参考資料7 研究上の不正行為に関する適切な対応について

平成18年2月28日
総合科学技術会議

1.はじめに

 科学技術の研究は、事実に基づく研究成果の積み重ねの上に成り立つ壮大な創造活動である。この真理の世界に偽りを持ち込む研究上の不正は、科学技術及びこれに関わる者に対する信頼性を傷つけるとともに、研究活動の停滞をもたらすなど、科学技術の発展に重大な悪影響を及ぼすものである。
 平成17年12月27日に総合科学技術会議が行った「科学技術に関する基本政策について」の答申においては、このような問題に関し、「国及び研究者コミュニティ等は、(中略)ルールを作成し、科学技術を担う者がこうしたルールにのっとって活動するよう促してゆく。(中略)こうしたルール形成に当たり、総合科学技術会議は関係府省と連携をとりつつ、先見性を持って基本ルール作りに関与していく。」としている。
 総合科学技術会議としては、研究上の不正の問題に関する速やかな対応が必要であるとの認識から、研究に関わる者の自律を基本としつつ、日本学術会議をはじめとする研究者コミュニティ、関係府省、大学及び研究機関等が、それぞれの立場において、倫理指針や研究上の不正に関する規定を策定するなどの対応を行うよう求めるものである。(別紙1.及び2.参照)

2.日本学術会議等における対応

 日本学術会議において、すでに「科学者の行動規範に関する検討委員会」を設置して検討が行われているところであるが、研究者コミュニティ全体として、研究に関わる者の自律性を高めるべく対応することが重要である。

3.各研究機関における対応

 研究活動の場となる大学及び研究機関においては、不正に関する調査及び処分の手続き、研究費の取り扱い等に関し、あらかじめ規定を定め、関係者に周知を図る必要がある。
 調査に当たっては、調査の中立性、公平性、専門性の確保、告発者及び被告発者等の適切な保護などに留意する必要がある。
 不正の判断及び処分については、科学的証拠に基づきつつ、意図的であるか等の悪質性の観点も考慮し、いたずらに研究活動の萎縮を招かないよう留意して、慎重かつ厳正に行うことが重要である。
 また、日頃から、適切な研究活動の在り方について指導及び徹底を図ることが重要である。(別紙3.参照)

4.関係府省等における対応

 国による研究費の提供を行う府省及び機関は、不正が明らかになった場合の研究費の取り扱いについて、あらかじめ明確にする。また、研究費の配分先となる組織に対して、研究上の不正に関する規定の策定及び不正の防止に向けた対応を求める。

5.フォローアップ

 関係府省等においては、上記4.の対応について、本年夏までに結論を得るべく速やかに検討を開始する。
 総合科学技術会議は、本年夏の平成19年度概算要求にかかるヒアリング時等においてフォローアップを行う。

(別紙)
1.「科学技術に関する基本政策について」に対する答申(平成17年12月27日)
(関連部分の抜粋)

第4章 社会・国民に支持される科学技術

1.科学技術が及ぼす倫理的・法的・社会的課題への責任ある取組

 科学技術の急速な発展により、ヒトに関するクローン技術等の生命倫理問題、遺伝子組換え食品に対する不安、個人情報の悪用に対する懸念、実験データの捏造等の研究者の倫理問題など、科学技術は法や倫理を含む社会的な側面に大きな影響を与えるようになってきている。科学技術の社会的信頼を獲得するために、国及び研究者コミュニティ等は、社会に開かれたプロセスにより国際的な動向も踏まえた上でルールを作成し、科学技術を担う者がこうしたルールにのっとって活動するよう促してゆく。(中略)こうしたルール形成に当たり、総合科学技術会議は関係府省と連携をとりつつ、先見性を持って基本ルール作りに関与していく。さらに、日本学術会議も研究者コミュニティを代表する立場から、これに貢献していく。また、研究者・技術者の倫理観を確立するため、大学等における教育体制の構築、学協会等における研修体制の構築・倫理指針の策定等を促す。(略)

2.研究上の不正について

 研究上の不正とは、主として、研究の提案、実行、研究成果の発表等における、ねつ造、改ざん、盗用を指すものであり、悪意のない間違い及び意見の相違はこれには含まれない。なお、研究資金の不正経理及び不正受給については、既に別途対応がなされており、本意見では対象としていない。

3.各研究機関における規定策定に当たっての留意事項

 各研究機関における規定の策定に当たって留意すべき主な事項の例を、以下のとおり参考として示す。
○ 不正にかかる告発の受付、本調査の要否にかかる予備調査、本調査、裁定といった、段階を経た手続き。
○ 公平性、中立性、専門性を確保するための外部者を含む調査組織の構成。
○ 不正を告発した者の秘密の保持をはじめとする関係者の保護。
○ 不正の調査に関する情報の管理、調査に関わった者による情報の秘密保持。
○ 研究上の不正が生じないための研究環境の在り方(研究データ、研究ノート等の管理・保管方法など)。

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科学技術・学術政策局政策課

(科学技術・学術政策局政策課)