1.研究開発システム改革に関する現状及び課題

○ 我が国の産学官連携や知的財産戦略、さらに地域科学技術の推進等に関する現状と課題としては、以下のようなものが挙げられるのではないか。

(1)産学官の持続的・発展的な連携システムの強化

  • 我が国においては、諸外国と比べて、産学官それぞれのニーズを踏まえた上での連携の推進や、人的・資金面での事業化支援、海外企業等との連携等の取り組みが不十分であること等を一因として、大学等において創出された独創的・先進的な研究成果が、必ずしも企業における事業化等に十分結びついているとは言えない状況にある。
1)産学官連携の深化に向けた「場」の形成(参考資料:P2、P3、P5、P8、P9、P10、P11)
  • 我が国の企業においては、オープンイノベーション環境下における技術の獲得方法として、大学等の外部リソースを積極的に活用していく傾向にある。
  • 国公私立大学等における共同研究、受託研究実績は年々増加傾向にあるが、一件当たりの金額は横ばい傾向にとどまっている。
  • 共同研究、受託研究の取り組みの中で、産学のニーズのマッチングが最も重視される傾向にある。
  • 欧州においては、知のプラットフォーム構築の一環として、「欧州テクノロジープラットフォーム(ETP)」や「ジョイント・テクノロジー・イニシアティブ」等、民間主導による産学官の議論の場の形成が進んでいる。
  • ベルギーのIMEC(interuniversity micro electronics center)においては、世界中の企業が参画し、オープンな形での研究開発とクローズドな形での研究開発の巧みな使い分けが行われている。
2)研究成果の事業化支援の強化(参考資料:P13、P16、P17、P18)
  • 大学と企業の間のマッチングを図り、創出された研究成果の事業化等を促進するための事業が展開されているが、必ずしも十分ではない。
  • 大学発ベンチャーの各年の設立実績は、近年急激に減少傾向にあり、人材の確保・育成、販路・顧客の確保、資金調達等が課題として指摘されている。
3)国際化をはじめ多様な産学官連携活動を支える体制の整備(参考資料:P20、P24、P25、P29)
  • 大学等の外国企業との共同研究・受託研究の件数・受入金額は増加傾向にある一方、外国由来の研究開発費の占める割合は、特に大学において極めて低い水準にとどまる。
  • 大学等の産学官連携活動の活性化に伴い、技術移転機関(TLO)の機能や位置づけを見直す動きが出てきており、大学内部にTLOを設置する、大学に業務移管する、大学がTLOに出資する等の多様な取り組みが行われている。
  • 国立大学法人において、共同研究を教員個人評価の評価項目としている大学は59%。受託研究については52%となっている。
  • 大学等において、起業関連の講座が設置されている割合は36.6%となっている。また、起業関連科目の内容について、企業経営に関する知識について取り組んでいる大学は45%以上である一方で、資金調達の実際的知識や税務・労務・法務の実務に関する実際的知識等について取り組んでいる大学は25%以下にとどまる。

(2)国際競争力強化のための知的財産戦略の推進(参考資料:P33、P34、P35、P38)

  • 世界的にオープンイノベーションが進展し、知を巡る国際競争が激化する中で、我が国においては、知的財産の適切な保護・権利化及び積極的な活用、それによる実施料収入の獲得等の取り組みが必ずしも十分とは言えない状況にある。
  • 国公私立大学等の特許出願件数は、近年横ばい傾向にある中で、特許実施件数は大幅に増加傾向にある。また、特許実施料収入も増加傾向にあるものの、未だ低い水準にとどまる。
  • 大学等の特許権所有件数は大幅に増える一方で、未利用件数及び全体に占める未利用率も増加する傾向にある。
  • 特許や論文など科学技術情報をつなぎ、容易に利用できる環境を構築することで、「産業界と大学」、「異分野」、「基礎から応用」などの知を共有し、イノベーション創出に不可欠な新たな発想を支援する取り組みが進められている。

(3)地域イノベーション・システムの強化(参考資料:P43、P44)

  • これまでの地域科学技術の振興により、クラスター形成等の取り組みが進展する一方、近年、地方の財政状況等がますます厳しさを増しており、地域主体による、産学官協働での科学技術活動を定着・発展させていくことが困難な状況にある。
  • 地方自治体における決算規模は縮小しており、各都道府県における科学技術に関連する予算は減少傾向にある。特に、公設試験研究機関の科学技術に関連する予算は急減している。
  • 同一県内における大学等と中小企業との共同研究の件数及び受入額の割合は減少傾向にある。

(4)研究開発成果の社会実装の促進(参考資料:P48、P49、P50、P51、P53、P54)

  • 研究開発で得られた成果をイノベーションを通じて社会に還元していく際の阻害要因として、様々な規制や制度等の存在が指摘される一方、科学技術活動と市場や社会との隘路の解消に向けた取り組みは未だ十分とは言えない状況にある。
  • イノベーションの創出を阻む隘路となっている外部要因として、規制や公共調達の問題、周辺環境の国際化等の必要性が指摘されている。
  • 総合科学技術会議において「科学技術の振興及び成果の社会への還元に向けた制度改革について」を取りまとめ、関連施策が実施されるなど、成果の社会実装に向けた取り組みが一定の成果を挙げつつあるが、研究開発と産業との関わりにおける隘路解消に向けた取り組みの一層の推進が必要である。
  • 独立行政法人における公共調達先の企業の構成については、設立年数21年以上が79%であり、10年以下で、かつ資本金比率50%以上の親会社がない企業の割合は2.5%にとどまる。
  • 中小企業技術革新(SBIR)制度において、特定補助金等の交付に関する支出実績額は近年横ばい傾向にある。
  • 海外においては、先端医療分野に関して有効性・安全性評価の取り組みや、社会的受容性を確認するための様々な取り組みが行われている。

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