資料3 イノベーション創出機能強化作業部会取りまとめ骨子(案)

平成25年8月26日
科学技術・学術審議会
産業連携・地域支援部会
イノベーション創出機能強化作業部会


1.はじめに
○国立大学の法人化決定後約10年が経過し、国の産学官連携推進施策等によって大学等における産学官連携活動の体制整備は進展し、自立的・持続的な活動の基盤を構築。

○他方、新たな市場創出等につながるイノベーションの創出システムが構築できてないことが社会的課題となり、産学官連携がその核になることが強く期待される状況。

○大学等には、来るべき社会をデザインすると同時に、そのような社会の実現のために必要なイノベーションの創出を図るよう、大学等の創造生産体制がどのような形で貢献できるかについて、社会各層の議論を巻き込みつつ、自ら問い続けるシステムを整備することが必要 。

○本作業部会では、これまでに構築された大学等における産学官連携機能について、連携によるイノベーション創出推進の観点から再整理するとともに、これを担う人材の育成等の強化策等について検討。


2.大学等発のイノベーション創出の現状認識
○第4期科学技術基本計画においては「科学技術イノベーション」を提示。(参考資料1)

○「産学官連携によるイノベーション・エコシステムの推進について」(平成24年12月産学官連携推進委員会)においては、産学官連携活動の体制整備施策の成果と課題を指摘。(参考資料2)

○「大学発イノベーションのための対話の促進について」(平成25年5月イノベーション対話促進作業部会)においては、イノベーション対話促進プログラムを指摘。(参考資料3)

○「我が国の研究開発力の抜本的強化のための基本方針」(平成25年4月科学技術・学術審議会)においては、産学官連携の具体的方策の検討を指摘。(参考資料4)


3.大学等発のイノベーションの創出に必要となる機能について
○産学官連携は、大学による企業に対する技術相談から始まり、大学等のシーズ・企業等のニーズのマッチング、さらには、それぞれのシーズ・ニーズのない段階から大学・企業等が参画してイノベーションを創出する形へと拡大し多様化。

○教育、研究、イノベーションを三位一体で推進するイノベーション・エコシステムを確立する上で、大学等における社会との窓口であり、大学等発のイノベーション創出システム構築の中心となる、産学官連携本部の果たすべき役割は、ますます重要となってきており、産学官連携本部をイノベーション創出・支援の中核組織と位置付け、その機能の抜本的な強化を図っていくことが必要。

○そのため、大学等の研究成果を社会へ提示する機能を強化する観点から、産学官連携本部の情報の収集力、分析力及び発信力の向上が重要。また、産学官連携本部を大学等における外部との窓口として、ワンストップサービス化を図るなどの形で外部からのアクセスしやすい環境作りが重要。

○産学官連携機能については、各大学等が自らの選択により、例えば、以下の各機能への比重の置き方を決め、その比重を不断に見直すことが必要。

1国際的な教育研究拠点として、将来の有望なニーズの先見性に基いて、社会を大きく変えるイノベーションを創出する産学官連携
2企業や社会のニーズと大学等のシーズのマッチングにより、イノベーションを創出する産学官連携
3企業や社会のニーズに対して提案型の研究開発を行う形で、企業や社会のイノベーションを支援する産学官連携
4各地域における現在のニーズに応える知識・技術を提供し、企業や社会のイノベーションを支援する産学官連携

○大学等のネットワークや産学官ネットワークの構築等を通じた大学等の間の連携、協働を推進し、各機能の補完や充実強化を図ることが重要。

 

4.イノベーション促進人材について
○「知識基盤社会を牽引する人材の育成と活躍の促進に向けて」(平成21年8月人材委員会)においては、イノベーションの創造に不可欠なチーム力の向上の重要性について指摘。(参考資料5)

○本作業部会においては、イノベーションの創造を担う多様な人材のうち、産学官連携コーディネーター、URA、事務職員等のイノベーション促進人材について整理。

○「産学官連携によるイノベーション・エコシステムの推進について」(平成24年12月産学官連携推進委員会)においては、
(1)シーズ・ニーズ創出をコーディネートする人材の育成、
(2)リサーチ・アドミニストレーター(URA:University Research Administrator)を育成・確保するシステムの整備
のそれぞれについて、現状、課題及びその対応策について整理。(参考資料6)

○産学官連携コーディネーター、URA、事務職員等によるイノベーション促進人材の協働関係、教員とイノベーション促進人材との協働関係を構築することが重要。

○協働関係としては、例えば、産学官連携コーディネーターをURA的に活用、URAを産学官連携コーディネーター的に活用、教員や事務職員にURAの機能を持たせる、教員や事務職員をURAに起用と、様々な形が可能。そのため、それぞれの大学等において、産学官連携コーディネーターやURAのミッションを再確認することが必要。

○協働関係が各大学等において、それぞれ適切に構築されることにより、教員が研究に専念できる環境を整備するとともに、教員のイノベーションマインドを育み、イノベーションの源泉となる「知」の創出力を大学等として強化することが可能。個々人の能力だけでなく、組織として体制整備し、チームとして機能することが重要。

○イノベーション促進人材の育成・確保に当たっては、スキル標準や教育研修プログラムの整備を引き続き進めることが必要。また、イノベーション促進人材については、大学等を越えたネットワークを構築することが重要。

○イノベーション創出人材の一部は、任期付きの人材であることから、その流動性を確保するため、各大学等が情報共有するイノベーション創出人材に関するデータベースが整備され、その充実が図られることが必要。他方、優秀な人材の確保のためには、雇用の安定が課題。

○産学官連携コーディネーターがこれまで担ってきた大学等と外部との窓口機能や社会的ニーズを把握する機能は必須。しかしながら、産学官連携コーディネーターのノウハウが現時点では多くの大学等で組織として継承されていないことが課題。大学等固有のノウハウに加えて、企業や地域とも共通的な業務もあり、外部からの人材登用は有効。また、全ての機能を大学で担うのではなく、外部の金融機関や地域のコーディネーターを活用することも有用。

○URAについては、知名度を上げるとともに、資格化等による認定制度を設けて、キャリアパスを確立することが必要。

○URAに必要な知識・技術を博士課程の教育に組み込むことにより、ポスドクのキャリアパスの一つとなる可能性があるが、その際、米国においてはポスドクが研究を支えているのに対し、日本においては博士課程の大学院生が研究を支えていることに留意することが必要。

○各大学等のイノベーション支援人材が産学官連携の重要性を伝える講義等を学部や大学院の学生に対して行うことも一考。


5.大学等発のイノベーション創出のための具体的手法について
○大学等、企業、公的機関等が相互に協力する仕組みをそれぞれの分野の状況等に合わせて構築することが重要。

○イノベーション創出の組織作りや対話ツールの活用を進めるためには中核となる人材の育成が鍵であり、長期的な視点に立った社会の支援を得ることが重要。

○大学等の産学官連携本部は、大学等におけるイノベーション創出の中心的な役割を果たしていく上で、対話ツール等により来るべき社会をデザインすることが求められ、関係者間での情報共有や外部への積極的な情報発信が重要。

 

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科学技術・学術政策局 産業連携・地域支援課 大学技術移転推進室

(科学技術・学術政策局 産業連携・地域支援課 大学技術移転推進室)