産業連携・地域支援部会 イノベーション創出機能強化作業部会(第3回) 議事録

1.日時

平成25年8月7日(水曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省 東館 15F1会議室

3.議題

  1. 大学等発のイノベーション創出機能の強化について
  2. その他

4.議事録

【馬場主査】  おはようございます。それでは、定刻になりましたので、ただいまから科学技術・学術審議会の産業連携・地域支援部会イノベーション創出機能強化作業部会の第3回を開催させていただきたいと思います。
 それでは、最初に、まず事務局より配付資料の説明等をお願いいたします。
【鷲崎大学技術移転推進室専門官】  では、お手元の配付資料を御確認ください。
 資料1といたしまして、「JAIST産学官連携専門人材育成プログラム-事業紹介と今後の展望-」というA4の資料でございます。
 資料2といたしまして、「リサーチ・アドミニストレーター研修・教育プログラムの策定」という、こちらも同じくA4の資料でございます。
 資料3といたしまして、イノベーション創出機能強化作業部会の予定と今後の予定を書かせていただいてございます。
 最後になりますけれども、参考資料1といたしまして、「研究活動における不正行為に対する取組等について」という資料を配付させていただいてございます。
 最後、参考資料1に関しまして少し補足させていただければと思います。
 こちらは、8月2日の科学技術・学術審議会総会の方で配付された資料そのままでございまして、昨今、研究活動における不正等が世間をにぎわしてございますけれども、最後のページにございますとおり、文部科学省におきましてもタスクフォースの設置等について活動していくということで、ただいま鋭意検討中でございます。こちらは御参考までということでございますけれども、御紹介させていただきます。
 以上でございます。
【馬場主査】  ありがとうございます。
 それでは、早速審議を進めてまいりたいと思います。
 前回には、コーディネーターやURAの機能の在り方、その組織とか体制構築の方向について御議論を頂いたかと思います。本日は少し話題を進めさせていただきまして、コーディネーター、URA人材の教育・研修に関して、集中的に審議をさせていただければと思います。
 それでは、早速ですが、最初に議論を深めるために、山本委員と松永委員の方から、お二人続けてコーディネーターとURAの研修について御発表を頂きまして、お二人の御発表が終わった後に、御質問等をまとめて行わせていただきたいと思います。
 それでは、まず山本委員、お願いをいたします。
【山本(外)委員】  それでは、20分というお時間を頂きまして発表させていただきます。
 まず、この事業は文部科学省の大学等産学官連携自立化促進プログラムの中で取り組みまして、開始が平成19年です。事業開始の背景というのを最初に少し御説明させていただきます。
 まず1点目は、法人化後の業務変化への対応ということで、外部から大学の広報、国際等の部署にいろんな人材が入ってきており、こうした変化への対応でございます。
 2点目は、産学官連携の多様化にいかに対応するかということです。
 3点目は、大学の活動がグローバルとローカルへの対応を求められるというところです。
 こういったことをもう少し具体的に話していきます。一点目、特に法人化後の対応については、この時点、平成19年時点で全国の26%に当たる23大学で71人の外部人材が活躍、今から思うと大した数ではないのですけれども、国立大学法人にもこういった人材が入ってきているという状況でした。特に、管理職の職階級でいいますと、課長レベルが多いのですが、かなり幅広に入ってきている。
 しかしながら、そういった外部人材から見ると、現状の大学というものに対して、特に職員の働きぶりといいますか、そういったものに対して不満を持ったというふうな方が、特に現場に近いほど多かったというふうにこの報告書では書いております。
 不満の理由は何かといいますと、事務職員の意識改革の遅れ、これは事務職員個々というよりは組織全体の話であって、個人がどうのこうのという話でもなさそうですが、硬直化であるとか、幾つかのことが指摘されているというふうな状況でした。
 言ってみれば、外から入ってきた人間と中の人間のこういった意識のずれというものが明確になってしまったというところです。
 この報告書では、そういった中でも文化の違う人材をいかになじませながら大学の活力として使っていくかという、そういった視点が重要であろうということでした。
 したがって、そういう内部の人間、あるいは外部から来られる人間がなじむような、何かのプログラム等が走らないと、なかなか協業するには難しい状況がありました。これが1点目の話です。
 2点目は、産学官連携の多様化への対応ということで、これは13年度から文部科学省のコーディネーター支援施策が走っておりますが、この図は予算と配置の人数の変化ですが、16年度をピークにして、どんどん予算の方も減っておりますし、配置人数も減っている。通常こういった人材支援のみの施策というものがこんなに長く続くこと自体が驚異的なのですけれども、更に19年度以降も続いていったということがありまして、やはりそれはニーズがあったからこそだろうと思います。大学、あるいは産等のニーズもあったということで続いていったのだろうと思いますが、こうした予算はいずれ減っていかざるを得ないものだろうと思います。
 こういった文部科学省のコーディネーター人材の状況、どういうキャリアなのかを見た場合、大学では8割が理系卒です。企業経験者でありまして、7割が企業の技術・研究職、いわゆる技術の目利きが中心の人材と言わざるを得ない状況でして、先ほど言いました大学の多様化に合った産学連携の広がりを展開していくには、ある意味偏ったキャリア状況だったと言わざるを得ません。
 しかしながら、こういった人材がどういうふうに活動していったかといいますと、大学が理系でありながら、かなり共同研究、受託研究、契約だの特許だの、それから地域回りをしましたり、技術相談、研究シーズの調査、イベントをやったり、地域連携の促進うんぬんなど、本来のキャリアを生かすというよりは、幅広なミッションがどんどんこなし始めてきたということです。
 したがって、当然活動に必要な研修プログラムをそれなりに考えなければいけないという状況でした。さらに、この当時配置されていた産学官連携コーディネーターの経験年数と人数を見ますと、5、6、7、8というのが1グループ、1、2、3、4というのがもう1グループ。いわゆる先発組の5、6、7、8年組の経験をどうやって1、2、3、4年組に橋渡ししていくか、バトンタッチしていくか、こういう状況が当時でも既にあったわけです、19年の段階で。
 まさにそういう意味でもプログラムを何か準備しないといけない状況にありました。当時も雇用契約は単年度契約でしたので、いつ終わっても不思議ではない中で、まさしく切羽詰まった状況だったというふうに言わざるを得ませんでした。
 こういったコーディネーターのミッションの類型として、我々がその当時どういうふうに考えていたかというのが、図の中で、ステージ1、2、3と色分けしましたが、書いてあります。基本はニーズ・シーズのマッチングから始まりまして、それでもベンチャー、知財、それからプロジェクト支援、広域連携というふうにミッションがかなり広がってきていて、それと人材のキャリアが必ずしもマッチしていない状況だということがうかがわれます。
 当時のことを振り返って、今私が私見でこういうふうにまとめると、ステージ1というのが、17年以前ですが、技術がまず目利きできて、必要な視点、エンジニアの視点で特許を出すというように、知財が中心だ……、これは知財本部整備事業の絡みもありますが、そういう状況から、今だんだんステージが変わってきているのではないかと思います。最近ではイノベーションということまで言われ始めるわけで、かなり広範な能力を言われてきているのかなと。それに耐え得るような何かの能力開発プログラム、仕掛けがどうしても必要になってきているというふうに認識しております。
 3点目はグローバル化への対応です。これは本学、北陸先端大学の状況を言いますと、どこの大学でも今留学生は増えているとは言えますが、本学では既に30%まで、学生の3割が留学生になってきております。と同時に、海外との学術協力協定、あるいは更に突っ込んだデュアル大学院、こういったプログラムがどんどん走っておりまして、こういった国際化に対応していくような方向も考えていかなければいけない。
 例えば、職員には国際戦略の企画立案、あるいは協力関係の構築であるとか、外部資金の獲得、更に知財も国際化に対応していかなければいけませんし、外国人研究者・留学生のサービスの充実というふうなこともやはり考えていかなければならない。
 したがって、この事業開始時点の問題意識としては、5点ほど挙げております。まず、大学全体として見た場合、職員の能力開発と活性化というふうな視点。それから、事務職員だけではなくて、いわゆる研究を支援していく技術職員についても、我々として当時は非常に問題視しておりまして、そういったところの活性化も必要だろう。後で述べますが、アンケート調査によりますと、特に高専の技術職員というのが、高専の技術職員単独で共同研究をやる、あるいは論文を書いて発表するというふうな非常にアクティブなアンケート調査もございました。したがって、こういった技術職員、事務職員の活性化というふうなものも重要な視点だろうというふうに当時も認識しておりました。
 3点目は、知識ではなくて、何ができるかという実践的なプログラムをやらざるを得ないというふうなこと、それから少し外部の方に接触させる、長期インターンシップの必要性、さらに、指導側のスキルアップも必要だろうということで、5点ぐらいを問題意識として持っておりました。
 そういったことを受けて、実際のプログラムについて述べますと、ここら辺は先ほど言った問題点、問題意識を踏まえた上で、経験者による実践的な教育コースであるとか、あるいは断片的なセミナーではなくて、体系的にやるというふうなこと、それから方法論を明確にしようということです。それから、人材が社会から広く参入してくるような仕組みを併せて検討していこう、多様な人材が大学に関与していくような仕組みを考えましょうというふうなこと。それから若手のポスドク等の人材もどうやって取り組むかということも考えていこうということでした。
 具体的な目的と内容については、既にお手元に冊子、小冊子が皆さんのお手元にいっていると思いますが、ここら辺はちょっとはしょらせていただきます。読んでいただくということなのですけれども、スケジュール的には5年間ですので、1期、2期というふうに分けておりますが、最初は体制整備をして、プロトタイプをやって、そして評価し、実践してみるというふうな流れです。
 最初の取組でもあったので、半年ぐらいはフィジビリティ・スタディということで、トライアルもしてみたり、調査もしてみたりということをやりつつ、それから、実際に取り組んでみて、フィードバックをかけながらプログラムを進捗させていったという状況です。
 外部の委員会も積極的に活用しながらやってきておりまして、いろんな調査も併せてかなり細かく頻繁にやりつつ、プログラムにフィードバックしていったというところです。
 やった結果を、いわゆるアウトリーチをかけるといいますか、外部の方にもどんどん発信し、なおかつシンポジウム、セミナーを全国の方々に参加していただくように、そういった工夫もしてまいりました。したがって、地元だけではなくて、東京で開催してみたりというふうなことも随分やったところです。
 内容そのものについては、基本的な問題意識に基づいて、何を教えたいかではなくて、何ができるようになってほしいかというふうなことをまず考えた上で、基本的には実践的なプログラムで育成していこうというふうな方針を立てました。
 特に、いろんな教授法があるわけですけれども、実践的教授法と言われるものを重視して、インターンシップであるとか、あるいはロールプレイング、ディベート等々を使うようにしまして、特にインターンシップには力を入れまして、7か月の長期インターンシップを張りました。プログラムそのもののストラクチャーは、基礎から発展へ徐々にステップアップできるような工夫はもちろんなのですが、アウトカム重視なので、受講者が、何ができるようになっているかというのをチェックしました。何を受けさせたかをチェックするのではなくて、その時点で何ができるようになっているかを常にチェックするというふうなことで進めてまいりました。
 全体の育成プログラムの流れとすれば、こういうふうな絵柄になりますが、基本的に研修レベルのスタートラインは一緒にしました。社会人経験者のポスドク相当を雇い、なおかつ事務職員と技術職員を1名ずつ入れて、計5名を育成対象にしたわけですけれども、最初のレベル合わせというふうなものが必要だと思いまして、社会人の常識、社会人基礎力といいますか、そういったものから始めまして、だんだん専門的なものへ行く。
 OJTについては、これもインターンシップ前の段階で、様々な大学の中における技術相談であるとか、競争的資金の話、契約の話、それから特許絡みの話、それから展示会等のイベントの話、そういったものを実際に経験し、やらせるというふうなことをしながらやっていきました。
 これは21年度の状況ですが、2年間のプログラムの最後で7か月のインターンシップを張りました。3名をインターンシップで外へ出したわけなのですが、1名は石川県立大学、1名は北陸経済活性化センターということなのですけれども、これは地元経済界の団体組織です。それから、石川県産業創出支援機構、これは県の外郭団体です。産学官という3か所にそれぞれ派遣したということです。7か月もそこにお任せしているわけで、たまに2週間に1回ぐらい来て報告を受ける等々で、我々が適時訪問しながらどういう状況かをヒアリングして、一緒に育てていったというふうな状況です。
 メンター・スタッフによる中間評価とかアドバイスをしながら、個々の教育効果も把握していきました。教育効果については、当然スタートポイントと、プログラムを走らせた後の状況がどうなのかということを問わなければいけないのですが、2009年と2010年、図が非常に細かくて見づらいのですが、なかなか人間は育たないなというか、一生懸命やっているのだけれども、なかなか思ったように育ってくれないというのが実情だったと思っております。若い30前半から後半の若者で伸びしろはあるはずですが、いざ育成するとなると、なかなか難しいなというふうなことも正直なところ思いました。
 そういいながら、実際の活動の実績としては、3名で、5か月間で研究資金から知的財産、ニーズの把握、それから新しい連携の立ち上げ、それから割と先生から抵抗のプレッシャーを受けやすい特許コストの削減等、結構彼らなりにやってくれたなと思っております。しかし、方向は間違ってないけれども、プログラムそのものは改良の余地ありというふうに感じております。
 我々がこの時点で考えていた、いわゆる産学連携支援機能、連携本部の果たすべき支援機能についてお話しします。本学では、比較的研究者の異動が激しいんです。したがって、最初に着任された時点で、研究者とのミーティングを開催します。大学の中からだけではなくて外部人材の参加をお願いします。県工試、広報、連携センター等のメンバーなど、多様なメンバーを外部人材も含めて同席してもらい、その上で研究者がどうしたいのかというふうなことも併せて聞きながら、そのテーマをどういうふうに支援していくか、先生の状況に合わせた支援方向と計画の議論を最初にやっておくことにしています。
 そこから、情報発信であるとか、資金獲得のステップアップであるとか、その後の知財の話、技術移転の話、それから併せて研究室等への支援というふうなことをやっていく。
 注意していただきたいのは、ここで書いてあるアワードについては、いわゆる競争的資金だけではなくて、特に共同研究を中心とした有償の技術相談、コンサルテーション、その前段階のところ、そういったもの等も含めて、いわゆるアワードというふうな認識であることです。何せ若い新規赴任の先生に実績を積ませるというふうなことを第一に考えておったということです。
 育成すべき人材像については、計画当初は非常にハードルを低くしていたのですけれども、2期の時点ではハードルを上げまして、必要な専門人材を集めてマネジメントする。いわゆる個人がスーパーマンになるということよりは、専門人材をまとめてマネジメントできるようなこと、それから、3点目は非常に大きいのですが、トップマネジメントに必要な提言ができる、こういう人材像が今後必要なのではないかというふうに私は思っております。
 それから、能力指標、これはURA事業でも取り組みをやっておりますが、我々もこの時点でトライアルしました。スキルというのは実務能力であって、そういったスキル標準というのは人材育成のマネジメントサイクルで非常に重要であるということです。能力指標の開発に向けては、この時点では文部科学省のコーディネーターの活動事例集に様々な活動事例がございましたので、その知恵を使わせてもらいました。また、既にあるスキル標準の活動プログラム等々の調査を踏まえて設計してきました。
 コーディネーターの活動事例集については、18、19、20年度、その後の21、22年度も作成されていますね。2万5,000とこの時点では書いてありますけれども、かなりの冊数が配布されて多くの方々に読まれていると思います。
 能力指標については、この図は見づらいですが、お手元の冊子の真ん中辺に一応書いてあります。73ページですか、非常に簡素な感じなのですが、ちょっと注意して見ていただくと、レベルというのは、何々ができるということなんですね。要するに何ができるかでレベルを見ますよというふうなことで、何を知っているかではなくて、一つ一つができる、何ができる状態でこのレベルというふうなことをしっかり定義してあるというのが特徴かと思います。
 一切合財の報告書等はホームページで全部オープンにしてございますので、一度見ていただければ幸いです。
 最終的に、事業を終了するに当たって、調整委員会等幾つかの委員会にかけましたら、委員の先生から幾つかの重要な指摘がありました。その中で、私が非常にはっとしたのは、産学連携人材が産学連携人材の教育プログラムとしてやるのはいいけれども、最終的にそこで培われた育成できるプログラムをコーディネーター力として広く研究者にも移植することが重要ではないかと言う指摘です。言ってみれば、FDプログラムへの移植ですね。そういったところにフィードバックした方がいいのではないかという指摘がございました。これはもっともだなと私も思いまして、そういう専門人材の力のある部分を、できるだけ早い段階で、研究者のFDの中に反映していくというのも一つの考え方かなというふうに思いました。
 このプログラムは、今年の3月で終わっておりますが、育成された研修生は、1名は現在我々のところに残っておりますが、2名は再就職で、それぞれ他大学であるとか公的機関の方に就職いたしました。非常に活躍していると聞いております。
 ここら辺はちょっと飛ばします。
 今後の展開についてなのですが、これは石川県の産学官連携専門人材、あえてコーディネーターと言っていないのですが、知財の人材等もおり、いろんな産学官連携関連の人材が活躍しておりますので。一例として、例えばJSTのプラザ石川からJAISTに来ていたり、あるいは本学から金沢大学に行っていたり、金沢大学TLOの方から本学に来ていたりという人材の流動化が見られます。これは各機関が意識的、組織的に何かやっていたわけではなくて、自然に人材の流動化が実際起こっていたという事実を見ました。
 このときに問題意識を持って、人材流動化の調査を実施したのですけれども、こういった人材が、今でも6割が単年度契約で、相変わらず企業OB中心だというのが分かりました。したがって、育成プログラムは相変わらず必要なのだろうというふうにこの時点でも思いました。先ほど言いました流動化を促進するにしても、個々のキャリアアップを考えると、体系的なプログラムを用意していかざるを得ないのではないかと思います。しかし、大学間でそれぞれ取組は違いますので、そういった問題もございます。
 したがって、産学官連携専門人材は、個々に見ますと、相変わらず能力を証明するすべがないでありますとか、体系的なプログラムかないといいますか、キャリアパスが不明であるとかいうことがございます。
 結局、多くの機関でこうした人材は5年以内しか雇用期間がないというふうに設定しておりますので、結果的には、ゼロ又は新しい人材を求めて育成していかなければいけないという問題が常にあるわけです。
 それから、人材が産から入ってきても学と官の知識が必要なので、トライアンギュレーションの視点を身につけることを要求していったら、どうしてもバランス良く能力開発することが必要なものですから、そういったことに対応すべき問題もございます。
 したがって、こういったことを包含して今やっている試みは、例えば、北陸4大学で、プログラムを共有し、能力指標を共有しながら、現雇用先機関で、仮に3年、5年で雇用が切れても、その後、隣の大学へ再就職が実現していく構想です。そのときには能力指標とプログラムでどういう育成のされ方をして、何ができるかということを明確にさえなっていれば、どんどんキャリアは上がっていくだろうというふうに考えまして、今トライアル中です。これは何も地域にとどまらず、意を同じくする機関でやればいいのかなというふうにも同時に思っております。
 現在、第1ステップを終わって第2ステップ中ですけれども、今後この動きを深めていこうというふうに考えております。
 今後、そういう意味では協議会を組織したり、優先的業務を付けていったり、URAとの絡みももう少し検討しつつ、地域のリーダーであるとか、あるいはキャリアとして士業等へ出ていくような仕組みも作っていかなければいけないのかなと思っております。
 今後期待される人材の能力とすれば、12点ほどあるうちで特に必要だなというのは、やっぱり一番に合意形成能力、交渉能力が、やはり求められますし、情報収集・発信能力であるとか、数字が読める能力、それから最後にあるリスク管理なんていうのは、割と大学は甘いところなものですから、こういうふうなところをやってもらうような能力開発も必要だろうと思っております。
 フィヒテとかフンボルトは、大学教育の中では、知識偏重ではなく、その得た知識を人生に使う技法、応用をちゃんと身に付けさせることが重要だと言っております。人を育成するというのはそういうことであって、人材育成プログラムでは、何ができるかということをちゃんと問い、身につけさせる、しつけるというふうなことが重要なのではないかと思いました。
 以上でございます。どうもありがとうございます。
【馬場主査】  山本先生、どうもありがとうございました。
 それでは、引き続きまして、松永先生の方からプレゼンをお願いしたいと思います。準備ができ次第、どうぞ。
【松永委員】  早稲田大学の松永でございます。きょうは、文部科学省の受託事業で我々の大学が受けておりますリサーチ・アドミニストレーターを育成・確保するシステムの整備の研修・教育プログラムの作成ということで、その進捗状況も兼ねまして御報告させていただきたいと思います。
 本日の内容なのですけれども、まず全体計画を簡単に御説明いたしまして、そのプログラム設計の手順の話をいたします。これは、昨年度科目ができたのですけれども、その科目リスト、その際に考慮した事項などをその中で御紹介いたします。また、米国、欧州と比較して我々が作ったものがどの程度のものかということも少し触れたいと思います。
 試作版が昨年度できまして、今年の3月にその試行的研修会を行いましたので、そのときのデータを更にフィードバックするということで、その試行的研修会での実験の話、その分析をして、現在どうなっているかを示します。また、その科目の改訂の現状をお話ししたいと思います。
 まず、全体計画といたしましては、これはいきなりRU11が出てくるのですけれども、当初、スキル標準のタスクフォースの方といろいろと連携をしておりましたので、タスクフォースで検討してきた内容というのが先行しておりましたので、その内容を踏まえてURAの研修・教育プログラムを作っていこうという形で進める計画を立てました。まず原案を策定し、それを実施してフィードバックをかけて定着するというストーリーを組みました。
 実際にやることというのは、まず日本版のURAというのが、当時はちゃんと定義ができておりませんので、調査・分析からしっかりやっていこう。それを基にしてプログラムを作成し、プログラムを実施しようというストーリー、非常に大ざっぱに言いますと、この流れに沿ってやってまいりました。
 時系列としては、2011年度の秋からスタートしたわけですけれども、現在このあたりにいるわけですけれども、実験講義が終わりましてカリキュラムの設計を修正しているという現状がここでございます。今年じゅうに一応パブリック版を出したいと考えておる次第でございます。
 後ほど触れますけれども、まず講義科目中心のテキストを今作成中ですの。ケース実習とかケース演習はちょっと後にいたしまして、今年度、できればその研修会までやりたいと考えております。
 これは実施体制を簡単に示したものですけれども、東京大学のスキル標準と連携して実施しております。RU11の中にURA制度検討タスクフォースというものがございますので、そことも連携してやっております。
 また、我々は研修・教育プログラムの作成の部分を請け負っておるわけですけれども、システム整備校が15校ありますので、そことの連携、及びニーズとかの調査を行わせていただくということを示したものがこのスライドでございます。昨年の秋ぐらいまでに一応15校全部ヒアリングに行ってまいりまして、それを基にプログラムを本格的に設計したというのが非常に大きな流れです。
 その前に、2011年度の末に、これは実は管理職中心なのですけれども、各大学にURAの必要性とか、URAにどういうことを期待しているのか、またURAを教育する上で、どういう知識なり何なりが必要なのかということを調査いたしました。63大学に依頼いたしまして、27機関、93件の回答がありました。どちらかというと、いわゆる研究推進部長とか、各部局の長、そういう方を対象にしておりますので、URAを使う側の人たちの意見をまず聞きました。
 結論といたしましては、90%以上がURAの必要性を認識しております。特にどういうことを期待しているかというと、プロジェクトの創出に関する期待が非常に多かったということです。2つ目の箇条書のところに書いておりますけれども、大型プロジェクトの創出機能、これが最初にある。一方で、全学的なサービスインフラ、これはどちらかというとボトムアップの話だと思うのですけれども、それも必要性としてはありますが、2、3、4というのはほぼ横並びでした。
 では、「実際にリサーチ・アドミニストレーターを置いていますか」と聞くと、「置いている」というところは3割ほどありました。また「置く予定」というところも3割ありましたので、6割は何らかの形でリサーチ・アドミニストレーターを置こうとしており、また、そのレベルとしては、3階層が一番多かったというのが結論です。初級、中級、上級とか、そういうレベルだと思います。
 では、「実際にそれを教育するプログラムなり研修はやっていますか」というと、実質的にはなされていないというのが当時の結論でございました。これは2年ほど前の話です。
 これは実際のデータなので非常に細かくて、スライドというよりは紙の方をごらんいただきたいのですけれども、「求められる機能とか能力、教育・研修手法はどういうものがありますか」という質問をしております。これは回答が多かった順に並べているわけですけれども、最初に来るのが、「国などの研究資金情報の収集・分析能力」、「学内研究活動の把握」というものが上位に来て、順に下に下がっていきます。水色で示しておりますのは、これはどちらかというと講義、座学で知識を付ければ身に付くものではないか。赤で示しているのが、それも必要なのだけれども、やはり実地とか、せめてケーススタディぐらいまでやらないと駄目ではないかという意見を示しております。
 それを研修・教育形態の区分けということで、Y-Xで思い切って線を引いてみますと、一応カテゴライズができるのかと。例えば講義重視というのは、右下の方にあります「国の政策の把握」、これは多分知識を付ければ使えるようになる。一方で、実際にやらないと駄目というものもありまして、それは「研究プロジェクトのマネジメント」で、当然といえば当然です。また、真ん中のあたりにあるものが両方必要だろうという回答が多かったものでございます。
 我々はどういう立場でいこうかといいますと、いきなりOJTなり何なりというのはちょっと難しいので、まずは講義形式でできるもの、これをカテゴライズしてURAに特徴的なものを抽出して、それを設計しようという態度でこのプログラムの設計を始めました。
 これは設計手順を非常にアバウトに書いたものですけれども、システムの設計と同じでして、概念設計、それから基本設計、詳細設計の順にやっていくことにしました。現在、試行的研究会まで終わりまして、カリキュラムの改訂をまさに今やっている最中でございます。
 概念設計では誰を対象にするのか。それから、アンケートしましたので、その要求事項を整理して、またヒアリングにも行きましたので、そのヒアリングからのニーズ調査、それをどうやって反映させるか、その概念を決める。特に、講義で有効なURAに特徴的な項目を抽出しようという態度で始めました。
 基本設計はどういう科目にしましょうか、また、どういう科目の仕様にしましょうかということを考えます。詳細設計は、実際それを行う上での教材をどうやって作っていくかという、いわゆるシステムの設計と同じようなやり方で考えていこうと。
 設計上の考慮事項といたしましては、スキル標準の方でURAをほほ定義して、同時並行でしたけれども、やっている最中でしたので、それに合わせて3職務の分類、それから4業務の区分、レベル的には初級、中級、上級の3レベル、これをまずベースにする。
 アンケート調査を行いましたので、これも考慮する。
 15大学、全部ヒアリングに行きましたので、現場のニーズはどうなのか。これは私が勝手に書いたものですけれども、例えば各大学で要望がかなり違うので、強化類型を4分類ぐらいに整理できるのかなと考えました。これらにできるだけ共通なところを拾っていこう態度で進めました。例えば、京都とか阪大は本部集中型でURAを配置している。一方で、それと全く対照的なのが東京大学で、東京大学は部局にURAを配置するというような大学がありましたので、これを一括してできるかは分かりませんでしたけれども、できるだけ共通なものを拾っていこうと。
 文部科学省の対象分類としては3分類ありましたので、これも考慮事項に入れました。
 海外では、NCURAは研修プログラムというか、ワークショップ形式のようなものでURAを教育しているセッションがあります。それから、エマニュエルというのはボストンにある大学なのですけれども、URAコースを持っている。シュパイヤーはドイツの大学ですが、これは行政官を育てる大学なのですけれども、そこにもプログラムがあるといううわさを聞きましたので、実際行って調べてきて、それも考慮に入れることにしました。
 基本設計はスキル標準に合わせて科目リストをまず順番に作成していきました。まず座学でまとめようとしました。また、海外のプログラムを参考にしまして、それに共通する科目、あるいは日本固有の科目を分類してみようという形で科目リストを作成しました。この時点で設計した時間数が、OJTを外数として、講義だけで75次限要るだろうと踏んでおりました。しかし、各大学さんに聞いてみると、75時限はとても無理であるとの回答がありました。これは3週間やることですから、そんなに長期にやっていられるかという話になりまして、更に絞り込んで16時限、16コマへ縮減しました。また、科目数は14科目設計すればよかろうという形で、次のような科目リストを作った次第です。
 最初に、総論として大学マネジメント、リサーチ・アドミニストレーター論あるいは科学技術政策論というものを置きました。
 ローマ数字の2番、ローマ数字の3番がURA固有の機能と考えておりますけれども、例えば専門職的機能としては調査・分析能力が要るだろう。5.としては知財の管理、6.は、これは非常にアバウトですけれども、産学連携のイントロダクション的なもの、7.としては、先ほどもありましたけれども、研究倫理とかコンプライアンス、どちらかというと、研究者というよりは、それをマネージする立場の研究倫理、コンプライアンスです。また、申請書とか報告書の作成、広報・アウトリーチ、会計とか監査は当然要るでしょう。
 ローマ数字の3番目のところ、これが実はリスエストが一番多かったところなのですけれども、一番作りづらいところで、研究の企画機能なんですね。それは大きくマネジメントの手法の一般論とマネジメントのベスト・プラクティス、それから研究の評価をどうやっていくかという形で設計してはどうかということにして、この筋に従って昨年度科目と教材を作ってまいりました。
 これが海外と比較して随分ずれているものなのか、あるいは一致しているものかということも一応押さえておきました。例えばエマニュエルとかシュパイヤーは米国、ドイツの大学なのですけれども、ここのカリキュラムの特徴は、最初の方にリーダーシップ論とか組織論をかなりやるということが分かりましたが、我々の中にはそれは入っていない。しかしながら、各大学、大学院のMBAコースとかMOTコースを持っていると思うのですけれども、そこでリーダーシップとか組織論はあるから、あえて我々のプログラムの中にこういうのは入れなくてもいいだろうと結論づけました。
 逆に日本固有のものが、ちょっと見づらいですけれども、左の下に書いてありまして、政策情報の分析とかプロジェクトの企画、ここが日本固有のもので、ここのリクエストが実は一番高くて、海外の大学はこういうことは余りやっていないという現実がございます。また、共通事項はここに示したとおりです。
 海外の事例を1つだけ紹介しますが、一昨年度は米国、昨年度はヨーロッパに行ってきました。シュパイヤーという大学にリサーチ・アドミニストレーターの教育プログラムがあるぞという話で行ったのですけれども、実際のところは余り参考にならなかったというのが現状でございます。
 ちょっと急がせていただきます。科目はこのように構成いたしました。左側は、先ほど説明したとおりです。右側には担当を示しました。これらをとても早稲田大学だけで全て作ることはできませんので、いろいろな大学に、システム整備校中心ですけれども、試行的な研修会をやるから、そのための教材を作って、講師を派遣して講義をやってくれないかということをお願いいたしました。
 実験的な講義をやって、それでアンケート調査を行って、更に改訂しようということですので、その実験的な講義を今年の3月6日から8日、3日間朝から晩までやらせていただきました。
 この実験講義の目的というのは、対象をシステム整備校のURAとしました。ここをまずメインの対象とさせていただきました。だから、実際にURAにこの講義をやってみて、効果があったのかどうかという、そのフィードバックをもらいたい、そういう目的で実験的講義を行いました。
 講義の日程、これもちょっと小さくて申し訳ないのですが、先ほどの科目を3日間のコマ数に割り振っただけのものでございます。要するに朝から晩までびっちりやりましたということの証明でございます。
 そこでの調査の話を残りの時間で少しさせていただきます。研修会には、約100名のURAが参加いたしました。システム整備校中心なのですけれども、それ以外の大学にも声がけをいたしまして、URAを派遣してくれと依頼しました。初級のURAを想定していたのですけれども、実際には中、上級クラスの方、ベテランの方も参加していらっしゃいました。
 できた教材がこれがございます。554ページで、厚みが30ミリぐらいある大変分厚い冊子が教材としてでき上がりました。
 そのアンケート調査の内容を少し御説明させていただきたいと思います。
 前回の議論でもちょっと出ていたかと思うのですけれども、まずURAの年齢層は、やはり若手の方がメインでした。45歳未満が約7割、30代が最も多い。最終学歴は、半数以上が学位を持っている。前職はどうかというと、これはちょっと分散した表になってしまっているのですけれども、いわゆる研究職上がりとか、大学の教員だったという人を合わせて見ると、その割合がやはり一番高くて出ています。その次に事務系職員からURAになったという回答が多くありました。
 では、実際、URAとしてどういう業務を中心に行っていますかとの質問に対する回答がこちらです。これはスキル標準と併せてグラフ化したものですけれども、リサーチ・ディベロップメントと呼ばれる部分と、それからプレ・アワードの部分にやはり集中しています。赤で書いたところは、特にそこを中心にやっているという回答があったものです。ポスト・アワードは余り、もちろんゼロではないのですけれども、ポスト・アワードのところはそれほど回答数は多くない。その他の業務、これはスキル標準の方でその他と仮に名前をつけましたのでその他になっていますけれども、その他の、例えばイベント開催関連とか、そういうところには業務としてかなりやっている人がいるということが分かりました。
 また、各科目の効果とかを測っていくために理解度とか教育の有効性というのを聞いたのですけれども、これは科目ごとに聞きました。それをクラスター分析したのがこの表であります。
 例えば左の図でいいますと、3クラスターぐらいに分かれおります。4理論とか6地域と書いてあるのがちょっと特異なやつで、ほかのやつは2つぐらいのクラスターに分けることができる。右側でいいますと、やはり6地域と4理論というのがちょっと特異的なので、これはどういうことだろうという分析をいたしまして、それを改訂のフィードバックに当てる。
 例示した2つは、結論からいいますと、これは難しかった、だけど必要だよというものです。だから、それは、例えば初級者とは言わずに、中級者用に作るとか、あるいは選択科目にする、そういう選択肢を設けてやりました。
 次のスライドの図ですが、現在テキスト、教材として起こそうと思っているものを、このような形にまとめたものです。これはリサーチ・ディベロップメント、プレ・アワード、ポスト・アワードの順に書いていますけれども、専門科目A、専門科目B、専門科目C、専門科目D、専門科目Eというような形でまとめております。最初は共通ですけれども、調査・企画があって、ポスト・アワードがあって、スキル標準で言うところの、いわゆるその他の業務ですけれども、コンプライアンスというはやはりかなり重視しなければいけないので、コンプライアンスを先に持ってきました。ここに示したものは講義、知識中心ですけれども、それだけではやはり駄目だというリクエストも多くございましたので、次の23ページでは、これは今年度やろうとしているのですけれども、特にケース演習と併用してやってはどうかということで、ケース演習の部分を、今各大学さんを回って事例を収集している最中でございます。
 教材作成のスケジュールとしては、年内にCD-ROMか何かにして出せればいいなと考えております。
 ちょっと時間を超過しましたので急がせていただきます。
 今年度は、初・中級の研修会はやらずに、中・上級のケース演習の実験をやりたいと考えて、今、準備している最中です。
 課題と方向性なのですけれども、まず1つは、公開教材は何とかできるのですけれども、達成度はどうするか。これはどちらかというと、実習用の教材になるのですけれども、少なくとも知識がついたかという、そういう達成度はどうするのか。それから、教材はどんどん改訂していかないと多分駄目だと思うのですけれども、その改訂の継続はどうやるかが挙げられます。
 その次、これが実は最大の問題なのですが、普及方法と活用方法です。どうやって普及させて、どうやって使っていけばいいのかです。来年度、例えば全科目のスクーリングをやるのかとか。今年度URAのシンポジウムがありますけれども、一部はそこで作ったものを活用して研修をやろうとしています。
 しかしながら、次年度以降、どのようにやっていくか。JSTのJRECから少し話が来ているのですけれども、例えばWebラーニングみたいな形式にこれをのせていくか、そういう検討も必要になろうかと思います。
 8月2日に実はURAのこのプログラム策定の委員会をやったのですけれども、そのとき話題になったのは、最初のポツとも絡むのですけれども、認定制度なんです。研修会とかを受けたとか、あるいはURAはどうやって認定していくのかというのが課題なのかと。
 最後に、URA-Japanの設立と書きましたけれども、今ちょっとこういう動きがあるのですけれども、ここでURAの研修なり何なりの認定を出していくのかどうなのかというところが課題かと考えております。
 以上でございます。
【馬場主査】  どうもありがとうございました。
 今、山本委員の方から産学連携のコーディネーターについて、そして、松永委員の方からはURAについて、こちらは今進行形ということではありますけれども、御発表を頂きました。
 それでは、まずはお二人の御発表について御質問、御意見等があればお願いをしたいと思います。URAでもコーディネーターでもどちらでも構いませんので。
【永里委員】  URAの方に簡単な質問をします。
 この講義を受けた後に、どれだけ理解しているのかということでテストをするんですか。テストはないんですか。
【松永委員】  まさにここに書いてある達成度というのがそれになっておりまして、実験講義のときには、理解できたか、理解できなかったかという調査をやりました。科目ごとに。例えばここで理解度が幾つになっているのかということで、各受講者のデータはございます。しかしながら、今御指摘のように、これは飽くまで理解できたか、理解できなかったかを4段階で示してくれということだけですので、実際に試験をやって評定をつけているわけではございません。ですから、その部分というのは、まさに今議論している最中のところでございます。
【野口委員】  非常に両先生とも系統立てた取組をされていると感心しています。その上で、一つは感想ですけれども、山本先生がおっしゃった中に事務職員との意識のずれというところがあったと思うのですが、大学の人事制度上の問題もあると思います。前回も少し申し上げましたが、大学の職員というの国公立や私立も約3年で異動をしますけれども、大学の職員というのはそういう外部人材をラインできちっとマネジメントするマネジャーとしての位置付けが大事ではないかと思っています。つまり、研究マネジメント機能が高い大学職員こそが、私はURAと呼ぶにふさわしいのではないかと思っています。大学職員であれば、学内の様々な文書稟議(りんぎ)の決裁業務もありましたら、大学内部間の調整、例えば財務部、人事部はもとより教学部や国際部といった教育部門との調整や、大学の各種関連規則やルールなどの理解増進を外部人材にもさせていくということも非常に重要ではないかと思います。そのような観点からも、大学の職員はしっかりとラインを持ったマネジャーであるべきと考えています。
 もう一つは、私は今、JSTの目利き研修の講師も5年近くさせていただいているのですけれども、今回も担当するコーディネート基礎コースで64名の申込みがあり、そのうちの約3分の1の22名が産学連携業務に携わって1年未満の方なんですね。毎年1年未満の方が3分の1占める状況ですので、研修の体系もURAのように研究・産学官連携業務の理解度が比較的高いトップ層を伸ばすような研修のやり方と、業務経験の比較的浅い方の層を、丁寧にボトムアップを図りながら育成していくような、こういう二律進展させる立て方も全体的には必要かなと思っております。
 その上で、2点質問があるのですけれども、1つは、先ほど永里先生の方からもありましたように、研修の成果、いわゆる出口、アウトプットのところの確認です。非常に難しいと思うのですけれども、そういった研修の検証の一つとして、やはり教員とのコンタクトや企業とのコンタクト実地のところで検証することもあり得ると思います。教員とのコンタクトでしたら、シーズの創出のあぶり出し、論文や科研費申請等どうするかとか、現在の教員のモチベーションはどうなのかとか、それに基づいた提案をする。また、企業とのコンタクトも同じなのですけれども、そういった現場のところで検証するというメカニズムなどは、現在のところはどのようにお考えになっているのかということです。
 あと、コーチング、育成させる人材の育成も必要と思うのですけれども、そのあたりもとても大事な視点だと思いますので、そのお考えをお聞きしたいと思いました。
 最後に、松永先生のところのスライド10なのですけれども、ヒアリングのところですが、いろんな要素があると思うのですけれども、ヒアリングなされたのが国立が14で私立が1つだと思います。私立大学はやはり教育重視の部分がありますので、理解のレベルもかなり違うと思うのですけれども、そういった研究重視でななく教育重視の私立大学の困難な層にもフォーカスを当てる取組も一つあるのではないかと思います。私立大学の研究支援、産学官連携業務に携わる職員の研修についてどのようにお考えかをお聞きしたいと思います。
 以上です。
【馬場主査】  それでは、山本先生の方からお願いします。
【山本(外)委員】  私の方から、まず現場での研修の話なのですけれども、我々の取り組んだプログラムでは3種類のカテゴリーの人材といいますか、1人は事務職員、1人は技術職員、あと3人は社会人経験を有するポスドク相当の人材、30代の人材です。それぞれ現場での研修は、現状の状況をある程度考慮をした上で、事務職員について言えば、県職、県の行政の方の外郭団体へ派遣しましたし、技術職員について言えば、これは産学連携をダイレクトにやれるようなことの育成を目指しましたので、これはマン・ツー・マンで企業訪問しながら、受託分析の話がないかという営業活動、それをやってもらいました。あと、ポスドクについては、先ほど申しましたように7か月の長期の研修ですが、それぞれ大学等々、産業団体、それから県の外郭団体へ行ってもらいました。我々はもうお任せという状態で、そこではまって7か月やってくれということです。
 あと、育成人材のコーチング、これについてはおっしゃるとおりで、私も大変問題意識があります。実は育成する側がプロでないのに、育成できないと。特にOJTというふうなものをやろうとしたときに、よく言われる一番有名なプレーヤーが必ずしも監督になれないという話はありますけれども、良きプレーヤーが良き監督になれない状況もあるので、やっぱり育成する側の育成プログラムみたいなもの、そういったものもちゃんと見ておかないといけないなという気がいたしております。
 以上です。
【馬場主査】  じゃ、松永先生、お願いします。
【松永委員】  最初の現場との関係ということに関しては、まだちょっとその部分まで整理し切れてないのかなというのが正直なところでございます。
 2番目のコーチングに関しては、今年度、なぜこういうケース実験とかをやらなければいけないと考えているかというと、これはやっぱり上級者向け、URAではあるけれども、URAをある意味教育する立場のシニアの方に対する実験をやってみてはどうかというので、これをまさに今考えている最中です。これが継続できるか、また体系化できるかはちょっと別問題なんですけれども、とりあえずまず実験をやってみようというのが現状でございます。
 最後の質問で、スライド10の大学の体系分類みたいな形のところかと思うのですけれども、残念ながら私立大学のところは余りヒアリングに行っておりません。アンケート調査で出てきたところは幾つかあったのですけれども、まさに御指摘のとおり、私立大学は教育と離していくわけにはとてもいきません。スキル標準のその他の第1番目のところに連携支援(教育)というのがあるとおりに、教育とURAの関係というのを考えなければいけないところではあるのです。しかし、今回の設計上は、その部分はヒアリング、それからリクエストの関係から、余り出てこなかったということがございました。従いまして、必要性は認識しているけれども、研修科目あるいはケース実験の中でそれが取り上げられるかというと、現時点では、それは今のところは入っていないのが現状でございます。
【馬場主査】  ありがとうございました。
 そのほか、どなたかございますか。
【米沢委員】  福井大学の米沢です。
 どうもありがとうございました。非常に情報を整理させていただきまして勉強させていただきました。ちょっと細かいところで申し訳ないのですけれども、松永先生に、海外先行プログラムとの比較をされた中で、政策情報分析とかプロジェクト企画が日本固有の項目になっているとおっしゃっておられたのですが、これはほかの、要するにUSAとヨーロッパで体制が全く異なるというふうにもおっしゃっていたかと思うのですけれども、これらの項目は必要ないものではないと思うのですが、なぜ欧米では顕在化して見えていないのでしょうか?。
【松永委員】  私も必要ないものではないと思います。しかし、エマニュエル大学とシュパイヤー大、これは完全に大学ですので、大学のカリキュラムから取ってきた体系なんですね。そうなってくると、政策分析とかプロジェクト企画というのは、その体系の中には入っていなかったのです。
 NCURAの方なのですが、NCURAは毎年結構トピックがいろいろ変わりますから、例えばこの政策情報分析に関係するところで言いますと、ある年はNIHの何とかというグラントや政策に関する内容を集中的にやるとか、次の年はDARPAのトピックをやるという、そういう形になっております。従いまして、NCURAの中には、一部情報分析みたいなものが入っておるのは事実です。
【米沢委員】  だから、アメリカにNCURAという形で存在すると。
【松永委員】  はい。
【米沢委員】  この機能は、逆にヨーロッパではどこが担っているんですか。
【松永委員】  少し紹介しているのですが、14枚目のところに、これはイギリスの例なのですが、ARMAという米国でいうNCURAみたいな団体がございまして、ここも一応URAの研修会みたいなものを持っているんです。そこの中で、例えばREF、イギリスの大学評価制度ですけれども、そういうことの分析なり情報提供というのをやっているという話を私は聞いてまいりました。これは飽くまでイギリスの例ですけれども。
【堀部委員】  同じく松永先生に教えていただきたいのですけれども、達成度の評価というのが非常に難しいというお話なのですけれども、先行している海外の方ではどういうふうにされているか御存じですか。
【松永委員】  まずエマニュエル、シュパイヤー、これは単位を出すところです。例えばエマニュエルは、完全にマスターコースに入ってやるものは34単位のクレジットを修得すれば、あなたにマスターを出しますよとなっております。また、シュパイヤーもマスターコースの考え方は全く同じです。
 もう一つは、科目認定というやり方があります。マスターの単位は出さないのだけれども、この科目とこの科目、いわゆるURAに必要な科目をあなたはここの大学で受講しましたという、そういう認定をエマニュアルもシュパイヤーも出しています。だから、それは今後あり得る方向かなと。
【堀部委員】  ありがとうございました。
【柘植主査代理】  ありがとうございます。質問というよりも、まず結論としては、このお二方の活動は続けないと駄目で、ここで止めたらほとんど価値がなくなるというもので、我々は今イノベーション創出能力機能強化作業部会で、作業部会の論点整理の中にこれを本当に生かしたいと思うので、4つほど論点整理の大きな論点をお話ししたいと思います。
 後でお二方からその論点をどういうふうにしていくかのコメントをいただけたらと思います。
 1点目は、コーディネーター、CDの全国人材ネットワークの、今までもう10年やっているわけですけれども、そのメンテナンスと強化、更に新しい人材の育成ということについてであります。私は本当に不幸なことだと思いますけれども、民主党時代に文科省がせっかく育てた全国のネットワーク、80名か90名近くのものが、結局そんなのは仕分されて、大学ごとのコーディネーターだけに絞られてしまった。現状、まだそういうところだと思うのですけれども、しかし、実態としては、この全国の10年続けてきたネットワークというものはまだまだあるし、それが各大学も支えてくれていると思います。しかし、このあたりを一度メンテナンス等をして、じゃ、どうするかということがあると思います。
 2点目の論点は、これはこれからの話だと思うのですけれども、CD、コーディネーターの職種とURAの職種との、我々のミッションであるイノベーション創出機能強化という全体の設計図の中におけるそれぞれのミッションのディスクリプションといいましょうか、体系化と、それを見える化する。これは間違いなく大学ごとに異なるパターンになる。先ほどのURAも大学ごとでタイプ1Aからタイプ4までありましたから画一的な話ではないと思うので、多分パターン化になるかなと思います。
 どうしてこれを言うかというと、CDの中でも既にURA的な機能を果たしてきているし、URA自身もCDとの協働も必要だし、それから、CD、URAという名前がついてなくても、先ほど松永さんがおっしゃったように、職員の中でとっくにもうURA的なことをやられていることもありますので、やはりミッション・ディスクリプションの体系化と見える化と共有化、こういうことが2つ目の論点かなと思います。
 3つ目は、先ほどのURAの人材育成、講義の中で、科学技術政策というのがありましたけれども、実はその中に含まれているといいのですけれども、やっぱり別出しが必要なのは、イノベーション創出構造の学習です。日本の弱み、強みという意味で、イノベーション創出構造の学習。なぜかというと、科学技術政策、今の第4期計画の中にここは具体的に書いてないです、いかに日本のイノベーション創出構造の弱みがあるか、強みをどうするか。
 世の中では、クローズド・イノベーションからオープン・イノベーションと観念的なことで流れていたり、それから、我々産学連携の支援部会では、イノベーション・エコシステムというものをたしか昨年まとめて公表したと思います。
 ですから、イノベーション創出構造の学習というのも、科学技術政策に加えて、中に入れるのではなくてですね。
【松永委員】  別出しで。
【柘植主査代理】  ええ、別出しでこれは一つカリキュラムが要るのではないか。その中で、当然URAはそこのイノベーション・エコシステムのどこの部分を担うかということが、やはり議論して理解しなければならないと思います。
 4点目は、先ほども既に調査されていますけれども、米国、欧州のURA、コーディネーターのミッション、組織全体の中でどう動いて、キャリアパスも含めて、そういうことを調べられているのですけれども、それをもとに日本に導入すべきことと思うんです。それは多分導入する際の障害があると思うのですけれども、その障害は何か。そして、その障害をどうやって打破するかということの提案がこの作業部会としても大きなミッションかなと。
 もう一つできたら、日本に導入してはいけないという日本の教育・研究とイノベーションシステムの中で、導入すると禍根が残るという、我々はやはりそういう視野も必要だと思います。
 以上の4つを今お二方の話を聞いて、この作業部会での論点整理の中のテーブルにのせるべきだなと思いました。もしお二方から、どれか一つでも今後の論点に向けてサジェスチョンをいただけたらと思います。
【山本(外)委員】  私の方から一つ二つ。
 柘植先生がおっしゃった1点目の、全国のコーディネーター人材、いわゆる文部科学省配置というか、派遣という時期のコーディネーターが、いまだに活躍している方が何名かいらっしゃいます。しかも非常に、例えば個人名を出して何なんですが、静岡大学の藤田というコーディネーターがいますが、彼は地域の産学官連携人材ネットワーク構築に取り組んできました。当時文部科学省産学連携コーディネーターが80校だの、100校だの配置していた以外の、その当時未配置校と言っていましたが、政策で配置がされてなかったところも一緒にやりましょうということで、特に中部エリアはそういう活動を一生懸命やりました。未配置校を置いてきぼりにするのではなくて、政策波及効果をどうやって狙うかというところの活動を今後も継続しなければいけないので、そういった人材は宝だと思います。したがって、そうした人材には、今後も地域なりネットワークのコアとして、ボランティアでもいいからお願いしてでも活躍してもらいたいというのが私の考えです。
 3月に一応自立化促進が終わっていますので、この1年で早く声をかけないと、畑仕事をやっていますとかって帰ってこなくなるのではないかと危惧されます。
 あと、2点目のCDとURAについてなのですが、我々のところは、実は産学官連携専門人材という言い方をしていまして、必ずしも文部科学省コーディネーターとかいうことだけではなくて、それを包含して技術職員だの、事務職員だの、そういう大学に入ってくる外部からの人材をひっくるめて、内部人材も外部人材も含めて大学のあるべき姿にどう機能するかというふうなことを目指しております。そういう意味では、URAの機能とオーバーラップする部分がかなりあると思います。
 また、先ほどちょっと言及させていただいたFD、いわゆる教員側研修プログラムの方にも少し行かざるを得ない。そういった様々な必要性からミッションの定義について言えば、エコシステムの中でそれぞれのステークホルダーがどのようにそれぞれ自ら改革していくかという課題があります。それぞれがミッション再定義していくようなことを求めざるを得ないのかなというふうな気がいたしております。
 その2点、私の方からです。
【馬場主査】  松永先生、どうぞ。
【松永委員】  2番目のコーディネーター、URAの職種の整理とか体系化ということに関しては、これは4の回答でもあるかもしれないのですけれども、特に欧州は、名刺のタイトルにはURAとは書かないんですね。ほとんどリサーチ・マネジャーとか、そういう形の名刺のタイトルになっている。その意味で言うと、研究マネジメント人材というのがすごく大きな考え方にマッチすると思います。イノベーション創出人材と呼ぶか研究マネジメント人材と呼ぶかという言葉の違いはあるかもしれませんけれども、4と2の回答を合わせ込んでしまいますと、欧州は、イノベーション人材というのは研究マネジメント人材という形で広くURAを捉えている。「私はマネジャーです」と挨拶をする形になっております。
 もう少し4のことに関して言いますと、資料に示させていただいたのですが、今年4大学でここに行ってきまして、この報告書をどう使おうかという話をまさにしていたんです。東大と金沢と農工大と一緒に行ってきましたので、農工大にまとめをお願いしているのですけれども、一応向こうの、ドイツと英国ですけれども、そこの現場の話はある程度我々URAレベルでは整理をしております。また、海外視察の情報交換会というのもやっておりますので、何らかの情報提供はできるかと思います。
 スキル標準の方でもやはり調査に行っておりまして、これはサセックス大学という先ほどちょっと言いましたけれども、ARMAの会長がおりましたので、その方にインタビューをしてきて、特に英国のシステム、その部分にも情報提供ができるかと思います。
 導入してはいけないものといいますと、これは実はドイツのHRKというところに行ったときに、私はそのマネジャーの方に同じような質問を実はしました。ドイツも今まさにURAみたいなものを組織している最中だったのです。ドイツの大学はちょっとヨーロッパの中で特殊な体系で、6年制の大学とか工科専門大学とか、そういう形でした。それを今ひっくり返して、欧州統合みたいな形に合わせて変更している最中なので、かなりダイナミックに動いているところです。
 彼女が導入してはいけないというか、非常に注意しなければいけないこととしては、URAと研究者の立場のところを随分強調していました。つまり、マネジャーだからなめられちゃいけないということです、簡単に言うと。
【柘植主査代理】  手足ではないと。手足にしちゃいけないと。
【松永委員】  ええ、手足になっちゃ駄目だとおっしゃっていました。
【馬場主査】  ありがとうございました。
 ちょっと時間の都合もありますので、山本先生、松永先生の話題に関しては、柘植先生に今ある程度まとめていただきましたので、少し全体の話に移らせていただきたいと思います。いわゆる産学連携のコーディネーターとURA、の両者の違い、役割の違いがあるのか、それから共通項はどこにあるのか、あるいは両方合わせても不足しているところがどこにあるのか、そういうことを少し考えた上で、今回の目的は、イノベーションをどうやって起こすかということです。そのための組織を、新しく出てきたURAと、今まである産学連携のコーディネーターが協力し合いながら、新しいイノベーションを起こせるのか、あるいはそれを発展させた形で、何か新しいイノベーション創出の仕組みが日本に導入できないか、そのための人材をどう作るかということが、ちょっと大きな話ですけれども、今回の議題につながるように思います。
 お二人への質問も一緒にしていただきながら、少しURAとコーディネーターは歴史がちょっと違いますので、産学連携をずっと進めてこられたコーディネーターの中にURAを入れていくのか、それとも新しく出てきたURAというのを別途作って、独立に動かした方がいいのか、その辺のことも含めて、少し頂きたいと思います。
 その前にちょっと気になったのが、松永先生が調査されたときに、URAに対しては希望がほとんどプロジェクトを創出する役割に集中しているというところが少し……。
【松永委員】  最初のアンケートは、いわゆる雇用する側(がわ)の立場の方に聞きました。その後の調査などで、URAが実際どういう業務をやっていたかというと、やはりその傾向は確かに強かったというのが私の印象なのです。スキル標準で言うところのリサーチ・ディベロップメントとプレ・アワードの部分を中心にやっていたということであります。結果論としては、雇用する側(がわ)も雇用される側(がわ)もその部分を中心にやっていたのが事実です。
【馬場主査】  そこに非常に要望が多かったということは、経営している側(がわ)からして、そこが一番難しいから当然そういう要求が出てくるように思うのですが、今までの、大学というのは、基本的にボトムアップでいろんなものを要求して出してきたと理解しているのですが、そのやり方では今後のプロジェクト創出ができないからということなのでしょうか。
【松永委員】  済みません。その部分は細かく分析まではしておりませんので、ちょっと推論が入ってしまうのですけれども、今の馬場先生のおっしゃりようよりは、むしろ外部資金が欲しいからというのがダイレクトなインタビューの結果でした。
【馬場主査】  私もその現場にいますので、よく分かるのですが、今までの外部資金を獲得にいくときには、ボトムアップ式で取りにいけていたように思います。それが難しくなってきたからということなのかなとちょっと思ったのですが、そういう傾向があるかもしれません。
【松永委員】  そうですね。
【柘植主査代理】  今の関連意見です。
【馬場主査】  どうぞ。
【柘植主査代理】  今の主査の御質問、関心と私は根っこは同じではないかと思うんです。すなわち、大学から見ると、科研費という、いわゆる余りイノベーション等に縛られずに、むしろ探求型の本当の基礎科学、これに対する獲得は、今までの実績もあるし、あるいはそれを指導する機能強化をしているという大学も多いわけですけれども、今の大型プロジェクトというのは、もうちょっと科研費の2,000億の入れ物を超えた、例えばナショナルプロジェクトとかですね、これは今どちらかというと、トップダウン的で大学がお誘いいただくような形になっているんですけれども、アメリカの大学を見ていると、むしろ大学が大型プロジェクトを作っていくというようなことを先生方はされているので、多分その辺の動きに対して出てきているのではないかなと私は想像するんです。
 その前提に、今主査が言われたCDとURAとのミッション・ディスクリプション、そういうことの上位として、さっきちょっと言いましたけれども、今第4期の科学技術基本計画が進行していて、科学技術イノベーション振興政策というのを内閣府が旗を振ってくれているのですけれども、その中で本当に日本の科学技術イノベーションを創出するシステムの現状の強み・弱み、この分析が足りないという認識で、この産業連携支援部会はここ数年そのあたりをサーベイして、クローズドシステムとかオープン・イノベーションシステムという非常に抽象的なことを書いた。少し具体的にしようじゃないかというので、イノベーション・エコシステムという形を先期出してきたのですけれども、まだ私から見ると、まずそのシステムというのを我々なりに、あるいはURAもCDもどれだけ理解して、そんなもんじゃ分からないよと逆に批判を持つのか。
 そういう意味で、私は是非次回のこの作業部会でも日本の今のイノベーション・エコシステム、科学技術イノベーション振興政策の基になるイノベーション・エコシステムが現状どうなっているのか、どこがまだあやふやで、これではCDもURAも動けないぞと、こういうボトムアップ的なものをこの作業部会でできたらいいな。場合によっては、総合科学技術会議からレクチャーしてもらうとかですね。そうしないと、CDとURAの職種の各論は、当たっているところもあるかもしれないけれども、大きく抜けているところもあるかもしれないという感じがします。
【馬場主査】  そのほか何か。
【山本(佳)委員】  私の方から文部科学省側に質問なのですけれども、お願いします。
 URAのこれからの仕事環境として関心があるのですけれども、昨日発表された研究大学強化促進事業、これについてです。この新事業は研究振興局の御担当ではありますけれども、内容としては、URA活用を中心とした研究マネジメント改革というようにお伺いしております。活動期間は10年ということで、URAの雇用は短期雇用しかないという課題については、とりあえずその間は安心と考えていいのかというのが1つです。
 それから、10年たったらURAも国の支援なしに各大学でやれるように自立してねという認識かどうかです。それは既にコーディネーターの方がやってきて、現在その形になっている。なので、将来的にどちらも自立していく方向というイメージでいいのかお伺いしたいのですが、いかがでしょうか。
【横井大学技術移転推進室長】  大学技術移転推進室長の横井でございます。先生が言われた趣旨をきちっと理解できているかどうか分かりませんが、まず、昨日公表された研究大学強化促進事業の方、10年間の支援ということでございますが、では、その10年間、1人のURAの方に着目したときに、10年間雇用が保障されるかというと、必ずしもそういうものではないと我々は理解しております。
 雇用については、これまでも問題点として出されてきているところだと思いますが、5年以上雇用すれば、今の制度ですと、継続的な雇用を、ということになろうかと思います。その点についても今年度中に検討するということになっておりますけれども、そういう点では、5年未満の有期雇用という条件になってこようかと思いますので、システムとして10年間研究大学強化促進事業の方でやるということだと思います。
 それから、コーディネーター、URAの今後につきましては、是非ここで御議論いただくというのがお願いしたい点かなと思っています。答えになっているかどうか分かりませんが。
【山本(佳)委員】  ありがとうございました。
【馬場主査】  そのほか。
【野口委員】  先ほど馬場主査から少し提起がありましたことは非常に重要だと思っています。大学において、職種整理をこのまま放っておきますと、コーディネーターとURAと、あと研究部門の事務職員という3つのパターンが存在してくるわけです。前にも少し申し上げましたが、コーディネーターはどちらかというとプレ・アワード寄りに、URAはどちらかというとポスト寄り。人材育成面の研修から申しますと、実務をマスターしてからというのがURAの立ち位置かなという感じがしています。
 先ほど柘植先生からもありましたように、国プロも大学職員がリーダーシップを発揮して作っていくということもありますし、また、産業界のニーズも非常に多様化してきていますので、従来ならボトムアップ型といいますか、受託研究、共同研究のようなシンプルな研究交流だけの構造では、なかなか追いついていかない部分もありますので、そういう意味では、研究支援、産学官連携実務をきちんとマスターをしたURAがコーディネーターという職種も将来的には含んでいくと考えます。私は前回、URAとコーディネーターは別物で区分すべきと考えておりましたけれども、取り巻く環境の時流的には、例えば企業から見た場合、教員から見た場合、海外から見た場合ということも考えますと、やはり職種は、シンプルにしていった方が良いと思っています。実際、我々立命館大学の研究部でも新卒や中途採用の職員、異動で来た職員については、コーディネーター的な業務の方に最初は就けずに、まず実務をマスターするということで、プロジェクト管理とか予算の管理を1年程度経験させてから、適性を見てからコーディネーターのような業務をさせていくという職場内ローテーションも作っておりますので、出世魚的な発想ではなく、地に足をつけた育成が重要と考えています。そういった観点でも、職種のシンプル化、外部から見てどう捉えられるかというところを踏まえながら考えていく必要があると思います。
【馬場主査】  ありがとうございました。
 そのほかに御意見あるいは……。
【永里委員】  先ほど松永先生に質問したテストをするのですかというのは、実はURAの認定制度ということに絡んでいて、URA-Japanというようなネットワークを作って、その中でキャリアパスとして動いていくというようなことも含めて考えられるわけですね。ただ、柘植先生の言う導入していいことなのかどうかも検討すべきですが。
 国プロジェクトみたいなものがこれからどんどん重要になってきます。日本の成長政策の上で必要になってきますので、そうなりますと、ボトムアップではちょっと危ない部分があって、もっと大きく動いていかなければいけませんし、産業界も協力していかなければいけないのですけれども、その点では、プロジェクトそのものをマネージするという要素が非常に重要だと思います。民主党がコーディネートの方を仕分でつぶしたみたいですけれども、そういうことではなくて、CDも含めて、URAと融合しながら、あるいは先ほどのディスクリプションをはっきりさせながら、大きく育てていくという方向に持っていった方がいいのではないかというのが私の意見です。
【馬場主査】  ありがとうございます。
 そのほかございますか。
【米沢委員】  御質問になるかと思うのですけれども、松永先生と野口さんということになると思うのですが、人材の流動のところ、あっ、山本先生ですね、まず山本先生がおっしゃった、流動が起きていた、意外なことに起きていたというふうに表現されたかと思うのですけれども、それがポジティブな意味で意外に起きていたのか、仕方なしに起きていたのかという現状をもう少し教えていただきたい。
 立命館の方ですと、やはり任期を切って雇用されて、それを外へ供給するというふうな意識でURA的な、あるいは事務職員の方もやられていたように思うのですけれども、それが現状外へ出し始めた以降の話で、人材の流動化、その先のところですが、次に行って、その次というふうに流れていっているのかというところをちょっとお伺いしたいと思います。
 その上でですけれども、先ほどの評価にもつながってくるところなのですが、そうすると、地域内で、山本先生がおっしゃった地域内のところでの人材が動いている部分、インターンシップをしている部分というのは、我々もある程度は理解できるのですが、では、全国でというふうになってきたときに、人材のそれこそ能力がきちんと評価されて、それがデータベースになるというような形があって、初めて我々としてもどういう人が欲しいというようなことが共有できるのかなと。そのシステムというのは、なかなか個別には難しいところですから、やはりどこか中心になるところが作り上げて、それが今のどういう人間がというところとつながるのかなと思うので、ちょっとそのあたりの現状をこそっと教えていただけると有り難いのですが。
【山本(外)委員】  僕の方から先に言います。
 国立大学法人、福井、富山、石川、金沢と北陸先端について言えば、大体隔月1回のペースで産学官連携、特に知財を中心とする人材の定期的なミーティングをやっているんです。そういうふうなものをベースに、どういう人材が今活躍しているのかということを観察できます。それから、地域とはあえて言いませんが、いろんな会議とかでそれぞれの機関に雇用されているコーディネーター人材であれ、URA人材であれ、お見かけします。そうした場で、どういう物言いをし、何を主張しているかを見るとその人の特徴がわかります。そんな場で、大体この人が欲しいなという感じで見ているわけですよ。文部科学省のコーディネーター時代は、実は、全国会議とか地区会議は全て手作りなんですね。全部自分らでやって、自分らの活動を自ら発表し、主張していくということを必ずやっていたものですからそれぞれの実力が分かるんです。あの人は何を経験し、何を知っているか。
 そういうふうなベースがあったものですから、個々人のスキルは分かってはいましたが、組織的にヘッドハンティングするとか、そういうことをやっていないわけです。ただ、我々はあの子はあそこでもう1年で終わりだから欲しいぞというふうな話は交換しているということはあるんです。そこで、各機関が、組織的にちゃんと空席ポジション情報、どんなポジションでどういう要件でどういう人材が欲しいかという情報をお互いにちゃんとオープンにしつつ、それとさっき言った育成プログラムと能力指標がちゃんとお互いに了解して共有されておれば、流動化は可能ではないかと私は思います。
【野口委員】  結論はネガティブですね。福井大学さんの方にもうちの優秀なスタッフがお世話になっておりますけれども、本当は大学で引き続き雇用したかったです。ただ、大学の事務職員採用については、原則的に年齢で制限をかけていませんけれども、大体35歳以上になると、専任職員化、つまりテニュア転換するというのが困難という状況です。そういった意味では、非常にネガティブな対応です。私自身も、“人材輩出機関でも良い”と言っていますけれども、本音のところはネガティブで、優秀な人材は引き続き、大学に残したいです。しかしながら、5年という雇用期間の壁がありますので、数年前前に期間3年というのをようやく期間5年にしましたけれども、これを今度無期転換にとなると、人事部と協議を進めているものの制度整備は簡単にはいかない状況です。壁は、前回申し上げましたように資格基準ですね、弁理士とか弁護士とかということではなく、やっぱりこのURAというのはまだまだ大学内でも市民権といいますか、ステイタスを得る必要があると思います。そういう意味で、テニュア化というのが非常に難しいということです。
 でも、そうも言ってられませんので、例えば、ある一定の年俸を据置きでいけないかということも大学と協議しておりますけれども、非常に厳しいです。国に全体で、そのような機運を高めねばと考えます。
 それと余談になりますが、実際、本学研究部で任期付の契約職員をしていて、どうしても立命館大学の研究部で頑張りたいという者については、2名、一人はフランスの経産省のような機関へ正規職員として任用された後、本学に中途採用者として戻ってきましたし、もう一人はNEDOコンダクターから戻ってきましたけれども、唯一そのときだけ、専任のテニュア職員で初任職場、つまり最初に配属する職場は研究部です、また基本的には4年間異動はしませんというような形態で募集しましたものですから、そういった固有の募集形態も少し検討していかなければならないなと考えています。
 以上です。
【馬場主査】  ありがとうございます。
 そのほか、何かございますか。
 方向として、今URAとコーディネーターを融合させてということのお話だと思いますが、それをさせるときに、今までのURA、それからコーディネーターの中で、活動でもいいし、組織でもいいのですが、不足している、あるいはおかしいというところはございますでしょうか。
 例えば、コーディネーターは企業のOBの方がなられているのが現状であるというようなこと、それから、いわゆる雇用の問題も、流動化という言い方はされていましたが、雇用が固定化されていない。融合させるときには、ある意味チャンスですので、そういう今までなかったところをうまく組み込んでいけるような話もあっていいかと思いますが、現状で不足しているところをある程度、羅列状況でもいいからピックアップしておいた方がいいのではないかと思いますが、少し御意見をいただけませんでしょうか。
【柘植主査代理】  一つ各論なんですけれども、非常に大事な話だと思うんです。今の話で、現状のURA、コーディネーターも含めてですけれども、産業界経験者というのは、先ほどの山本さんの資料でしたか、必要なときに必要な専門人材を地域や外部から集めるマネジメントができる、これはやっぱり産業経験が必要だと思うんです。
 一方では、今ポスドク問題がありまして、ポスドク問題は、研究者としてなかなか職を得られないけれども、ほかの分野、例えばこのURAとかCD、この分野で活躍できる人材としてのポテンシャルはあると思うけれども、現実問題とすると、こういう必要な人材を地域や外部から集めマネジメントできる、こういうことの一つのアプレンティスを博士課程の教育のときにされていないんですね。
 ですから、ポスドクをこういう形で生かしていくという道の中で、今の視点で博士課程教育の主専攻か副専攻か、そういう面で強化していくという視点も一つ必要かなと思うんです。
【馬場主査】  ありがとうございます。新しい人材供給といいますか、そういう視点も必要だということだと思います。
 先ほど山本先生でしたか、分類されていたときに、分野別というのが、先ほどちょっとポスドクのことで思ったのですけれども、どういう分野の方がコーディネーターは多いというのは何かありますか。
【山本(外)委員】  コーディネーターの過去の経歴を見ますと、平成19年度当時も今も余り変わらないのか、理工系が多かったのは圧倒的ですね。それで、企業では技術開発系、製造部門とかも含めてですね。ですから、ちょっと偏り過ぎかなと。
 最近は、若い方はそうでもなくて、経済とか法とか、そういった社文系の人材が結構入ってきているように思いますので、そういう意味では、企画力、コーディネーション能力、合意形成能力など、そういったところにたけている人材は結構いらっしゃるのではないでしょうか。
【永里委員】  座長の言われた「不足している」というキーワードで考えてみますと、山本委員の資料の48ページに「今後期待される人材の能力」というのがあるんですね。これは1から12まで書いてあって、すごいことが書いてあるんですよ。これは、実は産業界が欲しい博士人材の教育なんです。これはまさしくそうなんです。ということは、先ほど柘植先生もおっしゃったけれども、大学院でこの視点の教育をすれば、URAにもCDにも、それから産業界の方にも役立つグローバル人材、交渉能力のある人材が育成できる。そういうのを産業界は求めていますから、そういう大学の教育をできたらしてほしいと思いますね。これはまさしく不足しているところですから、今、日本で。
【馬場主査】  ありがとうございます。非常に大変な話だと思いますが、いきなり教育の方に話が戻ってきたような気もしますが、いかがでしょうか。
【山本(外)委員】  URAとコーディネーターというのが、今ペアで話されているのですが、冒頭にも申しましたように、産学官連携専門人材、そういう言い方をして、言ってみれば、若手の教員からポスドク、事務職員、技術職員、外部から入ってくる人材、そういったもの全体が、もう一回何が求められて、どういう能力を付ければ、いわゆるイノベーションを促進できるのかというふうなことを思うと、先ほど御指摘いただきました12のポイントみたいなところが重要で、かなり欲張りというか、過激な書き方になっていますが、これぐらいやらないと世界では勝てないのかなと思います。こういう人材について一人のスーパーマンみたいな人材をイメージすることではなくて、むしろ、それぞれの、ステークホルダーがそれぞれ専門性を身に付けて、チームでしっかり機能するというふうなことを目指すのであれば、何とかグローバルで戦える大学ができていくのかなということです。そういう大学環境で仮に学生が育てられれば、産業界にも受け入れてもらえるというふうになるのではないでしょうか。そういうふうなことを大学の中でまず真剣に検討すべきかなと考えています。単に産学連携人材というか、そういうカテゴリー人材だけではなくて、もう少し広く議論を深める必要が、個々の大学にあるのではないかというふうに思います。
【柘植主査代理】  関連ですが、まさに今のお二方の、永里委員もおっしゃった話です。山本先生の48ページの人材、私も日本の博士課程修了者が、もちろんいきなり1から12まで全部社会で通用する能力を持てということは無理なことは分かりますが、しかし、博士課程の教育研究の一つで何らかの形でこの1から12は自然に触れるのが、博士課程のまさに教育と研究とイノベーション一体と。これはたしか産学連携支援部会のレポートにも書いてあるし、この我々の親委員会である科学技術学術審議会の先期の大臣への建議にも教育と科学技術とイノベーションを、有機的という言葉を使っていましたけれども、一体にしていけば、この48ページの素養は博士課程教育でも身に付けることができるんですね。
 具体的に言うと、私はMITとかケンブリッジとの共同研究をしましたけれども、向こうの博士課程は、我々が発注したプロジェクトに参画すると、否応(いやおう)なしに1から12のことを教授の下でやらざるを得ないんですね。我々がフォローに行くと、まさにネゴシエーション、なぜ金がオーバーしたかとか、なぜ遅れたかとか、危機管理、実験装置がうまくいかなかった、こういうことをとうとうと説明する能力を結果的に身に付けているんですね。ですから、イノベーション創出機能強化という我々の作業部会からすると、やっぱり大学院教育に対しても注文をつけずに、避けてはもう通れないということを申し上げたいわけです。
【馬場主査】  ありがとうございます。非常に話が重たくはなっているんですが、いかがでしょうか。
【米沢委員】  ちょっと話が飛んでしまって申し訳ないですが、そもそも何が不足していましたかという質問に対して、非常にローカルなところでプランを出してしまうかもしれませんが、まず、先ほどのコーディネーターに限って言えば、人材像が60以上、男性、まさにそのとおりだったりするんですけれども、ということは若手不足ですね。若手人材の存在というのが、まず決定的に不足していると感じています。それが、だから、多分今の雇用の問題などにもつながりますし、もう一つは社会的にステータスが認識されているかどうかというところがあって、結局お願いするのは企業OBの方になるといったようなことですから、その結果にはなるのかもしれないのですけれども、コーディネーションのスキルがいろんなところに出てくるのですけれども、属人的であって、なかなかそれが継承されていかないというようなところが、いつも我々の中でも悩んでいて、足らない、足らないと言いながら、工夫が一番足らないのかもしれないのですけれども、やっていたところだと思います。
 コーディネーターの、これはもう我々のところのユニークな問題なのかもしれないのですが、もう一つは人手不足に象徴されるのかと思います。人手不足というのは、数に収れんするのかもしれないのですが、だから、教員とか、そういう研究者に対してコーディネーターの数、結局分野のバラエティーも含めてですけれども、どうも薄いところが多いというのが必ず出てきます、ここばっかりだねという話が出てきてしまう。だから、全般的に不足を感じてしまう。
 荒っぽくいきますと、例えば覚悟を決めて教員を減らしてでもコーディネーターを増やせという話ですら考えに入れなくてはいけないようになるのかなというぐらいの状態なのかなとも思えます。もちろん事務職員を増やしてくれ、コーディネーターを増やしてくれと言いたいのですが、では何のための自立化促進プログラムだったんだと言われるので、かなり過激なことを申し上げています。自分は教員でありながら、そんなことではいけないのかもしれないのですけれども。
 もう一つは、主として学外で活動するコーディネーターの人手不足、我々が努力、何かプランはないかなと思っていますのは、これはちょっと思い描いているところなのですが、もっと外部の金融機関や行政機関と連携する形で、結局、人を雇うのに原資がないと雇えないということになるのですが、コーディネーション業務をやっている方が地域にもおられるものですから、そういった方をコーディネーターとしてうまく活用する方法で何とか解決の糸口を探れないかなと考えてみているところです。
【馬場主査】  ありがとうございます。多分今のことはどこでも同じで、大学の宿命として、大学はありとあらゆる分野をある意味で抱えていますので、それに精通した人を雇おうとすれば、物すごい数の人、スーパーマンが必要になるというのは、これは宿命的だと思います。
もう一つは、いわゆる人手不足、いい人が集まらないというのは、これは大学の責任だと思います。大学がきちっと外から見える組織になっていない。例えば、産学連携の組織がきちっと位置付けられていて、活躍をして世の中が認めてくれていれば、そこへ来る人もいるだろうということに当然なりますので、そういう意味での、例えばコーディネーターとURA、合わせて新しくイノベーションを起こすものを組織するときには、もうちょっと大学内に、あるいは社会からきちっと認められる、そういう組織にまずすることが、雇用関係も含めて必要だろうと当然思います。
 もう一つ、今言われた教育の件ですが、これは博士を今書かれた素養を全部持っている人に育てるというのは、これはとんでもない話になるので、分野によって異なっていいと思いますよると思います。今までの博士を強引にこれに持っていくというのは、少し考えることが必要かと、私は経験では思っています。博士というのは、やっぱり日本の根幹を支えている仕組みだと思っています。アメリカはポスドク制度が研究力を支えていますが、日本は研究を支えているのも、乱暴に言えば博士の学生ですので、そこは少し大学の立場から個人的立場になって申し訳ないのですが、そういう形を是非御認識いただきたいと思います。
【永里委員】  今のことについていいですか。
【馬場主査】  どうぞ。
【永里委員】  産業界の方から見ると、やっぱりアメリカ型の大学院博士課程教育を欲しているんです、産業界の方は。今馬場先生がおっしゃったように、専門研究が強くなければいけない、これは大前提なのですけれども、やっぱりこの48ページに書いてあるような1から12の、こういうものはアメリカでは大学院で教えているわけですから、経営他を全部含めてですね。そこを出た人がPh.D.になっているわけです。産業界としては、だから、大学院が博士課程で教えてほしいというのが希望です。
 それが、今おっしゃった不足しているお話として人手不足、若い人不足とおっしゃいましたけれども、大学院の博士課程でこれを教えていれば、その予備軍にはなりますね。そういうことも含めて、日本の特殊事情は分かりますけれども、今やグローバルに日本はなってきていますので、そういうことも検討した方がいいのではないかと思います。
【馬場主査】  ありがとうございます。本当は余り言いたくなかったので、不足と言われると、日本はドクターの学生が不足している、研究力が不足していると言わざるを得ない、それがあると思います。そこに向かっていろんな要求がどっと来るものですから、パンクしてしまう可能性があるということで、お互いが悲鳴を上げるというところがあると思います。
 ちょっと時間のこともありますけれども、そのほか何かございますか。
【内島委員】  済みません、よろしいですか。このままだと、私はいないことになってしまいますので。
【馬場主査】  ごめんなさい。
【内島委員】  先生方がおっしゃっていることの繰り返しになってしまうので恐縮なのですけれども、私自身、学生からそのまま産学連携に携わる活動ということで今に至っているのですが、そういう視点から見ると、今あるコーディネーターとかURAをどうしていくかということもすごく重要なのですけれども、継続的にそういう人材を自然と生み出すようなことというのをやっていかなくてはいけないと強く思います。そのためにどうしていくかというと、今、博士課程の学生を対象に、という話もありましたけれども、学部生に対しても産学官連携の人材というものが国にとって重要な、この部会で言えばイノベーションを創出するために必要な人材であるし、日本にとって重要な人材であるのだということを教育していかなくてはいけないだろうなと思います。そういうことがなかなか各大学でできていないというところも、教育プログラムとして難しいというところも、現状としてあるかと思います。また、私たち産学連携部署に何ができるかという面では、私たち自身が学生に対して教育をするというようなことが、まずすぐにでもできるのではないかと思っています。
 実際に私たちのところでは大学の産学連携部署にいる3人のスタッフが、学部生、大学院生に産学連携について入門という形で話をしています。そうすると、興味を持つ、価値を感じる学生というのは少なくないんですね。そういうところを見ると、学生のうちからの基本的な教育はしていかなきゃいけないかなということと、その効果と価値は非常に感じています。
 もうちょっと申し上げると、「産学連携の仕事をやりたい」となり、「どういう道を歩んでいけばいいんですか」と聞かれたときに、前回から、また先ほどから皆さんのお話にありますけれども、雇用が安定的なものではなく、責任を持って「是非その道に進んでほしい」というふうに勧められない、という現状があるのかなと感じております。
 以上です。
【馬場主査】  ありがとうございます。本当に大事なポイントを御指摘いただいたと思います。やはり世の中から産学連携がきちっと位置付けられて、ある意味尊敬とは言いませんけれども、リスペクトされる、そういう組織として、活動として位置付けることが何より大事かと思います。ありがとうございました。
 最後にまとめないと駄目ですが、次回以降、ちょっとまとめに入らせていただきますけれども、お話を聞いていて、産学連携は今まではどちらかというと、技術相談からスタートしてきたと思います。シーズ・ニーズのマッチングとかよく言われてきました。イノベーションになりますと、多分シーズもない、ニーズもない、そういうところからどうやってイノベーションを起こすか。イノベーションとは多分そういうことだと思います。ニーズが分かっていれば、シーズが分かっていれば、もうそれはイノベーションではないかもしれませんので…、もしそうだとすると、何もない状態から本当に企業が、社会が参画していただいて、そういうことができる仕組みが作れるのか。もっと企業もそういう観点から是非、大学にいる立場からしますと、いろんな意味で間接的でいいから、そういうサポートをできるシステムを是非作っていただきたいような気が非常にしております。
 また次回以降、まとめに入らせていただきたいと思いますので、きょうはこれで終わってよろしいでしょうか。何か最後に……。
【柘植主査代理】  一言だけ。
 その他事項です。やはりきょうの作業部会のイノベーション創出機能強化作業、URA、CDから教育まで入ってせざるを得ないのですけれども、コマーシャルがありまして、日本学術会議が同じ、最終的にはイノベーション創出機能強化につながるのですけれども、来週の12日(月曜日)の13時半から乃木坂の学術会議の講堂で、「科学・技術を担う将来世代の育成方策を考える」、「教育と科学技術を価値創造につなぐために」という副題をつけています。これは学術会議が2年ほどやってきました検討会のものを社会に問うということであります。もし御関心があれば是非聞いていただいて、次回からのこのイノベーション創出機能強化作業部会も、どうしてもやっぱり教育は避けて通れないと思うんですね。主査が困ってしまうかもしれないのですけれども、そういうために、時間があったら、来週月曜日、是非参加いただきたいと思います。
【馬場主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、ちょっと予定の時間を少しオーバーしてしまいましたが、これで終わらせていただいてよろいでしょうか。
 では、最後に事務局から今後の予定等をお願いいたします。
【鷲崎大学技術移転推進室専門官】  それでは、お手元の資料3をごらんいただければと思います。
 次回、第4回といたしまして、8月26日、月曜日の朝10時から12時の間で予定してございます。次回は、試作・モデル化やインターネットを活用した情報発信の紹介ということで、具体的な手法について御検討いただこうと考えているところでございます。
 もう一点、報告書のたたき台を事務局の方からお示しさせていただきたいと考えてございます。
 また、先日御案内させていただきましたけれども、第5回の開催を臨時的にさせていただければと思います。ただいま日程調整の御案内を差し上げているところですけれども、また御協力をいただければと思います。
 また、何か御連絡等がございましたら、主査と御登壇の上、また御連絡させていただきたいと思います。
 以上でございます。
【馬場主査】  それでは、これで終わらせていただきます。
 きょうは長時間どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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科学技術・学術政策局 産業連携・地域支援課 大学技術移転推進室

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