同志社大学研究倫理規準

2005年4月23日制定

前文

 社会のグローバル化、多様化に伴い、学術研究の社会的役割も複雑化し、その人間、社会、自然に及ぼす影響は極めて大きなものとなっている。その影響は、研究成果のみならず、研究活動すべての過程における行為によって、同時的かつ広範囲に及ぶ。
 学術研究が公共の福祉の増進に寄与し、持続的に進展を遂げるためには、研究の自由及び研究者の自治が保障されなければならないし、そのことによって自らを律する高度な倫理的規範が求められることも自明である。
 学術研究の発展は人類の福祉に多大な貢献をするとともに、同時に、その成果が非人道的な政策・手段に用いられたりした負の面も合わせもっていることに、我々は深く思いをいたさねばならない。
 大学は、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする使命を担っており、学術研究が社会から負託された公共的、公益的な知的生産活動であることを真摯に受け止めなければならない。
 同志社大学は、本学の学術研究が社会から信頼と尊敬を得るべく、あらゆる努力をはらうことを宣言する。

(目的)

第1条 同志社大学は、本学の学術研究の信頼性と公正性を確保することを目的とし、研究を遂行する上で求められる研究者の行動・態度の倫理的規準をここに定める。

(研究の基本)

第2条 研究者は、良心と信念に従って、自らの責任で研究を遂行し、不当な圧力により研究成果の客観性を歪めることがあってはならない。
 2 研究者は、生命の尊厳及び個人の尊厳を重んじ、基本的人権を尊重しなければならない。
 3 研究者は、国際的に認められた規範、規約及び条約等、国内の法令、告示等及び本学の諸規程を遵守しなければならない。

(定義)

第3条 「研究者」には、本学の専任教員のみならず、本学において研究活動に従事する者を含み、学生であっても、研究に関わるときは「研究者」に準ずるものとする。
 2 「研究」には、研究計画の立案、計画の実施、成果の発表・評価にいたるすべての過程における行為、決定及びそれに付随するすべての事項を含むものとする。
 3 「発表」とは、自己の研究に係る新たな知見・発見又は専門的知見を公表するすべての行為を含むものとする。

(研究者の態度)

第4条 研究者は、自己の専門研究が及ぶ範囲を自覚し、他分野の専門研究を尊重するとともに、自己研鑽に努めなければならない。
 2 研究者は、他の国、地域、組織等の研究活動における、文化、慣習、規律の理解に努めなければばらない。
 3 研究者は、共同研究者が対等なパートナーであることを理解し、お互いの学問的立場を尊重しなければならない。研究協力者、研究支援者等に対しては、謝意をもって接しなければならない。
 4 研究者は、学生が共に研究活動に関わるときは、学生が不利益を蒙らないよう十分な配慮をしなければならない。
 5 研究者は、自己の研究計画について、分かりやすく、明瞭に説明できるよう努めなければならない。
 6 研究者は、研究遂行中において、計画進捗状況の自己点検を行い、適切な時期に途中経過の報告ができるよう努めなければならない。

(研究のための情報・データ等の収集)

第5条 研究者は、科学的かつ一般的に妥当な方法、手段で、研究のための資料、情報、データ等を収集しなければならない。
 2 研究者が、研究のために資料、情報、データ等を収集する場合は、その目的に適う必要な範囲において収集するよう努めなければならない。

(インフォームド・コンセント)

第6条 研究者が、人の行動、環境、心身等に関する個人の情報、データ等の提供を受けて研究を行う場合は、提供者に対してその目的、収集方法等について分かり易く説明し、提供者の明確な同意を得なければならない。
 2 組織、団体等から、当該組織、団体等に関する資料、情報、データ等の提供を受ける場合も前項に準じるものとする。

(個人情報の保護)

第7条 研究者は、プライバシー保護の重要性に鑑み、研究のために収集した資料、情報、データ等で、個人を特定できるものは、これを他に洩らしてはならない。

(情報・データ等の利用及び管理)

第8条 研究者は、研究のために収集又は生成した資料、情報、データ等の滅失、漏洩、改ざん等を防ぐために適切な措置を講じなければならない。
 2 研究者は、研究のために収集又は生成した資料、情報、データ等を適切な期間保存しなければならない。ただし、法令又は規程等に保存期間の定めのある場合はそれに遵うものとする。

(機器、薬品・材料等の安全管理)

第9条 研究者が、研究実験において研究装置・機器等及び薬品・材料等を用いるときは、関係取扱規程、要領等を遵守し、その安全管理に努めなければならない。
 2 研究者は、研究の過程で生じた残渣物、使用済みの薬品・材料等について、責任をもってその最終処理をしなければならない。

(研究成果発表の規準)

第10条 研究者は、研究の成果を広く社会に還元するため、公表しなければならない。ただし、産業財産権等の取得及びその他合理的理由のため公表に制約のある場合は、その合理的期間内において公表しないものとすることができる。
 2 研究成果は、学問的誠実性と論理的忠実性によって導かれた、新たな知見、発見であることに鑑み、研究者は、他者の成果を自己の成果として発表してはならない。
 3 研究者は、研究成果の発表に際しては、先行研究を精査し尊重するとともに、他者の知的財産を侵害してはならない。
 4 研究成果発表における不正な行為は、大学及び研究者に対する社会の信頼性を喪失する行為であることを研究者は自覚し、次に掲げる不正な行為は、絶対にこれをしてはならない。
 (1)捏造(存在しないデータの作成)
 (2)改ざん(データの変造、偽造)
 (3)盗用(他人のデータや研究成果等を適切な引用なしで使用)
 5 研究発表における不適切な引用、引用の不備、誇大な表現、都合のよい誤解をさせる表現等は、不正行為とみなされる恐れがあり、研究者は、適切な引用、誤解のない完全な引用、そして真摯な表現をしなければならない。

(オーサーシップの規準)

第11条 研究者は、研究活動に実質的な関与をし、研究内容に責任を有し、研究成果の創意性に十分な貢献をしたと認められる場合に、適切なオーサーシップを認められる。

(研究費の取扱規準)

第12条 研究者は、研究費の源泉が、学生納付金、国・地方公共団体等からの補助金、財団等からの助成金、寄付金等によって賄われていることを常に留意し、研究費の適正な使用に努め、その負託に応えなければならない。
 2 研究者は、交付された研究費を当該研究に必要な経費のみに使用しなければならない。
 3 研究者は、研究費の使用に当たっては、法令、本学の経理規程、当該研究費の使用規定等を遵守しなければならない。
 4 研究者は、証憑書類等を適切に管理し、実績報告においては、研究遂行の真実を明瞭に記載しなければならない。

(他者の業績評価)

第13条 研究者が、レフリー、論文査読、審査委員等の委嘱を受けて、他者の研究業績の評価に関わるときは、被評価者に対して予断を持つことなく、評価基準、審査要綱等に従い、自己の信念に基づき評価しなければならない。
 2 研究者は、他者の業績評価に関わり知り得た情報を不正に利用してはならない。当該業績に関する秘密は、これを保持しなければならない。

(同志社大学の責務)

第14条 本学は、研究者の研究倫理意識を高揚するために、必要な啓発、倫理教育の計画を策定し、実施するものとする。
 2 本学は、この規準の運用を実効あるものにするため、研究者の研究倫理に反する行為に対しては適切な措置を講じるものとする。
 3 本学は、研究に関して、不当又は不公正な扱いを受けた者からの苦情、相談等に対応するものとする。
 4 前3項の目的を達成するため、同志社大学研究倫理委員会を設置する。
 5 同志社大学研究倫理委員会に関する事項は別に定める。

(事務)

第15条 この規準に関する事務は、研究開発推進機構研究開発推進室が取り扱う。

(改廃)

第16条 この規準の改廃は、同志社大学研究倫理委員会の議を経て、大学評議会において決定する。

附則

 この規準は、2005年5月1日から施行する。

お問合せ先

科学技術・学術政策局政策課

(科学技術・学術政策局政策課)