資料3-1 研究活動の不正行為への対応についての論点別考え方(案)

1.本特別委員会の任務(総論)

(1)背景

○ 我が国では昨今、科学研究において、データの捏造等の不正行為が指摘されるようになってきているが、このような不正行為は本来あってはならないものである。
 また、2期にわたる科学技術基本計画のもと、公的資金による研究費支援が増加しているが、第3期科学技術基本計画が開始される状況の中で、公的資金を効果的に活用することがより一層求められている。

(2)日本学術会議の取り組み

○ 日本学術会議は、科学者の代表機関としての立場から、研究者倫理全体を見据え、科学者の自律のための倫理規範の確立を目指し、全科学者が共有すべき行動規範の策定に取り組んでいる。また、教育・研究機関、学協会、研究資金提供機関に対し、倫理綱領や研究活動を支える行動規範等の策定、倫理教育の実施、捏造、改ざん、盗用などの不正行為全般に厳正に対処する制度の導入などについて自主的に取り組むよう要請することとしている。

(3)文部科学省の取り組み

○ 文部科学省においては、文部科学省が所管する競争的資金(4(1)参照)を活用した研究活動における捏造、改ざん、盗用の不正行為に対しての所要の措置とともに、これらの不正行為が指摘されたときの対応体制等を整備することとする。同様のことを所管の資金配分機関に要請する。
 また、大学・研究機関に対し、これらの不正行為が指摘されたときの対応体制や対応の方法を示し、自主的な取り組みを促すこととする。

(4)本特別委員会の任務

○ このために、本特別委員会においては、研究活動における不正行為(以下単に「不正行為」という。)に対する研究者や研究者コミュニティ、大学・研究機関の取り組みを促しつつ、国あるいは公的な研究資金の配分機関の競争的資金による研究支援を受けている研究者による不正行為への対応(告発等の受付から調査・事実確認、措置まで)について、文部科学省や資金配分機関、大学・研究機関が構築すべきシステム・ルールを検討し、ガイドラインとして示すことを主眼とする。
○ 不正行為への措置の検討においては、例えば以下のことに留意する。

  • 措置の対象となる不正行為
  • 措置の内容と決定手続
  • 研究者が複数の機関に属しているときの対応や認定の取扱い
  • 司法手続継続中の取扱い

2.不正行為に対する基本的考え方

(1)研究活動の本質

○ 研究活動とは、先人達が行った研究の諸業績を踏まえた上で、自分自身の発想・アイディアに基づく新たな知見を創造することである。
○ 特に大学等を中心に行われている学術研究は個々の研究者の自由な発想と知的好奇心・探究心に根ざした知的創造活動であり、優れた知的・文化的価値を有する。また、学術研究は人類共通の知的資産を築くものであり、その知的ストックは、人類の幸福、経済・社会の発展の源泉になるなど崇高な営みである。このような研究活動は次世代の価値を創造するという研究者の強い使命感に支えられている側面がある。
○ この2で示す基本的考え方は、文部科学省所管の機関のみならず、研究活動を行う他省庁所管の機関や企業及びその所属する研究者についても、原則的に同様のことが該当する。

(2)研究成果の発表

○ 研究成果の発表とは、研究活動によって得られた成果を、客観的で検証可能なデータ・資料を提示しつつ、研究者コミュニティに向かって公開し、その内容について吟味・批判を受けることである。

(3)不正行為とは何か

○ 不正行為とは、上記(1)、(2)に反する行為に他ならない。この意味から、不正行為は、科学研究の論文等において、得られたデータや結果の捏造、改ざん、及び他者の研究成果等の盗用に加え、同じ研究成果の重複発表、論文著作者が適正に公表されない不適切なオーサーシップなど、科学研究の上での非倫理行為と考えることができる。

(4)不正行為に対する基本姿勢

○ 不正行為の問題は、知の生産活動である研究における「知の品質管理」の問題として捉えることができる。
○ 不正行為は、研究活動とその成果発表の本質に反するものであるという意味において科学そのものに対する背信行為であり、研究費の多寡や出所の如何を問わず許されない。
○ また、不正行為は、研究者の自己破壊につながるものでもある。
○ これらのことを個々の研究者はもとより、研究者コミュニティや大学・研究機関、研究費の配分機関は理解して、不正行為に対して厳しい姿勢で臨むべきである。

(5)研究者、研究者コミュニティ等の自律

○ 不正行為に対する対応は、研究者の倫理と社会的責任の問題として、その防止も含め、まず研究者自らの、あるいは研究者コミュニティの自律に基づく自浄作用としてなされなければならない。
○ 自律・自浄作用の強化は、研究室・教室単位から学科・専攻、さらに学部・研究科レベルにおいても重要な課題として認識されなければならない。

(6)大学・研究機関、学協会、日本学術会議の不正行為への取り組み

1 行動規範や不正行為への対応規程等の整備

○ 不正行為への対応のために、日本学術会議が科学者の行動規範の策定に向けて取り組んでいるが、大学・研究機関や学協会においても、研究者の行動規範や、不正行為の疑惑が指摘されたときの調査手続や方法などに関する規程等を整備することが求められる。

2 防止のための取り組み

○ 大学・研究機関においては、実験・観察ノートの作成・保管や実験試料・試薬の保存等、研究活動やその公表に関して守るべき作法について、研究者や学生への徹底を図ることが求められる。これは不正行為の防止のためであるとともに、研究者の自己破壊を防止するためでもあり、不正の疑義から自らを守るためでもある。
○ 不正行為が指摘されたときの対応のルールづくりと同時に、不正行為が起こらないようにするため、大学・研究機関や学協会においては、研究者倫理に関する教育や啓発等、研究者倫理の向上のための取り組みが求められる。例えば、大学院において、研究活動の本質や研究者倫理についての教育プログラムを導入することが考えられる。
○ このような自律性を高める取り組みについては、特に学生や若手研究者を指導する立場の研究者が自ら積極的に取り組むこととともに、このような指導的立場の研究者に対して、研究者倫理等の教育を行い、認識を高めておくことも重要である。

(7)文部科学省における競争的資金等に係る不正行為への対応

○ 文部科学省においては、国費を研究費として配分している立場から、適正な研究費の活用に意を用いる必要がある。特に特定の課題に対して配分する競争的資金等に係る研究活動の不正行為への対応について、早急に文部科学省におけるルールづくりを行うとともに、資金配分機関や大学・研究機関に対する対応のガイドラインを提示し、各機関における不正行為への対応のルールづくりを促進することが必要である。
○ 不正行為への対応の取り組みは、学問の自由を侵すものとなってはならないことはもとより、研究を萎縮させるものとなってはならず、活性化させるものとなるように留意する必要がある。

3.不正行為が起こる背景

(1)研究現場を取り巻く現状

 不正行為が起こる背景としての研究現場を取り巻く現状については、例えば以下のことが考えられる。
○ 世界的な知の大競争時代にあって、研究成果を少しでも早く出すという先陣争いが強まっている。
○ 競争的資金の増加とともに、多額の研究費が獲得できる研究が優れた研究と評価され、また、成果が目立つ研究でなければ、研究費が獲得できない傾向など研究費獲得競争が激しくなっている。
○ すぐには成果が出ない基礎研究について、短期的な成果を求める傾向が強まっており、研究費獲得競争とあいまって、成果を急ぐことにつながる。
○ 研究者の任期付任用の増加に伴い、ポスト獲得競争が激しくなっており、特に若手研究者にとっては優れた研究成果を早く出す必要性に迫られている。

(2)研究組織・研究者の問題点

 一方、研究組織の問題点として、以下のことも考えられる。
○ 研究者の研究に対する使命感が薄れてきて、研究を単に世俗的関心に結びつける傾向が強まってきているのではないか。
○ 研究費の獲得自体が自己目的化し、獲得額を競う感覚が研究者の間で出てきているのではないか。また、研究組織の管理者にも研究費の獲得如何で研究者を評価する傾向があるのではないか。
○ 個別の問題として特に、若くして主任研究者になった場合、長期間研究費を獲得し続けることが必要になり、常に目覚しい研究成果を出すことに追われ、焦りが生じたり、研究室のポスドク等への圧力が強くなる可能性がある。
○ 研究評価の進展に伴い、インパクトファクターが研究評価の上で重視されるにつれて、評価者や研究者が著名な科学雑誌に論文が掲載されることを過度に重要視している。
○ データ処理や論文作成のスピードが早まること等により、研究グループ内で生データを見ながら議論をして説を組み立てていくという、研究を進めていく上で通常行われる過程を踏むことを、おろそかにする意識が一部にある。
○ 指導者の中には、成果至上主義に傾き、研究者倫理や研究のプロセスを十分に理解していない者が存在する。
○ 学問(研究活動)の本質とそれに基づく作法・研究者倫理とはどういうものかということについて、学生や若手研究者が十分教育を受けていない。また、そのことについて教えるべき指導者が、学生や若手研究者を十分に教育していない。
○ 研究組織の中で自浄作用が働きにくい。また、正常な自浄作用か相手を陥れる行為か、が容易に判断しにくい場合があり、重症に陥るまで放置されることがある。
○ 研究組織の中で研究活動の本質や研究成果の発表、研究活動の作法に抵触するような行為が、些細なことが見逃され続けることが重なって、さらに重大な不正行為につながることがあるのではないか。

4.不正行為への対応の具体的検討事項
-不正行為への対応のガイドラインにおける要点と対処の基本的考え方案-

(1)ガイドラインの対象範囲

○ 不正行為は研究費の出所や金額の多寡の如何に関係なく許されないことから考えると、不正行為への対応は、本来研究費の如何を問わず対象とするべきである。
○ しかし、国公費による研究資金の効率的な活用の観点や不正行為が行われた場合の行政的な措置の観点から、行政としての対応は以下のように考えることができる。
 競争的資金は研究費と研究活動及び研究成果との対応関係が明確であることから、研究活動の不正行為においても、研究費との対応関係が明確であり、また、資金配分機関と研究者の関係をルール化する必要性もあることから、ガイドラインの対象となる不正行為は、2(3)の不正行為のうち、国費による競争的資金を活用した研究活動における捏造、改ざん、盗用に限ることが適当である。
 従って、不適切なオーサーシップや研究費の申請書における論文の引用が正しくない場合や、論文作成において、都合の悪いデータを省略する場合などについては、今回のガイドラインの対象に含めない。
 なお、大学や文部科学省所管の研究機関・独立行政法人のみならず、地方公共団体、他省庁所管の研究機関・独立行政法人、企業などの研究者が文部科学省所管の競争的資金を活用した研究活動において不正行為を行えば、資金配分機関が行う措置の対象となる。また、地方公共団体、他省庁所管の研究機関・独立行政法人、企業などの機関において、ガイドラインに沿った取り組みが行われることが望まれる。

[競争的資金]

  • 資金配分主体が、広く研究開発課題等を募り、提案された課題の中から、専門家を含む複数の者による、科学的・技術的な観点を中心とした評価に基づいて実施すべき課題を採択し、研究者等に配分する研究開発資金をいう。
  • 平成18年度の文部科学省所管の競争的資金は、科学研究費補助金、科学技術振興調整費、21世紀COEプログラム、キーテクノロジー研究開発の推進、地球観測システム構築推進プラン、原子力システム研究開発事業、戦略的創造研究推進事業、先端計測分析技術・機器開発事業、革新技術開発研究事業、独創的シーズ展開事業、産学共同シーズイノベーション化事業、地域結集型研究開発型プログラム等、重点地域研究開発推進プログラムの13制度であるが、ガイドラインの対象はこの13制度に私立大学学術研究高度化推進事業を加えた14制度とする。

○ プロジェクト型研究については、競争的資金によって行われてはいないが、研究費と研究活動には一定の対応関係があり、求められる成果が不正行為により得られなくなる場合もあることから、競争的資金を活用した不正行為への対応の制度化を踏まえ、これに準じた制度を導入することが望まれる。

[プロジェクト型研究]

 府省直轄で、特定の研究課題について、選定した研究機関に研究プロジェクトを委託するトップダウン型研究。次世代スーパーコンピューターの研究開発、たんぱく3000など。

(2)告発等の受付(大学・研究機関、文部科学省、資金配分機関)

○ 不正行為が指摘される場合、告発や相談、報道などが考えられるが、告発等を受付けるため、文部科学省、日本学術振興会などの資金配分機関、大学・研究機関それぞれに窓口を設置することでよいか。
○ 告発等は、不正行為の内容や不正行為を行った者(グループ)が明確であり、かつ不正とする根拠が示されているもののみを受付ける。受付ける告発等は、悪意に基づく告発の防止や、悪意に基づく告発者の措置を考えると、原則として実名に限定してはどうか。ただし、匿名の告発等を受けて、大学・研究機関が自らの判断で調査・事実確認を行うことを妨げないとしてよいか。
○ 告発等の窓口の設置は告発を奨励することを狙いとしたものではない。

(3)調査・事実確認(大学・研究機関、文部科学省、資金配分機関)

1 実施機関

○ 不正行為が指摘されたとき、不正行為かどうかの調査・事実確認は、原則として被告発者が所属する大学・研究機関が実施することでよいか。被告発者が複数の機関に所属している場合、不正行為が指摘された研究を主に行っていた大学・研究機関が実施するか、複数の機関が合同で実施することでよいか。
○ 調査・事実確認開始の時点で、被告発者が不正行為を指摘された研究を行っていた時に所属していた大学・研究機関に所属していない場合においても、当該大学・研究機関は調査・事実確認を行う。
 この場合、調査・事実確認開始の時点で、被告発者が当該大学・研究機関とは別の大学・研究機関に所属しているときは、現に所属している大学・研究機関と不正行為を指摘された研究を行っていた時に所属していた大学・研究機関が合同で調査・事実確認を行う
○ 被告発者が調査・事実確認開始の時点及び不正行為を指摘された研究を行っていたときの両方の時点でどの大学・研究機関にも所属していない場合や調査・事実確認を行うべき大学・研究機関による調査・事実確認の実施が特に著しく困難な場合は、不正行為に係る研究費を配分した機関が行うことでよいか。なお、研究費を配分した機関が複数ある場合は、合同で行うことが考えられる。資金配分機関が調査・事実確認を行う場合、資金配分機関は、不正行為と指摘された研究と関連がある大学・研究機関、学協会に調査・事実確認を委託することができるとしてはどうか。
○ 不正行為かどうかの調査・事実確認には多大の時間と労力が費やされることから、大学・研究機関に代わり、学協会等の研究者コミュニティがこれを行うことがあってもよいのではないか。この場合、不正行為の調査・事実確認を行う外部の機関等が方法・手段を蓄積したり、人材を養成することを可能とする方策が必要となると思われる。

2 実施体制

○ 調査・事実確認を行う機関は、例えば、当該研究機関に属さない研究者など第三者も含む調査委員会を設置する。調査委員会は告発者及び被告発者と利害関係を有しない者で構成される。調査委員の氏名は被告発者に対し、その求めに応じ開示される。
○ 調査委員会の機関内での位置づけについては、各大学・研究機関の実情に応じて、各機関において定められる。

3 実施方法等

○ 予備調査と本調査の2段階で実施する。予備調査は告発等を受け、指摘された行為が可能性があるか、告発等が科学的合理的理由に基づくものであるかなどを調査し、本格的な調査をすべきものであるときは本調査を行う。
○ 調査を行う期間を設定することは難しいが、いたずらに長期化することを防ぐため目安として設定する(例えば、予備調査は1ヶ月、本調査は6ヶ月など)。
○ 本調査を行う場合、大学・研究機関は、告発等に係る研究に関して証拠となる資料等を保全する措置をとる。この措置に影響しない範囲であれば被告発者の研究活動を制限しない。
○ ただし、資金を配分する機関又は被告発者が所属する大学・研究機関は告発された研究に係る研究費の使用を一時的に停止する措置をとることができる。また、資金を配分する機関は不正行為かどうかの認定がされるまでは、当該研究に係る研究費の未交付分の交付停止や、既に別に被告発者から申請されている競争的資金の採択の決定あるいは採択決定後の研究費の交付を保留することができる。
○ 本調査においては、被告発者の弁明の機会を必ず設ける。
○ 本調査において、被告発者が、不正行為と指摘された研究について、再現性を示すときは、それに要する期間と機会(機器、経費等を含む)が保障される必要がある。

4 不正行為の有無の認定

○ 不正行為であるかどうか、不正行為の場合、だれがどう不正行為に関わったのか、あるいは不正行為でない場合、悪意に基づく告発であったかどうかについて、本調査を踏まえ専門性に基づいて調査委員会が認定する。
○ 不正行為と認定する基準については、例えば以下のことが考えられる。

  • 被告発者が不正行為を認める。
  • 実験・観察を行いデータを収集・整理した者が不正行為を認める。
  • 不正を指摘された論文の根拠となる実験に再現性がないことに正当な理由がない。など

○ 不正行為と指摘された研究者は、潔白を主張する場合、自ら挙証責任を負う。このとき、生データや実験・観察ノート、実験試料・試薬の不存在など、存在すべき基本的な要素の不足により証拠を示せない場合は不正行為とみなされるということでよいか。
○ 不正行為と認定された者及び悪意に基づく告発と認定された告発者は、調査委員会に対し、理由を添えて不服申し立てを1回に限り行うことができる。調査委員会は不服申し立てが妥当であるかどうか審査し、妥当と判断したときは、認定が変更されるが、妥当でないと判断したときは、認定は変更されない。

5 調査結果などの公表時期

○ 科学研究は既に発表された研究成果に影響されることから、調査・事実確認を行った機関は不正行為かどうか認定した後速やかに、不正行為と認定された者の氏名も含め調査結果等を公表することが適当である。このとき、調査委員の氏名・所属、調査・事実確認の内容・手法等も公表する。

(4)告発者・被告発者の保護(大学・研究機関、文部科学省、資金配分機関)

1 不利益の防止

○ 告発者が告発したことによって所属機関等から解雇等不利益を受けないことが必要である。また、被告発者が告発されたことのみをもって全面的な研究活動が禁止されるなど不利益を受けないようにすることが必要と考えられる。

2 情報管理

○ 告発者の求めに応じ、告発者が被告発者などから特定されないようにすることが求められる。また、公表まで調査内容や告発内容が関係者以外に漏出しないようにすることも重要である。

3 悪意に基づく告発の防止

○ 特定の研究者を陥れるなど悪意に基づく告発を防止するため、原則的に実名による告発のみを受付けることや、悪意に基づく告発を行った者に対する措置、告発には科学的合理的理由が必要なこと等を周知しておくことが必要である。

(5)不正行為と認定された場合の措置(文部科学省、資金配分機関)

1 措置の決定手続

○ 不正行為が認定された後、速やかに当該不正行為に係る研究費を配分した機関は、不正行為と認定された者に対する競争的資金についての措置(以下、「措置」という。)を検討する委員会を設置する。文部科学省においては、科学技術・学術審議会に置くことが適当と考えられる。
○ 検討委員会は利害関係を有しない第三者で構成される。
○ 検討委員会において、調査・事実確認を行った大学・研究機関のヒアリング等を行い、調査結果、調査内容、調査手法などを確認の上、不正行為の悪質性等も考慮して措置を検討し、結果を当該委員会を設置した機関に報告する。機関はこの報告に基づき措置を決定する。
○ 措置を行った後、大学・研究機関が行った不正行為の認定について訴訟が提起されても、裁判所の判断がない限り措置は継続される。
○ 措置を行う前に、大学・研究機関による不正行為の認定とそれに基づく処分について訴訟が提起された場合についても、訴訟の結果を待たずに措置を行ってよいか。あるいは、不正行為と認定された研究に係る研究費の未交付分の交付停止や別に不正行為と認定された者から申請されている競争的資金の採択の決定又は採択決定後の研究費の交付を保留するにとどめるのがよいか。
○ 措置を行った後、訴訟において、大学・研究機関の不正行為の認定が誤りであった旨の結果が出た場合、措置は撤回されるとともに、研究費の返還の措置であった場合は、研究者への返還、研究費の不交付・打ち切りの場合は、交付再開となるとしてよいか。

2 措置の対象

○ 措置は、次の者を対象とすることが考えられる。
 ア)不正行為に関与したと認定された著者(共著者を含む。以下同じ)。
 イ)不正行為に関与したと認定されていないものの、不正と認定された論文の著者。
 ウ)不正と認定された論文の著者ではないが、当該不正行為に関与したと認定された者。

3 不正行為と認定された者への措置の公表

○ 不正行為と認定された者への措置は措置決定後、氏名も含め速やかに公表することが適当である。

4 措置の内容

 措置の内容は以下の事項が考えられる。なお、対象者の不正行為への具体的な関与の度合により、事例ごとに措置の内容が定まる。

1)競争的資金の不交付・打ち切り

○ 2に挙げられるすべての者に対して、現に配分されている、あるいは配分が予定されているがまだ配分されていない、不正と認定された当該研究に係る競争的資金については、不正行為の認定後は交付しない。
○ 2に挙げられる者に対して、現に配分されている、あるいは配分が予定されているがまだ配分されていない、不正行為と認定された当該研究
以外の研究に係るすべての文部科学省所管の競争的資金については、不正行為の認定後は以下のとおりとしてはどうか。

  • 2のうちアとウの者が研究代表者となっている研究については、交付しない。
  • 2のうちアとウの者が研究分担者又は研究補助者となっている研究については、当該者の研究費使用を認めない。
2)競争的資金申請の不採択

○ 不正行為が認定された時点で出されている競争的資金の申請で、2のうちア、ウの者が研究代表者となっているものについては採択しない。
○ 不正行為が認定された時点で出されている競争的資金の申請で、2のうちア、ウの者が研究分担者又は研究補助者となっているものについては、当該者の差し替えがなければ採択しない。

3)不正行為に係る競争的資金の返還

○ 2に挙げられるすべての者に対して、未使用の研究費の返還や契約後まだ届いていない機器等の契約解除などを求めることが考えられる。
○ 研究の当初から不正行為を行うことを意図していた場合など極めて悪質な場合は、不正行為が認定された当該研究に係る競争的資金の全額の返還を求めることが考えられる。

4)競争的資金の申請制限

○ 2に挙げられるすべての者に対して、その悪質性や関与の度合に応じて一定期間(例えば1年間から10年間)の文部科学省所管のすべての競争的資金の申請を制限する。
○ 他省庁の競争的資金を活用した研究活動に不正があった研究者による文部科学省所管の競争的資金の申請については、申請制限を適用することでよいか(不正使用・経理と同じ手法)。

(6)不正行為と認定されなかった場合の措置(大学・研究機関(文部科学省、資金配分機関))

1 被告発者の名誉回復・不利益回復措置

○ 大学・研究機関は、調査対象となった研究活動の停止等の調査の際とった措置を解除するとともに、不正行為でなかった旨を周知するなど名誉回復措置を講じる。文部科学省又は資金配分機関がとった研究費交付の保留などの措置を解除する。

2 悪意に基づく告発者に対する措置

○ 告発が悪意に基づくものであると認定された告発者に対しては、氏名や行為の内容を公表とともに、大学・研究機関が刑事告発したり、告発者の所属機関が懲戒処分などを行うことが求められる。

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科学技術・学術政策局政策課

(科学技術・学術政策局政策課)