参考資料1 大学等における産学官連携リスクマネジメントに関する意見整理

各委員からの意見整理

これまでに各委員から出された意見は以下のとおりである。


【全体】
(総合的検討の必要性)
 ・産学官連携リスクマネジメントを、規制という目的ではなく、イノベーション促進という目的で捉えるべき。
 ・産学官連携リスクマネジメントの各トピック共通的な部分を意識して、総合的にかつ統一的にまとめるのがよいのではないか。
 ・大学の限られた経営資源の中で、コンプライアンスに対する実効的マネジメントを行うための在り方を検討すべきではないか。

(トップマネジメント)
 ・トップ層の理解を促すことが重要であり、適切な管理が求められる背景と必要性及び緊急性を、早期にまとめる必要がある。
 ・全学的な取組体制を構築していくための方策を検討していくべき。
 ・大学経営として行うためにも、マネジメントに必要となる費用・人員を把握し、情報共有すべきではないか。

(研究者等への普及啓発)
 ・大学において産学官連携リスクマネジメントを行うに際し、研究者の理解が必要不可欠である。
 ・研究者になってから普及啓発を開始するのではなく、学生教育においても、リスクマネジメントに関する教育が必要ではないか。

(リスクマネジメント人材の確保・育成)
 ・人事異動など種々の要因がある中で、大学内部での専門人材の育成、ノウハウの継承を如何にしていくかを検討すべき。
 ・短期的には外部人材に頼る場面はあるかと思うが、URAなど内部人材の確保を進めていく必要があるのではないか。
 ・大学本部の管理側ではなく、研究者に近い存在の者が専門人材としての役割を担うことで、情報収集を適切に行えるケースもある。
 ・リスクマネジメントの体制として、一大学で仕組みを作ることが難しい場合は、外出しの仕組みの活用も検討すべきではないか。
 ・日常的に研究者に接することが多い、URA等がコンプライアンスについて一通りのリテラシーを持つことが重要ではないか

(ガイドライン策定等)
 ・大学トップを含めた合意形成を図るためにも、一定の義務化、ガイドライン策定などが必要ではないか。
 ・全般的に、1.管理対象、2.体制構築、3.普及・啓蒙といった観点から整理するのがよいのではないか。
 ・トラブルが発生する前の事前の予防措置について重点的に記述するのがよいのではないか。
 ・ガイドラインを作った後のPDCAが何よりも求められており、現在の遵守状況とか、遵守に当たっての阻害要因が何なのか、改善点は何なのかというこ等を把握する必要がある野ではないか。

(事例の共有)
 ・事例の共有化などが必要であると考えられる。

(大学の特性の考慮等)
 ・大学の使命や特性上考慮すべき事項(教育研究の自由、学生の教育等)に配慮すると共に、取り巻く環境・状況(我が国大学のグローバル化など)を考慮して、検討を進めるべき。
 ・各種ガイドラインと大学の実情を踏まえて、実現可能なレベルでの運用検討が必要ではないか。また、モデル事業を通じて問題点の抽出、解決策の提案を検討すべきではないか。
 ・各大学でリスクマネジメントを取り組む際に、現実的に達成可能なレベルの優先順位・スケジュールを明らかにするのが良いのではないか。

(その他)
 ・本検討委員会においては、検討事項の優先順位をつけて、中間取り纏めを行うのがよい(利益相反マネジメント、技術流出防止マネジメントを優先して纏める)。
 ・現状関係する法令、規定、ガイドライン、報告書などとのリンケージを提示した上で課題を整理して、検討を進めていくべき。
 ・産学官連携を行う上で生じるリスクマネジメントとして、1.利益相反、2.技術流出防止、3.知的財産権管理に関係するリスク、4.研究費不正防止、5.研究成果不正の防止といった各種観点があると考えている。加えて、1.大学の国際化が進展する中での各種リスク、2.外部資金雇用の研究者のキャリアパス不安定性といった観点も関係し得る要素だと考える。
 同業他社との共同研究が平行して行われているケースのマネジメントの在り方について検討すべきではないか。

【利益相反マネジメントについて】
(利益相反の概念等)
 ・利益相反マネジメントの目的は、大学としてのインテグリティの確立と共に、教員が産学官連携活動を安心して取り組める環境醸成である。
 ・リスクに対するマネジメントの考え方は大学ごとに異なるので、利益相反のポリシー策定状況など外形的な体制整備だけで取り組み状況を評価することは好ましくない。利益相反マネジメントを適切に行わないリスクを、分かりやすく伝えていくことが必要ではないか。
 ・研究不正行為と利益相反とは根本的に違うものであるので、明確に区別して理解できるよう整理した方がよい。両者が同時に生じるケースもあることは留意する必要がある。
 ・マスメディアの利益相反に関する理解を促すために、情報提供をしていくべきではないか。
 利益相反の対象は、総合的に勘案しなければいけない。金銭的な利益だけでなく、愛情、前言、謝意あるいは名声というものも主観的にバイアスを与えるものである。
 ・利益相反マネジメントは不正防止ではなく、誤解に基づく社会からの追及に対して速やかに適切に回答し、不必要な問題を発生させないマネジメントと捉えるべきである。
 ・利益相反に関して疑義がかけられたときの広報対応が重要である。

(組織としての利益相反)
 ・組織としての利益相反マネジメントについて検討を進めるべきである(例えば、モデルポリシーの例示などガイドライン化)。
 ・医学系の利益相反については、厚生労働省の方針もあり、「個人としての利益相反」については一定程度の取り組みが進んでいる。「組織としての利益相反」については検討課題がある。米国では、「組織としての利益相反」についても、医学系は分けて検討している。


(人材・普及啓発)
 ・利益相反委員会、利益相反アドバイザリーボードなどの審査を行える人材不足、負担の増大が課題である。利益相反教育の人材が不足している。
 ・利益相反については、ガイドライン自体よりも、大学の中に利益相反マネジメントを運用し、周知徹底する仕組みを確実に作ることが重要ではないか。定期的な研修が重要であると考えられるので、モデル事業などで研修体制をつくることが重要ではないか。

(具体的マネジメント)
 ・利益相反マネジメントの取り組みについて、国立大学は比較的進んでいるが、私立大学は対応にばらつきがあると感じてられるので、私立大学でモデル事業を行うことも一案ではないか。兼業の取扱い、人事制度など、各大学で特有のケース・パターンがある。
 ・日本の利益相反マネジメントは、研究者個人の利益に重きが置かれているので、科学的利益の逸失(研究結果のバイアス、研究結果の非公表など)に対する審査も強化する必要がある。
 ・兼業が増えているところであり、責務相反に関するルールは、実態に合わせて検討すべきである。なお、兼業については、大学人事部のマターになってくる事項。
 ・利益相反は、国が一律の枠組みを設けると各機関の取組は形骸化する。大学側の研究者、外部弁護士等が関与しながら、個々の機関で独自のガイドラインを定めていくプロセスが重要である。
 ・国立、私立、医学部の有無といった設置形態で、ガバナンスの在り方、利益との関わり方は異なるので、それぞれの利益相反マネジメントの在り方を検討するのがよい。
 ・利益相反について、情報公開求められる局面は増えてきているので、情報公開の在り方について示せると有用ではないか。
 ・秘密情報も含めて情報公開すると、信頼関係が崩れてしまうこともあるので、状況に合わせたマネジメント手法を選択し、説明責任を果たしていく必要がある。

(マネジメント負担)
 ・研究者に負担の多い自己申告体制を見直し、システマティックな管理が望まれる(学会と大学との自己申告範囲相違など)。
 ・倫理審査委員会も利益相反の理解を深める必要があるため、倫理審査委員会側の負担が増えている実情がある。
 自己申告書からヒアリング対象者を抽出する前処理がとても大事である。そのために、自己申告書の電子化、事務方のノウハウある人の確保が重要である。

(外部委員等)
 ・利益相反委員会等に外部委員を入れることを一定程度義務化させることが必要ではないか。
 ・利益相反委員会等に外部人材を入れるだけで、透明性、中立性を確保されるわけではないということには留意が必要である。
 ・マネジメントの現場では、実態に合わせた応答が必要であるので、多様性を持った者がマネジメントに関わることが重要ではないか。


(ノウハウ共有)
 ・機関間で利益相反に関する審査基準が統一されていないので、事例の共有化などが必要であると考えられる。対処例なども示した事例集が必要ではないか。

【技術流出防止マネジメント(営業秘密管理)について】
(管理対象)
 ・対外的な信頼関係を保つためにも、不正競争防止法上の保護対象である営業秘密だけを管理するだけではなくて、大学にとって秘密とすべきものを、社会的な信頼を保つために適切にマネジメントすることが重要である。秘密になるものは厳正管理が必要という意識は大学の中で醸成されてきている。

(管理手法)
 ・大学で秘密情報となり得る対象として、研究成果である発明・考案、企業から得た情報・資料、契約書の内容、個人情報等がある。
 ・研究者単位で情報管理はある程度行っているが、不正競争防止法で要求している管理レベルには至っていない可能性がある
 ・研究者が保有するノウハウは属人的要素である部分が大きいので、個人レベルでの情報管理意識向上が重要である。また、企業での管理と大学での管理は異なり、組織的管理が馴染まないケースも多いのではないか。
 ・秘密情報を現実に管理をするには、多大な負荷がかかってくることが課題である。秘密管理性を満足することが大変である。
 ・秘密保持契約は、ケースバイケースであり、分野によっても企業側が求める秘密特性は異なる。共同研究の規模や企業側の要請に応じて、求められる管理水準に合わせた秘密管理が重要ではないか。

(大学の特性の考慮等)
 ・我が国の大学等においても、守秘義務を伴う産学官連携業務に学生を参画させるのなら、原則として、定時勤務職員と同等の待遇で雇用すべきではないか。「実践的教育」の名の下に、学生を産学連携業務のための事実上の無償の労働力として扱うようなことは学生の人権の侵害である。
 ・技術流出防止について、学生の扱いについては、ある程度線引きするなどガイドラインで示すことが重要ではないか。
 ・研究成果を公表しないことは、教育・研究の使命から難しい側面もあるので、その点を考慮した検討が必要である。

(その他)
 ・大学組織として管理する職務発明は、不正競争防止法等の営業秘密管理の対象等にも影響を与える得る事項である。

【技術流出防止マネジメント(安全保障貿易管理)について】
(体制構築)
 ・中小規模の大学の安全輸出貿易管理体制の構築を促す仕組みを検討する必要があるのではないか。
 中小規模の大学においては、複数の大学を束ねて1人の専門家が見るという仕組みを構築するということも一つの考え方ではないか。
 ・大学における安全保障貿易管理は、広範な分野における技術情報管理が求められるので、企業での管理とは根本的に異なり、担当人材を外部に頼ることは難しいのではないか。

(普及啓発)
 ・安全保障貿易管理の必要性について、十分に理解されない実情があるので、地道な啓蒙活動を継続的に行っていかなければいけない。
 ・安全保障貿易上の公知と、知財管理上の公知と概念が異なるため、マネジメント上混乱をきたす可能性がある。

(留学生等)
 ・安全保障貿易管理を、留学生・外国人研究生の教育・研究活動に阻害することなく行うための方策検討が重要な課題である。
 ・留学生や外国人研究者の居住性の判断が難しいところがあり、留学生との密なコンタクトや、外国人研究者への行動配慮が必要である。しかし、国籍差別が懸念されるところもあるので、十分に配慮が必要である。

(該非判定)
 ・該非判定は、経済産業省提供のツールによってやりやすくなっているので、本ツールの周知徹底が必要と感じている。
 ・該非判定を行う際は、担当教員の協力が必要不可欠である。担当教員の理解を得るためにも、トップダウンでの体制が必要である。

(その他実情等)
 ・大学に係る安全保障貿易管理上の問題については、平成26年包括的改善要請書に対する経済産業省からの回答によって、多くは解決している。
 ・要求水準など、現在のトレンドを汲み取って検討を進めていくべきではないか。

【国際産学官連携マネジメント等について】
 ・国際産学官連携を推進する際のガイドラインを策定するのがよいのではないか。
 ・職務発明制度等について、法改正が成立した場合、現場が理解して取り組んでいけるようにするための対応も必要ではないか。

 

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科学技術・学術政策局 産業連携・地域支援課 大学技術移転推進室

(科学技術・学術政策局 産業連携・地域支援課 大学技術移転推進室)