての利益相反マネジメントの体制がないということだと問題なのだろうと思います。
  こうして具体的なケースを見たときに、このリスクを放置しているのはまずいのではないのかという話が出てくるのであって、一律全ての大学に、例えば共同研究をやっている先にいろいろ調査されているという数字がありましたが、利益相反ポリシーがあるのかとか、利益相反委員会があるのかとか、そこに外部の委員が入っているのかというところを形式的に調査をして、できているできていないと評価していくとなると、リスクに対するマネジメントの考え方というのは各大学で違ってくると思いますし、抱えているリスクも違うと思いますので、必ずしもよい方向に、今回の提言が向かうとも限らないのではないかと思います。この辺りをきちんと見えるようにというか、どういったリスクを抱えるのかということも含めて、きちんと大学に分かるように伝えていくことが大事かなと思っております。
  ただ一方で、例えば私立大学の中には、兼業をフリーで認めて一切管理しないというところもあると思います。こういうケースですと、もしかすると、大学の機構全体で見たときに、やはりこれは野放しにしてはいけないのではないのかという、大学という存在全体のインテグリティを阻害しないようにするために、ある一定程度のマネジメントを求める必要性はあるのかもしれないと思っておりまして、そのような観点があるのであれば、ここではっきりと示した方がよいのではないのかと思います。
  モデル事業に関してお願いですが、そういう意味で私も、国立大学に関しては非常に利益相反の議論というのは進んでいると思っておりますし、あと飯田委員からも今日解説がありましたが、医学研究に関してはかなり進んでいると思います。でも私立大学にはかなりばらつきがあるというふうに思っておりまして、それは先ほどの兼業の取扱いの問題も含めてですが、かなり人事制度自体がいろいろなパターンがございますので、そういう意味でモデル事業としては、国立大学の事例に偏ることなく、私立大学の事例も示していただけるとよいなと思っております。以上です。

【渡部主査】    ありがとうございます。利益相反に関していかがでしょうか。平井委員、お願いします。

【平井委員】    平井です。非常に難しいところですが、最初に、これは誰かの意見を批判するとかそういうことではなくて、こういうモデル事業を始める前に、考え方の整理という意味で述べておきたいのですが、利益相反というのは、いつも誤解と戦ってきた経過があります。それは例えば、産学連携の足を引っ張るとか、最初はそういう誤解もあったし、いろいろな誤解と戦ってきています。私の観点では、これは本当に私の意見ですが、今の最大の戦いというのは、不正行為の防止と利益相反の切り分けをどうやって示していくのかというところが最大の課題だと思っています。
  今、本当に大きな問題は、利益相反マネジメントがまずかったから不正行為が起きたんだとか、不正行為と利益相反の問題というのは非常に密着していて一体性があるんだというような考え方、これはかなり多いと思います。私はそうではないと思っていますし、かなり昔からずっと言っているのですが、利益相反というのは本当に真面目にやっている真摯な研究者を誤解から守るための仕組みなのです。そのために自己申告もあるし、マネジメントもあるし、いろいろなフィードバックをしてどんどんよい産学連携をしていくと。不正行為という問題は、これは完全に悪なので、何かの法律違反をしている、あるいは規定違反をしているという違反の事例ですよね。これは根本が違うと思います。
  ただ、ディオバンのケースで非常に不幸だったのは、その二つが両方確かにあったので、誤解を招く場面ができていると。例えば、某私立大学の方の肩書に、某企業の肩書がついていなかったと。肩書を付け忘れていたと、そういうことがあった。これは利益相反違反なのですが。あるいは、適切な奨学寄附金云々に対する意識がなかったとかですね。それはそうなのですが、ただ、ある意味それはその時代がそうだったという背景も実はあって、確かによくないのですが、あながちそこだけを責めきれない部分もあります。
  一方、現在裁判が進行中ですので軽々しいことは言えませんが、もし誰かが裁判の結果、研究不正行為をした、あるいはそれを誘導した、あるいは広告の規制に関して違法な行為があって薬事法違反になる。そういうことがあれば、これは本当に問題ですが、これは不正行為の問題としてきちんとやるべき問題であって、それはちょっと利益相反とは違うと思います。だから、そこの切り分けはきちんとした上で、ただ、そうは言うものの、確かにこれまでも利益相反というのは十分浸透してきていなかったし、マネジメントも不足しているから、各大学、各研究機関でどんどんこれを浸透させて、よりよいマネジメントをして、飯田委員がおっしゃったような科学的な利益の喪失もない。あるいは、患者さんとか一般国民の目から見た損失もないという研究者ワールドを作っていくべきだと思いますが、そのための一つの前提として、そこの切り分けははっきりしておいた方がよいのかなという気がします。以上です。

【渡部主査】    ありがとうございました。野口委員、お願いします。

【野口委員】    立命館大学は、私立大学です。やはり多くの私立大学は人文社会系分野の研究者が多く、立命館大学もそうですが、理工系の教員が約350強で、人文社会科学系の先生が約700強ということで、人文社会科学系の教員が非常に多いという傾向です。当初、利益相反規定を作ったときも、大学発ベンチャーをどんどん創出していくということに重きをおいて、運用を始めましたが、今現在、既存企業の兼業が圧倒的に多くなってきている現状があります。ですので、今、人事部と議論をしています。つまり、これは産学連携事業の一環ではなく、雇用者の身分に関わることなので人事部の仕事だろうということです。そういった兼業が非常に多くなってきているような背景が私立大学には多いと思います。また、私立大学の場合は授業のコマ数が多い。ST比ということで、一人当たりの教員が持つ学生数も40名弱ぐらいになってきていますし、あと私立大学は、行政役職として任命されるのが非常に多いと思われます。例えば、キャリアセンター副部長とかです。ですので、前述傾向のある私立大学は、兼業が多いといっても件数は国立大学と比べ、たかがしれていますので、利益相反となるケースが多くないと思います。
  それから、起業支援をどうしていくのかというのは非常にテクニックが要りますし、そのことに悩んでいる私立大学もあります。技術シーズが多く、研究環境や起業環境が充実している国立大学と一線を画した、私立大学にも定着するような利益相反マネジメントの在り方も考える必要があると思います。このことも繰り返しになりますが、兼業となると人事部が関わってきますので、兼業の位置付けを学内でどうしていくのかというのが、今我々の大学でも一つのキーになっています。利益相反のような規定の見直しは、大学ガバナンスにも関わることと直結しますので、丁寧かつ大胆な見直しを、今考えているところです。

【渡部主査】    ありがとうございました。飯田委員、お願いします。

【飯田委員】    先ほど、江戸川委員から、医学研究の利益相反に関してはかなり進んでいるというお話があったのですが、個人としての利益相反については御指摘のとおりだと思います。平井委員が先ほどおっしゃっていらした、不正と利益相反で混同されると言う点ですが、先月過去1年の新聞記事で、医学研究、利益相反というキーワードのある記事を検索した結果、約70%が不正という言葉と一緒に取り上げられていましたので、取りまとめでは正しい認識に向けて、盛り込む必要があると考えます。以上です。

【渡部主査】    ありがとうございます。西尾委員、お願いします。

【西尾委員】    不正行為は、明らかに切り分けた方がよいと思っています。ただ、実質上、どうしてもそういうケースが注目を浴びてしまったので、新聞記事でもそういうことになってしまったのだろうとは思いますが、やはり分けた方がよいと思っています。
  あと林委員が最初におっしゃったことにつながるのですが、いろいろとガイドラインなり何なりで書いたとしても、実際マネジメントするときというのは、その書いたもののとおりにやっていたってできないのです。やはり関係者とコミュニケーションする、質問する、あるいはそれに対して、調べてなければもう1回調べてきますと、そういうことでやりとりをしているのです。ですから、そういうやりとりができる環境というのは、ある程度多様性がないといろいろな、仮に同じ事象を見ているとしても、やはり幾つか別の視点から質問を投げかける、疑問を投げかけると、またちょっと実は違った面が見えてくるというのは、私、大学、あるいは国研等の利益相反の議論の中でそういうことを感じたことがありますので、むしろそれをどういうふうにこういう場で議論をしていくかということを、ちょっと考えてもらうと。それは要するに、各大学の特徴があると思いますので、それが一つあるかなと思います。以上です。

【渡部主査】    ありがとうございます。利益相反についてはまだあるかと思いますが、利益相反に加えて、技術流出防止、あるいはその他の課題についても御意見をいただければと思います。いかがでしょうか。三尾委員、お願いします。

【三尾委員】    技術流出に関してですが、学生の扱いというのが非常に解決しにくい問題であると感じておりまして、そもそも学生の位置付けの問題になるものですから、ここのところをどういうふうに考えていくべきなのかという、どこかで線引きをして、ガイドライン的にこういうふうにやりましょうというような形で処理をしていった方がよいのかなというふうに個人的には思っているのですが。そもそものところから掘り下げると、解決は難しいかなというふうに考えています。そろそろどこかで線引きをして、こういう場合はこういうふうに扱いましょうみたいなことで、安全保障の関係からも問題になってきますので、その方がよいのかなというふうに感じています。
  ちょっと戻ってしまうのですが、利益相反マネジメントに関してですが、これについてはガイドラインそのものというよりも、やはり大学側の組織体制を作るということとか、例えば定期的に研修をして、利益相反に関する考え方を広く周知するとか、そういう体制作りを決めてしまうといいますか、それぞれの大学自体の多様性もあると思うのですが、ある程度モデル事業の中でこういう体制を作って、望ましいというのを示してあげれば、ある程度ほかの大学もそれに従って体制作りや研修体制とか、そういうものを作っていけるのではないのかなと。モデルケースとして形を示してあげるというのがよいのかなというふうに感じました。以上です。

【渡部主査】    ありがとうございます。ほかによろしいでしょうか。苛原委員、お願いします。

【苛原委員】    利益相反に関しましては先ほどから出ていますように、飯田委員とか様々な方から、確かに利益相反と研究不正は別にすべきで、考えていきたいというふうに考えております。それでこういうことは、私も医学系の立場で、毎日医学研究も実際にやっておりますし、そういうことで講演もやったりとかいろいろやっていまして、逆に言えば利益相反を出す、ちゃんとしないといけない立場にありますが、結構やはりこれを大学でやろうとしたら、人員とか費用が非常にかかります。それで是非そういう面でのモデル事業の中で、どの程度費用がかかって、どの程度人員がいて、どういうものかというのを是非出していただいて、こういうものでこういうことができるというのが有り難いというふうに思います。
  それからもう一つが、先ほどのことなのですが、私は医学系ですが、医学系というのはある程度進んでいるのと同時に、やはりある面では医療法とか薬事法とか様々なもので縛りがありまして、ほかのものとちょっと若干違ってくると思いますので、飯田委員がちょっとおっしゃった、別に考えていくというのも一つかと思っています。
  それからもう一つは、よく薬品会社の方々と話をすると、例えば今回、この4月に個人名が出ましたね、COIの関係で。そしてその個人名が出て、特定の方が新聞紙上に名前がばーっと出てしまったというようなことがあるのですが、やはりメディアの方々、十分なCOIに関しての理解をしていないというのも大きなことでありまして、そうなってくると、今度産学の協調に対して腰が引けてしまうといいますか。私自身は産学、お金を、資金を得て研究していくのは非常によいことだと思うのですが、やはりそういう形でメディアの方々にも理解をしていただかないとうまく進まないというような感じがしますので、そういう観点からも、是非そういうメディアの方々へのいろいろな情報提供とか、COIがこういうものだということもお願いできたらというふうに思っております。以上です。

【渡部主査】    ありがとうございます。ほか、いかがでしょうか。西尾委員、お願いします。

【西尾委員】    要するに、この新しいものを作った後、実際に目的としたことが実現できるまでというのは、どのぐらいのスパンを見るのかということをさっき言おうと思いました。何でかというと、利益相反も実質的には2002年頃から議論を始めて、やはり10年近くかかっているわけです。ですから、そういう意味で言えば、この三つ取り上げているものってそれぞれ難しさが違うと思います。特に安全保障ってどこまでできるんだ。要するに、ないものねだりになってしまうというところもあるので、そこの、何というかどの辺までというところをある程度この会議で合意をとっておかないと、実際に現場ってどこまでやればいいんだ、いつまで、実際どこまでやれるのかという話がすごく混乱を来してしまうのかなと思ったので、その辺ちょっと明らかにできればなと思っていました。

【渡部主査】    ありがとうございます。田仲委員、お願いします。

【田仲委員】    田仲でございます。先ほどもちょっとお話がございましたが、外為法って大学の管理を余り想定していないということなんですが、それはおっしゃるとおりで、実際に外為法を運用しようとすると結構いろいろな問題点が出てきます。その問題点を一応洗い出して、20項目ぐらいになりますが、包括的な要請書として、CISTECを始め関係6団体から経済産業省、外務省、文部科学省それぞれ要請をしました。
  それの回答として、先ほどから問題になっている居住者・非居住者につきましては中期的な課題ということで、まだ具体的な答えは出ていないのですが、例えば(留学生を受け入れる)研究室にどういう貨物があって、それをチェック(該非判定)しなければならないという話は、簡単な操作技術については該当しないというような見解が経済産業省のホームページのQ&Aに示されています。したがって、研究内容で該当・非該当を判断すればよいというような状況になっています。
  それから、研究内容の該非の判定ということなのですが、確かに非常に広範な分野にわたっているのですが、(研究内容、つまり)技術の該非判定については、経済産業省のホームページになりますが、貨物と技術を合体したマトリックスというのが公表されています。これを使用すればかなり実際の該非判定はやりやすくなっている。実際にエクセルのファイルで提供されていますので、ワード(言葉での)検索もできます。御指摘のようにどういう言葉で検索するのかというのは注意を要する部分ではありますが、このような考え方やツールが使用できるようになっていますので、そういうところをもう少し周知徹底していかなければいけないのかなと感じました。
  それから、実際に大学の中でいろいろな研究の該非を判定するときに、全ての分野についてよく知っている、該非判定をできる人は恐らくいないと思います。したがって、外為法の読み方が分かっている人が研究を実際に担当している先生方に話をよく聞いて、その先生と共同して該非判定をしていくという体制を作っていくことが必要であると思います。
  そうした場合に、やはりトップダウンで安全保障貿易管理をやらなければいけないという形の体制を作っていかないと、なかなか現場の先生方の協力が得られないと思います。以上でございます。

【渡部主査】    ありがとうございました。芳賀委員、お願いします。

【芳賀委員】    私は倫理委員会をやっている立場からなので、利益相反のことしか意見が出せないのですが。やはり先ほど飯田委員からお話があったように、新しい統合指針の中で、倫理委員会が利益相反のことも含めて審査をするという形になって、倫理委員会の立場としては実はかなり負担が増えているという現状があります。その一つの理由は、やはり研究計画を申請してくる側もそうだし、我々倫理委員も利益相反というものをどう見るのかということを十分に分かっていないので、委員の間に考え方の違いが生まれているというところがあります。
  先ほど学部教育、あるいは大学院での教育という話がありましたが、やはりこういうのは学生にやっても、学生が本当の研究者になるまでに時間がかかるし、その人たちが指導的立場になるのにはもっと時間がかかるので、医学研究で言えば医学研究の倫理を審査する側、要は指導的立場にある研究者、それから大学院生、学部学生というところに、全ての人に理解が得られるようなガイドラインなり何なりということでやっていかないと、やはりいけないのかなと。今日勉強させていただいた印象ですので、一言だけ述べさせていただきます。

【渡部主査】    ありがとうございます。一個一個の課題を今まで恐らく文部科学省の委員会としては、例えば利益相反だったら利益相反でやっていたと思います。これを束ねてみますと分かることもあります。一つは、これは大変だなということです。もう一つは、限られた経営資源の中で、これを本当に大学はどういうふうに取り組んでいくのかという観点で、やはりそこに対して横串で見たときに、こういうふうにしないとできないですよねという部分はあるなと思いました。逆に言うとそういう意味で、かなり多数の項目ですが、一緒に考えてみるということは非常に意義があるなというふうに感じました。
  ただ、これを6月の中間取りまとめとか、非常に納期がある中でどういうふうに整理をしていくのかというのはかなり過大なあれだと思いますが、今後、事務局からの予定はどうなっているでしょうか。よろしくお願いします。

【小河専門官】    資料6をいま一度御覧いただければと思います。今後の予定というところで書かせていただいておりますが、コメントいただいたようにかなりタイトなスケジュールではございますが、6月中めどで中間取りまとめに向けて検討を進めていければと思っております。第2回では、今日頂いた議論を踏まえて、利益相反マネジメントについて集中的にやりつつ、今日コメントいただいた部分をまた検討していきたいと思っております。
  また今後、追加の御意見等多々あろうかと思いますし、是非いただければと思っておりますので、4月30日をめどに電子メールにて御意見をいただければと思っております。また事務局側からメール等お送りさせていただきますが、御協力をお願いします。以上です。

【渡部主査】    それでは、これで大学等における産学官連携リスクマネジメント検討委員会の第1回を閉会とさせていただきます。本日は御多忙中のところ、大変貴重な意見をたくさん頂戴いたしました。ありがとうございました。

――  了  ――


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