参考資料3 検討の方向性(中間まとめ)に関する意見(新谷委員御提供資料)

平成27年5月20日
筑波大学 新谷由紀子


大学等における産学官連携リスクマネジメント検討委員会
検討の方向性(中間まとめ)に関する意見



1.大学等においてリスクマネジメント体制の整備が必要とされる背景
〇 大学等において産学官連携や国際交流の活動が活発化し、社会との関わりが一層緊密となるにしたがって、従来存在しなかったリスクが生じる可能性が高まりつつある。
〇 大学等においてリスクが顕在化し、現実に重大な問題につながったときには、実際に起きる物質的・金銭的損害のみならず、社会の信頼を失うなどその被る損害は計り知れないものとなる。
〇 今後大学等に対する社会や国民からの期待はますます高まっていくことが予測される。それに伴って、さまざまなリスクが生じてくると思われるが、それによって産学官連携や国際交流の活動を委縮させるのではなく、大学等は、利益相反マネジメントや安全保障貿易管理、営業秘密管理などを適正に行うことにより、これらのリスクが現実の損害に結びつくことを防止するために全力を挙げなければならない。これは、経営上の最優先課題の一つと考えるべきである。

2.利益相反マネジメントの現状と課題
〇 2012年度に民間企業と共同研究を実施した大学を対象とした調査では、個人としての利益相反マネジメントに関しても、実施していない大学が25%も存在しており、個人としての利益相反マネジメントであっても、まだまだ体制整備に関しては十分とはいえない状況にある。
〇 利益相反問題が研究の不正行為や法令違反等に関連して報道されることが重なったことから、利益相反を不正行為と同一視する誤解が数多く見受けられるようになってきた。これは大学等の現場においては由々しき事態であり、適正な産学官連携活動の妨げとなることが危惧される。利益相反は産学官連携活動等を推進していけば当然起こり得る状況であり、むしろ最先端の研究活動を行えば行うほど利益相反の状況を生じやすいともいわれている。利益相反それ自体は常に解消しなければならないわけではない。
〇 利益相反マネジメントは、利益相反の状況を透明性の確保や損害を未然に防止するための措置などにより適正に管理することにより、最先端の研究に従事する研究者自身を守ることにつながり、また、大学等にとっても、現実の重大な問題につながることを抑止する措置でもある。このような利益相反マネジメントの本来の意味や役割について、大学の執行部や教職員の一層の理解を得るように努める必要がある。
〇 利益相反マネジメントに対しては、上記とは逆の方向での誤解もあり、リスクの状況が混同されていることもある。例えば、製薬協の透明性ガイドラインに基づく金銭提供の開示は、産学連携(共同研究等)については件数や金額しか公開しておらず個人名が公開されているのは個人的な報酬として提供される講演料や原稿料である。しかしながら、それにもかかわらず、「個人名が公開されると産学連携を阻害する」というような一部の団体等からの意見もある。個人に対する謝金が必要以上に高額に提供されれば、医薬品にそれらの経費が上乗せされて益々高額になり国民に損失を与えることにつながるという問題もある。米国でも日本同様、利害関係を開示しなかったことが重大な問題として1面トップの記事になることが多く、開示については、「隠して開示しそびれる」よりも「最大限開示しすぎて失敗する」方がましだ、という論文も出ており、開示による透明性確保に躊躇することは問題を大きくする。
○ また、利益相反の状況を放置すれば、そこから、研究不正や法令違反につながる場合があることも事実である。利益相反の状況は、それ自体では不正でも悪でもないが、大事なことは適正に管理することである。一部の医師主導型臨床研究に関して、倫理審査委員会や利益相反委員会が本来期待される役割を果たせなかったことから、日本の臨床研究に対する国際的信用の失墜という事態を招いたことは、深刻に受け止めなければならない。要するに、利益相反マネジメントにおいても、ポリシーや規則等を形式的に整備するだけでは不十分で、それらを目的に沿って機能させるためにはどのようにすればよいのかは、今後とも重要な課題である。
○ 大学の主要な活動である教育面においても、利益相反問題が生じるおそれがある。例えば学生・大学院生等の自由な意思に基づかない産学官連携活動への参加や、特許等知的財産の保護のため、学生・大学院生等に長期間秘密保持を強制するなどといった事例が考えられ、このような局面での学生の保護をどのようにするかは、大学における重要な課題となる。
〇 大学等における知的財産権の組織保有・組織管理の制度が行き渡るにつれて、企業に実施許諾した特許権等の実施料収入が大学等に入るようになったり、あるいは、大学発ベンチャーに対する特許権等の専用実施権の設定の対価として大学等がそのベンチャーの株式を保有したりすることが認められるようになった。また、最近では、国立大学法人法の改正により、国立大学法人が研究成果活用支援事業に出資することが可能となるなど、大学等が、組織としての利益相反マネジメント体制を整備する必要性が急速に高まってきている。
〇 しかしながら、大学等の現状は、前記調査によれば、組織としての利益相反マネジメントを実施している大学は極めて少数に止まっており、しかも、実施しているとする大学でも、該当あるいは懸念される場合には、利益相反アドバイザー等に問題提起をすることができる旨規定されているに過ぎないというのがその実態である。
〇 利益相反マネジメント体制の整備が進まない理由として、学長等を始めとする大学執行部や教職員の理解が乏しいことを挙げる例が多い。また、規定等を整備しても、その運営をどのようにすればいいのかがわからない、あるいは、わかる人材が学内にいないことを問題点として挙げる例が多い。
〇 学内の委員会として利益相反委員会を設置している大学は多いが学外の有識者で構成される利益相反アドバイザリーボードを設置している大学は少数である。利益相反委員会に外部委員を入れている大学であっても、1名~若干名にとどまる。特に組織としての利益相反をマネジメントする場合は、学外の者で構成される第三者委員会の設置は重要である。
〇 利益相反問題に関する日常的な相談に応じたり、あるいは、利益相反委員会や利益相反アドバイザリーボードでの審議を求めるための発議を行ったりするなど、学内の利益相反マネジメントにおいて重要な役割を果たす利益相反アドバイザーを設置している大学は多くなく(上述の調査でも約60%)、設置している大学であっても、学外の弁護士等を非常勤で委嘱しているに過ぎない大学が多く、日常的な相談対応が十分に行われているとはいえない。
〇 したがって、利益相反マネジメントの課題としては、次のものをあげることができる。
(1)利益相反マネジメントについて、学長を始めとする大学執行部の理解を得られる体制とするにはどのようにすればよいのか。
(2)利益相反マネジメントについて、教員や事務職員等の理解を得るにはどのようにすればよいのか。
(3)利益相反マネジメントに関して、全学的な体制を構築していくためには、どのようにすればよいのか。
(4)利益相反マネジメントの運用のノウハウはどのように構築すればよいのか。
(5)利益相反アドバイザーなどの人材をどのように育成・確保していけばよいのか。
(6)組織としての利益相反マネジメントについては、どのように体制を整備していけばよいのか。

3.利益相反マネジメントにおいて今後改善を図っていくべき方向性
〇 利益相反自体が即不正となるわけではなく、産学官連携活動等を推進していけば利益相反状況が生じることは避けられない場合がある。重要なことは、それらを適正に管理していくことにより、問題の発生を未然に防止することである。
〇 つまり、利益相反マネジメントの目的は、不正を摘発することではなく、外部に対して透明性を確保するとともに、未然の予防措置を講じることなどにより、教員の名誉や信頼性を保持し、大学のインテグリティを維持していくことである。その結果、大学は激しい社会的非難に曝される事態を防止し、教育研究活動の停滞を避けることができる。利益相反マネジメントには、大学として、経営上の最優先課題の一つとして取り組むことが求められる。
〇 利益相反マネジメントについて全学的に理解を深めていくためには、研究担当副学長(理事)等を統括責任者として、その下に、可能な限り利益相反担当専門部署を設置することが望ましい。学内の事情により兼務とする場合でも、学内規則上利益相反担当責任部署が存在することを学内外に明確にする必要がある。
〇 利益相反に関する正しい理解を学内に浸透させていくために、学内の各部局等の代表で構成される利益相反委員会等の組織を設置することは有効である。少なくとも、この委員会において、利益相反ポリシーや規則等の制定・改廃等を審議し、また、個別の利益相反問題の対応のうち特に困難なもの又は重要なものを審議することは、学内民主主義の観点からのみならず、利益相反問題に関する学内の理解を深める上でも重要な意味を持っている。
〇 上記の主として学内メンバーにより構成される利益相反委員会の判断の客観性を担保するために、学外有識者のみによって構成される利益相反アドバイザリーボードを設置することは極めて重要である。利益相反問題に対する学内の判断が、社会的な常識から逸脱しないように、特に重要な場合は利益相反アドバイザリーボードの見解を求めることも必要である。利益相反アドバイザリーボードを設置している大学はまだ少数に止まっている。しかし、社会の目で見た場合に、利益相反問題への対応について、学外有識者を代表する者で構成されているアドバイザリーボードが設置されていることは、その大学に対する信頼を格段に増すことにつながる。
〇 また、アドバイザリーボードは、大学の判断に世間の常識を反映させるだけでなく、大学が重大な問題の渦中に落とされたときに、逆に大学を守ってくれる立場にたつこともある存在である。さらに、利益相反アドバイザリーボードは、利益相反委員会で決定された措置に教職員が不服のある場合に不服申し立てを行うことができることを認めることにより、第二審的な役割を担うことも期待される。
〇 大学における利益相反マネジメントの有効性を確保する上で特に効果的なのは、学内の常勤的な教員等による利益相反アドバイザーの設置である。利益相反アドバイザーに学外の有識者、例えば弁護士を委嘱している大学もかなりの数に上るが、教職員が日常的に利益相反問題を相談できるようにするためには、非常勤の者では十分とはいえない。学外の弁護士をいざというときの相談相手として確保しておくことは重要であるが、大学等における日常的な利益相反問題に関する相談は、そのほとんどは法律問題でない場合が多く、学内の事情や学内規則等に精通している者でなければ応えらないケースが大半である。こうした問題に応えるためには、学内の常勤の教員等を利益相反アドバイザーとして任命することが最もふさわしいと考えられる。
〇 学内の常勤の教員等を利益相反アドバイザーとして任命するためには、その能力を持った教職員等を育成する必要がある。そのためには、他大学等であっても先進的に利益相反マネジメントに取り組んできたところと連携することにより、人材の育成に協力してもらうことが考えられる。あるいは、これまでに先進的な大学等で蓄積されてきた利益相反マネジメントの運営のノウハウなどを共有することにより、知識や経験の不足を補うという方法もあり得る。もちろん、大学の事情や学内規則等はさまざまであり、したがって、同様の案件について他大学の例に倣うということではなく、自分の大学等で判断するための参考として、他大学の知識・経験の共有を進めていくということが重要である。
○ 産学官連携活動に学生を参加させる場合には、指導教員による事前の十分な説明と学生の自由意思による参加を徹底するようにしなければならない。特に、企業との共同研究への参加については、特許等知的財産の保護のために研究終了後一定期間発表を差止められる場合があるので、学生に対してとりわけ慎重に対応する必要がある。
〇 利益相反マネジメントについて、学内教職員の理解を深めていくためには、やはり、教育・研修が重要なことはいうまでもない。利益相反については、e-learning のための既存の教材が提供されているので、大学としてそれに参加し、教職員が利用できるようにすることが重要なことはいうまでもない。その上で、自分の大学等における関連のポリシー・規則等を周知させる内容のe-learning システムの提供や、リーフレットの作成・配布、WEB上での提供も必要である。さらに、研修会や講習会、関連のワークショップの開催などを通じて、利益相反マネジメントの本来の意味や役割について理解を深めるとともに、具体的な問題への対応のノウハウの普及を図っていくことが求められる。
○ 個人としての利益相反及び組織としての利益相反マネジメントの全体を通じて、ポリシーや規則等を形式的に整備するだけでなく、それらを実質的に機能させるために、先進的な大学等とそれ以外の大学とが、お互いに制度運用のノウハウを共有することが極めて重要である。そのために、少数のメンバーによるワークショップや研修会・講習会の開催などに積極的に取り組んでいく必要がある。


4.組織としての利益相反マネジメントの在り方
(1)趣旨

近年、産学連携活動が活発化するに伴い、大学が組織として当該活動に参加することが予測され、あるいは、実際に参加する事態も生じるようになった。例えば、大学が学内で行われた研究成果に関して特許権等の知的財産権を保有しているときに、実施権を企業に許諾し、他方で、企業と大学との間で共同研究や受託研究の契約を締結するような場合である。当該企業が大学発ベンチャーである場合は組織としての利益相反の生じる可能性は一層大きくなる。
あるいは、大学が寄付金の提供を受けている企業に関連する研究を所属教員が実施し、又は、大学と当該企業の間で共同研究や受託研究の契約を締結する場合なども、組織としての利益相反が生じ得る。
さらに、最近では、国立大学法人法(平成15年法律第112号)の改正により国立大学法人が研究成果活用支援事業に出資することが可能となるなど、組織としての利益相反マネジメントの必要性が高まっている。 

○ 最近大きな問題となっている高血圧症治療薬の臨床研究におけるデータ操作と論文撤回については、関係大学において利益相反関連規程等の整備がなされていなかった場合もあるが、整備後においてもそれが本来の機能を発揮できなかったケースもある。
○ 今回のケースでいえば、医薬品の製造販売後臨床試験において、その医薬品の販売会社が大学の関連講座や診療科に多額の寄付金の提供を行い、その一部を資金として当該講座や診療科の主任教授を研究責任者として、臨床研究が行われたという場合であり、これも組織としての利益相反のケースの一つである。
○ 今回の問題については、日本学術会議(臨床医学委員会臨床研究分科会)の提言「臨床研究にかかる利益相反(COI)マネジメントの意義と透明性確保について」(2013年12月20日)においても、「我が国の臨床研究の信頼性を著しく失墜させる大事件」という評価をしている。
○ したがって、今回の事件だけが問題であるわけではないが、日本独自の奨学寄附金制度(現在は単に寄付金)との関係もあって、これまで、その整備が著しく立ち遅れてきた「組織としての利益相反マネジメント」に関しては、その整備を促進することが緊急の課題となっている。

(2)定義

 大学における組織としての利益相反とは、大学又は大学のために意思決定を行う権限を有する学長、理事、副学長若しくは研究科長、学部長、附属病院長等の部局長が外部から金銭的利益を得ていること又は外部の組織・団体等と特別の関係にあることが、研究及び教育その他の大学の活動に影響を及ぼすおそれのあること、又は影響を及ぼすように見えるおそれのあることをいう。

○ 大学における組織としての利益相反には二つの局面があり、一つは、(a)大学自身が外部の企業等との間で特別の利益を保有している場合である。他の一つは、(b)大学のために意思決定を行う権限を有する者が外部の企業等との間で特別の利益を保有している場合である。後者の場合は、個人としての利益相反と大学(組織)としての利益相反が同時に生じていることになる(多重利益相反)。

(3)基本的考え方

 組織としての利益相反の場合は、仮に利益相反が実害をもたらした場合には、個人としての利益相反の場合に比べて、その影響ははるかに大きい。したがって、組織としての利益相反への対応としては、個人としての利益相反の場合よりも、より厳格なものとなるのが通常である。

○ 上記以外に、個人としての利益相反と組織としての利益相反に共通する利益相反マネジメントに関する基本的考え方として、事前の予防措置と外見の重視がある。すなわち、個人又は組織が外部との関係において特別の利益を保有していることと、それにより職務上の公正な判断がゆがめられることの間の因果関係を証明することの困難さから、利益相反マネジメントにおいては、事前の予防措置を重視するとともに、外部の通常人から見た場合に、その特別の利益が職務における公正な判断に影響を与えるおそれがあるように見えるときには、そうした外見だけで予防措置を講じなければならないとする。

(4)組織としての利益相反への具体的な対応策

ア 組織としての利益相反への対応策の原則
組織としての利益相反マネジメントにおいて重要なことは、利益相反問題への取組の重要性に関する認識を、特に、学内の意思決定に関わる幹部と事務組織において共有することである。また、利益相反マネジメントにおける判断に不可欠な情報の共有も欠かせない。そして、これらの情報を、すべて利益相反アドバイザーとその事務担当部署に通報し、情報の一元管理を行うことが必要である。また、利益相反アドバイザーの個別の案件に対する判断に基づき、場合によっては、利益相反委員会又は利益相反アドバイザリーボードを臨時に開催し、協議しなければならないこともあり得る。事案によっては、利益相反アドバイザーの判断のみによって処理することもあるが、その場合にあっても、常に、直近に開催される利益相反委員会及び利益相反アドバイザリーボードに報告し、了承を得ることが重要である。 

○ 利益相反マネジメントシステムとしては、個人としての利益相反の場合にも共通することであるが、学内の利益相反に関する情報を一元的に収集・管理する利益相反アドバイザーの存在は欠かせない。利益相反アドバイザーには、大学の研究・教育活動の特性を熟知した大学教員等を充てることが望ましい。それと同時に、アドバイザーが独断に走らないよう学内の各部局から推薦される委員によって構成される利益相反委員会を設置する必要がある。利益相反委員会は、利益相反マネジメントに関する規程や指針を検討するとともに、利益相反アドバイザーが下した個別の案件に関する判断が正当であったかどうかを審議し、あるいは、アドバイザーから事前に利益相反委員会の判断を求めることも案件の重要性によっては必要となる場合がある。さらに、利益相反委員会の判断の客観性を担保するために、学外委員のみにより構成される利益相反アドバイザリーボードを設置することも重要である。利益相反マネジメント、特に、組織としての利益相反マネジメントに関しては、第三者機関による監視の目を整備しておくことが望ましい。また、利益相反アドバイザリーボードには、利益相反委員会の判定を不服とする教職員に対する第二審の役割を果たすことも期待される。

 イ 組織としての利益相反への具体的な対応策
1.大学自身が外部との関係で特別の利益を保有している場合
大学が外部の企業等に対して知的財産権や株式等の利益を保有しているとき又は外部の企業等から多額の寄付金等を受け取ったときなどに、当該企業等の製品を購入し、又は当該企業等と共同研究若しくは受託研究等を実施しようとする場合は、大学の契約担当部局は、利益相反アドバイザーに通報するものとする。この場合に、利益相反アドバイザーは、当該案件を自ら処理するか、あるいは、利益相反委員会又は利益相反アドバイザリーボードと協議の上処理するかを判断するものとする。
なお、当初計画どおり実施する場合においては、大学自身が保有する特別の利益に関する情報を特別の事情のない限り公開するものとする。
また、企業等から一定額以上の多額の寄付金(寄付者が個人名義のものを除く)を受け取った場合は、関係部局において関連情報のデータベースを作成するとともに、当該部局の研究倫理審査委員会又は利益相反委員会において研究計画を審査する際には、研究者から自己申告のない場合にも、研究倫理審査の上で遺漏のないように必ずデータベースに基づく情報を確認するものとする。
2.大学のために意思決定を行う権限を有する者が外部の企業等との間で特別の利益を保有している場合
学長、理事、副学長若しくは研究科長、学部長、附属病院長等の部局長が外部から金銭的利益を得ている場合又は外部の組織・団体等と特別の関係にある場合などに、大学が当該企業等の製品を購入し、又は当該企業等と共同研究又は受託研究等を実施しようとするときは、当該意思決定を行う権限を有する者は当該利益又は関係に関する情報を、学長は研究担当副学長に、それ以外の者は学長に報告するものとする。上記報告を受けた者は、事実関係を検討し、意見を付してその旨、利益相反アドバイザーに通報するものとする。利益相反アドバイザーの対応は、上記1と同様である。

○ 今後の対応で重要なことは、個人あて及び大学(又は学部・研究科や講座・診療科)あてに多額の寄付金が提供された場合には、それらの情報を関係部署でデータベースなどの形態で共有することである。部局の倫理審査委員会や利益相反委員会は、組織としての利益相反問題があることを念頭において、個人的利益として申告されない場合でも、これらのデータベースに基づく情報を確認して、それを利益相反審査、倫理審査に反映させることに留意することが重要である。
○ 学長や理事、副学長等が大学発ベンチャーの未公開株を保有している場合があるので、利益相反の関係がある場合には、利益相反アドバイザーに通報し、アドバイザーが第一義的に判断することになる。
○ 利益相反アドバイザーは、上記(4)のイにおいて、既に利益相反委員会又は利益相反アドバイザリーボードにおいて審議済みである場合を除いて、個別の案件の概要と具体的な対応策について、直近に開催される利益相反委員会及び利益相反アドバイザリーボードに報告し、その了承を得なければならない。

(5)利益相反に関する情報の公開
利益相反に関しては、大学においてできる限り情報公開に努めなければならない。利益相反委員会や利益相反アドバイザリーボードにおける審議結果についても個人のプライバシーとして尊重しなければならない事項を除いて公開するものとする。

(6)記録の保存期間
上記(4)のア及びイの案件に関しては、個別の案件の概要と具体的な対応策、並びに利益相反委員会及び利益相反アドバイザリーボードでの審議結果を含めて、当該案件の終了後少なくとも10年間関係書類を、担当部署において保管しなければならない。

お問合せ先

科学技術・学術政策局 産業連携・地域支援課 大学技術移転推進室

(科学技術・学術政策局 産業連携・地域支援課 大学技術移転推進室)