【資料5】第4回地域科学技術施策推進委員会議事録

科学技術・学術審議会 産業連携・地域支援部会

地域科学技術施策推進委員会(第4回)

平成24年7月4日

 

○平成24年度地域イノベーション戦略支援プログラム事後評価について

 評価項目やスケジュールについて、資料1に基づき事務局から説明後、委員から了承された

 

 それでは、議題2の「地域科学施策の課題と展望について」、この議題に入らせていただきます。最初に産業技術総合研究所の清水委員からご説明をいただくということになっていますので、清水委員、よろしくお願いします。

【清水委員】  どうもありがとうございます。産業技術総合研究所の清水でございます。

 今日は岐阜県庁に出向していたときの経験と、産業技術総合研究所が広域的に連携し、中小企業、地域をどう支援しているのか、これが参考になればと思いましてお話をさせていただく次第です。特に岐阜県庁の場合は、いわゆる大都市ではなく、けれども特別田舎でもないということで、これも参考になるのではないかと思いましてお話しするものでございます。

 私は、3年3カ月、この期間、産業技術総合研究所から岐阜県庁へ出向しておりました。知事が経済産業省系の方になったということで、技術系の私が伺いました。役割は3つございます。一つは研究開発部門の管理、そして知事へ技術的なアドバイスをすること、そして最も肝心なのは今日の話題でございますけれども、産学官連携プロジェクトを行うということで、国の事業を活用しながら地域を振興していくというものです。総勢353名、農、工、環境、衛生という分野を所管しております。他県と全く違うのは、本庁の中に技術系の人間がたくさんいることで、色々な企画立案をする仕組みを整えております。これはすぐにできたというよりも、何年もかかってそういったプロジェクトを企画する体制を構築していきました。

 いきなり文部科学省の前でこういったことを説明するのは非常に私としても抵抗があるのですが、過去10年間、いわゆる15年間のうちの最初の10年間、非常に莫大なお金を文部科学省からいただき、約100テーマをやりました。ところが、成果は得られたのですけれども、岐阜県の企業に大きく貢献したものは少なかったというのが率直な意見です。したがいまして、着任をして、色々なプロジェクトにおいて中間評価を迎えるに当たって、総括を行い、関係者、特に大学、あるいは企業関係者とかなり激論を交わしました。一つはっきりしたことは、大学よりも地域企業のニーズを踏まえていないと、地域構想ではないということです。地方大学の活性化というのも一つの視点ではあったと思うのですが、やはり地域の活性化、イノベーションを起こすことは、やはり企業、社会が動くということでございますので、大学での研究活動が中心となるプロジェクトでは、やはり実用化にもっていくのは難しかったのではないかと考えました。

 それで、始めたのは、若手の研究員を連れて県内の1,000社を回ることです。どういったことかといいますと、主な製品や取引状況、現在の研究開発、あと、重要な技術は何か、今の課題は何か、これから導入したい技術、これからどんな先生とどういうことを産学官連携でやりたいか、実績があるか、そういったことをつぶさに調べていきました。こういったニーズを踏まえてプロジェクトを立てていく仕組みを確立しようと試みました。いわゆるニーズ指向のプロジェクト設定の仕組みです。特に赤い着色部分、航空機、環境、医療機器という分野が浮かび上がってきました。これは若干バランスをとるために載せているようなものでございます。というのは、リーマン・ショックではっきりしたわけですけれども、岐阜県の半分を占めている自動車、電気、工作機械というのは非常に落ち込みました。それまではいわゆる自動車の関係者でなければビジネスマンにあらずというようなところがあったわけですが、そうではなくて、将来はやはりこれからの新しい成長産業を発展していかなければいけない。自分たちの技術をどう発展させていくのか、そういう視点を企業にも持つようになっていただいた。県庁の中もそういった考えに徐々に変わっていきました。

 知的クラスター1件、都市エリア2件、22年度の3月時点では3つやらせていただきました。あと、経済産業省の地域イノベ、あるいはサポインというプロジェクトをやらせていただいたわけですが、当時はおそらく木村企画官の前々々任ぐらいの室長に色々なアドバイスをいただきました。そのアドバイスとは、IT、ロボットを岐阜県庁がやっているというのだけど、本当にそれは地域との関係がしっかりしているのか、ということです。色々なニーズを調べますと、やはり決してそうではない。むしろ航空機あるいは自動車といった、軽量材料をいかに加工して接合していくのか、そこに大きな関心事がありました。なおかつ、大学が本腰を入れて研究開発をしなければいけないほど難易度の高いチャレンジングなテーマがあるということを知りました。県庁の中では、いわゆる愛知県と名古屋市と一緒にやることに対して、非常に大きなアレルギーがあって、すべてコントロールされるのではないかという、疑心暗鬼の議論もあったわけですが、広域連携を始めました。

 あと、こういった地域ならではのセラミックス、あるいは医療機器と比べると、グローバルな展開を起こす分野は大きく違っております。何かといいますと、御存じのとおり、東海地域は、全国の6割近くの航空機カンパニーが集まっております。岐阜県には大きな航空自衛隊があって、その周辺に川崎重工業の約5,000名の会社がありまして、その周辺にはそれを支える約2万人の下請けがございます。車もそうなのですが、航空機も鋼、いわゆる鉄からだんだんCFRPというプラスチックに変更していく中で、いかに地域で中小企業も中堅も維持して加工業務をしていくのかということを非常に大きな関心事でした。航空機だけではなく、やはりこういった車のボディーにトヨタが使うということを明言して、東レを呼び込んできた経緯がございます。ここに対しては大きなインパクトがあるということで、文部科学省のアドバイスを参考に、それから私どもが調べたニーズに基づき、プロジェクトを愛知県、名古屋市と一緒に始めたということです。

 広域連携の大きなメリットは何かといいますと、研究レベルでも、マネジメントの上でも、名古屋市や愛知県と一緒にやることは非常にメリットがあったということです。いわゆるローカルな内輪の議論ではなくて、本来、研究として、マネジメントとしてどうあるべきかということがしっかりと議論できたということでございます。

 県庁にいてやはり思ったのは、研究開発そのものへの大きな影響力というのは、やはり発揮できにくいということです。ただし、こういった人材育成、このプロジェクトの中で1つ数万円するようなCFRPを文部科学省の事業で買わせていただいて、地元にある刃具メーカー、三菱マテリアルという大手ですけれども、そこに素材を入れて、色々な中堅・中小企業に、自分たちが川崎重工やトヨタに納めたい製品をつくらせるんですね。そこでできたものを評価して、データベースは県庁の中の研究所に保管します。さらにこういう材料とこういう刃具で使ったらどうですかということを検証して、人材育成についてもある意味、それなりの効果が得られまして、多くの会社が参画してくれました。あと、地域産学官連携拠点整備事業は事業仕分けを受けて、700億円から263億円に金額が下がったわけですけれども、岐阜県は、事業を活用し、こういったCFRPや航空機の材料に関しての研究開発を進めていきました。特に、当時は補正ということもあって、各県の方は地元大学に丸投げしたところが若干多かったのではないかと思うんですけれども、私どもは127の企業に一つ一つ調査を行って、そこから地域として大学と、あるいは地域の企業、もちろん川崎重工を含めて、研究を行っていくための設備の要望を聞いて、提案をつくってまいりました。ありがたいことに福岡、愛知県と並ぶトップ3の支援をいただきまして、多くの予算を投入していただきました。もちろん、向こう10年間、企業も運営資金を出すし、大学も出します。大学のほうは、こういったCFRPの関係の教員がいなかったので、学長の裁量で3名、ポストを用意していただきました。こういった取組をしております。

 また、ビジネスマッチング、例えば川崎重工にものを納めるための、いわゆるガイダンスを行う活動もしております。これは県庁が色々な方に働きかけて、今後川崎重工あるいは航空機関係者が納めさせたいと思っているものを、クローズな会合の中でお話をして、それに対して地域の企業が提案書を書いていくというものです。もちろんそれは川崎重工の関係する方が企業を訪問して、あなたの会社ではこういうものが出せますと、この条件ではこれは無理だといったようなアドバイスをしながらビジネスマッチングをしていく、ここからさらにどんな技術的な課題があるのかを抽出していく、そういったことをやりました。こういった地元ならではの活動はあったと思います。

 問題点としては、本当にベストなテーマを選べたのか、ということです。先ほどのところに戻るのですが、やはり若干、テーマについては全国的な視点から研究者、いわゆる技術を見渡したわけではなくて、どちらかというと岐阜県、あるいは名古屋といった、ある意味、かなり狭い範囲から解決手段を見ながら、ニーズとマッチングさせてしまった。ですから、本来、地元企業が求めていたものについて1番目、2番目と順位があったわけですが、それを選択できなかったという問題点がございます。

 この資料は少し外部資金が増えたということです。これはちょっと飛ばします。

 前回、色々な骨子案をいただきました。その中に人材のこと、コーディネーターのなどのお話がありましたけれども、若干、私が考えますに、地域に求められているコーディネーターの役割というのは、例えば大学がイメージしているコーディネーターとは全く違うというふうに思っております。つまり、例えば、大学であれば、大学の研究開発が発展するような企業との連携をする、これが条件です。大学もおそらくニーズに単に個別に対応するだけではすべて消耗してしまうからです。ところが、地域あるいは地域の企業を応援するときは私ども、考えを大きく変えます。何かといいますと、地域のニーズが顕在化して、それに対して対応するというのが絶対条件だということです。もちろんマッチングをして、テーマをとらえてやっていくわけですが、そういった姿勢がまず重要であるということです。

 あと、これは私が県庁に出向した際に、最初に知事が第1期選挙で変わって、経営戦略会議という多くの企業人を含めて色々な会議をやったわけですが、私どもが岐阜県の中で最初に言われたのは、企業の方から、また施策を横から縦へ、縦から横へ変えるなど、そんなことはやめてほしい、むしろ人材であると。コーディネーターですね。砂田さんという方がいらっしゃるんですが、そういう人をもっと5人も10人も育ててくれればいいんだと言われました。いわゆる余計なことはしてほしくないと、そんなことを当時、言われておりました。私どもは、そういったコーディネーターがどういう性格、どういう活動をするのかということをつぶさに見ているわけですけれども、いわゆるシーズを持って売り歩くのではなくて、どちらかというとニーズを顕在化させて、それを広く知っている先生方とマッチングをして提案書を書いて、資金を獲得して、研究計画を実際に進めていく、そういったコーディネーターであるということです。

 もう一つ、県庁のことでございます。私も3年3カ月の間、人事についても意見を言ってまいりました。きのう、おとといまで土木だとか健康関係をやっていた事務の方が、突然、産業政策、あるいは科学技術政策を担当しているのがほとんどの県の実態です。これでは企業や大学と同じレベルで議論を行いプロジェクト立案、政策立案することは難しい。やはり重要なのは技術と政策と、その地域、つまり企業をバランスよく知っている職員が極めて重要で、岐阜県庁の場合、最終的な形として、工業系の研究職員の105名のうち、16名は本庁、財団、文部科学省に配置していました。つまり、行政経験を持って、プロジェクトを一緒に立案していく。つまり、コーディネーター業務を経験していくとことが極めて重要で、それによって課長のポストも2つ、あるいは商工労働部の次長も今は技術系職員がやっておりますし、通常、商工労働部長だとか副知事経験者が県財団の産業支援機関の長になることが多いのですが、岐阜県では研究職、つまり技術系職員がやっている。ある意味、技術系の政策を県庁の中の政策の一つとして大きくとらえるようになりました。他にも福岡県や長野県は若干そういう傾向がございます。素晴らしい知的クラスターを構築されているのは、そういった体制によるのではないかと思っております。

 少し産業技術総合研究所のことに移らせていただきます。産業技術総合研究所は約3,000名、契約職員を含めて8,500名から9,000名の組織でございます。全国、北海道から九州まであるわけですが、例えば、サポインという事業がございます。中小企業と、1億円のお金をいただいて、2年から3年間、研究開発をするというものです。私ども、中小企業との共同研究というのは、ここしばらく活発化させてまいりました。例えば、これが全体のサポインと言われている事業の中の産業技術総合研究所のシェアでございますが、最近は約3割近く、産業技術総合研究所と地域の中小企業とが研究を行っています。

 昨年度も、こういったサポインを活用した研究開発を増やしていったわけですが、特に昨年度は被災地と一緒に共同研究をしていくことを重視しました。ただ、問題は、かつて、過去数年間で宮城や岩手において一、二件しか実績がないんですね。ですから、ネットワークもないし、何も知らない。震災前は東海道新幹線に乗ることはあっても、東北新幹線に乗ることはまずありませんでした。極めてプリミティブな、原始的なことなんですけれども、東北企業を震災があった直後から、企業をリストアップして、それの選定を開始しました。私どもには、仙台に東北センターがございます。彼らがその地域においてコアとなる企業のリストを持っておりまして、研究履歴、公的資金の活用や、私どものところに訪問してくれたことがある、そういった話だけではなくて、経営者の思想、研究開発に対する考え方、これまでの色々な蓄積を持っております。これを考慮して、30社に絞り込んで、6月ぐらいから、ここにコーディネーターを派遣いたしました。その中から約12件提案して、7件が採択となっております。今、文部科学省・JSTのほうにもかなりの数の提案をさせていただいております。

 このときにコーディネーターが何をしたかというと、自分たちのシーズを売り込むというのではなくて、ニーズを聞くこと、これに徹しました。ニーズを顕在化させることです。中央の大企業とブリッジすることも心がけてテーマを検討しました。これを産業技術総合研究所の研究所にマッチングさせて、一、二カ月でもって研究計画を立てて提案をしていくということです。

 こういった活動を通じて、私ども、被災地域の支援をしてまいりました。

 あと、もう一つは、広域連携でございます。私ども、四国センターというのが高松にございます。これは経済産業省の地域イノベーション創出共同体形成事業という、5年のプロジェクトが2年で終わってしまったものです。地域産業の育成と、地域産業活性化という意味で、色々な特産品の中の機能性成分を分析することが非常に求められています。ところが、その分析手法は確立されていないんですね。ですから、各公設試の職員は、独自の方法でやっているところがあり、その値がどこまで正しいのかわからないまま取り組んでいる可能性があり、これは非常に問題です。もちろん色々な検査をして査定をするわけですけれども、例えばカツオのアミノ酸は徳島県の分析方法が問題なければこれに統一しましょうと色々いうようなことをやっております。これは四国だけではなくて、北海道も入って、産業技術総合研究所が色々な標準物質を開発して、四国、北海道と一緒にやっております。これは今やそういった二者ではなくて、どちらかというと西日本が中心でございますけれども、県の研究所と色々な活動をしております。やはりそのときに重要なのはプロジェクトリーダーでございまして、かなり強い意思とリーダーシップを持っていることが非常に重要でございます。

 色々な話題を出したのですけれども、少しまとめのお話をしたいと思います。一つは、やはりこれから地域としてやっていくことであったとしても、前回、骨子案にありましたように、やはり国の研究開発に資する国家的な課題に対応する。先ほどCFRPと言いましたけれども、私は国家的な課題だろうと思っております。経済産業省も昨年度、多分、十何億円以上投入して、産業技術総合研究所の出身の東大の教授がプロジェクトリーダーを今やっております。やはりこういった大きなプロジェクトをやることで、海外展開をしていく、あるいは海外に対して物を売っていくという姿勢が重要です。ただ、自治体はどういう役割があるのかということなんですが、やはり自治体が企業のニーズの明確化、あるいは構想の構築、あるいはシーズ等のマッチングを図っていくと、そういったことがやはり依然として重要だろうと思います。

 もう一つ、(2)なのですが、例えば、若干批判めいた言い方をするかもしれないのですが、1つの例として、信州大学がございます。遠藤先生はすごく立派にやっていらっしゃると思うんですけれども、やはり地元企業向けではありません。これは山形も同じだと思います。したがいまして、やはり地域の企業のニーズや方向性と合っていなければいけないということで、こういった企業、地域のニーズと、それを引っ張るリーディングカンパニーの間に割り込んで、それをサポートしていく必要があるのが、やはり地域の現実ではないかというふうに思います。

 あと、広域連携であること。これは必然的にそうならざるを得ないのではないかというふうに私は思っております。特定の分野においてグローバルな研究開発をしていくときに、現在は色々な地域に点在しています、実際には。東京だけではなく、強い地域もありますので、やはり広域で連携をしていくと。プロジェクトリーダーは強力な権限を持って、そういった地域をグリップしていくということが現実的ではないかと思います。

 あと、4つ目なんですが、国際連携です。これは若干批判めいたことを言いますと、よく文部科学省の国際連携は、どちらかというとクラスターとクラスター同士の連携なのですが、それはどちらかというと表に出るのは国立研究所や大学が、向こうの国立研究所や大学との連携、あるいは産業支援機関が産業支援機関との連携なのですけれども、私は地域の活性化という観点から見ると少し不十分じゃないかと思います。むしろ方向性としては、例えば、大学や公的研究機関が地域企業の製品の性能のお墨つきをして、さらには先生方が海外のユーザーの企業に説明に行く、といった、もう少し地域の企業が海外に進出するための直接的な支援をするほうが、本当の国際連携ではないかというふうに思っております。

 あと、プロジェクトリーダーなんですが、これは、私は絶大な権限を持たせるべきだと思います。例えば、岐阜県庁でしたら、どうしても私がいたポストからの影響が強くなります。これはいい意味も悪い意味もあります。政治的にも影響を与えることになってしまいます。ましてや、私どもが所管している研究開発財団の中核機関の雇われたプロジェクトリーダーであればなおさらだと思いますが、思いきってできないというジレンマがありました。したがいまして、やはりあまりにもローカルにならない体制にするために、グローバルな情報を旺盛に取り入れて、プロジェクトを運営するためにはやはりそういったローカルなところから脱却させてマネジメントをすることが極めて重要だと思います。

 もう一つは、これまでもこの会議の中で意見を言っておりますが、やはり企業がメインプレーヤーになれるようにすることです。一言で言うと、資金を提供することです。研究計画や目標を一緒にして、それを達成するために一緒に汗をかくこと、リスクを取らせるということだというふうに思っております。研究開発の場合、委託事業でも企業はリスクを抱えているわけですね。過去の文部科学省の知クラや都市エリアは企業にとっては本格的にかかわる機会すらなかったというのが現状だろうと思うんですね。また、そういったところを解決することが、本気のリーディングカンパニーを引っ張ってくる重要な鍵であるというふうに思っております。

 自治体をちょっと疎外するような言い方をしましたけれども、やはり自治体は地域の企業のいわゆる雰囲気づくり、あと、企業内のコンセンサスづくりの非常に重要な役割を果たします。ビジネスマッチングや人材育成にも絶大な力を発揮しますので、こういった方々の努力がなければ、やはり地元地域では波及していきませんし、伝わらないと思うんですね。ですから、自治体の役割というのも重要だろうと思います。

 もう一つは、これはどちらかというと文部科学省に対するメッセージなんですけれども、私が色々なところを見ておりますと、地域の企業のニーズ、これは1つや2つではなくて大きな群となるニーズですね。それと、地元の大学の研究者の専門やレベルとの間に大きな溝があります。これは、ある意味、1年、2年で解決できることではないのですが、例えば、岐阜大学がCFRPの研究者を数名採用していっているように、やはりその地域の企業、業種、向こう10年、15年かけて何かをするようなところには、何らかのソフト的な支援をするということが極めて重要だろうと思います。

 最後なんですけれども、柱となる国の事業はやはり重要だということです。2つありまして、リスクが高過ぎるということ、高額になり過ぎるということで、県庁そのものが何十億円、何億円というお金を、計画を立ててプロジェクトをやっていくということは、土木事業や病院を除いてはあり得ません。ですから、三位一体の中で地域を支援する研究開発プロジェクトがなくなったというのは事実上、国は科学技術を用いた地域活性化を放棄したに等しいと思います。

 もう一つは、キーとなる旗振り役ですね。プロジェクトリーダー、これをもう少し自由にさせる必要があって、大きな権限を持たせてやらせる必要が私はあると思います。

 もう一つは、先程お話ししましたように、地域の企業が資金提供を受けて、コミットするということ。例えば東京の会社が山形、あるいは信州の企業と一緒にやると。これが非常に健全な関係であり、それにはかなり地域の企業の要望が反映されるようなプロジェクトにするということも重要だろうと思います。

 また、先ほどから自治体のことを話しておりますけれども、科学技術政策を理解して比較、管理ができる専門家の育成をすること、これは徹底的に抜けている部分でございますので、そういったところを育成していくための取組が必要で、若干、ここでの議論から逸脱するかもしれませんが、そのためには人事などにも少し手を伸ばす必要が本来はある。そこまで少し根深いものもあるということを理解していただければと思います。

 長くなりましたが以上でございます。

【有信主査】  どうもありがとうございました。

 それでは、今のご説明に対して何か質問、コメント、ご意見等ありましたらよろしくお願いします。実際に自分でやってこられて、その上での話なので、非常に説得力があったと思います。

【松原委員】  大変興味深いお話をありがとうございます。

 1点お尋ねしたいんですけれども、前半の部分で言われた広域連携にかかわる、いわゆる愛知県と岐阜県、三重県も入れてもいいかもしれませんが、東海3県あたりの関係についてです。やや少し最近気になっているのは、経済産業省のほうで企業立地促進法に基づき広域連携を進めておりました北陸三県が、この春で一応連携をやめた。やめたというか、そういう形で、更新しないという決定をされたんですけれども、割合、隣り合わせの県同士のライバル意識は非常に強くて、広域連携は非常に掛け声としてはいいんだけれども、なかなかやはり実際進まない部分というのがあります。東海地域で連携する際に、色々愛知県に対する警戒心はあったけれども岐阜は連携したということなんですけれども、その辺あたりの意思決定というか、そういうものはどういう形でやられたのか、そして、そのときの評価をどういうふうにされているのか、もう少しその辺あたりのお話をお聞きしたい。

【清水委員】  愛知県の財団から岐阜県の大学あるいは私ども県の研究所が、彼らを通してお金を受けることに対する屈辱感や、あと、コントロールされてしまうという恐怖感、それがまずありました。はっきり申し上げて、調整の段階でどれぐらいの領分を私どもが抱えるのか、お互いギブアンドテイクをするのか、ある意味、担当者レベルで利害をすり合わせた。愛知県や名古屋市は当然、私たちからのきちんとした貢献を求めてくるわけですね。私たちもそれに対する約束を求めているわけです。最終的には知事のところまで話を持っていって、状況の説明を行いました。いわゆる会計、人事、色々なところとの調整が必要なわけですけれども、そこのお墨つきを、ある意味トップダウンでやっていったということです。

 比較的それがやりやすいのは、隣同士の実は仲がよくないということはおっしゃいますけれども、実は隣の県同士、例えば東海だとか中部の知事同士は年に何回もお会いするんですね。例えばそれは、中部ですと非常に珍しいんですが、科学技術とか産業技術政策分野でも集まることがあります。したがいまして、割とそういったトップの障害はあまりなく、名古屋市で開催する会議が多いが、そこには知事もしっかり出て存在感を示しながら、むしろ自分たちの要望をその場の知事同士で色々意見交換をしながら、岐阜県の要望をまたさらに要求していくと。そういったことを積極的にやっていました。

 ただ、古参の職員、いわゆるOBや、県庁の幹部は非常に違和感を持っていて、独自でやるべきだという意見は最後の最後までありました。

【松原委員】  経済産業省だと、いわゆる地方局がありますが、文部科学省の場合、そういう広域連携を進めるというときに、どういう形で進めたかということに関心があったのですが。

【清水委員】  東海には、イノベーションプラザがありました。そこには岐阜県庁ですと私、愛知県ですと商工労働部長、三重県ですと、同じ農商工労働部の部長のような方が集まって、そこで年に四、五回、運営委員会を行う。そこで各県の状況を説明します。もちろん末端の職員も色々な交流があるわけですが、知事や幹部、あと職員も、そういった交流を持っていたことが重要だと思っています。

【松原委員】  どうもありがとうございました。

【有信主査】  ほかに何か。

【髙橋(一)委員】  非常に丁寧な説明をありがとうございました。私は信用金庫にいるものですから、ご説明いただいた中で、産学官に加えて金融の果たす役割はかなりウエートが大きくなってきているんじゃないかと思っているのですが、ご説明の中には金融の存在に触れられるところがなかったので、それはあえて触れられなかったのか、本当に地域の金融がここにそもそも加わっていないのかが一つお伺いしたい。もし加わっていないとすると、地域を構成している中小、やや零細側のほうの企業の皆さんの資金は、そう潤沢ではないので、金融の役割が出てくるはずなんですけれども、地域の中でも比較的大きな企業を巻き込んでいくと、そこは自分たちでやれる。ただし、冒頭にも話がありましたけれども、地域への波及が少ないという可能性はすごくあって、特にこういった研究開発段階での案件は、なかなか地域の中小企業には波及効果が少ないような気がしています。そういったところの2つをお聞きできればなと思います。

【清水委員】  総論でお話ししますと、岐阜県に西濃信用金庫があり、そこの理事長が名物的な方で、お亡くなりになりましたけれども、非常にリーダーシップをとっていました。ただ、グローバルとか、あるいは中堅の企業ではなくて、どちらかというと中小・零細、そういった方々との関係を築くためにご尽力いただきました。

 そういう取組は行っていただいていたんですけれども、やはり私が全国、今の立場で見て、金融機関に求められているのはフィルタリングの機能なんですね。何を言っているかというと、産学官金とおっしゃいますけれども、金は自分たちの取引している会社の情報を提供するだけではなく、彼らをどう分析しているのかという能力が必要なんですね。そこが実は求められています。例えば大学から見ると、いきなり会社を何十社も紹介されても困るわけで、きちんとしたフィルタリング機能を持って、この会社はこういう将来像、事業計画があり、こういったことができると非常にこの会社は伸びていくんだという分析まで求めていることが実は大学側であるんですね。

 ですから、実はそういったところまでしっかりと踏み込んでいる金融機関というのは結構少ない。あるとしたら、池田泉州銀行などです。池田泉州銀行は4,000万か5,000万のファンドを用意して、1件当たり額は少ないですが、200万投資します。そのためには必死に自分たちがどこにファンドを出すべきか、捨て金になりますから、しっかり審査しています。そういった機能を持とうとしていることは、やはり将来どれだけ投資をするのかをしっかり考えていらっしゃる。そういう印象を持っています。

 あと、公設試のトップの方、北海道だったと思いますけれども、工業試験場長を採用し、しっかり企業を分析して、大学に対しても情報提供のできる機能を持ち始めている金融機関が増えてきている。それは非常にまだ少ないというふうに思います。

 あと、2つ目ですね、実証事業や研究開発だと、実証事業に対する取組のほうがやはり企業から見ると重要であって、それは金融機関との間では特別重要だと思います。ですから、実証事業に対しての話と、こういった大学の先生のシーズを使う研究開発には若干距離があると思います。ただ、それらの事業では成果が得られますので、設備化していくときには、必ず立地支援事業を提案していくことを考えますので、そこに至るときにはもしかしたら金融機関の大きな力が必要になるのでなはないかと思います。

【近藤主査代理】   現実のご経験に基づいて大変に力強い提案だと思うのですが、スライド27を出していただけますか。

 私が危惧していますのは、科学技術政策とイノベーション政策が違うにもかかわらず、どうも混在しているのではないかという気がしてしようがないんですよね。清水さんの話された岐阜県庁の場合はどちらも全部やっているから構わないんですが、国レベルになると、これが別々のところがやっているので、そこが少しミスマッチで、パーセプションの誤解があるんじゃないかと思います。「地域科学技術政策の目標は、地域産業の活性化。売上、雇用に目に見える効果が必要」じゃないと思う。直接的には無理だと思う。ここに書いてある産産連携、私の分析によると、産産間の研究資金額は、産学間の研究資金額の10倍あります。実際、イノベーションを行うためには産産連携は非常に重要ですし、そのためには金融機関や、ベンチャーキャピタルなど、もちろんそういうのも全部必要です。

 ところが、科学技術政策ではそういう政策手段が全くありません。ないにもかかわらず、それが科学技術政策の目標というのは、私は不公平だと思います。科学技術政策にそういう政策手段があるのであれば、産業の活性化、売上、雇用に直接効果があると言ってもいいんですけれども、これはかなり究極的な目的であって、科学技術政策の直近の目標、評価で言えばアウトプットのところ、そこが本当に何なのか。それと、その後のアウトカムやインパクトにつなげるためには、イノベーション政策と科学技術政策で重なるところはもちろんありますから、先程の企業にお金が出ないという話もそうですが、どういうふうに切り分けていくかが私は大問題だと思っています。それは現場ではやはりここに書かれているように、科学技術政策とイノベーション政策というのが混在していて、科学技術政策をやれば地域が経済活性化して売上、雇用が増えるというふうに思っていらっしゃるんでしょうか。

【清水委員】  そう思っています。少し反論なんですけれども、やはり私どもが思うには、色々なレベルがあるわけですが、現実に、製造プロセスや新しい試作品をして、どういう機能が実際にあるのか、発揮できるのか、そういったことに取組むときには、やはり一つ一つの技術の積み重ねなんですね。例えばある一つの機能を果たすためには、やはり技術での解決しかないものがほとんどです。ですから、ある意味、科学技術の方向性とイノベーションを起こすことは一致させることはできると思います。確かに、すべてアウトカムを雇用や売上に直接全部結びつけなければいけないかというと、そうではないです。持つ知的財産だとか、あるいはノウハウなどが非常に重要ですので、それはすべてが売上、雇用につながらなければいけないというわけではない。ただし、もしこれまで主体者が自治体であったということであれば、やはり地域の中で、ある程度の期間で目に見える成果が出てこないと長続きしないのも現実です。ですから、そういう認識で施策を打っていかないといけない。

 ですから、先ほどから、研究者の私の立場では非常に寂しいのですけれども、ニーズを踏まえて、それにどれだけきちんとこたえていけるのかというところを考えないと、やはり長く続かないというのも現実だと思っています。

【福士委員】  私は、メディアの人間で科学技術の専門家ではないので、逆に、今日今日していただいた説明ですと、非常に具体例に基づいて問題の所在とか今後の方向性などがよくわかったと思いました。

 2点、補足的に説明いただければと思います。一つは、説明の中で伺っていまして、コーディネーターを初め人材の育成が非常にキーになるだろうと思いました。ただ、それに壁や障壁があるとしたら、やはり人事制度のようなものかと思いました。最後に人事システムのことに触れていらっしゃいましたので、どうしたものが望ましいのか、どういうふうなイメージを持っていらっしゃるのかを少し補足的に伺いたいというのが一つです。

 それからもう一つ、企業のニーズの掘り起こしについて、大変岐阜の場合はきめ細かい調査をなさったということですが、多分、企業のニーズというのは、企業側が意識しているニーズと多分意識していないニーズというものがあろうかと思うんですね。調査の中で、そうした、意識されていない、将来的に出てくるニーズのようなものも読み込んで掘り起こすことが可能なのか、それから、その調査をどういうふうに使っていけばプラスアルファの部分が出てくるのか、そこだけ伺いたいと思います。

【清水委員】  まず一つは人事のことですね。これについては、ある意味、それぞれの県庁の中で解決していかなければいけない問題だろうと思います。理想の姿というのが決してあるわけではない。これはほとんど説明しませんでしたが、私は、技術政策というのは色々な流れがあったと思います。かつては、基本計画ができる前は、どちらかというと公設試が中心で、技術相談、あるいは依頼試験に対応し、研究開発はできる範囲でやりましょうということでした。ところが、経済産業省や文部科学省が色々な産学官の事業をつくり始めて、それにコーディネーターが必要になるということで、産業支援財団の設立、拡充がなされました。

 今はどういう姿かというと、もっと地域のニーズの分析をして、それをもう少し域外も含めて、どういった関係者、企業、あと大学の先生も含めてやっていくことが重要かというところまで踏み込んでいく。これはいわゆる県の産業支援財団や公設試の役割ではなくて、県庁の役割なんですね。そこまで踏み込める県庁はそれほどない。現場のことも知っていなければいけないのですが、ある程度特化した分野であれば、グローバルにその道の専門家と渡り合っていけるような人材が必要だということです。

 私は、研究職員を所管しておりましたが、人事としては、いわゆる本庁、財団と研究所を行き来するだけではなく、文部科学省にも人が現在でも出ておりますし、色々なところに派遣をしています。県庁の中でしかわからないこともあるのですけれども、やはり外に出てみないと全国的なこと、あるいは海外のことはわかりません。ですから、産業技術総合研究所に例えば長く研修に出すこともやっておりましたが、そういったことをしていかないと、現実、指導できる人間は庁内にはほとんどおりません。人件費も事実上、削ることになりますから、そういったことをやって、人を育てるしかないと思います。

 もう一つ、先ほどのニーズの顕在化ですね。顕在化ができるかどうかということです。それはまさにできます。ただし、1回や2回ではなかなか難しくて、例えば研究者が確信を持った企業のニーズというのがあるんですね。現場の中小企業の方が持っているニーズというのもあります。ですから、どのニーズ質が高いか、これは何とも言えませんけれども、大学の研究者が持っているニーズも、実は本当のニーズがあります。ですから、そういったものを意見交換する中でお互い触発されて、企業の方も、なるほどと思うものは結構あるんですね。私どもが今、反省をするべきところがあったとしたら、岐阜県にいた際、どうしてもニーズ対応を求めたわけですけれども、やはり双方向の関係でないといけないというふうに感じました。つまり、大学の先生方は企業が言ったことに対してこたえていくだけではなくて、やはり研究所や大学がある意味提案をしていくことも重要だろうと思います。そういう意味で言うと、この文部科学省の事業は、そういったことも若干できたが、ニーズばかりに引っ張られるのは逆に言うと、ローカルな地域の企業を発展させていく意味では、企業のことだけを考えてやっていくことになりますので、それも問題だと、そういうふうに思います。

【福士委員】  ありがとうございました。

【有信主査】  清水さん、どうもありがとうございました。少し時間を超過してしまいましたけれども、非常に現実に基づいたお話で、先ほどの近藤委員からのコメントも含めて言うと、はっきり言って、科学技術政策とイノベーション政策がばらばらに進められてきたということは事実でありますし、それが今回の第4期の科学技術基本計画の中で科学技術イノベーション政策という形で言葉がでてきた。これは実は大きな転換期でありまして、その中で社会的な課題にこたえるイノベーションという視点で科学技術政策を考えていきましょうということになっています。さらに具体的に言うと、清水委員の説明にあった、地域の発展につなげるためには、地域のニーズから見て、大学のどういうシーズが重要であるかということを掘り起こしていくことにつながってくる。その地域の発展として何が重要であるか、あるいはその地域のニーズが何であるか、それを実現するための技術的なシーズがどこにあるかということを見る必要があるという意味では、やはりコーディネーターの存在が極めて重要だということなんですね。

 ただ、最初に清水さんの説明にありましたように、技術シーズオリエンテッドでやると極めて限られた話になってしまう。それを逆に言うと、ニーズにこたえるための技術シーズが地域の大学にあるとは限らないということにもなりますので、そうすると必然的に技術シーズはある程度広域的に考えざるを得ない。あるいは、広域を考えられなければ、人材をその地域の大学に集結するしかないということになる。コーディネーターの果たす役割が非常に重要になってくるということを今の説明で伺っていましたけれども、そういう意味ではこれからの評価や展開の上では非常に参考になったと思いますし、今後、産業技術総合研究所がそういう意味でも重要な役割を果たしていっていただければと思います。

 どうもありがとうございました。最後のまとめになっていたかどうかわかりませんが、一応、清水委員のお話に基づいた議論はここで終了させていただきまして、それでは、この次は、今後の地域の科学技術の推進についてということで、中間取りまとめの案が出されております。これは事前にもお送りさせていただいていると思いますが、これについての議論に入りたいと思います。

 では、事務局からご説明をお願いします。

【木村地域支援企画官】  それでは、資料3をご覧ください。「今後の地域科学技術の推進について(中間的とりまとめ:案)」という資料でございます。この資料につきましては、前回ご了解いただいた骨子案、これをベースにして、これまで3回にわたって委員の皆様方からいただいたご意見をできる限りコンパクトにまとめる構成にしております。大きな枠組みとしては、これまでの地域科学技術の取組を振り返った上でそれぞれの論点、そして最後に今後の取組、方向性ということでまとめております。

 先ほど、有信主査からお話がありましたように、先週末、ぎりぎりで申しわけございませんでしたが、一応、資料の原案を各先生方に送らせていただいております。その時点から若干の修正がございますが、大筋は変わりませんので、ここでは簡単に全体を流すような形でご説明させていただければと存じます。

 まず、これまでの成果の総括ということで、知的クラスター創成事業については、具体的な成果をあげ、いわゆる大きなイノベーションを起こすところまではなかなか行かなかった部分もあるものの、技術クラスターとしての一定の基盤整備などは相当できてきた。そして、科学技術振興機構、JSTにおいてもさまざまな地域の取組を支援する事業が行われてきました。特にプラザやサテライトの役割は非常に大きかったということを書かせていただいてございます。

 そして、2ページにまいりますと、昨年度より開始いたしました地域イノベーション戦略支援プログラムについて、若干の言及をさせていただいております。先ほどもお話がございました、科学技術、イノベーション、これを一体的に進めるという側面もあわせ持ちながら、文部科学省だけではなく、経済産業省、農林水産省と共同で実施している事業でございます。今後ともこの事業を続けていくことが効果的であるというふうに考えられるということをまとめさせていただいております。

 そして、総括して、文部科学省が果たしてきた役割ということで、これまでの地域科学技術の施策を通じまして、いわゆる多様化の戦略が一定の成果を見せており、一部のクラスターについては相当高いレベルにまで達しているということが言えると思います。

 こういった多様性の中からさらに競争力を持った、いわゆる我が国の成長センターとなり得るような拠点づくりも重要で、今後の新たなイノベーションシステムの構築に向けた取組を精力的に進めることが必要である。これは最後の今後の方向の部分に続いてくる話でございます。

 そして、(2)に入りますと、今後の地域イノベーションシステムの構築について、まず、大学等の研究機関の役割でございます。大学の役割ですが、教育、研究による知の創造、継承、それに加えて社会への成果還元という大きなミッションがございます。こういったものを引き続き踏まえながら、さらにその機能を強化していくことの重要性を書かせていただいてございます。

 3ページにまいりますと、産業界の役割ということで、イノベーションの出口側を担う非常に重要な役割を有していることから、特に産学連携を行う上で、国家的な課題を解決するようなテーマを実施する際には、やはり企業のリスクを緩和するための財政的な措置なども必要なのではないか。そして、シーズだけではなく、ニーズをベースとしてやはりビジネスモデルをつくっていかなければ、大きなイノベーションはなかなか生まれにくいのではないか。そして、中小企業の役割の重要性、さらにその中小企業の中でもベンチャー企業が大きな経済的インパクトをもたらす可能性があるということから、育成や支援が非常に重要であろうということを述べております。

 そして、金融機関の役割でございますけれども、先ほどフィルタリング機能というお話もありましたが、やはりマッチングも含めたコーディネーターのような役割が非常に重要であります。さらに言えば、4ページにまいりますと、金融機関の本来の目的であろうかと思いますが、将来性が見込めるようなビジネスモデルに対して積極的に資金を提供していただくための体制整備を期待するという趣旨で書かせていただいております。

 そして、地域におけるコーディネーターの役割も何度もお話に出てまいりました。単純にシーズとニーズをマッチングさせるだけではなく、これから広域化、国際化などもさらに進むにつれて、コーディネーターに求められる能力も多様化、高度化していくということで、こういったコーディネーターを育てていくような取組が今後とも必要になってくるのではないかということです。

 さらに、こういったクラスター事業などをまとめ上げるプロジェクトマネジャーの役割でございますけれども、これも単なる事業の進捗管理、資金管理、そういったものにとどまらず、世界で戦う拠点をつくっていく上では、最初から国際市場獲得をにらんだビジネスモデルをつくれるような戦略的な視点を持った人材が必要であろうということ、そしてさらに、その人材をサポートする体制を整えることによってプロジェクトを効果的に管理していくことが必要であろうということを述べてございます。

 そして、政府、地方自治体の役割でございます。ご案内のとおり、平成21年、事業仕分けがございました。国といたしましては、やはり地域の主体性に基づく取組ではあるものの、そこで不足しているものを側面支援していくという役割は引き続き持っているであろうという判断がありました。そして、その意味において政府が果たす役割は引き続き変わらないということ、そして、自治体がやはりリーダーシップを取っていただく必要があろうかということが書いてございます。どうしても今の経済財政状況の中、自治体の科学技術関連予算は年々減り続けています。特に公設試に対する予算の配分は10年間で約3割減っているというデータもございます。こういった中で、やはり自治体と国が一帯となって、地域における科学技術を進めていくという体制、引き続き強化をしていくことが重要であろうと思います。

 そして、JSTの役割についてもここで書かせていただいておりますけれども、今、東日本大震災からの復興再生を支援するということで、被災地域におきまして、地域の中小企業のニーズ、これを解決すべくマッチングを促進するための事業を開始したところでございます。また取組み始めたばかりでございますけれども、こういったものが被災地域にとどまらず、全国的な広がりを持っていくことによって、これまでプラザやサテライトの果たしてきた機能も補完できるのではないかということであります。

 そして(3)にまいりますと、地域イノベーション創出に向けた広域化・国際化戦略のあり方についてということであります。当然のことでありますけれども、国内市場だけに目を向けていては、今後の我が国の発展を期待できないということでございまして、今後、国際社会へのインパクトをにらんだ取組、そして国際標準などを主体的に獲得していくという意識を持った取組を進めていかなければならないという趣旨で、この広域連携の重要性、そして今まで得られてきた成果、それを地域の間で共有していく、知の共有の重要性、そして国際連携の重要性、こういったものをここで書かせていただいております。

 6ページ(4)にまいりますと、やはり地域イノベーションを支える一番大事な要素として、人材があろうかと思います。この育成確保、非常に重要な話でございまして、先ほど清水委員からお話がありましたような、地方自治体における人材育成の必要性を中心にして書かせていただいております。文部科学省においても地域イノベーション戦略支援プログラムの中で人材育成のための支援、幾つかのメニューを用意させていただいておりますけれども、こういった取組などを通じて、地域においてイノベーションに必要な人材がどんどんストックされていくかと思います。こういったストックされた人材についても地域におけるイノベーション達成度の一つの評価指標として役に立つのではないかというご発言もありましたので、ここに書かせていただいております。

 こういった論点を踏まえまして、今後、地域から出てくるようなイノベーションシステムをどのように構築していけばいいのかということについて皆様のご意見を踏まえながらここにまとめさせていただいております。今後、グローバル化していく社会の中で、非常に世界的な課題、人類共通に抱えている課題、こういったものを解決していかなければなりません。そして、今後、スマート社会というものが到来する中で、安全・安心、少子高齢化、生活の質、こういった社会的なニーズ、これを解決することも重要であります。今までも何度もご紹介がありましたように、地域における取組の中で、多くの優れた成果が出てまいりました。しかし、残念ながら大きな市場の獲得、あるいはその社会システムを変えるような大きなイノベーションはなかなか生み出されていないという現状があります。これを打破していくための新しいプラットフォームをつくることが必要なのではないかということで、この地域の力をむしろ国が使わせていただく、国の課題解決のために地域の力を使うということです。国が戦略的な課題をまず提示する。そして、その課題を解決するために必要な能力を有する人材、先ほどコーディネーター、プロジェクトマネジャーの役割というところでもご紹介いたしましたが、いわゆるスーパー目利き人材という戦略的なプロモーション、ビジネスモデルの構築などができる人を配置し、その目利き人材には権限の集中、そして当然、責任の集中、これも行いながらチームを結成して、そのチームがビジネスモデルをつくり、適切な能力を持った地域、あるいはその機関を結集して課題の解決に向かう。これによって成果の社会への還元を速やかに行い、選択と集中、そして今まで自治体単独でやっていたもの、それを組み合わせることによるシナジー効果を重点的に支援していく。

 さらに、技術だけにとどまらず、実証も重要であろうかと思います。幸いにして総合特区の制度というものも始まりました。こういったものの中で規制改革、制度改革なども行われています。こういった利点を活用しながら、社会実験も推進していくことにより、速やかな社会実装が可能になるのではないかということを期待しているという記述をさせていただいております。

 こういったトップのものを引き上げるというだけではなく、8ページ(6)に書いてございますけれども、さらに多様化を進めて、地域における研究開発、そしてイノベーションの基盤、こういったものをより厚くしていくという取組も引き続き重要であろうかと思います。最後のページにポンチ絵を載せさせていただいておりますが、これは平成20年に総合科学技術会議において決定された地域活性化戦略でございます。この中で多様性強化戦略と、グローバル拠点強化戦略の両面を強化していこうということが提言されました。多様性強化戦略のほうはかなり充実してきました。これからも続けていかなければなりません。それとあわせてグローバル強化戦略を、そのままの位置づけでやるかどうかは別にして、ただいま申し上げたような新しい取組を推進することによって、地域の基盤の厚みを増すと同時に国家的な課題の速やかな解決、そして社会実装の速やかな達成とをあわせて実現をさせていけるようになるのではないかということをここに書かせていただいております。

 最後、(7)今後、必要な検討事項についてということでございます。今回、時間の関係もございまして、駆け足でこの中間的取りまとめというものをさせていただきましたが、夏以降、さらに深い議論をしていただくということも含めまして、必要なデータを私どもでも集めさせていただきたいと思います。今後、より深い議論をさせていただくというつなぎの文章を入れさせていただいて、この中間的取りまとめの案、これを作成させていただきました。

 事務局からのご説明は以上です。

【有信主査】  ありがとうございました。

 それでは、今の説明に関して質問ないしご意見ありましたらどうぞ。

【受田委員】  今の中間取りまとめの案を拝聴しまして、大筋に関しては、この議論のプロセスをうまくくんでいただいているというふうに感じております。1つ、少し違和感があったのが、スーパー目利き人材という言葉です。この言葉が2カ所に出ていて、後半のほうは国が戦略的課題を提示して、課題を解決するために必要な能力を有している人材というふうに書かれておりますけれども、もう一つは、少しニュアンスが違っておりまして4ページの真ん中には、革新的なイノベーションを実現する上ではというところがあって、将来的な国際市場獲得までをにらんだロードマップを描けるような方というような書き方になっております。これが2つ、意味として同じことなのかどうか。多分、イノベーションという言葉の持っている定義であるとか、先ほどの議論なんかも踏まえて考えないといけない。

 あと、先ほど清水委員のプレゼンにもございましたように、コーディネーターの役割が重要であるということは、もう異論がないところであると思います。そのコーディネーターが果たすべき役割、ミッションが共有できているかどうか、ここが1つ、ポイントになっています。さまざまなとらえ方をされるような言葉によって、このコーディネーターが表現されれば、結局、本質的に重要なコーディネーターの育成とか、こういった方向にはつながらないのではないかと、そういう懸念がございますので、少しこの言葉について指摘をさせていただきました。

【木村地域支援企画官】  それでは、お答えいたします。

 ここで言っているスーパー目利き人材ですけれども、いわゆる今まで知的クラスターで配置していただいていた事業総括がございます。この事業総括につきましても、知的クラスターの目標に沿って、国際的な市場の獲得、あるいは高いレベルの技術の獲得というものに向けてチームビルディングをしていただいて、活動していただいたわけでございますけれども、先ほど申し上げたような、やはりなかなか大きなイノベーションが達成できていないという現状にかんがみれば、もう一段上の能力が求められるような取りまとめ役が必要になるのではないかと考えています。この人物が戦略的にリーダーシップをとりながらビジネスモデルをつくり上げて、それを強大な権限のもとに参加する研究者チーム、あるいは企業のチーム、こういったものを指導していく形にできれば革新的なイノベーションが生まれる余地も今後増えていくのではないかということでここに書かせていただいております。このスーパー目利き人材、必ずしもコーディネーターのことを意味しているというよりも、最後に載せさせていただいた、今後の新しいイノベーションシステムをつくる上で必要なマネジメント人材になるのではないかと、そういう位置づけで書かせていただいております。

【有信主査】  そういうことであれば、逆に、スーパー目利き人材という部分を、コーディネーターや事業統括といった部分の総括を踏まえた上で、明確にこういう人材が将来的にこういう役割を果たすべきであり、こういう人材を育成していく必要があるということをどこかで明確に書いておいて、それと現状のコーディネーター、あるいは事業統括とのかかわり方を記載するというのが一つ。それから、先程指摘された、コーディネーターの役割が非常に重要であるという部分の共有をしなければいけないということとの関係を少しどこかで明確にしておいたほうがいいような気がします。

【井上委員】  機能そのものはこのままで全然問題ないと思うんですけれども、実は結構前から目利きという言葉があるんですけれども、事業をやっている企業側から見ると、極めて評論家的な印象が強い言葉です。確かにリスクの可視化という観点では目利きとは最初、要るんですけれども、要するに評論家的にリスクをあげつらう方々というのはたくさんいらっしゃって、実際、日本の大企業病の根幹の部分の一つとは、そういう人材がかなり幅をきかせてしまっているところというのがあると思っています。

 一番重要な機能は、可視化したリスクを埋めることのできる方法論を知っていて、その方法論を実行に移すことが可能な経験値であるとか、あるいはネットワーク、人的なネットワークを有しているという、その下流のところが機能としてはやはり重要なんですね。リスクを可視化するところに目利きという言葉だと、そこに引っ張られている印象が強くて、現在、可視化させたリスクをどう埋めるのか、それをどう実行に移すのかという、2つ目、3番目のほうのプロセスのほうが、これからイノベーションを起こす上では非常に重要だと思います。だから、企業の人たちは多分、目利きという言葉にみんなアレルギーがあると思うので、むしろ目利きというよりもイノベーターだとかそういうキーワードが前に出るほうが、評論家的な印象というのは薄まると思います。

【木村地域支援企画官】  確かに、このコンセプトをあらわす言葉として目利きという表現が適当なのかどうかという議論はあろうかと思いますので、ぜひいいお知恵があれば先生方からいただければ思います。

【井上委員】  わかりました。

【有信主査】  そこのところは、補足しますけど、確かに目利きという言葉がかつて随分言われたことはあって、実は、先ほどの井上委員の言う意味のものよりももっと以前に、例えば研究開発を進める上での伯楽の役割、強烈な方向性を示すリーダーがいて、そのリーダーがすべてやるべきことをきちんとブレークダウンできないということもあって、周りの方は、本来の方向性を保ちながら、阪大の総長だった鷲田先生流に言うと、フォロワーという言い方になるわけですけれども、そういう役割になるんですよね。

 だから、今、井上委員が言われたような部分は、そういう人たちがやらなければいけないところで、加えて、事業統括にはある意味でリーダーとしての方向性を見る能力が要求され、先程言ったコーディネーターにはフォロワーの一部分の能力が要求される。だけど、そういう中で、それらを超えてこういう能力を持った人たちが必要であるということを、少し議論したほうがいいかもしれないですね。

【井上委員】  先ほど清水先生が言われていた、スーパープロジェクトリーダーという表現に非常に近いですね。

【有信主査】  近いかもしれないですね。

【木場委員】  今のつづりの最後に付いているポンチ絵、これは一緒に議論させていただいてよろしいんですよね。

 この中で、まさに今のスーパー目利き人材を国が選定するということについて、考え方に関しては私も異論はなく、スーパー目利き人材の定義自体もこれから明確にされていくと思いますが、例えば、手前みその話になりますけれども、この度事業採択いただいた取組に関して、私どもは既に、「食」あるいは「健康」の分野における取組を進めようということで、文部科学省あるいはJSTのその分野における各種事業の評価委員、あるいは講演等の演者としてリストアップされている国内外の極めて経験豊かな大手食品企業の方を誘致した。そうすると、まさに記述の内容やお話を聞いていると、このスーパー目利き人材そのものに当たるのではないかなと。このポンチ絵が今ここに出てきているということは、この議論というのはおそらく3月ぐらいまで続けられて最終的にまとめられる。しかし、財務省への概算要求の提出期限が来月末と決まっていますよね。そうすると、ここで出されたポンチ絵が概算要求の原型なのかなと考えると、これはお願いなんですけれども、既にそういう目利き人材に該当するような人材を誘致しているところに、またさらに制度として必ず目利き人材を配置するということを国が決めて、果たしてそれが適当なのかどうなのか。先ほど申し上げましたように、既に国等でリストアップされている方がそういう方々であるならば、屋根の上にまた大屋根かけることにもなってしまう。制度を設計される際には、その辺に十分ご留意いただきたいという意見であります。 それともう1点は、前回の会議の際にも少し申し上げたかと思うんですけれども、昨年の8月に国際競争力強化地域等の指定がなされ、そうした提案の理念を具現化していくための個々具体的なプログラムが、今年の6月に事業採択がなされた。もう少しさかのぼると、国際競争力強化地域の指定の前に、政権は違いましたけれども、グローバル産学官連携拠点地域の指定がなされている。そうした流れの中で、今回、新たな事業の枠を財務省に対して提案をされる際に、これは財務省との闘い方もあると思いますが、地域指定がベースになって、そして今回採択された事業において対応しきれない部分を、新たな枠組みで対応していくという一連の流れをベースに置いていただく必要があるのではないかと思うんですね。

 その際には、これは最後になりますけれども、文部科学省だけではなくて経済産業省、あるいは農林水産省と一体となって、施策を総動員するという地域指定の際の考え方もあるわけですから、文部科学省だけではなく他省庁と連携した来年度に向けての事業提案が、概算要求の中で何らかの新たな提案として出てくることを大いに期待をしております。

 すみません、意見であります。

【高橋(真)委員】  前回欠席してしまったのでまず確認なんですけれども、文書のタイトルです。資料3の「今後の地域科学技術の推進について」ですけれども、先ほどのSTまでなのか、STIが独立なのかという話の中で、この文書のタイトルは、副題で「イノベーションの構築と成果の速やかな社会実装に向けて」とありますけれども、あくまでもSTIの全体の中でのSTの推進についてというところでまとめますか。文章の範囲なんですけれども、中に書いてあることは結構Iの部分なので、どういうふうな位置づけにするかというところをまず伺いたいです。

【木村地域支援企画官】  やはり最終的な目的はイノベーションであり、イノベーションシステムを構築する上で科学技術もその一部であることは当然なわけでありますので、もちろんご議論いただければと思いますけれども、イノベーションを入れることで考えられればと思います。

【高橋(真)委員】  イノベーションを入れる。

【木村地域支援企画官】  はい。

【有信主査】  「今後の地域の科学技術イノベーションの推進」でもいいのかもしれないですね。何となく言っているうちにそんな気がしました。

【高橋(真)委員】  多分、このペーパーの人材のところ、それから、(5)のシステムの構築のあたりは、STプラスIなのではなくて、STをベースにしたIが重要と、そんなことをおっしゃっていたと思うんですけれども、そこに力点が置かれているからこそ、(4)と(5)の意味があると思うんですね。ということを踏まえると、多分、タイトルはもう少し、STIのIの部分が重要であるというところを明確にする。先ほどお話しいただいたのもそういうことだと思うんですけれども、確認です。

 まず、前提として、色々あるんですけれども、とりわけ人材の部分は大切で、教育をしていかなければならないということになると、この委員会だけではなくて、やはりそこで終わってしまって思考停止になってしまう部分というのがどうしてもあるような気がします。そこをもう少し具体的に、かつ、現場をとらえた感じにしないと、これは色々な方がもちろん見られて、政策的にも大きな次の国としての事業の構築という意味づけも持っているとは思うのですが、あえて申し上げると、やはり地域や現場で、自分が当事者としてこういう仕事をしている人たちにとっても大きなメッセージになると思うんですね。そこのところをやはり少し視点を入れていただきたいということで、何を申し上げたいかというと、目に見えるキャリアパスなど、要はどこに仕事があるか、場所をしっかり国としても構築しなければならないということを、メッセージとしてはうたってあるんですけれども、それがどんなに難しいかは、既にこの委員会では言わずもがなだと思うんですね。

すべてを自分の中で内包するだけではなくて、これからの社会はネットワーク型や、他の力を使いこなすというところがキーになっていると思うので、まず一つは、コーディネーター以外の名称でもこういう機能をしている人をまず取り込むということと、現在、色々なセクターに所属しているとは思うのですが、セクター間の流動も含めて、全体としてのコーディネーション機能を提供する人材の流動性を高めることによって、全体を向上させていくというところを、もう少しメッセージ性として出してほしい。例えば先ほどの事業総括など、そういった人たちは、コーディネーターという名前ではないが、既に十分、それなりのポテンシャルを持った人たちである、というような、現実を踏まえた上でも国としての大きな観点を入れていただくことによって、現場の当事者たちにも少し先が見えてくるのではないかと思うので、ぜひそういう観点を入れていただければと思います。

 また、7ページ目のところで具体的に1点、書きぶりのところの内容を伺いたいのですが、7ページ目の一番上と下と大きくパートが分かれていると思いますけれども、上の部分の8行目で「さらに、研究者の集積だけでなく……」と書いてあるのですが、その「さらに」のこの一文は、研究者を厚くすることが重要だと書いていらっしゃるのか、それとも研究支援人材、いわゆるコーディネーション部分の人材に特化した話をしているのか、少しこの部分の趣旨がわからなかった。タイトルにも関係してくることかもしれないのですが。厚い研究者集積が起こるとともに若手の育成にもつながるというのはどういうことか、お返事いただけますか。

【木村地域支援企画官】  では、まず、7ページの8行目の研究者の集積のところですけれども、これについては、今、地域イノベーション戦略支援プログラムのほうで、研究者の集積を図るため、外部からの研究者の招聘の事業を行っております。それで、ただ研究者を一瞬、イニシャルの段階で呼んで、それっきりにすると、それからもう全く広がりを持てなくなる。その来ていただいた研究者の方に続いてどんどん新たな研究者の方にその地域に来ていただけるように、サポートするさまざまな体制、人的な体制、ハードの体制、そういったものを整えていくことによって、より研究者が魅力的に感じるような地域をつくっていくという、ある意味、チェーンリアクション的な効果を考えてここに書かせていただいているということでございます。

 それから、人材育成全般に関してなんですけれども、当初、第1回目でご了解いただいた検討事項の一つの柱として掲げておりますが、今回、時間の関係でプレゼンテーションの時間も取れなかったので、夏以降、さらに十分な時間を取った上で地域における科学技術イノベーションを進めていくための人材の育成、確保方策について審議させていただきたいと考えております。

 そういった経緯もあって、若干、一般論に近い形の記述になっていることはご理解いただければと思います。

【高橋(真)委員】  ありがとうございました。

【髙橋(一)委員】  2つございまして、一つは、3ページには金融機関の役割と入れていただき、ありがとうございました。4ページになったところで、まさに中小企業の足元の資金繰り、財務のバランス悪化、預貸率の低下はこのとおりでございます。ただ、その後に、金融機関が事業計画の評価の支援、あるいはその次の段の、ビジネスモデルに将来性が見込める計画に対しては積極的に投融資をしていく。本当にこのとおりだと思うんです。ただ、ずっとこういったこと言われてきて、できていないんだと思うんですね。なぜかというと、決して私どもができているとは言いにくいですけれども、金融機関の人間に事業計画の評価を、BS/PLの分析以外のもの、例えば先ほど話題になった技術の目利きなどは金融機関の人間にはできないのではないかと考えている。朝一番には飲食店に行って、お昼には板金、金型業に行って、夕方には運送業に行くわけですから、それぞれのノウハウを金融機関が理解しろというのは、これはなかなか難しいところです。では何ができるかというと、それぞれの業際のところをだれに聞けば教えてもらえるのか、どの大学の先生に応援してもらえるのか、そういう目利きではなく、僕は口利きならできるんだと思うんですね。そういうことを金融機関に求めていくべきで、先ほどから議論になっていますが、むしろ金融機関の役割は次の段の地域のコーディネーターの役割に近いのではないか。技術のレベルを上げていく支援と経済効果を上げていく支援って、これは明確に違うと思いますが、金融機関は実はさまざまな業種の取引があるので、地域と取引をするというイメージは金融機関と取引をするというイメージでまとめてもいいんじゃないかと思うぐらい、例えば販路の開拓も可能な小売業もインターネットの業者との取引もありますので、そういった、そもそもどうやって売るかを考えた上で、何をつくるのかを考えることは金融機関はできると思います。

 金融機関に求めていかなければならないのは、そもそも金融機関は、融資をしている先のお客様の中小企業のところで、でリスクを抱えている。足元の資金繰り、財務のバランス悪化をそのまま見過ごせば、それは自分たちのリスクにそのまま返ってくることになるので、やらなければならないのは金融機関の側がコーディネーターの役割を果たすべきなのではないかと考えている。その上で、専門家の方々にお墨つきをいただければ、この技術は将来性があると自信が持て、投資も融資もしていく。そういう覚悟は持つべきだと思いますけれども、そこが入り口と出口が少し逆のような気が少ししました。

 もう1点は、私どもは2万社に融資をしていて、毎日、中小企業に立ち会っている立場で申し上げると、地域には既に、国、都、市、区、商工会議所、法人会、あるいは私ども金融機関、公設試の方々など、さまざまな支援機関が多くあって、それぞれが今はもうワンストップ型になろうと名乗られて、多くの支援策が実はもう企業側には提示されています。ところが、企業側から見ると、1つもそういう支援策を受けていない企業がたくさんあるのが現実だと思います。そのギャップが大きいところへ、新たに1つ支援策を示したとして、そのインパクトはもしかすると弱い可能性がある。必要なのは、先ほどのご意見と近いですけれども、例えばそういう地域ごとに既にそろっている支援策のプラットフォームの役割を地域の大学が担っていただいて、そこに行けば地域の支援策が全部そろう、あるいは基礎的な研究開発は中小企業がしなくていい、そういう役割を果たしていただくほうが、現場から見るとありがたいような気がします。

 以上です。

【有信主査】  今の、地域の金融機関の話のところで少し気になるのは、これは今のお話に反対というわけではないんだけど、研究開発をやっていく側の立場から見ると、会社の中でも財務と研究開発側というのは常に対立する。それは何故かというと、財務は基本的に保守的なんですよね。研究開発のほうは常にある種のリスクを負っていかなければいけない。そのときに、例えば資本コストのような考え方で、きちんと将来の価値を見ながら今のリスクを評価するというような判断の仕方を金融機関の方がきちんとしていただけるのであれば、今おっしゃったとおりの話だと思うんですね。ですから、そういうことも含めて今のことは考えていくといいと思っています。

 研究開発を実施する側は、逆に言うと、資本コストも考えずに、リスクを無理やりとってしまうので、その辺のバランスをどこかでとっていかないといけないんですよね。だから、そういうところを少し検討の中に入れたらいいと思うんです。

【髙橋(一)委員】  やや私見ですけど、私は金融機関の側が、そういうところにお金がかかるのであれば、それは金融機関が負担しても、専門家のご意見を集めていく仕組みだとか、全国の金融機関ができれば共有化できるようなものができれば、もっとこれは進むと思います。

【有信主査】  今の髙橋委員のような感覚をすべての金融機関が持っていてくれればよいのだが。

【髙橋(一)委員】  ところが、金融機関は今までそこの目利きを自分たちでしなさいと求められてきたような気がするんですよ。自分たちでそれを用意しなさいと、自分たちで理解しなさいと言われてきたが、それはとうとうやはりできなかった。トライしたこともございますけれども、やはり自分たちがインターネットでちょこちょこと調べたようなものはやはりうまく当たらないんですよね。そういうことは私どもの金融機関では随分失敗しました。

【松原委員】  一言だけ個人的な意見をポンチ絵に関して言わせていただきます。

 基本的な方向の中でかなり気になる点は、国主導など、国という言葉がかなり出ている点です。国側がかなり責任を持ってやるという意気は非常に重要だと思うんですけれども、地方分権の世の中で、国が要するにこういったスーパー目利き人材を選定するという書き方について、もう少し目配せがあったらいいのではないかというふうに思います。

 以上です。

【近藤主査代理】  書き方の整理だと思うんですけど、先ほど高橋真木子委員の続きのようなことなんですけど、やはりこの報告書のトーンは、地域の科学技術イノベーションシステムの構築における地域科学技術政策の役割というのがポイントだと思うんですが、そういうトーンでもう一度少し見直していただきたい。どこにそれが出てくるかというと、(2)のイノベーションの構築については、大学と研究者、科学技術政策が主たる政策対象とするところですね。それ以外の産業界の役割とか金融機関、これは書いてあるけど、直接にはなかなか政策対象にできないと思うんですよ。

 少し飛ばしますが、それを受けて、4ページの政府、地方自治体のところで急に文部科学省の役割になってしまうので、少し具体的に予算要求に結びつき過ぎてしまう。やはり、産業界の役割、金融機関の役割で、せっかくベンチャーの企業の支援をしていくことが重要であるとか、金融機関の役割が重要だと言っているんですから、この政府、地方自治体の役割について、文部科学省以外の地域科学技術イノベーションシステムの構築に当たって、特に書いてありますけど、もう一度、イノベーション政策的のところを、例えばベンチャーの支援や、それから企業の研究開発とか企業の産産連携の支援、金融機関に対してどういうふうに支援したらいいのかわからないけど、少し書いておいて、さらにその上で文部科学省の役割を書くと。それでここに書いてあることを書き下していかないと、国の役割の部分でイノベーションのところがあんまり抜けてしまっているんですね。そこは少し足していただいたほうがいいのではないかなという感じがします。それがコメントです。

 細かいところに行きますと、(1)のこれまでの成果のところなんですが、もう少し何か印象に残るような書き方ができないでしょうか。つまり、何かこれっていうもの、例えば一つは、私は本当に知的クラスター、経済産業省の産業クラスターなど、日本でクラスターが少なくとも重要だという概念を、かなりの小さい企業の方までも含めて浸透させたことは、僕はものすごい効果だと思うんですよ。だから、少なくともクラスターというものの認識を日本でもって植えつけたなど、そういう定性的なことでもいいですし、それから、何千件成果があったというよりも、例えばこういうところに、これは使われているとか、そういうイメージが1つあると、ここのところが生きてくるんですね。クラスターはものすごく広まったとか、新聞の記事件数を数えてもいいですけど、何か印象というか、シンボルのようなことがあればうれしいなということです。

 それから、4ページのところの、特にプロジェクトマネジャー、先ほどから議論になっていますけれども、こういう必要要件は書いてあるんですけど、2つできれば書いていただきたい。プロジェクトマネジャーは、映画で言えばプロデューサー兼監督で、実行してもらうことが大事なので、こういうことを立案する人ではなくて、立案できる人材によってプロジェクトを遂行していくとか、何かさらに強いイメージがないと、何となく管理というパッシブじゃなくて、もう少しそういう積極的なトーンを出してほしいというのが一つと、もう一つは、国が選ぶかどうかわからないんですけど、やはり何らかのインセンティブシステムをも含めて書けないか。

 例えば、国のもともとの補助金というのは、収益納付で成功したら戻すというんですけれども、何か、成功したらボーナスがあるなど。どういうふうに評価するかは難しいですけど、何か、こういう人たちの取組に対してインセンティブが与えられるような政策が書けないか。表彰、メダル、国民栄誉賞候補でも何でもいいんですけど。お金があまりかからないのであれば。何か、これだけのことを、人材を選んで、責任を持ってやってもらうのであれば、それに見合うものをあげられないか。今、直にアイデアがないんですけれども、それだけがお願いです。

【有信主査】  今のインセンティブは、多分、プロジェクトマネジャーやコーディネーターなど、こういう人たちをいかにうまく顕彰できるかということだと思うんですよね。それから、今の近藤委員の話を聞いていて、やはり表題は地域科学技術の推進、あるいは科学技術政策なんですよね。だから、文部科学省がやるべきことにイノベーションまで落とし込むのがよいのかどうか。ただし、その前提は、今、近藤委員が言われたように、その下に書いてあるような新しいイノベーションシステムの構築ということが重要で、それを構築していく上での科学技術をどう推進していくか。それに対して文部科学省が一体何をやるべきかと、こういう話になってくるのではないかと思うんですね。

【土屋科学技術・学術政策局長】  我々の中で考え方が少し整理でききっていないところもあるのですが、地域科学技術をすること自体が我々の目的ではなくて、まさしく新しいイノベーションシステムをつくること。そのときの方法論として地域の科学技術をどうしていくか。それは、日本の中の東京一極集中型でやるのではなくて、地域のそれぞれの多様な研究リソースであり、アイデアであり、そういうものを活用していくことが新しいイノベーションを起こすことになるだろうと、こういう発想で。

【有信主査】  それはそのとおりだと思います。それをどう表現するかという話。

【土屋科学技術・学術政策局長】  そうですね。そのときに最後に、今おっしゃったのは、少し最近の文部科学省の反省事項なんですが、科学技術で完結するのではなくて、イノベーションのところまで持っていかないと、要するに研究投資にしたものにならない。これが去年の地震の教訓の一つと思っておりまして、それは意図的にイノベーションのところまで確実に持っていくということをしたいと考えております。

【有信主査】  そういうことでしたら、別にそれでよいかと思います。昔のことにこだわっていましたけど。

【木村委員】  今まで色々とご議論が出ましたのであれなんですが、少し言葉でやはり気になるところがありましたので。7ページのところで、(5)の最初から5行目、「これまでの述べたように、地域科学技術振興……にもかかわらず」とありますが、「これまで述べたように」というのは、「にもかかわらず」までかかるのか、あるいは「革新的イノベーションがあまり生み出されていない」というところまでかかっているのかというのは、少し文脈で読み取れない。加えて、多くの優れた成果が輩出されたと言い切っているにもかかわらず、今ずっとご議論ある話かと思うんですけれども、この革新的なイノベーションや、社会システムの変革につながることが一体何なのかというのが、若干、この文章のほうからは読み取れない印象を受けました。ここは結構大事なポイントなのではないかという気がします。

【木村地域支援企画官】  わかりました。その点について、わかりやすく書き分けてみたいと思います。

【有信主査】  色々議論いただいていますが、一つは、人材のところで、4ページに書いてあるコーディネーターの役割、プロジェクトマネジャーの役割は皆さんそれぞれ重要だと意見があり、この中で、先程言ったスーパー目利き人材をどう位置づけていくかというところを少しクリアにしていくということと、それから、先程のように、それぞれのところで幾つか出たものについては、もう少し議論を続けていくということと、最初の表題の科学技術の推進か科学技術イノベーションの推進かというところについては、今の局長のご意見のように、イノベーションまで入れても文部科学省は困らないということであれば、それはそれで入れたほうがわかりやすいのだろうと思います。

 今日の議論はこの段階でいいのですか。

【木村地域支援企画官】  はい。もう1回、議論する時間を設けさせていただいています。

【有信主査】  わかりました。今日、それぞれ皆さん方の議論の中で、幾つか疑問点が出て、なるほどというところも色々ありましたので、出たご意見をそれぞれ踏まえて、もう一度よく読み込んでいただいて、一方で、また手直ししたものを事前に送っていただけるということで締めたいと思います。

 それでは、この議論はここまでにして、あとは事務局から連絡事項をお願いします。

【竹下専門職】  次回の第5回委員会につきましては、7月25日、水曜日、10時から12時、今回と同じく16階の特別会議室で開催を予定しております。こちらの会議におきまして引き続き今回議論いただきました中間まとめについてまたご意見をいただければと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 また、本日、旅費の書類等、必要なものがございましたら事務局までご提出いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 以上です。

【有信主査】  どうもありがとうございました。

 それでは、これで閉会にしたいと思いますので、よろしくお願いします。

── 了 ──

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