2009年9月に発足した鳩山政権は、「科学技術の力で世界をリードする」との基本姿勢とともに、人々の暮らしの安心や新たな成長産業の創出、さらには世界の架け橋として地球規模の問題解決に向けて積極的な役割を果たしていくとの方針を掲げた。特に、地球温暖化問題に関しては、世界各国の中でも最も厳しい水準となる温室効果ガスの削減目標を掲げ、技術革新を標榜しつつ、あらゆる政策を総動員して取り組むことを約束するなど、我が国のみならず世界の中で積極的にリーダーシップを発揮するべく、その決意を示した。
また、同年1月に就任した米国のオバマ大統領も、その就任演説の際に「科学を本来あるべき正当な地位に戻す」と高らかに宣言し、政権中枢に多くの著名な科学者を配置して、新しい科学技術政策を力強く始動させた。そして同年4月には、全米科学アカデミーの総会に出席し、「科学が、我々の繁栄、安全、健康、環境、生活にとって、かつてこれ程必要であったことはない」と述べ、米国の危機と克服の歴史を振り返りながら、現在における様々な問題や困難に対して、科学技術による果敢な挑戦を促し、世界を先導するために科学界と国民がともに正しい方向に歩み出そうと訴えた。
資源の乏しい我が国にとって、科学技術こそ国の存立、繁栄、そして地球規模問題の解決に貢献していくための源泉である。そして同時に、その担い手たる人材、とりわけリーダーたるべき創造的人材の存在が、我が国の存亡にとって決定的に重要なことは論を待たない。今、我が国に必要なことは、中長期的な視点に立った国家戦略としての科学技術への取り組み強化であり、また、平和で豊かな社会の建設に希望と使命感を持って、未来に向かって果敢に挑戦する志高き次代の人材の育成である。
グローバル時代の21世紀、多様な価値観や利益が国境を越えて交錯する国際社会において、人類の生存と繁栄に向けた地球規模問題の解決への挑戦は、世界を共生に導く価値観の形成につながるものであり、これは今世紀の科学技術の使命であるとともに、科学技術先進国たる我が国が一翼を担うべき使命でもある。
我が国は、限りある地球の枠組みの中で、豊かな人類社会の存続に向けて貢献することを目指し、そのための具体的な行動として、科学技術とイノベーションに向けた新たな取組を開始するとともに、その行動に参画していく活力溢れる人材が、夢と希望に充ち溢れて活躍できる環境を創らねばならない。
今こそ、科学技術イノベーションを我が国のあらゆる政策の中の要として、社会とともに、国民とともに、そして若者とともに、これからの日本を、そして持続可能な世界と人類の繁栄を築くために、力強い前進を開始すべきである。
科学技術・学術政策局計画官付