産業連携・地域支援部会 イノベーション対話促進作業部会(第4回) 議事録

1.日時

平成25年5月20日(月曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省東館16F特別会議室

3.議題

  1. 大学発イノベーションのための対話の促進について
  2. その他

4.議事録

【石川主査】  それでは、定刻になりましたので、本日のイノベーション対話促進作業部会を開催させていただきます。
 初めに、事務局から資料の確認をお願いいたします。
【鷲﨑専門官】  お手元の資料の確認をさせていただきます。
 資料1といたしまして、「大学発イノベーションのための対話の促進について(案)」というものを配付させていただいてございます。また、説明用ではございますけれども、委員の皆様の机上配付用といたしまして、資料1に行番号をつけたものを別途配付させていただいております。もし乱丁・落丁等ございましたら、会議の途中でも結構ですので、お知らせください。
 よろしくお願いいたします。
【石川主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、今日、4回目になりますが、今まで3回にわたりましていろいろな議論をしていただきました。今日は報告書をまとめるという作業があるんですが、その前に、私の方で今までの議論を少しまとめまして、大体こんなところは皆さん、同じ方向を向いているんじゃないかというあたりを申し上げたいと思います。
 産学連携の中での対話ということに焦点を置いた作業部会であったわけですが、産学連携の対話自体は、いろんな大学、あるいは企業、あるいは大学・企業間で今までもやられてきたと、それで幾つかのいい例はあるんだと。必要性も非常に高い。これは皆さんよくお考えだと思うんですが、うまくやっている例もある一方で、うまくいっていない例も見られる。あるいは、うまくいっている、いっていないにかかわらず、全然手をつけられていない例もあると。
 かなり人に依存することは、皆さんも御承知のとおりファシリテーターがいるかいないかという問題もいろいろあるのはあるんですが、一方で、どこから手をつけたらいいかわからない研究機関、あるいは教員、事務職員、そういったものがいるということもまた事実であると。かと言って、この教科書を読めば全部が書いてあるという教科書はどこにもないというのを、どうも皆さんに聞いてもないようなので、それはないと。
 じゃあ、どうするかということで、うまくいっている例は、例えば久保先生のところ、平川先生、白坂先生、江上先生のところではあった。それはそれでよくわかると。もう一方、デザインの側からも、櫛先生や並木さん、古谷さんに、広い意味でのデザインですが、デザインの側から、やりようは幾つかあるんだということをお話していただいて、幾つかのやり方の例を聞かせていただきました。
 じゃあ、どれをどうまとめるかという話になるんですが、今までうまくいっている人は、もしかしたらこの作業部会の結論はあまり要らないのかもしれない。だけれども、全国を見たときに、全国の産学連携の全体のアクティビティーを上げるという全国の視点に立った場合には、やはりもう少し何らかの方向性を打ち出し、その方向性に対してうまいサンプル、あるいはうまい手段をつけていく必要があるんじゃないか。この辺を、温度差がある中で、各大学、各企業の温度差がある中で、何らかの方向性を示していければいいかなという議論があったように思います。
 基本的には、教員、企業の対話をして、新しいものを生み出す、新しいものをデザインしていくという力を増すのを、全国レベルでどうにかもう一段上に上げたいということが皆さんの基本にあると思うんですが、それをまとめた報告書、あるいはその先にある何らかのツール、手法というものを生み出していこうではないかという考え方が少しまとまりつつあるかなというふうに。
 結果として、現場の人、先生、職員が、一つには対話の重要性をよく理解してもらう。これは理解していない方もいるということではあるんですが、対話の重要性を理解していただいて、そこから何らかを生み出す、新しいものを生み出すという努力をしてもらいたいという方向性を打ち出すというのが一つあると思います。
 それから、幾つか参考になる手段があるので、それに関してはディスクローズして、皆さんと共有していきたい。ただし、どうも皆さんの議論を聞いていると、その手段が目の前の自分の案件に合っているかどうかは、現場で考えていただかなきゃいけないということはあるようです。
 だから現場としては、何かやってみようと思ったときに、何もない中ではなくて、幾つかのサンプルがある中で、合うかどうかはその先の議論や作業に依存するんですが、そこの先でうまくいきそうなものを何か選べるだけの情報や手段は提供しようと。もしよい方法が見つかればラッキーだし、見つからなければ、その中以外にもやらなきゃいけないだろうと。その中以外にあった場合には、ここのツールと呼ばれているものの中にはアドオンできるように、いい例はどんどん積み重ねて、積分として、日本全国、日本の価値として、日本の財産として蓄えていった方がいいのではないかというような議論があったかと思います。
 全体をまとめますと、現場が、この対話と、それから生み出される新しい技術、新しい分野の生み出す努力というものの重要性を理解していただいて、うまくやれる人はいいんですが、何らかの手法のサンプルが気軽に手に入ってトライするというところまでは簡単にできるようにしてみようと。
 報告書は、ですから二つ大きな柱があって、全体の方向性の重要性、それと幾つかの手段、手段に関しては、100点満点の手段はないので、各論併記になることは仕方ないとして、幾つかの手段が書かれている、そういったことをもって、現場のアクティビティーを上げていこうということだと思います。皆さん全員の御意見を反映している私のまとめになっているかどうかは怪しいんですが、わりとこんな方向で進んできたと思います。
 いかがでしょう、今のまとめに関して、違うぞということはありますか。断言口調は避けたまとめになっているんですが、よろしいでしょうか。大体そんなことかと思います。
 じゃあ、それを踏まえて、今度は報告書になります。報告書に関しては、あんまり曖昧なことばっかり言ってもしょうがないので、多少、もうちょっと断定口調が入りますが、それに関しては事務局の方でまとめていただいたので、今の報告書の案に関して、ちょっと今回は報告書をまとめる作業が重要な作業になりますので、それに関してはちょっと長めに御説明いただきたいと思います。
 じゃあ、工藤さん、お願いします。
【工藤室長】  それでは、委員の皆様にだけ机上配付としてお配りさせていただいています行数の入っている方をちょっとお手元に広げていただければと思います。
 それでは、報告書の方を説明させていただきます。まず初めに、議論の背景として書いているところから、石川先生からも御案内あったように、2部構成になっていて、前段では、なぜこういう議論を始めたのかという点と、後段では、そういったものを今後、各大学で運用できるようなサンプルとして活用していこうという2部構成になっておりますけれども、非常に長いので、特に前段の方は多少かいつまみながら、御説明させていただきたいと思います。
 最初に、「1.はじめに―議論の背景―」というところですけれども、12行目を見ていただきたいと思います。過去十数年にわたる産学官連携によるイノベーション創出に向けた取組により明らかになったのは、これは企業側のニーズに基づく大学等のシーズとのマッチングというものが一巡したというものと考えられる。今後は、潜在シーズと潜在ニーズとも呼び得るこれまでにないシーズ・ニーズの組合せの実現が求められていることであるとあります。
 ここから3行下がっていただいて、18行目、このシーズとニーズの組合せの実現というところですけれども、これにつきましては、今現在の社会から帰納的に掘り起こせるニーズに拘泥せず、あるべき将来社会像を時間的・空間的連続に束縛されることなくデザインし、かつ、当該デザインを実現するような研究開発の方向性を見定めることによってイノベーション創出を図るアプローチであると述べております。
 1枚めくってください。続きまして、このイノベーションを起こすシステムが稼働する場所として、大学を想定している記述が続きますけれども、これも上から5行目を見てください。「付言すれば」というのがありますけど、そこから読ませていただきます。「大学等には前述の教育研究機能に加えて、いかなる営利主体たる企業からも比較的等距離を維持できる共有地的な地の利を押さえていることから、みえざる将来ニーズの輪郭を浮かび上がらせるべく、幅広い分野の知的活動主体が利害を超えて集い、対話に基づいた集合知と新たな発想で将来の社会デザインを行うのにふさわしい場所であると言える」とあります。
 続いて、10行目を読みます。「すなわち、大学等には、先行きの見通すことが困難な我が国の経済社会、ひいては人類社会全体にもブレークスルーをもたらすような、来るべき社会をデザインすることと同時に、そのような社会の実現・イノベーションの創出を図るよう、大学等の創造生産体制がどのような形で貢献できるのかについて、社会各層の議論を巻き込みつつ、自ら問い続けるシステムを整備することが必要とされている」。
 続いて、2ポツとして、イノベーションを促進する対話の在り方を述べた章になります。上から20行目を見てください。とりわけ過去約10年間にわたり実施された大学等に関する産学官連携にかかる体制整備によって、知的活動主体同士の交流の基盤というものは着実なものとされました。
 続いて、1行飛ばしていただいて、24行目です。「過去の施策により生み出された産学官連携の組合せの多くは、技術面に閉じてしまう傾向にあった。製品に付随するサービスが分かち難く結びついた商品が世界市場を席巻する現在にあって、製品の技術仕様の差異のみでは競合する商品との相違点が見いだしにくい。このため、昨今の産学官連携政策においても、技術開発面に止まらず、例えば、経済学、心理学などの人文社会科学系の学問と商品企画やマーケティングなどといった幅広い連携の必要性が謳われてきた」。
 1枚めくって5行目を御覧ください。「オープンな場での知的活動主体の出会いによってもたらされる個人では得難い集合知の活用と、その反応としての飛躍のあるアイデアの創出であるが、こうした「予期」には、知的活動主体同士の出会い・対話を集合知や新たなアイデアの創出に変換する具体的なコントロールの方法論を欠いてきた」。
 これで13行目まで飛びます。「作業部会では、新たな発想につながる会合・対話の在り方はどうあるべきかの検証を行うこととした」。
 続きまして、3ポツに移らせていただきます。新たな産学官連携を目指した取組。(1)共感の醸成・問題定義・創造についてになります。この19行目を御覧ください。「米国・スタンフォード大学d.schoolが編纂した「デザイン思想家が知っておくべき39のメソッド」」、これで2行ちょっと飛ばしていただきます。この中には、「イノベーション創出は人々が気付いていない、外部から伺い知れない潜在的な心の内を知ることから始まる、とも言える」としています。「また、こうした人々の心の内を知るために観察主体による(客体への)共感の醸成が重要視されており、人々が自身では認知し得ない無意識の領域については、当人と共感する他人から観察・指摘してもらい課題解決につなげる」としています。
 1枚めくってください。1行目から読ませていただきます。「翻って、これまでの産学官連携政策に基づく知的活動主体同士の出会い・対話には、「予期」された範疇を超えるような『異』の融合が得られないケースがあった」。
 3行飛ばします。6行目から読みます。「新たな発想につながる対話の在り方には、まず、知的活動主体同士の共感を醸成し、相互の心の内(無意識の領域)を発見することとし、次に、それら無意識の領域の情報にかかる関係性を整理することによって問題提起を行い、そうして得られた問題の解決策に取り組むために創造性を発揮させる、といった具体的な対話と発想の実行プロセスが必要である」としています。
 続きまして、14行目の(2)産学官連携における「対話型ワークショップ」についてに進ませていただきます。15行目になります。「これからの産学官連携活動が目指すべき大学等に集う人々に創造性を発揮させて集合知を得ることにより、新たな商品・サービスを生み出し、市場を通じてイノベーション創出を拡大させていくことである」。
 25行目に移ります。「大学等において、異なる発想・経験・価値観を持つ多様な知的活動主体が互いに刺激し合い、これまでイメージされていなかった全く新しいシーズ・ニーズの組合せや、アイデア等が発掘されるような「仕掛け」として、現場で簡易に利用できる対話の在り方・プロセスをあらかじめデザインしておく必要がある」。
 次のページにお進みください。冒頭から読ませていただきます。この部分の結びになりますけれども、最後のところを全行読ませていただきます。「したがって、対話によってイノベーション創出の確率を高めるためには、知的活動主体間の共感を醸成し、相互の心の内を発見し、問題提起を行い、かつ、創造的に問題解決に取り組む一連のプロセスを容易に再現できるような汎用的なツールを開発し、大学等の現場での運用を促すことが効果的と考えられる。具体的には、大学等の産学本部等が中心となって、対話ツールに提示される対話の在り方・プロセスを取り入れ、対話型ワークショップを継続して実施することにより、来るべき社会をデザインすることと同時に、大学等がその実現にどのような形で貢献できるかについて社会各層の議論を巻き込む新たな産学官連携のシステムを構築していくことが求められている」と結んでおります。
 ここから、対話型ワークショップに関する留意点について説明させていただきます。4ポツ12行目です。「作業部会においては、対話型ワークショップにおいていかに多様で、斬新かつ質の高い発想を得られるかとの視点から審議を行った」。
 2行飛ばします。「対話型ワークショップの関係者が自由に可変可能で多様性を備えたものとなるよう、あえて一つの案にまとめることはせずに並記した」。
 続きまして、簡単にここ以降、散文的な内容になりますので、簡単に幾つか御紹介いたします。
 (1)として、まず事前に整理すべき事項といたしまして、対話型ワークショップの開催に当たっては、ここの1から7までの各点、もう既に皆様御案内のことかと思いますけれども、いわゆる予算等を事前に準備、それから参加者の選定基準、対話型ワークショップのゴール設定、実施の手順、課題設定の際の留意事項、それからアイデアを効果的に発散・収束・表現する方法、最後に、その対話ワークショップ終了後のフォローアップと、こういったものがまず事前に整備していく点がございます。
 続きまして、(2)対話型ワークショップの在り方に行きます。ここから細かく小見出しでいろんなテーマが続いていますけれども、一つに、議論の枠組みというところです。ここで幾つか論点が出ていて、ある種、相反するような内容もございますが、ここはもともと各論併記させていただくという前提に立っておりますことから、御了解いただけると思いますけれども、幾つか御紹介したいと思います。
 まず目的は、イノベーションの創出であるというようなことです。それから対話型ワークショップで課題を設定することが目的なのか、その解決策を見出すことが目的なのかは整理が必要であると。
 続きまして、6行目のテーマ設定に移らせていただきます。ここでも、できるだけ実現可能で、なおかつ実現容易ではないテーマを設定すると。9行目になります。分野にもよるが、10年を超えるテーマの設定は産学官連携の相手企業にとっては現実的につらい場合もある。
 12行目、アイデアの質の向上に移らせていただきます。13行目を読みます。対話型ワークショップの中において、ある一定のルールや方法論を持つことでアイデアの質の向上が可能。15行目、参加者の多様性が重要。それから16行目、参加者全員が合意できるものでは特徴のない結果となる傾向にあり、イノベーションの実現に向けてどうまとめるかが重要。
 21行目の(3)ファシリテーターについてになります。ファシリテーターの役割に移ります。当日の手順を決めるなど、対話型ワークショップ全体の設計を行うと。
 それから27行目、ファシリテーターの確保の小見出しになります。本人に意向があれば、訓練によりある程度の能力は身につけられる。
 1枚めくってください。次ページの(4)参加者の選び方についてに進ませていただきます。6行目になります。ある程度、その議題に対して興味がありながら、立場が全く異なる人も入れると。それから14行目、継続的な参加者だけではなく、初めての人でも参加できるような取組とする。
 (5)の参加者のモチベーションの高め方に進めさせていただきます。22行目になります。対話型ワークショップで出される知見やアイデアの帰属について事前に整理し、対話型ワークショップでの自由な議論と参加者の所属組織の利益確保とのすみ分けを行う。31行目、ふだん言えないような意見を交わし合うことでも充実感が得られる。
 (6)対話ツールの在り方についてに進めさせていただきます。34行目です。対話ツールを利用すること自体が目的ではなく、イノベーションの創出が目的。1枚おめくりください。3行目に移らせていただきます。ファシリテーターが未熟な場合に備え、簡便で習得までに時間がかかり過ぎないような対話ツールとする。次、5行目です。習熟した人や意欲ある人には自由に改変可能な対話ツールとする関係者が実際に複数の対話ツールを使ってみて、目的や使い勝手に応じて選択可能にする。
 17行目の(7)対話型ワークショップの展開についてに移らせていただきます。18行目になります。対話ツールが冊子で渡されるだけでは、大学等の現場では運用できないため、OJT研修のような形も必要。続いて20行目になります。取組を広げるためには、実際に対話型ワークショップに参加し、難しさ、面白さ、喜びを体験してもらうことが重要である。
 ここで、今後必要とされる事項に移らせていただきます。読みます。26行目、読ませていただきます。以上の審議を踏まえ、大学等発のイノベーション創出を図るために大学等の産学連携本部が対話型ワークショップを実際に主宰し、対話の促進が容易となるよう、文部科学省は、その手法の具体的な指針となる対話ツールを開発するために以下の手続を速やかに実行に移すこととする」。
 32行目です。1、審議の取りまとめをもとに、文部科学省において対話型ツール試行版を作成する。2、試行版に沿いながら、専門的な知見を有する者がファシリテーターとして複数の大学等に出向き、新たなシーズ・ニーズを創出するための対話型ワークショップを実際に行う。3、開発協力大学等において、実際にどのような成果が得られたかを検証するとともに、対話ツールそのものをより高度化する。
 5行目に行かせていただきます。「将来的には、産学官連携を積極的に推進する大学等において、ファシリテーターを務められる者が複数養成され、対話ツールを使って、必要な場合に対話型ワークショップがいつでも開催できるような体制が作られることが望ましい」。
 続きまして、8行目に移らせていただきます。「また、COI STREAMの三つのビジョンに沿ってCOI拠点の公募が行われる予定である。これまでにない斬新な発想を得るための手段の一つとして、対話型ワークショップが企画され、より革新的で社会的経済的インパクトが大きい、挑戦的な異分野融合が実現されることが大いに期待される」。
 13行目の「6.おわりに」に移らせていただきます。「作業部会では、大学等が多様な知的行動主体の対話に基づきイノベーションを創出することの確率を高めるよう、「どのように」対話を行うかについての方法論の検討を行った。今後、作業部会の検討を踏まえた対話ツールが日本全国の大学等において利活用され、来る社会のデザインとこれに大学等がどのように貢献していくかについて、社会各層を巻き込みつつ、大学等が継続して自ら問い続けることを作業部会として真摯に望むものである」と、こうして結んでおります。
 以降は、参考資料として、この部会の委員名簿、それから審議経過。最後に審議概要図で、前回のたたき台案にも示させていただきました、一つのちょっとこれは見やすい形といいましょうか、審議の概要を見た感じのイメージをつけさせていただいております。
 私の方からは以上です。
【石川主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、この報告書を是非とも全国の温度差のあるいろいろな人物像、組織像をイメージしながら御意見を賜ればと思います。議論なんですが、前半と後半は大分違いますので、まずは前半に関してまとめさせていただきます。
 いかがでしょうか。何か御意見がある方は、どうぞ御自由に御発言いただければと。特にここが重要だ、重要でないということの御意見をいただければと思います。
 はい、どうぞ。
【鳥谷委員】  すみません。4ページ目の知的活動主体同士の出会いとか対話とか心の内を発見するというあたりなんですけれども、この場合は、知的活動主体同士なので、恐らく企業と大学の研究者が想定されていると思います。一方で、スタンフォード大学の記述がどこかにあったと思いますけれども……。
【石川主査】  3ページ。
【鳥谷委員】  3ページですね。デザイン思考家が知っておくべき39のメソッドの中で、人間行動の中に潜む最良のインサイトから革新的な解決策が生まれると。それで、イノベーション創出は人々が気づいていない外部からはうかがい知れない潜在的な心の内を知ることから始まるというふうに書いてありますけれども、この場合の対象というのは、多分エンドユーザーとか、その製品を使う側ではないかと思うんです。
 そういう文脈で考えると、企業と研究者の心の内をお互いに知ったというだけでは、エンドユーザーの心の内という話はここに入っていないわけで、そこからイノベーションが起こるということにはならないんじゃないかと。つまり企業と研究者という関係と、エンドユーザーとの関係を整理してここに書いておかれるべきではないかなとちょっと感じました。
【石川主査】  どうですか。私もそう思うんですが、これは何か読みようによっては、要するに知的活動主体同士がエンドユーザーを呼べとも読めるわけですよね。どっちの意味か。
【工藤室長】  「知的活動主体」という書き方がかなり限定的にとらえられていると思いますが、ここでいう「知的活動主体」とは、必ずしも企業と大学の研究者だけではなくて、彼ら自身がエンドユーザーでもあるという点や、いろんな意識を持っていられる地域の方を含んでいるなど少しオープンに考えていますので、そういう意味だと、必ずしも本当に研究開発に携わる人たちだけのことを見て、ここで心の内を知ってイノベーションを起こそうということではなくて、もう少し広くとらえてつもりではあります。
 しかしながら、ちょっとわかりづらいという御指摘は確かにございますので、少し表現を工夫させていただければと思います。
【鳥谷委員】  そうですね。「産学官連携政策に基づく知的活動主体」と言ってしまうと、多分ほとんどの人が、企業と、それから大学のことだろうというふうにイメージなさると思うので、そこはわかりやすく書かれるといいかなと思いました。
【石川主査】  いや、今の工藤さんの説明はちょっと無理がありますよね。だから、この4ページの方は、鳥谷さんのおっしゃるとおり大学と企業だというふうに限定してしまって、ただどこか別のところに大学や企業だけが集まっても駄目なんだよということが書いてあればいいんじゃないかと思います。責任ある主体としては、やっぱり大学と企業であって、エンドユーザーは非常に重要な情報を提供してくれるプレーヤーであると。だから責任は多分、とれないんだと思うんですね。
 ほか、いかがでしょうか。では平川さん。
【平川委員】  今の点に一つ補足と、あともう一つ、別の角度からの提案なんですけども、まずその知的活動主体ということについては、例えばエンドユーザー、産業界と、それから大学以外の主体というのを考えたときに、それはエンドユーザーという特徴づけだけで全部尽くせるかというと、必ずしもそうではなくて、例えばNPOであったりとか社会起業家であったりとか、従来の産学連携の中で考えてきたその担い手、単にエンドユーザーとしてのある意味、パッシブな主体だけではなくて、実際にそのイノベーションの中に積極的に関わっていく、担い手になっていく主体として、従来の産学連携の枠とはちょっと違う主体も入ってくるので、その人たちもまさにアイデアを出して、知恵を絞って関わっていくということで、やはり知的主体というふうに言えると思うんですね。
 そういう意味では、先ほどの工藤さんがおっしゃったような形で、従来の意味での産学よりもう少し広い意味での知的活動主体というとらえ方というのがいいのかなと思います。
 ただ、ちょっとこの文章の流れからすると、先ほど鳥谷さんがおっしゃったような形の懸念も生じてきますので、ちょっとそのあたり、書きぶりを工夫する必要があるのと。あるいは、もうちょっと何か両方の意味合い、いろんな意味合いを含めて、例えばエンドユーザーまで含めて考えるときにはとか、ある意味、エンドユーザーも知的な活動の主体というふうに言えると思うんですけども、緩く、例えばアクターとかと、そういう形で言っちゃってもいいのかなという気もします。
 あともう一つは、これは一番のポイントとしては、最初に出てくる話で、この3ページの24行目以降のところ、24から26行目にかけてのところなんですけれども、「つまりこうした人々の心の内を知るために、観察主体による客体への共感の醸成が重要視されており、その当人と共感する他人から観察・指摘してもらい、課題解決につなげるのである」という表現は、私のように社会哲学とかそのあたりをかじった人間からすると、大分違和感のある表現だなと。
 非常に客観主義的というか、コミュニケーション、対話ということを、この部会では対話というコミュニケーション、これも例えばユルゲン・ハーバーマスの言い方をすると、日本語では相互行為という言い方で、一方の形の客観的な観察によって認識される客体との関係ではなく、相互に関わることを通じて、その間に何かが創発してくるというような相互性の認識というのが非常に重要になってきますので、例えば表現として、他者との対話を通じて、自己や他者の認識やアイデアというのがお互いに相互に発見されたり創発してきたりするというような、そういう相互性というのを強調した表現にした方がわかりやすいかなというか、多分、この手のイノベーションの話に、今後は人文社会系の人たちが関わってきたときに、あまりこの表現だと、また何か工学チックだなというような感じで言われかねないので、ちょっとそのあたり、表現を工夫できるといいかなとちょっと思いました。
【石川主査】  実はこの話、ちょっとだけ東大の話をしますと、プロプリウス21という共同研究の創出のスキームをつくったときの、プロプリウス21というのは、プロプリオセプションといって、自己重要性という。それで、大学が社会に対してあるアクションを起こしたときに、そのアクションに対する社会のリアクションを受け取って、大学自体の自分の立ち位置を考えましょうという意味なんですよ。
 今、平川さんのおっしゃったのは、それの双方向だという話なんですよね。
【平川委員】  ええ。
【石川主査】  だからこれ、大学に立っているか、もう一個上に立っているかで、この主文や関係性が変わってくるんですよね。平川さんの言っているのは、上に立ったときの双方向性の重要性をおっしゃっていて、工藤さんの言っていた大学側に立っちゃっていて、大学側に立っちゃったときの自己の内部の改革をうたっているということになっちゃうんだと思うんですね。だけど、どっちがいいかといったら、私は上から見た方がいいかなという気はします。
【平川委員】  特に政策的な立場ですし。
【石川主査】  ええ。
【工藤室長】  おっしゃるとおりに、インサイトのことをイメージするときに、最初に櫛先生のプレゼンを頂いたときのように、どっちが地でどっちが絵柄なんだという話があったと思うんですけれども、これ、双方に対話するときに、よく言うときに、ある会話が出されたときに、その会話の裏、会話で話されていることの背景というのをお互いに読み取れば、そこにこれは心の内が読めるのではないかという意味もあります。平川先生がおっしゃるとおり、これは双方を当然含んでいます。
 ただ読むと観察的、主体・客体的な要素になってしまっているのが非常に難しいところで、またそこは表現ぶりを御相談させていただきたいと思います。
【石川主査】  はい。
【江上委員】  多分、今の議論と関連していると思うんですが、1ページ目の13~15行目のところ、企業側のニーズに基づく大学のシーズとのマッチングは一巡したと、それで今後はシーズとニーズの組合せなんだという言い方をされていますが、私は、ニーズ自身の新しい創出もあれば、シーズ同士の合わせわざ、大学が最も弱い、縦割り組織に横串を刺して、イノベーションに向けて相互に啓発し合って、新しい融合サイエンスや技術を生み出すイノベーションのための動きが抜けていると思うので、その点は是非入れていただきたいと思います。
 そうすると、2ページ目の10~14行目、要するに大学等はイノベーションを創出するためにまさにラウンドテーブル型の議論を巻き込むことができるんだと、そのシステムを整備することが必要とあります。これは従来の縦割り型の学究活動から、大学の持っている特有の使命とか潜在価値を顕在化させるための新しい対話をシステム化することによって、ラウンドテーブルに他セクターの産業などのステークホルダーも入ることによって、大学自身も横串が刺せるんだという、もうちょっとダイナミックな対話によるイノベーション創出の進化の過程が追えるかなと思います。
 イノベーションの定義としてここで取り上げているものは、かなりインベンションに近いところから、技術イノベーション、それから産業イノベーション、社会イノベーションに至るところまで、様々な段階でのイノベーション対話を対象にしようとしています。汎用ツールを幾つか用意する場合、同じステージの議論に対して幾つかのツールを用意することもあるでしょうし、インベンションからイノベーションの過程のどの段階にはこういうツールがいいんじゃないかというような段階的ツールの提供もあります。より多重的なツールを提供するという考え方が取り入れられたらよろしいかなと思います。
 コントロールとか効率的とかいかにも行政的な考え方が入っているんですけど、やはりツールを使う人のより主体的なスタンスによって、イノベーションが創出される、そのための仕掛け、方法論をこのチームが提供するということなので、あまりコントロール的な言葉は和らげていただけたらと思います。
【石川主査】  ちょっと今の最初の前提は工藤さんの見方をしていて、1ページは、ニーズ・シーズとは書いていなくて、潜在ニーズ、潜在シーズと書いてあって、今までにないシーズ・ニーズを組み合わせましょうという文章になっているんですよ。なので、今おっしゃった前提とはちょっと違うような気がします。
【江上委員】  重要なことは、異なるシーズ同士を組み合わせることが潜在的ニーズにマッチングするために必要なので。原案だと、潜在的であろうとなかろうと企業のニーズに対して、シーズをマッチングするというのは変わらない。次の段階のイノベーションとして必要なのは、シーズ同士の合わせわざによって、新しいニーズの創出を実現するところだと思うので、もう少し大学側の進化に対する期待を、このイノベーション対話の説明に入れていただきたいと思います。
【石川主査】  この文章で読めませんか。14行目なんですけど、「今後は、潜在シーズと潜在ニーズとも呼び得る、これまでにないシーズ・ニーズの組合せの実現が求められている」、その次の行も、「これまでにないシーズ・ニーズのマッチングへの模索は」という言い方になっていて、今の御発言はこれで、かなりこれを広く読まなきゃいけないですけど、広く読めば包含されるのではないかと思うんですが、おっしゃっているような既存のニーズ、既存のシーズということはあまり前面には出てきていない文章になっていると思うんですが、いかがですか。
【江上委員】  希望的観測として、そこまで入れることもできなくはないかなと思いますが。大学にこういう新しい対話をなぜさせるのかというと、今までもよくやってきたんです、これからより新しいことをやるんですという意識づけのもとでこのCOIを行うのか、それとも今まで大学では産業との間で、あるいは大学の中においてもできなかったことを、この新しい、より高い目標にチャレンジすることによって打開し、新しいイノベーションシステムをつくろうとするのかです。私どもの認識としては、もう少し切実感を持って記載をしていただいたらいいかなと思った次第です。
 特に医工学の分野では非常にそれが必須なものですから。他のセクターはそれほど必要ではないのかもしれませんが、若干でも触れていただければ幸いです。
【石川主査】  文章の問題なので、どこが切実感がないのかなと。これは私はかなり切実感というか、方向性をきちんと議論しているような気がするんですが、今までのものを肯定しているという部分は非常に少ないわけで、そのときに、新しいものをつくろうという筆の強さが少し弱いかもしれないとおっしゃっているのか、書いていないとおっしゃっているのかで大分違うんですが。
【江上委員】  主筆された方の全体の論調の中で反映されることが必要ですので、どこかだけ突然、変えるというのはおかしいかもしれませんけれども、より大学側から産業を見ているのか、より大学自身の中でのイノベーション、まさに創出力、対話力というものを、外部との対話を通じて、より高めようとしているのか、そこを私はもう少し明確に書いていただけたらいいかなと思った次第です。
 書いてあると言われるのであれば、そうかもしれませんが、私が見た印象としては、まだ少し弱いというふうに思いました。
【石川主査】  どうでしょう。ほかの先生方は。私はこれはかなり今までの大学の中では強いような気がするんですけど。
【久保主査代理】  大学の現場でやっていると、必ずしも企業側がニーズ、大学側がシーズという、そういう一連のものではなくて、企業側ももちろんシーズを出しますし、大学側の先生がもっと先の、我々はいつも先のことを見ているので、ニーズを出すというお互いのニーズ・シーズがミキシングするような形になります。
 それで、そこは多分、皆さん依存はないと思います。それって表現だけの問題で、ここに書いてある13行目の「企業側のニーズに基づく大学等のシーズとのマッチングは一巡したものと考えられる」、これは既存の話ですよね。だからこれはここまででいいですよね。
 次に、「今後は、潜在シーズと潜在ニーズ」、このときのシーズ・ニーズというのは、別に企業にも大学にも限ってはいない。
【石川主査】  そうです、そうです。
【久保主査代理】  ですが、多分、誤解が生じる可能性があるとしたら、前にニーズ・シーズと書いてあるので、それをそのまま読む可能性があるという、そういう話だろうと。
【江上委員】  ええ、企業の潜在的ニーズという意味かと。
【久保主査代理】  言っていることはよくわかるんですが、だからもし誤解を避けるなら、どこかに例えば「相互の」とかいうのを一言入れる。「今後は相互の潜在シーズと潜在ニーズ」、あるいは「これまでにない相互のシーズ・ニーズの組合せの実現」とかいうのを一言入れて、誤解を招く、多分それでミスリードしない。多分、言っていることは同じことを言っていて、実際、現場はそんな単純なものじゃなくて、いろんなものがミキシングにあるので、そういう誤解がある可能性があると、そういう意味ですよね。
 でもそこは、すみません、よく考えないと、下手に言葉を入れると、何かまた違う意味になることもあるので、ちょっとそこのところだけ何か表現を御検討いただけたらと思います。それが前半の話ですよね。
【石川主査】  わかりました。
【久保主査代理】  すみません。
【石川主査】  今のは多分そこの文章を直せばそれで済む話で、直し方はちょっと難しいかもしれないんですが。ただ、ここでの議論は、企業のニーズ、大学のシーズなんていう狭い了見での議論はなかったというふうに思っていますので、それはよろしいと。私はいろんなところで大学が応用で企業が基礎の方が絶対いいんだというようなことを言っていたり何かしますので、是非ともそこは御理解している中での文章の問題だというふうに御理解いただければ。
 ほかにいかがですか。はい、どうぞ。
【櫛委員】  最初の鳥谷さんの質問にあったことと関連してなんですけれど、3ページの3ポツのところで、共感の醸成・問題定義・創造についてというふうになっていて、まさにそのとおりの部分があるんですけれど、ワークショップというか、対話型ツールを使ったワークショップにおいて、この問題定義と創造というところ、例えば創造についてはブレインストーミングがあったりだとか、ソリューションをお互い出し合うということがあって、問題定義も、いろいろ絡んでいる問題を整理して、問題を明らかにするというワークショップの目的がはっきりしていると思うんですけど、共感の醸成といったところが、先ほどの質問とかぶるんですけれど、前回にもちょっとお話しさせていただいたと思うんですけど、これが結構難しくて、イメージとしては、ワークショップといって急に集まってきて、じゃあという話になるときに、共感の醸成ということが起こるというのはあまり期待できそうにないなと思うんですね。
 そのために、共感の醸成が起こるための準備立てということが非常に重要になってくるわけなんですけど、そこにあまりフォーカスは今回、議論としては当たっていなくて、共感の醸成をするためのワークショップを始める前の問題についても触れておく必要があるのではないか。まだそこはちょっと議論が足りていない部分かなとは思っております。
【石川主査】  私も同感は同感なんですが、それを本文でやりますか、それとも各論でやりますか。すみません、ちょっと質問があるんですけど。
【櫛委員】  本文においても、三つ分けて書いてあるんだったらば、ちゃんと分けた書き方をするべきだろうなと。今は何かごちゃっとなっていましたね。共感の醸成と問題定義といったものが一体化されたような書き方をされているので、それは書き分けた方がいいのではないかなと。
 それで各論においても、もう少し丁寧な言い方をしていかないと、実際、これからつくるわけですから、ここで事細かに書く必要はないと思うんですけど。
【石川主査】  こういう行政文書というのは図をあんまり使わないという歴史があって、櫛先生のおっしゃりたいことは、図を1個描くとすぐわかる話なんですが、ちょっとこれは文章なので、表現が難しいかもしれないですね。
 ほかはいかがでしょうか。はい、どうぞ。
【阿部委員】  1ページ目で、先ほどシーズ・ニーズというのは、別に企業にも大学にも限らないので「相互の潜在シーズと潜在ニーズ」という記載にしてはどうかという議論があったのですが、ここのシーズ・ニーズには市場だとかエンドユーザーも入る考えので、もっと広い意味で、いわゆる企業と大学だけではなくて、幅広く一般も含めた形の広い意味でのニーズとシーズが入るように書いていただいた方がいいような気がします。
【石川主査】  英語で言えば、betweenじゃなくてamong。
【阿部委員】  amongですね。これまでは、企業と大学だけのシーズとニーズを組み合わせていたものが、今後は、ユーザーを含む広い意味でのニーズとシーズを組み合わせることが表現できればすごくいいと思います。
【石川主査】  その御意見も皆さん多分、共有している御意見だと思います。あとは文章の問題で。
 ほかは。
 ちょっと私が気になるのは、ここで今までやってきたことも全面否定じゃないわけですよね。今までやってきたのはそれなりにいいと。それで、これから強化するところがこの辺にあるんだぞということにしないと、私ら大学の産学連携を引っ張っていくときには、今までやってきた人がついて来なくなっちゃうと困るので、これ、文章で実は二、三か所、今、見つけてしまったんですけど、例えば今、議論になっているちょっと前の「企業側のニーズに基づく大学等のシーズとのマッチングは一巡したものと考えられ」と、こう書くと、ちょっと一巡したものと思っちゃう人が何人かいるかなという人物像が目に浮かぶ。そうじゃない人物像も当然、目に浮かぶんですが、それはちょっと何か所か見つけちゃったんですけど、今までの作業を、例えば本当に大学のシーズを企業ニーズにつなげましょうということは悪いわけではないんです。そのプロセスも絶対必要なんですが、そちらはわりとちゃんと成長してきたと。それ以外の新しいものを出す方が、まだ日本の力としては足りないから、そちらに対しては強化しましょうということなので、あまり従来のものを否定し過ぎるといけないという部分もあるので、二、三か所、否定し過ぎているんじゃないかというところもあるので、そこは私の方でちょっと気になったところです。
 ほかは何か気がついたことはございますか。
 私からのちょっと質問なんですが、これで皆さんが、企業の方はちょっとあれかも、企業は企業の中でも何人か人物像がいると思うんですが、何種類かの人物像を頭に描いて、この文章を読んだときにミスアンダスタンディングする人がいるんじゃないかという気がしないではないんですが、そういう気配りをちょっと委員の先生方、見せていただいて、どういう人が読むとちゃんと理解できて、どういう人が読むと理解できない、その人に対してはどういう文章をつけ加えておかなきゃいけないかというのが非常に気になります。
 例えば今、私が頭に描いているのは、従来型の大学の教育研究をやっているんだという人が突然これを読んだときに、さあ、どう思うかがちょっと心配なところもあって、川向こうの遠い話だと思われちゃうと困っちゃうわけですよね。もう少し誘導して、そういう人こそ飛び込んでいただきたいというのがどこかに書いてあるといいかなという気もしないではない。
 ちょっと人物像を、先生方、大分なれていらっしゃると思うんですが、人物像を描いていただいて、大丈夫かなというのをチェックしていただけると有り難いんですが。
【平川委員】  確かに一番の懸念は、石川先生がおっしゃったように、わりと学究肌の先生方からすると、この手の話は自分たちの話ではない、自分たちの仕事ではない、場合によっては、大学はこういうことをする場所ではないというふうにとらえがちな方たちも多いので、そのあたりで、大学の役割自体が今、社会の中で大きく変わってきたんだという。それは必ずしも文科省が勝手に言い出したわけじゃなくて、世界的なトレンドとしても変わってきているんだという理念をうまく説明して共有していただけるようにすると、少しはいいのかなと思います。
 そうじゃないと、やっぱり従来型の大学がこれからの21世紀の先もずっと続いていくんだという認識というのは、わりと強く持っていらっしゃる先生が多いと思いますので、そのあたりで、そういう従来の大学の役割に重ねる形で、新しい大学の役割というのはウイングが広がっているというような形で説明いただけるといいかなと思います。
【石川主査】  それは学校教育法が変わったので、本当はそういう考え方を持っていてもらっては困るんですけれども、ちょっと懸念としてはありますよね。
【平川委員】  ありますね。
【石川主査】  ただこれ、文章はそれを、皆さんはこのコンセプトになれていらっしゃるので、なれている目から見ると、ちゃんと書いてあるじゃないかと見えるんですが、今、平川先生がおっしゃったように、なれていない方がいらっしゃる。その人にどうやってこれを理解してもらうかというのは、ちょっと文章は難しいかもしれないですね。
【平川委員】  そういう意味では、あるいは実際に工学系とかで応用的な、社会に自分たちの技術を出していこうという先生方から見た場合でも、場合によっては、自分たちのやり方を阻害されるというか、何かいろんなアクターが関わってきて、自分たちがやりたいようにできないというふうに思ってしまう、何か夾雑物が入ってくるというイメージでとらえる方もいらっしゃるかもしれないので、むしろいろんなアクターが入ることで、自分たちの技術というのを効果的に社会の中に入れていく、生かすための道や方法論なんだというところも強調できるといいかなと思います。
【石川主査】  よく読むと書いてはあるんですけどね。
【平川委員】  思想的には。読むと、すべてどこを読んでもそういうことは書いてあるんですけど。
【石川主査】  書いてあるんですけれどもね。
 どうですか。
【古谷委員】  今の平川先生の意見に関わるかもしれないんですけれども、イノベーションを起こす対象が変わったという話が見えてくると、そのやり方が変わるというのがもう少し腑に落ちやすくなるのかなという気がしまして、要はこの冒頭に書かれているサービス、製品というのもあるんですけれども、今の社会課題に対して、企業と大学合わせて社会的な何かイノベーションを起こさなきゃいけないんだというふうに問題が変わってきたと。それに対して、当然、我々もやり方を変えないんだという前提が最初に述べられると、その後のやり方の話ですとか、その辺がもう少ししっくりきやすくなるのかなと、そういう感想です。
【石川主査】  私も同感ですが、変わったと言い切っちゃうと、またこれはこれで問題が。その変わる流れができたということは正しいんですが、100%そっちになるということに関しては、いろんな異論があるかなと。難しい。
 じゃあ、前半はこのぐらいでまとめさせていただこうと。今度、後半なんですが、後半は、今の前半の思想に対して、先ほどちょっと私の申し上げたまとめでも、100点満点のテキストブックはつくれませんよというのが背景にあります。背景というか、書いてあるのかもしれませんが、背景にあります。でも幾つかのいい例を挙げて、それに対して、ユーザー、現場の人がどれかはやってみようという気が起こるように書いているわけです。なので、一部自己矛盾、項目と項目で矛盾している部分もあるんですが、それはそれで問題なく併記ということでやりたいと思っています。
 何かこのまとめ方、あるいはここのものでもっとこういうのは重要視した方がいいということがあれば、御意見を頂ければと思います。
【江上委員】  6ページの上のテーマ設定の7行目から10行目のところ、“できるだけ実現可能で、かつ実現が容易でないテーマを設定する”と書いてあります。できるだけ実現可能でというのが頭につくと、テーマ設定の動機がやや下がってしまうかなという気がします。COIはビジョンを出していますから、是非世界的な課題としてチャレンジすべきものであって、かつ実現が容易でないとか、この頭のところの表記は少し変えて、実現しなければならないんだけれど、実現は容易でない、だからストレッチしなくちゃいけないというようなトーンが入るのがいいかと思います。
 このテーマのタイムスパンなんですけれども、より長い方がいいとか、あまり長いと産業としてはつらいという記載があります。より長期のビジョンとしてのここで言うイノベーションのゴールがあるわけですから、段階的な設定、テーマ設定を上手にすることが、この対話の非常に重要な鍵でもある。ここは少し膨らませていただいたら、皆さんがワークショップのイメージがつかめるかなと思いました。
 あと、ファシリテーターなんですけど、1人のファシリテーターだけで行うのを大前提としているのか、あるいは私どももよくメーンだけだと大変なので、サブのファシリテーターのような役割の人を参加者側から出すようにする工夫もあります。
 ですから、ファシリテーターは1名若しくは例えば複数でいいというような(ツールの中身は見えていないので、何とも言えないんですけど、)何か実践する大学にある程度、任されているという記載があるといいかなと。
 また、ファシリテーターの当事者意識の問題、従来の産学連携担当や後方支援の意識や位置づけでこの対話を指導しようとすると、参加者の側も、何で彼がやるんだというような反応になり本気の議論が開始するのに時間がかかります。ファシリテーター側も参加者側も、この対話の意味や役割認識を共有するような前提づくりをしていただければと思います。
 ですから、ここは、“当事者意識をよりファシリテーターに持たせる”というようなことで書いていただければと思います。
【石川主査】  後半のはそのとおりだと思うんですが、前半の7行目は、ちょっとやっぱり私も変に思いますね。「できるだけ実現可能で、なおかつ実現が容易ではない」というのは、これはもしかしたら私の発言かもしれないんですけど、いいテーマ設定になるんですよね、総論としては。ただ文章に書くと、何かおかしいですね。
 今、我々の研究者で、外国の大手企業とやっているんですが、ものすごくテーマ設定がうまいですよね。だからそういうのはこういう話なんですけど、文章にすると、これはやっぱりちょっと変な文章になっちゃうな。どうしたらいいんでしょうね。
 あと、このテーマ設定も、江上委員がおっしゃるように、いろんなパターンがあるんですよね。だからいろんなパターンがあるという前提で読んでいただかないと、例えば2行目なんていうのは、これはその前提で読まないと、20年のものしか駄目なのというふうに読めちゃうんだけど、これはその前に、何年もいろいろあるけど、皆さん20年、30年後と思っていないかもしれませんが、そういうテーマでもいいですよという文章なんですよね。行間を読まないと読めなくなっちゃっているかもしれないですね。
【久保主査代理】  2ポツと3ポツが「場合もある」とあるので、1番目も、例えばそういう場合もあるような、断言ではなくて、そういうケースもあるという書き方にすればいいんじゃないでしょうか。
【石川主査】  そうですね。それもあるんだけど、「できるだけ実現可能で」という文章が、もうちょっといい表現がないかなというのは。社会の要請に応え得るテーマであってとか、急には思いつかないですけど。
 どうぞ、思いつきそうな方。
【古谷委員】  思いつきですけれども、先ほど櫛先生から、共感の醸成はなかなか難しいというお話があったので、一つはその今の社会の要請に応えられるということもそうでしょうし、そういった関係者の共感が得やすいテーマを設定するというのも、比較的、やり方の一つとしてはあるかなと思います。
【石川主査】  もしかしたらものすごくいい言葉かもしれませんね。「なおかつ実現が容易ではない」、いいかもしれないですね。それも場合もあると。
 白坂さん。
【白坂委員】  本当に石川主査おっしゃるとおりで、このテーマ設定、多分本当にワークショップ全体を、影響を受けるので、このポツの前に、テーマ設定は、ワークショップの目的は多様であるみたいなのを入れた上で、こんな場合もあるとしておかないと、先ほど櫛先生がおっしゃったような共感を醸成するためのワークショップだと、多分、テーマ設定が、また全然違う設定をわざとしてやるような場合もあるので、そういった意味では、もうここに書いてある以上に本当に多様なテーマ設定でワークショップってつくっているかなというのを感じました。
 なので、1行あると、その場合、特殊事例としてこういう場合もこういう場合もあるというので、すごく応用は広がるかなと思いました。
【石川主査】  そうですね。それでこういう場合もこういう場合もある、ほかも参加者が工夫して設定すべきであるぐらいの話ですよね。
【白坂委員】  はい、本当にそう思います。
【石川主査】  ありがとうございます。
 ほかに何かございますでしょうか。はい、どうぞ。
【鳥谷委員】  書き方の点で、今と似たような感じなんですけど、7ページの1行目、参加者の選び方についてなんですが、いきなり参加者の選び方から入っているので、まず参加者について、どういう対象があり得るかということが、1行入っているといいかなと思いますね。
【石川主査】  そのとおりだと思いますね。それもいろんなパターンがあると思うんですよね。でもここに出席されている方はだんだん共感ができてしまって、行間が読めるようになっちゃっているので、あんまりよくないかもしれないですね。1人、こういう場合は参加者として、一回もこの文章を読んだことのない人を入れるといいのかもしれないんですけれども。
 はい、どうぞ。
【平川委員】  大きく分けて2点ありまして、一つは、参加者の選び方、それからあとテーマの設定、あとアイデアの質の向上に共通することなんですけども、対話の場そのものではなくて、その対話の場を実際に運営する、開く事前の準備の段階として、いろんな関係者に、要はその対話の場に、例えば参加者の選定というところでいうと、誰を集めるかといったときに、やはりあらかじめいろんなところにリサーチをかけておいて、いろんな人に話を聞きに行って、どういう人がどういうアイデアを持って、どういうところにいるのかということをちゃんとつかんでおくというある種の営業活動をしっかりやっておいて、その中からいろんな課題、大まかなワークショップでやろうと思っているテーマごとに、このテーマだったらこの人たちを呼ぼうという形で、そういう候補者のリストアップというのはやっておくということが一つ。
 さらに、そうしたことを通じて、いろいろと、特にそのテーマ設定であるとかアイデアの質の向上のときに、いろいろな客観的なデータのインプットが非常に重要だと思うんですけども、そのときに人文社会科学、自然科学、工学、いろんな分野の研究者から、実際にそれぞれの分野での知見というものを、そのままインプットとしてはどういうものが得られるのか、さらにはそういういわゆる学術の世界だけではなくて、産業界であったり、そういう実務の世界からもそういうインプットというのを入れていくと、そういう事前の準備というのがないと、なかなか対話の場を組んだときに、どういう人を集めるか、またどういうデータというのをそこにインプットするのかというのができないので、やはり事前の準備というのを日ごろ日常的にやっておくというのが結局かなめとして必要かなと思いました。
 あともう一つは、対話型ワークショップの目的というのが後の方でございますけれども、これはページでいうと、8ページですね。ここのところで、一つ注意というか、留意点として入れておくといいかなと思いましたのが、例えば最初の方に、課題設定をすることが目的なのか、その解決策を見出すことが目的なのか整理が必要ということなんですけれども、これにちょうど補足をする形の文章として、ポイントとして、仮に課題設定を目的とした場合でも、しばしばその参加者がわりと自分の専門に引きつける形で解決策の方を述べてしまうということが結構あるんですね。
 これは実際に私どもの方でやったワークショップなんかでも、時々そういうような光景があったりするので、そういうときには、ファシリテーターの方から促しとして、そのソリューションというのはどういう問題の解決に寄与するのかとか、どういう問題を解決したいと考えているんですかというふうに課題設定の方に質問を投げ返していく。そうすることで、その思考の流れというのを変えていくという工夫も必要だというのは入れておくと、結構ありがちな光景なので、書いておくといいかなと思いました。
 以上です。
【石川主査】  ほか、いかがでしょうか。
 どうぞ。
【杉原委員】  8ページ、9ページ目の今後必要とされる事項のところですが、ここには対話で得られた成果を実際の産学官連携での研究開発の現場に落とし込む過程が全く書かれていないのですが、是非そこまでも含めて記載をすべきだと思います。将来的な希望という点でも、書いていただければと思います。
【石川主査】  すみません、今日の議事の運営上、この後、その議論をする予定だったんですが。
【杉原委員】  わかりました。すみません。
【石川主査】  今の杉原委員の指摘は、それを書いた方がいいということですね。
【杉原委員】  そうです。
【石川主査】  それをどこまで書けるかは、この後の議論で。書けるところは書いた方がいいというのはそうだと。
 ほかはいかがでしょうか。どうぞ。
【古谷委員】  ワークショップの目的のところで、6ページですかね、プロジェクトの段階に応じてワークショップの役割はきっと変わってくると思うんですね。発散フェーズなのか収束フェーズなのか。ですから、それに応じてやり方が変わるよという話は、ちょっとここに書くべきなのか、更にここから先の各論に書くべきなのかはわからないんですけれども、何かそういう形で、目的が変わるし、それに応じた目的設定が必要だという話はあってもいいのかなと思いました。
【石川主査】  そうですね。おっしゃるとおりですね。我々、共通の認識になってしまったので、書いていなくても違和感がなかったんですけど、明記しておいた方がいいですね。ありがとうございます。
 白坂さん。
【白坂委員】  やっぱり今、言われて、我々、なれているので、理解しちゃっているんですけど、多分、長い本当にイノベーションといいますか、製品開発だったら製品の、詳細に本当に設計を始める前までの間に、目的に応じたワークショップを何回も繰り返しながら、違うワークショップを繰り返し、繰り返しでいって、最終的に、じゃあ、これでいこうといく、そのイメージが多分もしかしたら、ぱっとこれを知らない人が読んだときに、何かワークショップ1回やっただけですべてが終わっちゃうようなイメージにとらえちゃうかもしれないので、うまく何かそこを変えて、何度か繰り返す中で、目的がどんどん変わっていって、目的としたワークショップをカバーするようなところがどこかで読み取れるといいかなと思います。
【石川主査】  ありがとうございます。大変、お2人重要な指摘だと思います。どこかに、ワークショップにはいろいろなステージにおいていろいろな形態があると明記しておいて、それに応じていろんなことを設計すべきであるという話だと思います。確かに我々、それは暗黙の了解になっちゃったから。
【白坂委員】  暗黙の了解でやっている気が。
【石川主査】  明記しないと、初めて見た人にはわからないですね。ありがとうございます。
 ほか、いかがでしょうか。はい、どうぞ。
【並木委員】  7ページ目の参加者の選び方の1番目の2行目のところは、私が意見を申し上げて入れていただきました。ちょっと確認させていただきたいんですが、前回の会議の後に委員の皆さまとお話しさせていただくと、やはりこういった会議に出ると、どうしても先生方は自分の専門分野からお出にならないというところが問題ではないかという話を伺いました。そういった意味では、あまり専門分野に拘泥せずに、やっぱり先ほどの冒頭の議論じゃないのですけども、研究者でありながらもエンドユーザーであるというところから、専門領域を持ちながらも、エンドユーザーの立場でいろいろと意見を言うとか、そういったところが多分ポイントになってくるのかなと思いましたので、そういうことで付け加えさせていただいたのですが、そういう御理解でよろしいでしょうか。
 多分そこら辺の、皆様お悩みになっているところで、専門の先生方はそれ専門領域から出てこずに、議論が広がらないというところが課題なのかなと思いましたので、そこだけ確認させていただければと思います。
【石川主査】  二つほど課題があって、エンドユーザーからという問題もあるんですけど、まず自分の分野から出られないというのがある。出た先が、エンドユーザーの場合もあるし、違う分野もある。これはどっちでもいいんですけど、そちらの相手方というか、そちらの新しい分野からの視点を持てるかという2番目の問題。行ったんだけれど、そこへ入っちゃって、こちらへ戻ってこないというようなこともいろいろありますので、うまく書いてください。
 ほかにいかがですか。はい、どうぞ。
【江上委員】  ちょっと確認ですが、対話ツールと対話ワークショップの関係ですけれども、対話ツールというのは、イノベーション対話ワークショップをするためのツールなのか、あるいはワークショップを含むイノベーション対話全体を促進するためのツールとして開発されているのかが、私にはよくわからないので。ツールというのは、ワークショップの運営方法とか、議論のための様々な質問の仕方とか、そういうテクニカルなものがツールとして提供されるのかをどこかにわかりやすく書いておいていただけると、読んだ人がすっと理解できると思います。この文章ではツールの話をしていて、突然ワークショップの話題になりますので。
【石川主査】  まだ要するに開発していないわけで、これからで、これはここでの議論をもとに開発するので、ここでこうしてほしいといえばそうなるんですけれども、ただ腹案はあると思うんですが、腹案としては、これ、ツールの方が上位概念ですよね。違いますか。
【工藤室長】  対話型ワークショップの方がより広範な概念を持っていて、そのうち効率的というか効果的に行えるものというような手順があるはずなので、それはそういうものがあった方が、実際に主催する人たちにとっては非常に有益だろうという形で提示させていただいております。それは前段の方の3ポツまでのところに示させていただいています。
【石川主査】  そうだとしたら、私、ちょっと前から懸念していたんですけど、ワークショップというもののイメージが、我々、研究者にとっては狭いんですよ、実は。だからここで言っているワークショップって広いんだぞと1回言わないと駄目ですね。
【平川委員】  確かに。
【工藤室長】  その規模感がちょっとよくわからなくて、カンファレンスといったら、本当に大きいではないですか。イメージとしては。
【石川主査】  カンファレンス、ワークショップという考え方じゃなくて、カンファレンス、ワークショップだと狭くなっちゃうんですけど、ここで言うワークショップは、何人かが集まって議論しましょうというのをワークショップと言っていますよね。
【工藤室長】  そっちのもうちょっと広めの人数の規模みたいなのは、少し……。
【石川主査】  人数の規模じゃなくて、研究者は、ワークショップというと、論文を持っていって発表する場なんですよ。
【工藤室長】  ああ、そういう場ですね、なるほど。
【石川主査】  それで、ここはそうじゃないんです。
【工藤室長】  それは違いますね。
【石川主査】  要するに提案を持っていって、何かを発表する場というと、ちょっと狭いわけですよね。ここは提案を持っていかなくてもいいわけですよね。参加して、本当にワークするという話をすればいいので、研究者にワークショップと言ったときのイメージよりはずっと広いんですよ。
 その中のツールだから、ツールの方が狭いということですよね。
【工藤室長】  そこは、科学技術の対話って、ワークショップと言いますよね。
【平川委員】  いや、まだ科学技術の対話とかという世界でも、それ自体がまだ日本の大学の中で浸透していないと思うんですね。文科省としては2005年ぐらいからされているわけですけれども、それ自体がまだ日本の大学の中でそんなに浸透していないので、そういう意味では、やっぱりワークショップというと、石川先生がおっしゃったように、我々研究者から見ると、論文を持っていって発表して、それから議論を長めにすると。学会発表というのは、その発表した後で質疑応答5分ぐらいとかという形ですけども、議論のちょっと長めの研究発表会がワークショップだというイメージはありますね。
 だから実際、この手の我々がこの場で考えているような意味での「ワークショップをやりますので来てください」と言うと、発表の時間は何分でしょうか、何か配付資料は必要でしょうかというふうに質問される方とかが結構多いので。
【工藤室長】  そうですね。
【平川委員】  ええ。なので、最初にそのワークショップというのがどういうものかというイメージというのをちゃんと共有できるような形にしておかないと、大分狭いイメージでずっと読んでいると……。
【工藤室長】  そういう意味だと、やっぱり少し注釈が要るかもしれないですね。
【平川委員】  ええ。
【石川主査】  注釈が要るか、こういう場合は別なわけのわからん単語をつけておいて注釈するか。
【工藤室長】  それもありますね。技術的には。
【石川主査】  適切な言葉があれば、適切な言葉をつけるかという。
【平川委員】  大学を出ると、ワークショップというのは、まさにここに書いてあるようなイメージですよね。
【石川主査】  ええ、そうですよね。
【工藤室長】  社会ではそういうイメージを持っていると理解してます。
【平川委員】  大学はいかに社会から遊離しているかという。
【工藤室長】  少なくともサイエンスカフェとかあの手のものを見ると、これはワークショップ以外に何か呼び方が思いつかないので。
【平川委員】  サイエンスカフェも、日本では大体ただのお茶つき講演会ですので。
【工藤室長】  ああ、そうなんですか。
【平川委員】  ええ。あんまりワークショップでやっているところは少ないですね。いわゆるワークショップ。
【工藤室長】  ヨーロッパのワークショップとはやっぱり違うんですか。ああいう感じとは。
【平川委員】  ええ。
【工藤室長】  なるほど、私の認識が、そういう意味だと広過ぎるのかもしれないですね。
【石川主査】  ちょっとこれ、ワーディングですけど、重要なワーディングのような気がしてきました。皆さんのアイデアをちょっと後でメールか何かで頂きますので、多分、今の議論で、皆さんここで言うワークショップのイメージや定義はわかったと思うんですが、それを「ワークショップ」と表現してしまうと、多分、職員の方は大丈夫かもしれませんけど、研究者の方は、今、平川先生や私が申し上げたようなイメージでとらえる人が大部分だと思うので、そうならないように防御策を打っておかなきゃいけないので、いいワードがあればそっちに変えて、いいワードがなければ、ここで注釈をつけて、かなり違うんですよということを言う、どちらかの作戦でいこうと思いますが、よろしいでしょうか。
 じゃあ、是非ともいいワードがあったら、これはアイデア出しの問題ですので、よろしくお願いいたします。
 ほかはいかがでしょうか。よろしいですか。どうぞ。
【鳥谷委員】  細かい点なんですけれども、6ページの30行目の外部人材のところなんですが、「外部人材の見極めは慎重に行う必要がある」というところで、たしか石川先生の御発言で、外部人材を入れるタイミングも重要だという御発言があったと思いますので、それを入れ込んでいただければと思います。
【石川主査】  そうですね。重要な御指摘で、タイミングを間違えると、なかなか議論は進まなくなりますので。
 では、よろしいでしょうか。それでは、これで各論併記になりまして、あともし何かワーディングとか文章で変なことがありましたら、メールでお知らせいただければと思います。このようにまとめさせていただきまして、このまとめさせていただいたものが、ツール開発の基本的な仕様書としてはちょっと漠然とし過ぎているんですが、指針になります。それでいろんなツールができ上がってくるというふうに思っておりますので、よろしくお願いします。
 さて、次の議論に移りたいんですが、次の議論は、先ほど杉原委員が言い当ててしまった議論なんですけれども、3番にも書いてあるんですが、今後、必要とされる事項という考え方ではなくて、この報告書が全国に回って、あるいはツールができて、全国にこういったものの重要性と、それから手段の一部が提供されるという状態になったときに、それを効率的かつ積極的に使ってもらうためのインフラはどうしたらよいか。それが杉原委員からも御指摘があったように、現場でこれをどうやって使うのかということに、何かいいアイデアがあれば。
 それから、もしそれが文章化できて、使い方に対する指針ができるんならば、この5ポツに文章として入れていきたいと。今、5ポツに書いてあること自体は、あまり大したこと書いていなくて、3はちょっと前からあるように、いろいろなのを蓄積していきましょうと、ツールの中に蓄積していきましょうという話なので、これは重要だと思うんですが、それ以外に、現場でこれを使う際のインフラといいますか、どうすればこれが効果的になり、あるいはこれがというのが、その総論であるこういった対話の重要性と創造性のエンカレッジというのと、それからツールをどう、ツールが本当に使われるということもあるだろうし、ツールがきっかけとなって、違うことが起こっても、我々はハッピーなわけですが、きっかけにはなってほしいと思うんですが、それをうまくエンカレッジするような仕組みとは何か、あるいはその仕組みが本当にいいものであれば、ここへ文章として載せておきたいと思うんですが、何かアイデアはございますでしょうか。
 現場でどう使うかなとイメージしていただければ、鳥谷さんや阿部さんや杉原さんはよくわかると思うんですが、そんなに簡単な話ではなさそうな感じがしますけれども、いかがでしょうか。じゃあ、感想でも結構です。予想でも結構ですから。
【杉原委員】  研究者を含めて、対話に参加してもらって、恐らくその対話で出てきた結論はある程度、理解はできると思うんですが、実際に自身の研究に反映させるには、まだかなりの時間が正直かかると想定されます。
 そのため、今回の報告書では、対話するまでがある程度の区切りかもしれませんが、その後のフォローを、コーディネーターやURAがある程度、長期間にわたってカバーしていけるような仕組みが必要なのかなと考えます。
【石川主査】  そうですね。それは重要ですね。コーディネーター、URAの方々にこの仕組みの意味を理解していただいて、ちょっとどっちかに振れそうな気がするんですよね。これをやれば全部うまくいくんだよと思う人と、これはやってもしょうがないんだと思う人、答えはその間にあるんですけど、そこがちゃんと理解されていないと難しいかなと。それに関しては、少しきちんとした説明文書か何かをつけた方がいいかもしれないですね。どうも重要な御指摘、ありがとうございます。
 阿部さんはいかがですか。現場で使ったとして。
【阿部委員】  現場にはこのツールを使えそうなケースがいろいろあると思います。まずは、一番効果が上がりそうなケースへの使用をお勧めするのがいいと思います。いくつか協力大学で実際に使ってみて、こういうケースやシチュエーションで使った場合に満足度が高かったとか、次につながりそうな結果や関係者にとって何らかの成果が出たという事例をある程度集めて、そういうケースにまずは使ってくださいという勧め方をしてはどうかと思います。うまくいったとか、何か得られたという成功体験がないと、現場で継続して使用するのは難しいです。現場としては、結構、手間もかかるし、時間もかかるし、人集めも苦労しそうだし、実施後のフォローも大変だし、実施するのは大変そうだなという気がしています。
 だから成功体験をさせるために、どういうケースが成果が出やすいかを示して、まずはそこから始めてもらう。シチュエーションなら使ってみようかなという気にもなりやすいのではないかとも思います。
【石川主査】  そうですね。「そうですね」と言うのは簡単なんですけれど。「そうですね」だけでは何の力もない。
【久保主査代理】  ちょっと議論のあるところで、多分、反対意見の方があるかもしれないんですけど、私自身がプレゼンのときに言ったように、本文にも、16ページの一番後にも書いてあるんですが、「参加者に危機感があることも大事」と入れてあるんですが、私、個人的には、これはかなり大事で、危機感のない方が来たってどうなんだろうと思っていて、大学の先生でも、研究テーマで行き詰まっている方はたくさんいらっしゃって、融合テーマがすごい欲しい、新しい研究テーマを探しておられる。企業の方も、もう企業の中でのミーティングは何回もやっておられて、次のステップが是非欲しいという方がやっぱりいらっしゃって、そういう危機感のある方が集まってやれば、これは一つの手法なので、自分たちでやっぱり工夫して、その危機感をクリアできるようなものをつくってもらわないといけないというふうに思っています。
 ただ、この「危機感があることも大事」を「危機感があることが大事」に変えるというのは、ちょっと反対意見があるかもしれないので、結論から言うと、まあ、いいかと私はこれでいいと思っているんですけど、気持ち的には、やっぱり危機感を持ってやってもらわないと駄目だろうと思っています。
【石川主査】  私も同感なんですが、文章としては、「が」にするのは、各論併記の中ではいいかなと思うので、各論併記の中で「が」で書いちゃいましょうか。各論併記の中だと、ほぼニアリーイコールなので。
 これ、危機感というのをどうやってあおるかというのは、なかなか難しいところがあって、御担当の大学の中だけで成功体験があるという場合が非常に少ないと思うんですね。それを、じゃあ、他の大学での成功体験をどうやって持ってくるかということに関しては、こういったものが各大学に情報として伝わったときに、一緒に何かできるといい。
 それを文章にしてどうこうというと、ちょっと迫力がなかったりするので、例えばここのメンバーの先生方が大学へ行って、ちょっと成功体験を話す、あるいはこういうふうにやるとうまくいった、こういう大学があるんだという紹介をするというようなことが一緒についていった方がいいいかなという気はするんですが、どうですか、鳥谷さんとか阿部さんとか。
【鳥谷委員】  おっしゃるようなことができれば一番いいんですけれども、なかなかすべてについていくわけにもいかないですね。やっぱり現場で使うということを考えたときに、最初に、研究者を引っ張り出してくることがすごく大変だなと思うんです。しかもワークショップといっても、研究者にとっては何か得体の知れないものというような、そのあたりで最初から入り込んできてくれないだろうと。
 例えばですけれども、参加してくれる人に、こういったものですよというのが簡単にわかるような冊子みたいなものがあれば、少しでも多少違うだろうと。例えばストーリー仕立てになっていて、そこの中にこういった成功事例がありますよというようなことがわかりやすく書いてあるとか、そういったものでもあれば、少しはいいかなと思います。
【石川主査】  実は成功事例というのは、文科省の方で大分まとめていただいたのがあるんですが、私、あんまりそういうことを言っていいのかどうかわかりませんが、私が読んでも、成功事例に見えないんですよ。ただの自己満足、自慢にしか見えなくて、成功事例というのは、こういう施策をやったらば、こういうところに利益が出ました、メリットが出ましたというのを書けばいいんですけど、メリットが出ましたというふうに書くことを嫌う先生が多いんですよね。こういうことをやりました、あとは皆さん、判断してくださいと書かれちゃうんです。
 皆さん判断してくださいという成功事例は、伝わらないんですよね。結果として、ここでもうかりました、こういうことをして、ここで教育がうまくいきました、ここで結果として企業が喜んでくれましたと書かないと駄目なんですけど、そういう書き方をなさる先生がちょっとやっぱり研究者としては書きたがらないところなんですが、これが問題。
 そういう文章がちょっとでもあったり、あるいはもっと一般的に、産学連携がこれだけのことをやると、これだけの大学にメリットがあり、先生にもメリットがあると。やったことがあって、成功したことはみんなわかっているんですよね。先生にメリットがあるということは。それでやらない方は、食べず嫌いですから、全くわからない。その人たちを今、引き出そうとしている作業ですから、相当難しい作業をしているんですが、おっしゃるとおり、ちょっと一般的なパンフレットか何かで誘導するようなパンフレットをつくらないと、例えばここでいう1ポツ、2ポツをそのまま言ったところで、ああ、じゃあ、やってみようという先生は非常に少ないかもしれない。
 それで、ちょっとしたパンフレットがあって、あ、興味があるな、読んでみて、ああ、そうか、それならやってみようという、何か2段階、3段階の手立てを打たないと駄目かもしれないなという気がします。
 いい御指摘をありがとうございます。
 ほかに。はい、どうぞ。
【平川委員】  そういう意味では、2段階、3段階というところで考えると、具体的な大学の中での人の配置ということでいうと、まず執行部レベルの人たちを説得するロジックと、それからあと実際に参加する個々の研究者の人たちを巻き込むロジック、少なくとも2段階必要なのかなと。
 執行部の方だと、わりと政策的なコンテクストとか社会的な要請みたいなことで何とか持っていく話も多分もう少し通じやすいのかもしれないんですけども、そればっかりで、じゃあ、現場の研究者が動くかというと、またそれは違う話だと思うので、多分そういう少なくとも二つレイヤーを分けて、ロジックをつくっていくのが必要かなと。
【石川主査】  ほかに御意見ありますか。これ、せっかくつくるものですので、うまく効率的に情報を伝えたいというところなんですが。
 どうぞ。
【江上委員】  杉原委員のワークショップをした後どうするかというお話なんですが、このワークショップを連続的に行ってもらいたいという期待感からいえば、それが3回なり4回なり継続することを前提として実施していただきたい。ホップ・ステップ・ジャンプなり起承転結なり、1回目のワークショップの成果を2回目のワークショップのテーマづくりにどう効果的に取り入れるかを、是非ファシリテーターなり、サービス部門の方に知恵を絞っていただいて、2回目、3回目を進化させて行うと良いと思われます。
 それで複数回の対話の成果というものを、まとめて、研究成果にする、あるいは社会提言する、そういった成果物を生み出すことを、このCOIプログラムの中に取り込むような仕掛けをしていただけると良いと思います。最初はどこまで効果的な対話ができるかと思っていたメンバーも、ゴールに向かって先ほど言われた危機感、使命感を持った参加者として、ワークショップを継続して開催できれば、最終的に良い成果を生み出すことにつながるのではないかと思います。
【石川主査】  それに関しては、5ポツの2にあるんですが、試行版に沿いながら、幾つかの開発協力大学でワークショップを継続的にやる最初のイニシャルのエンカレッジメントはやるということなんですね。継続されるかどうかは、イニシャルの後が勝負ということになるかと。
【杉原委員】  いいですか。
【石川主査】  どうぞ。
【杉原委員】  そのワークショップの結果をURAやコーディネーターが理解して、研究者や企業とともに、二人三脚で研究開発を進めていくことに関しては、恐らく単年度というスパンでは到底、答えは出そうにないですね。数年度、かなり長期間見ての検証が必要だと思いますので、是非そのCOIの中でも構いませんので、そういった長期間の検証ができるような仕組みをつくっていただければと思います。
【石川主査】  COIの中だけではなくて、ほかでもいいんですけれども。
 ほかにございますでしょうか。
 そうしましたらば、この報告書の中、あるいはそれの報告書の使い方の部分、あるいはツールの使い方の部分の議論はこの辺でよろしいでしょうか。あと報告書は、今の御意見をもとに直したものを、もう一度この委員会は開く必要がないと思いますので、メール等で議論させていただければと思います。それでよろしいでしょうか。
 どうもありがとうございます。じゃあ、そういうふうにまとめさせていただきます。
 残り、ちょっと20分ぐらいの時間を使って、この案件に限らず、せっかくの機会ですので、この案件に限らず、広く今までの産学連携でやってきたことをどう評価しているか、あるいはこの先どういうことをやるといいかということの御意見をいただければなと思います。
 この作業は、今までの産学連携の活動をもう一段階上げるための、ジャンプアップするための対話と創造というところに焦点を当てたものなんですが、ほかにもまだまだ産学連携で強化すべき点があると思いますので、現場サイド、あるいは企業の方からも何か御意見を頂けると有り難いと思います。いかがでしょうか。
 じゃあ、ちょっときっかけをつくるためだけに発言しますけど、大学、この10年間、本当によく頑張って、いろんなことをトライしてきて、うまくいったもの、うまくいかなかったものがあるんですが、もう一つ変わらなきゃいけないのが、企業の考え方が少し変わってほしいなという。お2人を責めるつもりは全くないんですけれども、まだまだ大学が変わったということすらも知らない企業もありますので、大学が変わるということが日本の国益、あるいは国力を増すことにどれだけの寄与があって、それを企業がどうやって持っていくかというのは、実はそこにメリットがあるんだと。
 簿外資産としての大学を考えてほしいというのは大分申し上げているんですけれども、自社内だけでどうしてもやりたいという企業が多いと、大学の資産を持っていくということのメリットが感じられていない企業が多いので、そこを感じていただきたいなと思っているんですが、こうやって古谷さんに振ると、怒られるかな。どうでしょうね。
【古谷委員】  今おっしゃったように、恐らく企業側の産学連携に対する意識というのは、やはりまだ研究のアウトソーシングという見方がどうしても根強いかなと思うんですね。自分たちではなかなか届かない大きな研究であったり、非常に優れた研究を、力をかしていただくという、そういう態度がまだ多いし、それはそれで非常に有効に機能している産学連携だと思います。
 ただ一方で、今日、この場で議論されてきたような、一緒に課題に向かって取り組むというようなやり方については、まだ企業側にもちょっと準備が足りないのかなという気もしますので、そこは、このやり方を大学側にどう広めていくかというのと同時に、企業側に対して何らかの働きかけをしていただいて、一緒に動かしていくというような、そういうことが必要なのかなと感じております。
【石川主査】  そういうことを企業の方から言っていただくと、非常に心強いので、もうちょっと図に乗ってしゃべりますと、日本の企業が大学の見方が狭過ぎるんですよね。それで、欧米ですと、面白いアイデアが大学から来ると、そのアイデアを、じゃあ、うちでつくりましょうという話になるわけですよね。
 それで、どうも日本は違って、ここにすごいニーズがあるから、これの一部をつくってくれ、研究してくれ、あるいは下手なところですと、ネガティブ研究といって、Aは自分のところでやって、一番それが確率が高いんですけど、BとCは危ないかもしれないけれども、自分のところでやるとコストがかかるので、BとCは大学にやってもらって、駄目だったら駄目でいいやというような、そういう産学連携になっちゃうんですね。
 それはそれで価値があるので、それが悪いというわけじゃないんですけど、それ以外のところに、新しい分野を生み出すためのアイデアの宝庫として、知的生産の拠点としての大学を考えてほしい。
 例えばGoogleにしろFacebookにしろ、大学という自由な雰囲気の中で発想したものが企業を強めている。あるいはそのほかにもあるM&Aされた企業も幾つかあるんですが、大学という自由の中で発想されたもので、企業化なり実用化なりが進んでいる。この構造をなぜ日本でできないかという話であって、やっぱり大学も努力しているし、企業側も、いい発想、いいアイデアに対して、もう少し積極的に取り上げてもらいたいなという気はするんですね。
 ほかに。
【久保主査代理】  すみません、日々現場に出て、悩んでいるんですけれども、この対話促進ツールといったときに、イメージ的には、大学といろんな大企業とかいうのがとりあえずは第一のターゲットとしてあるんですけれども、もう一つ大事なのが、ベンチャー創出ということで、新産業をどんどん興していきましょうという点です。
 今の日本の状況というのが、ベンチャー創出はそれなりに力を入れているんですけれども、クローズというか、線が別のものだという考え方を、我々もしがちなんですよね。だけど、そこの対話もして、もっと大企業もベンチャーも大学もみんなミキシングするような対話ツールで、これもその中に入っているんだよという見方ももちろんできるんだけれども、そこのところをもっと垣根を、そういう障害をなくして、お互いフリーにディスカッションできるような対話、ツールというか、それもこれなのか、これの次のステップなのかわからないんですけれども、そこを是非やりたいなという感じはしています。
【石川主査】  主査があまりしゃべっちゃいけないかもしれないんですけど、私もその方向性は大賛成で、そのキーは、実は私はM&Aにあるんじゃないかと思うんですね。M&Aというのが日本の大学の先生からすると、許されないんですよ。マインドの中で。それをそうではなくて、堂々とやればいいじゃないかと。企業側は、M&Aが一番、新技術に対する評価をした上で、技術に取り組むのにやりやすいはずなんですね。
 でも大学の先生は、何か自分で興した会社は自分で最後までやらなきゃいけないという使命感があるんですけど、アメリカなんかですと、今、M&Aも有効な手段だという認識のもとに、ある程度までアイデアを出したら、そこから先はもうやってくださいという手離れがいいというのも重要じゃないかと思うんですが、なかなか日本の先生、私も含めてですが、私がつくったものはやっぱり大事にしたいなという気持ちはあるんですけど、そこは英断で、もう手離れよくやっちゃった方がいいのかもしれないですね。
 あともう一つ、ベンチャーの問題では、ファイナンスの問題があって、ファイナンスの問題は、構造から徹底的に直さないと、日本のこのファイナンスの状況の中ではなかなか起こりにくいというのは当然の理であって、現場でもそうだと思うんですが、そこを変え得るかという問題ですね。
 特に、まだ都会はいいんですけど、地方の方は、ファイナンスの問題になると非常に厳しい状態があるので、そこを何かうまく誘導していかないと。たまたま文科省にはSTARTという別なのがあって、あれは私は画期的な施策だと思うので、ああいうのを足がかりにして、次のステップへ進めばいいかなと。
 ほかに何かございますかね。どうぞ。
【阿部委員】  これまでの産学連携に携わってきた人間ということで一つ。私が最初に赴任した大学には人文社会系・経営系の学部がありませんでした。ベンチャーだとか事業化のビジネスモデルなどの相談があったときに、企業経営の理論とか市場調査の手法とか相談ができる人が学内にいないのです。きっと、経営学部とか経済学部がある大学であれば、こういうときには、経営学とか経済学が専門の先生からいろいろと教えてもらえるんだろうなと思っていたのです。
 その後、経営学部とか経済学部、MBAがある大学に勤務したのですが、そんな協力体制は全くないんですね。現在の勤務先も経営学、経済学、MBAまである大学に勤務しているのですが、やはり関与が少ない気がします。ベンチャーを起こそうとしてやっているときに、内部ではなく外部の専門家を呼んできて事業化モデルとか検討をしています。
 アメリカの大学の産学連携を勉強しに訪問した際に、研究開発プロジェクトがアウトプットに近づいてくると、学内のMBAコースの学生がカリキュラムの一環としてプロジェクトに入ってきて、事業計画とかビジネスプランを作成するなど、事業化の手伝いをする。若しくは、経営系とか経済系の博士号をもつ教員がプロジェクトに入っているなど見て、日本では何故これができないのかなと思いました。
 大学の教授に企業経営が分かるのか?という議論はあると思いますが、同じ大学内にある経営系や経済系の先生が持っている知見だとか理論がもう少し産学連携活動の中で活かせないかと思います。大学にそういう分野の教員がいない大学は、経営系・経済家の大学もたくさんあるので、うまく産学連携活動を進めることができるのではないかと思います。
 現在所属している大学でいわゆる文系教員を巻き込んだ全学的な連携ができる仕組みを考えていきたいと思っていますが、文科省から何か施策を打ち出していただけると、大学内で文系教員を巻き込みやすいのですが。
【工藤室長】  それがこれなんですよね。
【阿部委員】  なるほど、これがその施策なのですね。
【工藤室長】  そのために、まさに。
【石川主査】  ここはいろいろ疑問があって、これを始めるときに、私が100点満点のものは無理ですよと申し上げたのは、我々として努力はするんですけれども、これ、日本の社会の中で、さっき申し上げたようなファイナンスだとかM&Aに対する認識が低いとかという話があると、これはベンチャーだけの話ではなくて、既存企業の中でも、投資の問題が関わってきますので、それの利益構造を見たときに、なかなか難しいという話。
 MBAの卒業生がアメリカでは活躍するんだけど、アメリカのMBAをとった人が日本に来て活躍できるかというと、そんなことはなくて、ベンチャーの表舞台で活躍していないわけですよ。これは、実は人物の能力の問題もあるかもしれないですが、社会構造の問題があって、特に経済的なファイナンスの構造は、非常に日本は新産業を生み出すことに対しては構造が悪くできているので、そこを変えなきゃいけないという話を、どうしても必要で、それがない限り、100点満点のこの答えは出ないというのは、最初に冒頭に私が申し上げて。
 ただし、ここでの努力は100点満点ではないけれども、かなりいい点数をとるものをつくってきたというふうに自負していますので、これで意識改革があればなというふうなことは思っています。
【工藤室長】  つけ加えると、企業の中にも、やはりある種の縦割り主義的なものが見られていて、まさにこの研究開発部隊と営業は別、企画も別と、こういう形でやっていると、なかなか出てきたものを商品化するまでにものすごく時間がかかるか、若しくは途中段階でどんどん消えていくんですね。
 あと技術的にはすごくすぐれたものがよく出てくるんですけれども、これもまた、じゃあ、これがどういうアプリケーションによってサービスと一緒に提供されるのか見えない。こういった構造を解体していくためには、解体していくというのかミキシングを強くするためには、大学にもいろんなリソースがあることを気づいていただいて、こういった取組に参加することを一つの口実にしていただいて、来ていただき、そこで日本の新しい結びつきというものをつくっていきたいと考えて、皆さんに話しかけたつもりです。
【久保主査代理】  それは5には入りませんかね。
【工藤室長】  いや、5に書いているつもりです。思想的には。
【石川主査】  どうぞ。
【古谷委員】  今の工藤さんのお話聞いて、実は一つ私、この中で非常に大事だなと思いながら、どうだろうなと思っていたのが、2ページ目の上から6行目ぐらいですかね、「知的活動主体が利害を超えて集い」という部分が多分、非常にこの活動自体の根っこにあるなと思いながら、なかなか難しいなと思っておったんですが、先ほど石川先生からもお話ありましたように、例えば企業の中で、ある非常にうまい仕組みがもう既にでき上がっているがゆえに、何かをやろうとすると、その利害の範囲におさまらなくなるんですね。
 ですから一旦、何か新しいことを始めよう、新しい仕組みでやろうと思うと、その利害を一回捨てないと、次に行けないんですけど、なかなかそれが、場合によっては大学側も含めて、ちょっとやりにくい状況になっていると。
 ですから、そこのやり方が、一つは非常に精神論的に、例えば社会のためという目的に対して、1回利害を捨てて、それぞれ考えるとか、あるいは遠くは必ず自分の利に戻ってくるという遠大なビジネスモデルを描きながら、ちゃんとそこからまず始めるというやり方なのか、いろいろやり方はあると思うんですけれども、その1回枠組みを超えるためには、ちょっと目先の損得を1回超えた活動がここではきっと必要になるんだろうなという、そのように感じております。
【石川主査】  そうですね。私も同感で、それを私の言葉で言うと、マクロなレベルでのリスクマネジメント。ミクロなレベルはどうでもよくて、全体で見たときのリスクマネジメントの問題があって、新しい分野を開拓できなかったリスクと、開拓して失敗するリスクと、これのどっちをとるか、あるいは両方をポートフォリオと見るかという、そういうことの視点がちょっと足りないですよね。現場の目先の財務諸表だけを見ちゃうというところがありますね。
 ほかはいかがですか。どうぞ。
【江上委員】  企業の既存の商流がかなり確立していて、しかもローカルな市場の大きい分野での革新的な製品や技術の開発の場合ですと、やはり企業は、その確立したインフラにどう物を乗せるかというところから踏み出すのがなかなか難しいわけで、既存の商流に向けて、大学にこれをつくってと持ちかける、そういうコミュニケーションが多かったかと思います。
 ただ、現在は、先端医療なんか特にそうですけれども、既存の例えば医薬品の商流と全く違った新しいビジネスモデルをつくる必要があるしかもそれは最初からグローバルモデルなんです。そうなると、企業が複数、メディカルセンターや中核大学の周りに集結して新しい、まさにイノベーションの対話を行うということが必須の状態になります。逆に言えば、既存の商流がついている分野でも、今の商流を超えた新しい事業モデルづくりを、テーマ設定に、あえて取り入れて議論するような仕掛けがあると、企業が目先の利益を超えて、より積極的なコメントができるということはあるのではないかと思います。
 産業のタイプによって、少しそのテーマ設定の工夫をして、対話を活性化することがあればと思っています。
【石川主査】  はい、どうぞ。
【平川委員】  2点ありまして、一つは、先ほどの人文社会系のお話なんかに関連するところで、全部もう一回これを読み直してみると、もうちょっと、いや、もうちょっとじゃないですね、もっと人文社会系へのアピールというかラブコールを入れた方がいいのかなと。皆さんもまさに主役なんですよという形で、是非入れてほしい。もっと強力にアピールしてほしいなという感じがします。
 これは本当に人文社会系が入ってこないと、ピースとしてうまくはまり込まなくて、この新しい仕組みというのは動かないと思いますので、更に言うと、伝統的に人文社会系では結構、産学連携に対する忌避感と言えるような警戒感が結構、強かったりもしますので、そうじゃなくて、そういう従来の問題点というのを克服するためにも、皆さんの役割が必要なんですよということを是非アピールしていただけたらなと思います。
 あともう一つは、もう少し広く全般的に、どの分野に関しても言えるんですけども、参加のインセンティブをどうつくるか。その研究者としては、特に評価、その研究者がこういう多様な活動に参加するということが、従来だと、例えば論文にどうつながるかという観点で見られると、なかなか多分つながらない話ですので、その参加をする、そこで新しいイノベーションに向けての何か種が、いろんな産学連携であったり研究者同士の新しい共同研究でも何でもいいですけれども、何か動き出すということ自体が評価になってくる。
 場合によっては、その参加すること自体も毎年、それぞれの大学で今でいうと、教員はいろいろと1年間どんな活動をしたかということで評価のものを書いていると思うんですけれども、その中に、こういうワークショップに参加した、どういう役割を果たしたということも書き込んで、その業績評価の一環にしていくということも、各大学で必要なのかなと。そのあたり、是非文科省としても、高等教育局なんかに押し込んで、入れてほしいなと思います。
【石川主査】  どうもありがとうございます。
 そろそろ時間になりましたので、今後の予定、あるいは今後の方針について、工藤さんの方から御説明いただこうと思います。
【工藤室長】  それでは、8ページの5ポツにもございますけれども、ここで今後、文部科学省といたしましては、各大学が自主的に主催、用意に主催できるようなツールの作成というフェーズに移っております。その際に、今後ツールの試行版を作成いたしまして、その試行版に沿った形で、ある専門的知見を持つ方々がファシリテーターとして、各大学に、これらは協力大学という形で幾つか公募させていただこうと思いますが、こちらの方に出向きまして、実際にワークショップをやっていただく。
 さらに、そのワークショップについて検証して、どれだけの効能があるのかと、その辺の部分についても今後、検証していきます。
 この作業部会の役割なんですけれども、もし皆様、お時間等ございまして可能であればですけれども、この2の各協力大学におけるワークショップに参加していただけることがあれば、その際、御案内を差し上げたいと思います。
 更に最後の協力大学での施行結果につきましても、その開発がある程度まとまった段階で、作業部会の方、もう一度か二度になるかと思うんですけれども、開催させていただきまして、御報告させていただければと思います。
 私からは以上です。
【石川主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、4回にわたる作業部会もそろそろ終わりに近づいてまいりました。この作業部会自体が旧態依然としたやり方ではいけないという冒頭での強いお達しもありますし、私としても、この中から何かが生まれなきゃいけないということで、大分いつもとは違う運営をしてまいりまして、それに参加いただいたことを心より感謝申し上げます。
 傍聴の方も、こんなものを傍聴したのはあんまり機会がないかと思うんですが、ちょっと自分たちの論理の中だけで議論し過ぎたかなということで、傍聴の方には御理解いただきにくかった面もあるかと思いますが、許し願えればと思います。
 こういった議論が手本となって、新しい分野が起こり、創造性豊かな日本の産業が生まれてくることを期待しまして、この作業部会としてはこれで修了させていただきたいと思います。あとは、ちょっと後でのメールでの作業があると。
 事務局がどうお考えになるかをちょっとお聞きしたいので、土屋局長、せっかくおいでいただいているので、一言いただければ有り難いんですが。
【土屋局長】  科学技術・学術政策局長の土屋でございます。担当局長ですが、まず石川先生はじめ、各先生方、4回にわたって、お忙しい中、御参加いただき、また熱心な議論をしていただきましてありがとうございました。
 私自身、工藤室長から1回目から出るようにと言われていたんですが、最後になってやっとぎりぎり出させていただいたんですが、先生方おっしゃっておられることは極めて重要なポイントだと思います。私自身も、革新的イノベーションの創出のためのいろんな予算だとか仕組みとかをつくるので、去年の夏ぐらいから相当インテンシブにこの問題に取り組んでおりますが、今日も訂正が来たから先生方からの御意見はよくわかるんですけども、ここで議論していることが頭に響かない人たちが結構いるんですよね。世の中、そういう状態にいて、それは企業の中でもかたい人とやわらかい人、大学の中ももちろんそうですし、役所の中もそうなんですが、ここをうまく変えていかないと、なかなかイノベーティブなことが起きないのではないかということで、国民運動的なことをしないと、日本は変わらないんじゃないかとは思うところですが、ちょっと問題発言かもしれませんが。
 もう一つは、やっぱり成功事例を示すということが大事で、こういう議論をしながら、革新的な成果を上げ、日本が株価も半年前に比べると50%アップということで、非常に調子が出てきたところですが、これが更に加速するように取り組んでいきたいと思います。
 今回はとりあえずこの報告書の取りまとめという一区切りではありますが、このイノベーションについての取組はこれから更に強化・充実しないといけないと思っておりまして、先生方にはまたいろんなところで御指導いただきたいと思っております。今後ともまた引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
 以上をもちまして、感謝の御挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。
【石川主査】  どうもありがとうございます。御期待に応え切れた報告書になるか、あるいは議論になっているかはちょっと不安なところもあるんですが、同じ思いを持っている人間が集まっている、その日本の独創的な研究を生み出す力というのが今、弱いということをこのメンバーは少し感じているところであって、じゃあ、それをどうするかということは非常に難しいことを、どこか一角でもいいから取り崩して、これから進んでいこうというふうな努力の一つになればと思います。どうもありがとうございます。
 それでは、これをもちまして、4回の作業部会を全部終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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