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基本計画特別委員会(第4期科学技術基本計画)(第2回) 議事録

1.日時

平成21年7月7日15時~17時30分

2.場所

文部科学省第2講堂(旧文部省庁舎6階)

3.議題

  1. 第3期科学技術基本計画のフォローアップについて
  2. 「科学技術・イノベーション政策の展開にあたっての課題等に関する懇談会」における議論のとりまとめについて
  3. 今後の科学技術政策に関する基本認識及び第4期科学技術基本計画に向けた検討に当たっての論点整理について
  4. その他

4.出席者

委員

野依主査、野間口主査代理、東委員、有川委員、安西委員、伊地知委員、大垣委員、大隅委員、長我部委員、門永委員、小杉委員、小林傳司委員、小林誠委員、白井委員、菅委員、冨山委員、永井委員、西尾委員、二瓶委員、本藏委員、益田委員、丸本委員

文部科学省

(大臣官房)坂田文部科学審議官、土屋政策評価審議官、川上総務課長、藤原会計課長、森本政策課長、岡文教施設企画部技術参事官、小川文教施設企画部計画課長
(高等教育局)久保審議官
(科学技術・学術政策局)泉局長、中原次長、岩瀬科学技術・学術総括官、戸渡政策課長、近藤調査調整課長、川端基盤政策課長、柿田計画官、森田国際交流官、柳科学技術・学術戦略官(地域科学技術担当)
(研究振興局)磯田局長、奈良振興企画課長、舟橋情報課長、勝野学術機関課長、山口学術研究助成課長、大竹基礎基盤研究科長、倉崎研究振興戦略官
(研究開発局)藤木局長、坪井開発企画課長、増子地震・防災課長
(科学技術政策研究所)桑原総務研究官
他、関係官

オブザーバー

相澤総合科学技術会議議員、奥村総合科学技術会議議員、今榮総合科学技術会議議員、青木総合科学技術会議議員

5.議事録

【野依主査】
 科学技術・学術審議会第2回基本計画特別委員会を開催いたします。
 まず、事務局から配付資料の確認をお願いします。

【柿田計画官】
 議事次第の裏面に配付資料の一覧がございます。このとおり机上に配付させていただいております。また、机上に参考資料、及び前回会議の資料のダイジェスト版をとじ込んだファイルを2種類用意させていただいております。不足等ございましたら、事務局までお申しつけください。以上でございます。

【野依主査】
 それでは、議題1「第3期科学技術基本計画のフォローアップについて」です。本件につきましては、科学技術政策研究所による調査研究の結果報告、並びに総合科学技術会議によるフォローアップの結果報告がございます。両方について説明していただいた後に、まとめて質疑の時間をとります。
 それでは、最初に、科学技術政策研究所の桑原総務研究官からご報告いただきます。

【桑原科学技術政策研究所総務研究官】
 それでは、第3期科学技術基本計画のフォローアップ調査の概要についてご説明申し上げます。お手元の資料1-1-1、A3横長の資料に基づいてご報告を申し上げます。
 資料の1ページをご覧いただきますと、右上のほうに12プロジェクトのリストがあります。これが、私どもが昨年度1年間かけて実施しました個別のプロジェクトの題名で、その全体まとめたものが左の黄色い部分です。大きく7つ要素がございまして、この調査の実施に当たりましては、総合科学技術会議の議員の方と事前に何を取り上げるかについて調整し実施したものです。
 なお、フォローアップ調査と称しておりますが、重点分野のそれぞれがどうなっているかは、総合科学技術会議で直接調査されるということでしたので、私どもの調査の中には入っていないことをご理解いただきたいと思います。
 まず、調査の全体像ですが、大きく7つです。1番目は、海外の政策動向。特に、最近の金融危機以降の動きに重点を置いた形で作業を進めているところです。
 2番目、3番目は、いわゆるマクロ分析になっておりまして、日本の全体的な状況、特に大学を中心とする分析を取りまとめました。
 3番目、公的部門を深掘りした研究です。
 4番目は人材関係です。人材関係につきましては多様な論点がありますが、特に博士級人材、あるいは人材のモビリティー、この辺にウエートを置いた調査になっております。
 5番目がイノベーションに関する調査で、これも多くの項目がありますが、今日はごく一部をご紹介します。
 6番目、赤でくくってありますが、先端的研究の動向という項目がございます。実はこの項目のみ実質的に2008年、2009年の2年間で実施するものです。まだ前半が終わっただけで、今日は内容をご紹介いたしませんが、ここで何をやったかが右の概念図になっております。
 社会が何を求めるかという目標系で4つほどパネルをつくりまして、何が必要かという議論をいたしました。それから、科学技術分野の専門家のほうも、従来の分野概念にはこだわらない分け方で12のナンバーパネルを設けまして、いろいろな分野の方にまざっていただいて、何ができるかという議論を積み重ねてきました。これらを踏まえまして、2009年度は、縦横を掛け合わせて、何をどう展開していくのかというある種のシナリオ、あるいは優先順位のような議論をしていきたい。こんな流れで進んでいるものです。
 最後、7番目は、これまでの科学技術投資が生み出した成果をどうとらえるかという分析です。
 では、2ページをご覧いただきまして、内容に入りたいと思います。
 最初は、マクロ分析です。ここは、高等教育、特に大学の事例をお示ししております。黄色い部分に主要な結論があります。
 1つ目は、今回、いろいろな国際比較を日米英独で実施いたしましたが、浮かび上がった論点は、国際比較をする統計にまだまだ課題が残っているということです。左下のグラフは主要国の大学部門の研究者数の統計です。左側が各国の教育統計から抜き出したもの、右側はOECDが集計しているもので、ご覧いただきますと、日米はまったく様相が違っております。今回は、教育統計のほうが実情に近いだろうということで、そちらを使うという工夫をいたしまして、いろいろな比較をいたしました。
 論点の2番目、注目されますのは、特に大学への投資、研究投資ということで、米英の伸びが著しいということです。右上の表ですが、過去10年間の比率は実質化したもの、即ちインフレ率を考慮したものです。米英は5割以上増えているということで、日本よりも随分増えていることに注目する必要があろうかと思います。
 そういう投資、あるいは研究人材を前提として、論文をアウトプットとして評価をいたしますと、日本と米独を比べますと、特に日本が劣っているということはない。ただし、高被引用論文についてはまだいろいろ課題は残っているだろう。こういうことが浮き彫りになってまいりました。
 日本の特徴を内部構造で見まして、臨床医学系とそれ以外の2つに分類したものを右下にグラフとしてお示ししております。臨床医学以外を理工農系と称しており、二分して考えたわけですが、理工農系の論文生産性は、お金当たり、あるいは1人当たりで見ましても、日本はドイツ、あるいはアメリカを上回る水準です。一方、残念ながら臨床医学系についてはなかなか伸びないということで、各国の後塵を拝しているという状況で、国内的にも理工農系と臨床医学系のギャップが大きいことが浮かび上がってまいりました。臨床医学系の研究は、生命科学研究の社会実装に向けての重要なステップですので、こういった研究機能をこれからどう環境整備し、強化していくかが大きなアジェンダかと思っております。
 3ページをご覧いただきますと、ただいまは大学全体で比較したものですが、構成要素まで見た場合に一体どうなっているのかを、データが比較的そろっておりますイギリスと日本を詳細に比較いたしました。
 まず、左下に2つのグラフが載っておりますが、統計上、短大を入れまして、日本は1,100ほどの大学があります。一方、英国は170ということで、まず数が全く違います。研究者の数、あるいは論文をどういう機関が生み出しているかということで見ますと、グラフからうかがえますように、日本の場合、上位集中度がかなり高いと言えます。これは言葉をかえれば、研究と教育という2つの文脈で見たとき、日本のほうは機能分化がより進んでいるという見方もできるかと思います。
 では、一定規模の論文を持つ、あるいは研究活動を持っている大学群をもう少し比較するために、日本は180ほど、英国は100弱の大学を選び出しました。それが下の左から3番目のテーブルです。論文数で、各国でのシェアが5%を超える大学、1~5%の大学という区分をいたしますと、第1グループは日英ともに4大学、同じになりました。第2グループは、日本は13に対して英国は27ということで、数が大分違っています。第3グループ、第4グループは、ご覧のとおりです。
 この大学群がいろいろなインプット、アウトプットデータについてどんなシェアを持っているかが右上です。研究者の数、あるいは資金、論文数、第1グループは日英とも4大学ですがシェアは、大体拮抗しており、ほぼ同じような様相になっております。大きく違うのは第2グループの規模でございます。日本では大体4分の1ですが、英国では5割ぐらいを第2グループが、インプット、アウトプットともに持っております。
 第1グループ、第2グループ、第3グループと申しましたけれども、具体的な大学はどこかというのが右中段のテーブルです。日本の特徴は、緑色の部分、これは規模は小さい大学ですが、1人当たりの論文生産性はかなり高い。日本には、こういう大学がたくさんあります。一方、英国にはほとんどありません。
 逆に、黄色い部分、第2グループで一定規模を持つ大学群が、英国は日本に比べると分厚いということが見えてまいりました。特に右下、小さい表で恐縮ですが、化学についての英国のデータをお示ししております。
 英国の場合、第1グループのオックスフォードとケンブリッジの化学の部門が使っているお金と匹敵する、あるいは上回るような資金規模を持っている第2グループの大学が6つほどあります。したがいまして、英国の第2グループというのは第1グループの縮小版ではなくて、ある部分は第1グループと拮抗、あるいは上回っており、一方、ほかの部分はもっと弱くなっている。こういう濃淡がついた第2グループが形成されているのがイギリスの大学であるということが、第2点です。
 4ページ、大学の研究環境に関する内容です。まず、研究時間を分析いたしました。研究時間のマクロ統計につきましては、文部科学省で1万人規模の大規模な調査結果が間もなくまとまります。この調査は、統計的な量というよりも、論点を抽出するという観点から実施したものです。
 2003年~2007年について、いろいろな分野でパネルをつくりましたが、どの分野でも研究時間が減少傾向にある。その減少の要因は、通常会議と言われる大学内の運営にかかわる業務が増えていること。さらに注目される点として、国立大学のみならず私立大学でも、ほとんど同じことがこの数年間には起こっているということが見えてまいりました。
 また、研究分野ごとにパネルメンバーの方々の、学生も含めた研究員の研究時間も調査いたしましたが、そこから浮かび上がりましたのは、やはり分野によって研究の対応が全く違う。グループで研究を行っているところと、個人中心で研究を行っているところは、研究時間の使い方も違いますし、コラボレーションの様相も随分違う。また、研究を支援する体制についてもかなり違っている。かなり多くの大学では、大学院生が支援業務の相当部門を担っている、あるいは担わざるを得ない状況にあるということが見えてまいりました。
 右側は、もう少し大きなスケールから、日本は東京工業大学、東京理科大学、アメリカはカリフォルニア工科大学を事例として選びまして、いろいろな観点、大学の規模から運営の方針、歴史的展開、インタビューも含めて総合比較を試みたものです。
 我々が重要だと考えましたのは、これらの大学がこれから新領域を生み出すとき、どういうメカニズムを重視し、どういう形での実装を行っているかについて、日米の大学で随分異なるということです。これがアメリカの標準かどうかは別でございますけれども、カリフォルニア工科大学の場合、大学の規模を小さく維持することを前提に、研究者間の自発的なコラボレーションを誘発する。これを基本的な原理として、組織を運営している。それによって、自発的な共同研究、あるいは学際研究が起こるようになっている。
 一方、規模の大きい日本の大学の場合、分野、あるいは学部等を超えたコラボレーションを行うための、ある種の常設組織を用意するという形で進んでおり、その辺の対応は少し異なる。問題と感じましたのは、こういう常設組織を維持するためには、それを支援するスペシャリストが必要になります。一番下に書いてあります研究者1人当たりの支援者は全体の合計で、教育も含めたものですので直接のデータではありませんが、こういう比較的高コストの組織構造を持っていて、かつ支援部門の人材が薄いところは今後の課題かと思います。
 研究支援機能を強化していくときに、研究分野毎に様相が随分違うということが明らかになりましたので、一律で強化しようとしてもやはり難しいので、その対応に応じたもの、あるいは、新領域創出にフォーカスした支援機能をまず強化していくということが、今後の一つの論点ではないかと考えております。
 5ページは、科学技術人材で、モビリティーについてのデータを幾つかご紹介いたします。これは、1万人規模の研究者にアンケートをいたしまして、過去のいろいろな履歴を教えていただき、それを分析して、時代時代のモビリティーがどう変化しているかを見たものです。
 いろいろな形がありますが、結果として、研究者の流動性は、この10年、20年の規模で見ますと、日本国内で着実に上昇している、特に、若手の流動性が高いということが見えてまいりました。海外経験との関係ですと、海外での本務経験、あるいは海外でのポスドク経験がある方の論文パフォーマンスは、そうでない方に比べて有意に高いということが見えてまいりました。ただ、いろいろなアンケートからは、やはり任期なしのポストへ異動して安定的に研究をしたい。しかし、それについてはいろいろな問題があるという論点も挙がってきております。
 博士人材が右側ですが、主要大学の2002年~2006年度のほぼ全博士修了生の追跡調査を行いました。延べで7万5,000人ほどを把握する努力をいたしましたが、その結果、ポスドクになった方、あるいは大学教員等になった方、大学を出て、直後に研究関連職についた方が約半数を占めるということが見えました。
 ただし、一つ問題だと思いますのは、約4分の1の方の状況がよく分からなくなっていることです。大学にお願いして調査したのですが、把握し切れないということで、このようなことを把握する体制を考えることが、今後、重要な課題かと思います。
 人材確保につきましては、日本とアメリカ等で比較しますと、優秀な人材を確保するために資金面、あるいは給与面等で特別な処遇をするケースが日本ではまだ少ないということで、これについてもこれからの課題ということが5ページの論点でございます。
 6ページ、イノベーション関係ですが、全体的に、我が国の大学、独法の産学連携協力は着実に進んでおりまして、共同研究の件数等は充実してきております。組織も、2003年当時は内部体制の強化に重点化されておりましたが、今は、企業を含めた外部との連携に重点が移っているという様相が見えてまいりました。それを担う個人につきましても、企業との連携をどう維持するかが課題だと考える反面、ご自身のアカデミックな研究とのバランスをどうとっていくか。そういう位置関係が難しいという様相が見えております。
 右上には先端研究施設の例がございますが、幾つかの大型研究施設について、ユーザーの調査もいたしましたが、大部分の利用企業は、組織が与えるサービスを含めて高い評価を行っておりました。ただ、機関からは、運営の資金面、あるいは人材の問題を抱えているということが問題として出てきております。
 大学発ベンチャーにつきましては、資金調達面で厳しくなっていて、公的な支援に対する期待が強まっているという状況です。
 最後、7ページが投資の成果です。まず、アウトカム指標としてのTFP分析を行いました。これはEUのプロジェクトで、国際比較が出来るような環境がだんだん整っているところです。一事例といたしまして、製造業の総売上高の上昇に対して、TFP寄与率は大体4割ですが、そのうちの3割は研究投資によるものであるという試算が出ております。また、今後、政策の連携が大きな課題ですが、太陽光発電普及のための住宅用太陽光発電の助成がどんな効果をもたらしたのかという経済学的な計算も試みました。このケースですと、普及量の半数は補助金による効果であるという試算が出ております。
 最後に、右側にありますが、大学等の研究の成果、それから政策の効果等についての資料集をつくっておりまして、お手元に2つ資料をお配りしております。この2つのブックレットで、分かりやすくまとめております。

【野依主査】
 続きまして、総合科学技術会議が取りまとめましたフォローアップについて、事務局から説明して下さい。

【柿田計画官】
 資料1-2-1及び1-2-2が総合科学技術会議による第3期基本計画のフォローアップです。
 これは、第3期基本計画が3年を経過したときに実施する詳細なフォローアップです。総合科学技術会議が関係府省の協力のもとで実施したもので、既に6月19日の総合科学技術会議本会議にて決定されているものです。
 概要につきまして、資料1-2-1の1ページで簡単にご紹介いたします。
 内容は、第3期基本計画の章立てに準じて取りまとめられておりまして、それぞれの項目に関して、データ等とともに、フォローアップ結果としての所見が記されております。この所見のポイントについて紹介させていただきます。
 まず1番目、基本理念のところでは、所見が上の右端にありますが、今後、さらに世界情勢の変化へ対応した、科学技術政策とイノベーション政策の一体的推進が求められるとされております。
 2番目、科学技術の戦略的重点化につきましては、基礎研究の推進が今後とも重要であるという指摘とともに、重点推進4分野等の分野設定については見直しの余地もあるとされております。
 3番目、科学技術システム改革では、イノベーション創出、またポスドク問題への対応等について、継続した取り組みが必要であるという所見になっております。
 このフォローアップ結果につきましては、関係府省、また関係機関が適切な改善を行いながら、第3期科学技術基本計画の着実な実行を引き続き継続していくとともに、第4期科学技術基本計画の検討に際して活かしていくことが求められているものです。

【野依主査】
 それでは、ただいまの2つの説明について、何かご質問はありますでしょうか。
 先ほど桑原総務研究官からご説明頂いた、研究のコストパフォーマンスについて、1億ドル当たりでどのぐらいの論文が出ているかというデータがありました。このようなデータは各国で cost efficiency の指標になっているのでしょうか。

【桑原科学技術政策研究所総務研究官】
 使われているケースもありますが、アメリカの場合ですと、問題意識はすべての分野でアメリカがナンバーワンであるかどうかが最優先になっていますので、優先順位は、必ずしも費用対効果が最大要素ではないのではないかと思います。

【野依主査】
 研究者社会の行動規範を決定することになるので、評価の仕方は慎重を要すると思います。つまり、このようなデータで評価をすることが、果たして大学の教育研究の質の向上に資するかどうかをよく考えなければいけません。計算すると1論文あたりいくらになるでしょうか。

【桑原科学技術政策研究所総務研究官】
 1論文あたり、2,000万円弱という計算になります。

【野依主査】
 これでは、とても国民に対して説明出来ないと思います。おそらく世界的に見て、30%か40%は一度も引用されない論文も出ています。そういう論文を一つ作るのに2,000万円の費用がかかるということは絶対に説明できません。むしろ、論文の作成がいかに教育効果があるかということを説明すべきです。よほど特別な論文は別として、ほとんどの論文は、2,000万円の価値はない。仮に、生産性が倍増して、1,000万円になっても同じ結論です。しかし、そういう研究によって、多くの人材が輩出されているということに論点が置かれるべきだと思います。
 このような評価を押し進めていくと、論文を効率的に出したほうがいいという結論になります。それは大学の教育面での活動を妨げることになると危惧します。論文の数だけを大学活動の指標とすることは適切ではないと思っております。
 第2点は、仮にこの統計に意味があるとしても、日本、アメリカ、ヨーロッパでは研究にかかるコストが違います。例えば、ライフサイエンスでは、日本で研究を行う際にはコストが非常に高くつきます。具体的に幾らとは測りかねますが、おそらく倍ぐらいはかかっているのではないかと思いますので、同じ指標で測ることは公正でないと思っています。このようなデータが出ますと、研究社会をディスカレッジすることがあると思います。

【安西委員】
 各国研究費のデータには、間接経費を含んでいるのですね。私の知る限りでは、アメリカ等の主要な研究資金の50%ぐらいは間接経費なので、直接研究費に使われている部分と、インフラ等に使われている部分の割合が日本とは違うと思います。日本も間接経費が増えてきましたけれど、全く状況は違うので全部ひっくるめ言うのはどうかという気がします。

【桑原科学技術政策研究所総務研究官】
 安西委員のご質問ですが、ここで使っている大学の研究費統計は、各国で大学が使った研究費として登録されているものを集計しております。したがいまして、財源は政府から来ているケースもありますが、民間から来たお金も全部込みで、ただ研究に幾ら使ったかだけを表しています。その中には人件費も入っておりますので、先ほどの2,000万円にも人件費も含まれています。
 それから、野依主査のご指摘については、おっしゃるとおりで、随分努力をしましたが、たとえば、各国の大学統計でも「大学病院」の扱いが日本と英国では大きく違っております。そういうところをもっと精緻に見ていかないと、実像はなかなか見えてこない部分があります。我々としてもこれから注意深くやっていきたいと思っています。

【小林(傅)委員】
 2ページ、研究費当たりの論文生産性ですが、臨床医学が非常に低いとおっしゃっていますが、この原因は推定されているのでしょうか。

【桑原科学技術政策研究所総務研究官】
 このデータから直に出てくる要因はまだありません。実は、これと並行して、いろいろな分野の先生方にもこのようなデータをご覧いただいて、ご意見をいただいています。特に臨床系の先生方から強く出ている意見は、今、大学の病院の運営等も含めて非常に環境は厳しいので、実は、多くの先生方が大して生産性が落ちていないことにむしろ驚いたとおっしゃるぐらいでした。
 もう一つは、先ほど申しました大学病院の経費がどのように入っているかについては、各国の統計ではなかなか押さえ切れない部分があります。日本の国立大学は間違いなく入っていますが、そのような比較の要素もまだ残っております。ただ、残念ながら臨床医学系については、過去からの変化率でも低下傾向にありますので、様々な問題を抱えていることは事実だと思っております。

【永井委員】
 非常に興味深いですが、要因は様々だと思います。組織形態の問題もありますし、外国と日本とで規模が全然違います。
 もう一つは、現場に張りついていても、患者さんを診ながらでも、人を対象とした研究のやりやすさが、欧米と日本とでは大きく違うと思います。日本は研究ガイドライン等の倫理的な問題への対応が、少し遅れたように思います。

【二瓶委員】
 研究支援者に関する統計ですが、私ども東京理科大学を私立大学で選んでいただいて大変光栄ですが、反面、他の国立大学、特にカリフォルニア工科大学との比較で大きな差が出るのではないかと、心配しておりました。
 一つお尋ねしたいのは、教員1人当たりの支援者数ですが、これは当然、フルタイムの職員の人数を数えたのですね。

【桑原科学技術政策研究所総務研究官】
 はい、そうです。

【二瓶委員】
 東京理科大学の研究支援者数が書かれていないのですが、多分、桁が違うのではないかと思います。私学の実態は、フルタイムの支援職員を雇うのが大変困難です。それから、先ほど野依主査からのご発言にもありましたが、競争的研究費の獲得のインデックスに、研究論文の数が使われております。一方で、私立大学は人材育成にかかわる成果がかなり大きいので、それをどうカウントしていただくのかということを機会あるごとに私は主張しております。こちらもカウントしていただきませんと、単に研究成果の指標だけで競争的資金を割り振るから、少数の国立大学に極端に偏った配分結果につながるという印象を持っております。

【野依主査】
 私もそのとおりだと思います。指標の取り扱い、評価のあり方というのは極めて重要です。

【野間口主査代理】
 政府投資が支えた成果指標と公的研究機関の冊子は、大変いいまとめだと思います。これを成果指標として作っただけでは社会的に訴える力が少し弱いのではないか。これを社会に広く発信していくことが科学技術への投資の社会的理解を高め、次のステップへ向けて、「やはり日本としてはこういうことに力を入れなくてはいかんのだ」、ということを分からしめる、非常にいい素材ではないかと思います。これは文部科学省という枠ではなくて、メディアなども取り込んだ展開策をぜひ考えていただきたい。これは科学技術政策研究所だけではなく、文部科学省全体の問題として取り上げたらいいのではないかという感想を持ちました。

【野依主査】
 それは、大学、あるいは文部科学省サイドからの発信ですね。野間口主査代理は産業界のご出身でいらっしゃいますので、お願いしたいことがあります。日本の産業界はレベルの大変高い活動をやっており、GDPも高いですが、それはこういう基礎研究の成果であるということを産業界からPRしていただけると、大学セクター、あるいは研究社会が非常に活気づくのではないかと思います。

【野間口主査代理】
 これを見てそう思いましたので、心したいと思います。

【野依主査】
 続きまして、議題2「科学技術・イノベーション政策の展開にあたっての課題等に関する懇談会」における議論のとりまとめです。この懇談会の座長でもある門永委員からご報告いただきます。

【門永委員】
 資料は3組ありまして、資料2-1と資料2-2-1、資料2-2-2ですが、説明はA4横紙で行います。A3の紙は全体像が分かるもので、まとめの冊子は資料2-2-2になっております。
 この懇談会は半年ほど前に、第4期科学技術基本計画策定の検討に先駆けて設置され、それ以来6カ月、お手元の資料の2ページにある委員の方々と、ゲストスピーカーも加えて、10回近く熱い議論を行いました。内容は、政策は具体的にどうあるべきかということではなく、第4期科学技術基本計画策定に当たって何を課題として捉えるべきか、どのような問題を解決すべきなのかという課題設定型の議論を中心に行いました。
 このコンパクトにまとめた小冊子ですが、これは各委員の意見をできるだけ忠実に反映させたいという懇談会の意向があり、座長の私からお願いして、通常の審議会の資料とは少し違うフォーマットでまとめております。かなり物議を醸す内容も入っておりますし、言葉が乱暴なところも少しあるかもしれませんが、是非、この冊子で設定した課題で本委員会で物議を醸して、議論をする材料に使っていただければと思います。
 後の2ページを使ってご説明します。
 3ページ目ですが、4つの大きな矢印と真ん中に楕円が書いてありますが、楕円の中を見ますと、「今後の科学技術・イノベーション政策の方向性?」とあります。とかくこういう集まりをしますと、政策そのものについて皆さん意見を述べ始めて、具体的な話に入ってしまうのですが、それは止めようではないか、せっかくの懇談会なので、もっといろいろな、自由な意見を出そうということになり、楕円の中身ではなく、楕円に対していろいろと働いている力は何かを最初に議論しました。それが4つの矢印ですが、3つのグローバルのトレンドと、右側の1つはローカルの、日本にとってのチャレンジです。
 左側のグローバルのマクロトレンドを見ますと、最初にグローバル化とございます。グローバリゼーションというのはもう何年も言われている話ですが、質が大分変わってきているのではないか。ある時期までは、世界のアメリカ化というか、アメリカナイゼーション・オブ・ザ・クローブというのがグローバリゼーションと同義語だったのですが、最近は違うのではないか、やはりリーダーシップが多極化しているだろう。これは一つ見逃せないトレンドだと思います。
 それから、世界の人口は65億人ですが、そのうちの25億人近くを占める中国とインド、これだけの人口がありますと相当なパワーを持ちます。市場としてのパワーもあるし、人材輩出もありますし、生産能力も技術もあります。これは、もう無視できないパワーである。最終的には、やはり人口の大きいところがパワーを持つというのは当たり前だろうと思います。
 その下にあります地球温暖化とか、天然資源の逼迫による制限、それから先般の新型インフルエンザに代表されますようにパンデミック、これらへの対応は待ったなしでして、これもグローバルトレンドとしては見逃せない話です。これらが一つのくくりです。
 2番目は、産業構造の変化です。これは、どちらかというと下流のイノベーションの出口に近いほうの話なのですが、ここでも幾つか大きな変化が起きています。1つは、プレーヤーが二分化している。モジュール化が進んでいますので、モジュールを効率よく世界のどこかで作っているプレーヤーもいれば、全体をオーケストレートして、グローバルスタンダードも取ってしまうプレーヤーもいる。このような二分化が以前よりもはっきりと起きています。
 次の、製品開発・知財・標準化戦略・事業モデルですが、いい製品、いい技術を作るだけでは、やはり競争力になかなかつながらない。知財、グローバルスタンダードを取る、それから事業モデルを一体化して取り組まないと競争力につながらない。このような大きなトレンドがあるというのが2番目の産業構造の話です。
 3番目は下の矢印ですが、欧米の研究開発、科学技術政策のグローバルトレンド。インドの話も中国の話も聞いたのですが、やはり現時点で進んでいるのは欧米です。一言で言うと、イノベーションにしてもサイエンスにしてもオープン化が急速に進んでいる。その結果、特にサイエンスに関しては公的研究機関に求められる役割が増大しています。もう一つ大事なことは、サイエンスからイノベーションまでつないでいくと、その先には事業化があるのですが、その仕組みを官民一体で作っている例が欧米には見られました。この辺は世界的な大きな流れであり、しかも日本にとって学ぶべきところがあるのではないかという議論でした。
 最後に、日本にとってのチャレンジです。日本の文化的なところにも根ざしますが、バウンダリーを決めると、そこを深掘りしていって完璧にしていくのは日本人は得意です。それも引き続き必要ですが、それだけではグローバルの競争力にはつながらないようになってきた。グローバルのレベルで、オープンで協業する。下請に出すのではなくて、お互いにやりとりしながら中身を高めていくという協業は日本の少し不得手なところで、ネットワークも不足している。これは語学の問題もあると思いますが、これらは日本にとって一つの大きなチャレンジです。
 それから、せっかくいい発見シーズ技術が出ても、最終的にそれが社会貢献につながる、もしくは普及していくにあたって、いわゆる「死の谷」があって、これを超える仕組みが弱くて、そこで落ちてしまうものも多い。こういう議論をいたしました。
 以上の整理をした上で、このようなフォースに囲まれた楕円の中では、どのような課題を検討したらいいかという形で議論しまして、それが最後の4ページです。
 全体的な話と個別の話があるのですが、全体的には、やはり競争力のモデルが昔とは大分変わってきて、しかも多様化している。その認識が必要です。ここでは議論の枠組みがかなりイノベーションを意識した話になっています。プロセス的なイノベーションとか、垂直統合で競争力をつけていくといった領域は今後もあると思いますが、やはり、今トレンドになっているのは、新技術とか、新しい製品開発で引っ張るプロダクトイノベーションであり、垂直ではなくて水平分業、もちろん発明、発見にとどまらず、社会的に普及する仕組みも一緒に考えなくてはいけない。この辺は、いろいろな形の競争力モデルが存在しています。これを認識した上で、日本が科学技術創造立国を実現するにはどういう方向づけ、どういう仕組みの構築を行っていく必要があるのか。ここに答えが欲しいです。これが全体的な話です。
 個別の話を幾つかしますと、既に日本が競合優位に立っている分野があります。非常に基礎的な研究や、一部、要素技術分野などです。これから優位に立てる可能性のある分野を生かして、これをグローバルレベルの競争力につなげていくにはどうしたらいいか、「イノベーションをどう実現するか」と書いてありますが、サイエンスと読みかえても同じことです。グローバリゼーションの競争力をどのようにつけていくか。
 オープン化という話も随分聞いていますが、それもよく見ていくと、単にアウトソースしてしまうのも一つのオープン化ですし、また、競争的なものと非競争的なものを分けて、非競争的なところはソーシャルクローズだけれども、競争的なところはオープンになっているとか、使い分けというのは様々です。
 2番目は、サイエンスからイノベーションにつなげていく仕組みをどのように設計するか。特に、基礎的なサイエンスにおける官と学の役割分担、もう少し下流のほうで、死の谷を超えるために産、ベンチャー、学、官の個々の役割と連携をどうするのかに関しても答えが欲しい。前回のこの委員会で、「死の谷を越えるのはベンチャー任せではいけない。実際そうなっていない」というご意見もありましたが、このあたりの役割分担の話です。
 3番目は、サイエンスとイノベーションの出口をどのようにイメージしていくか。これは、かなり侃々諤々の議論になりまして、イノベーションの出口については比較的イメージしやすい。つまり、出口が見えていて、そのためのイノベーションは何かというアプローチはわかりやすいのですが、サイエンスとなると、いろいろな意見が出ました。サイエンスの出口を決めて、マニュアルチックに研究をしていくのは本末転倒である。それはもっともだと思います。一方で、自由研究をしたときに、やっておられる研究者の人が、出口はどのようになるのかというイメージを語ったり、議論するというのは、やはり必要なのではないかという意見も出ました。
 このような課題に答えていくと、おそらく人材の問題が出てくるだろうというのが4番目で、国際社会の中で伍していける人材を、英語の話も含めてですが、どのように育成していくか。
 最後に投資ですが、課題エリアごとの投資というのは当然あると思います。低炭素革命や、パンデミック、医療、エレクトロニクス等あると思います。それらの他に、例えばサイエンスとイノベーションをつなぐための仕組みを考えたときに、相当投資をしないと仕組みはできないので、何にどう投資するか。ハードウエア、箱モノだけではなく、ソフトの方、特に人材を育てるための投資は相当真剣に議論をする必要があるのではないか。どういう答えを出すのかがここでの課題設定です。
 最後に付け加えますと、実は議論の中では課題設定だけではなく、答えの議論も少しいたしました。ここには書いていなくて、小冊子のほうに例として入っています。例えば、科学技術・イノベーションの切り口である、ビジョンや、ロードマップ、俯瞰図といったものに関しては、現在のところ複数の政府機関・民間機関が独立して作って議論しています。ただ、それはあくまでも独立していて、共存、併存しているんです。それから、産学官の連携に関しても、様々な新しい試みはあるのですが、昔ながらのものもある。やはりグローバルとオープンというキーワードを考えたとき、結構見直しが必要なのではないか。
 以上のような議論をみんなで集まってオープンにする場、それを政策に反映していくような場を、仕組みとしてつくる必要があるのではないか。当然、産官学、ベンチャー、科学者の人も、研究者の人も、企業家の人も集まって議論をして、それを共有化して、そこから政策を作っていく場を作るというのも、一つの答えのイメージではないかという話もしましたので、つけ加えさせていただきます。

【野依主査】
 それでは、今のご説明にご質問ございますか。

【東委員】
 2つほど意見を言わせていただきたいと思います。
 1つは、日本型の垂直統合モデルというか、囲い込み型とも言えるイノベーションのタイプは、自分が発明したり、技術を生んで、最後に事業化までもっていこうとする。サッカーに例えると、ボールをトラップしたら、ドリブルして、最後にシュートする。何人ものバックスをかわさねばならない。死の谷を越え、ダーウィンの海を渡っても、ゴールはめったに決まらないのです。この例えのように、技術を生むプレーヤーと事業化するプレーヤーとは異なる人材です。発明したり、技術を生む才能は、最適な技術をうまく使って事業化するのとは違う才能だと思います。日本では、せっかく技術を生んだから最後まで自分でやるんだという精神が浸透しているので、グローバルの概念とのズレが生じているのではないかという気がします。
 もう一つは、オープン化についてです。オープンイノベーションと呼ばれているのは、組織をベースにしたシステムです。つまり、自分のところにコア技術があって、足りないものは補完して、うまく組み合わせてやりましょうということです。でも、このやり方では今後、スピード争いに勝てないのではないか。
 今後のイノベーションのトレンドは、徹底したネットワーク化だと思います。ですから、個人の研究者がネットワークに自分の研究成果を出し、それに対して興味を抱いた世界中の研究者達からアクセスがあり、研究が各所で始まる。要するに一つの技術に対して圧倒的な人数が急に研究を始めることが起こり得るんです。組織を越えたコミュニティが形成される。そのような徹底したネットワーク化が進んだときに何が起こるかを予測したシステムを考えておかなくてはいけない。その時にIP、特許はどうするか、組織と個人の間での契約方法を新たに設定する必要がある。その結論を早く出して、ネットワーク化という世界のトレンドに絶対に遅れないようにしていかなくてはいけない。

【長我部委員】
 4ページのところで、サイエンスとイノベーションという書き方があるのですけれども、サイエンスとテクノロジーといったときに、定義をどう切るかなんでしょうけれども、サイエンスを物の真理を探求したり、基本原理をつくるという行為として、テクノロジーはそういった知見を生かして、ある目的のためにアーキテクチャーなり、物なりをつくり込むといったときに、ここの議論は、イノベーションにサイエンスをつなげるという議論なのか、それともテクノロジーというのはイノベーションとほぼ同義語に使っているのか、そのあたりをお伺いしたいんですが。

【門永委員】
 明確な定義の議論はしていなくて、イノベーションといったときはかなり幅広くとらえた上で議論をしていました。ですから、イノベーション・イコール・テクノロジーということにはならないと思います。私の個人的な感じでは、サイエンスから始まって、そこから技術、テクノロジーが出て、イノベーションというのはもっとビジネスモデルまで含めた幅広い概念でとらえております。

【長我部委員】
 どうもありがとうございました。私は、サイエンスからテクノロジーが生まれるというよりも、テクノロジーがサイエンスをどう使うかではないか、という逆の感じがしました。基礎研究をやっている人にテクノロジーを出してくれと言うのではなくて、テクノロジー側がサイエンスをどう使い回す問題かという気がしましたので、コメントいたしました。

【冨山委員】
 コメントなんですが、今、オープンイノベーションの話がありましたが、日本の企業社会の文化特性を考えたときに、実は日本は、民同士で自発的にオープンイノベーションが起きるというシリコンバレー型になかなかならないんです。会社間・産業間の壁が非常に高い社会になっていて、これはある種のパラドクスなのかもしれませんが、オープンイノベーションをやろうとしたときに、政府の役割が極めて重要な国でありまして、公が器を用意すると、割と人が胸襟を開いて乗っかってくるという構造が現実にはあるので、今後、政策を考えていく中で、そういった日本の社会特性はどうしても無視できないだろうという気がしました。
 それから、イノベーションの領域というのは、基礎から応用の世界というか、まさに死の谷の境目のところなので、いろいろな部分でいろいろなものが交錯する領域になると思いますが、特に資金面の部分で私が思っていることを申し上げると、これは官のお金と民のお金が接する局面になるわけです。最近まではやっていた新自由主義的に言うと、民のお金は常に規律が働いて、立派なお金で、官のお金はいい加減みたいなところがあるんですが、そこまで民を買いかぶらないほうがよいと思います。私がその接点で仕事をした観点で言うと、この接点において、正直、特に事務系の民の人間は何を考えるかというと、安い資本コストの官のお金をうまくもらえないかと普通考えるわけです。
 やはりここに一つの緊張感というか規律があるべきで、その観点からすると、先ほどのフォローアップのところで、先端融合領域イノベーション創出拠点の形成のところに出ていますが、この前、某新聞か何かで叩かれていたんです。それを見ていて、私、産業再生機構の時代に、当初、同じ新聞社に叩かれたことを思い出しました。私どもの場合は結構厳しくやったので、すごく一部金融機関に不評を買ったんです。彼らは使い勝手が悪いと言っていたのですが、官のわりにはディシプリンをきかせて、要は形式基準を満たしていても、実質的に駄目なものは駄目だと蹴飛ばしていったのです。そうすると、使い勝手が悪いと不評が出て、必ず悪口を書かれるんです。その意味であの様に叩かれているのは先端融合がちゃんと規律を働かせてやっている証左のように思います。
 この領域というのは、そうやってまさに官民がかかわる領域であるがゆえに、かつ納税者のお金ですから、本来の産業化する上でのディシプリンが非常に大事な領域で、その観点からするとお金をどういう感覚で使うのか。先ほどの懇談会レポートにもありましたけれども、投資という言葉はまさにそのとおりで、やはり投資として使うということが、仮に官のお金だとしても、感覚としては大事だと思います。投資として使うからこそ回収がい然が重要で、だから先ほどの先端融合のケースは回収見込みがないから途中で切ってしまうわけですよね。投資だから正しく切るわけで、最初からあてがえぶち予算だと最後まで使い切ってしまうという論理が働くので、そこをぜひ考えていただきたいと思います。

【野依主査】
 私から一つお伺いしたいと思います。今、グローバル化社会であることは間違いないわけです。日本では、STIのうちSの部分は相当いい成果が上がっていて、これに対して外国のI、つまり、外国の企業、あるいは、その他のセクターが関心を持つところが非常に大きいと思います。先ほどのお金の面ですが、おそらく国内のことを議論されていたと思いますが、ナショナルインタレストと、グローバルインタレストの問題をどのように考えますか。
 今、私のいる研究所でも相当いい基礎研究をやっております。この成果に対して国内で食指を動かす企業は少ないですが、世界的には相当魅力を感ずるところがあるようです。この問題を国としてどのように考えるのか。どんどん成果を世界に展開すべきでしょうが、一方で、国税を使っていて、なぜその成果を外国に持っていくのかと反対する日本企業が相当います。私は、グローバルインタレストがあれば、そのうちの幾らかがナショナルインタレストとして戻ってくると思っていますが、守旧的な産業界の方にはなかなかご理解いただけない面があるように思います。

【泉科学技術・学術政策局長】
 私も野依主査がおっしゃったような感覚を持っています。研究成果がダイレクトに、すぐに日本の国益に直結するということではなくても、グローバルに見たときに全体的に役に立つということであれば、そのことは日本にとって広い意味での国益になると思います。個々にはいろいろと判断しなきゃいけない場面はあるとは思いますけれども、基本的にはそういうスタンスで、大げさに言えば、成果が広く人類全体の、例えば福祉とか幸福に寄与することが、ひいては日本の国益になると考えるべきではないかと思います。

【野依主査】
 日本は世界から信頼される国になるという方向で考えていけばいいということです。

【野間口主査代理】
 総論としては局長がおっしゃったとおりですし、野依主査のご指摘のとおりなのですが、例えば知的財産などに関して言えば、知財ポリシーというものを研究所としても国としてもしっかり考えるべきです。人類のためになるからと安直にやるといろいろ問題がある。アメリカやヨーロッパは、そういう基本になる考えは非常にしっかりしておりまして、国際貢献というのはこういう考えでやろうと。やった上での透明性というのは非常に高い形でやっていますから、そこは日本は若干遅れているのではないかと思っております。

【野依主査】
 その点が明確になっていないように見えましたので、お伺いしたわけです。

【泉科学技術・学術政策局長】
 言葉は悪いのですが、何でも垂れ流しでいいということではありません。個々のケースによっていろいろと判断すべきことはあると申し上げたのはそういう意味もあります。例えば知財の問題についてはきちんと権利を確保するなどといったことは当然やらなければいけないと思います。

【永井委員】
 それに関係して、サイエンスをどう考えるかということもやはり議論が必要だろうと思います。サイエンスというと、つい基礎的なサイエンスと考えがちですが、ここにも記載されているように、自然の摂理だけではなくて、もっと問題解決型のサイエンスであるとか、人を幸せにするサイエンスとか、そういう研究があってしかるべきですね。それは真理の探求なんだけれども、現場に根ざした真理の探求という、その辺を整理して議論する必要があるのではないかと思います。

【菅委員】
 サイエンスがあって、イノベーションがあるというお話がありましたけれども、おそらくその間にインベンション(発明)があると思います。発明の前には、大体発想の転換があるんですが、カリフォルニア工科大、東工大、東京理科大の大学研究環境の比較のときにあったように、アメリカの大学というのは、基礎研究を含めた発想の転換のとき、基本的に機動力を非常に重要視している。先端というのは、みんなが追いついたときには先端ではなくなるという理念があるがゆえに、そういう機動力を重要視していると思うんです。
 日本の大学は、そこに書いてありますように、どちらかというと常設組織をコアとして、大規模で、かつ長期的なプロジェクトで運営するのが共同研究的な発想と、大体そういうふうに運営されていると思います。それでは結果的に機動力は生まれないというのが欠点である。今後、我々がもしサイエンスからインベンションをどんどんつくっていきたいと思ったとき、どちらを選択していくのがいいかというのは、はっきりと指針を出す必要があるのではないかと私は思います。
 私の経験でいいますと、インベンションからイノベーションに移行するとき、ビジネスモデルを含めたことを考えるのは、当然、研究者、私のような人間では全くできないという状況に陥るんですが、そのときに助けてくれる人材が極めて少ない。私もベンチャーを作ったんですが、その時に社長を探すのに非常に困りました。企業を退職された方を採ると非常に給与が高い。貧しいベンチャーでは当然出来ない状況です。それを理解した上で、安い給料でも一緒に夢を求めましょうという人を探すのは非常に難しいというのが、日本でベンチャーがうまく回らない理由の一つではないかと思います。
 したがって、イノベーションにつなげるときに、ベンチャーにするのか、もしくは既存の企業と共にするのかはいろいろな流れがあるでしょうが、新たな人材の発掘、育成を長い目で見ていく必要があるのではないかと思うんですが、如何でしょうか。

【丸本委員】
 私も、今、菅委員がおっしゃったことと同じ体験をしております。実は大学の先生方というのは、研究や、何かを発見するところは一生懸命やれるんですが、それをイノベーションまで持っていくことは、ほとんどの先生ができないと思っていいと思います。そこをつなぐために、各大学では知財本部だとか、コーディネーターも配置したりしてやっているんですが、プロジェクトが大きくなればなるほど人材不足になります。私の関係しております山口県でも、白色LEDを使った知的クラスターを5年やって、今度はポストクラスター、6年目が新たに始まるわけですが、そのプロセスで、今、菅委員がおっしゃったことを本当に体験しました。
 そして、大学の先生方と関係する企業も、知財との絡みでどうしても成果や情報をすぐには出したくない、ということが必ず出て来ます。成果が出てくれば出てくるほど、それを止めようとする。こういうプロジェクトは何も日本だけでやっているわけではありません。日本の他の企業にも競争相手はおりますが、世界中でやっています。やはり知財をしっかり確立して、間違いなくやってからでないとオープンにできないという問題があって、成果は出したいのだが、急いでは出来ないというジレンマがいつもありました。
 似たような話は他にもあるようです。今、我々はイノベーションに関する各種の課題について体験しているプロセスかと思います。しかし、この体験は必ず生きますから、ぜひこれらの課題を、産学官と行政、政府も含めて研究開発をイノベーションまで結ぶプロセスをシステム化していくことが最も重要ではないかと感じております。

【野依主査】
 これは大変大事な問題であります。いろいろなご意見をいただきましたので、本特別委員会において今後の検討に活かしていきたいと思います。
 次に、議題3「今後の科学技術政策に関する基本認識及び第4期科学技術基本計画に向けた検討に当たっての論点整理について」でございます。事務局から説明してください。

【柿田計画官】
 前回の会議におきまして、今後の科学技術政策に関する基本認識として、科学技術を取り巻く諸情勢の変化と、これまでの科学技術政策の主な成果・課題を概観した上で、我が国が科学技術の政策目標として、中長期的に目指すべき国の姿についてご議論いただきました。本日は、前回の議論等を踏まえ、目指すべき国の姿についてさらに検討を加えましたので、それについてご議論いただくとともに、目指すべき国の実現に向けて、第4期科学技術基本計画で求められる基本姿勢についてご議論いただきたいと思います。
 資料3-1をご覧いただきたいと思います。スライドを上下にコピーしており、ページが上下にわたっておりますが、ご了承いただきたいと思います。
 まず、1ページから7ページまでは、前回の会議での資料と同様ですので、説明は省略させていただき、8ページからになります。先ほどのフォローアップ調査にもありましたが、第3期科学技術基本計画で示されている3つの理念、すなわち「人類の英知を生む」、「国力の源泉をつくる」、「健康と安全を守る」という理念は適切なものでありますが、昨今の国や科学技術を取り巻く諸情勢の変化は、第3期科学技術基本計画策定時には必ずしも想定されていなかった劇的なものであり、今後の世界の中での我が国の役割、立ち位置等を改めて検討し、将来のあるべき姿を描き、それに向かって科学技術が果たすべき役割、目指すべき方向性等を新たに示す必要があると考えられます。
 そこで、科学技術の政策目標として目指すべき国の姿の案として、8ページの中ほど、一つ目として、地球や人類のサステナビリティーの観点から、イノベーションにより課題解決を先導する国であります。日本が他の国と同じような困難を共有しつつも、その解決に先導的な役割を果たすという姿勢です。
 続いて二つ目として、我が国が直面するさまざまな制約がある中で、それらを克服し、発展するための世界のモデルとなる社会像を掲げ、制約を克服し、国としての強みや競争力を保持し、成長、発展する国であります。
 三つ目は、科学技術が社会、国民生活に対して安心、安全、健康等といった面から貢献し、社会や国民生活のレベルで質の高さを誇りとする国であります。
 四つ目は、科学技術の最先端を追求し、人類の知の資産を創出し続ける国であります。
 五つ目は、共通的、基盤的な視点ですが、科学技術創造立国として科学技術の営み自体を、いわば文化として社会に根づかせ、発展、継承していく国であります。
 以上を、科学技術政策の視点から、目指すべき国の姿として掲げてはどうかということです。
 これらを、科学技術・イノベーション政策において上位に位置する政策目標として位置づけ、その下で日本の将来像を見据えて、その実現に向けて必要となる施策や研究開発課題、あるいは目標設定を上位目標と関係づけながら組み立て、計画全体として一貫性のあるものとしていくことが必要であると考えられます。
 次に、11ページですが、以上の目指すべき国の実現に向けて、第4期科学技術基本計画に求められる基本姿勢です。
 まず、11ページから12ページにかけて、従来の科学技術政策のみならず、科学技術以外の政策で関連する制度や施策とも関連、連携して、イノベーションにより社会ニーズ等を踏まえた課題解決などを実現していくために、科学技術政策とイノベーション政策を一体的に推進する科学技術・イノベーション政策への転換であります。
 次に、13ページですが、達成すべき政策課題の設定等におきまして、社会や国民の課題、ニーズに応えることが重要になる。さらには、これらの政策がより責任のある形で実施され、国民、社会の支持のもとに推進されるために、社会とのかかわりを一層強めていくという視点から、「社会とともに創る」科学技術・イノベーション政策の実現であります。
 3つ目に、14ページですが、今後の政策を確実に推進していくためには人材が極めて重要であり、一人一人の能力を高めて、多様な場で活躍できる、優れた人材を育てていく姿勢を一層明確にすべきであります。第3期科学技術基本計画における「モノから人へ」との姿勢を維持、強化して、人を重視した科学技術・イノベーション政策の強化を掲げてはどうかということです。
 以上の3点が基本姿勢の案です。
 15ページ、16ページでは、これらの位置づけを概念的に図示しております。
 なお、18ページからは参考資料として添付しておりますが、前回の基本計画特別委員会におきまして、野依主査より、「今後の中長期的な科学技術政策を検討するに当たっては、20年後のリーダーたるべき現在の若い方々の意見を聞くべきである」というご意見を受けまして、20ページの日程及び内容、また21ページの若手研究者を中心に、本日はご欠席ですが、東北大学の原山先生にファシリテーターをお務めいただき、合宿形式での懇談会を実施し、今後の我が国の科学技術のあり方等について議論を行いました。本日は、時間の都合がありますので詳しくは紹介しませんが、この懇談会で出された若手研究者からの意見をまとめさせていただいておりますので、ご覧いただければと思います。
 今回は、研究の第一線で活躍する優れた若手研究者の方々と、我々政策担当者との間で政策対話を実施しました。限られた時間ではありましたが、密度の濃い、また双方にとって意義のある試みであったと考えておりますし、出された意見につきましては今後の検討に活かしてまいりたいと考えております。
 続きまして、資料3-2に、今後の検討に当たっての論点整理をまとめておりますので、ポイントにつきましてご説明いたします。
 まず、ローマ数字1、基本認識につきましては資料3-1でご説明した部分になります。
 ローマ数字2以降が、今後、本委員会でご議論いただく個別事項についての論点として整理したものです。
 まず、研究開発における戦略的な投資に関して、2ページですが、基礎科学力の強化とともに、政策課題に基づく研究開発の推進に向けてどのように重点化を図っていくか。また、人材の問題につきましては、先ほどの基本姿勢にもありましたが、第4期科学技術基本計画において重点事項として取り組んでいくべき事柄であり、大きな項目の一つとして掲げております。
 3ページ、国際活動の関係につきましては、国際社会における日本の役割を考慮した科学技術の国際戦略が必要になってくるということと、海外のすぐれた研究者を受け入れるための周辺環境の整備や、海外動向の収集、分析などの基盤の強化について検討が必要と考えられます。
 4ページからはシステム改革の問題で、イノベーション創出の観点からのシステムや制度の改革について述べています。
 5ページから6ページにかけては科学技術・イノベーションの主たる担い手である大学、研究開発型独立行政法人の機能強化、研究を取り巻く人的、物的両面からの環境整備の問題です。
 7ページには、「社会とともに創る」科学技術・イノベーションの実現に向けて、国あるいは政策の側から国民、社会へのコミュニケーション活動を通じた一方通行ではなく、双方向での関係強化に向けた取り組みについて検討が必要であると考えられます。
 8ページには、科学技術・イノベーション政策の推進に向けた体制のあり方、最後に25兆円に続く政府研究開発投資目標に向けた検討が必要と考えております。

【野依主査】
 それでは、基本認識に関しての議論を行い、それを踏まえて論点整理を行うという順序で審議を進めたいと思います。基本認識につきましては20分程度、論点整理につきましては50分ぐらい時間をとりたいと思います。また、出来れば、その間に休憩をとりたいと思います。
 まず、資料3-1の基本認識について、ご意見のある方はお願いします。

【大隅委員】
 大変いろいろな問題がある中で、このようにまとめていただいたこと、大変ありがたく思っております。
 第3期科学技術基本計画の頃からこのようなことに関わってきましたが、特に第3期科学技術基本計画策定の時に「モノから人へ」というキャッチフレーズが出て、それに関する様々な施策も立ってきたことは実感としてありますが、それが実際にどういった成果・アウトカムにつながったのか、見えてきていない部分が多々あると思います。人を重視した科学技術・イノベーション政策の強化というのは、第4期科学技術基本計画において非常に重要なポイントになると、私自身は認識しております。
 この書き込みや、論点整理のところにある、次世代のところですが、若い世代をどう育てていくのかが、日本の長期的な科学技術・イノベーション政策を考えていく上で非常に重要なのではないかと思います。つまり、先ほどの門永委員のお話にも出てきた、例えばサイエンス、イノベーションの出口を、小さな子供が、具体的な出口ではないにしろ、自分たちの未来として一体どのように描けるのか、そのイメージを持てるかどうかは非常に大事なことだと私は思っています。要するに、学校の勉強があり、入試があり、試験をクリアしなくてはいけないから、とにかく勉強している。その中に、理科や社会や算数がある。そのような形ではなく、学んだことは自分たちが大人になったときに社会で生かされるものであって、自分たちが新しい社会を作っていくんだという気持ちを子供たちが持てないと、人材としては枯渇するのではないかというのが一点です。
 もう一点は、イノベーションの中にグローバル化がすぐ出てくるのですが、今回も世界各国と協調、協力しつつというところに関する人材の話ですが、1つは、留学生にしろ、ポスドクにしろ、日本でいろいろな人材を育てて、日本は科学技術をする人材を育てることで世界貢献をするという考え方こそが、とても大事な、一番平和な形での貢献なのではないかと、私は思っております。そのために、単に人材を流動させればいいということではなく、いろいろな世界の中のリーダーを日本で育てるのだ、というぐらいの気持ちを持った、施策につながる基本計画になってほしいと思います。

【野依主査】
 私もそのとおりだと思いますが、その話は今の内容を超える大きな問題ですね。柿田計画官、何かありますか。

【柿田計画官】
 資料には個々には書き切れていない部分もあるかと思いますけれども、趣旨としては、まず今後の日本を考えた時にどういう国であるのか。世界の中で特徴を持った国を作っていくことが大事だと思っています。その特徴は何かと言ったときに、これだけ科学技術が発展した国として、世界に科学技術で貢献することが一つであろうと思います。また、それは国際的な社会に貢献するとともに、国内的にも質の高い社会、あるいは生活を実現していくことだと思います。
 世界に貢献するという中で、基本理念のところに人材と掲げておりますが、人材が非常に重要な要素になると思います。世界のリーダー育成の観点では、既に環境リーダーの育成プログラムも始まっていますが、そういった取り組みをさらに強めていくことが非常に大事なことかと思います。

【泉科学技術・学術政策局長】
 ここは、科学技術・イノベーション政策と言っていますので、そこを超えるかもしれないというお話でもあったと思いますが、確かに大隅委員のご発言はここを超える部分もあると思いますが、そのようなある種の上位概念、超える部分も見ながら、どのように構築していくかという問題だと思います。最後にどのように書くかという問題にはなると思いますが、それは単に書くということではなく、書くことを通じてどういう物の考え方があるかを知ることが重要だと思います。今、計画官が答えた以上のことはすぐには言えないんですけれども、やはり科学技術とか、科学についての日本の未来、野依主査はよく若い人のあこがれとおっしゃいますけれども、そういうもののイメージを若い人や子供が持てるような科学技術のあり方を、こういうものを通じて打ち出していければいいと思っています。

【野依主査】
 この問題は、国がナショナルビジョンをきちんと示すということと、若い人たちが世界を見て、自ら志を育むことも大事ではないかと思います。国がこれを決めれば若い人たちが育つ、それだけではないと私は思います。

【門永委員】
 関連した質問を柿田計画官にさせていただきます。
 人材を重視した計画にするというのは私も大賛成で、先ほどの懇談会でも随分議論された話ですが、人材に投資となったとき、対象は日本人に限定されるのですか、それとももう少し幅広く考えるのですか。

【柿田計画官】
 日本人に限定されるべきではないと思います。少し議論が必要かと思いますが、先ほども触れましたが、世界の環境リーダー育成というのは、海外の、特に途上国で環境問題に直面している国の人材育成を日本がやっていくということで、取り組みがもう既に始まっているところです。今後、日本がどういう形で世界に貢献するかを考えたとき、やはり国内的な狭い視野で日本人だけということではなく、いろいろなケースが多分あると思いますが、国際的に貢献するという一連の流れの中で、外国人の人材についても育てるという政策、施策があってもいいのではないかと考えます。

【益田委員】
 先ほどの大隅委員のご発言に関するコメントです。「単に流動化させればいいということではない。世界の中のリーダーを日本で育てるのだという気持ちをもって欲しい。」というご主旨だったと思います。確かにそのとおりですが、そのためにこそ日本の若手人材は、現在のような内向き志向ではだめで、もっと外を知らないといけないと思います。先ほどの日本の中長期的な科学技術政策に関する懇談会資料にも、中国、インド等の若手研究者が世界に目を向ける中で、日本の若手研究者の内向き志向は極めて顕著で、危機的な状況にあるとあります。このような状況で、日本の国内で世界に通用するリーダーを育てようといっても無理なことです。大隅先生のおっしゃることを実現するためには、まずは、日本の若い優秀な人材が、内向きにならない、もっと流動化する、外に出て世界を知ることが大前提であると思います。

【大隈委員】
 言ってみれば、それだけ若い方が同世代の世界を知ることになると思うのです。それは、リーダーシップを高めていく上でも非常に重要なことと思います。ありがとうございます。

【本藏委員】
 先ほど柿田計画官が言われたことに関連して、もっと具体的に、現在動いている事業をもとに意見を述べさせていただきたいと思います。それは、外国の若い方々を、我々の指導のもとにどうやって育てていくかという問題にも関わってくることです。
 現在動いている事業というのは、最近、科学技術外交ということでよく取り上げられますが、地球規模課題対応国際科学技術協力というものが2年目になっています。これは、私たちからすれば、自分の専門は防災、特に地震、火山防災なのですが、これは極めてグローバルな課題であるということは申すまでもないことです。その他、環境・エネルギーそれから感染症という3つの分野があり、それについて現在、国際共同研究が動いております。平成20年度は12件、平成21年度は21件、合計33件です。
 これはある意味で画期的なのは、1つは、現在動いている課題はアジア9カ国、アフリカ8カ国、南米3カ国、ヨーロッパ1カ国、合計21カ国で、先ほど申し上げた分野の日本の最先端の研究者が、競争的資金ですので、応募して採択になったという条件で、海外に出て共同研究を起こしているものです。
 この特徴は、文部科学省と外務省が合体した、協力した事業になっているところです。文部科学省の方はJSTで、基本的な考え方は科学技術の基礎研究になっていますが、その最先端の研究を、これはグローバル課題でありますので、日本に限らず、世界に広く研究の場を求めて研究を進めるという形をとっております。外務省のほうはJICAが行っていて、日本の誇るべき技術移転、人材育成も含めて相手国の今後の発展に資するという2つのミッションを持っております。この2つがお互いにうまく動くことで、日本の科学技術の基礎研究をさらに推進すると同時に、国際貢献も人材育成も含め、それから日本の誇るべき技術を、地球規模課題の解決に向けてさらに研究を進める。こういう形をとっています。
 現在、そのように動いているのですが、私は現在、防災分野のプログラムオフィサーとして8件担当しておりますが、このプログラムの良さと同時に、今後、さらなる展開を図れると思っています。1つは人材育成です。ですから、今度は人材育成に限ってお話をさせていただきたいと思います。
 このプログラムを実際に実施しますと、相手国、及び日本が相手国に行って研究を行うのですが、いずれも若手の人材育成が極めて重要であるという認識で一致しております。日本側からすれば、研究を世界に求めるわけですから、共同研究を組む方がはるかにいい。つまり、研究者の人的ネットワークを構成しつつ、研究を進めるときに、やはり若手研究者の参加が不可欠になる。それに対して、日本の若手研究者の参加も当然不可欠である。現在、研究者同士がネットワークを持って21カ国で動いていますが、これらが全部ネットワークを組むようになれば、これは日本の科学技術外交といいますか、日本のステータスは世界からも極めてよく見えるものになる。
 それから、将来を考えたとき、若手研究者を共同研究を通して育成すれば、彼らはやがてひとり立ちし、地球規模課題を解決する世界の研究者に育つだろう。彼らがそういうネットワークを組むことで、日本の研究レベルも上がり、相手国の研究レベルも上がる。
 さらに重要なことは、この事業では社会実装もうたっている。単なる政策型の基礎研究だけではなく、その成果が社会に生かされなければならないという政策課題になっています。
 その中で、単なる基礎研究ではなくて、こういう成果が出ましたと。先ほど、いろいろイノベーションの話もありましたけれども、これはやがて地球規模課題の解決に向けて生かされるべきである。今後、基礎研究の成果が地球規模課題の解決に、実際どのように役立っていかなければいけないのかというところも含めて考えますので、そういう意味も入れて人材育成に当たらなければならない。こういう観点で現在進んでいまして、その中で人材育成にしっかりと取り組まなければいかんと思っているところです。

【西尾委員】
 今回、科学技術・イノベーションという言葉が出てきていて、今後、基本計画を練る上での一つのキーワードになると思います。この言葉の「・」の意味をどのように捉えるかは重要だと考えます。その解釈も含めて、この言葉の意味を明確にしておくべきだと思います。
 それと、確認ですが、先ほどから出ているように、イノベーションとは、単なる発明、発見ではなくて、社会のシステム改革を促すものだとしたら、科学技術・イノベーション政策を押し進めると、先ほどの目指すべき国の姿に到達するというストーリーで書かれていると考えてよろしいですね。

【柿田計画官】
 科学技術・イノベーションにつきましては、資料3-1の12ページの下のパラグラフですが、アンダーラインを引いております。科学的な発見や発明等の新たな知識をもとに、知的・文化的価値の創造、まずこれがある。それらの知識を発展させて、社会的・公共的価値の創造、これらがイノベーションになりますが、これらを包括するということです。最終的に全てが、何でもイノベーションということではなく、知的・文化的価値の創造、これも政策の対象として重要な概念として考えております。
 例えば、知的・文化的価値の創造については、5つの国の目指すべき姿の四つ目になります。イノベーションを通じて全てが達成されるというよりは、知的・文化的価値の創造もそれ自体で大事で、ただ、知的・文化的価値の創造でとどまるのではなく、場合によっては次の社会的な価値の創造に向けて、イノベーションを通じて価値を創造していくという部分もある。
 したがって、12ページで書いているような文章で、目指すべき国の姿の一つ目から五つ目に対応する概念として、科学技術・イノベーション政策を整理してはどうかという考えです。

【野依主査】
 外国では、これまでサイエンス・アンド・テクノロジーと言われていたのが、最近、サイエンス・テクノロジー・アンド・イノベーションとなっています。それを訳した日本語ではないかと思います。よって、本当は科学・技術・イノベーション、つまり科学そのものも非常に大事であるということが、今の柿田計画官の話だと思います。

【岩瀬科学技術・学術統括官】
 ちょっと違う言い方で補足を試みたいと思います。「・」はどういう意味かということですが、私はこういう言い方のほうが分かりやすいと思います。科学技術とイノベーションの2つの概念が集合でかなりの部分が重なる、しかし重ならないところもある。2つの集合ですね。その時に「・」で何を表しているか。私の理解は、交わりの部分ではなくて、全体の和を表していると考えたら分かりやすいのではないかと思います。科学技術政策は当然含んでいるが、その少し外側のイノベーションを実現するために必要なものまで視野に入れて政策として議論する。それが分かりやすい説明ではないかと思います。

【野間口主査代理】
 私も、今の西尾先生と同じような考えを持ってございます。8ページから12ページまでの議論と、次の資料のまとめを見ますと、国の方針、政策、行動と理想の姿が混在しているように思います。「・イノベーション」としてわざわざ第4期へ向かう、これまでの基本計画とは明確に違っているところは、もう少し分かりやすくした方がいいと思います。そうしますと、3-2の資料で、基本認識から始まって、書き起こしていくときの説得力が大いに出てくるのではないでしょうか。

【白井委員】
 全体のトーンは非常によく分かるのですが、こういう状況の中でも国際的優位性を保つんだという主張になっていると思います。国際的優位性を保つことについて、いろいろな資料は示していると思うのですが、今後、日本の科学技術というのは、どの分野で、どのぐらいの量をやることをイメージしているのか。それだけの力がどのあたりにあると思っているのか。例えば、外国人にもぜひ入ってもらって、一緒にやっていこうというのは一つの政策だと思います。ただ、少子化で出来ないから、今度はイノベーション政策に転換するというのは、はっきり言って私はイメージがよく分かりません。どのようにイノベーションの方に政策を転換したら、少ない人数で大いに闘えるようになるのかというイメージがよく分からない。デファクトスタンダードなんていうのが出てくる背景には、やはり一つのスケールというものがあるんです。
 そういうものに対して、我々は、どのぐらいのことをイメージしなくてはいけないのか。理科離れと一方で言われるが、基礎のサイエンスの教育をどうするのか。我々はこの委員会でこれからやろうとしている科学技術基本計画の中で、どのぐらいまで組み立てると、人材を生かして研究を続けられるのか。やはりあるスケールを保たないと、できないと思う。それを補うためにシステムが必要だ、留学生も多いほうがいい、そういう人たちも大いに参加してもらう。これも一つの政策だと思うけれども、それを組み立てる必要が非常にあるのではないか。
 転換と書いてあるんだけれども、こういうふうに転換すると競争力が強くなるとはあまり思えない。だから、我々はこれをどう実現するのか。

【野依主査】
 大変大事なご指摘だと思います。これをどのぐらいのスケールにするか、第4期の計画を作る時にぜひ数値目標を入れていただきたい。そのために、何にどれぐらい要るか、かけるかをやはり考えないと、説得力がないと思います。ただ留学生を増やせばいい、研究投資をたくさんすればいいということではなく、数値目標を書き込む覚悟でまいりたいと思います。

【小林(誠)委員】
 数値目標の前に現状のスケールを正しく認識する必要があると思います。サイエンスとテクノロジーという分類がありますが、日本の研究者の中で、それぞれについてどのくらいの人数がどういうカテゴリーの研究に従事していて、それをどう資金的にサポートするべきかというデータから考える必要があるのではないかと思います。

(休憩)

【野依主査】
 それでは、これまでの議論を踏まえて、資料3-2をもとに、第4期科学技術基本計画に向けた論点整理を行いたいと思います。

【益田委員】
 個別のことに入りますが、本日の資料3-2の論点整理の科学技術・イノベーションの人材育成・確保の第1項に、リーダーとしての資質を備える高度人材の育成、あるいは多様な人材の育成・確保という項目が出ています。人材育成という視点で見たときに最も重要なことは、大学院における人材育成です。そのために、第4期科学技術基本計画でしっかり盛り込んでいただきたいのは、前回も話が出ましたが、大学院での奨学金制度を充実したものにするということです。それから、それと組み合わせてでも、日本の大学院学生に決定的に欠けている流動性を高める策を具体的に書き込んで欲しいということです。この点において、欧米、あるいは他の国に比べて、日本の大学は非常に特殊な状況になっています。
 教育再生会議でも、学生の流動性の問題は非常に大きな問題として取り上げられていましたが、成果が出ているように見えない。学生の内向き志向だけでなく、教員側の囲い込み現象により、流動性の向上が容易でないことは理解できますが、決してこのまま放置しておいていい問題ではありません。優秀な若手人材の流動性といったとき、それは日本国内での流動性だけではなく、積極的に海外の大学へ出るということも極めて重要なことです。そのための仕組みを考えることを、ぜひ重要な課題として具体的に取り入れていただきたいと思います。

【野依主査】
 私もその通りだと思います。一言つけ加えさせていただきますと、21世紀は科学技術を中核とする知識基盤社会です。したがって、最高の知の府である大学、大学院に、国の内外を問わず、志ある最優秀の若者たちを集めて、世界最高水準で最高の科学者、あるいは技術者を育成しなければいけない。しかし、これでは不十分で、人文社会科学系でも同様に、大学院教育を通じて国際水準で最高の知識人を育てていただきたいと思います。
 この実現を阻むものは、まず第1に大学院の体制が世界水準でないということ。第2に、大学人と若者の意識の欠如。第3に、公財政支出の決定的な不足だと思います。現状は理想からはほど遠いので、ぜひ第4期科学技術基本計画に盛り込んでいただいて、あるべき姿の実現に向かってアクションプランを立てていただきたい。

【大垣委員】
 今のご発言と関連しますが、資料3-2の3ページ、国際活動の戦略的推進の部分であります。国際委員会でも議論しておりますので、一言申し上げたいと思います。
 3.の(2)の国際流動の促進・国際研究ネットワークの強化ですが、国際委員会でもブレーンサーキュレーションが重要な概念であると議論しています。今、野依主査の言われたように、財政支出の不足等の概念を具体化するにはどうしたらいいかですが、ネットワークを強化するといいましても、具体的にどうするかが元にないと、その上で書き込まないといけないと思います。
 例えば、科研費というのは日本国内のものですが、国際的な、あるいは国際地域に向けての研究費を出して、それによって人的な研究者のネットワークをつくる、あるいは大学院のネットワークをつくるという仕組みもあり得るわけでして、ネットワークの具体的な制度、あるいは具体的な予算がどうあるかということを考えて書き込まないといけないと思います。
 もう一点、国内的には留学生を受け入れろというわけですが、現実的には、いろいろな施設整備や、さまざまな運営費交付金等の機関の根拠の数字としては出ていないと思いますので、日本人の学生と同じような形で予算根拠と制度をつくる体制がないと、ブレーンサーキュレーションのネットワークもただの言葉になると思います。

【小杉委員】
 人材育成の点で、キャリアパスの確立を書き込んでいただきたいと思います。若手研究者の意見の中にもたくさん出ていましたが、研究者という職業のためのキャリアパスの確立、特に大学院の博士課程というのは研究者としての職業人生のスタートだと思います。その時点で、奨学金というタイトなやり方ではなくて、リサーチアドバイザーとか、労働の対価として収入が入るような仕組みにしないと、貸与型の奨学金では将来設計が出来ません。是非、そこを確立していただきたいと思います。

【野依主査】
 貸与ではなく、やはり給付でなければいけないと思います。
 私は、TA、RAの労働の対価として1時間1,000円払わないのは労働基準法違反だろうと思います。是非、払うようにしていただきたいと思います。ただ、これに掛るお金は、年間3,000億から4,000億円以上になります。しかし、これは実現しなければいけないと思います。

【安西委員】
 今、貸与の奨学金でありながら、卒業してから優秀であれば給付に変えるという奨学金がありまして、150億円ぐらいだと思います。これは、給付にそのまま変えることは可能だと思います。細かくて申しわけありません。とにかく原資がないと言われ続けておりますが、150億円ぐらいは原資があります。それが1件であります。
 それから、先ほどの流動性の問題なのですが、なぜ流動性が日本の大学院ではないのかということについて分析が進んでいない。幾つか論点はあって、非常に困難な社会システム上の課題がありまして、そこを掘り込まない限り大学院生の流動化は非常に難しいと思います。
 やはり子供の頃からの、大学受験を含めた一直線の評価システムが一番根っこにあるのではないかと思います。複線、またはそれぞれの子供たちがつかみ取っていける、選んでいける社会のシステムにしない限り、大学院生の流動化は非常に難しいと思います。

【小林(傅)委員】
 論点の整理のところで、至るところに人材の育成が必要であると書いてあります。そして、大学の役割が非常に大事であると書いてありますが、5ページの大学等の教育研究力の強化のところの主な論点は、大学等の質の保証と、大学等の多様化促進等の2点しか書いてありません。これはいかにも貧弱でありまして、多分、こういう問題以前に、博士の人材を大学がどう育成するかが問われています。その時に、従来の研究者養成の仕組みだけでトレーニングされてきた教員が教育をしていますので、どうしても大量の大学院生を研究者養成に向けているのですが、求められている人材はもっと多様で、産業界だけではなく行政やNPO、NGOも含めた、多様なところで博士号を持った人材が活躍する。それが、多分、知識基盤型社会のはずですので、それに対応した教育システムが大学でできていないことが最大の問題だと思います。そこをきっちりと組み込んだ形で、ある意味で大学が改革を迫られることになると思いますが、やっていかなければ、おそらく人材不足というのはいつまでも続くのではないかと思います。

【野依主査】
 研究者の養成とおっしゃいましたけれども、アカデミアの研究者の養成しかやっていないということですね。

【小林(傅)委員】
 そういうことです。

【丸本委員】
 大学のシステムの悪いところを改革しなければいけないというのは、小林委員のおっしゃったとおりですが、1つの大きな原因は、オーバードクターになって職がないという現象です。学生にとって進路を選択するとき、ドクターに進学したら専門性が狭まって職がなくなるかもしれない、それだったらドクターに行かないという学生が結構います。ですから、博士課程を出た方の職種についても、社会で、産業界も含めて、もう少しきちんとしたシステムを作らなければ、いつまでたってもドクターを出た方が外国に逃げてしまうような状態が起こるのではないかと思います。大学が研究者養成をやってきたことで改善しなければいけない点はありますが、今後、社会のニーズが、多様な大学院生を求めているのであれば、大学はそれに向けてももっと変わらなければいけないと思います。

【野依主査】
 その問題につきましては、先ほど小林傳司委員がおっしゃったことですが、やはり産業界が一番大きなマーケットであるので、産業界も大学院、修士、あるいはドクターの養成プログラムに、いい意味で強くコミットする。干渉するという意味ではなくて、建設的に強くコミットする必要があると思います。

【丸本委員】
 そのとおりです。

【野依主査】
 ドイツやスイスでは産業界のすぐれた研究者が強くコミットしていると思います。日本も、我々の先生ぐらいの世代は産業界と非常に強い関係があって、常に産業界のことを話しておられました。残念なことに、大学紛争のあたりから産業界と学界の乖離が起こって、それから後に教育を受けた人たち、今の大学教授たちはほとんど産業界のことを知らないわけです。そういう状況では、産業界に通用する人材を育てることは不可能です。ですから、産業界にぜひ、建設的な参画をしていただきたいと思います。

【東委員】
 東芝では、数年前から大学院のインターンシップ制度を始めました。ドクターの学生は半年が目安で、1年、2年に延ばすケースもあります。企業でやっている研究と大学の研究室の研究テーマとすり合わせがいいもの、あるいは近いものを取り上げて、共同研究という形を踏まえながらインターンシップをやる。ドクター取得が必要ですから、こちらも相当レベルの高い研究者と組ませて、必ず論文を2本、3本書いていただく。全大学に公募できませんので数大学に絞ってやらせていただいています。これは日本の大学だけではなく、外国の大学に対してもやっています。期待した効果は出ていますが、問題は、個別でやっても規模の問題があるので、どのようにシステム化するかというところだと思います。

【冨山委員】
 2つありまして、1つは皆さんおっしゃっているスケーラビリティーの問題です。これは基本認識のところに少しかかると思いますが、今の国家財政の状況等々を考えると、日本国の豊かさのドライバーはこの分野しかもうないわけです。社会保障の議論とかいろいろありますけれども、マクロ経済学的にいうと、成長率が1ポイント変わるだけで前提が全然変わってしまいます。2ポイント上がったら、ほとんどの問題は解決します。結局、全部この話なので、全体としてもっと偉そうでいいのではないかとい思います。25兆円だったら、倍にしてもいいのではないかぐらいの極端なことを私は思います。そういう議論をしても良いと思っているのが1つ。
 それから、スケーラビリティーで議論したときに、前回、資料を見て勉強させてもらったのですが、日本はやはり研究開発の中の公費の比率が非常に低い。はっきり言って、日本の会社は世界一高い法人税で、おまけに終身雇用まで担わされる中で、必死になって研究して頑張っているわけで、これ以上担わせるのは、野間口主査代理もいらっしゃいますが、もう酷な状況です。やはり他国並みに公費の比率を上げるぐらいのスケールをターゲットにした方がいいと、私は思っています。
 それと、またイノベーション関連の論点になるんですが、この領域になると、おそらく社会科学系の領域、人文学の領域とのいろいろなコラボレーションとか、連携の議論が出て来ますが、逆にこれは質問ですけれども、その辺はどのようにお考えなのか。
 すごくストレートに言ってしまうと、私は社会科学系の人間なので、ある意味では自虐的になってしまいますが、日本の社会科学は科学技術とは比較にならないぐらい駄目な領域で、当分、ノーベル賞なんか国内の研究機関から出る気配もない。理系と比べるとほんとうに酷い。一子相伝、師匠と弟子の徒弟制度の世界で、師匠にたてをついたら例えば法学部なんかでは一生浮かばれません。この辺は酷い領域なので、もともと酷いところをどうするのかは難しいのですが、どういう問題意識をお持ちなのでしょうか。

【柿田計画官】
 社会科学系の問題は、第4期科学技術基本計画では非常に重要になると思います。どのような視点からかと申しますと、全体的に、課題を設定して、課題解決に向かって他分野の知を統合、連携、融合していくという流れが必要になると思います。そういった中で、当然、自然科学系のさまざまなディシプリン、それらの統合のみならず、やはり社会の抱える課題に向かって解決策を見出すということに対して、社会科学との連携がますます必須になってくると思いますので、第4期科学技術基本計画ではいわゆる重点化というものをどうしていくか。第3期科学技術基本計画までは分野別の重点化が図られていましたが、第4期科学技術基本計画以降、重点化をどう考えるかという中で、課題設定型というアプローチで向かう以上は、社会科学との関係も非常に重要になると考えております。

【小林(傅)委員】
 今の点は非常に大事な問題で、先ほど永井委員が臨床系の研究が若干低いのはなぜかというところで、人を対象とした実験をする体制が整備できてないということが一つ考えられるのではないかとおっしゃっていましたが、結局、イノベーションというのは、社会システムそのものを変革するためのものであり、ある種の社会実験を必要とすることが増えています。ですから、臨床医学の研究が遅れるというのは、社会の中で人を対象にした研究をするというときに何かの障壁があるからかもしれない。
 そういう形で、さまざまなイノベーションの際に科学技術の開発が社会の中で実装されるための仕組みとか、人々の協力とか合意を調達するための仕組みとか、それらがなければイノベーション型の研究はうまく進まない。その部分の研究というのは、実は自然科学者だけではできなくて、人文社会科学者の人たちがつながらないといけない。そういうタイプの人材がなければ、科学技術・イノベーション政策というのはうまく完結しないと思います。

【永井委員】
 それに関係して、これは全体を通じての印象ですが、技術開発ばかり考えているようなところもあると思います。同時に検証、本当にそれが有効かどうかとか、どういう意味があるか、あるいは既存の実装されている技術でも本当に意味があるか、どういう課題が残されているかという検証システムも同時に研究する必要があります。その場合、社会科学系の方々との交流も必要ですし、知財であるとか、行政であるとか、規制とか、マネジメントをする人の人材育成も視野に入れる必要があります。

【白井委員】
 国の機関というか研究機関等々の役割が書いてあるんですが、今のご意見と非常に関連するんですが、社会科学的なというか、例えば環境問題、環境技術は確かに日本は優れたものがたくさんある。世界中には、さまざまな環境問題があります。地域によっても全部違う。それらに対して、我々がもっと貢献できるための知恵を出せるような機関としてやるとか、これまで要求されていない日本の貢献、要望されていなくても、もっと強く出していいのではないでしょうか。国の研究所は自分の研究を一生懸命頑張れというのではなく、社会科学的な研究所も非常に重要だ。世界に対して科学技術をどういうふうに出していくのかという政策が、非常に重要なのではないかと思います。

【西尾委員】
 この論点整理において産学連携のことが書かれている箇所をずっと拾ってみたのですが、その出口のほとんどが事業化等になっています。確かに、産学連携を推進し、四、五年間にわたる共同研究の成果として、何か新たなものを開発していくことは大事だと思います。しかし、今、より強く求められていることは、産学連携による人材育成だと考えます。大学は、人材を育てていくことが重要なミッションですので、今後、産学連携による人材育成をより強く打ち出すような基本計画にしていただくことが肝要かと思います。

【野依主査】
 これも評価の問題で、最初に成果の問題がありましたけれども、そういうインダイレクトな、しかし国の力を生み出すような効果があったことは、主張していかなければいけないと思います。

【大隅委員】
 手短に3点申し上げたいと思います。
 若い人についてからいかせていただきますが、次世代のところで、子供たち、才能教育と言ってもいいと思いますが、イノベーション人材を育てるとしたら、そこからやらなければいけないと思います。まず、人と違っていてもいいということを根づかせること。それから、音楽やスポーツでしたら、子供たちが「ああいうふうになりたい」と思うロールモデルがたくさんいるわけです。どうして科学の世界で、小さいときからそういう教育ができないか。そこは非常に大きく考えるべきことではないかというのが1点目です。
 2点目は、高校から大学の学部の、特に教養課程のところですけれども、現在の入試制度で、非常に早く、高校1年の時点で文系、理系を分けるような入試スタイルを変えないと、絶対にイノベーションを行うような人材は育たないと思います。加えて、教養教育2年を1年にして、専門教育を前倒しで教えるようになったことの弊害は、その後、社会でいろいろな分野融合をしようと思う時に“のりしろ”がない、すなわち教養時代に学んだことの接点がなさ過ぎるので、他の分野の人たちとどのように協力、協調して物なり、システムなりをつくり上げていくのかが難しくなっているのではないか。そういった教養教育の面が2点目です。
 3点目は、若手の人材を育てなければいけないということですが、そのときに心配なのは、現在のシステムで「若手の准教授の方は独立でやってください」となると、事務的な仕事が独立教授と同じように降ってきます。それは、決して若手を育てることにつながらないという非常に大きな懸念があります。ですので、関連するところとしては、6ページの研究者が研究に専念できる環境整備に近いのですが、講座単位なり、大講座単位なり、そういった形での支援も考えていかないと、ただ若手を独立させてお金をあげればいいというものではないと思います。

【野依主査】
 最後の問題は、やはり大学全体のマネジメントの問題です。シニアの人も大変な目に遭っています。私はフロント業務と言っていますが、やはり大学のマネジメントを強化することが大事で、教員は本来の教育と研究、そして若干の社会貢献に専心できるような状態をつくらなければいけないと思っております。

【東委員】
 1ページ目のローマ数字2の1.科学技術・イノベーションの戦略的な研究開発投資についてです。これは先ほどのスケーラビリティーの問題なんですが、エレクトロニクスを例にとると、最初の研究段階から最終の事業化段階までのSTIの投資比率は1対10対100ぐらいなんです。最後の検証システムをつくって、本当にこれが事業になるか判定するには、最初の大体100倍と言ってもいいぐらいの投資が必要なんです。ここではあっさりと戦略的な研究開発投資と書いておられますが、ほんとうに100倍のところまでカバーし切れるのか。戦略的ですから、効率よく絞るとしても半分ぐらいかかります。今までの25兆円なんかでは全然駄目で、100兆円ぐらいの規模を目指さなければ、イノベーションを正面切って謳うことは出来ません。

【野依主査】
 イノベーションの問題は、どこまで公的機関が、あるいはセクターが担わなければいけないかということがあると思います。これは国の考えもあると思いますが、ぜひそこを効果あるものにしなければ、絵に画いた餅になると思います。

【伊地知委員】
 クリティカル・マスのことですとか、先ほどの話と関連しますが、特にイノベーションのフォーカスに関して、人材リサーチもイノベーションも人が生み出すということから人材の議論になると思いますけれども、そこにフォーカスするだけではなく、無形資産全般への投資が経済成長や社会的価値を生み出すと考えられているので、単にリサーチだけではなくて、例えば、デザインや、あるいは、公共セクターやサービスといった中で、いろいろな知恵、知識、技能を生み出すことがいかに価値を生み出すのかというところまでも少し幅広に考えた上で、論点を作っていくといいと思います。

【野依主査】
 いろいろ意見がございました。先ほど冨山委員、東委員から財政規模のお話がございました。遠慮するなということですので、文部科学省のほうも堂々と必要な額を主張していただきたいと思います。この特別委員会の総意として、堂々と要求していくことを進めていただきたいと思いますので、ご協力をお願いします。
 それでは、本日いただきました議論を踏まえて、事務局で整理を行い、第3回以降は各論についてご議論いただくことになります。
 最後、議題3のその他になります。今後の委員会の日程等について、事務局から説明してください。

【柿田計画官】
 資料4に記載してございますとおり、第3回を今月27日、15時より行います。また、第4回以降も記載のとおりの予定で進めさせていただきたいと思います。
 本日の議事録につきましては、後ほど事務局より委員の皆様にメールでお送りさせていただきます。ご確認いただいた上で、文部科学省ホームページに掲載させていただきますので、よろしくお願いします。
 資料につきましては、机上に残していただければ後ほど郵送させていただきます。
 ありがとうございました。

【野依主査】
 どうもありがとうございました。以上で、科学技術・学術審議会第2回基本計画特別委員会を終了させていただきます。

お問合せ先

科学技術・学術政策局計画官付

03-6734-3982(直通)

(科学技術・学術政策局計画官付)

-- 登録:平成21年以前 --