平成8年度から始まった科学技術基本計画は、第1期及び第2期の10年間を経て、第3期も既に3年が経過した。今回のフォローアップにより、第3期基本計画について、計画に沿って進捗している点、必ずしも進捗していない点や、進捗と同時に新たに生じた課題等が明らかになった。
例えば、人財の育成・確保・活躍の促進に関しては、博士課程修了者の量的拡大、任期制の導入等人財の流動性の向上、競争の促進が実現されてきた。しかし、テニュア・トラック制の導入や博士課程修了者のキャリアパス確立に向けての取組は遅れており、若手研究者が将来展望を描きにくくなり、人生を賭するに値する天職としての研究者という仕事の魅力を失わせるといった状況を招いている。また、女性研究者に関しては、第3期基本計画で初めて採用の数値目標が設定されたことを受け、様々な女性研究者支援の取組が充実・強化され実効を挙げつつあるが、日本の女性研究者の割合は未だ低いままである。競争的環境に関しては、競争的資金の増加等により整備が進みつつあるが、先端的研究ばかりが重視される傾向があること、短期間の評価のため、長期的な研究を実施しにくいといった課題も生じている。2001年の国の研究機関の独立行政法人化、2004年の国立大学法人化等により、イノベーションに関わる責任主体の自由度が高められたが、十分に個性を発揮できていないとの指摘もある。産学連携、技術移転に関して、その実績は増えているが、「企業が大学に求めることについて明確にしきれていない」、「大学が企業のニーズを捉えた研究提案を十分できていない」「事務体制が未整備な大学がある」といった指摘もある。科学技術コミュニケーションに関しては、第3期基本計画の下で格段に進展を見せているが、国民の科学技術への主体的な参加については、まだ緒についたばかりである。
今後、第3期基本計画を引き続き推進していくに当たり、関係府省及び関係機関は、このような今回のフォローアップの内容を踏まえ、適切な改善を加えつつ、着実に実行していくことが必要である。特に、所見においては、これまでの取組を評価しつつも不十分な点について指摘し、今後の取組の方向性を示したところであり、これらの部分に関しては、第4期基本計画の策定を待たず、第3期基本計画期間の残り2年間に取組を加速すべきである。
第4期基本計画に向けた今後の検討に際しても、今回のフォローアップの結果を十分に活かすべきである。その際に、大学、研究開発法人、民間の各セクターにおいて、人財、予算等の状況に関する俯瞰をし、これら科学技術政策を担う各主体の役割や責任を明確にして、研究資金の配分や人財育成といった政策上の重点を明らかにする必要がある。特に、限られた国費を配分する各府省及び国費により研究を行う国立大学法人、研究開発法人の役割をより明確にした上で、産学官連携を促進することが重要である。また、得られた成果について、PDCAサイクルを回す評価体制を構築し、確実に実行していくことが重要である。
加えて、第3期基本計画では研究開発目標やシステム改革の施策が非常に細分化され、上位に位置する政策目標と各課題や研究開発目標との関係が分かりにくいとの指摘への反省に立ち、理念と結びつく目標設定を徹底し、優先事項を明確にして、階層化及びシナリオ化することが必要である。
その際、日本の将来像を見据えた上で大きな課題を設定し、それを解決・実現するために必要となる複数の個別施策を位置づけるとの流れで実効性のある科学技術政策を策定していくことや、研究開発領域の性格、産業構造等の特性に応じて、政策を複線化させることなどが必要となる。
総合科学技術会議においては、これらに十分留意しつつ、時代の変革に対応した我が国独自の科学技術・イノベーション政策を構築すべく、残された2年間における第3期基本計画の実行加速及び第4期基本計画の策定において、大胆な挑戦を続けるべきである。
科学技術・学術政策局計画官付