【資料6】地域科学技術施策推進委員会第1回議事録

科学技術・学術審議会 産学連携・地域支援部会

地域科学技術施策推進委員会(第1回)

平成24年2月24日

 

○主査代理の選任について

 有信主査の指名により、委員了承のもと近藤主査代理が選任された。

○地域科学技術施策推進委員会運営規則について

資料2に基づき事務局より説明後、原案の通り了承、決定された。

○オブザーバーの出席について

 有信主査からの諮問により、本委員会に経済産業省、農林水産省がオブザーバーとして今後参加することについて、委員から了承された。

 

【有信主査】  ここから公開ということなので、改めてここでまた会議を公開という観点で開始させていただきたいと思います。

 会議に先立ちまして、主査として一言あいさつをさせていただきます。

 地域科学技術施策推進委員会ということで、今後、主として地域のイノベーション戦略支援プログラムあるいは地域のイノベーションクラスタープログラム等々についての評価あるいは推進にかかわるとともに、今後の地域の科学技術施策をどう推進していくかについての議論をこの委員会で進めていくことになると思います。

 ご承知のように、これからますます日本の若年人口が減少していくということは、これまでいわゆる団塊の世代、あるいは団塊二世の世代が実際に生産し続けてきたその価値を今後は人口の減った若年世代、生産労働人口が減るにもかかわらず、1人当たりの価値の生産高が変わらないとすれば、日本の生産高は当然減る。したがって、日本のGDPはどんどん減ってしまう。日本のGDPが減れば、結局、日本の生活を支えているインフラ等々に対する投資もままならない。日本の生活の基盤がどんどん劣化してしまうという、こういう危機的な状況にあるわけですね。そういうことを克服するためには、やはりそれぞれの個人個人が生産する価値を増やしていかなければいけないというときに、何といっても数少ない若い人たちがみずから新しい事業を切り開いていくような素地をつくるというのは非常に重要だと思います。

 それから、グローバル化は何も東京を通じて世界に開いているわけではなくて、各地域がいわば日本という枠を超えて世界の中の各地域という状況になっているわけでありますから、地域が直接世界につながっているという観点でやはり物事は今後進んでいくんだろうと思います。そういう観点で、ぜひ各地域が活性化、陳腐な言葉ですが、活性化して、その地域の産業が新たな形で展開をしていかない限り、日本の将来は非常に厳しいと、こういう認識でぜひ議論を進めていきたいと思います。

 もう私たちはほとんど断崖絶壁のところまで追い詰められてしまっていると、こういう認識をぜひ新たにしながら進めていきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 一応あいさつはこれまででよろしくお願いします。

 それでは、最初に事務局から平成24年度の科学技術関係予算についての説明をお願いします。

【竹下専門職】  資料4に基づきましてご説明させていただきます。時間の関係から少し省略しつつご説明させていただければと考えております。資料4の下、スライドの下のページでお願いいたします。

 まず地域科学技術振興につきましては、政府においても新成長戦略及び第4期科学技術基本計画においても、それに関する記載等が記述されております。特に第4期科学技術基本計画におきましては、科学技術イノベーションの推進に向けたシステム改革ということで、グリーンイノベーション、ライフイノベーションとともに大きな話として位置づけられておりまして、その中で特に地域イノベーションシステムの構築大きな要素として掲げられているところでございます。

 下にございますように、推進方策といたしましては、国は、地方公共団体や大学、公的研究機関、産業界が連携、協力して、地域が主体的に策定する構想のうち優れたものについて、研究段階から事業化に至るまで連続的な展開ができるよう、関係府省の施策を総動員して支援するシステムを構築するということなどが掲げられているところでございます。

 次のページをお願いいたします。そういった科学技術関係の予算の現状といたしまして、今年度、平成24年度予算額1兆791億円という形で予算がついているところでございます。その中で実際、産学連携・地域科学技術振興に関する施策の全体像といたしまして、その下にある図のとおりとなってございます。こちらは色分けしてございますが、いわゆる文部科学省が中心となって行っているものが黄色、JSTが行っているものが青色で着色しているものとなっております。こうしたJST、文部科学省で連携しながら産学連携・地域科学技術振興について取組んでいるところでございます。当然これに合わせて各関係府省庁における取組等を総動員しながら施策に取組んでいるところでございます。

 特に地域科学技術振興に関係が深い部分ということで、この中の一番上にございますイノベーションシステムの整備の部分についてのみ簡単にご説明させていただければと考えております。

 次のページをお願いいたします。イノベーションシステム整備事業につきましては、全体では平成24年度の予算額は187億円となってございます。こちらのシステム整備事業につきましては、以下にございます3つのプログラムで構成されておるところでございます。

 1つ目が地域イノベーション戦略支援プログラム(93億円)。こちらはまさに先ほどからご議論いただいている事業等の予算となります。

 2つ目が大学等産学官連携自立化促進プログラム(20億円)。こちらは大学等における国際的な産学連携活動を支援するために、いわゆる産学連携コーディネーターの配置など、その大学が自立して実施できる環境等の整備を行うための事業となってございます。

 3つ目が先端融合領域イノベーション創出拠点形成プログラム(74億円)。こちらは産と学が連携することによりまして、企業とのマッチング方式で次世代を担う研究者・技術者の育成を図りつつ、研究開発を行う拠点を形成することを支援する事業となってございます。

 以上、大きく分けますと3つの事業に基づきまして、このイノベーションシステム整備事業というものは構成されてございます。

 それぞれの事業につきまして細かく後ろに添付されているポンチ絵等ございますが、一部この後の議題でも重複する部分ございますので、省略させていただきます。

 以上です。

【有信主査】  何かご質問ありますでしょうか。この予算の内容がよくわからないとかいうことがあればどうぞ。 特にこれでいろいろ質問をしても始まらないところもありますので、次に進みたいと思います。

 それでは、次の議題、今後の審議について具体的な内容の提案を事務局からお願いします。

【竹下専門職】  続きまして、まず資料5-1、科学技術振興に関する施策の変遷等についてという資料に基づきまして、まずこれまでの大きな施策についてご説明させていただきました後、今回、議題として挙げております今後の審議事項につきまして諮らせていただければと考えております。

 まず資料5-1をごらんください。先ほど多少触れた部分はございますが、これまで地域科学技術振興に関する施策につきましては、第2期科学技術基本計画の地域における知的クラスターの形成というものに基づきまして、平成14年度から文部科学省におきまして、知的クラスター創成事業、また、先ほど評価にもございましたが、都市エリア産学官連携促進事業、こういった事業が行われ始めたところでございます。その後、第3期、第4期と先ほど簡単には触れさせていただきましたが、こういったクラスター政策の重要性が引き続き位置づけられるとともに、第4期におきましては、地域イノベーションシステムの構築という、イノベーションを行うためのシステムをいかに構築していくかということを主眼とした計画が立てられておりまして、それに合わせて、この後ご説明させていただきますが、平成21年度の事業仕分け等も踏まえつつ、平成22年度には地域イノベーションクラスタープログラムという2つの事業をまとめた事業ができるとともに、平成23年度からは新しい事業といたしまして、地域イノベーション戦略支援プログラムという、今まさに取組んでおります事業が開始されているところでございます。旧継続事業につきましては、基本的にはこちらの事業に統合するような形で今、支援が行われています。

 下のページをお願いいたします。平成21年度行政刷新会議における事業仕分けの結果につきまして、説明させていただく資料になります。こちらにございますとおり、事業の対象といたしましては、いわゆる知的クラスター創成事業、都市エリア事業、こういった地域関係の施策について、事業仕分けの対象として評価を受けたところでございます。細かいコメント等につきましては、下の部分にございますが、次に簡単に説明がありますので、飛ばさせていただければと思います。

 次のページをよろしくお願いいたします。一番上にございますとおり、評価者のコメントを簡単にまとめましたのがこちらになります。

 まず地域科学技術振興、そのこと自体についてまず事業仕分けにおいては必要性を認めていないわけではないが、まず国としてやる必要がないのではないか、また、さまざまな事業が実施されている中で、全体のそういった事業というものを整理すべきである。その上で事業を統合して予算を考えるべきであるということが指摘されております。またこれも同じ内容ではございますが、事業が未整理の現状では、一旦すべてを廃止してから、見直した上で再構築したほうがいいということで、評価結果といたしましては、基本的には先ほど前のページにございましたとおり、廃止ということで事業評価の結果を受けておるところでございます。

 そういった評価の結果を踏まえまして、こちらの下にございます、内局の4事業の一本化、JST事業の再構築ということで、事業を整理統合して今の現在の事業のイノベーションシステム整備事業という事業の一本化が図られたところでございます。事業仕分けの結果を踏まえて、これまで継続していた事業につきましては、段階的に平成25年度末までに終了していくということで整理をしてございます。

 これまで取組まれました知的クラスター創成事業の成果につきまして簡単にご説明させていただきます。こちらは下のページになりますが、これまでの取組の成果につきましては、特許出願数2,779件、海外であれば537件、そのほか当然こういったクラスターに関して参加関係機関や人数、さまざまな関係主体の方々がかかわっていたということで、914機関、2,976人というかなりの大規模な人数の関係構築ができていると考えております。

 また、大学におきましても、当然研究が進んでおりますのでそういったことに基づきまして、論文数、国内であれば3,200、海外であれば7,200、また、本事業の成果によると思われる関連収入は約458億円というような成果を整理しているところでございます。主な成果事例につきましては省略させていただければと思います。

 次のページをお願いいたします。同時に知的クラスター事業と同時並行しておりました都市エリア産学官連携促進事業の成果につきましてまとめたものでございます。こちらにつきましても、成果、特許出願数、参加機関、また関連収入、論文数については、下記のとおりとなってございます。基本的には大体同じ期間、14年から22年ということで評価しておりますが、先ほど申し上げましたとおり、都市エリアというのは、いわゆるある程度限られた、小規模であるが強みのある地域ということで取組んでおりますので、いわゆる知的クラスターと比べますと、その成果の規模は多少違いは出ていることはあるかと考えております。

 下のページをお願いいたします。クラスター事業による国が果たした役割について整理しております。

 実態といたしまして、まず地域の自治体の科学技術関係予算は、データとしては平成21年のものを引用しておりますが、減少しております。最近であれば少しだけこの減少率がとどまりまして、少し伸びている傾向はございますが、全体の傾向といたしましては、やはり自治体における科学技術の関係経費というものは減少しているという状況でございます。

 こうした中で、知的クラスター創成事業、都市エリア事業を通じまして、以下、ピンク色で塗られている1、2、3の成果、役割が果たせたと考えているところでございます。

 1つ目が地域の産学官の連携基盤の構築・強化でございます。先ほどございましたとおり、参画機関、人、コーディネーター等、さまざまな取組を通じまして、その地域におけるいわゆる基盤の構築・強化に貢献できたと考えておるところでございます。

 2つ目、科学技術を活用した地域活性化でございます。各地域におきましては、科学技術を利用して、産業創出や雇用創出の中核に位置づけて取組を行っていただくことにおいて、また、そういったコンセンサスを各地域、各団体が持つことにおきまして、将来的な地域活性化の実現に向けて地域全体が取組んでいったということが成果として考えております。

 また、3つ目、我が国全体の科学技術の高度化・多様化でございます。こちらにつきましては、そもそもこういった地域科学技術振興を行う目的というのは当然、各地域におきましてそれぞれの地域が強みを生かして取組む中で、成果が最終的には国全体としてみれば、そういった科学技術の高度化、多様化につながっているというふうに文部科学省としては考えているところでございます。

 次のページをお願いいたします。こちらは簡単にではございますが、今現在取組んでおる地域イノベーション戦略支援プログラムでございます。今後の議論の関係で、おそらく重要となってくると思いましたので、その施策についてその内容を簡単に説明させていただければと考えております。

 本事業につきましては、地域イノベーション創出に向けた地域主導のすぐれた構想を効果的に支援するため、大学等の研究段階から事業化に至るまで連続的な展開ができるよう、関係府省の施策と連携して支援するシステムを構築しているというものになります。

 具体的なイメージといたしましては、図の真ん中にございますように、産学官金、自治体、企業、大学等研究機関、金融機関が連携いたしまして、まずイノベーション推進協議会を設けていただきまして、その地域における地域構想をつくっていただきます。それに対して文部科学省、経済産業省、農林水産省が共同でその地域構想を選定いたしまして、いわゆるお墨つきのようなものを与えまして、地域として選定を行います。その後、各地域が文部科学省、経済産業省、農林水産省がそれぞれ用意する支援メニューに対してご要望、ご提案いただくという事業を行ってございます。自治体、こういった各地域におきましては2段階のステップを踏むような形で、その支援を受けるというシステムとなっております。

 少し文字が小さいのですが、こちらのポンチ絵にございますように、来年度、平成24年度につきましては、地域の新規採択といたしまして、2億×8地域程度の採択を予定するとともに、震災復興に基づきまして、5億×3地域程度の採択を予定している事業となってございます。

 次のページの地域イノベーション戦略地域選定の流れのページをお願いいたします。こちらは大まかな地域の選定の仕方について説明させていただいているものになります。先ほど申し上げましたとおり、各地域におきましてイノベーション推進協議会を設置いただきまして、それとあわせて、当然そういったシーズが国際的に通じるものなのか、優位性を確保できるものなのかというものを確認いただくために、国際技術動向調査ユニットというものを、設けていただくことを要件としております。その上で、先ほど申し上げましたとおり、各地域において戦略を立てていただきます。こちらは新成長戦略にもございますように長期的な視点、2020年を目標とした地域イノベーションの全体構想を立てていただくこととしております。それとあわせまして、さらに事業実施後、3年後、5年後における到達目標というものを具体的な目標として立てていただいているところでございます。

 先ほどさまざまな議論ございましたが、この本事業におきましては例えばこういったもの、特許出願数、事業化数、ベンチャー創出数、企業集積数、経済効果、雇用創出効果と、具体的な効果について達成目標を設けていただきながら取組んでいただいているところでございます。こういった戦略に基づきまして、文部科学省、農林水産省、経済産業省で設置いたします外部有識者委員会におきまして、その地域を選定いたします。地域の選定に当たりましては、その地域の戦略の大きさ、規模、状況から判断いたしまして、それぞれ国際協力強化地域、研究機能・産業集積高度化地域という2つの地域に選定させていただきまして、それぞれ支援を地域からご希望、ご提案いただくというような形になっております。

 その下のページが文部科学省における支援メニューの構成となってございます。少し時間がないので、簡単に支援メニューだけお伝えさせていただきますと、文部科学省の行っている支援メニューは、地域の戦略の中核を担う研究者集積ということで、外部からの研究者の招へいのための人件費等の支援を行っております。2つ目が地域の戦略実現のための人材育成ということで、今後のイノベーションを担うための人材を育成するためのプログラム開発の経費を補助しております。3つ目が知のネットワーク構築支援ということで、地域におけるコーディネーターの配置にかかる経費を補助しております。4つ目といたしましては、地域の研究機関等での設備・機械の共用化に対するスタッフの配置等の経費の支援というものを行っています。こちらは大学における研究施設等を外部に公開するときに企業とのつながりが生まれまして、そこから新たな産学のつながりというのが広がっていくことを期待しております。

 以上、4つのメニュー等、文部科学省におきましては支援メニューとして用意いたしまして、支援を行っておるところでございます。以上が今、変遷とともにどういった事業を行っているかのご説明になります。

 続きまして、資料5-2をお願いいたします。今後、本委員会におきまして、今後の審議事項についての提案を事務局のほうで簡単に作成させていただきました。

 2番目のポツ、審議事項の案をごらんください。(1)審議事項の案といたしましては、文部科学省が取組むべき今後の地域科学技術施策について全体的な観点からご議論いただきたいと考えております。

 (2)地域イノベーションシステムの構築ということで、こちらは例を挙げてございますが、さらにそういったイノベーションシステムを構築するに当たってどういったことが必要かという観点をいくつか例示として挙げさせていただいております。観点と例示といたしましては、まず研究開発のあり方、広域化・国際化戦略のあり方、人材育成・確保のあり方、また、今日さまざまなご意見いただきましたが、今後の評価指標のあり方について、また、地域のそういった事業が継続的に行われるという観点から、自律的・自発的な発展に必要な仕組みづくりについて、そのほか関係する事項についてご議論いただければと考えているところでございます。

 特に評価につきましては、知的クラスター事業、まさに平成10年から取組まれているところでございますので、今後新しい平成23年から始まった事業の評価、また、今後どういった観点から事業を考えていくべきかという観点からも、評価の指標についてもさまざまなご意見等をいただければと考えているところでございます。

 今後の審議の進め方につきましては、まずさまざま外部有識者からのプレゼンテーションやヒアリング、フリーディスカッション等を実施いただきまして、それぞれの課題の解決策について審議を行っていきたいと考えておるところでございます。

 また、先ほどご説明させていただきました地域イノベーション戦略支援プログラムの関係の採択の状況等につきましても、本委員会に適宜ご報告させていただきまして、今後の審議事項における審議に参考とさせていただければと考えているところでございます。

 あと、最後になりますが、今後のスケジュールにつきましては、今回第1回目開催の後、第2回目につきましては、3月下旬から4月下旬ごろに開催いたしまして、今後の科学技術施策全般についてご議論いただくことを考えておりますが、最終的には来年度、平成25年度3月をめどにこうした議論の成果をまとめるような形を予定しているところでございます。

 以上です。

【有信主査】  説明がありましたが、時間が残り少なくなってしまいました。審議事項については事務局からの提案があります。これを踏まえて、今日は最初ということもありますので、委員の方々からそれぞれお考えになっていることを一言ずつまず話していただくということにしたいと思いますので、よろしくお願いします。

 名簿の順番で申しわけありませんが、井上委員からよろしくお願いします。

【井上委員】  こういった地域イノベーションのプロジェクトもかなり年数がたってきて、それなりに成功しつつある地域も出てきているのではないかというふうに考えてございます。あと、これからの個人的な課題として、各クラスターを大別するとグリーンイノベーション、ライフイノベーションというこの2つの切り分けになるかと思います。グリーンイノベーションはものづくり、環境系で、ライフイノベーションは大きく分けて多分3つに分かれると思います。1つは医療機器、それから、薬のような規制の中でビジネスをやっていくクラスターですね。もう1つがアグリーですとか食に関連するクラスター、もう1つがいわゆる医工連携系の中心になりますヘルスケアのクラスター、これからの予防医療などで非常に重要になってくるクラスターだと思います。

 この3つのクラスターのうち、ヘルスケアのクラスターについての事業化のシナリオのところがやはりきちんと書き切れていないものが全体的にまだ多いかなというふうに思っています。これにつきましても、ITの環境が今この一、二年で大きく変化をしてきていて、スマートフォンですとか、それから、SNSの普及。この中で、もしかしたら新しい事業化のシナリオが書ける可能性が出てきているのではないかというふうに考えております。

 例えばルナルナのような女性向けの、200万人ぐらい会員がいるサイトですとか、そういう非常に強力なサイトが生まれてきていますので、そういうサイトとの連携によってヘルスケアクラスターの事業化という一つのゴールというのが見えてくる可能性があるかと思っています。そのシナリオをこれからしっかりと各クラスターにはぜひ努力をして進めてもらえればというふうに考えております。

 以上です。

【有信主査】  ありがとうございました。

 では、岩渕委員、お願いします。

【岩渕委員】  個人的に言うと、ずっとJSTの仕事と絡んでやってきた経緯がございまして、結局、例えば地方の大学の置かれている状況の中でどうやるかということが地方の地域科学技術の大きい視点だと思う。だから、もう少し地域における大学の役割をもっとはっきりさせるというか、ミッションとしてこうですよということをある程度言ってもいいような気がする。

 それから、その審議事項の1番目に「文部科学省が取組む」とありますが、地方の大学にとっては、例えば助成金としては、経済産業省もあるし、農林水産省もあるし、JSTもあるし、NEDOもあるし、みんな一緒にして外部資金ということでやっている。だから、文部科学省だけの推進をどうしましょうかという議論だと、大学にとってはつまみ食いにしかならない。だから、オールジャパン的な取組、経済産業省はこうやるけど、文部科学省はこうで、外郭のNEDOとJSTはこういうところをフォローしますよとか、そういう議論を当然ここでやっていただきたいなと思っている。特に僕はJSTの絡みで言うと、16のサテライトプラザが全部つぶされていて、あれを県庁がやれば県域ということで終わってしまうんですね。JSTは例えば岩手にあるやつは北東北3大学、3県をシェアしますよということであったが、それが今できていない。だから、それがなくなってしまうと、今度は自治体になるともう岩手県だけですよ、何で秋田の会社なの?という議論が出てくるので、その広域性のような全体の議論をぜひここの中で進めていければいいし、それなりの意見は出せるかと思います。

 以上です。

【有信主査】  じゃ、受田委員、お願いします。

【受田委員】  申し上げたいことはたくさんあるんですけれども、時間が差し迫っていますので、簡潔に述べます。

 今の岩渕先生の意見とも重複するところがたくさんあります。1つは、象徴的な事業仕分けのコメントがあって、地域のイノベーション創出ということに関して文部科学省がやる必要があるのかどうかというような、そもそも論を議論していただきたいと思います。

 国立大学法人に関しては、特に国民への約束という先般、国立大学協会が出したものがございますけれども、あの中に明確にリージョナルセンターという言葉が文言として出ております。すなわち地方の国立大学法人というのは、地域の発展を担うというところの役割がミッションとして明確化されていると理解しております。

 しかし、事業仕分け的には地方大学が云々という話も出ておりまして、ここの部分のそのそもそも論をどういうふうに考えるか。さらにもう一点、我々は、今、地方の支援のために存在しているとは決して考えていなくて、先行した課題が見えている地域であり、そのソリューションを一緒に創出していくことによって、ある意味、日本のモデルあるいは世界のモデルをつくっていこうという、そういう考え方で業務に当たっております。

 こういったところもぜひいろんな視点からご議論いただければ幸いに存じます。

 以上です。

【有信主査】  ありがとうございました。木村委員。

【木村委員】  簡単に2点お話しさせていただきたいと思います。1つは先ほどからずっと議論になっていましたグローバル化ですが、地域クラスターの申請段階から、国際化というのをどういうふうに考えていますかというところについて、なかなか具体的な計画が出ていないのは現状だと思います。どうしてもどこかの大学と連携しましたというレベル。これは本事業のみならず、日本の中小中堅企業さんがこれから取組んでいかないといけない非常に大きな課題かなと思っている。ひとつ大きな壁になっているのはやはり言葉の問題があるかなと思いますが、このあたりに対する何らかの具体的な支援をここで少し議論ができるようなことが必要ではないかというふうに思います。

 もう一点は、先ほど出ていましたインスティテュートの話ですが、いわゆる日本の産学連携はアメリカの大学モデルでいくのか、欧米の大学モデルでいくのかという話で、私も少し興味があって、ドイツについて少し論文を書いたりしているが、やはり何となく今の印象だと欧米型のほうが日本に合っているような気がしている。ただ、その場合、かなり今の日本の大学の制度と、ドイツの大学の制度は違うとうので、大変難しい話だと思うんですが、地域イノベーションの本事業がスムースにいくための何らかの大学と産業界も結びつくような新しい制度というか、システムというか、そういう仕組みもこの場で少しご議論をさせていただければ非常にいいのではないかというふうに思います。

【有信主査】  ありがとうございました。では、高橋委員。

【高橋(真)委員】   私も簡単に2点ほど。1つは、私はアカデミックセクターのほうで、自身が研究者ではない立場からこのような議論を拝見しています。その観点から2つありますけれども、1つは当面第4期基本計画でイノベーションが入ってきて、大学の研究者にとってこういう事業をどういうふうにやって、自分の立ち位置を見つけていくか。もう少し大人の言葉で言うと貢献していくかというときに、大学の内側でまだまだ変わるべき基盤がとても大きいと思います。その具体の行為はお金を生かしていくための基盤として考えていきたいと思います。というのが1点目。

 それと、2つ目ですけれども、95年以降、やはりそういう今までの大学、アカデミックにいない人間をコーディネーター等で産学連携をつなぐ人材として、かなりいろいろな施策が人材施策としてされていると思います。これも経済産業省も入っていますし、文部科学省だけの取組ではないかと思いますが、こういう人間の育成と確保、キャリアパス、プレゼンス、そのあたりも、この事業を動かすためにもちろん必要なことだと思いますし、先ほど事業のアウトプットやアウトカムとしても地域にストックされる資源としてもとらえていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【有信主査】  それでは、川島委員、お願いします。

【川島委員】  日本経済研究所の川島と申します。本日はクラスター政策の変遷のようなものを資料5-1でご説明いただきましたが、これよりも前の第1期科学技術基本計画のときにRSP事業というものが文部科学省でやられていたこれが今日の地域科学技術政策の仕組みづくりの基礎をつくったというふうに理解していますが、やはり文部科学省としては、イノベーションを達成するとか事業化をすることも一つの大きな目標ではあると思うんですけれども、やはり仕組みをつくっていくこと。新しい制度的なイノベーションを起こして、例えばそこで養成される人材とかそういったものを定義していくということが大事なことだと思っています。

 だから、第4期基本計画に基づき、支援メニューに人材育成のプログラムというものが重点的に決められたということは非常に政策としてのフォーカスが定まったと思いますので、よいことだと考えております。

 特に私自身は、やはり研究者だけでなく、そのバックオフィスにかかわる部分の効率化を考えていきたい。今、高橋委員からも説明があったとは思うんですけれども、やはり大学の中でリサーチアドミニストレーターとか同じ資金を投入しても、よく研究開発を推進できるような人材の育成について議論させていただければと思っております。

 以上です。

【有信主査】  それでは、坂本委員、お願いします。

【坂本委員】  お時間がありませんから簡単にいきますけども、1つは、どなたか言われたイノベーションの創出システムそのものについて、つまり、文部科学省だけではなくて、私もこういう関係の仕事というのは都道府県でいくつか関係していますし、特に経済産業省、中小企業庁でたくさん委員を仰せつかっておりますけども、国家戦略全体としてどうするかということを少し議論してもいいのかなと。これはどなたか言われました。

 もう1つは、何のためのイノベーションかというときに、地域技術開発とかではなくて、私は今、人の幸せ、国民の幸せじゃないかと思っている。だから、イノベーションによって国内の雇用が縮小する場合は真のイノベーションではないというふうに思います。だから、イノベーションそのものについての定義、あり方についても少し議論していただきたいなとそんなふうに思います。

 この2つです。

【有信主査】  ありがとうございました。それでは、清水委員。

【清水委員】  先ほど変遷のご説明がありましたが、事業仕分けでなくなったことは非常に残念だと思います。私もしばらく前に岐阜県庁に科学技術の統括責任者で出向しておりましたので、この都市エリアをいかに活用するかということが非常に大きな命題でした。私が今でもやはり残念だと思ったのは、企業の面から言うと、経済産業省もいろんな事業がありますけども、ほんとうに草の根の企業ですとか、ベンチャーを対象にしていたのは都市エリアであり、グローバルだったのです。そして、クラスターだったと思います。したがいまして、これがなくなったことの影響は非常に大きいと私は思います。

 あと、大学の視点から言うと、私は県庁側から大学を見ていたんですけども、自分たちのこの技術が地域でどう生かされるのかということもわからないし、全国で産業としてどう扱われるのかもわからないと。ところがこの都市エリア、知的クラスターにプロデュースされて広がったという先生方は非常に多いんですね。

 もう一つ、県のほうから言いますと、広域化の流れがございました。これは非常に県にとっては衝撃的でしたけども、よかったと思っています。というのは、プロジェクトの立て方、マネジメントをすぐれた県と一緒になってやることで洗練されていった。その中でいい事例が出てきていると思います。

 まだ途中の事業だったと私は思っていますし、もう少しやればもっとすばらしい成果を出せれたのではないかという思いがあります。したがいまして、もし次行くとしたら、やはり地域の主導、地域の主導性を重視するのであれば、やはり先ほど委員がおっしゃったように、県のほうでのリーダーシップ、大学任せにするのではない事業の立て方をしっかり議論するべきではないかと思います。

 よくあるのは、一例で言うと、水産というと、函館もよかったと思う。ただし、ほんとうにこの地域のこと、グローバルを考えれば、水産物ではなくて、ほんとうは水産機械ですよね。世界で70%もシェアを持つなど、あるいはいろんな装置、整備、船の機器を函館、釧路、いろんな企業が持っています。本来はそういった分野のほうが多くの企業の方も参画できますし、大学のロボット、コンピューター、いろんな技術を使えますので、今もよく東北で水産加工とおっしゃいますけども、水産物ではないのではないかという印象を持っています。

 以上です。

【有信主査】  それでは、髙橋委員お願いします。

【髙橋(一)委員】  こうして国の手厚いご支援を地域にいただきながら中小企業の現場的な観点で、2つお話をさせていただければと思います。

 1つは、有信主査の先ほどの断崖絶壁というお話もいただきましたけれども、大きな時代の変化にある中で、中小企業、地域は厳しい状況にある、これは事実だと思います。こうした中で、中小企業1社1社が時代の変化に対応するために基礎的なところを積み上げるとか、あるいはマーケットからの要望に応じて、製品サービス、商品を変えていくことが非常に、コストで対応がほんとうにできるのかどうかというところがある。そういったところを地域大学、技術の革新の現場が地域の資源として、共通のプラットフォームとして、企業が共通して活用していくことで、コストを避けることができたり、リスクを軽減するようなことをお願いができたらありがたい。

 もう一点は、実は私も経験上、地域にある430万と言われる中小企業と大学との出会いの場というのはほんとうに限られていると思います。実は地域の金融機関は今申し上げた430万の人とすべて取引があるはずであり、そういった役割特に地域の金融機関が。つなぎ役となることによって、先ほど申し上げた預貸率を再び引き上げていくためにも、その金融機能に加えて、そうした大学の皆さんの技術と情報と企業の現場をつなげていく役目を果たさなければ金融自身が生き残れなくなるのではないかなと思っている。そんなことを本委員会の議論として加えていただければありがたいなと思いました。

 以上でございます。

【有信主査】  ありがとうございました。では、中武委員。

【中武委員】  私、鹿児島大学におり、鹿児島地域で産学官連携のコーディネート活動を日々行っておるわけですけれども、最近感じておりますのが、地方の中でも、その大学の中でも、それから、九州域、広域的な領域であっても、その中で産学官連携や地域科学技術施策という言葉に対する微妙な定義のずれというものを感じています。

 こういう関係者、関係セクター間のずれというものがどういうものがあるのか。そういったものを顕在化させることがこの委員会の中で議論としてできればいいなというふうに思っています。

 できれば、当事者意識を持った議論ができるような情報をこれからこの委員会の中に持ってこれたらいいなというふうに思っていますので、ぜひとも今後ともよろしくお願いいたします。

【有信主査】  では、野長瀬先生。

【野長瀬委員】  先ほどいろいろ申し上げたので、このコメントは絞って申し上げたいと思うが、この地域イノベーションの創出の協議会の図を見て、ちょうど私がリージョナル・イノベーション・ジェネレーターという概念を実は申し上げて、事象研究の成果を出したところなんですけれども、実は8年間、中小企業を歩き回って、大学と組めるようなところとか自社商品を持っているようなところのネットワーク構築について、を実証研究でやっていまして、そうすると、企業間連携、マッチングが7割から8割で、産学官連携が1割から2割で、企業が主導するようなネットワークをつくらないと、こういう協議会のようなものが機能しないというのは、実は日常的に体験しておりまして、創業1年目のベンチャーでも、やはり自社商品を持とうとするところは大学を使いこなすわけですね。そういう意味でいくと、このイノベーション推進協議会の図は、以前、経済産業省が新事業創出促進法で地域プラットフォームをつくったのですが、あれをさらにバージョンアップさせて、起業家セクターのイノベーションを巻き込んだものをつくると、機能するのかなと思っておりました。

 以上です。

【有信主査】  それでは、福士委員。

【福士委員】  先ほど主査がおっしゃいました生活基盤の劣化をどうするか、どうとめるかということがやはり今、日本社会の喫緊の課題になっていると思います。そうした意味でまず、私はメディアで仕事をしている人間ではあるのですけれども、そうした視点に立って、今、各地域が抱えている課題をどう抽出、整理していくか、そこに技術がどう寄与していくかということを当事者の目、そしてまた、第三者の目、いろいろな視点で見ていくことが大切かなというふうに思います。

 時々こうした領域で考えていくとき、最近よく思うのですが、皆さん新しいものを一からつくって、それによって人とモノとお金が地域に集まるというふうに考えておられる地域もかなりあるのですが、それも大切ですけれども、実は受け継がれてきた伝統的な生活とか文化とか、あとはつくられてきたモノある意味豊かな資源をベースに置きつつ、それだけでは今の社会ではやっていけないものですから、そこをどういうふうに新しい価値をつけ加えるか。再価値化、再び価値をつけるというようなことに、そこにもまた科学技術は寄与できるのではないかなというふうに、今日、皆様のご議論を聞いて少し思いました。今後いろいろ考えていければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【有信主査】  では、福嶋委員。

【福嶋委員】  地域イノベーションについて、イノベーションという言葉自体は別に科学技術だけじゃない、技術革新だけじゃなくて、そのビジネスを指している。要は、ある新しいアイデアが社会に普及していくということまで含まれているわけですけれども、何となく今回のプログラムを見てもやはりテクノロジープッシュの議論がすごく強いなという気はいたしておりまして、このプログラム自体を科学技術振興の一環とするのか、それとも地域産業振興の一環とするのかと、そのとらえ方によって大分これから変わってくるんじゃないかなと。

 ただ、いろいろ拝見しますと、やはり事業化に至るまで見るのがこのプログラムの趣旨でもありますので、やはりその成果、もう少し科学技術からしビジネス化みたいな部分に力を入れる時期に来ているんじゃないかと。

 先ほど野長瀬先生もおっしゃいましたもっと企業主導にするという。そっちの部分にもう少しマーケットサイドの視点を入れていかないと事業化はやはり難しいのかなという印象は持っております。

 あと、いろいろ今までの報告を伺っておりますと、やはり地域ということで、自治体と組みなさいとか、その地域のものだけを利用しなさいというものが少し見え隠れしていますが、技術は、ビジネスもそうですけど、県境とかそういうものは超えて当たり前なわけであって、そういった今までの壁、例えば地域、自治体とかの壁もそうですし、あと省庁間の壁、もうこれを超えないと前に進まない段階になっているんじゃないかなというふうな印象を受けております。

 以上です。

【有信主査】  では、松原委員、お願いします。

【松原委員】  私自身は第3期の科学技術基本計画のフォローアップに参加させていただきまして、第4期でこういう形で地域イノベーションシステムの構築が掲げられたことを非常に評価しておりますけれども、システムという言葉をどういうふうに理解していくのか、あるいは地域という空間的なスケールといいますかのとらえ方をどういうふうに考えるかというのも、この場でいろいろ議論させていただければと思います。

 走りながら構築するというのはなかなか難しいと思います。私自身は立ちどまって考えるほうが得意なので、少し理論っぽい話を私自身は投げかけてみたいというふうに思っています。

 以上です。

【有信主査】  どうもありがとうございました。前半の議論が予想外に活発だったもので、申しわけありません。予定の時間を過ぎておりますが、最後に事務局から何か連絡事項はありますでしょうか。

【竹下専門職】  本日お配りしております資料につきまして、机上の上に置いていただけば、後日事務局から郵送させていただきますので、よろしくお願いいたします。

 あと、第2回目につきましても、日程のほうを調整させていただきまして、改めてご連絡させていただければと考えております。よろしくお願いいたします。

【有信主査】  どうもありがとうございました。予定時間延びてしまって申しわけありません。本日はご多用中のところほんとうにありがとうございました。これで閉会にしたいと思います。

                         ―― 了 ――

お問合せ先

科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課

(科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課)