基本計画特別委員会(第4期科学技術基本計画)(第10回) 議事録

1.日時

平成21年12月15日

2.場所

文部科学省第2講堂(旧文部省庁舎6階)

3.議題

  1. 基本計画特別委員会における中間報告(案)について
  2. その他

4.出席者

委員

東委員、有川委員、安西委員、伊地知委員、大垣委員、大隅委員、長我部委員、門永委員、河内委員、黒田委員、小杉委員、小林傳司委員、佐々木委員、白井委員、菅委員、立川委員、永井委員、西尾委員、二瓶委員、原山委員、フクシマ委員、本藏委員、益田委員、丸本委員、森委員

文部科学省

後藤政務官、坂田事務次官、清水文部科学審議官、森口文部科学審議官
(大臣官房)岡文教施設企画部技術参事官、
(高等教育局)河村私学部長、小松審議官、藤原大学振興課長
(科学技術・学術政策局)泉局長、渡辺次長、小松総括官、中岡政策課長、佐藤調査調整課長、川端基盤政策課長、柿田計画官、森田国際交流官、岡谷戦略官(推進調整担当)、増子戦略官(地域科学技術担当)
(研究振興局)倉持審議官、山脇振興企画課長、柳研究環境・産業連携課長、舟橋情報課長、勝野学術機関課長、山口学術研究助成課長、渡邉研究振興戦略官
(研究開発局)森本審議官、土橋開発企画課長、鈴木地震・防災課長
(科学技術政策研究所)桑原総務研究官
他、関係官

オブザーバー

相澤総合科学技術会議議員、本庶総合科学技術会議議員、白石総合科学技術会議議員、青木総合科学技術会議議員、金澤総合科学技術会議議員

5.議事録

【野依主査】
 これから科学技術・学術審議会第10回基本計画特別委員会を開催します。
 本委員会は、6月2日に第1回委員会を開催し、以来委員の皆様には精力的に審議を重ねてきていただきました。本日の委員会にて、中間的な取りまとめとさせていただきたいと考えております。
 本日は、後藤大臣政務官にご出席いただいております。委員会の開会に当たり、ぜひ一言お願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【後藤政務官】
 委員の皆様、大変お疲れ様でございます。今日は、第10回基本計画特別委員会ということで、短期間にもかかわらず、本当に熱心なご議論をいただき、今日、中間報告の取りまとめが行われるということで、心から各委員の皆様方に御礼を申し上げたいと思います。
 この概要にもありますように、今本当に世界が激動しております。ある意味では内閣も激動しているかもしれませんが、この間、皆様方には色々なご心配もいただきました。あと2週間ほどで来年度の予算の政府原案も取りまとめられることになっております。謙虚に色々な国民の声も聞かせていただいておりますが、やはり科学技術が、これからの日本の国、そして国民生活のより良い向上につながるということは、当然のことながら、私たちだけでなく多くの方が理解していただいていると思いますが、なかなかそれについて情報発信できずにいたということもあったかと思います。
 いずれにしましても、本日、中間報告を取りまとめていただくということで、これを踏まえた科学技術政策を内閣としても実行できるように、川端文部科学大臣ともども頑張って参りたいと思っております。
 今日の中間報告がよりよい形で取りまとめられ、そして、今後今まで以上に、野依主査をはじめとした委員の皆様方にもご指導と、よりよい科学技術行政が発展する素地をつくっていただきますようにお願いをし、また、取りまとめの御礼と、そして、これからのさらなるご尽力をお願いして冒頭のご挨拶にさせていただきたいと思います。
 今日は本当にお忙しい中、ありがとうございます。

【野依主査】
 ありがとうございました。
 それでは、議事に入る前に、事務局から配付資料の確認をお願いします。

【柿田計画官】
 議事次第の裏面に配付資料一覧をつけております。資料1-1が、A3の1枚紙で、中間報告案の概要、資料1-2が中間報告案の本文、資料1-3が参考資料集、資料1-4が中間報告素案に対する意見の取りまとめです。参考資料1は前回の委員会における主な意見の取りまとめです。参考資料2は今後の重要政策課題への対応に当たっての研究課題等の例です。参考資料3は科学技術・学術審議会の下の各分野別委員会における今後の科学技術のあり方についての検討の報告書一式です。最後に参考資料4は今後の科学技術政策に向けた有識者ヒアリングの結果をまとめた資料です。
 不足等ありましたら、事務局までお願いします。

【野依主査】
 ありがとうございました。
 前回のご議論を踏まえて、事務局において報告書案を修正していただきました。本日は、これを元に議論を行いたいと思います。
 それでは、事務局から説明してください。

【柿田計画官】
 前回の委員会において出されたご意見、またその後、事務局宛にお送りいただいたご意見等を踏まえて報告書案を修正しましたので、資料1-1、A3の1枚紙及び資料1-2の本体によりましてご説明します。
 まず資料1-1及びA3の1枚紙により、改めまして全体の概要をご説明します。
 まず、これからの科学技術政策に関する基本認識ですが、我が国及び世界を取り巻く諸情勢が大きく変化しております。それに対応できる政府の舵取りが一層重要となっております。特に近年、諸外国が科学技術に関する取り組みを重点的、積極的に推進している中で、我が国が引き離されるリスクが極めて大きくなっていると言えます。
 科学技術の振興により、これまでも人々の長寿あるいはGDPの向上等に大きく寄与してまいりました。今後もそうあり続けるためには、継続的な投資と人材の育成が極めて重要です。これらを踏まえ、我が国の科学技術政策においては、科学技術振興のみを目的とするものではなく、社会・公共のための政策の一つであるということを改めて明確にし、社会・国民との関わりを深めつつ、科学技術によるイノベーションを通じた持続可能で豊かな社会、国、さらには世界づくりを目指していくことが求められます。
 そして、科学技術政策を中長期的な視点で立案し推進していくために、政策の大目標として1から5のとおり、5つの目指すべき国の姿を設定しております。その目標の下で、今後の科学技術政策を進めるに当たっての3つの基本的方針を掲げることとしております。
 基本方針の一つ目は、「『科学技術政策』から『科学技術イノベーション政策』へと転換する」というものです。これは、科学技術政策と、科学技術に関連するイノベーションのための政策とを組み合わせた総合政策への転換を図るというものです。
 2つ目は、「科学技術イノベーション政策を『社会とともに創り、実現』する」というものです。社会・公共のための政策として、政策の立案等に当たって、社会・国民の幅広い参画を得るとともに、社会・国民の理解と信頼を得ていくための取り組みを推進していくというものです。
 3つ目は、「科学技術イノベーション政策において『人と組織』を一層重視する」というものです。人材の育成・確保と、イノベーションの創出において重要となる人と人とのつながりを支える組織としての機能、役割を重視するという視点です。
 その下で、具体的に推進すべき重要事項のポイントとしては、まず1点目に基礎科学力の強化です。我が国の将来にわたる持続的な成長、発展や、人類の存続に関わる諸問題の解決を図るためには基礎科学力の強化が不可欠です。新たな知的資産の獲得や重厚な知的蓄積等を目指す研究や制度改革、これらの研究を担う創造的な人材の育成等に向けた取り組みを重点的に推進するということです。
 2点目は、重要な政策課題への対応です。国が政策的に推進すべき科学技術は、社会・国民に対する成果の提供を第一義として、我が国や世界各国が解決すべき重要な課題に対して重点化を図って進めていくこととして、これらに対応するための研究開発の推進や、より効果的、効率的に研究開発を推進するためのシステム改革、さらには研究開発実施体制の強化等に向けた取り組みを重点的に推進するというものです。
 特にここで、重要な政策課題に対応した研究開発の推進に関しては、第2期及び第3期科学技術基本計画では分野での重点化の考え方がとられてまいりましたが、今後は目指すべき国の姿に対応した地球温暖化対策等の重要政策課題を、例えば十数件程度設定し、それぞれの重要政策課題への対応に向けて必要となる研究開発への重点化を実施するという考え方で推進していくということです。
 3点目に、社会と科学技術イノベーションとの関係深化に向けた取り組みです。社会・国民からの科学技術に対する期待が高まる中で、国として取り組むべき問題や課題に関する社会・国民の要請の把握や、社会・国民の理解と支持を得て政策の推進を図っていくことが不可欠であり、このための取り組みを重点的に推進するということです。
 最後に、これら政策の推進のための政府研究開発投資ですが、米国、EU各国等の先進国のみならず新興国も含めて、科学技術及びイノベーションが国の将来の成長、発展にとって極めて重要な要素であるとの認識の下、研究開発投資を大幅に拡充しております。一方、我が国では、科学技術への投資は横ばい、もしくは微増にとどまっており、特に平成22年度予算においては、科学技術関係経費が対前年比で減額となることが危惧されるなど、他国との差がさらに広がる危機的な状況にあります。科学技術こそ国を支える生命線との認識に立ち、対GDP比1%の政府研究開発投資を達成することを基本として投資総額を明示的に掲げて、科学技術イノベーション政策を強力に推進することが必要であるという内容です。
 続いて、資料1-2の報告書の本体に基づきまして、前回の委員会以降、主な修正を施した箇所についてご説明します。
 まず、表紙をめくっていただきまして、目次のページがあります。黄色く色をつけたところが、前回の委員会でお諮りしたものからの変更点です。基本認識のところは目次の見直し等による変更です。
 また、目次の右側、2ページ目のところでは、世界的な研究開発機関の形成と並んで先端研究基盤の整備、これを重要なものであるということで項目に掲げております。
 それから、大きな柱の4つ目の「社会と科学技術イノベーションとの関係深化」というタイトルの下で、ここの重要事項についての項目を再度組み直しております。
 最後に「おわりに」という文章をつけ加えさせていただいております。
 目次の3ページですが、別添1から別添4まで図をつけておりますが、何枚か図を追加しております。また、参考資料としても一つ追加しております。
 2ページから3ページにかけてですが2ページから「基本認識」という部分が始まります。ここにつきましては、特に今後の科学技術政策の方向性を見定める上での基本的な認識を記しております。メッセージ性を高める、あるいは最新の情報等も盛り込むということで、基本的認識を論述するための文章の見直しを施しております。
 4ページ、5ページ、6ページ、7ページと、同様にそのような修正を行っております。
 14ページからが「今後の科学技術政策における基本的方針」になりますが、16ページにおいて「科学技術イノベーション政策において『人と組織』を一層重視する」としております。前回の会議では、人を重視するということで人に着目しておりましたが、今後、イノベーションを考えたときに、人と人とのつながり、ネットワークといったものが非常に重要になり、それらを支える機能を担う組織の役割が極めて重要であるということで、「人と組織」を一層重視するということとさせていただいております。
 続いて、変更箇所のポイントのみご説明いたします。22ページですが、博士課程学生等への経済的支援のところで、奨学金についての記述を少し追加いたしております。
 23ページには、学生の流動化、特に大学院学生も含めた人材の流動化、多様化が大事であるという趣旨をつけ加えております。
 さらにそのための具体的な方策として、24ページの、「大学における人材の流動化・多様化の促進」という項目の中の黄色をつけている部分ですが、「国は、学生が学部を卒業した後に当該大学以外の国内又は海外の大学院に進学し、学位を取得することを促進するための方策を検討する」とし、大学院段階での学生の流動化を促進するための方策を検討するということなどを追加して記載しております。
 26ページには、「テニュアトラック制の普及・定着の促進」という部分で、この重要な制度をより一層進めるために、テニュアトラック制に対する支援を一層充実するといった内容の文章を追加しております。
 技術者の関係ですが、29ページの一番下に、技術士の役割を産業界等において積極的に評価し、その活躍を促進していくということを追加で記載しております。
 34ページから35ページにかけて、研究評価システムの話があります。特に35ページで、海外で活躍する研究者等の評価者としての登用を促進するなど、我が国にふさわしい世界水準での評価方法に向けた所要の見直しを図っていくということを追加しております。
 また、36ページには、いわゆる「評価文化」というものを醸成していくということを記載しております。
 41ページの下のほうに「研究情報基盤の整備」という項目がございます。42ページにおいて、e-サイエンスが今後の科学技術を進める上で重要であるということで、それを支える研究情報基盤の整備等についての記述を加えております。
 43ページの「重要な政策課題への対応」について、これまでの分野別の重点化の考え方から、課題対応での重点化を図るということですが、必ずしもこれまでの分野別の重点化が間違っていたわけではないというご意見もありまして、これまでの成果あるいは分野における重点化の重要性と、今後の重点課題、重要政策課題への対応、ここの関係性を、マッチングの結果等も見ながら十分配慮していくという趣旨を追加で記述しております。
 同じく重要政策課題のところですが、44ページに、質の高い国民生活や国際優位性など、いわゆる目指すべき国の姿に対応する形でそれぞれ重要政策課題の例を幾つか掲載しておりますが、全体として、これを国として十数件程度設定していくこととしてはどうかということで、45ページの黄色いところの上から2行目ですけれども、そのようなことを書いております。
 産学連携の関係では、その重要性をしっかり強調するようにというご意見もいただいておりますので、そのような趣旨を55ページの黄色いところに追加しております。
 69ページからが「社会と科学技術イノベーションとの関係深化」です。ここについては、全体的に内容の柱立て、構成を見直しております。最初のところは、「社会・国民と科学技術イノベーションとの連携強化」です。この中では、社会・国民の視点に基づく科学技術イノベーションの推進ということ、特に国民に対する説明あるいは政策の対象となるべき社会的な課題やニーズ等の把握をするということと、もう一つは生命倫理問題等、科学技術が法的あるいは倫理的な側面も含めて社会・国民と大きな関わりを持つようになっていることに対応して、社会的な影響やリスク管理、評価等の取り組みを行うということをこの項目の中に整理しております。
 72ページからは「科学技術イノベーション政策に関する企画立案・推進機能の強化」として、総合科学技術会議を科学技術戦略本部に改組するという方向性が示される中で、今後の科学技術政策のいわゆる統括機能の強化に向けて求められる事項について、この項目で整理しております。特にその中で、72ページの中ほどの黄色い部分ですが、「目指すべき国の姿」の実現に向けて、問題解決型の科学技術を進めていくということにおいては、科学技術イノベーション政策あるいはそれ以外の政策との連携によって政策の相乗効果を高めていくことが大事であるというご指摘がありましたので、その趣旨を記載しております。
 73ページですが、統括組織に期待される機能の一つとして、重要政策課題に基づく研究開発等を確実に推進するために、国の科学技術関係予算の総額の確保に向けた強い機能が期待されるということを書かせていただいております。
 74ページからは「科学技術イノベーション政策の実効性の確保」として、ここで前回、人材について、特にイノベーションということを謳うに当たっては、その人材の養成・確保が重要であることから、まとめて記載する必要があるのではないかというご意見がありました。75ページで人材の問題を、「社会・国民と科学技術イノベーションをつなぐ人材の養成・確保」として掲げました。まさにこれから研究開発のマネジメントというものが大事になりますので、そのマネジメントを担う人材や、基礎的、基盤的な研究と出口、あるいは産業界、社会との間、これらを橋渡しする役割を担う人材、テクノロジーアセスメント等の関係人材あるいは科学技術コミュニケーターといった様々な人材を養成・確保していくことをまとめて記載させていただいております。
 併せて学協会の活動の促進として、研究者間あるいは国内外の関係団体との連携の場としての機能、あるいは学協会は社会と研究者との間の橋渡しを担うという重要な機能もあります。こういった機能の強化を求めるということを書いております。
 76ページから77ページが「政府研究開発投資の在り方」です。政府が約2割、民間が約8割という国全体の科学技術への投資の割合になっておりますが、これを政府対民間という対置関係に置くのではなく、政府研究開発投資が呼び水となって民間における投資を拡大する関係、あるいは効果があるというご意見をいただきましたので、その旨を記載しております。
 77ページの下の方ですが、人材の育成や、重要政策課題に対応した研究開発など、主要な取り組みに関しては、取り組みの規模、目標、そのための投資額等、可能な限り社会・国民に対して提示していくことが必要であるということを追加して記述しております。
 78ページは、「おわりに」ということで、米国の科学技術政策が強力にスタートしたということや、我が国の今後とるべき対応策等について記述しております。
 79ページからは図になっております。まず79ページの上の図ですが、別添1に「科学技術基本計画に基づく政策の発展」として整理しております。科学技術基本法が平成7年にでき、翌年から第1期科学技術基本計画が始まりました。第2期、第3期と来て、ポスト第3期基本計画ということで、特に第2期、第3期において分野別の重点化がライフサイエンス、情報通信、ナノテク等といった形で推進されてきましたが、今後はそれらを踏まえつつ、地球温暖化対策、再生医療等の問題の解決に向けた研究開発を推進していくという形で政策が発展していくということを示しております。
 79ページの下の図は、前回も出させていただいておりましたが、内容を見やすく整理しました。
 80ページの上の別添3ですが、問題解決型の重要政策課題に対応した研究開発の概念図です。一番上の黄色いところに例示しておりますが、地球温暖化対策のための戦略がつくられ、その達成に向けて、例えば幾つかの研究領域にグルーピングされて、さらにそれぞれの研究領域のもとで個別の研究開発課題が様々な分野からパッケージとして構成されることを示しております。これらを全体的に統括しながら重要政策課題への対応を図っていくということです。また、その中でも、例えば5年程度で新たな世界市場の獲得を目指すイノベーション統合プログラムや、国家戦略基幹技術というものに該当するものも推進していくことを示しております。
 80ページの下側は、この重要政策課題への対応を進めるに当たっての一つの推進母体として、イノベーション共創プラットフォーム(仮称)を設置して、そこに関係する機関、役所、大学等が参画して一緒になってこの戦略をつくり、具体的な目標設定をしながら、また役割分担も定めながら研究開発を進めていくということを示しております。そして、推進段階においては、戦略マネジャーを設置して、きちっとマネジメントを行いながら進めていくということを図示しております。
 最後に参考資料一覧として、86ページから87ページにかけて、本委員会での議論において参考とさせていただいた各審議会等における報告・提言、あるいは参考資料等についての一覧をまとめさせていただきました。

【野依主査】
 ありがとうございました。委員の皆様から出された意見を踏まえて修正された報告書案の内容について説明がありました。これには、以前お願いしていた若い世代の方々の意見も入れていただいていますか。

【柿田計画官】
 資料1-4をお配りしております。「中間報告素案に対する主な意見」という資料です。
 1ページからは、この基本計画特別委員会の委員の皆様方からいただきました主な意見をまとめております。そして、右側には、そのご意見が対応する、報告書における該当ページが書いてあります。
 この資料の4ページからが、若手研究者の主な意見ですが、第1回委員会の後に若手の研究者にお集まりいただいて、合宿形式で議論する場を設けさせていただきました。約10名程度の若手の方にご参画いただきましたが、その方々に12月1日の前回の委員会でお諮りした報告書素案をご覧いただいて、それぞれご意見をいただいております。いただいたご意見の中には、対応できるもの、対応できないものがありましたが、対応関係について、報告書に該当するページを明示させていただいております。

【野依主査】
 ありがとうございました。ご苦労さまでした。
 それでは、修正された報告書案について、さらにご意見等ありましたら、お願いします。

【小林傳司委員】
 3点申し上げたいと思います。大変色々ご苦労なさって修正されたということ、苦労のほどがよく伺えます。
 報告書の20ページですが、黄色で「学士力」の話が入っております。これは、項目上は「大学院教育の充実・強化等」ですので、そこに「学士力」というのは、これは学部課程の話ですね。「等」で引っかけているのだといえば、それまでなのですが、わざわざこれを入れたというところに少し違和感があるので、ここでいいのかなということが1点目です。
 それから、2点目は、26ページの「若手研究者ポストの拡充」のところで、2つ目のポツで、現在の教授等の退職後の機会に若手を入れようという話が書いてありまして、「その際、大学等は、定年後も外部資金を獲得」して云々という文章が挿入されております。今回のこの委員会での議論では、若手の研究者の待遇の方に非常に力点を置いていたというのでその感覚を共有していたと思います。その中で、こういう文言が入っていますと、何となく違和感があります。確かに、こういうことはもう既に行われておりますし、別に重要でないとは申しませんが、わざわざ第4期科学技術基本計画の方向を考える報告書に書き込むほど優先すべきことなのかというところに関しては、私はやはり違和感があって、若手の研究者から見ればどうなのかという感じを禁じ得ないと思います。
 それから、3点目、これは概要の文章とも関係しますが、右側の「社会と科学技術のイノベーションとの関係を深化させる」というカラムの中で、1の「社会・国民と科学技術イノベーションとの連携強化」というところにある2つ目のところですが、「大学等や公的研究機関、博物館・科学館等が科学技術の成果等を分かりやすく伝える『科学技術コミュニケーション活動』等の推進」となっております。これは、英語に翻訳して海外に出す場合には、この表現は恥ずかしい文言だと思います。つまり、今どき科学技術コミュニケーション活動を、「成果等をわかりやすく伝える」などという言い方で表現すると、20年以上前の議論に戻ってしまいます。本文のほうは、双方向的コミュニケーションとか、そういう文言がありますから、せめてここは「博物館・科学館等が科学技術について国民との間で行う双方向的な『科学技術コミュニケーション活動』等の推進」というような文言にしていただいたほうがよいかと思います。ひたすらわかりやすく正しい知識を説明するだけでコミュニケーションができると言われていたのは80年代、90年代の話でありまして、今、それでは無理であるというのは先進国の共通の認識です。概要版は色々なところに出回りますので、そこの表現は是非ご修正いただきたいと思います。

【野依主査】
 この報告書は、どういう形で、どこに伝わるのですか。日本語版と英語版の両方を作ると思いますが。

【柿田計画官】
 科学技術のセクターはもちろんですが、文部科学省のホームページに掲載するなど、広く社会にも公表する予定です。英語版については、少し時間をいただきたいと思います。

【野依主査】
 作成される報告書はできるだけ品位のある形にする必要があります。例えば、この間の事業仕分けのテレビ映像は世界中に行き渡りましたが、果たして、あれは日本の品位を高めたのかどうか分かりません。本件についても表現については考えたいと思います。小林委員もご意見がありましたら、お伝えいただきたいと思います。

【小杉委員】
 一つだけ違和感のあるところがあります。前回の素案では「人」だったのが「人と組織」というふうに変わったのだと思います。個人対組織というのはすごく対立的に私は思っていて、むしろ機関や組織というものから個人の方に重点を移したと、前回はそう思っていたのですが、もう一回組織が出て来ています。組織という言い方をすると、やっぱりヒエラルキーのあるきちんとした機関でというイメージがありますが、ここに書いてあることは、むしろネットワークのようにつなぐ機能の方だと思います。組織という表現ではなく、ネットワークづくりや、人と人をどうつないでいくかということが大事ということなので、組織という言い方だと、それをはみ出してしまうのではないかと思います。

【野依主査】
 これは研究の課題によって個人で出来るものもあれば、グループでやらなければいけないものや相当大きな整合性ある組織でやらなければいけないものもあります。伝統的な基礎科学研究は比較的個人の要素が大きいですが、技術開発あるいはイノベーションにかかわる場合にはやはり、もちろんネットワークが重要です。基本となる研究の単位が相当大きくならなければいけないという場合もあります。表現の問題はあると思いますが、このような内容をご理解いただけますでしょうか。個人個人がばらばらにやっていては全く目的を達成できないものがあり、また、単に個人をつなげても不十分な場合がある。そういうことと理解しています。

【柿田計画官】
 第3期科学技術基本計画で「モノから人へ」、また「機関における個人の重視」という方針がありました。それは非常に重要な視点ですが、その下で、個人、つまり一人の研究者に非常にウエートがかかる結果になったという側面があります。例えば研究の現場で、いわゆるPI、主任研究員一人に非常に大きな期待あるいは役割が課せられ、研究者個人が努力しているということが一つ実態としてあると思います。それはそれで大事なことですが、さらに、それを組織として、研究者個人を組織全体で支えていくということが必要になると思われます。そこには研究支援者の充実という面もあるでしょうし、事務の面も含めて、組織として研究者一人一人を支えていくという視点がさらにこれからは必要なのではないかということで、それを支えるものとして組織が非常に大きな役割を担うのではないかという考えに基づき、このような表現とさせていただいたところです。

【野依主査】
 マネジメントと書く方がよいのかもしれません。技術あるいはイノベーションとなった場合に、個人だけではなかなか目的が達成できないので、こういう書き方をしているのだと思います。

【小杉委員】
 よく分かったのですが、一般的な理解では、個人と組織というのは非常に対立的なもので、個人の上に組織があるという認識だと思います。今柿田計画官が仰ったことは逆ですね。個人のプレーをちゃんと支える組織体制が必要だということです。そのように逆転した組織だということが伝わればいいと思います。

【原山委員】
 今の件の修正案ですが、「個人と組織」というと、組織という言葉からはストラクチャーの方をイメージしてしまうので、「個人とチームワーク」という言葉はいかがでしょうか。そうすると、個人が一人ではなくて一緒にやるというイメージになると思います。
 それと、私自身の意見なのですが、ずっと通して読ませていただいて、本当にこれまでどんどんブラッシュアップしていったというのが目に見えていて、しかも初めの部分と終わりで非常に締まっており、皆さんのご努力の結集したものだと思って、非常に評価させていただきます。
 その中で1点だけ私の認識と少し違うところがありました。27ページですが、これは科学技術に直接繋がる話ではないのですが、初等中等教育の話のところです。ここで理系、文系の進路選択について書いてあるのですが、日本の高校は、普通高校に行った場合には、あなたは理系、あなたは文系という分け方をしていないのです。どのように選択が進んでいくかというと、大学受験の段階になって、どこに進むかによって科目を選択していくようになっています。ですから、制度的に言いますと、高校に行った人たちは自分で選ぶことができるのです。だから、これは制度的に変える問題ではないのです。
 制度的に変えるとすれば、高校と大学の接点をどうするかという大きな課題に取り組まないことには、この問題に対する解はありません。ですので、そこまで踏み込んで書く必要があるかは分からないのですが、認識として、今の高校の制度を変えるというよりは、もっと全体のシステムとして見直す必要があるというのが私の意見です。

【大隅委員】
 先ほどの「人と組織」のところに関して、原山委員の言われた「チームワーク」というのは非常にいい言葉ではないかと私自身も思います。ただ、「チームワーク」という言葉が日本語として少し軽過ぎる感じがするのがちょっとつらいなと思うのですが、いわゆるストラクチャーの組織ではないということを表すのだとしたら、そのほうがベターかなと感じます。特に色々なバックグラウンドを持った人材がチームとして働いていくという意味でのチームワークも大事ですし、個人の力が生かされるような、バックアップのチームが必要だというような、多分色々な意味があるのだと思います。そこが、「組織」という言葉ではないほうが新しい観点が伝わるかもしれないと思いました。
 私自身の意見は、アウトリーチ活動に関してなのですが、「説明責任を強化する」ということが何カ所かに書き込まれていて、そのための色々な人材も必要である、科学技術コミュニケーターも必要であるというようなところは、第3期科学技術基本計画よりもさらに強化されていて、まさに時代に合っていると思いますが、一つ気になったのは、前回も私が意見を申し上げたことですが、「説明責任」を誰がどのように担っていくのかということに関して、例えば科学者一人一人がやれること、それから、例えば大学や研究機関という組織でやること、それから学協会などが行っていくこと、そして、さらに国としてどうするかということがあると思います。
 若干書きぶりが違うなと感じたのが、74ページに書かれている、推進方策、「科学技術イノベーション政策に関する説明責任の強化」に書かれている「国は」という書きぶりと、18ページの「基礎科学力の強化」の中に書かれている「社会に対する説明責任の強化」の書きぶりです。18ページの方の書きぶりは、「国は」というところに関して、「大学等及び公的研究機関に対して、アウトリーチ活動の重要性に関する理解の増進を図ることなどにより、これらの取組を一層促進する」ということで、非常に間接的な関わり方というように私には読み取れます。この二つのトーンをそろえていただくか、もしくは、例えばこの「基礎科学力の強化」のところからはこれは外してしまうという対応の仕方もあるのではないかと思いました。

【有川委員】
 「人と組織」については原山委員が仰っているように、チームやチームワークという言葉の方がいいのかもしれません。人材委員会からの報告の中でも「チーム」という言葉がしっかり登場していたと思います。
 それから、先ほどもご意見のありました、科学技術コミュニケーターのところに博物館・科学館というのは書いてあるのですが、図書館も入れていいのではないかと思います。特に大学図書館がこれから重要な役割を担う一つと私は思っており、図書館を入れても全体としてまずくなることはありません。実際に、かなり経験を持っている人たちがいるし、こういう人がいなければいけない時代になってきているのだと思います。

【野依主査】
 ありがとうございました。人と組織の問題は、「人、チームワーク、ネットワークを重視する」でよいのではないかと思います。

【門永委員】
 感想が1点と、それから質問が1点あります。
 感想ですが、A3の紙の方です。おそらく大半の方はまとめしか見ないのではないかと思いますが、前回に比べて主語がかなりはっきりしているなと思います。何々をするという言い切り型になっているので、そこは相当迫力が出たかと思います。
 また、前回、安西委員から「もっと具体的な数字を示して迫力を出すべき」というご意見もありまして、確かにその方が望ましいと思いますが、基本計画なのでなかなかそこまでできないという中で、主語をはっきりさせることによって意思を示すという意味で、前回より相当良くなったと思います。
 それから、質問ですが、迫力を出す中で一つ大きな軸になっているのが、諸外国からの遅れということだろうと思います。諸外国はお金の面も含めたさらに量的に大きなリソースを重点的に投入している一方で、我が国は後退していくのではないかという危惧の中、この報告書がつくられていると思っています。ただ、確認のために、その現実を明確にバックアップするデータがあるのかと思って参考資料を見たのですが、これを見ると誤解を呼びそうな感じがあるので、確認させていただきたいと思います。
 参考資料1-3の最後の数ページ、270ページからですが、270ページには、科学技術関係予算が2000年を100として、日本は全く伸びてないけれども、ほかの国は50%から100%ぐらい伸びているということで、これは非常に分かりやすいと思います。
 次の271ページには、定性的にどこの国も大幅拡充していますよというデータが載っていて、その次の272ページでは、科学技術予算を対GDP比で見ると、過去10年ぐらいについては、日本は横ばいで、アメリカだけは上がっているのですが、他の国がそんなに上がった気配がないし、フランスは大きく下がっています。これをさっきの話と整合性をとろうとすると、GDPがすごく上がっていればまた別なのですが、そこが少し見えないなということです。それから273ページを見ると、政府負担研究費の割合が、イギリスを除くと、どちらかというとどの国も減っている傾向です。このあたりの整合性が見えなくて、分からなくなってしまったのですが、そこを確認していただけますか。

【柿田計画官】
 これは元々のデータソースが様々であるため、今ご指摘があったように、なかなか整合性をうまく読み取れない部分があるかと思います。今、公になっているデータとしてお示しできるものとして、このような資料をつけさせていただいて、議論もいただいたところですが、今後、具体的な次の計画、政策づくりにおいて、それぞれの重要なポイントについて、確たる論拠とともに、その重要性を訴えるために必要なデータを、次の段階では我々は揃えていかなければいけないと思っております。今回の10回までの特別委員会で使用させていただいたデータは、今、公になっているデータを用意させていただいておりますが、例えばこれから我が国の政府投資を増やしていく必要があるということを、迫力を持って、説得性を持って訴えるためには、それに最もマッチした形でのデータや分析が必要だと考えておりますので、ご指摘の部分も含めて今後対応させていただきたいと思います。

【門永委員】
 蛇足ですが、言いたいことをサポートするためだけにデータをつくるのではなく、客観的に見てもやはり日本はすごく遅れているぞという分析を、もしそうであれば、はっきり示していただければと思います。

【白井委員】
 私も、非常によくまとまってきたなと満足しているのですが、一つだけお願いした方がいいかと思ったことがあります。まず、基礎学力を大幅に強化するというところで一つ、この4~5年、6年程度の大学におけるファンディングでの反省として、やはり競争的資金というのは大変刺激的でよかったのですが、ある種のひずみを生んできているのもまた事実です。色々なところにいる研究者が、その研究を育てようというような形に必ずしもなっていないところがあります。ですから、ファンディングのやり方については、もう少し丁寧なものをきちんとつくっていくという表現をどこかに入れてほしいなという気がします。これは最後のところの政策立案、企画立案というところとも関係がないわけではないのですが、これはどちらかというと政策的なものですね。それも非常に大事ですが、相互に関係していますが、どちらかというと「基礎科学力を大幅に強化する」の3番にある研究開発システムの改革というようなところに主に関係するのかなと思います。ファンディングのやり方、システム、そして、ある分野の研究にいいものがあったら、それを育てていくというようなお金のつけ方とか、そういう丁寧さが僕は非常に必要じゃないかという印象を持っています。

【菅委員】
 2点お話します。先ほど白井委員が仰った、ファンディングをもう少し丁寧にということですが、競争的資金というのはアメリカ等で盛んにやられていて、とてもうまくいっているのは、やはり評価の体制がしっかりして、その評価がしっかり申請した人たちに返るという点がとても重要であると思います。そういう意味では、先ほど白井委員が仰ったように、丁寧にというのは、おそらく評価をしっかり返してあげるということではないかと思いますので、そういう記述があると非常によろしいかと思います。
 二つ目に、26ページのテニュア制度について言及しておきたいのですが、私自身もテニュア制度は非常に重要な制度となり得ると考えておりますが、日本の色々な先生と話しますと、テニュア制度は日本には合わないと言う方も結構いらっしゃいます。ただ、テニュア制度について勘違いをされている場合が非常に多いので、テニュアトラックというのが一体どういうものかという注釈を付けていただけたらと思います。というのは、テニュアトラックが新たな任期制度の一つであるという考え方でテニュアトラックを導入してしまうと、今まであったものと何ら変わらない任期制度になってしまいます。「テニュア制度というのは、よい人材を大学に残すための制度である」というのを、これから若手の人たちにしっかり理解していただくという意味で、しっかりと注釈を入れていただけたらと思います。

【大垣委員】
 細かいことで、75ページの「学協会の活動の促進」の項目ですが、75ページの下から5行目でハイライトされた部分ですが、気がついたのでコメントを申し上げます。「その機能強化に向けた取組が求められる」と書いてあるのですが、日本の学協会は税制等で諸外国に比べて、社会からあまり支援を受けていないのではないかという議論が多くあります。「機能強化に向けた取り組み」というと、やや一般的過ぎるので、例えば、「その機能強化に向けた法人制度の改善などの取組」と書くなど、どこまで書いていいのかわかりませんけれども、少し具体的に学協会支援のコメントが入るといいかなと思います。

【長我部委員】
 私も、これは非常によくまとまって、皆様の意見が反映されたものだと思いますが、43ページについて一言だけ追加させてください。
 これから課題解決型の研究を推進するということに対して、「これまでの分野別やディシプリン別の重点化とのつながりに注意してください」という意見を酌んでくださったと思います。
 私は企業に属しており、通常課題解決中心のプロジェクトを組みます。ただ、それを続けていきますと、あるとき重要な技術分野が欠けることがあります。
 その意味で、これまで築き上げてきた重点分野、ナノテクとかライフサイエンスなどの色々分野は非常に重要な資産で、これから政策課題を解決するプロジェクトの中でも、各技術分野を担う人がバランスを欠かないかを十分モニターしながら、政策課題の解決を目指す、という縦と横のマトリックスでしっかり見ていくことが必要じゃないかと思って申し上げました。概ね反映されていると思いますが、その辺りの意を酌んでくださればありがたいと思います。

【西尾委員】
 まず、柿田計画官をはじめ文部科学省のご担当の方々には、中間報告をここまで練り上げていただいたことに関しまして、心より敬意を表します。
 私は13ページのところで、「芸術」という言葉を中間報告に入れていただきましたことを非常にありがたく思っております。
 芸術も技術も、ラテン語ではアルス、古代ギリシャの思想ではポイエーシスという同一カテゴリーに属し、両者に共通する知はテクネーとよばれ、それが今日のテクニックやテクノロジーの語源となっております。このように、芸術と技術というのは元々同じ意味を持っていましたが、その両者が離れていく傾向が科学技術の急速な発展の中でありました。一方で我が国は、職人の手業が極めて秀でた国で、また建築とかデザインなどの芸術創造に関して極めて高度な達成を見た国として、世界から高い尊敬を得てきております。そこで、我が国は、技術と芸術という2つの術のたぐいまれな結合をさらに研ぎ澄ますという仕方で、今後、世界を先導し得る立場にあると思っています。つまり、この歴史的な特性をこれからの科学技術の発展に強く生かすことが、我が国に強く求められていると思います。
 このような意味からも、今回、今までの科学技術基本計画の中に記載されていなかった「芸術」という言葉が、13ページのところで初めて入ったということを高く評価しております。

【河内委員】
 私も非常に幅広く、多くの人の意見をこれだけうまくまとめていただいた、そういう意味では非常にいい資料になっていると思います。
 小さい話なのですが、19ページの下の方に「大学院における教育研究の質の向上」の下で、「その一方で、産業界が求める人材像を大学に発信できておらず」と断定されています。産業界でも、十分ではないかもしれませんが、それなりに努力はしてきているつもりですが、ここにおられる委員の方は、そのような意識でおられるのかどうか、確認したいのですが。産業界もそれなりに色々なところで発信してきたつもりです。
 ただ、実際に強化としてどういうものにつながるか、どのような人材を具体的に求めているか、教育の方法など、そういう細かい話に落とし込んでいくところについては、まだまだこれからやる必要がある作業はあるかと思いますが、その文言にだけ注文をつけたいと思います。
 それから、やはりこの報告の次の課題として、この報告書では様々な施策を幅広く取り上げていますが、その中でどのように強弱をつけるかという話話は絶対出てくるのだと思います。この委員会ではなかなか議論できないのですが、おそらくその課題をどういうプロセスで、どのように重点化するか、予算も限られている中でどうやっていくかという課題があると思います。それからもう一つは、これだけの多くの施策を実行する上で、効率よくこなしていく仕組みというのが非常に重要な点だろうと思います。
 私が色々な大学の先生から話を聞くと、今は研究や教育といった本来業務以外の雑用のようなもののために、ものすごく忙しくなっていて、なかなか本来業務に時間を割けないという話も聞きます。したがって、従来の施策で既にある色々な仕組みの上に、また施策を重ねていきますと、ますます複雑な、行政の立場からは「管理」という言葉は使われないと思いますが、多分にそういう面が増えてくる要素があると思うので、その辺を少し配慮していく必要があるのではないかと思います。

【伊地知委員】
 今、最終回に向けてまとめていただいたものを見ていて、特に概要の中の何をするかというところで、動詞で表現していただいているところ、それから、「はじめに」と「おわりに」というところを非常にブラッシュアップしていただいて、良くなっているのではないかと思います。
 特に、「『社会・公共』のための政策の一つ」、それから「社会と科学技術イノベーションとの関係を深化させる」ということに関連して、非常に細かいことなのですが、本文でいうと、「おわりに」の78ページ、あと関連して、諸外国の科学技術政策の動向ということで、6ページに関係することの言葉遣いで申し上げたいと思います。
 というのは、ここで国家戦略ということで、「国家」という言葉が用いられています。日常的には、国全体を表して我々はよく「国家」と言うのですが、ただこれをよく突き詰めて考えると、国家というのは、専門的には、例えば国家行政組織法のように、国の統治機構に由来する概念であって、英語でいえばステイト(state)に当たります。英語で国民に由来するところのネイション(nation)とは別の言葉です。フランス語でもナシオン(nation)とエタ(État)という形で違っていて、実は諸外国の戦略というのは、ステイト、国家ではなくて、国民に由来する概念で戦略が作られています。もちろん、統治機構としての国家がまとめて戦略をつくるわけですが、当然それだけではいかないわけで、産業界なども含めて、国を挙げて、国民全体に理解してもらって、それで進めていこうというふうにつくられています。
 そういう考えからすると、実はこの本文中にでも、例えば「産業界は」というのが主語になっているところもありますし、それから実際にこの計画を進めていくには、やはり国民、あるいは個々の研究者の理解、参画が当然必要だと思いますので、可能であれば国民概念に由来する言葉、例えば単純に「国の戦略」といった表現、英語でいえば”Strategy of the State”ではなく”National Strategy”といった表現にしていただくといいのではないかと思います。

【森委員】
 ここまで練り上げていただいて大変感謝しております。テニュアトラックの表現が充実し、学協会の支援も明確に謳っていただいて、大変好ましいと思います。
 その上で、2点ほど申し上げます。
 一つは用語のことです。この報告書では「修士課程」「博士課程」という言葉が使われています。この報告書は、後で総合科学技術会議に報告されるのだと思いますが、あちらでは「修士課程」と、博士課程のことは「博士課程後期」という言い方をしています。全体を通してみれば分かるのですが、このような報告書は大体において、一部だけ取り出して使われることが多いと思います。「博士課程」といった時に、それが博士後期課程のことだけを言っているのか博士前期課程も含めた大学院全体を言っているのか、分かりませんので、そういう調整をしていただけるとありがたいです。報告書の中ではちゃんと整合していますけれども、ただ他で使われる時に誤解を生まないように配慮していただければと思います。
 それと、野依主査はよくご存じのことと思いますが、修士の支援のことが明確には謳われていません。支援できればいいのですが、私はもちろん支援しろと言っているのではなくて、つまり私は研究者ですから、何でもできたらつまらなくて、出来ないことは出来ないこととしてちゃんと認識しているということが大事だという意識があります。この場合にも財政的な問題があるので、修士課程の学生を支援できないのは仕方ないのですが、この報告書を見ると、外国は修士課程でもちゃんと支援しているということが読み取れないので、読んだ人がそういう問題点を全然認識しないのではないかという心配があります。

【野依主査】
 広く国際的に人材を集めなければいけないので、修士課程の学生にもきちんとサポートをしなければいけないと思います。

【森委員】
 ただ、この報告書ではそれが一切、認識していないようになってしまっているということです。

【野依主査】
 分かるように書いてください。

【東委員】
 この報告書の題名が相変わらず「科学技術の総合戦略に向けて」となっており、せっかく中身では「科学技術イノベーション」と謳いながら、タイトルが異なるのは残念です。
 それから、先ほど産業界云々という話が出ましたが、私はかなり産業界の立場を重視していただいた計画になっていると高く評価しております。ただ、ここで使われている「産官学」という言葉は、耳にたこができるぐらい、毎年、何十回、何百回と聞いているわけですが、本当の意味の「産官学」が聞き流されてしまっている状況なのではないかと危惧しておりました。「産」を一番上に持って来ていますが、産は本当に参画しているのかと感じていました。是非、本来的な意味を踏まえた産官学であってもらいたいと思います。
 それからもう一点は、若手の意見の中で一つ目にとまったのが、「アカデミアの論文の評価に学生が、過度に巻き込まれている」というものです。これは競争的資金をどんどん出すと、当然ながら、誰が評価して、どう採択するかが問題になります。その時に、実は学生が一生懸命読んで評価しているという姿が浮き彫りになっています。ですから、競争的資金の評価のあり方、テーマの採択の仕方、この実行をどうやっていくかというのは非常に大きな課題だと思います。この中間報告は大変結構ですが、これはあくまでも中間報告でして、最後は具体的な施策に落とし込む必要があります。そして、それが余り良くないと、せっかく策定した計画の意味もなくなってしまうので、実行に向けてどうするかということを明確にしていただきたいと思います。

【野依主査】
 ありがとうございます。産業界の関わりの問題につきましては、書きぶりなどにアドバイスをいただければ大変ありがたく思います。

【大隅委員】
 もう一つ、この報告書の整合性について指摘させていただきたいと思います。75ページの、先ほども少し関係するところを言いましたが、「社会・国民と科学技術イノベーションをつなぐ人材の養成・確保」というところで、色々な人材が大変必要であるということが非常に詳しく書かれているのですが、ここで言われている人材というのが、まさに22ページのポスドク等々、「博士課程修了者のキャリアパスの多様化」というところと非常にリンクしているのではないかと思いますので、この二つがうまく対応しているような書きぶりに改善していただける余地がまだあるかと思いました。
 それから、もし可能であればということなのですが、博士課程修了者のキャリアパスとして、ぜひ行政サイドにも入っていくべきだと思いますし、ファンディングエージェンシーのプログラムオフィサーとか、そういったところもあろうかと思いますので、その辺の具体的な例も書かれたらよいのではないかと思いました。
 「おわりに」というのがついたのは、この大部な資料を読んだ最後に、なるほどと思う大事な部分だと思うのですが、その最初の出だしが、「2009年1月に就任した米国のオバマ大統領は」で始まっていいものかと思います。この報告書は日本の科学技術基本計画をどうしましょうという、そのための中間報告案なわけですよね。その出だしがアメリカのことで始まってしまうのは、私は少し残念かなと思います。すぐに出せる何か別の案があるわけではないのですが、ご検討いただけたらと思います。

【野依主査】
 「日本は先端科学技術、あるいは人材養成で世界をリードする」という言葉で始めたら良いのではないでしょうか。少し考えさせてください。

【益田委員】
 いつも同じポイントについて発言させていただきますが、24ページの「大学における人材の流動化・多様化の促進」の中に、学生の流動化について書き込んでいただきありがとうございました。
 一点だけ、お願いがございます。24ページの「大学における人材の流動化・多様化」の中に項目立てが4つあります。その内の一つは、「国は、学生が学部を卒業した後に当該大学以外の国内又は海外の大学院に進学し、学位を取得することを促進するための方策を検討する。」と書き込まれています。国がやる方策ですから、例えば海外の大学院に進学する場合のスカラシップを国が用意するというようなことを指しているのだと思います。
 これに関連してあと一点、「大学は、大学院において、自分の大学の学部出身者がその中核を占めないような、多様性がある大学院環境を目指すことが期待される。」という趣旨の項目を追加していただきたいと思います。
 その前の23ページの黄色マーカーのところに、「大学院の学生も含めた人材の流動化・多様化を促進する観点から、多様な経験を有する研究者を積極的に登用する環境を整備していくことが求められる。」とあります。多様な経験を有する研究者を登用すれば、大学院学生の流動化・多様化が促進されるとも読み取れますが、多様な経験を有する研究者を登用することと、大学院学生の流動化・多様化の促進とは直接的には関係ないことだと思います。大学院学生の流動化・多様化に関しては、一つの項目として、「大学は、大学院において、自分の大学の学部出身者がその中核を占めないような、多様性がある大学院環境を目指すことが期待される。」を入れていただくのがいいのではと思います。
 それから、24ページに自校出身者比率は、自校学部出身者比率となっています。前回のものを書きかえていただいています。こちらのほうがずっと妥当だと思います。

【本藏委員】 
 他の委員の方々が仰っているように、非常にうまくまとめていただいたと思います。
 ただ、私は、全般的に、少し物足りないと感じるところがあります。それは大学に関するところです。以前の委員会で、大学の国際競争力の強化や、国際化ということが議論されたと思います。その点に関しては、あちこちに記載されているので、特にどの項目ということではないのですが。現在も大学改革を促すための色々な施策が打たれていますが、うまくいっているところもありますが、そのプログラムが動いている時はそれなりの改革らしきものが見られるのですが、終わってしまうと元に戻るという例もかなり見受けられます。今後は本腰を入れて、大学改革をきちんと進めるのであるという方向に向かうような施策が必要だと思います。どこをどう書けばいいかということについては、具体的に今、考えているわけではありませんし、既に色々と書き込まれているとは思いますが。
 例えば、先ほどから話題になっている26ページのテニュアトラック制のところです。この中では、そのようなことが一つ書かれていまして、「テニュアトラック制の普及・定着の促進」のうちの2番目の項目の中に、「具体的な数値目標を設定し、その達成に向けてテニュアトラック制の導入を進める大学等に対する支援を一層充実する」という形で、やる意識のあるところをちゃんと支援しますというふうになっていて、これは大変いいことではないかと思います。ただ、大学の国際化を推進するために、もう少し外国人教員を増やすべきであるという議論をした時に、「このテニュアトラック制をうまく活用すればいいのではないか」という発言を以前にしたのですが、ここで何かそれに近いものが触れられていればうれしいなという感じがします。例えば、キーワードでいうと国際公募や、あるいは国際的に人材を求めるという形の言葉があれば、力強くなって、なおさらいいなと、そんな感じがします。

【野依主査】
 高等教育あるいは人材養成の問題で一番大事なことは、中教審の大学分科会大学院部会で、しっかりと現状を認識していただくことだと考えています。相当に現状認識が甘いのではないかと危惧しています。是非、ここで議論されたことを中教審に伝えていただきたいと思っております。

【野間口主査代理】
 多くの委員の方が言われましたが、私も大変よくまとまってきたと思います。
 特に、今回、新たに強調された、加わった点ということで、例えば77ページに、官の投資と民の投資が2対8というような記述がありますが、日本でこの話をする時に、対立的に捉えられる傾向があります。官が負担するのか、民が負担するのかという議論になりがちですが、これは相乗効果を生むものだと思います。したがって、委員の方々にぜひ認識していただきたいのは、官がこれだけ投資するから民も投資できるのだということです。日本のR&D投資というのは、もっと官が投資したら民の方も誘発されて、さらに元気が出るものだと、そのように捉えるべきではないかと思います。ぜひ、文科省の方もそういう理解をしていただきたい。
 今、日本の産業を支えているような重要な産業、事業は過去の文部科学省や経済産業省、その他の省庁の粘り強い投資に支えられた、誘導されたというのが、ほぼ例外なくそうではないかと思いますので、そういう理解をお願いしたい。これは注文ではありません。変えていただいたので、私はその点では大変満足しております。
 それから、新しく付け加えていただいたところで、29ページの最後の行に、技術士の重要性ということで、活用を含めて今後改善を図っていくべしと書いてあります。私は技術士分科会の分科会長を仰せつかっているということもありまして、技術の社会化という点では、技術士が果たしている役割は現在でも結構大きなものがあり、また今後、技術者の倫理等を考えましても、また新しい技術の他分野への広がりというのも見ましても、技術士の役割というのは重要になっていくのではないかと思います。現在のところは、技術士分科会に集まっておられる委員の方々も、技術士制度をどのように活用していこうかと思い悩みながらやっておられるというのが現状であるということをご認識いただきたいと思います。本報告書で取り上げていただいたことに対して、大変アプリシエートしております。
 それから、最近の技術士の取り扱い、見方で、非常に変わってきたな、これは新しい動きだなと思っていることがあります。安西委員には怒られるかもしれないのですが、大学でのコースワークの不足を補うために、一部の企業では社内教育を充実させています。その社内教育の結果の評価手段として、技術士にチャレンジさせるという企業が増えてきておりまして、これはこれで、一つのいい傾向だと思っております。

【野依主査】
 私も一言、言わせていただきたいのですが、色々なところで国際化、あるいは国際協調の問題を取り上げていただいて大変ありがたいと思います。一番大事な視点は、ある種の基礎科学研究、さらにイノベーション、そして本計画の基本線の一つである人類生存への取り組みは、もはや一国ではできなくなっているということです。
 私は、日本はアジア戦略、特にアジアにおけるリーダーシップをとるべしという記述が欠落しているのではないかと思います。ご承知のように、EUはリスボン条約で、壮大な、EU全体としての戦略的な研究開発が始まっています。欧州科学技術研究協力機構や、欧州先端技術共同体構想がありますが、さらに目玉は総合的実用化研究における「研究・技術開発枠組み計画」で、これは欧州委員会がトップダウンで実施する計画ですが、実に1年間で1兆円を投入しています。このようなものが、私はアジアでも必要だろうと思います。
 新政権は日本の存立のためにどういうアジア戦略をつくるのか、メカニズムは知りませんが、私はこの会議の見識として、こういったものの組織づくり、仕組みづくり、それから投資を通してアジアでリーダーシップをとるということを明確に示す必要があるのではないかと思っています。1兆円規模の枠組みをつくるとして、アメリカ、ヨーロッパ(EU)、アジアで3極あります。その中でどれぐらいの規模のものをつくるのか、日本はどのぐらい投資するのか分かりませんが、これらの点を明確に示さない限り、日本は存立しないと思います。

【柿田計画官】
 ただいまの主査のお話につきましては、49ページの下にアジアの関係を書いてあります。特に50ページの一番上の、「国は、今後、著しい科学技術の発展が見込まれるアジア地域において」というところで、特に大型のプロジェクトを一緒になってやる、あるいは研究ファンドを設置するということを通じて、「アジアを中心とした科学技術コミュニティを構築し、将来の東アジア共同体を科学技術面で先導する『アジア・リサーチ・エリア構想(仮称)』について検討する」という記述など、これは大垣委員が主査を務められる国際委員会においてご提言いただいたものを踏まえて盛り込んでおります。

【野依主査】
 ぜひ、日本がリーダーシップをとってほしいと私は思っております。

【大垣委員】
 ご指摘のとおりで、国際委員会でもアジアの強化が議論されており、中間レポートでも意見を出しております。

【野依主査】
 また、財政が許さないからということになると思いますが、それでは日本は生きていけないのではないかと思います。

【二瓶委員】
 ただいまの議論に絡めて申しますと、研究人材の育成の議論は、この委員会の前半で各委員が大変強くご主張されました。その点で、最終的なとりまとめを先ほどから拝見しながら、少し物足りないなと感じた点を申し上げます。
 民と官の研究面での研究投資の比較については、先ほど野間口主査代理からご発言がありましたが、私があえて申し上げたいのは、高等教育における民の負担の割合が、他の先進諸国と比較して日本では極めて過大だということです。この問題は各種統計で何回も出ているのですが、最終的にこの報告書に適切に反映されていないように思います。日本の高等教育が民、すなわち一般家庭の父母の皆さんが全体の3分の2を負担しているのです。3分の1しか国は出していない。現政権は、高等学校教育については無償化と言っていますが、大学教育については何も触れていません。これはもちろん大変重要な問題です。しかし、厳然たる事実として、他の先進諸国に比べて、日本は高等教育に対して国が負担している経費の割合が格段に低いという事実があり、これは今後、大きな課題になると思います。
 先ほど、アジアでリーダーシップをとるというお話をされましたが、これはトップ人材だけではないのです。「裾野」と言うと語感が悪いので、私は言いたくないのですが、国としての総合力を考えるならば、中堅人材とトップ人材の両方が必要で、我が国の中堅人材は民に依存しているのではないかという印象を持ちます。
 もっとはっきり言えば、私学における理工系人材の育成に対して、国はどれだけの資金を出しているかといえば、私学助成金と競争的研究資金としてです。私学助成金と国立大学の運営費交付金では格段の比率の差がありますし、また、考え方も違います。では、実際どのようになっているかといいますと、競争的資金の獲得を通して、研究をやりながら人材育成をやるわけです。大学の役目として、研究と教育というのは不可分ですから、当然そのようになります。競争的資金の配分において、私学や国立でも中堅大学の獲得率が極めて低いということは、かねてから指摘されているところです。したがって、大学における人材育成のための経費の市民による負担率は益々高くなることとなります。
 本報告案の30ページより記述されている、(1)競争的資金の拡充及び制度改革の項目の中に、競争的資金の多様化について書いてありますが、これももっときめ細かくきちんと制度設計をしませんと、全体の要望に応えられないのではないかと思います。教育面の民の負担をどうやって減らし、国としての総合力を高めるかということは、極めて重要な戦略的目標でありますので、ぜひ検討していただきたいと思います。

【フクシマ委員】
 まず、かなり多岐にわたるご意見をこれだけまとめていただいて、本当にありがとうございます。大変お疲れさまでした。
 私は一貫して隔靴搔痒感がありますのは、確かに日本の政策ですので、日本ということにフォーカスするのは分かるのですが、やはり国境がなくなりつつある時代に、あまりに日本と外国とを分けて、外から人を入れる、こちらから出すというように、国境を意識し過ぎた視点が強いようで少し抵抗を感じます。何となくガラパゴス状態になっているのではないかと思います。先ほど、野依主査がご指摘になったように、例えばアジアでのリーダーシップについての記述や、実際にはグローバルな土俵で、全員が世界中の方たちと、(ある意味では競争的資金についても)戦っているので、もう少しフラッティニングワールドを意識した部分があってもいいのかという印象を、全般的に感じました。
 特に、先週、中国の会議に二つ出たのですが、大変なダイナミズムで、このままでいくと、追いつけ追い越せではなくて、日本は既に追い越されてしまっている状態ではないかという危機感を持って帰ってきました。そういう意味で一つ提案なのですが、先ほどご指摘があった「おわりに」の部分で、確かにせっかく鳩山さんが新総理になられたのにオバマ大統領の話が最初に出てくるのはいかがなものかという気もするのですが、とはいえ、やはりここで世界の全体像の中での日本というところをご指摘いただかないと、ガラパゴス状態の報告書になってしまうという危機感もあります。書き出しは鳩山総理のお話からスタートするとしても、ぜひ世界観のところは削らずに、何らかの形で、オバマ大統領の話でなくてもよいのですが、例えば「日本がもっとリーダーシップを科学技術の分野で、まずはアジアでとる」ということを明言していただいても良いのではないかと思います。それで最後に締めるという具合にすると、かなりグローバルな中での日本というものを意識した報告書になるのではないかと思いました。

【安西委員】
 私自身は、かねてから、特に理工系における博士課程の、内容を含めた抜本的な改革が必要だということを申し上げて参りました。文系の場合には、同様に修士課程が課題だと思います。
 そういう中で、この中間報告案は、本当に努力されてできてきているのでしょうが、博士課程の抜本的改革については、おそらく設置基準等の法令まで変えないと現実には変わらないのではないかという危惧はいまだに抱いております。そういう中で、先ほど野間口主査代理も言われましたが、企業と大学が一緒になって相乗効果を生むというようなことは、研究だけではなく、教育においても出来るのではないかと思いますし、今の博士課程の状況、また大学院の状況では、企業における教育の効果、必要性については、私も本当に必要だと思いますので、そのことはぜひご理解いただければと思います。

【小松審議官】
 大学院教育については、戦後、制度も色々発展してきましたが、世界の中でどのように魅力ある大学院教育を提供して、国際的に人を引きつけ、あるいは日本人研究者に海外へ出て活躍していただくということが喫緊の課題であるということは、特に数年前から中教審でも取り上げられました。平成18年を皮切りといたします大学院教育、それまで中教審では大学院の発展ということは取り上げられましたが、大学院教育という概念はあまり取り上げられてこなかったのですが、大学院教育振興施策要綱がつくられまして、法令から予算、その他に至る総合的な計画として出発いたしました。それから間もなく5年になりますので、中教審では現在、何ができて何ができていないのか、この議論については、実は第3期科学技術基本計画と同じ時に始まっておりまして、その時点でかなりコラボレーションもしておりますので、その反映もどのようになっているかということを含めて検証しようということで、現在、相当数の大学院に詳細な検証の作業をお願いしております。
 日程については多少動くかもしれませんが、基本的には年度末を目指して、相当程度のフォローアップをして、各分野別の部会で分析をしていただこうと思っております。その上で、何ができているか、できていないかを見て、なるべく早い段階で、今、中教審のご提案では、第2次大学院教育振興施策要綱にブラッシュアップをしていくべきではないかということになっております。その中で、今回のように、科学技術・学術審議会での審議の内容、あるいは総合科学技術会議でのご議論、その他を、先ほど野依主査からしっかり伝えるようにというお話がございましたが、これらを踏まえながら、練り上げていくことが当面の課題ではないかと考えております。

【野依主査】
 ありがとうございました。ぜひ実効あるものにしていただきたいと思います。

【長我部委員】
 先ほどの大学と企業のスタンスに関わるところで、少し書き方で気になるところがあります。
 A3のまとめの方で結構なのですが、右下の四角の中で、「社会・国民と科学技術イノベーションをつなぐ人材の養成・確保」というのがあります。この中で「研究機関と出口側の産業界をつなぐ人材」というのがありますが、これは実はイノベーションそのもので、イノベーションの中にすべて包含されていると私は理解しております。こう書いてしまうと、研究開発だけが科学技術イノベーションで、それから経済原理の中に押し込むのは、また別の活動というふうにとられかねないので、ここは先ほどの野間口主査代理の仰ったように、官と民の投資が対立するものではなく協調するものであるとか、やはり教育も含めて協調するものである、そういった精神の上に立って、イノベーションという活動そのものの中に、官も民も入ってイノベーションにしていく、そういうスタンスが重要と思いますので、ここのところの書き方は工夫したほうがいいと思いました。

【森委員】
 1点だけ、追加させてください。42ページの本文、下から9行目ですが、電子ジャーナルの安定的な講読について言及されたのは非常に良いことだと思うのですが、効率的・安定的な講読ができるよう検討するのは、「大学等」と書いてあるのですが、私はこういうことには疎いのですが、果たして大学等に任せておいてできるものなのかどうか甚だ不安なのです。もしできそうにないとすれば、文部科学省なりどこかも関与するような形に変えていただけるほうがありがたいと思います。

【白井委員】
 質問でもあるのですが、この報告書は「中間報告」と書いてありますね。そうすると、この中間報告の後、どういうふうにやるのかなと考えた時に、大体こういうスタイルのまとめ方が、これまでも長い間ずっと踏襲されてきているのですが、総論で非常によく書けているし、バランスもとれているし、良いと思うのですが、迫力にちょっと欠けていると思います。例えば、今、ポスドク問題等の渦中にいる人たちがこのレポートを読んだとします。そうすると、自分たちの働く場所が、これからどういうふうに展開するのかという希望を持てるように読めるだろうかというと、そうではないと思います。ですから、付録でもいいので、こういうものがこのぐらいできて、それでどういう目的を達成するのだという、例えばどういう規模のことをやるのですとか、何か数量的な、質的なものも含めたものがないと、内容は非常にすばらしいのですが、読んだ人に具体的なところが伝わらないような気がします。この中間報告の後はそういうものが出来るのかもしれないのですが、お願いしたいなと思います。

【野依主査】
 今後の取り扱いは、どのようになるのでしょうか。

【柿田計画官】
 まさに今、総合科学技術会議においても第3期科学技術基本計画に続く新しい政策づくりの議論が始まっているところです。年が明けますと、政府全体としてもその議論が加速することが見込まれる中にあって、この基本計画特別委員会においても、これまで精力的に、かつ総合的な議論をしていただきました。タイムリーに今後の総合科学技術会議を中心とする政府全体の議論に重要事項を提言していくというそのタイミングは、非常に大事でありまして、今般、このタイミングでこれまでの10回にわたる議論をまとめていただくということであると考えております。
 他方で、来年から本格的に始まる議論の過程で、個別に深掘りする議論等も場合によっては必要になる可能性もあります。そういった状況に柔軟に対応していくための体制を維持するという意味で、今回、「中間報告」という形式にさせていただくのが相応しいと考えております。
 また、世の中に説明していくことがこれから重要になりますが、そのためにもう少しメッセージ性を込めた資料というか、もう少しポイントを絞ったものをつくって、世の中にアピールしていくことが必要かと、事務局としては考えております。

【野依主査】
 ありがとうございました。
  それでは、今日はここまでにさせていただきたいと思います。ご意見がございましたら、書面で事務局にお届けください。本日及び今後いただいたご意見等につきましては、その取り扱いを主査の私にご一任いただければと思います。よろしくお願いします。
 ご承知のように、我が国の一人当たりのGDPは、2000年にはOECD加盟国中3位でしたが、2007年には19位に低落しており、さらに公的な債務もGDPの約2倍に達するような状況です。私たちの世代は、この状況を招いたことに大きな責任を感じておりますし、感じなければいけないと思っています。
 この情けない衰退傾向を脱して、再生に転じなければいけません。ではどうするか。私は決して科学原理主義でも、科学技術原理主義者でもありませんが、それでも卓越する科学技術こそが、我が国が生きる唯一の道であると思っています。世の中に蔓延する敗北主義を捨て、世界水準をしのぐ科学技術をつくることなくして、我が国の存続はないと考えています。
 今回、六カ月にわたる多大な時間を費やしてご議論いただきましたこの報告書の内容を実現していただくことが、その具体的な道筋だと思っております。総合科学技術会議におかれましては、今後のご審議に十分生かしていただきたいとお願いする次第です。
 委員の皆様方には、本当にそれぞれのご見識に基づいて、率直かつ忌憚のないご意見を賜ったことを大変ありがたく思っております。それから、事務局も昼夜を分かたず精力的に働いていただきまして、膨大な資料を集めていただき、また多岐にわたるご意見を調整していただきました。そうして、本日の中間報告ができ上がったのだと、私からも感謝申し上げたいと思います。ありがとうございました。
 それでは最後に、科学技術・学術政策局の泉局長から一言ご挨拶いただきたいと思います。

【泉科学技術・学術政策局長】
 今、野依主査から締めのお言葉がありましたので、それにつけ加えて申し上げるべきこともないところではありますが、改めてこの半年間、精力的にご審議賜ったことに対して、一言申し上げさせていただきます。
 野依主査からは過分なお言葉をいただいたと思いますが、事務局として十分に対応し切れたか、やや心もとないところもありますが、こうして一応まとめができましたことについて、ほっとしているところです。
 今日は相澤議員をはじめ、総合科学技術会議の議員の皆様もお見えでございますが、平成23年度から始まる次の新しい科学技術政策の樹立に向けて、これから政府部内、全体での議論も始まるわけですので、それにここでご議論いただいたことをもって寄与していくということが必要ではないかと思っております。
 それから、この中間報告の中でも述べていただいておりますが、科学技術イノベーション政策を社会とともにつくり実現すると、それは科学技術政策に関する基本姿勢というものが、社会・公共のための政策の一つであるということを改めて明確にするということともつながっているということであろうかと思いますが、そういった意味で、前回の委員会でも、パブリックコメントという言葉もありましたが、そういった取り組みについて、これから、いわば政府全体といいますか、国全体、具体的には総合科学技術会議レベルでご議論のある中で、私どもとしても、この中間報告をベースにしながら、そういう取り組みをしていかなければいけないと思っております。
 それから、今日は机上に差し上げているだけで具体的なご議論はいただきませんでしたが、具体的な研究開発課題や、その上にある研究開発課題を束ねていくための重要政策課題、これらをどのように構築していくかについても、これからの新しい科学技術イノベーション政策を樹立していく上での重要な作業になるわけです。そういったことも、各分科会や委員会等でご議論いただいております内容をベースにしながら、中間報告の80ページの上にある短冊の中に何を埋めていくかという、いわば科学技術政策の中身、詳細設計といいましょうか、そういう作業が併せて行っていくべき作業であると認識しておるところです。
そういったことがあるという意味でも、今すぐ具体的にこの基本計画特別委員会で何かご審議をお願いするということではないですが、今回は中間報告という形でまとめさせていただいているわけです。
 それから、ちょっと今後のことで付け加えて、ごく最近の動きをご紹介しておきたいと思いますが、本日、予算編成の基本方針というものが閣議決定されました。これは、基本的には平成22年度の予算を決めるための大方針ですが、その中で、平成22年度予算の重点分野、「人間のための経済」というタイトルの中で、子育て、雇用、環境と並んで、科学・技術、これはサイエンス&テクノロジーということを明確にするために、我々がふだん言っています「科学技術」と続けて書くのではなくて、「科学・技術」と書いてあるのですが、そういう「科学・技術」というものが入りました。さらに新たな成長戦略が策定されるということで、科学技術を含む重点分野に加えて、今日議論になりましたアジア全体での発展を促すという視点も加えた成長戦略というものを年内にも示すこととする、とこの閣議決定に書かれてあるのですが、そういう方向で政府全体のレベルで進むということもございます。
 そういったことに私どもの立場で臨んでいく上でも、本中間報告は大変な重要な手がかり、材料をいただいたと思ってございますし、冒頭、後藤政務官から、「これを踏まえて、内閣としての科学技術政策ができるように川端文部科学大臣とともに努力していく。」というお言葉をいただきましたが、直近の問題に取り組んでいく上でも、このご審議というものが大変重要であったと受けとめているところでございます。
 ちょっと長くなりましたけれども、重ねて先生方のご尽力に感謝申し上げまして、ご挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。

【野依主査】
 ありがとうございました。
 それでは、事務局から今後の予定をお願いいたします。

【柿田計画官】
 大変ありがとうございました。本日いただきましたご意見、またさらに追加のご意見を踏まえまして、事務局としてさらに所要の修正作業を行わせていただきます。また、最終的には野依主査のご確認をいただいて、委員会としての中間まとめということとさせていただきたいと思います。
 最終的な報告書につきましては、12月25日に科学技術・学術審議会の総会が開催されますが、そちらに報告することを予定しております。また、委員の皆様方にも最終版を送付させていただくことにしております。
 以上でございます。本日、資料が非常に大部になっておりますが、机上に残していただければ郵送させていただきます。
重ねまして、大変ありがとうございました。

【野依主査】
 委員の皆様方、六カ月にわたり本当にありがとうございました。
 以上で科学技術・学術審議会第10回基本計画特別委員会を終了させていただきます。

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科学技術・学術政策局計画官付

(科学技術・学術政策局計画官付)