資料1‐4 基本計画特別委員会(第1回~8回)における主な意見(項目別整理)

項目 主な意見の概要
(1)基本認識 ○ 現在は歴史的な転換点に差し掛かっている。目先の事で右往左往するのではなく、20年後を見据えて議論しなければならない。20年前にベルリンの壁が崩壊し、それ以後米国主導の極端な資本主義、新自由主義が跋扈し、つい先日破綻した。そして現在から20年後、新しい秩序が生まれるだろうが明確には見えていない。ただし、将来は中国はじめアジア勢が台頭し、世界の勢力地図が大きく変化することは確実。
○ 本委員会は平成23年から27年の科学技術基本計画策定に資するものという位置づけであるが、その期間よりさらに長く我が国は尊厳と繁栄を保たなければならない。そのために明確な国の姿・課題を議論しなければならない。
○ 今後我が国の具体的な方向性を議論するのであれば、20年先の指導者たるべき志のある若い方々の意見を十分に採り入れるべき。
○ 「科学技術政策のための科学」に各国が取り組んでいる。より戦略的に科学技術政策が運営されるよう、エビデンスに基づいた政策が立案、実行、また評価されたのかを把握することが重要。これに資するため、今後は統計情報の体系的な整理が必要。
○ 国家的課題としては、低炭素、健康長寿、安全・安心といった、第3期科学技術基本計画でも掲げたような社会・技術課題が想定される。
○ 我が国の目指すべき方向性として、「世界から尊敬される国」が挙げられる。現在、研究開発をフルセットで行える国は日本とEUと米国ぐらいで、研究を行いたくても自前では行えない諸外国は多くある。このような状況の中で、日本は世界に対して責任を有しており、グローバルな世界の中での日本の位置づけとして、知的に信頼され尊敬される国となることを明示すべき。日本があって良かったと思われる国づくりを進めるため、まずは日本の強みを把握することが必要。
○ 若い世代を育てていくことが特に重要であり、子ども達が自らの未来のイメージを描くことができ、自らが社会を作るという気持ちや志を持てる社会を目指すべき。
○ 新たに科学技術イノベーション政策を柱として取り上げるのであれば、これまでの科学技術基本計画とは明確に異なる点を分かりやすく打ち出していくべき。
○ 科学技術イノベーションの定義を明確にすべき。イノベーションが社会システムの変革をも含むと定義するのであれば、科学技術イノベーションを進めていくことで、目指すべき国の姿が実現できるというメッセージを出していくべき。
○ 科学技術イノベーションに取り組むに当たり、どのような分野で、どの程度の規模・スケールが必要なのか、またどのような形で取り組みを進めていくのかについてきちんと議論すべき。
○ イノベーションを創出するためには、ある程度の社会実験を行う必要がある。科学技術の成果を社会に実装していくためには、自然科学の研究者とは異なるマネジメントのスキルや技術が必要であり、こうした観点からも人文社会系の研究者との連携も必要。
○ 科学技術の革新がもたらすイノベーションは、社会システムの変革をもたらすものである。それは現在あるシステムからイノベーションを創出するということではなく、現在の社会システムそのものが持続可能かをまず検討することなどが必要で、その際に人文社会科学を活用する視点を入れることが必要。
○ 第3期基本計画にも社会科学と科学の調和に関する記載があったが、本委員会の資料では、学術に関する記載があり、一歩踏み込んだ印象。具体的に進めていくにはもう少し努力すべきで、例えば、イノベーションに向けて人文社会系の人が参画し、意見を活用できる場の形成などが必要ではないか。
(2).基礎科学力の強化  
1.基礎科学力強化に向けた研究の推進 ○ 我が国の基礎科学の疲弊と高等教育へのしわ寄せが生じている。産業界から投資を続けていただくのはもちろんだが、政府も公財政支出を増やすことが必要。
○ 大学の改革とともに高等教育の充実が不可欠。OECD平均に達するためには3兆円程度の予算が必要であり、政治課題にしていくことが必要。教育目的税を作るべき。
○ グーグルがスタンフォード大学から事業化したという話がよく出てくるが、研究開発の最初の段階から全てベンチャーキャピタルが資金支援をしてきたということではなく、事業化の最後の段階でベンチャーキャピタルから資金が出てきたにすぎない。事業化までには長い経緯があり、公的資金等のノンプロフィットな資金が着実に投入されている現状や、純粋にプロフィットに基づく資金というのは米国でもそれほど多くないということを正しく把握した上で、公的な資金の投入の重要性について勇気を持って議論すべき。
○ 我が国の方向性や国の姿を考える上で、課題解決に向けた研究も大切だが、課題に振り回されることなく数十年後を見据えた基礎研究が必要。
○ 基礎研究を着実にサポートしていくことが技術の多様性を生み、我が国の知的な存在感を高めることになる。
○ 問題解決型の研究に重点を置きすぎると、問題発掘能力が疎かになるおそれがある。
○ 基礎研究の多様性は重要であり、これのサポートを具体化するための方法論が必要。
○ 世界をグローバルに見渡せば、日本が従来のような改善・改良型の研究開発を進めても勝負は見えている。独走的でリスクの高い基礎的な研究を地道に行うことが必要。
○ 単純に科研費や運営費交付金を増やせばいいというものではない。基礎研究の推進においては研究者の知を統合させていくことも極めて重要で、このような研究のシステムを作ることが必要。
○ 研究者が自発的に学際融合型の基礎研究に取り組むための方策についても議論していくことが必要。
○ イノベーションで一番チャンスがあるのは融合分野。融合的な基礎研究を大学で振興していくことが必要であり、これに関わる人材がイノベーションを生み出す流れをつくる。
○ 現在行っている研究についてだけではなく、研究に付随して新たな知識を生み出すような基盤(人、機関、制度)が構築されていることが、新しい力を生み出す源泉となる。
2.知的基盤社会をリードする創造的人材の育成 ○ 戦後続いていた古き良き時代が終わり、企業も大学も従来の方法では立ちゆかなくなってきたということを共通認識として持ち、今後の科学技術イノベーション政策を実現していくためには人材育成を政策の中核に据えなければならないという姿勢を明確にすべき。
○ 本当に優れた人材は、科学や技術に親近感を持った人材を育てることからしか生まれない。人材育成については、科学技術システムの項目から、より格上げして記載すべき。
○ 我が国の国際競争力強化の基本戦略は人材立国戦略であり、この問題を真正面から捉えることが必要。我が国の人材育成の目指す目標は、第一に世界トップレベルの人材育成であるが、我が国の科学技術全体を幅広く支える若手研究者の育成も重要。我が国の科学技術を世界トップレベルに持ち上げるため、高等教育に対する予算を明日への投資と考え、国民の強力も得た上で、戦略的かつ実行可能で、具体的な人材育成の方策を科学技術基本計画に盛り込んでいくことが必要。
○ リーダーシップを持ち、世界で活躍できる人材を育てることが世界貢献になると認識すべき
○ 博士は質と量の両方を拡充していくべき。
○ 科学技術人材の育成について検討する際は、工学や理学などそれぞれの分野の現状を踏まえ、数量的あるいは質的に十分なのか等を明確にしつつ議論すべき。
○ 日本は博士が多すぎるのではないか。国の大きさから見ても、大学や大学院の数が多すぎる。研究所や大学は研究を進める博士が欲しい、また民間でも応用の利く博士は欲しいといった需要があることから、今後の博士育成の全体の在り方について整理が必要。
○ 今の博士課程の在り方では、大学側も上手く進まないことは理解している。どのようにしたら良いかというところを芯に据えて検討すべき。
○ 企業や組織の中でのイノベーション創出を実現するため、中核となる人材をどのように継続的に生み出していくのかを考える上では、日本が本来強みを有する学士等の中堅層の厚さを保持あるいは強化していくことが必要。
○ 社会からは多様な人材の要請があるが、既存の大学のシステムがこれに十分対応できる形になっていない。今後、大学自らも大きく変わっていくべき。
○ 諸外国に比べ、教員の数に対して学生の定員数が多すぎることが問題。
○ 科学技術人材の育成は重要だが、より幅の広い人材育成の観点も必要であり、社会科学、人文科学等のバックグラウンドを持つ科学技術人材の育成を進めていくことが、我が国の幅広い人材の育成につながる。
○ 社会人ドクターについて、週末に1回だけ授業を受けて博士号を取るような状況で良いのかは疑問。社会人が博士号を取得するための仕組みを考えるべき。
○ 博士号取得者に求める能力について、大学と企業との間にミスマッチがあるのは確かだが、一方で、博士号取得者を採用した企業の満足度は高い面もあることから、互いにコミュニケーションを取るための場を設けるべき。
○ 今は、広い視野を持った博士課程レベルの者を活用して、社会的なイノベーションを生み出していく時代。博士課程の在籍者への経済支援や、産業界の求める博士のビジョンやモデルの明確化を図り、大学と産業界ミスマッチを解消することが重要。このためには、公財政支出が必要。
○ 企業が求める人材を考える場合、明らかに需要と供給の関係があり、供給サイドが需要サイドのニーズを汲まなければ、雇用は生まれない。大学が企業の求める人材を輩出しているのかという議論が必要。
○ 産業界からは望む博士モデルの提示を期待したい。産業界と大学がこのような議論を積み重ねていくべき。
○ 社会の要請に応える人材が必要であり、産業界が大学と強く連携して、大学院教育に建設的に参画していくべき。
○ 工学系のドクターのレベルを産業界と一緒に考える機会が必要。分野によって状況は様々でありきめ細かい対応を検討すべき。
○ 産業界では、大学が育成する人材は知識が狭く応用が利かないなどと認識されているため、経済界・大学・学会が一体となって新しい人材育成のモデルを作るべき。
○ 人材育成においては大学院の在り方が極めて重要であり、特に学生に対する奨学金や学生の流動性を高めるための具体的施策について検討すべき。
○ 人材の育成・確保だけではなくキャリアパスを見据えた人材の活用についても検討することが必要であり、学生に対して今後のキャリア形成の在り方をメッセージとして伝えていくべき。
○ 日本の大学院後期課程の多くは、出身学部と同一の大学に進学。上位大学の優秀な学生ほどこの傾向が強い。流動性を高める仕組みを考えることが必要。海外の研究大学に留学して、PhDの学位を取得するような流れをつくることも非常に重要。
○ 学生の引きこもりやインブリーディングをさせない方策をとるべき。学生が海外に行かない理由は、帰ってきた時に、安心して働ける環境に不安があるため。
○ 日本の雇用制度の在り方が一番大きな課題。大学として何をすべきかについても視野に入れつつ議論すべき。
○ 知を生む研究者と事業者が同じであるような例はほとんどない。一人で全てを担うことを期待すること自体が間違っており、それぞれの役割に応じた人材を育成し、かつ多様性を持たせるというためのネットワークの形成が重要。
○ 学生支援機構の奨学金の多くの部分は返還しなければならず、大学や国からの経済的支援が少ない状況で、大学院生の質を確保するのは困難。
○ 学生が博士課程に進学しない理由として、博士の研究の能力が給料等に適切に反映されない点が挙げられる。
○ 日本では学生に対する支援が圧倒的に足りない。また、博士の学生に資金を渡したとしても修士の学生が博士課程に進まない原因は、キャリアパスが全く見えないため。博士になることで何が良いのか、また企業に就職する際にどのようなキャリアパスがあるのかを見せることが必要。さらに大学においても、テニュアトラック制など、優れた人材を残すような仕組みを根付かせることが必要。
○ テニュアトラック制について、「いい人材を残す制度」という趣旨をより明確にすることが必要。運営の在り方についても方針を示すべき。
○ テニュアトラック制の現在の20倍もの応募状況では、優秀な学生であったとしてもリスクが高く挑戦しにくい。これでは「競争」ではなく「くじ引き」である。キャリアパスとして確立できるよう、テニュアトラック制をより充実していくべき。
○ 就職が決まった途端に学生が勉強しなくなるという問題については、自分や親が払ったコストを元にして自分磨きを行うという、自立した精神が、初等・中等教育の段階で身についていないことが問題。
○ はみ出し人材をどのように育てていくかが課題。米国では各州で子どもたちの才能教育を行う仕組みがあり、そこで育った子どもたちが様々な場で活躍するなど、多様なキャリアパスを特別の才能教育が支えており、日本においても検討すべき。
○ SSH(スーパーサイエンスハイスクール)について素晴らしい成果があがっており、中長期的に全国全ての高校に広げていくべき。
○ (秋田県を例として、)博士号取得者を小中学校の教員として特別に採用するという試みが全国に進めば、新たなキャリアパスとなる。こうした取り組みを初等中等教育に採り入れるべき。
3.独創的な研究の発展に向けた研究開発システムの改革 ○ 若手研究者が自ら研究活動等に係る経費に充当することができ、かつ、それを基に希望する機関に所属し、研究活動を行うとともに、所属機関に対して、基盤的経費の確保を前提に環境整備等の経費も措置できるような競争的資金制度の創設の提案は有意義であり、受け入れ側はその後のキャリアパスを示すことを併せて推進していくと効果的。
○ 大学では、実験教育のための経費が不足しており、十分な財政措置を講じるべき。
○ 「科学技術イノベーション」を標榜した場合、科学技術とイノベーションをつなぐフェーズに焦点を当てた評価の在り方が必要であり、評価の観点や評価者についても従来とは異なるという視点を踏まえた記載を増やすべき。
○ 研究開発評価の階層性を考えると、それぞれの階層に応じて求められる知識が異なることからこれらに対応した評価者を育てていくべき。
○ 基礎研究と課題解決型研究の資金の支援の在り方や評価については、異なるシステムで運営していくことが必要。基礎研究にまで成果や期間が求められるのは望ましくない。
○ 評価の階層を明確にし、それらをつないでいくことであり、評価をより上位の「目的」のために活かすということが必要。個々のプロジェクトを評価することも大切だが、より賢い投資に向けて評価を活かすべき。
○ 教育研究機関である大学を、論文生産性等のコストパフォーマンスをもって評価するということについては慎重であるべき。効率的に論文を出すというのみではなく、教育効果がどの程度あり、どのように輩出されてきたかという点を評価すべき。
4.大学等の教育研究力の強化 ○ 国立大学法人の現状を見ると基礎研究や人材の育成に関する取り組みが難しくなりつつある。基本計画に記載されていることが着実に実行できるようにすることが最も重要。
○ 基礎研究の多様性の確保は重要であり、これを支える運営費交付金の確保が必要。
○ 大学の若手教員数が減っているが、これは運営費交付金の1%減と人件費削減のダブルパンチで効いているためであり、大変な危機感を持っている。
○ これまで大学が基礎研究や人材育成といった非常に重要な課題に応答するため、どのような活動をしてきたのか疑問。日本の大学のグローバル化はどのような状況にあるのかという点について把握した上で議論を進めるべき。また、基礎研究を取り巻く状況を把握した上で、今後の大学における研究の在り方を検討していくことが必要。
○ 人材育成やグローバル化を含めた大学改革の一層の推進を図ることが必要。
○ 大学の研究支援者を増やすことは重要だが、大学の人事は教員か、事務職のどちらかという二元体制であり、今後、どのように対応していくのか総合的に考えていくべき。
○ 研究開発を持続的に発展させるため、英国では施設や支援人材にかかる費用も見積もった上で研究費を申請する仕組みが導入されている。こうした動きも踏まえた上で取り組みを進めるべき。
○ 海外の大学生にとって魅力ある大学を作るため、先進的な施設設備の整備を進めていくべき。
○ 大学の施設を一般的な箱モノと同じように扱うのは間違い。また、老朽再生や耐震補強など後追いばかりではなく、国際化や先端研究を考えるならば、積極的な整備が必要。
○ 高等教育機関に対する公的財政支出のうち、資本的支出が少ない状況は問題。
○ 臨床医学研究のスペースが不足している。特に大学病院所属の助教の基準面積はゼロで計算されており改善するべき。
○ 大学の環境整備の方向性として、例えば、大学のキャンパスそのものが低炭素社会実現のための諸施策・諸技術のショーケースとして機能し、学生に社会のサスティナビリティについて考えるセンスを与えるなどの方法は非常に重要。
○ 学術情報のオープンアクセスを促進するため、論文の無償公開の義務化等も必要ではないか。
○ 日本の場合は、全ての論文をすぐにオープンアクセスできるようにすることは難しい。分野によっても状況は異なることから、論文公開の時期等には幅を持たせた対応が必要。
○ 科学技術情報のデジタル化は欧米諸国と比べて圧倒的に遅れている。環境基盤整備をより強化していくべき。
○ 科学の方法論が転換期にあり、今後、最も重要視されるものがe-サイエンス。これを充実していくために研究情報基盤を整備する、というシナリオの下で取り組みを進めていくべき。
○ 第3期基本計画期間中に大きな進展を見せた機関リポジトリについて、公的資金で行った研究成果は誰もが見ることができるよう、義務化するようなことも検討すべき。
○ 我が国の科学技術に関する情報発信が海外に依存している状況は、真理を希求する学問の本質に関わる問題であり、我が国発の情報発信基盤が必要。
○ イノベーションの創出のために必要となる、関連する分野や人の基礎的な情報を得づらい現状がある。学術界がそのようなデータベースを作るべき。
(3)重要な政策課題への対応
1.重要政策課題に対応した研究開発の戦略的推進 ○ 諸外国では科学技術投資の理由を国民の繁栄、生活の質の維持向上、持続可能社会の実現等の中で位置づけている。国としての大きな目標からブレイクダウンしていくことが重要。
○ 何年もかかるプログラムについて、誰が戦略マネジャーをやれるのか。間ではミッションを与え、それを評価に結びつける工夫をしながらやっている。こうした民間の取り組みを戦略マネジャーにどう当てはめるかが見えづらい。だが、これは一つのチャレンジ。
○ イノベーションで谷を越えていくプロセスは、霧の中で橋を架けていくようなもの。頻繁に方向を変える必要に迫られる研究においては、誰がマネジメントするのかが一番重要。この観点から、MBAとPhDの両方を持っているようなマルチタスクな人材が重要であるが、日本ではそういった人材が少ない。こうした能力を持った人材を意識的に養成することなどについて考えることが必要。
○ 第3期までは分野縦割りでの重点化で、重点分野や国家基幹技術は国民に分かりづらかった。社会の問題解決に向けて、重要な課題を打ち出し、他の分野と融合してプロジェクトとしてやっていくというのは良い。
○ 課題解決のために取り組んでいくというのは良い。それぞれの分野の研究者を如何に蛸壺から出し、分野の異なる人と交わらせるかということが課題。これはプラットフォーム等の概念だけで説いても難しいので、インセンティブを与えていくことが重要。
○ 厳しい財政状況の中で、国として取り組むべき分野を明確にすることが必要。基礎科学については国が責任を持って進めることが重要であり、民間に任せられる部分は民間に任せるべき。
○ 基礎研究というと大学の個人研究だけでなく、システムとして基礎研究をどのように振興していくか、また国家基幹技術のようなインフラをどのように取り扱っていくかについても整理が必要。
○ デザインやサービスといった無形資産に対する投資が新たな価値創造の上で重要。
○ イノベーションの創出は、基礎研究の振興だけでは実現しないことを明確にすべき。イノベーションの最大の目的は雇用の創出。
○ まずはコンセプトがあり、これを実現するために必要な技術(必ずしも新しい技術である必要はない)を組み合わせることによってイノベーションが創出される。必ずしも斬新なものだけでイノベーションが起きるということではないことに注意すべき。
○ 「科学技術イノベーション」とする意義は、単なる科学や技術の振興だけではなく、イノベーションを阻害する様々な法規制等や社会的な部分にまで踏み込む取り組みであると理解。第4期では、様々なテーマに横串を通すという説明だけでは済まない。第3期からの変化を国民が分かるような形で見せることが必要。
○ 日本の科学技術振興を考える際、文部科学省だけではなく、イノベーションに近い省庁、例えば、経済産業、農林水産、厚生労働省等がしっかりと科学技術を考えるべき。省庁間のすりあわせを行うことが極めて重要であるが、日本にはこれが決定的に欠けている。イノベーションを担当する省庁を含め、もっと基礎科学や基幹技術を尊重する姿勢や我が国としての総合的な検討が必要。
2.科学技術イノベーションの国際活動の推進 ○ なぜ国際戦略が必要なのかを明確にすることが重要。現在の日本は鎖国のような状況にあり、世界が大きく変化している実情を国民全体に知らせていくためのメッセージが必要。
○ 我が国は諸外国と比べて、国としての国際戦略が明確ではなく、産業競争力の強化に向けて、科学技術によって先端分野を切り拓かないと生き残れない、と明確に位置づけることが必要。
○ 「戦略」というのであれば、どこに、どのくらいの資金が必要で、その結果、どのような成果が出るのか、という点を明確にすることが必要。
○ 国際協力・国際協調のための国際戦略をどのように進めるのか、我が国が強みを有する部分がどこか、どのような国や地域と付き合っていくのか、という具体的な議論を進めることが必要。
○ 大学院生は企業のニーズを極めて敏感であり、日本がより一層国際化を進めるに当たっては、企業側から強力なメッセージを出していくことが必要。
○ 「世界中から優秀な人材を採り、科学技術創造立国で立つ」という姿勢を、国の意志として明確にすべき。
○ イノベーションの観点では、人材の多様性が決定的に重要。新たな価値は、互いの意識をぶつけあうことで生まれてくるため、どのように世界から知的人材を日本に取り込むか、特にアジアの人材を取り込んでいくかが重要。
○ 日本の科学技術は評価軸が曖昧であり、誰もが理解でき、納得できるグローバルな評価軸を明確にすることが国際化のために必要。
○ 人口減少期の研究者の在り方を考えた場合、海外からの研究者の受け入れについても、積極的に考えていくことが必要。
○ 国際化には様々なレベルがある。若い研究者は自らの意欲を試す意味で移動するのは容易だが、ある程度エスタブリッシュされた研究者では給料問題がネックとなる。
○ 現在の日本社会は、多様な人材を受け入れて活用していくための社会の仕組みが整備されていないことが問題。
○ 海外に留学しない理由のみならず、海外に留学した経験のある人は、何故リスクを取ってでも留学したのか等の理由を調査すべき。
○ 日本人と外国人の研究者の価値観の違い、あるいは国籍を乗り越えるためには、外国人と研究開発を積極的に行う必然性を見出せる仕組みを構築することが必要。
○ 日本が国際化を進めたとしても、現実には日本に来た海外の研究者は多少の日本語を話すことが求められる。日本も中国の孔子学院に相当するような海外の日本語教育の場を設け、海外で日本の魅力・文化・情報を発信していくべき。
○ 国際的なプレゼンスの向上に資するよう、PhD人材をどのように配置していくべきか考えるべき。
○ 留学生に関しては、優秀な研究者を日本に根付かせるということが重要。英語の授業を増やすばかりではなく、留学生に対して日本語教育を実施し、就職先の面倒もみるという取り組みを進め、日本を好きになってもらうことが重要。
○ 海外の研究者の旅費等のサポートも必要。本当に優れた研究室であれば世界の情報が流通しており安心だが、そうでない研究室の場合は常に不安で世界中を飛び回りたいと思うようになる。
○ 大学のグローバルな人材獲得競争という世界の潮流から日本は孤立しており、世界の中で我が国の人材養成の位置づけを考えていくべき。
○ 中国人学生は(年間)4300人、韓国人学生では1300人が米国でPhDを取る一方で、日本人は220人に留まる。中国はこの人脈が大変な力を発揮する。このような現実の中で、今後、日本はどのように生きていくのか、という視点を持った上で博士の育成を考えていくべき。
○ テニュアトラック制を国際化の端緒として進めているが、テニュアトラックであれば日本に根付くという人が応募してきており、また適当なサポート体制があれば、若手研究者は自ら生活様式等を学び、スムーズに日本に馴染んでいる。ただし、大学側が長期に渡りこのような海外の研究者を採用するつもりがあるのか疑問であり、この点、未だ大学は保守的。
○ 国際的なネットワークづくりのための具体的な仕組みや予算措置を行うべき。海外からの留学生に対する経済的な支援も、日本人に対する支援と同様に進めるべき。
○ 日本の大学院生の英語力が下がっており、きちんとした語学力をつけさせることが必要。
○ 日本人にとって英語というのは本質的な問題。イノベーションやネットワーク作りをする際はどうしてもネックになる。ここを解決しなければ先に進まない。
○ 海外の研究者が日本に定着するか否かのボトルネックとして、英語で議論する上での物足りなさもある。
○ 科学技術アタッシェの役割は非常に重要。日本では、職務のローテーションが短く、諸外国の方々とのネットワークが作れていないことが問題。人の絆は長い人間関係から作られるものであり、スペシャリストとして長く職務を続けていくことができる仕組みをつくり、信頼関係を構築していくことが不可欠。
○ 国際標準は知財戦略の一環としてではなく、ODA、共同研究、ブレインサーキュレーション等のあらゆる施策や考えを総動員して取り組むべき問題。また、先進国のみではなく途上国とも協力した取り組みも必要。
○ 情報発信力については、研究者レベルではある程度の取り組みが行われているが、政治家や、官僚、さらにはマスメディアの発信力が弱いことが問題。
3.政策課題への対応等に向けた研究開発システムの改革 ○ 国際競争力強化の観点からいえば今後は自社のみによる研究開発といった1つの枠の中だけでやっていくのは厳しい。今後は新しい産業を創出していくためのシステムを導入すべきである(価値創造型アプローチ)。我が国におけるこの担い手として大学に期待。
○ 大学発ベンチャーのほとんどが「物質1個だけで会社を作った」というスタイルで、これでは事業は上手くいかない。事業に向けてロールアップしていく機能を持たせることが重要。
○ 日本の大学発ベンチャーはあまりにも早い段階でVC(ベンチャーキャピタル)を使いすぎ。米国のベンチャーの約9割は最終的には大企業のM&Aという形に行き着く。最終的な出口の姿について、日本のベンチャーは、早い段階から計画を持つことが必要。
○ 知財は、誰がどう持つかということで価値が大きく異なってくる。個別に大学が知財を持つのではなく、大学横断的に戦略的に知財を集積してマネジメントする仕組みを構築すべき。
○ 産学官のプラットフォームの推進とともに、PhDとMBAを併せ持つような触媒型の人材の育成・確保も課題。
○ イノベーション創出のため経財産業省、農林水産省、厚生労働省といった他省庁のファンディングを充実・多様化し、これらの資金を大学等に流す仕組みを作るべき。
○ グローバル化が進展している中で、世界のネットワーク化に対応した研究資金制度の構築が必要。制度の実施に当たっては、知財管理上保護しなくてはならない点と、オープン化・グローバル化しなくてはならない点の両方を念頭に入れて進めるべき。
○ 大学発の知財に関し、十分ではない状態で特許出願され、それが格好の先端研究の知見として外国企業が利用しているという現状がある。専門家がサポートし、より有効な出願が出来るようにすべき。それが十分なされないまま、海外との共同研究を積極的に行うべきというのは無理があり、優れた特許の確保を前提に諸外国との共同研究を進めていくべき。
○ グローバルな特許出願が少ない最大の原因は予算の問題。国が予算の支援を行うべき。
○ 研究費の流れに関する内外のインバランスについて、不均衡があるとすれば、分野毎の状況も踏まえつつ双方向の関係を築くべき。
○ 地域レベルでどの程度研究開発投資がなされているか、整理して把握すべき。
○ 地域の産と学をつなぐコーディネーターの役割は重要であり、従来の仕組みのブラッシュアップを進めるべき。
○ 加速器のような大型施設も重要だが、小規模ではあるが地域貢献型の取り組みの重要性にも目を向けるべき。
○ 研究は個人の力によるところが大きいが、成果を社会に還元していく社会貢献の営みは、研究者のみでは難しく、機関全体のマネジメントの力が極めて重要。機関におけるフロント業務の能力を国際的に通用するものにしていくべき。
○ 産学連携の多様化として、大学内に、企業と大学がイーブンな形で連携するための拠点を作ることも有用。
○ オープンイノベーションは状況や案件により多様であることを前提として、個別のプロジェクトに対して適切な支援を行っていくべき。
○ オープンイノベーションに関しては、ネットワーク化した社会の中で、一つの研究テーマに膨大な研究者が集まり、研究開発を行うという取り組みが進む。このような状況を予測した上で、世界の流れに乗り遅れないよう、必要となるシステムを構築していくべき。
○ オープンイノベーションが進展する中で、大学側は成果や情報を外に出したいと考える一方、知的財産を確立しなければ出せないというジレンマに陥っており、この課題をどのように扱っていくのかを議論すべき。
○ オープンイノベーションについて、従来は組織どうしのやりとりであったが、今後は個人単位のやりとりとなるだろう。良い研究や成果には個人が集まりコミュニティができる。今の企業体系とは異なる雇用やプロジェクト等の仕組みが求められるようになり、企業や大学側にはこのような仕組みへの対応が必要。
4.世界的研究開発機関の形成 ○ やってみないとわからない研究、ハイリスクハイリターンな研究及び時間がかかる研究については、現行の評価の枠組みでは窮屈感がある。評価の仕方も含めた研究開発法人の在り方について検討していくべき。
○ 研究開発法人が税金を投入して何をやるべきか(プロジェクト等)、研究開発法人にしかできないことに絞り込んで投資することを考えるべき。
○ 新しいものを創って産業競争力を上げるという時代は終わりつつある。新しい仕組み、社会システムを提案して世界に広げる形で貢献すべき。この中で、公的研究機関が新たな役割を担う責任を持っている。
○ 研究費を増やす一方、人件費を減らすということは本末転倒。研究開発が活性化すれば人件費も上がるものであることを理解すべき。
○ 施設の維持について、民間企業であれば減価償却資金が積まれているが、研究開発法人ではこうした意識が希薄。補正予算が無いと施設を維持できないような状況は問題。
○ 人事・雇用の方式について国家公務員の仕組みを引きずっている。法人独自の人事評価の在り方を考えていくべき。
○ 従来の大学の枠組みの中ではWPIのような拠点を作ることが難しかったが、研究開発法人も協力し、大学内に特区のようなものを作り、改革のテコとなっていくという趣旨で取り組みが行われている。拠点では公用語を英語とするなどの取り組みを実施している一方、研究者の宿舎、研究者の妻の勤務先、子どもの教育等の課題も顕在化している状況。
○ 世界的な教育研究大学を5~10程度作ろうとすると、優秀な若手人材の分布はピラミッドではなく八ヶ岳的な構造になっていることが必要。このためには優秀な学生の流動性を高めることが必要。そうしないと海外から優秀な学生はやってこない。
○ 研究を支える先端的な実験機器等の知的創造基盤の充実こそが全ての研究やイノベーションの基礎を作ることを明確にすべき。また、こうした基盤の維持管理やメンテナンスを行う資金やインセンティブを与えるべき。
(4)社会と科学技術との連携
1.社会・国民と科学技術イノベーションとの連携強化 ○ 科学技術政策を社会公共政策の一つとして位置づけて考えることは極めて重要。
○ 今後は科学技術と社会が対立関係ではなく協調関係としていくことが重要であり、科学技術を社会の中でどのように位置づけていくかをより全面に出すべき。
○ 人(人の集団)を対象とする科学もあり、その成果は社会が享受することから、科学と社会が双方向の関係にある。そのような研究を支える人材やコミュニケーターの育成、人材のキャリアパスが必要。
○ トップダウンで政策を立案するのではなく、課題設定の段階から社会とのつながりを持つようにし、ここで科学技術コミュニケーターが一定の役割を担うようにすべき。
○ 「専門知を活用できる社会」を目指すべき。科学技術のみで課題を解決できるという議論になりがちだが、課題解決のためには様々な専門家、専門知をもった方々の活用による社会全体のイノベーションが必要であり、一般国民の協力も不可欠。このような視点を持った上で政策立案を行うべき。
○ 国民全体の議論を喚起して科学技術イノベーション政策を進めるべきであり、その際には事実を踏まえた上での議論とすべき。
○ 研究開発の成果事例集が科学技術政策研究所により作成されているが、このような資料を活用して基礎研究の成果が基となり、産業競争力の強化につながっているということを、社会に対して広くアピールしていくべき。
○ 現在の科学技術コミュニケーターの役割は通訳に過ぎない。社会と科学技術をつなぐ者としてキャリアパスを構築するとともに、国や政策に対して意見を言うようにすべき。
○ 大学の研究科等でコミュニケーター用の資金をプールできるような仕組みを構築すべき。
○ 知財や産学をつなぐ人材(広い意味での研究支援人材)を育成するセクターを日本の大学は持っておらず、意識的に養成・確保すべき。
○ 国民と双方向のコミュニケーションを行おうとした場合、出てきた意見の取り扱い等が極めて難しくなることを念頭において取り組みを進めるべき。
2.科学技術イノベーション政策の実効性の確保 ○ リスクアセスメントのような評価・議論を行い、合理的な選択をした上で、社会的な課題に対して国民的合意を得た取り組みを進めていくべき。
○ 科学技術がいかに社会ニーズを捉えるのかという点についても議論が必要。社会システム全体をイノベートする中で、科学技術政策がどのような点で役割を果たせるのか、またどこが役割を担うのかという点も含めて議論すべき。
○ 科学技術イノベーション政策を社会・公共政策の一環として捉えるのであれば、世界トップの先端研究だけでなく、既存の知識を上手につなぐことや、ノーベル賞受賞者よりもっと身近な研究者にあこがれを抱くような取り組みが必要。
3.総合科学技術会議の役割の強化 ○ 各企業等が事業を進めるにあたり、官庁をまたいだ対応をしなくてはならないことや、政策として各省庁の方向性が逆を向くことがあるため、各省庁間の調整・対応に積極的に取り組んでいくべき。
○ 総合科学技術会議においては、各省庁にまたがる具体的な問題点の指摘や有効な政策への結びつけという役割について、責任を持って取り組むべき。
(5)政府研究開発投資の在り方 ○ 科学技術創造立国を目指す我が国にとって、民間の研究開発投資の割合が8割程度(国は2割程度)という現状は、政府の負担割合が低いという印象を受ける。国だけの取り組みに論点を置くのではなく、科学技術政策の全体の在り方を俯瞰した上で議論を進めていくべき。
○ 科学技術関係予算の負担について、民間が基礎研究予算を増やすというのは今の時勢では考えづらい。限られた予算の中で、我が国として、未来に向けて一層の投資をしていくべきか、若しくは高齢者の年金等の経費を削減すべきか、という我が国の大きな方向性を考えた場合、私は未来に向けて投資をしていくべきと確信。社会全体でノンプロフィットな予算を未来に向かって使うことについて、逃げずに議論することが必要。
○ 厳しい財政状況の中で、科学技術への投資も我慢しようというコンセンサスが出てくることは危険。このような状況にあるからこそ、投資が必要というメッセージを発信していくべき。
○ 次期基本計画では、何にどの程度の金額が必要となるのかという投資目標を明確に入れ込むべき。
○ 国家財政が厳しいとはいえ、必要な投資額を明確に示すべきであり、例えば現在の目標額の倍増が必要ならば、それをきちんと提示すべき。
その他 ○ 基礎研究と課題解決型研究という二者択一型の議論ではなく、研究開発には多様性があることを踏まえつつ、基礎から開発までの研究段階それぞれに施策を講じていくという理念を持つことが、長期的な国の在り方につながる。
○ サイエンスとイノベーション、それぞれの部分に分けて建設的に議論をすることが必要。また、目標設定については、抽象的であったり、極端に数値目標に振れたりすることがあるので、問題解決型、課題設定型、アスピレーション設定型等の目標設定の在り方にメリハリを設けることが必要。
○ 基礎研究と応用研究については、比率の問題があり、国として、基礎研究にどの程度の予算を配分し、またイノベーションに配分するべきか考えるべき。強い技術だけではなく、弱い部分もある程度進めなければイノベーションは起こらない。
○ 海外と日本の研究費の特徴を比較すると、海外では国の資金が民間に流れ、また民間の資金が大学に流れる。これにより人も動くことになるため、このような仕掛けも必要。

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