はじめに

 科学は永遠の文化的価値を生み出す。そして科学の「知」に基づく技術は、文明社会の礎となる。

 21世紀は、限られた地球の枠組みの中で、持続的な文明社会に資するイノベーションこそが国力の源泉となる。天然資源に乏しい我が国においては、このような「知」を生み出すとともに、優れた人材を育て、さらにイノベーションにつながる科学技術の振興こそが将来の国力につながるものである。科学技術無くして我が国の立国は無く、国を挙げて、科学技術の振興を強力に推し進めるとともに、それらを基盤とする国際競争力を確実に培っていかなければならない。
 また、今世紀においては、いかなる国も一国では生き続けることなどできない。とりわけ、我が国では資源・エネルギー等を他国に依存しており、科学技術を活用して、世界に貢献しつつ、自律的に生きていかなければならない。また、地球温暖化や食糧・水資源の問題等は、一国のみの対応ではなく、世界各国が協調・協力して取り組まなければならない深刻かつ重大な人類的課題であり、我が国としても、それに向けて科学技術を基にした国際協調力を十分に養っていかなければならない。
 このような我が国の生命線とも言うべき科学技術は、短期的な視点や経済的利益のみの視点から評価あるいは検討されるべきものではなく、まさに未来への先行投資として中長期的な視点に立ち、「社会総がかり」で取り組んでいくことが不可欠なものである。仮に、今後、科学技術の一層の推進が図られない事態となれば、将来の我が国の発展や世界の中での日本という国の存在感の発揮を目指す上で、取り返しのつかない深刻な禍根を残すであろうという認識を社会全体が共有していくことが必要である。

 科学技術・学術審議会基本計画特別委員会においては、幅広い分野にわたる委員各位が、このような科学技術の役割や重要性等を改めて強く認識した上で、社会・国民の視点はもとより専門的な見地から、我が国及び世界を取り巻く様々な情勢変化や、これまで科学技術基本法及びそれに基づく科学技術基本計画の下で進められてきた科学技術政策の成果・課題等について包括的に検証・検討しつつ、我が国が中長期的に取り組むべき科学技術の重要政策について、精力的に審議を進めてきた。
 本報告書は、平成21年6月から同年12月にかけて計10回にわたる会議の検討結果を取りまとめたものであり、我が国の科学技術政策全般にわたって、幅広い観点から今後のあるべき方向性を提示したものである。
 今後、政府においては、本報告書を十分に踏まえ、第3期科学技術基本計画に続く我が国の科学技術の総合戦略が策定されることを強く期待する。
 なお、今回の報告書は、今後の政府部内における科学技術の総合戦略の検討に資するよう中間的に取りまとめたものであり、本委員会としては、これらの検討状況等を踏まえ、今後とも必要に応じて検討を行うこととしたい。 

お問合せ先

科学技術・学術政策局計画官付

(科学技術・学術政策局計画官付)