資料6 基本計画特別委員会(懇談会)議事録(案)

科学技術・学術審議会
基本計画特別委員会(第12回)
平成18年2月2日

1.日時

平成17年11月18日(金曜日) 14時~16時

2.場所

三田共用会議所 第4特別会議室

3.出席者

委員:

末松主査、内永委員、笠見委員、岸委員、小磯委員、小平委員、真行寺委員、谷口委員、中西委員、馬場委員、山野井委員

事務局:

(大臣官房)白川文部科学審議官、小田総括審議官
(科学技術・学術政策局)丸山局長、下村次長、河村総括官、吉川政策課長、内丸計画官、田中基盤政策課長、
(研究開発局)森口局長、井田審議官、渡辺開発企画課長
(研究振興局)松川情報課長、杉野学術研究助成課長、里見学術企画室長
(文教施設企画部)金谷計画課長、山下整備計画室長
(科学技術政策研究所)小中所長、桑原総務研究官

4.議題

  1. 第3期科学技術基本計画について
  2. その他

5.配付資料

  • 資料1 「科学技術に関する基本政策について」に対する答申(案)(総合科学技術会議パブリックコメント用資料)
  • 資料2 第3期基本計画における戦略的重点化のイメージ(総合科学技術会議基本政策専門調査会(第14回)資料3)
  • 資料3 分野別推進戦略プロジェクトチームの当面の運用について(総合科学技術会議基本政策専門調査会(第14回)資料4)
  • 資料4 第3期科学技術基本計画に向けた主要な検討内容
  • 資料5 前回の基本政策専門調査会における審議の概略(第14回基本政策専門調査会(11月9日))
  • 資料6 第12回基本政策専門調査会議事に関するコメント等

6.議事概要

(1)第3期科学技術基本計画について

 事務局より資料1から資料6に基づき、第3期科学技術基本計画についての概要、現在の進捗状況等について説明があった。以下、科学技術に関する基本政策についての委員からの意見、質疑等。

【委員】

 基礎研究については踏み込んだ検討がされて大変喜ばしい。資料1の42ページに述べられている「日本学術会議・・・との密接な関係」に関して、日本学術会議と総合科学技術会議との密接な連携の仕方について、現在、文科省としてはどのように承知されているか。

【事務局】

 今年度から日本学術会議は、内閣府に場所を移している。その中で、日本学術会議の位置づけとしては、総合科学技術会議と並んで日本学術会議が研究者のコミッティを代表して、さまざまな活動を行おうとしている。現在は黒川会長のもとで非常に活発な活動がされていると認識している。日本学術会議から非常に具体的で前向きな提案が出ており、第3期科学技術基本計画の議論でもかなり影響が出ている。
 また、総合科学技術会議の有識者議員として、日本学術会議の会長自身が参加していることから、日本学術会議の意向を直接伝えるというような形にもなっている。日本学術会議も、活動が活発化する中で、今後は行政的な立場での総合科学技術会議の議論と、研究者コミッティの代表としての学術会議の議論とがますます融合するのではないかと理解している。

【委員】

 3点ほどお願いしたい。一つは資料1の10ページ目、「1.基礎研究の推進」の第2パラグラフの最初の文章で、「基礎研究には、人文・社会科学を含め、研究者の」云々とある。ここで「人文・社会科学を含め」という文言が入る理由が理解できない。自然科学だけではないということを強調するならば、別のところで出てきたほうが適切で、読み違えの危険性はないか。できれば取っていただきたい。
 その数行下のところで、基礎研究の2点あるうちの前者については「長期的視点の下で推進する。一方、後者については、次項以下に述べる」とあるが、前者のことにかかわる内容が大学における基礎研究などでこれ以降でも少しずつ触れられている。これも誤解を招く表現で、二つあるうちの一つ、前者のものについてはここで記述がもう終わり、後者の部分だけ以下に述べていくというような印象を受ける。そうではないので、その点を配慮してほしい。
 次のパラグラフの「なお、基礎研究全体が下記2.に基づく重点化の対象となるのではなく」云々の部分は財政的に基礎研究の前者の部分をどのように措置するかということが書かれていると思うが、明確ではない。財政的基盤としての方針と政策課題対応型としての方針の区分けが、一般の研究者はなかなかぴんとこない。ここはまだ整理が十分ではないので配慮いただきたい。
 2点目は、資料1の15ページの下の「4自校出身者比率の抑制」について。この項目立ての「抑制」という言葉は強すぎる表現として残っている。この内容を生かす場合は、適正化という言葉に変えるか、それと同等の言葉に変えていただきたい。内容については、自校出身比率の部分で、例えば東京大学など大きな大学は学部間あるいは専攻間、研究科間で動くということはあるわけで、それはある種の流動化ととらえてもよいのではないか。少し配慮していただきたい。
 3点目は、資料1の16ページの「5多様で優れた研究者の活躍の促進」という中の三つ、「女性」と「外国人」と「高齢研究者」中の一つとしての女性研究者という位置づけを是非やめていただきたい。5の前文のところにある表現の意識の中で、女性研究者の活躍を促進すべきという考えであれば、国際的に見て大変恥ずかしい後ろ向きの表現で、人口減少が見込まれ、少子高齢化、人が足りないから女性を使うという視点は時代おくれである。男女共同参画社会基本法という法律をつくった以上、女性研究者の位置づけはこのようにあってはいけないはず。項目立てを分けていただきたい。

【委員】

 第2章2.(3)「戦略重点科学技術に係る横断的な配慮事項」(資料1の12~13ページ)、1 2 3についてはニーズに合っていることもあるが、国際的な科学技術競争については、日本にとって何が科学技術骨幹の基本の技術かという評価軸を設定すべき。また世界の中で日本は何を戦略的に行っていくのかということを評価すべき。
 第3章2.(2)1「世界の科学技術をリードする大学の形成」(資料1の24ページ)について、30の研究拠点をつくるということは非常に良いが、30以外はどうなるかを考慮する必要がある。すばらしい大学のすばらしい100人を育てるより生産現場の技術を上げられる1万人を育てるほうが非常に難しい。両者の制度は異なるがつなげていく必要がある。
 技術者と研究者という使い分けがあるが、技術者を階層的に扱ってはいけない。階層を生み出すような発想は、日本の社会になじまない。また大多数の人を上手に底上げすることは非常に大切。
 第3章1.「人材の育成、確保、活躍の促進」(資料1の14ページ以降)では、能力をきちんと発揮できる社会が理想の社会。能力ある人が(能力を)発揮できる社会にするために、何パーセント(の人材を)どうするというのは(目標ではなく)手段である。そのための社会環境をつくるというのがまず根底にあるべき。
 システム改革の3番目(資料4「科学技術システム改革」3.科学技術振興のための基盤の強化)には、「標準化への積極的対応」が抜けている。標準化は大切なので是非もっと力を入れていただきたい。

【委員】

 1点目、第2章1.「基礎研究の推進」(資料1の10ページ)については、「真理追求型の研究」と「社会ニーズあるいは国家目標等に最終的にはつながるという可能性を持った基礎研究」の2つに明確に分けることは非常に大事。
 基礎的な研究の成果をどのように社会ニーズの実現へつなげるかといったときのイノベーションとしての一番最初のステップで、この基礎研究を二つに分けるという考え方。「真理追求型の研究」というのは、あくまでも一つのディシプリンを深めていき、その中から新しい法則や理論を見つけ出して、ディシプリンそのものをさらに豊かなものにしていくというのが基本的な価値観で、そのような方向で進めることが必要。しかしイノベーションというのは、一つのディシプリンでは絶対に実現せず、新しく開発されたことも含めて、どう複合あるいは融合するかによって進められる。同じ基礎段階の研究でも、そこに価値観や考え方の違いがはっきりあり、明確に分けないと大学等で行われている基礎研究がなかなか社会につながりにくい。
 心配なのは、企業の場合。もともと複数のディシプリンでなければ成り立たない社会を対象にしており、考え方は比較的抵抗はないが、基礎研究の段階では、大学の若者もここに参加することになる。大学における価値観が一つのディシプリンを深めて優れた論文を出すとすれば、考え方を切りかえなければならない。その場合にはどこの学会誌、どこの学会があるか。こういうイノベーションという部分は複数なので多分存在しない。そこで、その人たちをどう評価するか。イノベーションを進めるということは非常に大事であり、それが今回の原点の一つだとは思うが、勇気を持ってというよりも、自信を持って胸を張ってできるような仕組みをつくらないと、気持ちとしてなかなかそこに進まないのではないか。
 例えば、毎年6月に京都で行われている産学官連携推進会議では、昨年度から優れた非常に画期的な、産学連携の良い成果を出したところを総理大臣賞から始まって表彰していく。これが一番良いかわからないが、大事。そのようなところに光を当て、何々学会賞とか何々賞というだけではなく、イノベーションというところに参加する人たちをどう勇気づけていくか、この部分をどう考えるかということが一つないと、考え方は正しいがなかなか難しいかもしれないというのが私の感想。したがって、そこのところに政策的に何かあるのではないか。
 もう1点、地域の問題に関して。地域の振興といった場合、例えば国家目標として、世界レベルにおける我が国の産業(学術もあるかもしれないが)の中心として、このエリアはこういう分野・領域においてという考え方と、あくまでも地域のイノベーションと、厳密に考えるとこの二つの概念がある。
 国家レベルの問題はおいて、地域レベルで考えたときに、一体中心になるのはどこなのか。産官学とあるが、やはり行政が絵を描いて、そのエリアにある大学の知というものをベースとして産が一緒になって行うイメージ。全体のコーディネーションは、行政がうまく入り込んでいないとうまくいかないのではないか。これは文章としては大変結構だが、これを意味ある形にするための核をどこに置くのかという考え方を、もう少し深める必要がある。

【委員】

 中央では各省庁間の同じ研究のダブりをなくすということが議論されているが、地域でもその地域での研究所、例えば大きな独立行政法人の研究所などとのダブりをチェックすべき。地域ではどちらかと言えば今まで大きいところが行っていることをなぞっている面もあるが、もっと地域で特色のあるものを探すべき。

【委員】

 地域というものに焦点を合わせるべきであり、地域が中心。それに対して(行政が)どういう絵を描くか、あるいは声を上げて産学官が一緒になって考えるとか。あらゆる場面で核と言っているよりも、全体の方向づけと、それから国等においては動かしていくという部分がないと、これはうまくいかないのではないか。

【事務局】

 核というのは、言い方を変えると多分よきコーディネーターを得たところが成功するということ。全部見ているわけではないが、どのセクターにいるかということより、良いコーディネーターでリーダーシップのとれる方のいるところが成功しているので、必ずしも地方公共団体が中核的役割を果たすクラスターとか地域がうまくいくということではないのではないか。今の現実を見ているとそういう感じがする。

【委員】

 (地域振興について)日本が科学技術という面でリーダーシップをとっていく上で、大事なベースとなる。いろいろなところでイノベーションという言葉が使われており、科学技術の進歩が云々といろいろ出てくるが、人によって色々な考え方がある。これは良い例かどうかわからないが、アメリカの場合はイノベーションということで、今後世の中はどのようにイノベーションになっていくという白書を出している。いろんな人が集まって、どちらかというと科学技術がトリガーになって、大きな方向性、世の中のイノベーションがこう変わっていくというのを出している。
 その中でアメリカとして、どこに力を入れるのか、または研究所はどういうところに力を入れるのかというようなことが話されてくると、大体の大きな絵というか、山や木が見えてきて、その中でそれぞれの技術がどのように貢献していくかという全体像が見えてくるというものがある。
 この中で、将来の科学技術が進歩によって世の中がどのように変わっていくか、どういった科学技術がこれからとても大事な要素になっていくか、その中で日本は多分こういう分野でリーダーシップが発揮できるだろう、または発揮すべきだというような非常に大きなマクロ的なものを社会現象もひっくるめた格好で一つ出してみる。それを受けて、それぞれの地方では、我々はこの辺をやっていこうというようなことがあるのも、皆が同じ地図の上に立っていろいろな活動ができるという一つの方法かと思う。
 イノベーションというのはテクノロジーだけではできず、社会現象があり、経済の変化があり、ビジネスモデルが変わり、ライフスタイルが変わり、総じてイノベーションとなる。このようなことを俯瞰した将来の絵というのが出てきても良いと考える。それをベースとして、こういったプランがどのように位置づけられるかということで、国民から見るとよりわかりやすくなるという感じがする。

【委員】

 イノベーションというのはいろんな考え方があるが、イノベーションはシュンペーターも言っているとおり、最終的には経済・社会を変えていく。日本の将来をどうするかというスコープがあり、それに向けたイノベーションをしっかりやっていくということ。産業界も第3期の一番重要なポイントは、イノベーションが生み出されるようなシステムをどうやって築いていくかということ。それは大学、産業界、社会を一つにして、そういう構造が本当にできるかが、日本の広い意味での国際競争力を高めるために非常に重要なポイントだが、これからという感じ。資料1-1では戦略的科学技術領域という定義は一応行っている。戦略的科学技術領域というのは、先述したイノベーションを生み出すことも非常に大きなポイントになっている。資料2の分野別戦略検討では、今まで重点4分野の全部が重点だったが、それではまずいと(述べてある)。その中で六つの政策目標をクリアにして、六つの政策目標を実現できるような戦略重点科学技術をきちんと設定していくというのは、これから行われることになる。それも非常に重要である。
 日本の将来の姿を描くと、重点分野あるいはその他の分野も含め分野間の連携というのは大変多い。それから省庁間の連携も大変大きい。そういうバリアを超えて新しいイノベーションを生み出すための戦略重点科学技術の連携、連鎖をどうやってトータルとして行うかということが、多分大きな課題となる。
 質問は、資料1-1で、政府が決める基本計画案審議があるが、イノベーションが生み出されるような省庁間の連携はどのようなステップでどのように進むかが最大のポイント。絵はかいたけれども、実行体制は何もできていない。これからかいた施策をどのように実行できるものに持っていくかというのが重要。文部科学省の中ではそのような議論を来年の3月まで行っていくのか。今後はどう進むのか。

【主査】

 これは一番重要な検討課題の一つ。

【事務局】

 説明させていただいた答申案は、このように物事を決めるという手続論もしくは大枠を決めた骨格を定めているだけ。実際に進めていく上での実効的なプランを示さないと意味をなさない。
 そのうちの一つで総合科学技術会議のほうで行われるのは、この分野別の推進戦略ということで、八つの分野に分けたことによって、今言われた融合的な分野もしくは横串的に国としての重点をどのようにするか、総合科学技術会議の中でも大分意見が出ていた。そのような弊害をなくすために、横断的に見ていくようなことを進める話になっている。
 質問について、文部科学省としては分野別の戦略も大事だが、それに加えてイノベーションの話もあるので、もっと議論すべき点がたくさんある。既に一部、第3期の頭出しで出てきたような新規のものについては、幾つか省内でも具体的な検討の場を設け、3期の議論と並行しながらどのようにするかを進めていきたい。
 (それらを)基本計画そのものに書き込んだ場合、この冊子は分厚くなるので、階層構造としてこの基本計画を踏まえた実際のプランのようなものを行っていきたい。

【委員】

 今後、文科省で実行策をつくるときに、ここに挙がっている色々な施策は、文科省の中でも多くの局が絡む。しかし、色々な施策が一つのベクトルに向かって初めて力になるから、文科省の中でも局間や課間の連携を1本に絞って、本当にいい形の科学技術が振興し、その知恵がイノベーションにつながっていく。(いろんな施策のうち)かなりの部分を担っているのが文科省なので、ぜひそういうストラクチャーで今後具体的な実行計画を詰めていただきたい。

【委員】

 35ページの「(2)知的基盤の整備」の「1知的基盤の戦略的な重点整備」が8行あり、非常に重要であることが書いてあるが、極めてわかりにくい書き方になっている。重要であるため、ここは整理して、一読して明瞭にわかるように書いていただきたい。推量するに、研究などの実験装置などは今、研究現場では外国製が多数を占めていて、基礎的な研究基盤というのは非常に力が弱っているということが指摘されている。特にライフサイエンスのような現場では7割ぐらいは外国製の実験装置その他を使われている。得てして自然科学3分野ノーベル賞の業績などを見ると、新しい実験装置や手段を開発したために新しい知見にたどり着くということが非常に多い。したがって、ここの部分は非常に重要。
 しかし、二つの隘路があって、なかなか改善できない。一つ目は開発するに当たっては、採算がなかなかとれないこと。だからこそ国や公的支援というのが非常に重要。得てして大企業の関連企業、いわゆる子会社の中に商社機能を持った企業があって、そういうところが外国の製品を輸入して日本で売っている。そうすると、それに連なる企業は、自分の子会社や関連企業の営業妨害になるから参入しない。したがって、だれも手をつけられないということになっていく。これは国が主導的立場をある程度発揮してもらわないと、なかなか進まないのではないかと思う。この部分はきちんと書いてもらいたい。なお書きで3行書いてあるが、これはなお書きではない。「なお」ではなく、非常に重要であるということをコメントしたい。
 二つ目は、28ページの下の「3公的部門における新技術の活用促進」の部分。ここはよく書き込まれていて、簡単に言えば新しい技術なり成果が出てきたら、公的機関などは市場形成のために率先してそういうものを購入したり活用するべきであるということを指摘しているので、大変結構。産学連携や地域活性化というようなものにも必ずつながっていくことなので、これを盛り込んだことは評価したい。
 この文案全体を読んでいると、極めて能動的に政策決定を行い、取り組んでいくという姿勢が見える部分と、受動的もしくは傍観者的な表現のところが散見している。例えば能動的な表現、「策定する」「講じる」「進める」「支援する」「促進する」「推進する」「検討する」「努める」「強化する」「導入する」「構築する」「振興する」というような表現は、それぞれの文脈の中で使い分けているので結構。人材育成とか活用のところになると、「期待される」「望まれる」「求められる」というような受身の表記になっており、読み方によっては傍観者的表記になっている。この標記は意識して書いているのか。
 受身形に「期待される」や「望まれる」は、文部科学省あるいは科学技術政策の立場から、きっぱり言うことができないからか。

【事務局】

 第3期の計画では、言葉の終わりで慎重な使い分けが内閣府のほうでなされている。それは、国と国立大学法人、独立行政法人との関係で、直接的に国の影響が及ぶ範囲は、第3期ではかなり縮小しているため。大学に関して記述があるところについては、「望まれる」や「望ましい」もしくは「奨励する」のような表現になっている。
 一方、国が何かファンドをつくるとか、支援策を打つとかといった国自身が主語になっている部分については、「行う」というような表現として整理をしている。

【委員】

 「期待される」「望まれる」「求められる」という表記の内容は、極めて重要なことが多い。したがって、期待されたり、望まれたり、求められるところこそ変えていかなければならない。これは国として取り組んでいくための決意表明なので、部分的に消極的な表現があれば国民として読んでも力が入らないということを強い印象として述べておきたい。

【委員】

 非常に読みやすくなってきたという気はする。ただ2期の4重点分野のような目玉がないので、アピールするのかという心配はある。全体にいろいろ文言が出ているが、1期のときにほとんど入っているキーワードなので、なかなか難しそう。ただ科学技術なので、あまり慌てて5年ごとに変えてしまう必要もないという感じを一方に持ちながら、そんな感じは受けている。
 その中で1期は割と基礎研究を重視という感じがあり、2期が応用研究的なところがあった。今期はやはり人材育成だと思う。そうすると、バックグラウンドを本当に反映した議論になっているのか気になる。いま一番大事なのは、文系と理系を分けてはいけないという意見があったが、理系へ行くと損をするのではないかという風潮がある。それで理系の進学率も伸びていないとか、大きな大学などでは文系に比べて理系は間違いなく質が落ちているということがある。
 これを踏まえて、研究の推進と教育をミックスしたような形の取り扱いが大事だというのが一番大事なところだが、42ページで密接な連携をとるというところに、教育関係のようなところがあまり入っていない。科学技術と教育をどうリンクするかを、文部科学省はぜひ考えていただきたい。
 人材育成もそうだが、例えばナノテクが出てきたときに、大学院でナノテクの専攻科をつくるなら推進に一番速いと大声を上げたつもりだが、それは大学が決めるものなので、科学技術側が言う話ではなかった。ちょうど5年前にその辺のリンクがうまくいかなかったという、強い印象を持っている。そういうことを含めて、これは研究と教育という人材育成という感じになっていると思って、リテラシー等いろいろ入っているが、全体で非常に気になったというか大事なことではないか。
 少し具体的になるが、外国人、インターナショナルのことをいろんなところで述べているが、日本というのはどれだけ外国人を入れようとしているのか。ポスドクでどれだけ入れるのか。外国人を入れれば必ずintellectual propertyの問題が絡んでくる。しかし、先進国は学生を多く入れているので、ここのところは本当はもう少し踏み込んだ議論がいま既に必要なのではないかと思う。この部分が全体として弱いという気がしている。
 セキュリティということがもう前面に出てきていない。8分野の中でいろいろ見てみるとそれなりにセキュリティというのはあるが、世界的な潮流からいうともう少し出るのかという気がした。
 学術会議と総合科学技術会議という問題があって、総合科学技術会議が学協会とある意味では縁を切ろうというので学術会議が新しく立ち上がった。今日見てみると総合科学技術会議はやはり学協会を非常に大事にしようということで、矛盾もあるのかなという感想を持った。

【委員】

 女性研究者に関することは別の章立てでという意見が出たが、賛成。女性研究者にとって非常に働きやすいような環境をということを述べてあるが、同時に男性の研究者にとっても重要な環境の改善である。出産は女性のほうに大きな負担がかかるが、育児や介護など、家族の問題に関して男性も女性も同等に責任を負うことになっていくので、男性にとっても重要な改革であることを一言触れていただきたい。
 今期も7ページ目にノーベル賞30人という記述が出ている。ここでは、「第3期基本計画の科学技術政策がその実現に貢献するものとなるよう、・・・」という多少間接的な言い方になっており、また、賞という具体的な表現をしたほうが一般にアピールし易い面はあるのだろうが、ノーベル賞を目標にするというのは気恥ずかしく違和感を覚える。

【委員】

 大変大事なことなので同じことを言わせていただく。女性研究者というのが外国人と云々という中に入っているというのはやはりおかしい。国民の半分が女性で、同じような教育を受けた人たちをもっと活用することは、外国人云々というレベルとは違う。いま日本は理数系出身の女性は全体の11パーセントだが、アメリカやほかの国では大体38パーセントから40パーセント。すなわち、学生自身がそちらのほうに来ないという大きな問題があって、国がこういった技術系のところに女性をもっと頑張れるベースを築いていっていただきたい。これは別の章立てで明確にこういったところに力を入れるということをはっきり書いていただきたい。
 国際標準(36ページ)の文言の中で、「支援する」という言葉があった。支援するではなく、より積極的にリーダーシップをとることを明確にする必要がある。
 教育(18ページ)では、産学一緒に助け合って教育するという記述がある。確かに大事だが、個人としてこれだけ技術が変化しているので、一時的に大学に戻って研究を行い、また実業界に来る。生涯教育というと、平たくなってしまうが、いったん産業界に出た人も戻って自分でスキルを上げる、ないしは研究を行いそれをもってまたビジネスに戻れるといったことを促進していただきたい。
 最後にお願いだが、この四つの分野という中に非常に良いものが多くあるが、これから日本が新しく行うものはあまりない。今まで世の中に出ているものがほとんどで、それに追いつけとは言わないが、場合によっては追いつけもあり、追い越せというのがゴール。それはそれで良いが、議論がいま非常に活発になされている新しい分野として、サービスサイエンスがある。サービスサイエンスという考え方は、IT、コンピューターが最初産業界から出てきたときに学問になるとはだれしも思っていなかった。企業としてITは行っていくという中で、これをもっと学問、サイエンスとして推し進めていきましょうということでITが一つの科学技術の分野になっていった。
 同じようにこのサービスは、もっとサイエンスとしてとらえて、いかに効率を上げていくのか、いかにすばらしいサービスというものを技術的ないしは科学的に行っていったらいいのかということが、スタートしたばかり。その中で、サービスサイエンスは少し書かれているが、どう読んでも趣旨がよくわからないので、少し筆を加えていただきたい。サービスサイエンスの分野は、日本が世界にリーダーシップをとって先端を走るぐらいの思いがあっても良い。
 逆の言い方をすると、どの国もまだドングリの背比べでどうしてよいかよくわかっていない。しかし、ほとんどのビジネスが今このサービスというところに非常に重みを置いている。その中で効率をどう上げていくのか、どうやって高いバリューを出していくかという点で非常に苦労している。企業の中の自己努力ということではな、やはり一つのサービスサイエンスとして取り上げていくことは、日本にとっては非常にユニークなおもしろい試みではないか。せっかく書いていただいたが、もう少しウエートを置いていただくと今後大きく広がっていくのではないか。

【委員】

 女性研究者の活躍推進について女性の委員からの発言のみはよくない。やはり男性、国のリーダーのような人がなぜ言わないのか。例えばOECDなどの女性研究者の活躍の表を見ると、日本は下位から2番目ぐらい、(上位)30番目ぐらい。女性研究者の国際会議などに行った代表者の動向センターの女性研究員などの話を聞くと、日本は国際的に見ると、途上国並みで全然問題にされていない。もう行くのが恥ずかしいと。それでレポートを書いたりしているが、男性のリーダーになっているような人が、女性研究者のことを言わないといけない。国のたたずまいとしてぜひ行うべき。

【事務局】

 これまでの発言の中で、人材養成、理系への学生の関心が落ちているのではないかということについては、OECDの会議が1年ぐらい前から追跡調査(各国の専門家を集めたグループでの分析)を始めている。昨年から始めて、早ければ来年の春にそのレポートがまとまるという感じ。今週の初めに、途中段階でこういう発見があったということで、どのような対応策があるかというワークショップがあった。
 その中で、全体の数は、進学率全体が上がっているので、減ってはいないが、理系、特に物理・数学のような基礎的な学問分野への進学率が落ちているのが、先進国全体での懸念になっている。その原因と対策を行うために、かなり早い段階、11歳とか15歳といったところまで問題の所在を考える必要があるというのが、共通理解になっている。その中に女性研究者の問題が入っていて、まだ女性の進学率が少ないというのも、全体としての進学率を上げるための一つの要因として勘案されるべきだといったような議論があった。
 こうした議論に対して、日本では科学技術行政と教育行政の両方の政策の結びつけの一つの解決として、文部科学省が5年前に科技庁と文部省が一緒なってできたという経緯があって、その中で今まで教育行政の中だけでは、理科に大きなファンディングをすることはいろいろな実情でかなり難しいが、それが可能となった。あるいは科学技術政策の観点から、地方の学校なり教育委員会なりへのアプローチが行いやすくなったメリットが出てきている。実行ベースの話としてこの連携をさらに進めていくことは可能であり、そういったことも会議では言ってきたので、この計画の文書に書かれるかどうかはおいて、実施ベースではこのような促進は日本としてはできると確信をしている。
 あわせて、この計画が総合科学技術会議でさらに施策、政策の基本論として議論が進んで、それを受けて各省があわせた形での閣議の決定に持っていくのが基本計画ということになるが、施策の実行は本当にどうなるのかということについて、部分的には既に来年度の概算要求で意識している。文部科学省としても各省と連携しながら行う施策も入れている。将来的に重複とか齟齬がないようにということは、基本的にはこの基本計画の窓口である政策局で各局とよく話し合ったり、あるいは情報を収集していろいろな調整をしていく必要性がある。

【委員】

 論文引用数20位以内の拠点(p24)の論文引用数という表現ですが、これは引用される数のほうではないか。被引用数ではないか。

【事務局】

 被引用数である。

【委員】

 論文引用数20位以内というと変ではないか。

【事務局】

 普通は被引用数。そこは考えさせていただく。

【委員】

 できればこの文章を取っていただきたい。論文の被引用数20位以内は何を基準とし、何を考えているのか。数字として残すと国際的に今後大変恥ずかしくなるような問題。

【事務局】

 この部分は、総合科学技術会議の専門調査会でも大分議論があった。論文の被引用数ではなかなか計れないものの代表として、人文社会はどうしようもないという意見や、一面的過ぎる、研究そのものは多面的な指標で行うべきだという意見もなった。
 この部分で前回の資料から変わったのは、冒頭にさまざまな各指標を使うという点が入り、結果として例えば論文引用数は事実上その中の一つに落とし込まれたような文章になっている。そういう意味で、この部分については総合科学技術会議でも、論文引用数だけを記述することから変わってきており、文章上まだ弱いというご指摘はあるが、実態は変わってきている。

【委員】

 論文引用数とかノーベル賞の数を引き合いに出すのは、国レベルの政策を示す場では、国際的に見て恥ずかしいという気がする。第3期は、物から人へというようなキャッチコピーで、1期、2期を通じて行ってきたものを引き継いで、日本が新しい持続的な発展を遂げるために人を育てる方向に焦点が移ってきている。それが思うようにいっていない。一つには全体を貫いている、経済や社会を変えていく素になっている国際競争力を高めるためのイノベーションが必要だというキートーンがあるが、これが社会に受け入れられていないという気がする。
 市民の価値観に立ったテーゼがあり、それに向けてこういう施策をする。すると人も育つ、という流れが欠けている。その典型が先ほどの女性議論。全く女性の視点、言い換えれば市民の視点でなく、国際競争力を高めるために人を使うという視点の論調になっている。これでうまい人が育ってイノベーションにつながっていくという道筋をつくるのには、もうひとつ工夫の要るところではないか。
 最近は、安全・安心の社会というようなキーワードが入ってきている。安全はある意味では技術的なことだが、安心は文化価値を含むカルチャーの市民の心の問題。総合科学技術会議なので、心のほうには踏み込まないかもしれないが、もう少しバランスをよく考えないと、人が育たないのではないか。

【主査】

 項目だけ言わせていただくと42ページ「2.具体的取組」の(1)の4番目に「独立行政法人、国立大学法人等の科学技術関係活動の把握・所見とりまとめの強化」がある。把握はできるかもしれないが、個々の国立大学の所見まで行えるだろうかという印象を受けたので、お願いしたい。
 大学院学生の充実で博士課程の支援ということが盛んに述べられているが、アメリカなどのリサーチユニバーシティーではもう修士の1年から生活費支援を始めている。そうでないと国際的に優秀な人は集まらないという現実がある。その辺コメントに応える必要がある。
 測定器等を大いに国内のものを使うことに関して、国の研究費で買ってよいというギャランティーがないと、会計検査でひっかかってしまう。そのようなことを奨励することを具体的に何かコメントしていただく必要があるという印象を受けた。こういう測定器を使わないと論文としての信憑性に欠けるというようなことを言われるような雑誌であると困るので、そのようなことを言わせないためにも国内からの発信が非常に重要ではないか。

2.その他

 本日話し合われた意見については、総合科学技術会議へ提出することとし、次回の委員会については、日程調整後開催する予定であることが報告された。

― 了 ―

お問合せ先

科学技術・学術政策局計画官付

(科学技術・学術政策局計画官付)