産業連携・地域支援部会 産学官連携推進委員会(第15回) 議事録

1.日時

平成24年12月10日(月曜日)14時~16時

2.場所

文部科学省 東館 16F特別会議室

3.議題

  1. 産学官連携によるイノベーション・エコシステムの推進について(とりまとめ)
  2. その他

4.議事録

【柘植主査】  それでは定刻になりましたので、ただいまから産学官連携推進委員会の第15回を開催いたします。
 本日は、2年にわたる今期の委員会の最終取りまとめを行う予定でありまして、「産学官連携によるイノベーション・エコシステムの推進について(とりまとめ)」の最終審議をする予定でございます。
 そして、その後、もし時間ができるようでしたら、内閣府の総合科学技術会議の最新状況を簡単に御報告させていただくとともに、今期最後の委員会になりますので、各委員から是非一言ずつ頂きたいと考えております。
 それでは、初めに事務局から配付資料の確認をお願いします。
【鷲﨑専門官】  それでは、配付資料の確認をさせていただきます。お手元の議事次第に沿って、資料1から2を配付させていただいてございます。
 まず資料1でございます。A4縦長、「産学官連携によるイノベーション・エコシステムの推進について(とりまとめ)(案)」というペーパーでございます。
 続きまして、資料2でございます。「総合科学技術会議(CSTP)における科学技術イノベーション政策の検討状況について」という、こちらもA4縦長の配付資料でございます。
 机上配付参考資料といたしまして、9月13日に取りまとめていただきました中間的取りまとめを冊子の方にとじさせていただいてございます。そして、もう一つ、下から4ポツ目でございますけれども、平成23年度大学等における産学連携等実施状況調査につきまして、10月26日に報道発表してございまして、こちらもアナウンスがおくれまして大変恐縮でございますが、机上配付参考資料として、冊子の方にとじさせていただいてございます。
 またもう1点、本日、マイクの調子が悪いということでございまして、委員の方、お2人に一つという形で配付させていただいております。大変申し訳ございませんが、御了承いただければと思います。
 以上でございます。
【柘植主査】  それでは、本日の議事に入りたいと思います。産学官連携推進によるイノベーション・エコシステムの推進についての取りまとめ(案)でございます。
 先日、事務局から委員の皆様にメールにてたたき台を送付いたしまして、様々な角度から貴重な御意見を頂いたところであります。それらの御意見を踏まえまして、修正を加えましたものを、本日、最終的に取りまとめたいと考えておりますので、まず事務局から説明をお願いいたします。
【工藤室長】  それでは、今、主査から御説明いただきましたように、先日、既にメールでたたき台を事務局から示させていただいていますことから、私からは、簡単に本報告書の構成について御説明いたしたいと思います。
 まずお手元の資料の報告書(案)につきましては、もともと今年9月の中間的取りまとめ、「イノベーション・エコシステムの確立に向けて早急に措置すべき施策~イノベーション創出能力の強化に向けて~」という文書がございましたが、これをベースに、これまで議論いただいたことをつけ加える形で作成されております。具体的な変更点を含めまして、御説明いたしたいと思います。
 最初に「1.はじめに:現状認識」として、これまでの産学官連携の取組、歴史展開等を述べている部分を書き下させていただいております。内容といたしましては、共同研究、産学官連携のこれまでどのようなことが行われてきたか、更にアメリカ等の状況を記載させていただいております。
 続きまして、3ページ目の2、センター・オブ・イノベーションの構築です。こちらは9月における中間的取りまとめにも既に盛り込まれている事項でございましたけれども、ここに現状の予算の状況を踏まえまして、字句修正をかけたものを記載させていただいております。
 もう1ページめくっていただきまして、続きまして、4ページの(2)の「大学等におけるイノベーション創出機能強化の取組(シーズ・ニーズ創出強化支援)」とありますけれども、こちらも9月の中間的取りまとめにおいて、事業として来年度の施策を考える上で御提言いただいた内容について、字句修正等をかけさせていただいております。
 次のページ、「3.産学官連携を担う人材の育成」「(1)シーズ・ニーズ創出をコーディネートする人材の育成」、更にもう1ページめくっていただきまして、「(2)リサーチ・アドミニストレーターを育成・確保するシステムの整備」、それから(3)としまして、「産学官連携を活用した教育の重要性」、こちらにつきましても、同じく現況を踏まえて字句修正等をさせていただいたものをここに書かせていただいております。
 7ページ、「東北発科学技術イノベーション創出の継続」、こちらの方もほぼ同じとなっております。
 8ページ以降、「今後の産学官連携の検討課題」といたしまして、これは前回、前々回、2回にわたって、まだこの委員会において十分検討できなかった事項について、4点ほど御議論いただきました。それもこれまでのところ、なかなか結論が得られるようなものではなかったということもございまして、今後も継続して議論が行われて、早く結論が行われることを期待する内容という形になっております。
 内容につきまして、まず(1)の「産学官連携システムの見える化」につきましては、こちらも柘植主査から御説明いただいた内容を踏まえて、各参加者が生み出すところの「知」を社会経済的価値に結合するシステムが欠けている点については、大体共通認識が得られたと考えております。
 しかしながら、受け渡す価値と評価、渡し手と受け手の関係性についてはいろいろな御意見が出されたということを踏まえまして、このような価値のフローというものが一方通行とは限らず、多様性があることと書かせていただいております。また、この点につきましては、今後の課題として、次期以降の委員会において検討されることが期待されることが述べられております。
 続きまして、9ページの(2)になりますが、「国による戦略的な知的財産活用支援」、こちらにつきましても、これまでの産学官連携が極めて技術ということを中心に考えておったんですけれども、ものづくりとサービスというものが非常に近い形で提供されるという現状を踏まえますと、これだけでは十分ではなくて、意匠権や著作権なども含めて、今後、総合的に技術移転を考えていく必要があるということを述べさせていただいております。
 さらに、今年からJSTの方で特許群支援という事業が行われております。この特許群支援を今後更に推進していこうと考えがございますけれども、これについては、JST知的財産戦略委員会で、昨年7月からこの点をどうするかという点について議論されておりますので、それを踏まえて、今後また引き続き検討があるという形にさせていただいております。
 そして、「(3)成果指標の活用方策及び大学知財本部・TLOの連携」となります。こちらもこれまでの産学官連携について、我々の産学連携等実施状況調査におきまして、これまで共同研究の件数、受託研究の件数、特許出願件数や実施件数、こういったものにつきましては統計をとってきております。しかしながら、こういった形のいわゆる数を追うような量的な拡大の側面というものは、これまでの産学官連携活動の基盤整備がなされている現状におきましては、ほぼ大体自律的にできるようになってきているのではないかと考えております。そこで、今後はこのような量的な側面だけではなくて、質的な面を評価しなければならないとしております。
 しかしながら、この質的な面を評価するに当たって、なかなか産学連携等実施状況調査ではフォローし切れないような、企業において実際それが特許としてどれだけ実用化されたものであるのか、共同研究の結果がどれだけ実用化されたというような情報量がなかなか得られないということがございまして、こういったものを得ていくというのが今後の課題とさせていただいております。
 1枚めくっていただきます。成果指標の在り方につきましては、経済産業省と文部科学省が共同して、今、機能評価における検討調査を行っておりますけれども、これを注視いたしつつ、今後の活用方法に対しまして、引き続き検討が必要という形で結んでおります。
 最後に「(4)社会的要請への対応」という形になります。こちらについても、これまで科学技術・学術審議会の中においても、日本の科学技術というものは要素技術の開発に偏りがちであって、社会における実際の運用までを考慮したシステム化が行われない傾向にあります。この結果、科学技術の成果が課題解決、社会実装に結びつかない場合があるのではないかという指摘、研究課題を設定する段階で、ユーザー、応用分野の研究者、人文・社会学者等との広範かつ積極的な連携などにより、積極的に社会的ニーズを掘り起こし、それを適切に課題に反映する取組を強化することが必要ではないかということや、今年の6月に「大学改革実行プラン」において、大学が地域の課題を直視して解決に当たる取組を支援し、大学の地域貢献に対する意識を高め、その教育研究機能の強化を図る、これを旨とした大学COC(Center of Community)機能の強化等の問題が提起されております。
 また、こういう問いに答えるためには、いかなるものが社会的ニーズであるかということをまずマネジメントする方法論を検討しなければなりません。前回、この委員会におきまして、九州大学の湯本先生等から紹介いただきました、デザイナーに用いられている消費者ニーズを捉えるようなやり方を活用しながら、今後、社会的ニーズが一体どのようなものかというものを掘り起こして、これを更に実態の研究開発の方に結びつけていく手法の取られ方が今後必要になっていくのではないかということが考えられております。
 この点につきましても、これまでの上記3点と同じように、まだまだ検討課題という形になりまして、今後引き続き議論されていくことが望まれているものでございます。
 最後に、結びといたしまして、これまで述べさせていただきました産学官連携の現状、課題、こういったものが今後更に絶え間ない検討を行うことによって速やかに実行されることを期待いたしまして、今回の報告書とさせていただいているという結びの形となっております。
 さらに、参考資料といたしまして、委員会の場に提出されました幾らかのポンチ絵と、委員会の委員名簿、そしてこれまで開催された審議経過といたしまして、主な議題の一部、そしてこれは7月の会合のときに使われているものでございますけれども、文部科学省の方で認識している産学官連携の現状について御説明した資料をつけさせていただいております。また、最後にURAに関する説明資料も同じく添付いたしております。これによりまして、今回の報告書の全体の構成とさせていただいているところでございます。
 私からは、以上です。
【柘植主査】  ありがとうございます。約30分から40分ほどの時間をとりまして、ただいまの最終案に向けて、最後のブラッシュアップのサジェスチョンなり、これは反映しなくても心配事であるということの御発言でも結構でございますので、是非御意見を頂きたいと思います。いかがなものでしょうか。
 永里さん、どうぞ。
【永里委員】  反映しなくてもいい心配事という話でちょっとお話ししますと、9ページ目の「(2)国による戦略的な知的財産活用支援」の第2パラグラフでは、「我が国の国際知財戦略上重要なテーマについて、核となる特許を中心とした」、ここに書いてあることは全てそのとおりなんですけれども、私が心配するのは、我が日本の周りに知財をコピーするような国がたくさんあって、そういう国々に対しても、一企業がその国のコピーを阻止するなんていうのは非常に無理がありますので、国が知財戦略としてそこを巻き込んで、先進的な形でちゃんと契約を守るという方向に持っていかないといけない。
 具体的に言うと、TPPに入ってもらえばそれでいいし、あるいはFTAに入ってもらって、その辺をばしっとやるという国の支援というものが本当は必要だろうと思います。そこのところについて、これでそういうことが読めるのかどうかというのは、私はまだ精査しておりませんけれども、そういう懸念を持っております。
【柘植主査】  今の件について、関連する御意見……、渡部委員はどうでしょうか。同じだと言うのか、そんなに悲観しなくても大丈夫だと言うのか。
【渡部委員】  ここで議論できる範囲かどうかですよね。どうしますか。問題だとは思いますが。
【柘植主査】  やはり問題であると。
【永里委員】  三木先生の御意見はどうでしょうか。
【三木委員】  ちょっと急に言われてどぎまぎするところですけれども、確かに今は物の模倣だけではなくて、知的財産の模倣ということが非常に進んでいますので、もし書き加えることがあるとすれば、やはりブラックボックス化すべき知財と公開する知的財産権、これをしっかりと区別していく、そういうイノベーションの在り方ということが、今、問われているというのはあると思うんです。このコンテキストの中で果たして入れることが可能なのかどうかというところについては、ちょっと私も今の時点でははっきりとした判断ができません。
【柘植主査】  ここの9ページの(2)では、我々というか、科学技術・学術政策の面での範囲では書いてあるけれども、今の永里委員のおっしゃった話は、それ以外のものに対して読んでもらえるように何か工夫が要るんじゃないかということなんですけれども、事務局、何かございますか。確かにこれは我々の所掌の範囲をしっかり書いているなということなんですけれども。
【里見課長】  もし可能だとすれば、例えば「見える化・パッケージ化及びライセンシングを支援すべきか」と書いているところがありますけれども、これは3行目のところですが、その後あたりに、例えばライセンシングした後の国際的な視点からの保護とか、そのような用語で少し書き加えるということでしたら可能かとは思います。
【柘植主査】  そういう趣旨でつけ加えるということでしていただきたいと思います。
【里見課長】  そうですね。よろしいでしょうか。では、お預かりして、文脈を考えさせていただきます。
【柘植主査】  ほかにいかがなものでしょうか。どうぞ。
【渡部委員】  今のところを見て、改めて思ったんですけれども、5の「今後の産学官連携の検討課題」の一番文末を見ていきますと、最初の5ポツの5行目は「期待するものである」と書いてあって、(1)のところが「検討されることを期待する」と書いてあって、(2)が「検討を行う必要がある」と書いてあって、そういうふうに読むのがいけないのかもしれないですけれども、主語が、自分が検討すると書いてあるのと、期待するって、人ごとじゃないんだけれども、受け身みたいな形で書いてあるのと、微妙に違うんですよね。(4)は「必要である」と書いてあって、これは意図的に変えてあるのか、あるいは別にそんなことは考えていなくて、みんな「必要である」という意味なのか、そこは確認です。
【工藤室長】  ありがとうございます。意図的なことはありません。最初の5ポツの柱書きの5行目で「今後も継続して議論が行われ、なるべく早く結論が得られることを期待するものである」とありますように、引き続く四つの点が、いずれも早く結論が得られることを期待するものであるという点については変更ございません。そういう意味で、最初の1ポツの最後の書き方も、「課題であり、必要である」と変えるべきものと考えます。
【渡部委員】  例えば見える化なんかは、ある意味アカウンタビリティーとしてすごく重要な話なんですけれども、誰かが検討してくれることを期待するというふうに読んでしまうと、ほかと違うように見えたりするので、もう同じだったら同じにそろえていただいた方がいいんじゃないかと。
【工藤室長】  済みません。そこは修正させていただきます。
【柘植主査】  工藤さん、そうすると、ほとんど次期体制も含めた主語であると。もちろん外部の協力参加は当然のことながら、そういう趣旨で統一しましょうか。
【工藤室長】  はい。そういう意味だと、(1)の最後のところは、やはり「必要である」に直していくのが適切であると考えております。
【柘植主査】  ありがとうございます。ほかにいかがなものでしょうか。
 私自身も感想なんですけれども、8ページの「産学官連携システムの見える化」の中で、今期、下から三つ目の「加えて」というところに幾つかの重要な施策を始めたわけでありますけれども、ここに「これらの取組の効果を検証する必要がある」ということで、これは非常に大事だと思うんです。往々にすると、事務局もいずれまた交代してしまうと忘れられてしまうわけですけれども、特に私が心配していますのは、リサーチ・アドミニストレーターの育成・確保、これは今期の我々の委員会の大きな目玉としてスタートしているわけですけれども、これは私自身もかねがね各大学の総長、学長が優秀なリサーチ・アドミニストレーターを持たないと本学は危ないとか、そのぐらいの危機感を感じるまで根づかないと、多分資金が終わったときにはまた消えてしまうという類いになってしまうのは、私は今でもまだ思っていまして、今後の取組の効果を検証するということは非常に大事な話だと思って受け取っています。
 これについてはよろしいですか。何か一言ありませんか。
【高橋委員】  では、ちょっと補足させていただきたいと思います。ありがとうございます。6ページの(2)のところと、人材ということで言うと(1)のコーディネーター人材も同じかと思うんですけれども、人材が絡んだ話は、当事者にとっては人生を左右する話なのでしっかり議論・検討する必要があると思っています。恐らく、当事者レベルの自発的な活動をエンカレッジするレベルでと、組織レベルのシステムの話と、国レベルでいろいろなところにいる人材を全体としてどうエコシステムとしてつなげていくかという、少なくとも三つのレイヤーがあると考えます。
 この2年間の会議の中でも、何回かこのことについて議論させていただいたと思いますが、柘植先生の御指摘のとおり、これまでの施策があるがゆえに、効果がなかなか当事者や組織レベルで見えないところもあるので、それを是非次の会議でも継続して検討いただき、上のレベルで見ていただきたいと思います。
 その際に関連で申し上げれば、この委員会の親の学術審議会の中には、たしか人材委員会というものもあったと思います。そういうところの議論となるべく連動して進められるような形があればと思いますので、今後の課題として書いていただければと思います。
 ありがとうございました。以上です。
【柘植主査】  関連かその他のことで結構でございますので、羽鳥委員、どうぞ。
【羽鳥委員】  御指名いただきまして、ありがとうございます。やはりこれからの時代、人材育成というのが大事ではないか。何回か議論があったかと思うんですけれども、目ききというものが日本にはあまりいないとか、あるいはプロデューサーみたいなプロデュースできる人があまりいないみたいな議論があったかと思うんです。そういったものをどういうふうに育成するのか。例えばURAもいろいろな職種の方が大学に集まってURAを構成していると思うんです。それに対して、例えば単なるポスドクの有効活用というのではなくて、もっと積極的に大学の研究成果、これはいろいろなレベルのものがありますけれども、それと産業界をどうやったら結びつけられるか。そのときに、先ほどもあったんですけれども、社会的要請への対応とか、そういったことも踏まえながら、かなり高いレベルになるでしょうか、最終的には大学の研究成果が一番イノベーションのもとになると私は思うんですけれども、それと社会的ニーズと産業界のマニュファクチャリング能力をうまく結びつけられる人をどういうふうに育成するかということが今後の大きな課題ではないかと思います。そういった意味では複合的ですね。幾つかの項目にまたがって、それをかなり高いレベルでプランできる人、あと実行力のある人、そういったものをどういうふうに育成するかということが大きなテーマかなと思います。
 それは、この検討課題の中から直ちに読み取れるかというと、散らばっているかもしれないんですけれども、今後はそういった人が必要かなと思いました。ありがとうございます。
【柘植主査】  ありがとうございます。今のお2人の御指摘で気がついたんですが、6章の11ページの上の2行目に、今年の8月1日の科学技術・学術審議会の中間まとめの「東日本大震災を踏まえた今後の科学技術・学術政策の在り方について」、ここについては、私も人材委員会の主査をしているもので、社会的課題の解決に向けたシステムプラス教育という言葉まできちんと書き込んでもらいまして、そして、これはこの間の総会であと会長預かりで、私の予想では、今期の集大成として1月にはもうきちんと脱稿すると聞いているわけです。
 したがいまして、この2行目の中間まとめというのは、もしこれを発行するのと同期できれば、中間まとめではなくて、最終まとめといいますか、多分日付は1月になると思うんです。12月ではなくて……、それは無理ですか。
【里見課長】  はい。ちょっと……。
【柘植主査】  そうですか。つまり中間まとめより、今の高橋委員の御発言の人材も含めて、かなり書き込んであるんです。ですから、14ページの参考資料にも、我々の審議経過だけではなくて、まさに産学連携だけではなくて、人材育成の施策と複合的な構造のイノベーション・エコシステムというものが必要なんだと。そういう面で、この参考資料に是非最終報告が引用できないかなと。時間的に無理ですか。中間取りまとめよりは大分今の議論に近づいています。
【里見課長】  先生、これは審議会の下にある部会の委員会なんです。ですので、順番からしますと、この委員会の報告をむしろ最後に審議会に上げることによって、審議会の報告が最終まとめになるという構造なんです。あちらの親会の方が最後に出てくるという構造になっているものですから、ちょっと逆に時計を回すのは難しいということで、御理解いただければと思います。
【柘植主査】  何かわかったようなわからないような感じですけれども、この間の科学技術・学術審議会の総会の資料ももう公表になっていますね。あれは案ですけれども、それは引用できるわけですね。
【里見課長】  それは可能です。
【柘植主査】  あれには相当この産学官連携、人材も反映されているんですよね。
【里見課長】  そこは可能だと思います。
【柘植主査】  では、その案で結構なので……。
【里見課長】  案のところで。はい。承知しました。
【柘植主査】  そして、11ページもこの表現を変えて、中間まとめではなくて参考文献にも引用するという形で、来期、是非それがベースになって次のものに進めるようにしていただきたいです。
【里見課長】  そのときは最終のものを。はい。
【柘植主査】  ほかにいかがなものでしょうか。郷治さん、お立場上、いかがでしょう。
【郷治委員】  ほぼ私は異存ございませんけれども、あえて申し上げれば、このイノベーション・エコシステムに参画する関係者の例示の中に「金融機関等」とある箇所に、ベンチャーキャピタルと入れていただけないかと思います金融機関「等」で読めるという考えもありましょうが、通常、金融機関等と聞いてイメージするのは多分銀行さんだろうと思いますので。また、もし産業革新機構も入ったらもっといいかなと思ったのですが。私が勝手に言ってしまうとまずいかもしれませんけれども。
【土田委員】  いや、よろしいんじゃないですか。私が決めることではないですけれども。
【柘植主査】  ベンチャーキャピタルがなかなか日本で育たない、日本の弱点のところをむしろ意識的に書いておいた方がいいというふうに、私も郷治さんのお話を伺いまして、やっぱりベンチャーキャピタルも加えましょう。
【郷治委員】  あと産業革新機構さんも。
【柘植主査】  その産業革新機構という名前も入れるわけですか。
【郷治委員】  入ったらまずいなら、別にこだわるものではありません。入った方が自然かなと思ったんですけれども。
【土田委員】  済みません。私が決めることではないので、文科省の方で経済産業省とよくお話しいただいて、入れていただいても私は問題ないですし、産業革新機構としても、今、この分野は注力している分野ですから、ただ、役所同士の話があるでしょうから、よく御議論いただければということです。
【柘植主査】  では、前向きに検討するということで。
【里見課長】  はい。そうさせていただきます。
【柘植主査】  ありがとうございます。
【井口委員】  ちょっとよろしいですか。
【柘植主査】  井口委員、どうぞ。
【井口委員】  被災地へのお金の入れ方ですが、今朝宮城県の産業振興機構では補助金・出資への審査等をやってきたばかりです。そのときも確かに貸倒れとかの心配があって、審査が慎重にならざるを得ないのは分かりますが、是非いろいろな施策でサポートすることが重要であり、そして、それぞれの出先機関はもっとできるだけスピードアップできるところはスピードアップしなければいけないという話をしてきたばかりです。まさしく今のベンチャーキャピタルも地域の金融機関も、いろいろ国がこういう被災地の支援をしていることが、これも一つの見える化だと思い、是非、お願いします。
【柘植主査】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょう。高橋委員、どうぞ。
【高橋委員】  ありがとうございます。9ページ(3)の今後の検討課題のうち、成果指標についてです。まず文言の確認なんですが、(3)の1行目、産学官連携活動のアウトカム指標として、これまでの調査があったと書いてあるんですが、この、アウトカム指標だというのはもう確認されていたことでしょうか。というのは、前回、渡部委員の方から、今後こういう活動をしっかり確認するためには、特許出願数だとか共同研究件数だけではなくて、それが何を生み出すかという御議論があって、そこはまず把握するのが難しいけれども、今後きちんとそこを打ち立てていくべきだという話があったかと思います。
 ですので、その文脈からすると、今までにしてきた状況調査というのは、いわゆるファクトをしっかり把握するためのものとしては非常に有効な指標であるが、アウトカム指標として位置づけられたかどうかというのはまず確認したいところだと思ったんですが、いかがでしょうか。
【工藤室長】  ありがとうございます。御指摘の点について、もしかしたらインプットの方かもしれないんですけれども、文脈といたしましては、3行目から続きますけれども、「実施等収入額等に代表される量的な側面が取り上げられてきた」とつながってきています。したがって、必ずしもアウトカム指標として産学連携等実施状況調査が確定しているものではないんですけれども、ほぼそれに類する機能として扱われてきたということを述べているところでございます。
【里見課長】  アウトカムはなくても……。
【高橋委員】  いいですね。
【里見課長】  はい。結構です。
【高橋委員】  その方が……。
【里見課長】  ということですよね。承知しました。
【柘植主査】  アウトカムを削って、指標としてということで。
【里見課長】  はい。
【柘植主査】  そういう形で修正して、文脈としては「しかしながら」という形で質的な面という話になってきます。アウトカムを誤解を受けないように削るということですね。ありがとうございます。
 ほかにいかがなものでしょうか。牧野委員、大分この中でコメントを頂いていたと思うんですけれども、こんな反映状況でよろしいでしょうか。
【牧野委員】  ちょっとだけ気になったことがあります。2ページ目の四つ目のパラグラフの3行目のところに、「大学発ベンチャーの設立数」というところでだけ唯一ベンチャーという言葉が使われています。アメリカの大学等々の産学連携について見てみると、ベンチャー設立による産業界への寄与というのが非常に大きく、いわゆるエクイティー収入というものだと思いますが、その割合が高ければ高いほど、たくさん立派なベンチャーをつくってきていると考えられると思います。それがこの国ではなかなか行われていない。
 すなわち、ベンチャーをどうやってつくっていくかというのは非常に大きなポイントだと思うんですが、「これからの目標」のところには、あまりこれまで成功例は少ないけれども、ベンチャーの設立と、いかに成功したかなどをどこかに書き加えておいていただくと、今後検討するときに、そういう点がまだ大事な宿題として残っているというのが明確に示せるのではないかと思います。その辺がちょっと気になりました。
【柘植主査】  具体的に今の2ページで見ますと、下から二つ目の「一方」というパラグラフは、アメリカの強みをしていて、2ページの一番下の「翻って」というところが日本となっていますので、牧野委員のおっしゃったところは、「翻って我が国」というところで、先ほどは金融機関にベンチャーキャピタルも加えてということで、たしかここでしたか。ここではなかったでしたか。
【郷治委員】  いえ、11ページです。
【柘植主査】  11ページの方でしたか。
【郷治委員】  ええ。11ページの。
【柘植主査】  絶え間ない話ですね。2ページの「翻って」という一番下のパラグラフに何かこういうふうに修文してくださいということを言っていただけると有り難いんですけれども。どうぞ。
【工藤室長】  むしろ、牧野先生の今の思いを受けとめるとすると、ページとしては11ページの結びの文章に今後ベンチャーの育成とさらなる発展という部分を書き加えて、今後、検討に乗せていくという方がよろしいかと思われます。入り口はあくまでもファクトしてアメリカと日本の現状を述べたものでございますので、よろしいでしょうか。
【牧野委員】  私もそう思います。是非今後の検討課題として、多少目に触れるような形で、宿題として残しておいていただけたら有り難いと思います。
【柘植主査】  そうすると、結びの絶え間ない推進という中に、先ほどの上から6行目の金融機関のところにベンチャーキャピタル、それとベンチャーというものを今の工藤さんの趣旨で書き加えていくということでよろしいでしょうか。確かにそこまで書くかどうかは別としても、米国と比較して、ベンチャーキャピタルにしても、ベンチャーにしても、日本の弱点だと思うんです。
 森下委員、どうぞ。
【森下委員】  今の牧野先生のお話の続きですけれども、是非結びにも書いてほしいんですが、今があまりひどいひどいと言うのもちょっとあれなので、2ページの上から3段目、「新規の大学等発ベンチャーの年間設立数」という一文がありますが、ここがもともと2行しかなくて短いので、この前に少し現状の成功例も書き込んでいただいた上で、11ページの結びに入れていただくと、よりはっきりするのではないかと思います。全然うまくいっていないと言われるとちょっとつらいので、うまくいっているケースもあるけれども、エコシステムが機能していないので、現状、これからこうしなきゃいけないという話に持っていった方がいいんじゃないかと思います。
【柘植主査】  工藤さん、よろしいですか。
【工藤室長】  はい。
【柘植主査】  ありがとうございます。いかがなものでしょうか。永里委員、産業界のところで。
【永里委員】  今の牧野先生のはもっともなんですけれども、何で日本はそうなんだろうかというそもそも論でいくと、デフレ下で、リスクを取らない体質になってきているんです。そっちの方が問題で、まずそっちの方を直さないと、幾ら言ったって、担保を取ってやる金融の方々と同じような発想でベンチャーのリスクなんか取れませんので、本当はそっちの方が重要なんですが、そっちはうまく書けないんですか。
 要するに、今、日本の体質そのものが問われているんです。どんどん日本が地盤沈下している理由は、まさしく実は教育界、産業界……、産業界の人間として言います。産業界を含めて、リスクにトライしていないというところが問題だと思います。何かそこをうまく書けたらいいと思います。
【柘植主査】  まさに経団連がしっかりしてくれればという感じも。半分冗談ですけれども、郷治さん、お立場上、何か御意見。
【郷治委員】  リスクを取れない方は取れないので、仕方がないんじゃないですか。あまりそこを書いても、多分、変えられないだろうと思います。
【柘植主査】  そう言われるとそうですね。
【永里委員】  そうしますと、日本はどんどん地盤沈下しますよ。どうもそういう傾向が出ていて。
【郷治委員】  ただ、日本の大企業に変われと言っても、実際、多分変えられないと思います。
【永里委員】  それを大企業病と言うんです。
【郷治委員】  大企業の方に対して、私どもから変えてくださいとは言いにくい。
【柘植主査】  どうぞ。
【北澤委員】  その点から言うと、海外からのキャピタルが入ってき始めているように思うんです。ですから、しばらく前まではシリコンバレーなんかは日本の企業の出先機関としてのベンチャーがやっていましたよね。
【永里委員】  ありました。
【北澤委員】  日本のお金を使って向こうであれしていて、これからアメリカとかそういったところ、あるいは中国かもしれないけれども、そういったところのお金が入ってくるということに関しては、どういうふうにお考えになります?それでも別にかまわないじゃないかというのもありますね。
【永里委員】  私は迎えた方がいいと思います。活性化すると思います。要するに、日本の中でフリクションが起こった方がいいと思うんです。それをみんな仲よくやっていきましょうというんだったら、日本は救われないと思います。
【北澤委員】  ここが非常に難しいところで、日本が開発した技術を最後まで全部日本がやらなきゃいけないかどうかという、ここに対する我々の考え方は必要なところはあると思います。
【永里委員】  議論すべきところですよね。
【柘植主査】  前田委員、どうですか。
【前田委員】  ありがとうございます。非常にきれいにまとまっていて、いいかなと思うんですけれども、何となく全体を読んだイメージなんですけれども、ものづくりとかマッチングというイメージが強くて、何かものづくりじゃなくてことづくりなんじゃないかなと最近ずっと思っていて、ものづくりよりことづくりをしないから、日本はなかなか新しいものが出てこないんだと思って、そういうふうに書きたいんですけれども、どこに入れたらいいかなというのが浮かばなくて、手を挙げないでいたんですけれども、読んでいると、どうしてもニーズの掘り出しとかマッチングとか、そういう色合いが強いので、やはりことづくりしないといけないのかなと、最近は特に自分では思っているんですけれども、どこに入れていいかがわからないので、難しいなと思いました。
【柘植主査】  この中で相当な方が来期もおりますので、期待していますので、今の話は修文を今は具体的にはできないと思うんです。ありがとうございます。
【渡部委員】  今の点なんですけれども、多分前田委員のおっしゃったところは、今後やるところの社会的要請への対応のところに入るような話ですよね。
【前田委員】  そうなんですよね。うまく入れられるかなと思ったんですけれども、ここに書けばいいと言えなかったので。
【渡部委員】  そういうことですか。
【橋本委員】  よろしいですか。
【柘植主査】  今の点ですか。どうぞ。
【橋本委員】  前にもお話をしたかと思うんですけれども、標準化とか規則づくりというものが、例えば意匠とかそういうところと関連して非常に大事なことだと思うんです。自由な発想でいろいろな技術ができてくると。それを価値づけるのがある意味では標準化だと思うんです。そういうことを社会の要請に応えるというところでは、入れるべきだという気がするんです。ですから、成果の一つとして、何かができたというよりは、ある決まりができたと。新しい常識ができたとか、そういうことがある意味では何かをプルする一つの大事な要素ではないかという気がします。そういうものを指標として入れていったら良いと思います。
 書きぶりをどうしたらいいかはわからないのですが、例えば総合的技術移転という中には、そういう新しい常識づくりみたいなものは必ずあるんだろうと思うんです。ことづくりがどうかは別ですけれども、新しい分野に価値を見いだすような決まり事といいますか、そういうものをつくっていくというのは、アメリカなんかを見ていますと、非常にそういうのが上手で、技術的に何もできていないのに標準だけつくって、あとは何とかなるというようなやり方をやって、しかもそれが確かに商売になっていたりするということがあります。そういうことも非常に大事な要素じゃないかなという気がいたします。
【柘植主査】  いかがいたしましょうか。10ページの社会的要請の中で、今期は大震災も踏まえまして、社会的課題とか潜在的なニーズとか潜在シーズという、こういう形でよくことづくりというのも、広い意味でものづくりの中には当然ことづくりが入っているんだという人もいるし、ことづくりという言葉を使わないと駄目だという人もいますけれども、あえてものづくり、ことづくりという言葉は入れなくても、私としては今のような言葉で盛り込んでいるんじゃないかなと思うんですけれども、具体的な修文の提案がありましたら是非にと思いますけれども、もしございましたら。
 よろしいでしょうか。そうしましたら、予定の時間が来ていますので、今、何点か充実化への修文の提案がございましたので、資料1の形でプラス修文いたしまして、主査一任とさせていただきたいと思います。そして、本委員会の最終取りまとめという形で出したいと思います。我々の活動の2年間にわたる貴重な御意見がここに相当盛り込まれたかと思いますし、次期体制への申し送り事項としても活用してもらえるかと思います。
 それでは、CSTP、総合科学技術会議の活動状況を事務局の方から報告してもらいまして、そして、それも踏まえながら、皆様方から今期最後の委員会になりますので、一言ずつ頂戴したいと思います。それでは、事務局の方から説明をお願いできますか。
【工藤室長】  それでは、資料2をお手元に用意していただきたいと思います。この資料の位置づけですけれども、現在の総合科学技術会議、科学技術イノベーション政策の検討状況について御報告させていただこうというものでございます。
 1枚めくっていただきます。今、総合科学技術会議でどのようなことが行われているかと申し上げると、7月30日に本会議が開催されまして、その場で野田総理から、アンダーラインを引いておりますけれども、「総合科学技術会議においては、本日の議論を踏まえて、システム改革等イノベーション実現に必要な施策の在り方について、年末までに対応方針を取りまとめていただくようお願いを申し上げる」といった、総理指示を頂いております。
 これを踏まえまして、総合科学技術におきましては、メンバー表の次のもう1枚をめくっていただきますと、第8回科学技術イノベーション政策推進専門調査会会議資料がございます。これは先月の19日に開催されたときに議論のたたき台として提示されたもので、このたたき台をもとに、今、イノベーション創出のための施策の取りまとめが進んでいるところでございます。
 簡単に内容を御説明いたしますが、先ほど永里委員の方から、リスクに対するチャレンジの必要性といった内容の御発言がありましたが、それに非常に近いことがこの中で議論されております。そういう意味でおりますと、当委員会のフォーカスしているところよりももう少し広く大きな構えで議論がされています。総合科学技術会議は日本全体の科学技術政策を議論するところでございますので、当然ではありますが。
 では、簡単に御説明いたします。まずこの中では、第4期の科学技術基本計画に基づきまして、イノベーション政策推進専門調査会というものと復興・再生戦略協議会、グリーンイノベーション戦略協議会、ライフイノベーション戦略協議会、そして最後に基礎研究及び人材育成部会というものがございます。この中で議論されている中で、特に我々に関係が深いものはイノベーション政策推進専門調査会でございます。
 資料2-1を1枚めくっていただきまして、1ポツとして、まず何が足りないのかということをこの中で議論されております。そして、3点、復興を含めると4点ですが、我が国において必要とされているイノベーション施策に課題を頂いておりまして、最初に、これは科学技術基本計画の方で記載されております課題達成型科学技術イノベーションというものがございます。これは、特定課題の達成の目的のもとに、科学技術だけではなくて、それ以外の行政分野、いわゆる規制緩和といったものを含めて、関係府省や民間も含めた多様なプレーヤーが一体的に融合して施策を形成・推進する必要があるということを提言されております。
 この中の対応方針の例として、一つに課題達成型プログラムというものを設定いたしまして、こういうものが民間を含めた関係府省全てそろったプレーヤーとして一体的に推進するものということを取り上げております。
 またもう1ページめくっていただきますと、第2の点として、オープン・イノベーションに対応した「知」の結集が必要であるということが述べられております。特に改革すべき点として挙げられているのは、国際的な研究者の取り込みや国際的研究機関との連携が不足しているということが述べられております。これに対する対応方針のあくまでも例ですけれども、大学・公的研究開発機関の研究開発拠点の環境整備ということと、あと国益に資する場合に、外国企業の参入ルールや条件の整備、先ほど知財の話が若干あったかと思いますけれども、これについてもこの中で議論されるものでございます。
 そして、3ポツ、ここにリスクへの挑戦ということがございます。ここで述べられているのは、先ほどの議論に非常に近いんですけれども、研究開発型ベンチャーとか、こういったものをもっと推進していこうということが述べられております。特に対応方針の例として既にここで挙がっているのは、金融型支援としての一つとしてベンチャーキャピタル機能の活用ということがうたわれております。
 最後に4ポツとして復興・再生の早期実現ということがこれに加えて議論されております。また、課題達成型科学技術イノベーションの推進になりますけれども、基礎研究力の抜本的強化ということも議論されておりまして、この中では基礎研究強化のための基盤づくりや基礎研究強化のための人材マネジメント改革、いわゆる若手研究者問題の解決、それから競争的資金制度そのものの在り方、こういったものも議論の俎上に上ってございます。
 私からは以上です。
【柘植主査】  ありがとうございます。
 ただいまから時間が許される限り、先ほどの取りまとめとも関連していると思うんですけれども、各委員の思いというものを開陳していただけたらと思います。総合科学技術会議に対しての提案、懸念事項も含めてで結構でございますので、御発言いただけますでしょうか。
 井口委員、大変御心配をされていると思います。
【井口委員】  井口でございます。私は、地域や地域の規模の小さい大学、あるいは高専を含めた教育・研究機関の立場でお話をさせていただきたいと思います。今回、イノベーション・エコシステム、このようにまとめていただいて、是非これをいろいろな施策に生かしていただきたいということと、更に検討を続けていただきたいとお願いします。地域とかそういう小さい規模のところは、例えばコーディネーターとかリサーチ・アドミニストレーターの有能な方を迎え入れる余裕がないわけです。でも、地域イノベーションを支えるというと、そういう地域の大学だとか高専は全国にありますので、そういうところが更に地域連携とか地域の課題を解決するために重要であるという意味で、是非JSTをはじめとして、その辺のサポートの施策ができてほしいなというのが私の希望でございます。
 以上です。
【柘植主査】  ありがとうございます。もう最後ですので、この順番で、宇野委員、一言。
【宇野委員】  産業の方から参画させていただきました宇野でございます。2年間参画させていただきまして、大変勉強になりました。
 本日のまとめを見ましても、やはり最後に書かれていますように、今後、これら施策の効果を十分に検証していくことが大切になると思いますので、是非検証をよろしくお願いしたいということと、もう一つ、先ほども議論がありましたように、今後、イノベーション創出システムを確立していくためには、社会的ニーズの深掘りというか、取り込みが重要になってまいりますので、引き続きそちらの方の御検討をよろしくお願いしたいと思っています。どうもありがとうございました。
【柘植主査】  北澤委員。
【北澤委員】  私は山中さんや細野さん、間野さんとか、何人かの方の研究開発の基礎研究が始まるところから、それから技術としてかなり拡大していく場面とか、そういうところに立ち会わせていただいて、見て、感じたところなんですけれども、日本でも、有能で、なおかついい着想を持ち始めたときに、その若い人たちをちゃんと育てるというようなメカニズムがあれば、彼らは世界に伍してやっていけるということは十分に証明されたと思っているんです。
 ただし、そのときに、我々の反省事項としても、大勢で評価するということで、点を足し合わせて評価する場合には、必ずしもあの2人もいい点を取ったわけではないということを考えたときに、そこにちゃんと目ききの人を入れて、それでその人たちをかなり強引に育ててきた部分もあるわけですけれども、そのグループをいつも目をかけているような人がいないと、しかもそれはかなりのレベルの人で、例えば山中さんだったら岸本先生とか、細野さんだったら柳田先生とか、いろいろな人がいたわけですけれども、そういう人たちが見守りながら、10年とかそのぐらい育てていくとああいうふうになっていくということがよくわかったんですが、もちろんその最初のきっかけというのはとてもいいアイデアだと認められなくちゃいけないんですけれども、それで、それなりのお金を連続してつぎ込んでいくと、そういう中に全員が成功するわけじゃないんですけれども、そういうあれがあると。
 だから、その意味で出てきたやつを育てるという、これはわりと楽なんです。もうiPSが出てきたら、これを普遍化していく。これを考えるのは非常に楽なんですけれども、例えばまた第2の山中さんをつくっていくというのは、そういったところのシステムを何とか減らさないようにしてやっていかないと、日本としてはその次のものを次々と出していくようなシステムも必要だなと思っています。
【柘植主査】  ありがとうございます。郷治さん、お願いできますか。
【郷治委員】  今の北澤委員のお話、大変いいお話を聞かせていただいたなと思ったんですけれども、私は技術の成果はある程度ある上で、その後、どうやって事業化して、ビジネスにして、売上げを立ててというところをやっているわけなんですが、そこの過程に入った後も全く同じでございまして、幾ら学会で非常に評価される段階まで行ったとしても、もちろんそこに行くまでも大変なんですけれども、行ったとしても、その後、投資家のお金を実際に注入させていただいて、本当に5年、10年とリターンまで持っていけるかというのは本当に長いプロセスなので、そこの部分をやり切って、初めてイノベーション・エコシステムが完結し、かつ好循環になっていくと思いますので、そこの仕組みづくりというのは、一ベンチャーキャピタルごときでできるものではありませんので、是非国、革新機構さんとか関係機関含めて、日本全体でそういった動きが広がるような仕組みができるといいなと。
 その中で、今回、2年間議論させていただいていたイノベーション・エコシステムが本当に実現し、かつ継続、サステーナブルなものになっていくのかなと思いますので、今後も期待し、かつ課題として認識しております。ありがとうございます。
【柘植主査】  ありがとうございます。それでは、高橋委員。
【高橋委員】  今後に向けてということですか。
【柘植主査】  どのような思いでも。
【高橋委員】  ありがとうございます。私は産学連携をアカデミア側で推進するある種間接的な業務をいろいろな役職名でやってきたんですが、教育、研究、社会貢献というアカデミアの3番目のミッションに対しての国の投資は、これまでが拡大期だとすると、平準期に入る、若しくはここから少し微減があり得る難しい時期に入っていくんだと思っています。
 その中で、コーディネーター、ライセシング・アソシエイト、リサーチ・アドミニストレーター等の関節人材に対しては、我々は施策の適切な運営をきっちり見ていく責任があるかと思っています。どの委員会、どのレベルでやるのが適切かというのは別にして、国としてのスタンスというものを、責任感を持って長期的に見ていく必要がとりわけ人材に関してはあると思っておりまして、そういうメッセージが今回のレポートでも少し出ていると思いますけれども、選択と集中も含めて、今後もこういうミッションをこの委員会が果たしていければと思っています。ありがとうございました。
【柘植主査】  ありがとうございます。では、常本委員。
【常本委員】  ありがとうございます。皆さん御存じのように、この2年間ぐらい、家電産業の地盤沈下が極めて顕著にあらわれていて、これはやはり継続的なイノベーションの重要性を皆さんが認識したんだろうなと思っております。その一つの方法として、今回、ここの委員会が産学官連携の強化を打ち出して、いろいろ施策を検討されたことを大変評価していただけるのではないかなと思っております。
 ただ私、大学関係がちょっと長かったものですから、先ほども基礎研究力強化というところがすごく気になっていて、現在いる先生方の研究力をすぐイノベーションに持っていくというのと、もう一個は基礎研究力をしっかりつくり上げて、次のイノベーションをつくり出す。そのためには、どうしたってドクターを増やさなきゃいけないんですけれども、日本はドクターが減り始めている。これをどうやって解決できるかが、またイノベーションの継続性に大きな影響を持っていると思っています。
 産業界を見ていますと、産業界は人とらない、金は出さないと。アメリカの学生は大体、奨学金もらってドクターを育てているんですけれども、日本の場合はそういう例が非常に少なくて、そういうところからも改善してもらわないと、継続的なイノベーションが保たれないのではないかなという危惧をしております。そんなことも含めて、今後、このような検討を推進していただければと思っています。
 2年間、いろいろ勉強させていただきました。ありがとうございました。
【柘植主査】  じゃあ、土田委員、お願いします。
【土田委員】  2年間、大変お世話になりまして、ありがとうございました。
 ビジネスサイド、あるいは私のような金融サイドからいたしますと、日本には大変優秀なシーズがあると。いろんな学会でも発表されているというのが、なぜ事業化も含めて産業化がなされていないのかと。こういったのは、いわゆるベンチャーキャピタルも含めて金融機関の目にもとまらない。様々な金融サイドの問題もございますけれども、私の方からは、アカデミアの方の敷居が高いとか、インターミディエーターの存在が不足しているとか、そういった問題があるというふうにこの会議に参加する前までは思っておりました。
 一方で、いわゆるコーディネーターの存在ですとか、あるいは本会議期間中にリサーチ・アドミニストレーターのスタートといったことで、少しずつ何らかのものが動き始めているということではないかなと思っております。
 ただ、実際的には、私のようなそういったシーズを見ていく人間、あるいはそこにリスクマネーを入れる人間の立場からいたしますと、実際的にはまだまだ相当大きなハードルがあると思っております。
 例えば、日本の産学官連携を実務型の方で、ここには実業界の先生方もたくさんいらっしゃるんですけれども、私が目の当たりにしている人たちは、実現可能性が低いものは産学官連携で、もう少し可能性が高いものは自分たちでとか、こういうような言葉が、残念ですけど、日常茶飯事のように出ているのは事実です。
 一方、ドイツでは、自動車産業を見ていただくとおわかりのとおり、エコシステムが産学官連携という形でできておりまして、やはり次世代。次世代といっても5年から七、八年、こういった、もう実装のレベルに近いようなものが学術界に委託をされ、そしてその研究開発した人間が民間に行きというエコサイクルがなされていると思っております。
 そういった意味では、私は二つ、次のこの委員会の方々で御議論いただければ幸いだと思っておりますけれども、一つは、今までこれだけの科研費等を全てかけてきた中において、民間レベルにもっと、アンケートも含めて予算をとって、本音を聞き出すべきではないかと思っております。冒頭、1回目のときに申し上げましたけれども、残念ですけど、一般的に私がマスメディアで拝見するようなものしか民間の声がなかったのではないかなと思っております。
 それからもう一つは、アドミニストレーター、あるいはコーディネーターという存在がありますけれども、ヘッドハンティングされるようなプロのこういった方々が出てきて、リサーチ・アドミニストレーターというのは、もっと我が大学のものを出してくれるとか、こういった声がやはりないと、この制度というのは根づかないと思っておりますので、そういった意味では、プロフェッショナリティーの方を育てていただく施策というのを次に考えていただければと思っております。
 ちょっと長くなりましたけど、最後に、産業革新機構としても幾つかの宿題を頂戴しておりますし、ここにいらっしゃる委員の方々から、「ベンチャー、やってないじゃないか」という御批判も多々承っております。その中においては、大幅に人材を増強いたしまして、アカデミアから実用化までのシームレス化というのが、来年度以降の私どもの産業革新機構としての課題だと思っておりまして、経営者の端くれとして、この部分については、更に注力することをお約束しまして、最後の言葉にしたいと思っております。
 どうもありがとうございました。
【柘植主査】  じゃあ、永里委員、お願いします。
【永里委員】  本当に2年間ありがとうございました。
 今からお話しするのは、感謝の意味もあるんですけれども、いかに産業界を含めてだらしないかという反省を込めて、順不同でお話しします。
 まず、日本のものづくりの問題点は、ものをつくるということに関して、額に汗してというか、要するにこつこつと一生懸命頑張ってものをつくれば、それがいいんだというようなことをやると、結局は、最終的には、素材は研究開発され、すばらしい素材ができるけど、システム化はどうもアメリカあたりの人たちがシステム化していき、ニュービジネスがどんどん生まれていくようなことは日本では起こらないと。
 ここで言いたいのは、額に汗かくといいますか、そういうことじゃなくて、頭で汗をかくということについても評価してもらわなきゃいけないわけでして、そこからいきますと、実は金融システムとか何かでもうかるというのは、日本では毛嫌いされていますけれども、これもまた一つのビジネスで、今は、ソフトを含むのがものづくりですから、デジタル化ものづくり、それを含めますと、産学官連携と言いますけど、産学官に金融の金が入るだろうし、金融は、実は金融だけではないという先ほどのお話がありましたけれども、そこを含めて、やっぱり新しいものづくりといいますか、頭で汗をかくようなことをしなければいけないだろうと思います。
 そういう点では、先ほど北澤先生からありましたが、国益に資する場合としての外国企業等、参入ルールや条件等の整備という言葉がここにあるんですけど、これは当然、こういう外国の連中が、本当の意味のものづくりじゃない、日本的なものづくりじゃないんですが、こういう人たちが日本に入ってくるのは許可すべきだと思います。その場合に、日本で雇用が生まれるというのが条件になると思うんですけれども、そういうのは許可すべきだと。
 こういう点で、新しい観点からものづくりを見た方がいいんじゃなかろうかと思います。その点では、リスクをとる、とらないという問題も共通していまして、規制があることによってリスクがとれないような場合がありますので、規制緩和しなきゃいけません。
 まだあるんですよ。規制は強化しなきゃいけない場合もあると。公害、環境問題は規制を強化して、ここにまた新たな市場ができ上がるんですね。私はけしからんと思っているんですが、排出権取引という市場をヨーロッパはつくり上げた。これは頭で考えた市場です。炭酸ガスに値段をつけて取引をするようにした。それで彼らは潤い、日本からお金を1兆円ぐらい巻き上げているんです。具体的にお話しできるんですけれども、日本の国富が向こうに巻き上げられているというのは、こんなばからしいことないんで。私は、排出権取引の市場を日本で立ち上げろということを言っているんじゃないんです。そのように、頭を使う市場もできるでしょうということを言ってるんです。結局、新しいものづくりとは何ぞやというのは、システム、ニュービジネス含めて総合的に考えるべきだし、そこに国益が絡んでくるのではなかろうかと思っております。
 以上です。
【柘植主査】  ありがとうございます。
 それでは、橋本委員、お願いします。
【橋本委員】  大変お世話になりました。
 初めのうちは、イノベーションという、とんと心に響かなくてというか、何なのかなという気がしてたんですけれども、いろいろお話伺っていてわかってきたことがあります。それは、やっぱり性能とか達成要求に対して何かを一生懸命研究開発するという能力は、我々の大学を見ていても、そういう人材はたくさんいるわけです。ただ、それはイノベーションの源かもしれないけども、イノベーションではなくて、それができることによって、世の中がどう変わるのかとか、あるいは文化がどう変わるのか、新しいビジネスがどう出てくるのかというところまでのイマジネーションが働かないと、イノベーションとは言えないだろうと思うんです。
 そういうことができるような人材を大学で養成していかなくちゃいけない。理科系ではしっかりとした技術も必要ですけれども、それから、多様な夢を見られるような、そういうイマジネーションの力をどう養成するかというのが非常に大きな問題かと思っております。
 それともう一つ、文理統合とか融合とか言われていますけれども、技術の延長上じゃなくて、何かをジャンプするとか、あるいはコーナーを曲がるとかいうようなところは、少し理系とは違う力が必要かなと。そういうイマジネーションと科学技術の融合を大学だったらできるだろうと。人材はいるというふうに思っています。それをどうやって若い人に植えつけていくか。今ちょうど、私どもは大学の教育改革をやっていますので、非常にいいヒントを頂いたと大変有り難く思っております。
 どうもありがとうございました。
【柘植主査】  ありがとうございます。
 羽鳥委員、お願いいたします。
【羽鳥委員】  ありがとうございます。
 私の感想も、今、橋本先生がおっしゃったことと通じるところがあるんですけれども、やっぱりイノベーションというキーワードですが、イノベーションにおいて、大学の役割は極めて大きい。それは、アメリカがバイドール法を30年以上経て一定の総括をしてますけれども、その中でもかなり重要なこととして位置づけられた結論でもあります。
 そういった中で、今の大学に何が不足しているか幾つかあると思うんですけれども、私が一番重要だと思うのは、ある言い方をすれば、次世代型のURAがいないかなと思うんです。その次世代型URAって何をする人だというと、橋本先生のような、大学の研究担当常任理事、そこのブレーンになるような人が今不足しているんじゃないか、いないんじゃないかという気がいたします。
 研究担当常任理事を補佐する事務方とか、サポートする専任教員による委員会みたいなものがありますけれども、それを1年中考えているというような、専任のプランナーがいないんです。
 その結果、委員会は人がどんどんかわっていきますし、事務方は向こう岸から見てますので、研究内容はいまいち。ある意味では、研究担当常任理事はひとりぼっちなんですね。常任理事もかわっていきますので。それを専任のそういった新たなプランナー、次世代URAと私は勝手に定義しますけれども、そういった人がいることで、長期で、大学の研究に、どっかからお金をゲットして、そこの研究を発展させて、どっかのマニファクチュアルなところと結合させる。あるいはそれは日本だけではなくて、国際的にどっかと結びつける。あるいはこれはベンチャーに、スタートアップにいけるとか、一番上位概念で、大学の研究成果をうまく社会に還元できるようなプランナーが今不足していると私は思います。
 それをどういうふうに育成するのかというのは大変なのでありますけれども、それが今後の課題じゃないか。そこがうまくできれば、日本は世界の中で一番トップにいけるかもしれないと私は思います。
 ありがとうございました。
【柘植主査】  それじゃ、原井委員、お願いします。
【原井委員】  私は、アカデミアとか産業界で産学官連携の最先端にいらっしゃる皆さんと異なりまして、産学官連携のサポートに回ることがある弁護士なんですけれども、弁護士という立場上、足の半分は、ふだんも裁判所往復をしたりして、非常にカビ臭い世界にいると。法律家っていうのは、社会の後追いをしておりますので、我々のところに話が回ってきて落ちてきたころっていうのは、落ちるのは時間がかかるし、落ちてきたころっていうのは、相当に事態は深刻になっていると。
 そういう立場で産学官連携にもかかわっていて、落ちてきて感じる事柄というのが、自分の中では何か変わってきたなとぼんやりとしてたんですけれども、こちらに参加させていただいて、イノベーション・エコシステムでいろんな施策を見て、あっ、なるほどと。確かにこれは自分の感じる範囲にもぴったりくるのがあるなと思う事態というのはいろいろありました。そういう意味では、エコシステムという考え方は非常に正しいんだろうなという感想です。
 具体的に言うと、私がこういう仕事を始めたのは2000年代の初め以降なんですけれども、当初は、ベンチャーが依頼者になって、研究者の先生が連れてきて、横にベンチャーキャピタルの人が座ってて、会計士さんもいて、私なんかのような弁護士も入ってという、一種のエコシステムだと思うんです。そういうふうな一種のエコチームを組んで何かできるというのは、その当時、お金は結構回っていましたので、割に合ったと思うんですけれども、そういうのが最近ちょっと減ってきたなというのが実感として持っていたと。これは、エコシステムみたいなものが崩壊して帰ってしまう前に、やっぱり国の力でてこ入れをしてもらわないと困るなと感じていたところであります。
 それから、最近やっている案件で、こういうのはよくあるんですけれども、大学の方から頼まれて、外国の大企業、国営企業と組んで、共同研究したいんだということで、例えば薬をつくっていきたいと。その折衝なんかをするわけですけれども、ふだんは大学の知財本部を持っていますので、知財本部の人と話をしていると。だけれども、知財本部の人っていうのは話がわかんないんですね。今、共同研究で、次のステージに行きたいと言っている、契約の更改だとか言うんだけど、じゃ、どこまで進んでるのって言っても、全然把握してないと。じゃ、相手と直に話すから、誰と話せばいいのか教えてくれと言っても、よくわかんないから先生に聞いてくれなんて話だったりして。
 結局、そういう中で一番役に立ったのが、相手方の企業からその大学にやってきて、先生の横に机を置いて研究をしている、留学生か研究生か立場はよくわかりませんけれども、研究のこともよくわかってるし、先生のやっていることというのはわかっていると。そういう人に聞くと一番早くて、その人に頼まないと全然話が進まないというのがあります。リサーチ・アドミニストレーターみたいな立場の人ってやっぱりいるんだなと、これも非常に感じるところであります。
 感想をしゃべっただけですけれども、是非エコシステムというか、これを国でてこ入れして、この後うまくいくことを私も祈りたいと思います。
 どうもありがとうございました。
【柘植主査】  ありがとうございます。
 藤本委員、よろしいですか。
【藤本委員】  ありがとうございます。
 この人材育成のところで、私は、研究者、技術者のキャリアパス組織調査をずっとやっておりますので、どうやって生み出すかとか、どうやって支援するかという、非常にポジティブなエンカレッジのお話が多いんですけれども、駄目だったときにどういうリスクがあるのかということがわからずに、能力があるのに手堅く失敗しない方に行ってしまう若い人たちもたくさん見ています。リスクをとらないと、ハイリスク、ハイリターンとは言うものの、例えば博士教育課程の授業料が無償化されても、時間的、あるいは年齢規範的にそこまで行ってしまうと、たくさんの高学歴就職浪人が出たということを考えると、親もこう言うんでという感じで、結局、修士で、すごく優秀な子が企業に就職して、もうひとつだったのに、何となく親が裕福でドクターコース行っちゃったみたいな人になってしまうと非常にもったいなくて。
 先ほどから何度も出てきたように、キャリアパスをある程度、ここまで行くと、こういうリスクあるけど、例えば逆によく見ている人で、流れ流れて地方の公的な機関の何かの役にはちゃんとついてて、完全に失業状態にならなくて、何とかなるよというような人たちの方が実は比率的に高くてというようなことが多分見えていない。あそこまで行ったらいきなりはしごがなくなって、自己責任って言われるんだったらっていうようなことが結構若い人からよく聞くので、ある程度、こういうリスクもあるけど……、具体的なことを出すといろいろ差し障りがあるのかもしれないんですが、ある程度の、次のセカンドベーストとサードベーストがあるんだということを検討つけさせてあげるというのは重要な、思い切れるチャンスじゃないかなと。
 アメリカのように、年齢規範があまり言うと駄目なところになると、ある程度の年をとってから別の専門性をつけに大学院に行って、もう一つ別のステージでまた活躍するということができても、日本の場合、非常に年齢規範が強いので、そこがやっぱり。特に地方の、東京みたいに競争の激しいところになれている学生は、自分なりにいろいろキャリアパスも考えるんでしょうけど、地方になると、みんなどちらかというと、自分を過小評価して、挑戦しないタイプの、でも、優秀な子たちがたくさんいるので、そういうキャリアパスに対する検討をつけさせてあげるようなことをすると、思い切れる子たちがいるんじゃないかなと。
 その中で、アメリカは産業界からの調査なんですけれども、エンジニアのキャリアパス調査ですが、フランスの場合は、各学校で、卒業生がどういうキャリアパスで、定年まで、年金のところまでどのように行ったかというのを、グランゼコールのエリートの出身校だけじゃなくて、グランゼコールではないノンエリートの人たちのところも全部学校がタッグを組んで、横串でみんな同じ調査をする。私は去年から調査に入れてもらって、今年もやるんですけれども、全部、どこまでどういう分野に行って、同じところで続いている人もあれば、どんなふうに分野を変えてとか、大きいところもベンチャー行ったりとかも全部見えるキャリアパス調査や、どういうことを不安に思ってとかということも、人としての生きざまが理系の人で全部把握できる調査があって、どうして日本は学会とか教育機関の連携したものがないのかなと。これは是非日本にも導入すべきだなと思いを強くして去年の調査をしたんです。
 そういう意味で、どういうふうに理系の子たちが進んで、年をとってもどういう状態なのかわかると、じゃ、挑戦しようとか、自分はスター選手じゃないけども、支援する側のこのあたりのグレードでやってみたいとかというふうな選択肢を与えてあげるというようなことのためにも、調査データをしっかり。さっき、調査が大事だとおっしゃった先生がありましたけれども、そういうのをやるのがいいのではないかと。
 そういう意味では、理系の子たちを輩出する学校の横の連携が文科省だったらできると思うので。アメリカは産業界がやっているので、回答にもいろいろ偏りがあると思うんですけれども、多分、学校からの調査だと、利害関係がない分、正直な答えが返ってくると思うので、そういうのができればいいなと思っています。
 ありがとうございました。
【柘植主査】  ありがとうございます。
 それでは、本田委員、お願いします。
【本田委員】  どうもありがとうございました。
 この2年間、議論させていただいて、センター・オブ・イノベーション構想ということで、イノベーション・エコシステムというプロジェクトが今後推進されることかと思いますが、三つの点で、このイノベーション・エコシステムに私個人として、産学連携の実務に携わる立場から期待しているところがあります。
 一つは、今までも知的創造サイクルなどと表現されて産学連携が推進されておりましたが、なかなか駆動力となるものが欠けていたのではないか感じております。この点からイノベーション・エコシステムで大規模な産学連携の研究開発拠点だったりということが出てきますと、一つの駆動力になるのではないかということで、一つ期待をしたいと考えております。
 2点目はやはり、今の技術移転の収入金という視点でいっても、産学間の共同研究費用の相場観に引っ張られてしまっているのではないかという印象がございます。大学の技術を取り入れるためには、共同研究というやり方も一つ、簡易なシステムという言葉を使ってはいけないと思うんですけれども、そういう小規模な共同研究で技術を取り入れるというやり方が、日本の中では一つのスタンダードになってしまっているのではないかと危惧しております。なかなか大学の技術をライセンスインするに当たり、アメリカのような大きな商談につながらない要因となっているのではないかと思っています。
 ですので、こういう大規模なシステムが、全部がそれに置きかわるものではありません、そういう一つの相場観を醸成するに当たって、少しでも影響のあるようなものになってくれると期待しております。
 最後に、やはり何か大きな仕掛けによって産学連携が動くということになりますと、そこで働く人材にとってもやりがいのある仕事になると思います。大学の知財周りの間接人材として、TLOのライセンスアソシエイトであったり、知財部の部員であったり、URAであったりという人たち、今、若い人たちがどんどん参入してきてくれておりますが、そういう人たちに魅力のある仕事として思っていただけるような、いい材料がたくさん出てくるとよいと思っております。
 こうした3点の好循環ができると、私としては、このイノベーション・エコシステムが成功できるのではないかなと思っていますので、今後、いい形で是非推進していただければと思います。
 ありがとうございました。
【柘植主査】  ありがとうございます。
 じゃあ、前田委員、お願いします。
【前田委員】  2年間ありがとうございました。
 二つの大学の産学連携の立ち上げに参画させていただいて、その後、ほぼ3年間、コーディネーターのネットワークのお仕事をかなり重点的にさせていただいていた私としては、コーディネーターの重要性とか何回も御説明させていただく機会を頂きまして、非常に有り難かったなと思っています。
 前にもお話ししたんですけれども、コーディネーターの方が研究者の方のよろず相談とか、まだ特許になる前の水面下の新しい発見のところに触れる機会が一番多いですから、前にも申し上げたと思うんですけど、やはり変わり者発掘人材だと思っているんです。結構変わり者の、「えっ、こんなこと考えてるの、この先生」って思うような先生が、わりと新しいシステムを考えたりとか、今まで世の中になかったようなことを提案したりしますので、特許になるかならないかという観点ではなく、これってもしかして新しいことづくりになるのかなというような観点で見られるようなコーディネーターが育ってくれたらいいなと思っていて、シニアの方だけではない、若い人の新しい発想だったり、女性の発想を入れてもらえるようなコーディネーター人材のところを、是非とも文科省の方に後押ししてもらえるとうれしいなと思っています。
 また、医学系の産学官連携をずっとここ10年近くやっているんですけれども、工学系はわりと学会でももう、私もブリヂストンにいましたからわかるんですが、学会でも見ていて、どこが面白そうかなとかいろいろやってますけれども、医学系って敷居が高くて、お医者さんと組むのって難しいんです。お医者さんにやらせることがなかなかできないというのが現状です。どうしてもお医者さんに何かものをさせようとしますと、製薬会社のMRの方じゃないですけれども、2時間ぐらい研究室の前で立っていて、やっとの思いでやってもらうというのがずっとならわしなんですが、やはり産学連携がうまくいけば、先生方に、これやってもらえますか、これ組めますよというお話ができますので、もっともっと医学系の産学連携に力を入れてもらえたらうれしいなと思っています。私ももっともっとかかわりたいなと思っています。
 最後に、このCSTPの内容なんですが、私は8年以上、振興調整費のプログラム補佐をさせていただいていまして、学際領域のところの公的資金、いろいろ競争的資金が出たり、また、大学のシステム改革ものがたくさん出ていました。そして、女性研究者支援プログラムであったり、ドクターテニュアトラックのプログラムであったり、かなり学校があれによって変わっていって、よくなったと思うんです。最近は、あれ要らないんじゃないかということで、振興調整費がとてもトーンダウンして、現状維持のものしかやれていないんですけれども、やはりあれで相当、学校が開かれたと思っていますので、是非ともこの競争的資金の改革というところは、上手に学校を開かれた形にしてもらえるとうれしいなと願っています。
 以上です。
【柘植主査】  ありがとうございます。
 じゃあ、牧野委員、よろしくお願いします。
【牧野委員】  大変お世話になりました。昨年は、私、100日ほど病院に入ってましたが、大変勉強になりました。それと同時に、私は欧米の産学連携のネットワークづくりをずっとやってきましたので、欧米のやられていることに対する評価ぐらいはできるような知識をつけたような気がしております。
 それをもとにして、次の会議に何か残しておきたいなと思います。まず、大事なことですが、日本の基礎研究の能力は高いのだろうと思います。どうして応用できないかというのが大きな課題だろうと思います。その答えですけれども、次の会議のサブジェクトは、環境づくりじゃないかなと思います。環境が悪いからできない。悪いからというのは、誰が悪いわけじゃないんですが、日本の置かれている経済的な立場といいますか、そういうものの変化によって生み出された環境が悪過ぎるというのが大きな原因かと思います。
 ヨーロッパも非常に古くさい考え方を持っていると思いますが、ヨーロッパの場合に行われているのは、選択と集中だと思います。それと、大型の共同研究だと思います。日本の小粒の共同研究は何の役にも立っていないと思っています。ここからは何も生まれない。
 それからもう一つ、先ほどもちょっと言いましたが、ベンチャーをどうやったらつくることができるのかということです。何も日本の中でつくる必要もないので、これだけグローバリゼーションをやっているわけですから、簡単にLLCのできるアメリカでつくって、どこかでまた持って変えるとか、いろいろな方法が考えられると思います。なぜアメリカと言うかといいますと、アメリカはやはり大学の基礎研究をもとに、これによるベンチャーをつくることによって、最近はIPOじゃなくM&Aだと思いますが、いかなる形でも産業界が大きく発展している基礎になっていると思います。
 昨年のアメリカの知的なものによる収入は、ディズニーの映画も含めて80ビリオンUSダラーということが向こうのどっかの新聞に報告されていましたが、見てみると6兆円なんですね。知的収入が得意の我が国の日本の製薬業界のトレードバランスは、恐らくマイナス何兆円かになっているんだろうと思いますし、その辺が問題点かなと思います。
 今、アメリカでは、例えば薬を見てみますと、パテントクリフに入っています。オバマクリフもあるみたいですが、パテントクリフも深刻で、6割ぐらいがパテントクリフに入っていると思います。この解決のために、航空母艦型の大きなAROが幾つか立ち上がってきています。例えばデュークですと、フェーズ1から4ぐらいが100本ぐらい同時に走っていると、そういうものが出てきているわけで、これにどういうふうに立ち向かうかです。向こうの大型のものは、ベンチャーとの相互作用も非常に活発でありまして、AROの中を見てみますと、シーズの部分には、これのポートフォリオづくりをやる大きなベンチャーが周りにたくさんくっついています。それから次の場所は、プルーフ・オブ・コンセプトだと思いますが、プルーフ・オブ・コンセプトを専門にするベンチャーもまた周りにたくさんくっついているわけです。それから最後は、フェーズ1から4ぐらいまでが走っている。
 じゃ、これは薬だけかといいますと、恐らくそれ以外のところも、例えばこの前、日本の若いベンチャーキャピタリストの集まりがあったので、そこでちょっと見てみたんですが、データベースが盛んに議論されるわけです。確かにこのデータベースの議論というのは、細かく説明する時間がないので省きますが、これもどうせ行き着くところ、パテントクリフに近いところまで行くだろうと。そうすると、大型化をしてくるんじゃないかなというふうに思います。
 ですから、こういうものにどういうふうに立ち向かうか。いわゆる戦略性がどこまでこの国に持てるかが次の大きな問題かなと思っています。
 このためには、まず民間資本導入です。アメリカのAROの場合、1,000億円ぐらいは民間から出てくると思います。これはどういうふうに日本の税制の中で出せるようにするか。
 それから2番目は、この前ちょっと久しぶりにNIHに行ってきたんですが、論文より先に知財を書くという徹底したシステムができ上がっているんです。こういう環境をどうやってつくるか。いわゆる知財の質の向上です。これがないとポートフォリオもできないわけです。
 3番目は、この大きな組織と対抗するのがいかがなものかということです。私は仲よくすればいいと思っていますが、仲よくするにも、してくれないと、ジャパンパッシングというのが起きるわけで、そういうことにならないようにどうするかと思っています。
 それから、日本の企業の決定機構まで海外に出ていっているというのが最近よく目につきます。海外に生産拠点が移っているだけだったらいいんだけれども、海外に決定機構まで移っているということです。国内でベンチャーの方が相談に行ったら、決定機構はアメリカにあるから、アメリカに聞かないとわからないとか、そういうのが結構増えてきている。こういう傾向が強くなってくるとますます思いますので、ここに対する対応。環境づくりをどうするかです。
 最後は、人材のステータスをどうやってあげるかです。キャリアパスなんていうのは何遍も議論されていますが、ステータスを上げないと駄目じゃないかなと思うんです。この前、ニュース番組を見ていたら、私の友人の息子で、大学は出てないのにメディアラボの所長になっているひとがいます。こういうふうなステータスをどうやってあげるか。この辺がこの国の大きな宿題だろうなと思います。
 最後に、私は文科省のお世話で、オータムアジア2013京都というのをお世話しておりますが、ここにいろんなモデレーターとかスピーカーをアメリカの方からもかなりたくさん呼んできますので、是非とも聞いていただいて、今、私が言ったようなことがどうやったら解決できるか。特に前田さん、関係の深いコーディネートの方とかたくさん紹介していただいて、ちょっと勉強して、次のこういう課題に立ち向かうのはどうしたらいいか考えていただきたいなと思います。
 以上です。ありがとうございます。
【柘植主査】  ありがとうございます。
 それでは、三木委員、お願いできますか。
【三木委員】  本当にお世話になりました。
 今回の、イノベーションとエコシステムづくりということなんですけれども、基本的に、もう皆さんおっしゃったとおり、イノベーションというのは非常識から発するわけでして、必ずしも常識的な秀才から発するわけではないわけです。
 そのときに、どなたかが言われましたけれども、変人が進化できる場をつくってやる。エコシステムづくりというのは、要するに、挑戦者のための進化の場づくりなわけですから、そこに必要なのは人であり、金であり、情報であり、そして制度なんです。制度が何かを阻害する場合もありますので、非常に大事な点だと思います。
 そういう私は基本的な考えを持っていまして、今回も文章の中では、多分初めてぐらいだと思うんですけど、私がずっとラディカルイノベーションのことをよく語っておりましたが、ラディカルとインクリメンタルは根本的に違うということを話しておりましたけれども、それが3ページのところにも入っていますし、グローバルということもかなり入っております。
 グローバルというのは、国際化とは似て非なるものでして、完全なるクロスボーダー化の話ですから、先ほど来から話がありますように、企業がどこで意思決定をするかという問題すら、ひょっとしたら動いてくる。現に、ネスレという会社は、もちろんスイスに本社がありますけれども、スイス本社の機能よりも各国の機能の方が大きかったりするわけです。そして、どの国の中でも受け入れられるというグローバル経営の時代に移ってきていると思います。
 ただ、我が国としては、それなりの大学の集積もございますし、R&D拠点としての大学も含めた空洞化というのは避けたいところだと。地を軸にした経営を考えていく場合には、これは避けたいと。そうなると、税制なんかでも、最近、ヨーロッパの方で言われているパテントボックス税制の話であったり、いろんな問題が我々の周りにはあると思うんです。もしもこういった制度が導入できなければ、日本の企業さんはどんどん外にR&D拠点を移していくだろうと思います。それは大学にとっても不幸なことになるように思います。
 基本的には、何らかのアイデア、そして知財、地を軸にした経営というのが基本だと思います。特にその中では、今回の中でも初めてだと思うんですけれども、不確実性のマネジメントという言葉が初めて入ったと思うんですが、これはPDCAだと、悪いところがあると潰す方向に行くんですけれども、不確実性のマネジメントというのは、どういうふうにして不確実性を下げていくかというマネジメントをとるわけでして、こういう方法論というのが今から非常に大事になってくるだろうと思います。
 ただ、最終的には、誰が責任主体なのかということが絶対に問われるはずなんです。これはよくリーダーシップ論とも関係するんですけれども、責任主体と意思決定の問題です。ここのところまで含めて、今後は多様性をうまく認める日本のシステム、こういったものに変えていくことが次からのまた課題ではなかろうかと思っております。
 最終的には、イノベーションは非常識から発するんですけれども、ところがもう一つの面として、イノベーションは基礎科学に帰るんです。この面も絶対に忘れてはならないというふうな認識でおります。
 今後とも、私は私の持ち場で知財のところでいろいろとイノベーションにプラスになるようなシステムづくりに尽力していきたいと思っております。
 どうもありがとうございました。
【柘植主査】  ありがとうございました。
 医学の立場から、お待たせいたしました。森下委員。
【森下委員】  前田先生たちのお話はそのとおりなので、ちょっとコメントは避けさせてもらいます。
 この2年間、まず思ったことから御紹介したいと思うんですが、大学あるいは大学発ベンチャーという立場から言いますと、よくこの2年間、生き残れたなというのがほんとじゃないかと思うんです。日本で産学連携の歴史が始まって以来、この2年間ぐらい厳しかった時代はないんじゃないかなというふうに思います。産業界、証券業界、それからグラウンドも含めて、これぐらいシュリンクした時期というのは恐らくなかったのではないかと思うんです。もうお金を求める先がほとんどなくなってきているという状況の中で、大学発ベンチャーなり大学の研究というのは過ごしたというのが実情じゃないかと思います。
 この2年間の中で生き残ったということで、辛うじてイノベーションを生み出すための土台だけは残ったかなというふうに思っていまして、そういう意味では、非常につらい2年間だったと。もう少し何かできなかったかなと思いますが、どちらかというと、年度を経るに従ってつらくなっていったというのが実情じゃないかと思います。
 ただ、最後になって、STARTでしたか、それからセンター・オブ・イノベーション、それからURAとか、将来に向かって、明日に向かっての橋というのは何となくかかってきたかなという印象を正直持っています。ただ、明日への橋はできたんですが、あさってへの橋がまだないような気がしていまして、ベンチャーができたとして、これをどうやって育てるのか。そこは正直、STARTでもベンチャーキャピタルのお金をあてにするということなんですが、肝腎のベンチャーキャピタルが不況業種といいますか、一番危ない業界になっていますので、その意味では、その辺りまで目配りしないと大変難しいというのが実情じゃないかと思います。
 産業革新機構の方から大変心強いお言葉を頂いたんですけれども、果たしてそれが果たされるかどうかというのを是非お願いしたいと思いますし、今回の総合科学技術会議の内容を見ても、ベンチャーとかベンチャーキャピタルという言葉がずらずらと並んでいる報告書というのは多分初めてだと思うんです。逆に言うと、北澤委員が言われたように、基礎研究を育てる仕組みというのはかなりできてきたんだと思います。そこからもう一歩進んで産業化に続けるところというのが、やっぱり日本では欠けていて、いよいよ次は、ここのところのインフラとソフトをつくるような時代に入ってきたんじゃないかと思います。
 これはある意味、イノベーションというところで、技術的なイノベーションの話をずっと言ってたんですが、いよいよソーシャルイノベーションを日本はやらないと、多分立ち直れないんだろうと。先ほど来、リスクをとる人材であったり、リスクマネーだったり、リスクをとるような仕組みをつくらないと、多分、この次の2年間、あるいは5年間というのはより厳しくなって、本当の土台まで崩れてしまうんじゃないかと。その意味では、是非リスクをとるようなソーシャルイノベーションを人材面と資金面両方で、文部科学省もついにSTARTで経産省の域まで入りましたので、次はベンチャーキャピタルまで行って、財務省とか金融庁のところも少しかじってもらうと大変うれしいんじゃないかと思いますし、ある意味、そこまでやらないと、多分もう勝てない時代になると思うんです。先ほど、デュークなり出ていましたけれども、デュークの学長って私の恩師なんですけれども、ハーバードの時代とかスタンフォードの時代から、もう全体を取り込んでというのを当たり前にやっていたというのが、より大きくなっていると。日本はそういう動きはまだ全然ないわけですけれども、やっぱり日本の大学もこういうことをやっていかないと難しいんだろうというところが、いよいよ来たのだと思います。
 ベンチャー学会の金井先生が昨日ちょうど、寺崎さんも来てもらってシンポジウムをしていたんですけれども、起業家大学と。海外でも起業家大学というのがかなりたくさん出ていると話してましたけれども、大学自体もそうした仕組みを全部取り込むような仕組みをつくるということを手助けしてあげないと難しいんじゃないかと思います。
 その意味では、是非この2年なりでできた仕組みを生かして、明日ではなくてあさってとか、更に1年後につながるような道筋をつくっていただければと思います。
 以上です。
【柘植主査】  ありがとうございます。
 それでは、渡部委員、お願いします。
【渡部委員】  先ほどの総合科学技術会議の書類を見ても、科学技術イノベーションということで、科学技術政策というのは、かつては国威発揚のため、あるいは教育、基盤的な技術のための科学の振興、そういう時代から、イノベーションというキーワードで存続意義というかアカウンタビリティーを説明しないといけないという状況になっているということが如実にあらわれているものだと思いますし、これは実は日本だけじゃなくて、欧米もみんなそうなんですよね。それから最近、新興国で、中国、インド、ベトナムなんかが比較的、政府間でイノベーション分野の協力みたいなことにかかわらせてもらっているんですけれども、ほとんど同じような議論になっています。
 そういう意味で、世界的に科学技術はイノベーションに近接してきているという現象が起きている。これはなぜかというのは、実は考えないといけないところなんですけれども、先ほどイノベーションの評価みたいな話、あるいは評価指標をどうする、あるいは見える化をどうする、そういうようなことがありましたけれども、実はこれは、世界どこでも同時進行で検討していると思っていただいた方がいいと思います。
 ベトナムで去年知的財産の活用研究所というのを国でつくったんですね。これ、特許庁で言えば企画調査課が相当するようなところなんですけれども、それは一つの独立機関として研究所をつくって、一体その特許はどういうふうに役に立っているのかということをどうやって評価したらいいかというような議論がされているのが世界の状況であって、そこの中で日本もこういうイノベーションという重荷を背負って科学技術政策をやっていかないといけないという、競争の中でやっていかないといけないということがまず一つ重要な認識だと思います。
 文部科学省の中でもサイエンス・オブ・サイエンス、あるいはエビデンスベースみたいなことをやられているわけですから、そういうものとのリンケージをもっとしっかりとって、こういう施策を検討していかないといけないということがあるんですけれども、でも結局、何が大切かというのは、これは私自身が別に、政策研究をやっているわけじゃなくて、企業とか大学とかの組織が、ある予見の中で、競争状態の中で最適行動は何かというようなことを研究しているわけですけれども、結局は、最適行動をとっていると思われる人たちを応援するということに尽きると思うんです。
 イノベーション政策というのは何かというと、エコシステムをつくる、ほかから導入したものをつくる、あるいは理想的なものをつくるということでは恐らくないんですね。このイノベーションというものの政策の特徴は。この中でもリスクをとるだとか、ベンチャーだとかというキーワードが出てきているのは、まさしく、今の産業界と大学というのが、一言で言うと、起業家的な行動をとって、様々な与件を最大限活用するという行動をとれていないということなんです。そういう意味では、知財というのは起業家的行動を取ろうとしている企業にとってはものすごくいいツールなんだけれども、日本の企業はアメリカ企業のように大胆に使ってこなかったし、戦略的に使ってこなかった。大学も本当はいろんな規制緩和をもっと活用していくことができたのかもしれないけれども、そういう行動は実はそんなに盛んではない。日本の大学というのは、政府と仲よくして温和な行動をとりたいわけです。
 アメリカの大学って違いますよね。アメリカは、共和党というのが、ややサイエンスに関する姿勢が変わっていますので、大学はあまり仲よくしたくないわけです。科学技術に関しても、軍事関連研究であっても、マンハッタン計画以降、自主決定権を獲得したのがアメリカの大学だし、バイドール法で成果の活用も自主決定権を獲得したのはアメリカの大学であると。日本の大学というのは、そういう行動とはちょっと違うんですよね。だからうまくいかない面もある。しかしそういう中で、どういうふうにしていくかというのが、過去に後戻りしてしまうと、やっぱりよくないだろうなと。最終的には、起業家的な行動を起こして、イノベーションに寄与するような組織や、産業界も大学も同じですけれども、そういうものを後押しする制度というのが非常に重要だろうと考えた方が、私は今はいいと思っています。
 その中で、オープンとかグローバルという話が出てくるんですけれども、これは非常に複雑な話で、グローバルとオープンがくっついたときに、一体どういう戦略があるのかというのは、これ、企業の方々とのディスカッションの中で、ようやっと最近、ああ、こういうことだったのかというのがわかるようになってきたと思います。これは、本をしこたま書いたりとかでいろんな議論して、ようやっとそこまで来たと思うんです。これを産学連携みたいなものに持ち込まないといけないんです。これはまだ全くできていないと思います。
 先ほど言いました最適行動をとるというのは、グローバル、オープンの中で最適行動をとるというのがどういう意味なのかということを産学連携の中で議論しないといけないというのが今非常に重要なテーマなんですけれども、今回までは、まだ手がつけられていなかったというふうに自分としては思っています。
 いずれにしても、私が見てきたのは、別に政策研究をやっていたわけではなくて、そうやって最適行動をとるということがどういうことなのかということを与件の中で研究してきたということになりますが、たまたまこの12月1日付で、東京大学の所属が変わりまして、政策ビジョン研究センターというところに転出をいたしました。繰り返し言いますけれども、政策研究をやっていたわけではないんですが、逆に言うと、これからもそういう観点でイノベーション政策というものを捉えてよいのではないかと思っていますという認識でいます。こういう前提でいろんな議論をさせていただく必要があるだろうと思っています。
 以上です。
【柘植主査】  ありがとうございます。
 各委員からこの2年間の活動に対する思いと今後のサジェスチョンを頂いたと思います。時間がだんだん参ってしまったんですけれども、最後に、主査から一言申し上げたいと思います。
 まず、今日の資料の「産学官連携によるイノベーション・エコシステムの推進について」、これは2年間の我々のやったこと、それから今後への引継ぎ事項という形で非常に充実したことをまとめていただけたと思います。それを私自身も産業界のCTOを終えてから科学技術政策の方に2年間、それから高等教育5年間おりましたので、この資料1の全体の流れの中での今後の思いを開陳したいと思います。
 振り返ってみますと、私が総合科学技術会議の第3期の科学技術基本計画をつくるときに、イノベーションという言葉が科学技術・学術政策の中ではやや冷ややかに見られた時期です。今からもう7年前になりますかね。しかしながら、一方では、科学技術・学術は社会のため、すなわちそれは社会経済的な価値の具現化にあるということも、やっぱりタックスペイヤーに対してその使命はあるということで、第3期科学技術基本計画からもイノベーションという視野が盛り込まれていたと思います。
 しかし、第3期を5年間やったときに、やはり基礎研究重視というものと社会経済的価値の具現化というものの非常に複雑な、まさにストキャスティック(確率論的)であり、不連続でノンリニアなプロセスに対しての踏み込みなり具体的な施策が不十分だったというのが、やっぱり第3期の基本計画の私は反省点だったと思います。
 そこで、第4期になりまして、科学技術イノベーション政策という言葉が新しくできて、いよいよ本格的に、社会のための科学技術・学術というものが政府としてコミットしたなと。こういうことで、何を今更という気持ちもありながらも、やはりそこまで踏み込んだぞと、覚悟だなと、こういうことを感じました。それが昨年の8月の閣議決定の第4期の科学技術基本計画なんです。
 それと呼応して、我々、並行して第4期科学技術基本計画をつくる前から、まさにイノベーション・エコシステムというコンセプトを出して、少なからず第4期の計画の策定にも貢献したと私は思います。
 そういうことで、今後の話になりますが、私、今から8年前のことを振り返ってみますと、今までできなかったこと、科学技術の革新を基礎研究も大事にしながら応用研究、さらには産業と一緒になった市場化ということのプロセス、今まで十分できなかったことをこれからしようとしていると。国民に約束したということの重大さを、当然この場にいるだけではなくて、総合科学技術会議のそれぞれのメンバーも覚悟してくれていると思います。しかし、覚悟だけで本当にこのイノベーション・エコシステムというものがエフェクティブになるかと。これはずっと失敗の危険というものを、絶えずそれぞれの立場で見ていかなきゃいけないんじゃないかと私は確信しております。
 よく、沈みゆく日本と。私自身も実は“沈みゆく日本”というのを言ってはばからないんですけれども、これを何としてでも再浮上させるために、このイノベーション・エコシステムというのをカタログ仕様からマーケット価値まで持っていくということを、これは決して基礎研究を軽視しているという話ではないわけでありまして、学術界とのダイアログもきちっと保ちながら、投資もしっかりしながら、イノベーション・エコシステムの具現化、これはそう簡単な話じゃないので、今日の取りまとめの今後の課題の中にもこれは継続して、絶え間ない推進をせざるを得ないということをうたっていますので、この取りまとめを次期体制でもこれを土台にして、具体的に進めていただくと同時に、我々各委員は、それぞれの社会的な立場がありますので、その立場でこの取りまとめ案を使って、社会のそれぞれの場所で活用する、あるいは発信していただきたい。私自身もそういう形で活用をしたいと思います。
 少し時間が過ぎてしまいました。2年間、大変御苦労さまでございました。
 最後になりますけれども、事務局、里見課長をはじめ、一言お願いします。
【里見課長】  ありがとうございます。
 もう、柘植主査の方からまとめていただきましたので、あまり多く述べることはありませんが、事務的なことを先に申し上げますと、この委員会でのお取りまとめですが、産業連携・地域支援部会の方に上げさせていただいて、最終的には、科学技術・学術審議会の取りまとめの一部ということで取り入れていただくようにしていきたいと考えております。
 私は、ここに座らせていただいてから、つくづく感じておりましたのは、やはりこういう社会一般が非常に厳しいときには、国がリスクを最終的に負うという保険的な仕組みが恐らく必要なんだろうなということをずっと考えていたわけなんですけれども、全体が、国の今の仕組みが、例えば評価であったり、競争的な仕組みであったり、いろんなところがリスクをとらない仕組みになっているものですから、そういったようなものとどういうふうにミックスしていくのかが課題だなということをつくづく考えておりまして、先生方から御議論いただきましたものを来年にまた持ち越しまして、引き続き考えていき、次の制度にうまくつなげられるものはつなげていきたいなと考えております。
 本当に長いこと御議論いただきまして、どうもありがとうございました。
【柘植主査】  それでは、すいません、時間が5分も過ぎてしまいましたけれども、これにて今期の産学官連携推進委員会を閉会いたします。
 どうもお疲れさまでございました。

―― 了 ――

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科学技術・学術政策局 産業連携・地域支援課 大学技術移転推進室

(科学技術・学術政策局 産業連携・地域支援課 大学技術移転推進室)