基本計画特別委員会(第4期科学技術基本計画)(第4回) 議事録

1.日時

平成21年8月19日16時~18時30分

2.場所

東海大学校友会館 阿蘇の間 (霞ヶ関ビル35階)

3.議題

  1. 基礎科学力強化に向けた提言について
  2. 中央教育審議会大学分科会大学院部会の審議経過について
  3. 知識基盤社会を牽引する人材の育成と活躍の促進に向けて(案)について
  4. 科学技術・イノベーションの人材戦略について
  5. その他

4.出席者

委員

野依主査、野間口主査代理、東委員、有川委員、安西委員、伊地知委員、大垣委員、大隅委員、長我部委員、河内委員、黒田委員、小杉委員、小林傳司委員、佐々木委員、白井委員、菅委員、立川委員、フクシマ委員、永井委員、二瓶委員、本藏委員、益田委員、丸本委員、元村委員、森委員

文部科学省

(大臣官房)坂田事務次官、森口文部科学審議官、土屋総括審議官、辰野政策評価審議官、奈良総務課長、藤原会計課長、岡文教施設企画部技術参事官、菱山文教施設企画部計画課長
(高等教育局)小松審議官、藤原大学振興課長
(科学技術・学術政策局)泉局長、渡辺次長、小松科学技術・学術総括官、中岡政策課長、佐藤調査調整課長、川端基盤政策課長、柿田計画官、森田国際交流官
(研究振興局)倉持審議官、山脇振興企画課長、柳研究環境・産業連携課長、舟橋情報課長、勝野学術機関課長
(研究開発局)藤木局長、土橋開発企画課長、鈴木地震・防災研究課長
(科学技術政策研究所)桑原総務研究官
他関係官

5.議事録

【野依主査】
 科学技術・学術審議会第4回基本計画特別委員会を開催します。
 まず、事務局から配付資料の確認をお願いします。

【柿田計画官】
 配付資料の確認をさせていただきます。
 配付資料1-1から資料5までの9点、参考資料として3点の資料を机上に配付させていただいております。
 なお、これまでの審議資料や関連する資料を、机上に置かせていただいております。欠落等がありましたら事務局までお申しつけください。

【野依主査】
 本日の議題は「科学技術・イノベーションの人材戦略」です。
 まず、人材の問題を検討するに当たり、これまでに取りまとめられた報告書及び現在進められている審議会の検討状況を併せて3点報告していただきたいと思います。1つ目は「基礎科学力強化に向けた提言」、2つ目は「中央教育審議会大学分科会大学院部会における審議の経過」、3つ目は「科学技術・学術審議会人材委員会第四次提言(案)」です。これらの報告に引き続き、事務局から科学技術・イノベーションの人材戦略について説明いただきます。その後、3点の報告に対する質疑を含め、ご議論をいただきたいと思います。
 まず、私が座長を務めさせていただいた「基礎科学力強化委員会」で取りまとめました「基礎科学力強化に向けた提言」について報告いたします。
 最初に、事務局から委員会設置の背景等について説明をお願いします。

【山脇振興企画課長】
 それでは、資料1-1と1-2をご覧いただきたいと思います。「基礎科学力強化に向けた提言」について、背景をご説明いたします。
 昨年10月の4人の日本人研究者のノーベル賞受賞を契機といたしまして、文部科学省でも基礎科学力強化の重要性を再認識し、2009年を基礎科学力強化年と位置づけまして、文部科学大臣を本部長とする基礎科学力強化推進本部を設けました。さらに、有識者により構成されます基礎科学力強化委員会を設置し、4回にわたりご審議をいただき、提言を取りまとめていただいたというものでございます。それが資料1-1及び1-2でございます。
 文部科学省におきましては、この提言を受けて基礎科学力強化総合戦略を策定し、基礎科学力強化の実現に向けたアクションプランというものを設けました。これにつきましては、資料2-1と2-2をご覧下さい。本日は提言を中心にご覧いただきたいと思います。
 目次にありますように、基礎科学力強化の基本的な考え方、意義、あるいは研究風土の醸成から始まりまして、基礎科学力強化の進め方として、人材の育成、研究人材、大学院教育の抜本的改革、未来の創造的人材の育成、公的資金の抜本的拡充、研究推進システムといった広範な事項に関してご提言をいただいております。この内容につきましては、座長を務めていただきました野依主査からご報告をいただきたいと思います。

【野依主査】
 この基礎科学力強化委員会におきましては、真摯かつ闊達なご議論をいただき、去る8月4日に提言を取りまとめ、塩谷文部科学大臣に手交いたしました。この委員会には、本特別委員会の野間口主査代理、安西委員、大垣委員、小林誠委員、佐々木委員にも参加していただきました。ご多用なところ大変熱心にご議論いただき、感謝いたします。
 提言の要点についてご説明いたします。
 まず、厳しい経済情勢下にあり、将来への不透明感が漂う今こそ、国是としての科学技術創造立国の意義を再認識して、社会総がかりで科学技術の振興に取り組むべきである、といたしました。そのためには、政治のリーダーシップの下、高等教育と基礎科学を含む科学技術に対して先進国と同水準以上の十分な公的資金の投入が不可欠であるということを提言いたしました。
 基礎科学の意義とは、端的に申し上げれば、人類の英知を創ること、そして、イノベーションを生み出すということです。世界水準をしのぐ基礎科学力なくして我が国の未来はありません。しかし、現下の状況は、現実より逃避するのみで、危機意識が全く希薄であると言わざるを得ない。リーダーたるべき創造的な人材の育成が喫緊かつ本質的な課題です。個性的で豊かな創造性を持って挑戦し、やり抜く力のある人材の養成が必要になります。国際的な厳しい頭脳獲得競争により人材流動性が高まる中で、我が国が研究者にとって国際的に魅力ある国でなければならないことは当然です。そのために、まず、国内の研究人材養成を、創造性を伸ばす新たなシステムに転換しなければなりません。
 特に、大学院教育の抜本的な改革が不可欠です。最高の知の府である大学院に最も志のある、最も優れた若者たちを呼び込み、鍛え、世界水準で最高の研究者、あるいは知識人に育成しなければなりません。万難を排してこの実現に邁進すべきです。そのために大学院の改革、大学人の意識改革、そして、財政支援の3つを一体的に進めることが必要です。加えて、小学校段階からの未来を支える人材育成、世界トップ研究拠点の整備、研究者優先のシステムへの改善、さらには、創造的な研究風土の醸成までを包括した、総合的かつ体系的な基礎科学力強化策を展開し、実行すべきです。
 以上が提言の要点です。
 基礎科学を進展させる方策を深める意味で、基礎科学力強化委員会は非常にいい機会となったと思っております。21世紀型の科学技術振興を目指し、本提言の実現に向けて、大臣をはじめ、文部科学省の方々の今後の奮励を期待すると申し上げましたし、ここでも改めてお願いいたします。
 この提言には、第4期科学技術基本計画において盛り込むべき政策が記載されています。この提言は既に基本計画特別委員会の委員の皆様方にも送付しておりますが、ご一読いただき、今後の審議の参考にしていただきたいと思います。
 以上です。
 続きまして、中央教育審議会大学分科会大学院部会における審議経過について、事務局から説明をお願いします。

【藤原大学振興課長】
 大学振興課長でございます。
 お手元の資料2-1をご覧下さい。こちらは中央教育委員会の大学院部会における現段階での審議経過の概要のご報告でございます。
 平成17年の中教審の答申を踏まえまして、平成18年に大学院教育振興施策要綱が策定され、それ以後、3年余りが経過いたしております。大学院教育の実質化が着実に進展してきている一方で、大学院博士課程の志願者の減少など、様々な課題が顕在化しつつあるといった状況です。こうした状況を踏まえ、現段階での課題の整理、それから今後の方向性などを整理いたしましたものがこの報告です。
 まず2.の大学院教育の実質化でございます。様々な取り組みが行われてきている一方で、必ずしも、身につけるべき知識能力の体系等が十分、教育プログラムに反映されていない大学院もあるのではないかといった指摘がされております。そうした状況を踏まえまして、右の四角の2つ目のマルですが、各大学院が一層、人材養成目的の明確化、あるいは教育内容・方法の明確化、さらに、体系的なコースワークの充実や良質な教材の開発・活用といった取り組みを進める必要があるのではないか。それから、そうした内容の情報公開や、さらには、公開情報を集約して一覧できる仕組みの整備、そうしたものが必要ではないかということが謳われております。
 また、大学院への入学時点におきまして、学生の学力や意欲の適切な把握が十分できていないのではないかといった指摘がございます。そうしたことを踏まえまして、各大学院が入学の際に認めるべき知識、能力を明らかにして適切な選抜を進める必要があるといったことが挙げられております。
 次に、3.は大学院の適正な量的な規模についてでございます。諸外国との国際競争力の確保の観点、あるいは社会的な需要の動向といったものを踏まえつつ、各学問分野別、学位の種類別にその規模のあり方を検討していく必要があるということが挙げられております。諸外国と比較して、日本の大学院の在籍者の対人口比率はかなり低いということがございます。そうした状況や専門分野別の違いを踏まえながら、また、大学院教育の質の保証の観点を踏まえつつ、組織や入学定員のあり方をそれぞれ検討していくことが必要であろうということでございます。
 また、日本の大学、大学院におきましては、いわゆる、社会人学生の比率がかなり低いということも指摘されております。そうした社会人が学びやすいような教育環境の整備についても挙げられております。
 裏面に参りまして、4.ですが、産業界等と連携した人材の育成についてですが、可能な限り産業界等、社会との間でマッチングを図っていくことが重要でございます。現在でも、産学人材育成パートナーシップのような取り組みなどが進められておりますが、そうしたものを分野ごとに、さらに一層、継続的で多様な場において活性化していくことが必要であるということでございます。
 それから、5.が大学教員の意識改革をめぐる諸課題についてでございます。かなり大学教員の意識改革が進んできている面がある一方で、依然として、学生に対する教育に関する意識が必ずしも高まっていないというご指摘がございます。そうした中で、FDの一層の実質化、それからまた、2つ目のマルですが、教員の教育面における業績の可視化し、適切な評価を行い、人事システムを工夫していくことが求められるのではないか。また、教育活動の成果としての学生の学習状況や進路について、各研究科、専攻科、専攻単位でこれを把握、公表していくことが必要ではないか。それからまた、大学教員、あるいは学生が教育研究活動に専念できるように、事務職員の能力開発や教育研究支援者等の体制整備、人材整備が必要ではないかということが挙げられております。
 それから、6.は大学院生についてですが、将来のキャリア展望が開けない、あるいは生活保障がないといったことが言われております。そうした中で、TA、RA、あるいは研究奨励金(フェローシップ)等の経済的支援の大幅な拡充、大学院進学にかかるコストやファイナンシャルプランを事前に提示するといったことを進めていくことが必要ではないかということが挙げられております。
 最後に8.ですが、現在、施策要綱を進めておりますが、今後、23年度以降のポスト「大学院教育振興施策要綱」に向けて課題の検証を多面的に行いながら今後の施策を整理、検討していくということが挙げられておりま。
 この大学院部会におきましては、9月以降、分野別の作業グループを設置いたしまして実証的な検証を行いつつ、今後の方策をさらに検討していくということにいたしております。
 以上でございます。

【野依主査】
 ありがとうございました。
 続きまして、「知識基盤社会を牽引する人材の育成と活躍の促進に向けて(案)」について、事務局から説明をお願いします。

【川端基盤政策課長】
 基盤政策課長でございます。お手元の資料の3-1、大きな一枚紙が概要、3-2が本文になっております。
 人材委員会では、これまで16回の審議を重ね、あと1回で最終回の予定で、おおむね取りまとめが終了しておりますので、本日ご報告申し上げたいと思います。
 まず、この大きな紙ですが、左上をご覧いただきますと、「検討の視点」として、「知識基盤社会に必要とされる人材の素養・能力」、「社会の多様な場で活躍する人材の育成」、「世界と伍して競える優れた若手研究者の養成」、それから、「次代の科学技術の担い手を育成」といったことで議論を進めてまいりました。
 これを1章から4章に整理させていただいておりますが、まず、第1章で「知識基盤社会が求める科学技術関係の人材像」ということで、イノベーションを創造するということについて考えてみれば、やはり、チーム力が重要であろう。そのチーム力を強化するのは、構成するメンバーの多様性が重要で、流動性の確保も大事でしょうし、女性や外国人が入ることも大事でしょうし、インブリーディングのようなものについて提言を図ることが非常に大事であるということを議論させていただきました。さらに、そういうリーダーとしての資質を備える高度人材の育成というのがこれから非常に大事になってくるというご議論がありました。
 第2章に入りますが、第2章においては、「社会の多様な場で活躍する科学技術関係人材の育成」ということで、従来、人材政策はアカデミアの世界で活躍する人材ということにほとんど議論が集中しておりましたが、今回の人材委員会での提言では、むしろ、アカデミア以外のところも含めて多様な場で活躍する、そういう人材の育成について、相当程度、光を当てて議論していただいております。
 1.ですが、特に博士号取得者の社会での活躍に大いに期待するということでございます。そして、大学院においては、アカデミア向けの従来型の研究と、産業界で活躍できるような人材育成の教育研究について複線化して、しかしながら硬直化しない形でカリキュラムを作るとか、あるいは、社会人に対する理解と教育を充実する。それから、優秀な人間が経済的な不安を抱かずに博士課程に進学できるようにフェローシップやTA、RAを抜本的に拡充するということで、生活費相当額を受給できる博士課程の学生の割合を、第4期の期間の早目に2割に持っていこうということでございます。アメリカでのその割合は4割と言われており、日本では今、15万円以上の支給を受けている方が1割ですから、早期に倍増ということになります。
 それから、博士課程取得者が大学の職員として活躍していただくとか、いろいろな活躍の場を用意して支援しようと。あるいは、理科教育の人材として活躍していただこうといった議論をしております。ポスドク問題の解消につきましても、ポスト不足の問題とか、企業等へ多様な場の進路支援について産学官が一体となって対応していく。いずれにしても、大学院教育が極めて重要であるということでございます。
 2.ですが、先ほどもありましたように、教員の意識改革が非常に重要であって、大学教員の学外との接触の機会をいろいろな工夫をしながら増やしていくことが重要である。それから、教員の人事評価についても、教育面をもっと重視したらいいのではないかということです。
 3.ですが、グローバル化に対応した人材の育成・確保。この「内向き志向」を払拭するために、若いうちに海外で武者修行をしていただくといった機会をどんどん増やしていく。それから、日本国内においても、大学等の事務局の国際対応能力の向上とか、そもそも外国人が暮らしやすい生活環境を整備していくことも重要です。
 4.が、女性研究者、何といいましても潜在的な能力がありながら、日本においては女性研究者の活躍が極めて低いという状況で、13%しか女性研究者がいないということです。引き続き、4期においても女性研究者の活躍促進は重要なテーマであると考えておりまして、女性研究者の採用の割合の目標を、自然科学系で25%、特に理学系、工学系、農学系については採用目標に相当届いておりませんので、これを早期に達成する。さらには、指導的な地位にある女性研究者の採用に関する数値目標の検討も必要ではないかと考えております。
 第3章、右のほうに移りますと、特に、若手の研究者が一番、人生の力を発揮できる時に自立して研究できる体制をしっかり用意することが日本にとって非常に重要だということで、1つは、テニュア・トラック制を普及・定着させるべきである。非常に小さな字で書いてありますが、テニュア・トラック制といいますのは、「公正で透明性の高い選抜により採用された若手研究者が、厳格な審査を経てより安定的な職、終身雇用の職を得る前に、任期つきの形態で自立した研究者としての経験を積むことができる仕組み」ということで、3期の期間中、導入を進めてまいりました。現時点においては、これによって大学の人事の見直しが図られ、透明性の高い公募とか、そういったことも相まって、海外の日本人研究者がこの制度に戻ってきております。そういったこともありますし、実際に採用されたテニュア・トラック教員が大変優れた成果を出し始めております。それから、大学が教育研究の戦略を検討する、よいきっかけになっております。また、ポストドクターにとってみますと、こういう公正、透明性の高い採用手続きでテニュアポジションが得られる、こういう仕組みについて非常に魅力的なものというふうに映っているとのことで、現時点では、総じて高い評価が得られている。今、34の大学の自然科学系分野でこの導入が進められておりますが、今後とも、大学の特色や分野の事情に応じながら適切な導入・定着を図っていくことが期待されるということです。
 それで、この制度をアカデミック・キャリアパス、典型的には、博士課程を出て、ポストドクターになって、その後、テニュア・トラック教員を経てテニュア教員になるといったアカデミック・キャリアパスを重要なパスとして定着させるという観点からは、このテニュア・トラック教員の採用数の大幅な増が必要であるというふうに考えられております。
 現在、自然科学系の新規採用ポストを約5,000人と仮定しますと、今のテニュア・トラック教員は約100人ですので、2%に相当する。これは余りにも比率が少な過ぎてポスドクにとっても魅力的ではないので、これを早期に2割まで持っていくということを考えてはどうかということです。
 それから、その下ですが、まず、若手研究者のポストが減ってきているというのが大きな問題です。幸いなのか、不幸かもしれませんが、これから団塊の世代の退職を控えているということもありますので、これを機に、教授の退職者数以上に若手の研究者を採用するとか、高齢研究者の人事のあり方を考えるとか、教員配置を考えるとか、そういったことをやってみてはどうか。いずれにしましても、こういうものは仕組みとお金とポストが大事ですから、若手向けの研究資金の拡充とか、基盤的経費、あるいは人件費の確実な措置が不可欠であるという議論でございます。
 第4章が、次代を担う人材ということで、子どもたち、これについては、才能を見出し、伸ばす取り組みを充実するという観点で施策を展開すべきである。まず、理科好きの子どもの裾野を拡大するという意味では、やはり、学校教育、理数教育を強化する必要がある。特に、教育力のある先生の養成が大事であるということです。それから、才能を伸ばすという観点からは、SSHとか、最近、評価が出ています科学オリンピック、あるいは、中学、高校の科学部の活動を支援する、そういったことをやっております。
 さらに、2.では、小中学校の段階から一貫した取り組みをやっていって、色々な施策がぶつ切りではなくて、子どもたち、生徒から見て切れ目のない支援策が講じられるような、そういう施策の展開の仕方、あるいは運用の仕方を考えていくということについてご議論がありました。特に、優れた研究者にきちんと触れる場を増やす、あるいは、高大接続の重要性について述べられております。
 最後になりますが、一番下のところ、これは、柘植主査からのメッセージですが、教育と研究とイノベーション、この一体的推進を視座として教育界、産業界、国等が一体となって、科学技術を通じて健全で活力ある社会を実現する高度人材を育成し、未来に向けて明るく強い日本をつくる、こういったことで取りまとめがなされているところでございます。
 以上でございます。

【野依主査】
 ありがとうございます。
 それでは、「科学技術・イノベーションの人材戦略」について、事務局から説明をお願いします。

【柿田計画官】
 それでは、資料4-1、及び資料4-2に基づきましてご説明いたします。
 これまでご説明がありました、基礎科学力強化委員会、大学院部会、そして人材委員会、これらの場で人材問題についてはかなり議論が進められております。これらの議論をもとに、事務局として、第4期科学技術基本計画でとるべき重要事項について取りまとめさせていただいたのが、資料4-1でございます。資料4-2は関連するデータ集ということで、適宜、引用させていただきます。
 資料4-1の1ページは、「科学技術・イノベーションに関する人材育成の現状及び課題」についてまとめております。項目の1つ目として、「知識基盤社会で活躍する人材の育成」です。この点に関しまして、産学連携による教育の充実とか、博士号取得者のキャリアパスの拡充、また、学生に対する経済的支援の充実、さらには、女性をはじめ、人材の多様化の促進の必要性についてデータで示しております。
 1つ目に、大学における人材育成の関係について、3つ書いてあります。まず、2つ目の、「インターンシップを実施していると回答した割合」について見てみます。データ集のほうでは、4ページになります。インターンシップ、あるいはキャリア教育を通じたキャリア形成に関する指導ということですが、特にインターンシップについては、国公私立大学を含めて、「実施している」と回答している割合は全体で52.4%となっております。他方で、右側の6ページにインターンシップの実施状況の内訳がありますが、詳しく見ますと、実施段階では、学部においては3年生の段階が約75%、大学院においては修士課程がほとんどで、博士課程においては非常に割合が低いという実態です。また、実施期間ですが、1週間ないしは3週間が75%程度です。一方、それなりの経験を積むことができる3カ月程度以上の長期インターンシップについては、割合は非常に低いという現状です。
 また、企業から見て大学、大学院卒の人材の質が10年前と比べてどう変わったかを示すのがデータ集5ページのグラフです。一番上に、大学・大学院卒がありますが、約38%の企業が、大学・大学院卒の人材の質が10年前に比べて「低くなった」、「やや低くなった」と回答しています。
 産業界による博士の受入状況の関係です。データ集17ページですが、民間企業における技術系職員の「採用実績と今後の望ましい構成」というデータです。ここでは、青、赤、緑と3つのグラフがありますが、平成20年度の企業の採用実績が青い棒グラフ、企業が理想と考える割合が赤色、中期的に望ましい構成割合が緑色です。いずれも同じような傾向で、約6割の人材を修士課程の修了者から採用したいという結果になっています。一方で、博士課程の修了者については1割弱でいいという企業の見方になっています。
 大学院生に対する経済的支援の状況ですが、資料の2ページのⅳです。経済的支援の状況で、2つ目、TA、RAですが、TAについては、修士、博士、合わせて大学院生の28%がその対象になっています。RAについては、特に博士課程対象ということですが、全体で4%ということで、割合としてはかなり低い状況です。また、月額15万円以上の経済的支援を受ける博士課程の学生の割合が9.1%で、先ほど説明がありましたが、米国の41%と比較すると、日本はまだかなり低いという状況です。
 また、ポストドクター等のキャリア選択の意識については、約7割のポスドクが企業の研究者、技術者になることに前向きな意識を持っており、必ずしもアカデミアばかりを念頭に置いているということではないということがわかります。
 女性研究者については、データ集38ページになりますが、年々、女性研究者の数は増加傾向にありますが、全体に占める割合は13%ということで、依然低い。欧米諸国に比べても非常に低い水準にとどまっているということです。
 本体の資料の3ページです。次の項目のⅱ、世界トップレベルの研究者の養成という観点ですが、日本が科学技術・イノベーションで世界をリードするということを考えた時に、トップレベルの研究者の養成、またその支援が必要であるということです。それとともに、若手研究者のポストを拡充する、自立を促進する、そういった環境整備が必要であるということです。
 データでは、まず、研究資金の現状ですけれども、49ページに「若手研究者向け研究費の推移」があります。左側に科研費、右側にJSTの「さきがけ」という若手対象のファンディングの配分額、あるいは予算額の推移がグラフで出ておりますが、近年、増加の傾向にあります。また、トップレベルの研究者、トップの成果を出す研究を支援するという意味で、平成21年度の補正予算においても、最先端研究開発支援プログラムという新しい仕組みが創設されたところです。また、テニュア・トラック制の導入については、50ページにデータがありますが、科学技術振興調整費で若手研究者の自立的研究環境整備プログラムが始まっておりまして、平成18年度から取り組みが進められており、現在、20年度の分まで含めて約400人がテニュア・トラック教員として採用されているということで、全体の中での割合がまだ低いのですが、これから普及していくことが求められるところです。
 若手研究者のポストにつきましては、54ページのグラフですが、国公私に分けたグラフとともに全体での棒グラフがありますが、全体で見ますと、本務教員の数は増えている一方で、いわゆる、37歳以下の若手教員の数は減っている、割合として減少傾向が続いています。教員の高齢化が進んでいるということです。
 本体の資料の4ページで、次の項目、「次代を担う人材の育成」ということで、子どもたちの理数系科目の学力の向上、すぐれた能力を伸ばす取り組みが大事になるということで、各国との国際的な学力の比較等を見ても、我が国の子どもたちの理科、数学に対する興味、関心、また学力、これらを取り巻く状況は非常に厳しい状況にあるということです。
 続いて5ページですが、4つ目として技術者の問題です。研究者と並んで技術者、これはイノベーションの担い手として主に産業界で活躍される方々が多いわけですが、特にここの技術者ということについては、産業界との連携による教育の充実が求められるということです。「実践力を高めるための取り組み」ということで、技術者教育においてもインターンシップをかなりの割合、9割で実施しているというデータがありますが、さらに踏み込んで、産業界の方が授業やカリキュラム作成にかかわる取り組みを行う部分については、まだまだ低調です。
 また、質保証という観点から、技術者教育の認定機構、JABEEにおける技術者認定の累計数は増えておりますが、様々な課題、例えば、JABEEというものを産業界が認識していないというような問題を踏まえ、JABEEのような認定活動を普及していくことも必要であろうと思います。
 また、最後に技術士のことを書いております。技術士については、特に二次試験で年々、受験者数が増えているのですが、幾つかある部門の中で、建設、土木、電気電子の受験者が約7割を占めていて、その他の分野については非常に受験者が少ない状況です。分野によって大きな隔たりがあり、時代に合わせた制度のあり方が課題になるということです。以上が現状の課題です。
 資料の7ページからが「科学技術・イノベーションの人材戦略」の内容です。この委員会の第1回及び第2回の審議におきまして、科学技術の政策目標として中長期的に目指すべき国の姿、また、第4期科学技術基本計画に求められる基本姿勢をご議論いただきました。その際に示された国の姿、すなわち、「科学技術により課題解決を先導する」、「人口減少をはじめ、さまざまな制約の中でも国際的な優位性を確保して成長していく」、「世界最先端の知を創出する」といった目標の実現、また、基本的な姿勢として、「科学技術とイノベーションを一体化した総合政策として科学技術・イノベーションを推進していく」、「人を重視した政策の強化」等についてご議論いただいております。それらの大きな方向性の下で、人材の育成、確保、活用をどのような方針で進めていくことが大事かということになります。今後、知識、情報、技術、これが社会のあらゆる領域での活動の基盤として飛躍的に重要性を増すとともに、それらが社会経済の発展を駆動する基本的な要素となる、いわゆる知識基盤社会を形成して、我が国が一層の発展を図っていくことが大事になりますが、その知識基盤社会を支える人材の育成、また人材の活躍を可能とする環境を造っていくことが基本になると考えられます。
 そのために、人材戦略として最も基本となるスタンスとして、1つには、科学技術関係人材、とりわけ高度な知識、技術等を備える優れた人材を、アカデミアはもとより、産業界などの多様な場で活躍できる、また国内外でリーダーシップをもって活躍できる高度な人材として育成していくということ、もう1つには、イノベーションの創出、また社会の課題解決といったことに対応していく上で、個々人の資質・能力を高めることはもとより、異分野、また多様な人材と協働し、組織やチームとしての総合力を発揮し得る人材を育成していくことが重要になると考えます。
 そこで、科学技術・イノベーションの人材戦略の主要事項として、8ページの(1)から(4)の4本柱で、博士号取得者の多様な場での活躍促進、リーダーの育成、若手研究者が生き生きと活躍できる環境整備、子どもたちについては才能を見出し伸ばしていくこと等に政策の焦点を当てて、それぞれに対応する推進方策を明らかにすることが必要と考えております。
 9ページですが、4本柱の1つ目の柱です。「知識基盤社会で活躍する人材の育成」です。ここでのポイントは、知識基盤社会で活躍する人材として、大学が輩出する人材、とりわけ、博士号取得者が社会の多様な場で活躍できるようにすることが重要であり、そのために、まず、大学院における教育研究の質の向上を図る。また、博士課程進学に当たって、様々な支援を強化していくということ。さらに、人材の多様化を促進していくとの3点にポイントを置いております。
 10ページの「1. 大学院における教育研究の質の向上」に関しましては、社会の多様な場で活躍する人材の育成という観点から、社会の要請も踏まえつつ取り組みを進めていくことが求められます。具体的には、11ページから12ページにかけてですが、第4期科学技術基本計画の期間に合わせた新たな大学院教育振興施策要項を策定し、大学院改革をさらに進める等、大学院教育の実質化を進めるということ。また、リーダー育成等を目指して産学共同による人材育成の推進、さらに、教員の意識改革や進路指導体制の強化といった、人材育成面での取り組みの推進を掲げております。
 次に、13ページの「2. 博士課程進学に対する支援の強化」ですが、まず、学生にとって博士課程進学が自らのキャリア形成にとって魅力的なものであるという状況をつくることが大前提であります。そのためには、まず、学生への経済的な支援の充実を図るとともに、修了後のキャリアパスの多様化を図っていくことが必要になります。このために、14ページ、経済的支援の関係では、TA、RA等を大幅に拡充する等の取り組みを進め、在籍者の2割程度が生活費相当程度を受給との目標の早期達成を実現する。ほかに、キャリアパスの多様化の関係では、産学が連携して学生に幅広い能力を身につけさせるということ、大学が学生や修了者を対象に、例えば、研究管理全般業務を担うリサーチ・アドミニストレーターや、知財関連職等の専門性の高い職業人を育成する。また、教員として活用するといったこと。さらに、15ページ、ポストドクターとして活躍している人材に対するキャリア開発を支援していくということを掲げております。
 それから、ポイント3つ目の「3. 科学技術人材の多様化の促進」です。これについては、イノベーションの創出、あるいは、社会の課題解決に当たって多様な人材が協働することによって研究活動や組織に活性化をもたらし、創造力を発揮するという観点から重要になります。このため、女性や外国人研究者、また、自校出身者以外の登用促進を図ることが重要になります。
 このため、17ページ、女性研究者については、採用割合にかかる数値目標の早期達成、また、教授等の指導的地位にある女性研究者に関する数値目標の設定等を掲げており、さらには、外国人の受け入れや自校出身者以外の登用促進のための方策についても掲げております。
 19ページからは、2つ目の柱、「世界トップレベルの研究者の養成」についてです。ここでは、我が国が科学技術で世界貢献、あるいは国際的な優位性を確保していくということを考えた時に、世界をリードしていくためにトップレベルの優れた研究者を養成、活躍を促進していくということと、若手研究者が自立して能力を発揮して活躍していくための環境整備という2点をポイントとしております。
 20ページの「1.優れた研究者に対する研究資金の充実」に関しては、20ページから21ページにかけて、世界をリードする研究者の養成の観点から、世界最先端の研究成果の創出に向けて優れた研究者の能力を最大限発揮させることを可能とするような研究資金の充実、また、若手向けの研究資金の充実を図ることを重点としております。
 22ページから23ページにかけては、「2. 若手研究者の活躍促進のための環境整備」です。将来を担う若手研究者がキャリアパスをしっかりと見通した上で、創造性を遺憾なく発揮し、研究に打ち込むことができるように自立できる環境をつくっていくことが不可欠です。このため、助教や准教授等の若手研究者ポストを増やすための取り組みを進めるとともに、自立のためにテニュア・トラック制の普及・定着に向けて、数値目標の設定も含め取り組みを推進することを掲げています。
 25ページからは、3つ目の柱、「次代を担う人材の育成」の関係です。まずは、初等・中等教育の教員の指導力の向上が基本になります。その上で、理数好きの児童・生徒のすそ野の拡大のみならず、才能を伸ばす取り組みを推進するということをポイントとしております。
 26ページ、教員の指導力向上に向けて、教員養成段階における取り組みの充実等を進めることと、27ページの「2. 児童・生徒の才能を伸ばす一貫した取り組みの推進」として、特に才能を見出し伸ばすという視点を重視し、スーパーサイエンスハイスクールや国際科学オリンピック等の科学コンテストなどの取り組みを通じて優れた才能を伸ばしていくための支援を充実させる等の推進方策を掲げております。
 最後に4つ目の柱、「技術者の養成・能力開発」です。イノベーションの担い手として活躍する技術者についても、産業構造の変化、あるいは産業競争力の強化の観点から、求められる能力が高度化、多様化している状況です。このため、養成のための教育の充実等を図ることが重要になります。とりわけ、技術者は主に産業界で活躍する人材であることから、産学連携を深め、大学や高等専門学校等の高等教育機関が、社会が求める技術者を養成・輩出していくことがますます必要になると考えられます。
 そのために、30ページに掲げるような産学共同による教育の充実や、大学院において研究者や技術者を念頭に置いた複線的なカリキュラムの設定、あるいは、技術者教育の質の確保等の取り組みの推進、さらには、技術士等の資格制度の問題についても、時代にふさわしい制度として必要な対応を図っていくことが求められます。
 以上ですが、改めて要点を簡潔にまとめますと、基礎科学力強化、大学院改革に関する議論、また人材委員会における議論におきまして、人材の問題に関する論点は明らかになっていると思われます。すなわち、1点目は、知識基盤社会をリードする高度知識人材の中核たる優れた博士号取得者の養成と、社会での活躍を促進していくということ。このために大学院教育の質の向上と多様なキャリアパスを開くために、大学はもとより、社会全体の意識改革、産学官をはじめ、社会総がかりでの取り組みを強化していくことが1点目です。
 もう1点は、研究者の観点では、世界をリードするトップレベルの研究者の養成と、将来を担う若手研究者の活躍促進のための環境整備として、ポストの拡充とともに、自立のためのシステムの導入を推進していくことです。
 これらを中核として、子どもたち、あるいは技術者も含めて、第4期科学技術基本計画における政策の重点についてご議論をいただきたいと思います。以上でございます。

【野依主査】
 ありがとうございました。
 3つのご報告がありましたが、いずれも同じ方向を向いているのではないかと考えております。
 それでは、報告、説明を踏まえて、第4期科学技術基本計画に向けた我が国の科学技術・イノベーションの人材戦略についてご審議いただきたいと思います。90分程時間がありますので、闊達なご意見をお願いします。

【本藏委員】
 先ほどからのご説明の中で、大学院の教育改革、それから大学の意識改革が強く謳われており、これは、私ども大学に属している者としても、誠にごもっともで、ほとんどすべてが当然であろうと思いますが、現実にこれを実行しようとすると、幾つかの問題点が浮き上がって来ます。そのことについて、1つだけ例を取り上げてご説明をさせていただきたいと思います。
 大学院の学生の学習状況や進路についての把握・公表、あるいは、産業界と連携した人材育成というところに関連しますが、大学としてこれを進めているうちに1つの大きな問題があるということが最近、指摘されております。いきなり問題点を指摘するのは、いかがなものかと躊躇しましたが、あえて発言させていただきます。
 幾つか例があるのですが、修士課程における大学院の教育を取り上げて説明をしたいと思います。私が所属している東京工業大学を例にした話です。私どもは、産業界のニーズと大学の教育のマッチングは必要であると認識しておりまして、この点について2年ほど前に評価室で、企業の人事担当者を対象にアンケートを実施しました。115社から回答をいただき、そのうち製造業が54%で、89%の企業が従業員1,000名以上の企業です。修士修了者を採用するに際して、企業として重視する資質は何かという質問に対しては、上位から順に「コミュニケーション力」、「論理的思考力」、「基礎的学力」、「問題解決能力」となっております。これらは、我々大学としても重視している事項であり、具体的には、研究室ゼミや修士論文に向けた個別研究指導などを通して育成を図っているものであります。意欲のある学生は、こうしたゼミや個別研究指導などを通して論理的思考力や問題解決能力などを磨いて、理工系人材として大きく育ち、自己をさらに高めていく、磨いていくべく博士課程へ進学を志すようになっています。
 ここまではよろしいのですが、我々が人材育成を図っていく上で、修士課程に限ってですが、今、大きな障害となっているのは、実は、修士課程の学生を対象とした企業の採用活動の早期化と長期化であります。これについては、昨年10月に国立8大学工学部長会議が声明を出しております。短くまとめますと、「企業の採用活動と学生の就職活動は、修士課程第1学年の秋口から始まって翌年の5月ごろまでおよび、さらに、内定者に対する研修や課題付加による拘束も、場合によっては長時間にわたっているというのが実情であるようです。このような採用・就職活動は、基礎学力を深く身につける時期、初めて経験する研究活動の導入時期と実は重なっており、大学院教育に甚大かつ深刻な影響を与えている。」と声明では謳っております。
 この点について、私の大学の関連研究科長に現在の状況を尋ねてみましたら、「この声明の後、少し改善が見られたが、本質的には余り変わっていない。」とのことです。修士論文に向けて自分が何を研究するのか真剣に考えないうちに就職活動が始まり、研究のおもしろさがわかり始める機会を失うことになっており、このことが博士課程進学のきっかけの喪失に繋がっていると指摘する研究課長もいます。
 個別の大学ではこのような状況を打破するのは非常に難しく、この点につきましては、産学が共同で、どうあるべきなのかということについて深く検討する時期にあるのではないかと思います。

【野依主査】
 ありがとうございました。その問題は大変深刻です。私も日本化学会の会長を務めていた時に、当時の奥田経団連会長に申し入れ、「よくわかった」と返事をいただいたのですが、実行は目に見えませんでした。
 この問題につきまして、産業界出身の方、何か妙案はございますか。修士課程1年の秋くらいから就職活動が始まり、内定が貰えない学生は翌年の夏ぐらいまで就職活動を続け、就職が決まればその後は勉強しない、こういう状況では産業界にとっても大学にとっても大変大きな損失になります。

【野間口主査代理】
 元産業界としてお話しします。私は今、産業技術総合研究所におりますが、産総研でも、優秀な若手を採用しようとすると、企業との競争で色々苦労しているという話を聞きまして、これは由々しき問題と、改めて感じているところです。
 先ほど経団連の話が出ましたが、経団連に参加している企業には早期採用の問題をアピールし、改善を働きかけています。これは少し言い訳になるのですが、景気のいい時は、外資系企業をはじめとして、青田買いをやるというのが実情で、責任の大半は産業界側にあるのではないかと思っております。しかし、それでも、大学側としても、しっかりと勉強しなければ卒業させないということを徹底してはどうかと思います。採用は採用として、決まった後もしっかりと勉強をして、研究をして、立派に育って初めて修士課程を修了できるのだということを思い切って産学が連携してやったら少しは効果が出るのではないかと思っております。

【野依主査】
 今の経団連の取り決めの問題、これは学部の学生に対しては拘束力はありますか。

【野間口主査代理】
 働きかけは、学部と修士課程、両方だったと思います。しかしながら、これは、業界によってかなり違いがあります。電機業界のようなところは修士課程修了者がほとんどですし、証券会社等では学部卒業者が多くなります。

【野依主査】
 大学院修了者の採用活動については、電機業界は比較的遅いが、製薬会社は非常に早いという状況です。

【二瓶委員】
 だいたい野間口主査代理が仰ったとおりだと思いますが、幸い、来年度採用は、世の中の不景気のために比較的よく守られているように感じます。前年度よりよほどいい。ただし、基本的には4月1日以降に採用試験をやるべきだと思います。これは企業のモラルの問題です。次に大学の側は、私どもの大学ではそうしておりますが、修士論文の中間報告を修士1年の年明け頃にさせます。その中間報告が不出来であれば就職試験を受けさせないというレギュレーションをかけております。学の側ではそういう努力ができると思います。したがって、産の側がきちっと期日を守っていただければ事態は相当程度改善されます。
 ただ、1つ問題なのは、最近、インターネットでエントリーシートを出させます。まさに個人相手の就職活動が主流になりまして、昔のように大学のレギュレーションが効きにくくなっています。ですから、やはり企業の側がきちっとやっていただかないと駄目だと思います。

【野依主査】
 私もそう思います。一方で、ある企業の方は、「そうは言うが、使い物になる学生がいないからそうなるのだ。」ということを言っておりました。多分、それは一面として確かだろうと思います。実際、日本のものづくり企業も、現在、研究人材を求めてアジアに次々と進出しています。5年前、10年前は、安い労働力を求めてアジア諸国に進出していましたが、今は、いい研究人材が日本にいないからアジア諸国に求めるという面があります。これは大学においてしっかりと立派な教育をやっていただく必要があります。

【東委員】
 先ほど野間口主査代理が仰ったように、期日の問題に関しては、電機業界に関してはかなり守られていると思っています。そのことが学生の能力をある意味では保護する効果があるのではないかと思っています。
 自分の経験でもう1つだけ申し上げますと、面接を4月から5月ぐらいにやった際に、半導体の研究をやりたいという学生に、半導体物理の著名な教科書をどの程度読んでいるかということで、質問を3つか4つさせてもらったら、全く答えられないのです。かなり著名な大学の院生で、しかも優秀だという触れ込みでしたが、残念ながら、リジェクトしました。その時に、大学の先生から、「もう一度チャンスを欲しい」と言われましたので、「この教科書を全部読んで、もう一度9月ごろに面接しましょう。その代わり、問題に対してきちんと答えて下さい」と課題を設定しました。2回目に面接した時には非常にクリアに答えてくれて、実は、教授からその院生の研究への態度ががらりと変わったと、非常に感謝されました。「それまでは、大学院でまともに研究をしていなかったのだけれども、東芝を見学して以降、急に目の色が変わった。」と。そのような例を私は3つ、4つ記憶しております。ただ、個別の力では当然限界があります。一般的にこういうことが定着するような風土が、本当はあるべきです。システムが出来てきちっとやると、今度は制度化して固くなってしまいます。だから、そういう風土、土壌を創っていきたい、そのように感じるのです。

【野依主査】
 先ほど少し伺った青田買いの問題については、学部学生を対象とした通達は各企業あるいは経済団体に行っているのでしょうか。

【小松審議官】
 通達ではないのですが、これには長い歴史がございまして、色々な申し出やお願いをしております。それから、少し前からですが、実効力のない紙ではいけないということで、例えば、文部科学大臣と経団連の主だった方が実際に顔を合わせて、「こういうふうにしましょう」という打ち合わせをしております。特に学部学生についてはそのような状況です。
 大学院生につきましては、数が学部と比べると非常に少ないということもございまして、特にそれを取り立ててという扱いはないのですが、一般論として、大学改革に対する産業界の要望は非常に強いものがございます。先ほどの大学院教育の実質化、「実質化」という言葉についても中教審の大学院部会で色々ご議論があったわけですが、実質化への反対も、ある意味では中が形式的になっているということからでございます。特に企画力とか、コミュニケーション力とか、そういうことを含めてトータルの基礎力が強く求められているわけでございますが、その課程が全うできないような形で就職が決まっていくこととの間はいつも緊張関係がございますので、その点を、ぜひ改善してほしいということは色々な形で呼びかけているという現状でございます。

【野依主査】
 こんな情けないことが起こっているのは日本だけです。

【立川委員】
 産業界でも、この件については大変問題意識を持っていて、私の会社でも「採用を遅らせろ。」と言ったのですが、駄目でした。人事担当者が、「うちだけ遅れては、いい人材は採用できませんよ。」と言われました。野間口主査代理からお話があったように、もっと経団連が積極的にこういうことをやるべきだと思います。こんなことをやっているのは日本だけですよ。こんな馬鹿な話はないと思います。4年生になった途端に就職口が決まって、あとは遊んでいるような学生は会社では要らないと思うくらいでないといけないと思います。だから、文部科学大臣も経団連とやっていただいているようですが、もっと積極的にやるべきだと思いますね。この委員会からも提言をされたほうがいいと思います。

【フクシマ委員】
 企業といっても私どものように中途採用しかしない企業では、新卒の採用は経験していないので、十分理解しているかは分かりませんが、お話を伺っていて、ちょっと違和感がありました。何でそこまで学生に甘くしなければいけないのかなと思います。社会に出るための準備で大学に行っているわけですから、就職が決まったからといって遊ぶなどというのは言語道断であって、何のために親がお金を払っているのか。そこはやはり学業を続けて、自分たちが社会に出たときに使えるスキルをつくる。幸いにして就職が決まったのであれば、その仕事を入社後すぐに仕事が出来るように、その分、自分たちで工夫をして学習をするなど、そのぐらいのことを高等教育、大学に入るまでに人間として教えていないということ自体、私は大変問題ではないかという気がいたします。
 例えば、いろいろな国の例が挙げられていますが、特に中国やアジア諸国の学生は本当にみんなよく勉強をします。やはり、自分であれ、親であれ、お金を払っているので、それに対して元を取ろうとします。これはアメリカの場合は特にそうですが、「get my money’s worth」と言うように、就職活動が終わった後でもやはり自分磨きに対して非常にみんな熱心です。そのくらいの自立した、基本的な人間教育を、高校までにやっておかないと、これは大学だけでは解決できない問題ではないかと思います。

【小杉委員】
 就職なども研究しております立場から、一言申し上げさせていただきたいと思います。
 1997年までは就職協定というものがあって、協定破りをするとサンクションをつけるとか、色々なことをやってきた歴史があります。ただ、就職協定の歴史というのは明治まで遡りますが、それが常に破られてきたという経緯があります。企業の側から言えば、お互いの企業同士を横目で睨みながら、一歩遅れをとると採用できなくなるかもしれないという危機感に煽られていますし、学生側も、一歩遅くなれば自分だけ置いていかれるかもしれないという危機感でお互いに動いてしまうと、ある意味ではそういうゲームなのです。
 そういう状況の中で、なぜ日本だけがという話になりますと、1つは、日本の企業が人を育成する際に、学校でやってきた能力を前提にしてというよりは、より基礎的なものを前提にして採用し、企業の中で育成するという日本型雇用の仕組みを発展させてきたということと非常に関係があると思います。その結果、大学3年、場合によっては、今はもっと早くなっている場合も有るようですが、なぜ、そのようになるかと言うと、それは大学教育を信頼していないからです。大学教育の結果として成果がきちんと企業が評価できるように、先ほどそちらでも事例がありましたが、企業が求めている能力と大学の中で育成される能力が同じものなのだということがお互いに認識されれば事態も徐々に変わってくるのだと思います。この中で言われたことの大事なところの1つは、産学連携の中で、同じ価値観で人を育てていくことを一緒にやっていこうということで、その延長上に、実は解決の道があるのではないかと私は思います。
 大学院と大学については就職協定は守られていませんが、高卒だけは非常にしっかりと守られています。なぜかというと、高卒の場合は、相手が未成年であるということを前提に行政がかなり介入しているからです。一方で、大学生、大学院生は大人ということを前提にすると、そのように行政が介入してルールを作るというやり方はやはりなじまないと思うので、大学院の場合は特に、産業界とお互いの教育内容についての理解を高めることが一番の解決の道ではないかと思います。

【菅委員】
 私なりに少し論点を整理させていただきたいと思います。まず、提言にありました、産学連携で教育をしていくというのは、おそらく修士課程ではなくて博士課程ですることによって、より博士課程の学生さんたちに多様な視点を与えるという観点で提言されていると思います。
 先ほどの議論ですが、とても重要なことは、学部生と大学院生は随分立場が違うということを、まずご理解いただきたいと思います。例えば、学部生、これはおそらく日本に限らず、アメリカ、ヨーロッパを含めて全部そうだと思いますが、親がお金を出して勉強しているという立場です。一方で、大学院生は、本来ならば自立していなければいけないです。今、日本の大学は、大学院生、特に修士課程、博士課程に至っても、親に頼って勉強しているということで、大学側から学生をコントロールすることができない。アメリカの場合は、完全に大学の先生が学生に報酬を出していますので、例えば、途中で就職活動に長期で行くということは、結局、研究を放り投げていくということで、それはできないという立場になっている。日本の場合にはそれがないというところに、まず、1点、非常に大きな問題があると思います。
 また、企業側から見ますと、先ほど出ておりましたけれども、企業が欲しがっている人材は、コミュニケーション能力があり、問題解決能力がある人ですと。修士課程の学生さんたちについては、企業は、研究で一体何をやっているかとか、具体的にその能力がどれくらいかということはそれほど重要視していないという現実もあると思います。ですから、学生たちも、それもわかっていて研究を途中でやめてでも就職活動に専念するというのが、今現在の環境だと思います。
 まとめますと、まず第1に、大学院生が自立できていない。それから、研究に対する責任を持っていない。この2点を解決しないと、おそらく現在の問題はなかなか解決できないのではないかと私自身は思います。

【野依主査】
 今の件は、基礎科学力強化委員会でも議論になりました。給付型の経済支援が報酬として大学から学生に対してなされた場合には、大学と大学院生の間に雇用関係が生まれます。ですから、大学院生はきちんと研究に従事しなければいけないということになる、これが菅委員の仰ったことだろうと思います。

【野間口主査代理】
 先ほど青田買いの対策ということで妙案はないかというお話でしたが、先ほど申し上げましたように、それについては自信があるお答えはできないのですが。私は、現在起こっていることの問題点を少しでも軽減する方法として、産業界にいる頃いつも思っていましたのは、好景気になりますと、日本の社会は4月に大量採用する、これはしばらく変わらない、欧米にはない現象だと思います。東芝さんが1,000人、日立さんが2,000人、武田さんが1,000人というふうに採用したいと考えますと、やはり、それだけの人数を確保するために早期に活動を始めなければという産業界からのマインドがありますから、早期着手の問題というのはなかなか解決しにくいのではないかと思います。
 この弊害を直すためには、就職活動というのはインターンシップの1つだというくらいに割り切ることではないでしょうか。日本のインターンシップというのは平均しますと2週間くらいしかないんです。アメリカは3カ月から、長い場合は半年くらいありますので、就職活動の一部はインターンシップくらいに割り切って、就職が決まった後、徹底して勉強しなければ卒業できない、学生のファイナルゴールが就職にあるのではなくて卒業にあるのだとすれば、卒業生の質が落ちるということはかなり避けられるのではないかと思います。そこの思い切りですよ。就職が決まった学生を、少々成績は悪いけれども卒業させてやろうかなどということを続けるからいけないので、ちゃんと勉強しなければ卒業できないとなると、採用が決まった後も、一生懸命に勉強すると思います。これが、青田買いの解決にはならないですが、弊害の解決にはかなりなるのではないかと思っています。

【野依主査】
 学位の質保証の問題は中教審でもしっかりと議論をされていると思います。この問題は大変重要ですから、この委員会の職務ではないかもしれませんが、文部科学省から経団連や、しかるべき方面にきちんと発信することを考えていきたいと思います。

【立川委員】
 大学院の修士、博士の質を上げるという話は大変重要だと思いますが、現在示されている対策は、奨学金を増やすとか、あるいはTA、RAを増やすということですが、学生の方がそれを本当に要求しているのですしょうか。先ほど菅委員も仰ったように、ドクターまでみんな親がお金を払っているのに、そういうアルバイトまでやろうとする気があるのか、ないのか、そういう点も踏まえなければいけないのではないかと思います。
 これは質問なのですが、学生側はどういう希望を持っているのか、何が問題だと思っているかです。例えば、博士課程へ優秀な学生が行かない理由が明快ではないという気がします。その辺をぜひ当たってみたいと思いますが、調べられた結果があれば教えていただきたいと思います。私の推測では、博士課程へ行ってもその先がよく見えない、いいポストもないという点がむしろ問題なのではないかという気がするのですが、そういう調査はありませんでしょうか。

【本藏委員】
 組織立って調べて、数値として出せるものは今、我々の大学は持ち合わせていないのですが、多くの教員と話して、自分も大学院教育の現場におりますので、博士課程になぜ行かないのかということについては、大きく3つ、原因があると思います。1つは、経済的な理由は確かにあります。よく親のすねをかじっていると言われますが、博士課程までになると、自立している学生もかなりいます。そういう意識の高い人たちが経済的な理由で、「やはり、私はドクターに行けない。」と言う場合が現実にかなりあります。

【立川委員】
 奨学金がありますよね? 奨学金の比率ぐらいの人数じゃないですか。

【本藏委員】
 いえ、それだけでは足りないと思います。どれだけあるか、きちんと数値ではお答えできないのですが、経済的な理由はあります。
 それから、もう1つの理由についてですが、博士課程になぜ行くのかという、そのインセンティブみたいなものがあると思います。博士課程に行こうと思う人は、志が高いです。自分が何をやりたいのか明確で、問題意識を持っていて、それをさらに突き詰めていきたいという具体的な考えを持っているしっかりした人たちですが、その意識を醸成していくのは修士課程なのです。学部卒業のときは、学部ではまだ研究をしていませんので、基本的には学ぶ一方です。大学院に入って、修士課程に入って初めて少人数教育になり、個人指導がゼミという形で行われます。それから、修士論文、これは各大学、かなりのレベルを要求しますので、それに向けて相当な勉強を要します。それから自分で考える力も必要となります。その素養が、先ほど申しましたように、修士課程で磨かれるのですが、それが磨かれる前に就職活動が始まってしまうと、優秀な人でも、その時点で就職を選択してしまうという人がかなりいます。
 その後、就職が決まってからも修士論文に向けて勉強するわけですが、私が先ほど発言した際には誤解があったかもしれませんが、就職が決まってからも、学生は勉強をしています。立派な修士論文を書き上げてきます。残念なのは、すごく伸びて、立派な修士論文を書いて、問題意識も明確なのにもかかわらず既に就職を決めているので博士課程に進学しない。これは教員が最も悔しがるケースです。
 それから、皆さんもご承知のとおりキャリアパスの問題は確かにありまして、博士課程に行った先輩を見て、ポスドクが多くてみんな苦労しているのを見て、断念するという人がおります。以上3つの理由があります。それがどのくらいの比率になっているかということについては、残念ながらお答えできません。

【大隅委員】
 大学院へ行きたいかどうかということに関して、今、本藏委員から詳しいご説明があったわけですが、逆に、高学歴になることに対して親御さんが寛容な学生が、何となくそのままズルズルと進学してしまって、本当に問題意識を持っている人が、先ほど議論されたように、博士課程に行っても、それが給料に反映しない、何のために進学するのかと躊躇する形になってしまっている日本の現実があると思います。ですから、これは、この委員会だけでは本当にどうにもならないところで、一番大きい問題ではないかと思います。そうではない企業もたくさんあるとは思いますが、博士号を取っても、年齢の上積み分ぐらいしか得にならないということが非常に問題であろうと思います。
 ご指摘したかったのは、大学院教育の充実化、実質化等をどうやっていくかということに関してなのですが、これは本当に簡単ではない問題だと思います。まず、経済的なものについては、日本学生支援機構の奨学金がありますが、これはかなりの部分は返さなければいけません。利子はそんなにつかないのですが、ローンなのです。それで、支援されるということに対して、そんなのものを借りてしまったら、後でそれを返さなければいけないのが大変ということを学生が考えているということもあります。
 それで、話は菅委員が仰ったことにつながるのですが、結局、現在日本では、大学院生へのサポートというのは、返さなければいけないローンのようなものに基づいているところがかなり多く、まだまだ充実した、大学院教育を自分のトレーニングにするということに対して国からのサポート、あるいは大学からのサポートが圧倒的に少ないと思います。そのことが、さらに大学院教育を充実させるためにも多分必要なことです。なぜかと言うと、先ほどの繰り返しになりますが、自分で学費を出している、あるいは、親が出しているということであったら、休んで就職活動しようが何をしようが構わないでしょうということになりますし、大学の先生も、それを認めてしまうけれど、学生も支援をもらっているのであれば一生懸命頑張るのではないか。
 大事なポイントとしては、大学院生のクオリティコントロールをしっかりやるためには、大学院生というのは、もう社会人として大学院という専門教育のトレーニングをやっている機関に所属しているのだと意識させることが必要です。それは国にとって、その先、どんな進路に行くにせよ大事な人材である、大事な科学技術人材なのだと。ですので、そこはきちんと投資されてしかるべきで、それをきちんと回収する仕組みが日本の中になければいけないと強く思います。
 もう1つ申し上げたいのは、ここに「大学院教育の充実化」と書かれると、大学の先生はさらに研究する時間がなくなって本当に大変になるだろうなというのが見えるのです。と言うのは、現在の大学院の定員は、教員の数に対して、日本では多過ぎると思います。重点化というときに、「学部プラス大学院、増えた分もやれます。」と言ってしまったほうが悪いと言えばそれまでなのですが、どう考えても欧米の先生方は、そんなにたくさんの大学院生を1人の方が指導していない。少なくとも、私たちのライフサイエンス分野においては、そのように思います。そこの問題を何とかしないことには、本当の意味での充実化、実質化ということは遠いのではないかと思います。

【柿田計画官】
 立川委員が質問された、学生が経済的な支援を求めているのかどうかという点ですが、本日の資料の4-2の12ページにデータがあります。これは科学技術政策研究所が学生の進路決定に関する意識調査として調べたものです。「博士課程進学を検討する際に重要と考える事項は何ですか」という設問で、1番目から3番目に重要なものを選んでもらった結果、最も重要と考える項目、それから、1番、2番、3番を合算した場合でも、「博士課程在籍者に対する経済的支援を拡充してほしい」という意見が多いということは、一つのエビデンスとして出ています。
 また、大隅委員が仰った教育の質の充実ということでは、もちろん、教員を支える研究支援者も含めて、教員を支える環境を整えていくことも併せて実施されるべきでありまして、そこは人材委員会の報告書にも記載されておりますし、様々な施策を併せて講じていくことになると思います。また、定員の問題については、中教審の大学院部会の審議経過に関する説明がございましたが、ここできちっと検討されるということかと思っております。

【小林傳司委員】
 理工系の人材というか、大学院生という形で一括りに議論されているような気がするのですが、やはり、理学部と工学部は大分違うということを踏まえるべきです。理学部の場合は、ほとんどの博士課程は定員割れをしていると思います。また、工学部の定員割れと理学部の定員割れは理由が違います。これは、学生と日ごろから接していればすぐにわかることですが、理学部はやはり、基礎研究志向なので、将来が見えないということで、一番優秀な人間は学部か修士で学校を出ていくという構造になっています。とても企業には採用していただけないだろうなというタイプの、そして、先が見えないのではないかということにも気がつかないような学生が、重点化の定員の関係上、博士課程に進むということが起こっています。これは、10年のスパンで見ますと、大変優秀な人材を逃がしている可能性があります。
 それに対して工学部の場合には、修士で就職するものである、博士に行くというのは非常に少数の人間のものだと、そういうカルチャーが残っておりますので、工学部での博士に進まない人間のパターンと、理学部の場合とは大分違うということです。
 それから、生命科学も実はポスドクが大変溜まっています。大隅委員はよくご存じだと思いますが、この分野は研究のスタイルが非常にたくさんの人材を要求するようなタイプの研究分野で、しかも、その割に個人のスキルアップにつながりにくいような作業量の多い分野なのです。そうすると、ポスドクはどうしても大量にいるのですが、その先がないということで、その現実を見てしまうと、先の見える学部生は逃げてしまうという状況です。
 ですから、今日の資料の中でも、テニュア・トラックについて書かれていますが、これはかなり強化しないと状況は簡単には変わらないと思います。テニュア・トラックの平均倍率は20倍ということです。20倍という競争に乗り出そうという人間は、なかなか度胸のある人間だと思います。最近では、公募の場合には50倍とか80倍にもなりますので、ギャンブラー的性格を持った人でなければ応募しないということにもなりかねない。競争は必要ですが、50人に1人しか通らない競争というのは、ほとんどくじ引きのようなものですから、適切な競争の倍率というものがあると思うのです。もともとのベースとして志があって、優秀な人間が集まっているのに、それが50分の1、これが本当にいいことかというのをやはり考えるべきではないかと思います。

【河内委員】
 今、小林傳司委員が言われたとおり、企業が採用活動していますと、博士課程の人の質のばらつきがあまりにも大きいと感じます。企業としても優秀な博士をできるだけ採りたいということで動いていますが、これでよく博士をやってきたなという感じの人も少なくないのです。先ほど言われたように、日本の場合は、博士課程に入る倍率が1倍か1.1倍です。米国、イギリス等は博士課程であれば4倍くらいの倍率だと思います。だから、優秀な人を博士課程に入れるためにはどういう手立てをしたらいいかと、先ほど説明されたようなことを考えていかないといけません。企業とのミスマッチもそこから出てきているのではないかと思います。
 それから、もう1つ、修士課程についてですが、これは、大学によって随分違うという印象を受けるのですが、修士の学生を先生の研究の道具として使うようなことが多いのではないか。本当に教育のために先端的な研究の場に学生を参画させているということが本当に行われているか、ということについて非常に疑問に思います。それでは先生が研究できないじゃないかと言われるかもしれませんが、これは提案の中にありましたように、ポスドクがそういう形できちっとサポートできるような体制は、資金面も含めて議論する必要があろうかと思います。
 もう1つ、別の視点になりますが。色々なところで多様化という話が出てきているのですが、私は前回も指摘しましたが、大学、大学院も含めて、やはり、多様な大学、大学院というものをつくっていく必要があるだろうと思います。したがって、それに対応した学生とか研究員や教職員も多様な体系というか、組織をつくっていくということ、そのような組織を作るインセンティブを働かせるような資金の出し方も含めて工夫していく必要があるのではないか。
 ここで議論しているのは、トップの大学の理想形を追うような議論になっていますが、本当はそれを支える社会では、もっと幅の広い構造の受け皿が必要ではないかと思います。

【黒田委員】
 ありがとうございました。今の河内委員の最後のご意見とかなり似ているところがありますが、本日の議論が「科学技術・イノベーションの人材戦略」ということで、理系教育なり理系人材、そういうものを育成するということをメインに考えられているということはよくわかるし、それが重要であることは申すまでもないのですが、この背後には、もっと広い意味での人材育成というのがあって、21世紀の科学技術・イノベーションを担う人材が、もう理系の先鋭的な人材、その独創力を持った人材だけで本当にできるのだろうか、いいのだろうかという疑問が本日の議論を伺っていて思うことです。社会科学、人文科学も含めて深いバックグラウンドを持った上で科学技術を磨いていくことがどうしても必要なのだろうと思います。そうすると、大学院の理系のコースの修士、博士だけの問題だけではなくて、遡ると、小学校の教育に始まり、我が国の教育をどうやっていくかということを考えていかないと、広い意味でのそういう人材は出てこないのではないかという心配をします。
 そういう意味では、ここで考えるのは科学技術・イノベーションの人材をいかに育成するかという戦略であることはよくわかりますけれども、その背後にある人材育成というバックグラウンドをどう考えているかということについてもはっきりしたメッセージを、この科学技術基本計画の中で打っていかないと、どうしても片手落ちになってしまって、これだけが一人歩きするという危険性を持っているのではないかという気がします。

【伊地知委員】
 今のお二人の委員(からのご発言)に関連することで、私から申し上げたいと思います。
 資料の中でも、科学技術・イノベーション人材ということで、特に科学技術にベースを置いたイノベーションということについて、研究で触れられているのはいいと思いますが、それ以外のイノベーション実現のための要素、例えば、マーケティングや、業務をするための様々なこと、あるいは組織間の関係、そういったことをするために欠かすことができない人材がいるわけで、そこに焦点を絞って申し上げたいと思います。
 まず、イノベーションのための人材ということに関する研究はまだまだいろいろ進展しつつあるところで、よく分かっていない、確定的なところが得られているわけではありません。しかし、イギリスでは、NESTAというイノベーション政策に資するための研究を支援しているところがありまして、例えば、そういったところで支援している研究で、若者がイノベーティブな性格をどういうふうに持っているのかを同定し測定するツールの開発をしております。そういう中では、創造性とか、自己効力感とか、活力とか、リスク性向とか、リーダーシップとか、そういう観点から見てみたらいいのではないかということが提案されています。
 そういったイノベーションのための人材ということで、よくイギリス、欧州等で用いられているキーワードというのは、先ほどフクシマ委員がおっしゃったことと関連しますし、また、企業側からもよく指摘されていることだと思いますが、「skills」、技能です。そういったことがなぜ議論されているかというと、やはり、企業や組織の中堅となる人材をどのように国として継続的に生み出していくかということです。その生み出していくプロセスというと、高等教育、それから継続教育、あるいは中等後教育ですが、日本の制度で言えば、例えば、大学の学士課程、専修学校の専門課程というところかと思います。
 申し上げたいのは何かというと、本日の資料の中であまり出ていないということ、論点になっていないということは、あまり問題とは考えられていないということで、従来から日本のシステムの強みとなっているということだと思います。要するに、中堅となる人材が必要なスキルを身につけて、中堅層が厚く社会に出ていっていることなどがそれに該当するかと思います。ただ、当たり前と思っているものが、気づかないうちに劣化してしまうということもあるかもしれませんので、今日いただいた資料、議論を補完するような形で、そういった日本が元々持っている強みを今後も維持していくような施策も明示していただくとよいのではないかと思っています。

【長我部委員】
 先ほどの博士課程の問題ですが、企業の方で必要とする人材というのも随分幅があると思っておりまして、研究職のようなイノベーションの最先端のところから、事業部の現場までいろいろなスペクトラムがあって、特に企業の中でも研究をやるというところにおいてはドクター卒の学生は非常に貴重な戦略だと思っております。実際、私たちの会社でも、どちらかというと、今、企業の研究所がとるドクター卒の割合は増えてきているのかと思っております。その1つの原因は、先ほどの就職活動が早まっていて、マスターの学生さんを面接しますと、1年しかやっていないので、研究のことで質問すると、ちょっと頼りないのです。そこへいくと、ドクターの学生さんは、当然しっかりしていますし、そういう評価を見るとドクターの学生を採るということで、企業としても、研究職では確実にドクターは戦力になってくれると思っていますし、実際に優秀です。
 ただ、社会人ドクターコースとか、論文博士とか、社会に出た後へのドクターの採り方の制度が色々あって、社会人ドクターコースというのは非常にいいとは思いますが、個人的には、やや中途半端な気がしています。週に1回ぐらい大学に行って、基本的には企業でやっているような研究を、コースを2年なり3年やってドクターをいただくという形があって、現在、論文博士は政策的にはどんどん減らしているのですが、そこの制度を知っておかないと、ドクターというものの価値が企業から見てわかりにくいかと思います。ドクター、マスターの教育だけではなく、社会人がドクターを取る制度をどのように設計するかということも重要な視点ではないかと思います。

【元村委員】
 議論を拝聴していて違和感を覚えたのは、皆さんが「博士課程に行かない、就職してしまう」と嘆いておられますが、企業でイノベーションは生まれませんか。企業に行ったっていいのではないでしょうか。ドクターに残りたい人は自分の意思で残ればいいのだし、就職が決まってから研究がおもしろくなったとしても、博士課程に行かずに企業でそのやる気を発揮してくださればいいので、その点では、ここでアカデミア志向が強い大学院教育を脱却しようと言いながら、皆さん、実はまだアカデミア志向なのかなという印象を持ってしまいました。それが気がついたことの1つです。
 もう1つは、多分、こう言っては身も蓋もないのですが、優秀な人というのは、世間をきちんと見て自分の実力も見て、自分を売り込んで世間できちんと生きていきます。博士課程に行こうが、大学だろうが、企業だろうが、海外だろうが、国内だろうが、あまり関係ない。イノベーティブな人は「はみ出し人材」とよく言われますけれども、ちょっとはみ出しているぐらいの人のほうが元気があったりする。そういう人たちは、私たちとしては放っておけばいいというか、邪魔しないというスタンスで臨むのがいいと個人的には思っています。
 しかし、イノベーションというのは1人では生めませんから、それを支える広範な人材の育成を考えたときには、やはり、今の博士課程の、ああいう貧弱な経済的支援、教育制度は改めないといけないと思います。その時に、この提言の中に「若い人にポストを与えましょう」と書いてあるのですが、もともと、人件費削減を求められて助教とか准教授のポストを減らしていったのは大学ですよね。それをまた増やそうというのはどういうことなのかなと、どこを財源にして、どうやって増やすのですかということを関係者の方に聞きたい。
 さらに、はみ出し人材をどうやって発掘、見出して、出る杭を叩かないで放っておくかということに関しては、25ページにも少し触れられていますけれど、才能を見出して育てる教育というものについてご説明がありました。先日、8月9日でしたか、アメリカの才能教育の専門家の方が来日して講演するのを聞く機会がありました。アメリカでは、多くの州が、いわゆる才能教育を州で法制化していて、それにかなりお金を投じています。多くのところが5歳くらいで、ある程度の才能がある子、傑出した才能がある子を選抜して、その子たちのための特別支援教育プログラムをつくっています。それくらいのことをやって、あとは放任というか、その子たちがやりたいことになるべく大人たちが応えるというような環境をつくっていくことで、キャリアパスがすごく多様化しています。研究者になる人もいますし、国連に入って途上国支援に携わる人もいますし、技術者になる人もいる。すごく多様なキャリアパスを、ある意味、特別扱いかもしれませんが、才能教育という取り組みが支えているという事例を聞いて、日本にはこれはあまりないものだなと思いました。ですから、第4期科学技術基本計画でその辺りのことを少し入れておいたほうが、10年、20年後の成果が見込めるかなというのが私の感想です。

【森委員】
 議論を拝聴していて、人材供給という視点が多かったので、私はちょっと場違いかと思って遠慮していたのですが、2点、申し上げたいと思います。
 テニュア・トラックの話が出てきました。テニュア・トラックというのは、この前も申し上げたかもしれませんが、テニュア・トラック後にテニュア教員になる話です。それがアメリカの場合には、テニュア・トラックであれば、つつがなく勤め上げるとテニュア教員になるという前提なのがテニュア・トラックです。日本のテニュア・トラックというのは、勤め上げた後に、新たに厳正に審査して、採用を決めます。
 そうすると、小林傳司委員が仰っていたように、くじを引くようなもので、さらにもう1回、くじを引くような羽目になる。これではとてもやっていられないということがあります。ですから、テニュア・トラックは、やはり、本来のアメリカの意味に戻して、テニュア・トラックとして採用する時に、そもそも、勤め上げれば、それはテニュア教員として採用できるぐらいの人を採る、そういうものがテニュア・トラックだと思います。(会議終了後、「厳正」の意味を私が誤解しており、実は、日本でもつつがなく勤め上げるとテニュア教員になるというシステムだと伺いました。)
 資料の4-1、23ページに、「テニュア教員となる際の基準を明確化する」という文言がありますが、そうすれば誤解も避けられますので大変結構だと思います。それが1点です。
 もう1つは、大隅委員が仰っていた日本学生支援機構の話ですが、前は奨学金返済を免除される免除職というのがあったのですが、それが法人化で国立大学でなくなった国立大学の職を利するから不公平だということでなくなってしまったというのは以前伺いました。それならば、免除職を拡充して、日本が欲しいと思う人材、職業を免除職とするように増やして免除職を復活させるのが私としては一番いいのではないかと思います。

【白井委員】
 ここに幾つかのレポートをいただいて、内容はみんなそのとおりだと思うし、今日は色々な方面から色々なご意見があって、どれもみんなもっともに聞こえるから、ちょっと困っております。ただ、今日の議論は科学技術の人材ですから、大学で言うと、どちらかと言えば工学系を中心にしたドクターの学生というのはどうやったら必要な数と質が確保できるのかというところに少し焦点を絞らないと、理学系は確かに状況が違うし、それ以外の理工的な分野でも全然状況が違うところはたくさんありますから、それらと一緒にすると議論しにくいのではないかという気がします。ですから、今度の第4期科学技術基本計画に向けてどれくらい我々は育成しないと駄目だと思っているのかという、数量的なところ、つまり、今で十分なのか、十分ではないのか、あるいは、質が問題なのか、その辺りを少し詰めてしまったほうが効率的という気がします。
 その次に来るのは、リスクが大きすぎるから、よい人材がマスターで抜けてしまうことは確かに事実です。今までたくさんご意見がありましたが、競争が激し過ぎますし、将来の展望が全然ないのです。ドクターコースに行く人というのは、余程自信があるのか、あるいは、どうしてもやりたいという意思があるかですよね。両方ともいいと思うが、やはり、マスターまでずっと両親に金を出してもらってきて、まだこれからドクターも世話になるのかという話になったときに、大体、そういう学生達は結構優秀で、親孝行したいという気持ちもあるのです。そうすると非常に迷います。これからも親に「金を出してくれ」と言うのかと。もしかしたら、当分給料をもらえないかもしれない。ドクターを出ても、学位を取っても、いい給料をもらえるかどうかもわからない。これで親に対し顔向けができるかと、とにかく、きちんと考えているのですよ。それでものすごく学生たちは悩むのです。非常に現実的な悩みだと思います。
 それを考えますと、博士課程に行くことはちょっとギャンブル的だと。それだったらマスターに行って、同じように自分の興味のある開発でも研究でも企業に行けばできますから、それはそれで1つの自己実現ができるわけで、それで結構だという選択は成り立つと僕は思います。
 ですから、やはり、研究者を育てていくのであれば、そこに激しい競争があっていいが、その先が見えている競争にしていかないといけないと思います。ですから、テニュア・トラック、先ほどから非常にこれをやるべきだと仰ってるが、任期つきポストで、雇われるかどうかもわからない。実は、早稲田大学でもやっているのですが、かなり無責任だと、正直言って辛いのです。テニュアが得られるのは大体2分の1の確率ぐらいです。残りの50%はどうなるのかというと、駄目な場合は駄目と、仕方ないからそう言っているのですが、ちょっと酷だなという感じも正直言って、しています。
 また、ドクターへ行った学生全部が、一人前の研究者になれるかどうか、それはわかりません。その本人の努力もあるし、才能もあるでしょう。その時に、企業との価値尺度をマッチングさせていくという努力が必要だと僕は思います。ですから、教育の場所でもってそれを確保して、進路の選択肢はいろいろ展開できるという明るい希望を、全ての学生にも見つけさせるべきだということは、私もその意見に賛成です。
 それと、最後に、大学の反省になるのですが、やはり、学部を出て、マスターを出て、ドクター出た時に、良い学生を、大学がほとんど囲い込みますね。これは本当はよくないのです。ですから、大学人が、才能を持った学生が、もっと大学間をわたるようにして、広くいい人材を育成していく、鍛えるようなシステムをしっかり考えるべきではないでしょうか。

【野依主査】
 最後の点は、「基礎科学力強化に向けた提言」にも入っております。
 テニュア・トラックの問題について、現状を川端課長から説明していただきたいと思います。

【川端基盤政策課長】
 今、テニュア・トラックというものの、ある種の型を、外観を我々が決め、34の大学で推進させていただいていますけれども、確かに、34大学のうち、当初やろうとしたごく一部の大学において、採用数に対して用意しているテニュアポジションの比率が相当低い、半分とか、もっと低いところとか、ごく少数あったことは事実なので、それが思わぬ不評を呼んでいるのだと思います。現実には、これは、とっていただくテニュア・トラック教員の5年後のポストを原則として用意するということです。100%のところが最近多いですけれども、8割とか、それくらいになっていまして、基本的には、テニュア・トラックに採用される、そこは今のところは激戦になっています、枠が少ない。採用されれば、雑用とかを免除されて非常にいい環境が与えられていますから、ちゃんと研究をしていただいて成果を出していただければ、普通はポジションにつけると、そういう状況になっております。
 アメリカとの違いということに着目してみますと、日本のテニュア・トラック制度というのは、アメリカのように、テニュアがない人に与えるという特権よりは、むしろ、一番大事な期間へ、5年間、7年間をしっかりやっていただくというところに主眼を置いているということで政策の趣旨が若干違いますが、テニュア・トラックに乗っていただければテニュアは与えられるものです。ただ、問題は、先ほど申し上げましたように、今、テニュア・トラック教員になれる確率が2%ぐらい、5,000人の採用枠のうちの100しかないというところが問題で、そこを大幅に拡充することによって、公正で、なおかつ若い時期に思う存分、自立的に研究していただいて、ちゃんと成果を出していただければテニュアは取れる、そういう仕組みになるのだと考えております。

【益田委員】
 先ほど、白井委員が最後にお話されたこと、優秀な学生の囲い込みをやめ、学生にいろいろな場を経験させることの重要性は、私の強い主張でもありますが、日本の大学にこれまで欠けていて、正さねばならない非常に重要なことだと思います。
 今日のご報告の中にもありましたが、これからは国際的に優秀な人材を確保していかなければならない時代です。日本の中の日本人だけでも競争は激しいといって、閉じていたのでは国際競争に負けることははっきりしています。留学生に関していえば、現在、留学生30万人計画とか、グローバル30計画もありますが、本当に優れた留学生が日本に来ているかというと、決してそうはなっていません。日本はアジア圏では間違いなくトップの国です。政治的には安定していますし、経済力もありますし、技術力もある。ですから、特にアジア圏の優秀な学生にとっては、日本の大学が真に開かれた大学になれば、きわめて魅力的なはずであり、将来、トップレベルの学生が日本に集まってくる可能性は十分にあると私は強く思っています。
 そうなるには、国外の優秀な若者に対して、日本の大学は国際的に開かれていると認識されるような環境にすることが必要です。たとえば、日本に留学すれば、日本人と同じ基準で、東大、京大といったトップレベルの大学の教員にもなれるという認識が自然にもたれるような大学の開放性が必要です。学生の流動性の低さ、上位大学の教員の自大学出身の比率の高さなどは、大学国際化のためには早急に改めるべきことです。
 優秀な留学生を国外から集めるために大学を国際的に解放する視点からは、学長選考の仕組みも非常に重要です。国立大学でみますと、法人化後は、学長選考委員会が設けられているにもかかわらず、意向調査と称して、実質は法人化以前と同様、その大学に長年在籍した人物を学内選挙によって選んでいるところが殆どです。これはまさに日本の大学の内向き志向の象徴です。学長はきちんと大学を経営できる人材を学長選考委員会が責任を持って選考しなければなりません。学外者が選ばれるのが一般的と考えるべきです。企業、あるいは、スポーツの世界がそうなっているように、これから将来を考えたとき、上位国立大学の学長も一定割合は外国人が選ばれるようでなければならないと考えます。日本の特に上位国立大学では、学生の流動性がない、教員の自大学出身率が高い、学長は自分の大学の中で長年勤め上げたような人ばかりだ、では、国外から見たときに、日本の大学が開かれているとは到底感じられないことは明らかです。そういったところに他国の優秀な留学生が集まってくることはあり得ないと思います。日本の大学はこういった基本的な構造を変えることが必要な時代になっています。それができれば、国外から見た日本の大学の魅力は間違いなく大幅にアップすると考えています。

【菅委員】
 まず、テニュア・トラックについて少しお話しします。先ほどご説明いただいたとおりに運営できていれば、おそらくいいシステムとして定着していくのではないかと私は確信を持っておりますが、テニュア制をきちっとみんなに理解してもらわなければいけないと思います。テニュア制というのは、いい人材を残す制度で、任期制とは基本的に立場が違うということを、まず、大学の人たちにしっかり理解してもらわなければいけないですし、そのことを全ての人たちに、若い研究者も含めて理解してもらわなければいけない。要するに、そのポストに、テニュア・トラック制に乗ることによって、自分がいい人材であれば残れるのだということをしっかり理解させなければいけない。あとは、テニュア制を運営する人たちが、テニュア制を経験していない人たちなのです。ですから、テニュア制問題が後で起きないように、しっかりと、どういうふうに運営すべきなのかという指針は出していかなければいけないのではないかと思います。
 2つ目はイノベーションについてです。これも先ほどと同じような問題が少しあります。例えば、「イノベーション」という言葉が頻繁に使われるようになりましたが、「イノベーティブな人」とか「インベンション」とは「イノベーション」は基本的に全然違うものであります。イノベーションというのは経済的なファクターがあって、社会的に何かウェーブを起こさないとイノベーションにはならないのです。ですから、そのイノベーションができる人材を育成するといっても、実際に日本にそれを人材育成できる人は多分ほとんどいないので、どうにかしてそういう人たち、育てる側に立てる人材をどこからか獲得してくる。それが企業になるのか、海外になるのかわかりませんが、そういうことが非常に重要だろうと私は思います。
 最後に3番目、どうしてもこれは言っておきたいのですが、大学院教育の実質化というのはとても重要だと思っています。おそらくここにいらっしゃる委員の皆様は、ほとんどの方が大学院生の時に授業が終わるとレポートを提出して、それが単位になる場合がとても多かったと思います。今それをやると何が起きるかというと、大学院生は、まず、ウェブサイトで検索します。それで、ほとんどの場合は皆、コンピューターを使ってレポートを提出してくるので、コピーペーストしたものが出て来ます。昔のように、図書館に行って、本を開いて勉強して自分の手で書いてレポートを提出するのではなく、コンピューターでペーストしたものをちょっと自分なりに変えて提出してくるということが起きるのが現状でありますので、やはり、大学院の教育を、より体系化していって、実質化していくというのは、特に大学院で必要なことであろうと私は思っています。

【佐々木委員】
 今日のこの人材戦略ということを考える前提というのは、要するに、戦後、色々言いながらも、それなりに物事はうまく動いてきたという時代が終わったという認識の上に立った話だろうと思います。ですから、当然のことながら、色々トラブルが起こり、うまくいかない問題も出てくる。今までどおりではうまくいかない、何となく思い込みでやっているとおかしなことが起こるという状態に、まさに我々は直面しているわけで、それであるが故に、政府が1つの計画みたいなものを改めてつくるべきかどうかを我々に諮問しているというのが私の認識です。ですから、古き良き時代は終わったということを踏まえない限り、話は前に進まない。昔は良かったという話をしていてもしょうがないと思います。
 もちろん、イノベーションですから、あらゆるイノベーションの中の、これは、ある部分を何とかしなければいけないという全体の中での位置づけではないかなと思います。ただ、これをやるだけでも大変多くのストレスと、相当な投資を必要とするということ、そういう意味で、限定つきの中で、にもかかわらず、やるか、やらないかという話だろうと思います。だから、これですべて物事が解決するとか、イノベーションはすべてこれに尽きるという話は、誠におこがましい話になるだろうと。しかし、それにも関わらず、やらざるを得ない段階にあるという認識を共有できるかどうかというのが、私は、今日の色々積み重ねられてきた報告の基本的なバックにある認識ではないかと思っております。
 その意味では、野依主査が座長をお務めになったこの「基礎科学力強化に向けた提言」のメンバーに私自身も入らせていただいたのですが、私自身は工学等とは無縁の世界の人間でありますが、見ていまして、この教育の世界だけではなくて、おそらく日本の組織のあらゆるところで今、同じ問題にぶつかっていると思います。いよいよ、今までどおりというわけにはいかなくなってきたなという認識を、教育の世界、特に高等教育の世界の人間たちも、否応なしに直視せざるを得なくなったという前提の上で、今度の科学技術基本計画の中には人材問題を中核に据えないと、話がもはや回らなくなったというのが、私は、話の筋ではないかというふうに理解して、これまで議論に参加してまいったところです。
 その意味で、できますれば、この基礎科学力強化の提言をベースにして、特に中教審のほうでも、ぜひとも議論を進めていただきたい。果たして、この提言が、みんな辻褄が合っているかどうか定かではないのですが、安西委員もいらっしゃることですから、ぜひ、大学院のあり方等について、ベースをどこに置くか。私は、やはり、この基礎科学力の報告書をベースにおいていただきたいと考えます。
 先ほどお話があったのですが、この国の政府の基本問題は、人材政策というのがない、考えたことがないということです。これは非常に深刻な事態だと思うのです。ですから、おそらく、その提言に裏づけられた形で、数値目標の問題などが当然入ってくるべき話だろうと。提言を踏まえた上で、我々は、その中のある部分について、あるいは、その中の非常に重要な部分について議論しているというふうに私自身は理解したいと思っております。
 ですから、ここだけで自己完結ができない面があることは事実だろうと思います。だからといって、もうやめるのかという話になると、そこをぜひ、主査の情熱とインパクトでもって、もう少し大きなベースの上にこれを乗せていただきたいと、このように私自身は期待を込めて、一言発言させていただきました。

【野依主査】
 ありがとうございました。
 それでは、基礎科学力強化委員会でもご議論していただきました安西委員からご意見をいただきたいと思います。

【安西委員】
 今、佐々木委員が言われたことは、私も全く同感でございまして、やはり、科学技術基本計画を本当に我が国の将来に向けて立てるとすれば、これまでの、特に戦後の歴史といいますか、日本が今どういう状況に来ていて、これからどういう方向に行くべきなのかということを、やはり、念頭に置かないとなかなか話は進まないというふうに思います。
 私もそうですが、自分のバックグラウンドの延長線上で個別に考えている限り、今までの専門の延長線上でしか人材の育成はできないのではないかという危機感が大変大きくありまして、基礎科学力強化の委員会におきましては、大体そういう論調になっていると思うのですが、やはり、1960年代の初めくらいに、理工系、特に技術系では修士課程の強化をかなり大がかりに図りまして、それが今まで経済成長を経て、今日の日本の原動力の1つになってきたわけです。世界各国と比べましても、特に技術系の修士課程の修士論文等の作成課程は大変いい意味での教育になっています。就職の問題とか、色々あるのですが、これからは、博士課程をどういうふうに育てていけばいいのか。それはやはり産業界と一緒に、大学、両方の問題があるので、それを突破しない限り、なかなかイノベーションといっても、これまでの延長戦上でしかないのではないか、そういう問題があります。
 それから、白井委員が言われましたけれども、特に工学系のドクターレベルでの人材育成について、特に産業界と一緒に考える、そういう機会を持たなければいけないのではないか。いろいろな分野が一緒に混ぜ合わさって、それで個別のいろいろな例が出ているわけなのですけれども、分野毎にかなり状況は違いますし、これからの方向も違いますし、場合によっては、規模といいましょうか、オーバードクター、ポスドクのところがちょっと大き過ぎるというところもあれば、そこが足りないというところとか、色々あるわけです。そういうこともぜひきめ細かくお考えいただければと思います。
 基礎科学力のレポートの後ろのほうに図がついておりますが、野間口主査代理も大変積極的にご発言いただいた、そういう経緯もございます。

【野依主査】
 ありがとうございました。私の思いは、科学技術人材の養成と関連して、日本の大学院教育が特殊であっていいのかということです。もちろん、大学院が我が国の初等・中等教育、大学の上に乗っているという意味で国内のシステムでもありますが、同時に、世界の大学院教育、あるいは研究者養成のシステムの中での位置づけをしっかりと考えていかなければいけない。少なくとも、それらをベンチマークとして教育していかなければいけないと私は思っております。
 大学院修了者は、博士を中心として、アカデミアであれ、産業界であれ、グローバルな競争の真っただ中にいるということです。大学院の学生たちは、熾烈な競争の担い手であるということです。国の存続をかけてそのように意識する必要があります。世界は、研究者だけでなく、大学院学生の獲得競争まで熾烈になっています。日本ではその意識が薄く、世界の潮流から完全に孤立しています。
 基礎科学力強化に向けた提言でも申し上げましたが、我が国の大学院の制度が卓越したものでなければならない、また、教育研究の内容を世界最高にしなければいけない、そして、世界で最も優れた人たちを集め、鍛えていかなければいけない。その人たちは、日本に残ってもらっても良いし、世界に羽ばたいていただいても良い。そのために、大学院生への給付型経済支援が不可欠です。世界の評価の高い大学では、大学院の1年生のときから300万円から500万円程度給付されており、それによって自立的な生活をしている、これが常識です。
 その最たるものが、アメリカのコンディ・ライス前国務長官が、フルブライトに提案してできた新しい制度です。世界から30人のトップ学生を集めて、1年に16万ドル渡しています。日本円で1,600万円です。アメリカも9.11以降、人材を集めることが非常に困難になっているということで、これは少し極端ですが、このような制度さえ作っている。
 また、イギリスのケンブリッジ大学等におきましても、大体300万円とか400万円を学生に渡している。イギリスの大学院も3分の2くらいが外国人の学生になっているのですが、学生を集めるために、その位の投資をしているということです。我々は、それだけ熾烈な人材獲得の競争があるという状況を、広く社会に知ってもらわなければいけない。どの国も自国の学生だけでは間に合わないのです。もちろん、科学技術、理工系の人材だけ養成すれば国が豊かになるということではないことは重々承知しておりますが、第4期科学技術基本計画に向けて、こういうことを打って出ないと日本の国が存続できないのではないか。それが十分条件ではありませんが、必要条件だと思っております。

【東委員】
 基礎科学の意義は、人類の英知の創出を蓄積、それからイノベーションの創出、とうたわれております。基本的な考え方としては、まことに妥当だと思いますが、これらがブレークダウンされて科学技術・イノベーションの人材戦略ということになっております。特に、先ほど柿田計画官から報告があった時に「科学技術・イノベーションの一体化」という表現があったのですが、これはやはり、今まで何人かの委員の方が仰っていたように、概念が少し曖昧になってしまうと思います。私の知識の中でのイノベーション、ごく特例かもしれませんが、例えば、IT系のイノベーションを例にとると、アメリカのシリコンバレーで、80年代からアップルのスティーブ・ジョブス、マイクロソフトのビル・ゲイツ、あるいはオラクル、最近はグーグルのセルゲイ・ブリンにラリー・ペイジが著名です。彼らはみんな、新しい事を考えて起業したのは学部の時代です。このレポートで言っているのは、ドクターの学生を一生懸命に育てましょう、それでイノベーションが生まれてくるのではないかという期待感を持っています。しかし、このことは、今、主査がおっしゃったように、グローバル・コンペティションの中でそんなにのんびりしていていいのかという問題を提起します。
 先ほど、元村委員が仰っていたように、はみ出し人材というのは、もう20歳以前からものすごいことを考えている可能性があるのです。それをむしろどうやって見出して育て上げるか、ここがやはり非常に重要だと私は思います。
 ただ、イノベーションは、グーグルの場合には特にそうだったのですが、セルゲイ・ブリンもラリー・ペイジも、彼らがビジネスモデルを考えて、最初に提案したのは1995年なのです。ところが、彼らが最初にやったのは、世界で本当に著名な数学者を2人採用して、彼らに課題を作らせ、それに対して正解をした人たちを面接して、週に2人ずつ採用するということをやったのです。ですから、今の優れた検索エンジンをつくった人たちは、実は、ドクター出身の人なのです。
 つまり、創業者はドクターではない、もっと若い人たちなのですが、そのシステムをつくり上げているのはドクター集団の数学者たちです。だから、その現実をはっきりと認識して、科学技術とイノベーションの概念を分けて考えた方がよいと思います。科学技術は、あくまでも科学技術であり、イノベーションというのはまた違った仕組みであるのだと考えることが必要だと思います。

【丸本委員】
 私の話はちょっと話題が違ってくるかとは思います。きょうは、イノベーションに関する大学院の問題と、それから緊急の課題についての議論がほとんどだったと思います。皆さんの議論は本当に全くそのとおりで、大学も今、大学院の質の問題、実質化の問題、皆、取り組んでおりますが、いろいろ問題がございます。それはそれとしまして、今日はほとんど議論が出なかったのですが、科学技術の基礎学力強化とイノベーションの中で、初等・中等教育の課題が記載してあります。ここをもう少し強化していかないと、長期的な視点からは、本当の科学技術の人材育成はできないのではないかと私は思っております。
 その中の項目ですが、スーパーサイエンスハイスクールというプロジェクトがありました。私は実はその委員を数年やらせていただいたのですが、高等学校では大変な成果が上がりました。ところが、当初はプロジェクトを3年やったら終わりということで、高校側は継続を強く望んでいました。こんなことでは本当の人材は育成できないのではないかと思います。今日もこの資料の中に「拡充」とか「充実」とか書いてありますので、出来ることなら、これを10年スパンぐらいで考える。それから、ある選ばれた高校だけではなくて、ほとんどの高校にこれを取り入れるぐらいのことをしないといけないのではないかと私は思っております。これはむしろ文部科学省にお願いすることかもしれません。そういうことが、やはりもっと中長期的なスパンで考えたときに非常に重要ではないか。
 それから、これは大学院部会でご紹介があったのですが、博士号取得者の方たちを小中学校の教員として特別に採用して、理数系の先生方のサポートや、授業をやるというようなことを、秋田県の教育委員会で行われています。ところが、「高額な給料を払わなければいけないのでたくさん雇えない」と仰っていましたが、こういう試みを、やはり全国的な事例として進めていけば、ドクターの方も就職ができますし、今までなかったような新しいシステムを、初等中等教育でも取り入れていく必要があるのではないかと思います。

【柿田計画官】
 先ほど東委員からご指摘があった「科学技術・イノベーション」の概念ですが、科学技術政策、これは科学技術を振興するための政策として引き続き重要なものでありますが、やはり、今後の政策を考える上で、科学技術をベースとしたイノベーションの創出をも念頭に置いておくことが大事になると思います。科学技術をベースとしたイノベーションを進めていくに当たって、従来の科学技術政策では取り組みが弱い部分、例えば規制等の隘路への対応がありますが、それをイノベーションのために必要な政策と捉え、研究、開発からイノベーションを通じた社会における価値創造までが一連のものとして、「科学技術とイノベーションの一体化」と表現したわけですけれども、第4期科学技術基本計画では、両者を包括するような取り組みを進める、科学技術とイノベーションのための政策を総合的に進めるという意味で、「科学技術・イノベーション政策」と表現してはどうかという趣旨です。

【野依主査】
 議論の対象が多岐にわたっていますので、他にもご意見がございましたら書面で事務局にお寄せ願います。
 それでは、本日いただきましたご意見を踏まえて事務局で整理させていただきます。最後に議題5「その他」ですが、今後の本委員会の日程等について事務局から説明して下さい。

【柿田計画官】
 本日も貴重なご意見、ご議論を大変ありがとうございました。
 資料5に今後の予定を記載させていただいておりますが、次回は9月11日の16時から文部科学省で開催させていただきます。また、本日の議事録につきましては、委員の皆様に後日確認していただいた上で文科省ホームページに掲載致しますので、よろしくお願いいたします。
 また、資料につきましては、封筒にお名前を記載していただければ、後ほど事務局より郵送させていただきます。

【野依主査】
 これで閉会させていただきます。 

お問合せ先

科学技術・学術政策局計画官付

電話番号:03-6734-3982(直通)

(科学技術・学術政策局計画官付)