資料1‐1 科学・技術・イノベーション政策に対する期待

2009年10月1日
日本経団連産業技術委員会
科学技術政策部会長
東実

基本認識

1.わが国を取り巻く環境変化

‐環境・エネルギー、人口減少、グローバル競争の激化、新興国の台頭、オープン化・ネットワーク化、知識経済化、技術革新の加速、国際的なビジネス環境(税制等)

2.企業から見た科学・技術・イノベーションの位置付け

‐科学:競争力の源泉。分野により強み
‐技術:これまでの日本の強み。急速なコモディティ化
‐イノベーション:今後の付加価値の中心。非連続型での弱み

3.日本型イノベーションの再考

‐日本のこれまでの強み(垂直統合、自前主義)が弱みに(硬直性、高コスト)
→オープン・イノベーションの推進
‐閉じた世界の競争(ガラパゴス化)

目標実現に向けた複線型アプローチ

国民生活の向上につながる国家的課題の解決や、雇用を生む新たな成長の源泉の創造に向けた、科学・技術を基点としたイノベーション創出力の抜本的な強化

(1) 課題解決型アプローチ(約連続型)
→従来の強みの強化(technology)
‐将来を見据えた国家的課題や経済社会システムの提示と共有。
具体的な成果目標の設定
‐選択と集中。政策課題別戦略(バックキャスト型)

(2)価値創造型アプローチ( 約非連続型、パラダイム・シフト)
→新たな成長の源泉の創出(science)
‐パラダイム・シフトを捉えたグランド・デザインの設定
‐多様性と異分野融合。マーケティング的発想

課題解決型アプローチ

1.課題解決、目標達成の観点から必要となる基礎研究、技術、規制改革等を産学官で共有する場の形成と時間軸を明示した戦略の策定

2.いわゆる目的基礎研究への投資の拡充

3.非競争領域におけるトップランナー間のグローバルな協働を可能にするプロジェクトの推進、拠点の形成

4.複数の技術のシステム化。市場環境整備 (規制改革、インフラ整備、政府調達等 )を組み合わせた実証の推進

価値創造型アプローチ

1.パラダイムシフトへの感度を高めた、多様な基礎研究の推進
‐一定規模の安定的な資源配分。基盤的研究への配慮

2.内外の多様な人材の交流、連携を促進する環境整備

3.ハイリスク研究、ブレークスルー創出に向けたインセンティブの付与
‐従来とは異なる評価軸の設定。競争原理の活用(コンペ等)

4.グランドデザイン(アーキテクチャ)の策定とその検証に向けた集中投資を可能とする仕組み
‐研究成果等の情報の共有・流通、ファンディングの橋渡し
‐マーケティング的発想からの目利き

イノベーション創出基盤の強化1.(グローバル化)

1.海外から優秀な研究者・資金が集まる研究開発拠点の形成、世界的な頭脳循環への対応強化
‐外国人受け入れ環境の整備
‐ナショナル・プロジェクトの国際開放のあり方の見直し
‐雇用形態・契約、知財制度の見直し

2.国際標準化も見据えた、国際的な共同研究・実証の推進(例えば、ODA等との連携)

3.CO2削減等における技術開発ロードマップの国際的な共有と、国際連携による研究開発

4.国内での需要創造(環境、農業、医療・介護等)と、アジア等での将来需要に展開させるための研究開発

イノベーション創出基盤の強化2.(人材育成)

1.多様なキャリアパスを見据えた高等教育の見直し
‐基盤的教育、大学院カリキュラム(コースワーク、カリキュラム多様化、文理融合等)
‐技術者・技能者、知財・標準化人材の育成
‐学生の処遇(TA、RA、奨学金等)

2.企業としての取組みの強化、大学との対話
‐長期インターンシップ、共同研究等

3.理科教育の充実、国民理解の向上
‐魅力向上、企業による教育への参画等

イノベーション創出基盤の強化3.(研究開発システム)

1.司令塔機能
‐統括機能、資源配分、府省横断、調査・分析

2.科学技術予算、税制
‐総額目標の設定と、中期的な資源配分方針の策定
‐法人税、研究開発税制、先端研究設備の減価償却

3.大学、研究開発法人
‐組織としてのミッションの見直し(強み・特色の明確化)と必要に応じた再編
‐運営費交付金の配分のあり方の見直し(競争的資金との関係)

4.企業
‐パラダイム・シフト等を捉えた不断の変革

以上

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科学技術・学術政策局計画官付

(科学技術・学術政策局計画官付)