産業連携・地域支援部会 産学官連携推進委員会(第11回) 議事録

1.日時

平成24年7月27日(金曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省 東館 3F2特別会議室

3.議題

  1. リサーチ・アドミニストレーターへの支援策
  2. 大学が関与したオープン・イノベーションシステム推進方策

4.議事録

  【柘植主査】  時間が参りましたので、開会したいと思います。ただいまから、産学官連携推進委員会の第11回を開催いたします。

 本日は、大きく分けて2つの議題がございまして、1つがリサーチ・アドミニストレーターへの支援策についてと、もう一つが、大学が関与したオープンイノベーションシステム推進方策について議論を予定しております。

 初めに、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

【石田室長補佐】  それでは、確認をさせていただきます。お手元の資料の一番上に議事次第を用意させていただいております。議事次第の真ん中あたり、4ポツに配付資料の一覧がございます。この記載順に簡単に確認をさせていただきます。

 まず資料1でございます。「リサーチ・アドミニストレーター育成・確保するシステムの整備」という資料でございます。続きまして、資料2でございます。「日本におけるURAの機能と位置づけにかかる現状把握と提案」という資料でございます。続きまして、資料3でございます。「『イノベーション促進のための産学官連携基本戦略』を踏まえた共同研究の展開について」という資料でございます。続きまして、資料4、これはA4判1枚ものの資料でございますが、「大学におけるシーズ・ニーズ創出強化の取組について(構想案)」という資料でございます。次も1枚ものでございます。資料5でございます。「これからの産学官連携コーディネーター育成について(構想案)」という資料でございます。資料6、こちらも1枚ものです。産学官連携推進委員会の予定でございます。

 そのほか、参考資料1といたしまして、「大学が関与したオープンイノベーションシステム推進方策の課題と今後の方向性(たたき台)」という資料でございます。参考資料2でございます。「東日本大震災を踏まえた科学技術・学術政策の基本論点の実践に向けた提言」という資料でございます。参考資料3が1枚ものでございます。「産学官連携施策検討課題」という資料になっております。

 資料と参考資料は以上でございます。そのほか、委員の先生方のお手元にさらに参考資料が紙のファイルでとじられて机上配付されているところでございます。落丁等がございましたらご指摘いただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【柘植主査】  ありがとうございます。

 それでは、早速本日の議題に入りたいと思います。第1の議題は「リサーチ・アドミニストレーターへの支援策」であります。本議題を議論するに当たりまして、リサーチ・アドミニストレーターをめぐるこれまでの状況について事務局から説明をお願いいたしまして、その後高橋委員からリサーチ・アドミニストレーターへの支援策についてご説明をいただきまして、両方あわせて議論をしていきたいと思います。それでは、事務局お願いします。

【工藤室長】  それでは、資料1に基づきまして、リサーチ・アドミニストレーターのこれまでの現状についてご説明さしあげたいと思います。

 その前に、前回7月2日に行われました第10回会合におきまして、大学技術移転推進室長の交代人事の事前報告させていただきました工藤です。7月9日には正式に発令いただきまして着任しておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。

 それでは、簡単に私のほうから説明さしあげます。

 まずリサーチ・アドミニストレーター、研究にかかわる行政手続といった端的な面ではございませんで、むしろ研究者とともに研究活動の企画、マネジメント、成果活用促進を行う1つの人材群として想定されております。

 我が国におきまして、URAの必要性の問題意識としましては、競争的資金化政策というものが、十数年行われてきておりまして、研究者が研究に付随する活動のほうにかなりリソースを割かれておりまして、そこを何とかしたいというようなニーズのほうが生じていることから発想がされているものでございます。

 1枚めくっていただきまして、URAの主なねらいということをご紹介したいと思います。主な目的としては3つほどございまして、1つ目に、大学において研究資金の調達・管理、それから知財の管理・活用を総合的にマネジメントできる人材というものを1つ整備したい。

 それから、もう一つとして、ねらいとしては、大学における研究推進体制というものを、URAを中心としたある種専門性の高い制度のほうに改めていくというのを考えていると。

 さらに、この大きな目的の中目的になるんですけれども、研究活動活性化のための環境の整備と言われるところの、先ほど申し上げたとおり、研究者の負担を軽減していきたいというところ。それから、マネジメントの強化によって、研究そのものの推進体制を強化していきたい。最後に、科学技術人材のキャリアパスの多様化というものも念頭に置かれております。

 さらにもう1枚、引き続いていただきますと、さらにこのねらいを進めるに当たって、現状ですと2つの流れでこのリサーチ・アドミニストレーターに関する施策のほう、助成させていただいております。

 1つに、これはスキル標準の策定、つまり、どういったものがリサーチ・アドミニストレーターに求められるのか。さらにそれはどのような形でスキルというものが得られていくのかというものを考えたところで、研修・教育プログラムの整備、スキルの標準、こういったものを定着させるような全国的なシステムとして、平成23年度から東京大学、早稲田大学において実施されております。

 他方、このURAそのものがどのような形で運用されるのか、活用されるのかということを支援するという意味におきまして、これも同じく23年度には、当初、東京大学、東京農工大学、金沢大学、名古屋大学、京都大学の5大学で開始しておりまして、その後も、今年度の事業になりますけれども、24年度から、これに加えまして3つほどのタイプ、1つに世界的な研究拠点を整備するという観点で、北海道大学、筑波大学、大阪大学、九州大学、それから、専門分野を強化するという観点で、新潟大学、山口大学、東京女子医科大学、さらに地域貢献・産学官連携強化という観点で、福井大学、信州大学、九州工業大学のほうを選定させていただいております。

 続きまして、もう1枚めくっていただきますと、こちらのほうは、導入の政策的効果につきましては、先ほどのねらいとほぼ重なるところでございますけれども、まず研究者の研究活動活性化のための環境の整備といたしまして、十分な研究時間を確保し、研究企画・研究実施体制の構築というものを目指しております。

 さらに導入の研究開発マネジメントの強化という観点におきましては、社会・経済ニーズの把握、成果の円滑な活用、アウトリーチ、戦略的な外部資金獲得のサイクルの確立、さらに言うと、コンプライアンス、利益造反、安全保障貿易管理、研究倫理問題に対する適切な管理。そういう意味では研究資金、人的資金の効果的・効率的な執行というものを通じまして、イノベーションの促進につなげていく狙いとしております。

 最後に、科学技術人材のキャリアパスの多様化の中では、人材の職域の新たな開拓と雇用の拡大、それから、学内及び産学官の人材交流の促進、これを踏まえまして、科学技術人材の多様化、流動性の向上といったものを目指していきたいと考えております。

 もう1枚めくっていただければと存じます。さらにこのリサーチ・アドミニストレーターの導入のイメージとしましては、まず研究推進体制の高度化・効率化に向けた将来構想を踏まえて、リサーチ・アドミニストレーターに係る組織、体制を大学内に整備していただくというのがまず第一としています。

 さらには雇用に当たっては、これは教員、職員のみならず、いわゆる中間職と言われるような形の第三の職種の創設、活用というものも考えております。

 それから、あとは、1で述べました組織を踏まえまして、中心にキャリアを積みまして、先々としては、他の大学、それから、資源配分機関、研発独法、こういったものとも人事交流を行いまして、将来的には同じ組織の中の長のほうにのぼり得るような人材というようなキャリアパスの構築を目指しております。

 最後になりますが、今年度の予算額として11億4,100万円という形で措置しておりまして、今述べさせていただきました、まずスキル標準策定を、東京大学と、それから、研修・教育プログラム整備ということで早稲田大学と23年度にスタートして1年半が経過しております。さらに23年スタートの5大学から、新規分の、先ほど述べました10大学のほうが展開しておりまして、これを、今後定着を目指して、最終的には、これまでご説明しました3つの目的、活性化の環境整備、研究推進体制の充実強化、それから、キャリアパスの多様化というものにつなげてまいりたいということでございます。

 簡単ではありますけれども、現状のリサーチ・アドミニストレーターの概要をご説明いたしました。

【柘植主査】  ありがとうございます。高橋委員の説明をいただいた後、まとめて議論をしたいと思いますので、高橋委員、よろしくお願いいたします。

【高橋委員】  高橋でございます。今日はありがとうございます。

 では、早速、私からは概況の整理と、これからどういう取り組みを具体に進めるべきか等を3点にまとめさせていただきました。まず、今室長からご説明があった概況を少しファクトベースで把握するためデータをまとめました。そして、アメリカで先行しているシステムがございますので、そこの概況とそこから我々が日本で定着させるために参考にできると思う部分を抽出したもの、3点目として、それを踏まえて、今後我々がやっていくべきことと思われるところをまとめております。

 では、まず、業務の把握と概況整理です。細かいところは見ていただく必要がないんですが、URAの業務として把握している全体像です。一番上の横軸が、簡単に言うと、ある案件をURAが担当していく時間軸です。まず簡単にイメージしていただくために、これはプロジェクトが企画してから終わっていくまでの範囲を記載していますが、プロジェクトをどういう計画にしようと、研究者と一緒に立案するところから、申請書を書き、申請が採択されれば、研究が実行され、それに対してURAはそれを支援していくというのが管理という形に書いてあります。で、事業が終われば、それをフォローアップしたり、または、その成果をいろんな形でリリースしていくということです。

 それをURAの人たちはどういう業務として整理するかというと、小さいですけれども、縦軸で書いてあります。これは金沢大学から拝借してきた整理図ですけれども、ごく簡単に上のほうからいきますと、学内の研究リソース、最近複数の先生方ですとか、学際領域のプログラムを組むことも多いので、そういう学内資源を把握した上で戦略を立てていくというところが、まずここら辺になります。

 それから、中段は、複数の研究者でやる大型のものや、個人のERATOのような形での大型の研究プロジェクトを支援していくというのがここら辺の話。

 また、昨今多くなってきました産学連携のプロジェクトのものですと、そこに今のものに加えて、ITだったり、コンプライアンスだったり、いろいろな専門知識が必要になってきますので、そこら辺も踏まえて業務をやっていくという、これが全体観になります。

 少し見方を変えた整理を次の図でご説明します。学内にはいろんな先生方がいらっしゃいます。若手もシニアもいるわけですけれども、ご推察のとおり、その人たちに対して、大学全体がだれに対しても共通にするべき支援と、年齢層や活動の特徴に合わせてするカスタムメイドの支援というのが出てくると思います。昨今、ご存じのとおり、この大型で、部局や企業等の複数関係者が絡む複雑な案件に対しては、研究者以外にも専門の知識や

スキルを持った担当者が加わることが必要になってきている。そうしないと、大型の研究資金も、せっかく投資がうまく回っていかないという形になっているというのが現状かと思います。

 これは実はアメリカでも同じような状況のようです。一番上に書きましたが、近年研究力に加えて、その周辺の事項、例えば研究開発体制の整備ですとか、学内であるかないかというような大型共有施設をうまく利活用するためのものだとか、そのために既存のルールを少し変えましょうという特区的な扱いですとか、もちろんITなどの活用方針なども、各々のプログラムの趣旨に合わせてつくり込んでいく必要があるということです。

 アメリカの研究大学でも、私立、州立を問わず、そういう動きが出始めたようです。OSPとあるのは、いわゆるアメリカにおけるURAが所属する組織で良く使われる名称ですけれども、これに加え横づけで特区のようなものを支える特別の組織をつくっている大学が、例えばペンシルバニア州立大学、テキサスA&M、またUCデービスなどがあると聞いております。

 また、前々回でしょうか、この委員会で奈良先端大の久保先生がやはり奈良先の取り組みというふうにご紹介いただいたと思いますけれども、それも似たような趣旨かと思います。

 そういうような仕事をするためのスキルはということで、これは数年前にアメリカの方たちとディスカッションしてまとめたものですが、ごく簡単に申し上げますと、申請書を企画し採択されるまでの部分で必要なスキルと、その後運営をきちんとしていくためのスキルを、6つのカテゴリーに整理しました。いずれのスキルも1人で全て、完全に持っていればもちろんありがたいんですけれども、それはまぁ難しい話だとアメリカでも言われています。業務のステージにより、能力の重みづけは違うと思いますが、いずれにしても、研究ってどういうものかという観点で、研究という活動をある程度肌で知っているというのが必要になるので科学研究の経験、それに加えて、会計、契約、知的財産、コンプライアンス、そしていろんなステークホルダーとの調整になりますので、交渉能力というのが必要になってくるというスキルセットの整理です。

 ご推察のとおり、これを、じゃあ、今まで日本ではやっている人がいなかったのかというと、もちろんそういうことではありません。この委員会の最初のころに前田先生のほうからご紹介いただいたと思いますが、下の四角に書いてありますように、これまでの施策によりTLOや知的財産本部のコーディネーターの方たち、また大学の部局に所属し類似した仕事に取り組んでいるいわゆる専任教員と呼ばれている人たち、それから、従来からの大学事務の方たちと、加えて、大きなプロジェクトベースのものでは事業総括だったり、もしくは、ファンディングエージェンシー側にもこういうことを考えていらっしゃる方たち、部分的に関与している人たち、いろんな人たちがこれに携わっているというのが実情かと思います。

 文科省のURA事業が1年半前に始まっていますけれども、時期的にはその直前に大学のいわゆる事務方以外の人たちで、ここに定義がありますが研究支援専門職員と定義できる人たち、何かというと、外部資金の獲得支援など、研究支援を目的として事務職以外でそれに携わっている人たちを、対象にした状況整理があります。

 対象は、国公立、私立、独法等の全部で113機関に対してアンケート調査をして、60%程度の回答率を得たというもので、この文科省の事業が始まる直前にしたものです。

 図1が雇用形態ですが、一目瞭然ですが、こういう仕事をしている人たちは、コーディネーター、専門職員や任期つきの教員のような形で雇われていて、ほとんどすべてが任期つきのポジションになっています。ちなみに、この総数が617名ということです。

 次に、雇用財源が図2なんですけれども、これはほとんどは流動性のある競争的研究資金で雇用されているというのが実情です。

 以上が、日本においてどういう仕事、どういうスキルを持ってやっているかということと、その人たちがどういう状況にあるかというご説明です。

 では、この効果をどうやって把握していくかということです。ここから2つ目の項目に入りますけれども、アメリカで先行している事例の中で、少し参考になるところをご説明したいと思います。

 これはほんとうに私見ですが、現在この事業でURAを配置している大学を中心に、各々の大学が最も注力するのはどういう点かというのを、私見で整理いたしました。

 1つ目は、研究企画と書いてございますが、専ら申請書をつくり込んでいくところにこういう人材を特化して充てようというタイプのもの。1期大学の5大学のうち、ほとんどは多分ここに注力しています。

 2つ目のカテゴリーは、そういう大型だったり複雑だったりしたプロジェクトを、もちろん企画をするところも重要なんですけれども、より現場の実施に注力したもの、研究拠点型名付けられるモデルのもの。

 また、3つ目として、それぞれこれまでに取り組んできた産学連携を大学の3つ目のミッションとして実施する点に注力した大学。いろいろなものがあると思います。

 ここで類型より重要な点として指摘したいのは、各々の大学が計画されたものは、それぞれにアイデアに満ちていますし、各大学の立場を踏まえた創意工夫が見られると思います。今後とても重要なのは、書いたプランをきちんと実行していくことだと思っています。特に、予算執行という観点ではなく、日本全体としてはこれらはモデル校の取り組みを通じてどう普及していくか、がより重要になります。これは、当然事業効果にかかってきますが、要は、今回のこの事業がどう影響を及ぼして、その効果はどういうもので、それをどう把握し、評価するか。ここがすごく重要になると思うので、そこをご紹介したいと思います。

 これから少し、NCURAというキーワードを申し上げますが、NCURAとはアメリカの団体で小さい字で恐縮ですけれども、ここら辺にご紹介をいたしました。随分前ですが、50年以上前にたった二十数人の意識ある人たちが集まって始めた団体ですが、今ではもう7,000人以上の会員数があって、非常に大規模にアクティブに活動しています。

 全米から毎年1回全国大会という形で2,000人以上が集まって年次大会をやりますし、全米を7つに区切って、リージョナルで、ほんとうに実務レベルの知見やノウハウをお互い交換し合う勉強会も活溌にやっています。

 それ以外に、全体としてURA機能というのが大学に必須ですねということをわからせるために、資格基準をつくっていまして、それがサーティフィケートプログラムと言っています。

 また、大学の中で仕事をしていく上では、専門知識を整理・体系化するためマスターコースを持っていたり、組織構造を各大学のミッションに合わせて構築するために、当事者同士のコンサルティングなんていうのもやっていたりします。とてもアイデアに満ちた取り組みを行っている興味深い団体です。

 そのNCURAのキーパーソンに伺った、アメリカの大学でよくみられる組織と仕事の定義、平均報酬額です。この組織構造自体は特段日本とは違わないと思います。一番上が日本でいう研究担当理事で、2番目の段から下は、イメージとしては研究協力部長以下、課長、課長補佐、係長という感じです。それらについての、ジョブディスクリプションと年俸が大体こんな感じですというもので、NCURAのアメリカにおけるサーベイです。ご参考まで。

 人を雇えば人件費ももちろんかかるわけですし、こういう間接人材をどうしてアメリカでは大学の中である程度組織だって位置づけられているのか、ということをやはりシステムとして考えたいと思いまして、そこをちょっと聞いてきました。

 2つあります。1つは、日米共通に見られるトレンドで、上に書いてありますように、昨今競争的な研究資金の比率が大学の研究費の中で増えており、それなくして大学の研究自体が成り立たなくなっているという現状です。

 これは日米共通だと思いますが、異なる点はその下で、アメリカがRAシステムとして機能するために肝になる部分が4つほどあるかと思います。1つは、競争的資金の間接経費の割合が高く、これが大学運営に必須の財源になっています。

 その間接経費を生み出す公的な競争的資金の執行に、もし不備があると、その翌年度以降、その大学全体がプロポーザルを出せなくなる等というチェックシステムが働いています。これによって、研究者当事者にとっても、大学の執行部にとっても、こういうことを管理するURAが大学の組織運営の生命線になっていることを明確に実感します。

 3点目としては、今度は、研究者サイドですが、ご存じのように、9カ月分しか自分のサラリーが大学から出ないという大学も多い中で、競争的資金を確保することがかなり重要なことになっています。

 ということは、つまり、それをちゃんと運営してくれるというのはとても重要で、URA機能が研究者の当事者にとっても目に見える形になっています。

 最後に、そういう資金の獲得だったり、組織の運営が、日本との相対的な比較の中できちんと大学組織が主体になって行う仕組みができているというこどだと思います。

 このような背景を持った上で、ではアメリカのシステムでどこが使えるだろうということを整理したものがこちらになります。左側の2つの列に関しては先程と同じですが、ここでご紹介したいのは、主に黄色の部分で、効果の把握についてです。

 まずURAの当事者の方たち、年次大会等で、RAのパフォーマンスについての評価指標や、RA関連人材の雇用財源の獲得のため何をアピールしているか、等を聞いてみました。一番下に書いてありますように、最初の答えは、効果の把握は非常に難しくて、これは普遍的な課題である、というものでした。

 その年次大会は2,000人程も集まるのですが、実は日本以外にも20カ国以上の大学や研究機関から参加があるそうで、そこでも良く話題になるとのことでした。昨年秋には、ロシア文科省の方たちが年次大会終了後にNCURAの事務局を訪問し、やっぱりこのメジャーメント、指標についてかなりディスカッションをしたそうです。

 そういうことを踏まえ、私なりではありますが、何が日本の参考になるかという観点を申し上げたいと思います。まず、アメリカにおいても、研究の質の向上、URA機能が加速していくためにはどういうことがあるかというと、全体を把握する指標はまだ見つかっていない、ということでした。しかし、業務効率化、最適な人員配置については、オフィスのIT化も大きな命題で、研究者の申請書が研究者の手を離れて、事務局のチェックを経て、最後に大学から提出されるまでの所要時間、1件当たりの所要時間等は、申請書が適正に迅速に処理されるというメジャーメントの1つにしている、というような話も聞かれました。

 2つ目の環境の整備、これも非常に難しいと言っていて、でも、やっぱり最後の我々RAの大きな目標は、大学におけるPI、研究代表者の満足をより高めることだと明確に言っていました。

 これを踏まえた上で、今日は 研究力の強化、もう一つは、URA当事者のキャリアパス

についてご紹介します。

 先程、アメリカの大学、日本と先ほど類型化いたしましたけれども、同じようにやっぱり大学の特性に応じて、URA関連部署もいろんなスタイルがあります。これは、この3月にNCURAの事務局長、もう20年その仕事をやっているNCURAの母のような方なんですけれども、その方がプレゼンをした中で類型化されたものです。一番伝統的なモデルというのは、もう今はあまり見られないそうですが、いずれの組織図でも、赤字がプレ・アワード、            その部署がそれぞれどういう責任者についているかという指揮命令系統が違っています。相対的な差なんですけれども、2つ目のこのBというのは、より予算執行等を重視したタイプですので、PreとPostが結構離れたところで管理されています。Cというのは、PreとPostを近くに置き、企画とそれを実行する部隊の意思疎通を重視した、PreとPostをくっつけたもの。ただし、案件ごとにそれをやるという感じではないようです。Dのほうは、さらにその点を重視し、PreとPostを一気通貫でやるというプロジェクトベースの組織構造。アメリカの大学のURA組織はこんなような類型化ができるようです。

では、各々方針をもった大学で研究戦略をどう実行していくかということが重要になるわけですが、そのためには何が重要かというと、当たり前ですけれども、一番重要なものは何か、という研究戦略を具体の個別の意思決定に反映させる仕組みです。

 これだけだと当たり前すぎるので、研究戦略を反映する仕組みや、URAへの理解向上や普及についてサジェスティブなことはないかと聞きました。まず研究戦略を反映する仕組みについての指摘は、大学の特性に応じた方針が必要になってくるということでした。アメリカでも、リサーチインテンシブユニバーシティ、いわゆる日本語での研究大学ですけれども、アメリカでは私立が多いようです。それとも、生徒数が多く大型で、州の予算とリンクしている州立大学か、3つ目として、もう少し小さめのカレッジか、もしくはメディカルが強い大学か、少なくとも方針と体制を考える際、まずこのぐらいの類型化はあるのではないか、ということでした。

 それらの類型化された大学の個々の戦略に基づいて、次にどういうことをしていくか。そのプレーヤーがURAなわけですが、2つありました。1つは、URAのかなり経験を持った人たちが、戦略に基づいて一番うまく動く組織づくりをお互いにコンサルティングし合うプログラムを持っています。きょうは割愛いたしますが、大学の活動全般を把握するための数百ページのファクトデータを読み込んで、現地で二、三日かけて、学長から研究室の秘書さんまであらゆる層にインタビューし、どうあるべきか、課題は何かというレポートを出すとそうです。略称で書いてありますが、ピア・レビュー・プログラムというそうです。

 もう一つは、実務者団体の存在です。プロフェッショナルな経歴を持った人たちが、コミュニティー形成とその発展を意識し、ボランティアで全体の機能向上に貢献する基盤と、実効的な仕組みがあり、実務者として共感できました。先ほどのNCURAという実務者の集合体は、非常によく機能していると思いました。

 まとめに入らせていただきます。まず文科省で今動いているこの事業について考えたいと思います。実効性のあるURA機能の定着のためにということで書きましたが、ご紹介があったように、既に1期校は1年半経過していて、事業は折り返し地点に来ていると思います。ここで重要なのは、そこで雇用されているURA当事者の雇用制度、財源を担保、評価だと思いますが、これに関しては、事業を実施している15大学の間で事務連絡会が開かれていると伺っています。そこで個々の大学では得られない情報を相互に共有していくのが重要なのかと思いますが、専らそれは各大学の取り組みに期待するところが大だと考えます。

 ここで、我々ができることは、と考えますと、幾つかあると思います。事務連絡会は採択大学の事業運営という観点ですが、まず1点目は、URA当事者のネットワーキング、コミュニティー形成の推進です。幸いなことに、日本では全く手つかずの白地かというと、そうではないと思います。1995年以降の施策により、いろんな形でコーディネーター人材や技術移転のプロフェッショナルがいらっしゃいますし、よくも悪くもそういう方たちが流動性があるので、今回のこの15大学のURA当事者の中には既にそういう経験を持った人たちが入ってきています。そういう人たちの、自発的な勉強会が幾つか動いているので、そういう草の根的な活動をエンカレッジすることが重要かと思います。

 既に設計されているスキル標準や教育のプログラム、これも3年の事業と伺っていますけれども、これを早期に15大学と情報を交換・交流していただくこと。また、この事業採択校以外でも、自発的な取り組みをしている先導的な大学も巻き込んだ早期の取り組みの共有というのが重要かと思います。

 これだけだといいことばかりなんですが、もう一点、あえて書いた点、従来の関連業種との調和の必要性があります。日本のURAは、手つかずの白地からやる仕事では全くなく、むしろこれまでにいろんな職種の人たちが既に取り組んでいるが埋め切れない仕事を、大学の方針に即して集中的に対応しましょうという仕事だと思います。ですから、大学によって類型化もできますし、逆に言うと、すき間を見つけて、そのすき間に自分が何か加えられる事を探すというスタンスが重要です。

 私は、URAを目指す人や、これからその仕事に就く方達から質問を受けると、まず一言目にこの点を申し上げます。従来から別の職名で仕事をしていた人達が、URAと自分の仕事はどう違うとか、組織的な整理をどうするかというところで話が終わってしまったり、新規に大学のカルチャーを知らずに雇用された人たちがそのはざまに陥ってしまったりすることも、現実としてあると思います。当たり前ですが、忘れてはいけない重要な点は、国としては全体をエンカレッジしていく、というメッセージを送り続けることだと思っています。

 最後のスライドですけれども、今申し上げた具体的な点の多くは、これからURA個々人や大学で専ら対応されることだと思いますが、加えて我々は、そもそも論を再認識すべきかと思っています。URAは何のために必要かというと、大学の研究力の強化や質の向上、PI、研究者の満足度等、何を目的とするかというと、やっぱりシステム改革だったり、Faculty Developmentだったり、大きな目標があると思います。

 今回の15大学で着任するURA人材は、少なめに見積もると多分全国で100人ぐらい、その人たちだけでできることでは全くなく、大学の事務組織や産学関連のいろんな人材、今までに動いている人たちと一緒にやっていくことが重要だと思います。

 これは時として、個々の大学やURA当事者だけでは実現できないことも多いと思いますので、文科省の中の推進委員会等、事業全体を見られるような人たちも含めて、研究力強化のために効果的な仕組みや、アメリカ等の参考事例や動向を調査分析したり、それを導実際に導入するため知恵を出すこと。

 それから、先ほどのインセンティブシステム、アメリカの例でご紹介いたしましたけれども、熱意ある当事者の個人の努力だけで済む話では無いので、国全体としてインセンティブシステムが回るよう検討していくことも必要かと思います。

 3点目です。願わくば、今回の事業で雇用されたURA人材が学内で認められて、適切に評価され、その大学でだれもが知っている人になるようなことを思うんですけれども、一方で、いろんな大学を知ったり、ファンディングエージェンシー側に移ってみたり、その流動性というのも、全体で見れば効果があると思うので、それができるようなシステムというのも考えていただければと思っております。

 以上で概況と課題のご提供をいたしました。

【柘植主査】  ありがとうございます。日本の大学の経営ともかかわる必要大事な職種を、日本に根づくかどうかということで、2つほど、きょうは資料1と資料2をご説明いただきました。約20分ほど時間がありますので、ご質問やご意見、ぜひいただいて、今後の活動に生かしていきたいと思います。順不同で結構でございますので、ぜひご発言いただきたいと思います。いかがなものでしょうか。森下委員なんかは生々しいところに入っておられるので、まずトップバッター、何か、励ましの言葉でも結構でございますし、あるいは問題点でも結構です。

【森下委員】  ありがとうございます。今、制度が日本で始まったばかりということで、ご苦労が多いんじゃないかと思いますけれども、先ほどちょっとお話にあった各大学内でのリサーチ・アドミニストレーター、RA間の協議会みたいな話が出ていましたけれども、具体的にもう何か動きというのは出ているんでしょうか。各大学でのリサーチ・アドミニストレーターの間に、情報共有とか、あるいは共同のスキルづくりみたいなところでの実際の試みみたいなやつは実際に始まっているんでしょうか。まだそこまではいってない感じなんですかね。

【高橋委員】  それは少しいいお知らせだと思うんですけれども、あると思います。ページでいうと、16ページのところですけれども、2つ目の職能団体・・・と書いてあるところのさらに下のところ。既に有志によって、例えばURAのような仕事をしたいと思っている学生さんも含めての研究会、20人、30人程度で、でも、もう2年で4回ぐらいやっているもの。また大学技術移転協議会の実務者の年1回の研修の中で1つのセッションを持っているのがもう6年目に入ります。多分その参加者総数は600人ぐらいになると思いますが、そういう仕事に興味を持ってかかわっていくという活動があります。

【森下委員】  その中で、各大学間で結構扱いが違うんじゃないかと思うんですけれども、具体的にあまりよくない扱いをされているとか、ここはやりやすいみたいな人が出ているんですかね。もしそういうのがあれば、その中で、この制度自体、何が必要かというのがもうちょっと見えてくるんじゃないかという気もするんですけれども。

【高橋委員】  ここで大学の名前を例示することは、重要かもしれませんが、ここでは避けたいと思うので。やっぱり問題はいっぱい、当事者ですので、出てきています。それは、いい意味で、自分はこんなに高い理想を目指してやっているのに、今やっていることはこうだという、そういうものもあります。でも、それは当然まず第1段階から、修行の時期だよねという話だと思います。

 やっぱりシステムとして問題なのは、目標があまりにも大きな目標ですよね、事業目標が。あれをブレークダウンして、当初3年ではどこまでたどり着かなきゃいけないんだっけというのと、行く行くはここを目指したいよねという整合性が重要なんですけれども、その整合性の中で、当然自分が1年半後に評価されて、雇用の継続が決まると思うので、何が自分の評価指標かというところと、大学ごとの戦略が優先順位をもって示されてない。これはやっぱり目標、ターゲットが決まってないつらさというのはあると思います。

【柘植主査】  牧野委員も現場のほうから、何かご発言ございますでしょうか。

【牧野委員】  突然のご指名ですが、お聞きしたいことが2つあります。アメリカの大学の1つの特徴として、教員の数に比べて事務の方の数が非常に多いとことがあると思います。2倍ぐらいが普通だと思いますが、リサーチ・アドミニストレーターの数というのはどれぐらい必要なのでしょうか。ここのところがこのリサーチ・アドミニストレーターが機能するかなり重要なポイントかなと思うのが1つ。

 それと、あと、資格のことが書いてありましたが、ドクターが必要とか書いてあるんですが、一番下の位の方が結構多いんですが、一体位がどのような扱いになっているか、で

すね。これは非常に大きなインセンティブだと思うのですが、アメリカの場合にはどうなのか、日本の場合にはどうしたらいいのか、この辺です。。

 それから、もう一つは、今、コーディネーターという方が非常に日本にたくさんいらっしゃいます。リサーチ・アドミニストレーターとコーディネーターの職域の違いというのは一体どこにあるのか、この辺、区別する必要あるんじゃないかなと思うのですが、いかがでしょうか。3つ、ややこしい質問かもしれないですが、お願いします。

【高橋委員】  すべてを私1人でお返事するのはなかなか難しいですけれども・・・。、まず1点目、研究者と事務の人数割合は、私もずっと興味があり、定量的な把握をしたいともうずいぶんNCURAで、キーパーソンに聞いています。が、ちゃかして答えられるけど、でもこれが多分本質なんですけれども、イット・ディペンズといつも言うんですね、個々の大学の戦略によるということです。例えばUCデービスなんかですと、カリフォルニアユニバーシティシステムが動いていますので、ある意味ユニバーシティシステムの本部と個々のユニバーシティで、まず2層あり、どこまでをRAと言うかということで異なってくる。また大学の個性なので、UCデービスのそれは、小規模研究大学のカルテックと全く違うんだ、と。だから、定量的な事務の中のURAの割合というのは、自分たちも全体把握はあまり意識していないとまず言われます。かなり対比で用いられるのが、州立大学と私立の小規模な研究大学、多分最たるものかはカルテックですけれども、それでいうと、カルテックなんかというのは全員がURAだと言いますし、一方で、カリフォルニアの州立大は、財務に特化した人、投資部門にベンチャー経験の人もおり、そういう人材の流動があったりするので、研究関連の事務スタッフ全員という言い方をします。割合を数字もらったことは実はないです。

 関連してなんですけれども、職域の整理なんですけれども、これも、さっき、ちょっと早口で恐縮だったんですが、15ページ目で、アメリカの大学の研究戦略とそれを実現するための優先順位という発想が非常に重要な背景にあります。この戦略とその実現のための判断ということなくして、何も動かないとまで言っています。例えば今年はもうオバマのもと、グリーンテック関係からこちらの研究領域に領域がシフトするので、そうすると、DOEだったり、NIHだったり、NSFのファンドの傾向がこの分野に来るだろう。そう考えると、うちの大学のこの部局は比較競争力が高いので、ではこの部局に注力しよう。そうすると、その部局のURA機能、とりわけプレ・アワードの部分を特化、強力にしよう。例として聞いた話ですけれども、そういうような意思決定がされているので、極めてプラクティカルです。

 その研究戦略というものは、一体どういうものなのだと、踏み込んで聞いてみました。

すると、ホームページに載せるような理念というのは大体どの大学も一緒。それは、多分日本の大学の5カ年計画と同じぐらいで、だれもが賛成するようなもの。大切なのは、その戦略の実現のため、学外には見せない、あるいは一部の関係者しか把握していない、この学部とこの学部だとこっちを優先しようというような優先順位がついたものがあって、それに基づいて、財源人の配分、組織や職域の整理がかなりドラスティックにされているというように、やりとりの中から感じられました。

 全体的なコーディネーターのような活動をしているいろんな人たちとRAの職域の整理でいうと、日本の類型化というのはご紹介しましたが、プレ・アワードに特化した大学に関しては、そんなに問題にならないかもしれません。個々人の業務範囲と組織上どう整理されているかによって、日本でも多分イット・ディペンズなんだと思いますし、多分それは後ほど前田先生のほうからでも感想を伺えればなと思います。

 前田先生に伺う前に、2点目のご質問、今、1点目と3点目についてお返事したつもりなんですけれども、キャリアラダーで、どういうインセンティブがという、アメリカの給与も含めたシステムに関するご質問ですよね。ご紹介したのは、こういう職制、職名で、こういうスキルを持った人たちが全国的に流動すると、一般にこういうお給料をもらいます、というような全国サーベイなんですけれども、牧野先生のご興味というのは、ごめんなさい、日本では……。

【牧野委員】  少し説明したほうがいいかなと思うのですが、日本とアメリカの大きな違いがそこにあると思うのです。日本では一番上の位にはPhDがないといけないという人が多いのですが、こういう人でないと大学の中でちゃんとした話の舞台にまじれないことが日本の場合は多いんですね。アメリカの場合には、そう関係ないと思うのですが、それでも、私がいたNIHでは、ある日突然研究者に電話かかってきて、あしたから研究しないでいいから、アドミに来いということが行われていました。NIHでは大きなビルディング三十何番だったと思うんだけど、それが全部アドミニストレーションなんですね。きのうまで研究していたような人たちがアドミニストレーターになっていて、そして、研究者の人たちに一目おかれるような立場で存在しているから仕事が成り立つというふうなことを彼らは知っているから、研究者をやめさせてでも連れていくわけです。そういうことがこの順位の中に、おそらくアメリカの場合は生かされていて、ここから下の人はあまりそういう会議とかの席で発言できないとか、そういうのも含めて、いわゆる雑用係まで含めて、こういうRAの順位の中に入っていると思いますが、日本の場合には、そこのところ、非常につくるのは難しいんじゃないかなと思います。どういうふうにインセンティブが個人個人に与えられるのかなと思います。それがないとなかなかアメリカみたいな組織をつくるのは難しいかなと思っています。

 それとサーティフィケートというのが出てきますが、調べたことがありますが、大した意味はないんですね、サーティフィケートというのは。

【高橋委員】  学位とか、そういうものではないですね。

【牧野委員】  全然意味はないと思います。そういう意味で、どこにインセンティブがあるのかっですが、アメリカの場合には階級社会だからこれでいいのですが、日本の場合、そこら辺をどういうふうにクリアできるのかなという、こういうところです。

【高橋委員】  すいません。もう一度言いますけれども、全部お返事するのは難しいんですけれども、とはいえ、少しだけトライしてみます。これはあくまでも、11ページのものは、アメリカでこういうものですと。先生がおっしゃったようなものというのは、私も聞いたことがあります。かつ、ある意味教授の中でも、自分はぴかぴか研究者というふうに行きたい人と、大学の経営、もしくは教育とアドミニストレイティブなトップマネジメントをしたい人とやっぱり分かれてくる。なので、先生のお話は、私も聞いたことがありますし、それは別にアンハッピーな話でもないと思いますし、多分日本の私立の大学とかでそういう形で、専ら教授ポジションだけど、やっている方はいらっしゃるので、こういうふうに書いてしまうと、あまりにも階層的ですけれども、幾つかそういう事例は日本でもアメリカでも普通にあるのかなと思います。

 多分今回のURAの事業というのは、今までのいろいろな大学の事務方の方たちとか、コーディネーターの方たちとか、既にやっている人たちとうまく溶け込んでいくことが重要なので、この例えば11ページの中で、1から3、4、5、6は埋まっていますと。じゃあ、2は今回の事業ですみたいな乱暴な区切りは全くすべきではないと思います。むしろ、こういう組織でシステムで動いている全体の中で、大学の置かれている社会的な位置づけだとか、大きな学際領域をやるようなプログラムというのが、時として担当する明確な、当面自分の案件として動くような人たちが据えられてないときに、そういうようなものを大学の戦略のもとに動く人たちということで、最終的には1つのこういうような組織構造が書ける中にポンポンと入っていくのかなというような、私はそういうイメージを持っています。

 サーティフィケートについては、もちろん学位ではないので、PhDでもないですし、マスターコースでもないですが、URAの人たちに聞いたときに、サーティフィケートRA、略してCRAというのは、とても具体的なものです。日本に置き換えて説明すれば、例えばNEDOの来年度のこの費目において執行できる経費の内容はこういうものであるというような実践的な知識が必要とされます。だから、去年までのルールとこの部分が変わっているので、この消耗品はことしはこの費目では買えません、というようなルールの変更を性格にプラクティカルに理解している。こういうことがわかっている人たちに対して出すサーティフィケートで、したがって、名刺には、職名とCRAホルダーか否かということがまず書いてあるそうです。転職に際しては、例えばUCバークレーの中で、このオフィスのCRA資格保持者を求むというような求人が出る、そんな使われ方をしていると聞いています。以上です。

【柘植主査】  ありがとうございます。前田委員のご発言の前に、今のお2人の話を聞きまして、かつ、私もアメリカの大学とつき合った関係でいいますと、やはりアメリカの大学の、産業的な言い方すると、大学経営のビジネスモデルがはっきりしている。その上で、このRA機能というものがはっきりするか、しないか。イット・ディペンンズというのは、そういうことに立脚していると思います。逆に、12ページのような背景ですね。これがビジネスモデルのお金の面の、12ページぐらいに書いてありますけれども、こういうものも含めたビジネスモデルの中でRAというのが持続可能であり、これだけのヒエラルキーができていると。こういうふうに私はお2人の議論を聞いた。前田委員、どうぞ、別なことでも結構でございます。

【前田委員】  すいません。コーディネーターの方たちをずっと見ていまして、リサーチ・アドミニストレーター的なお仕事をしていらっしゃる方もかなりいます。実際に私が東京医科歯科大学でやらせていただいていたときは、事務方の方が契約等を見ていませんでしたので、MTAも全件、300件以上、全部知財本部で見ていましたので、ほとんどRAの仕事もしていたというのが実情です。学校によっては、リサーチ・アドミニストレーターとコーディネーターのお仕事は似たようなものを非常にやっていたと思いますけれども、私の頭の中での整理は、産業界側の情報を入れたり、いかにビジネスのほうの感覚で先生に提言するかというところにどちらかというと重点を置いている方がコーディネーターかな。で、契約であったり、知的財産のこと、会計のことを先生方に危険のないように上手に進めてもらうためにいるのがリサーチ・アドミニストレーターかなと思っています。

 あと、分類分けではなくて、私が1つ感じているのは、コーディネーターでも、全員が立派なわけではなくて、非常に先生方に大事にしてもらっている人とそうじゃない人がいます。どこが違うかというと、先生方の知らない情報を入れてあげて、先生の技術戦略をもっと広げてあげたりとか、いろんなことをしてあげられる人はほんとうに大事してもらえます。

 それと同じで、リサーチ・アドミニストレーターも、先生が忙しいけど、自分で書けるのを下に書かせるだけでは全く意味のないリサーチ・アドミニストレーターだと思います。やはり先生が知っていることよりも知っていて、あっ、こいつ使ってよかったと思ってもらわないと付加価値がつかないと思いますので、やはり研究者の持っていない契約であったり、会計知識を身につけて、先生方以上に、先生に提案して喜んでもらえるような仕事をしないと、やはり存在価値出ないと思うんですね。やっぱりそこの知識を上手につけていくということが非常に大事になるんじゃないかなと。コーディネーターもたくさんもいますけど、要らないと思う人もいっぱいいますので、やはりそれは同じじゃないかなと思います。

【柘植主査】  ありがとうございます。ほかに別な観点でも結構でございますので、どうでしょうか。

 よろしいでしょうか。

 課題山積みだと思いますが、きょうの議論は、最初の議題に取り上げた趣旨は、きょうのご指摘、いろいろ貴重な議論があったと思うんですけれども、これをぜひ現場のほうにも、あるいは行政側のほうにも反映しながら、ぜひともこのリサーチ・アドミニストレーターの事業が、私、今の主査としての所感を申し上げますと、1点目は、日本の大学が世界レベルの大学になっていくと、研究と社会貢献、教育も含めてですが、そういう意味におきまして、極めて重要な新しい職種であり、既に今までの機能の中にもその機能が発揮された人がいるということが1点で、これをきちっと見える化して、強くしていくこと。

 2点目は、それをさらに強くしていくためには、行政側、文科省を中心とした行政側の役割もありますが、やはり各大学等の組織の長の、言うならばビジネスモデルですね。この重要な職種であると。こういうふうにとらまえていただけるかどうかということですね。これをしっかり再認識して、取り組んでいただけるかどうか。言いかえると、世界レベルの大学としてなってもらうための大学運営の生命線としてとらまえられるか。あるいは、大学も含めた、社会に貢献する、エンジン・オブ・イノベーションという言葉がありますけれども、そのエンジン・オブ・イノベーションをほんとうに動かしていくために不可欠な人材である、こういうことを大学の長がしっかり認識するか、しないかというところにかかっているのではないかと私は感じます。

 なお、今後の実践の中で私感じますのは、URA活動において、その充実化と実質化という目的におきまして、各大学における全学的な研究力の分析能力の充実。先ほど前田委員がおっしゃったように、先生の言われている、研究者の言われていることを代筆するだけの話ではない。先生も知らないような、自分の大学の全学的な研究力の分析の機能の充実、あるいは、その分析に基づきまして、研究企画機能の強化、これも先生はできないと思うんですね、多分。あるいは、さらに各大学、機関の間のURAの間のネットワークの構築。これについても非常に大事な取り組みであると考えます。この充実化の充実強化に向けても、行政側が、私は期待したいと思うんですけれども、しっかり取り組んでいただきたいと思います。

 以上が主査としての所感でございますが、ぜひきょうの指摘のありました課題等の対応も含めて、ほんとうに日本の大学にURAの職種が根づくか、今までしていたものをさらに太くしていくかと、こういう取り組みになりますように、ぜひともこれは大学、行政、それから産業側からも、多分私はそのあたり、産業のためにもなると思いますので、そういう意味での産学官が連携して、この人材を育成していきたいと思っております。

 時間の関係で、次の議題に進みたいと思います。議題の2は、大学が関与したオープンイノベーションシステムの推進方策でございます。前回にも文科省としての今後のさらなるオープンイノベーションシステムの発展に向けた構想が出されまして、詳細は別としても、文科省の方向として、これ、ぜひ実現しようと、こういうことが前回の結論だったと思うんですけれども、今回も継続して議論を行いたいと思います。

 それでは、事務局より「イノベーション促進のための産学官連携基本戦略~イノベーション・エコシステムの確立に向けて」、これをぜひ説明していただきたいと思います。

【寺崎課長補佐】  事務局でございます。資料は、資料の3をごらんいただけますでしょうか。オープンイノベーションシステムを考えるに当たっては、やはり共同研究というのは産学官連携の基盤となってございます。共同研究というのが、平成22年9月7日、科学技術・学術審議会 技術研究基盤部会 産学官連携推進委員会におきまして、今主査からお話のありました「イノベーション促進のための産学官連携基本戦略~イノベーション・エコシステムの確立に向けて」という報告書でご提言いただいております。

 本日の資料は、そのご提言を踏まえまして、共同研究等に関する現在の取り組みと、また、前回までの本委員会のご議論等も踏まえまして、今後の施策の展開の方向性について事務局案を提案させていただいているものでございます。

 1ページめくっていただきまして、「科学技術・学術審議会における産学官連携に関する議論」ということで、当時、平成22年9月7日にご提案いただきました報告書から共同研究に関する部分を抜粋させていただいております。

 「知のプラットフォームの構築」という点に関しましては、技術移転の発想から転換して、産学の対話を通じたキャッチボールによるスパイラルの発展、いわば、知の循環システムの確立が重要であると。そのためには、同じ技術課題を共有する産業界及び当該課題解決に資する基礎的研究を行う大学等が対話を行い、出口イメージの共有を図りつつ、イノベーション創出につながる戦略的な共同研究を効率的に生み出す枠組みを知のプラットフォームとして整備する必要があるのではないかと。

 また、知のプラットフォームにおいては、非競争領域における複数の大学等と企業との協働が呼び水になって、イノベーションが連続的に創出されることにより、新産業や新市場の創出に結びつくことが期待される。

 さらに一番下に、我が国の将来の持続的発展に必要な重点課題を追加抽出し、知のプラットフォームにおける研究支援の規模を拡充していくことが必要であるとご提言いただいてございます。

 また、2ページ目、次のページでございますが、さらに「民間企業との共同研究の戦略的推進」というところでございますが、共同研究というのは産学官連携活動の基盤をなすものであるというふうにご提言いただいております。

 その上で、個別共同研究プロジェクトの特性に応じて柔軟に合意形成を図っていくことが求められると。

 また、大企業との共同研究の推進においては、大企業、複数の企業との大型の共同研究を推進していくためには、ヒト、モノ、カネの戦略的な活用を全学的な視点で図っていくことが必要である。

 また大学等において異なる専門分野の研究者が参加し、複数の専門分野を融合して活動する研究拠点を設立し、複数の大学や企業等と連携した取り組みを強化していくことも重要であるという形でご提言をいただいてございます。

 平成22年にそのようなご提言を踏まえまして、現在までどのような共同研究の取り組みを行っているかは次のページでございます。まず、産学共創基礎基盤研究プログラムというものが平成23年度より始まってございます。産学連携の範囲を基礎研究領域まで拡大し、産学の対話を行う競争の場を構築し、オープンイノベーションを推進していくと。かつ、産業界の技術テーマの解決に資する基礎研究を大学等が行い、産業界における技術課題の解決を加速する取り組みでございます。

 左の真ん中のところに、少し字が小さくなってしまっておりますが、平成22年、23年、24年と、それぞれ技術テーマを設定いたしまして、その技術テーマ、これは産業界等からご提案いただいているものでございまして、そのテーマを踏まえて、大学の研究を行い、その技術テーマの解決、技術課題の解決に資する取り組みを進めているという状況でございます。

 引き続きまして、4ページ目、めくっていただきまして、「戦略的イノベーション創出推進プログラム」でございます。こちらは、JSTの戦略的創造研究推進事業等の研究成果をもとにした研究開発を行い、新産業創出にいしずえとなる技術を確立して、新産業の芽を創出するという取り組みでございます。

 10年間のプログラムでございまして、テーマを設定した後、最初はグラントによる支援。最後の3年間はマッチングファンドによりまして、企業にも資金を負担していただくと。最初の段階から企業と大学がチームを組んで行っていくというものでございます。

 こちらも左下に、字が小さくなってしまいますが、平成21年から23年にかけて、それぞれテーマを設定して、推進していると。例えばiPSの関係ですとか、有機ELの関係も、21年にテーマとして設定されて、強力に推進しているという状況でございます。

 引き続きまして、5ページ目を開いてしいただきまして、こちら、参考で、「先端融合領域イノベーション創出拠点形成プログラム」というものも挙げさせていただいております。こちら、イノベーションの創出のために特に重要と考えられる先端的な融合領域において、企業とのマッチングを図り、イノベーションを創出する拠点の形成を支援することを目的としたプログラムでございます。

 これ、実は、振興調整費というものの中に入っておりまして、事業仕分けの結果を受けて、新規採択は行っておりませんが、平成18年当時から20年にかけて21課題を指定しまして、絞り込み、選択と集中により12課題を推進しているというものでございます。

 特に大学と企業がかなりがっちりタッグを組んでやって、マッチングファンドでやるということで、例えば京都大学とキヤノンの取り組みですとか、さまざまないい成果が出ていると認識してございます。

 それらを踏まえて、6ページ目でございますが、平成22年にご提言いただいた後、戦略的イノベーション創出推進プログラムですとか、産学共創基礎基盤プログラムなど、基礎研究から出てきた成果を着実に事業化につなげる仕組みですとか、非競争領域から産学が協力関係を構築しながら研究を進めていくための仕組みは整備しつつあると認識してございます。

 一方ではまだ、共同研究を行うに当たっては、さまざまな課題があると認識しております。例えば先ほども申し上げましたように、先端融合拠点というのが一部成果を上げつつありますが、我が国の重要課題に関する研究開発を行う大規模なプラットフォームの構築、研究支援の規模の拡大というのが、仕分け等の結果を受けて停滞している状況でございます。

 また、大学と企業が個人的もしくは部門間のつながりではなくて、組織全体の取り組みとなっていく仕組みづくりも必要ではないかと考えております。

 また、産学共同研究拠点における知財戦略、出口戦略の明確化等、さらなる発展のための検討が必要であると考えてございます。

 また、社会の課題等を踏まえまして、複数の専門分野を融合して活動する産学共同の研究拠点の設立と複数の大学、企業等とが連携した取り組みの強化などもさらに推進していく必要があるのではないかと考えてございます。

 これらを実現するためにも、ただ単に研究資金を出すという取り組みではなくて、限られた資源の中で効果を最大化することを目標にしっかり掲げていく。また、最大化の中で、大学と企業がどちらもメリットを得られる仕組みづくりというのが必要ではないかと考えております。

 その中で、7ページ目でございますが、これは参考でございますが、委員の先生方ご案内のように、海外の産学官連携拠点といたしましては、産と学が一体となって大規模な共同研究を行う場が発展を続けているというような状況でございます。

 8ページ目でございます。事務局といたしましては、大学が総力を結集して世界と戦えるような大規模な産学連携のオープンイノベーションの研究拠点を形成することによりまして、世界市場にインパクトを与える成果を持続的に創出する仕組みが必要ではないかと考えてございます。

 そのような拠点を考えるに当たってのポイントでございますが、世界に誇る日本の中核研究者の集積によるトップサイエンスからの事業化の実現。また、企業の負担義務化による産学の大規模なマッチングファンド。また、企業の戦略的拠点を大学に設置し、しっかり暗黙知も共有していくという取り組み。また、各プロジェクトの知財戦略の重視等が必要ではないかと。

 右側の絵でございますが、先ほど説明させていただきました戦略的イノベーション創出推進プログラムというものが、いわゆるネットワーク型という形で産学官連携の共同研究を行っているという状況でございます。

 また、先端融合領域イノベーション創出拠点形成プログラムというのは、少し集積が進んで、ある大学で産と学が一緒になって拠点で進めていると。さらに世界と戦える産学共同のイノベーション拠点への発展、まさに先ほど、1つ前のページでございましたように、世界では大規模な産学官連携拠点がさらに発展を続けていると。日本としても、ほんとうにラディカルイノベーションが起こるような大規模な拠点、そこで仕組みをつくっていく必要があるのではないかと考えてございます。

 最後、9ページ目でございますが、過去の分析といたしまして、先ほどポイントというふうに述べさせていただきましたが、トップサイエンスからの事業化の実現という点に関しましては、例えば基礎研究のほうで大変いい成果が出ていると。そのような成果を出した人たちを巻き込み、事業化のための取り組みというのが現在まで少ないのではないか。また、小規模の共同研究が散在している状況がございます。

 そのような観点からも、今後産学の中核拠点を大学に設置いたしまして、トップサイエンスによる基礎研究成果の事業化を、トップサイエンスからの成果の事業化というのを目指していく必要があるのではないかと。

 また、共同研究というと、どうしてもおつき合い程度の共同研究でとまってしまうケースがあると。ほんとうに企業の方々が社運をかけた共同研究に発展していくようなプロジェクトが少ないと。言いかえれば、これは発展させるための国の仕組みが不十分ではないかという点があるのではないかと考えております。そういう意味では、大規模なマッチングファンドによる積極的な民間資金を導入していく仕組みづくり、企業が資金とか人材というリスクを負担しつつ、社運をかけて、大学と一緒に取り組んでいただくような仕組みづくりが必要ではないかと。

 また、3つ目でございますが、日々のコミュニケーション等が十分でなくて、今までの共同研究ですと、例えば先端融合の事業で成功している例というのは、企業の方々が大学にしっかり入り込んで、毎日のように成果のディスカッションを行っているというケースが見受けられます。まさにそういうような成果や暗黙知の共有というものをしっかりやっていく必要があると。そういう意味では、企業のオフィス、研究所の設置を要件化して、日常的な情報共有、意見交換ができるような仕組みをつくっていく必要があるのではないかと考えてございます。

 また、オープンイノベーション拠点において、知財戦略というのをやはり重視していく必要があると。企業がほんとうに将来を担う技術というのは秘密性が高くて、オープンの場ではなかなか行われないと。そのような観点からも、しっかりと知財の帰属のルール等をそういう拠点では整備していく必要があると。また、知財の戦略を考えられるような人材が常駐して、しっかり知財戦略を立てていくような仕組みづくりも必要ではないかと思ってございます。

 平成22年のご提言を踏まえて、研究活動の基盤である共同研究をこのような形、出口まで一貫して戦略的かつ重点的に支援する仕組みの再構築が必要ではないかということで、本日、事務局よりご提案させていただきました。ご議論のほどお願いいたします。

【柘植主査】  ありがとうございます。引き続き、工藤室長のほうから「大学におけるシーズ・ニーズ創出強化の取組」について説明いただいた後、ご議論いただきたいと思います。

【工藤室長】  ありがとうございました。今、議長のほうから、資料4「大学におけるシーズ・ニーズ創出強化の取組についての(構想案)」の説明をという形で伺ったんですが、加えて、資料5についても、あわせてご説明さしあげたいと存じます。

 今事務局から資料3について説明さしあげたところですが、6ページになりますか、特に平成22年の段階で、既に現状を踏まえた課題としてされている中に、特に主なマッチング、知財のライセンシング等による産学官連携活動は量的に拡大してきていると。しかしながら、大きな社会的インパクトが新たな市場を創出するイノベーションにつながるような産学が協働するプラットフォームの場の構築には至っていない。それから、キャッチアップではなく、独創的なイノベーションを生み出す新たな産学官協働のための場に向けたシステム構築が必要というような、このような問題意識というのは、この場におきましてもずっと引き継がれているものでございまして、今回の参考資料という形で配付いたしました前回の資料、大学が関与したオープンイノベーションシステム推進方策の課題と今後の方向性(たたき台)がございます。特にこの中の、ページを3枚めくっていただきますと、前回イメージ図のほうを事務局のほうから提示させていただいたかと思います。

 しかしながら、ちょっとこれが我々としてどういったものを実現していったらいいのかというのがなかなか伝わりにくかったのではないかというような反省をいたしまして、この反省を踏まえて、すいません、資料が前後して恐縮なんですけれども、もともとご説明しようと思っている資料4のほうに目を通していただければと思うんですが、これを書きかえたといいましょうか、置きかえるような形のものをお持ちした次第でございます。

 目指す方向性としては、シーズ・ニーズのマッチングの場みたいなものの再構築が必要ではないかと考えております。これまで自然科学系研究者と企業を中心とした産学官連携というものがずっと行われてきたんですけれども、こうしたものの枠組みの中に、研発独法、それから、金融機関、消費者、NPO、さらに地方自治体や人社系、人文・社会学系の研究者、こういったものも、要は投入する関係者数を増やして、これをもっとぎゅっと、圧力とか密度も高めた段階で、シーズとニーズを圧着させて、こういったものの弾をどんどん撃ち出していくと。こういった場の構築ができないかというのが我々の問題意識のあらわれでございました。

 これを具体的にどのような仕組みのほうになるのかというのを、これもアイデアの段階でございますけれども、オープン・イノベーション・コロキアムを大学内に置くことを考えております。コロキアムというのは専門家会合という意味でございます。まずシーズ・ニーズの探索範囲を拡大するために、今申し上げたようなプレーヤーとしての金融、商社、それからシンクタンク、こういったものにも入っていただく。学の単位。大学の中でも、経営本部、専門分野、他分野。産においても、に経営部門、マーケティング、研究部門。これに加えまして、官においては研究開発法人、地方公共団体、第三、NPO。 

こういった方々を含めた専門家会合というものを開きまして、1つ学内資源の中を全部使い切ってみる。それから、施設、設備等みたいなものも供用する。それから、産学官共同で、新たな価値ですね、市場創造に向けたようなものをニーズを発掘していくと。

 とにかく現状考えられているさまざまな手段というものを総動員しまして、ここは話し合うだけというに限らず、1つ、調査研究というものにつなげていくと。つまり、話し合われた結果がそこで雲散霧消するようなものではなくて、必ず1つはアウトプットとして、こういったものを調査研究していくようにつなげていく。その中で、新価値、市場創造につながるもの、それから、事業化が見込めるようなもの、それから、社会的課題の解決が見込めるようなもの、こういった柱につながるようなものの見きわめをする。

 これが、見きわめが終わった段階で、ここからが実はこれまでの議論の中で一気通貫のシステムがなかなかできていないという話につながってくるんですけれども、前段で、説明したとおり、JSTやNEDOを含めて、政府でも相当なファンドのほうを用意させていただいております。こちらのほうに、また金融や企業、事業体からのリスクマネーの供給というのも考えてはいるんですけれども、現状我々ができることは、こういったリスクマネーを供給する主体、政府系のファンドを用意していますので、こういったところに調査研究の結果というものをつなげていく。

 ここは、我々は、産学官公連携コーディネーター事業も進めさせていただいていますけれども、こういった方々にも活躍していただく。

 それから、URAの事業も、本日もご議論いただいたところでございますけれども、こういった競争的資金のほうにアプライする際に、研究戦略、それから、アプライそのものについてのほうのお手伝いというのも、URA事業の支援を通じてやっていく。つまり、総合的に我々の持てる政策資源を投入して、新たなイノベーションにつなげていく方策というのを考えている段階でございます。

 引き続きまして、資料5のほうもあわせて説明させていただきたいと思います。かれこれ10年以上、産学官連携コーディネーターという形の事業で、文科省のほうで配備させていただいて、措置させていただいてきたところなんですが、この10年の歳月によって、大分コーディネーターの年齢構成に大きな変化が出てきております。端的に申し上げると、年齢が高齢化方向にシフトしております。現状、やっぱり各大学の取り組みからすれば、こうしたコーディネーターの方に、非常に経験豊富なコーディネーターの方々ですから、この方々に存分に活躍していただくのが非常に大学としては効率がいいんですけれども、それだけに注力していると、次世代の育成というのがなかなかうまくいかないということを我々は危惧している状況でございます。

 そこで、今般、24年4月に、文科省委託で、これは前田先生の財団法人日本立地センター、全国イノベーション推進機関ネットワークのほうに委託を出させていただきまして、報告書をいただいております。「産学官連携コーディネーター活動・スキル・資質」という報告書でございます。この中にも、年齢構成の問題であるとか、さらに、コーディネーターの資質の能力を分けるときに、どうやってそれを次世代に伝えていくかということのキーワードとして、暗黙知の継承が提起されています。これは言葉にできないようなコーディネーターが持っているスキルです。他方は形式知であり、すべてのコーディネーターが1つの能力認証といいましょうか、品質保証といいましょうか、そういう言い方すると、非常に不適切かもしれませんけれども、こういったもののあわせて2つに分けられるのではないかと。

 我々、次世代コーディネーター育成の1つの考え方として、まず暗黙知のほうは高齢化しているコーディネーターの方が引退する一歩手前になってきて、待ったなしの状況のときに、いかにこれを伝えていこうかというのを考えるとともに、他方、そういった形式的に編纂し得る、少し中長期的な時間軸でそういった形式知を編纂して、次世代を再生産していく仕組みにつなげる。この2つ、しかも全国ネットワークを組んで、コーディネーター同士の能力のある種の研鑽を積む場というのも含めながら、どうやって、やっていればいいかというものも今後考えていきたいという形で、2つの話について、今文科省で今後の考えていかなければならない課題というのをご紹介させていただいた次第でございます。

【柘植主査】  ありがとうございます。ただいまから今の今後の方向に向けてのいろんなご意見、サジェスチョンをいただきたいと思うんですけれども、今説明がありましたことを反芻してみますと、資料3では、これは2年前ですね、今から2年前に産学連携推進委員会できちっとまとめまして、親の科学技術・学術審議会のほうに報告をして、正式に承認されたイノベーション促進のための産学官連携基本戦略、副題として、イノベーション・エコシステムの確立に向けてと、これを出したわけであります。この2年間、これを基盤にして、資料3でもオーバービューされたように、かなり積極的に全国展開をしてきたと。

 一方では、資料3の最後にまとめられたり、あるいは資料4にも書きましたように、今後の展開というもの、今までの投資を生かして、さらに、まさに科学技術駆動型イノベーションまでつなげていく。これは時期を同じくして、ご存じのとおり、第4期の科学技術基本計画がコミットした科学技術イノベーション政策、これに資するということにまさにつながっていくわけでございまして、その今までのものを生かしながら、さらに科学技術イノベーション政策に資する産学官連携というものが資料4で提案されて、そして、同時に並行して、人材も育てていこうということが資料5で出されたわけでございます。

 ぜひとも、これは来年度以降の重要政策とも絡む構想でありますので、積極的なご意見いただきたいと思います。いかがなものでしょうか。

【渡部委員】  すいません。

【柘植主査】  どうぞ。

【渡部委員】  多分今説明された部分だと、確認なんですが、資料3の9ページのところの創出の施策、これ、2年前の資料だということなんですが、この資料の中に、例えば企業のオフィス、研究所の設置を要件化するとか、こういうふうなことが書いてありますが、この施策が資料4だということではないんですよね。何かちょっとそこの関係が、これ、こういう考え方の中で、ちょっとそこを確認したいんですが。

【柘植主査】  寺崎さん、よろしいですか。

【寺崎課長補佐】  はい。資料9に関しましては、今後まさに……。

【柘植主査】  ページ、9ページ。

【寺崎課長補佐】  9ページ、失礼しました。9ページ目に関しましては、まさに今後の産学官連携で共同研究を行っていくに当たってのどういう方向性でやるべきかということを書かせていただいております。資料3の5ページ目までが現在までの取り組みになります。そこから6ページ目で、今までの現状をさらに分析いたしまして、8ページ、9ページ以降の方向性の共同研究の拠点というのが必要ではないかということで、科学技術イノベーションを起こすために必要ではないかということでご提案をさせていただいているという整理でございます。

【工藤室長】  すいません、資料4と資料3の関係なんですけれども、資料3、今寺崎補佐から説明させていただきましたように、共同研究のあり方の方向性という形で出させてはいただいているんですが、今回の、資料4は、前回の資料のリバイス版として出させていただきました。参考資料には大学が関与したオープンイノベーションシステム推進方策の課題と今後の方向性という形で問題意識がつづられているんですけれども、この問題意識は、むしろ共同研究をやるに当たる、その前の段階ですね。特に私が先ほど引用させていただきました資料3の6ページ、産学が協働するプラットフォームの構築出来ていない点と関係があります。特に独創的なイノベーションというのは一体どのようなものであるのかというのも非常にご議論あるところだと思うんですけれども、ここはひとつ間口を広げた形でイノベーションの創出に取り組むというのが何らかの答えなのかなという形で考えてはいるんですけれども、こういった問題意識を踏まえて、さらにたたき台というものを、これまでの積み上げた議論を踏まえさせていただくと、前回の資料の中に出ていた我々の考え方のプラットフォームの考え方ですね。これというものをもう少しブラッシュアップして見えるような形にすると資料4になるのではないかと、そういう関係にあると理解しております。

【渡部委員】  今、その資料3のほうの9ページのところの施策がすべて今できているということではないと。まあ、一部はやっていると。それは例えば資料の4のほうでいうと、この右下のJST、NEDO等とか、こういう本格的な研究開発をやるような施策の中で本来はもっと展開されるべきであると。ただし、その入り口のところにもやっぱり課題があるのではないかと考えて、具体的に大型な共同研究で成果が出せるようなものをより効率よくつくるために、左側のコロキアムという施策を位置づけたと、こういう考え方でよろしいですか。

【工藤室長】  はい。まさに渡部委員が説明していただいたとおりでございます。

【柘植主査】  まさに私もそう理解しておりまして、それを具体的にするのが資料4の右側で、まさにこれは事務局が、一種のフュージョンモデルですね。核融合モデル、密度を上げてイノベーションを起こしていく、臨界モデルですけれども、その中に新しいエレメントとして、従来ちょっと手を抜いていたんじゃないかというのが、人文系とか、地方自治体とか、NPOも含めた、いわゆるステークホルダーを増やして、かつ、フュージョン臨界モデルと、こういうことを、抽象的なモデルなんですけど。どうぞ。

【渡部委員】  すいません。ちょっと確認をさせていただいたのは、左側のこういうさまざまな知識にアクセスできるような体制をつくって、不確実性の高い大学の科学技術の知識を生かしていくというようなことを、効率を上げようというのは、これは賛成です。というのは、こういうのは研究結構ありまして、特に不確実性の高い段階での知識の応用開拓の推進ですとか、そういうことに対しては、こういう多様な知識にアクセスするという仕組みがかなり影響があって、効果があることがわかっているということなんですが、一方で、前回プレゼンをさせていただきましたけれども、共同研究というのは、実は件数だけは増えておりまして、前回リーマンショック以降も増えているという話をいたしましたが、やっぱり問題なのは、先ほどの資料にもありましたけれども、具体的なほんとうに事業に結びつくというような成果が必ずしもリンクしたものが見えないという部分がありまして、ここで推進していくのは、この右側の社会実装というところがその意味だと思いますが、放っておいても、今、自立化して自然に増えていく小規模な共同研究みたいなものをこれで促進するということではなくて、社会実装をほんとうに進めるような大規模なプログラムにつながるようなものをこれで促進していきたいというふうに位置づければよろしいのではないかと思います。

 ということは、具体的にこの入り口のところの活動であっても、成果をちゃんと見届ける仕組みが内在してないといけないだろうと思います。結果的にこれをやったけれども、どうなったかわからないというようなことでは、これをやった意味がないだろうと思いますので、そういう要件を例えばこの左のところの活動につけて行うと、よりよくなるのではないかと思います。

 以上です。

【柘植主査】  ありがとうございます。おっしゃるとおりだと思いますね。関連、あるいは……。森下委員、どうぞ。

【森下委員】  今のディスカッションでかなりコロキアムの位置づけがよくわかってまいりまして、入り口のところの探索というのが難しいというところでのこの意義というのは評価したいと思うんですが、これは質問なんでけれども、先ほど政府系ファンドの話が出てきましたけれども、新聞等ではよく見るんですが、これ、ほんとうに政府系ファンドというのはできるという前提で話を進めてもいい状況になっているんですか。あまりこの委員会で話題は出なかったので、もし後ろがちゃんと拡充されているのであれば、この前のところの意義というのはもっと出てくると思うんですが、どのあたりまで現実になっているのか、少しご説明してもらえればと思うんですが。

【工藤室長】  現実に申し上げると、先ほど寺崎補佐のほうからご説明さしあげたとおりに、幾つかの施策というものは既に、先生方もご案内のとおり、かつてのエスイノベであったり、先端融合領域イノベーション拠点形成であったり、ほかにもスターツとか、多くのファンドのほうは既に整備されている段階でございます。現状、多少のシャッフルといいましょうか、仕分けを踏まえて、新たなものを用意するというのも考えられている現状ではあるんですけれども、ここは結構コンセプチュアルな部分なんですが、やはりそういった既にめどとか、JSTとか、ほかに農研機構とか、幾つか独法の持っているファンドがあるんですが、こういったところにアプライする弾を増やしていく。そのときに、ただ、弾も、今まで従来どおりの共同研究の弾ではなくて、もう少し毛色の違った弾も出てくるでしょうということを期待して、用意させていただいておりますので、この後段のほうは、むしろこういうようなものは、多様な弾を扱いながら、きちんと育てていくという部分で対応していただければと考えております。

【森下委員】  既存の政府系の資金という意味なんですね。

【工藤室長】  そうです。

【森下委員】  シンガポールみたいな、いわゆる政府系の……。

【工藤室長】  ソブリンファンドではないです。そういうレベルの話ではありません。

【柘植主査】  土田委員から、何か今と関連してご発言があれば。

【土田委員】  政府系ファンドにおります産業革新機構の土田でございますが、我々のファンドというのは、我々のほうからしますと、金融機関といいますか、資金の細部を、事業化に推進するという面からしますと、おそらく先ほど渡部委員がおっしゃられていた、社会実装に向けたシーズの掘り出しから、右側のほうにもっと行ったステージだと思っております。

 その中において、今回の幾つかの、最後まで、渡部委員がおっしゃったように、見届けるじゃありませんけれども、かなり最終的な実践まで持っていくという中において、逆に我々のような細部を見ている人間から申し上げますと、先ほどからコーディネーターですとか、それから、アドミニストレーターという言葉が出てきて、私も不勉強で、今日までそれの役割がよくわからなかったという、大変不勉強で大変恐縮なんてすけれども、ただ、その中において大変跛行性があるものもございますし、私自身がおつき合いしている人は非常に限られて、特定の大学に絞られているものですから、あまり全部の大学を見たわけではない中において大変恐縮なんですけれども、実際的に我々がもう1回投資家として見ていく中においては、独自の計画表から、知財から、データから、何から、みんなもう1回やり直さなきゃいけないというのがほとんどです。

 ですから、やっぱり今回、私は個人的には資料の4のところは、渡部委員と全く同じでして、アイデアの構想段階というのは、むしろ大学ですとか、それから、産業界のよくわかった同じような業界にいる方だけではなくて、突拍子もないアイデアを持っているような人ですとか、金融機関みたいに、こういったものは金になるんじゃないかみたいな、こういった人たちをまず置くのが1つあります。

 もう一つは、ここの2年前のご議論を見ると、とても2年前とは思えずに、今日にもつながるようなお話ばかりではないかと思うと、中間のところで、この資料5にあります、例えばコーディネーターのスキルを一定にする、あるいは、当然人間ですから、能力の差が出てくるとか、あるいは、何年もやられている間に環境の違いというのが出てくるのは当然だと思うんですけれども、用意されているものが必ず、こういったものは、先生方、知財も含めても、すぐにデイワンでお出しできるような、そういったような再現性に近いようなものが民間レベルであると、今書いてあるようなものというのは、実装段階から発展段階、そして私どものような金融機関がほんとうにエクイティとして、あるいはローンとして取り組めるようなものになっていくんじゃないかなと思っております。

 長くなりましたけど、1点だけ。ぜひこの右側のフュージョンモデルのところなんですけれども、目的意識を持たない人たちがフュージョンモデルに参加しますと、基本的にはフュージョンで終わると私は思っておりますので、そういった意味では、何をもってこのコロキアムは、シーズのアーリーなのか、それから中間なのか、それから出口なのかということ、それによって集まる人のスキルも違ってくると思いますので、そういった面では、そこの目的意識というのを非常に明確にされたほうがいいのではないかなと思っております。

 以上です。

【柘植主査】  ありがとうございます。永里委員、それから前田委員、その順番でお願いします。

【永里委員】  今土田委員がおっしゃったことと同じようなことなんですけれども、資料4のほうの社会実装に向けた出口の明確化というので、新市場開拓とか、新産業創出とか、新ビジネスモデル創出、国際標準、それから社会的な課題解決と。これらはほんとうにこの方向に持っていかなきゃいけないと思いますし、こうすべきであります。というのは、今、日本のものづくり産業の視点から考えますと、海外に行かざるを得ないような状態になっていています。(デフレの進行、生産人口の減少等で)国内の市場が縮小しつつある現在、こういうことをやらなきゃいけないだろうと。それはイノベーションの創出のため重要だろうと思います。

 ところで、フュージョンモデル、この中で、人社系研究者とか、先ほど政府系の話とかありましたが、人社系研究者に関しまして、私自身がちょっとイメージとした場合に、「おれがこういうことをやる」というような人社系のそういう人たちがいるんだろうかと。私が言いたいのは、土田委員がおっしゃっていた目的意識のない人社系の人たちがいてもあまり意味がないわけで、人社系の人はこの種の目的意識を持っているんだろうかと。私、ちょっと辛口で申し訳ないですが、疑問というよりも、質問ですよ、これは。そういう例示ができたら、あったら教えてほしいんですが。

【柘植主査】  多分事務局には難しそうですが、だれか助け船が。

【工藤室長】  ちょっと簡単にご紹介させていただくと、目的意識のところで、かなりスペシファイしないと人社系の人というのは出てこないという傾向があるのは確かだと思います。我々というか、JST、RISTEXという社会技術研究開発センターというところがございまして、この中で、社会における科学技術の役割に焦点をあてたファンドがございます。その中で、例えばちょっと中身のことは割愛しますけれども、地域に根差した脱温暖化、環境共生社会という、こういう領域を設けたときに、法学部の先生がPIになっていたり、経済学部の先生がPIになっていたりしているようなプロジェクトも中にはございます。

 それから、同じように、このファンドの中には、例えば犯罪から子供の安全というような、こういう切り口のプログラムもございまして、もしかしたら出自は理系なのかなと思われるんですけれども、人文科学系の先生の方がPIになっていたりしますので、フォーカスが決まっていれば、問題意識を持って入ってくる議論の前提となる方はいらっしゃるんだなという理解でいます。

 しかし、実際大学の中でどういったビヘイビアでいらっしゃるとか、そういう話になると、全く知見がないので、お答えできないのが非常に恐縮でございます。

【柘植主査】  今のご指摘の目的意識を持つフュージョンモデル、あるいは、人文・社会系がそれにちゃんと参加できるかというのは、今の話プラス、企業の中でも、放っておくと研究開発型の人材だけが集まってくるものですから、ぜひともこれは企業の中での人文・社会系、あるいは業種によって、私のつき合いのありました商事会社さんなんていうのは実におもしろいことを考えておられますし、あるいは、調査会社も含めて、企業の中でのほんとうの地に足をつけた人文系の人たちの起用も含めて、これは今の問題は宿題としていただきたいと思いますけれども、よろしいでしょうか。

 じゃあ、前田委員、それから藤本委員。

【前田委員】  すいません。今のRISTEXのほうのプログラム補佐もやっているものですから、ちょっとそちらのほうで、人文・社会系の先生方のコメントというのは非常にいいなと思うときがよくあります。社会実装のためのコメント的に非常にいいなと思うんですけれども、RISTEXでやっている事業は非常に額が小さくて、そんなにリスクを負わないようなものに対してのコメントに対して私はすごくいいと思うんですけれども、やはり土田さんがおっしゃったように、ほんとうにビジネスをやろうとか、すごく大きなお金をかけてというときに、どれだけ責任を持って言ってもらえるのかというところが、コメントとしては、外からの目線という意味では、技術屋さんじゃない人がいるというのは非常に大事なことだと思うんですけれどというのはあります。

 あと、私、個人的意見なんですが、JSTの振興調整費のプログラム補佐を8年やっていまして、先端融合のところのプログラム補佐も一時やっていたんですけれども、私的には、これは非常に大きなお金を民間が自分で出します。しかも、ここにありますように、年間7億で、10年間かけてどんどん絞られていくんですよね。これ、普通は国の予算というのは、よっぽどじゃないと、3年とか5年のときに途中でだめになるということはないんですけれども、この先端融合は、かなり淘汰されていきながらやっていくもので、しかも、金額が大きいということは、産業界の人が相当本気で力を入れているというものですから、私は個人的には先端融合のような大きなプロジェクトが、やはり経済でほんとうにものにしようという産業界の人を仲間に入れるということではいいのかななんて思って、私、見ていました。個人的な意見ですけど。

【柘植主査】  ありがとうございます。じゃあ、藤本委員、どうぞ。

【藤本委員】  今、主査と前田委員の話の中にもかなり出てきたのであれなんですけれども、何十年も前から産学共同と言われたときから、企業の温度と、どうしても難しいということで、政府系の研究所、ずっと100人ぐらいインタビューに回ったときも、結局企業から来る人、基礎研究に企業から来る人は、研究所の研究者と同じマインドの人が来るので、企業と産学をやっても全然何の刺激もなくてということがあって、ここの話に出てくる企業の方というのが、さっきおっしゃったような、いろんな部門の方がどれだけ本気になるかということがあって、両方の窓口の、大学側の窓口の先生と企業側の窓口の人が個人的に疲弊するような状況で、あとはお金が全部滞りなく終わって、ある一定の成果は出るけど、結局組織ごと、これ、このままいいからやっていこうというところまでいかないという苦労、ずっと聞いてきましたので、資料4の左側のこの絵に書いてあるように、研究部門以外のいろんな部門がどれぐらいの比率でこの企業が入ってくるかということが、研究部門のところだけだと、結局中堅の人が大学の先生と変わらないような思考でやって、一応産学連携やっているから、予算おりるのは大丈夫ですよねという形になってしまうと思うので、ここをどう克服するかというところが、もう既に私がずっとインタビューで回っていたころより随分時間がたっているので、クリアされている部分があれば、またそれは教えていただきたいなと思うんですけれども。

【柘植主査】  井口委員、どうぞ。それから高橋委員、それから三木委員。

【井口委員】  若手コーディネーターの育成と。やはりもう以前から言われ、コーディネーターで、ある功なり遂げたというわけではありませんが、企業のOBが大部分占めてきております。今私も新たな組織に入っており、各自治体には、産業振興公社、機構、センターとかいう、いわゆる地方自治体の外郭があります。そういうところでも企業OBが、コーディネーターとしております。 私は自分では、プロパーの職員、若い人にコーディネ

ーター機能を持たせるべきで、皆さんに頑張ってやっていただいておりますので、オープン・イノベーション・コロキアムとかにも、官の中の地方公共団体とか、書いてあって、そういうところで人を育成するのがいわゆるエコシステムとか、地域イノベーションとか、につながってくるのではと思っております。ぜひその仕組みをお願いしたいと思います。

 もう1点だけ。さっき言われたけれども、金融と民間資本と資金と。国の中小企業整備機構だとか、政策投資とかいう大きい国のお金は、いろんな組織、地方で入ってきますが、一番地域で入るべき地方の銀行が手を差し伸べていないということが、ここの仕組みの中の研究開発、その次のフェーズに民間資金が入ってこないというところ、非常に悩み深いと。以前もちょっと、革新機構のお金を流す場合にも、地域のほうのいわゆるベンチャーキャピタルもちょっと視野に入れ、投資組合等にも、地域の銀行が出資しやすいような

仕組みがあると、ここの文科省の場で言うべきなのかどうかわかりませんが、地域にいると感じます。以上です。

【柘植主査】  それでは、高橋委員、それから三木委員、お願いします。

【高橋委員】  ありがとうございます。じゃあ、手短に。2点あります。1つは、今のコーディネーターのお話なんですけれども、若手をというのは合点がいくんですが、どうやっていい人を獲得するかということが非常に重要というのもこの委員会の多分議事録の中で何十回も言ってきていることだと思います。これまでの施策で若手の人たちに特化したコーディネーションの人事施策もあります。当事者の候補者、当事者に今回のこの事業で候補者になるような人材群は、非常によくこれまでの一連の事業を見ていると思います。ここで問題なのは、時限の人事施策の弊害で、要は事業期間、例えば3年の後、正当なプロセスでの評価もされず、たまたまアンラッキーで雇用を打ち切られた人というのは、その小さいコミュニティーの中で瞬く間に広がるということはやはり押さえておかなくてはいけない点だと思います。先程前田先生が、いい人も悪い人もいますとおっしゃいました。採否のボーダーラインの人たちは、多分ラッキー、アンラッキーはあると思うんですけれども、皆さんが認めるちゃんとした人ちゃんと残れる、だめな人は循環していただくという、そういうシステムがないと、いい人が来なくて、そうすると基盤が定着せず、これからも時限・単発の政府のお金を入れないとシステムが回っていかない。厳しめのコメントですけれども、資料5についてはそれです。

 資料4のほうです。今おっしゃった社会実装に向けてという右下のポイントなんですけれども、前田先生がよくご存じの先端融合という振興調整費の大型のものを、私、東北大のときにその案件を担当しておりました。いかにこの計画が難しいかというところも、皆様ご存じのところだと思います。右上に書いてある企業からNPOまで含めたいろんなプレーヤーをということに関していうと、既に2004年に法人化したときに、知財本部がセットされ、そこで企業のR&Dや知財の専門家が入り、幾つかの研究大学で、組織連携や企業連携という名のもと、個別の共同研究ではなくて、かなりこれに近いコンセプトで事業が動いていたと思います。例えば研究開発のトップで、その大学の卒業生でもあるような人達が、産連本部の特任教員として入られて、その企業に近い分野を担当し、1対1ではなくて、n対nのような組織連携を大学側で組んでいたという記憶があります。当時こういうような委員会で、日本地図に研究大学とそれぞれが組む大企業のペアがまとめられた図があったと思います。それが今どうなっているのかというのは、このプログラムを現実に考えていくときに、とても重要なものだと思いますので、いずれにしても、これ、多分かなり大きなトライアルになると思いますから、そういう意味では、過去のFSをちゃんと生かすということが重要かと思います。

 以上です。

【柘植主査】  ありがとうございます。そうしたら、三木委員、お願いします。

【三木委員】  資料の4ですか、それから資料5、それと資料3の、高橋先生のURA部

分も含めて、全体的に全部リンクしていると私は思っているんですね。

 1つは、まず資料4からいきますと、多分課題解決、事業化可能性のある課題を設定して、それで、それを、リソースとしての研究者であったり、お金であったり、そういったものをリソースして、プロジェクト・プランニングして、それがプレ・アワード、そしていろんなところ発展していくという姿。これは非常にいいと思いますが、ある意味では

「王道的」、別の言葉を使うと「正常進化型」のやり方だと思います。でも実はもう一つ、「突然変異型」というものも非常に大事になってきますね。そういったものは非常にリスクの高い、しかしそうしたものについて産学連携を通して産業化にもっていく、そこの部分はもう少しこの委員会でも検討する必要があるだろう、そういうふうに思います。

 いわゆる常識、過去、我々も成功、小さな成功モデルをもっていて、その小さな成功モデルに立脚して常識で考えやすくなっているんですけれども、常識ではだめな部分があるはずです。ラジカルなイノベーションというのは、基本的に非常識からスタートすることが多い。そして非常勤が常識と調和しながら、社会に受け入れられ社会の中に実装されるということだと思います。そういう意味で、非常識発の部分をどうするかというのは、今後、政策的にもどうするか、何か仕組みが必要か、そこは非常に大事な要素であると思います。今回の議論ではその辺りのことがちょっと欠けているので、今後、継続的にご議論いただけるといいように思います。

 それから、常識的な正常進化型の場合でも、かなり気になっている点があります。コーディネーターにしても、それから、いま活動が始まったURAにしても、かなりプレ・アワードに特化している傾向が強いのではないか。ポスト・アワードのところは、実はJSTのほうでPOを派遣していたりとか、大型のものについてはプロジェクト・マネジメントについてもある程度のアクションがなされていますが、今までの各大学の現場で取り組まれている産学連携プロジェクトでは、数多くの共同研究が進んでいるが、なぜ社会実装される成果が少ないのか、ポスト・アワードの重要な要素の1つであるプロジェクト・マネジメントのところが本当にできているのか、ということもあろうと思います。

 柔軟なプロジェクト・マネジメントができているのか。そういう意味でいうと、今回のURA採択大学でも、ポスト・アワード型のところに注力して、URAをプロジェクトに派遣している体制をとっているのは東京大学とか京都大学とかで、多くの大学では、大学経営の視点が前に出てまず外部資金が欲しいというところに行きやすく、プレ・アワード側に重心が動いているようにみえる。ポスト・アワードのところをどうするのか。その点も課題の1つだと思います。そのためには、いわゆる間接経費のありようなど制度面のことも含め、、もう一度考え直す必要があるかもしれない。もっと抜本的なところ、今までの制度を前提条件とするんじゃなくて、どこかの制度を変え、どこかを強化する、もし現場が動く上でハードルがあるところがあるんだとしたら、それを変えるために制度上の問題がないかというところも、事務局の側でもいろいろ検討していただいたほうがいいんじゃないかと思っております。

 以上です。

【柘植主査】  ありがとうございます。重要なご指摘ですね。ポスト・アワードの面も含めて、制度。関連して、北澤委員、どうぞお願いします。

【北澤委員】  けさもちょっと東工大の伊賀先生とお話ししたんですが、今まさに高橋委員や三木委員が言われたようなことと関連があるんですけれども、要するに東工大とMITは何が違うかというときに、人数的に見ると、教員とか学生とか、そういったことでは差がない。ところが、サポーティングスタッフがMITは東工大の10倍はいますということなんですね。その10倍というのはどういう人たちかというと、独立採算性でその人たちがみずからを雇用している、そういう人たちがMITを中心に動いているという、そういうグループができてきているんだと。

 そこが一番大きな差であるということを言われたんですけれども、このフュージョンシステム、私は非常にいいと思いますし、モデルシステムとしてはとてもいいんですけれども、なぜか日本ではモデルシステムが終わると、はい、3年でおしまいですといって、その人は解雇されちゃうといったようなたぐいのことが起こるわけで、それで、その後、モデルシステムというのは、やっぱりそれが広がっていかなきくちゃいけない。それで、10倍に拡大しなきゃならない。大体東工大のケースですと、5,000人ぐらい、そういう人が周辺にうごめかないとだめなんだ。5,000人というのは、我々、今まで考えてみたこともないような人数なんですね。

 ですから、大学って、考えてみたら、1人の研究者に対して10人ぐらい相互に関連して活動していける人たちができてやっていけるような、そういうシステムになっても全く

かしくない。アメリカは有名な大学はそうなっているということをかんがえると、一体何が悪いんだろうと考えてみると、日本の大学での考え方自身はいいけれども、規制が多過ぎる。大学も3年たったら解雇しなきゃいけないとか、5年の「雇いどめ」だとか、いろいろ変な言葉がたくさんある。産学連携でも、規制によって活動が阻害される部分を一度洗い出してみて、それで何かモデル事業をやったらわっと広がってくるという、そういうことになると非常にいいんじゃないかなと思います。

 ポイントとなる規制は、高橋さんが言われた人事のことって一番大きいような気はするんですけれども、このフュージョンシステムが終わったときにさらに同じものがどんどんできていくことになるような、規制との関連を考えるとよいと思います。

【柘植主査】  ありがとうございます。そろそろ時間が来ましたので、この件、まだまだ次回の推進委員会でもぜひ継続して議論していきたいと思いますが、きょうは大変、特に今までの、2年前に立てました、この委員会で立てましたイノベーション・エコシステム、それなりにこの2年間やってきた。その財産を生かしながら、あるいは教訓を生かしながら、今後の展開という形のものが資料3の後半、それから、資料4と5で出されまして、そして、それを実行に当たってさまざまな、ほんとうに有益な重要なご指摘をいただいたと思います。

 例えば目的意識を持ったフュージョンモデルとしてほんとうにこれ、できますかとか、過去の事例、プラクティスですね、これは成功もありますけれども、失敗もあります。この教訓を生かすべきだとか、あるいは、プレ・アワードだけじゃなくて、ポスト・アワードの面も含めて、あるいは、今までこういうことを考えていながらも、実行しようとうしたけれども、できなかったことを妨げている制度上の障害物ですね。これなんかは、第4期の科学技術基本計画なんかでも、システム改革という形で取り上げていますので、それがどういう面で変えようとしているか、あるいは、我々が産学官連携の活動の中で、今北澤委員がおっしゃったように、我々が認識している制度上の障害物がほんとうに改革されるのか、こういう視点も含めて、今後の活動に反映していきたいと思います。

 最後になりますけれども、ぜひともきょうのお話は、資料4の方向で、今後の予算化も含めて、事務局しっかりやってほしいという、この合意はされたと思います。ぜひともそれはやっていただきたい。

 一方、私自身も、委員会の経験しますと、資料4のフュージョンモデルのこのコンセプトだけでは現場に落としていったときに、また研究だけに、あるいはプレ・アワードだけに埋没しかねない危険を持っていまして、ぜひともフュージョンモデルをもうちょっと現場に落としたときに、アワードの評価にも、あるいはポスト・アワードの後の評価にも使えるような設計図に具体化していきたい。これは事務局にもお願いしたいんですが、ぜひ各委員の皆さん方にも、こういうふうにもうちょっと具体化したほうが評価のときにも、いわゆるファンディングの評価のときにも、あるいはアプリケーションの人たちにとっても主張、接点が明確になるんじゃないかと。こういう図をぜひともつくっていただきたい。

 そのために、今までどんなもの、図が出ているかというのは、きょうお手元のほうに、机上資料で、ヘンリー・チェスブロウのオープンイノベーションの非常に概念的な図から、今まで出ている図がご参考のために出ています。

 これだけでも動いてこなかったというのが我々の反省でありまして、ぜひ今回のフュージョンモデルをしっかり現場でプランとして、あるいはチェックできる図に具体化しないと、これ、政策で事業として動かしていただいても、いろんな反省点が出てくるだろうと予想します。

 そういう意味で、結論ですが、資料4に基づいて、ぜひとも事業化のほうに事務局の文科省としては頑張っていただきたい。それから、それに備えて、フュージョンモデルをもう少し設計図として具体的なものにしていただきたい、そう主査としてお願いしたいと思います。

 時間が参りましたので、議論を打ち切りまして、今後の予定について事務局からお願いしたいと思います。

【鷲﨑専門官】  それでは、事務局より今後の予定につきましてご連絡させていただきます。お手元の資料6をごらんいただけますでしょうか。次回の第12回は8月24日、金曜日、13時からを予定しております。その次の第13回は9月13日、木曜日、13時からを予定しております。会場や議題の詳細につきましては、柘植主査ともご相談しながら、別途ご連絡させていただきたいと思います。

 以上でございます。

【柘植主査】  ありがとうございました。

 それでは、ご多忙中のところご参集いただきまして、ありがとうございました。これをもって閉会いたしたいと思います。

 

―― 了 ――

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