資料6 第12回基本政策専門調査会議事に関するコメント等

基本計画特別委員会
(懇談会)平成17年11月18日
真行寺 委員

基本理念および戦略的重点化に関する答申素案について

9ページ「基礎研究の推進

多様性を確保しつつ質の高い科学技術を目指す基礎研究に関しては、一定の資源を確保して着実に進める。」の部分。
科学技術を目指す基礎研究のみを対象にするという考え方は、真の意味の基礎研究の発展を阻害する。また、10ページの、「研究者の 自由な発想に基づく研究」をふくむのであれば、これとも矛盾する。
ここは、「質の高い基礎研究は、その成果の蓄積と統合化により、飛躍的かつ人類の幸福に結びつくような科学技術の発展につながる知の基盤を生み出す。したがって、基礎研究の多様性を重視しつつ、一定の資源を確保して着実に進める。」のように修正すべき。この、「蓄積」が研究者の自由発想による基礎研究であり、「統合化」がプロジェクト型の重点研究をさすことになる。
また、「飛躍的かつ人類の幸福に結びつくような」を加えたのは、第12回基本政策専門調査会議事録を拝見して、研究者の自由な発想のみでよいのか、という議論がありましたので、入れさせていただきました。また、これを受けて、10ページの「基礎研究については、人文・社会科学を含め、研究者の自由な発想に基づく研究と、政策に基づき将来の応用を目指す基礎研究があり、それぞれ、意義を踏まえて推進する。」については、表現について、上記議事録ではよい案が出されていなかったようです。「基礎研究については、人文・社会科学を含め、高い問題意識を有する研究者による自由な発想に基づく熱意あふれる研究と、政策に基づき将来の応用を目指す基礎研究があり、それぞれ、意義を踏まえて推進する。」という表現が考えられます。

7ページノーベル賞受賞部分の表現は、削除すべきではないか。ノーベル賞は、ごく限られた研究成果への評価でしかない。これにとらわれるのではなく、独創性の評価を日本で打ち立てていくことにより、これまでにはない飛躍的科学技術に結びつくものが生まれるのではないか。もしこの表現を残したいのであれば、「ノーベル賞受賞者を生み出すには基礎研究の推進が不可欠であり、そのための研究助成と人材育成を実現できる制度を構築する。」などの表現に変更すべきであろう。

科学技術システム改革に対する基本政策について

1-1(4)自校出身者比率の抑制:「抑制」ではなく、「適正化」が好ましい。抑制とすると、この内容に書き込まれているニュアンスが誤解される可能性が高い。

(5)「女性研究者がその能力を最大限に発揮できるようにするため、男女共同参画の観点も踏まえ、競争的資金等の受給において出産・育児等に伴う一定期間の中断や期間延長を認めるなど、」出産育児は大きな問題ではあるが、これだけが障害になっているのではない。「女性が働く場としての組織・制度・施設等の問題点の速やかな改善、」をこの下線部の前に入れてほしい。

2.大学の競争力の強化
(1)世界の科学技術をリードする大学の形成

「分野別の論文引用数20位以内の拠点が、結果として30拠点程度形成されることを目指す。」論文引用数については、その評価の根拠についてさまざまな疑問が出されており、この数値を重視して判定を行うという表現は避けるべきであろう。「たとえば、論文引用数20位以内などの拠点が」の文章は括弧内に収めるか、削除するべき。


小宮山 委員

「基本理念及び科学技術の戦略的重点化に関する答申素案」に対するコメントについて、1及び2については9月28日の総合科学技術会議基本政策専門調査会でも発言しており、3については後日同じコメントをCSTP事務局へ提出しました。また、「科学技術システム改革に関する基本政策」に対するコメントについては、これまでに総合科学技術会議の議論の中で述べてきた意見のうち、取り入れられなかったものをまとめてあります。

1.「基本理念および科学技術の戦略的重点化に関する答申素案」について

1.第1章 基本理念 1.科学技術をめぐる諸情勢 に書くべきこと(P2~5)

(1)イノベーション-科学技術、財政、社会システム

イノベーションはいかに生まれるかということの認識を基本理念に書いておくことは重要。イノベーションは科学技術だけで生まれるものではなく、財政のバックアップと社会システム改革と一体となってはじめて生まれるということを基本理念のほうにも問題意識として書くべき。

(関連記述)

「科学技術システム改革に関する基本政策」の中の「円滑な科学技術活動と成果還元に向けた制度・運用上の隘路の解消」(P21~22)

(2)国立大学法人等の施設や設備の整備

施設・設備は、日本の国際競争力を左右する真に重大な課題。最先端の研究施設・設備が整った環境に優秀な研究者は世界から集まり、国際競争が展開している。よって、国立大学法人等の施設や設備の整備が極めて厳しい状況であることの背景を第1章に明記しておくべきである。内容は以下二点。

  1. 独立行政法人化や国立大学法人化によって、一機関につけられる予算の額が極めて限られてしまったこと
  2. 補正予算がなくなったこと
(関連記述)

「科学技術システム改革に関する基本政策」の中の「施設・設備の計画的・重点的整備(1)、(2)、(5)」(P23~25)

2.モノから人へ(P5)

9月28日の案文だと、科学技術の中でモノから人へ、という書きぶりになっているが、そもそもは日本全体として、たとえば道路などのモノから人材育成へという打ち出しだったはずであり、その趣旨で、「我が国全体の政策の視点として、ハードなインフラの整備を先行する考え方から、優れた人材の育成を優先させる考え方に重点を移していく」と書くべき。但し、ハードなインフラと表現すると研究の施設や設備も入ってしまうということであれば、「我が国全体の政策の視点として、優れた人材の育成を優先させる考え方に重点を移していく」と表現することも考えられるのではないか。

3.国家基幹技術について(P11)

戦略的重点科学技術の選定の3については、国家基幹技術のことを書いてくださっているが、この投資の観点は、国民経済上の効果だけではなく、社会的効果もあるので、「国民社会・経済上の効果」としたほうが適切。
また、(3)3の文章に連続して記述するかどうかについては事務局に一任するが、国家基幹技術については、例示がないと国民に理解されることが難しいと考えられることから、例示を入れるべきと考える。入れる内容は、国家基幹技術として概ね賛同を得られるであろう次世代スーパーコンピューティング、宇宙輸送システム技術を復活させる形でよろしいと思う。

2.「科学技術システム改革に関する基本政策」について

1.競争的資金及び間接経費の拡充(P10(1)) 本項目4行目

間接経費30パーセントについては、「全ての制度において、まずは、30パーセントの措置をできるだ け早期に実現する。」と下線部を挿入していただきたい。
(理由)
次期計画以降につなげるため。

2.イノベーション創出を狙う競争的環境の強化(P14) 本項目下から4行目

「目的基礎研究」という表現はあまり定着していないように思うがどうか。第二種基礎研究と同義であれば、その表現のほうが受け手に共通的理解がされやすいと考える。

3.研究開発型ベンチャー等の起業活動の振興(P18)

振興策として、以下の2点を加えていただきたい。

  • 大学発ベンチャーで開発されたものを、その大学が買うことについてのモラルハザードについてクリアであることを国において明確に整理する。
    (理由)ベンチャーの開発したモノに対する需要を創出することは、ベンチャー企業が発展する上で重要であるため、それを躊躇させる事柄について、できること・できないことの整理をすることは重要であるため。
  • 政府調達における入札資格審査の緩和を行う。(P18 6~9行目でクリアできることであれば加筆の必要はないがどうか。)
    (理由)政府調達の仕組みがある以上、ベンチャー企業が入札の資格審査を通ることは事実上無理であると考えられることから、公的機関のベンチャーに対する需要の機会喪失になり、それを解消することが有効なベンチャー支援になると考えるため。

4.研究費配分における無駄の徹底排除(P19~20)

研究者個人の適切なエフォートを超えた過度の研究資金の集中について、「研究者のマネジメント能力及び適切な研究体制の有無が適切なエフォートを超えているかどうかの重要な判断材料となることを踏まえ、一律にプロジェクト件数や額で制限を設けるようなことにならないよう留意する。」という趣旨の一文を、この項目の最後のほうでかまわないので入れていただきたい。理由は修文案にあるとおり。

5.大学や公的研究機関による研究者のエフォート管理(P20)

機関のエフォート管理について記述いただいているが、機関側の立場としては、大学の場合、教員の一義的な任務である教育・研究のエフォートを確保した上で、プラスアルファの仕事をしていただくということになる。
機関のエフォート管理を定着させていくということに関しては、例えば、資金の配分機関が、ある教員を一本釣りしてビッグプロジェクトを落とすようなことはやめていただき、事前に機関に相談していただくという仕組みにしないとワークしないと考えるが、そこまで視野に入れての記述という理解でよいか。

6.公的研究機関における研究開発等の推進(P29) 2~4行目

「機関の機能を高めるという観点から、(中略)機関の使命達成のために必要な経費が運営費交付金等により確実に措置されることがまず重要である。」とあるが、大学とのバランスで、「運営費交付金の全てが各公的研究機関の研究者数に比例して配分されるべきものではない」ということを入れていただきたい(公的研究機関についてはこのことが当てはまらないようにも聞きましたが、どうなのでしょうか)。


小磯 委員

第12回基本政策専門調査会資料に関する若干の質問・コメントを以下に述べさせていただきます。

1)資料2 p.10
「研究者の自由な発想に基づく研究の中でも、特に大きな資源の投入を必要とするプロジェクトについては、…」で言及しているプロジェクトと
資料1-2 p.24
(5)先端大型共用研究設備の整備・共用の促進で述べている先端大型共用研究設備との関係が不明瞭に思われます。前者は後者に含まれ、一律に優先順位付けがなされるのでしょうか。

2)国家基幹技術の例示について、例示が一人歩きすることを懸念され、手続き論を基本とし例示をしない方針をとられたことに賛成いたします。今後の議論で例示が必須とされる場合は、充分な議論の上、選択の正当性・公平性ができる限り明らかとなるようご配慮をお願いいたします。

3)資料1-2 p30 2アジア諸国との協力
最後に以下のような記述を追加してはいかがでしょうか。
「また、我が国のイニシアティブにより、アジアの次世代の人材育成に貢献し、アジア諸国の信頼を再構築しつつ、我が国の存在感を高めるための方策 (国際科学研究拠点の誘致等)を推進する。」

参考)学術会議「日本の科学技術政策の要諦」


内永 委員

まずはこの「科学技術システム改革の主要政策」ならびに「同基本政策」、「基本理念及び科学技術の戦略的重点化に関する答申素案」を議論、作成いただいた基本政策調査会委員長ならびに委員各位、事務局の方々に、深く感謝を申し上げます。第3期科学技術基本計画は、日本の科学技術が確固たる世界のトップレベルとなるため、そして社会における科学技術利活用推進のための、もっとも重要かつ礎となる計画と認識しております。
文部科学省科学技術・学術審議会基本計画特別委員会で討議された内容も網羅されており、引き続き、総合科学技術会議での第3期科学技術基本計画の更なる討議とすみやかな決定、計画の実行に、期待いたします。
ただし、昨今の事情を鑑み、下記の点について追記していただきたく、ご検討をお願いいたします。

サービス・サイエンス分野の研究促進

日本の産業において、第三次産業=サービス産業の進展は目覚しいものがあります。しかしその反面、これまで日本が推進してきた「ものづくり、製造業」の産業に比べ、サービス産業は生産性が低く、国際競争力に欠けるとの指摘があります。
これまで議論されてきたものづくり・製造業に加え、サービスについても同様の議論とイノベーションの推進方策が必要と考えます。
つきましては「振興領域・融合領域」(『基本理念及び科学技術野戦略的重点化に関する答申素案』p12「(6)振興領域・融合領域への対応及び横断的課題への取り組み」部分)のひとつとして、サービスのもたらす科学技術のイノベーションについても取り上げていただけますよう、要望いたします。

お問合せ先

科学技術・学術政策局計画官付

(科学技術・学術政策局計画官付)